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航空機用アルミリチウム合金および航空機産業の最近の動向

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航空機用アルミリチウム合金および航空機産業の最近の動向
(公財)航空機国際共同開発促進基金 【解説概要 24-2】
この解説記事に対するアンケートにご協力ください。
航空機用アルミリチウム合金および航空機産業の最近の動向
1.はじめに
電気分解法として 1886 年にホールエルー法が確立され、さらに 1887 年に湿式アルカリ法に
よるアルミナ製造方法としてバイヤー法が確立されて、ようやく工業的に製造可能となってか
ら約 125 年経過したアルミニウム材料は、2011 年の世界での新地金生産量が 44,624 千トン/
年になった。地球環境問題の深刻化が顕著になっている現在、自動車だけでなく、航空機、鉄
道車両や船舶など輸送機材の軽量化に対して、アルミニウム材料の適用は今後ますます高まる
ものと期待される。
1917 年に採用されて以来、
その軽量性を生かして航空機の主要構造部材に採用されてきたア
ルミニウム材料であるが、強度、破壊靭性、疲労特性、耐応力腐食割れ性など各種特性向上の
要求に応じ、さらに金属学的には偶然の発見として良く知られている時効析出現象の解明が進
むにつれて、2024 合金や 7075 合金等の高強度アルミニウム合金が開発されてきた1)。図1に
高強度アルミニウム合金の開発の流れを模式的に示す。
図1 高強度アルミニウム合金の開発フロー模式図
一方、より軽量化を目指したアルミニウム材料として開発されてきたアルミニウム合金がア
ルミリチウム合金である。Li という金属中最軽量(比重 0.53g/cm3)の元素を1wt%添加する
ことで剛性は 6%上昇し、かつ密度は 3%低下するという優れた特長をもつアルミリチウム合
金ではあるが、電気化学的には卑な金属であることから耐食性の低下が懸念されるとともに、
機械的特性の異方性や、低い破壊靭性、また高い製造コスト等の課題があった。この合金の開
発経緯や技術課題については、すでに文献1)~4)に詳細に解説されているので、参照願いたい。
ボーイング社の 747、767 や 777 では 70~80%であったアルミニウム材料の使用比率が、
最新の 787 では 20%に低下し、複合材料(CFRP)の使用比率が 50%にまで高まっている2)3)
。エアバス社でも複合材料の使用比率は増加しており、A320 で 15%、A380 では 22%の複
5)
合材料を使用し、平成 25 年度就航予定の A350XWB では 52%に増加する予定である5)。複合
材料を使用する最大のメリットは軽量化であり、課題は高い製造コストである。これら複合材
料に関する動向や課題の詳細については、航空機国際共同開発促進基金(IADF)の解説記事
「複合材の航空機適用への課題と国際競争力強化」6)を参照願いたい。
近年の航空機燃料費の高騰は航空機の軽量化を大きく促進し、特に長距離路線用航空機では
軽量化のメリットが大きいために、複合材料の使用量が増加するとともに、アルミリチウム合
金の使用量も増加すると期待される2)3)。しかしながら、非常に活性が高く、かつ水と反応し
やすい Li を添加するがゆえに、通常の高強度アルミ合金に比べて、アルミリチウム合金の製造
コストは 2~4 倍と高価であり、また疲労特性や破壊靱性などの改善など、アルミリチウム合
金の開発は今後も欧米を中心に続くと思われる。
アルミリチウム合金の金属組織や機械的特性、さらに技術的課題については松澤4)が、また
航空機用材料については中村2)が、航空機の省エネルギー化への技術課題と展望については石
川7)が、それぞれ 2012 年に詳細に報告しているので参考にしていただき、ここでは、最近 10
年ほどの特許および文献から航空機用アルミリチウム合金の開発動向を眺めるとともに、最近
の航空機産業の動向を俯瞰してみる。
2.日本出願特許からみた最近のアルミリチウム合金の開発動向
2002 年~2012 年 9 月までに日本国内で公開された、航空機用アルミリチウム合金に関する
特許について調査した結果を表1に示す。出願件数は 33 件(ただし共同出願があるため、出
願人数は 37 件)であり、このうちアルミリチウム合金における成分に関する特許は表2に示
すように 10 件であった。表2において、-の記号は未記載の元素であることを意味している。
また、
( )記載の元素は、それらの元素から少なくとも1種以上の元素を含むことを意味して
おり、
( )の無い元素は必須元素であることを示している。
アルミリチウム合金の開発当初は軽量化優先でいたために Li 量が 2~3%の合金が多かった
が、
その後、
軽量化に加えて機械的特性や耐食性とのバランスをとるようになった結果として、
Li 量が 1.5%程度になり2)3)、表2に示すように最近では Li 量が 1%以下の合金が開発されて
きている。
Al-Mg-Li 系合金については、2000 年に複数出願されているものの、最近の出願は見当たら
ない。最近のアルミリチウム合金に関する特許としては、アルコア社から Al-Cu-Li 系あるい
は Al-Cu-Mg-Li 系合金に関する特許が出願されている。Li 量を低減する代わりに、他の添加
元素あるいは結晶組織制御による破壊靱性向上を目的とした特許が最近の傾向である。特願
2010-537054 は、AA2098 合金と比較して Mn と Zn を所定量添加し、かつ Si、Fe 量を減少
させた合金の特許であり、AA2098 合金の改良合金と推測される。特願 2006-533995、特願
2001-177711 は、Li を 1%以下として Mg を多くした Al-Cu-Mg-Li 系合金である。
表1 最近の航空機用アルミリチウム合金に関する日本国内特許出願状況
出願年
No.
