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平成 24 年度 ベトナム及びインドネシアにおける水

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平成 24 年度 ベトナム及びインドネシアにおける水
平成 24 年度中小企業等産業公害防止対策調査
平成 24 年度
ベトナム及びインドネシアにおける水ニッチビジネス展開
に向けたプロジェクト具現化モデル調査
報 告 書
平成 25 年 2 月
中国経済産業局
はじめに
本調査事業は、近年注目されている東南アジアで水ニッチビジネスの構築に取り組ん
だものです。
舞台は、東南アジアの中でも注目度の高い「ベトナム」と「インドネシア」。
両国とも経済発展めざましいのですが、それ故、様々な課題に直面しています。
今回はこの課題を出発点として、その課題を解決しながらビジネスに繋げていくとい
うソリューション型ビジネスのアプローチです。
そのポイントは、「国内外のネットワークを構築すること」、「現地で役立つものと
するためにニーズの深掘りを行うこと」、そして「技術、人、プロジェクトの現地化を
楽しむこと」。
まず、国内外のネットワーク構築のため、情報を手繰りつつ、いろいろな方のお話を
聞き、協力を仰ぎつつ国内から海外の現場へと繋がる糸を手繰りました。
次に、現地で役立つプロジェクトとする
ために、有識者をお招きし、現地の状況、
プロジェクトのあり方などの検討を重ね
つつ、海外の現場に足を運び、直面してい
る課題について話を伺いました。
最後に、技術、人、プロジェクトの現地
化を楽しむことですが、まず右の写真をご
覧ください。ここは、カンボジアの国境付
近に位置するナマズ養殖池の土手です。
さて、ここで質問です。ここへ行く途中、
重さ1t制限の橋があります。乗っている
車は1tをゆうに超えますが、あなたはそこから先、車で 20 分の道のりをどうやって
進んでいきますか?
そんな状況や写真にあるココナッツ、ゆでバナナ、人との出会い、その国の文化その
もの、、、全てを楽しみ、技術、人、プロジェクトの融合を前向きに楽しみ、取り組ん
でいくことが重要です。
すると、自然に話も盛り上がります。
新たな事業を検討中のみなさん、活気あふれる東南アジアでチャレンジしてみません
か?日本の人と技術と知恵は、アジアで求められています!
平成 25 年 2 月
中国経済産業局
資源エネルギー環境部
環境・リサイクル課
目
1.
2.
次
調査の概要 ································································································· 1
1.1.
調査の背景 ···························································································· 1
1.2.
調査の目的 ···························································································· 1
1.3.
調査の方法 ···························································································· 2
1.3.1.
プロジェクトの企画立案とチームメンバーの募集 ··································· 2
1.3.2.
プロジェクト研究会の開催 ································································· 2
1.3.3.
現地 FS 調査 ···················································································· 3
1.3.4.
展示会への出展 ················································································ 3
1.3.5.
まとめ ···························································································· 3
プロジェクト展開 ························································································ 4
2.1.
インドネシア簡易上水開発プロジェクト····················································· 4
1)インドネシアという国 ············································································· 4
2)プロジェクト概要 ··················································································· 5
3)第 1 回研究会 ························································································· 7
4)第 2 回研究会 ······················································································· 10
5)第 1 回 FS 調査····················································································· 14
6)第 3 回研究会 ······················································································· 17
7)第 2 回 FS 調査····················································································· 20
8)第 4 回研究会 ······················································································· 22
9)第 5 回研究会 ······················································································· 24
10)インドネシアプロジェクトまとめ ·························································· 27
2.2.
ベトナム養魚場水質改善プロジェクト······················································ 28
1)ベトナムという国 ················································································· 28
2)プロジェクト概要 ················································································· 28
3)第 1 回研究会 ······················································································· 31
4)現場ヒアリング(国内養殖場訪問) ························································· 33
5)第 2 回研究会 ······················································································· 35
6)第 1 回 FS 調査····················································································· 38
7)第 3 回研究会 ······················································································· 43
8)第 2 回 FS 調査····················································································· 47
9)第 4 回研究会 ······················································································· 51
10)第 5 回研究会 ····················································································· 56
11)ベトナムプロジェクトまとめ ································································ 59
3.
まとめ ····································································································· 61
補足資料 ········································································································ 62
i
ii
1.
調査の概要
1.1.
調査の背景
中国経済産業局では、平成 19 年度から中国地域の水循環技術を有する中小企業の海外展
開を支援している。
しかしながら、実プロジェクトとして動かしていく上で、文化、経済、都市化の違いな
どの市場の壁が存在し、ビジネス参入できない状況にある。
一方で、参入が成功しつつあるケースを見ると、大手企業や先進的な自治体では、上下
水道整備と運営管理をターゲットとした海外展開、中小企業においては、保有する技術を
活かしたニッチ分野においてである。
1.2.
調査の目的
今回の調査事業では、中国地域の中小企業の中で海外展開の動き(芽)のあるものをモ
デルとして選定し、ベトナム及びインドネシアの水ニッチビジネス参入を目指すものであ
る。
1.3.
調査の内容
調査の内容は以下の図のとおりである。インドネシア簡易上水開発プロジェクトとベト
ナム養魚場水質改善プロジェクトの 2 プロジェクトについて実施した。
プロジェクトの企画立案と
チームメンバーの募集
インドネシア簡易上水開発プロジェクト
ベトナム養魚場水質改善プロジェクト
現地FS調査の実施(2回)
プロジェクト研究会
の開催(5回)
展示会への出展
結果のとりまとめと報告書作成
図 1 本調査事業の流れ図
1
1.3.1.
プロジェクトの企画立案とチームメンバーの募集
プロジェクトの企画立案にあたって、コア企業として、山口県のクリアーシステム株式
会社、岡山県のナカシマプロペラ株式会社を選定して、それぞれの企業にヒアリングを実
施した。
インドネシアプロジェクトのコア企業であるクリアーシステム株式会社では、水中の濁
質除去のために「ミズコシタロウ」といった高分子ろ過膜とろ過装置を開発している。高
分子ろ過膜は、砂ろ過膜と精密ろ過膜の中間にあたる除去性能を有しており、国内では、
工事現場の濁水処理などに用いられている。同社ではインドネシアの留学生を受け入れて
きた関係もあり、現地における濁水のろ過による生活用水レベルの処理についても、展開
可能性の検討を開始していた。
一方、ベトナムプロジェクトのコア企業であるナカシマプロペラ株式会社は、船舶用の
プロペラメーカーであるが、水域や海域の水質環境浄化のために「密度流拡散装置」を開
発して、国内の海洋やダムなどの閉鎖性水域の水質浄化に実績を有している。平成 23 年度
の中国経済産業局の調査において、ベトナムの養殖場における水質浄化のニーズに対し感
触を得ている。具体的には、エビの養殖やナマズの養殖が盛んに行われているが、先進的
な業者でさえ、現在はパドル方式による攪拌が行われ、省エネルギーで効率的な攪拌に対
し関心が示された。
これらのコア企業の技術や海外展開の要望などをもとに、現地に進出している企業や大
学・研究機関などにヒアリングを行い、企画立案の参考とした。ヒアリングを実施した企
業や研究機関のリストを補足資料に示した。
インドネシア及びベトナムの水に関する事情も踏まえ、それぞれ、「簡易上水の技術を
中心にインドネシアにおける用水のニーズを発掘する」並びに「水質改善の技術を中心に
ベトナムにおける養魚場でのニーズを探る」プロジェクトとした。また、プロジェクトの
内容は、相手国の役に立ち、かつ、ビジネス展開する中国地域の中小企業にとっても魅力
のあるものとして考慮した。
チームメンバーとしては、アジアの市場開拓に向けた意欲の高い中国地域内企業を中心
に研究会への参加を募った。募集にあたっては、平成 23 年度中国経済産業局作成のシーズ
事例集掲載企業を中心に水ビジネス関連企業 50 社程度として、メール送付により募集した
(補足資料参照)。
1.3.2.
プロジェクト研究会の開催
インドネシア簡易上水開発プロジェクトとベトナム養魚場水質改善プロジェクトの 2 プ
ロジェクトについてそれぞれ 5 回の研究会を開催した。
研究会では、毎回、テーマを決めて、テーマにふさわしい有識者による講演を行った。ま
た、各回でテーマにそった議題を決めて、全体を通して、プロジェクト具現化のステップを
踏みながら、現地 FS 調査(展示会を含む)の効果的な実施に努めた。
当該分野に詳しいアドバイザーに全回をとおして、出席していただき、毎回、アドバイ
スをいただいた。
2
インドネシアプロジェクトのアドバイザーについては、平成 23 年度の調査でビジネスマ
ッチングに参加していただき、日系企業の東南アジア進出に伴ってインドネシアを含む 7
カ国に現地拠点を持っているクボタ化水株式会社(旧
富士化水工業株式会社)取締役の
井田弘行先生に依頼した。
ベトナムプロジェクトのアドバイザーについては、瀬戸内海にも研究所を持つ独立行政
法人水産総合研究センターの有識者や、現地進出日系企業の担当者、大学関係の有識者な
どの候補をあげて検討し、最終的に養殖に幅広い知見をお持ちの鹿児島大学水産学部養殖
分野の副学部長である越塩俊介先生に依頼した。
また、JICA(独立行政法人国際協力機構)、JETRO(日本貿易振興機構)、中小機構(独
立行政法人中小企業基盤整備機構)などの協力者に参加を願って、意見を伺う機会をつく
った。
なお、開催にあたっては、ターゲット市場の研究、技術連携及び商材の検討、想定する
適用業種との現場での意見交換などの多角的な検討と、各国での実証実験等のプロジェク
ト計画の作成を行い、水ビジネス参入に向けての成功確度の向上、プロジェクトメンバー
の人材育成、メンバー間及び有識者との連携を密にすることができる内容となるように配
慮した。
1.3.3.
現地 FS 調査
第 1 回(9 月)及び第 2 回(11 月)にインドネシアとベトナムを訪問して、現地の政府
機関や公共研究機関、大学、民間企業などと面談を実施して、現地のニーズ調査を実施し
た。
訪問により、人的ネットワークを構築して、現地ニーズを把握するとともに、それぞれ
のプロジェクトの現地での展開の可能性を具現化できるようにコンタクト先との連携など
について、意見聴取した。
1.3.4.
展示会への出展
第 2 回 FS 調査(ベトナム)と同時にハノイ市で開催された VIETWATER2012(2012
年 11 月 6~8 日)に出展した。
ベトナムプロジェクトのコア企業を含む 2 社の展示を行い、現地でのビジネスの可能性、
企業などの技術に対する印象や現地での展開の可能性に関する感触を得られるように努め
た。
また、中国地域の技術シーズの PR を行い、プロジェクトとの相乗効果を図るように努め
た。
1.3.5.
