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新しいケミカルヒー トポンプの提案

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新しいケミカルヒー トポンプの提案
3
8巻 1
0号 (
1
9
8
6.
1
0
)
研
究
解
生
産
研
究
4
5
9
UDC 6
21.
5
7
7:6
6
2.
9
9
5
説
(公 開 慕 演 )
新 しいケ ミカル ヒー トポンプの提案
Pr
o
po
s
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lofA Ne
w Che
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c
alHe
a
tPu
mp
斉
藤
泰
和*
Yas
ukazu S
AI
TO
有機化学触媒反応を利用 した,低品位熟を昇温故質する新 しいケ ミカルヒー トポンプを提
案 している。アセ トンの水素化発熱反応は 20OD
cで進み,その生成物である2
-プロパノー
ルを 3
0
℃冷却で凝縮分離すれば,
逆反応の液相脱水素吸熱反応を定常的に 8
0
℃で進行させ
うることに着目したシステムである,熱効率の高さと操作性の良さに特徴があり,優れた
触媒の開発が鍵 となる.地熱排熱水の蒸発熱供給を例に,経済性調査が行われた.
1. は
じ め
に
わが国で消費 され る絵エネルギーのお よそ半分 は,莱
ロバ ノールに水素化 され る。 その反応は化学平衡 の制約
か ら高温ほ ど不利 になるけれ ども, 1気圧 で定圧平衡定
利用の まま排 出 されている といわれ る1
)
.なかで も 1
00o
C
o
C である.したがって,200
o
数 Kpが 1となる温度 は 202
以下の熟 は利用の仕方が限 られているため, その多 くは
C で もアセ トン と水素 は平衡組成 とな るまで 2-プ ロパ
無駄 に捨 て られて しまう. なん とか昇温 して再利用で き
ノールに変化 し, その温度で反応熱 を出す。
ないか と考 えるのは,筆者ばか りではない と思 う. ヒー
トポンプには,強い社会 的要請がある.
一般 に ヒー トポンプ とい うと,電力 を使 って昇温す る
一方,液体 の 2-プ ロパ ノールは触媒 をうま く選ぶ と,
還流加熱条件で速やかにアセ トンと水素 に変化す る.水
素の液相溶解量は極めて小 さいので,液相 で生成 した水
圧縮式 ヒー トポンプ を思 い浮かべ るであろう。あるいは,
素 は 自発的に気相へ排出され る. しか も沸点はアセ トン
機械 エネル ギー を介在 させ ないで熱エネルギー改質 ので
(
56.
3o
C)が 2一プ ロパ ノール (
82.
4o
C)よ りは るかに低 い
きる,吸収式 ヒー トポンプの こ とを考 える人 もあろ う.
ため,反応生成物であるアセ トンは 2-プ ロパ ノール よ り
いずれ にせ よ,1
00o
C 以下の熟 を 1
50-200o
C にまで昇温
除去 されやすい。 したがって,蒸溜分離操作 と組み合 わ
で きることが重要である.加熱 ・乾燥用 など,現在,社
せれば,外部か ら反応熱 と蒸発熱 を供給す る限 り,液相
会 的需要 の 多い再 利用温度 は この辺 りにあ るか らで あ
脱水素反応 を永続的に進行 させ ることがで きる。ただ し
る2).しか し,何 らかの技術的ブ レー ク・
スルー な しには,
その温度 は,2
-プ ロパ ノール ・アセ トン混合 溶液が沸 と
在来の ヒー トポンプでは, その実現は困難であるよ うに
うす る程度で よ く,た とえば 80
o
C なら十分 である.
