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東山動植物園遊園地への巡回ガイド端末の導入による 混雑緩和の

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東山動植物園遊園地への巡回ガイド端末の導入による 混雑緩和の
情報処理学会第 77 回全国大会
4R-09
東山動植物園遊園地への巡回ガイド端末の導入による
混雑緩和のシミュレーション評価
聶
耳†
鈴木
麗璽†
有田
隆也†
‡
名古屋大学 大学院情報科学研究科
1.
はじめに
近年,スマートフォンなどの携帯型通信端末の開発と普及が
急速に進んでいる,それに伴い,それに応じて行動をダイナミ
ックに変えるような社会に変わりつつある.そのような社会で
は,人々が個別に行った判断が集合的な効果によって意図しな
い結果を生み出す現象も生じうる.例えば,ある道路が空いて
いるという情報を得た多くのドライバがその道路を含む経路を
選択することによって,逆に渋滞を生み出してしまうような場
合である.
本研究では身近な遊園地を題材とする.遊園地やイベント会
場における集合的な現象に着目した研究として,服部ら[3]は,
複数の施設から構成される仮想的な遊園地における混雑情報を
持つ来園者の割合を設定し,情報所持率と来園者群れの滞在時
間の減尐や行列の分散について議論した.ただし,施設の配置
等の要因のもつ混雑への影響について明確に議論されていなか
った.また,鈴木らは[2],施設の配置による混雑の偏りと混雑
情報提供による偏りの調節について議論しており,遅延による
副次的効果の存在を示した.ただし,来園者行動パターンは極
めて単純化されたものであった.
本稿では,名古屋市東山動植物園遊園地を題材とし,その各
施設ごとの仕様や入園者に関する統計データ,調査に基づく来
園者の行動パターン等のデータに基づいてモデル化した上で,
次に訪れる施設を指示する巡回ガイドを導入した場合,いかに
上記のような集合的な現象を回避して,来園者の待ち時間を減
らすことができるかということをシミュレーションにより定量
的に評価する.
2.
東山動植物園遊園地
東山動植物園遊園地の係の方から,特にゴールデンウィーク
の時期の混雑の様子も取材した上で,同遊園地を対象とするこ
とに決めた.同遊園地には16個の施設(アトラクション)が,
広場のようになっている部分もあるが,基本的には環状の歩道
に沿って配置されている.出入りするためのゲートは3つある.
遊園地を図1のような形状で表現した.ノードは23個(施設
を含む)あり,それを26本のリンクが結び,その上を入園者
が移動する.各施設のもつ情報は,最大収容人数と体験所要時
間であり,施設以外のノードのもつ情報は連接しているノード
番号である.また,リンクも長さの情報をもつ.各施設間の利
用者の移動時間,各施設の運行間隔時間,グループのメンバー
数,一日における遊園地滞在人数の推移などは遊園地で調査し
て,遊園地や入園者のモデル化に役立てた.たとえば,体験所
要時間は固定している施設がほとんどであるが,「ふしぎたん
けんの館」と「ミラーハウス」のみ入園者によって異なるので,
計測した利用時間の平均値により体験所要時間にした.図2は
各施設の月平均利用者,最大収容人数,体験所要時間を示す.
図1
図2
3.
† ER NIE, REIJI SUZUKI, TAKAYA ARITA
‡Graduate School of Information Science, Nagoya University
各施設の最大収容人数,体験所要時間,体験者
平均人数(千人 /月)
巡回ガイド端末の導入
各ゲートで,来園者は自由にガイド端末を入手可能である
と仮定する.まず,来園者が端末に表示している16個の施設
の中で体験したいものを選択する.その後,次の施設を選ぶご
とに,残りの体験予定リストの中から表示しているものに従っ
て進む.体験予定リストが全部終わるまで巡回する.
提案するガイド端末を以下で設計する.ガイド端末は利用
者が次の目的地を選択する時点で,体験予定リストの中の残り
の施設 Aj に対して,式(1)でコストを計算,式(2)の確
率で端末画面に Aj を表示する.
Cost Aj  a * tm  (1  a)*
l Aj
cAj
* TAj
(1)
ここで, tmは施設 Ajまでの移動時間, lAjはその時点の施設 Aj
の行列長さ, CAj, TAjは施設 Ajの収容人数と体験所要時間.即
ち,第一項は移動時間の見積もり, 第二項は待ち時間の見積
もり.a は重みである.
PAj 
1
exp(cost A j *T )
n
1
 ( exp(cost
i 1
Aj
*T)
)
(2)
ここで, T は温度係数である.コストが高いほど選択される確
率が低くなる.
4.
Simulation investigating the congestion relief performance of
navigation assist devices at the Higashiyama Zoo and Botanical
Gardens' Amusement Park
遊園地の構成物
シミュレーション評価
4 . 1 エージェント 行動
モデルでは,ガイド端末を持つエージェントは,選択する時
点で,残りの体験予定施設に対して式(1)でコストを計算し,
式(2)の確率で施設 Aj へ移動する.
ガイド端末を持たないエージェントは,視野半径を設定する.
