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10175205 | 内山朋規 | 実質金利・名目金利・インフレリス
経 済 論 叢(京 都 大 学)第175巻 第2号.2005年2月 実 質 金 利 ・名 目金 利 ・ イ ン フ レ リス ク プ レ ミア ム 内 1は わ が 国 にお い て も、2004年3月 じ め 山 朋 規 に か ら物 価 連 動 国 債 が発 行 され る よ うに な った。 古 くは英 国 が1981年 に物 価 連 動 国債 の発 行 を開 始 して い るが,米 国 の1997年, 仏 国 の1998年 な ど,各 国で 発 行 され る よ う にな った の は近 年 の こ とで あ る。 各 国 と も,通 常 の 名 目国債 に比 べ れ ば 発 行 量 は依然 と して少 ない ものの.急 速 に 増 加 して い る。 物 価 連 動 債 は新 しい 主 要 な投 資対 象 資 産 と して注 目 を集 め て お り.そ の理 由 は,文 字 通 り,キ ャ ッシ ュ フ ローが 実 質 ベ ー スで 固 定 され て い る た め で あ るD。 通 常 の 債 券 は キ ャ ッ シ ュ フ ロー が 名 目ベ ー スで 岡 定 され て い る 証 券 で あ る こ とか ら,名 目債 へ の投 資 は投 資 家 に とって イ ンフ レ リス ク を負 担 す る こ とに な る。 と こ ろが 物価 連動 債 は イ ンフ レ リス ク に さ ら され な い 証 券 で あ る こ とか ら,特 に長 期 投 資 家 に と って は重 要 な投 資 対 象 資 産 と な り得 る。 (lampbellandViceira[2002]3章 で は,長 期 投 資 家 に と って の 安 全 資 産 は投 資 期 間 に満 期 が 一 致 した 長 期 の 物価 連 動 債 で あ る こ とが 示 さ れ,名 目長期 債 だ けで な く,物 価 連 動 債 に も投 資 可能 で あ る場 合,効 用 が 大 き く増 加 し得 る こ と が 実 証 的 に論 じられ て い る。 この よ うな観 点 か ら.市 場 に物 価 連動 債 が 登場 し た こ とには,社 会厚 生 上 の 意義 が あ る,、 1)実 際 の物 価 連動 債 は.物 があ 軌 価連 動 係 数 の 適 用 日 と適 用 さ れ る物 価 指 数 の 日付 と の 問 に タイ ム ラ グ ま た 米 国 な どで は 名 目ベ ー スで の 元本 保 証 が あ る な ど,厳 密 な意 味 で の実 質 債 券 と はい え な い が,単 純 化 の た め本 稿 で は この よ う な点 を 無 視 す る 。 ま た流 動 性 プ レ ミア ムや デ フ ォル ト リ ス ク も無 視 す る、 、 70(154)第175巻 と こ ろ で,名 価 連 動 債)の 第2号 目 金 利 は 名 目 債 券 の 価 格 か ら 得 ら れ,実 質 金 利 は 実 質 債 券(物 価 格 か ら 得 る こ と が で き る 。 名 目 金 利 に は,実 質 金 利 と期 待 イ ン フ レ率 の ほ か に イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム が 含 ま れ て い る と 理 解 さ れ て い る 。 しか し な が ら,Fisher方 差(ブ 程 式 を 引 ぎ 合 い に,名 レ ー ク イ ー ブ ン ・イ ン フ レ率(BEI)と 目 長 期 金 利 と実 質 長 期 金 利 の 呼 ば れ て い る)が 期待 インフレ 率 で あ る とす る 表 現 を しば し ば 見 か け る こ とが あ る 、,ある い は,根 拠がない ま ま リ ス ク プ レ ミア ム を ゼ ロ と す る議 論 を 目 に す る こ と も多 い 。 と こ ろ が,イ ン フ レ 率 に 不 確 実 性 が あ れ ば,そ の の 対 価 と し て リ ス ク プ レ ミア ム が 存 在 し,そ イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は 名 目 金 利 に 含 ま れ る こ と に な る は ず で あ る2},こ の よ う に,実 質 金 利 と 名 目金 利,イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム の 関 係 が し ば し ば 混 乱 され て 理 解 さ れ て い る よ うに思 わ れ る。 金 利 と イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム に は 理 論 的 に ど の よ う な 関 係 が あ る の で あ ろ うか 。 実 証 的 に み て イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は ど の 程 度 の 大 き さ な の で あ ろ うか 、,これ ら の 点 を 明 確 に す る こ とが 本 稿 の 目 的 で あ る 。 本 稿 で の 議 論 は. フ ァ イ ナ ン ス 理 論 の 標 準 的 な 議 論 に 基 づ く。 そ の 意 味 で,よ く知 ら れ た 既 存 の 理 論 を 本 稿 の テ ー マ に 適 朋 した も の に 過 ぎ な い 。 本 稿 の 構 成 は 以 下 の 通 りで あ る 。 ま ず,名 率,イ 目 金 利 と実 質 金 利,期 待 インフ レ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム の 問 の 理 論 的 な 関 係 式 を 導 出 す る 。 そ の 際,ス ポ ッ ト レー ト(瞬 間 的 な 短 期 金 利)と イ ー ル ド(長 期 金 利 〉 の 違 い に つ い て も 注 意 を 払 う 。 そ の 後,わ が 国 の 市 場 デ ー タ を 用 い て イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム に 関 す る 実 証 を 行 い,併 せ て 米 英 市 場 の 実 証 結 果 に つ い て 概 説 す る 。 最 後 に, イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム の 決 定 メ カ ニ ズ ム に 関 して 既 存 の 理 論 を も と に 簡 単 に述 べ る 。 