出願人名
出願
件数
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2005
2006
2008
2009
1
2
1
2010
合金、複合材、
構造体
アルコア インコーポレイテッド
6
2
スリーエム イノベイティブ
プロパティズ カンパニー
2
2
フラックス
3
ジェイムズ・ケアンズ・プライス
2
2
鋳物
4
ストーク・フォッカー・
エーイーエスピー・ビー・ブイ
2
1
複合材、構造体
5
ザ・ボーイング・カンパニー
2
6
マリー・トーマス・ジルズ・ラッフル
2
7
アルカン レナリュ
2
8
アレリス、アルミナム、コブレンツ、
ゲゼルシャフト、ミット、
ベシュレンクテル、ハフツング
1
9
キネテイツク・リミテツド
1
10
エアバス・ドイチュラント・
ゲーエムベーハー
1
1
構造体
11
エアバス・ユ―ケ―・リミテッド
1
1
構造体
12
13
複合材、構造体
2
鋳物
1
加工条件、複合
材
1
1
合金
1
合金
合金
1
1
合金
1
15
アストリウム・エス・エー・エス
1
16
コラス・アルミニウム・
バルツプロドウクテ・ゲーエムベーハ
ー
1
17
独立行政法人
産業技術総合研究所
1
18
ジャンナコプロスパブロス
1
19
スタンデックス・インターナショナル・
コーポレイション
1
20
ダイムラークライスラー・
アクチェンゲゼルシャフト
1
22
2
1
エアバス オペラシオン
21
1
1
14
ダイムラークライスラーエアロスペース
エアバス ゲゼルシャフトミット
ベシュレンクテル ハフツング
ブイアイエーエム(オール-ルシアンイ
ンスティチュートオブアヴィエーションマ
テリアルズ)
1
2007
1
エーアーデーエス・ドイッチェランド・
ゲゼルシャフト ミット
ベシュレンクテル ハフツング
オール ルシアン インスティチュート
オブ アヴィエーション
マテリアルズ ブイアイエーエム
1
2004
主要内容
1
1
構造体
1
合金
1
複合材
1
構造体
1
熱処理
1
1
1
構造体
合金
1
構造体
1
合金
23
ユナイテッド テクノロジーズ
コーポレイション
1
24
ケステック イノベーションズ
エルエルシー
1
1
合金
25
三菱重工業株式会社
1
1
構造体
26
株式会社豊田自動織機
1
1
合金
1
計
37
2
3
2
5
0
3
9
0
3
3
4
2
1
出願数
33
1
3
2
4
0
3
7
0
3
3
4
2
1
熱処理
表2 アルミリチウム合金における成分に関する最近の日本国内特許出願状況
出願番号
出願人
合金系
Si
Fe
Li
Cu
Mg
Zn
Mn
Ag
Zr
Cr
Ti
Sc
その他
アルコア
インコーポレイテッド
Al-CuLi-ZnMg-AgMn-Zr
<0.06
<0.08
0.91.4
3.44.2
0.10.6
0.2 –
0.8
0.10.6
0.30.7
0.010.6
-
-
-
アレリス、アルミナム、
コブレンツ、
ゲゼルシャフト、
ミット、
ベシュレンクテル、
ハフツング
Al-MgMn-Ti
<0.5
<0.5
<0.5
<0.15
3.56.0
<1.7
0.41.2
<0.4
<0.5
<0.3
0.030.2
<0.5
アルコア
インコーポレイテッド
Al-CuMg-Li
-
-
0.01-0
.9
3-5
0.52
-
-
-
-
-
-
-
ケステック
イノベーションズ
エルエルシー
Al-CuZn-LiMn-CrTi-ScFe
-
2-12
at%
2-12a
t%
2-12
at%
(<5
at%)
2-12
at%
2-12
at%
-
-
2-12
at%
2-12
at%
2-12
at%