視野半径以内の施設を観察し,式(1)の重みを b で設定して
計算する.視野半径以外のものは想像し(待ち時間の平均値に
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よってコストを計算),全ての施設の中で,コストが最小の施
設へ移動する.現場にて一日3グループで5日間に総15グル
ープを観察した.13例が視野半径内の混んでない施設を一週
巡りパターン,残りの2例が無規律パターンである.視野半径
の設定により,実際の一般的来園者の行動を適切にモデル化に
したと考えられる.
4 . 2 設定
混雑緩和の効果を評価するため,各施設の人気度,体験所要
時間,収容人数は調査データを利用して各々で設定する.来園
総人数 N=3000,体験予定数/施設数=14/16,温度係数 T=40,視野
半径 R=80 を用いる.また,評価指標としては,全入園者の総
待ち時間の平均を用いる. N
1
 ( waitTime j )
N j 1
(3)
4 . 3 シミュレーション結果
同じ環境において,ガイド端末を持つ来園者の割合 rを 0.0 か
ら 1.0まで 0.1ずつ増やす,重み aも 0.0から 1.0まで 0.1ずつ増や
し実験する.重み b= a に設定する.各 10 試行の平均値を計算
して, 全員帰宅した時点の総待ち時間の平均ヒートマップを
図3に示す.収束した時の混雑緩和効果が良いほど青色になる.
各 rと aの設定より総待ち時間の平均の推移の
典型的な例(r=0, 0.5, 0.9, 1, 10 試行の平均)
図6に(横軸:ステップ,縦軸:行列長さ),各施設の行列長
の推移を示す.移動時間を無視する設定で,rが 0.0(図6左
上)と比較して, rが 0.5の場合(図6右上)が待ち行列の長さ
が短い.更に,より緩やかに増減し続ける.同様に,ガイド端
末所持率 rが 1.0の設定で, 移動時間を無視する場合(図6左
下)と待ち時間を無視する場合(図6右下)を比べると,顕著
な差異が見える.前者では,最初のうちは,距離の遠近は問わ
ずに多くの混雑していない施設を訪れるので,よく分散してい
る.しかし,その後は入場者の増加と共に待ち行列が長くなる
ことによって多くの人が距離にかかわらず遠い施設を含む非混
雑施設を指示され,到着した時に長い待ち行列になったと考え
られる.図6右下では,初期状態から,全員がゲート付近の施
設から最寄りの施設から順番に巡回している.その結果,各施
設は逐次的に高い混雑度を招いたことが考えられる.
図5
図3 総待ち時間の平均の ヒートマップ(全員帰宅時点)
上記の総待ち時間の平均について,r=0.0 の場合を 1 として,
各々の相対値を図4で表す.端末持つ来園者がない場合と比較
して,r=0.7 まで rが増加に従って相対値が減尐し,r=0.8 以上に
は増加している.ここで,鈴木ら[2]と同様に,時間経過に起因
した混雑緩和効果への副次的影響の存在することが分かる.最
良いのは,r=0.7,a=0.7 の場合に総待ち時間の平均は標準の 3.5
割ほどになってきた.
図6 各施設の行列長の推移
5.
図4 r=0.0に対する総待ち時間平均の相対値
具体的な総待ち時間の平均の推移について,図5に r=0.0,0.5,
0.9,1.0 の各場合にてステップ数により変化状況の例を示す.
r=0.8~1.0の時はその効果が減尐することになり,収束も遅くな
る.特に, r=1.0, a=0.0 で,全員が端末を持って移動時間を無
視する場合には非常に混乱な状況に陥ることが分かる.
おわりに
本稿では,実在する遊園地を題材にして,施設ごとの仕様や
入園者の傾向を調査や統計データ基づいてモデル化した.次に
訪れる施設を指示する巡回ガイドを導入し,ガイド端末を持つ
人と持たない人の割合を連続的に変えたシミュレーションを行
い,持つ人がいない場合と比べて,提案するガイド端末を導入
した場合の方が有効であることが定量的に示された.同時に,
最適な混雑緩和の効果を得るには,各施設までの移動時間と混
雑度合いを考慮するガイド端末の重みや,端末を持つ人の割合
を適切に調節する必要があることも示唆された.
謝辞
本研究を進めるにあたり,施設や入園者数に関するデータを
快く提供していただいた名古屋市東山動植物園遊園地の関係各
位に対し,謹んで感謝の意を表します.
参考文献
[1]
川村秀憲,車谷浩一,大内東.“テーマパーク問題のマルチエー
ジェントによる定式化と調整アルゴリズムに関する検討,”電子
情報通信学会技術研究報告,人工知能と知識処理102.613( 2 0 0 3 ): 25-30.
[2]
鈴木麗璽,有田隆也,“行動多様性に対する情報共有の影響とその
適応性-イベント会場における混雑情報提供に関するマルチエージェ
ントシミュレーション,”電子情報通信学会論文誌D86.11(2003 ):830837.
[3]
服部正太,木村香代子,辺見和晃,“遊園地における混雑情報と入
場者の行動,”東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻
山影進研究室,構造計画研究所ワーキングペーパー12(2000 ).
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