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新居浜工業高等専門学校 - Niihama National College of Technology

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竹材を用いた歯車の製作とその精度評価
越智, 真治
新居浜工業高等専門学校紀要. vol.49, no., p.13-17
2013-01
http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/2754
Rights
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IYOKAN - Institutional Repository : the EHIME area http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/
竹材を用いた歯車の製作とその精度評価
越智真治*
Fabrication of Spur Gears using Bamboo and Their Accuracy Evaluation
Shinji OCHI*
The use of plastic products has been steadily increasing over the last several decades. However, because plastic waste is
being discarded in ever-increasing quantities, final disposal sites for such waste are becoming scarce. Therefore, materials
must be developed that minimize this problem. This research was carried out to investigate whether bamboo can use in
substitution for plastic materials. A spur gear was manufactured using bamboo powder and fiber, and the accuracy of those
gears was measured. As a result, accuracy improved so that there were many ratios of the bamboo powder and molding
temperature was high. The gear which accuracy had best was a class of N8.
1.緒言
そこ で, 本研 究で は身 近 に使わ れて いる プラ スチ ッ
ク製歯 車の 代替 とし て竹 を 利用 で きな いか 模索 した .
プラス チッ クは 軽く て強 く ,形状 も様 々な 形に 加工
竹粉及 び竹 繊維 を混 合し , 圧縮成 形し て試 験片 を作 製
するこ とが でき るす ぐれ た 材料で ある .し かし ,使 用
し,そ れを ホブ 盤で 歯車 に 加工し た . そし て歯 溝の 振
後は多 くの 問題 を抱 えて い る. プ ラス チッ クを 燃や す
れを測 定し ,精 度評 価を 行 うこと によ り , より 精度 が
と二酸 化炭 素が 大気 中に 放 出され るが ,こ の二 酸化 炭
良い成 形条 件を 見出 すこ と を目 標 とし た. 特に 精度 に
素は,地球 温暖 化の 原因の 一つと して 考え られ てい る .
およぼ す繊 維体 積率 の影 響 ,精度 にお よぼ す成 形温 度
また, プラ スチ ック は, 自 然に分 解さ れな いの で鳥 や
の影響 につ いて 調査 した . 更に実 際に 歯車 を噛 み合 わ
魚など が食 料と 間違 えて 食 べてし まう こと もあ り , 生
せて負 荷を かけ て運 転し , 竹歯車 の騒 音, 歯面 温度 を
態系に 影響 して いる と考 え られる .さ らに ,プ ラス チ
計測し ,現 在使 用さ れて い る ポリ アセ ター ル製 歯車 の
ックの 原料 であ る原 油は , 将来枯 渇す るこ とが 懸念 さ
性能と 比較 した .
れてい るた め, プラ スチ ッ ク製品 を生 産し 続け るこ と
2.実験方法
は困難 であ る と 考え られ る .この よう な背 景か ら持 続
的に生 産可 能で プラ スチ ッ クの代 替と なる 材料 を開 発
2-1 供試 材料
するこ とが 必要 であ る .
本研 究で は, 竹の 自己 接 着性
1)
に注 目し て, 竹を プ
本研 究で 用い た竹 材の 写 真を図 1 に 示す .図 1 a)は
ラスチ ック 製品 の代 用品 と して利 用 す るこ とを 目的 と
繊維状 ,図 1 b) は粉 状で ある. 以後 ,図 1a)を 竹繊
した. 日本 はタ ケノ コの 産 地であ った が, 中国 から 安
維 ,図 1b) を 竹 粉 と 称 す. こ れ ら の 竹 繊 維と 竹 粉 との
価なタ ケノ コが 輸入 され る ように なり , 日 本の 竹林 は
割合 を 100:0,75:25,50:50,25:75,0:100 とし,歯 車の
放置さ れる よう にな った .放置さ れた 竹林 は ,他の 木々
精度におよぼす繊維 体積 率 の影響を調 査した.
が生え てい る森 林を 侵食 し 荒らし てし まう など 様々 な
問題を 引き 起こ して いる 2) .この問 題を 解決 する ため に ,
竹を資 源と して 積極 的に 使 用 しよ うと 考え た.
2-2
歯車の作 製
歯車を 作製 する 前に 予備 成 形体を 作製 した .ま ず,
平 成 20 年 8 月 29 日 受 付 (Received August 29, 2012)
*
新 居 浜 工 業 高 等 専 門 学 校 機 械 工 学 科 (Department of Mechanical Engineering,
Niihama, 792-8580, Japan)
13
Niihama National College of Technology,
竹粉お よび 繊維 を混 合し , 自作の プレ ス金 型に 入れ ,
プレス 機に セッ トし 加熱 し た.所 定の 温度 にな るま で
加熱し ,プ レス 機で 圧力 を 加え た .そ の後 ,扇 風機 を
用いて 冷却 した.成形 温度 は 150℃ ~220℃,成形 圧力
は 106MPa であ る.作 製し た予備 成形 体の 写真 を図 2
に示す .形 状は 直径 42mm,厚 さ 10mm の 円 筒形 状で
ある.
