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植物 - 文部科学省
「中核機関への支援方法」、「新たなバイオリソースの開発の必要性」「提供の在り方」について (アンケート結果概要②)~実験植物~ 1 NBRP中核機関等への支援方法について ○ 各中核機関の効率的運営のための取組み【問1】 【シロイヌナズナ】 (保存法・品質管理) ・ シロイヌナズナ種子は低温・低湿の冷蔵室にて保存。なお増殖・保存中の取り違い防止等、品質管理 のため一部系統では遺伝型検査を導入済。 ・ 植物培養細胞については生細胞で維持。液体窒素中でのバックアップ保存も実用段階に移行中。 ・ 植物遺伝子は超低温フリーザーで保存。品質管理のため、収集時に配列を抜き取り検査し、また提供 用に増殖する際にも配列検査を実施。 (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) ・ シロイヌナズナ種子は低温・低湿の冷蔵室にて保存することで 10 年程度は保存可能と考えられるが、 信頼性の高いデータはない。そこで現在の保存条件における種子の更新間隔を決定するため、保存 する種子の発芽率を抜き取り調査するとともに、更に長期の保存をめざし冷凍庫での長期保存試験も 実施中。 ・ 開発済みの技術を適用できない植物培養細胞系統についてはプロトコルを改良するなど、可能な限り 多くの系統を液体窒素中で保存するための技術開発を実施中。 ・ 植物培養細胞の、維持・保存中の変異の実態については不明な点も多いことから、アレイ技術を適用 した品質管理についても検討を実施中。 ・ 植物遺伝子の低コスト・長期保存技術開発のため、平成 19 年度より NBRP の支援を得て液体窒素中 ないしは市販の資材を利用したバックアップ保存技術を開発。本技術は単に超低温フリーザーを使わ ないだけではなく、96 穴または 384 穴プレート単位で効率的な作業が可能。開発課題は今年度で終 了し、22 年度以降は実用化段階に移行するとともに、他の中核機関へ普及する予定。 【イネ】 (保存法・品質管理) ・ 十分に乾燥した種子を密封した容器に入れ、4 度あるいは-20 度で保存。必要に応じて 10 から 20 年 程度を目処に、適宜種子を更新。 (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) ・ 現法が最も標準的な方法であり、改善すべき点は特に認められない。 ・ バックアップ体制が整っておらず、自然災害等により貴重な種子が失われる心配もあり、異なる機関に バックアップ種子を寄託する制度が必要。それでも種子更新の必要性は避けられず、それを回避でき るような半永久保存のできる方法あるいは施設の設置が望まれる。 【コムギ】 (保存法・品質管理) ・ タイトボックスにシリカゲルを入れ、4℃で保存。年に数回シリカゲルを交換。 -21- (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) 改良案 ・ 永久保存用の種子はポリフレックスバックに入れ、バキュームシーラーで密封し-20℃で乾燥保存。 ・ 残りの分譲依頼、実験用は同様に減圧密封しタイトボックスにシリカゲルを入れ、4℃で保存。 ・ リソースごとにバーコードラベルを付し、保存・配布作業において管理。 【オオムギ】 (保存法・品質管理) ・ 種子(栽培種および野生種):実験圃場あるいは温室で栽培・特性調査・収穫の後、脱粒、乾燥、殺虫、 殺菌などの品質調整をして、シリカゲルを入れた容器で(それぞれの系統を3組)保存。容器は 15℃、 25%RH で保存し、毎年シリカゲルを交換。この状態で 20 年以上、-30℃の密封状態で数十年の保存 が可能。栽培種については危険回避のために農業生物研究所ジーンバンクに重複サンプルを保存。 ・ DNA(cDNA および BAC のクローンの大腸菌ストック):-80℃の超低温フリーザーに、プール DNA を -20℃のフリーザーに、フィルターを 4℃の低温庫にそれぞれ保管。サンプルは定期的にコピーを行 って更新し、劣化や混入を防止。サンプルを別のフリーザーに重複保存することによって、フリーザー のトラブルによる危険を回避。機器の故障等に対処するため、WEB 監視カメラと警備会社への委託に よる警報管理を実施。 (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) ・ 種子:現在の保存方法は安定しているが、長期の保存量を多くして、更新の機会を減らした方が良 い。 ・ DNA:現在用いているのは一般的な保存方法と考えられるが、ゲノムサイズが大きいので、5台の超低 温フリーザー(700 L)の管理が負担。DNA リソースは cDNA のプラスミドの乾燥保存や DNA ブックの作 成も考えられるが、保存数は約 5000 クローンなので完全長 cDNA 全体を網羅するには量的に不足。 【藻類】 (保存法・品質管理) ・ 微細藻類:70%を継代培養、30%を凍結保存。週 1 度の生育チェック、年 1 回の無菌チェック、18S r DNA配列による分類学的再同定により品質管理を実施。 (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) ・ 微細藻類:画期的な方法の開発は難しいが、既存の方法で少しでも生存する系統の凍結保存、植物 カルスの凍結に使われているアルギン酸ゲル法など、まだいくつか検討する余地があり、それらを試行 する予定。 ・ 大型海藻:生殖細胞の凍結保存など、凍結保存法に改良の余地があり、すでに実施。 【キク】 (保存法・品質管理) ・ 株保存(圃場および試験管内)がほとんど。 (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) ・ 圃場の場合、連作障害が出るため、定期的な植え替えが必要で、それが簡便になるように圃場を整備 した。 ・ 他殖性が強いため、種子で系統を保持しようとするにはかなりの注意が必要だが、一部系統について は種子での保存も視野に入れたい。 -22- 【アサガオ】 (保存法・品質管理) ・ アサガオ系統は、種子を 4℃・湿度 20%で保存。品質管理としては、採種用に栽培している株の突然変 異遺伝子情報を主に表現型レベルで調査し、一部は PCR によってチェック。採種した種子の一部は 冬期に温室内で播種し、目的の遺伝子型を保持しているか調査し、これらの情報を系統情報に統合。 ・ DNA クローンは、ベクターに DNA 断片を挿入したものを保持する大腸菌を-80℃で保存。 (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) ・ 他の植物種子で行われている凍結保存のテストを行ったことはあるが、完全に脱水することが困難なた め現在では検討していない。 ・ 種子は年々発芽率が低下するが、低温低湿下で保存すれば、少なくとも 50 年以上、場合によっては 100 年程度この条件で保存できると考えられる(実際に、保存している最も古い種子は 40 年以上前の ものであるが、以前のテストでは 80%以上が発芽)。 ・ 大腸菌が保持する状態での DNA クローンの保存については、過去の実績から、半永久的に保存でき ることが分かっている。フリーザーの故障や大規模停電に備えて、バックアップ保存している。 【ミヤコグサ・ダイズ】 (保存法・品質管理) ・ 種子は、4℃低湿度条件下で保存しているため問題ない。 ・ DNA は大腸菌に組込み-80℃のグリセロールストックで保存。 (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) ・ 根培養系(組織培養リソース)については、長期保存技術の開発が必要。 ・ 現在開発されている特殊な DNA 保存紙等が利用できるようになれば、維持管理の省力化が図られる と考えられる。 【トマト】 (保存法・品質管理) ・ 種子をエッペンドルフチューブ内に入れて冷蔵庫で保管。 ・ cDNA 保有大腸菌のグリセロールストックとプラスミドを-80 度の冷凍庫に保管。 (保存法(保存形態)の改良の余地)(改良を進めているか) ・ 種子の保管には-20oC といった冷凍庫保存の方が種子の寿命が伸びるため、今後考慮に入れたい。 ・ 保存種子の増加に伴い保管スペースの確保が問題となるものの、解決すべき手段は未考案。 ・ 保存 DNA クローンの増加に伴って保管スペースの確保および光熱費が問題となっており、今後大い に改良の余地があるものの、改良のための開発研究には未着手。 ○評価サイクル 【問2】 【シロイヌナズナ】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ 研究動向は極めて早いサイクルで変化しており、その変化を着実に運営に反映させるとすれば、業務 の優先度づけや事業対象の見直しは原則毎年実施すべき。現在もリソース検討委員会(運営委員会) の場で実績と翌年度の計画を報告し、有識者から得た提言を運営に反映する体制。また、別途 2-3 年 おきに開催される海外有識者を含むアドバイザリーカウンシルでも提言をいただいている。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) -23- ・ 文部科学省が行う評価は当初計画が 5 年間であれば、中間評価と最終評価の 2 回が適当。内容的に も従来のような収集、保存、提供の数値評価を中心とするものではなく、事業が中長期的な国の戦略 に沿って運営されているか否かを問う評価をすべきで。ただしそのためにはまず申請段階から個々の 事業目標に国の方針を反映するよう促すべき。 【イネ】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ PDCA は2年に1回程度の検証で確認可能。ただし、自己評価項目を絞り、的確に検証できる内容に すべき。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) ・ サブ機関に置ける責任者/担当者の交代や人材育成等の観点から、5 年で評価・見直しを行う現行 のサイクルが妥当。 ・ 継続性は大切であるが、時代の要請する新たな研究リソースの取り込みは常に必要であり、各リソース プロジェクトはコミュニティとの連携を密にし、全体のパイの中でどのような優先順位でコミュニティでの リソースを整備するかについても、全体計画を見直す必要あり。このような大規模な見直しを5年に1度 に行わなければ、世界基準は達成できない。 【コムギ】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ 自己評価は業務が滞り無く遂行されるためのものであるので、毎年、運営委員会での報告という形で 行うが適当。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) ・ 投資対効果がでてくるには時間がかかるため、文部科学省が行う評価は大学の評価と同じ6年ごとくら いが適当。 【オオムギ】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ 在来品種、育成品種などは今後とも継続的に利用できる状態での管理が必要。 ・ 実験系統および DNA リソースについては、ここ数年で主な研究内容が遺伝解析およびゲノム解析から 遺伝子単離やゲノム育種に変わっており、それに伴って必要なリソースを 3-5 年程度で見直すことが 望ましい。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) ・ DNA リソースの投資対効果はデータベースのアクセス等に敏感に表れるので 3 年程度で評価できる。 ・ 系統リソースの効果は主として論文や育種の成果として表れるので 5 年(育種の場合はそれ以上かか る場合が多い)程度で見直すのがよい。 【藻類】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ 2 年に 1 度程度。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) ・ 5 年に 1 度。 -24- 【キク】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ 年に何サイクルも生活環が回る生物とは違い、年一度の栽培を基本とする種では、最低 5 年ほどみな ければいけない。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) ・ 提供数などは様々な要因の影響を受けるので一年ごとに一喜一憂するようなことはなく、少なくとも 5 年 できれば 10 年くらいのスパンで成果を見て欲しい。 【アサガオ】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ 事業の適切な遂行のためには、きめ細かな修正が必要であるため、毎年のシーズン終了後に自己評 価し、翌年の事業計画に反映させている。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) ・ リソース事業はリソースをユーザーに提供して、それがアウトプット(論文等)に反映されるまで数年、長 い場合は 10 年以上かかることがしばしば。そのため、5 年に一度くらいの評価が適当ではないかと考え ている。また、軌道修正の目的での中間評価もあってよい。 【ミヤコグサ・ダイズ】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ これまでどおり、年 1 回で充分。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) ・ 年で成果が得られることは難しいため、これまでと同様に 5 年間で 2 回(評価と中間評価)の評価が望 ましい。 【トマト】 (自己評価、見直しのサイクル) ・ 基本的に毎年リソースの管理・栽培の計画を立てているので、年毎に行うのが好ましい。 (費用対効果の検証(文科省の評価)) ・ 5 年のサイクルが適切。植物のリソースは、播種から育成、採取まである程度の時間がかかるため、ま た、植物の管理は天候などにも大きく左右されるため、投資対効果の検証を数年のサイクルで行う事 には疑問が残る。 ○必要なバイオリソースの選定方法【問3】 【シロイヌナズナ】 ・ シロイヌナズナ種子は復元が困難でかつコミュニティのニーズの高い系統を優先して収集。これまでは 知名度とニーズが特に高く開発者による維持と配布が困難な、ゲノム研究で作成された網羅的な系統 を優先してきたが、研究の進展とともに野生系統や突然変異系統など個別の系統のニーズにも増加 傾向。増加傾向にある環境や食料に貢献する出口志向の研究を含め、将来の幅広い研究ニーズに 対応するためこれら個別の系統の収集も段階的に実施中。 ・ 植物培養細胞は滅失すると復元不可能なため、退官する研究者が維持していた系統を優先して収集。 また省コストに貢献する保存技術を開発したうえで、研究ニーズが見込まれるマーカー遺伝子を組み -25- 込んだ系統の収集を開始。 ・ 植物遺伝子は大規模で付加価値が高く、かつ品質管理を必要とするモデル植物の完全長 cDNA ライ ブラリーを優先して収集。 【イネ】 ・ 野生イネ系統については、50 余年に亘る世界中からのコレクションが整備され、現在積極的な収集は 行っていない。多様な変異を網羅する最小限の系統(コアコレクション)を選定し、重点的な付加価値 の向上、効率的な配布体制の確立に努めている。これらは、今や失われつつある多様かつ有用な特 性を多く含む、世界的にも貴重かつユニークなリソースである点、他に国内での整備はほとんどない点、 ゲノム解析以降の多様性の研究と利用には不可欠なものである点、ユーザーからの期待も高い点、で 選定。 ・ 突然変異体を含む実験イネ系統については、世界的に多数整備され、農水省でも作成されたタグ系 統などの変異系統とは異なった変異系統群を中心に収集。これらは、今後のタンパク質ドメインレベル での研究に特に価値を有する塩基置換型変異系統で、かつイネ全遺伝子の変異を網羅できる系統で あり、今後のパーソナルゲノム解析にも欠かせないものであるとの認識で収集中。今後の有用なリソー スとしてコミュニティからも期待されている。 【コムギ】 ・ コムギの場合は、野生・在来種と実験系統の 2 本立てで、世界的にもユニークな系統。 ・ 年2回の NBRP 運営委員会、コムギ小委員会において、主たるユーザーであるコムギ事業育種セクタ ー、大学等研究者から意見集約、議論に従い方針を選定。 【オオムギ】 ・ 系統リソース:在来品種および野生種は自然界の変異の全体を含むように収集。これらの一部は科研 費(基盤(A)海外学術調査)によって収集を継続中(主として中国、ヒマラヤ周辺、中央アジア地域)。 育成品種は種苗法に登録のない代表的な品種を収集。在来品種および育成品種の特性データの一 部は遺伝研の NBRP データベースから公開済。突然変異系統は岡山大学で研究に用いられた系統 および作成されたオリジナルの系統が中心。マップ集団などの遺伝ストックは需要の多い材料および 配布を委託(米国等から)された材料を提供。 ・ DNA リソース:NBRP で開発されたリソース(完全長 cDNA クローン)、科研費および CREST によって岡 山大学が開発した cDNA および BAC ライブラリーを配付。これらのリソースは現在進行しているオオム ギおよびコムギのゲノム解析に利用されている。