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冬の大三角 - 独立行政法人 国立青少年教育振興機構
星空学習テキスト ~中級(小学校中学年~高学年向け)編<冬>~ ★ 冬の大三角 国立立山青少年自然の家 《子ども用シート》 【冬の星図】 (1月中旬,20時ごろの空) ● ● ● ● ● ● ● β α α こいぬ ● ● ● ● ● γ ● ● プロキオン ● ε ζ● δ ● オリオン ● ● ● ● ● ● ● ● κ ●β ● リゲル ● ● ● シリウス ● ● ●α ● ● ● ●β ● ● ● ● おおいぬ ● ● δ ● ● ● η ● ● ● ε● ● ● ● ● 1等星 ● 2等星 ● 3等星 ● 4等星 南 ★ 南に向かって星図を使う場合,星図の方位,南を手前 ( 下 ) に,おいてみる ★ =冬 の 大 三 角 = 【観察時期・時刻】1月中旬~2月中旬 19時すぎ~20時30分前 【準 備】 ( 児 ) 子ども用シート(星図) 星座早見盤 懐中電灯 ( 赤いセロハン紙で包む ) ( 指 ) 投光指示灯 双眼鏡 ( 三脚付 ) 天体望遠鏡 ( 組立て・調整済み ) 【学習のねらい】 ★ 冬の星や星座を見つけることが,できるようになること。 ⑴ 明るさや色などに目をつけて,星空の中で目立つ星や星座を見つけること。 ⑵ オリオン座の星からみた,冬の星や星座の位置を見つけること。 ⑶ 冬の星座を見つける目印, 「冬の大三角」を見つけること。 【学習活動の展開】( 学習過程の概要 ) 冬の野外で注意することを考えてみよう。 《事前指導》 ⑴ 服装だけでなく,双眼鏡や望遠鏡などの寒さ対策も考えておく。 ⑵ 急な天気変化を予知した行動の仕方を,事前に考えておく。 《野外活動》 夜の広場へ出て,冬の星座を探してみよう。 1 冬の季節に変わって,星空の様子がどのようになったか,考えてみよう。 ⑴ 明るい星空に変わった東の空と,秋の星の残る西の空を比べてみる。 ⑵ 天頂から南へ下る天の川沿いに,明るい星が多く集まるなか,特に目につく星座を 探してみる。 2 冬の星空のなか,オリオン座が特に目立つことを確かめてみよう。 ⑴ 星座の全景と,空に見える位置に目をつけて考えてみる。 ※ (全形)大長方形で囲まれた三つ星。(位置)星空の中天に見える。 ⑵ 星の明るさや色に目をつけて考えてみる。 ① 大長方形の左上「ベテルギウス」の,明るく輝く赤い光が,特に目立って見える ] ※《赤色超巨星》 わけを考えてみる。※ [ 500 光年,0.4 等 ( 変 ),スペクトル型 M2, ② 大長方形の右下,( ベテルギウスと ) 対称の位置に「リゲル」の青白く輝く光が目立っ て見えるわけを考えてみる。※ [ 700 光年,0.2 等,スペクトル型 B8,] ※《超巨星》 ⑶ 「ベテルギウス」の,明るく輝く赤い光が,冬の星空の中で際立つ様子を観察して, それが,オリオン座の目印になることを考えてみる。 3「ベテルギウス」のように,(冬の季節)特に目立つ星を探してみよう。 ⑴ 冬の星空の中,際立って明るく輝く星を,南東の空に見つける。 ⑵ その星の目立つわけを考えてみる。 ※ 他の星と比べてみて,ギラギラと明るく輝く星は,この星以外見当たらないこと をみつけ,それはなぜか考えてみる。 ※ [ 8.7 光年,- 1.4 等,スペクトル型 A1,] ⑶ オリオン座の星からみた,この星の位置の見つけ方を考えてみる。 ① 三つ星を結んだ直線を伸ばして見つける方法を試してみる。 ② 空の物差しを工夫して,その星と三つ星の距離(角)を計ってみる。 ※ 片手を前方にまっすぐ伸ばし,握り拳の親指を立て,立てた親指を見通す 角度(約5°)を物差しにする。 ※ その角距離は,約20° ⑷ 星座早見で,その位置にある星を確かめ,名前を調べてみる。 ★ 固有名「シリウス」 ※ 和名「大星・青星」 ⑸ 星座早見の線画を参考に, 「シリウス」と,その周りに集まる星をまとめた星座を なぞって,名前を確かめてみる。 ★星座名「おおいぬ座」 ⑹ ギラギラと際立つ「シリウス」の様子を観察して,それが,おおいぬ座を見つける 目印になることを考えてみる。 