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Make in India~DIPPアミタブ・カント次官へのインタビュー(一般財団

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Make in India~DIPPアミタブ・カント次官へのインタビュー(一般財団
新インド読み解き
Make in India
――DIPP アミタブ・カント次官への
大矢 伸
インタビュー――
国際協力銀行 ニューデリー駐在員事務所
首席駐在員
9月27日土曜日午前、インド商工省産業政策振興局
り、日本と共同しながら進めているデリー・ムンバイ
(Department of Industrial Policy and Promotion,
産業回廊やチェンナイ・バンガロール産業回廊、また、
DIPP)のアミタブ・カント次官(写真)のお時間をい
バイザック・チェンナイ産業回廊、バンガロール・ム
ただき、インタビューを行った。
ンバイ産業回廊、北東州の交通連結などがある。また、
産業クラスター、スマートシティーなども進め世界レ
ベルのインフラを整備していきたい。4番めは、人々
のマインドセットを変えること。農業から製造業への
転換を進めるとともに、インドが製造業のデザインや
イノベーションの中心となるような後押しもしていき
たい。
大矢 ナレンドラ・モディ首相は、“Come, Make in
India”と投資家に呼びかけた。インドを製造業のハブ
にするために海外直接投資(FDI)に関してどのよう
2日前の9月25日には、関係閣僚とともにナレンド
な政策を進めていくのか。
ラ・モディ首相も参加したMake in Indiaのイベント
カント次官 インドはサービス業が発展しているが、
が成功裏に開催されたが、それを取り仕切ったのがア
多くの雇用機会をつくるためにはインドは製造業国家
ミタブ・カント次官。インタビュー冒頭、嫌な質問も
とならなければならない。われわれは、インドが世界
すると伝えると、同氏は、インドの課題も率直に話し
のリーダーとなれる25のセクターを同定した。これら
たいと笑顔で応えた。
セクターに関する情報は、www.makeinindia.comの
ウェブサイトでご覧いただくことができる。われわれ
大矢 現BJP(インド人民党)政権は製造業の発展に
DIPPはファシリテイター、触媒として役に立ちたい。
力を入れているが、そのアプローチを説明してほしい。
投資家が問題に直面した場合には、必要なすべての支
カント次官 今政府は、インドを高い成長軌道に戻す
援を行いたい。またモディ首相は、製造業が次世代の
ことにコミットしている。インドは若年人口が多いが
新たな技術を使うことの重要性を強調している。これ
成長が雇用を産む。政府は、4つの取り組みを展開し
は、過去先進国が犯した過ちを繰り返さないためであ
ている。第1は、ビジネスをやりやすくすること(ease
る。工業化は、環境汚染や人々の生命を脅かすもので
of doing business)
。許認可を減らし(delicense)
、
あってはならず、持続可能性との両立が不可欠である。
規 制 緩 和 し(deregulation)
、官僚主義を改め
(debureaucratize)
、透明性を高めて、役人の関与な
大矢 投資家は2013年土地収用法に懸念を示してお
あしかせ
くオンラインで手続きが進められるようにしたい。2
り、これが製造業投資の足枷となる恐れがある。
番めは、海外からの直接投資に対する門戸開放。鉄道
カント次官 土地は製造業にとり不可欠なものであ
セクターは基本的に100%の海外直接投資を認めた。
り、2013年土地収用法は大変煩わしい法律となってい
防衛分野も、60近い項目につき規制緩和を行い、直接
る。政府は、2013年土地収用法のさまざまな分析・検
投資の外資の上限を26%から49%まで引き上げた。保
討を行っているところであり、必要な修正を行いたい。
険分野も外資上限を26%から49%まで引き上げた。3
ここ数カ月で政府は行動をとるだろう。いくつかの州
番めは、新たなインフラの整備。産業回廊は重要であ
は率先して土地収用法を改革しており、ラジャスタン
2 2014.11
■ 新インド読み解き
州、マッディヤプラデシュ州などはすでに法改正を
