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21.教育学研究科
東京大学教育学研究科 21.教育学研究科 Ⅰ 教育学研究科の教育目的と特徴 Ⅱ 分析項目ごとの水準の判断 Ⅲ ・ ・ ・ 21− 2 ・ ・ ・ ・ ・ 21− 4 分析項目Ⅰ 教育の実施体制 分析項目Ⅱ 教育内容 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21− 6 分析項目Ⅲ 教育方法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21− 10 分析項目Ⅳ 学業の成果 分析項目Ⅴ 進路・就職の状況 質の向上度の判断 ・ ・ ・ ・ 21− 4 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21− 14 ・ ・ ・ 21− 15 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21− 17 −211− 東京大学教育学研究科 Ⅰ 教育学研究科の教育目的と特徴 東京大学大学院教育学研究科規則には、教育研究上の目的として、次のように定められ ている。 「 本 研 究 科 は 、人 間 と 教 育 と の か か わ り 、社 会 に お け る 教 育 の 構 造 と 機 能 、心 身 の 発達と教育、等の分野において卓越した分析・研究を行う能力を形成するとともに、教育 の 実 践 に 高 度 の 専 門 的 知 見 と 能 力 を 持 っ て 貢 献 す る 人 材 を 養 成 す る こ と を 目 的 と す る 。」 以上の目的の下、本研究科(修士課程、博士課程)は、総合教育科学専攻と学校教育高 度化専攻の2つの専攻より成り、総合教育科学専攻は8コースで組織され、それらと関連 づ け ら れ て 教 育 学 部 の 1 学 科・6 コ ー ス が 組 織 さ れ て い る 。平 成 18 年 度 よ り 学 校 教 育 高 度 化専攻が新設され、新たに3コースが組織された。それぞれのコースの教育の特徴につい て は 資 料 21− 1 の と お り で あ る 。 ( 資 料 21− 1 : 各 専 攻 ・ コ ー ス の 特 徴 ) 専攻・コース名 教育学 比較教育社 会学 教育心理学 臨床心理学 総 合 教 育 科 学 専 攻 教育創発学 生涯学習基 盤経営 身体教育学 大学経営・ 政策 教職開発 学 校 教 育 高 度 化 専 攻 教育内容開 発 学校開発政 策 特 徴 教 育 の 理 念 、歴 史 、現 実 に つ い て 、幅 広 い 関 心 を も っ て 、方 法 論 自 体 を 問 題 と し つ つ 研 究 す る 。西 洋 と 日 本 の 教 育 の 歴 史 的 部 分 析 、人 間 の 発 達 と 教 育 の 意 味 、教 育 の 思 想 の 考 察 な ど 、教 育 と は 何 か と い う 教 育 学 の 原 理 的 な 問 い を 共 通 の 基 盤 と し な がら、多様な方法を活用した専門的な研究・教育を行う。 教 育 の 組 織 と 構 造 、高 等 教 育 の 制 度 と 機 能 、教 育 と 社 会 と の 関 係 、人 間 形 成 の 比 較 文 化 論 、国 際 化 と 教 育 を め ぐ る 諸 問 題 を 社 会 学 ・文 化 人 類 学 ・ 経 済 学 ・ 社 会 史 な どのディシプリンに基づいて研究・教育を行う。 大 別 す る と 教 育 心 理 学 と 教 育 情 報 科 学 と か ら な る 。前 者 は 発 達 心 理 学 、学 習 心 理 学 、認 知 心 理 学 、教 育 心 理 学 、動 機 づ け の 心 理 学 、学 校 社 会 心 理 学 な ど の 研 究 ・教 育 を 行 う 。後 者 は 、教 育 測 定・評 価 、教 育 情 報 解 析 な ど の 研 究・教 育 と 開 発 を 行 う 。 臨 床 心 理 学 コ ー ス は 、「 心 の 時 代 」 と も 称 さ れ る 2 1 世 紀 に ふ さ わ し い 人 間 的 シ ス テ ム を 構 築 す る た め に 必 要 と さ れ る 臨 床 心 理 的 な 知 的 基 盤 を 提 供 し 、臨 床 心 理 士 や ス ク ー ル・カ ウ ン セ ラ ー 等 の 高 度 専 門 職 業 人 お よ び 研 究 者・指 導 者 の 育 成 を 目 的 とする。 「 現 場 の 実 践 に 結 び つ い た 教 育 研 究 」を 目 指 し 、現 象 学 、認 知 科 学 な ど の 基 礎 研 究 を ベ ー ス に し て 研 究 内 容 を よ り 専 門 的 に 深 め つ つ 、教 育 実 践 や カ リ キ ュ ラ ム の 歴 史 研 究 、教 材 研 究 、教 師 研 究 、学 校 臨 床 学 な ど に も 従 事 し 、幅 広 く 、か つ 高 度 な 知 見をもつ専門家を養成する。 本 コ ー ス は 、社 会 教 育 学 、図 書 館 情 報 学 の 二 つ の 研 究 領 域 か ら な り 、主 に 生 涯 学 習 、社 会 教 育 、図 書 館 、情 報 メ デ ィ ア な ど の 研 究 分 野 で 研 究 ・教 育 活 動 が 行 な っ て いる。ひろく教育の社会的発展の視野にたつ専門的人材の養成を行う。 身 体( か ら だ )の 形 と 理 を 知 り 、様 々 な 刺 激 に 対 す る か ら だ の 適 応 と 破 綻 、か ら だ の 発 達 と 加 齢 変 化 、生 活 習 慣 や 環 境 と の 関 わ り な ど を 学 校 ・家 庭 、社 会 に お け る 様 々 な 指 導 ・教 育 事 象 の 中 か ら 考 究 す る 研 究 と 実 践 的 活 動 を 行 う 。ま た 、こ れ ら を 通して、身体教育に関わる専門的かつ総合的な視野と能力を持つ人材の養成を行 う。 本 コ ー ス は 、大 学 ・高 等 教 育 の 管 理 者 、政 策 担 当 者 を 対 象 に 大 学 の 管 理 運 営 、高 等 教 育 政 策 に つ い て 理 論 的・実 践 的 な 教 育 を 行 う と と も に 、こ の 新 し い 分 野 の 研 究 者 、将 来 の リ ー ダ ー を 育 成 す る 。修 士 課 程 で は 、基 本 的 な 理 論 と と も に 、実 際 の 大 学 の 事 例 を と り あ げ た ケ ー ス ス タ デ ィ に 参 加 し 、そ れ を 中 心 に 修 士 論 文 を 書 く こ と を 通 じ て 、広 い 視 野 と 実 践 的 な 判 断 力 を も つ 幹 部 事 務 職 員 、行 政 職 員 を 養 成 す る と と も に 、こ の 分 野 で の 研 究 者 を 目 指 す 人 に 基 礎 的 な 教 育 を 行 う 。博 士 課 程 で は 、す で に 修 士 課 程 を 修 了 し 、ま た 幹 部 事 務 職 員 、行 政 職 員 と し て 経 験 を も つ 方 を 対 象 に 、 国 際 的 な 規 模 で 指 導 的 な 役 割 を 果 た し え る 幹 部 事 務 職 員 、行 政 官 を 養 成 す る と と も に 、こ の 新 し い 分 野 で の 研 究 者 、ま た 教 育 訓 練 の リ ー ダ ー に な る よ う な 人 材 を 養 成 する。 学校教育高度化を達成する核とも言える教職の専門的資質と能力の高度化を推 進 す る 。授 業 の 開 発 、カ リ キ ュ ラ ム の 開 発 お よ び 教 職 専 門 性 の 開 発 の 先 端 的 研 究 と 実 践 的 研 究 を 推 進 し 、小 学 校 、中 学 校 、高 校 段 階 の 指 導 的 教 師 、お よ び 大 学 に お い て教師教育(現職教育を含む)を担う実践的研究者を養成する。 