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世界寺子屋運動の現場⑦【インド】

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世界寺子屋運動の現場⑦【インド】
2005年5月1日発行(奇数月1日発行)通巻1097号 昭和26年11月24日 第三種郵便物認可
ISSN1340-6442
[発行]
(社)
日本ユネスコ協会連盟
△
会 長:児島 仁
副会長:平山 郁夫・村田 昌志・鈴木 幹夫
理事長:野口 昇
日本ユネスコ協会連盟
世界寺子屋運動の現場 ⑦【インド】
3月30日、インド・カルナータカ州ベルガウム県ゴカッ
ク郡ナラナッティ村で寺子屋の開所式が行われた。
式典の後、村人たちにお祝いの食事(もちろんカレー)
がふるまわれた。ここで使われたのが沙羅双樹の葉を何枚
も重ねてプレスしただけの、環境にやさしい究極のお皿。
食べ終えて、お皿ごとごみ捨て場に捨てると、野良の猪豚
や犬たちが残りのご馳走をたいらげ、お皿は自然にかえる。
インドのカレーは地元の人が“スープ”と呼んでいるように、
かなり水分が多いが、このお皿はカレースープが漏れない
ユネスコ in Action
「持続可能な開発」への学び∼まず隗より始めよう 有馬 朗人
Youth in Action
青年の育成は一日にして成らず?! 杉並ユネスコ協会
寺子屋のいま
日本とゴカックとの熱い友情 B.K.バルラヤ
世界遺産ノート
バーミヤン文化支援キャンペーン報告
国内外からの便り
No.7 /ネパールだより
アフガンからサラーム! ピースパートナー
D−project 春の公開研究会
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すぐれ物。市場で買い求め
たところ、外国人向け価格
で5 枚7 ルピー(約1 8 円)だった。
ゴカックの西にあるカナプールで作られているという。
沙羅双樹の葉の大きさや乾き具合が最適で、他の木の葉で
はうまく作れないそうだ。沙羅双樹は仏教の聖木のひとつ
と言われている。動物に、人に、そして何より地球にやさ
しい聖木からの贈り物は、村人の生活に欠かせないものと
なっている。
(教育文化事業部 坂巻豊子)
ユネスコ活動のひろば
第7回「絵で伝えよう!わたしの町のたからもの」絵画展
理事会報告
イベントレポート
三菱IMPRESSION−GALLERY アジア・子供アートフェスティバル/
ユネスコ・ユースセミナー2004/UNESCO親善大使会議/「国連・持続
可能な開発のための教育の10年(UNDESD)」キックオフミーティング
お知らせ・募集
9 “ありがとう”のページ(募金協力者一覧)
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世界遺産の現場(24)
雄壮な大自然 カナディアン・ロッキー ①
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ユネスコ in Action
「
持続可能な開発 」への学び
か い
まず隗より始めよう
日本科学技術振興財団会長
有馬 朗人さん
去る3月1日、
「国連・持続可能な開発のための教育
の10年」の立ち上げ式がニューヨークの国連本部で
行われた。この国連10年を提案した日本政府を代表
して、有馬さんはスピーチの中で次のように述べた。
「…わが国は、天然資源に恵まれない中、人的資
源を礎として今日の日本を築きましたが、一方で
1960年代の高度成長期には急速な工業化による深刻
な公害を経験し、多くの人が健康を損ないました。
このことから、発展のための努力を加速しようとす
る国々に対してはわが国の苦い経験を教訓にして、
同じ過ちを犯さないよう、環境保全と両立した開発
に取り組んで頂きたいと考えています。
また、一方で、この高度成長を通じて、大量生産、
大量消費及び大量廃棄が促進されることになりまし
た。しかし、人びとが、現在のライフスタイルを変
えることなく今と変わらぬ方法で生活の便利さや快
適さを追求し続けるとすれば、やがては自然環境の
回復力が大きく害され、取り返しのつかないことに
なります。そのような状況を回避すべく、持続可能
な開発を達成するためには、我々特に先進国が、教
育を通じてこれまでの価値観やライフスタイルを変
えていく必要があると考えています…。
」
開発や成長の「先進国」に暮らす私たちの生き方
が問われている。科学と教育を見つめ続けてこられ
た有馬さんに伺った。
―― ’
70年代の初めでしたか、ローマクラブ※が出した
「成長の限界」というリポートは、当時の日本に大きな
ショックを与えました。
基本的な問題は30年前も今も共通で同じだと思い
ますよ。いわゆる南北問題などは、この30年間常に
問題でしたね。発展途上国と先進国との格差をどう
するか。しかしそれがひとえに教育の問題だという
● ●
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ユネスコ 2005/5
ことに関心が高まったのは、特にここ10年ほどで
しょうか。皆さんご存じの通り、ユネスコによる
『すべての人に教育を』という活動が始まったのは
1990年ですが、南北問題の裏側というか、それを解
決するのは教育だということに世界が気がついた、
意識し始めた時期ですね。これと平行して顕在化し
てきたのが資源問題です。そのひとつが、今では現
実になった地球温暖化に関連するCO2の削減、もう
ひとつは新エネルギーの開発ですね。ローマクラブ
の思想には天然ガスもウラニウムもいずれ枯渇す
る、化石燃料もこれ以上燃やすなということがあり
ましたけど、30年前はあまりピンとこなかった。特
に日本では原子力を使わざるを得なくなることに対
する反感で、石油依存を止められないという事情も
あったのでしょうが、あまり問題にはならなかった。
新エネルギーについては原子力反対の人も太陽光
や風力を使うことには賛成です。しかしこれが簡単
にはいかない。いま日本で太陽光発電導入量は一次
エネルギー全体のやっと2%、2010年になんとか3%
にはしたいが、10%にするには50年かかる。つまり、
今の条件下では、2050年になっても石油や原子力を
止めることはできそうもない。世界のエネルギー需
要はこれからも増え
続ける見込みで、
2030年(もうすぐで
すが)には2000年の
1.7倍に達すると予
測されています。
しかし石炭、石油、
天然ガスといった化
石燃料がこの先100
年もつかどうか。一
方その間燃やし続け
ることで、地球は確実に温暖化し続けるでしょう。
最近の100年間だけでも世界の平均気温は0.7度上昇
したのですから。
―― そうなると多くの先進国にとっては「成長の限界」
どころか、現在の生き方そのものを変えない限り「持
続不可能」が現実味を帯びかねませんね。
スピーチの中でもお話ししましたが、これから世
界中の人びとが地球資源を守りながら発展していく
には、なによりも意識改革、特に先進国が当然のも
のとしてきた大量生産・消費・廃棄といった文明の
形・暮らしぶりを変える意識改革、そのための学び
が必要となっているということです。特に未来の世
代にとって欠かせないのは、これからの人類の生き
方にも通じる「持続可能な開発のための教育」で
しょう。
―― そのスピーチで紹介なさった「もったいない」と
いう日本語が歓迎されたそうですが…。
これはね、2月に来日したワンガリ・マータイさ
ん(ケニア環境・天然資源副大臣、2004年ノーベル
平和賞受賞者)が日本人から教わって大いに感銘さ
れ、あちこちでPRしてくださったので、さっそく
私も使わせてもらったんです。司会役の松浦
UNESCO事務局長が、これから有名にしたい日本語
はツナミとモッタイナイですとユーモラスに応援し
てくれました。私はこの「もったいない」をESD
(持続可能な開発のための教育)のスローガンにし
てはどうかと提案したんです。議決したわけじゃな
いけど、「物を大事に使いましょう」というわかり
やすいモラル(倫理)だと皆さん大変歓迎してくだ
さいましたね。
―― モラルとなると、いわゆる環境問題と同じように、
途上国からは「それはあなた方の規範であり倫理では
リカや動き出していたEUのようなまとまりですね。
そこでまず専門の物理学の世界で、国交のある国も
ない国も一堂に会する国際会議を提案した。ところ
が日本国内の学会の一部や留学生から強い抵抗にあ
いました。「物理学という先進国の学問は、発展途
上国の近代化に結びつく権力の象徴だ。持ち込み反
対」というのです。会議そのものは実現したのです
が、そのときも途上国には先進諸国のモラルはおろ
か「論理」を持ち込むことにさえ抵抗があることを
悟りましたね。
個人的には、先進国が発展途上国の人びとに
「もったいない」と言ってもしかたがないと思いま
す。それどころか“生きること”が先なのですから
ね。これはすぐれて発展した国々(米国、EU、
OECD諸国、もちろん日本も含めて)の問題なんで
す。しかし、今回この言葉をケニアのマータイさん
が受け入れてくれたことがとても重要だと私は思い
ます。つまりマータイさんは「先進国の人びとよ、
モッタイナイという運動を起こしなさい!」と呼び
かけながら、途上国の人びとには「これから自分の
国が伸びるためには、今からモッタイナイの精神を」
と訴えてくれた。地球の持続のためにはもはや先進
も後進もない、共通の理解がどれほど大切か、そん
なことを教わった気がします。
ないか」と反論が出そうです。
持続可能な開発をめぐる最初の賢人会議が昨年夏
にパリであった。その席でいろいろ教育や文化の話
が出ました。私も日本の明治時代の「文明開化」に
ついて触れたのですが、他の参加者からは「文明=
Civilization」という単語が全く出てこない。何故か
と思ってランチのときに訊ねたところ、アフリカの
マリの前大統領から、その言葉は“侵略”