まとめ
本調査事業を通して、中小企業の海外展開について、技術を活用して海外展開する上で
モデル事業を決めた上で研究会形式で毎回課題の整理を実施する形で調査を取り進めた。
各研究会で出た意見をもとに海外 FS 調査を実施して、現地ニーズとのマッチングや連携の
可能性について調査を行った。
また、プロジェクト具現化のステップ、研究会の内容、現地 FS 調査(展示会を含む)の
結果をわかりやすくまとめるように努めた。
3
2. プロジェクト展開
2.1 インドネシア簡易上水開発プロジェクト
1)インドネシアという国
正式名称はインドネシア共和国。面積 191 万 931 ㎢で日本の約 5 倍、人口およそ 2 億 3765
万人。13,000 を超える大小の島からなっており、西はスマトラ島から東はニューギニア等
まで、東西 5,000km 以上に及んでいる。
親日的で、自動車、二輪車、建設機械、
電機などの耐久消費財分野や飲食、教育、
IT、金融などのサービス産業分野など幅
広い分野で日本から企業進出が進んでい
る。
しかしながら、開発はジャワ島に集中
しており、都市から離れた地域や島嶼部
では、水インフラの整備が遅れ、最近の
人口増加もあり、飲料水などが十分供給
されていない状況にある。
4
2)プロジェクト概要
インドネシアの飲料水源については、以下のようなデータがある。
全国平均
46.1%
ジャカルタ
98.1%
ジャカルタでは、所得水準が高いため飲料水源としてミネラルウォーターを利用してい
る比率が高く、また、水インフラの整備率の高さから水道水、ポンプ取水の地下水と合わ
せると 98%となっている。一方、地方に行くと、この 3 つの比率は低下していき、井戸水、
湧き水、河川、雨水などの比率が増加する。
ところが、最近、井戸水の水質悪化が見られ、湧き水、河川、雨水なども殺菌されてい
ないことから、下痢や発熱などの健康問題との関連が指摘されている。
そのため、安全な水インフラの整備は、インドネシアの地方部において強く望まれてお
り、また、せめて井戸水、湧き水、河川、雨水などを洗濯や入浴などの生活水として安定
して利用できるレベルまでにして欲しいといったニーズもある。
今回のプロジェクトは、そういったニーズに応え、現地に貢献できるプロジェクトを構
築することを目的として実施したものである。
5
○コア技術
課題解決となるコア技術は、クリアーシステム株式会社の高分子フィルターろ過装置と
した。
特徴としては、以下の点があげられる。
(右は、同社社長のお手製簡易実験装置)
◇濁水を化学的に処理するのではなく高分子フ
ィルターの物理的なろ過で 5~8 ミクロン以
上の土粒子を除去できる(※)。
◇微少な粒子を捕捉しながら大量の水をろ過す
る能力がある。
◇ブラシでフィルターの表面を洗うことで、重
複して長時間濁水をろ過することができる。
同社は、インドネシア人留学生との長年にわたる
友好関係もあることから、現地での展開を考える
上での人的ネットワークの構築も十分可能である
と判断した。
※一般的な分離膜は以下のとおりであるが、これらより大きな孔を有している。
精密濾過(MF)膜:0.1 ミクロンより大きい粒子や高分子をろ過する。油エマルジョ
ン分離、酵素・細菌分離などに用いられる。
限外濾過(UF) 膜:0.1 ミクロン~2 ナノメートルの範囲の粒子や高分子をろ過する。
無菌ろ過、タンパク質の分画などに用いられる。
逆浸透(RO)膜:数ナノメートル以下の分子レベルの細孔を持ち、加圧により浸透圧
差と逆方に溶媒が移動する。海水脱塩、ジュース等の濃縮などに用いられる。
○研究会の進め方
「現地で役立つプロジェクトの構築」を目指し、「国内外の人的・組織的ネットワーク
づくり」、「技術・システムの現地化」にポイントに置き、5 回の研究会と 2 回の現地 FS
を実施した。
また、研究会には、インドネシアを含む 7 カ国に現地拠点を有するクボタ化水株式会社
(旧
富士化水工業株式会社)取締役の井田弘行先生にアドバイザーとして参画して頂く
とともに、JICA(独立行政法人国際協力機構)、JETRO(日本貿易振興機構)、中小機構
(独立行政法人中小企業基盤整備機構)の 3 者に協力機関として出席して頂き、プロジェ
クトの具現化を図った。
6
3)第 1 回研究会(2012/7/31(火)
13:00~15:00)
「インドネシアにおける飲料水」と題して、既に、ペットボトルビジネスを現地で展開
している株式会社日本トリム経営企画部長の清水崇文先生にお話しいただいた。
○「インドネシアの飲料水市場と日本トリムの事業展開」
インドネシアでは、飲料水(ガロンボトル)
事業が発展している。
ミネラルウォーター製造業者協会による
と、2010 年の国内販売量は前年比 7%増の
145 億リットルに達する見込みであり、2011
年は 6.9%増の 155 億リットルを超える。
同社では、人口、経済発展、親日的、日本
製品に対するプラス・イメージがあるなどの
理由により、インドネシアでのボトリング事
資料 3-1
業をスタートしている(資料 3-1)。
インドネシア飲料水市場の課題としては、下の 3 点がある。
1.参入障壁が低い(投資額、技術)ため多くの企業が参入(約 2,000 ブランド)し、価格
競争が激化し、その結果、事業停止、ブランド廃止に追い込まれるケースも多い。
2.インドネシアは島国(大小含め 18,000)であり、流通経路の確立が難しい。また、飲料
水はコスト面から、消費地の近くに生産拠点を持つ必要がある。
3.ブランド、販売チャネルの確立、販路の整備に時間が必要。
ミネラルウォー
ター市場構成を見
ると、「一般的な
商品」、
「中級品」、
「下級品」の 3 レ
ベルに大別されて
いる(資料 3-2)。
資料 3-2
7
また、ボトルの種
類も「ガロンボトル」、
「スモールパック」、
「ガラスボトル商
品」などに分かれて
いる(資料 3-3)。
資料 3-3
さらに、飲料水のマ
ーケットも「トラディ
ショナルマーケット」、
「モダンマーケット」、
「ホレカ」の 3 種類の
チャネルに分かれてい
る(資料 3-4)。
現地におけるビジネス
では、現地資本企業との
資料 3-4
パートナーシップも重要
であるとともに、さらに
下の点についても留意が
必要である。
インドネシアビジネスでの留意事項
・国立公園の環境保護活動
・インドネシアに根ざした事業活動
・事業= 人。人間関係が最も重要。
・政治の安定→ 経済発展→企業進出加速と繋がっている
講演を受けて、以下の質疑応答を行った。
・インドネシアにおける簡易上水の状況、日本の企業の状況などについて質疑応答があっ
た。日本企業の取り組みの例はあるが、メンテナンスやオペレーションの問題などから
なかなか広がっていないとの話があった。
・また、人間関係については、個人個人のつながりが強い地域であることの指摘があった。
・現地での雇用の年数は、3~4 年といった場合が多く長続きしない点も指摘があった。
8
コア企業のインドネシアでの事業展開について、説明があった後に参加者の意見交換が
行われた。
意見交換の内容は以下のとおりであった。
・生活排水がほとんど処理されずに河川に放流されているが、コストの問題で下水処理は
普及しにくい状況にある。
・東南アジアで計量証明事業の展開を考えたい。原水から浄化後の供給水に至る各工程で
の水質分析、浄化能力向上のコンサル支援などのビジネスに期待が持たれる。
・環境分析が必要な場合に関わっていきたい。また、環境分析装置についても開発・設計・
製造が可能である。
・従来のアルミ系の凝集剤ではない、シリカと鉄の凝集剤を開発している。海外展開に参
画できればと期待している。
以上のように、下水処理、環境分析、凝集剤に関する話があった。
また、簡易水道事業に関する意見として以下のようなものがあった。
・現地では、飲料水はどんどんと安く供給されるようになっているが、理想としては、現
地で装置を取り付けて、簡易で飲料水が手に入ることが必要である。しかしながら、フ
ィルターの交換やメンテナンスなどもあり、コストもかかってしまう。
・過去にも砂ろ過などの簡易濾過器を検討したが、コストがあわないなどの問題があった。
どのような消費層に対して、ビジネスをするのかを明確にする必要性がある。
・日本国内で入手できる部品と現地で入手できる部品を組み合わせて検討を行っている。
現地で入手できる部品も製造能力があがっている。
・環境分析では、単独ではなく、お互いにマッチングすることで進出を考えたい。
・現地では、大手の検査機関の会社もあるが、データは日本で分析する場合で違った値に
なるなど信頼性の問題もある。
・都市部と島嶼部では、交通・インフラなど条件が異なる。現地情報は、JICA の現地事務
所でも情報提供出来るのではないか。
・ジャカルタなどの都市部では、ミネラルウォーターのボトル事業が半数を占めている。
現地の PDAM という水道公社も水道事業を所管している。
・簡易水道事業については、採算がとれていないとみている。過去にも、日本企業がやっ
ていた。また、韓国などの企業も海外展開している。
今後の検討事項
・処理コストの問題、展開する地域の問題などの議論を踏まえて、次回は、実際に JICA の
BOP ビジネスプロジェクトを現地で展開している例について、話を伺うこととなった。
9
4)第 2 回研究会(2012/9/4(火)
13:00~15:00)
「BOP 水ビジネス」をテーマに開催した。テーマプレゼンテーションでは、2011 年度の
JICA 協力準備調査(BOP ビジネス連携促進)事業に採択され、インドネシアでの飲料水
供給事業の事業化調査をされている水道機工株式会社環境事業部主任技師の山本大輔先生
にお話しいただいた。
○「インドネシア国
調査報告」
太陽光発電・小型脱塩浄水装置を用いた飲用水供給事業
BOP(Base of the Pyramid)ビジネスとは、世界の約 40 億人が属している年間所得 3,000
ドル未満の貧困層を対象としたビジネスであり、市場規模は日本国内の市場規模に近く約 5
兆ドルと言われている。
同社では、資料 4-1、-2、-3 のように、以前からインドネシアでの BOP ビジネスモデル
を検討してきた経緯があり、その中で塩分濃度が高く飲用に不適な井戸水を浄化するニー
ズが高いことがわかっていた。
資料 4-1
10
資料 4-2
資料 4-3
11
そこで、インドネシアの島嶼部において、脱塩機能を有する浄水装置を用いた飲料水供
給の BOP ビジネスを生み出すことを目的とした事業を提案し、実行中である。
(資料 4-4、
-5)
JICA への提案概要
・BOP ビジネスの仕組み
・調査計画
↓資料 4-5
↑資料 4-4
12
現時点では、公民連携することにより現地政府からのサポートが大きいこと、飲料水確
保に不満はあるものの生活は出来ている状況にあること、トイレがきれいなことから住民
の衛生観念は高いこと、村落コミュニティの自治意識が高いこと、親日的であることがわ
かっている状況にあり、今後どのようにビジネスとして成立させていくかが課題である。
講演に対して、以下の質疑応答を実施した。
・ビジネスモデルに関する質問に対して、装置を作る会社を現地に設立して、村や政府等
に販売するだけでなく、水の日常の販売・維持管理をする各機能を含めて事業化をする
ことを目指している。装置売りだけでなく、水売りも念頭に入れた事業化調査を実施し
ているとの回答があった。
・また、BOP だけでなく、工業団地などへの転用も考えている。
・ポンプなど現地で入手できるものを考えている。
・雨水や山の湧き水を汲んでローリーで配達する場合の水は安いが消毒されていない。こ
こでは、リフィルガロン水を競合に考えている。
・現地では、水道水質基準があり、必要項目を測定して結果を提示する。運用開始時に行
う予定である。水の販売の場合の一番の課題は免責である。質は問題ないが、保証をど
うするかである。リフィルなどのガロンメーカーには法律があり、保健局が月 1 回検査
に来ている。
・現地の自治意識も重要であり、現地で入手しやすい部品を選定して仕様をオープンにす
ることで、持続可能な事業にすることを考えている。
・今回の調査では北九州市が入っている。民間では、現地の村などにいきなり入るのは難
しいが、公共機関が入ることで、進めやすい状況となっている。
・分析会社は現地にもあるが、日本での検査値と差があった。
飲料水だけでなく、生活用水に関するニーズも海外 FS 調査できると好ましい。
以上のように、ビジネスモデルに関するもの、現地での各種の飲料水とのコスト的な競
合の話、現地での事業主体に関する問題、行政機関と組むことでのメリット、水の分析に
関する問題などの意見がでた。
第 1 回 FS 調査の予定について説明を行った。
意見交換として以下の指摘があった。
・中小企業の出番があるような調査をすること、原水の分析に関する調査など幅を拡げた
調査の依頼があった。
今後の検討事項
・BOP ビジネスモデルの発表を受けて、「自治体の海外展開」について話題提供をしても
らうこととなった。
13
5)第 1 回 FS 調査(2012/9/19~21)
インドネシアの政府機関及び大学を訪問し、簡易上水のニーズについてヒアリングを行
うとともに、当プロジェクトのコア技術である高分子フィルターろ過技術の紹介を行い、
連携の可能性を探った。
また、JICA や JETRO のインドネシア現地事務所を訪問して、現地の状況把握を行うと
ともに、調査後に予定している実証事業等の次のステージに向けた意見交換を行った。
【訪問結果】
☑公共事業省人間居住総局水供給開発局
中央政府はシステム(ポンプ、ろ過、塩素殺菌など)の推奨を行い、地方政府が配
管の敷設を行っている。
簡易浄水システムのミニ実験を行ったところ、有力な簡易浄水システムであること
を認識いただき、政府と関係の深い企業の紹介をして頂けることになった。
☑バンドン工科大学
ジャカルタから東に車で約 3 時間の
位置にあるインドネシア随一の学術
都市バンドン市にある有名工科大学。
アセアン大学ネットワーク※のメンバ
ーでもあり、連携に積極的で、海外の
企業等と 50 のMOU