学校教育の高度化を実現する教育内容の理論研究と開発研究を推進し、小学校、 中 学 校 、高 校 の 指 導 的 教 師 、お よ び 教 育 内 容 に お け る 高 度 の 専 門 的 知 識 と 教 職 の 専 門 的 見 職 を 兼 ね 備 え た 指 導 的 教 師 、お よ び 教 師 教 育( 現 職 教 育 を 含 む )を 担 う 実 践 的 研 究 者 を 養 成 す る 。本 コ ー ス の 特 色 は 、科 学 技 術 教 育 、数 学 教 育 、言 語 教 育 、人 文 社 会 教 育 な ら び に 芸 術 教 育( 客 員 )と 身 体 教 育( 客 員 )の 諸 分 野 の 学 術 研 究 と 教 育の実践的研究を統合するところにある。 学 校 教 育 の 高 度 化 を 推 進 す る 教 育 政 策 、教 育 行 政 ・財 政 シ ス テ ム 、学 校 経 営 の 政 策 的 、制 度 的 な 研 究 開 発 を 行 い 、こ の 領 域 の 政 策 立 案 、行 財 政 シ ス テ ム 改 革・経 営 ・ 管 理 、政 策 評 価 等 を 遂 行 す る こ と の で き る 研 究 者 と 指 導 者 な 行 政 官( 教 育 行 政 職 員 、 学校管理職・指導主事等)を養成する。 −212− 東京大学教育学研究科 このコース編成が示すように、それぞれのコースが提供する専門的知識と、コース間の 連携による総合性を兼ね備えた教育を提供することで、本研究科では、大学・研究機関を はじめとする教育研究機関、教育行政、教育・学習支援業、マスコミを含む情報通信業や サービス業等において、狭義の教育現象についての専門的研究者の養成にとどまらず、広 義の教育現象について、高度な専門性を備えて活躍できる人材の育成をめざしている。 また、より実践性の高い研究・教育を実施する場として、心理教育相談室、附属学校教 育高度化センター、 「基礎学力研究開発センター」 ( 21 世 紀 COE プ ロ グ ラ ム の 資 金 に よ っ て 設置)といった関連施設が設置されており、各コースとの連携協力のもと、大学院での教 育 の 一 端 を 担 っ て い る ( 資 料 21− 2 : 大 学 院 教 育 学 研 究 科 ・ 教 育 学 部 の 機 構 図 )。 ( 資 料 21− 2 : 大 学 院 教 育 学 研 究 科 ・ 教 育 学 部 の 機 構 図 ) 大学院 教育学研究科 教育学部 総合教育科学専攻 教育学コース 比較教育社会学コース 教育心理学コース 臨床心理学コース 教育創発学コース 生涯学習基盤経営コース 身体教育学コース 大学経営・政策コース 総合教育科学科 学校教育高度化専攻 教職開発コース 教育内容開発コース 学校開発政策コース 教育学コース 比較教育社会学コース 教育心理学コース 学校教育学コース 教育行政学コース 身体教育学コース 連携分野 学校教育高度化 センター 基礎学力研究開発 センター 先端発達研究 センター 教育測定・カリキュ ラム開発講座 心理教育相談室 附属中等教育学校 教育研究創発機構 [想 定 す る 関 係 者 と そ の 期 待 ] 教 育 の 専 門 的 学 習 を 行 う 大 学 院 学 生 が 第 一 の 想 定 す る 関 係 者 で あ り 、狭 義 広 義 の 教 育 現 象について、卓越した知識と専門性を身につけさせることが期待される。また、そうした 専門性を備えた大学院修了者を雇用する、大学・研究機関、行政、教育・学習支援業、マ スコミを含む情報通信業やサービス業等が関係者として想定でき、こうした諸機関に、教 育研究の高度な専門性と実践性を備えた優秀な人材を供給することが期待される。 −213− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅰ Ⅱ 分析項目ごとの水準の判断 分析項目Ⅰ 教育の実施体制 (1 )観 点 ご と の 分 析 観点 基本的組織の編成 (観 点 に 係 る 状 況 ) 本研究科における教育研究は、人間と教育とのかかわり、社会における教育の構造と機 能、心身の発達と教育等の広範な諸分野において卓越した分析・研究を行う能力を形成す ることを目的としており、教育学部からの進学者だけでなく、本学他学部、他大学出身の 入 学 者 が 多 い こ と を 特 徴 と し て い る ( 資 料 21− 3 : 大 学 院 学 生 の 入 学 状 況 )。 ( 資 料 21− 3 : 大 学 院 学 生 の 入 学 状 況 ) 修士課程 年 平成 平成 平成 平成 度 16 17 18 19 年度 年度 年度 年度 入学定員 52 67 88 88 志願者数 入学者数 本学 他大学 計 本学 他大学 計 23 220 243 8 57 65(3) 54 186 240 28 49 77(14) 55 248 303 32 53 85(20) 48 273 321 26 67 93(23) ※ ( )は 社 会 人 受 入 状 況 を 内 数 で 示 す 。 博士課程 年 平成 平成 平成 平成 度 16 17 18 19 年度 年度 年度 年度 入学定員 32 37 49 49 志願者数 入学者数 本学 他大学 計 本学 他大学 計 11 87 98 8 38 46(2) 58 44 102 36 6 42(6) 65 56 121 38 7 45(3) 49 69 118 35 12 47(7) ※ ( )は 社 会 人 受 入 状 況 を 内 数 で 示 す 。 このような特徴を持つ大学院学生に高度な専門教育を提供するため、上記2専攻とは別 に 、 外 部 資 金 に よ る 寄 付 講 座 と し て 教 育 測 定 ・ カ リ キ ュ ラ ム 開 発 講 座 を 置 い て い る (平 成 17 年 設 置 )。 こ の 他 、 心 理 的 な 問 題 に 対 す る 援 助 に 関 わ ろ う と す る 大 学 院 学 生 の 実 践 的 な 研 修 の 場 と し て 心 理 教 育 相 談 室 を 置 い て い る 。 ま た 平 成 16 年 に は 留 学 生 の 学 習 や 交 流 に 資するために国際交流室を設置した。 コースの編成については、現代社会における新たな教育の専門家養成に応えるため、平 成 16 年 の 中 期 計 画 策 定 以 後 、中 期 計 画 に 沿 っ て 以 下 の よ う に コ ー ス・専 攻 の 新 設 を 実 施 し て き た ( 資 料 21− 4 : 新 設 コ ー ス ・ 専 攻 の 設 置 目 的 )。 ( 資 料 21− 4 : 新 設 コ ー ス ・ 専 攻 の 設 置 目 的 ) 設置年度 平 成 16 年 度 専 攻 総合教育科学専攻 臨床心理学コース 平 成 17 年 度 総合教育科学専攻 大学経営・政策コース 平 成 18 年 度 学校教育高度化専攻 目 的 臨 床 心 理学 の 実践 活動 、教 育活 動 、研究 活 動を 統 合的 に 発 展させ、日本の臨床心理学が国内外の社会的要請に応え、 専 門 活 動 と し て 更 な る 発 展 を 遂 げ る た め 、こ れ に 寄 与 し 得 るコースを設置することを目的とする。 国立大学法人発足等により求められている大学の経営機 能 の 強 化 と い う 課 題 に 対 応 す る た め 、総 合 教 育 科 学 専 攻 に 「 大 学 経営・政 策 コー ス 」を 新設 し 、高 等 教育 に 関す る 専 門的知識を有する幹部職員、行政担当を養成する。 東京大学が保有する最先端の学術研究と教育研究のリソ ー ス を 統 合 し て 、21 世 紀 の 知 識 が 高 度 化 し 複 合 化 し 流 動 化 す る 社 会 に ふ さ わ し い 指 導 的 な 教 師 、実 践 的 な 研 究 者 お よ び指導的な行政官を教育することを目的としている。 −214− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅰ このような新コース・専攻の設置に伴い、ややもすれば細分化しすぎた感のある大学院 教 育 の 専 門 分 化 を 緩 和 す る た め 、組 織 編 成 の 見 直 し を 行 い 、平 成 21 年 度 に は 、総 合 教 育 科 学 専 攻 を 、基 礎 教 育 学 専 修 (基 礎 教 育 学 コ ー ス )、教 育 社 会 科 学 専 修 (比 較 教 育 社 会 学 コ ー ス 、 生 涯 学 習 基 盤 経 営 コ ー ス 、大 学 経 営・政 策 コ ー ス )、心 身 発 達 科 学 専 修 (教 育 心 理 学 コ ー ス 、 臨 床 心 理 学 コ ー ス 、 身 体 教 育 学 コ ー ス )と い う 、 3 専 修 7 コ ー ス に 再 編 成 す る 予 定 で あ る 。 各 コ ー ス の 教 員 数 及 び 本 研 究 科 全 体 と し て の 現 員 の 推 移 に つ い て は 資 料 21− 5 を 参 照 されたい。 ( 資 料 21− 5 : 現 員 の 推 移 ) 各 年 度 4.1 現 在 年 度 平成 平成 平成 平成 16 17 18 19 教授 年度 年度 年度 年度 24 25 26 26 教 授 (客 員 ・特 任 ) 5 7 8 7 准・ 准 ・助 教 授 講 師 助 教 ・助 手 助教授 (客 員 ・特 任 ) 9 5 1 11 10 5 0 10 13 3 0 9 13 2 0 9 ※教 授 ,准 教 授 に 学 内 学 外 兼 務 教 員 を含 む。 助 教 ・助 手 (客 員 ・特 任 ) 0 5 6 5 計 55 62 65 62 また、本研究科では非常勤講師による講義・演習科目の開設のほか、学外から多くの客 員教授を委嘱して、連携分野における高度な専門性を備えた研究指導を実施している。加 えて、学内兼担の他学部教員による教育、研究指導によって、教育課程の充実が図られて い る ( 資 料 21− 6 : 客 員 ・ 学 内 学 外 兼 務 教 員 )。 ( 資 料 21− 6 : 客 員 ・ 学 内 学 外 兼 務 教 員 」 各 年 度 4.1 現 在 年 度 平 成 16 年 度 平 成 17 年 度 平 成 18 年 度 平 成 19 年 度 教 授 准・助 教 授 6(1) 5 9(1) 5 12(3) 3 13(4) 4(1) 講 師 助 教・助 手 (相 当 ) 計 0 0 11 1 1 16 0 2 17 0 2 19 ※括弧内は学内兼務教員数 観点 教育内容、教育方法の改善に向けて取り組む体制 (観 点 に 係 る 状 況 ) 本研究科では自己評価委員会を組織し、学部教育及び大学院教育の見直しに資する基礎 資料の収集と分析に努め、自己評価・自己点検の報告書である『教育学研究科・教育学部 年報』を発行している。また、研究科長の下におかれた将来計画委員会(各コースから委 員 を 選 出 )を 通 じ て 、 『 教 育 学 研 究 科・教 育 学 部 年 報 』等 の 資 料 を も と に 、コ ー ス の 新 設 ・ 再編、さらには教育内容と方法の改善に向けた討議を重ねてきた。その一つの成果が前述 のコース・専攻の新設であり、既存コースの再編である。 (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 大 き く 上 回 る 。 (判 断 理 由 ) 本研究科の教育実施体制は、中期目標に掲げられた臨床心理学コースの設置にとどまら ず、大学経営・政策コースの設置、さらには従来の1専攻から2専攻に研究科を拡充して 学校教育高度化専攻を新設するなど、社会の変化に対応する改革を推進してきた。このよ うな拡充の結果、高度な専門家養成の幅が広がり、臨床心理の専門家、高等教育分野の専 門家、中等教育教員の質の一層の向上を図るための専門教育の充実が可能になった。こう した改善に向けての大きな取組から、期待される水準を大きく上回ると判断した。 −215− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅱ 分析項目Ⅱ 教育内容 (1 )観 点 ご と の 分 析 観点 教育課程の編成 (観 点 に 係 る 状 況 ) 本研究科は、各コースの教育研究上の特徴を反映して、教育課程編成上もコース及び専 攻によって若干の違いが存在する。まず総合教育科学専攻の修士課程では、概ねコースご との基本研究4単位、特殊研究6単位、論文指導4単位、専攻他コースの基本研究又は特 殊 研 究 も し く は 学 校 教 育 高 度 化 専 攻 の 理 論 研 究 又 は 実 践 研 究 4 単 位 の 必 修 計 18 単 位 を 含 む 30 単 位 の 修 得 を 求 め て お り 、博 士 後 期 課 程 に お い て は 特 殊 研 究 6 単 位 、論 文 指 導 4 単 位 の 必 修 計 10 単 位 を 含 む 20 単 位 の 修 得 を 求 め て い る 。こ の 例 外 は 平 成 16 年 度 に 設 置 さ れ た 臨 床 心 理 学 コ ー ス と 平 成 17 年 度 に 設 置 さ れ た 大 学 経 営 ・ 政 策 コ ー ス で あ る 。 臨 床 心 理 学 コ ー ス の 場 合 、臨 床 心 理 士 資 格 取 得 の た め の 、30 単 位 す べ て に つ い て 必 修 科 目としている。そこでは、専門家養成を目的とした実践的なカリキュラムが編成されてお り、多様なカウンセリング/心理臨床の実践を学生に実感させるため、教員の臨床実践だ け で は な く 、ア メ リ カ 心 理 学 会( APA)作 成 の 心 理 療 法 ビ デ オ シ リ ー ズ を 用 い て 心 理 療 法 プ ロ セ ス を 提 示 し 、 議 論 の 素 材 と し て い る ( 資 料 21− 7 : 臨 床 心 理 学 コ ー ス の 開 講 科 目 )。 ( 資 料 21− 7 : 臨 床 心 理 学 コ ー ス の 開 講 科 目 ) 講義題目 臨床心理実習 I 臨床心理実習Ⅱ 臨床心理学特論Ⅱ 臨床心理面接特論Ⅱ 臨床心理学特論Ⅰ 臨床心理査定演習Ⅰ 臨床心理基礎実習Ⅰ 臨床心理面接特論Ⅰ 臨床心理査定演習Ⅱ 臨床心理基礎実習Ⅱ 家族心理学特論 学校カウンセリング特論 臨床心理関連行政論 コミュニティアプローチ特論Ⅰ コミュニティアプローチ特論Ⅱ 障害の心理と援助Ⅰ 障害の心理と援助Ⅱ 臨床心理学研究法 心理学研究法特論 精神医学特論 担当教員 職名 氏名 教 授 亀口 憲治 教 授 下山 晴彦 教 授 亀口 憲治 教 授 下山 晴彦 教 授 亀口 憲治 准教授 能智 正博 准教授 中釜 洋子 教 授 下山 晴彦 教 授 下山 晴彦 准教授 中釜 洋子 教 授 亀口 憲治 教 授 下山 晴彦 教 授 田中 千穂子 准教授 中釜 洋子 教 授 田中 千穂子 准教授 能智 正博 教 授 田中 千穂子 准教授 中釜 洋子 准教授 中釜 洋子 教 授 亀口 憲治 非常勤 金沢 吉展 講 師 非常勤 芳川 玲子 講 師 非常勤 芳川 玲子 講 師 教 授 下山 晴彦 教 授 下山 晴彦 准教授 能智 正博 非常勤 坂本 真士 講 師 非常勤 中嶋 義文 講 師 −216− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅱ 心理療法特論:スーパービジョンⅠ 心理療法特論:スーパービジョンⅡ 発達臨床心理学特論 教 授 教 授 教 授 非常勤 講 師 非常勤 講 師 教 授 准教授 教 授 准教授 教 授 障害児心理学特論 投映法特論 臨床心理学論文指導 臨床心理学論文指導 臨床心理学論文指導 臨床心理学論文指導 臨床心理学論文指導 倉光 修 倉光 修 田中 千穂子 本城 秀次 磯邉 聡 亀口 憲治 中釜 洋子 下山 晴彦 能智 正博 田中 千穂子 平 成 18 年 度 に 設 置 さ れ た 学 校 教 育 高 度 化 専 攻 で は 、修 士 課 程 に お い て 理 論 研 究( 基 礎 ・ 発 展 )4 単 位 、実 践 研 究( 事 例 ・ 実 地 )10 単 位 、論 文 指 導 4 単 位 、専 攻 他 コ ー ス の 理 論 研 究 又 は 実 践 研 究 10 単 位 の 計 24 単 位 、 博 士 後 期 課 程 に お い て 理 論 研 究 ( 発 展 ) 4 単 位 、 実 践研究(事例・実地)4単位、論文指導4単位、専攻他コースの理論研究又は実践研究4 単 位 の 計 16 単 位 を 必 修 と し て い る 。