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エコオフィス活動の推進
LED照明 2020年度に向けた新たなNTTグループ環境ビジョン∼THE GREEN VISION 2020∼ シンクライアント 電力の見える化 特 集 エコオフィス活動の推進 ひ ぐ ち NTT西日本グループでは,環境経営を推進するために4つの重点的なテー せ い じ ろ う たけうち ひさあき 樋口 清二郎 /竹内 久晃 マを「Save Resource Program(セーブリソースプログラム) 」として提唱し, あきやま か ず や これに取り組んでいます.その重点テーマの1つである「エコオフィス活動 秋山 一也 /浦田 穣司 う ら た じょうじ の推進」の一環として,NTT西日本兵庫支店神戸中央ビルにて実施している NTT西日本 「エコオフィストライアル」について紹介します. Programを提唱しています.その取り 環境経営の推進 組み概要を図1に示します.ここでは, 的なテーマを掲げて取り組んでいます. エコオフィストライアルとは NTT西日本グループでは,地球環 お客さま設備の資源の有効活用を促進 境保護を企業としての重要な責務とし する「お客さま情報機器のリユース・ 私たちが事業活動を行うオフィスで てとらえ,NTT西日本グループ中期経 リサイクル推進」,地球温暖化防止の は,PC・照明・空調等で大量の電力 営戦略のもと,環境経営の推進に取り 取り組みを強化する「ネットワーク通 を消費していることに加え,多くの紙 組んでいます.この環境経営を行うた 信設備の省電力化・効率向上」「エコ を消費しています.そこで,私たち自 めの重要なテーマとして,自社のみな オフィス活動の推進」,社会全体の環 身が働くオフィスにおいて,環境負荷 らず,社会への環境負荷低減効果の 境負荷低減に貢献する「環境ソリュー 低減につながる取り組みとして,2009 還 元 を 目 的 と し た Save Resource ション販売の推進」という4つの重点 年12月から,エコオフィストライアル ーお客さま設備の資源の有効活用を推進ー ー地球温暖化防止の取り組みを強化ー ①お客さま情報機器のリユース・リサイクル推進 情報機器リユースの一層の促進 お客さまPC・情報家電のリユース ■ リサイクル,回収事業の拡大 ②ネットワーク通信設備の省電力化・効率向上 ネットワーク情報機器の省電力化の推進 ■ ■ ■ ■「グリーンNTT」の推進(太陽光発電等の導入推進) 3R ■ 協力会社等と連携した「もったいない」提案活動の推進 等 ③エコオフィス活動の推進 ■ 情報機器,情報家電等 事業活動におけるIT・ネットワーク活用の一層の推進 通信設備,システム ー社会全体の環境負荷低減に貢献ー ④環境ソリューション販売の推進 ■ CO2排出量削減等につながるソリュー ションの開発・販売を推進 通信 ケーブル ONU等 お客さま (一般消費者) 交換機, 伝送装置 お客さま (法人) 制御端末 NTT西日本 図1 「Save Resource Program」の取り組み概要 NTT技術ジャーナル 2011.2 17 2020年度に向けた新たなNTTグループ環境ビジョン∼THE GREEN VISION 2020∼ をNTT西日本兵庫支店神戸中央ビル をはじめとする全12拠点にて開始しま 3つのコンセプト 意識・行動の変革 環境配慮照明器具等 ・LED,人感センサ ・高効率蛍光灯 ①新技術を活用した省エネ 業務・照明オペレーション ・ペーパーレス化 ・照明の効率運用 シンクライアントの導入 ・ICT装置の省エネ ②新しいワークスタイル の実践と生産性の向上 ファシリティの整備 した. 3つのコンセプト エコオフィスの構築にあたって,3 つのコンセプトとそれを実現するための 施策を定めました(図2).今回のト フリーアドレス化 ・コミュニケーションの 活性化 ライアルでは, ① 新技術を活用した省エネ ② 新しいワークスタイルの実践と エコマインドの浸透 ・効果の確認と,さらなる 改善 ・環境への取り組み意識の 定着 ③見える化による 効果の測定 エコモニタ ・環境配慮型製品 生産性の向上 図2 3つのコンセプトと展開施策 ③ 見える化による効果の測定 の3つのコンセプトのもと,照明・PC の電 力 使 用 量 5 0 % 削 減 , 紙 使 用 量 3 0 %削減を目標に掲げ,「ファシリ LEDダウンライト 高効率蛍光灯 ティの整備(ハード面)」と,「社員の 意識・行動の変革(ソフト面)」の2 LEDタスクライト つの側面から施策を展開しています. 