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pdf-2.3Mb - 有機・高分子物質専攻
東京工業大学大学院理工学研究科 Department of Organic and Polymeric Materials Tokyo Institute of Technology 有機・高分子物質専攻にようこそ 本専攻は 、材料工学を基礎においた“有機材料工学科”と応用化学系3学科を母体 とした“高分子工学科”が大学院で融合し、平成 11 年に改組されて現在のかたちとな りました。本専攻の講座群は、その名の通り、有機低分子物質・高分子物質の合成、 反応、構造、物性、機能、加工について、広い範囲から研究することを目的として組 織されています。 遠くギリシ ャ・ローマ の時 代から 、文明の基礎となる都市産業、そして人々の暮らし は、種々の材料を抜きにしては語れません。“石の文化”であるヨーロッパに対し、“木 と紙の文化”である日本そしてアジアでは、有機・高分子物質が、われわれの身近な ところで常に重要な位置を占めてきました。 現在 社会において も、身の回りに有機・高分子物質でないものを探すのが難しいほ どです。もちろん、われわれの身体 そのものが巨大な有機・高分子物質の高度組織 体にほかなりません。しかし、このように身近な物質も、学問の一分野として成立した のはたかだか数十年前に過ぎません。それまでは、材料として重宝されながらも(例 えば、衣服や住居材料など)、高分子物質がどのような物質かについてはあまり感心 がもたれませんでした。しかし、第2次大戦後の有機・高分子工業そしてそれを支える 有機材料科学・高分子科学の発展には目を見張るものがあります。 本専攻は 、 日 本の そ し て 世 界 の “ 有 機 ・ 高 分子物 質 研究 の 中心 ”(Center of Excellence)として、35年以上にわたり、高い研究成果と優秀な人材を輩出してきまし た。そして現在も高い研究のアクティビティを維持しながら、教育(人材育成)に全力で 取り組んでいます。 1 求める人材と育ってほしい人材 有機物とは炭素を主成分とし、水素、酸素、窒素などから構成されている物質で、そ の組み合せは無限にあります。数が無限であるだけではなく、それら原子の組み合 せ、並べ方をわずかに変えただけで性質が大きく変わり、予想もつかない特性が得ら れたり、機能が発現したりします。このように、有機・高分子物質の魅力を一言でいう なら、「限られた元素から生まれる無数の分子と、多彩な機能」ということになります。 それだけに研究は多岐にわたり、未知の分野も多いのです。 特性や機能は(高)分子を材料として組み上げて初めて使用可能になります。言い換 えれば、どのような(高)分子をどのように材料として組み上げるかが有用な材料を創 製する鍵です。このような事情から有機・高分子物質専攻では、新しい分子の合成、 高分子の重合を目指したい化学の好きな諸君から、新しい物質から生じる新しい物 理現象を発見し、解明することに興味を持つ物理の得意な諸君、さらに、有機・高分 子物質の機能を引き出すための成型・加工に興味のある諸君まで大歓迎です。 有機・高分子物質専攻ではこのように広く人材を求めていまから、学部で有機材料や 高分子化学の勉強をしていないといって恐れることはありません。これまでも物理学 科や化学科、応用化学科などから多くの入学者があります。 入学したときには合成がまったく分からなくても、物理に拒否反応を示していても、修 士を出るころにはそれなりにどちらもわかるようになる人材に育ってくれることを望ん でいます。それが有機・高分子物質専攻で学んだことの証です。基礎科学の分野に 進むにせよ、企業で新しい製品、商品の開発や研究に従事するにせよ、このことは大 きな力になるはずです。 2 入試のためにはどんな勉強をすればいいのか 上述 したよう に 、広い分野から人材を受け入れたいという理由で、修士課程の入 学 試験問題は物理化学、有機・高分子合成、有機・高分子物性ばかりではなく、物理や 数学からも広く出題され、半数ほどの設問からの選択になっています。ですから、化 学は得意だけど物理はどうもとか、逆に物理系は好きなんだけど合成はお手上げと いう諸君でも十分に合格点が取れるようになっています。 過去問 を見てみるのもいいでしょう。志望の研究室 を訪ね、先生や院生に例年の試 験問題など聞いてみるのもいいでしょう。嫌いな科目もこの際、勉強しなおせばきっと 役に立つはずです。 英語の試験 もあります。大学院に入ると英語の文献を読んだり、英語で論文を書い たり、英語で外国人と議論したりする機会が増えます。そのための英語の能力も評価 の対象になります。 3 他大学からの入学状況 他大学か らの修士 、博士 課程への 入学者 も増えて います。最近5年間の他大 学か らの入学者 (修士 /博 士)を下にまとめます。 2名以上: 東京理科大学 (4/2)、埼玉大学(4/,0)、大阪府立大学(1/3)、千葉大学(3/1)、東 京農工大(3/0)、筑波大学(1/1),大阪大学(2/0)、日本大学(2/0)、立命館大学(2 /0)、神奈川大学(1/1)。 1名: 静岡大学、東京電気大学、明治大学、立教大学、早稲田大学、京都大学、佐賀大学、 成蹊大学、東海大学 (以上修士) 東京大学、新潟大学、熊本大学、東京学芸大学、東北大学 (以上博士) 外国: 韓国(3/1),中国(3/3)、タイ(0/1),台湾(1/0)、バングラデッシュ(0/1)。 4 卒業後の進路 有機・高分子物質専攻を卒業後の就職は非常に恵まれています。修士卒業後に企業に 就職するものばかりではなく、博士への進学も学内の他の専攻と比較して非常に高いの が特徴です。最近の5年間に2人以上就職している企業を下にまとめました。企業への 就職のほかに、公務員、博士号取得後の外国へのポスドクも別枠で示しました。 