こ の よ う な 教 育 課 程 を 編 成 し て い る 理 由 と し て は 、前 述の研究科としての教育研究上の目的に加えて、教育の実践に高度の専門的知見と能力を もって貢献する人材を養成するという目的を重視していることがあげられる。とくに理論 と実践の統合をめざして、修士課程修了に必要な単位の3分の1を実践研究科目としてい る 点 に 特 徴 が あ る ( 資 料 21− 8 : 学 校 教 育 高 度 化 専 攻 の 開 講 科 目 例 ) ( 資 料 21− 8 : 学 校 教 育 高 度 化 専 攻 の 開 講 科 目 例 ) 科 目 番 号 : 303-11 担当教員:小 川 正 人 講義題目:自治体教育政策革新と教育委員会 単 位 数: 2 学 期: 冬 授業科目:学校開発政策・実践研究 制度改革Ⅳ (教育政策事例研究) Reform Policies of Local Governments and Educational Committee System Ⅳ 昨 年 度 に 実 施 し た 東 京 都 品 川 区 の 教 育 行 政 調 査 を 継 続 す る 。昨 年 度 は 、① 教 育 政 策 ・ 行 政 班 、② 学 校 経 営 ・ 選 択 班 、③ 教 員 人 事 班 の 3 グ ル ー プ で 、 関 係 機 関 ・ 者 へ の ヒ ヤ リ ン グ 調 査 や 資 料 ・ 文 献 収 集 の 作 業 を 進 め た 。そ の 継 続 の う え に 、夏 学 期 で は 、昨 年 度 の 調 査 研 究 を 総 括 し な が ら 、品 川 区 教 育 委 員 会 と 連 携 ・ 協 力 し て 、大 規 模 ア ン ケ ー ト 調 査 の 調 査 票 作 成 と 実 施 に む け た 調 査 研 究 作 業 を 行 う が 、冬 学 期 で は、大規模アンケート調査を実施し、その調査結果の分析作業を行いながら、2 年間の品川区教育行政 調査の総括的まとめを進める。 特に、専修免許状の取得にふさわしい教職専門科目及び専門性を備えた教育行政官の養 成を目的に設置された学校教育高度化専攻においては、全学的な協力体制のもとで東京大 学 の 最 先 端 の 学 術 研 究 を 基 盤 と し た「 言 語 」 「科学技術」 「数学」 「人文社会」 「芸術」 「身体」 の学校カリキュラムの高度化を推進する専門科目を多数開設している。 さらに、その恩恵を東京大学全体に還元するための仕組みとして、他研究科の大学院学 生を対象とした副専攻制度を設けている。これらの専門家教育の科目の受講者は、研究科 内 で 約 100 名 、他 研 究 科 の 副 専 攻 の 大 学 院 学 生 が 約 30 名 で あ る 。副 専 攻 登 録 を 行 っ た 学 生 は、学校教育高度化専攻の学生と同様の研究指導を受けることができ、所定の単位を修得 す る こ と に よ っ て 、 副 専 攻 修 了 証 を 付 与 さ れ る 。 こ の 副 専 攻 制 度 の 登 録 者 数 は 、 平 成 18 年 度 8 名 、 平 成 19 年 度 7 名 ( う ち 、 平 成 18 年 度 か ら の 継 続 者 2 名 ) と な っ て い る 。 −217− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅱ 観点 学生や社会からの要請への対応 (観 点 に 係 る 状 況 ) 近年の教育研究への期待は、高度化すると同時に複雑化している。こうした新たな社会 適用性として、 「 心 」の 専 門 家 や 、高 等 教 育 の 専 門 家 、従 来 以 上 に 高 度 な 専 門 性 を 備 え 将 来 の学校教育の指導的立場を担うことを期待された学校教員や教育行政の専門家を養成する こ と が 社 会 的 に 要 請 さ れ て い る 。こ う し た 社 会 か ら の 要 請 に 応 え る た め に 、本 研 究 科 で は 、 前述のとおり、臨床心理学コース、大学経営・政策コース、学校教育高度化専攻を設置す ることにより、教育体制・教育内容の充実を図ってきた。それはまた、学生のニーズを満 たすための対応でもあった。さらに、教育内容の充実を図り、学生の高度に専門的な研究 ニーズに応えるため、本研究科では現在お茶の水女子大学との間に特別聴講制度を設けて お り 、相 互 に 単 位 を 修 得 す る こ と が で き る よ う に し て い る( 資 料 21− 9:特 別 聴 講 単 位 修 得 者 数 )。 ( 資 料 21− 9 : 特 別 聴 講 単 位 修 得 者 数 ) お茶の水女子大学との学生交流 年 平成 平成 平成 平成 お茶の水女子大学の科目を特別聴講し お茶の水女子大学からの特別聴講学生数 単位申請する本学学生数 修士 4 名 修士 8 名 16 年 度 博士 1 名 修士 1 名 修士 7 名 17 年 度 博士 2 名 修士 1 名 修士 5 名 18 年 度 博士 2 名 修士 4 名 修士 3 名 19 年 度 度 社会からの要請に応えるという点では、大学経営・政策コースにおいて科目等履修制度 を 導 入 し て お り 、実 務 家 を 含 む 、大 学 経 営 に 関 心 を 持 つ 者 に 広 く 開 放 し て い る( 資 料 21− 10: 科 目 等 履 修 生 入 学 者 )。 ( 資 料 21− 10: 科 目 等 履 修 生 入 学 者 ) 科目等履修生入学者 年 度 科 目 名 入学者 平 成 17 年 度 (4 月 ∼ 9 月 ) 高 等 教 育 論 (1) 新 規:18 名 大 学 経 営 政 策 各 論 (1) 高等教育調査の方法と解析 平 成 17 年 度 (10 月 ∼ 3 月 ) 高 等 教 育 政 策 論 (1) 新 規:10 名 大 学 財 務 会 計 論 (1) 継 続:11 名 大 学 経 営 政 策 各 論 (2) 高等教育政策の計量分析 平 成 18 年 度 (4 月 ∼ 9 月 ) 高 等 教 育 政 策 論 (2) 新 規:12 名 大 学 経 営 政 策 各 論 (3) 継続:4 名 平 成 18 年 度 (10 月 ∼ 3 月 ) 大 学 経 営 政 策 各 論 (4 ) 新規:3 名 継 続:16 名 平 成 19 年 度 (4 月 ∼ 9 月 ) 高 等 教 育 論 (1) 新 規:22 名 大 学 経 営 政 策 各 論 (1) 継続:3 名 −218− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅱ 本研究科では教育研究の国際化を積極的に推進しており、各年度の本研究科における留 学 生 の 受 入 れ は 、 以 下 の と お り で あ る ( 資 料 21− 11: 留 学 生 数 の 経 年 変 化 )。 ( 資 料 21− 11: 留 学 生 数 の 経 年 変 化 ) 国 年度 中国 韓国 パラグアイ シンガポール 香港 モンゴル 台湾 タイ マレーシア ミャンマー イギリス カナダ アルジェリア トルコ アメリカ 合計 平 成 15 年 度 平 成 16 年 度 平 成 17 年 度 平 成 18 年 度 平 成 19 年 度 34 15 1 1 1 4 1 38 15 1 1 1 4 3 1 36 13 1 1 2 3 3 37 11 1 1 1 3 5 39 13 1 1 1 1 2 1 1 1 60 1 1 3 6 1 1 1 1 65 60 62 3 71 平 成 19 年 度 に は 新 た に 北 京 大 学 教 育 学 院 、 国 立 ソ ウ ル 大 学 校 師 範 学 院 、 ナ ン ヤ ン 工 科 大学教育学院(シンガポール)と国際学術交流協定を結び、学生を派遣している。 (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 大 き く 上 回 る 。 (判 断 理 由 ) 新たな社会的ニーズに応えるために、前述のとおり、新コース・専攻を新設することを 通じて、本務教員の担当する科目・学問分野の領域を広げ、より高度な専門教育を幅広く 提供することが可能となった。非常勤、客員、学内兼担の教員の協力を得て、人間と教育 とのかかわり、社会における教育の構造と機能、心身の発達と教育等の分野において卓越 した分析・研究を行う能力を形成するという、本研究科の教育研究の目的に即した、教育 課程編成を行っている。とりわけ、教育の専門性の育成においては高度な実践性が求めら れるため、知識の習得や研究能力の育成にとどまらず、実験・実習を重視したカリキュラ ム編成をとっている。これらの点から、教育内容は期待される水準を大きく上回ると判断 される。 −219− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅲ 分析項目Ⅲ 教育方法 (1 )観 点 ご と の 分 析 観点 授業形態の組合せと学習指導法の工夫 (観 点 に 係 る 状 況 ) 本研究科の科目は基本研究、特殊研究、論文指導からなる。基本研究、特殊研究の授業 形態は、講義形式のものは少なく、たとえば教員指定の書籍・文献を題材とした内容の議 論 、心 理 学 的・生 理 学 的 実 験 デ ー タ や 、実 際 の 教 育 現 場 等 の フ ィ ー ル ド 調 査 デ ー タ の 取 得 ・ 分析・発表・議論など、実際的な研究遂行能力の育成を目指した演習形式のものが多くな っている。とりわけ、実際的な教育を提供するため、外部の人材を活用した学習方法の開 発を行ってきた。 たとえば、臨床心理学コースでは、修士課程学生の臨床心理実習先として、東京大学附 属病院精神科、公立の教育相談機関、民間の相談機関や病院と連携して、大学院学生の希 望を重視しつつ、同時により多様な臨床経験を積むことができる機会を提供している。ま た 、 心 理 臨 床 に 携 わ っ て い る OB、 OG を 招 い て の ミ ニ 講 演 会 + 交 流 会 も 年 に 複 数 回 実 施 し 、 そ の 講 演 会 の 内 容 を「 臨 床 心 理 学 コ ー ス 紀 要 」に 掲 載 し て い る( 資 料 21− 12:心 理 教 育 相 談室の企画・運営による小講演会及び公開講座)。 ( 資 料 21− 12: 心 理 教 育 相 談 室 の 企 画 ・ 運 営 に よ る 小 講 演 会 及 び 公 開 講 座 ) A. 小講演会一覧 2006 年度 心理臨床実践の現場から1.「哲学・臨床心理学・精神医学」野村俊明氏(八王子医療刑務所) 心理臨床実践の現場から2.「情緒障害児短期治療施設での臨床から」高田治氏(横浜いずみ学園) 心理臨床実践の現場から3.「精神障害者福祉の現場から」進藤義夫氏(障害者支援情報センター) 2006 年度後大学事例検討会(於.東京大学) 2007 年度 「統合失調症患者の『病識』の成り立ちとその改善可能性」林直樹氏(都立松沢病院) 「発達障害の心理臨床」野村東助氏(東京学芸大学名誉教授) 「人格障害と自傷行為」林直樹氏(都立松沢病院) 2007 年度後大学事例検討会(於.東京大学) B. 公開講座 催眠現象とその治癒力(2005 年度) 子どもの SOS にこたえるために―学校と家庭が手を結ぶ(2006 年度) 若者のひきこもりと就労支援(2007 年度) また、比較教育社会学コースでは、カリフォルニア大学準教授(グローバル時代のヒト の 移 動 の 社 会 学 )、東 京 大 学( 駒 場 )文 化 人 類 学 助 教(「 学 び 」の 多 様 性 )、教 育 イ ベ ン ト ・ オ ー ガ ナ イ ザ ー ( 卒 業 生 :「 社 会 人 」 に な る と い う こ と )、 手 塚 プ ロ ダ ク シ ョ ン ・ ア メ リ カ 人 ス タ ッ フ ( ア ニ メ 作 品 の 国 際 化 )、 本 研 究 科 助 教 ( 音 楽 教 育 と 国 民 創 造 )、 明 治 学 院 大 学 教 授( 暴 力 を 考 え る )、元 コ ー ネ ル 大 学 ア ニ メ・ク ラ ブ 会 長( ア メ リ カ に お け る ア ニ メ 受 容 ) 等を授業に招き、ゲスト・スピーカーとして話をしてもらい、より実践性の高い、広範な 知 識 の 提 供 を 行 っ て い る 。こ れ ら は 、 「 各 分 野 に お い て 卓 越 し た 分 析・研 究 を 行 う 能 力 の 形 成、教育の実践に高度の専門的知見と能力をもって貢献できる人材の養成」という本研究 科の目的と合致したものである。 こ う し た 実 践 性 を 備 え た 、基 本 研 究 、特 殊 研 究 を 通 じ て 育 ま れ る 研 究 遂 行 能 力 を 背 景 に 、 各学生がオリジナリティのある修士論文、博士論文を完成させられるように行うのが論文 指導である。履修上は週一回定期的に行われる科目として設定されているが、実際には、 こうした定期的なものだけでなく、学生の研究進捗状況に応じてきめ細かな助言、指導を 適 宜 行 っ て い る ( 資 料 21− 13: 論 文 指 導 の シ ラ バ ス 例 )。 な お 、 論 文 指 導 委 員 会 の 設 置 数 の 推 移 は 資 料 21− 14 の と お り で あ る 。 −2110− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅲ ( 資 料 21− 13: 論 文 指 導 の シ ラ バ ス 例 ) 科 目 番 号 : 2 0 2-1 7 担当教員:金 子 元 講義題目:高等教育論論文指導 D i ss e r ta t i on R es e a rc h i n Hi g h er E du c a ti o n 久 単 位 数: 2 学 期: 授業科目:高等教育論論文指導 夏冬 教 育 と 経 済 発 展 に 関 連 す る 分 野 で 、大 学 院 生 が 各 自 の 研 究 を 行 な う 上 で 必 要 な 指 導 を お こ な う 。特 に 学 位 論 文の 執筆 に向 けて の準 備の 一段 階と する こと が望ま しい 。学 期の 始め に、参加 者と相 談の うえ で、学期 中 の 到達 目標 を定 める 。学 期中 はそ れに従 って 、必 要に 応じ て個 別指 導を おこ なう 。学 期の 終わり まで に参 加 者は、到達目標に応じた小論文を作成すること。 特別聴講学生(お茶の水女子大学大学院学生) 履修不可 ( 資 料 21− 14: 論 文 指 導 委 員 会 の 設 置 数 の 推 移 ) 数 平 成 15 年 6 月 1 12 月 3 平 成 16 年 6 月 7 12 月 1 平 成 17 年 6 月 8 12 月 1 平 成 18 年 6 月 5 12 月 4 平 成 19 年 6 月 5 12 月 5 シラバスについては、担当教員名、単位数・授業形態等の講義情報、講義の目的、講義 の内容、参考文献などを記載した冊子「講義計画と内容」を作成し、学生全員に配布して い る( 資 料 21− 15:シ ラ バ ス 記 載 例「 授 業 現 象 学 研 究 」)。ま た 、教 員 が 各 自 授 業 で よ り 詳 細なシラバスを配布することもある。 ( 資 料 21− 15: シ ラ バ ス 記 載 例 「 授 業 現 象 学 研 究 」) 科 目 番 号 : 205-06 担 当 教 員:中 田 基 昭 単 位 数 : 2 学期:夏 講義題目:授業現象学研究Ⅰ 授業科目:授業実践学特殊研究 Phenomenological Study on Instruction Ⅰ 本 年 度 は 、 E. フ ッ サ ー ル の 『 デ カ ル ト 的 省 察 』( E.Husserl:” Cartesianische Meditationen und Pariser Vorträge” Martinus Nijhoff)、 邦 訳 『 世 界 の 名 著 51 ブ レ ン タ ー ノ ・ フ ッ サ ー ル 』 中 央 公 論 社 所 収 、 お よ び 、『 デ カ ル ト 的 省 察 』 岩 波 文 庫 、 英 ・ 仏 訳 あ り ) を 講 読 す る 。 