2)イ ンフ レ リス ク プ レ ミア ムの 存 在 は,物 価 連 動 債 の発 行体 に と って,資 金 調 達 コ ス トが 名 目債 券 よ り も低 い とい う議 論 の根 拠 に な る こ とが あ る(CampbellalldShiller[1996])。 実 質 金 利 ・名 目金利 ・イ ンフ レ リス ク プ レ ミア ム ll金 1証 (155)71 利 とイ ン フ レ リス ク プ レ ミア ム の 関係 券価格 とリスクプ レミアム フ ァイナ ンス理 論 で は.通 常,キ ャ ッシ ュ フ ロー に不 確 実 性 が あ る証 券 の 価 格 に は,そ の不 確 実 性 に応 じた プ レ ミア ムが 織 り込 ま れ て い る と され て い る。 これ を理論 的 に展 開す る た め に,状 態 価 格 密 度 を考 え よ う。,任意 の 証 券 の実 質 価 格 過程(配 当 込 み)偲 につ い て,歓 が マ ル チ ンゲ ー ル に な る止 の確 率 過 程 ξ は状 態 価 格 密 度3,と 呼 ば れ る。状 態 価 格密 度 が存 在 す る こ とは,市 場 に 裁 定 機 会 が 存 在 しない こ との 十 分 条 件 で あ る(Duffie[2001])。 性 を互 い に 直 交 す る4次 元 標 準Brown運 動Zに 以 後,経 済 の不 確 実 よ り記 述 し,表 記 を容 易 にす るた め に,連 続 時 間 の設 定 で 考 え る。 また,す べ て の確 率 過 程 は連続 で あ る と 仮 定 す る。 この とき,よ く知 られ て い る よ うに,状 態 価 格 密 度 過 程 ξは 以 下 の 確 率 微 分 方 程 式 に従 う。 4ξ, 一=一 ξf ア'4孟 一 θ,4z, た だ し,グ,∈琉 は 実 質 の ス ポ ッ トレー ト(デ フ ォル トリス クの な い 瞬 間 的 な実 質短 期 金 利 〉,θf∈渕 躍 は実 質 ベ ー ス の リス クの市 場 価 格 ベ ク トル(リ ス ク1 単 位 あた りの 実 質 リス ク プ レ ミアム)で あ る。7と θは確 率 的 で もよい 。 適 当 な 条 件 の も とで,こ の経 済 の任 意 の 証 券 の 配 当込 み の実 質 価 格 過 程 認 を以 下 の 確 率微 分 方 程 式 で表 現 す る こ とが で き る。 4`r,・=μ 鋤+σ 湿Zf ∫, た だ し,犀 〆 ∈肌 は 時 刻 」に お け る こ の 証 券 の 瞬 間 的 な 期 待 リ タ ー ンで 犀 ≧ 巧 か つ σ'∈洲x4でIIσflIは ボ ラ テ ィ リ テ ィ(リ で あ る 。 状 態 価 格 密 度 の 重 要 な 性 質 と して,任 3)確 ター ン の 瞬 間 的 な 標 準 偏 差) 意 の 証券 の リス クプ レ ミア ム は, 率 的 割 引 フ ァク ター や プ ラ イ シ ン グ カー ネ ル と も呼 ばれ る。 72(156)第175巻 第2号 状 態 価 格 密 度 の 変 化 率 と そ の 証 券 の 価 格 変 化 率 の 共 分 散 に よ り定 ま る 。 実 際, 敬 が マ ル チ ンゲ ー ル で あ る こ と か ら,伊 藤 の 補題 を用 い て μ薪=7,+σ 評・θ1(1) が 成 り立 つ 。 右 辺 は,実 質 無1リ ス ク短 期 金 利 に 対 して,ど ミ ア ム が 加 わ る の か を 示 し て い る 。 右 辺 第2項 変 化 率 と そ の 証 券 の 価 格 変 化 率 の 共 分 散 で,こ の 程 度 の リス ク プ レ の σ野 θrは,状 態価 格密度 の の証 券 の 期 待 リター ン に含 まれ る リ ス ク プ レ ミア ム を 表 して い る 。 2ス ポ ッ トレー トとイ ン フ レ リス クプ レ ミア ム こ こ で,物 を 用 い て.そ 価(イ ン フ レ水 準)過 し た が っ て,矯 、4,+レ'4z, は 時 刻'に 率 の ボ ラ テ ィ リ テ ィ(イ 程 をBOと ∈ 潰 と レ,∈訳 圃 の 変 動 を 以 下 で表 す こ とにす る。 血_翅 ρ, レー ト(瞬 程 ρ は 不 確 実 と し,筋 お け る 瞬 間 的 な 期 待 イ ン フ レ率,IIン,IIは イ ン フ レ ン フ レ率 の 瞬 間 的 な 標 準 偏 差 〉 を 表 す 。 名 目 ス ポ ッ ト 間 的 な 名 目 短 期 金 利)過 す る と,4BPニ1∼,堺 程 をR,名 認 で あ り,名 目無 リス ク証 券 の 名 目価 格 過 目ベ ー スで み た 場 合 に は名 目無 リ ス ク証 券 に は リ ス ク が な い 。 こ の 証 券 の 実 質 価 格 はBP仏 ≡扉 な の で,そ の 変 動 は伊 藤 の補 題 か ら 4わP 一=(1∼r卿,十 みρ に な る 。 こ の 式 は,実 レf・ レ,)漉一 レ認z, 質 ベ ー ス で み た 場 合 に,名]無 リス ク証 券 に は イ ン フ レ リ ス ク が あ る こ と を 表 し て い る 。 さ ら に ξb。も ま た マ ル チ ン ゲ ー ル な の で, (1)の 関 係 か ら以 下 が 成 り立 つ 。 瓦=η+魏rレ こ の 式 は,名 勘 一 レず・θ,(2) 目 ス ポ ッ ト レ ー トと 実 質 ス ポ ッ ト レ ー トの 間 の 重 要 な 関 係 式 で あ 実質金利 ・名 目金利 ・インフ レ1,スクプレ ミアム(157)73 る 、,名 目 ス ポ ッ ト レー ト1∼,は,実 の ほ か に,イ ン フ レ率 の(瞬 質 ス ポ ッ ト レー ト 巧 と 期 待 イ ン フ レ率 鵬 問 的 な)分 敵 レ,・ レ,と イ ン フ レ率 の 不 確 実 性 に 起 因 す る リ ス ク プ レ ミ ア ム ー 曜 θ,か ら 成 り立 つ こ と が わ か る 。 多 く の 投 資 家 に と っ て イ ン フ レ リ ス ク は 忌 避 さ れ る も の と考 え れ ば,一 レ,・ θ,の 符 号 は 正 で あ る と解 釈 す る の が 自 然 で あ ろ う 。 