(memorandum of
understanding:覚書)を結んでいる。
連携手法は「共同研究」であり、そこ
から 30 のベンチャー企業も輩出して
いる。
国際協力部(IRO)を窓口として、技術革新・企業開発機構(LPIK-ITB)、 土木環境
工学部(FTSL-ITB)水質研究所、土木環境工学部(FTSL-ITB)水処理技術研究所
を訪問した。
研究室において、連携の可能性について意見交換を行ったところ、村落とのパート
ナーシップ事業として、村落の水質分析(月 200 件×20 項目)を行うとともに悪い
ところには改善指導を行っていることから、そういった集落における簡易上水施設
整備に向けた事業について、高い関心が示された。また、いろいろな地域の井戸な
どの各種水源や生活水、飲料水、工業用水などの広範囲に及ぶ分析を実施している
ことから、データの蓄積がある。
次回訪問時に、MOU締結を含め、事業計画についての話を進めることとなった。
☑JICA インドネシア事務所
JICA 事業については、今がチャンス。
14
現地事務所においても情報収集を行
っているが、本件の事業内容につい
てはBOP事業案件として、「産学
官が連携しており、おもしろい案件」
との評価が得られ、本部民間連携室
に情報を上げて頂けることとなった。
☑JETRO ジャカルタ事務所
水が本当に足りない状況であり、特に民需に対していろいろな事業が動いている。
首都圏投資促進特別地域(MPA)開発計画にも水事業が 3 本入っているが、資金不
足のため、BOTなどのスキームの活用により、民間を育てていこうという姿が見ら
れる。
ユドヨノ政権下では、外資と内資のバランス型であったが、現下は内国企業に利益
が落ちるように考えている。華人財閥の比率も 8 割から 6 割に落ちており、教育の
進んだ元気ある新興財閥の勃興が見られる。
300 の人種、文学、文化、風習の違いにプラスして、100 倍程度の経済格差のため、
「カオス」と呼ばれている。ビジネスのスタンダードができておらず、家族主義的
な分配社会が残っている。
なお、ヒアリングを行うにあたり利用したコア企業の技術を中心に想定する技術の俯瞰
図を以下に示した。
原水
井戸水
海水
高濃度
地下水
河川水
雨水
山岳湧水
ポンプ
UP
取水
貯水
ボトリング
低濃度
※1
脱塩
※1
※1
※1
ろ過
※1
簡易水道
用水
脱塩
従来法
生活用水
生活用水
しゃ沸
ろ過
殺菌
工業用水道
従来法
工業用水
工業用水
ろ過
or
ボトル
上水道
飲料用水
飲料用水
脱塩
純水
図 2 用水事情の調査項目
15
医療用水
医療用水
電子用水
電子用水
上水道
工業用水道
工業団地
ビル・マンション・住宅
・貯水槽
・配管系
・蛇口浄水器
・簡易浄化槽
工場
1次処理
・油水分離
・固有物質除去
・重金属処理
・高濃度有機物処理
下水処理・下水道
・下水配管系
・曝気・凝集・沈殿
・固液分離
・汚泥処理
2次処理
有機物処理
公共河川・海域
図 3 水ビジネスの技術シーズ例
訪問結果
・現地のニーズとしては、飲料水よりもむしろ生活用水の方が大きく、ビジネス展開の可能
性についても強い感触を得た。また、インドネシアの国策や JICA の支援の流れにも合致
しており、連携して進められることが確認できた。
・バンドン工科大学では、インドネシア国内の水事業の展開に役立つ人的ネットワークが構
築でき、第 2 回 FS 調査において、より具体的な事業内容にしていく礎とすることができ
た。
16
6)第 3 回研究会(2012/10/12(金)
13:00~15:00)
「自治体における海外水事業の取り組み」というテーマで研究会を開催した。テーマプ
レゼンテーションでは、海外上下水道事業の展開を実施している北九州市上下水道局海外
事業課係長の竹田大悟先生に北九州市の海外事業に対する取り組みとカンボジアなどでの
調査事業の課題などについてお話し頂いた。
また、第 1 回 FS 調査結果に関する意見交換を行った。
○「北九州市の海外事業
国際協力と海外水ビジネス」
北九州市の「水道事業の概要」、「国際協力の取り組み」、「海外水ビジネスへの挑戦」
(水道事業の概要)
過去、深刻な公害問題の克服をし
てきた歴史があり、環境分野で先端
的な役割を果たしてきた(資料 6-1)。
上下水道事業についても、国際協
力の取り組みを積極的に行ってき
たが、その背景には、日本における
人口減少に伴う水道事業の縮小が
ある。
そのような中にあっても、「技術
の継承」や「組織の維持」といった
資料 6-1
問題意識があり、海外に事業展開を行
ってきている。
国際協力につ
いては、幾つか
の実績がある
(資料 6-2)。
資料 6-2
17
特に、カンボジアでは、JICA
技術協力を行ってきた(資料 6-3)。
1991 年当時、内戦の影響で、
資料3
無収水率(生活用水が浄水場から
各家庭に届くまでに、どれだけ無
駄な水が出ているかを示す割合)
が 70%を超えていたが、「配水ブ
ロック構築」、「配水監視システ
ムの構築」、「専門家派遣による
OJT の実施」などの取り組みを
実施してきた。
この流れを受け、ビジネス的
な挑戦も行ってきた。例えば、上
資料 6-3
水道の無い地域である「カンボジ
ア国セン・モノロム市上水整備プ
ロジェクト」、地方給水における
我が国の高い技術の適用可能性
を調査する「カンボット市プロジ
ェクト」などがある。
しかしながら、海外におけるイ
ンフラ整備などの水ビジネスの
成立にはコストの問題が大きい
(資料 6-4)。
資料 6-4
まとめ
1. 145 円/m3の技術がワンパッケージで収まるビジネス対象を選択する必要がある。一般的
に東南アジアの諸都市は、これに該当しない。
2. 145 円/m3の技術がワンパッケージで東南アジアの諸都市に収まるための対策が必要であ
る。(無償資金協力の活用やBOP基金の設立が必要であり、調査費やF/S費用の投入がな
されてもビジネスとして成立させることは難しい。)
3. 現在では、案件化することが極めて難しい「海外水ビジネス」ではあるが、将来の水道
事業の収入減を補完することのできる事業として期待される。
4. 国際技術協力を活用して、「海外水ビジネス」に係る情報を得ることは有効な手段であ
る。
18
また、ビジネス発注先とのコンタクトの方法、部品調達先、開発途上国における水ビジネ
スの状況などについて、質疑応答を実施した。
・現地でのビジネス発注者とのコンタクトをどうしたかとの問いに対して、カンボジアの
例では、日本の総務省に協力要請があり、北九州市が現地に行き、カンボジア政府と調
整をしながら、事業を行ったとの回答があった。
・北九州市が JICA カンボジアの技術協力プロジェクトのリーダーであったこともあり、専
門家派遣要請がきた。名古屋市、横浜市、民間企業の専門家も派遣したこともある。
・部品調達に関しては、当初は日本の材料を調達したが、現在では、現地の水道局が取り
引きをしているマレーシアやシンガポールなどの PE 管を調達している。
・開発途上国では、まず、飲み水である。下水道事業の話で具体的なビジネスになってい
るのは、中国の下水処理場ぐらいである。
第 1 回 FS 調査の結果に関する意見交換
・ビジネスモデルに対する質問があり、パイロット試験により、現地の隠れた問題の洗い
出し、生活用水と飲料水の 2 ケースでの検討、地域展開の検討を行っていく方向とした。
・地域選定に関しては、将来構想として、インドネシアから日本に来ている留学生との連
携を考えているため、出身地であるスマトラ島やバンカ島などで衛生的な水を長期にわ
たって供給できるようにしていく方針。
・さらに、バンカ島などでは、地場産業があまりないため、上水を出発点とした産業を興
しにも貢献できればと考えている。
・既に民間交流を行っているが、その中では、日本からどれくらいの援助があるのかとい
うことに関心があり、その部分での現地の期待が高い。
今後の検討事項
・自治体の中でも海外展開を早くから実施してきた北九州市の話を伺うことで、海外との
ネットワークをどのように作ってきたかを理解することができた。
・次回については、海外、インドネシアにおける部材・設備の調達について、検討を行う
こととなった。
19
7)第 2 回 FS 調査(2012/11/13~14)
第 1 回 FS 調査の結果をもとに、バンドン工科大学、現地民族系水処理企業・施工企業な
どを訪問して、現地の具体的なニーズについてヒアリングを行った。
また、JICA の BOP ビジネス連携事業実施の可能性について、好感触を得た。
【訪問結果】
☑バンドン工科大学
土木環境工学部(FTSL-ITB)・公共事業省水供給開発局水供給開
発部
先方のコア技術の膜に対する期待としては、砂ろ過と MF 膜(精密ろ過膜)の中間
の役割や海水淡水化の前処理がある。
具体的な原水候補として、鉄やマンガンの混じる井戸水など複数の候補があがった。
☑現地民族系水処理企業・施工企業
現地の具体的な原水候補と水事情について、以下の話があった。
・インドネシアには、水処理システム会社の登録が 35 社、そのうち分離膜を扱う会
社は 5 社で、UF 膜(限外ろ過膜)と RO 膜(逆浸透膜)の使用は始まったばかり。
・東ジャワに浄水システムを設置したが、RO 膜ではコストが高く、また、停電が多
く稼働率が低い。水製造装置は中央政府、給水系は地方政府が整備した。
・災害用に 15m3/hの急速給水システムを開発した。
・住宅建設現場の塩分除去をしないと家を建てられないが、RO 膜の前段のろ過に難
点がある。
・UF 膜の前段には、コア企業の膜が最適である。
以上のようにコア企業の膜を適用する原水候補があがった。
・JICA 協力準備調査に向けた簡易浄水システム検討について、簡易浄水システムの
検討体制、BOP ビジネス連携促進制度の活用、スケジュールや申請アクションプ
ランについて説明した。
20
高分子フィルターを用いた濁水のろ過による生活用水の開発技術として、クリアーシス
テム社の技術を中心としたスキームとして、以下にシステム事業構想を示した。
・ものの流れ
<特徴>
①分解掃除ができる中空糸分離膜
②ケークろ過&逆洗方式
③MF・RO・殺菌の前処理に最適
<用途>
集落用生活水および飲料原水
クリアシステム社
・技術
・分離膜エレメント
現地法人
:日本留学経験者
・浄水装置ソフト仕様
・分離膜エレメント
・メンテナンス技術
・浄水装置ハード仕様
現地支援機関の推奨:
:豊富な濁水処理実績
地域サービス
代理店
現地製作
協力企業
:日本研修経験者
・モジュール取付
・定期分解掃除サービス
・モジュール交換
・浄水装置ハード
地域:インドネシア
大学:バンドン工科大学
行政:州政府・公共事業省
顧客:地域コミュニティー
運用
地域機関
:公共水道普及未了地域
図 4 インドネシア簡易浄水システム事業構想(概要)
訪問結果
・今回の訪問では、コア企業の膜を適用するための具体的な原水の候補があがった。
・また、バンドン工科大学関係者および現地企業とのネットワーク構築と今後の展開の可
能性の感触を得るなど、一定の成果を得た。
・今後、システムの事業構想を明確にして、インドネシア側のニーズの具体化とコア技術
の現地ニーズに合わせた改良などを段階的に実施していくスキーム構築が必要となる。
21
8)第 4 回研究会(2012/12/11(火)
13:30~15:30)
「海外での部材調達」というテーマで研究会を開催した。プレゼンテーションとして、
東南アジア 8 カ国に拠点を持つクボタ化水株式会社(旧
富士化水工業株式会社(FKK))
常勤顧問の古田忠司先生にお話しいただいた。
また、第 2 回 FS 調査結果に関する意見交換を行った。
○「インドネシアでの水処理設備の海外調達」
同社では、東南アジアの日系企業の排水処理を中心に海外展開を行ってきた。海外拠点
としては、中国(北京)、中国(上海)、台湾、ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシ
ア、インドネシアの 8 箇所である。
排水処理設備を現地施工する上での部材の調達は、契約場所によって大きく分かれてい
る。大別すると、「日本契約の場合」、「現地と日本で発注と受注を分担するオンショア・
オフショアの場合」、「現地契約の場合」の 3 パターンである。
一方、部材を海外調達する場合には、インドネシアでは、制御盤や施工材料については
現地品、また、汎用ポンプのような一般的な電動機器、汎用脱水機のようなユニット機器
については、中国製、台湾製、マレーシア製を用いているが、計装機器のような高い信頼
性を要求する機器については、台湾製、日本製などを用いている(資料 8-1)。
注:FKK:富士化水工業株式会社
資料 8-1
22
また、海外調達機器の性能の評価やコストについては以下のような話があった。
海外調達機器の評価及びコスト
・FKK では海外ネットワークとしても台湾系が強いこともあり、主要な一般機器の調達
先は台湾メーカー品が主流となっている。製品評価としては日本製ほどの信頼性はない
ものの、概ね安定した工場稼動使用に耐えるグレード。
・日本製品を使用するケースは、対象排水が腐食性と高いものの場合のセンサー類等の計
装機器、及びダイヤフラムポンプ等に限られているのが現状。
・コスト感は 2000 年時点で日本製に対し 50%程度の購入コストで採用していたが、2010
年以降、日本製品についても低価格競争となっており、実際の価格差は 2~3 割程度で
以前ほど無くなっている印象。
・機器の手配選定にあたっては、コストだけでなく、資料対応、納期融通、保証対応等で
FKK 現地社と機器供給元の商社、代理店の関係が重要な要素となっている。
・インドネシアに限らず、アセアン地域でのプロジェクトでは、既に大部分の調達機器に
ついては現地施工サイドでの手配購入となっている。
質疑応答の際、以下の点について追加説明があった。
・インドネシアでの機器類として、ポンプ類は台湾やマレーシア製であるが、制御やセン
サーなどは日本製である。
・また、台湾製は、日本と同様に使えるが、ヨーロッパ製は、規格が合わないために注意