Ni、Co、Y、
V、Er、
Tm、Yb、
Lu
エーアーデーエス・ドイッ
チェランド・ゲゼルシャフト
ミット ベシュレンクテル
ハフツング,
オール ルシアン インス
ティチュート オブ アヴィ
エーション マテリアルズ
ブイアイエーエム
Al-CuLi-ZrSc
0.020.15
0.020.2
1.51.8
3.03.5
(0.10.6)
(0.021.0)
(0.050.5)
-
0.050.12
-
(0.005
-0.05)
0.060.12
Be0.00010.02,
(Ge,Y,Ce)
アルコア
インコーポレイテッド
Al-CuMg-MnZr-Li
-
-
(<1)
1-5
<6
-
<1
-
<0.5
-
-
-
登録番号
特願
2010537054
特願
2008526421
特願
2006533995
特願
2004511563
特願
2002516382
特許第
5031971
号
特願
2001177711
特願
2000388095
特願
2000589749
特許第
4954369
号
特願
2000569030
特許第
3903412
号
特願
2000512995
特許第
4185247
号
ユナイテッド
テクノロジーズ
コーポレイション
Er,Y,Hf,V
-
-
L12構造を有する10~70vol%のAl3X相(XはSc、Er、Lu、Yb、Tm、Uおよびこれらの混合物から選択される)と、
約5vol%以上の非L12構造相を形成させるのに不充分な量のTi、Nb、V、ZrおよびCrと、Mg、Ag、Zn、Li、Cuおよび
これらの混合物から選択される少なくとも1つの元素とを含むアルミニウム固溶体マトリックスからなるアルミニウム材料
コラス・アルミニウム・
バルツプロドウクテ・
ゲーエムベーハー
Al-MgLi
キネテイツク・リミテツド
Al-MgLi
ダイムラークライスラー・
アクチェンゲゼルシャフト,
ブイアイエーエム(オール
-ルシアンインスティチュ
ートオブアヴィエーション
マテリアルズ)
-
Al-MgLi-ZnMn-Zr
<0.3
-
-
<0.3
0.43.0
-
1.21.6
-
1.51.9
<0.3
3.06.0
-
4.06.0
-
4.16.0
<2.0
-
0.11.5
<1.0
-
0.01-0
.8
<0.5
-
-
(0.020
-0.25)
-
0.050.3
(0.020
-0.25)
(<0.2)
-
(0.010
-0.30)
(<0.2)
-
(0.010
-0.40)
(<0.2)
(0.010.3)
(Hf 、 V 、
Nd、Y、
Be)
C: 0.15-0.7
O: <1.0
(V,Nb,Ni,Hf,
Ce)
H:
0.9×10-5
~
4.5×10-5
(Be:0.0010.2,
Y:0.01-0.5)
3.文献からみた最近の開発動向
科学技術振興機構(JST)のデータベース J-DreamⅡを用い、文献発行日 2000 年 01 月 01 日
~2012 年 09 月 30 日における文献から抽出した、航空機用アルミリチウム合金に関する文献
リストを表3に示す。
17 件の文献のうち、Alcan が 2098 合金の紹介、Alcoa が 2099 合金の紹介および応用事例
を報告している。アルミリチウム合金の疲労特性、破壊靱性や亀裂伝播速度に関する報告が 5
件を占めており、接合1件、加工性1件となっている。疲労特性や破壊靭性等の向上、また成
形性の向上や低コスト化等の本合金における課題1)~4)に対する研究が進められている。アル
ミリチウム合金と繊維をラミネートした複合材シートの開発も行われている。
データベースへの登録に半年程度のタイムラグがあること、また登録されていない文献もあ