【企業(修士卒/博士卒)】 富士写真フィルム(13/3)、東レ(10/0)、キャノン(6/2)、ブリジストン(5/1)、リコー(6 /0)、JSR(4/1)、クラレ(5/0)、サムソン韓国(0/5)、新日本石油(3/2)、大日本印刷 (4/1)、日本ゼオン(5/0)、東洋インキ(5/0)、旭化成工業(5/0)、豊田自動織機(4/ 0)、凸版印刷(4/0)、シャープ(3/0)、大正製薬(3/0)、日東電工(2/2)、本多技研工 業(3/0)、三井化学(2/1)、大日本インキ化学工業(4/0)、花王(3/0)、呉羽化学工業 (2/0)、資生堂(2/0)、信越化学工業(2/0)、積水化学工業(2/0)、3M-Korea(0/2) SONY(1/1)、アクセンチュア総研(2/0)、旭硝子(2/0)、ニプロ(1/1)、日立製作所(4 /0)、三菱化学(1/2)、リンテック(1/1)、東洋製罐(1/1)、住友ベークライト(2/0)、住 友化学工業(1/1)、大日精化学工業(2/0)、日本電気(2/0)、日立化成(0/2)、セイコ ーエプソン(1/1)、三菱電機(2/0)、東芝(2/0)、その他。 1名入社のその他の有名企業:TDK、オリンパス、東ソー、日産自動車、野村総研、松 下電産、三井物産、森永乳業、ライオン、横浜ゴム、王子製紙、三井石油化学、三菱レ ーヨン、三洋電機、住友ゴム、松下電工、石川島播磨重工、電通、東急電鉄、東京ガス、 東京火災海上、富士ゼロックス、日本生命 【公務員(修士卒/博士卒)】 警察庁(1/0)、気象庁(1/0)、経済産業省(0/1)、地方公務員(2/O) 【大学、研究機関、外国へのポスドク】 NIST、ドレスデン高分子研究所、エコールポリテクニク、ミネソタ大学、コロラド大学、ケ ースウエスターンリザーブ大学、ルーバンカソリック大学、マックギル大学、宇宙科学研 究所、北九州私立大、理化学研究所、その他 5 どんな研究を行っているのか 皆さんは有機・高分子物質と言われて何を想像するでしょう。すぐ思いつくのはプラ スチック、ゴム、繊維などで しょうか。こうしてみると、私たちの身の回りには有機・高 分子物質があふれていることがよく分かるでしょう。しかし、しかし、工業材料として高 分子材料が広く使われるようになったのはせいぜいここ50年ほどのことです。我々は もちろんこのような材料を基礎から応用まで幅広く研究しています。しかし、有機・高 分子物質の世界は皆さんの想像以上に広いのです。 我々の先輩 であるノーベル賞受賞者、白川英樹博士の業績は金属のように電気を 流す高分子の研究でした。超伝導を示す有機物もあります。皆さんの使っているパソ コンの中でも半導体素子の微細加工用のレジスト材料(感光性高分子)、液晶などの 表示材料などが活躍しています。高温に耐える有機材料、金属をもしのぐ高強度・高 弾性材料もあります。現代はナノテクノロジーブームですが、分子1個の素子が実現 すればそれこそ究極のナノテク材料です。 皆さんが日常目に触れるもの、本やテレビなどマスコミ関係で騒がれている材料、 さらにはプラスチックという通常の概念からは想像もできないものまで、有機・高分子 材料の広がりはとどまるところを知らないかのようです。そのうちのいくつかを専攻の 先生方から紹介していただきましょう。 6 講座・分野別教員名一覧 【高分子科学講座】 ・高分子合成分野 教授 助教授 上 田 石曽根 ・高分子設計分野 教授 助教授 教授 助教授 教授 助教授 高 斉 渡 古 西 野 ・ソフトマテリアル設計分野 教授 鞠 谷 雄 士 ・ソフトマテリアル物理分野 教授 助教授 教授 竹 添 石 川 平 尾 秀 男 謙 明 教授 助教授 教授 助教授 手 塚 バッハ 石 津 安 藤 育 志 マーティン 浩 二 慎 治 教授 助教授 教授 助教授 教授 助教授 柿 古 谷 森 奥 扇 雅 研 明 健 徳 敏 教授 助教授 橋 本 塩 谷 壽 正 正 俊 教授 助教授 住 田 浅 井 雅 夫 茂 雄 助教授 佐 藤 満 ・高分子構造分野 ・高分子物性分野 【ソフトマテリアル講座】 ・ソフトマテリアル化学分野 ・ソフトマテリアル機能分野 ・ソフトマテリアル構造分野 【有機材料工学講座】 ・有機材料化学分野 ・有機材料物理分野 ・有機材料加工分野 ・有機複合材料分野 ☆兼任協力講座 物質科学専攻 7 田 藤 邊 屋 島 本 畑 岡 居 澤 充 隆 十志和 礼 子 順 次 秀 峰 敏 夫 修 一 明 一 彦 彦 昌 明 高分子科学講座 高分子合成分野 上 田 研究室 上田研究室では、高分子材料の高性能化、高機能化を図るため に縮合系高分子の精密制御、環境に調和した精密高分子製造プロ セスを目指した環境調和型新規縮合系高分子合成、更にこれらの 技術を生かした高分子材料の開発を行っています。 【研究テーマ】 分子量 精密制御 配列 精密制御 アトムエコノミカル な合成法 分岐構造 精密制御 精密構造制御 結合位置 精密制御 環境調和型 高分子合成 縮合系 高分子 革新的 合成法 有機 EL素子材料 メゾポーラス チャンネル内重合 新規材料開発 マイクロエレクトロニクス 微細加工用フォトレジスト材料 自己集積性 フォトリソグラフィー 低誘電率 感光性耐熱ポリマー 具体的な研究テーマの一例として、新規感光性材料の開 発を紹介します。超LSIの高集積化は凄まじい勢いで進 み、次世代の半導体では線幅70nmレベル(因みに、髪の 毛の太さは約80,000nm)の微細加工が要求されています。 これに対応したレジストとその電子顕微鏡写真を左に示 します。 高分子合成、有機合成に興味のある人は、本館3階93 号室まで、気軽に見学に来てください。 ポリフェニレンエーテルをマトリックスとする 化学増幅型感光性ポリマーのパターン 連絡先: [email protected] ホームページ:http://www.u.polymer.titech.ac.jp/ - 8 - 高分子科学講座 高分子合成分野 石曽根研究室 研究室の紹介 石曽根研究室は、平成 11 年度にスタートした研究室です。平成 16 年度は、博士が 4 人、修士が4名、学部生が 2 名という構成です。皆 さんと一緒に研究できる日を楽しみにしています。 研究目的 世の中には水に溶ける高分子もあれば、水に溶けず油と仲の良い高 分子もあります。また、室温で堅い高分子もあれば、軟らかい高分子 もあります。こうした高分子の示す性質はその分子構造とどのような 関係にあるのか。興味ある性質、さらには機能を発現するには、どの ような構造を持つ高分子を設計し合成していけば良いのか。そのような疑問に自問自答し ながら、魅力ある新しい高分子を設計し合成していくことが、私たちの研究室の研究目的 であり楽しみです。いつの日にか自分の作り出した新規の高分子が、思わぬ性質、機能を 発現して世の中で認められ、実際の材料として使われることを夢見て研究を進めていこう と考えています。 研究テーマ 1) 剛直な主鎖構造を有するポリアダマンタンの合成 2) 極性モノマー類のアニオン重合における重合制御 3) 官能基を有する新規反応性モノマー類のアニオン重合 現在の主要研究テーマは以上の通りです。