が必要である。
また、第 2 回 FS 調査結果報告後、プロジェクトについて以下の意見交換を行なった。
・FS 調査では、人的なネットワークの構築ができた。
・本研究会のコア技術は、濁水除去に向くシステムであり飲料水には適さず国内でのニー
ズは少ないが、海外では展開のチャンスがある。
・事業構築の上で注意すべき点として、持続性のある事業とすること、企業での連携体制
を構築することが重要である。
・また、持続性のある事業とするには、先端技術ではなく、アフターケアが難しくないも
のとすべきである。
・人材やコスト面での継続性を意識した取り組みとすべきである。
今後の検討事項
・研究会では、生活用水と飲料水を対象としてきたが、次回は飲料水について国内におけ
る管理事例について、話題提供していただくこととなった。
23
9)第 5 回研究会(2013/2/7(木)
15:30~17:30)
「水道の水質管理」というテーマで研究会を開催した。テーマプレゼンテーションとし
て、水道事業に携わっている株式会社水みらい広島事業推進部部長の松延紀至先生にお話
しいただいた。
○「我が国水道の現状と水質管理について」
株式会社水みらい広島は、広島県が 35%、水 ing 株式会社が 65%を出資した官民の上下
水道施設の運転・維持管理をする会社で、国内初の水道における民間企業過半数出資の公
民共同企業体であり、平成 24 年 9 月に発足した。
株式会社水みらい広島についての説明ののち、日本の水道の歴史と現状について説明が
あった。
・日本のように水道水が飲め
る国は世界でも少なく、ボ
トルウォーターを飲む文
化が世界の主流である。
・日本の水道の歴史は古く、
江戸時代の玉川上水は、当
時の江戸の人口約 200 万
人の約 60%に普及してい
た。
・日本の近代水道の始まりは、
資料 9-1
1887 年に横浜で相模川を
水源とした緩速砂ろ過施
設が始まりである。
・上水道事業の流れは、取水、
導水、浄水、送水、配水、
給水から成っている(資料
9-1)。
・日本の上水道の事業の数は、
全国で約 1,928 箇所であ
るが、100 万人以上に供給
する大規模なものは少な
く、そのほとんどが 2 万人
以下を対象とする小規模
な水道である(資料 9-2)。
資料 9-2
24
・平成 22 年度に水道を利用
している人々は全国で 1 億
2,482 万人になり、水道の
普及率は総人口の 97.5%
となっている。
・ただし、総供給量は平成 7
年頃のピークを過ぎて、新
規建設から維持管理、施設
更新の時代に入っている。
・1 人あたりの 1 日の飲料水
は 1~2L、生活用水を含ん
だ水道使用量は 300~
資料 9-3
400L と言われている。国
によっては、100L といっ
た国もある。
・また、日本では水源の半分
程度がダムによるもので
ある(資料 9-3)。
・海外での飲料水の水質には、
WHO 飲料水水質ガイドラ
インをもとにその国で決
められた基準を満たす必
要がある。WHO 水質ガイ
ドラインの体系は図のよ
資料 9-4
うになっている(資料 9-4)。
・我が国の水質管理について
は、取水した段階で、水質
分析(濁度、色度、水温、
pH、電気伝導度、臭気強
度)を行って、水質にあわ
せて処理方法を変更する
などの対応を行っている。
(資料 9-5)
資料 9-5
25
このように我が国では、飲料水、また、生活用水の両方に利用できる上水を優れた水質
管理の方法を用いて供給している。一方、インドネシアでは、生活用水レベルと飲料水レ
ベルとは、要求レベルが異なっており、生活用水レベルを目指すことと、飲料水レベルを
目指すことでは、管理の程度も大きく異なってくる。
講演後、以下の質疑応答が行われた。
・海外に合った小規模で価格を抑える方法はあるかとの問いに対して、コンパクトな膜を
使う。敷地が広いところでは緩速濾過を用いる、など場所によって変わってくるとの回
答があった。
事務局より、1 月の現地再訪問について報告があった。
・1 月に現地を再度訪問してヒアリングした結果、飲料水よりも生活用水について興味を持
っているとのこと。また、水道設備はあっても老朽化しており、そこを通った水は飲め
たものではないため、必然的に飲用水はボトルウォーターが主流となる。
・水供給にあたって配管も必要なのかというと、その部分は地方政府がやる部分で、浄水
のみを企業が受け持つ。
・また、現地の企業の話では、BOP 以外の民生用途(災害(洪水など)時の供給水など)
があり、そちらが優先される場合もあるとのこと。
今後の取り進めについて以下の議論が行われた。
・JICA によれば、申請書作成にあたって、BOP 層の人が料金を払える画が描けること、
BOP 層を直接的に相手にしていること、などの用件を満足する必要があるとのこと。
・申請にあたっては、候補地を限定した上で提案する必要がある。
・たとえば現地でビジネスが始められたとして、いつまでも支援施策を使えるわけではな
い。料金の収集、現地での技術者の工面や、コストの削減等、トータルで見て持続可能
なモデルの検討が必要。
これまで現地のニーズに対応できるようネットワークを構築してきたが、今回インドネ
シアと日本の水道文化の違いを知り、飲み水ではなく生活用水のニーズを確認することと
なった。今後は、得られた情報を元に今一度事業構想全体を見直し、より具体的なシステ
ム構築をしていく必要がある。その後、資金面や人材面における課題へ一つ一つ取り組ん
でいくことが望ましい。
26
10)インドネシアプロジェクトまとめ
【国内外の人的・組織的ネットワークづくり】
このプロジェクトは山口県宇部市を拠点とした研究会とインドネシアのある州との
交流の中で生まれた飲料水開発の芽が出発点である。
この芽を育てるために、インドネシア中央政府から繋がるネットワークを構築してい
くとともに、日本側の協力機関や企業とのネットワーク構築を試みた。
結果として、インドネシア中央政府から繋がる政府系の企業や大学、また、JICA や
JETRO の現地機関とのネットワークができた。
しかしながら、ニーズの現場とは未だ繋がっていないため、現場に近づいていき、し
っかりとした事業の画を描いていく必要がある。
【技術・システムの現地化】
今回のコア技術としたシーズは、濁水を弱い圧力であっという間に透明にでき、さら
にブラシで擦って洗浄できるという強い膜(SP 膜(コア技術の膜))である。
この膜は、その特徴ゆえ応用力が高く、あらゆる現場で対応可能だが、これをどこの
現場でどういったニーズに対応させ、どのようなシステムとして構築していくかがプロ
ジェクト構築のポイントであった。
しかしながら、インドネシアには様々な水に関わる課題があり、さらに当初想定した
飲み水というターゲットも、上水道の配管に問題があるので飲み水よりも生活用水の方
がニーズが大きいという情報もあり、ターゲットの絞り込みができず、システムの構築
にまで至っていない。
ただ、現在、簡易実験装置をインドネシア側にサンプル提供しているが、現地からア
イディアも入ってきており、オープンイノベーションが行われつつある。これによりタ
ーゲットの絞り込みと最適なシステムの構築が図られることを期待したい。
【現地で役立つプロジェクトの構築】
インドネシアには、水に関する課題が多々あり、日本には対応できそうな技術が多々
ある。
今回は、コア技術の展開をモデル的に行ったが、日本の技術が貢献できる余地が大き
いことから、今後、課題としてあげられた現場に足を運び、ニーズの深掘りを行った上
で、現地で役立つプロジェクトを組み上げていくことが望まれる。
27
2.2 ベトナム養殖場水質改善プロジェクト
1)ベトナムという国
正式名称はベトナム社会主義共和国。面積 329,247 ㎢、
人口およそ 8700 万人。平均年齢はおよそ 27 歳で、若い労
働力が豊富な国。一人あたり GDP が 1,400 ドルと、市場規
模は小さいものの、年間経済成長率は 6%を超える。
親日性が高く、日本からの ODA 実績も多いこの国は、今
後海外展開を考えている企業から注目を集める。現に、リ
ーマンショック以降、ベトナムへの投資は増え続けている。
しかしながら、経済発展に伴う人口増や産業活性化に技
術普及が追いつかず、生活排水・産業排水が未処理のまま
自然環境へ垂れ流され、川や湖沼の水質汚染が深刻となっ
ている。
2)プロジェクト概要
今回のプロジェクトは、「水質改善」の技術を中心に、エビやナマズといった水産養殖
業での課題を解決しようとしたものである。
2009 年のベトナムの輸出額を見ると、水産業は縫製品・原油に次ぐ第 3 位であり、水産
業の生産量のうち養殖業は半数を超える(およそ 260 万トン)。水産業は、基幹産業の一
つとなっている。エビやナマズはその中でも特に生産量が多い品目となっている。
しかしながら、東南アジアでの水産養殖には課題が多く、エビ養殖では高密度養殖を続
けた結果、病害が発生していて、ナマズ養殖でも水質・底質悪化で池ごとだめになってし
まうケースも発生している。そうして排出される生物の糞、飼料、化学物質が周辺の水域
に与える影響は大きい。同国の貴重な観光資源であるメコン川やハロン湾の魅力を低下さ
せないためにも、早急に解決すべき課題である。
○コア技術
課題解決のためのコアとなる技術は、ナカシマプ
ロペラ株式会社の密度流拡散装置とした。当装置
により、下記のような効果が得られる。
・密度流により省エネルギーで広域撹拌できる
・池底の貧酸素状態改善
・水質改善による病気発生抑制
海外展開実績はあるものの、養殖場への導入例はなく、実証が必要な段階であった。
28
ベトナムをターゲットとしたのは、何より、平成 23 年度の FS 調査で現地企業との直接
マッチングを実施し、ナカシマプロペラ株式会社の技術について具体的な商談が得られた
ことが決め手となっている。
○平成 23 年度 FS 調査(平成 24 年 2 月)結果
ヒアリング先:IDI(International Development & Investment Coporation)
(Pangasius というナマズの養殖業
兼
加工業)
養殖について
・排水処理量は 1 日 3000m3。1500m3/日×2 ヶ所。
・養殖池は、広さ 200m2~1000m2、深さ 3~5m、
池の数は多数。
・養殖池の水は毎日取り替えているが、水質管理は
PHのみ。
・餌は粒状の水産飼料を与えている。
・池単位で魚が全滅したことがある。
Pangasiusnituite
・1ha あたり年間数百トンの生産性がある。(1kg の成魚になるまで 8 ヶ月要)
課題
・魚の病気、餌の過剰投与による底質悪化。
商談
・水質管理のBOD、COD、SSなどの指標に興味を示し、水質改善技術にも興味を示
した。小さな池でテストしてみたいとの意向あり。しかしながらテストを含めた研究
開発の資金源が課題として残った。
こうした事前の根拠づけもあり、平成 24 年度もベトナム養殖場の水質改善をテーマとし
たプロジェクトを開始した。
29
○研究会の進め方
ベトナム養魚場水質改善プロジェクトについてそれぞれ 5 回の研究会を開催した。
研究会では、毎回、テーマを決めて、テーマにふさわしい有識者による講演を行った。
また、各回でテーマにそった議題を決めて、全体を通して、プロジェクト具現化のステッ
プを踏みながら、「国内外の人的・組織的なネットワークの構築」に努めるととともに、
現地 FS 調査(展示会を含む)において、「技術の現地化」、「現地で役立つプロジェクト
の構築」などの効果的な実施に努めた。
当該分野に詳しいアドバイザーに全回を通して出席していただき、毎回、アドバイスを
いただいた。
アドバイザーについては、瀬戸内海にも研究所を持つ独立行政法人水産総合研究センタ
ーの有識者や、現地進出日系企業の担当者、大学関係の有識者などの候補をあげて検討し、
最終的に養殖に幅広い知見をお持ちの鹿児島大学水産学部養殖分野の副学部長である越塩
俊介先生に依頼した。
また、JICA(独立行政法人国際協力機構)、JETRO(日本貿易振興機構)、中小機構(独
立行政法人中小企業基盤整備機構)などの協力者に参加を願って、意見を伺う機会をつく
った。
なお、開催にあたっては、ターゲット市場の研究、技術連携及び商材の検討、想定する
適用業種との現場での意見交換などの多角的な検討と、各国での実証実験等のプロジェク
ト計画の作成を行い、水ビジネス参入に向けての成功確度の向上、プロジェクトメンバー
の人材育成、メンバー間及び有識者との連携を密にすることができる内容となるように配
慮した。
30
3)第 1 回研究会(2012/7/31(火)
15:30~17:30)
まずはベトナムを含む東南アジアの現状を把握するべく、「東南アジアの水産養殖」と
いうテーマで研究会を開催した。アジア、特にベトナム市場開拓に意欲のある企業にプロ
ジェクト研究会への参加を募り、テーマプレゼンテーションとして、独立行政法人国際農
林水産業研究センター水産領域長の前野幸男先生にお話しいただいた。
○「東南アジアの水産養殖」
東南アジアの中でも世界の漁業・養殖業生産国トップ 10 であるタイを中心にお話しいた
だいた。
タイの漁業・養殖業の総生産量は 309 万トン、
そのうち養殖業は 42%。さらに養殖業のうち、
内水面養殖が 14%、沿岸養殖が 28%。両者と
も海面漁業の生産量には及ばない。(資料 3-1)
ところが、生産額を見ると、沿岸養殖が海面
漁業を上回っている事実がある。この沿岸養殖
で養殖される代表的な魚種は、バナメイエビや
ブラックタイガー、シーバスやハタ類。
資料 3-1
エビはタイの沿岸養殖生産の中でも、半数以
上を占めており(資料 3-2:円グラフ青色部分)、
ここまでのタイの例を見ると、エビ養殖は、他
の漁業や養殖に比べて、単価が高く稼ぐことの
できる魚類と言える。
タイの海産エビ養殖では、2003 年頃を境にブ
ラックタイガーからバナメイエビに転換してい
るが、この原因はエビの病気。
資料 3-2
エビの病気には、ウイルス病の他に、細菌性疾病のビブリオ病、寄生虫病などがあり、
中でもウイルス病は致死率が 80~100%と非常に高く、影響が深刻。
