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心臓手術時の大量投与症例における 重篤な痙攣発現について

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心臓手術時の大量投与症例における 重篤な痙攣発現について
心臓手術時の大量投与症例における
重篤な痙攣発現について
2012 年 10 月
第一三共株式会社
心臓手術時の止血を目的としてトランサミン注の大量投与が行われる際に、因果関係は明確
ではないものの、重篤な痙攣の発生が 10 例報告されております。また海外においても、心臓
手術後の痙攣発作と高用量のトラネキサム酸投与との関連を示唆する文献が 3 件報告されてお
ります。
本情報をご確認いただき、トランサミン注を心臓手術時にご使用の際には、重篤な痙攣
の発現にご留意くださいますようお願い申し上げます。
−1−
≪国内症例報告≫
本剤の大量投与中に重篤な痙攣を来した症例が、2012 年 8 月までに 10 例報告されてい
ます。全症例とも心臓手術時の止血を目的として投与されており、投与量は 8 ~ 10g ※でした。
また、いずれの症例も高齢者あるいは腎不全のある患者でした。
なお、全ての症例において適切な治療により回復しています。
※投与量不明の症例を除く
■ 本剤の大量投与中に重篤な痙攣を来した症例
本剤
投与量
No.
性
年齢
1
女性
80 歳代
8g
2
男性
60 歳代
10g
3
男性
70 歳代
4
女性
5
転帰
術式
合併症
回復 大動脈弁置換術
高血圧、喫煙者
回復 上行大動脈人工血管置換術
飲酒、喫煙者
8g
回復 僧帽弁置換術、三尖弁形成術
高血圧、飲酒、喫煙者
70 歳代
8g
回復 部分弓部大動脈人工血管置換術
脳梗塞、高血圧
男性
80 歳代
8g
回復 大動脈弁置換術
高血圧、糖尿病、脳梗塞、喫煙者
6
女性
70 歳代
8g
回復 左房心臓腫瘍切除術
高血圧、甲状腺機能低下症、
ネフローゼ症候群
7
女性
60 歳代
10g
回復 大動脈弁置換術
高血圧
8
男性
50 歳代
不明*
回復
大動脈弁・僧帽弁置換術、
三尖弁形成術
血液透析
9
女性
80 歳代
不明*
回復
大動脈弁置換術、
冠動脈バイパス手術
不明
10
男性
80 歳代
8g
回復 大動脈弁置換術
尿細管間質性腎炎、副腎腺腫、
高アルドステロン症、高血圧
*:本剤を大量使用した旨の記載あり
−2−
≪海外関連文献報告≫
心臓手術後の痙攣発作と高用量のトラネキサム酸(TA)投与の関連について、以下の文献が
報告されております。
■ 冠動脈バイパス術同時施行または単独で大動脈弁置換を行った同一施設内の患者 682 例の
retrospective cohort study を実施した。2008 年 3 月以前に手術を受けた患者は術中
に TA(100mg/kg、n=341)、2008 年 3 月以後に手術を受けた患者はイプシロンア
ミノカプロン酸(EACA)(50mg/kg で導入後、25mg/kg/ 時、体外循環時に 5g 追加、
n=341)を投与した。術後 24 時間以内に臨床的に診断された全身性発作は、EACA 患者
に比べ TA 患者でより多く認められた
(TA 患者 22 例 [6.4% ] vs EACA 患者 2 例 [0.6% ]、
p<0.001、95% CI 3.1-8.5%)1)。
■ 心 肺バイパス手術後患者の早期痙攣発作に関連するリスク因子を多変量ロジスティック解
析モデルにより検討した。2004 ~ 2009 年に手術を受けた患者 8,929 例中 119 例
(1.3%)で早期痙攣発作が発現し、そのうち 111 例で TA が投与されていた。多変量
解析では次の5つの変数が早期発作の独立予測因子であった : 75 歳超(調整後オッズ比
[OR] 2.1、p=0.0001)、開胸術(OR 12.0、p<0.0001)
、術前の腎不全(OR 3.2、
p<0.0001)、末梢血管疾患(OR 1.8、p=0.02)および TA 総投与量 100mg/kg 以上
(OR 2.6、p<0.0001)。痙攣発作リスクと TA には用量依存性がみられ、投与量が多いほ
ど痙攣発作リスクが上昇した 2)。
■ 2003 年 4 月~ 2009 年 12 月の心臓手術を施行した患者について、多変量回帰分析を用
いて痙攣発作の危険因子を評価した。痙攣発作は 56/5,958 例(0.94%)で発現し、う
ち TA 投与(1.4 ~ 5.8g)が確認できた症例は 49 例であった。TA 使用は痙攣発作のリ
スク増加と関連していた(オッズ比 7.4、95% CI 2.8-19.3、P<0.001)
。痙攣発作の
有意な関連因子は、TA 曝露、APACHE II スコア 20 超、術前の心停止、術前の神経疾患、
開胸術、人工心肺使用時間 150 分超および心臓手術歴であった。痙攣発作の発現率は TA
非投与群で 0.2%、投与群で 1.47%であった。TA 投与以外の 6 つの危険因子をすべて持
たない患者 2,786 人における TA 投与の有無と痙攣発作発現数を比較したところ、TA 非
投与の 1,190 例では痙攣発作は認められず、TA 投与の 1,596 例のうち 3 例で痙攣発作
が認められた。また、2010 年以降の患者において TA を減量(<45mg/kg)したところ、
痙攣発作の発現率は低下した 3)。
【引用文献】
1)Keyl C, et al. : Eur. J. Cardiothorac. Surg. 2011;39:e114-121
2)Kalavrouziotis D, et al. : Ann. Thorac. Surg. 2012;93:148-154
3)Manji RA, et al. : Can. J. Anesth. 2012;59:6-13
−3−
【効能・効果】【用法・用量】【使用上の注意】
バトロキソビン
【禁忌】
(次の患者には投与しないこと)
1 .トロンビンを投与中の患者(「相互作用」の項参照)
2 .本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
【効 能 ・ 効 果】
○全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向