と結びつく
と言われました。確かに時代をさかのぼれば未開を
「教化」し「文明化」するという意味合いもあるこ
とに、日本人の私はあらためて気づかされましたね。
もうひとつ個人的な経験ですが、1980年当時、私
はアジアが一極にならなければと思い始めた。アメ
―― もうひとつ、具体的な行動規範として「3つのR」
を提案されましたが。
わかりやすく日常的に、誰もが参加可能なアクショ
ンを3つ挙げました。
『廃棄物発生抑制のReduce』
『再利用のReuse』
『リサイクルのRecycle』という3R
です。持続可能な開発という精神にも結びついてい
るし、ESDのひとつのスローガンとしてどうでしょ
うかという提案です。実はこの3Rは、昨年6月のサ
ミットで日本が主導し合意された行動基準で、この4
月から世界的に動き出しました。これは、日本が自ら
をも含めた先進国に対して発した「警報」です。自
分から警報を出しておいて、その国の人びとが何に
ユネスコ 2005/5
3
ユネスコ in Action
もしないわけにはいかない。たくさん食べ残しをし
ながら国にCO2削減を求めてもしかたないでしょう。
自分の生活を見つめ直さずに「今のままの」さらに
は「もっと良い」しかも「持続可能な」暮らしを望
むことは早晩無理になるんですから。
話が飛ぶようだけど、私は21世紀は文明の衝突で
はなく、地球上の人びとの間で生き方、生活様式の
衝突がもっとひどくなるのではと感じているんで
す。自分が戦争世代ですから「もったいない」とい
う思いは強いほうだけど、デパートの包装ひとつ
とっても相変わらず過剰なまでの贅沢さには我慢で
きない。アメリカよりひどいですよ。無駄な贅沢で
はなくて無駄そのものに見えて仕方ないですね。確
かにこの「もったいない」という考え方は今日の資
本主義経済とは矛盾します。近代経済学による政策
が求めてきたのも、要するにどんどん消費させるこ
とにありました。これが過ちだったのかもしれない。
これまでの経済の活性化原理、経済力を上げ続ける
という原理が「持続可能=Sustainable」でありつつ
「開発・発展=Development」する思想に適応しなく
なっている。S(持続)とD(開発)は本来、相容れな
いものでしょうが、それを合わせないとやっていけ
ないことがはっきりしてきた。
「持続可能な開発」の
要諦は、ある意味「妥協」だと私は思うんですがね。
―― SとDだけでも難問ですが、そのためのE(Edu─
cation:教育)となると、近未来に向けての道徳教育
みたいなイメージがありますが、具体的には何をどう
学んでいくことになるのでしょうか。
これから世界各国で実践のためのスキーム(計画)
が練られていくでしょうが、共通する基本的ビジョ
ンは、持続可能な未来のために必要な価値観、行動、
ライフスタイルを学ぶ、またはその機会を持てるよ
うにするということです。その点、日本でも現代に
即した倫理観を、体験を通して身につけるといった
ことも必要になると思いますね。そのとき、問題は
学校教育での場合、教員や親御さんの意識です。こ
のところ評判の悪い総合学習ですが、その一番大事
な点は家庭、学校、地域が一緒になって教える・学
ぶというところにあるのですね。ESDの場合など特
に家庭が本気にならないとだめだと思います。学習
の方法にしても、普通の教科の中ではなかなか取り
組めない農業や工業のことを学ぼうとすると、理科
だけでなく社会科も必要になる。自然環境を見に行
くときも両方の先生と一緒に行ったほうが、その土
地の歴史や文化がわかりますね。エネルギーの問題
も、もったいないの意味も、複合的に学ぶことが欠
かせないはずです。それが総合学習ですし、皆さん
のNGOの経験や知識を生かしていただける場だと思
いますがどうでしょう。
――「持続可能な開発を達成する上で、人づくり、教育
が重要だ」と初めて国際社会に訴えたのは、ほかなら
ぬ日本でした。
小泉首相がヨハネスブルグでのサミットでこの国
際10年を提案したのが2002年です。言い出した国と
して、まず自ら持続可能な開発と教育のモデルをつ
くる責任があります。その上で家庭、学校、地域が
一緒になって教育を実践してみせる。その成果をま
ず先進国に伝え、次いで発展途上国に移したい。し
かし、そのために私は「隗より始めよ」と言いたい
んです。「事をはじめるにはまず言い出した者から
実行しなさい」という意で使われる中国の名言です
ね。未来の世界に「前者の轍」を踏ませないために
も、言い出した者の責任はとても大きいのです。残
された時間はそう長くはないのですから。
かい
―― お忙しい中、どうもありがとうございました。
(インタビューから構成 文責・編集部)
※ローマクラブ[The Club of Rome]
1969年、ローマで初会合を開いた科学者・経済学者・
教育者などの民間組織。環境汚染や人口増加などの面か
ら、人類の生存の危機に警告を発し、以後南北問題など
でも活動。
PROFILE
有馬 朗人
ありま・あきと
1930年生まれ。東京大学物理学科卒。東京大学原子核研究所助手などを経て1975年教授に。その後、日本物理学会長、東京大
学大型計算機センター長、理学部長を歴任し、1989年総長に就任。1993年より法政大学教授。同年、理化学研究所理事長に。
中央教育審議会会長、日本学術会議会員などを歴任し1998年、参院選比例区に自民党で当選、文相に就任。翌年、科学技術庁
長官に。原子核物理学の分野で若くして世界に知られ「原子核の集団運動」で1978年、仁科記念賞、
「原子核の力学的模型と電
磁相互作用の理論的研究」で1993年、日本学士院賞を受賞。2004年文化功労者。俳句に造詣が深く、国際俳句交流協会会長な
ども務めた。現在は俳誌「天為」主宰。主な専門書に「科学の饗宴」
「原子と原子核」
「物理学は何をめざしているか」
、句集に
「母国」
「知名」
、俳人協会賞を受賞した「天為」
「不稀」等がある。現在は日本科学技術振興財団会長。
4
ユネスコ 2005/5
Youth in Action
青年 の育成は
一日にして成らず
杉並ユネスコ協会青年育成担当理事
板倉 七重
12年前まで杉並ユネスコ協会青年部は「中学生向
け国際交流サマーキャンプ」の企画・運営を主な任
務とし、中学生時代のキャンプ参加者と一般公募で
構成されたメンバーが集まっては、“キャンプの終
了と共に解散”を繰り返していた。
そんな青年部に変化が訪れたのは、’
93年に杉並ユ
協が月1度の区内在住・在学の中学生対象の英会話
を含む国際情操教育「中学生クラブ」をスタートさ
せたことに遡る。受講生の数は年々増え、運営側の
人手が不足し、高校生であった私も青年部として手
伝い始めるようになった。キャンプ参加メンバーに
も声をかけ、毎月この中学生クラブで顔を合わせる
ようになった。
中学生クラブが軌道に乗り、クリスマスパー
ティーの企画・運営を青年部が任せてもらえるよう
になったことがきっかけで、定期的に集まる「活動
日」が生まれた。やがて、中学生クラブ第1期生も
高校生となり、運営に青年部が大きく関わるように
なっていった。
続々とメンバーが増えた青年部だったが、今度は、
「人はたくさんいるが、やることが少ない」という
ジレンマに陥ることとなった。当時、日本ユネスコ
協会連盟が実施していたインドなどへのスタディツ
アーには、興味はあっても全員が参加できるわけで
はなかった。そこで、親ユ協では広島ユ協と杉並区
職員組合の後援を得て「広島スタディツアー」を実
施し、「平和」や「世界遺産」について学ぶ機会を
つくろうということになった。1998年に始まったこ
のツアーは参加する青年が跡を絶たず、年に1度の
恒例事業に成長したが、今度は「学んできたことを
何に活かすか」という課題が発生し、青年たちが力
を持て余す状態となってしまった。
そんな折、「総合的な学習の時間」を使っての小
学校からの講演依頼が舞い込んだ。青年部メンバー
が同行しゲームや体を使った授業を行ったところ、
子どもたちは年の近い青年たちとの交流を楽しみ、
よく学び、教える側も子どもたちとの触れ合いに
よって責任感や学ぶ意欲が向上するという相乗効果
があることが判明した。そこで親ユ協では杉並区教
育委員会の後援で「青年部と共に行う国際理解授業
プログラム」を推進するようになった。
現在、区内小・中学校からの依頼を親ユ協が受け、
青年部(高校生、大学生で構成。2005年3月現在約
50名。男女比はほぼ半々)がメーリングリストでそ
の都度協力者を募集する。
「異文化理解」
「寺子屋運
動」
「平和について」
「国旗カルタ」など、さまざま
なプログラムを平均約5名の青年部メンバーが月に
3回から5回ほど行っている。学校や外国人協力者と
の渉外とコンセプト管理は親ユ協が、個別のゲーム
企画や児童・生徒を盛り上げ、プログラムの教育的
効果を上げるのは青年部の役割となっている。
今後は、中学生クラブをはじめ学校訪問プロジェ
クトで、青年部が自らコンセプトを作成し、運営で
きるようになることが課題だ。ここで必要不可欠な
のは、青年部と長期にわたって教育的に関わること
のできる指導者の存在だ。長い道のりの中から熟成
されてきた青年部だからこそ、親ユ協との“協働”
で新たなパワーとエネルギーを生み出すことができ
るのだと確信している。
PROFILE
板倉 七重
いたくら・ななえ
1979年生まれ。先に活動していた母親
の薦めで杉並ユ協の活動に関わるよう
になる。中学1年のときに杉並ユ協
「ユネスコ教室」に参加し、高校3年時
に青年部としてキャンプに初参加、以
来杉並ユ協青年部の組織運営に携わ
る。’
97年10月、日ユ協連の呼びかけに
よる「Global Action 21」の運営に参加
し、ユネスコについての知識を深める。大学を卒業した後
も社会人として杉並ユ協で活動を続ける。
「ユネスコ協会に
おける学生とは違う青年活動のあり方」が最近の課題。
ユネスコ 2005/5
5
寺子屋のいま
ニームツリーと一緒に
すくすく育て!