し た が っ て,(2)か ら,名 目 ス ボ ッ ト レ ー トが 実 質 ス ポ ッ トレ ー ト と期 待 イ ン フ レ 率 の 和 に な る と い うFisher方 (つ ま り レ≠0な ら ば)成 程 式 は,イ り立 た な い,,Fisher方 ン フ レ率 に 不 確 実 性 が あ れ ば 程 式 を 前 提 に し た 議 論 は,イ ン フ レ率 に 不 確 実 が な い こ と を 前 提 に し て い る の と 同 値 で あ り,こ の 前提 の も と で は 実 質 債 券 の 恩 恵 を 議 論 す る 意 味 は な い で あ ろ う。 実 証 的 に み て,イ ンフ レ率 は実 際 に確 率 的 で あ る。 (2)か ら,イ ン フ レ 率 の 不 確 実 性 に 起 因 す る プ レ ミ ア ム は 一 レご・ θzで あ り, 本 稿 で は こ れ を 「狭 義 の イ ン フ レ リ ス ク ブ レ ミア ム 」 と 呼 ぶ こ と に す る.慣 上,名 例 目 金 利 か ら実 質 金 利 と 期 待 イ ン フ レ 率 を 控 除 した もの を イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム と 呼 ぶ こ とが 多 い の で,一 レ,ッrレ,・ θ,の部 分 を 単 に 「イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム 」 と呼 ぶ 、, 3イ ール ドとイ ン フ レ リス クプ レ ミア ム 1)一 ・ 般 的 な場 合 前 節 で は,ス ポ ッ ト レ ー ト(瞬 間 的 な 短 期 金 利)と ム の 関 係 に つ い て 述 べ た 、,それ で は,イ イ ンフ レ リス ク プ レ ミア ー ル ド(長 期 金 利)と イ ンフ レ リス ク プ レ ミア ム の 関 係 は ど の よ う に な る の で あ ろ うか 。 本 稿 で は 割 引 債 の 利 回 り を イ ー ル ド と呼 ぶ こ と に し,名 目 と 実 質 の そ れ ぞ れ の イ ー ル ドの 関 係 に つ い て 考 え る1、 ま ず,満 期 をsと す る 実 質 割 引 債 の 時 点'に 価 格 密 度 過 程 ξを 用 い て, お け る 実 質 価 格 西1(s)は,状 態 74(158) 第175巻 第2号 扉(s)一瓦 匿] に な る,,し た が っ て,時 点 ずに お け る 期 間s一 オの 実 質 イ ー ル ド 〃,(s)は 肋(s〉一 一 焉1・9わ ・(s)一 一S圭!1・9揚[矧(3) で あ る。 一 方,満 期 をsと す る名 目割 引債 の時 点'に お け る 名 目価 格 β3(s)は β8(・)一 且「 絵] に な る の で,時 点'に お け る 期 間5一 云の 名 目 イ ー ル ド 名(s)は 罵(S)一 一 、≡'1・gB8(S)一 一嵩1・9島1絵] (4) 一一 、 杢,1・9(瓦[書 回 長]一耐 雛1) で 与 え られ る 。(4)の 対 数 の 巾 の 共 分 散 の 項 が,イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム に 関 係 す る 。 も し イ ン フ レ率 に 不 確 実 性 が な け れ ば,こ 期 待 イ ン フ レ率 は,(4)の を比 較 す る と.ス ドの 間 に は,期 対 数 の 中 の 最 初 の 項 に 関 係 し て い る 。(3)と(4) ポ ッ ト レー トの 場 合 と は 異 な り,実 質 イ ー ル ド と名 目 イ ー ル 待 イ ン フ レ率 と イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム を 通 じた 線 型 関 係 が 一般 的 に は成 立 しない こ とが 分 か る 2)特 の 項 は ゼ ロ に な る 。 ま た, 。 別 な場 合 イ ン フ レ率 や 金 利 の 変 動 に パ ラ メ ト リ ック な 仮 定 を 設 け れ ば,名 目お よび実 質 の イ ー ル ドの 問 の 関 係 を 明 示 的 に 表 現 す る こ とが 可 能 に な る 。 そ こ で,定 的 な 解 釈 を 得 る た め に.こ こ で は ア フ ィ ン期 間 構 造 モ デ,レの う ち.最 以 下 の モ デ ル を 仮 定 し よ う 。DuffieandKan[1996]な フ ィ ン 期 間 構 造 モ デ ル の 仮 定 の も と で は,実 性 も単 純 な ど に よ り導 入 さ れ た ア 質 イ ー ル ドと 名 目 イ ー ル ドの 間 に, 期 待 イ ン フ レ率 と イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム を 通 じ た 線 型 関 係 が 成 立 す る こ と (159)75 実 質 金 利 ・名 目金利 ・イ ンフ レ リス ク プ レ ミァ ム に な る。 仮定 物 価(イ ン フ レ水 準)過 過 程 甥 は 変 動 す る が,ボ 過 程7に 程 ρ に は 幾 何Brow11運 ラ テ ィ リ テ ィ は 一 定),翅 は 平 均 回 帰 過 程(い わ ゆ るVasicekモ 動(期 待 イ ン フ レ率 と実 質 ス ポ ッ ト レ ー ト デ ル)を 仮 定 す る。 す な わ ち, 4巧=κ(γ 一 η)4♂十 σ4z, 伽=γ(死 迎L溺 ρ, 一 溺,)4汁 η4z,(5) 、4オ+レ 路 た だ し 雇 と ア は ス カ ラ ー の 定 数 で,レ あ る の。 さ ら に,リ ス クの市 場 価 格 こ の 仮 定 の も と で.(3)と(4)か と η,σ は 洲 ×dの 定 数 ベ ク トル で θ∈ 訳1》:dを定 数 と仮 定 す る 。 ら,以 下 の 通 り実 質 イ ー ル ドg,(s)と 名 目 イ ー ル ド 罵(s)の 明 示 的 な 形 式 を 得 る こ と が で き る,,計 算 は 煩 雑 で は あ るが, そ の 方 法 は 標 準 的 で,例 え ば 木 島[1999]を 参 照 され た い 。 一F1(3一 ∫;θ)十F2(s一')7' 〃f(3)= s一 ∫ (6) 罵(s)一9'(3)+一 こ こ でF1(ε 加'一H(s+レ'レ 5一 凄 ∫1θ),02(5一 点 渉に お け る 期 間s一'の 準BR,wn運 彦),H(s一 渉)は 期 間 ε一 ごの 〉,G、(s一 鵜 θ)に θが 含 ま れ る の で 明 示 し た 。 