図 2 の予 備成 形体 に直径 6mm の 軸穴 をあ け, ホブ
盤 を 用 い て 歯 車 を 加 工 し た . モ ジ ュ ー ル 1 , 歯 数 40,
歯厚 10mm, 圧力 角 20°の インボ リュ ート 歯形 の 標 準
10mm
平歯車 を製 作し た.
2-3
歯車の精 度測 定
Fig.2 Photograph of pre-molded product.
ダイヤ ルゲ ージ を用 いて 歯 溝の振 れを 測定 し ,JIS B
1702-2 に基 づき歯 車の 等級 を決定 した . 図 3 は 目標
a)
とする ポリ アセ ター ル製 の 歯車の 写真 であ る.図 3a)
は 外 観 写 真 , 図 3b) は 歯 の 拡 大 写 真 で あ る . 等 級 は
N7 で あっ た.
2-4
動的 性能 試験
図 4 に動的 試験 機の 概略 図 を示 す .試 験実 験は ,回
転速度 1000rpm,負荷 50N・cm と した .ま ず,① の可
変速モ ータ ーで 駆動 歯車 を 回転 し ,次 に② のブ レー キ
で負荷 をか け ,③の トルク メータ で負 荷を 読み とっ た .
10mm
a)
b)
10mm
500μ m
b)
Fig.3 Photographs of plastic spur gear; a) outside, b)
magnify
④のマ イク ロフ ォン で騒 音 を測定 し, さら に⑤ の 放 射
温度計 で歯 面温 度を 測定 し た .
3
10mm
実験結果および考察
3-1
歯 車の 製作
製作し た試 験片 と歯 車の 写 真を図 5 に 示す .図 5 a)
は竹粉 100%,図 5 b)は繊 維 50%,竹粉 50%,図 5 c)
Fig.1 Photographs of used bamboo; a) fiber, b) powder
14
は繊 維 100%で 作製 した 歯 車で あ る. 図よ り, 本手 法
B
②brake
により 竹を 用い て歯 車の 加 工が可 能で ある こと .い ず
① A
motor
れの繊 維体 積率 にお いて も ,歯車 が加 工で きる こと が
わかっ た.
gear2
また, 作製 した 歯車 の歯 の 拡大写 真を図 6 に示 す.
図より,全ての条件で歯の形になっているが,繊維
100%の 歯を 見る と表 面に ボ イドが あり ,さ らに 歯面 に
C
③ torquemeter
はバリ が出 てい るの が確 認 でき た .
gear1
④ microphone
Bamboo gear
3-2
図 7~9 に 歯溝 の振 れの測 定結果 の一 例を 示す .最 大
⑤thermometer
Fig.4
歯 車の 精度 にお よ ぼす繊 維体 積率 の影 響
値から 最小 値を 引い た値 が 歯溝の 振れ とな る. これ ら
Illustration of dynamic performance test.
1
7
a)
a)
500μm
10mm
b)
b)
500μm
10mm
c)
c)
500μm
10mm
Fig.5 Photographs of fabricated bamboo gear; fiber
Fig.6 Photographs of addendum; fiber content of a) 0%,
content of a) 0%, b) 50% and c) 100%
50% and 100% and c) 100%
15
は 190℃で 成形 した 歯車 で ある. 図よ り, 繊維 体積 率
100
が高く なる につ れて フレ が 大きく なっ てい るの がわ か
Radial run-out (μm)
る.図 10 に歯 溝の 振れ と繊 維体積 率の 関係 を示 す .図
より歯 溝の 振れ は, 繊維 体 積率が 高く なる ほど 大き く
なって いる のが わか る.
表 1 に JIS の精 度等 級と 比 較して 求め た歯 車の 等級
を示す .示 した 各歯 車の 等 級を成 形条 件ご とに 比べ て
Radial run-out (μm)
みると 繊維 の割 合が 多く な るほど 等級 の数 字が 大き く
80
60
40
20
0
0
100
25
50
75
Fiber content (%)
100
Fig.10 Relationship between run-out and fiber content.
0
なる傾 向が ある こと がわ か る .今 回最 も精 度が 良い も
ので N8 が 得ら れた .以 上 の結果 より ,繊 維を 入れ ず
-100
竹粉の みで 作製 する と よ り 精度の よい 歯車 を製 作す る
ことが 可能 であ るこ とが わ かった .
0
10
20
30
Numbers of cog
40
3-3
歯 車の 精度 にお よ ぼす成 形温 度の 影響
図 11,12 に 150℃,220℃で成形した歯 車の歯みぞの振れ
Fig.7 Radial run-out of gear made powder 100%.
