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教育実践研究原稿

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教育実践研究原稿
NIE の可能性
第 4 班 担当教官 今田 匡彦 児玉
忠
メンバー 近江 則子 菊地 一文 石垣利佳子
竹下
悟 原
晶東 赤木 光子
1 はじめに
NIE とは,Newspaper in Education の略で,
「教育に新聞を」と訳されている.学校等で新聞を教材
にする学習運動のことで,世界各国でそれぞれの教育風土や新聞事情にあった実践が行われている.
日本でも最近になり NIE によってもたらされる教育効果が注目されるようになった.
その背景には
「生
きる力」の育成を重視した「新学習指導要領」の実施がある.
「調べ学習」に新聞を活用することで,児
童・生徒の学習意欲が高まり,積極的な学習態度が身に付くのではないか,という期待が寄せられるよ
うになったからである.加えて,これからの国際化・情報化の進展する時代にあって,NIE の効果が一
躍脚光を浴びるようになった.このような背景を受けて,本グループは以下のことを研究目的として研
究を進めていくこととした.
2 研究の目的
NIE に関する知識を深め,実践の傾向を分析することにより現状を把握し,NIE の有効性と課題につ
いて検討する.
3 研究方法
・ インターネットや文献による調査
・ 「青森県 NIE 実践報告書」の分析
・ 実践者へのインタビュー
4 NIE について
(1) NIE の歴史的背景
・ 1702 年,イギリスで初めて新聞を学校で使うというアイデアが用いられた.
・ 1930 年代にアメリカのニューヨークタイムズによって,大学生を対象とする教育現場での新聞の
活用が始まった.
・ 1955 年,アイオワ州で実施された「中学生の文字との接触調査」から 5500 人の生徒の約 4 割が
教室以外では全く本を読んでいないという結果が出された.このことにより,NIC(Newspaper in
the classroom)運動が始まり,全米に広がった.
・ 1976 年,アメリカ新聞協会の推進を受け,名称が NIE に変更され現在に至る.
(2) 日本の NIE について
① 歴史的背景
1985年 新聞大会において,初めて NIE が提唱される.
1988年 「日本新聞協会 NIE 委員会」発足.
東京都内の小学校1校と中学校 2 校で NIE の実験的パイロット計画がスタート.
1989年
→各都道府県に NIE 推進組織が相次いで結成される.
1998年 財団法人日本新聞教育文化財団設立.
2000年 横浜市に全国 NIE センターが開設される.
※背景には,児童・生徒・学生の「文字離れ」と「社会離れ」が指摘されている.
② 特徴
・ 新聞を 1 面から最終面まで,記事や写真,広告まで丸ごと活用すること
・ 複数の新聞を読み比べること
(3) 全国における NIE の実際 ∼統計から∼
NIE 実践校における NIE 利用の領域・教科
教科 87% 総合的な学習の時間 54% 特別活動 31% 道徳 35%
② 教科別にみた NIE 活動状況
社会,地理・公民 70% 国語 51% 家庭,技術家庭 14% 理科 20% 外国語 14%
(4) 学校教育における NIE の実際 ―青森県 NIE 実践報告書の分析―
※資料参照
① 実践の授業形態
校が見られる.
・ 小学校での実践が多い.
② 実践のねらい
・ 小学校低学年での実践が見られない.
・ 新聞への興味・関心を高める.
・ 社会科と総合的な学習の時間での実践が
・ 自ら考え判断する力を培う.
多い.
・ 新聞の有効性を授業に活かす.
・ 総合的な学習の時間での実践が増加して
③ 授業のテーマ・単元名
いる.
・ 今日的な話題が取り上げられている.
・ 授業の他に日常生活でも新聞を活用して
・ 自分の周囲に関することが多い.
いる学校が見られる.
・ 文化祭で活動のまとめを発表している学
①
5 考察
(1) 新聞の有効性
・ 情報を繰り返し読める.
・ 情報の保存ができる.
・ 情報の選別ができる.
・ 過去の情報を調べられる.
・ 多様な考え方を獲得できる.
(2) 新聞の危険性
・ 情報の信憑性
・ 事実か記者の主観か
・ 新聞社の意図が含まれる.
⇒ 読解力・見えないものを読みとる力が要求
される.