期 待 イ ン フ レ 率 砿(s)は, 砿(s)一 焉1・9(E警]〉 4)標 ー レ'θ(岡 の 形 式 は 付 録 に 記 載 し た 。 た だ し,瓦(s一!;θ ス クの 市 場 価 格 ま た.時 一 ∫;θ)+G2(s一 一 ご;θ),F2(s一'),01(s一 確 定 的 関 数 で.そ は,リ 齢 動 は 多 次 元 なの で,物 価(イ 一・(s一ム%)(7) ン フ レ水 準),期 トが 完 全 に相 関 して い る こ とを前 提 に して い るわ けで は ない 。 待 イ ン フ レ,実 質 ス ポ ッ ト レー 76(160)第175巻 第2号 と して 計 算 で き る,1(s一',辮,)は 付 録 に 記 載 し た 。(6)と(7)か 期 間s一'と 筋 の 確 定 的 関 数 で,そ の 形式 も ら, 名(5)二 勧(5)十 ル1,(5) +吉(2聖 レ(砺(5+s+の+4(砺(s+s+の(8) 一仔(s+レ を 得 る 。(8)の ツ(ε+レ 右 辺 第3項 ・ θ(s一の) が イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム に 相 当 し.実 ドと 名 日 イ ー ル ドの 間 に,期 質 イール 侍 イ ン フ レ率 と イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム を 通 じ た 線 型 関 係 が 成 立 す る 。 狭 義 の イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム は,期 待 イ ンフ レ率 の 不 確 実 性 の 大 き さ η と 期 待 外 イ ン フ レ 率 の 不 確 実 性 の 大 き さ レか ら も た ら さ れ,残 りの イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は.実 待 イ ン フ レ率 の そ れ ぞ れ の 共 分 散 と,期 質 金 利 と期 待 外 イ ン フ レ率 と 期 待 外 イ ン フ レ率 の 分 散 に 依 存 して い る こ と が 分 か る 。 こ の よ う に 単 純 な モ デ ル を 仮 定 し た と し て も,ス (短 期 金 利)の ド(名 場 合 と は 異 な り,実 目 長 期 金 利)と 質 イ ー ル ド(実 質 長 期 金 利)と ポ ッ トレー ト 名 目 イー ル の 間 の 関係 は 複 雑 にな る。 HIイ ン フ レ リス ク プ レ ミア ムの 実 証 分 析 こ こ ま で の 議 論 で は,イ ン フ レ率 に 不 確 実 性 が あ る 場 合. 名 目金 利=実 質 金 利+期 待 イ ンフ レ率 十 イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミァ ム と い う 関 係 が 理 論 的 に ど の よ う に 成 立 す る の か に つ い て 考 察 して き た 。 ス ポ ッ ト レ ー1・(短 期 金 利)で の 関 係 は(2)で 的 に は 線 型 関 係 は 得 ら れ な い が,ア あ る,、イ ー ル ド(長 期 金 利)で は 一般 フ ィ ンモ デ ル を 前 提 に す れ ば(8)の よ うに 線 型 関係 が 成 立 す る。 そ れ で は 実 証 的 に み て,イ で あ ろ うか 。 ま た,期 ン フ レ リス クプ レ ミア ム は どの 程 度 の 大 きさ な の 問や 時 期 によ って イ ンフ レ リス ク プ レ ミアム の 大 きさ は 実質金利 ・名目金利 ・イ ンフレ リスクプレ ミァム(161)77 異 な る の で あ ろ うか 。 あ る い は,実 質 金 利 の 期 間 構 造 の 形 状 や 変 動 の 特 性 は, 名 目金利 とは黒 な る ので あ ろ うか 。 1わ が 国 の市 場 デ ー タ を用 い た実 証 ま ず,わ が 国 の 市 場 デ ー タ を 用 い て.イ 証 を 行 う,、わ が 国 で は,物 ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム に 関 す る 実 価 連 動 国 債 が2004年3月 に 発 行 が 開 始 さ れ た た め, 推 定 に 十 分 な 実 質 金 利 を 直 接 観 測 す る こ とが で き な い 。 そ こ で,第U-3-2)節 の 簡 素 な ア フ ィ ン モ デ ル を 観 測 可 能 な 名 目 金 利 と物 価 指 数 に 当 て は め て,直 観 測 す る こ と が で き な い 実 質 金 利 と 期 待 イ ン フ レ率,お タ を 推 定 す る こ と に す る 。Harvey[1989」 接 よ び モ デ ルの パ ラ メー のKalmanフ ィ ル ター を 用 い た 最 尤 法 に よ り 、 名 目 イ ー ル ドの 時 系 列 デ ー タ と ク ロ ス セ ク シ ョ ン デ ー タ の 双 方 に あ て は ま る よ う に す る 。 推 定 の た め,(5)を 砺 二 κ(卜 η)4'+σ7必 伽 、4,+レ ,4z∼+ン 鋼4z沼+レ.4z,4 こ こ で.σ.,η.、,レ,,レ,,,,レ.は が.Zザ を θγ,砺,θ はZグ とZ躍 れ で れ の1次 元標 に 対 して そ れ ぞ れ 独 立 で あ る 元 標 準Brown運 と 動 に対 す る リス クの 市 場 価 格 μ と お く、, 推 定 に用 い る デ ー タ は,国 年,5年7年.10年 債 利 回 りか ら 推 定 し た1ヶ の 名 目 イ ー ル ド51と,全 よ る物 価 指 数 で あ る 。 デ ー タ の 期 間 は83年1月 だ し,1ヶ 月,3ヶ 月,1年,3 国 消 費 者 物 価 指 数(除 次 デー タを 用 い る。 5)た は1次 の 間 に は 相 関 が あ り,γ と 辮 の 変 動 の 瞬 間 的 な 共 分 散 をs耀 お く。 そ して,そ 品)に ス カ ラ ー の 定 数 で,Zγ,Z朋,Z駕 動 で あ る 。 た だ し,Zμ とZ蹴 γ 二 γ(所一 溺,)磁+η 琳4z警(9) 塑_溺 ρ f 準Brown運 以 下 の よ うに書 き な おす 。 月 と3ヶ 月 に は債 券 限 先 の 利 回 りを 用 い た。 か ら04年!