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砂糖と糖尿病の悩ましい関係
糖尿病の歴史は古くは17世紀に英国医師トーマス・ウィリスによっ
てその存在を記載されたことに端を発する。ウィリス医師は当時奇病とされて
いた多尿症を研究する過程で尿の成分をなんとしても知りたいと考え、患者の
尿を舐めてみたところ甘かったことが糖尿病の発見につながったと言われてい
る。実際、糖尿病を発症すると血液中のブドウ糖の濃度が上昇し、尿に大量の
糖が排出されるので尿量が増えるとともに尿の糖分が増え尿が甘くなる。一般
に糖尿病を発症する前は体重が増える傾向にあるが、病気が進行するのに伴っ
て体の細胞は糖を取り込むことができなくなる。その結果血糖が上昇し多量の
糖が尿に排出されるようになるので、糖尿病の末期になると食べた栄養を吸収
できずに最後は体がガリガリに窶れてしまうのはこのためだ。
糖尿病はこれまでにも、食べ過ぎが原因で発症することが知られてい
た。特に甘い物を食べたときには血糖が上昇しやすいので、糖尿病の患者さん
には甘い物を控える様に医師は外来で指導している。しかし、糖尿病の発症に
食事の摂取カロリーが関係しているのか、炭水化物が悪いのか、それとも炭水
化物のなかでも砂糖の摂取が糖尿病を発症させているのか、発症要因に関する
大規模で本格的な研究調査はこれまでに報告が無かった。スタンフォード大学
医学部疫学研究センターのサンジェイ・バス博士は 175 カ国で実施された砂糖
の消費量と糖尿病の発症率に関するこれまでの調査研究論文を包括的にレビュ
ーして次のような結論に到達した。つまり、1日量にして砂糖の消費が 150Kcal
増えるごとに、2 型糖尿病の発症率が 1.1%増えることを明らかとし、砂糖の摂
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取が糖尿病の発症原因であると主張したのだ。これまでにも、肥満や摂取カロ
リーの増加が糖尿病の発症に関与すると報告した論文はあったが、果たして肥
満の人が砂糖の摂取量が多いためなのか、あるいは砂糖の増加に伴うカロリー
の増加が糖尿病の発症に関与しているか、砂糖と糖尿病の関係は必ずしも明瞭
ではなかった。バス博士はこれらの可能性に関して明瞭な結論を導くために体
重や摂取カロリーなどの諸因子を調整した結果、体重や肥満あるいは摂取カロ
リーではなく砂糖の摂取量が単独で糖尿病の発症に関与している因子であるこ
とを明らかとした。更に博士は食物繊維の含有量、フルーツや穀物など糖質を
含む食物、肉や脂など高カロリーの食材に関して糖尿病との発症要因を探った
が、いずれも砂糖のような因果関係を見出だすことはできなかった。バス博士
らは更に、野菜やナッツなどの食物繊維が豊富で炭水化物の含有量が少ない食
材を摂取していれば砂糖の摂取量が多くても糖尿病の発症が抑えられるのでは
ないかと考え、野菜やナッツの摂取のある人と無い人の間で砂糖と糖尿病の発
症率との関係を検討した。その結果、野菜やナッツを摂っても砂糖の消費量を
下げなければ糖尿病の発症を抑える事が出来ないことを明らかとした。興味深
いことに、果物は相応の糖質を含むが、精製されていない砂糖とは違い糖尿病
の発症に結びつかないようだ。バス博士はこの理由について、砂糖の問題点は
精製された点であり、摂取された糖質の量の問題ではないと考察。もし、糖質
の摂取量が糖尿病の発症の原因になっているとすれば、果物の食べ過ぎで糖尿
病が発症するだろう。しかし、果物には糖質以外に食物繊維やミネラル成分や
細胞のアンチエイジングに有効なフィトケミカルが豊富に含まれている。これ
らの糖質外成分が糖尿病の発症を抑えているのではないかと考察する。自然の
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甘みに戻れば糖尿病を心配せずに糖質を楽しむことができそうだ。
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