日本とゴカックとの 熱い友情
1989年に始まったユネスコ・世界寺子屋運動
は、発展途上国で行われている識字教育の資金
的支援にとどまらず、支援を通じた相互理解と
ユネスコ精神の普及を大きな目的としています。
識字教育の現場を訪れ、学習者やプロジェクト
スタッフとの交流を通して、現地の状況をより
よく知るためのスタディツアーが実施されてき
たのもそのためです。
今号では2002年からの5ヵ年計画「インド・ゴ
カック・プロジェクト」開始以来、多くのツ
アーが訪れているインドのベルガウム農村総合
開発協会(BIRDS)※1 プロジェクト・ディレク
ター、B.K.バルラヤ氏に、スタディツアーを受け
入れる側の思いを寄稿していただきました。
活動を映す鏡
スタディツアーが組まれるということは、我々の
日頃の活動が認められた成果と大変光栄に思ってい
ます。自分たちの日ごろの活動はなかなか客観的に
評価できませんが、ツアー参加者の感想や意見を知
ることで、それが可能になります。ですから日本か
らの訪問は「我々の活動を映す鏡」と考えています。
カンナダ語(カルナータカ州の公用語)で、「知識
を得るには、本を読むより世界中を旅せよ(百聞は
一見にしかず)」ということわざがあります。しか
し、BIRDS職員には海外で見聞を広める機会はほと
んどありません。そこで、日本各地から当地を訪れ
た皆さんの生活習慣などを知るのは、見聞を広める
上でも大変意義深いと思っています。
また、海外を知る機会のないプロジェクト地の村
人にとっては、居ながらにして外国(人)を見て、
知って、交流するかけがえのない機会です。日本の
皆さんの訪問は、皆さんが想像している以上に楽し
※1
ベルガウム農村総合開発協会(BIRDS)とは
Belgaum Integrated Rural Development Society。イン
ド・カルナータカ州ゴカック郡ナガヌールで1980年に現会
長のパティル氏によって設立されたNGO。農村の社会経済
的な向上を目的として、地域社会に根を下ろした社会開発
活動を行っている。1994年より日本ユネスコ協会連盟から
の支援により、非就学児童、少数民族、女性を対象とした
識字・収入向上プログラムを実施してきた。傘下に寄宿制
学校、福祉単科大学(BSWカレッジ)
、農業科学センター、
薬用植物保護センター、聾学校をもつ。会長のパティル氏
はナガヌール・ユネスコ・クラブの会長も勤める。
6
ユネスコ 2005/5
みなのです。皆さんが村を訪れたとき、多くの村人
に囲まれ、盛大な歓迎を受けるのはそのためです。
「時間を守ること」を日本人に学ぶ
あるスタディツアーグループがゴカック郡のカイ
スナール村寺子屋を訪問したときのこと。寺子屋運
営委員会との会合が予定されていた夕方5時半を過
ぎても、なかなか委員が集まらない。そこで村の年
長者は次のようにたしなめたそうです。「彼ら(日
本人)はカイスナール村と約10キロも離れたところ
から時間通りに来ているのに、同じ村にいる我々が
時間を守れないとは。日本人のように時間に正確で
なきゃならん」
。
寺子屋で学んで得したこと?
「僕たちは(働かなくてはならないから)昼間学
校に行けないけど、夜の寺子屋で学んでいるおかげ
で日本の人たちに会えたよ。昼間(働く必要がなく)
学校に通っている子たちは会えなかったのにね」―
そんな素直に得意げな感想を働きながら学ぶ子ども
たちから聞きました。日本の話を直接聞き、逆に自
分たちが質問を受けることは、寺子屋で学ぶ子ども
たちにとって興味津々。楽しみであり励みなのです。
村人の責任感もアップ
2004年度ユネスコ・青年交流信託基金インドスタ
ディツアーでは、前述のカイスナール村にある寺子
屋周辺の清掃・整地作業を計画しました。この村は
指定カースト※2 の占める率が高く、村人の多くが農
作業など日雇い仕事で生計を立てています。厳しい
※2 指定カースト:旧不可触民とほぼ同義で、憲法上保護すべきと
「指定されたカースト」のこと。
社会的環境ゆえか、寺子屋への理解と協力も難しい
状況にあり、当時、寺子屋の周りには潅木が生い
茂っていました。ところが、計画を知った同村の寺
子屋運営委員会のメンバーは「外国人(日本人)が
わざわざ遠くから、自分たちの村を掃除しに来るの
は恥」として、スタディツアーの一行が到着する前
に、村人たち自らで茂みを刈り取り、一行が到着し
てから一緒になって石ころを取り除く作業を行いま
した。グループの訪問は村人たちの心に責任感を育
むきっかけも与えているのです。
受け入れ側で思うこと
村の暮らしぶりを体感していただくためにも、寺
子屋支援地を訪れる際は、できるだけ村人と食事を
共にし、より多くの時間を村で過ごして理解を深め
ていただければと願っています。
また、BIRDSでは世界寺子屋運動の支援による識
字教育以外にも、他の外部資金により農業科学セン
ター、薬用植物保護センターなどの事業を行ってい
ます。寺子屋では、農業科学センターのスタッフによ
る農業研修も始まりました。寺子屋プロジェクトや
実施団体への理解を深めるためにも、時間の許す限
りいろいろな活動を見ていただきたいと思います。
一見何のつながりもない各
センターの活動には、根底
でつながる部分が少なくな
いのです。
ニームツリーが
つなぐ思い
2004年、スタディツアー
が来訪された際、寺子屋で
学ぶ子どもたち100名と
BIRDS福祉単科大学の学生50名が一緒に、ニームツ
リー(広葉の常緑樹)の植樹をしました。この木を
見るたびに、日本の皆さんとの思い出がよみがえり
ます。ゴカックを訪れた日本の皆さんとゴカックの
村人、子どもたちとの間の友情も、この木のように
永遠に育っていくことを願ってやみません。
PROFILE
B.K.バルラヤ
1991年よりベルガウム農村総合開発協
会に勤務。2002年開始の5ヵ年計画「イ
ンド・ゴカック・プロジェクト」のプロ
ジェクト・ディレクター(実施責任者)
。
また、同団体が経営する福祉単科大学の
学長も勤める。
豊かさのための技術をご提案。
富士電機グループは、真心のこもった製品・技術の開発に一生懸命。
水質保全技術や、クリーンエネルギー技術、省エネ技術、情報システム技術など
最新のITをを駆使してさまざまなシステムを提供しています。
ひとの心も豊かでありつづけるために、私たちは、社会の声にお応えしていきます。
富 士電 機ホールディングス株式 会社 〒141-0032 東京都品川区大崎1-11-2
(ゲートシティ大崎イーストタワー)TEL.03-5435 -7111 http://www.fujielectric.co.jp 富 士電 機情報サービス株式 会社 〒151-0053 東京都渋谷区代々木4-30-3(新宿コヤマビル)TEL.03-5388-8241 http://www.fuji-web.com/fis/
ユネスコ 2005/5
7
世 界 遺 産 ノ ート
バ ー ミ ヤ ン 文 化 支 援 キ ャ ン ペ ー ン 報 告
御礼の言葉
昨年3月に開始した「バーミヤン文化支援キャンペーン」は、
このたび、3月末日をもって募金の受け付けを終了いたしました。
キャンペーンを通じ、合計1021件、総額3298万512円の
募金協力をいただきましたことをご報告いたします。
アフガニスタン復興支援に対する皆様の多大なるご協力に心から感謝申し上げます。
また、募金活動のほかにも、チャリティーイベントや学習会活動、広報などで
キャンペーンにご協力いただきました皆様にも、併せて御礼申し上げます。
仏教の東漸の中継点のひとつであるバーミヤンの復興にご関心をお寄せくださり、
平和のために共に行動してくださいました多くの方々に改めて敬意を表します。
日本ユネスコ協会連盟理事長
教育文化センターの竣工は7月に
バーミヤンの復興に
向けて
雪のため冬の間、作業を中断していたバー
ミヤンの教育文化センター建設が、3月8日に
再開した。当初予定よりずっと早い工事の再
開ニュースを喜ばしく聞いたのもつかの間、
4月の声を聞いても、標高2500メートルに位
置するバーミヤンでは、寒気団の影響で作業
ができないでいる。工事に使う水が凍り、セ
ンターの建設現場まで運ぶこともできない状
況だ。
一方、日本では銘板製作の作業が始まった。
合計698名のお名前が銘板に刻まれる予定な
ので、特大の銘板になりそうだ。
建設作業は当初6月末に終了予定だったが、
バーミヤンで竣工式とアフガニスタン政府へ
の譲渡式が行われるのは7月末以降にずれこ
みそうだ。
8
ユネスコ 2005/5
野口 昇
フのア
ェスフ
ロタガ
ジッニ
ーフス
さ。
左タ
んかン
、ら情
ム
テリ報
ーザ文
さイ化
んー観
さ光
ん省
、
アフガニスタンは、これから短い春を経て日
差しの強い夏を迎える。「バーミヤン文化支
援キャンペーン」は終了したが、バーミヤン
の復興はこれからが本番。センターがアフガ
ニスタン政府の力で自立して運営され、地域の
人びとに受け入れられるには、今しばらくの
支援が必要だ。日ユ協連は、皆様からいただい
た募金の一部によってセンターの運営支援を
継続して行う。また治安がさらに安定すれば、
世界寺子屋運動による教育支援や、日本とア
フガニスタンの文化交流の促進も考えたい。
引き続き、センターの竣工式の様子やキャ
ンペーンの最終報告、その後の活動の進展状
況など、折に触れ機関誌でご報告いたします。
(教育文化事業部 岩本由美子)
国 内 外 から の 便り
地区の識字局員(左)が各洋裁店を回って聞きとり調査
もうすぐ完成!