4 目立つ三角を考えて,ベテルギウス・シリウスとつなぐもう1個の星を探してみよう。 ⑴ 正三角と考えられる辺りの空に,明るく目立つ星を見つける。 ⑵ その星の目立つわけを考えてみる。 ※ 周りに星の見えない暗い空のなかで目立つ,明るい黄白色の1つ星であることを 確かめてみる。[ 11 光年,0.4 等,スペクトル型 F5, ] ⑶ その星の,ベテルギウス・シリウスとの位置関係を調べてみる。 ※ ベテルギウスからみたシリウスは, 南東の方向,角距離約25°の位置。 角距離約25°の位置。 ① ベテルギウスからみて,その星は, 東の方向, ② シリウスからみて,その星は, 北東の方向,角距離約25°の位置。 ※《上の計測説明図は,次のページ(指導上の留意点)の3項》 ⑷ 星座早見で,その位置にある星と星座の名前を調べてみる。 ★ 固有名「プロキオン」(こいぬ座) ⑸ 双眼鏡で,プロキオンの周りに集まる「こいぬ座」の様子を確かめ,この1つ星が 暗い星の集まる,こいぬ座を見つける目印になることを考えてみる。 5 冬の星座(オリオン・おおいぬ・こいぬ)を見つける目印の三角を,何といったらよ いか考えてみよう。★「冬の大三角」 《活動のまとめ》冬の主な星座の見つけ方をまとめてみよう。 ⑴ 冬の星空は,目立つ星が多いことを見つける。 ⑵ その中でも,オリオン座が最も目立つことを確かめる。 ⑶ オリオン座からみた,正三角をつくる三つの星の位置を見つける。 ⑷ その「冬の大三角」を目印に,オリオン座・おおいぬ座・こいぬ座を見つける。 指 導 上 の 留 意 点 1 初級冬編では,オリオン座の三つ星を取上げ,星空を探る活動事例を記述した。この 中級冬編では,初級編で扱った「オリオン座」を定点に,「冬の大三角」を形どる星の 相対的な位置を探る活動を取り上げ,大三角を目印にして冬の星座を見つける活動事例 の展開を考えてみることにした。 2 冬は一年中で最も美しい星の季節。それは,7個もの1等級以上の明るい星が,天頂 から南東の地平線へと流れ下る天の川に沿って集中する星空である。そのまま見ていて は,星座区画が紛らわしくなる。こんな星空だからこそ,各星座ごとに目印になるもの を見つけることが必要となる。これが,大三角を考えることの意味であり,本主題設定 のねらいである。 ° 27 2 2 ° ° ° 6 2 9 1 16° 17 ° 3 星の位置や星座の傾きは,時々刻々に ペテルギウス 変わる。それは見かけ上で,本当は星の 約8° 26 ° プロキオン ● ● ● 位置も星座の傾きも全く変わらない。例 えば,オリオンζは「5h38m, - 1°58′ 」, ● シ リ ウ ス は「6h43m, - 16 °39 ′」 と, ●● 赤道座標上の定位置にある。その経・緯 度差から考えて,オリオン三つ星をつな 約8° ● ● リゲル ぐ延長線の方向「S50°E 」,角距離22° の空にシリウスが見えることが分かる。 冬の大三角関係の「星の角距離」 (右図参照) シリウス ● 15° 10° 5° 0° 冬の星座指導では,「冬の大三角」を 目立つ星の三角として捉えるだけでなく,大三角を形どる星相互の位置関係を,定点と 決めた星からの方位・角距離を計り確認することまで,踏み込んでほしいものである。 4 できれば,オリオン座ベテルギウスの望遠鏡観察を取入れてほしい。遠くにある低温 (500 光年,表面温度 3000 K)の,暗いはずの星が,なぜ際立って明るく見えるのか, その実体は平均半径が太陽の900倍もある赤色超巨星であることを,子どもたちに考 えさせてみたいものである。この際の星の色の観察には,ピントを少しずらして,星の 点像を丸い像に拡大して見る試みも大切にしたい。また,新しい星が次々と誕生してい るオリオン大星雲M42の望遠鏡観察をさせ,ガスの雲が光って見えるわけを考えさせ てみたい。 平成19年度調査研究事業 子どもが科学する心を培うための「星空学習」プログラムの研究開発 星座学習テキスト 中級(小学校中学年~高学年向け)編<冬> 【文と星図の作成】寺松 和俊 2008年3月 発行 独立行政法人国立青少年教育振興機構 国立立山青少年自然の家