ベルでの政治的コミットメントを有している。私が思
行った。土地収用法の変更は、製造業やインフラ投資
うに、日本企業は大変高い能力をもち技術的にも進ん
の促進のためには必要な事項であり、インド政府とし
でいる。ただ、リスクをとらない。日本国内と同じ、
ても、取り組んで行きたい。
100%完全な状況はインドでは難しい。ただ、スズキ
が30年前に行ったように、リスクをとってインドに進
大矢 労働法についても製造業の拡大を阻害する要因
出するという決断をしてほしい。スズキはいま日本よ
であり、BJPのマニフェストにおいても時代遅れの労
りもインドで大きな会社となっている。インドはすで
働法の見直しが必要と謳われている。
に巨大市場だがそれがさらに高いスピードで成長して
カント次官 労働法改正はインドにとりきわめて重要
いく。日本企業は、この成長するインド市場のメリッ
であり、政府はすでにいくつかの行動をとった。工場
トを享受すべきである。自分は日本のブランドの中で
法や徒弟法(Apprenticeship Act)の改正や、労働
育ったが、今日では、サムソン、LG、ヒュンダイなど
関係の登録をコンピューター化して人手を介さず直接
韓国企業の方がインドでなじみのあるブランドとなっ
行うような変更などに取り組んだ。また、ラジャスタ
てしまった。日本企業にはぜひインドで再び頑張って
ン州やマッディヤプラデシュ州はこの分野でも先んじ
ほしい。製造業、インフラなど今インドに投資を行い、
て改革を行っている。労働法は、
「雇用を守る(job
成長する市場の果実を受けるべき。われわれは日本企
protecting)
」 の で は なく「 雇 用 を 拡 大 す る(job
業をフルにサポートしたい。
enhancing)
」ものとなり得る。今後さらに大きな改革
を行っていきたい。
大矢 モディ首相のマネジメントスタイルはどのよう
なものか。一緒に働きやすい首相か。
大矢 特別経済区(SEZ)は、最低代替税(MAT)
カント次官 モディ首相は、エネルギーに満ちあふれ、
の導入により投資家にとっての魅力がなくなってし
ヴィジョン、情熱そしてコミットメントをもっている。
まった。SEZを復活させるための方策は。
彼のヴィジョンは、次の30 ~ 40年にわたり、インドが
カント次官 SEZについては再検討し、再び活力を与
高い成長を遂げて多くの雇用を生み出すこと。彼は、
える。現在、財務省と協議を行っている。MATや配
日本の安倍首相と個人的な信頼関係を有しており、先
当分配税の問題があるが、この点に関する見直しの検
般の日本訪問は大変な成功であった。彼のマネジメン
討は進んだステージにある。次の予算でこうした見直
トスタイルは、部下を信頼し、部下に権限を委譲する。
しは実現しよう。SEZはインドの成長のために、より
同時に結果を出すことを強く求める。
大きく貢献していくことになろう。
大矢 本日はお忙しいなかさまざまなお話をお聞かせ
大矢 世界経済フォーラムの世界競争力レポートにお
いただき感謝。
いて、インドは11ランク下げて71位となった。これは
BRICSの中で最下位。
カント次官 インドは製造業において競争力ある国に
なる必要がある。そのためには、許認可を減らし、規
制緩和を進める必要がある。透明性のためにもプロセ
スのオンライン化を進めて人間の介在を減らす必要が
ある。政府全体として電子プラットフォームを拡大し
ていきたい。インドの改革は始まっており、この結果、
インドの競争力やビジネス環境の順位は上がっていく
ものと信じている。
大矢 インドに関心をもつ日本の投資家へのメッセー
ジをお願いしたい。
カント次官 インドは日本の企業のビジネスに完全に
オープンである。インドは大きく変革し、強い意欲と
情熱をもち、また、インドは日本に対して大変高いレ
※筆者略歴:1991年日本輸出入銀行入行、98 ~ 2001年世界銀
行、05 ~ 06年日本カーボンファイナンスで南アジアを担当、
06 ~ 08年国際協力銀行東南アジア地域担当課長、08 ~11年
CEO秘書、11年~石油・天然ガスセクター担当課長、12年
5月より現職。休日はインド国内旅行とサッカーを楽しむ。
東北大学法学部卒、ボストン大学大学院法学修士。
2014.11
3
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