の測定 結果を示す.成形 温度 が高くなるほど歯溝の振れが
Radial run-out (μm)
小 さくなり精 度 が良 くなることがわかった.これは, 150 ℃で
は十 分 自 己 接 着 が行 われておらず,220℃においては,竹
100
粉 同 士の接 着 力が向 上したために,歯 切りの際,竹 粉が欠
落しなかったためだと考えられる.また,図 8 より,190℃と
0
Table 1 Grade of bamboo gear and POM gear
-100
0
10
20
30
Number of cog
40
Fiber
content
(%)
0
25
50
75
100
POM
Grade
N8
N9
N10
N10
N11
N7
Radial run-out (μm)
Radial run-out (μm)
Fig.8 Radial run-out of gear made powder 50% fiber 50%.
100
0
100
0
-100
-100
0
0
10
20
30
Number of cog
40
10
20
30
Number of cog
40
Fig.11 Radial run-out of gear made molding temperature
Fig.9 Radial run-out of gear made fiber 100%.
at 150℃.
16
100
Temperature(℃)
Radial run-out(μm)
40
0
30
Powder
Powder and fiber
Fiber
POM
20
-100
0
10
20
30
Number of cog
10 0
10
40
101
102
103
104
Total number of revolution
105
Fig.12 Radial run-out of gear made molding temperature
Fig.14 Relationship between temperature and number of
at 220℃.
roatation.
220℃では同様な歯溝の振れが得られたことから,190℃以
4
結言
上では,精度は変わらないことがわかった.
本 研 究 では, 原 材 料 に 竹 を 用 いて 歯 車 を 製 作 し, そ の
精度におよぼす繊維 体積 率 の影響および成形温 度の影 響
3-4 歯 車の 動的性 能評 価
について調査した.得られた結果を以 下に示す.
図 13 に 騒 音 と 総 回 転 数 の 関 係 を 示 す . 図 よ り , 竹 粉
100%,竹粉 50%繊維 50%,繊維 100%,ポリアセタール
1)竹 粉 ,竹 粉 +竹 繊 維 ,竹 繊 維 をプレス成 形 し,予 備 成 形
製 の歯 車 共 に同 程 度 の騒 音 であり,騒 音 におよぼす繊 維
体 をホブ盤 で加 工 することにより歯 車 の成 形 が可 能 であ
体積率の影響は見られなかった.図 14 には歯面温 度と総
ることがわかった.
回 転 数 との関 係 を示 す.図 より, 条 件 により温 度 に差 異 が
2)竹 粉 に竹 繊 維 を入 れると精 度 が悪 くなること,また,成 形
見られるが,総回転 数が上がるにつれて 30℃付近に収束し
温度 190℃以上にすると 150℃で成形した歯 車より精度
ており,こちらも歯 面 温 度 におよぼす繊 維 体 積 率 の影 響 は
がよくなることがわかった.
見られなかった.
3)竹歯車は成形 温度 190℃で竹粉のみで成形することによ
以 上 の結 果 より,騒 音 ,歯 面 温 度 共 にポリアセタール製
って N8 の精度をもつ歯車を製作することが可能であるこ
の歯 車と同 程 度の性 能 であるという事がわかった.今 後は,
とがわかった.
10 7 回 まで測 定すること.さらに摩 耗 量の測 定もする必 要 が
4)歯 車 を噛 み合 わせ動 的 な性 能 評 価 をした結 果 ,竹
ある.
100%,竹粉 50%竹繊維 50%,竹繊維 100%で作製し
た竹歯車は,回転数 10 5 までは,ポリアセタール製歯車と
Sound level(dB)
90
同程度の騒音,歯 面温 度を示 すことが明らかになった.
80
謝辞
本研 究を進めるにあたり,歯 車の加 工において新 居 浜高
専 技 術 室 の 小 田 健 二 氏 ,動 力 試 験 において 仙 台 高 専 名
70
取 キャンパスの大 久 忠 義 教 授 の協 力 を得 ました.記 して感
60
50 0
10
Powder
Powder and Fiber
Fiber
POM
101
102
103
104
Number of revolution
謝の意を表します.
参考文献
[1]山下修,横地 秀行 ,今 西 祐志,金山 公三 ,竹 の塑 性
105
流動性 に関 する 基礎 的検 討 ,塑性 と加 工,第 47 巻 ,
549 号 , pp.72-74(2006).
[2] 林 加 奈 子 , 山 田 俊 弘 , 竹 の 分 布 拡 大 は 地 形 条 件 に
Fig.13 Relationship between noise and number of rotation.
影 響 さ れ る の か , 日 本 生 態 学 会 13( 1) pp.55-64
(2008).
17
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