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東日本大震災で被害にあわれた 被災者に対する支援

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東日本大震災で被害にあわれた 被災者に対する支援
東日本大震災で被害にあわれた
被災者に対する支援について
去る3月11日に東日本の三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生し,岩手県・
宮城県・福島県の沿岸部を中心に壊滅的な状況に見舞われております。
そこで本会では,甚大な被害に見舞われた3県の被災者に対しまして,被災者の健康・医療支
援や結核を中心とした感染症対策を被災地に於いて,復興の道筋が見えるまでの一定期間,活動
しているところです。
つきましては,上述の趣旨に是非ともご賛同いただき,活動支援金へのご協力を賜りたく,よ
ろしくお願い致します。なお,活動支援金に余剰が生じました場合は現地の復興資金として活用
させていただきます。
公益財団法人結核予防会
理事長 長 田 功
【入金口座名義】
郵便局(郵便振替口座)東京 00180-2-3320
*送金手数料が無料です。
*払込取扱票は郵便局備え付けのものを使用可能です。この場合も手数料は免除となります。
*払込取扱票にメッセージが入れられます。震災支援であることをご記入下さい。
三菱東京UFJ銀行 神保町支店(支店コード013) 普通 2200390
*振込手数料が通常の送金同様に必要となります。
*この口座入金分はすべて本主旨への募金として取り扱います(意思表示不要です)。
名義(共通): ザイ)ケッカクヨボウカイ
公財)結核予防会
*公財)の略称はザイ)となりますのでご注意下さい。
*なお,本会への募金は寄付金控除の対象となります。「領収書」が必要な場合は,お名前・ご
住所・入金額・領収書送付先をご記入の上,下記FAXもしくはメールにてご連絡をお願いし
ます。
FAX:03-3292-9250
E-mail:[email protected]
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M
essage
第62回結核予防全国大会の中止および
複十字臨時号の発行について
公益財団法人結核予防会
理事長 結核予防事業につきましては,日頃よりご支援を賜
り厚く御礼申し上げます。
この度,東日本大震災により被災された方々には謹
んで,お見舞い申し上げます。
地震と津波により多くの尊い命が失われ,未だ不明
の人も少なくなく,多くの人々が困難な生活を余儀な
くされています。さらに,福島第一原子力発電所が大
きな被害を受け,その周辺住民の健康への影響が心配
されています。改めて天災への畏怖心を禁じざるをえ
ません。
第62回結核予防全国大会につきましては,3月23日・
24日の両日福島県郡山市において開催を予定しており
ましたが,この度の大地震に伴い福島県での開催は不
可能となり,誠に残念でございますが中止のやむなき
に至りました。大会準備のために大変ご尽力されまし
た福島県自治体関係および予防会県支部の皆様には心
から御礼を申し上げます。それに伴いまして,全国大
会特集号として作成しておりました複十字№338(平
長田 功
成23年3月号)は廃号としました。改めてこの度の震
災につきまして,特に予防会本部支部の情況などを掲
載した複十字臨時号を発行することになりました。な
お,全国大会式典中に表彰予定でした「第14回秩父宮
妃記念結核予防功労賞」につきましては,別途表彰式
を予定して準備を進めております。受賞者の方々のご
功績はこの臨時号にて紹介させていただきます。
本会は設立以来,人々の健康と命に向き合って参り
ました。この未曾有の災害にあたり,直ちに予防会組織
を挙げての災害対策委員会をたちあげて,大切な命と
健康を守るため活動を展開しております。甚大な被害
に見舞われた岩手県,宮城県,福島県の3県の被災者
に対しまして,被災者の健康や結核を含めた感染症対
策を被災地に於いて復興の道筋が見えるまでの一定期
間,
本部支部連携して支援活動を展開していく所存です。
日本中で支援の輪が広がっている中,我々も医療と保
健衛生の立場から手を取り合って進めて参りたいと存じま
すので,今後ともご指導何卒よろしくお願い申し上げます。
Contents
■メッセージ
第62回結核予防全国大会の中止および
複十字臨時号の発行について
長田 功……1
■東日本大震災
●放射線とその健康への影響
島尾 忠男……2
●東日本大震災被災地支援計画
……4
■秩父宮妃記念結核予防功労賞第14回受賞者
……5
■ストップ結核パートナーシップ日本だより№16
国際シンポジウム∼世界から関西の結核を考える∼
宮本 彩子……9
■シリーズ結核対策活動紹介
●小児結核の対策について
∼第1回首都圏小児結核症例検討会の開催∼
宮本 謙一……10
●「新成人おめでとう!」晴れ着姿の新成人へ
結核予防のメッセージ
坂本 啓之……11
■教育の頁
●多剤耐性結核の外科治療
白石 裕治……12
●多剤耐性結核の問題
下内 昭……13
■小・中学校における学校検診は簡易化の方向
石川 信克……14
■シリーズ結核研究所紹介
●結核菌の分子疫学的解析
前田 伸司……15
■平成22年度胸部画像精度管理研究会に参加して
金古 努……16
■事務職員セミナー 参加報告
●サービス向上のための意識改革
河島加奈子……17
■3月24日世界結核デー 2011年テーマ解説
●結核制圧に向けた闘いに,大きな変革を
……18
■結核対策―世界の動向―
●ストップ結核パートナーシップ理事会
(2010年10月,南アフリカ)の報告
加藤 誠也……19
■ずいひつ