月 く生 鮮 食 ま で で,月 78(162) 第175巻 第1表 第2号 パ ラ メー タの推 定値 パ ラメ ー タ 推 定 値 標準 誤差 κ 0.3183 0.0093 パ ラ メ ー タ 推 定 値 標準誤差 レγ O.0024 0.0015 レ別 0.0005 0.0012 レr` O.0131 0.0005 5.8603 0.6607 一 グ 0.0208 σ2 0.0080 0.0004 0.0398 0.0031 γ θr 一 規 0.0082 η刎 0.0069 0.0004 一 〇 注:1983年1月 .9005 0.5888 一2 .1156 0.8657 畠、 0.OOOOO2 .000007 3〆,酬 一8 θ鋼 か ら2004年1月 年,5年,7年,10年 まで の 月次 デ ー タ を用 い て,1ヶ 月,3ヶ 月,1年.3 ィ ル ター に よ る 最 尤 法 に よ り モ デ ル の パ ラ メー タ推 定 値 を 表 す.た だ し,ア と 海 の 推 定 値 に は 標 推 定 した(9)の の 名 目 イー ル ドか らKahlla11フ 本 平 均 を用 いた. %0 第1図 実 質 ス ポ ット レー トと期待 イ ン フ レ率 の推 定値 名 目ス ポ ッ トレ ー ト 8 / 6 、 . 、ダ 、 4 徽 と 佃 § の 待 一 。。乳 す 年 陣 ∼ ・ 一 散 近 似 す る 。 さ ら に,推 ド 一〇卜。 フ ル m 一 mイ も っ て 観 測 さ れ る こ と を 許 容 す る。 ま た,モ 期 一 。。・① 膿 一。。。 a月 一〇ゆO K 穿 ま 剰 釧 一。ま イ ト ツ § 。待 一 ト 陸 。O 蒙 謬 一8 ッ名 ポ ス値 質 定 実 推 彫の ツ ポ ス ・ 。。・。・ 蘇 一〇お ε器 一。お 塞 一〇 〇う。o 一 6 ﹂ 類 一 4 デ ル の 名 目 イ ー ル ドに 対 して,実 ㌧v V V 一 q乙 L﹁ 卜 推 定 の 際 に,モ /↓ 総 磁 0 ☆ ふ一 2 際 の 名 目 イ ー ル ドは 誤 差 を デ ル は 連 続 時 間 な の で,こ れ を離 定 す る必 要 が あ る パ ラ メー タ の 数 を 減 ら す た め,実 質 ス ポ ッ ト レ ー ト と期 待 イ ン フ レ率 の 長 期 平 均 を 表 す 死 と アの 推 定 値 に は, 実 質 金 利 ・名 目金 利 ・イ ン フ レ リ スク プ レ ミァ ム 第2表 ボ ラ テ ィ リテ ィ と相 関 実 質 ス ポ ッ トレー ト 期待 インフレ率 期待外 インフレ率 一 〇 0.80% 実 質 ス ポ ッ トレー ト (163)79 0,171 .132 期 待 イ ン フ レ率 0,147 0.69% 期 待 外 イ ンフ レ率 注1対 i.34% 角 セ ル は 各 変 数 の 変 化 率 の 瞬 間 的 な標 準 偏 差(ボ ラ テ ィ リテ ィ),そ の 他 の セ ル は 瞬 間 的 な 相 関 を表 す 、,第1表 の パ ラ メ ー タ推 定 値 か ら求 め た 、, 1ヶ 月 名 目 イ ー ル ド と実 現 イ ン フ レ率 の そ れ ぞ れ の 標 本 平 均 の 値 を 用 い る 、, 第1表 は パ ラ メ ー タ の 推 定 結 果 を 表 し,第1図 はKalmanフ ィル ター の 平 滑 化 に よ る 実 質 ス ポ ッ ト レ ー トと 期 待 イ ン フ レ率 の 推 定 値 の 推 移 を 表 した も の で あ る 。 第2表 は,推 定 値 を もと に算 出 した 各変 数 の ボ ラ テ ィ リテ ィ と相 関 で あ る 。 特 に 実 質 ス ポ ッ ト レ ー ト と 期 待 イ ン フ レ率 の 相 関 の 推 定 値 は 一 〇.13で あ っ た 。 相 関 が 負 で あ る こ と は,期 待 イ ン フ レ 率 が 低 下 す る 際 に は ,実 質 ス ポ ッ ト レ ー トは 上 昇 す る 傾 向 が あ る こ と を 意 味 す る 。 こ の 傾 向 は 後 述 す る米 英 市 場 の 実 証 結 果 と 整 合 す る 、, 第H-2節 で 述 べ た,名 目 ス ポ ッ ト レー トに 織 り込 ま れ て い る イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は,一(レ,λ.+レ.、 λ.、+レ 、 λ記)に よ り計 算 で き る。 た だ し, λ7≡レゴ+レ甥ρ纏 一 θr一θ端ρ燗,λ λ8`…ンμ一 θμ,ρ と お い た 。(2)と θγ ρ薮バ θη3 γ ,η3≡3ア,川/(σ1η 醒) 表 現 が 異 な る の は.こ が あ る た め で あ る 。 結 果 と して,名 海≡ り7ρ 隅+レ バ こ で の 標 準BrOWn運 動 の間には相関 目 ス ポ ッ トレ ー トに 織 り込 ま れ て い る 短 期 の イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム の 推 定 値 は1 .58%と な った 。 この 値 は 後 述 の 米 英 市 場 の 実証 結 果 に比 べ て 幾 分 大 きい 。 さ らにわ が 国 にお け る近 年 の 名 目金利 は 極 め て 低 い こ と を 考 え れ ば,過 大 と い え る か も しれ な い 。 こ こ で 用 い た モ デ ル は 簡 素 で 制 約 的 で あ る 。 リ ス ク プ レ ミア ム を 一 定 と 仮 定 し,実 レ変 動 の 係 数 を 定 数 と し て い る 。 さ ら に ,名 ぎ な い 。 ま た,モ 目 金 利 は2フ 質 金利 や イ ン フ ァク ター モ デ ル にす デ ル で は 名 目 イ ー ル ドが 負 の 値 に な り う る が.実 は 正 の み で あ る 。 名 日 イ ー ル ドが 正 の 値 に な る こ と を 保 障 し ,リ 際 のデー タ ス ク プ レ ミア 80(164)第175巻 第2号 ムや 係 数 が 時 問 変 化 す る こ と を 許 容 す る よ う に モ デ ル を 一 般 化 す る こ と に よ り, よ り精 緻 に 推 定 す る こ と が 可 能 に な る か も しれ な い 。 2米 英 市場 での実証 次 に米英 市 場 の デ ー タを用 い た 最 近 の既 存研 究 を 簡単 に ま とめ る。 米 国 で は 物 価 連動 国債 の歴 史が 浅 い た め.