アセ トン気相′
水素化 反応 で生成 した 2
プ ロパ ノール
見 える。
物質 の化学変化 に伴 う熟の出入 りを利用 して温度 を高
と,液相脱水素反応 の進行 中に蒸発 して くる 2
-プ ロパ
め るのがケ ミカル ヒー トポンプである.筆者 は,触媒 を
ノールは,冷却 して凝縮 させればアセ トンとの混合 気体
用い有機化合物 を作動物質 とす る,新 しいケ ミカル ヒー
か らの分鮭が可能である。 それには冷却源が必要で, た
トポンプ を提案 している。30
o
Cの冷却源 を用いて,80℃
とえば 30
o
Cの冷却であれば よい。
の低 品位熟か ら 200
c
cの昇温熱 をつ くり出す システムで
ある。
外部か ら仕事 を与 えては じめて, ヒー トポンプは作動
す る。通常の ヒー トポンプ は,作動気体 の加圧過程 で仕
2. 2
1プロパ ノール/アセ トン/水素系ケ ミカル
ヒー トポ ンプの動作原理
このケ ミカル ヒー トポンプでは,アセ トンの水素化熟
が利用 され る。
事 が与 えられ る, いわゆ る圧縮仕事方式である. このケ
ミカル ヒー トポンプは,極めて特異的なこ となが ら,分
離仕事 を賦与す ることによって駆動す る.2
プ ロパ ノー
ル ・アセ トン気相混合物か ら液相へ 2-プ ロパ ノール を凝
縮分離 し, また,液相反応殊質か ら生成物の水素 を排出
気体 のアセ トンは触媒 を うま く選ぶ と,速やかに 2
-プ
分離 しているため に,低温で液相吸熱,高温で気相発熱
の正逆反応対が定常的に進行す るのである.冷却除熟過
*
東京大学生産技術研究所
第 4部
程 は,気相混合作動物質のエ ン トロピー を下 げ, ギプス
1
38巻 10号 (198610)
460
生
自由エ ネル ギー を引 き上げ るために必要 とされ る.空 冷
温度 でそれ を達成す るとい う点 も,本 ケ ミカル ヒー トポ
ンプの特徴 である.
表 1に , ここで用 い られ る化学過程のエ ンタル ピー変
化 をま とめ た。 ヒー トポ ンプサ イクルは,脱 水素反応熱
Cで 吸収 し,水素化反応熱 を 200°
とアセ トン蒸発熱 を 80°
Cで 回収 し,2プ ロパ ノー ル凝縮熱 を 30°
C で 放 出す る と
い う熱 の 出入 りで構成 されて い る。
なお表 2に ,在 来技術 を代表す る第 2種 吸収式 ヒー ト
ポ ンプ,お よび水素吸蔵合金 とい う新素材 を背景 に提案
された金属水素化物 ケ ミカル ヒー トポンプ と対比 して,
表 1
産
研
究
2 プ ロパ ノール/ アセ トン/ 水素系 ケ ミカル
ヒー トポンプにおけるエンタル ピー変化
2 プ ロパ ノー ル ア セ トン 水 素
(CH3)2CHOH→
(CH3)2CO tt H2
[液相 ]
[気相 ] [気
∠H=100 4kJ mol]
相]
ア セ トン 水 素 2-プ ロノヾノー ル
(CH3)2CO+H2→
[気相 ] [気
(CH3)2CHOH
相]
H=-550k」
∠
mol l
相]
[気
21プ ロパ ノー ル 2-プ ロパ ノ ール
(CH3)2CHOH→
(CH3)2CHOH
[ 気相 ]
[液
H=-45 4 kJ moll
∠
相]
本 ケ ミカル ヒー トポ ンプの特質 をまとめた。
表 2 吸 収式 ヒー トポンプ と金属水素化物系および有機化合物系ケ ミカル ヒー トポンプの比較
吸収 式 (LiBr水 溶液 系 )
金属 水素化 物 系
有 機化 合 物 系
圧縮仕事
圧縮仕事
分離仕事
水素
金属水素化物
水素
有機化合物
ヒ ー トポ ンプ の駆 動 力
作
動
物
質
水蒸気
L i B r 水溶液
状
態
変
化
液相/ 気 相
固相/ 気 相
液オロ/気 相
なし
水素吸収, 放 出 ( 2 組 )
水素化,脱 水素 (1組 )
水素発生 (lヵ 所)
化 学 :変 化 ( 反応 対 )
熱