テレビやインターネットと同様に,有効性と危険性はまだまだ考えられる.しかし,これらの危険性
も新聞の特性であり,あえてそこに着目したメディアリテラシーによる授業実践もみられた.教師は「な
ぜ新聞を使うのか」ということを明確にしなくてはならない.そして児童・生徒にも戸惑いがないよう,
新聞の成り立ちや使命,メリットや危険性を理解した上で授業を進める必要がある.その点をふまえて
取り上げるのであれば,
「情報社会」の中で,情報を収集し,理解し,判断して,活用する力を身につけ
るためには,毎日定期的に配達される新聞は最も身近な存在であり,有効である.
しかし,NIE の学習効果に期待が寄せられつつも,まだ青森県における取り組みは十分とはいえない.
本県に限ったことではないが,それは NIE の実践が始まって間もないということと,教科書指導とは異
なり,教師が全ての新聞に目を通し下調べをすることの難しさが原因であると思われる.実践後の感想
や実践者へのインタビューでも,教材研究のための時間確保の難しさが嘆かれていた.生徒の意見を全
て受け止めるだけの知識と余裕を持つことは,現状ではなかなか難しいようだ.だが,より良い授業作
りのためには,教材研究は不可欠であり,確かに教師の負担は大きくなるが,その分,児童・生徒にと
って良い効果が期待できるはずである.
6 おわりに
総合的な学習の時間や社会科においての実践が多い NIE であるが,教師が新聞の有効性や危険性など
特性をしっかりふまえることにより,様々な授業での実践が考えられる.実際,全国の実践事例に目を
向けると,小学校低学年においての「ことばさがし」
,中学校や高等学校におけるディベート,高等学校・
大学におけるメディアリテラシー,メディア論といった多様な実践が見られ,本研究を通して各教科ご
との NIE の実践や発達段階による NIE の実践などさまざまな授業実践例を知ることができた.インタ
ーネット上で公開されている実践報告が中心であるため限られた情報ではあるが,全国及び青森県内に
おけるおおよその傾向は把握できたのではないかと考えている.
最後に本研究を振り返り,NIE の実践を分類したものを以下の図 1 に示す.ここで大切なのは教師側
でのおさえである.どのようなねらい,どのような内容,どのような方法で授業を行うのかが明確にさ
れていなければならない.そのことをふまえ NIE を取り入れていくことでさらに授業としての可能性が
広がっていくと思われる.
7 月 31 日,8 月 1 日に島根県で開催された第 8 回 NIE 全国大会では,今後の有力な方向性として「生
涯学習型 NIE」が提案された.また,児童館(保育所)・小・中・高連携による子どもの発達段階に応じ
ながら取り組む NIE 活動や学校・家庭・地域の連携をテーマにした活動の報告がなされた.その他,双
方向の発展を目指し,新聞記者と生徒,教師との交流など新たな取り組みが見られた.現在,学習指導
要領の改訂に向け総合的な学習の時間の扱い方の他,様々な議論がなされているが,今後の授業形態に
かかわらず NIE の実践はさらにより良いものへと積み重ねられていくであろう.
内容論的
A 素材として「新聞」を取り上げる
→「メディア論」
「ディベート」等
B 教科のねらい∼ 「教材」
「資料」として適切である
→「国際問題」
「環境」
「地域・文化」
方法論的
C 調べ学習における資料集めの一つとして
→B,D と重なる
D 興味・関心に基づくテーマ設定の手がかり
→「総合的な学習の時間」
図1
参考文献
妹尾彰 編(2000):総合的学習に生かせる NIE 小学校実践事例集,晩成書房
佐野眞 (1993):自分だけのデータファイル,日本エディタースクール出版部
青森県 NIE 推進協議会 編(2002):1999 年度∼2001 年度青森県 NIE 実践報告書,東奥日報社
資料
学校教育における NIE の実際―青森県 NIE 実践報告書の分析―
1 はじめに
青森県 NIE 推進協議会によって編集されている「青森県 NIE 実践報告書」について,分析・考察を
試みる.
(1)青森県 NIE 推進協議会とは?
本県の NIE 活動を進めるため,教育界と新聞界が協力して 1995 年 4 月に設立した.県教育庁義務教
育課長,小・中の各校長会長,高校長会長,新聞各社の青森支社局長らが委員を務め,教育研究会長,
実践地域の教育委員会などがオブザーバーとして参加している.
加盟新聞社:朝日新聞社,毎日新聞社,読売新聞社,日本経済新聞社,産経新聞社,河北新報社,デ
ーリー東北新聞社,陸奥新報社,東奥日報社(幹事・事務局)
(2)期間
1999 年度∼2001 年度まで,過去 3 年分(2002 年度版は現在作成中,冬に完成予定)
2 青森県 NIE 実践報告書について
(1)報告書の趣旨
「NIE 推進事業」に参加した県内の学校の実践記録をまとめたものである.
