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時間帯別予備力供給コスト推定に関する検討

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時間帯別予備力供給コスト推定に関する検討
6-061
平成 22 年電気学会全国大会
時間帯別予備力供給コスト推定に関する検討
伊藤
正紀*(東北大学),岡田
健司 (東北大学・電力中央研究所)
Study of estimation for time-difference reserve supply cost
Ito Masaki(Tohoku University), Kenji Okada(Tohoku University・CRIEPI)
1.まえがき
T:終端時間、Fi(Pi(t)):時間 t の i 発電機の出力 Pi(t)[MW]
近年、世界的な地球温暖化問題への意識の高まりから、
燃料費用(2 次関数形式)、N:発電機の総数、STi:i 発
わが国においても「低炭素電力供給システム」の実現に向
電機の起動費[¥]、Ui(t):t 時間の i 発電機の運転状況(0:
けて、太陽光や風力などの再生可能エネルギー電源の活用
停止、1:稼働)、Pmini、Pmaxi:i 発電機の発電出力の上
が注目されている。しかし、発電出力が日照や天候によっ
下限制約[MW]、ΔPi(t):時間 t の i 発電機の出力変化
て左右される再生可能エネルギー電源の大量系統接続によ
[MW]、ΔPmini(t)(=min{ΔPmini,Pi(t)- Pmini })、ΔPmaxi (t)
り、系統周波数や予備力の維持が困難になることが懸念さ
(=min{ΔPmaxi,Pmaxi-Pi(t)}) :時間 t の i 発電機の出力変
れる。著者らは、これまでに予備力コストの推定方法につ
化の上下限制約、PD(t):時間 t の系統需要[MW]、R(t)(=
いて検討してきた 。ただし、太陽光などの間欠的な出力変
PD(t)×αt)):時間 t の確保すべき予備力[MW]、xion(t-1):
動により必要予備力も時間帯別に異なる可能性が高い。本
時間 t-1 の発電機 i の連続運転時間[時間]、Tion:発電機
研究では、時間毎に確保すべき予備力が異なる場合を想定
i の最小運転時間[時間]、xioff(t-1):同様に時刻 t-1 にお
し、系統並列火力電源による予備力確保・供給における時
ける発電機 i の連続停止時間[時間]、発電機 i の最小停
間帯別コスト推定手法について検討した。
止時間を Tioff[時間] 。
(1)
2.時間帯別予備力コスト推定メカニズム
<2・1>時間帯別予備力コストの定義
ただし、天候急変など太陽光発電等の想定外の出力変動
本研究では、時
が発生する可能性もあることから、瞬時に対応可能な貯蔵
間 t において、
並列発電機の出力変化制約を考慮して想定し
設備が設置されていない場合には系統側で確保すべき予備
た予備力率(αt)を確保した時の総発電コスト Ct(αt)(燃料
力は、上側(発電出力増加)と下側(発電出力減尐)で異なるも
費ベース)と確保しなかったときの総発電コスト Ct(0)との
のと思われる。そこで本研究では、(4)式の予備力バランス
差を、その予備力率( αt)を確保するために要するコスト
制約は、上側予備力(R+(t)=PD(t) ・α +t)と下側予備力(R- (t)
CRt(αt)(以下、予備力確保コスト)とする。
CRT (t )  Ct (t )  Ct (0)
=PD(t)・α-t)の両者を考慮した。従って、(6)式の出力変化制
約も上側・下側の両者を考慮し、並列発電機で上側予備力
(1)
また実際には予備力を供給した場合にも追加的にコスト
(ΔPi+(t))と下側予備力(ΔPi-(t))の両者を確保する(1)。
が発生する。そこで本研究では、前述の予備力確保コスト
<2・3>優先順位法による起動電源の選択
に加えて、このコストを予備力供給時の必要コスト(以下、
な時間帯別予備力確保を考慮し発電機の起動停止問題を解
予備力供給コスト)と仮定する。
く際に、本研究では計算時間等の負担を軽減するために、
<2・2>時間帯別需給バランスの確保
本研究では、
前述のよう
優先順位法に基づき各時間帯の起動電源を選択した。なお、
(3)~(8)式の制約条件を満足し(2)式の目的関数を最小化と
本研究では、文献(2)で用いられている方法を参考に、経済
する火力電源の起動停止問題として定式化し、時間帯別の
性を重視(燃料単価の安い順)に作成した優先順位リスト
予備力確保と並列発電機の出力変化制約を考慮し、各時間
をベースに、起動電源を選択する。ただし、選択した起動
帯の需給バランスを求める。
電源に関し最低運転制約((7)式)および最低停止制約((8)式)
T N
OBJ  [ Fi ( Pi (t ))U i (t )  STi {U i (t )(1  U i (t  1))}]
t 1i 1
(2)
N
PD (t )  U i (t )  Pi (t )
(3)
i 1
i 1
Ui(t)・Pmini(t)≦Pi(t)≦Ui(t)・Pmaxi(t)
Ui(t)・ΔPmini(t)≦ΔPi(t)≦Ui(t)・ΔPmaxi(t)
Xion(t-1)≧Tion
Xioff(t-1)≧Tioff
2010/3/17~19
東京
制約を満足する他の起動パターンから起動電源を選択する
などの補正を行う。
3.シミュレーション結果とその考察
N
R(t )  U i (t )  Pi (t )
が満足していない場合などの制約違反があった場合には、
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
<3・1>シミュレーション条件の設定
表 1 に今回のシ
ミュレーションに用いた各発電機の各種条件を示す。なお、
各電源の出力変化制約は、電源種別に関係なく、一律に定
格出力(Pmaxi)の 30%と想定した。図 1 に、今回のシミュ
レーション分析に用いた想定需要を示す。図 1 に示すよう
-107(第 6 分冊)
©2010 IEE Japan
6-061
平成 22 年電気学会全国大会