加 熱過程 ( 中温)
移
冷却過程 ( 低温)
水蒸気発生 ( 2 ヵ 所)
水蒸気凝縮
水素発生 ( 2 ヵ 所)
水素吸収
動
発 熱過程 ( 高温)
濃縮溶液の水蒸気吸収
水素吸収
シ ス テ ム 上 の 特 質
濃厚溶液 と純水の補給
熱による水素の加圧
液相水素 の気相放出
用
触媒 の不」
質
連続式
サイクリック
連続式
能
なし
あり
あり
操 作
蓄
上
熱
の 特
機
有機化合物分離
水素化反応
TH(
3 . 2 - プ ロパ ノール/ アセ トン/ 水素系ケ ミカル
ヒー トポ ンプの熱効率 とシステム構成
一般 に, 低 品位 熱 O L を 温度 ■ で供給 し, そ の一 部
O c を 温度 ■ で冷却 除熱 しつつ, 残 りを昇温熱 O H と し
て温度 l Ъで回収す るヒー トポ ンプ に対 しては, 熱 効率
η= O H / O L は , 熱 量保 存 ( 熱力学 第一 法則) , エ ン トロ
ピー保存 ( 熱力学第二 法則) の条件下で, 次 式に示す η
max
つ値 が許 される。
までι
OL=OH+OC
OL/■ =OH/THtt Oc/■
max=OH/OL=(1 ■
η
(1)
(2)
/■ )/(1-■ /■ )(3)
C と し,冷却温度 ■
低 品位 熱 の温 度 ■ を 60,80,100°
Cと した場合 の,最 大熱効率 η
maxと昇温熱温度 TH
を 30°
との関係 を(3)式 か ら描 くと,図 1の ようになる.rLを
TH κ
Cに 選ぶ と,ηmaxは 039と 求あ られ る。
C,η Hを 200°
80°
低! 1『位熱i l 度. T L : 6 0 , 8 0 お よび1 0 0 ℃
除熱, 金
却温度 r c i 3 0 ℃
Cに 昇温す るには,ど
す なわち,80°Cの 低 品位熱 を 200°
うして も 6割 強の熱 を捨 てなければならない。 しか し,
無駄に捨 てて い る低 品位 熱 を有効利用で きるな ら,低 コ
ス トで分離仕事 を賦与で きるか ぎ り,そ の意義 は大 きい
ヽ
ミきであろ う.
とい う′
2
高温回収温度 T I : : 横 軸 1 1 4 0 ∼
2 4 0 ℃,
: 縦 菊t , 0 0 - 1 0 ,
η" . ズ
最大熱効率
図 1
冷却 除熱操 作 に よって低 品位 熱 を昇 温 す る ヒー ト
ポ ンプ の最 大熱効 率
生
38巻 10号 (19861111
功
:
D
E
研
究
THI℃
人
蹴
苺避〓 ¥
罠IBIニ T E J
rc放
産
170
190
r
D聾
RIl:気 相 発熱 反応器
器
RI:液 相 吸 熱 反 ,き
D : 蒸 溜塔
器
E : 熱 交 l・
・
T I I : 高 1 1 回収 温 度
TL:低 品位熱温度
T c : 除 熱 : 令却 温 度
図 2
2 プ ロパ ノール/ アセ トン/ 水素系 ケ ミカル ヒー ト
ポンプのフロー シー ト
450
このケ ミカル ヒー トポ ンプの基本 システムは,図 2に
470
TlilK
示す よ うに,気 相発熱反応器 RH,液 相吸熱反応器 RL,蒸
溜塔 D,熱 交換器 Eか ら構成 され,液 相 反応器 は蒸溜塔
の リボイラー を兼用す る。
蒸溜塔 の塔頂か ら熱交換器 を経て気相発熱反応器 に送
られ る混合気体 は,主 にアセ トン と水素 か らなる.蒸 溜
ー
塔 の操作条件 で,ご く少量 の 2プ ロパ ノ ル混入量が決
まる.反 応器内の 触媒 の働 きによ り,平 衡組成 が達成 さ
ー
れ るまでア セ トン と水素 は 2プ ロパ ノ ル に変化 す る
ので,そ の反応温度で発生す る水素化反応熱は回収 し,
再利用す るこ とがで きる.
気相発熱反応器 を出た平衡混合気体 は,熱 交換器 で反
応気体 を予熱 した あ と蒸溜塔 へ 移 る。 そ こで 2プ ロパ
ノー ルは凝縮 し, リボイラー を兼ね る液相吸熱反応器 に
入 って くる.