具体的には、ダイヤモンドの基本骨格とも見 なせるアダマンタンという脂環式化合物をつなぎ合わせた新規高分子の合成を行っていま す。また、様々な極性モノマーのアニオン重合に焦点を当て、付加重合において生成ポリ マーの構造制御はどこまで可能であるか挑戦しています。さらに特殊な性質を発現する官 能基やヘテロ環を有する新規モノマーの重合反応を検討し、生成ポリマーの構造や機能を 明らかにしていきたいと考えています。有機合成や高分子合成に興味を持つ、熱意ある学 生の研究への参加を待っています。 - 9 - 高分子科学講座 高分子設計分野 高 田 研究室 「生体分子機能の工学的応用」を合言葉に、超分子科学分 野で世界一を目指している研究室です。 「分子間相互作用 の科学」が超分子科学、分子を超えた分子が超分子です。 わくわくしながら研究を楽しめる研究室に一度来てみて ください。 1 ロタキサンとカテナン 分子スイッチ、分子モーター、分子素子などのデバイス・素材をロタキサンとカテナン で作ります。あなたもロタキサンとカテナンを上手に使って世界一(初)を作ってみませ んか? + 人工光合成用ロ タ キ サン −フ ラ ーレ ン 新概念のリ サイ ク ル可能な架橋高分子 2 人工らせん DNA やタンパクなどの生体分子が持つらせん構 造をモチーフに、自在な設計が可能な人工らせ ん分子を作り、その応用を行っています。分離 機能材料だけでなく、不斉触媒、あるいは電 子・光機能材料への応用もとても楽しみです。 3 環境適合材料 O U TS IDE G R OO V E IN S ID E 人工ら せん分子の特異な“ 場” 地球環境を守る材料、宇宙環境に適合する材料などの環境関連材料を中心に、スーパー エンジニアリングプラスチック、硫黄含有材料、さらに新しい光学材料、電子材料など、 面白そうな材料全てが対象です。まさにアイデアの見せ所ですが、すでに実用化された 材料もあります。 研究室は? 研究はもちろんスポーツや遊びなどいろんなことにチャレンジする“明るく元気”な研究室です。先輩 方が暖かく親切に面倒を見てくれます。 また、 論文だけでなく特許に名を残すことも推奨されています。 - 10 - 高分子科学講座 高分子設計分野 斎 藤 研究室 斎藤研究室は従来の固定観念にとらわれない柔軟な発想を 原動力に、各自、自分の研究テーマに責任を持って、時にはの んびり、時には死ぬほど・日々実験に勤しんでいます。研究に は、好奇心、探求心、そして何よりもそれに勝る努力が必要不 可欠です。(もちろん基礎となる学力も!)皆さんが4年生に なって研究室所属をする前にこれらのことを磨き上げておい て下さい。 具体的な研究としては、高分子を鋳型として、様々な構造や 機能の発現を目指しています。 - 11 - 高分子科学講座 高分子構造分野 渡 辺 研究室 −高分子との接点から切り開く液晶科学のフロンティア− 渡辺です。私が液晶と出会ったのは、今から 25 年ほど前、ポリペプチド の固体物性を調べていたときでした。温度を上げて溶融したポリペプチ ドがなんともいえない美しい色をしたコレステリック液晶となることを 発見してから、その美しさの虜となり、液晶、それも高分子の液晶を中 心に研究を続けています。研究室の学生と、液晶の美しさと高分子の不 思議さをじっくりと味わい、感動を共有したいと考えています。 どんなことをやっているの? 美しい液晶と高分子を こよなく愛する渡辺教授 (1)液晶分子の設計・合成 「こんなんどうや?」と思いつきの(?) 化学構造式が書かれた紙切れが渡辺先生からポンと渡されます。それに、 自分のアイディアも入れ、分子を設計します。液晶になるかどうかは、 合成してからのお楽しみ。合成は手法が確立されている比較的簡単なも のがほとんどです。合成できたらまず、偏光顕微鏡観察で液晶になるか どうかを調べます。 (2)液晶の同定 液晶といってもいろいろな種類があります。偏光顕 微鏡観察、DSC 測定、X 線回折測定で相転移挙動と液晶構造を明らかに します。美しい光学組織や配向 X 線パターンが出ると渡辺先生を囲ん 渡辺研究室で生まれた液晶 で研究室全員で楽しみます。2003 年 8 月、渡辺研究室が発見したバナ が Science 誌の表紙を飾る ナ型分子液晶の顕微鏡写真が Science の表紙を飾りました。バナナ型 分子液晶の詳細は本館 2 階 71 号室前の廊下にポスターで紹介しています。 (3)構造物性の解明 液晶だと分かっても、それだけでは構造物性を理解したことにはな りません。液晶になることが高分子の物性に、逆に高分子であることが液晶の構造にどの ような影響を及ぼすのかを明らかにしてはじめて「液晶高分子」の本質を理解したといえ るのです。液晶構造や高分子の性質に思いを馳せながら「こんなことあるのかな?」 「こう なるはずだ」と予測を立てて測定に取りかかります。測定は研究室の装置(赤外分光、粘 弾性、誘電緩和、光散乱、Nd:YAG レーザー、円偏光二色性、計算化学(量子化学計算、分 子動力学シミュレーション)など)を駆使するのはもちろん、他研究室(学内・学外問わず) との共同研究、学外施設での測定も積極的に行っています。予測が当たったときは「そう なんだ」、外れたときは「どうして?」と考えると同時に、先生や仲間と討論を重ね「これ は間違いない」と断言できるまで測定を行います。その結果を学会発表、投稿論文で世界 に発信します。 研究室の構成(2004 年 8 月 1 日現在) 渡辺順次教授(本館 2 階 70 号室) 川内 進助手 戸木田雅利助手 博士研究員 1 名 学生 17 名(博士課程 8、修士課程 7、学部生 2)(うち留学生 3 名)(本館 2 階 75 号室) - 12 - 高分子科学講座 高分子構造分野 古 屋 研究室 高分子化合物は、単量体の化合物とその組み合わせの多様性 から、ほぼ無数に存在する可能性を持っていて、分子鎖の個性 に基づく固有の機能を発現します。分子鎖の個性は、分子鎖一 本の固有の性質と、分子が集合し相互作用した結果現れる性質 に分けることができ、種々の興味深い物理現象は分子鎖一本の 性質と分子間相互作用の観点から説明されます。 我々の研究室では、各種測定方法(NMRなどの分光学的手 法)とコンピュータによる分子シミュレーションにより、高分 子鎖の溶液、液晶、及び溶融状態における構造と物性について 分子論的に解釈しようと努力しています。テーマは以下の通りです。 