に、本来の系統負荷(図中の Original demand)と比較して、
1400
想定負荷(図中の Assumed demand)は昼間時間帯で大きく
1200
Demand [MW]
落ち込む。これは、翌日の天候を晴天として想定し、系統
内に導入された約 300MW 規模(ピーク負荷の約 34%)の
太陽光発電設備の発電電力が需要側で消費されたものと想
定したためである。しかし、実運用時の天候の変化によっ
ては 太陽光発 電設備か ら発電さ れず、その 出力相当 分
1000
800
600
400
(Original demand-Assumed demand)の予備力の確保が必要
200
となる場合もある。そこで、本研究では、通常確保される
0
Original demand
Assumed demand
気温等の需要変化分や電源脱落分の 3~8%に加え、太陽光
1
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23
発電設備の出力分も系統側で確保する予備力とした。
Time [h]
想定した各
種条件の下、前述の方法により 1 日 24 時間の電源の起動パ
ターンを求めた結果、各電源の出力変化制約を考慮するこ
※Introduction of Renewable Generation (such as PV) is 20% of peak
demand
図 1 想定した日負荷曲線と需要変動
Fig.1. Assumptions of daily load curve and demand change
とで、上側予備力(R+(t))を満足させるために、G8 と G9
Reserve securing cost
Total generation cost included R+ reserve supply
Total generation cost
Total generation cost included R- reserve supply
が 11 時間帯に新たに起動しなければならない。この新規電
源の起動と他の並列電源の運転パターンの変化(例えば、
Reserve securing cost(1000Yen)
350
定格運転から部分負荷運転への変更など)により、各時間
帯の総発電コストは変化する。この総発電コストの変化を、
本研究で定義した予備力確保コストとすると、図 2 に示す
ような値となる。図 2 より、予備率の大きな時間帯(11・
300
3000
250
2500
200
2000
150
14・15 時間帯)では、予備力確保コストが増加しているこ
とが判る。また、図 2 に示すように予備率の大きな時間帯
(7~18 時間帯)で上側・下側予備力の発動時の総発電コス
1500
Reserve providing cost
100
1000
50
500
0
トの差分(予備力供給コスト)も拡大していることが判る。
0
1
3
5
7
9
きる場合である。また、紙面の都合上記載を省略した軽負
Pmax
Generation cost
ai
bi
ci
[103¥/MW2] [103¥/MW] [103¥]
15
17
19
21
23
の確保の観点から系統に並列する電源の数が限られるため
に、時間帯別に変動する予備力を全て系統側の並列電源で
表 1 各発電機の想定条件
Table1. Assumption of each generator
Pmin
13
図 2 時間帯別の予備力コストの変化
Fig.2. Change on reserve cost of each time
設備などの出力変動を系統内の発電設備により十分吸収で
[MW] [MW]
11
Time (h)
ただし、今回のシミュレーション結果では、太陽光発電
荷時等のシミュレーション分析の結果では、需給バランス
3500
Total generation cost(1000Yen)
<3・2>シミュレーション結果とその考察
確保することが困難となる場合もあった。
SC Tion Tioff
[¥] [h] [h]
4.まとめと今後の課題
本研究では、系統並列火力電源による予備力確保・供給
における時間帯別予備力コスト推定手法を検討した。シミ
G1
150
455
0.0000528
1.7809
110.0
495
8
8
G2
150
455
0.0000341
1.8986
106.7
550
8
8
G3
20
130
0.0002200
1.8260
77.0
60.5
5
5
G4
20
130
0.0002321
1.8150
74.8
61.6
5
5
G5
25
162
0.0004378
2.1670
49.5
99
6
6
G6
20
80
0.0007832
2.4486
40.7
18.7
3
3
需給バランス資源(貯蔵設備や需要反応)との協調方策の
G7
25
85
0.0000869
3.0514
52.8
28.6
3
3
検討などが挙げられる。
G8
10
55
0.0004543
2.8512
72.6
3.3
1
1
G9
10
55
0.0002442
2.9997
73.15
3.3
1
1
G10
10
55
0.0001903
3.0569
73.7
3.3
1
ュレーション分析より、時間帯毎に確保すべき予備力要求
が異なる場合でも、本提案手法を用いることで時間帯別予
備力コストを推定するこが可能であることが示された。今
後の研究課題として、ネットワーク制約(送電容量制約な
ど)や多地域系統の考慮など分析モデルの拡張の他、他の
文
1
Generation cost function Fi (Pi(t))=ai Pi(t) 2+bi Pi(t)+ci , ΔPmini=ΔPmaxi =
0.3×Pmaxi[MW]
2010/3/17~19
東京
-108(第 6 分冊)
献
(1)伊藤正紀・岡田健司・田中和幸:平成 21 年電気学会電力
系統技術・電力技術合同研究会、PE-09-140/PSE-09-148
(2) 吉川元庸・澤敏之・中島宏・木下光夫・榑林芳之・中田
祐司:電学論 B、114-12、1220(1994)
©2010 IEE Japan
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