手作り副教材
日本ユネスコ協会連盟カブール事務所
山下陽子
雪に覆われていたアフガニスタンも日増しに
暖かくなり、春の兆しがみえてきました。
JICAからの委託事業「アフガニスタンにおけ
るノンフォーマル教育強化のためのプロジェク
ト」も、2年目を迎えます。この事業は首都カ
ブールの3地域にCLC ※(コミュニティ・ラーニ
ング・センター)を立ち上げ、世界寺子屋運動
の経験を生かしてアフガニスタンの教育復興を
支援するものです。市内3つの地域ではセン
ター建設が急ピッチ、早いところではこの6月
にも完成の予定です。
アフガニスタンのCLCでは、通常、教育省識
字局の教科書が使用されます。しかし、「自分
たちのCLCでは人びとの生活向上に役立つ副教
材を使いたい」
、との声がカブール市内3地域で
上がり、地元の識字局員や識字教師が協力して、
1月から教材作りに取り組みました。
3地域の識字局員と教師たちは、
何を作れば地域の人びとの役
に立つか連日話し合いまし
た。同じ地元で働く識字
局員と教師は旧知の仲。
打ち合わせは盛り上がり、
脱線もしょっちゅうです。
▲副教材作成のための
『お題目は忘れて、楽しい遠
ワークショップ
2月1日、非常事態宣言が発令されて以
降、不穏な状況が続いているネパール。
現地のプロジェクト代表者タクル・マン・サキ
ヤ氏から、最近の状況について情報が届いた。
「軍隊の警備が強化されたため、カトマンズ市
内の治安はよくなった。しかし国王に反対する政
治団体や学生が、散発的にデモを実施している。
カトマンズ市内では野菜などの値段は上がって
いないが、ガソリンやプロパンガスが高騰。
ルンビニでは、残る4軒の寺子屋建築が順調
足の仕切り方読本なんてどう?』と言ってし
まった識字局員。爆笑した識字教師は『教科書
だけでは確かにつまらない。読書の楽しみを伝
えるジョーク集にしよう!』と応戦。話好きの
アフガン人の打合せはとてもダイナミックです
(右往左往ともいいますが)
。
それぞれの地域が練ったアイデアを現実にす
るため、3月には日ユ協連・ベトナム事務所代
表の奥川職員を招いて、副教材開発手法に関す
るワークショップを開きました。識字をどのよ
うに生活向上につなげていくか討議した結果、
識字を覚えるための副教材、そして、覚えた識
字を使って技術や生活に役立つ知識を身につけ
る洋裁と公衆衛生の副教材の3案に最終決定し
ました。
完成まであと少し。地元の洋裁に関する職人
や公衆衛生、識字の専門家などを巻き込んで、
今日も地域識字局員と教師たちは果てしないお
しゃべり…ではなく活発な話し合いを繰り広げ
ています。
※アフガニスタンはモスリム人口が多いため「寺」という言葉
を避け、
「寺子屋」ではなく「CLC」と呼んでいます。
に進んでおり、ほぼ完成した。現地では建築資
材が高騰しているが、業者と交渉しながら問題
を解決している。寺子屋での活動は住民と担当
者が継続している。マオイスト(毛沢東主義反
政府武装組織)が道路を占拠している村へ行く
ことは難しく、カピルバステゥ郡のフリカとラ
ジャプールへは、村人以外が行くのは難しい。
夜間の識字教室は安全を考えて中止している。
2004年12月から開始された識字教室はすべて昼
間実施しており、580名が学んでいる」
。
ユネスコ 2005/5
9
ピースパ ートナー
デジタル表現の輪が大きく広がった!
D−project 春の公開研究会
デジタル表現を中心とした、さまざまな情報教育のあり方を発信しているD−project ※。その公開研究会が去
る3月20日
(日)
、東京・全共連ビルで開催された。参加者は主に全国の教育関係者と協力企業、そして実際に
プロジェクトを体験した子どもたち。
「ユネスコ・世界寺子屋運動」のリーフレット制作プロジェクトに参加
した先生や子どもたちも、素晴らしい成果を発表してくれた。
(Writer:永山多恵子)
2004年度「ユネ
リーフレット制作は
スコ・リーフレッ
ト制作」プロジェ
クトには全国の
小・中・高校19校
が参加した。これは「ユネスコ・世界寺子屋運動」
に協力する目的で、書きそんじハガキ回収をアピー
ルするリーフレットを、子どもたち自身が制作する
というもの。子どもたちは、まずユネスコの理念に
触れ、世界の教育の現状を知り、その上で書きそん
じハガキを回収する意味を考えていく。そこで初め
てパソコンを使ったリーフレット制作への取り組み
が始まる。このプロジェクトを通した学びについて、
D−project副会長で三重県・暁学園暁小学校教頭の
水谷浩三先生は次のように語った。
「子どもたちは、まずユネスコ活動や世界寺子屋
運動について学びます。次に、リーフレット作りに
はどのような情報が必要か、どうすれば読んでもら
えるものができるか学びます。さらに、出来上がっ
たリーフレットを使った活動から、協力する心、人
との出会いやつながりの大切さを学びます。私はこ
れを“学び
の三段重
ね”と呼ん
でいます
(笑)。また
このプロ
学びの三段重ね
リーフレット制作についてアピールする先生たち
?
※
?