31
中南米産のバナメイエビは、病気に強く成長が早い種類で、
養殖コストはブラックタイガーの半分と言われる。2006
年にはエビ生産の 99%がバナメイエビになったが、やは
り疾病は発生している。
ウイルス病の実態は明らかになっておらず、疾病をゼロ
にすることは困難。
東南アジアのエビ養殖現場では、養殖前に、汚泥排出→
乾燥→石灰処理→塩素処理といった方法で対策がとられ
ている。それでも感染の兆候が見られる場合は、いったん
排水し、無事なエビを取り急ぎ収穫するが、根本的な解決
にはいたっていない。
こうした内容を受け、参加者による質疑応答、意見交換が
発病したエビの様子
出典:タイ水産局
行われた。
エビの病気について
・イエローヘッド、ホワイトスポットなどの病気が知られている。最近では、EMS と
いう病気があるが、原因がまだ明らかになっていない。中国とベトナムにおいて、深
刻化している。
・病気の予防に、水環境の浄化は重要であると考えられる。(海ブドウとの混合養殖
の成功例あり)
技術導入にあたって調査すべき点
・日本とベトナムの養殖方法の違い。
・池の水が解放系か閉鎖系か。
解放系では外部からのウィルスの侵入可能性有り。エビ養殖とは別に水作り用の池
を用意している例も有り。
・ブラックタイガーやバナメイエビといったエビの種類による飼育法の違い。
・天然の親エビ(保菌)か、ハワイ等から購入する親エビ(無菌)かの違い。
今後の検討事項
・コア技術による水の攪拌で得られる水質改善効果およびエネルギー効率の向上につ
いて
・エビ養殖だけでなくナマズ養殖についても要検討。実証実験は 1 年程度実施したい
・コア技術に、フルボ酸鉄やガラス発砲材を合わせた水質浄化の可能性
ベトナムでは、日本とは養殖するエビやナマズの種類も飼育環境も違うので、現地に合
わせて工夫する必要があるという結論に至った。これを受け、第 2 回では養殖技術を中心
に研究会を進めることとした。併せて、日本のクルマエビの養殖方法について調査を実施
し、参考とすることとした。
32
4)現場ヒアリング(国内養殖場訪問)(2012/8/27(月)13:30~15:10)
エビ養殖(クルマエビ)の実際を知るため、日本におけるエビ養殖発祥の地である山口
市秋穂にある旭水産有限会社の車エビ養殖場を訪問した。
○クルマエビの生態
・波が穏やかな内湾や汽水域の砂泥底に生
息している。このため、養殖業は、そう
いった場所に立地する。
・昼間は砂泥の中に浅くもぐって休み、夜
になると海底近くで活動(餌を食べる)
する。食性は雑食性で、昔はあさりを餌
に使っていた。
○養殖の流れ
(池の清掃)
・3 月、養殖により池の底に溜まった厚さ 10~15cm のヘドロを除去し、清掃、整
備、塩素消毒を行う。その後、1 ヶ月半~3 ヶ月天日干しにする。ただし、沖合の池
は潮位の関係で干すことができない。
(養殖~出荷)
・4 月頃に公社が天然親エビから育種した稚エビを購入し、5~6 月頃に池に放流。約 6
ヶ月養殖した後、12 月にお歳暮用「活きエビ」として出荷。
以前は、越冬させ、夏の 6~8 月に出荷することもあったが最近はない。
○養殖管理
(水質管理)
・PH、DO、透明度、プランクトンの種類の確認。
・PH は通常 8~8.5。PH9 以上になるとダメ。
・DO は 5~10mg/L 位で管理。3mg/L 以下になるとダメ。
・透明度でプランクトンの量を把握。
・プランクトンの種類としては珪藻類が好ましい。アオサがはえるとエビが砂に潜れな
くなるためダメ。
(エビの生体管理)
・PAV というウィルス性の病気があり、平成 1 年頃に台湾のブラックタイガーで流行し
た後、平成 5~10 年頃に日本の車エビで流行した。
・ビブリオ病もあり、抗生物質も使ったが、一時的には解消するものの再発してしまう。
これに対しては、協和発酵の抗生物質製剤が入った餌がある。
33
・毎夜、池に潜り、エビの状態を観察するとともに、池からエビを抜き取り、えら、目、
ひげ、からなどの観察により健康状態をチェックする。ちなみに、脱皮は多い時期で
2 週間に 1 回位である。冬場は少ない。
・エビの生存率は稚エビから 80%位。越冬する場合はもっと下がる。
○餌
・昔の餌には赤エビを使っていたこともあったが赤エビがキャリアであることもあり、
現在は使わず、免疫賦活化剤入りのペレットとなっている。
・価格は 4~500 円/kg のものから、900 円/kg
のものまであるが、養殖池の立地条件などで
変えたり、エビの健康状態により変える。メ
インは、900 円/kg を使っている。
・エビの種類により食性が異なり、ブラックタ
イガーは植物性タンパクだが、車エビは動物
性タンパクを必要とする。
・車エビの餌の材料には、フィッシュミール、
イカミールなどを使う。
○池の構造
・水深は一般に 1~1.5m で、下は砂になっている。ブラックタイガー、バナメイは、砂
に潜らないため、下がコンクリートでも飼うことができる。
・パドルを 1 台/1000m2の割合で設置し、常時
動かし、酸素を供給するとともに、ヘドロ
等を池の中心付近に集めている。
・池が透明になるとアオサが増加してしまうた
め、珪藻類を増やすようにしている。珪藻類
は稚エビの餌ともなる。
・パドルは、海外製で 3 年位で交換する。
○コスト
・一番は人件費、次いで餌代、電気代。
・餌代は 10 万円/日といった時もある。大規模業者(生産量年間 100 トン規模)の場合
では、年間 1 億円といったところもある。
34
5)第 2 回研究会(2012/9/4(火)
15:30~17:30)
「養殖技術」というテーマで研究会を開催した。テーマプレゼンテーションとして、養
殖場の水質改善の工学的な観点から、東京大学生産技術研究所海中工学国際研究センター
准教授の北澤大輔先生にお話しいただいた。
○「アジアにおけるエビ養殖技術の現状」
アジアでは、エビ需要と生産量が増大しており、養殖場の水質も大きな問題となってい
る。
アジアにおけるエビ養殖法では伝統的な粗放養殖と生産性の高い集約養殖があり、集約養
殖法では環境問題が起きている。(資料 5-1)
また、集約養殖においては、
除草剤や、抗生物質、栄養剤
などの投与も行われており、
輸出先の国において検出さ
れる問題も起きている。
資料 5-1
エビ養殖場の集約養殖は、池水作りから稚エビ放流、収穫まででおよそ 3~4 ヶ月のスケ
ジュールで行われ、年 2~3 回収穫する。コストとしては人件費・配合飼料・電気代の割合
が高い。(資料 5-2)
資料 5-2
35
水質環境の計測項目や方法
については右のとおり。(資料
3-3)
東南アジアでは学術的な知
識がやや乏しく、水質管理も原
始的な方法しか使っていない
ため、実証実験を行うには、高
いモニタリング能力も必要と
なる。
資料 3-3
環境問題については、飼料の過剰投
与による水質・底質の悪化により池が
5~10 年しかもたず、水田の改造やマ
ングローブ林の伐採が繰り返される
といった課題がある(資料 3-4)。
資料 3-4
なお、環境保全のためには、以下のような点が重要であると考える(資料 3-5)。
・撹拌パドルの運用(資料3-5)
新技術導入等による性能向上、低
価格化、省エネルギー化
・複合養殖の可能性
海ぶどう、ミドリイガイ、アサリ
等との養殖
・排泄物の有効利用
ヘドロの活用(肥料等)による減
量化
資料 3-5
36
このように、エビ養殖池のみでなく、周辺の資源・産業も含めた新たなシステム構築が
有効であると考える。
また、参考として 4)現場ヒアリング結果(エビ養殖の状況、コストなどについて)を比
較検討の材料とした。
参加者による意見交換
・攪拌とともに、マイクロバブルやナノバブルなどとの組み合わせ、抗生物質を産生する
バチルス菌を利用するアイデア、フルボ酸鉄を用いたヘドロ分解、小水力発電の利用、
ヘドロの分析や溶存酸素の測定などの環境分析、リン吸着剤の利用による水質改善など
のアイデアが出た。
・複合養殖については、中国が得意であるとのことであった。ただし、病気については、
ひとたび入ってくると浄化システムと一緒でないと難しい。
・新潟県でエビ養殖を行っている業者の話題も出て、ヘドロの処理を自前で実施している
との紹介があった。
今後の検討事項
・現地に合う方法による水質改善およびヘドロ分解技術
・技術、コスト等に対する現地養殖場のニーズ確認
・現地企業との連携可能性やその手段について
第 1 回研究会、第 2 回研究会の意見交換の結果を加味して、ナマズ、エビ養殖関連機関
の現地視察およびヒアリングを行い、併せてコア技術とその事業計画について現地との連
携可能性を探るべく、第 1 回 FS 調査を行うこととした。
37
6)第 1 回 FS 調査(2012/9/23~26)
メコン川沿いのナマズ、ハロン湾近くのバナメイエビの養殖池を訪問し、養殖池の現地
視察及び状況ヒアリングを行うとともに、当プロジェクトのコア技術である密度流拡散装
置及び水質改善事業計画の紹介を行い、連携の可能性を探ることを目的として実施した。
また、ベトナム政府関係機関や JICA、JETRO のベトナム現地事務所を訪問し、現地の
状況把握を行うとともに、調査後に予定している実証事業等の次のステージに向けた意見
交換を行った。
【訪問結果】
☑JETROホーチミン事務所
水産業はこの国の基幹産業であり、政策的な支援がある。また、日本大使館主導の日越
政策対話の中のテーマに水産を含む農業製品の品質改善があり、そういった機運に恵ま
れている。
しかし、実際に何かをしようとすると、「お金を出してくれ」という話にすぐなってし
まうためODA等の支援策を用意しておいた方がよい。
☑IDI 社
5,000m2の養殖池を 40 個保有。1 つの池で 180t(25 万匹)生産。
6 ヶ月間養殖し、800~900gにして出荷。
エサは食べきる量を 1 日 1 回~2 回与え、
生産効率は 1kgを生産するために 1.5~
6kgのエサを投入している。
水質管理は、3 日毎に 30%の水を抜き、
干満の差によりメコン川から取水後、
CaCO 3 で処理。収穫後も、80%の水を抜
き、30cm程溜まったヘドロを水中ポンプ
で引き抜き、CaCO 3 で処理。
病気は寄生虫や皮出血などがあるが、水
質管理、魚の状態チェック、魚の密度を調整により対応している。
水の入れ替えを頻繁に行っているので、水車等の必要性は低い。
現在、ウナギの養殖に興味がある。
☑ベトナムビンロン省農業・農村開発部国家農業改良普及センター
局の役割としては、この省の農業に関する技術の普及促進。
作物栽培、畜産、林業、水産を所管し、水産の魚種としては、雷魚、ティラピア、エビ、
ザリガニなど。
ウナギも小規模だが稚魚をとって養殖しており、稚魚の生産が課題(生産研究をやって
いたがうまくいっていない)。
水質管理については、水質を見ながら、水の入れ替えを行っており、問題ないと考えて
38
いる。水車やプロペラは使わず、ヘドロもゼオライトを入れてバイオ分解、稲とエビを
複合栽培するなど、できるだけ「自然のような環境」を作って養殖している。
☑個人事業者(ナマズ養殖)
養殖場 5 箇所を所有し、合作(技術協力)で 30 箇所に関与。
池の大きさは、3,000~4,000m2が農民にとって管理し易い。深さは 3~4.5mで、コンク
リートで囲まれた池である。
幼魚池で 3 ヶ月間+成魚池で 3 ヶ月間養殖する。
使用した養殖池は 2 ヶ月間干す。飼料については、以前は沈むタイプであったが、浮く
タイプにほぼ全面的に転換した。
取水しているメコン川の水質については、数年前まではよかったが、最近は上流の養殖
の影響で汚れており、取水後に殺菌処理の必要が生じている。
魚が全て死んだこともある。
川の水を取水した後、バイオ処理剤(ヨウ素殺菌剤、ポリビニルピロリドン 90%、11L
/18 万VND/本)を使用して浄化している。バイオ処理剤(殺菌剤)よりもドロを抜き
出す方が安価であるが、現在の機器では労力がかかる。ゼオライトを使う方法も人気が
ある。
取水する水の水質に問題があるため、そこを改善できない限り、事業継続自体が厳しくな
っていきそう。
☑ベトナム農業農村開発省
農業改良普及センター
ベトナム企業と海外企業の連携を担当。例えば、養殖技術を有するフランスのエサ会社
との連携をコーディネートしたりしている。
対応者は鹿児島大学に 3 年前まで留学(ベトナムから国費又は日本の予算により、官僚
が 100~200 名程度技術取得のため来日)されており、研究会にアドバイザーとして招聘
している先生の教え子である。
その縁で、今回の養殖場訪問をアレンジして頂くとともに、エビ養殖について同行して
頂いた。
ホーチミンは暖かい気候を利用して古くから養殖しているが、ハノイは冬場寒いため、
養殖の歴史が浅く技術集積はない。
農業でケミカルを使う影響により、ウナギの稚魚が少なくなっているため、ウナギの養
殖は難しい状況。
バナメイエビの稚エビは中国から輸入し、3~4 ヶ月養殖し、年 2 回出荷。
ブラックタイガーは 5~6 ヶ月かかる。池は、1.2~1.5mの深さ。
☑BIM Seafood Joint Stock Company
3 つの拠点を持ち、カンボジアにも進出。全社で 2,000 名。
今回訪問したファームは 250haあり、内 120haが養殖(145 人が作業)。
ブラックタイガーからバナメイに 2006 年に転換、400tの生産を 1,400tまで上げた。う
39
ち、20%を日本へ輸出。
キンザンファームは、1,300haあるが、全量を日本へ輸出。
同社のマーケティング部門が日本のスーパーマーケットと直接やりとりを行い、リクエ
ストに応じて出荷している。
2011 年以降、水質の問題が顕在化し、寒暖に関係なく、肝臓や白いフンの病気が発生し
ている。水質を向上させるため、塩素でアルジェ(微細藻類)の数をコントロール、CaCO3
を使った毒性プランクトン対策、50%の水の入れ替えを行っている。
プレゼンの結果、化学物質をできるだけ使わない新たな方法が欲しいというニーズに合
致し、実証実験をしてみたいという話となり、11 月のVIETWATER2012 に出展する際
