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SMBC Asia Monthly 第 82 号(2016 年 1 月) 内需が底堅く推移、 注意
SMBC Asia Monthly 第 82 号(2016 年 1 月) 内需が底堅く推移、 注意したい今後のリスク 日本総合研究所 調査部 上席主任研究員 向山 英彦 E-mail:[email protected] ■内需が成長を下支え <韓国の成長率(前期比)> 15 年 7∼9 月期の実質 GDP 成長率(暫定値)は前期比 (%) 実質GDP成長率 (%) +1.3%(前年同期比+2.7%)になった。固定資本形成が 民間消費 10 3 輸出 前期比(以下同じ)+3.1%(うち建設投資+5.0%)、民間 建設投資(右目盛) 2 5 消費が+1.2%、政府消費が+1.7%になった一方、財・サ 1 ービス輸出は▲0.6%(うち財輸出▲1.3%)と、内需が成 0 0 長を下支えしたのが特徴的である(右上図)。内需の拡大は、 ▲1 政府の数次にわたる景気対策によるところが大きい。 ▲5 ▲2 14 年 8 月に、不動産市場活性化策として住宅担保認定比 ▲ 10 率(Loan to Value)と総負債償還比率(Debt to Income) ▲ 3 2013 14 15 (年/期) が一部緩和されたうえ、14 年以降政策金利が 4 回引き下げ (注)14年10∼12月期の建設投資の落ち込みは歳入不足で、 公共投資が予定通りに執行できなかったことによる。 られたため、住宅投資を中心に建設投資が増加傾向にある。 (出所)韓国銀行、Economic Statistics System 政府消費の増加には補正予算の編成が、また、民間消費 の増勢が強まったことには、実質国内総所得の増大(原油価格下落の影響も)と金利の低下に加 えて、8 月末に打ち出された消費刺激策がプラスに作用している。これには、自動車と高級家電 製品に対する特別消費税率の引き下げ(12 月末まで 5%から 3.5%に) 、国内最大のショッピング フェスティバルの対象範囲の拡大などがあり、自動車の販売台数は 9 月以降、前年同月比 2 桁の 伸びになっている。 ■注意したい今後のリスク <家計債務額と対総国民可処分所得比> 輸出の回復が遅れるなかで、内需は比較的底堅く推移す 家計債務額 ると予想される。ただし、消費刺激策の反動が懸念される (兆ウォン) 対総国民可処分所得比(右目盛) 1,200 ほか、以下に指摘するリスクに今後注意していく必要があ 1,000 る。 一つは、家計債務の増加である。債務の多くは住宅ロー 800 ンであるが、教育ローンや事業資金ローン、低中所得層の 600 生活資金借入れなどもある。政府は近年、債務の増加を受 400 けて、債務の増加ペースを適正にする措置や健全性を高め 200 る措置などを導入した。朴槿恵政権も、債務の調整(短期 の高金利ローンから長期の低金利ローンへの移行など)に 0 2003 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 力を入れているが、家計債務残高は 15 年 9 月に 1,166 兆 (注)2015年は9月末現在の家計債務額。 (年) (出所)韓国銀行、Economic Statistics System ウォンへ(右下図) 、1 年前より+10%強増加した。これは 景気対策の一環として不動産融資規制の緩和と利下げを実 施したためである。 住宅ローンは中高所得層に集中しているため過度に心配する必要はないとはいえ、金利が上昇 局面に転じれば返済負担が増大し、低中所得層を中心に不良債権が増加する恐れがある。 もう一つは、リストラの動きである。輸出の不振により業績が悪化した海運、造船業界などで は、銀行の支援を受けながら人員削減や業務の整理などが進められている。経済の活性化のため にはリストラが不可欠であるが、その過程で失業や不良債権が増加する恐れがある。 このように、内外需の動向とならんで、今後のリスクにも注意する必要がある。 (%) 80 当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。当レポートは単に情報提供を目的に作成されており、その正確性を当行及 び情報提供元が保証するものではなく、また掲載された内容は経済情勢等の変化により変更される事があります。掲載情報は利用者の責任と判断で ご利用頂き、また個別の案件につきましては法律・会計・税務等の各方面の専門家にご相談下さるようお願い致します。万一、利用者が当情報の利 用に関して損害を被った場合、当行及び情報提供元はその原因の如何を問わず賠償の責を負いません。 70 60 50 40