D−projectってなに
コンピュータなどのデジタル機器に振り回さ
れることなく、子どもの学びを見つめて授業を
デザインしていこうという、全国の小・中・高等
学校の教員や大学関係者を中心とした組織。デジタルとデザ
イン、ふたつのDがキーワードとなっており、デジタル画像
編集ソフトのトップメーカー、アドビ システムズ㈱がバッ
クアップしている。パソコンやインターネットなどのITを、
豊かな学びを深める手段として学校教育に組み込もうと2002
年4月に発足した。
「デジタル表現コンテスト」をはじめ、10
を超えるプロジェクトと、全国での教員研修が行われている。
ホームページ:http://www.d-project.jp
10
ユネスコ 2005/5
ジェクトのもうひ
とつの特徴は、活
動して学んだこと
によって、実際に
ハガキが集まる、
寄付金が寄せられ
るなどの結果が出
ることです。その
実感も大事だと思
います」
。
同プロジェクト1
回目の2003年度
は、全国で9校が
参加し、投票によ
2004年度「ユネスコ・リーフレット制作」最
り最優秀賞に選ば 優秀賞を受賞した大阪府羽衣学園高等学校・
藤本芳美さんの作品
れた作品が、日本
ユネスコ協会連盟の2004年度書きそんじハガキキャ
ンペーン用リーフレットとして採用された。2004年
度の投票結果はこの日、研究会の最後に発表された。
見事、最優秀賞に輝いたのは大阪府羽衣学園高等学
校の藤本芳美さんの作品。2005年度の書きそんじハ
ガキキャンペーンリーフレットとして配られる予定だ。
プ
ロ
ジ
ェ
ク
ト
メ
ン
バ
ー
■プロジェクトリーダー
水谷 浩三
三重県暁学園暁小学校
■プロジェクトメンバー
米田 謙三 大阪府羽衣学園高等学校
(サブリーダー)
山田 真稔 和歌山県かつらぎ町立大谷小学校
(サブリーダー)
山本 和彦 北海道石狩市立生振小学校
佐藤 俊一 山形県山形市立金井小学校
堀澤 直樹 群馬県前橋市立東小学校
蔭山 純也 東京都立教女学院小学校
深井 美和 富山県富山市立熊野小学校
荒木 郁子 富山県富山市立熊野小学校
三日市 寛 富山県富山市立熊野小学校
池岸 晃弘 石川県金沢市長田町小学校
坂上 則子 石川県金沢市立扇台小学校
清水 和久 石川県金沢市立大徳小学校
長澤 哲也 石川県松任市立蕪城小学校
大場 卓 山梨県上野原町立甲東小学校
小島 敬一 愛知県名古屋市立大生小学校
嶺村 労 大阪府堺市立城山台小学校
上田 学 大阪府大阪教育大学附属天王寺中学校
山本 昭一 大阪府立福井高等学校
鈴木 逸男 三重県暁学園暁小学校
西村 文成 和歌山県高野町立高野山小学校
名越 秀人 鹿児島県伊集院町立土橋小学校
子どもたちが
体験と感動を語った
実践ポスターセッション
各プロジェクトのメンバーが、1年間の活動と成果を披露するポスター
セッションは会場内6カ所のブースで同時進行となったこともあって、それ
ぞれが白熱したプレゼン合戦となった。持ち時間は10分、パソコン画像やポ
スターなどを使いながら皆、精いっぱいにアピールした。ユネスコ・リーフ
おやふる
レット制作プロジェクトでは、和歌山県の高野山小学校と北海道の生振小学
校の子どもたちと先生が活動報告を行った。
プロジェクト発表レポート その1
プロジェクト発表レポート その2
「
「
世界遺産から世界寺子屋運動へ 」
和歌山県高野町立高野山小学校
5年生 牧野智恵さん・山階麻未さんの発表から
1年間のユネスコプロジェクトを振り返って」
北海道石狩市立生振小学校
6年生 午来有彩さん・中島こゆきさんの発表から
おやふる
2人の学校があ
る高野山は、2004
年「紀伊山地の
霊場と参詣道」
として世界遺産
リストに登録さ
れた。西村文成
先生率いる高野
元気よく発表中の牧野さん(左)と山階さん
山小学校の5年生
18人が、D−projectに取り組んだきっかけは「自分
たちの町が世界遺産になった」ということだった。
「世界遺産は、未来に引き継いでいかなければな
らない人類共通の宝物。私たちの町がそんな宝物と
なったことを、誇りに思います。そして世界遺産を
選び、守る活動をしているUNESCOに感謝します」
。
ユネスコのことを知って初めて、子どもたちは「世
界寺子屋運動」についても学んだという。日ユ協連が
ビデオを貸し出し、和歌山ユネスコ協会から松島由
明副会長がゲストティーチャーとしてユネスコ活動
や寺子屋運動、現地の様子などを伝えるために赴い
た。松島さんの話は子どもたちの心に直接響いた。
「リーフレットを制作しながら、私たちは自分た
ちに何ができるかを考えました。そして、夏休みに
和歌山県の大谷小学校(2003年度からの同プロジェ
クト参加校)5年生と一緒に募金活動をしようとい
うことになったのです」
。
8月6日と9日、両校の5年生は一緒に高野山で募金
活動を行った。生徒が街頭に立っただけでなく、金
剛峰寺や観光協会、そして地元のお土産屋さんも快
く募金箱を設置してくれた。いろんな人たちとの出
会いがあり、交流があり、その結果、集まった募金
は1日で51,506円にもなった。
「今、私たちは世界中の人たちが、読み書きでき
るようになることを夢見ています」
。
その素直な思いをつなげて、彼女たちはこの春、
6年生へと進級した。
生振小学校のプロジェクトで特徴的だったのは、
6年生全員でわずか12名という少人数で、「ホーム
ページ」「校内・市内」「新聞」「テレビ」と4つの
チームに分かれて活動したことだ。「それぞれが話
し合って、書きそんじハガキ募集のホームページの
作成、ハガキ回収BOXの公共施設への設置、全校集
会での呼びかけなどを行いました。新聞チームは取
材の依頼や投稿をしました」。テレビチームは、北
海道中のテレビ局に電話をかけ、その熱意によって
見事オンエアが決定。昨年12月20日、北海道文化放
送の「えき☆スタ」に12名全員が出演した。その模
様が、会場のスクリーンに大映しになった。全員が
自作のリーフレットを誇らしげに掲げている。各
チームそれぞれに反響があったが、このテレビ出演
後は全道からたくさんのハガキが送られてきた。最
終的に集まったハガキは2529枚、お金に換算すると
111,725円になるという。
午パ
「最初は
来フ
さォ
『世界寺子
んー
︵
左マ
屋運動』に
︶ン
とス
あまり興味
中も
島ま
がありませ
さじ
んえ
んでした。
て
発
だけど、勉
表
す
る
強していく
うちに世界の人たちのことを考えるようになりまし
た。勉強をやりたくてもやれない人のこと。字が読
めていたら、今も生きていたかもしれない人のこと。
字が読めるだけで命が助かるなら、字を学ばせてあ
げたい。ハガキを集めることで字が読めるようにな
るなら、ハガキを1枚でも多く集めてあげたい。世界
中の人たちを助けたいと思うようになったのです」
。
彼女たちはこの活動を来年も、再来年も、その先
も続けていきたいという。山本和彦先生の指導のも
と、たった1枚のリーフレット作りは、生振小の子ど
もたちにとってかけがえのない学びの体験となった。
ユネスコ 2005/5
11
ユネスコ活動のひろば
五十川諒紀くんの受賞作「きれいな東金」
3月29日(火)
、標記絵画展の全国表彰式が、あい
おい損害保険株式会社センチュリーホール(東京・
恵比寿)で開催された。地域の文化や自然に目を向
け、それらを育むことを目的に、1998年から開催し
ている同絵画展では、各ユネスコ協会が主体となって「わたしの町のたからもの」をテーマに小・中学生から絵
画作品を募集し、地域展示と表彰式を行ってきた。過去7年間の応募作品の合計は6万作を超え(下図参照)
、
今日では日本ユネスコ協会連盟の世界遺産活動として根幹を成す活動のひとつに成長した。
多くの参加ユ協では、夏休み前に会員が協力し
合って地元の学校を1校1校こまめに回り、絵画展へ
の参加を呼びかける。秋になると、作品を引き取る
ために再び学校を回り、集まった作品の審査、展示
会、表彰式を行う。大変労力のかかる活動ながら、
「子どもたちの元気な作品と笑顔で疲れも吹き飛ぶ。
何よりも、この活動目的に賛同した」とあるユ協代
表者は語る。女性会員を中心に、参加した子どもた
全国審査員受賞者
自然、文化、生活など地域の遺産を対象とした、
全国審査大賞〈3点〉… 対象物への愛情がよく表れている最も優れた作品
日 本 ユ ネ ス コ 協 会 連 盟 会 長 賞 〈1名〉
ヤマガタ アイリ
茨城県北茨城市立華川小学校1年(7歳)
山縣 愛梨
◆受賞者
北茨城ユネスコ協会(茨城県)
◎作品タイトル 「かわいいザリガニ」
あ い お い 損 害 保 険 株 式 会 社 賞 〈1名〉
イク ド カナリ
幾度 叶
◆受賞者
◎作品タイトル 「松山城」
愛媛県松山市立湯山小学校3年(9歳)
松山ユネスコ協会(愛媛県)
全 国 審 査 会 賞 〈1名〉
イ ソ ガワアキノリ
五十川諒紀