1.非摂動状態における高分子鎖のコンホメーション解析 2.高分子液晶の熱力学と分子構造 3.ポリペプチドの二次構造転移機構の分子論的解釈と機能性 4.高分子鎖の結晶化過程と構造変化 5.分子動力学シミュレーションによるアモルファス高分子のダイナミクス Measurements and Analysis (1H-, 13C-, 2 H-NMR, IR, Dipole Moments, CD) Synthesis MD Simulation Right-handed helix Left-handed helix Temperature Chain Conformation Polypeptides - 13 - Structure and Interaction for Molecular Assembles 高分子科学講座 高分子物性分野 西 研究室 研究室の概要 西研究室は、平成15年4月から発足した新しい研究室 で、高分子材料物性領域をカバーしています。平成15年 3月までは、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻に 属していました。 専門分野は、高分子ナノテクノロジー、ソフトマテリア ルの物性、高分子材料物性、複合材料物性、非平衡系のダ イナミクスなどです。 代表的研究テーマ (URL: http://west.polymer.titech.ac.jp/ 1) 2) 3) 4) 5) http://west.t.u-tokyo.ac.jp/) 強相関ソフトマテリアルの動的制御 高分子系のナノレオロジー、ナノトライボロジー(図1) ポリマーアロイ・ブレンド・コンポジットの構造形成とダイナミクス(図2) 高分子系のナノ3次元解析(図3) 高分子系の表面、界面物性とその応用 研究の方針 21世紀はソフトマテリアル (高分子、液晶、生体高分子、分散系など) の重要性 が増大します。私達は主に高分子多成分系であるポリマーアロイ・ブレンドなどを 中心に、その精密構造制御と物性研究について、ナノからマクロスケールまでを階 層的に、基礎・応用両面を視野に入れた研究を行っています。それに必要な測定方 法、システムの開発なども行い、世界的に見てユニークな研究を目指しています。 ÎR0Ï #破断距離 = 43 nm #結合破断力 = 200 pN #引張速度 = 100 nm/s ृଥסຽÎPOÏ 図1.高分子鎖1本の応力/ひ ずみ曲線(ナノフィッシング) 図2.原子間力顕微鏡(AFM)で見 図3.3次元電子顕微鏡で見た高 た高分子の球晶(一辺150 μm) 分子結晶ラメラ(長辺約150 nm) - 14 - 高分子科学講座 高分子物性分野 野 島 研究室 研究室の概要 野島研究室は平成13年4月に発足した研究室です。現在の研究 室構成は、博士課程1名、修士課程3名、学部四年生2名、研究員 1名の計7名です。全国にある多種多様な大型装置を用い、世界の 最先端の研究に取り組んでいます。 研究室の方針 私たちの研究室では、有用な機能を有する高分子新素材の開発を 最終目的としてモデル高分子中の各種構造と構造形成メカニズムに 関する研究を進めています。モデル高分子の合成→構造と構造形成過程の評価→計算機 による解析→構造と諸物性の相関の解明が一般 的な研究の流れです。各学生は、 約10nm これら一連の研究を各自のアイ 単結晶 デアのもとに進めていくのが理 想です。 研究テーマ ○ポリマーアロイ中の高次構造 と構造形成過程の解明 ○高分子材料中の高次構造制御 技術の確立 球晶中では、 ラメラくり返し 構造の規則性は 乏しい 通常のミクロ 相分離は小さ な規則構造の モザイク 従来のミクロ 相分離構造 従来のラメラくり返し構造 ○放射光と中性子を利用する高 分子系の構造転移メカニズム の解明 ○高次構造解析を目的とした X 線散乱装置の自動化システム の開発 約1,000nmの 完全規則構造 1,000nmまで の 長距離秩序構造 連絡先 [email protected] ナノ多孔体 ホームページ http://www.op.titech.ac.jp/polymer/lab/nojima/index.html - 15 - ナノハイブリッド 多機能巨大結 晶 ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル設計分野 鞠 谷 研究室 極限を目指す成形加工 究極の高速成形,微細形態,高次構造,物性,計測,エコマテリアル・・・ 研究内容 高分子材料は,分子配向度や結晶化度などにより著しく性質が変化することを特 徴としています.このような高次構造は成形加工プロセスを通じて形成されます. 鞠谷研究室では,高分子材料から多様な高次構造が形成されるしくみを理解し,さ らにはこれを積極的に制御する手法の開発を行っています.特に,超高速溶融紡糸 プロセスと呼ばれる,繊維の引取速度が時速600kmに達する極限条件下におけ る高分子材料の応答性の解明というテーマを中心に,一軸,二軸延伸による構造制 御,成形された繊維・フィルムの高次構造・物性の解析,繊維強化複合材料の微視 力学など,高配向高分子材料に関連した幅広いテーマで研究を続けています. 研究テーマ 1.複合高速溶融紡糸における繊維構造形成 2.高速溶融紡糸過程のオンライン計測と数値解析 3.非定常溶融紡糸過程の構築と解析 4.生分解性高分子材料の繊維化 5.一軸および二軸伸長過程での分子配向と高次構造形成 6.高強度繊維開発 ラセミ体ポリ乳酸繊維の ステレオコンプレックス晶 7.繊維強化複合材料の微視力学 LMPET / HMPET=80 / 20, 4km/min interpenetrated layer of two polymers (heterogeneous) θ 複合高速紡糸繊維の干渉顕微鏡像 ND TD 直接高速紡糸延伸装置 MD フィルム延伸過程の複屈折計測 Homepage:http://kikutani.op.titech.ac.jp/ E-mail :[email protected] 複合紡糸により作製した異形断面繊維 TEL:03-5734-2468 FAX:03-5734-2876 - 16 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル物理分野 竹 添 研究室 液晶は結晶の異方性と液体の流動性を兼ね備えた状態です。 このような状態だからこそ、面白い物理や化学、さらには応 用があります。