る。エアバス社との連携を深めている Constellium 社(旧 Alcan Engineered Product 社)は、
耐食性の向上および強度増加を目的として、
Al-Li 合金に Ag および/もしくは Cu を添加した合
金を 2010 年に開発し、Al-Li-X 合金ラインナップとして Airware
I-GAUGE、Airware
I-FORM、Airware I-CORE を紹介している8)。
また OFELIA と称するアルミリチウム合金のリサイクルシステムについても触れている8)。
表3 文献リスト
JST 整理
番号
和文標題
英文標題
12A
0876564
低密度 Al-Li 合金を
ベースにした新繊
維金属ラミネート
(FML)ファミィリー
Investigation of a
new fibre metal
laminate (FML)
family on the
base of
Al-Li-Alloy with
lower density
Materialwiss
Werkstofftech
12A
0509859
Al-Li 合金における
低エネルギー粒界
破壊
Low-energy
intergranular
fracture in Al-Li
alloys
Eng Fail Anal
11A
1535505
摩擦撹拌溶接
2198-T8 Al-Li 合金
接合部の残留応力
効果および疲れ挙
動
09A
1106610
ICAF2009 における
最新の航空機疲労
に関する研究開発
動向
Residual Stress
Effects and
Fatigue Behavior
of
Friction-Stir-Wel
資料名
抄録
先進的な FML 開発の一つとして,ロシア製 Al-Li シート 1441 合金は,
高弾性率(E=80GPa)と低密度(d=2.60g/cm3)の特性を有し,その極薄シ
ートの利用がある。重量の軽減に加え FML構造の剛性を 5-7%増加さ
せる 1441-FML について,Airbus 社とロシア,ドイツの団体が協力して
詳細な調査を行った。試験片はじめ,部品や接合技術,パネル状での
調査を実施し,その結果を報告した。クラック発生までの寿命は,標準
GLARE に比して,1441-FML は若干長いが,疲労クラックの伝播速度は
低レベルの応力では類似したが,高レベルの応力では後者が早かっ
た。A380 のパネルを 14441-FML に置き換えた場合の重量軽減効果
は,165kg と試算した。
ヘリコプタの(重量軽減の為に)構造の重要な部分に使用される時効
硬化 Al-Li-Cu-Mg-Zr 合金(AA8090)は,事故時に低エネルギー粒界破
壊を生じ,過大な損傷をもたらす。この経験から,Al-Li 合金における脆
性粒界破壊に対する各種仮説をレビューし,可能な改善差を概観し
た。脆性粒界破壊抵抗における合金成分,時効時間と温度,結晶学的
組織及び試験温度の様な変数の影響を論述した。そして,粒界に対す
るリチウム偏析が,脆性粒界破壊に対する基本的要因であることを結
論した。リチウム偏析は,主に初期の時効処理時に発生している:また,
温度が 50-80℃に達する稼動時の二次時効は,リチウム偏析を増加さ
せ,さらに脆性粒界破壊に対する感受性を増す。また,粒界における転
位集積をもたらす Al-Li 合金における平面滑りモードの広がりは,脆性
粒界破壊の要因ではないことを,広くはびこっている意見に反して,証
拠は示唆している。 Copyright 2012 Elsevier B.V., Amsterdam. All
rights reserved. Translated from English into Japanese by JST.