この報告書では,教材として,特別活動の素材として,様々な新聞の活用法が紹介されている.これ
らの実践が,新聞を授業や学校活動に取り入れようとしている教師はもちろん,学校生活に新たな活力
を吹き込みたいと考えている方々にも貴重なヒントになると思われる.
(2)報告書の構成
・各学校の実践記録
・実践校校長アンケート
・実践者アンケート
学校名
堤小学校
千年小学校
ねらい
・ 日本の産業の様子を調べるための新聞の活用方法に
ついて(’99)
・ スクラップノート作りを通して,新聞に親しみ,
情報源として活用する.(’99)
・ テーマに基づいたスクラップ作業を通して,自分
の学習テーマをより深めていく.(’00)(’01)
・ 情報活用能力の開発(’99)(’00)
長者小学校
木崎野小学校
後潟小学校
三本木小学校
大豆田小学校
赤保内小学校
筒井中学校
七百中学校
青森南中学校
造道中学校
田名部高校
尾上総合高校
・
・
・
・
・
・
・
・
新聞への興味を持たせる(’99)
新聞に慣れ親しませること
生きるための情報活用能力の育成(’00)
自分の住んでいる地域や環境について関心を持
ち,地域への愛情を育てる.(’00)
県内外の特色ある学校行事について知ることによ
り,学校生活をよりよくしようとする心情を育て
る.(’01)
新聞への興味・関心を高める(’00)
新聞への興味を持たせる(’01)
記載なし(’01)
テーマ
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
新聞記事
・ 日本の農業,水産業及び工業に関する記事
・ 交通事故と火事の記事
・ 貿易摩擦に関連した記事
・ 日本と世界に関わる記事.同時多発テロと,それ
に伴う軍事行動に関する記事
・ 環境問題の記事
・ 新聞そのもの
・ 貿易,観光などの点で日本と関係の深い国の記事
・ 公共広告機構の広告
・ 三宅島に関する記事
・ 自分の住んでいる地域の環境や人々の生活に関心を持つ(総合学習)
・ 県内外の特色ある学校行事について知る(総合学習)
学年
5
4,5,
6
5,6
3,4,
5,6
教科外
・ 身近な出来事を話題として取り上げた記事
・ 学校行事を取り上げた記事
4,5
5,6
教科外
総合的な学習の時間
・ 子どもの見方や考え方を高め,自ら学ぶ力を育てる
ための学習活動はどうあればよいか(’01)
・ 社会的事象を多面的・多角的に思考,判断する能力
を育成するための新聞の活用はどうあればよいか.
(’99)
・
・
・
・
・
・
・ 新聞記事を活用して,広く社会に目を向ける生徒を
育てる.(’99)
・ 新聞記事から自分でテーマを見つけ,それについ
て自分の意見を書く.(’99)
・ 記事を読み,社会の出来事に関心を持つ.(’00)
・ 記載なし.(’01)
・ 環境についての知識を広め,自ら考える生徒の育成.
(’01)
・ 新聞を読むことで授業の動機付けを行う.(’99)
・
・
・
・
・
・
・
・ ディベートを通した意見交換.(’01)
わたしたちの生活と食料生産
私たちの生活と工業生産(社会)
安全な暮らしを守る(社会)
私たちの生活と運輸―貿易と運輸(社会)
日本と関係の深い国々
世界の平和と日本の役割(総合学習)
環境問題
わたしたちの生活と情報(社会)
日本との関係の深い国々(社会)
いじめ,環境問題(道徳)
災害によって避難生活を余儀なくされている人々の生活の理解(児童会活動)
目標を持ち努力することの大切さを知る.(道徳)
いろいろな新聞記事を比べてみよう.(総合学習)
アメリカ合衆国と日本の関わりを考察する(社会)
わたしたちの生活を支える県人の活躍について調べる(社会)
環境問題に物申す(社会)
国内外の時事問題について考える(社会)
社会保障と国民の福祉について考える(社会)
日本の農業の現状と課題について考える(社会)
アメリカの今を探そう(社会)
現代社会の問題点・モラルの欠如を指摘する(道徳)
貿易摩擦「セーフガード」について理解する(社会)
福祉について考える(総合学習)
環境を考える(総合学習)
・ 政党と選挙について考える(政治・経済)
総合的な学習の時間
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
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