竹添研究室では世界の第一線で、このような 液晶の基礎科学と新しい応用を探る研究をしています。 強誘電性、反強誘電性液晶 副次相間の逐次相転移 新規極性液晶 ref.[1] キラル非線形 光学効果 ディスコチック液晶、高分子液 反強誘電性液晶の層構造 屈曲形液晶 キラリティとポラリティ 液晶の 科学 と 応用 界面での液晶分子 非線形光学による評価 ref.[2] キラリティ制御 通れた 通れない 色素添加コレステリック液晶 からのレーザー発振 光重合性液晶 フォトニック液晶 機能性構造の固定 レーザー、光ダイオー ref.[3] 光 ダ イ オ ー ド 最近の論文 [1] 物理: “Twist-Grain-Boundary Structure in the B5 Phase of a Bent-Core Molecular System Identified by Second Harmonic Generation Circular Dichroism Measurement” F. Araoka et al. Phys. Rev. Lett. 94 (2005) 137801-137804 [2] 化学: “Finite enantiomeric excess nucleated in an achiral banana mesogen by chiral alignment surfaces” K. Shiromo et al., Angew. Chem. Int. Ed. 44 (2005) 1948-1951 [3] 応 用 : “ Electro-tunable optical diode based on photonic bandgap liquid-crystal heterojunctions” J. Hwang et al., Nature Mater. 4 (2005) April 24,published on line - 17 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル物理分野 石 川 研究室 研究室の目指すこと 有機物の多くは電気を流さない絶縁体だ。でも、ここ半世紀の間に有 機物でも作り方や並べ方次第で、半導体や導体になることが明らかに されてきた。そして、有機物をトランジスタや太陽電池の材料に使おう という研究も活発になってきた。私たちの研究室では、高性能な有機ト ランジスタ・光伝導デバイスの開発を目指して新規材料の探索、デバ イス構築手法の改善、新規な測定手法の開発を行っています。 主要な研究テーマ ○ MBE による配向制御薄膜の作製 MBE(分子線エピタキシャル)により単結晶基板上での高 品位有機薄膜の作製を行っています。高結晶性の薄膜 作製により、単結晶並の性能を示すデバイスの構築や、 積層膜による高効率光電変換素子の構築を目的としてい ます。 ○ 面内配向薄膜の作製とデバイス構築 通常の蒸着装置を持ちて、より簡便に配向有機薄膜を作 製し、トランジスタの構築を行っています。また、リガクと の共同研究により斜入射X線による構造解析を行ってい 図:単結晶上に成長した有機薄膜 ます。 ○ 新規材料の探索と移動度測定 非常に多くの有機分子が存在する中で、現在有機半導体材料として用いられているのは極わ ずかなものです。現在は有機半導体材料として用いられていない材料の中にも優れた分子が 必ず存在します。電荷移動度に着目して新規材料の探索を行っています。 ○ テラヘルツ領域における物性測定 光と電磁波の中間にあたるテラヘルツ光を使った有機材料の評価手法の液晶系への適用を 行っています。 研究の先にあるもの−分子素子への道 現在の有機半導体は無機半導体に比べるとはるかに低性能です。しかし、将来的には分子 1個でトランジスタ動作をするような高機能な素子が夢見られています。本研究室では分子 素子へのつながりを視野に入れて有機半導体の開発を行っています。 - 18 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル化学分野 平 尾 研究室 本研究室では、有機合成 と リビングアニオン重合 の手法を 駆使し、新しい機能や高度な性能を有する新規ポリマーの合成を目的 として、日夜研究を続けています。 最近の主な研究テーマは以下の3つです。 ☆ 構造の制御されたポリマーの合成 ☆ 特殊な分岐構造を有するポリマーの合成 ☆ 含フッ素ポリマーの合成と構造解析 例えば本研究室で合成された下に示すような分岐ポリマーは、分子の大きさがナノサイ ズ(1nm は 1m の 10 億分の 1!)で制御されており、これからのナノテクノロジー分野におい て大きな役割を果たすと期待されています。 これらの合成ポリマーは互いが自己集合し、下のような超構造を形成します。この性質 を利用し、最近では携帯電話のバッテリーにも使われているような、高機能性導電性ポリ マーからなるナノスケール新物質の創製にも取り組んでいます。 Various Conductive Nanomaterials ちなみに、本研究室ではポリマーの合成を主に真空中で行うので、そのための器具をガ ラス細工で自作しています。有機合成・高分子合成、カラス細工に興味のある人は、ぜ ひ研究室見学に来てください。 - 19 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル機能分野 手 塚 研究室 高分子の「かたち(トポロジー)」のデザインには、ユークリ ッド幾何学の制約を超えた大きな自由度があります。直線状(こ れまでのほとんどの合成高分子)だけでなく、分岐状や環状・ 多環状の構造を自在に設計し、さらにこれらを組み合わせてお 好みの高分子トポロジーを効率的に合成する、新しい化学反応 プロセス(高分子トポロジー化学)を開発中です。詳しくは、 ホームページをご覧ください。 http://www.op.titech.ac.jp/lab/tezuka/ytsite/index.html 研究室からのメッセージ 当研究室では、有機合成化学・高分 子合成化学を基礎とするサイエンス リテラシーを身につけ、さらに、実験 化学の醍醐味である「誰も思いつかな い、思いもよらないことをフラスコの 中に発見する」感動を体験してほしい と願っています 研究室の構成(2005) 手塚 育志 教授 足立 馨 助手 修士課程学生 4名 卒論学生 3名 単環状および多環状高分子トポロジーの系統図 - 20 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル機能分野 VACHA 研究室 当研究室は平成16年11月からスタートした新しい 研究室で、有機材料、有機分子、高分子を一分子レ ベルで調べるのは研究室の主な研究活動である。