液相吸熱反応器 では,2プ
ロパ ノー ル は触媒 の働 きに
よ リアセ トン と水素 に変化す る.そ こは蒸溜塔 の リボイ
ラー で もあるので,2プ ロパ ノー ル ・アセ トン混合溶液
は沸 とうしてお り,塔 底混合気体 との間に気液平衡が成
立 して い る。水素 は溶解平衡 にあ り, その平衡溶解量は
極め て小 さい。 この よ うに して液相吸熱反応器 では,反
応熱 と蒸発熱 の供給 を受 けつつ,送 りこまれた分の 2プ
ロパ ノー ル をア セ トン と水素 に戻 す役 割 を果 た して い
る。
設定 温 度 : 供 給 熱 ( r 1 8 0 ℃ ) , 冷 却 ( T c 3 0 ℃ ) , 本 溜塔 塔 底 ( 7 8 ℃)
気 相 組 成 ( 発熱 反 応 器 入 口 ) : 水 素 / ア セ トン比 5 0
バ ラ メー タ χD : 凝 辛
1 性 成 分 中 の ア セ トン モ ル 分 率
ー
図 3 2プ ロパ ノール/アセ トン/水素系ケ ミカルヒ ト
ポンプの熱効率およびエ クセルギー効率
比 を与 える と,塔 頂か ら熱交換器へ 送 られ る気相混合物
一
の 2プ ロパ ノール/ア セ トン比が一義的 に決 まる。 方,
水素/ア セ トン比は任意に選 ぶ こ とがで き,水素比 を大 き
くとると,液 相脱水素反応 にはほ とん ど影響がない けれ
ども,平 衡上気相水素化反 応のほ うは有利 になる。
C,冷 却温
C,蒸 溜塔塔底温度 を 78°
供給熱源 温度 を 80°
Cと し,全圧 1気 圧 ,水素/ア セ トン比 50の 気相
度 を 30°
混合物 が発熱反応器 に入 る として,蒸 溜塔 内での 2プ ロ
パ ノールお よびアセ トンの気液平衡 と発熱反応器での反
応平衡 の達成 を前提 に,図 2の システムの熱効率が求め
られ た。高温回収熱量対低温供給熱量の比で与 えられ る
熱効率 と,定 常的に維持 され る発熱反応器 の温度 との関
ー ー
係を図 3に 示す。図中のパ ラ メ タ には,蒸 溜塔塔頂
アセ ト
か ら気相発熱反応 器 に送 られ る気相 混合物 の 〔
アセ トン〕)モ ル比 ゎ をとっ
ン〕/{〔2プ ロパ ノー ル〕十 〔
反 応器 の 2プ
供給 され る低 品位 熱 の温度 と液相 17x熱
ロパ ノー ル ・アセ トン組成 に応 して,蒸 溜塔塔底 の気相
てある.
組成,温 度,圧 力 が決 まる。 さらに蒸溜塔 の段数 と還流
Cで 回収す るとき
す る場合 には,図 3か ら,昇温熱 を 200°
アセ トン 98%,2プ
ロパ ノー ル 2%の 混合物 を水素化
462
38巻
10号 (198610)
最 も熱効率 が高 く,036に
生
産
研
究
達す るこ とがわか る。式 (3)
に示 された最大熱効率 の約 9割 にあたる値 で ある。
なお,高 温回収熱量 と低温供給熱量 の比で与 えられ る
熱効率 ηH=OH/OLに 加 えて,30°C(■ )を基準 に,次 の
よ うなエ クセルギー効率 を定義 し,図 3に あわせ示 した。
ηε=OH(1-■
/■ )/oL(1 ■ /■ )
(4)
図 3に み るよ うな高 い熱効率 あるいはエ クセルギー効
率 の値 は,化 学変化や状態変化で作動す る とい う,ケ ミ
カル ヒー トポ ンプの有利 な特質 に由来す る。ただ し,こ
れ らの評価 にあたって熱 リー クや作動物 質 の搬送動力は
無視 されてお り, さ らに,本 ヒー トポ ンプの 目的に適 う
触媒のあるこ とを前提 として い る。すなわち,高 度 に選
択的であ り,吸 熱側では熱移動 に匹敵す るほ どに反応速
度 が大 き く,十 分 に長寿命 で,扱 いやす く, しか も安価
な触媒が必要である。
4.金
属 ニ ッケル超微粒子の触媒作用
匈
ガス中蒸発法 で調製 され る超微粒子 は,触 媒材料 と
い う観′
点に立つ と,次 の よ うな興味深 い性質 を持 って い
41.
