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別紙様式第2号 学位論文及び審査結果の要旨 横浜国立大学 氏 名

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別紙様式第2号 学位論文及び審査結果の要旨 横浜国立大学 氏 名
別紙様式第2号
学位論文及び審査結果の要旨
横浜国立大学
氏
学 位
学 位
学 位 授
学 位 授
名
類
号
日
拠
ビレム・スカロレック(Vilem Skarolek)
の 種
博士(工学)
記 番
環情博甲第 377 号
与 年 月
平成28年3月24日
与 の 根
学位規則(昭和 28 年 4 月 1 日文部省令第 9 号)第4条第1項及び
横浜国立大学学位規則第5条第1項
学 府 ・専 攻 名
環境情報学府 環境システム学専攻
学 位 論 文 題 目
Implicit large-eddy simulations of low-Reynolds-number transit
ional flows using a high-order flux reconstruction approach
(高次精度流束再構築法を用いた低レイノルズ数遷移流れの陰的ラー
ジ・エディ・シミュレーションに関する研究)
論 文 審 査 委 員
主査
横浜国立大学 教授
上野誠也
横浜国立大学 教授
山田貴博
横浜国立大学 准教授 白崎 実
横浜国立大学 准教授 村井基彦
横浜国立大学 准教授 樋口丈浩
横浜国立大学 准教授 宮路幸二
論文及び審査結果の要旨
大型航空機や船舶まわりのレイノルズ数(Re)107 以上の流れに比して「低レイノルズ数」
流れの工学的利用機会の増大とともに、その流れの理解と解析の重要性が増している。それら
の例として、小型風車、小型無人航空機(UAV)、高高度自律飛行観測航空機などがある。低
迎角から中程度の迎角の翼の流れでは、前縁付近で層流境界層が剥離し、剥離せん断層内で乱
流へと遷移した後、翼表面に再付着する。表面圧力はポテンシャル流と大きく異なり、一般に
翼の性能は低下する。
本研究は、このような複雑な層流/乱流遷移流れを、高精度な数値流体力学(CFD)を用い
て予測し、翼迎角による現象の差異を明らかにすることを目的とする。複雑形状に対する適合
性の高い非構造格子法 CFD に用いられる新たな高次精度解法として、流束再構築(FR)法の
CFD プログラムを開発、解析実行し、計算結果の定量的な検討により、手法の有効性を検証し
た。
学位論文の第一章では、本研究の背景と意義が述べられている。低レイノルズ数流れの特徴
とその数値解析の難しさ、解析に求められる条件を解説し、本研究で用いた手法の必要性を説
明している。また、解析手法の新規性について説明し、近年著しく発展しつつある高次精度非
構造格子 CFD の分野における本研究の位置付けが述べられている。
第二章では更に、翼まわりの流れに限定して、注目すべき流れの特徴を解説している。翼の
前縁付近に生じる閉じた循環領域「層流剥離泡 (LSB)」をキーワードとして、同問題の研究の
先駆者である Gaster らの実験による研究結果を要約している。低迎角において発生する long
LSB、中程度の迎角で発生する short LSB と、翼の失速現象の関係を述べている。また、既存
の高次精度 CFD 研究の文献調査結果を報告するとともに、複雑な遷移流れの解析にはラージ・
エディ・シミュレーション(LES)が必要であり、そのために要求される計算自由度の規模と
計算精度次数を見積り、本研究で FR 法を用いることの妥当性と意義を述べている。
第三章では、FR 法の定式化と、実際のプログラム開発における工夫と注意点を詳述してい
る。同法は、不連続ガラーキン(DG)法に代表される高次精度 CFD 解法の一つで、更に DG
法等を包含する、より一般的な定式化が可能な手法として、Huynh により提案された新たな解
法である。複雑な実用問題へ適用するために、物理空間から計算空間の標準要素における基礎
式(Navier-Stokes 方程式)の変換、FR 法における座標変換メトリックの評価法、更に、非定
常問題において高い時間精度と計算効率の両立を図るための陰的時間積分法について、説明し
ている。
第四章と第五章で、計算結果と考察を示している。まず第四章では、低レイノルズ数遷移流
れ解析の検証問題として広く用いられている、テイラー・グリーン渦問題を扱い、解析手法の
有効性を示した。同問題は、周期境界条件を適用した立方体内で、大規模渦を模した初期条件
を与えた後、流体の非線形性によって大規模渦から多数の小規模な渦へとエネルギー・カスケ
ードが生じる様子を、時間発展により捉えるものである。Re=1,600 の条件では、構造格子スペ
クトル法の格子収束解が得られており、この解と比較することで検証を行った。本研究では、
FR 法による空間最大六次精度、計算最大自由度 2563 の計算まで行った。計算結果より、乱流
運動エネルギーとその散逸率の時間履歴を適切に再現し、スペクトル法との一致も良好であっ
た。また、様々な計算精度と計算自由度の比較を行い、高次精度の結果は、より自由度数の多
い低次精度よりも、計算精度、計算時間ともに優れることを示した。
第五章では、本論文の主題である、翼まわり遷移流れの解析結果と考察を示している。過去
の研究において、風洞、及び水槽を用いた実験結果、また DG 法等を用いた CFD 解析結果が示
されている、SD7003 翼型まわり Re=60,000 の流れを扱った。計算格子に対する空間高周波成
分の、FR 法の減衰特性を活かして、特別な数値粘性やフィルターを用いることなく、陰的ラー
ジ・エディ・シミュレーション(ILES)計算を主に行った。併せて、陽的なサブグリッド・ス
ケール・モデルの1つである WALE モデルを用いた LES 計算も行い、結果を比較している。
迎角 4°、8°の計算を行い、剥離泡サイズ、剥離泡内の流れ構造、及び遷移位置の差異を議論し
た。翼表面圧力分布、摩擦係数分布の時間平均解に加えて、非定常計算結果から乱流統計量と
圧力変動のパワースペクトルを算出し、いずれも参照データと定量的な一致を示した。また、
過去の CFD 解析の 1/5 程度の計算自由度によっても同等の解が得られることを示した。
第六章では、各章の成果をまとめて本論文の結論を述べると共に、今後、開発した手法の適
用が期待される問題の提案を行っている。
以上より、本学位論文は、複雑な流れの解析における数値計算の信頼性を大きく高め、特に
航空宇宙工学等における有翼機器の設計への応用に果たす役割は大きい。以上より、博士(工
学)の学位論文として、合格(A)と認められる。
注
論文及び審査結果の要旨欄に不足が生じる場合には、同欄の様式に準じ裏面又は別紙によること。
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