分類
アルミ複合
材
Al-Li 合金
破壊靱性
FSW 接合
疲労特性
J Aircr
ded 2198-T8
Al-Li Alloy Joints
日本航空宇宙
学会誌
ICAF(国際航空疲労委員会)は,航空機構造の疲労・損傷許容性評価
および構造信頼性・健全性などについて討議される,隔年開催の国際
的会議である。ICAF2009 は,5 月25-29 日に,オランダ・ロッテルダムに
おいて開催された。1)ドイツ:A380-800 の全機疲労試験が 2 ライフ分,
および A320 寿命延長のための 60,000 サイクルまでの試験が終了し
た。2)フランス:Al-Li 合金の疲労試験において析出物により亀裂進展
を遅らせることができること,メカニカルアロイによる Fe-Al 合金の高
温域での損傷許容性評価試験の結果などが報告された。3)日本:日
本における C-X,XP-1,MRJ-90 などの国内の動向,2008 年に拡大改組
された国土交通省事故調査委員会の業務が 6 項目(疲労寿命評価解
析・金属の疲労・複合材の疲労・C-X と XP-1 の全機試験・構造ヘルス
モニタリング・航空事故調査)に分けて紹介された。
Al-Li 合金
疲労特性
09A
0912457
先進的アルミニウ
ム-リチウム合金の
剥離亀裂-実験と計
算機による研究
Delamination
cracking in
advanced
aluminum-lithium
alloys Experimental and
computational
studies
09A
0206312
論文「スキン材料候
補におけるガストス
ペクトル疲労亀裂
伝播」,Fatigue of
Engineering
Materials and
Structures, Vol.1,
pp. 5-19 から 30 年
Thirty years on
from the paper
'Gust Spectrum
Fatigue Crack
Propagation in
Candidate Skin
Materials', Fatigue
of Engineering
Materials and
Structures, Vol. 1,
pp. 5-19
08A
1270896
アルミニウム-リチ
ウム製の軽量かつ
壊れ易いカラーの
開発
Aluminum-Lithiu
m Light Weight
Frangible Collar
Development
航空宇宙用アルミ
ニウムの進歩
ADVANCES IN
AEROSPACE
ALUMINUM
07A
1052771
航空宇宙用アルミ
ニウム合金に関す
るスプリットスリー
ブ冷間孔拡大工程
の最適化
Optimization of
Split Sleeve Cold
Expansion
Process for
Aerospace
Aluminum Alloys
07A
0873277
Alcan 2098,2x98
O/T82P(アルミニウ
ム-リチウム合金機
体板)
ALCAN 2098,
2x98 O/T82P
(Aluminum-Lithiu
m Alloy Fuselage
Sheets)
08A
0250335
Eng Fract
Mech
先進的アルミニウム-リチウム(Al-Li)合金の剥離亀裂は破壊プロセス
において支配的な役割を演じる。宇宙構造物の要素へのこれらの材
料の導入に伴って,信頼できる設計と欠陥評価の先駆者として剥離亀
裂と巨視的破壊の間の相互作用の定量的理解の確立が要求されて
いる。剥離亀裂は結晶粒サイズのオーダーでの初期横方向亀裂の
形成を伴う複雑な破壊機構を表す。本報では,C(T)試験片の断続破壊
靭性試験とそれに続く研磨によって剥離亀裂の位置,寸法および形状,
ならびに主マクロ亀裂の拡大を明らかにした。これらの観察は剥離
亀裂サイズが J/σ 0 によって表された主亀裂前面の荷重に対応する
ことを示唆した。モード 1 荷重の 3-D,小規模降伏フレームワークを用
いて,有限要素研究キャンペーンは巨視的(主)亀裂に沿った,剥離亀裂
前方の局所荷重に及ぼす前記の剥離亀裂の影響を定量化した。異
方性降伏面を持つ等方性硬化モデルは,本研究で調べた
2099-T87Al-Li 合金板の構成挙動を表した。計算結果は塑性域サイ
ズ,マクロ亀裂前面先方の局所J の変動,およびマクロ亀裂と剥離亀裂
の成長促進に役立つ応力状態を特性化した。計算研究は主亀裂前
面を分割する剥離亀裂によって引き起こされた,破壊実験中に観察さ
れた靭性の観察された増加に新しい定量的な見解を提供した。
Copyright 2009 Elsevier B.V., Amsterdam. All rights reserved. Translated
from English into Japanese by JST.