以 下 の 米 国 の実 証 で は,統 計 的 に信 頼 で き る サ ンプ ル数 を確保 す るた め に,物 価 連 動 債 か ら直接 得 られ る実 質金 利 デ ー タで は な く,名 目金 利 と イ ン フ レ率 な ど を用 い て 実 質 金 利 を推 定 してい る。 英 国 で は米 国 よ り も物 価 連 動 債 の歴 史が 古 く,以 下 の 英 国 の 実 証 で は物 価 連 動 債 か ら 直接 得 られ る実 質 金 利 デー タを利 用 して い る。 BuraschiandJiltsov[2005]第R-3-2)節 の 簡 素 な モ デ ル よ り も 多 くの フ ァ ク タ ー を 含 む ア フ ィ ン モ デ ル に よ り,実 証 を 行 っ て い る 。 リ ス ク の 市 場 価 格 が 変 動 す る こ と を 考 慮 し て い る 点 も異 な る 。 分 析 に は,1960年 か1う2000年 ま で の 米 国 の デ ー タ を 用 い て い る 。 結 果 の 概 要 は 以 下 の 通 りで あ る 。 ・通 期 平 均 の イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は,期 3ヶ 月 で25ベ ー シ ス,期 間10年 で70ベ 間1ヶ 月 で15ベ ー シ ス,期 間 ー シ スで あ った 。 ・イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム の 水 準 は 時 期 に よ っ て 大 き く異 な り.短 期 的 に も 変 動 し て い る 。 期 間10年 L40%の の イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム は,0.20%か 範 囲 で 変 動 して い た 、,長期 の ト レ ン ドで 見 た 場 合,1960年 ら 代か ら 1970年 代 に か け て イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は 徐 々 に 上 昇 し,1979-1983 年 の 時 期 に ピ ー ク に 達 して い る 。 こ の1979-1983年 政 策 を 大 き く変 え た 時 期 に あ た る,、そ の 後,イ の 時 期 は,Fedが ン フ レ リス クプ レ ミア ム は 短 期 的 な 変 動 を 伴 い な が ら徐 々 に 減 少 して い る 。 ま た,い て も,長 金融 ず れ の期 間 でみ 期 ほ ど イ ン フ レ リス ク ブ レ ミア ム は大 きい 。 ・期 待 イ ン フ レ率 と名 ロ イ ー ル ド,イ 相 関 が あ る 。 一 方 で,実 ンフ レ リ スク プ レ ミア ムの 間 に は 正 の 質 イー ル ドと イ ンフ レ リス ク プ レ ミア ムの 間 に は 実質金利 ・名 目金利 ・インフレリスクプ レ ミアム(165)81 負 の相 関 が あ る。 ・ フ ォ ワ ー ド リ ス ク プ レ ミ ァ ム(フ 差)の 時 間 変 動 の う ち,期 間5年 ォ ワー ドレー トと短 期 金 利 の期 待 値 の で23%,期 間1〔)年で42%は イ ン フ レ リス ク プ レ ミ ア ム に よ り説 明 さ れ る。 AngandBekaert[2004]レ 実 証 で,1952年 ジー ム ス イ ッチ ング の ア フ ィ ンモ デ ル を用 い た か ら2000年 まで の 米 国 デ ー タ を 使 用 し て い る 。 結 果 の 概 要 は 以 下 の 通 りで あ る 、, 。実 質 金 利 の 期 間 構 造 は ,わ ず か に こぶ 状 で あ る が,お る 。 実 質 短 期 金 利 は 大 き く変 動 す る が,実 お む ね フ ラ ッ トで あ 質 長 期 イ ー ル ドは さ ほ ど 変 動 し ない 。 ・イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は 長 期 ほ ど 大 き い 。 通 期 平 均 の イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は,期 間3ヶ 月 で ほ ぼ ゼ ロ,期 間1年 で24ベ ー シ ス,,期 問5年 で97ベ ー シ ス で あ っ た 。 ・実 質 短 期 金 利 は ,期 待 イ ン フ レや 期 待 外 イ ン フ レ と負 の 相 関 を 持 つ 。 ・短 期 ,長 期 を 間 わ ず,名 目 イ ー ル ドの 変 動 の80男 は 期 待 イ ン フ レ と イ ン フ レ リス ク プ レ ミ ア ム の 変 動 に よ り説 明 さ れ る 、、 ・期 待 イ ン フ レ と イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム は ち50%し か 説 明 で き な い が,長 Shen[19981英 ,短 期 の 期 間 ス プ レ ッ ドの う 期 の 期 間 ス プ レ ッ ドの 多 く を 説 明 す る 。 国 の デ ー タ を 用 い た 実 証 で,期 間構 造 モ デ ル を利 用 してい な い 。 物 価 連 動 債 よ り求 め た 実 質 イ ー ル ドか ら名 目 イ ー ル ドを 控 除 し,サ ーベ イ に よ る 期 待 イ ン フ レ率 を 名 目 イ ー ル ドに 含 ま れ る 期 待 イ ン フ レ率 の 代 理 変 数 と し て,さ 国 の1996年 ら に 控 除 す る こ と に よ り リ ス ク プ レ ミァ ム を 計 算 して い る 。 英 か ら1997年 プ レ ミ ア ム は.期 Evans[2003]Shen[1998]と ま で の デ ー タ を 用 い て 計 算 し た 結 果,イ 間10年 で74ベ ー シ ス,期 間20年 で98ベ ンフ レ リス ク ー シ スで あ った 。 同 様 に 英 国 の デ ー タ を 用 い て,1983年 か ら 82(166)第175巻 1995年 第2号 ま で の デ ー タ期 間 で 実 証 し て い る 。 ま た,Angan(1Bekaert[201)4] と 同 様 に,レ ジ ー ム ス イ ッチ ン グ の ア フ ィ ン モ デ ル を 用 い て い る が,リ の 市 場 価 格 を 定 数 に 制 約 し て い る 。 一 方 で,物 スク 価 連 動 債 か ら得 られ る 実 質 イ ー ル ド も利 用 して い る 。 