特に塩基配列データはムギ類のユーザーコミュニティ にとって重要であり、基礎研究および応用研究においてコムギおよびオオムギを中心とした研究者に 世界中で利用されている。一方で、クローンの利用は限定的である。配列を中心として利用する傾向 はデータの完成度の高い完全長 cDNA で特に強い感触。 【藻類】 ・ 大括りの収集対象(培養株およびゲノムDNA)はユーザーコミュニティの代表からなる運営委員会で 決定し、個々の種などは運営委員会に諮問する形で選定。培養株の保存が重要であるという運営委 員会の方針、および多様な系統を保存するというリソースの特徴から新種記載に利用された新規分類 群、生態的・進化的に重要だがこれまで培養株のない分類群、および研究成果が上がっている株を研 究者からの寄託、および分担機関からの寄託という形で収集。 -26- 【キク】 ・ 新たに収集を始めたリソースに関しては、将来広く使ってもらえるリソース作りを意識して、こちらから提 案して収集。こちらからの提案に対してユーザーコミュニティからの寄託があるなどの反響もあり、意見 を出来るだけ取り入れて進めていきたい。従来収集してきた野生種のリソースに関しては、必ずしも多 くの需要が見込めない物もあるが、ユーザーコミュニティの要望も勘案し、ex situ conservation の意味 も込めて収集。 【アサガオ】 ・ ユーザーのニーズが大きいものを収集。例えば、アサガオの標準系統であるムラサキは、以前は種苗 会社が市販していたが、後継者や採算性の問題で販売を中止したため、昨年度よりムラサキの増殖の 準備を開始し、供給できる体制を整備中。他にも、ユーザーの利便性を高めるために、DNA クローン やそのスクリーニングのためのフィルター等の整備を行い提供。様々な研究用途に利用できるように、 できるだけ多くの種類の突然変異体やアリル、これらを組み合わせた系統も収集。進化・生態学的研 究において、ニーズが多いと考えられる近縁種についても収集・保存体制を進行中。 【ミヤコグサ・ダイズ】 ・ 本課題における運営委員会の構成委員は、半数以上が関係機関以外(ユーザー側)の委員であるこ とから、第 1 に運営委員会内で協議するとともに意見を求めている。その他、学会や、主催するシンポ ジウム等でユーザーの意見を直接聞くことで、収集対象バイオリソースの優先順位を決定している。 【トマト】 ・ 国内にトマト実験基盤があまり構築されていないため、基礎研究や機能科学解析に必要と思われるリ ソースを収集。ユーザーコミュニティの多くからはトマト研究基盤全体の底上げを期待されており、特定 のリソースではなく、可能な限り多種類のリソースを収集。また、トマトは果実を実らす植物であるため、 果実の形質に関わる変異体の収集・遺伝子クローンに注力。 ○他の公的資金で開発されたリソースの把握と受け入れの状況 【問4】 ○他の公的資金で開発された有用なリソースを効率的に中核拠点へ収集する方策【問4】 【シロイヌナズナ】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ 国内の大型プロジェクトにより作成されたリソースについては学会等で把握 ・ 海外のリソースについては論文、国際研究集会等で情報を収集。 (アクセス、受け入れ方法・状況) ・ 国内で作成されたリソースについては、成果論文の公表前後に開発者に寄託などを働きかけている。 寄託の受け入れはリソースの特徴及びスケールにより柔軟に対応。 【イネ】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ 国内の他の主たるイネリソース事業として、農水省ゲノムリソースセンターおよびジーンバンク事業があ -27- り、突然変異体や野生イネ(近縁種が主)、在来栽培イネ、その他の実験イネ系統を多数、収集・保存・ 提供。 ・ 海外では韓国、中国、フランス、オーストラリア・アメリカなどを中心に、突然変異体や DNA リソースを開 発・提供。送料を除くと、野生イネや在来栽培イネは無償で、人為的に開発された系統は実費を徴収 するのが、世界では一般的。 【コムギ】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ 農業生物資源ジーンバンク植物遺伝資源部門が保存事業を行っているが、こちらは品種が中心。 ・ 海外ではアメリカの USDA とカンザス州立大学 WGGRC、ドイツの IPK、また国際機関である CIMMYT、 ICARDA で多くの系統を保存。 (アクセス、受け入れ方法・状況) ・ 上記海外機関からの系統受け入れは CIMMYT を除き可能。 ・ 上記の機関の間での情報の共有 Global Crop Diversity Trust を構築中。 【オオムギ】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ 系統リソース 1. 農業生物資源研究所ジーンバンク:育種事業に伴って収集されたオオムギ約 9 千系統が保存さ れている。配付可能、課金あり。 2. 北海道立中央農業試験場:育種事業に伴って収集されたオオムギ系統が保存されている。配付 可否不明。 3. 海外の主な保存機関はアンケート①問1に記載。 4. はるな二条 TILLING 系統:岡山大学が新農業展開プロジェクトによって 6,000 系統を開発した。 DNA 個体別抽出済み。選抜システムなし。未公開。 ・ DNA リソース: 1. 完全長 cDNA:農業生物資源研究所(新農業展開プロジェクト)が開発した約 2 万クローン。平成 22 年 3 月公開予定。クローン配付の可能性は未定。 2. cDNA クローン:DDBJ/Genbank 配列公開済み。米国クレムゾン大学、アリゾナ州立大学から入手 可能。課金あり。 3. BAC ライブラリー:米国品種 Morex による。一部公開済み。米国クレムゾン大学、アリゾナ州立大 学から入手可能。課金あり。 