目 で見えない極小の分子が発光している光を顕微鏡で 観察し、最近までできなかった一分子の光物性をい わゆる単一分子分光法で研究することができる。 材料の物性を一分 子レベルで調べる 複雑系(高分子薄膜、 生体の細胞、など)で のアンサンブルによる 物性の平均は取り除く ことができる。物性の 分布や動的特性が得 られる。 単一分子 と 有機材料 一分子によるナノデ バイスを目指す 有機色素を材料にド ープして局所的なナ ノプローブとして用 いる 材料にドープした分子 は直接のナノ空間の環 境の影響を受け、その 影響とそのダイナミック スは分子の光学的特性 に表れている。 一個の分子を光学 ナノデバイスとして用 いる。 7000 蛍光による 一分子の 顕微鏡 イメージ 現在の研究テーマ: 1.有機EL燐光材料の単一分子レベルで の発光研究 2.ナノ空間の粘度プローブとして分子内 エキシマーの単一分子レベルでの光学研究 3.高分子膜でのELとPLのエキシマ発光 2 - 21 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル構造分野 石 津 研究室 当研究室ではここ 10 年"高分子のナノテクノロジー"をキーワード に新規高分子の合成とその高分子性から発現される物性解明、さらに は新素材への応用と幅広いスペクトルでの研究を展開しています。 ナノメーター(nm)オーダーでのミクロ構造を持つ高分子の表面・バ ルクの構造制御、さらにはナノ構造体の溶液物性を解明するには高分 子鎖という多様性をうまくコントロールしてまず合成面での戦略設 計が重要となります。 ターゲットとするナノ構造体と発現されるであろう物性がイメー ジできれば合成手段は"何でもあり"ですから、新合成法の開拓も必要 となるでしょう。次にはその溶液・固体物性の解明へと研究方法論が展開します。最後に 実用化を目指して新素材への息を吹き込めば一連の研究の流れが完成します。種々の分野 を研究対象としていますので、やりがいのある研究課題と考えています。 現在は次のテーマを手がけています。 ① ハイパーブランチポリマーの秩序配列構造の形成とその応用 ② 多成分ポリマーブラシの設計と会合体形成 ③ ナノ微粒子の自己組織化による構造発色 - 22 - 【近未来IT社会を築く新規含フッ素ポリマーの構造と機能】 含フッ素高分子には特異な熱的、電気的、光学的性質を示すものが 数多く知られています。一方、主鎖にベンゼン環を含む芳香族ポリマー は、高い耐熱性と興味深い電子的機能を有しており、高性能高分子の 代表格となっています。これらを組み合わせた含フッ素ポリイミドは フッ素の高い機能性とポリイミドの高い耐熱性を合わせ持った新しい 機能性高分子です。我々の研究室では、これら含フッ素芳香族ポリマー の様々な機能が、どのような構造、またどのようなメカニズム で発現するのかを固体核磁気共鳴(NMR)、各種光学測定、 計算化学での独自開発による分析方法を使って解析し、 その知見を基に将来のIT社会に役立つ耐熱性と光・ 電子機能をあわせ持った新しい高分子材料の設計指針 を提案し、実証することを目指しています。 【研究のキーワード】 グリッドコンピュータ による量子化学計算. 超高圧下での光吸収や 蛍光発光スペクトル等 の特殊分光測定 固体19F-NMRを用いた 立体構造解析法の開発. 金属やセラミックスの 超微粒子を分散させた ポリマー 屈折率や複屈折等の 温度可変光学物性測定. - 22 - - 23 電荷移動(CT)の制御, 高蛍光性ポリイミド と光集積回路用高分子 材料と部品の開発 分子鎖の立体構造 や電子構造を制御した 含フッ素ポリマー 有機材料工学講座 有機材料化学分野 柿 本 研究室 「多分岐高分子の合成、性質、機能」 「縮合系高分子の合成、LB膜、物性」 「自己組織化分子の階層構造」 をテーマの軸に掲げ、分子レベルのユニークな形が 反映された全く新しいナノ構造の創出や機能発現など、 「世界初」、「オリジナリティー」、「科学を知る、理解す ることへの挑戦」をモットーに研究を楽しんでいます。 Si 「多分岐高分子の合成、性質、機能」 分子が鎖状につながった高分子のなかに、多くの 分岐点をもった多分岐高分子があります。その分岐 構造によるユニークな性質を利用した機能材料の開 発を目指しています。 「縮合系高分子の合成、LB膜、物性」 ポリイミドなどに代表される縮合系高分子の合 成やLB膜の創製、物性について、幅広く高度な 知見を得ること、またそれらに基づいた新規材料 開発を行っています。 Si O Si Si O Si O Si O Si O Si H Si O Si Si O O Si Si 微量の多分岐高分子を添加すること で、無機物の優れた分散状態を作り 出す。 電子材料への応用を展開中。 「自己組織化分子の階層構造」 分子の自発的な組織化(自己組織化)によって 形成されるナノ・マイクロ構造の美しさとユニー クさに、日々、驚きを感じながら、次世代分子材 料への展開を目指しています。 柿本研では、 、、分子設計から合成、構造構築、 物性まで、横断的に取り組んむことで、研究者と しての基礎をしっかりと身に付けられるように しています。 1.分子設計 2.合成・構造解析 3.ナノ・マイクロ構造の形成、観察、解析 4.物性 自己組織化分子のナノ・マイクロメート ルレベルの繊維状階層構造。ナノテクノ ロジー材料として、期待されている。 分子の自己組織化によって形成された 薄膜。構造の周期性・規則性が極めて高 く、光、電子材料、バイオセンサーなどへ の応用が期待される。 (1から4へ、また4から1へと繰り返し取り組むことで、「おもしろさの精度」を高めていきます。) 連絡先:[email protected] ホームページ:http://www.op.titech.ac.jp/lab/kakimoto/index.html - 24 - 有機材料工学講座 有機材料化学分野 古 畑 研究室 現在、環境問題が大きな注目を集めています。セルロース、 キチンなどの大量に存在する天然高分子(バイオマス)は環境に 優しい材料として今後の利用方法の発展が期待されています。 