Al-Li 合金
剥離亀裂
Fatigue Fract
Eng Mater
Struct
30 年前に発表された標題の論文について,アルミニウム合金の損傷
許容性の重要性とその後の動きと現状の問題を概説した。材料に関
しては,AA2000 に代わる AA7000,第二・三世代の Al-Li 合金の開発,炭
素繊維複合材料およびガラス強化アルミニウムラミネートの開発と実
用化,さらにはフライトシミュレーション疲労亀裂伝播に関して取り上げ
るべき因子に触れ,当面の問題として戦闘機と輸送機に分けた損傷許
容性原理の使用,全寿命の全体的アプローチ,定量フラクトグラフィー
による取り組みを簡単に述べた。
Al-Li 合金
疲労亀裂伝
播特性
損傷許容性
Alcoa 社により開発された次世代合金の Al-Li 合金である 2099 合金を
用いて軽量の航空機機体用の締結カラーを製造したのでその概要を
紹介した。このカラーはトルク制御を有するネジ付きの自己ロック型
カラーであり熱処理ピンと共に締結具組立構造に使用される。このカ
ラーの機械的特性を測定すると共に 7025 及び 2024 合金のような現
行合金製の製品と比較した。試験結果によると 2099 カラーは 16%程
度軽量化されているが同等の機械的特性を保有している。更に 2099
カラー製品は改善された耐食性を有しておりそれは腐食モロホロジ
が CFRP 材料と結合した場合に 7075 カラーのそれよりも許容性が高
いことによることを示した。
2099 合金
の応用事例
Adv Mater
Process
ASM AeroMat 2007 会議での Alcan 職員によってなされた発表をまと
めた。すなわち,機体のための押出合金,アルミニウム-リチウム合金,
統合製品チーム及び有効性質評価の形成について記述した。利用者
との相乗的相互協力関係では部品の接合,部分利用やその他のプロ
セスで重要な進歩をもたらすことを指摘した。
Al-Li 合金
接合強度
Spec Publ
Soc Automot
Eng
航空機生産工程で,幾つかの航空宇宙用アルミニウム合金に対する
スプリットスリーブ冷間孔拡大工程の適用について研究した。材料と
工程の最適化に関する推奨事項を得るため,幾つかのアルミニウムリチウム合金を調べた。その結果,一般的にこれらの材料が厳しいけ
れども現実的な条件で亀裂を生じることなくこの工程に使用できるこ
とが判った。さらに,最も困難なケースにこの工程を適用するた
め,7085-T7651 アルミニウム合金板について新しいスリーブ設計の
性能を調べた。この設計は最適化したものではないものの,実験の結
果,スリ-ブのスプリット近くの亀裂をかなり減らせることが判った。
Al-Li 合金
加工性
Alloy Dig
Alcan 2098 合金の典型的な化学組成は
0.12maxSi-0.15maxFe-3.2-3.8Cu-0.35maxMn-0.25-0.8Mg-0.25-0.6Ag0.8-1.3Li-0.04-0.18Zr-balAl:wt%であり,航空機機体に用いる。O/T82P
焼戻しは 2024 合金を上回る改良をもたらす。その物理的性質,機械的
性質,熱処理,耐食性,関連規格,一般的性質,提供製品形状,用途,につい
て示した。Alcan 社の提供製品。
Alcan2098
合金の紹介
SAE Tech
Pap Ser (Soc
Automot Eng)
07A
0796109
アルミニウム合金
の開発 Airbus
A380 用-Part 2
ALUMINUM
ALLOY
DEVELOPMENT
FOR THE
AIRBUS
A380-PART 2
06A
0054471
2099 T83,T8E67(高
強度低密度アルミ
ニウム合金押出材)
2099 T83, T8E67
(High-Strength
Low-Density
Aluminum Alloy
Extrusion)
Alloy Dig
06A
0019800
輸送機器向け展伸
用アルミニウム合
金の開発の歩み
History of
wrought
aluminum alloys
for
transportations
住友軽金属技
報
05A
1054934
エアバス航空機で
のアルミニウム合
金の新たな開発
New
developments of
aluminium alloys
on Airbus aircraft
Alum Int
Today
05A
0722417
A98090 アルミニウ
ム-リチウム合金の
ミクロ組織キャラク
タリゼーションにつ
いての超音波研究
03A
0652254
航空宇宙材料
Adv Mater
Process
Ultrasonic
01A
0305069
Studies for
Microstructural
Characterization
of A98090
Aluminum-Lithiu
m Alloy
Advances in
Aerospace
Materials.