に、同社幹部に詳細プレゼンすることとなった。
☑TAN AN社(バナメイエビ養殖家族経営)
2000 年に政府が整備した池を活用。2002 年の事業開始以来、バナメイエビのみ。35ha
の養殖池を有す。
2010 年までは水の問題はなかったが、2011 年から水の色が全然異なっており、30cmの
透明度が 15cmになってしまった。
病気も、以前はスポットだけだったが、今はいろいろある。
水質管理は 1 日 1 回pH等簡単なものはチェックし、問題があれば、ハノイの分析センタ
ーでチェックしている。
対策は化学薬品で行っているが川の水や底の泥に問題が生じており、新たな技術を求め
ていたところ。
技術紹介及び協力して新たなシステムを作り上げたい旨説明したところ、「いい装置だ
と思うので、いいビジネスができれば」という回答であった。
11 月のVIETWATER2012 に出展する際に、同社の社長に具体的な説明をすることとな
った。
☑JICAベトナム事務所
水産業は 20 年弱支援しているが、環境面がおざなりになっており、非常にニーズのある
ところである。
観光面への影響もあるため、ベトナム政府や日本の大学から科学技術協力の話がよく出
ている。特にここ 1 年。
ベトナム政府のニーズとしては、化学物質を使わないようにしたい。
BOPビジネスの事業提案をしていただければ行けそうな案件である。
現地の生産体制もしっかりしているので、行政側の政策・方針との整合性や現状もしっ
かり記述してもらえればよい。
FSは、市場の力を利用した経済合理性の証明、日本のオリジナリティ、プレマーケティ
ングとなる。
40
☑JETROハノイ事務所
バブル崩壊が 2011 年に起こった状態にあり、景気が悪く、養殖業も倒産寸前のところが
ある。ビジネスの話も途中までうまくいくが、政府を含め金が出ないことが多く、銀行
さえ払わないので、注意が必要。
なお、ヒアリングを行うにあたり利用したコア企業の技術を中心に想定する技術の俯瞰
図を以下に示す。
産業
排水
C・N・P・K
生活
排水
N2
CO2
稚魚
O2
エサ
稚魚
光
水車
放流
河川水
取水
藻
メコン河
放流水
複合
養殖
プランクトン
攪拌
発生ガス
微生物
養殖
水質
底質 C(炭素)
・N(窒素)・P(リン)
・K(カリウム)
活性化菌
液肥
死骸
バチルス
プロビオ
消化液
フン
残エサ
ヘドロ
水産品
抜出し
液体
発酵
気体
バイオガス
電気
固体
堆肥
図 5 養殖水域における用水事情の想定
訪問結果まとめ
◇プロジェクトに対するニーズ、タイミング
ベトナムについては、特にバナメイエビを養殖しているハロン湾あたりの水質が 2011 年
から悪化している。観光面への影響もあり、対策に向けた動きの真っ只中にあり、まさ
に絶好のタイミングであった。
41
◇ネットワークの構築
ベトナム農業農村開発省のキーマンとの人的ネットワークを構築するなど具体的な連携
に進めていくきっかけとすることができた。また、次のステージとして養殖池での実証
事業を計画しており、現地で連携してくれる候補企業が 2 社見つかったことは大収穫で
あった。第 2 回FS調査時の展示会で企業の幹部等にアピールを行い、実証事業を確実な
ものにしていくこととする。
◇予算確保
実証事業及び現地事業化の検討のため、両プロジェクトともに、JICAの「BOPビジネス
連携促進事業」の活用を目論んでいるが、現地事務所からは事業内容については高評価
を得られたため、あとは、年度末提案に向けたさらなるネットワークの構築と提案書の
作り込みである。
このFS調査結果をふまえ、第 3 回ベトナム研究会は養殖場のシステム改善案について検
討を重ねることとした。また、資金回収や信用保証などの商取引に課題であるが、うまく
いっているケースが少ないと言われる日本企業と現地企業との取引について、研究会で事
例研究を行うとともに、「BOPビジネス連携促進事業」により、マネージメントについて
もしっかり事前検討をする計画とした。
42
7)第 3 回研究会(2012/10/12(金)
15:30~17:30)
「養殖場のシステム改善案の検討」というテーマで研究会を開催した。JICA プロジェク
トで世界各地の養殖場で、現地指導にあたってこられた元株式会社国際水産技術開発の利
田舜史先生に「東南アジアの養殖」と題したプレゼンテーションをいただいた。
○「東南アジアの養殖
ナマズとエビの養殖について」
エビとナマズ(パンガシウス)(それぞれ資料 7-1、-2)。
資料 7-1
資料 7-2
東南アジアでも国によって、養殖の目的(輸出用、国内用、家庭消費用など)により、
生産規模や生産方法などに差がある。
例えば、ベトナムでは、魚が主要な輸出産品となっているため、戦略魚種を定めた少品
種多量生産が拡大している。現在は、パンガシウス(ナマズの一種)といった欧米を中心
に需要のある白身魚の生産が年々増加しており、年間約 140 万トンが海外に輸出されてい
る。また、エビ類の生産量も多く、全体的に少品種大量生産の傾向がみられる。
これに対し、インドネシアは、地域も広く、一日分の家族の食料をその日に買うといっ
た小口買いの文化の影響もあり、国内消費向けの多品種少量生産の事業場が多い。
両国の養殖方法の特徴をまとめると、下表のようになる。
表 ベトナムとインドネシアの養殖の特徴
ベトナム
インドネシア
少品種多量生産
多品種少量生産
一極集中型(メコンデルタ)
分散型(多様性・環境の違い)
商業的生産(輸出対象)
零細的生産(国内消費)
集約養殖(特にパンガシウス) 半粗放養殖(エビを除く)
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養殖形態は、集約的養殖と粗放的養殖、その間をとった半集約的養殖とに分けられる。
集約的養殖であれば生産性が格段に上がるが、飼料・薬剤の過剰な投与により自然環境に
悪影響を与える。一方、粗放的養殖であれば飼料も天然のもので自然環境に悪影響を与え
ないが、生産性が低くなるといった相関がある。この関係を資料 3 にまとめた。
(資料 7-3)。
地域環境と養殖形態
Location and aquaculture typ
Semi Extensive
Far
半集約的
Rich
遠い
ある
Market
Infrastructure
市場との距離
基盤整備
Near
Poor
近い
ない
Extensive
Intensive
粗放的
集約的
Bad
悪い
Good
Environment
良い
自然環境
資料 7-3
養殖システムの全体についての俯瞰図を用いて、養殖業の整理と分類をした(資料 7-4)。
Aquaculture System
養殖システム
Market
Protein
Supply
タンパク生産
Feed habits
Capacity
No Feed
Plankton
feeder
Extensive
プランクトン食魚
粗放的
(Pond)
Semi
Extensive
Omnivorous
Commercial
Feed
雑食魚
半粗放的
Fertilization
無給餌・施肥
Supplemental
Feed
補充餌料
(pond)
商業
Carnivorous
Intensive
肉食魚
集約的
(Tank、cage)
資料 7-4
44
Complete
Feed
完全飼料
水産養殖において要となる水質のための 4 つの要素としては、以下のようなものがある。
1.酸素の生成
2.1 次生産物
3.水の浄化
4.住人
さらに水質管理については、以下の 5 つの項目が重要。
1.窒素循環の管理
2.燐酸循環の管理
3.炭素循環の管理
4.植物プランクトンの管理
5.動物プランクトンの管理
窒素、リン、炭素などを管理することで植物プランクトンを作ることができ、水中に溜
まった腐敗物や餌が分解されてできた窒素を、その植物が使用する。
そうした循環を考えるのが水づくりと言われている。循環させるためにはバクテリアを
利用するが、バクテリアの管理は現地では実施していない。水の色をみて管理しているこ
とが多く、日本の水質管理とは異なっている。
持続性のある環境浄化システムを提案し、協同で水質管理するような協力支援型の提案
が有効であると考える。
参加者の意見交換
・当初は、水深が 4m 程度と深いナマズ養殖でのプロペラの活用を考えていたが、第 1 回
FS 調査結果により、ナマズが肺呼吸であること、浮上性の餌で飼われていることなどか
ら、エビ養殖をターゲットとするように考え方を修正した。
・化学物質の使用に関して、ベトナム政府ではあまり使用したくないことが分かった。こ
れは、魚への悪影響を懸念しているため。輸出先の国ごとに残留基準があり、それが基
準値以下であれば問題がないが、EU や日本で止められた例もある。輸出先やベトナム政
府でも抜き打ちテストを行っており、化学物質の使用に関しては、いまだに使用されて
いるものがある。中でも、世界で一番厳しい Codex という食品の国際規格があり、その
禁止物質はベトナムで禁止されている。
・現地のベトナム政府からの要望が強いほど、JICA の支援が期待される。
・エビ養殖場に技術を導入するならば、目に見える効果が求められるため、実証期間の設
定も重要。バックアップ体制も含め、技術とセットで提案できると良い。
45
今後の検討事項
・ベトナムとのネットワーク作り、シミュレーションによる事前調査。他にもリスクがあ
ると考えられるため、より多くの情報を収集すること。
・技術導入にあたって、第 1 回 FS 調査で得られた現地パートナー候補との連携を深め、実
証実験の土台を固める。
・JICA の BOP ビジネス申請に向け、事業計画を具体化する。
なお、第 3 回研究会時点での事業構想案は下図のとおり。
<特徴>
1KW級緩速撹拌
上下層混合流の水平円盤状吐出
ノンケミカル水質改善技術
稚魚会社
中国社
飼料会社
ナカシマプロペラ社
(共同事業体)
上下層混合撹拌装置(緩速)実績多数
ベトナム北部に工場有り
・水質改善撹拌システム
・稚魚
・飼料
現地
養殖業
ベトナム北部
タイCP社
地域:ベトナム
大学:水産大学校
行政:農業・農村開発省
企業:最大手BIM社
魚種:バナメイエビ
・養殖魚
日系大手小売チェーン等
候補:BIM社
TanAn社
農業養殖社
現地
水産加工業
・水産加工品
食品販売
企業
図 6 ベトナム養殖業水質改善撹拌システム事業構想(概要)
第 2 回 FS 調査では、現地との関係をさらに進展させるべく、まずは実証実験の確実化を
目標として臨むこととした。また、同調査と併せてハノイ市で開催される水処理展示会
『VIETWATER2012』へ出展することで、さらなる商談可能性の発掘を狙うこととした。
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8)第 2 回 FS 調査(2012/11/9~10)および VIETWATER2012 への出展
第 2 回 FS 調査は、実証事業を確実なものにするという狙いのもと、第 1 回 FS 調査で得
られた連携候補となる企業や水産大学校等への事業提案とともに、協力体制の構築を目的
として実施した。
○関係機関への訪問
【訪問結果】
☑産業環境管理協会
ベトナムにおける環境関連のニーズについて、需要があるのは下記の分野。
○家畜の食肉加工に伴う血・脂の処理
○樹脂リサイクル
○染料を扱う工業団地(Pho Noi 工業団地)の排水処理
このほか、風力や太陽光発電についても、山間部や島で需要がある可能性あり。
☑農業農村開発省水産大学校
水産学等を教育しつつ、稚魚生産や、養殖方法
についての研究も行っている。ハロン湾に分校が
あり、試験養殖場を持つ。
エビ養殖場への水質浄化装置の導入は非常に
興味があり、パートナーとして実証事業に携われ
ることがとても嬉しい。ベトナムでの実証が海外
初の成功例となれば良いと考えている。
エビ養殖は毎年 4 月から開始するので、早ければ 4 月から導入しても良い。実証方法
としては、装置設置・未設置 2 つの池を比較検討することを提案する。池は、ハロン湾
地区にある分校の試験養殖場を提供できる。
47
☑IC 有限会社
バナメイエビ養殖場
2002 年設立。本社はハノイで、ハロン湾付近に 100haの養殖池を持つ。池の水深は
2.2~2.4mで、4,000~5,000m2の池を 20~30 個持ち、魚とエビを養殖している。
広大な養殖池を持つが、近隣のセメント工場からの粉じんがエビに悪影響を及ぼすた
め、現在は 7~8 つの池のみでエビを養殖している。エビの肝臓・腎臓の病気はないが、
毒性微細藻による病気がある。
水質浄化装置については、当社にとっては需要がない。現在の水車による撹拌技術や、
水中にエアーを送り込む技術もあるので、深くまで水を撹拌しても、今とさほど変わら
ないと考える。
訪問結果まとめ
◇エビ養殖場の現状
第 1 回 FS 調査で水質浄化装置に興味を示した別の会社を訪問する予定だったが、当日同
社のエビが全滅した関係で訪問に対応できなくなったことから、急遽ヒアリング先を IC 有
限会社に変更した結果となった。この会社については、残念ながら事業提案に興味を示さ
なかった。しかしながら、突然エビが全滅するという事態が起こりうるという事実に触れ、
現状の一端を知ることとなった。
◇実証実験の土台構築
水産短期大学において大変前向きな回答が得られ、実際のエビ養殖池での実証事業を確実
にしたことは、大きな収穫である。水産短期大学はベトナムに 1 校しかなく、学術的な裏
付けが得られる意味も大きい。当方からは、4 月からの導入は難しいが、準備が整い次第、
ともに実証していきたい旨伝えた。
実証事業において良い結果を得られれば、養殖場へのビジネス展開も容易になると考えら
れる。
48
○『VIETWATER2012』への出展
ベトナムのハノイで開催された VIETWATER2012 に研究会参加のコア企業を中心に 2
社の技術を展示し、広くアピールした。
展示会は、11 月 6 日~8 日まで、ハノイ市
VIETNAM EXHIBITION & FAIR CENTER に