展開施策のうち,ファシリティの整 備では,環境配慮照明器具等やシン クライアント端末の導入に加え,エコ 図3 新たに設置した照明の外観 モニタ設置による電力削減実績の見え る化を行っています.また社員の意 識・行動の変革では,これらのツール そこで,本トライアルでは,一部の天 用することによって,自然光と組み合 や見える化によって,社員自らがペー 井の蛍光灯を撤去したうえで,天井や わせて必要な照度になるよう出力を制 パーレス化の推進や照明の効率的運用 周囲の空間を照らすためのLEDアンビ 限し,一層の消費電力削減を図って に取り組むことができるような仕組み エントライトと,手元を照らすための います. づくりをしています.続いて,主要な LEDタスクライトに切り替えました. 展開施策について解説します. 加えて,細かな作業などにより,高い PCの電力使用量削減を目的に,シ 照度を必要とする場合にも対応できる ンクライアント端末を導入しました. ように,LEDダウンライトを補助的に シンクライアント端末導入による効果 併設しました.また,打合せコーナー を図4に示します.シンクライアント や会議スペースにおいては,照明を常 端末は,従来のデスクトップ型PC等 新たに設置した照明の外観を図3に 時使用する必要がないことから,高効 のように,個人の端末にCPU(Cen- 示します.一般的なオフィスの天井照 率蛍光灯と人感センサを併用し,自動 tral Processing Unit:中央演算処 明では,蛍光灯を使用しています.し で電源のオン・オフができるようにし 理装置)やハードディスクを保有せず, かし,オフィス内では,必要以上の照 ました. ネットワーク機能や入出力機能のみで ファシリティの整備 (1) LED照明,人感センサ,照度 センサ等の活用 度を確保されていることが多く,それ だけに無駄な電力を消費しています. 18 NTT技術ジャーナル 2011.2 (2) シンクライアントの活用 さらに,窓側に設置した蛍光灯につ 構成されます.このため,従来のデス いては,人感センサと照度センサを併 クトップ型PCでは消費電力(ディス 特 集 プレイを含む)が約75 Wであるのに対 し,シンクライアント端末では約30 W となり,オフィス側における消費電力 の大幅削減が可能となります.また, シンクライアントの利用者には,専用 のIDカードを1枚配布しています.こ Before After オフィスで一般的に利用されているデスクトップ PC等と比較して,シンクライアントは省電力性能 が高い Before After シンクライアントはHDD等の駆動部を持たず, 発熱が小さい. オフィス空調の省エネ化にも貢献 のI D カードをD T U * 1 ( D e s k t o p ICカード Terminal Units:デスクトップター 紙資源 ごみ(廃棄物) ミナル装置)に挿入し,ディスプレイ に作業中の画面を表示させます.逆に 離席するときなどは,IDカードを抜く ことにより,作業中の画面はディスプ Before After シンクライアントによりフリーアドレス化.自席 がないため紙文書の電子化が促進され,空間利用 効率も向上 Before After ICカードでデスクトップ環境を携帯.資料の持 参不要.紙資源の節約と印刷稼働の低減を実現 図4 シンクライアント端末導入による効果 レイに表示されなくなります.その結 果,画面の消し忘れによる情報漏洩防 止にも寄与しています. するなどのルール化も図っています.ま また,シンクライアント端末は,紙 た,ペーパーレス化により個人で保管 使用量削減にも有効なツールとして活 する書類が減少したため,個人の脇卓 用できます.シンクライアント端末と を廃止することができました.その結 プロジェクタ,ホワイトボードを活用 果生じた余剰スペースは,新たな会議 した会議スペースを図5に示します. スペースとして有効活用しています. 会議スペースにシンクライアント端末 を導入することにより,別のフロアで 作業していたとしても,IDカードを1 意識・行動の変革 図5 シンクライアント端末と プロジェクタ等の活用例 (1) 見える化の実施 枚持って行き,そのカードを会議ス 次に,社員の意識・行動の変革に ペースにあるDTUに挿入することによ よる削減の取り組みを紹介します.電 り,即座に自端末のデスクトップ画面 力の見える化のイメージを図6に示し を表示させることが可能となります. ます.見える化については,照明,空 フロア内をフリーアドレス*2化しまし そこで,会議スペースでは,シンクラ 調,コンセントの分電盤に47個の電力 た.これにより従来のPC端末のよう イアントとプロジェクタやディスプレイ センサを設置し,15分間隔でデータ測 に,端末と利用者がくくりつけられて を組み合わせて使用することによって, 定を行っています.