将来技術に対する
宇宙航空用材料(原
標題は英語)
Mater Eval
Adv Mater
Process
軽金属
Airbus 社と Alcan 社は,世界最大の大型旅客機 A380 用の機体材料用
に新しいアルミニウム合金の共同開発を行っているが,本報告はその
活動内容を紹介する第 2 報である。機体の大型化に伴い,1)従来規格
材のゲージ厚みや寸法の拡大を図ること,2)従来材の機械的特性で
は不十分なため新合金の開発,が必要になった。1)のケースでは翼リ
ブ材,上部外側翼材として 7449,7349 などの寸法拡大を図った,2)のケ
ースでは翼および機体の各部位に従来材を超える機械的特性を持
つ新合金を開発した。また初期段階では,Al-Li 合金の適用も考慮され
たため,Alcan 社は AA2196 Al-Li 合金の開発も行った。
標記 Al 合金の化学組成は
2.4-3.0Cu-1.6-2.0Li-0.4-1.0Zn-0.10-0.50Mg-0.10-0.50Mn-0.05-0.12Zr
-0.10maxTi-0.07maxFe-0.05maxSi-0.0001maxBe-0.05max その他各元
素-0.15max その他元素総計-balAl:wt%であり,航空機用等に開発した
Al-Li 合金である。その物理的性質,機械的性質(引張特性,靭性,疲れ
特性),耐食性,一般的性質,関連規格,提供製品形状,用途,について示し
た。AEAP-ALCOA Engineered Aerospace Products 社の提供製品。
日本の展伸用合金の開発は戦前の航空機材料の超超ジュラルミン
ESDに始まり,戦闘機に応用された。戦後は 7075 に代表される航空機
材料が発展したが,Al-Li 合金や高力 6000 系合金も開発の対象となっ
た。鉄道車両向けには 7N01,6N01 の中強度,耐食合金の進歩があり
車両の軽量化と経済性に寄与した。最近の材料進歩における注目は
自動車用パネル材の開発で,5000 および 6000 系新合金と FSW をはじ
めとする製造技術が融合して市場の拡大に貢献している。
エアバス航空機の構造材料は現在でもアルミニウム合金が主体を占
めており,A380 を例にとればアルミニウム合金は 61%,複合材料は 22%
で,ついでチタン,鋼,Glare(繊維金属ラミネート)となっている。ここでは,
アルミニウム合金の新たな技術開発の動きとして注目される Al-Li 合
金の採用による機体重量軽減の効果について詳述した。破壊強度や
熱安定性が改善された新しい Al-Li合金を使用することによりA380-F
で 350kg,旅客機用で 200kg の重量軽減が得られた。主として胴体の
床サポート用の押出形材として採用した。さらに Al-Li 合金と共に導
入した新技術は,レーザビーム溶接と摩擦撹はん溶接である。A350
の胴体部では Al-Li 合金の使用で,600kg の重量軽減が図れると試算
されている。
高強度,優れた耐疲れ特性や高い比剛性率で再び機体材料として着
目されてきた A98090Al-Li 合金について超音波によるミクロ組織のキ
ャラクタリゼーションを試みた。試験に用いた超音波速度測定用計算
機システムと縦波速度からの弾性率の算式を示した。時効処理材に
ついて超音波縦波,S 波の減衰と縦波の速度測定を 303-500K で実施
し,またミクロ組織観察,硬さ試験と密度測定を行った。超音波の速度,
減衰の温度依存性や Al3Li 析出,成長や分解に伴うこれらの変化を明
らかにした。また,弾性率変化と析出現象との関連性に言及した。
AeroMat2003 で発表されたいくつかの論文のを紹介する。Boeing 社
の 7E7 の翼,胴体への黒鉛エポキシ樹脂複合材料の採用。衛星部品
の重量を低減する Al-40%Be 合金。Alcoa 社の高強度鍛造用合金
7085。Al-Li 合金に関する最新情報(剥離現象,疲労挙動,熱曝露の影
響,低温タンク用の熱処理,破壊靭性)。宇宙ステーションへのBoeing軌
道宇宙航空機の運行計画。最新のアルミニウム航空機構造。これら
について概要を述べた。
将来可能となる三つのタイプの航空機用の材料について展望した。
超大型亜音速旅客機は機体重量が規制されている。軽量合金として
の Al-Li 合金とその改良型合金の性質や問題点を述べた。アラミド繊
維やガラス繊維で強化した積層Al複合板,高比剛性をもつAl-Be合金,
着陸用ギア材料,機体材料用ポリマー基複合材料について述べた。
高速旅客機は騒音が制限され,排気規制を満たすことが要求される。
Ni 基超合金,Ti 金属間化合物,Ti-セラミック基複合材料などの用途と特
徴を述べた。超音速機用材料として,金属基複合材料,C/C 複合材料
などについて予測した。
既存 Al 合
金
Alcoa2099
合金の紹介
開発経緯の
紹介
エアバス社
の応用事例
紹介
Al-Li 合金
の特性
各種材料の
紹介
各種材料の
紹介
4.航空機産業の今後の動向9)