て開催された。展示者 260 社のうち、日系企業は
45 社程度で 2 割弱を占めた。JETRO ジャパンブ
ースには 20 社が出展していたが、来客が絶えるこ
とがなく、賑わいを見せていた。
事務局が公表している来場者数は表 1 のとおりで
ある。
表 1
展示会の来場者数
日付
来場者数
11 月 6 日
3,004 人
11 月 7 日
2,410 人
11 月 8 日
1,196 人
合計
6,610 人
○結果まとめ
◇商談結果
来所した企業などのうち、ナカシマプロペラ株式会社に対しては、コンタクトのあった
38 社中の 15 社が、株式会社パイプデザインに対しては、コンタクトのあった 17 社中、8
社との今後のさらなる進展が期待される。また、2 社とも、出展企業同士の交流も見られ、
新たな関係構築という面でも成果が得られた。結論として、展示会出展により、ベトナム
での新たなビジネス展開に向けた手がかりをつかむことができたと言える。
49
◇ベトナムにおけるビジネス
来場者、ブース訪問者を見ると、ほとんどがベトナム人であった。当局ブースに訪れた
人々は、代理販売業、コンサルタント会社、技術開発投資会社、ボイラー等部材製作会社、
下水技術を扱う会社などなど様々で、中には大学教授や学生の姿も見られた。皆共通して、
熱心に質問するなど、新しい技術を学ぼうとする姿勢が見られ、水関連分野におけるベト
ナム市場の活気を感じた。
中でもナカシマプロペラ株式会社の水質浄化技術については、「湖沼や川の汚染が進む
ベトナムでは、今後必要となるだろう」という認識の訪問者が多かった。ベトナム人の水
質浄化への関心が高まっていることがうかがえた。
ベトナムでは英語が一般に普及しておらず、大手企業を除き、ほとんどが通訳なしでは
話せない。今後、ベトナムローカルの企業と商談を進めることになれば、言語への問対応
が避けられないと考えられる。ベトナム語の資料が効果的。
開催国ベトナムの他には、フランス、オーストラリア、EU、オーストリア、韓国、デン
マーク、シンガポール、台湾、中国、マレーシア等世界の各地域から企業が出展した。ベ
トナム企業の技術はそれらと比較すると先進的ではないものの、基本的な技術や部材・資
材の調達には困らない様子であった。
◇今後の流れ
まずは実証事業、その結果を踏まえた現地事業化・装置販売という流れを作ることが重
要。
実証事業にあたっては、装置製造等の費用負担が課題となるが、その点はJICAの「BOP
ビジネス連携促進事業」の活用を引き続き検討する。早ければ年度末の提案となるが、コ
ア企業としては急がず検討を進めたいとして慎重な姿勢を見せている。
ベトナム農業農村開発省としては、今後プロジェクト提案をより具体化すべく、今回訪
問できなかったエビ養殖業者などの民間会社とも連携を深めることで、利益を考慮に入れ
たビジネスとして進めることが肝要と考えている。
引き続き、残り 2 回開催予定の研究会において、資金回収方法やベトナム企業との商取
引事例等について事例研究を重ね、「BOP ビジネス連携促進事業」に向けたプロジェクト
提案全体の構想を仕上げられるよう、検討していくこととした。
50
9)第 4 回研究会(2012/12/13(木)
13:30~15:30)
「ベトナムとの商取引」というテーマで研究会を開催した。プレゼンテーションとして、
20 年以上にわたり、ベトナムとの商取引を行っている株式会社メイプルフーズ代表取締役
社長の戸恒徹司先生にお話しいただいた。
○「ベトナムとの水産物取引について」
【メイプルフーズ社の取引の現状】
ホーチミン市に駐在員事務所を持ち、水産物、水産物加工品、冷凍食品を製造輸入する。
水産物加工品としては、エビフライやナマズ(パンガシウス)切り身の輸入を行ってい
る。
えびフライの輸入を例にあげると、以下の強みがある。
・地の利を生かした現地加工(鮮度の良い原料)
・抗菌性物質、抗生物質等の安全管理体制(自社検査)
・常駐日本人による指導、安全品質管理
・HACCP(食品製造の衛生管理手法)に基づく衛生管理。ISO-22000
・11 年に及ぶ海老フライ製造。豊富な経験と実績、蓄積された高度な技術力
・品質管理部による定期的工場監査及び衛生管理指導、技術指導(資料 9-1)
資料 9-1
51
【ベトナムのエビ生産と販売現況】
1.2011 年の生産と輸出
生産:30 地域で養殖され、全面積 65 万ヘクタール、全生産量
495,657MT。
内訳:ブラックタイガー
62 万ヘクタール、
319,206MT。
ホワイト系
3 万ヘクタール、
176,451MT。
輸出:2011 年
US$2,396,095 千(約 1,989 億円)。
このうち日本向けは、34,141MT で、318.4 億円と約 16%を占める。
2.漁獲
ブラックタイガーで年 2 回、ホワイト系は年 3 回。
3.エビ加工事業者
約 100 社にのぼる。
4.エビの品質に関わる問題点
・稚エビに関して、あまり品質にこだわらないため伝染病の要因となる。
また、ブラックタイガーの稚エビは主に天然物、ホワイト系は輸入物である。
・養殖に必要な医学・科学・生物学的知識が不足している。
・生産量を追っているだけのため、池の管理が不十分で、病気が発生してもすぐに納
品先等に報告しない。また、病気の発生した池の水をそのまま周辺に排水する。
・養殖技術が遅れており、ほとんどが沈降池や予備池を持たず、渇水や高塩分濃度に
よりエビが影響を受けやすい。
・養殖場の潅水システムにより、清潔な水の供給が保証されていない。また、養殖池
に入れる前に土砂を沈降したり、有害な微生物を除く沈降池もない。
5.養殖業者から加工場、輸出業者への物流
餌工場 →中間業者→稚エビ孵化場→養殖業者→仲買人→加工工場→輸入業者
52
【ベトナムのナマズ(パンガシウス)生産と販売現況】
1.生産と輸出
生産:
養殖量 140 万トン(2011 年)
メコンデルタで全体の 75%が養殖されている。
養殖池:2011 年
5,509 ヘクタール。
2012 年 13,000 ヘクタールと、急拡大中。
輸出:2011 年
内日本
EU
18 億ドル(約 1,445 億円)
2.5 億ドル(約 2 億円)(0.14%)
29%、USA 18%、アセアン
6%、その他
43%
2.養殖されているナマズ(パンガシウス)の種類
ナマズは 13 種あるが主として TRA(チャー)と BASA(バサ)が 90%以上。
3.養殖方法
チャーは池、バサはケージ、その他は川の中での囲い網。
4.加工方法
フィーレ、切り身、ステーキ等。
53
【ベトナムとの商取引】
・決済方法
○L/C(信用状)による取引
輸出入に限らずこの方法が安全。
○現金送金
輸出する場合、よほどの信頼が無い限り、後払いはリスクが高い。半分前払いにす
るなどして対策を打った方が良い。
・輸出上の注意点
信用ある相手を選定することはもちろんだが、自己の利益だけでなく共栄共存(Win
-Win)の精神で臨むことが重要である。
また、取引にあたっては必ず契約書を作成することを忘れないようにする。
最後に、経験者のアドバイスをよく聞き、特に法律的な問題については、専門家に相
談することが肝要。
商取引についてはリスク管理が肝要であると判明したものの、商談が具体化する前段階
ということもあり、時期尚早であったためか、意見交換では主に商取引以前の事業計画が
話題の中心となった。
参加者による意見交換
・ベトナムでは、水産養殖業に限らず農業などすべてにおいて「管理者」や「責任者」と
いった意識が無い。
・輸入時に各国で実施される農薬や抗生物質の検査などについては、日本の基準が非常に
厳しく、現地で検出されなくても日本では検出されるケースも多い。農薬の汚染、抗生
物質などが解決されれば、輸入量は増加する。
・水質管理については、工場で管理しているところは比較的意識は高いが、農民の管理し
ているところでは、水質管理の意識は低いと言える。VASEP(ベトナム水産物輸出加工
協会=約 300 社加盟)では管理意識を高めたいと考えているようだ。
・ベトナムでクルマエビを養殖し、高付加価値なエビ生産へと転換する案は、実現が難し
い。クルマエビ養殖はバナメイエビやブラックタイガーと池の構造が違うこと、現地の
管理者の能力が低いこと、などが理由として挙げられる。仮に養殖できても、日本では
あまり買い手がいないため、ターゲットは中国の富裕層となる。
・養殖業者の管理体制にも大きな格差があり、薬品を多量に使用する管理が悪いところも
あれば、遺伝子配列まで調べている大規模なところもある。
54
アドバイザーからのコメント
・JICA に申請する場合、現場の要請が強いと非常に有利なので、そこを大いにアピールす
ること。
・ベトナムの養殖場の管理体制はバラバラなので、将来を見据えた養殖の方向性としてマ
レーシアのデータがあるので、参考にしながら進めることが望ましい。
◇ベトナムでは池を常時使用しているが、収穫したら一定期間を完全にドライ(水も
土も全て掘る)して、休止期間の池をいくつか作り、ローテーションで使用する。
◇水質モニタリングはプランクトンの発生や病気の予防に非常に大事なので、ルーチ
ン的に必ず行う体制を作り、異常時に直ちに対応できるようにしなければならない。
◇養殖をする池と水を作る池を分ける。そこにパドルやポンプなどの動力を導入して
いる。マレーシアの例では、10 個の池に対して 3 個ほど水を作る池を用意し、そこ
の水をモニタリングや殺菌する。そうすると病気などがないとのこと。また、パイ
プの内部にポリエチレンシートを敷き、パイプが傷まないようにしている。
◇エビのステージによって水質を変える。生後 2 ヶ月以内ではグリーンがかった水が
よく、本格的な養殖時には茶色の水にする。エビを育てながらプランクトンの発生
状況により水質を変えると、病気の出ない良い状態になるとの報告がある。
◇ヘドロなどが溜まると、地底には酸素が全くなくなるので、地底をプロペラで攪拌
し酸素を入れ込み、全体的な水の状態を保つ。
◇排水等の環境負荷を考慮したシステムにして、外界への環境負荷をなくす。
◇えさについて、池の中のプランクトンやバクテリアの状況や飼料メーカーの協力を
仰いで、えさの量や質を変える。
このあたりをうまく加味して JICA を説得できるような申請書を作成することが望まし
い。また、一つのゴールとして、地域の人達の生活につながることを織り込む必要がある。
したがって、日本の技術を導入して環境に優しい持続的なエビ養殖をベトナムで発展させ
るアピールができるような書き方が良い。
今後の検討事項
・引き続き、JICA の BOP ビジネス申請に向けて事業計画を具体化していく。
具体的には、各国への輸出基準クリアおよび病気対策というニーズに対して、コア技術
によってどの程度貢献できるのか、実証実験における生物への影響評価の方法について
提案できるようにする。
こうした内容を受けて、第 5 回研究会ではトータルな養殖技術である屋内型循環養殖に
焦点を当て、エビ養殖場の管理方法について最新の情報を得ることで、養殖場のシステム
改善提案について多角的に検討することとした。
55
10)第 5 回研究会(2013/2/8(金)
15:30~17:30)
「エビ養殖の管理」というテーマで研究会を開催した。プレゼンテーションとして、国
内でバナメイエビの陸上養殖を行っている株式会社アイ・エム・ティー代表取締役社長の
三上恒生先生にお話しいただいた。
○「エビ養殖場を事例とした養殖場の環境問題と解決方法について」
養殖は、世界的にみると、1990 年から 2009 年までの 19 年間に生産量、生産額ともに年
率 8%の伸びを示している成長産業である。中でもエビは金額ベースで全体の 13%を占めて
いる。1995 年から 2010 年の 15 年間において、ベトナムは 8 倍の伸びを示している。
また、生産されるエビは、ブラックタイガーからバナメイエビに変わっている。理由は、
「病気に強い」、「成長が早い」、「淡水飼育が容易」、「高密度養殖が可」などによる。
ベトナムの現状はメコンデルタ地域を中心として粗放的養殖が多い。しかし、今後は、
養殖面積の増加に伴い、高密度化養殖に転換していく必要がある。
高密度化に転換する上で幾つかのポイントがある。
◇取水段階で求められる技術
「病原菌の少ない地下水(地下海水)の利用技術」や「殺菌などの水浄化技術」がある。
◇育成段階で求められる技術
「ヘドロ対策」、「酸素の供給」、「植物の複合養殖」、「最適な給餌方法と餌の開発」
などがあげられる。
同社では、
「ヘドロ対策」として、
池の傾斜を利用して、残餌などが一
か所に集まる仕組みを作って、集ま
った残餌をポンプアップして外に
排出するシステムを作っている(資
料 10-1)。丸い池で真ん中に残餌
を集める仕組みもある。
また、「植物の複合養殖」の例と
して、JIRCAS(独立行政法人国際
沈殿物回収装置:脱殻、残餌、
糞等が水に溶け込む前に回収
する
農林水産業研究センター)では、ブ
資料 10-1
ラックタイガーと海ブドウの複合
養殖を研究している。
◇排水段階で求められる技術
「アンモニア、窒素、燐を大量に含
んでいる排水の処理」、「養殖場に
56
よっては、化学物質や抗生物質など
アクアポニックスとは
を含んだ排水であること」などであ
る。
また、マレーシアの事例では、
「沈
アクアポニックス
AQUAPONICS
=
陸 上 養 殖
AQUACULTURE
水 耕 栽 培
HYDROPONICS
+
循環型陸上養殖
殿槽の設置」、「貯留槽での植物浄
水耕栽培
化」、「食用植物での浄化」が推奨
排 水
窒素やリンを含む
されている。
窒素やリンが吸収される
また、養殖場の排水でレタスなど
排 水
養殖水として再利用
の野菜を育てる技術「アクアポニッ
資料 10-2
クス」も世界的には一般化している
1
(資料 10-2)。
今後の養殖として、循環システム
での養殖も必要とされる。循環シス
テムで求められる技術は、「水循環
技術(電気代が少ない技術など)」、
「濾過技術(物理濾過、生物濾過、
⑤循環システムに求められる技術
a) 水循環技術
・ 電気の力で水を循環させると、エネルギーコストがかかって、経済的に養殖業が成