る
(1)比
較的 よ くそろった数 nm∼ 数 十 nmの 粒径 をも
図 4 2プ
ロパ ノー ル 液 相 脱 水 素 反 応 に使 われ るガ ス 中蒸 発
法調 製金属 ニ ッケル超微 粒 子 の 電 顕像
表 3 2 - プ ロパ ノー ル 液相 脱水 素 触媒 の活性 比較
触
媒
活性/mmOlh lg l
金属 ニ ッケ ル 超微粒 子
136
286
避 け られ るうえ,比 表面積が大 きく, し たが って触媒重
金属 ニ ッケ ル 超微 粒 子 (白金 つ き)
ホ ウ化 ニ ッケル粉 末
ラネ ー ・ニ ッケ ル
量 当た りの反応速度が大 き く, しか も濃厚 な懸濁触媒 を
Rh2(OAc)2(PPh3)6
173
用意で きるので,液 相空間速度 が極めて大 きい.
(2)化 学的純度が高 いために併発反応型の副反応 を抑
Rh(OAcF)2(CO)(PPh3)2
14
つ球型粒子で,極 めて結 晶性が高 く,粒 子内に細孔 を含
まないため,細 孔内拡散 に基づ く遂次反応型の副反応が
えやす いばか りでな く,新 しい複合 的効果 を期待 しての
60
55
シ リカ1参自
市Rh2(OAc)2(PPh2(CH2)2)6
774
Rh2C12(SnC13)4
40
旨固定 Ru(OAcF)2(CO)(PPh3)2
樹月
0 84
粒子内部組成や表面組成の修飾 ,あ るいは 多孔質担体 を
活用す ることによって, さ らに触媒機能の改質 をはか る
こ とが可能である.
(3)調
製 の段階で高温度熱履歴 を受 けて い るために,
温和 な条件 で吸熱反応に使 えば,熱 的安定性 に基づ く長
い触媒寿命が期待 で きる.
ガス 中蒸発法で調製 された金属 ニ ッケル超微粒 子の電
を沈積 させ たあ と脱水素反応速 度 を調べ ると,顕 著 な活
゛
性促進効果 を示す こ とが認め られ た .触 媒活性 向上の
可能性 を裏付 けるもの として興味深 い。
すでに報告 の ある,国 体 懸濁触媒,均 一系錯体触媒,
顕写真 を図 4に 示す。平均粒径 20 nm,比 表面積 437m2
固定化錯体触媒 を含めて,重 量当た りの活性比較 を表 3
にまとめた。金属 ニ ッケル超微粒子,な かで も白金 をつ
glで ,空 気 中に とり出せ るよ う,酸 化物層 で表面 を薄 く
けた ものは極めて高 い活性 を与 える。懸濁濃度 を高 くで
覆 う,安 定化処理 が施 してある。そのため反応 に先 立 ち,
高温度で水素還元 を行 う必要がある。
2プ ロパ ノー ルやアセ トンは極性溶媒 なので,超 音波
きる点 も考慮 にいれて試算す ると,伝 熱律速 になるほ ど
°
の反応速度であるとい える .
アセ トン気相水素化反応 には,金 属 ニ ッケル,パ ラジ
分散処理 によ り, あ たか も墨汁の ような外観 をもった安
ウムあるいは炭化 タ ングステンなどの触媒が知 られてい
定 な懸濁溶液が得 られ る。その まま加熱す ると2プ ロパ
ノー ルの液相脱水素反応が進行 し,特 に沸 とう状態では,
5tァ
水素が激 し く発生す る
セ トン を等 モル混合 した沸
る。反応温度が高 いだけに,触 媒 としては,活 性 もさる
こ となが ら選択性 の よい こ とが重要 である。 多孔質炭素
点 644°Cの 溶液か らも,水素の生成す るこ とが確かめ ら
れて い る。
あ らか じめ ビスアセチル アセ トナ ト白金 (II)錯体 を
2プ ロパ ノー ル に溶か してお き,還 元処理 で表面 に白金
4
担体 に金属 ニ ッケル超微粒子 を担持 した触媒 につ いて,
°
現在開発研究が進行 中で ある .