◆受賞者
◎作品タイトル 「きれいな東金」
千葉県東金市立鴇嶺小学校6年(13歳)
東金ユネスコ協会(千葉県)
全国審査特選〈7点〉…大賞に次いで、対象物への愛情がよく表れている作品
日 本 ユ ネ ス コ 協 会 連 盟 会 長 賞 〈3名〉
キクチ
ツヨシ
◆受賞者
岩手県遠野市立青笹小学校2年(8歳)
菊池 健
遠野ユネスコ協会(岩手県)
◎作品タイトル 「ノコギリクワガタと木の上で」
ち全員に渡す手作りの参加賞─ハンカチや折り紙で
作った小物入れなどを用意しているところもある。
今年から、この絵画展は、事業の意義に賛同され
たあいおい損害保険株式会社との共催となった。全
国の応募作品(13,588点)から選ばれた各地の優秀作
品(131点)から、全国優秀作品(10点)に選ばれた受
賞者がこの表彰式に招待された。全国審査では、特
別審査委員長として平山郁夫副会長(ユネスコ親善
大使、東京芸術大学学長)
、福井爽人審査委員長(東
京芸術大学教授)らにより厳正な審査が行われた。
「─ぼくはこの田んぼが大好きで、見ているだけ
でなぜか心が落ち着きます。ぼくが大人になって、
とうがね
よその町に行くことがあっても、ふるさとの東金に
帰ってきたとき、この田んぼの風景をまた見ること
ができるよう、いつまでも残してほしい。ぼくに
とっての宝物です」。表彰式では、賞状、盾、記念
ときがね
品の授与の後、受賞者を代表して東金市立鴇嶺小学
校6年生の五十川諒紀くんが、作文で自作への思い
を披露した。
今年度は全国各地の57ユ協がこの活動に取り組む
予定だ。どんな“たからもの”が“発掘”されるのか…。
乞うご期待。
(組織部 尼子美博)
ナカハマヒ ナ コ
中濱日南子
◆受賞者
◎作品タイトル 「浄土寺」
広島県尾道市立山波小学校1年(7歳)
尾道ユネスコ協会(広島県)
マタザキ コウスケ
俣崎 光亮
◆受賞者
◎作品タイトル 「妙見祭」
熊本県八代市立八代小学校6年(11歳)
熊本ユネスコ協会(熊本県)
あ い お い 損 害 保 険 株 式 会 社 賞 〈2名〉
ヤマモト チ カ
山本 千佳
◆受賞者
◎作品タイトル 「秋の沼津」
「絵で伝えよう!わたしの町のたからもの」絵画展
参加ユ協数ならびに参加作品数
参加作品数
15,000
静岡県沼津市立第五中学校3年(15歳)
沼津ユネスコ協会(静岡県)
12,000
和歌山県田辺市立芳養小学校2年(8歳)
内田 彰人
◆受賞者
紀南ユネスコ協会(和歌山県)
◎作品タイトル 「ししまいさんがきたぞ」
9,000
全 国 審 査 会 賞 〈2名〉
6,000
ウチダ アキヒト
◆受賞者
北海道帯広市立大空小学校1年(7歳)
帯広ユネスコ協会(北海道)
参加作品総数
61,731枚
14,285
(40) 13,588
(47)
( )は参加ユ協数
ハマダ アリサ
濱田 有沙
◎作品タイトル 「ふしぎな国」
12,258
10,540 (37)
(34)
3,000
6,520
(22)
3,140
1,400 (15)
(12)
ヤマグチ マ ユ
山口 真由
◆受賞者
◎作品タイトル 「氷見の海はさい高」
12
ユネスコ 2005/5
富山県氷見市立東小学校3年(9歳)
氷見ユネスコ協会(富山県)
0
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 回数
(’
98) (’
99) (’
00) (’
01) (’
02) (’
03) (’
04)(年度)
理 事 会 報 告
第434回 理事会
2005年度 ユネスコ活動ブロック研究会開催日程
ブロック
開催地都道府県
日 程
開催地都道府県ユ協・協会
北海道ユネスコ連絡協議会
旭川ユネスコ協会
北海道
北海道
9月24日
(土)∼25日
(日)
3月5日
(土)
、東京・大手町の朝日
東海ビル大手町サンスカイルーム
岩手県ユネスコ協会連盟
岩手県
東北
10月15日
(土)∼16日
(日)
大船渡ユネスコ協会
で第434回理事会が開催された。
茨城県ユネスコ連絡協議会
茨城県
関東
10月27日
(木)∼28日
(金)
冒頭、児島仁会長より「会長委嘱理
ひたちなかユネスコ協会
神奈川県ユネスコ連絡協議会
事」として新たに東日本旅客鉄道
神奈川県
中部東
8月27日
(土)∼28日
(日)
厚木ユネスコ協会
株式会社・松田昌士取締役会長に就
三重県ユネスコ連絡協議会
三重県
中部西
10月22日
(土)∼23日
(日)
津ユネスコ協会
任いただきたい旨、提案があり、満
10月1日
(土)
あるいは2日
(日)
和歌山県ユネスコ連絡協議会
和歌山県
近畿
場の拍手で了承された。松田新理
一日開催
紀北ユネスコ協会
鳥取県ユネスコ連絡協議会
事は大学時代、学生ユネスコ活動に
鳥取県
中国
10月8日
(土)∼9日
(日)
鳥取ユネスコ協会
取り組まれ、現在もユネスコ活動に
愛媛県ユネスコ連絡協議会
愛媛県
四国
11月19日
(土)∼20日
(日)
今治ユネスコ協会
強い関心を持ち続けておられる。
宮崎県ユネスコ協会連盟
民間ユネスコ運動に対する今後の
宮崎県
九州
11月5日
(土)∼6日
(日)
高鍋ユネスコ協会
積極的なご協力が期待される。
引き続き、会員の入退会につい
次に2005年度事業計画案が審議
野外活動を行う際に、中核となる
て協議される中で、社会情勢など
された。計画は概して例年通りの
人材を育てるため、野外活動の技
により数年来、維持会員の退会が
内容となっているが、新たに次の
術やユネスコらしい活動のあり方
続 い て い る 現 状 が 指 摘 さ れ た 。 ような事業が加わる。今年から始
に関する講座を行う。寺子屋運動
1995年に429だった維持会員数は
まる「国連・持続可能な開発のため
では、2003年で支援を一時中断し
249にまで減少し(休会を除く)
、日
の教育の10年(UNDESD)
」に関連
ていたカンボジアにおいて現地の
本ユネスコ協会連盟の財務に深刻
して読売新聞社と共に、子どもた
ニーズや調査に基き事業を再開す
な影響を与えている。対策として
ちへの環境教育などを中心とした
る。世界遺産活動としては、昨年多
は、企業トップへの直接の依頼の 「『ずっと地球と生きる』学校プロ
くの方からご支援いただいた「ア
他、日頃からの積極的かつ地道な
ジェクト」を実施する。
「ユネスコ・
フガニスタン・バーミヤンの教育文
広報活動の継続が必要であるとい
キャンプリーダー養成講座」は、各
化センター」が竣工予定であるほ
う意見が多く述べられた。
地でユネスコ協会が青少年対象の
か、世界遺産登録地の屋久島で地
元ユ協などと協力した「みんなの
役員(2005∼2006年度)改選日程
遺産キャンペーン」国内パイロット
日 程
個人・維持・賛助団体会員
会 議
構成団体会員
3月 5日 第434回 理事会
予備推薦管理委員会の設置
プロジェクトを検討している。事
3月 11日
代表者確認・代表代理登録依頼
業計画案は今後5月7日の評議員
3月 31日
会費納入状況確認
4月 10日
代表者・代表代理登録完了
会・理事会での審議を経て、6月
4月 中旬
予備推薦依頼
現理事による評議員
10日の総会で決定される。
候補者案の推薦
5月 20日
予備推薦締め切り
次年度の予算に関する特記事項
6月 9日 予備推薦管理委員会 予備推薦結果・評議員候補確認
第436回 理事会
選考委員会委員についての協議
としては、国内の青少年育成活動
選考委員会の設置/評議員の選出/
6月 10日 第56回 総会
支援を目的として設置された「未
評議員の中から理事・監事の選任
第437回 理事会
会長・副会長・理事長の互選/会長委嘱理事の協議・決定
来への贈り物」募金が、自動引落
募金や企業からの寄付によって約
900万円に達したため、来年度か
ら対象となる事業に積極的に活用
していくこととなった。
加えて、2005年度は役員・評議
員改選の年となる。理事会では予
備推薦管理委員会の設置を承認し
たほか、別表のとおり改選の手続
きを決めた。これにより、6月10
日の総会に向け、必要な手続きが
進められることとなる。
ユネスコ 2005/5
13
イ ベ ント レ ポ ート
品の中には、その国の政治情勢が
如実に表されているものもありま
すが、楽しく選考させていただき
ました」
。
平山郁夫選考委員長は次のよう
表彰式は7月29日(金)、日本国
に講評された。「今回は新たに朝
際博覧会(愛称:愛・地球博)会
鮮民主主義人民共和国と東ティ
場内「EXPOホール」にて行われ
モール民主共和国が参加したこと
る。各国・地域のグランプリ受賞
で、より充実した、新鮮さ溢れる
者24名および日本の受賞者9名が
内容となりました。第1期の頃と
出席する予定だ。同博覧会々場内
比較すると途上国でも色や表現技
術のレベルが上がり、絵は力強く、 「モリゾー・キッコロメッセ」で