演 習の底本としては邦訳を使用する。 『 デ カ ル ト 的 省 察 』の 第 五 省 察 に お い て 、 フ ッ サ ー ル は 、 他 者 理 解 と は い か な る こ と で あ る の か 、そ も そ も 他 者 理 解 は い か に し て 可 能 で あ る の か を 解 明 し て い る だ け で な く 、哲 学 に お け る 他 者 問 題は、直 接的 な 他者 と の出 会い だ けで な く、自 己 や 他者 の 身体、精 神と 世 界、客 観 性等 の 問 題 と も 密 接 に 関 係 し て い る こ と を 明 ら か に し 、フ ッ サ ー ル 以 後 の 現 象 学 だ け で な く 、間 接 的 に は 、 我 々 の 素 朴 な 他 者 理 解 に も 大 き な 影 響 を 及 ぼ し て い る 。 ま た 、 本 書 は 、『 ヨ ー ロ ッ パ 諸学の危機と超越論的現象学』と共に後期フッサールの代表作である。 そこで、本演習では『デカルト的省察』の第五省察を丁寧にかつ厳密に講読することにより、 他 者 理 解 の 問 題 を 深 め る だ け で な く 、後 期 の フ ッ サ ー ル 現 象 学 に 基 づ く 授 業 研 究 の 可 能 性 を 参 加者と共に探りたい。 以下のことを参加の条件とする。 1 .フ ッ サ ー ル 現 象 学 あ る い は 現 象 学 一 般 に つ い て の 予 備 知 識 は 前 提 と し な い が 、邦 訳 書 以 外 に、 各 演 習 時 に お け る 当 該 箇 所 を 、ド イ ツ 語 原 典 か 英 訳 な い し は フ ラ ン ス 語 訳 で き ち ん と 読 ん で おくこと。 2 .『 教 育 の 現 象 学 』( 中 田 基 昭 川 島 書 店 ) の 内 容 を ほ ぼ 理 解 し て い る こ と 。 特別聴講学生(お茶の水女子大学大学院学生) 履修可 (出典:講義計画と内容) −2111− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅲ 観点 主体的な学習を促す取組 (観 点 に 係 る 状 況 ) 各 コ ー ス は 入・進 学 後 の 4 月 に ガ イ ダ ン ス を 開 き 、冊 子「 講 義 計 画 の 内 容 」に 基 づ い て 、 適切な履修モデルの呈示、学習の進め方などについての指導を行っている。入・進学後も 各学生の研究進捗状況を確認するためのミーティングが随時開かれ、指導教員をはじめ各 コースの教員から、オリジナリティの高い修士論文・博士論文の執筆という最終目標に向 けて適切な助言を得ることができる。 本 研 究 科 で は 、 修 了 に 最 低 限 必 要 な 単 位 は 、 修 士 課 程 、 博 士 後 期 課 程 と も に 20 単 位 で あ る 。ま た 、修 士 課 程 で 30 単 位 以 上 取 得 し た 場 合 、超 過 単 位 の う ち 10 単 位 を 限 度 と し て 博士後期課程の単位とすることができる。従って、単位取得上の義務が比較的少なく、柔 軟なカリキュラム編成をとっているのは、教育研究が多様な領域にまたがるという特徴を 考慮し、学生自身が主体的に多様な分野の研究に触れる機会を保障するためである。と同 時に、講義時間外のデータ解析、修士論文・博士論文の執筆など、学生自身の研究活動に 十分な時間を費やすことができるようになっている。 さらには、こうしたカリキュラム上の工夫にとどまらず、各コースが提供するフィール ドワークや実験・実習を重視した授業の提供を通じて、大学院学生の主体的な学習を促す 取 組 が 行 わ れ て い る( 資 料 21− 16:「 実 践 的 教 育 」特 徴 的 な 事 例 )。な か で も 、教 職 開 発 コ ースでは、ビデオ記録を用いた授業研究のためのケースメソッドが採用され、より実践性 の高い教育を行っている。 ( 資 料 21− 16:「 実 践 的 教 育 」 特 徴 的 な 事 例 ) コース 教育学 比較教育社会 学 教育心理学 教職開発 実践的教育の例 コ ー ス で 毎 年 発 行 し て い る『 研 究 室 紀 要 』に 、学 部 ・ 大 学 院 の 全 演 習 に つ い て 「 ゼ ミ 動 向 」を 掲 載 し て い る 。こ れ は 学 生 が 主 体 的 に 、学 生 の 視 点 か ら 各 演 習 の 内 容 を ふ り 返 り 、演 習 の 問 題 設 定 か ら 討 論 の 経 過 、共 有 さ れ た 知 見 と 残 さ れ た 課 題 、教 員 の ス タ ン ス に 至 る ま で を 批 判 的 に 吟 味 し た も の と な っ て い る 。こ の「 ゼ ミ動向」から教員はさまざまな示唆を受け、次年度の授業に役立てている。 授 業 に お い て 、 文 献 購 読 に 際 し「 購 読 票 」 と い う 所 定 の 様 式 を 用 意 し 、 そ れ に ① 文 献 の 概 要 、② 文 献 へ の 肯 定 的 評 価 、③ 文 献 へ の 否 定 的 評 価 、④ 学 生 自 身 の 研 究関心に役立つ部分、について事前に記入させて授業の際に受講者全員で共有 し 、「 購 読 票 」 の 内 容 を 踏 ま え て 討 論 す る こ と に よ り 、 主 体 的 か つ 分 析 的 な 文 献 の読解力を形成している。 「 教 授 ・ 学 習 過 程 」に お い て は ,受 講 者 が 選 ん だ テ ー マ に つ い て 文 献 レ ビ ュ ー し ,そ の 成 果 を ,学 会 等 で の 講 演 と 同 じ 形 式 で プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン し て い る 。レ ビ ュ ー は 単 な る 文 献 の ま と め で な く ,主 体 的 に 構 成 し ,主 張 す る 内 容 と し ,最 終 的 に は 論 文 化 す る こ と を 目 標 と し て い る 。ま た ,効 果 的 な プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 法 を身につけることも重要な狙いとしている。 新 し い 授 業 の 試 行 と し て 、専 門 家 教 育 の 方 法 で あ る ケ ー ス・メ ソ ッ ド を 導 入 し 、 学校の教室現場のビデオ記録を視聴し討論させる方式で一年間の夜間コースの ゼ ミ ナ ー ル を 行 っ て い る 。こ の 方 法 は 理 論 と 実 践 の 統 合 を 志 向 す る 学 校 教 育 高 度 化専攻のカリキュラムの中核となっている。 さ ら に 、高 度 の 教 育 専 門 家 教 育 を 推 進 す る た め 、カ リ キ ュ ラ ム の 3 分 の 1 を 実 践 的 な 事 例 研 究 と 実 地 研 究 で 組 織 し て 、理 論 と 実 践 の 統 合 を は か っ て い る 。事 例 研究においては、学校の授業や教育委員会の活動などの記録にもとづくケース・ メ ソ ッ ド に よ る ゼ ミ ナ ー ル を 行 い 、実 地 研 究 に お い て は 、個 々 の 院 生 の 計 画 に も と づ い て 学 校 や 教 育 委 員 会 の 現 場 に お い て 実 習 、調 査 活 動 を 行 い 、報 告 書 を 作 成 する活動を導入している。 大学院学生の主体的な学習をより充実させるため、研究設備として重要な役割を有する 図 書 室 に つ い て は 、こ の 4 年 間 、蔵 書 数 、書 架 ス ペ ー ス 共 に 着 実 に 増 大 さ せ 、研 究 の 円 滑 な 推 進 の 基 盤 を 整 備 ・ 充 実 す る 努 力 を 続 け て い る ( 資 料 21− 17: 図 書 室 の 充 実 )。 −2112− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅲ ( 資 料 21− 17: 図 書 室 の 充 実 ) 図書室面積 蔵書数 2007年度末 2007年5月 2006年度末 和 2005年度末 2003年5月 洋 2004年度末 1996年5月 2003年度末 1995年5月 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 (冊) *法人化に伴い蔵書冊数を資産の数に変更したため、 20 04 年 度 の 蔵 書 数 は 前 年 度 よ り 減 少 0 200 400 600 800 1,000 (㎡) (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 大 き く 上 回 る 。 (判 断 理 由 ) 本研究科の授業構成は、教育研究の多領域性と実践性、入学してくる学生の背景が教育 研究だけに限らないことへの対応といったことを考慮に入れ、フィールドワークや実験・ 実習に関連する授業の充実、論文執筆のための個別指導の機会の提供、多様な分野の外部 人材を活用した学習方法の開発など、実際に研究者として活躍するために必要な能力の育 成を目指したものとなっている。また、このような研究者養成指向のカリキュラムに余裕 をもって対応できるように、柔軟なカリキュラム編成が大学院学生のニーズに応じて行え るようにしている。さらに、論文指導ゼミのように、学生の主体的な学習を支援するため の多様な情報提供を、学部・コース・教員の各レベルで精力的に行っている。これらのこ とから、本研究科の教育方法の水準は期待される水準を大きく上回るものと判断した。 −2113− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅳ 分析項目Ⅳ 学業の成果 (1 )観 点 ご と の 分 析 観点 学生が身に付けた学力や資質・能力 (観 点 に 係 る 状 況 ) 本 研 究 科 の 修 士 と 博 士 の 学 位 取 得 状 況 は 資 料 21-18 と 資 料 21-19 の と お り で あ る 。 修 士 課程については、法人化以降、とくに、学校教育高度化専攻が新設されたこともあり、取 得者数が大幅に増加している。 博士学位取得者数も法人化以降増加しており、これは、論文指導の強化の現れと見るこ と が で き る 。課 程 博 士 取 得 の 割 合 を 少 な く と も 30∼ 50% に ま で 高 め る の が 当 面 の 目 標 で あ るが、現時点ではまだ十分とはいえない。ただし、学会発表、論文執筆などにおいては、 博士課程在学者はかなり健闘している。学会では、優秀な論文に対して賞を授与している ところがあるが、心理学関係の例として、教育心理学コースと臨床心理学コースの受賞者 を 別 添 資 料 21− 2 ( P21− 20) に 掲 載 す る 。 こ れ は 、 学 生 が 身 に つ け た 学 力 や 研 究 能 力 が 極めて高いことの現れと見ることができる。 ( 資 料 21− 18: 修 士 課 程 の 学 位 取 得 者 数 ) 平 成 15 年 度 総合教育科学専攻 学校教育高度化専 攻 平 成 16 年 度 49 51 平 成 17 年 度 59 平 成 18 年 度 60 平 成 19 年 度 53 9 24 ( 資 料 21− 19: 博 士 課 程 の 学 位 取 得 者 数 ) 課程博士 論文博士 計 観点 平 成 15 年 度 10 人 2 12 平 成 16 年 度 6 1 7 平 成 17 年 度 11 4 15 平 成 18 年 度 14 4 18 平 成 19 年 度 11 3 14 学業の成果に関する学生の評価 (観 点 に 係 る 状 況 ) 本研究科では大学院学生を対象にした授業評価はこれまで実施していないが、個別の授 業について大学院学生が書いたレポート等を見ると、彼らが授業に満足感を抱いているこ とが読み取れる。例えば、身体教育学コースで行なっている集中講義形式のゼミ合宿で提 出されたレポートでは、彼らが授業を通して学問や研究を進める上での有益な情報を得て い る 事 が 分 か る ( 別 添 資 料 21− 3 : 身 体 教 育 科 学 特 論 レ ポ ー ト 、 P21− 21)。 (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 ) 期 待 さ れ た 水 準 を 大 き く 上 回 る 。 (判 断 理 由 ) 学位取得者数の割合については、さらに高めていく必要があるが、大学院学生への指導 が充実し、論文執筆への支援の充実を図ってきた結果、博士課程での学位取得者数はそれ 以前に比べ確実に増加している。また、学会での発表や論文執筆においては、博士課程在 学者の健闘が目覚ましく、学会で種々の受賞を果たしている。さらに、学生のレポートか らは、彼らが授業を通して学習や研究を進める上での資質・能力を身につけていることが 伺える。これらの点から、学業の成果について、期待される水準を大きく上回ると考えら れる。 −2114− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅴ 分析項目Ⅴ 進路・就職の状況 (1 )観 点 ご と の 分 析 観 点 卒 業 (修 了 )後 の 進 路 の 状 況 (観 点 に 係 る 状 況 ) 本 研 究 科 の 修 了 生 ( 修 士 ) の 進 路 は 、 平 成 19 年 資 料 に よ る と 、 博 士 課 程 に 進 学 す る 者 が 49% 、 就 職 す る 者 が 28% だ っ た 。 博 士 課 程 進 学 者 は 、 こ の 4 年 ほ ど 毎 年 30 数 名 と 一 定 しており、その一方で修士課程修了生の数は増えているため、博士課程への進学率は、平 成 16 年 度 に 68% だ っ た も の が 、 平 成 17 年 度 66% 、 平 成 18 年 度 47% 、 平 成 19 年 度 49% へ と 減 少 、 反 対 に 就 職 率 が 、 15% ( 平 成 16 年 度 )、 25% ( 平 成 17 年 度 )、 40% ( 平 成 18 年 度 )、28%( 平 成 19 年 度 )と 漸 増 し て い る 。進 学 先 と し て は 、100% 近 く の 者 が 本 研 究 科 博 士 課 程 に 進 ん で い る が 、年 に よ っ て は 、他 大 学 進 学 者 も 出 て い る( 資 料 21− 20: 大 学 院 修 了 者 数 ・ 修 了 後 の 状 況 ( 修 士 ))。 ( 資 料 21− 20: 大 学 院 修 了 者 数 ・ 修 了 後 の 状 況 ( 修 士 )) 年 度 分 修了者数 全 体 進学者数 本 学 他大学 就職者数 その他 区 平 成 16 年 度 平 成 17 年 度 平 成 18 年 度 平 成 19 年 度 51 35 32 3 8 8 59 39 39 69 33 33 15 5 28 8 77 38 36 2 22 17 就 職 先 と し て は 、 資 料 21-21 の と お り で あ る 。 ( 資 料 21− 21: 大 学 院 修 了 後 の 就 職 者 の 就 職 状 況 ( 修 士 ・ 博 士 )) 修士課程修了者の産業別就職者数 産業別 農業、林業、漁業 鉱業 建設業 製造業 電気・ガス・熱供給・水道業 情報通信業 運輸業 卸売業・小売業 金融業・保険業 不動産業 飲食店・宿泊業 医療,福祉 教育・学習支援業 複合サービス事業 サービス業 公務 上記以外のもの 計 平成 16 年 度 平成 17 年 度 平成 18 年 度 1 2 (1) (1) 1 (1) 2 (1) 2 (1) 4 (2) 12 (2) 2 1 (1) (1) (4) 12 1 (7) 8 (5) 8 1 2 15 平成 19 年 度 2 (2) 4 (3) 1 1 (1) 13 (8) 2 (1) (2) 2 (1) (8) 28 (11) 25 (16) ( )内数字は、女子で内数 博士課程修了者の産業別就職者数 産業別 平成 16 年 度 平成 17 年 度 農業、林業、漁業 鉱業 建設業 製造業 電気・ガス・熱供給・水道業 情報通信業 平成 18 年 度 平成 19 年 度 1 −2115− 東京大学教育学研究科 分析項目Ⅴ 運輸業 卸売業・小売業 金融業・保険業 不動産業 飲食店・宿泊業 医療,福祉 教育・学習支援業 複合サービス事業 サービス業 公務 上記以外のもの 計 1 12 (5) 2 4 19 1 12 (1) (5) 10 (3) 1 (1) 1 6 (2) 1 (5) 14 ( (6) 11 (4) 8 (2) )内数字は、女子で内数 修士課程修了者については、修了年度に進学も就職もしなかった者が例年数名いるが、 公務員試験や博士課程進学準備を進めるものも少なくない。