当研究室では、これらの多糖類に対し化学的手段により、 特定の位置に官能基を導入することにより、高機能性を付与 する研究を行っております。 構造の明確な誘導体を合成することにより、多糖類の構造と 物性(生体適合性、電気物性等)との関係を明らかにしたいと 考えています。 当研究室で得られた結果の一部を示します。 CH2OH O CH2SH O O OH O OH OH H2NCSNH2 OH OH − CH2SR O RSH CH 2Br O Z− O OH base CH2Z O O OH O OH OH OH OH N3− Z: SCN, Cl, I CH2NH2 O CH2N3 O 6-ブロモ-6-デオキシセルロースより 得られるセルロース誘導体 OH OH - 25 - PPh3 O H2O O OH OH 有機材料工学講座 有機材料物理分野 谷 岡 研究室 私たちのラボでは,高分子膜や高分子界面の物理化学をベースに,高 分子材料をナノスケールで制御する技術の研究・開発と作製した膜・繊 維・粒子の物性に関する研究に取り組んでいます.ナノスケールで制御さ れた高分子材料は,エネルギー・環境・バイオメディカルなど幅広い分野 への応用が期待されます. ナノサーフェス・エンジニアリング •エレクトロスプレーデポジション •ナノファイバー・ファブリック •表面・界面物性 •物理化学 •電気化学 •高分子科学 •生物物理・生化学 •エレクトロニクス 超撥水コート,発色材料,形状記憶高分子アクチュエータ •電池・発電材料・システム 膜,電極,混合ガス燃料電池,レドックス・フロー電池 逆浸透発電 •水処理・環境材料 ナノウォーター材料,低周波振動とナノフォーム •バイオ・メディカルデバイス センサー・チップ,スキャホールド,DDS 最近のトピックス∼エレクトロスプレー法 数千∼数万ボルトという高電圧を,高分子溶液の入ったノズルと 対電極の間に加えると,ノズルの先端から荷電した高分子が噴 射され,対電極上にナノスケールの繊維や粒子が形成されます. このような電場を利用した薄膜作製法はエレクトロスプレー法と 呼ばれています.左の写真は,この方法を利用してミニカーの上 にナノファイバーをコーティングしたものです. 研究室構成(2005 年 4 月 1 日現在): 谷岡 明彦教授, 松本 英俊助手, 皆川 美江主任専門技術員, 博士研究員 2 名, 学生 8 名(博士課程 1, 修士課程 5, 学部 2) 研究室 URL: http://www.op.titech.ac.jp/lab/tanioka/ 連絡先: [email protected] (南 8 号館 707 号室) - 26 - 有機材料工学講座 有機複合物理分野 森 研究室 電気伝導性有機材料:有機超伝導、有機トランジスタ 本学出身の白川英樹先生が 2000 年のノーベル化学賞 を受賞して有名になりましたが、有機材料のなかには 金属と同じくらい電気をよく流すものや、超伝導にな る(電気抵抗が完全にゼロになる) ものまであります。 当研究室では、有機物で超伝導材料をつくる(合成 する)、超伝導を測る、超伝導材料の構造や電子状態 を解析する研究を行なっています。 現在では超伝導はまだ非常に低い温度でしか起こり ませんが、少しでも高い温度で超伝導になる物質を開 発するために、さまざまな研究が行なわれています。 有機材料を使ってトランジスタをつくることもできます。こうした有機 トランジスタはフィルムのようなシートの上にも作ることができるので、 フレキシブルに曲がるディスプレーやスキャナーなどをつくることができ ます。将来は、新聞の代わりに、このような電子ペーパーでホームページ やニュースを見ることができるようになるだろうと期待されています。 研究手法:有機合成、有機結晶の電気分解による結晶成長、X 線構造解析、 低温での電気抵抗などの測定、エネルギーバンド計算、有機デバイスの作成 と特性評価 - 27 - 有機材料工学講座 有機材料加工分野 奥 居 研究室 タンパク質、DNA,セルロース、合成高分子は、全て分子が 一元的に長く連なった“鎖状の巨大分子(高分子)”です。こ の巨大分子の振る舞いは、3次元の秩序構造に大きく依存し ます。このような巨大分子から、機能や性質を効率よく引き出 すには、高分子鎖が織りなす3次元的構造を制御する必要 があります。有機材料を成形加工するには、材料の固体構 造の解明、高分子鎖の凝集(結晶化)過程を解明する必要が あります。本研究分野では、高分子の結晶化機構の解明と、 3次元的に規則正しく分子が配列した高分子薄膜の作成とそ の構造、機能の研究を行っています。 高分子の結晶化機構 速度の異なる2つの結晶が 作る羽状結晶 高分子の核形成速度と結晶成長速度の温度依存性 1000 100 Mp=9.15K I 75 G 500 50 250 25 0 0 I (mm-3sec-1) G (nm/s) 750 0 100 50 o Temperature ( C) 真空蒸着重合 交互真空蒸着薄膜の構造形成モデル Dichloride n H2N(CH2)6NH2 + nClOC(CH2)4COCl Heaxmrthylene diamine Tm=42℃ HCl Adipyl chloride Liquid at Troom [ (CH2)6NHCO(CH2)4CONH ]n Nylon 66 - 28 - Amino Chain Ends Diamine 有機材料工学講座 有機材料加工分野 扇 澤 研究室 私たちの身の回りにあるプラスチックやゴムなどの有機材 料のほとんどはブレンド(混合物)です(このような材料 はポリマーブレンド・アロイあるいはハイブリッド材料と 呼ばれています)。用途に応じて材料に要求される特性を単 独のポリマーだけで実現するのは難しいため、ポリマーハ イブリッド材料が先端材料として広く用いられており、こ れに関する研究の重要性が増しています。そこで当研究室 では近年応用研究に力を入れており、企業との共同研究も 活発に行っています。 