モチーフにも幅が出てきたことを
は7月29日(金)∼8月8日(月)の期
感じました。どの作品も甲乙つけ
間、入賞作240点が展示される。
がたく決定には苦労しました。作
(教育文化事業部 ファイン荒井千香子)
三菱IMPRESSION−GALLERY アジア・子供アートフェスティバル
第7期 各国グランプリ他各賞決定
絵日記をとおしたアジアの子ど
もたちの相互理解を目的に、1990
年から開催されてきたこのイベン
トは7回を数える。
三菱広報委員会、アジア太平洋
ユネスコ協会クラブ連盟ならびに
日本ユネスコ協会連盟では、昨年
4月から12月にかけて、日本を含
むアジア24ヶ国・地域の子どもた
ちから日常の生活を描いた絵日記
を募集。今年2月23日の国際選考会
(選考委員長:平山郁夫)で、各国・
地域の国内選考会を経て日本に集
まった240作品の中から、第7期の
各国グランプリならびに各主催者
賞を決定した。今回の応募総数は
48,062作品、日本の応募数は4,639
作品だった。日本からは神奈川県
横浜市立西柴小学校の
さんがグランプリを、東京都千代
田区立番町小学校の新村理々愛さ
んが日本ユネスコ協会連盟賞を受
賞した。
おお さき
にい むら り
り
ふ
★ グラ
ン プリ ★
み
あ
「ユネスコ・ユースセミナー2004」開催
神奈川県横浜市立西柴小学校
おお さき
ふ
み
大 風実(12)
14
ユネスコ 2005/5
カンボジア
Chan Vichetra(12)
を反映してか、例年にない70名も
の参加者が全国から集まった。今
回のテーマは「ユネスコ秘伝 虎
2005年2月11日∼13日、 の巻」。セミナーでは、Do(やって
みる)a Look(見てみる)aThink
神奈川県愛川ふれあい
の 村 で 「 ユ ネ ス コ ・ (考えてみる)a Grow(発展させ
ユ ー ス セ ミ ナ ー 2 0 0 4 」 てみる)というサイクルに沿って
が開催された。近年の
プログラムが構成された。そして
青年活動の盛り上がり
最後には、自分だけの「虎の巻」
を、ワークショップやリレー講演、
参加者との議論や交流などを通し
て一人ひとりが創り上げた。これ
は世界にひとつしかないユネスコ
活動の手作りマニュアルだ。参加
者たちは大きな知識や経験、そし
て感動を持ち帰ることができた。
これからは、多くの青年がこの
「虎の巻」を地元のユネスコ活動で
活用し、実践していくことになる。
(組織部 尼子美博)
テーマは「ユネスコ秘伝 虎の巻」
寺子屋のワークショップ発表風景
ネスコ協会連盟
賞
本ユ
日
★
★
UNESCO親善大使会議ひらく
3月2日、UNESCO/NHK世界
遺産デジタルアーカイブ事業の諮
問委員会がUNESCOパリ本部で開
催され、委員長として平山郁夫
UNESCO親善大使、委員として野
口昇日ユ協連理事長、西村幸夫日
ユ協連理事が出席した。
また、同日夕刻、UNESCOメダ
ル完成記念行事が行われた。これ
は松浦晃一郎UNESCO事務局長の
依頼に応え、平山郁夫親善大使が
デザインした「薬師寺」と「湯川秀
樹」のメダルが完成し、松浦事務
局長から平山親善大使に、完成し
たメダルが贈呈されたもの。この
メダルはUNESCO事務局長が各国
を公式訪問する際、各国の要人へ
の記念品として活用される。日本
の世界遺産や日本人の肖像画が、
UNESCOメダルになったのは初め
て。さらに、それを日本人がデザ
インしたのも初めてという栄誉で
あった。当日はパリの日本人会、
UNESCO本部で働く日本人職員が
招待され、松浦事務局長から平山
親善大使ご夫妻に深い感
謝の意が述べられた。
続いて3月3日、4日の2
日間、ユネスコ親善大使
会議が開催された。平山
親善大使は活動発表の中
で、アフガニスタンの文
化支援、北朝鮮への文化支援、国
際親善交流などについて発表。ま
た、日ユ協連のバーミヤン教育文
化 セ ンタ ー 建 設 事 業 や 「 三 菱
IMPRESSION−GALLERYアジ
ア・子供アートフェスティバル」に
触れ、その意義を強調された。親善
大使会議は、各大使が積極的にユ
ネスコ活動の広報を進めようとい
う強い意欲を確認して終了した。
(教育文化事業部 寺尾明人)
平山郁夫親善大使が委員長を務めた親善大使会議
未来への学びを始めよう
『国連・持続可能な開発のための教育の10年(UNDESD)』
キックオフミーティング開催
提唱国日本がリーダーシップを発
3月6日、立教大学太刀川記念館
揮することを期待すると述べた。
多目的ホール(東京)で、今年か
同じく基調講演を行った池田香
ら始まった「国連・持続可能な開
代子さん(ドイツ文学翻訳家)は
発のための教育の10年」の国内推
進を考える開始式(キックオフ 「100人みんなが幸せに暮らせる村
をつくろう」という題で、南北問
ミーティング)が開かれた。主催
は特定非営利活動法人「持続可能
な開発のための教育の10年推進会
議(ESD−J)
」と読売新聞社。共
催は日ユ協連など。
基調講演を行ったUNESCO・バ
ンコク事務所長のシェルダン・
会のフィナーレ。参加者全員がそれぞれの願いを
シェーファー氏は「ESDの10年が
書いた紙ヒコーキをいっせいに飛ばした
目指すもの」と題して3月1日
ニューヨークの国連本部で行われ
たUNDESDの開始式典で演説した
有馬朗人・元文相の「もったいな
い」
という日本語に触れ、
(P.3参照)
UNDESDの推進で重要な言葉とし
た。UNDESDは、未来に持続可能
な社会を築くために必要な価値観
や生活様式を学ぶ機会を、すべて
の人が享受できる世界を築くこと
を目的としている。そのために、
題を知ることの大切さなどについ
て語った。
ESD−J代表理事の阿部治氏
(立教大学教授)は「2005年を実
りあるスタートにするために」と
題し、日本が提唱した意義は多様
で深く、全省庁が連携して推進し
ていくことの重要性を訴えた。
その後、今後の具体的な取り組
みについて、関係省庁や企業、民間
活動団体(NGO)、地方自治体、マ
スコミ、政治家など各界の代表によ
るリレートークが行われた。立ち
席も必要なほど熱気につつまれた
会場で、参加者は提唱国日本が率
先して活動を進めていくことを確
認しあった。
(広報室 川上千春)
ユネスコ 2005/5
15
お 知 ら せ・募 集
「第51回 全国高校ユネスコ研究
大会 in 広島」参加者募集
今年の全国高校ユネスコ研究大
会は、被爆60周年を迎える広島で
開催され、最終日には平和記念式
典にも参列予定。ユネスコ活動の
原点「平和」をメインテーマにすえ、
地球上のさまざまな課題について
16
ユネスコ 2005/5
本誌でも触れている「国連・持
続可能な開発のための教育の10
年=ESD」。このESDの理念を分
かりやすく伝えていくため、日ユ
協連は読売新聞社と共催で、さま
ざまな取り組みを検討中だ。
企業と地域と学校をつないで、
出前授業を行う「
『ずっと地球と生
きる』学校プロジェクト」は、ESD
の意義やユネスコ活動、企業の取
り組み事例をもとに、地球を守る
ため自分たちにできる活動を「総
合的な学習の時間」などの授業で
行うものだ。初年度は小学校を対
象に10校程度で実施する予定。詳
細が決まり次第、本誌面や「ユネ
スコ協会便」でお知らせします。
ユネスコ・キャンプリーダー
養成講座
キャンプなどに代表される野外
活動を地域で実践できる人材を養
成するための学習や、実施方法を
学ぶキャンプリーダー養成講座を
実施する。
◆主催:日ユ協連
◆期日:7月29日
(金)
∼31日
(日)
◆開催地:長野県木曽郡木祖村
「こだまの森」キャンプ場
◆対象:ユネスコ協会会員
◆参加費:未定
第37回 ユネスコ子どもキャンプ
雄大な自然の中で集団生活を通
じて自主自立の精神、自然愛護の
精神、国際理解と協力の精神を育
んでもらうため、子どもキャンプ
6月11・12日の全国大会の記事
を掲載するため、機関紙「ユネ
スコ」次号は7月中旬の発送とな
ります。ご了承ください。
◎新刊のお知らせ
成田ユネスコ協会前会長柴田實
著「世界に50万の寺子屋を─テロ
撲滅に王手 ─ 」が3月31日東京図
書出版会より発行された(1400円
税別)
。
事務局の組織変更について
事業計画の進展と連動して、4月1日
付けで、事務局の担当者を以下のとお
り一部変更しました。
▼ ▼
年賀ハガキに焦点を当てた2005
年書きそんじハガキキャンペーン
には82のユネスコ協会から参加申
し込みがあった。また今年も日本
ユネスコ国内委員会のご理解のも
と文部科学省内に書きそんじハガ
キ回収ボックスが設置され、昨年
の3倍近い2,370枚のハガキと未使
用切手1,410円分のご協力をいただ
いた。事務局にはハガキの詰まっ
たダンボールが次々に到着してい
るが、総数はまだ昨年に満たない。