5 2-プ ロパ ノール/アセ トン/水素系ケ ミカル
ヒー トポ ンプの経済性調査
生
3 8 巻1 0 号 ( 1 9 8 6 1 0 )
還 た ドラム
産
研
究
水素 プ ロヮ
H,nol ratio
CaH"O "
....9f:9...:
i{fJ
f-,H.i;'-;J
I c.Hso
I
oEい
0一X一0 一︶
︵
工ヽ一
“o
0¨×00 ”
工ヽ一
と´
536X10・kca1/h
(廃熱'
1睫
反応 :9“ ×10'
:回
収塔
リボイラ
′
,力,器
水ふ反応琴
( 気相高さ反応器)
,水業反Ft■ 還 流イン7
1薇■低程反:よ
本,
供給熱源 : 1 5 0 ℃熱排水, 熱 出力 : 1 5 0 ℃加圧水蒸気 1 0 トン/ h
発熱反応 : 1 7 0 ℃( 1 5 気 圧 ) , 吸 熱反応 : 7 8 ℃( 1 7 5 気 圧 )
ー
ー
図 5 地 熱発電熱排水を利用 し加圧水蒸気を得るための2プ ロパ ノ ル/アセ トン/水素系ケ ミカルヒ トポンプシステムの流れ図
わが国は世界有数 の火 山国で ある.地 熱は重要 な国産
エ ネ ル ギー源 の一つであ り,水 蒸気発電 を中心 に利用実
績 を重ねて きた ものの,高 圧水蒸気 に随伴 して噴出す る
熱水 を ど う活用す るか は,な お残 され た技術 的課題 と
°
なってい る .
C
C の 水蒸気 を利用す る地熱発電所 にお いて,150°
150°
C の 水蒸気 を得 るとい う想定
の熱水 に蒸発熱 を与 え 150°
で,本 ヒー トポンプの経済性調査 が行 われた。10t/hの規
1°
模 で,図 5の ようにプ ロセス設計 されて い る .
C で 加熱す るため,脱 水素 反応
液相吸熱反応器 を 150°
は加圧下で進行 し,そ の圧 力は,気 体輸送用 の動力に利
ー
用す るこ とがで きる。液相 中の 2プ ロパ ノ ル 濃度 を
Cで 圧 力 は 175
59 3 mol%に設定す る と,反 応温度 78°
う
atmと な り,投入 され る熱水熱量 153× 107kcal h lの
ン
セ
ア
と
に,38%が
ト
ち,62%が 脱水素 吸 熱 反応過程
ー
2プ ロパ ノ ルの蒸発熱 として使 われ る.
C,還 流比 20で ,分 離
蒸溜塔上部 の分縮器温度 は 40°
効率 が 90%と 設定 されて い る。蒸溜塔 の塔頂 か ら出 る気
体 成分 は熱交換器 を経て気相発熱反応 器 に送 られ,凝 縮
ー
液 は別 に設 けた 2プ ロパ ノ ル 回収塔 に導入す る。アセ
C ,圧 力 1 5 atm
トン と水素の比 を 1対 1,反 応温度 170°
で水素化反応 を平衡転化率 の 90%に まで進行 させ,そ の
C の 熱水 を蒸発 させ るのである.反
反応熱 を使 って 150°
応熱 の一部 は気相発熱反応器 の入 口気体 を反応温度 にま
で昇 温 す るの に使 うの で,外 部 に供 給 で き る熱 量 は
なる。出 口気体 は熱交換器 を経 て,
506× 106kcal h lと
2プ ロパ ノー ル 回収塔 に導入 し,そ こで 2プ ロパ ノー ル
ー
を 995%に まで濃縮す る。また,2プ ロパ ノ ル 回収塔
ー
では,ア セ トン濃度 の高 い溶液 を上段へ ,2プ ロパ ノ
ル含量の 多い気体 を中段 へ供給 し,他 方, リボイラー を
C の 熱水 536× 105kcal h lで
加熱 して い る。
150°
この ように低温度熱 は蒸溜塔の リボイラー を兼ねた液
相 吸 熱 反 応 器 お よび 2プ ロパ ノー ル 回収 塔 の リボ イ
ラー に供給 され,高 温度熱 は気相発熱反応器か らとり出
され,両 者 の比が本 プ ロセスの熱効率 を与 える。その値
は 32%と 算出 された。理論 的に期待 で きる最大熱効率 の
85%に 相 当す る。
経済性調査 にお いて設定 された供給熱 と回収熱の温度