光学材料 耐衝撃性・ 耐摩耗性材料 用途:バンパー 、タイ ヤ、筐体材料 構造・特性 解析 用途:高屈折率レンズ、 偏光板、位相差フィルム (液晶ディスプレイ用)、 DVDディスク材料 Linear Polarization Plate based on Light Scattering Phase-Separated Structure by Spinodal Decomposition 低線膨張材料 用途:ディスプレイ用 光学窓、バンパー 構造・特性 ハイブリッド材料 の高機能化・新規 材料開発 接着材料 機能性発現 メカニズム の解明 制御 用途:ハイガスバ リアPETボトル 生分解性材料 用途:DVDディスク材 料、筐体材料、医療用 材料 Ougizawa Lab Polymer Alloys and Blends ガスバリヤ材料 用途:ガソリンタン ク、包装材料、 ELデ ィスプレイ用フィルム Positron Annihilation Lifetime Spectroscopy http://www.op.titech.ac.jp/gs/ougizawa/index. - 29 - WZ>XRS Zks b@#/3 %7IJ9onN A WZ>XR;C6r?6g?`NdTN eaBH<(7-!5 '2 4+,)5'PmYiKO =[qn _`Nea] jF^D\p e_8GN : L XR lVS.0-&04*71"$-& 04*7Mc Q #"%& 物性発現基礎科学 例:温度波伝播 シミ ュレーショ ン | 材料設計 j lm )# 外場による機能性発現 " $0k 0k ' 精密物性測定法 |1/ +( o twjl 例:高速赤外線カメ ラによるm ,0 q nxs 超配向延伸フィ ルムのk 軸射強度分布と 熱拡散率の評価 - i ! k fhEtU .k*2 M9N2 gKVS^ZOY2RWTTa_WbW`e2\T2Sa`SQ`WQ2\T2OYXOYW2QVY\^WRS2O[R2WQS2W[2`VS2T^SSfW[U6`VOcW[U2]^\QS__2Pe2 KSZ]S^O`a^S2LObS2@[OYe_W_h2 2 G72E72BVS[2S`2OY72KVS^Z\QVWZ72@Q`O2<:?23:88=4>;6>?72 2 M:N2 gKVS^ZOY2RWTTa_WbW`e2\T2PW[O^e2ZWd`a^S2\T2[6`^WQ\_O[S2O[R2[6`S`^OQ\_O[S2Pe2C\a^WS^2`^O[_T\^Z2 `SZ]S^O`a^S2cObS2O[OYe_W_h52FWeOZ\`\52S`2OY7523:88=42KVS^Z\QVWZ72@Q`O2]aPYW_VSR2\[2YW[S2 M;N2 g Kc\6RWZS[_W\[OY2 `VS^ZOY2 O[OYe_W_2 T\^2 T^SSfW[U2 \T2 S[R\`VSYWOY2 QSYY_2 Pe2 VWUV6_]SSR2 ZWQ^\_Q\]WQ2DI2T\QOY2]YO[S2O^^Oe_52F\^WXOcO2S`2OY752ADHJ:88=2 v u 有機材料工学講座 有機複合材料分野 塩 谷 研究概要 研究室 当研究室では,主として炭素材料,繊維材料,複 合材料の製造,構造,物性について研究を行って います.炭素原子だけからできた物質は多様な性質を示し広範な分野 で応用されていますが,これは炭素がカルビン,グラファイト,カー ボンナノチューブ,フラーレン,ダイヤモンドなど多様な構造をとる ことに加えて,さらに高次の多様な構造を形成しているためです.ま た,これらを複合材料の強化材料に用いるときには,分散や強化形態 などのファクターがさらに多様性を生みます.当研究室ではミクロレ ベルからマクロレベルまでの広範囲な構造の制御によって,新たな物 性を賦与すべく研究を進めています. 研究対象 ○カーボンナノチューブを用いた複合材料 ○フィラー充填複合材料 ○炭素繊維複合材料 ○多孔性炭素材料 ○炭素材料の吸着・電気化学特性 ○広角・小角 X 線散乱による構造評価方法の検討 ○複合材料の力学物性 ○界面特性の評価 ○高分子繊維の強度 1.6 log10(Resistivity / µΩm) 研究例 Ref = 1400oC 1.4 phenol formaldehyde 1.2 PAN (70 MPa) 1.0 pitch 0.8 PAN (322 MPa) 0.6 -2 0 2 4 6 8 10 12 log10(Time / min) シンクロトロン放射光によって捉えたポリエステル 樹脂内部のクレーズの小角 X 線散乱パターン. 炭素繊維の製造過程における電気抵抗の変化.温度− 時間換算則を用いると,例えば 1400℃で 20,000 年処 理した場合の構造が推定できる. 直径数マイクロメーターの炭素繊維断面における応 力分布を解析した結果. 複合材料内部での繊維破断過程.これを解析すると, 繊維―樹脂界面強度や繊維強度が評価できる. - 31 - 兼任協力講座 物質科学専攻 物質設計講座 住 田 研究室 質量則に従わない、軽量で低周波音の吸収にも有効な制振・音響材 料を実現するため、低コストで製造できる有機ハイブリッド型制振・音響 材料の開発が研究内容です。 快適な環境社会を求めて、家電製品による騒音、高速道路、橋梁におけ る自動車、車両による騒音・振動の低減の要望が一層たかまりつつありま す。現時点において、これまでの防音・制振機構とは原理を異にする新規な 制振材料の開発は広範な産業分野に及ぼす影響が大きく、大きな社会的意義をもつと考えられ ます。従来より、種々の防音材料が開発されてきましたが、鉛板・コンクリート等はその重量が大 きく、又ガラスウール・ロックウール等は低周波音に対しては効果がないなどの問題がありました。 そこで、軽量材料の使用を可能とし低周波音の低減にも有効な、新規圧電・導電複合材料およ び有機ハイブリッド制振材料を開発することを目指しています。 浅 井 研究室 生分解性高分子やイオン伝導性高分子など、様々な機能を有する高分子あ るいは高分子系複合材料を対象に、その構造と物性との関係、目的の物性 を得るための材料設計、構造を制御するための方法などについて、幅広い 研究を行っています。最近では、超臨界二酸化炭素を利用して、結晶性高分 子を中心に高分子や高分子複合系の高次構造形成や物性の改善行うこと を目的に研究しています。また、イオン伝導性高分子や導電性高分子複合 材料について、新規な手法によりそれらの電気的性質などの物性を制御することも試みていま す。 佐 藤 研究室 不思議なもの2つ 佐藤研究室では、この世で最もありふれていて 最も不思議なものを研究しています。 それは… と です。 佐藤研究室では ● 物性測定と理論研究と計算化学を組み合わせて 組んでいます。 ● 溶液とゲルと膜を扱います。 - 32 - 難題に取り 有機・高分子物質専攻ホームページ http://www.op.titech.ac.jp/index.html