日ユ協連では1年を通じて書きそ
んじハガキを受け付けている。引
き続きハガキのご協力をお願いし
ます。
◆問い合わせ:日ユ協連 教育文
化事業部
機関紙ユネスコ7月号の
発行について
「ずっと地球と生きる」
学校プロジェクト
事務局長:竹尾徳治
組織部
組織部長:石神澄子
職員:奧川浩士(兼務)/尼子美博
アシスタント:上岡あい
▼
ユネスコ・世界寺子屋運動
書きそんじハガキキャンペーン
を実施する。同時に「ユネスコ・
キャンプリーダー養成講座」受講
者の研修の場とする。
◆主催:日ユ協連、長野県ユネスコ
連絡協議会、木曽ユネスコ協会
(日)
∼8月2日
(火)
◆期日:7月31日
◆開催地:長野県木曽郡木祖村
「こだまの森」キャンプ場
◆対象:小学4年生∼中学3年生
教育文化事業部
教育文化事業部長:寺尾明人
教育文化事業部副部長:坂巻豊子
ベトナム事務所長:奧川浩士
カブール事務所長:松本幸敏
職員:ファイン荒井千香子/
古澤真理子/岩本由美子/
/
津久井純(ベトナム事務所勤務)
/
池本まり子(カブール事務所勤務)
山下陽子(カブール事務所勤務)
アシスタント:前原恵子/深尾剛司/
加瀬貴
▼
ユネスコ創設60周年にあたる今
年、名古屋全国大会初日のメイン
プログラムは、シンポジウム「文化
の多様性と平和の展望」だ。2日目
の日本国際博覧会「愛・地球博」
訪問では、国連館館長ミュラーさ
んが、ユネスコ会員に向けて国連
活動紹介ビデオ上映と質疑応答を
行うトーク・セッションが計画さ
れている。
トーク・セッションは午
前と午後で数回。当日受付も可能
なので、申込が遅れた方もぜひご
参加ください。
◆日時:6月11日(土)
・12日(日)
◆場所:名古屋市公会堂・2005年
日本国際博覧会会場 ◆問い合わせ:日本ユネスコ協会
連盟 組織部 石神・尼子
高校生が自ら学び考え、具体的な
行動へと結びつける大会を目指す。
◆期間:8月3日
(水)
∼6日
(土)
◆場所:国立江田島青年の家、お
よび広島市周辺
◆参加費:12,000円
◆主催:日ユ協連、全国高等学校
ユネスコ活動指導者協議会、広
島県ユネスコ連絡協議会、広島
ユネスコ協会
広報室
広報室長:川上千春
職員:長倉義信
アシスタント:稲垣弘美
▼
第61回 日本ユネスコ運動
全国大会 in 名古屋
総務部
総務部長:星野明
職員:山口真子
アシスタント:本間雅子
カナダ
雄壮な大自然 カナディアン・ロッキー
アルバータ州
ブリティッシュ
コロンビア州
米映画「帰らざる河」のふるさと
連 載
世界遺産の現場〈24〉
レイク・
ルイーズ
バンフ
ボウ川と岩の柱フードゥー
カルガリー
カナディアン・ロッキーの玄関口カルガリーを出てもう2時間余、
そろそろキャンモアを通過するころです。ここまで来れば、バンフま
であと30キロほどです。
A1の沿道に広がるカナディアン・ロッキー国立公園のパノラミッ
クな光景はあまりにも素晴らしく、ただ息を呑むばかり。こんな美景
をひとり占めにして、何か申し訳ないような気分になりました。
この地方特有の背高ノッポの樹木が目立つようになりました。カナ
ダトウヒ、アメリカトガサクラ、ロッジポールマツなどです。
レイク・ルイーズ、ジャスパーと並んで、バンフはカナダ有数の観
光名所ですが、もしも後ろにロッキーが控えていなかったら、山の中
のちいちゃな田舎町でしかないでしょう。
まずレイク・ミネワンカに立ち寄ります。ここはバンフ国立公園で
一番大きな湖です。ミネワンカとは先住民族の言葉で“水の精霊”と
いう意味ですが、ここに半漁人が棲んでいたという伝説があり、 ま
たの名を“悪魔の湖”とも呼んでいます。
有名なバンフ・スプリングス・ホテルへ行って腹ごしらえをする
さいとうなんぺい
と、地階から裏の専用階段を使ってボウ河畔へ出ます。ボウ滝の音が
聞こえ、樹林の間から川の流れを垣間見ることができます(写真下)
。 ンローの映画「帰らざる河」のメロディが追想されてきます。ここで
滝と称しても落差は高いところで5メートルほど。静寂の中に水音が 映画の撮影が行われ、一躍有名になったのがこのボウ川でした。
こだましているといった情景です。うっそうとした森林が川をはさむ
ボウ滝のちょうど対岸、流れが湾曲しているあたりの断崖に、とん
ように両側に立ちはだかり、その光景を眺めていると、マリリン・モ がり岩がそびえ立っています。岩の柱フードゥーです(写真上)
。ト
ルコのカッパドキアのキノコ岩を思い起こさせます。車を回しボウ川
沿いに10分ほど走ると、トンネル・マウンテンの展望台に出ます。
眼下には新緑の針葉樹林と、川床の石まで見透かせる澄んだ流れが美
しい眺めを繰り広げています。
フードゥーとは、先住民族の言葉で“巨人”
。その巨人が岩になっ
たという伝説が残されています。岩肌が長年の間に風化し、地質のや
わらかい部分が消え、固い部分だけが残って、この形の岩ができたと
いう形成過程もカッパドキアとほぼ同じです。
カナダの5大国立公園をたばねたカナディアン・ロッキー国立公園
は、幅650キロ、長さ2500キロとさすがに広大なものです。ここまで
来て、やっとカナダ旅行のハイライト、そのスタートラインについた
のでした。
〈次号につづく〉
(写真・文 さいとうなんぺい)
さいとうなんぺい 1934年9月、東京神田生まれ。雑誌・新聞記者を
経て、フリーランスライターとして世界の各都市から辺境の地まで単
身で駆け回る。現在は世界遺産を中心に取材活動中。23年あまりにわ
たる世界遺産歴訪は280ヶ所を越す。http://www.saitownanpei.com/
さいとうなんぺい
者
の
声
●「アフガン人気質」の記事が楽しかった
です。無理をしてでも他に対してよくしよ
うという太っ腹な精神は立派。誇り高い国
民性を知ることができ、アフガニスタンに
対する血気盛んというイメージが消え、豪
快さと繊細さを併せ持つ国、というプラス
のイメージに変わりました。
(福岡県 田代千花子)
●永遠に失われた世界最大の大仏は惜しん
でも余りありますが、バーミヤン教育文化
センターの建設が順調に進みうれしく思い
ます。現場の様子を伝えるカリミさんの便
りも心強いですね。(群馬県 野木村俊夫)
皆さまからのお便りをお待ちしております。
添付のハガキをご利用ください。
ご冥福を
お祈りします
原 亨二さん
日本ユネスコ協会連盟顧問
2月27日逝去 享年96歳
編 集 後 記
今号の特集でも触れられてい
る、
“もったいない”ということ
ば。最近すっかり忘れ去られて
しまっているようでもあります
が、昔はかの国のなんでも使い
捨て…というニュースを目にし
て「何ともったいない」と思っ
たものでした。
あれから数十年。いまや日本
もすっかり使い捨て社会に様変
わり。せっかく“元祖もったい
ない国日本”に生まれたのだか
ら、地球の悲鳴に耳を傾け、今
一度、身近なところから「一人
でもできるユネスコ活動」改め
「もったいない活動」
(?!)で
も始めてみるか…と思う今日こ
の頃です。
(K.C.)
▲
3
月
号
よ
り
●「世界寺子屋運動のしくみと流れ」は、気
がついたら5回もくり返し読んでいました。
僕がユネスコ活動を応援しようと思ったの
は、5年生でユネスコの勉強をしたからで
す。勉強した後、強く心を打たれ、そうい
う団体があることに感動しました。書きそ
んじハガキのリーフレットも作りました。
2月25日に前橋ユネスコ協会の皆さんが、
僕のいる東小学校に来校してくださいまし
た。そこで全校生徒、近所の店、住民の協
力で集まった書きそんじハガキが、副会長
さんに渡されました。僕は今、ユネスコ活
動に大変、興味を持っています。これから
も世界寺子屋運動をがんばってください。
(群馬県 水原理博)
●MABとBRがユネスコに関わる意味が、
少しだけ理解できました。「世界寺子屋運
動のしくみと流れ」は大変わかりやすく、
これで私も「寺子屋運動ツウ!」になりま
した。
(東京都 山田秀夫)
▲
読
社団法人日本ユネスコ協会連盟は、ユネスコ憲章の精神に共鳴した人びとによって1947年、世界にさきがけて仙台で始められた、民間ユネスコ
運動の日本における連合体でNGO(非政府組織)です。現在全国に約300のユネスコ協会があります。
5
2005年5月1日発行 通巻第1097号
発行 ●社団法人 日本ユネスコ協会連盟 発行人・野口昇 編集人・竹尾徳治 ●購読料800円/1年(発送料込)
第3種郵便物認可(奇数月1日発行)
東京00150−9−56030 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1−3−1 朝日生命恵比寿ビル12階
TEL 03
(5424)
1121 FAX 03
(5424)
1126
再生紙を利用しています
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