(白血病、再生不良性貧血、紫斑病等、及び手術中・術後の異常出血)
○局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
(肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血)
○下記疾患における紅斑・腫脹・そう痒等の症状
湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹
○下記疾患における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状
扁桃炎、咽喉頭炎
○口内炎における口内痛及び口内粘膜アフター
【用 法 ・ 用 量】
トラネキサム酸として、通常成人 1 日 250 ~ 500mgを 1 ~ 2 回に分けて静脈
内又は筋肉内注射する。術中・術後等には必要に応じ 1回 500 ~ 1,000mgを
静脈内注射するか、又は500 ~ 2,500mgを点滴静注する。
トランサミン注 5%:通 常成人 1 日 5 ~ 10mL(1 ~ 2 アンプル)を 1 ~ 2回
に分けて静注又は筋注する。術中・術後等、必要に
応じ1回10 ~ 50mL(2 ~ 10アンプル)を点滴静注する。
トランサミン注10%:通常成人 1日 2.5 ~ 5mLを 1 ~ 2回に分けて静注又は
筋注する。術中・術後等、必要に応じ 1 回 5 ~ 10mL
を静注するか、又は5 ~ 25mLを点滴静注する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
【使 用 上 の 注 意】
1 .慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)血 栓のある患者(脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎等)及び血栓症が
あらわれるおそれのある患者[血栓を安定化するおそれがある。
]
(2)消費性凝固障害のある患者(ヘパリン等と併用すること)
[血栓を安定
化するおそれがある。]
(3)術後の臥床状態にある患者及び圧迫止血の処置を受けている患者[静
脈血栓を生じやすい状態であり、本剤投与により血栓を安定化するお
それがある。離床、圧迫解除に伴い肺塞栓症を発症した例が報告され
ている。]
(4)腎不全のある患者[血中濃度が上昇することがある。]
2 .相互作用
(1)併用禁忌(併用しないこと)
薬剤名等
トロンビン
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
血栓形成傾向があらわれる 血栓 形成を促進する作用
おそれがある。
があり、併 用により血 栓
形成傾向が増大する。
(2)併用注意(併用に注意すること)
薬剤名等
ヘモコアグラーゼ
血栓・塞 栓 症を起こすおそ バトロキソビンによって生
れがある。
成するdesAフィブリンポリ
マーの分解を阻害する。
凝固因子製剤
口腔等、線溶系活性が強い 凝固因子製剤は凝固系を
エプタコグアルファ 部位では凝固系がより亢進 活性化させることにより止
等
するおそれがある。
血作用を発現する。一方、
本剤は線溶系を阻害する
ことにより止 血作用を発
現する。
3 .副作用
副作用発生状況の概要
総 症例数 2,972 例中報告された主な副作用は悪心 0.07%( 2 件)、嘔吐
0.17%( 5 件)、食欲不振0.03%( 1 件)、下痢0.07%( 2 件)、眠気0.03%( 1
件)等であった。
〔文献集計による(再審査対象外)〕
( 1)重大な副作用(頻度不明注))
ショック:ショックを起こすことがあるので観察を十分に行い、異常
が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
( 2)その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので、異常が認められた場合に
は必要に応じ投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
0.1 ~ 1%未満
0.1%未満
過敏症
そう痒感、発疹等
消化器 悪心、嘔吐
食欲不振、下痢
一過性の色覚異常
(静脈内注射時)
眼
その他
頻度不明注)
眠気、頭痛
注1)自発報告又は海外において認められている副作用のため頻度不明。
4 .高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。
5 .適用上の注意
( 1)静
脈内注射時:ゆっくり静脈内に投与すること(急速に投与すると、
まれに悪心、胸内不快感、心悸亢進、血圧低下等があらわれることが
ある)
。
( 2)筋
肉内注射時:筋肉内注射にあたっては、組織・神経等への影響を避
けるため下記の点に注意すること。
1 )注射部位については、神経走行部位を避けて慎重に投与すること。
2 )くりかえし注射する場合には、左右交互に注射するなど、同一部位
を避けること。なお、低出生体重児・新生児・乳児・幼児・小児に
は特に注意すること。
3)注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、
直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。
( 3)開
封時:アンプルカット時の異物混入を避けるため、エタノール消毒
綿等で清拭しカットすること。
6 .その他の注意
イヌに長期・大量投与したところ網膜変性があらわれたとの報告がある。
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
大量併用により血栓形成傾 ヘモコアグラーゼによって
向があらわれるおそれがある。 形成されたフィブリン塊は、
本剤の抗プラスミン作用に
よって比 較 的 長く残 存し
閉塞 状態を持 続させるお
それがあると考えられている。
−4−
TS7AT0101
2012 年 9 月作成
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