結 果 の 概 要 は 以 下 の 通 りで あ る 、, ・名 日 イ ー ル ドと 実 質 イ ー ル ドの 差(以 下 ,ス プ レ ッ ド)は,期 率 の 信 頼 で き る 推 定 値 で は な い 。 こ の ス プ レ ッ ドは.期 か ら1%期 待 イ ン フ レ率 を 上 回 り,期 間1〔)年で1%か 待 イ ンフ レ 間1ヶ 月 でO.6% ら3・5%期 待 インフ レ率 を 下 回 る 。 ・イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミア ム の 変 動 は ,期 の 変 動 に ほ と ん ど 寄 与 し な い 。5年 レ ミ ア ム が 変 動 す る た め に,ス 11%か ら32%下 間1ヶ 月 か ら36ヶ 月 の ス プ レ ッ ド を 超 え る期 間 で は,イ ンフ レ リ スク プ プ レ ッ ドの 変 化 は期 待 イ ン フ レ率 の 変 化 を 回 る。 ・実 質 イ ー ル ド と イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム が と も に 変 動 す る た め に ,超 期 と 長 期 の 期 間 で は,名 目 イ ー ル ドの 変 化 は,期 小 に 見 積 も る 。 しか し,2∼3年 の 期 間 で は,実 ス ク プ レ ミ ア ム の 変 動 が オ フ セ ッ トさ れ て,名 率 と1対1に ミ ア ム は,Evans「2(x)31の さ ら に,実 待 イ ン フ レ率 の 変 動 を 過 質 イー ル ドと イ ン フ レ リ 目 イ ー ル ドは 期 待 イ ン フ レ 変 動 す る。 以 上 の 文 献 か ら判 断 す る と,米 間IO年 で1%弱 短 英市 場 に お け る平 均 的 な イ ン フ レリ ス ク プ レ 結 果 を 除 き,1年 の 大 き さ で あ り,ま 未 満 の 短 期 で 概 ね0.5%以 下,期 た 時期 に よ っ て変 動 して い る こ とが 分 か る。 質 金利 の 変動 特 性 は 名 目金 利 の もの とは異 な っ て い る こ と も分 か る。 IVイ ン フ レ リス ク プ レ ミア ムの 決 定 メ カニ ズ ム 第H章 の議 論 で は,イ ンフ レ リス ク プ レ ミァムが どの よ うな メ カ ニ ズ ム に よ り決 定 され る のか につ い て は全 く触 れ て い な い 。 言 い換 え れ ば,状 態 価 格 密 度 過 程 ξを 構 成 す る リ ス ク の市 場 価 格 過 程 θが ど の よ う に して 決 ま る の か につ 実質金利 ・名 目金利 ・インフ レリスクプレ ミアム(167)83 い て 述 べ て い な い 。, 当 然 の こ と な が ら,リ ス クプ レ ミア ム は市 場 で の 売買 を通 じた均 衡 で 決 定 さ れ て い る 。 標 準 的 な フ ァ イ ナ ン ス 理 論 で は,個 の 効 用 を 最 大 化 す る よ う に,実 々 の 投 資 家(経 済 主 体)が 自 ら 質消 費 と投 資 の構 成 を最 適 に決 定 す る こ とを想 定 して い る 。 効 用 は 将 来 に わ た る 実 質 消 費 に よ っ て 定 ま る 。 各 資 産 へ の 最 適 な 投 資 額 は,富 を持 ち越 して将 来 の最 適 実 質 消 費 を ま か な うよ うに定 ま る、 、こう した 各 投 資 家 の 最 適 戦 略 の 結 果.各 資 産 の 価 格 が 調 整 さ れ て,経 済全体で各資 産 の 需 給 が 一致 す る こ とを想 定 してい る。 この 需給 の一 致 が 均 衡 の 定 義 で あ る。 均 衡 で の 価 格 や 金 利 は 動 的 か つ 確 率 的 に 変 動 す る 。 価 格 が 均 衡 で 定 ま る こ と は, 言 い 換 え れ ば,リ ス ク の 市 場 価 格 や 状 態 価 格 密 度 が 各 時 点 ・各 状 態 ご と に 定 ま る こ とを意 味 す る。 金 利 の 一 般 均 衡 モ デ ル と して よ く知 ら れ るCox,Illg(1rsollandRoss[1985] は.完 備 市 場 の 設 定 の も と で,(2)の 式 中 の 狭 義 の イ ン フ レ リス ク プ レ ミ ア ム ーレ ,・θ`が以 下 の よ う に 定 ま る こ と を 示 して い る 。 一坊・ 砧一染 た だ し,ρ,は 物 価(イ 蝋(讐 ・薯)+染 蜘(讐 ・勢) ンフ レ水準 〉,躍、は代 表 的経 済 主 体 の実 質 資 産額,紛 経 済 の資 木 ス ト ックの変 動 に 影響 を 与 え る状 態変 数/は は 各 時 点 に お け る代 表 的 経 済主 体 の効 用 の最 大 値(間 接 効 用 あ るい は 価値 関 数)で,ノ の 添 え字 は偏 微 分 を表 す,、右 辺 第1項 は,実 質資 産 額 の 変 化 率 と イ ン フ レ率 の共 分 散 と代 表 的経 済 主 体 の相 対 リ ス ク回避 係 数 の 積 を表 す 。右 辺 第2項 は,状 態 変 数 の変 化 率 と イ ン フ レ率 の共 分 散 に よ り定 ま る項 で あ る。 Cox,IngersollandRoss[19851は,イ い るが,イ ン フ レ水 準 を 外 生 変 数 と して扱 って ン フ レ水 準 もまた 経 済 の 均 衡 に よ り定 ま る と考 え られ る。 イン フ レ 水 準 は,貨 幣 の実 質価 値 の 逆 数 で あ り,均 衡 イ ンフ レ水 準 を扱 う に は貨 幣 の役 割 を モ デ ル化 す る必 要 が あ る,、貨 幣 を保 有 す る と,金 利 が つ か ない た め に コ ス 84(168) 第175巻 トが か か る が,貨 第2号 幣 に は消 費 財 の、 購 入 を 低 コ ス トで 実 行 す る こ と が で き る 能 力 が あ る と理 解 さ れ て い る 。 貨 幣 を モ デ ル に 取 り込 み か つ 扱 い 易 い 方 法 の 一 つ と し て,実 質 消 費 の ほ か に 実 質 貨 幣 残 高 に 対 し て も効 用 が 定 ま る よ う に 定 式 化 す る 方 法 が 知 ら れ て い る 。 