少子化という社会変動のあお りを受け、国公私立の大学教員に就職することが厳しくなった事情は随所で指摘されると おりだが、実質的には修了生の多くの者が希望通りの道に進めたものと考える。このよう な進路状況を見ると、教育研究機関、教育行政、教育・学習支援業、マスコミを含む情報 通信業やサービス業等において、広義の教育現象について高度な専門性を備えて活躍でき る人材を育てるという本研究科の教育目的がよく実現されているということができる。 博 士 課 程 修 了 者 に つ い て は 、 ほ と ん ど が 研 究 者 ( 大 学 ・ 研 究 所 等 )、 専 門 職 ( 心 理 カ ウ ンセラー、障害児教育等)となっており、より高度な専門性を生かした職に就いていると い え る 。ま た 、高 い 研 究 能 力 を 認 め ら れ た 証 明 と し て 、日 本 学 術 振 興 会 研 究 員 の PD へ の 採 用 が あ る 。 平 成 16 年 度 3 名 、 17 年 度 1 名 、 18 年 度 2 名 、 19 年 度 1 名 が 採 用 さ れ て い る 。 観点 関係者からの評価 (観 点 に 係 る 状 況 ) 大学院修了者の就職活動は、ほぼ全面的に修了生個々人の努力にゆだねられているが、 多くの者が優秀な就職先を見出していくようである。本研究科修了者は、幅広い教養の上 に高い専門性を身につけ、教育界の創造的発展に寄与するところが大である旨のご意見を 各関連機関から多く頂戴している。とくに、教育調査、社会調査などを実施することの多 い教育産業や一般企業の調査部門からは、調査の企画、データ収集、分析などにおいて、 本研究科修了者は優れた資質・能力を備えていると評価される。これは、本研究科がカリ キュラム上重視し、育成しようとしてきた資質・能力とも合致している。 (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 大 き く 上 回 る 。 (判 断 理 由 ) 修士課程修了者の進路状況を見ると、教育研究機関、教育行政、教育・学習支援業、マ スコミを含む情報通信業やサービス業等において、広義の教育現象について高度な専門性 を備えて活躍できる人材を育てるという本研究科の教育目的がよく実現されているという ことができ、関係者の期待に応える進路状況であるといえる。また、博士課程修了者につ い て は 、ほ と ん ど が 研 究 者( 大 学・研 究 所 等 )、専 門 職( 心 理 カ ウ ン セ ラ ー 、障 害 児 教 育 等 ) となっており、より高度な専門性を活かした職に就いている。高い研究能力を備えた研究 者を送り出している点は、本研究科に対する大学関係者並びに社会からの期待にも応える ものとなっている。これらのことから、卒業生の進路・就職の状況は関係者の期待を大き く上回る水準にあると考えられる。 −2116− 東京大学教育学研究科 Ⅲ 質の向上度の判断 ① 事 例 1 「 新 コ ー ス 、 新 専 攻 の 新 設 に よ る 指 導 体 制 の 充 実 」 (分 析 項 目 Ⅰ ) (質の向上があったと判断する取組) 本 研 究 科 で は 、大 学 院 重 点 化 当 時 の 1 専 攻 6 コ ー ス 体 制 か ら 、臨 床 心 理 学 コ ー ス の 新 設 、 大学経営・政策コースの新設、さらには、学校教育高度化専攻の新設により、大きく充実 した。これらは、それぞれ従来の教育心理学コース、比較教育社会学コース、学校教育学 コ ー ス か ら 独 立・発 展 し た も の で あ り 、こ れ に よ っ て 、開 設 科 目 の 種 類 と 教 員 数 が 増 加 し 、 結果として、学生や社会の多様なニーズに応じたカリキュラムを提供し、より丁寧な指導 体制をとることができるようになった。 ② 事 例 2 「 学 内 兼 担 、 客 員 教 員 、 単 位 互 換 に よ る 内 容 の 充 実 」 (分 析 項 目 Ⅱ ) (質の向上があったと判断する取組) 本研究科では、非常勤講師のほか、学内兼担制度によって他学部の教員による教育や研 究指導の充実をはかっている。また、学外からも連携併任教員を招聘することによって、 高 度 な 専 門 性 を 備 え た 研 究 指 導 を 実 現 し て い る( 資 料 21− 22:兼 務 教 員・客 員 教 員 数 の 推 移 )。さ ら に 、お 茶 の 水 女 子 大 学 大 学 院 と の 間 で 、単 位 互 換 制 度 を 設 け て お り 、よ り 一 層 豊 富な授業内容を学生に提供できるようにしている。法人化以降、これらの制度が有効に活 用されるようになり、教育の質の向上がはかられたと見ることができる。 ( 資 料 21− 22: 兼 務 教 員 ・ 客 員 教 員 数 の 推 移 ) 各 年 度 4 .1 現 在 年度 所属 平 成 17 年 度 教授 助教授 平 成 18 年 度 講師 教授 助教授 大学院人文社会系研究科 准教授 1 大学院理学系研究科 1 1 大学院総合文化研究科 1 大学院数理科学研究科 大学院情報学環 平 成 19 年 度 教授 1 1 1 1 1 京都大学 1 名古屋大学 1 信州大学 1 福井大学 1 1 早稲田大学 1 慶應義塾大学 2 2 順天堂大学 1 1 1 日本女子大学 1 1 1 1 1 立教大学 1 国際基督教大学 統計数理研究所 財務・経営センター 1 1 1 1 メ デ ィ ア 教 育 開 発 セン タ ー 1 都立松沢病院 1 長谷川病院 合 1 計 9 1 2 1 10 −2117− 1 11 2 東京大学教育学研究科 ③ 事 例 3 「 シ ラ バ ス の 充 実 に よ る 講 義 計 画 の 向 上 と 学 生 へ の 周 知 」 (分 析 項 目 Ⅲ ) (質の向上があったと判断する取組) 法人化以降、シラバス「講義計画と内容」の充実に力を入れている。以前は、授業の内 容や評価方法があらかじめ学生に周知されない授業もあり、実際にいくつかの授業に出て みないと、履修するかどうかの判断がつきにくいということが少なくなかった。このこと は、他の授業に出ている間に講義が進行してしまって、あとから内容が理解しにくくなっ たり、履修を決定してからも期待した内容とは異なってくるといった問題を生んでいた。 そこで、法人化以降は、教員に対して、シラバスの内容を具体的なものにするような依頼 を徹底している。それにより、教員側としては、授業を計画的に行うようになり、学生側 も授業を適切に選択できるようになったという効果が見られる。 ④ 事 例 4 「 研 究 指 導 体 制 の 充 実 に よ る 学 位 取 得 数 の 増 加 」 (分 析 項 目 Ⅳ ) (質の向上があったと判断する取組) 指導体制の強化、教育内容の充実により、専任教員は大学院学生への研究指導に一層重 点を置くことができるようになった。具体的には、博士論文指導委員会が設置されるよう に な り 、提 出 前 の き め 細 か な 指 導 が な さ れ る よ う に な っ た 。ま た 、21 世 紀 COE プ ロ グ ラ ム に積極的に大学院学生を参加させることを通じて、実効性の高い研究指導が行えるように なった。こうした結果、博士課程の学位取得者は着実に増加しつつある。学会における受 賞などを見ても、学生たちが非常に高い研究能力を有していることが明らかである。 −2118−