C で あ り,図 2お よび図 3で 述べ たシステ
は ともに 150°
ム とは設定温度が異なる。 そのほかに も,次 の ような配
慮 が なされて い る。 (1)気 体輸送 に必要 な動力 を節減す
で進行 させ ,
るため,液 オロ吸熱反応 を加圧 (1 75 atm)下
さらに水素/ア セ トン比 を 10に 抑 えるこ とによって,気
体循環量 を少 な くして い る。 (2)蒸 溜塔 にかか る負荷 を
小 さ くす るため,棚 段型 の蒸溜塔 とは別 に充填型 の 回収
塔 を設 けて い る。 (3)回 収塔 の塔頂気体 を熱交換器 に送
り込む ブ ロワー と,塔 底液体 を蒸溜塔 の下部棚段 に供給
す るポ ンプ を設 けて い る。
本 プ ロセスの レイア ウ トを図 6に 示す。腐食性 の物質
は含 まれて いないの で,機 器構造材料 はいずれ も炭素鋼
38巻 10号 (198610)
生
P-101A,B P-lo2A,B E-105
n南
卜 _
産
研
究
B-101
企
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↓ ノ
T-102
〇〇〇.
〇]
D
I RJ101
1国
口
E-103A,B
O
│
T-101
E-101
E-103A B
E-105
P-101A,B P-lo2A B
B-101
供給熱源 i 1 5 0 ℃熱排 水, 熱 出力 : 1 5 0 ℃加圧 水 蒸気 1 0 トンl h
発熱反応 : 1 7 0 ℃( 1 5 気 圧 ) , 吸 熱反応 : 7 8 ℃( 1 7 5 気圧 )
図 6 地 熱発電熱リト
水を利用 し加圧水蒸気を得るための2 プ ロパ ノール/ アセ トン/ 水素系ケ ミカルヒー トポンプシステムの配置図
費 費
備 業
設 操
表 4 2 プ ロパ ノール/ アセ トン/ 水素系ケミカル
ヒー トポンプシステムの経済評価表
(1)装 置機器費十建設費 400(百
(幼 触 媒 費
4
96
“) 電
気 代
(0 労 務費十その他
③ 金 利 (6%)
0 発 生スチー ム
ミ 一
0 ︵
〓 一
■
0 ) 冷 却水費
万円)
17
20
24
240
51年
投 資 回収 期 間
(7)一L(2)+(3)+(4)十
(5)十
(6)]
評価計 算 ベ ー ス
冷 却
水
費
電
12円/m3
15円/kヽV
気
代
スチー ム価格
スチ ー ム発 生 量
3,000円/t
10t/h
操 業
8,000h/年
時
間
3
4
5
6
スチ ー ′、コ ス ト 1 1 , 0 0 0 円 ,
供 給 熱 " I : 1 5 0 ℃ 熱 l l 水, 熱 出 ブ, : 1 5 0 ℃ 珈l l l 水た 気 1 0 ト ン h
発 熱 反 i き: 1 7 0 ℃ 1 1 5 気 圧 1 , 吸 熱 , ズ: き: 7 8 て 1 1 7 5 気 F l ,
で十分であ り, また熱 交換器は コンパ ク トで高性 能 の も
のが選んである。
触媒価 格 をプ ラ ン ト設 備 費 の 5%,高
温 回収 熱 106
kcal当 た り400万 円程度 に設定 し,延 べ 運転従事者 を 1
名・
年 (8000h), 6%の 金利 のほか,冷 却水費,電 気代
な どの操業 費 を 150°
C の 加圧水蒸気 10t/h(3000円 /t)
で まか な うとす ると,表 4に 示す ように,償 却年数 は51
図 7 地 熱発電熱排水を利用 し加圧水蒸気を得るための2プ
ロパ ノール/アセ トン/水素系ケ ミカルヒー トポンプの
経済性評価
蒸溜塔の冷却水 を海水 で まかな うとす ると,凝 縮器材
質 の変更に伴 う設備 費の加算 と,海 水用 ポンプ動力のた
めの操 業費の追加 はある ものの,全 体 として費用は著 し
年 と算出 され る.冷 却水 費の 占め る割合の極めて大 きな
く低減 され る。触媒 を毎年 20%ず つ交換す る代 わ りに毎
こ とがわか る.