こ の 設 定 の も と で,BakshiandChen[1996』 は(21) の 式 中 の 狭 義 の イ ン フ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム ー レドθ,が以 下 の よ う に 定 ま る こ と を示 し て い る 。 一坊・ 研一警 噛(誓 た だ し,ρ,は 物 価(イ ネ ー サ プ ラ イ,%は ン フ レ水 準),o,は 薯) 経 済 全 体 の 実 質 消 費,π,は 代 表 的 経 済 主 体 の 効 用 関 数 で,z4の Cox,lngersollandRoss[1985]と イ(こ 努)+π許 咽(争 実 質マ 添 え字 は偏 微 分 を 表 す 。 の違 い は リス ク プ レ ミア ム に マ ネ ーサ プ ラ れ は 外 生 的 に 与 え ら れ て い る1)が 関 係 して い る 点 で あ る6}。均 衡 で の ρ, は 以 下 の よ う に バ ッ ク ワ ー ド形 式 で 定 ま る 。 去 一且 ∫。 。 〆 回 雛1需 去4・ こ こで ρ は代 表 的経 済 主 体 の 効 用 関 数 の 異 時 点 間 の 主 観 的割 引 率 を表 す 正 の 定 数 で あ る。 Vま と め 本 稿 で は,し ば しば 混乱 して理 解 され てい る,実 質 金 利 と名 目金利 の 関係 に つ い て,フ ァ イナ ン ス理 論 の標 準 的 な議 論 を もと に明 らか に した 。 、将 来 の イ ン フ レは不 確 実 な ので,そ の 不 確 実性 に応 じた リ スク プ レ ミア ムが存 在 し,そ れ が 名 目金 利 に含 まれ る こ と にな る。 6)Cox,lngersonandRoss[19851は 生 産経 済 で の 一 般 均 衡 を扱 い,BIikshiandChen[1996]は 純 粋 交換 経 済 に貨 幣 を埋 め 込 ん だ 貨 幣経 済 で の均 衡 を扱 って い る.し た が って経 済 全体 の 実 質消 費 は,前 者 で は内 生 的 に定 ま るが,後 者 で は外 生 的 に与 え られ てい る,,後 者 の モ デ ルを 生 産経 済 での ・ 般 均 衡 に拡 張 した もの にLiouiandPoncetl20041が あ る。BakshhndChel1[1996】 の結 果 に状 態 変 数 が な い の は,モ デ ル に状 態 変 数 を導 入 してい な いた め で あ る・ 実質金利 ・名 目金利 ・インフ レリスクプ レミアム(169)85 本 稿 で は,名 目 金 利 と実 質 金 利,期 待 イ ン フ レ率,イ ム の 間 の 理 論 的 な 関 係 式 を 導 出 した 。 そ の 際 ン フ レ リス クプ レ ミア ス ポ ッ ト レ ー ト と イ ー ル ドの 違 い につ い て も注意 を払 った、 、 さ ら に,わ が 国 の市 場 デ ー タを用 い て イ ンフ レ リ ス ク プ レ ミ ア ム に 関 す る 実 証 を 行 い ,併 せ て 米 英 市 場 の 実 証 結 果 に つ い て も概 説 した 。 最 後 に,イ ンフ レ リス ク プ レ ミア ムの 決定 メ カ ニ ズ ム に関 して均 衡 論 を も と に簡 単 に 述 べ た 。 本 稿 で は 触 れ て い な い 興 味 深 い 問 題 と し て,名 も投 資 で き る よ う に な っ た 近 年 の 状 況 が,ど せ る こ と に な る の か,と 目債 券 のみ な らず 実 質 債 券 に の よ うに経 済 主 体 の 効用 を増 加 さ い う 問 題 が あ る 。Viard[1993]は 経済主 体の効用 に わ ず か な 影 響 し か 与 え な い と し て い る 一 方 で,Campbe11andViceira[2002] 3章 で は 相 応 の 効 用 の 増 加 が あ る と し て い る 。 特 に ,イ 高 い 場 合 に は,Campbellan(IViceira[2002]3章 ン フ レ率 の 不 確 実 性 が は そ の増 加 が 非 常 に 大 き い と してい る。 しか しな が ら,Viard[1993]やCampbellandViceira[2002]3章 の 議 論 は, 実 質 債 券 の 有 無 に 関 わ らず 他 の 証 券 の 価 格 過 程 が 不 変 で あ る こ と を 前 提 に して い る 点 で 制 約 的 で あ る,、こ の 前 提 は 一 般 均 衡 に お い て は 成 り立 ち そ う も な い 。 実 質 債 券 が 存 在 す れ ば イ ン フ レ リ ス ク を ヘ ッ ジ す る こ とが 可 能 に な る た め に, 実 質 債 券 が 存 在 し な い 経 済 に 比 べ て,各 経 済 主 体 の 最 適 消 費 が 変 化 し,均 衡 に お け る証 券 の 価 格 過 程 の 期 待 リ タ ー ン や ボ ラ テ ィ リ テ ィが 変 わ る 可 能 性 が あ る 。 こ う した分 析 は まだ 探 求 さ れ て い な い興 味 深 い トピ ックで あ る よ うに 思 わ れ る 付 (6)と(7)式 中 の ハ(s一 吻 』)の 関 数 形 は 以 下 の 通 録 女 θ),&(s一'),G,(s一'1θ),G2(s-f),H(5一 ∫),1(s一!, り で あ る,. 君(∫;θ)一(アー σ'(箒+の 一 罪 61(♂;θ)一(海 〉(^(¢)一認)一号 η鼻(㌘ θ)劉(砧(の 一か 凡(∬)・ 塾(諾)・ 、, 86(170) 第175巻 1一 一 2(,τ)=一 ε一κ訟1一 κ・ 第2号 ゼ γ σz(躍)ニ γヱF H(¢)一一σ・ η( κ辮)+,鴇)+黙(の ・(…)一畜[G・ 伽 舌) 一(海+レ1η+劉(G綱 一塾(の ・1 参考 文 献 Ang,A.andG.Bekaert[20041』TheTermStructureofRealR紬tesall(iExpected Inflatlon,"Wbノ ・ 始'91㌦ ρ砿ColumbiaUniversity、 Bakshi,G.andZ.ChellI-1996]"Inflat主on.AssetPrices、andtheTermStructureof InterestRaしesinMonetaryEconomics、"R8τ 瘤 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