4. BAC ライブラリー:野生オオムギライブラリー(岡山大学が新農業展開プロジェクトで開発)、18 万 クローン(6x)、未公開。 ・ リソースに関連した情報: 1. オオムギのゲノム配列:オオムギ国際シーケンシングコンソシアム。岡山大学では 3H 染色体の BAC プール解析と完全長 cDNA 解析(NBRP)で参加。 2. コアコレクションからの選抜系統についての SNP データ:390 系統を 1,300 個のマップ済み Unigene によって SNP タイピングしたデータ、未公開。 【藻類】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ 論文、学会、ゲノムプロジェクトのウェッブサイト、研究者からの情報により把握に努めている。国外のコ レクションで保存されている培養株についてはコレクションのウェッブサイトにより閲覧可能。 -28- (アクセス、受け入れ方法・状況) ・ 研究者からの寄託という形で受け入れが可能であり、実際にそのようにして受け入れている。 【キク】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ 農業生物資源ジーンバンク事業の栽培ギク品種が入手可能。 【アサガオ】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ 国内外の研究事業で開発されているリソースについては、論文等の発表に含まれるリソースを調査。 一般愛好家が保存している様々な系統は、展示会等で把握。 (アクセス、受け入れ方法・状況) ・ 論文発表等に含まれるリソースは、直接研究者に問い合わせて収集。一般愛好家の系統は、直接交 渉によって収集。 【ミヤコグサ・ダイズ】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ ミヤコグサにおける野生種および DNA リソースを体系的に整備している機関は他にない。 ・ 米国農務省(USDA)では、牧草育種の観点から、セイヨウミヤコグサ(Lotus corniculatus)を中心とする ミヤコグサ近縁種を 48 種、約 1,000 系統を保有。 ・ 英国 John Innes Center では、ミヤコグサ変異体データベース(Lotus japonicus mutant finder)が公開さ れており、約 4,000 系統の変異体を保有。同研究所では EMS 変異源処理した M2 変異体の中から目 的の遺伝子変異ラインのみをスクリーニングする TILLING(Targeting Induced Local Lesions IN Genomes)サービス(Lotus tilling homepage)も行っており、共同研究または実費を支払うことで利用可 能。 ・ USDA およびアイオワ大学のグループでは,ダイズデータベース(SoyBase)を整備しており、栽培種 (Glycine max)を中心として 19 種,約 20,000 系統を保有しその分譲も行っている。また、本データベー スでは、品種 Williams を用いた物理的遺伝地図の公開を行うとともに、ダイズ育種に関する様々な情 報も発信。 ・ 南イリノイ大学では、ダイズ EMS 変異体データベース(Soybean Mutant Database)を整備しており、約 3,000 系統の変異体を保有し、それらの TILLING 解析も行っている。 ・ ワシントン大学では、ダイズ EST プロジェクト(TIGR Soybean Gene Index)が進行中であり、約 330,000 の EST 情報が蓄積され公開されている。 ・ 国内においては、農林水産省のジーンバンク事業にいて栽培種を中心としたダイズ種子を取り扱って いる。 【トマト】 (国内の他の研究事業、海外で開発されたバイオリソースの把握) ・ Solanaceae Genomics Network(SGN):ゲノム解読に用いられたトマト品種 Heinz における BAC クローン、 cDNA クローン。 ・ コーネル大学:突然変異誘発系統。 ・ TGRC:野生種や近縁種などのトマト実験系統種子。 ・ EU-SOL:野生種や近縁種等の多数のトマト実験系統。 -29- ・ 野菜茶業研究所:ガンマ線放射を用いて変異体集団を作製。 ・ 玉川大学農学部:多系統のトマトの野生種を保存。 ・ ハイドロバード大学(インド):他系統のトマト突然変異誘発系統を有する。インド固有品種。 (アクセス、受け入れ方法・状況) ・ 上記の内、当機関より提供されているリソース:BAC および cDNA クローン(SGN)、突然変異誘発系統 (コーネル大学) ○他の公的プロジェクト等で整備されるリソースバンクとの連携【問5】〕 ○国際協力によるリソース開発への対応についての考え方【問5】 【シロイヌナズナ】 (連携相手、連携内容) ・ 農水省のリソース機関と定期的に情報交換。海外の機関とは毎年開催される国際研究推進委員会の 場で情報交換。 ・ リソース所在情報の国際的な One stop shop として機能している米国のシロイヌナズナ情報センターに 日本で開発されたリソースの情報を送付。 (連携の効果) ・ 米国のシロイヌナズナ情報センターへの情報送付により国際的なプレゼンスの向上と利用の活性化が 図られている。 (その他) ・ 米国のシロイヌナズナ情報サイトは日本の研究者も多く利用しているが、運営予算の削減が NSF より 予告されており、我が国への影響が出る懸念有り。 【イネ】 (連携相手、連携内容) ・ 農水省研究機関と会合あるいはメール会議による話し合いを行い、両者が対象とするリソースがほとん ど重複しないこと、将来も重複を避ける形で収集を進めることを確認。 ・ 国外では、国際イネ研究所のリソース事業関係者と面会し、主に野生イネで今後得られる情報を交換 し、お互いのリソースの信頼性や付加価値の向上に向けて連携を強化することで合意。 【コムギ】 (連携相手、連携内容) ・ CIMMYT、アメリカ GrainGene と連携。 ・ 主には情報の共有。 【オオムギ】 (連携相手、連携内容) ・ 主なオオムギの保存機関のうち、①米国農務省は育成品種、在来品種、実験系等を保存、②シリア ICARDA(国際機関)は中東地域の在来品種、野生系統を中心に保存、③ドイツ IPK は在来品種を中 心に保存、④スエーデン NordicGeneBank は突然変異系統、野生オオムギを中心に保存、⑤岡山大 学は東アジアの在来系統を中心に保存している。これら5つの機関が国際的なオオムギの系統保存セ ンターとなって、オオムギ全体の多様性を網羅するよう相互に材料を補完。また、これらの機関が中心 -30- となって、国際オオムギコアコレクションを配付。東アジアのコレクションは岡山大学が NBRP で配付。 【藻類】 (連携相手、連携内容) ・ 国外のバイオリソース機関とは、株の交換という形で連携。 (連携の効果) ・ ゲノム解析株の取得、多様な株の追加という点でメリットがあるが、すべての株が取得できるわけではな いし、重複保有がどの程度必要なのか疑問(現状では外国株も利用できる。どこかの国で囲い込みが あったときに備える必要がある?)。 ・ 発展途上国産の培養株については、交換保有することで公開できるというメリットがある。 ・ 国内においても、株交換の要請があるが、重複保有についてのメリットは危険分散以外に見出せない でいる。お互いに分担して、重複しないように保有するという連携は難しい場合がある。 【キク】 (連携相手、連携内容) ・ 国内のバイオリソース機関とは運営委員会を介して連携(運営委を委嘱)。 【アサガオ】 (連携相手、連携内容) ・ 国内外を通じて、アサガオ類の同様のリソースセンターは存在しないため、連携は行っていない。ただ、 同様のリソース事業への取り組みやアサガオ類を用いた研究の動きには常に目を配っており、国内外 の研究者と適宜情報交換は行っている。 【ミヤコグサ・ダイズ】 (連携相手、連携内容) ・ 現時点では、国内の他の事業および海外のリソースセンターとの連携は行っていない。 【トマト】 (連携相手、連携内容) ・ フランス国立農業研究所(INRA)のトマト研究グループと筑波大学との間でジョイントラボラトリーが開設 されており、研究材料や人材の交流が盛んに行われている。 ○同リソースを提供する民間企業【問6】〕 【シロイヌナズナ】 (リソースを提供する民間企業) ・ シロイヌナズナ種子、植物培養細胞、植物遺伝子ともに国内に民間企業なし。 ・ 海外にはシロイヌナズナの種子を販売する会社がある (リソースの種類、提供価格等の違い) ・ 海外の種子販売会社のものは、利用できる系統が少なく、増殖コストを削減するためバルクで増殖して -31- おり、高度な品質を要求する研究には不適。日本から購入するには検疫証明が必要。 【イネ】 (リソースを提供する民間企業) ・ 研究用として販売しているところはない。 【コムギ】 (リソースを提供する民間企業) ・ これまでのところ商用生産品種以外に、コムギ遺伝資源を販売している民間企業は無い。 【オオムギ】 (リソースを提供する民間企業) ・ 該当無し。 【藻類】 (リソースを提供する民間企業) ・ 研究用材料として利用できる培養株を販売している民間企業はないと思われる。 【キク】 (リソースを提供する民間企業) ・ 種々の花き関連の民間会社が栽培ギクの販売を行っている。 (リソースの種類、提供価格等の違い) ・ 恐らくほとんどが栽培ギクであり、本リソースが主に収集している野生種は販売していないと考えられ る。 【アサガオ】 (リソースを提供する民間企業) ・ 昨年まで研究用の標準系統のムラサキを販売している種苗会社があったが販売を中止。 ・ 園芸的に利用するための種子が国内外の数社から販売。 (リソースの種類、提供価格等の違い) ・ 我々が提供している質・量に匹敵するリソースを販売している民間企業はない。 ・ 民間企業の販売リソースは重複を除いて総計しても 50 種類以下であり、販売価格は、数粒程度の種 子が入ったものが100円〜300円程度。 【ミヤコグサ・ダイズ】 (リソースを提供する民間企業) ・ 当該課題と同じ材料を同じ目的で販売している民間企業は無い。 ・ オーストラリアの Margot Forde Forage Germplasm Centre(http://www.agresearch.co.nz/seeds/)では、 ミヤコグサ近縁種だけでなく、その他多くの植物種子を取り扱っているようである。 (リソースの種類、提供価格等の違い) -32- ・ 現在、Margot Forde Forage Germplasm Centre の提供価格等について調査を行っている。 【トマト】 (リソースを提供する民間企業) ・ トマトリソースを提供している民間企業は存在しない。 ○海外のバイオリソースセンターとの提供価格差。節減見込み 【問7】 【シロイヌナズナ】 (海外との価格差) ・ 海外のセンターから配布する種子系統の多くは開発者が増殖したうえで寄託されているため、系統あ たりの価格は安いが配布できる種子数は限られている。理研 BRC では自ら増殖を行うため実費手数 料は高めになるが、ニーズに応じた柔軟な在庫管理を行うことで利用者の希望により種子量を多めに 提供することが可能。 (節減見込額) ・ 過去の実績では年間約 400 万円を提供手数料として利用者から徴収し、提供に必要となる経費に充 当。平成 22 年 4 月に予定されている手数料改訂後も同水準の実費徴収見込み。 【イネ】 (海外との価格差) ・ 野生イネ:国際イネ研究所は、国際機関でもあり、生物多様性条約とのからみもあり、野生イネ系統を 含め無償で提供。他に野生イネを広範に保存、提供している機関はほとんどない。 ・ 実験イネ系統:T-DNA タグ系統(GM 植物)を提供する韓国機関(POSTECH)では、手数料・送料が $100/件+$50/系統,台湾の TRIM は$120/系統を徴収。