立しない。
・ 前述の酸素供給システムや、リプル(対流)システムなどとの組み合わせで水が循
環できる技術の導入
・ 弊社のエビ生産システムでは、波の力で水を循環させている。
バイオフロック技術など)」、「ク
リーンエネルギー(ソーラーなど)」
などである。
水循環技術としては、波の力で水
を循環させて、電気エネルギーを節
約している(資料 10-3)。
資料 10-3
最後に、屋内型の循環式養殖施設がベトナムに導入される時期も遠くないかもしれない
との話もあった。理由としては、「EMS などの病気の蔓延」、「気候変動、異常気象など
の頻発」、「取水による海水、河川水の汚染」、「養殖場の増加による環境汚染」、「輸
入先進国からのトレイサビリティの要求」などが考えられる。
講演に対する質疑応答
・バナメイエビの性質として、クルマエビのように底に砂を置かなくても飼うことができ
るが、砂や汚泥があると潜る性質もあるとのこと。汚泥に菌がいると全滅することもあ
る。潜るのは、危険から逃げるための行動との話があった。
57
・養殖場の排水を用いた水耕栽培の話に対して、どのような植物が有効かとの問いに対し
て、汽水域と海水域で植物が異なるとのことで、海水の例では、コンブワカメ、海ブド
ウなどのがあるとのこと。
・現地の養殖業者には、環境問題の意識はあるかとの問いに対して、現場では問題意識は
ないとの回答があった。そのため法律で規制されないと環境対策は進まない。
・欧州ではトレーサビリティの高いことが要求されるので、粗放養殖のようなものではな
く、安全性の高いものを求めている。日本でも加工輸出している人の要求があると思う。
・新潟では、屋内の養殖を行っている。温度制御をする必要があり、ゴミ焼却場の計画地
の横に立地した。しかし、計画が進行しておらず、多額のエネルギー費用を負担してい
る。小水力発電や地熱発電などを組み合わせることは重要だと思う。
・国内の施設では、水の循環を行っている。日本では設備がしっかりできていて費用も高
いが、海外の例では、簡単でコストが安いと思う。ただし、不具合も多くランニング費
用が高いといった経験もある。
参加者からの意見
・技術の提案に関し、課題が整理され、可能性と難しさの両面が理解できたので、今後、
実証実験につながるようにしていきたい。
・今後の事業として、油除去、小水力発電、分析、水質監視装置への展開について、意見
がでた。さらに、今回の事業を通じ、ビジネス情報が入手できたとの意見もあった。
今後の予定
・ベトナムの養殖場で発生している課題に関し、引き続きプロジェクトとして具現化させ
ていくためのアクションを行っていくこととなった。
58
11)ベトナムプロジェクトまとめ
【国内外の人的・組織的ネットワークづくり】
平成 23 年度のベトナム現地調査で、「養殖場の水質浄化」というニーズを確認できて以降、
まずはそれに応えられる体制作りが課題であった。
今回のプロジェクトでは、研究会を進める中で、出席していただいた中国地域企業だけで
なく、アドバイザーや、講師の方々ともネットワークを構築することができた。特にアドバ
イザーである越塩先生の持つ人脈から、現地の養殖場や政府関係者の要人とコンタクトを
とることができた。
その結果として、ベトナムにおいても、2 回の FS 調査を通じて、水産養殖を管轄する農業
農村開発省や、ベトナムに 1 校しかない水産大学とコネクションを持つことができ、非常に
大きな成果であった。
【技術・システムの現地化】
「役に立つ技術は欲しいが、あまりに高価なものは要らない」というのが現地のスタンス
であるため、現地の人々が欲しい技術を欲しい値段で用意することが不可欠である。
FS 調査において、実際にナマズの養殖場を見てみたところ、水の入れ替えを頻繁に行って
いることや、ナマズが肺呼吸のため餌を食べに浮いてくることなどから、水車等の必要性が
低いことがわかった。そこでエビ養殖場を見てみると、「農薬や抗生物質等を使わない病気
対策」というニーズが確認できたため、ターゲットをエビ養殖に絞ることで、現地ニーズを
反映することとした。
薬剤等を使用しない水質浄化はまさにコア技術が得意とするところであるが、その効果
を発揮する密度流拡散の水深が 4m 以上必要であるのに対して、エビ養殖場の水深は 1~2m
と浅い。さらに、市場を考えると、装置はベトナムで使われている安価な台湾製パドルと競争
できる仕様にしなければならない。
その点で言えば、コア技術は省エネルギーで稼働するため、ランニングコストの面では十
分競争の余地があるが、まだまだ部材や搬送面でコストダウンの検討が必要であり、水深へ
の対応も新たな課題として浮上した。
加えて、実証データが不足しているため、微生物やエビへの影響も今後調べていく必要が
ある。
【現地で役立つプロジェクトの構築】
ベトナムでは EMS といったエビの病気が増えていることは間違いなく、養殖業全体に関
わる重大な問題である。しかしながら養殖場の現場では「責任」「管理」といった意識が低く、
ヘドロや水質悪化が病気につながるといった認識もない場合が殆どである。こういった部
分の意識改善、人材育成が課題として残っている。
59
養殖場の水質改善によって、エビの生産効率増加・品質向上や、排水浄化による川や海へ
の環境負担軽減の可能性があり、現地への貢献が見込まれる。また、農薬・抗生物質不使用と
いう点は、トレーサビリティの点でも現地にとって有利になる。
ではトレーサビリティを意識しているのはどこかというと、エビを輸入する国々である。
したがって、第 4 回研究会でお話しいただいた株式会社メイプルフーズのようなエビ輸入企
業をプロジェクトの対象として進めることも一つの案である。
また、依然として実証事業の進め方について課題が残る。当プロジェクトでは、JICA の
「BOP ビジネス連携促進事業」の活用を狙って進めてきたが、BOP 層への直接利益(食料や健
康改善等)のある申請が優先されることから、そうした内容を申請に加味しつつ、提案してい
くことが必要となる。たとえば、既存の養殖場の改善ではなく、水耕栽培と一体化したアク
アポニックスのような養殖システム自体の提案とする方法も考えられる。
もしくは、BOP の事業枠でなく、ODA 事業の水産枠を狙うなど方法を模索する方法も考
慮していく。
課題は多いが、ゴールに向かって一つ一つ課題をクリアしていくことが、Win-Win の関係
を築く道のりであると考えられる。
60
3.
まとめ
今回の調査事業では、中国地域の中小企業 2 社の動き(芽)を育て、大きくし、実プロ
ジェクトとしていくことをモデル的に試みた。まさに、プロジェクトメイク(芽育)であ
る。研究会および海外 FS 調査を通じ、「国内外のネットワークの構築」、「ニーズの深掘
り」、「現地化」を試行錯誤しながら進めてきた。
まず、1 つめの「国内外のネットワークの構築」については、国内で情報収集をすると、
本当に現地のことをよくご存じで良好なネットワークを持っておられる方に出会える。こ
ういった方々に協力して頂き、そこから先の海外のネットワークを張っていく手法はかな
り有効であった。
次に、2 つめの「ニーズの深掘り」については、現地 FS 調査のところに養殖池での意見
交換の写真を掲載しているが、そこまで行く道のりはかなりハードであった。しかしなが
ら、そういった困難を経て話を聞くことが、心通わす道のりなのかもしれない。本当のニ
ーズと出会うためにも、是非、現地まで足を運ぶことをお勧めする。
最後の 3 つめの「現地化」については、今回、インドネシアでは FS 調査の写真にある実
験装置でまさに目の前で濁水が浄化される様子を見てもらうことは、何よりも相手の理解
を促進し、心を捉える力があった。さらに、その実験装置をサンプルとして提供したとこ
ろ、様々な反応が聞かれ、現地の方の意見や知恵を取り入れる方法としてかなり有効であ
った。
ベトナムでは VIETWATER2012 の日本ブースの一角で出展したが、ジャパンブランド
ということで反応もよく、現地の意見をいろいろと聞くことができる大変よい機会であっ
た。
さらに、この両国では IT も発達していることから、IT を活用した映像情報プロモーショ
ンによる技術融合にも可能性が感じられた。
インドネシア簡易上水開発プロジェクトもベトナム養殖場水質浄化プロジェクトも、ま
さに緒に就いたばかりの状態である。プロジェクトからビジネスへと具現化させていくた
めには、以上述べた 3 点を意識して進化させていく必要がある。
そのためには、事業に関わる人すべてが前向きな気持ちで取り組める、そういった事業
として、さらに育てていくことが重要なことかもしれない。
61
62
補足資料
調査実施にあたっての補足事項
調査実施にあたっての補足事項を以下に記載した。
(1)プロジェクトの企画立案
本調査で実施したインドネシアプロジェクトおよびベトナムプロジェクトの企画立案に
際して、ヒアリングを実施した企業や研究機関のリストを以下に示した。
表 2
インドネシアプロジェクト
企業名
水道機工株式会社
株式会社日本トリム
フマキラー株式会社
表 3
現地への進出状況
ヒアリング内容
JICABOP プロジェクトの現
BOP プロジェクトの取り進
地での調査事業実施
めについてヒアリング
現地での飲料水ボトルビジ
現地ボトルビジネスの現状
ネス
についてヒアリング
蚊取り線香の現地での販売
現地消費者層の様子や販路
拡大策についてヒアリング
ベトナムプロジェクト
企業名・大学研究機関名
現地への進出状況
水産総合研究センター
エビ、カニなどの疾病の研究
瀬戸内海水産研究所
(東南アジア地域を含む)
鹿児島大学
養殖分野の研究、現地留学生
水産学部養殖分野
の受け入れと教育
株式会社国際水産技術開発
株式会社メイプルフーズ
株式会社前川製作所
ヒアリング内容
プロジェクト取り進めにあ
たっての専門知識のヒアリ
ング
プロジェクト取り進めにあ
たっての専門知識のヒアリ
ング
JICA 事業における現地での
JICA 支援事業の状況などヒ
養殖指導を多数実施
アリング
現地から海老フライ、ナマズ
現地との商取引などについ
フィレの輸入と国内販売
てヒアリング
ベトナム養魚加工業者への
現地との商取引などについ
冷凍装置の輸出販売
てヒアリング
(2)各プロジェクトのチームメンバー募集
チームメンバーの募集に関しては、平成 23 年度中国経済産業局作成のシーズ事例集掲載
企業を中心に水ビジネス関連企業 50 社にメールで募集を行った。募集内容は、 インドネ
63
シアプロジェクト参加、 ベトナムプロジェクト参加、 ベトナム展示会参加で、募集期間
は、7 月 10 日に発信して、締め切りを 7 月 19 日とした。以下には、参加希望の回答のあ
った企業数を示した。
表 4
研究会参加企業数
プロジェク
インドネシア
ベトナム
ベトナム
ト
プロジェクト
プロジェクト
展示会出展
8社
11 社、1 大学
3社
参加企業数
協力機関としては、JICA(独立行政法人国際協力機構)、JETRO(日本貿易振興機構)、
中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)に協力を依頼して、研究会に参加してい
ただいた。協力機関への依頼内容は以下のとおりである。
表 5
協力機関と協力依頼内容
協力機関
依頼内容
独立行政法人国際協力機構
JICA が実施している BOP ビジネス、FS 調査などの情
(JICA)中国国際センター
報提供と活用方法についてのアドバイス
独立行政法人中小企業基盤整備
中小企業の海外展開支援策の情報提供と活用方法につ
機構(中小機構)中国本部
いてのアドバイス
日本貿易振興機構(JETRO)広
島貿易情報センター
日系企業の海外展開状況の情報提供
64
各研究会での有識者講演資料
インドネシアプロジェクト
第1回研究会講演資料
第 2 回研究会講演資料
第 3 回研究会講演資料
第 4 回研究会講演資料
第 5 回研究会講演資料
ベトナムプロジェクト
第1回研究会講演資料
第 2 回研究会講演資料
第 3 回研究会講演資料
第 4 回研究会講演資料
第 5 回研究会講演資料
65
インドネシアプロジェクト
第1回研究会講演資料
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
84
85
86
87
第2回研究会講演資料
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
第3回研究会講演資料
99
100
101
102
103
104
105
106
107
108
109
110
111
112
113
114
第4回研究会講演資料
115
116
117
118
第5回研究会講演資料
119
120
121
122
123
124
125
126
127
128
129
130
131
132
ベトナムプロジェクト
第1回研究会講演資料
133
134
135
136
137
138
139
140
141
142
143
144
145
146
147
148
149
150
151
152
第2回研究会講演資料
153
154
155
156
157
158
159
160
161
162
163
第3回研究会講演資料
164
165
166
167
168
169
170
171
172
173
174
175
176
177
178
179
180
181
182
183
184
第4回研究会講演資料
185
186
187
188
189
190
191
192
193
194
第5回研究会講演資料
195
196
197
198
199
200
201
202
203
204
205
206
207
208
平成 24 年度中小企業等産業公害防止対策調査
ベトナム及びインドネシアにおける水ニッチビジネス展開に向けた
プロジェクト具現化モデル調査報告書
平成 25 年 2 月
発
行:中国経済産業局
〒730-8531 広島市中区上八丁堀 6 番 30 号
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