フロア内では大型 いないために,自由に座席を移動する 配布資料をなくしたペーパーレス会議 ディスプレイをエコモニタとして設置 ことが可能となりました.その結果 , を実現しています.また,周囲に配置 し,照明,空調,コンセントごとの詳 社員どうしが気軽にコミュニケーショ されたホワイトボードはプロジェクタの 細なデータを年,月,週,日単位で公 ンを図ることができるようになっていま スクリーンとしても利用可能です. 開しています.加えて,このデータは す.兵庫支店のトライアルでは,残業 社員が個人の端末から常時確認できる 時などで社員が少なくなった場合には, ようにしました.エコモニタにより,社 社員を一部のワーキングエリアに集め, (3) プリンタ・コピー機の台数削減 紙の印刷を削減する取り組みとして, (2) フリーアドレスの導入 シンクライアントの導入と併せて, プリンタ・コピー機の台数削減を行い 員自らが実施した取り組みの削減効果 ました.さらに,ペーパーレス化を推 をリアルタイムに確認することが可能 *1 進するために,外部から入手した紙資 となり,社員の電力削減に対するモチ *2 料をスキャナで読み取り,データ保存 ベーション維持につながっています. DTU:シンクライアントサーバから表示情 報を受信するために使用される機器. フリーアドレス:座席を決めずに業務を行 うスタイル. NTT技術ジャーナル 2011.2 19 2020年度に向けた新たなNTTグループ環境ビジョン∼THE GREEN VISION 2020∼ (kw) 4.25 4.00 3.75 3.50 3.25 3.00 2.75 消 2.50 費 電 2.25 力 2.00 1.75 1.50 1.25 1.00 0.75 0.50 0.25 0.00 23日 0:00 今後の展開 コンセント 照明 エコオフィストライアルで掲げた照 明・PCの電力使用量50%削減の目標 に対しては,2010年度9月末実績で は46%と若干目標値を下回りました. 一方で,紙使用量30%削減の目標に 対 しては, 2 0 1 0 年 度 9 月 末 実 績 で 32%の削減を達成しました.今後は, 電力目標達成に向けてシンクライアン トサーバの運用方法の改善等,さらな 23日 4:00 23日 8:00 23日 12:00 23日 16:00 23日 20:00 24日 0:00 日時 図6 電力の見える化イメージ る省エネに向けた取り組みを推進して いきます.また,今回のエコオフィス トライアルにて蓄積したノウハウは, NTT西日本グループ各社へ水平展開 が集うリフレッシュコーナーに,環境 を図っていきます. にやさしい製品として,古材を利用し たテーブルや,竹集成材チェア,さら には100%カーボンオフセット素材を用 古材カウンターテーブル 古材テーブル いたカーペットを採用しました.竹材 など環境にやさしい素材を用いた家具 竹集成材チェア や,植物を取り入れたデザインにする ことにより,視覚的にエコを訴える工 夫をしました.また,オフィス内にお いて使用する椅子や机には,環境に配 カーボンオフセットカーペット 図7 環境にやさしい製品の使用例 慮された製品を導入し,椅子について は,汚れやヘタリの生じやすい背座の クッションが交換可能な製品を採用し 無人エリアと有人エリアをロールスク ています.このような製品を長期間使 リーンで仕切り,無人となったエリア 用することによって,オフィス廃棄物 の照明や空調を停止し,消費電力の の削減を目指しています.これらの取 削減を図っています. り組みにより,エコオフィストライアル また,フリーアドレス化しても時間 を実施している職場で働く社員からは, とともに座席が固定化していきます. エコに対する意識が変わったとの声が これに対し,社員が朝出社した際に, 出ています.環境に配慮した職場で働 その日に使用する座席が自動的に指定 くことによって,社員のエコに関する されるシステムを導入しました. 自覚が芽生え,不要な電気を消すなど (3) 環境にやさしい製品の使用 環境にやさしい製品の使用例を図7 自主的な活動にもつながっています. (後列左から)樋口 清二郎/ 竹内 久晃 (前列左から)浦田 穣司/ 秋山 一也 私たち自身が働くオフィスの環境負荷低 減につながる取り組みを,今後も推進して いきます. ◆問い合わせ先 NTT西日本 技術革新部 環境経営推進室 TEL 06-4793-3761 FAX 06-4793-4855 E-mail kankyo west.ntt.co.jp に示します.本トライアルでは,社員 10-3483-2 20 NTT技術ジャーナル 2011.2