しかし GM 植物の作出・維持管理に係る諸 費用を全て含むため、九大との価格比較は困難。USA, EU 等の組織からの公開提供は未だない。 (節減見込額) ・ 野生イネ:種子 320 円/系統、植物体 1580 円/系統、DNA 550 円の予定価格(遺伝研システム)で、年 600 系統のリクエストを仮定した場合、年間約 30 万円の経費節減を予想。 ・ 実験イネ系統:手数料・送料 751 円/件+約 50 円/系統の予定価格(九州大システム)で、年 50 件 1000 系統のリクエストを仮定した場合、年間約 8 万円の経費節減を予想。 【コムギ】 (海外との価格差) ・ これまでは、実費徴収をしていない(平成 22 年度から開始した際の金額は未定)。 ・ コムギ関係の海外のバイオリソースセンターで実費徴収をしているところはほとんど無く、唯一カンザス 州立大学では 1 系統 15 ドルを徴収。 (節減見込額) ・ 郵送料だけの実費徴収なら年 2,3 万円、1 系統 1000 円とすれば、H.20 年の実績約 2000 系統では約 200 万円。 【オオムギ】 -33- (海外との価格差) ・ NBRP では 22 年度からの課金によって1回の提供あたり平均 5000 円程度の課金を予定。 ・ 系統種子を海外リソースセンターが課金している例は見当たらない。国内では農業生物資源研究所ジ ーンバンクが唯一有償配布している(1 系統 5700 円、少量の場合は 10 系統 5700 円、コアコレクション 集団 15000 円)。DNA クローンは米国のみ公開して課金しており1クローン 10 ドル程度。 (節減見込額) ・ 20 万円程度の節減が見込まれる。 【藻類】 (海外との価格差) ・ 外国の主要なコレクションの平均価格は、非営利団体に対しては約 6500 円(7機関の平均。3000 円か ら 12000 円)、営利団体に対しては約 11500 円(5機関の平均。5000 円から 20000 円)であり、中核機 関の提供価格は平均値。 (節減見込額) ・ これまでも提供にかかわる経費の受益者負担を実施していたことから提供によって節減される経費は ない。 【キク】 (海外との価格差) ・ 海外では、植物園のコレクションなどに広義キク属が含まれることはあるが、広義キク属を中心としたリ ソースはない。植物園等から系統を入手する場合は研究用であれば無料と思われる。 (節減見込額) ・ 実費徴収で得られる年間経費は10,000円程度と考えられる。 【アサガオ】 (海外との価格差) ・ 海外にはアサガオ類のリソースを提供しているリソースセンターはないため該当せず。 (節減見込額) ・ これまでの目標および実績から、年あたりアサガオ系統が 250 系統(15件)、DNA クローンが 30 クロー ン(5 件)程度提供している。予定している提供価格をこれらの数値から計算すると、42,750 円(アサガ オ系統)、33,200 円(DNA クローン)、合計 75,950 円の提供金額が節減可能。 【ミヤコグサ・ダイズ】 (海外との価格差) ・ 当該生物種(近縁種)における海外リソースセンターの提供価格は、米国農務省(USDA)を始めとして 殆どが無料。 (節減見込額) ・ 実費徴収による徴収額は過去 7 年間の平均から試算すると、年間総徴収料は約 65 万円であるが、送 料やシステム使用料を差し引くと年間約 55 万円程度。 【トマト】 (海外との価格差) -34- ・ 海外バイオリソースセンターは変異体種子や cDNA を配布している SGN と、実験トマト種子を提供して いる TGRC が知られるが、これらの機関は無償でリソースを提供。 ○その他。「NBRP 中核機関への支援方法」「新たなバイオリソース開発の必要性」「提供のあり方」 について特に必要と考えられる事項 【問8】 【シロイヌナズナ】 (NBRP 中核機関への支援方法) ・ 保存技術の開発などリソースに関わる技術開発は研究と異なり外部資金を獲得しにくくまた論文成果 も出しにくいが、リソース事業の発展には不可欠。他の制度での支援が難しいリソースに特化した技術 開発への支援は今後とも継続するべき。 ・ 我が国はゲノム情報の取得とゲノムリソースの開発に対する公的支援が不足しており、諸外国に比べ 著しく立ち遅れている。おりしも次世代シークエンサーの実用化が本格化しつつあり、直ちに対応策を とらないと諸外国と決定的な差がつきかねない状況。収集・保存・提供事業とは別に、我が国で取り組 むべき開発課題を選定して機動的に投資できるよう制度設計すべき。 (新たなバイオリソース開発の必要性) ・ 文部科学省の公的資金により開発されたリソースは必ず発表後に中核機関に寄託するよう制度化され ると、投資効果のいっそうの向上につながる。 (提供のあり方) ・ 学術研究への提供では提供実費の徴収にとどめる現在の制度を守ってゆくべきである。研究者への 過度な負担を求めても結局研究開発費の実質減になるだけである。また海外との差をつけない方針も 堅持すべきである。海外価格を導入すれば海外のリソース機関も対抗手段をとりかねず、国際的なリソ ースの流通を阻害し我が国の研究活動にとっても利益にはならないであろう。 【イネ】 (NBRP 中核機関への支援方法) ・ リソースはリソース単独では成り立たず、広範なゲノム情報、生物学情報とのリンクが不可欠だが、多く の場合これらの情報を抽出するには細かな対応と、時間と労力がかかり、しかも極めて専門性の高い 人材が必要。現存の職員だけでは、行うべき多様な職務、将来へつながるリソースの育成、収集、分 譲のすべてを遂行することは困難で、実践を通じた人材育成がなくしては、リソースを支える母体が機 能しなくなる。よって、各リソースの中核機関は、このような人材を育てる場としても機能する必要があり、 中核機関への支援方法の一つとして、ポスドクではなく技官でもない専門性の高い人材を各機関で雇 用させるための支援措置が必要。 (新たなバイオリソース開発の必要性) ・ 既に他のプロジェクトで一部の開発はあるが、野生イネの染色体断片を栽培、野生の系統に取り込ん だ染色体置換系統の開発・収集は必須。 ・ 今後パーソナルシークエンスの時代になり、ゲノム情報はある程度簡便に手に入るようになるが、野生 イネ染色体置換系統群のようなユニークな特性をもつ系統は、独自のリソースとして、研究コミュニティ と世界への発信には不可欠。 ・ 全系統をシリーズで開発するには、20-30 年単位の交配と選抜の実施か、あるいは短期間なら大規模 プロジェクトが必須である。 ・ イネに限らず開発、整備された貴重なリソースは、情報付加が必須であり、このようなリソース高度化へ の継続的な方策なくしては、世界トップレベルリソースとその維持は望めない。 (提供のあり方) -35- ・ 現状で何とか処理は進められるが、個別事情に対する海外とのやり取りなどを含め、研究者レベルで の対応は欠かせない。また、植物材料については、検疫措置が各国で異なっており、送付国側で検疫 所に出向く必要のある国には現在提供を行っていない。 ・ 多様性条約による法的措置によっては、対応を変えざるを得なくなる可能性もあり、研究材料に関して は、主要農作物であっても、いかなる国間のやり取りにも阻害的要素を排除していただけるよう切望。 【コムギ】 (NBRP 中核機関への支援方法) ・ (新たなバイオリソース開発の必要性) ・ 野生種には耐乾燥や耐塩性等良い形質を持つものが多くあるが、それを直接育種に使うことができな い。野生種などの収集系統を育種に利用できるようにするため、新たなバイオリソース系統の育成と技 術開発が望まれる。 (提供のあり方) ・ 本事業を世界に対する貢献と位置づけるのか、営利事業と位置づけるのを明らかにすべき。貢献とす るなら、種子の配布のように、配布そのものにあまり経費のかからない場合には、実費徴収は郵送料く らいにとどめる事を希望。実費を徴収する手間と経費が実際の保存事業そのものを圧迫することを危 惧。 【オオムギ】 (NBRP 中核機関への支援方法) ・ (新たなバイオリソース開発の必要性) ・ 遺伝実験や育種に利用される系統リソースの提供は恒常的に安定して続いているが、新たなリソース が追加されることによって、ゲノム育種、遺伝子単離などに活用可能なリソース整備が可能となると考え られる。現状では NBRP 以外の競争的資金でリソース開発を行う必要があり、これらの競争的資金では リソースを開発できても配付可能な状態にできない場合が多い(たとえば、TILLING や BAC クローンが あっても、その利用に必要な選抜システムや装置がないことなど)。DNA リソースに対する需要の変化 は早いので、ユーザーのニーズを盛り込んだリソースの開発と提供が必要。 (提供のあり方) ・ 22 年度からの課金によって、リソースの配付手続きが複雑になり、時間がかかることを予想。さらに、海 外では系統種子に対する課金が一般的でないために、配付を断念するユーザーが出てくることを懸念。 系統種子やマップ集団から抽出した DNA の配付、実費を安価に設定した標準系統のセットなどを新 たにメニューに盛り込むなどしてユーザーの興味を引きつける努力をする予定。 【藻類】 (NBRP 中核機関への支援方法) (新たなバイオリソース開発の必要性) (提供のあり方) ・ いずれも無回答。 【キク】 (新たなバイオリソース開発の必要性) -36- ・ 新たなバイオリソースが次々と寄託されてくるリソースでなければ、自らの新たなリソース開発はリソース の活性化にとって重要。サイドワーク的であっても、ある程度リソース開発に力を注ぐような体制が、長 期的には重要。 【アサガオ】 (NBRP 中核機関への支援方法) ・ 中核機関のある九州大学では NBRP 等の外部資金を得ているプロジェクトで用いるスペースを、有料 で提供している。ただし、現状ではこの経費を NBRP の資金では支払えないとされていることが問題。 ・ 種子や DNA クローン等の保存には、冷凍・冷蔵庫が必須であるが、長期保存を行う過程で、必ず修理 や買い換えの必要が出てくる。この場合、中核・分担問わずに臨時に経費の増額を認める等の仕組み があると良い。 (新たなバイオリソース開発の必要性) ・ 別個のプロジェクトでかまわないので、我々の取り扱っているアサガオを含めた、ゲノム情報が未整備 のリソースについては、その付加価値を高めるためにもゲノム配列の決定等の支援をしていただきたい。 また、研究の利便性や付加価値を高めるためにも突然変異誘発系統、形質転換系統などの系統開発 の積極的なサポートもお願いしたい。 【ミヤコグサ・ダイズ】 ・ バイオリソース整備が基礎研究と応用研究の「橋渡し」として担っていけるように努力したい。特にミヤコ グサの基礎研究がダイズに応用できるようにすることが重要である。また、リソースを維持していくため には教育にも力を向ける必要がある。幸いにも宮崎大学は、ミヤコグサ・ダイズリソースをモデルとして 農学研究科(修士)で特別研究経費(概算要求平成 18 年から 21 年度)「遺伝資源専門技術者養成モ デルカリキュラムの開発」で京都工繊大のショウジョウバエ遺伝資源センターと連携して行ってきた。さ らに、平成 22 年から 26 年度には同じく特別研究経費の新規事業として「生物遺伝資源教育プログラ ムの国際的展開」をアジアで展開することとなった。5 年後には宮崎大学がアジアでの植物遺伝資源 の拠点、さらには世界でのミヤコグサ・ダイズリソース拠点として教育・研究を担っていけるようにした い。 【トマト】 (新たなバイオリソース開発の必要性) ・ 新たなリソース開発は極めて重要な課題だが、新規ユーザーの獲得を目指すために、また 一般への配布を考慮したリソースを開発できる機関はバイオリソース中核機関を含めてわず かであるため、中核機関による新規リソース開発の重要性は極めて高い。 -37-