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フランチャイズと商店街

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フランチャイズと商店街
フランチャイズ店と商店街
私が専門とする分野はフランチャイズビジネスです。主にフランチャイズチェーンを立ち上げようと
する企業を指導し、コンサルティング報酬を得ることで生計を立てています。ここしばらくは、フランャ
イズ以外の仕事はほとんどやったことがないといってもいいかもしれません。
私は中小企業診断士という資格を持っています。中小企業診断士にとって商店街との係わりは
切っても切れないほどです。私の専門分野の仕事(フランチャイズ)と商店街はほとんど無縁と思わ
れがちですが、実はまったく違います。今や、商店街とフランチャイズが切っても切れない関係にな
っています。
フランチャイズの現状
フランチャイズを正しく理解している方はほとんどいません。小売業や飲食業に詳しいはずの中
小企業診断士でも似たようなものです。
まず、フランチャイズの現状について説明します。下記の表は、日本フランチャイズチェーン協会
が公表している統計資料です。いうまでもありませんが、ここでいう店舗数と売上高は、本部が運営
する直営店と加盟者店舗の合計をさします。
図表 1 フランチャイズのビジネス規模(2012 年度)
チェーン数
1,286
店舗数
+26
245、263
売上高
+4.7%
22兆2869億円
+3.1%
出展:日本フランチャイズチェーン協会(カッコ内は昨年度対比)
フランチャイズは 1963 年頃に日本に導入されました。以来 50 年間、日本経済が幾多の不況やデ
フレの影響で停滞を余儀なくされている中でも、順調に勢力を拡大し続けたのがフランチャイズで
す。フランチャイズの成長率は我が国GDPの伸び率をはるかに凌いでいます。
2012 年度のフランチャイズ店舗数は 1 年前より 4.7%増加して 24 万 5 千店となりました。日本国
内の小売商店数がこの 30 年間で約 37%減少(経済産業省:商業統計)し、今後も減少が続くと考え
られることと比べると、フランチャイズビジネスの堅調さが際立ちます。
フランチャイズの売上高は 22 兆円に達しました。22 兆円といってもピンときませんが、日本一の企
業規模を誇るトヨタ自動車の連結売上高に相当します。もっとわかりやすく説明すると、トヨタ自動車
が世界中で1千万台の自動車を1台当たり220万円で売った金額が 22 兆円なのです。フランチャイ
ズが日本経済の中で欠かせない存在であることは間違いありません。
パールセンター商店街のフランチャイズ店
実は、フランチャイズは皆さんがお考え以上に私たちの生活の身近にあります。ここで、フランチ
ャイズが地域や商店街に溶け込んでいるという実例を紹介することにします。杉診のメンバーにも馴
染み深い阿佐谷バールセンター商店街に、フランチャイズ店がどれだけあるかと調べてみました。
並び順は、概ね、JR 阿佐ヶ谷駅から杉並区役所方向になっています。
図表 2 パールセンター商店街のフランチャイズ店
店舗名
業種
店舗名
業種
マクドナルド
ハンバーガー
Aprecio
ネットカフェ
せいや
ラーメン
F&F
自然食品小売
ローソン
コンビニエンスストア
上島珈琲店
喫茶店
銀座ルノアール
喫茶店
COPO
靴下専門店
サンマルクカフェ
ベイカリーカフェ
VICTORY
サンドイッチ
鎌倉パスタ
パスタレストラン
保険あんしん館
保険代理店
しゃぶしゃぶ温野菜
しゃぶしゃぶ
ASH
美容院
サンジェルマン
ベーカリー・喫茶
モード・オフ
中古衣類買取・販売
磯丸水産
鮮魚居酒屋
リラックス
整体・マッサージ
サンドラック
ドラッグストア
31アイスクリーム
アイスクリーム
坐和民
居酒屋
マツモトキヨシ
ドラッグストア
Chiyoda
靴小売
大戸屋
定食
キャンドウ
100 円ショップ
ドトールコーヒー
セルフ式喫茶店
星乃珈琲店
喫茶店
ブックオフ
中古書籍買取・販売
日高屋
中華・定食
ダイソー
100 円ショップ
築地日本海
寿司・和食
KALDI
珈琲豆、輸入食品
庄や
居酒屋
メガネストア
メガネ小売
はなまるうどん
セルフ式うどん
保険ホットライン
保険代理店
Dr.ストレッチ
整体・マッサージ
55STATION
DPE
参考資料:FRANJA2013 年 11 月号(トーチ出版)
さあ、どうでしょうか。「この店もフランチャイズなの?」と驚いた方も多いはず。フランチャイズはコ
ンビニやファストフード店だけではないのです。フランチャイズ店は皆さんがお考え以上に商店街や
地域に溶け込み、お客様から支持されています。
店舗数でみるとパールセンター内店舗の約 5 分の 1 がフランチャイズ店ということになります。そし
て、これら店舗のほとんどが繁盛店といえるでしょう。そのため、売上規模で考えたら、フランチャイ
ズ店のシェアはさらに大きくなるはずです。
また、フランチャイズ店は、小売業、外食業、サービス業とその業種は多岐にわたり、まさに時代
が求めるニーズを取り込む形で出店されています。おそらく、パールセンター商店街にこれらフラン
チャイズ店がなかったとしたら、パールセンター商店街の魅力は半減するでしょう。
フランチャイズに対する正しい認識を!
フランチャイズに対する評価は決して芳しいものではありません。商店街の会長さんからは、「フラ
ンチャイズ店は商店街に出店して欲しくない」という声を耳にすることがあります。フランチャイズは
本部が加盟者から利益を搾取するための手段だから、フランチャイズに対する法的規制を強化す
べきだという意見を述べる人もいます。
私は、こうした方々にお会いした時は、以下のように反論しています。
フランチャイズ店は本部が開発した成功ビジネスモデルをパッケージ化したもの。だから、フラン
チャイズ店の業態が個人の店のそれより優れているのは当然です。商店街のフランチャイズ店はた
くさんのお客様を集め、商店街の活性化にも役に立っています。フランチャイズ店と共存共栄するこ
とを考えてください……と。
仮に、フランチャイズが、本部が儲けるためだけの手段であったとしたら、フランチャイズが今の規
模にまで成長できたでしょうか。そんなことは絶対にありませんよ……と。
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