日本航空機開発協会の平成 23 年度報告書9)における 2031 年までの航空機産業の予測とし
て、図2に示すように、今後も航空機の利用は増加し続け、特にアジア/太平洋地域での増加が
大きいと予測されている。航空機の寿命は 20~30 年とされており、これら航空旅客者の増加
に対しては航空機の新規需要で対応することになる。図3に示すように、2031 年には旅客機数
が 2011 年の約2倍に増加すると予測され、新規需要の中でも 120~169 席の旅客機が、つい
で 230~309 席、170~229 席の旅客機の需要が大きいという予測になっている。
路線距離からみて、リージョナル(1000km 以下)
、短距離(1001~2000km)
、中距離(2001
~4500km)
、長距離(4501km 以上)に分類し、座席区分との関係を予測した結果を図4に示
す。120~169 席の旅客機(A320、737 等)はリージョナル、短距離および中距離路線で、230~
309 席の旅客機(A330 、767 等)は長距離路線で、170~229 席の旅客機(A321、757)は中
距離路線での要求が高い。なお長距離路線では 310~399 席の旅客機(A340、777)に対する
需要が大きい。なお、リージョナル及び短距離路線では 40~59 席機(CRJ200、ERJ145 等)
も主力になっている。
しかしながら、図5に示すような航空機燃料価格の急騰は必然的に航空機会社の経営を圧迫
することになり、結果として燃費の良い航空機の開発は今後も続き、エンジンの改良や空力特
性の改善とともに航空機機体の軽量化の動きは今後も続くと予想される。
図2 世界の航空旅客予測9)
図3 サイズ別ジェット機の運航機数と需要予測9)
図4 航空機の座席区分と路線距離区分の予測9)
図5 原油価格と燃料価格の変遷9)
5.今後の航空機用アルミニウム合金への期待
前述したように、今後も航空機の軽量化の動きは加速されると予測されるが、787 あるいは
A350 といった長距離路線用の旅客機のみが増加するとは考えにくい。軽量化のメリットが大
きい長距離路線用の旅客機では、高価な複合材料やアルミリチウム合金を大量に使用してもコ
スト的に見合う可能性が高いといえるが、複合材料やアルミリチウム合金も万能の特性を有し
ているわけではなく、製造コスト以外の課題も多い1)~4)、6)。例えば、複合材料では CFRP
構造の設計・評価技術の確立や、耐雷性、鳥衝突(耐衝撃性)の改善が望まれる。アルミリチウ
ム合金でも、疲労特性や破壊靱性などの十分かつ信頼性のある設計データの作成や向上、回収
スクラップのリサイクル性等が望まれる。
2000 系や 7000 系といった従来の高強度アルミニウム合金は、複合材料やアルミリチウム合
金に比較してコスト的に有利であり2)3)、また、すでに 100 年近い航空機への採用実績の中で
確立されてきた、航空機特有の損傷許容設計法に対する信頼性を無視することはできない2)と
考えられる。このため、特にリージョナルから中距離路線用の旅客機においては、機体の軽量
化とコスト低減とのバランスから材料の取捨選択が今後行われていくと思われる。
残念ながら、日本国内ではアルミリチウム合金の開発は行われていないものの、①超塑性材
料、②摩擦撹拌接合(FSW:Friction Stirring Welding)やレーザー溶接(LBW: Laser Beam
Welding)による押出型材の適用1)3)、③アルミベースの複合材(例えばアルミクラッド材や
GLARE のような繊維積層アルミ)
、④Al-Be 合金、⑤低コストアルミニウム合金(例えば
AA2013 合金)1)、⑥ナノテクノロジーの応用(例えば超微細結晶粒化)2)など、低コスト化
を意識した航空機用アルミニウム合金やプロセス開発についてはまだ検討の余地があると期待
している。
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参考文献
1) 吉田:住友軽金属技報 Vol.46、No.1(2005)
、99-116
2) 中村:軽金属 Vol.62、No.6(2012)
、249-256
3) 航空機国際共同開発促進基金(IADF)
:解説概要 17-5-7「航空機に於けるアルミリチウム
合金の開発動向」
4) 松澤:軽金属 Vol.62、No.4(2012)
、185-197
5) 日本航空宇宙工業会:日本の航空宇宙工業、平成 24 年版
6) 航空機国際共同開発促進基金(IADF)
:解説概要 23-2「複合材の航空機適用への課題と国
際競争力強化」
7) 石川:自動車技術 Vol.66、No.10(2012)
、4-10
8) T.Smith:Aluminium International Today, Vol.24,No.5 Sep/Oct(2012),83-84
9) 日本航空機開発協会:平成 23 年度 民間航空機に関する調査研究、平成 24 年 3 月
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