年半分ずつ交換す るとして も,そ れによる節約分 はあま
6
38巻 10号 (198610)
生 産 研
り大 き くな い。 これ らの事情は,水 蒸気代 と償却年数の
関係 を示す図 7の 評価 曲線か ら, よ く読み とることがで
きる。
蒸溜塔 の リボイラー か ら蒸発す る気相成分 は,で きる
だけアセ トンが濃 く,2プ ロパ ノー ルの薄 い もので ある
ことが望 ましい。 ヒー トポ ンプ システム としての熱効率
がそれ だけ高 まるばか りでな く,蒸 溜塔 の コンデ ンサー
水費 を大 き く低減で きるか ら
負荷 が下が り, 問題の冷去口
である.コ ンデ ンサー 負荷 を 2害」
減 らせ ば,償 却年数 は
1年 余 り短縮 され るこ とになる.他 方,2プ
ロパ ノー ル
液相脱水素反応 に とっては,生 成物であるアセ トンの濃
度はむ しろ低 いほ うが有利である. したが って, できる
だけアセ トンの 濃 い条件 で 2プ ロパ ノー ル液相 脱水素
反応が速やかに進行す るような, さらに高性能 の触媒 を
開発 して い く必要がある。
6 お
わ
り に
ここに提 案 され たケ ミカ ル ヒー トポ ンプ の要 素 技術
は, 多 くの経験 を長 い間積 み重ねて きた化学工業 プ ロセ
スの それ と基本的 に同 じである。良 い触媒が必要であ り,
また触媒が よ くなれば システム 自体 一 層 よ くなるところ
も同 じである.
地球 のエネル ギー 資源 は大切 に使 うべ きであろ う. 特
にその資源 に恵 まれない国 々に とって, 低 品位熱 の高次
利用は重要 な検 討課題 である. そ の ような国の一つ, 日
本にふ さわ しい, オ リジナ ル な技術 に育つ こ とを期待 し
究
465
た い.
なお, 図 3 を 含 む化 学 工 学 的取扱 い は東京 農 工 大 学 ・
亀 山秀雄助教 授, ま た 5 節 に述 べ た経 済性 調査 は石 川 島
播磨 重工 業枷 ・佐藤 誠 二 博 士 , 豊 山正 道博士 の ご協 力 に
よって い る。 こ こに記 して厚 く御礼 申 しあげ る次 第 で あ
(1986年 7月 23日 受 理 )
る.
参
考
文 献
1'岡 本秀樹,「廃熱回収不1用システム実務便覧J(フ ジ テ
クノシステム,1981)29頁
2)亀 山秀雄,佐 藤真士,「 ケ ミカル ヒー トボンプ設計ノヽン
ドブック」 (サイエ ンスフ ォー ラム,1985)159頁
3)賀 集誠一郎,化 学工 学 46(1982)530;林 豊 治,触 媒
2711985,473
4)林 豊 '台
,斉 藤泰和,化 学 39(1984)667:斉 藤泰和,
日本化学会編 ・
化学総説 No 48,「超微粒子J(学 会出版
センター, 1 9 8 5 ) 1 9 3 頁
5 ) 野 田道雄, 篠 田純雄, 斉 藤泰和, 日本化学会誌 ( 1 9 8 4 )
1017
6)野 田道雄,篠 田純雄,斉 藤泰和,触 媒 27(1985)359
7)斉 藤泰和,「ケ ミカルヒー トボンプ設計ハ ン ドブ ック」
(サイエンスフォー ラム,1985)55頁
│1紳
8)中 サ
好,加 藤之貴,亀 山秀雄,野 田道雄,斉 藤泰和,
「
蓄熱 ・
増熱技術J(化 学工学協会 シンポジウムシ リー ズ
第 8巻 ,1985)117頁
'85資 エ
9)資 源エネルギー庁監修 「
源 ネルギー年鑑J(通 産
資料調査会,1985)755頁
10)佐 藤誠二,豊 山正道,「ケ ミカル ヒー トポンプ設計ハ ン
ドブ ックJ(サ イエンスフォー ラム,1985)131頁
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