●ベルリン鷗外記念館再訪 ∼複十字315号に続く∼
長田 功……20
■TBアーカイヴだより
●第5回TBアーカイヴ事業推進・運営委員会の報告
竹下 隆夫……21
■エイズ流行の世界の現状
島尾 忠男……22
■COPD・たばこ
●日本COPD対策推進会議設立会と記者会見
……24
●APACT2013準備委員会開催 ■結核予防会支部紹介の頁 沖縄県支部
「県民の長寿復活を目指して!」
城間 一男……25
■結核予防会事業所から
●第9回新山手病院・保生の森・グリューネスハイム新山手
合同業績発表会 開催報告
瀬崎 和典……26
●複十字病院第6回院内発表会
吉山 崇……26
■平成23年度厚生労働省予算案
(結核感染症課・生活習慣病対策室・がん対策推進室)
……27
……31
▽予防会だより・シールだより
○マンモグラフィ講習会・乳房超音波講習会のご案内
○新結核関連切手紹介シリーズ(5)
ベルギーの慈善切手 第2弾
〔表 紙〕複十字病院 しだれ桜
(秋篠宮両殿下御視察記念植樹 平成10年4月8日)
〔カット〕佐藤奈津江
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放射線とその健康への影響
結核予防会
島尾 忠男
顧問 今回の東日本大震災で東電の福島第一原発が大きな
地球上では,今回のような事故がなくても,宇宙や地
被害を受け,原子炉から放射能を持った物質の漏れが
球内部からの放射線や空気中のラドンなどによる外部
起こり,その健康への影響が心配されていますので,
被曝があり,これに食物からの内部被曝を加えると1
放射線と健康との関連について説明します。
年間に2.4ミリシーベルト(mSv)の被曝がありますが,
放射線のプラスとマイナス
1.5mSvといわれています。
放射線と人間の関係は,明治28(1895)年にレント
今回の福島での原発事故に関連して起こりうる内部
ゲン博士がエックス線を発見したことに始まります。
被爆は,現在の状況では極めて微量であり,特に野菜
人体を透過する能力があり,それを写真乾板で写し出
などは調理する前に洗ったりすれば,放射線を出す物
すことができるエックス線は,すぐ医療にも応用され,
質の量はさらに少なくなり,健康への影響はないと
まず骨折などの診断,続いて空気を多く含んでおり,
いってよいと思います。水道の水に放射性沃素が混
もしそこに肺結核などの病巣ができると,そこだけは
じっていることが問題になり,乳児では特に沃素が甲
エックス線を通しにくくなるので,造影剤なしにも病
状腺に蓄積しやすいために,安全基準を超えた場合に
巣を写し出すことができる結核やがんなど肺の病気の
使わないように勧告されました。この安全基準自体が
診断に応用されてきました。このようなプラスの面が
極めて低く設定されているので,少量使用したとして
ある一方,エックス線には人体に対する影響,ことに
も健康への影響は心配する必要はありません。
大量に浴びると白血球が減るなどの悪い影響があるこ
とが分かっており,放射線にはプラスとマイナスの両
確定的影響
面があります。
問題は外部被曝の影響ですが,これにも2種類の影
放射線のマイナスの面を悪用したのが原子爆弾で,
響があります。多量の放射線を浴びた場合に,体の細
核分裂を起こすウランやプルトニウムを原材料に,核
胞が死んでしまう影響で,これを 「確定的影響」 と呼
分裂を急速に起こさせ,その際に出る熱線と放射線,
んでいます。活発に分裂する細胞ほど影響を受けやす
強い爆風と衝撃波で人や建物に大損害を与える兵器
いので,骨髄にある赤血球や白血球を作る造血細胞,
で,その被害の惨状は広島,長崎で経験されたとおり
小腸の内側にある上皮細胞などは影響を受けやすく,
です。
細胞分裂が起こりにくい骨や筋肉(心臓も筋肉です),
核分裂をゆっくりと起こさせ,その際に出る熱で水
神経を作っている細胞は影響を受けにくいことが分
を熱して蒸気にし,タービンを回して発電しているの
かっています。
が原子力発電です。ゆっくりと核分裂が起こっている
広島や長崎の場合には,放射線被曝のほかに,高熱
炉心や使用済み核燃料を収納している水槽は,大量の
や爆風の影響もありましたが,純粋の高度の放射線被
水を循環させて冷やしているのですが,その電源が地
爆が起こったのが,1999年9月30日に茨城県東海村で
震の影響で停電し,津波の影響で非常電源も壊れて冷
起こった臨界事故で,推定で18シーベルト(Sv)の
やすことができなくなり,トラブルが起こっているの
被曝を受けた方が82日後に,8Svと推定される被曝
が今回の事故です。水素爆発が起こって,建屋が壊れ,
を受けた方は199日後に,最高の医療にも関わらず亡
放射性物資が外部に漏れてしまいました。
くなっておられます。推定で1-4.5Svの被曝を受けた
内部被曝と外部被曝
2
日本ではラドンの量が少ないので,自然被曝線量は
もう一人の方は,骨髄移植を受けて一命を取り留める
ことができました。(注釈:今話題になっている各地
放射線の健康への影響としては,人体が直接に外部
の放射線の量の単位はマイクロシーベルトμSvで,
から放射線を受ける影響(外部被曝)と,放射線を発
1シーベルトは1,000ミリシーベルトmSv,あるいは
しているものが付着している飲食物を摂取して,体の
100万マイクロシーベルトμSvとなります。) 内部から受ける影響(内部被曝)の2種類があります。
500mSvの被爆を受けると,リンパ球の一部が死ん
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でしまい,免疫が低下し,細菌やウイルスで起こる病
ん。結核患者が診療中に毎月撮影している胸部エック
気にかかりやすくなります。分裂増殖が活発に行われ
ス線直接撮影の被曝線量は1回30μSvくらいですか
ている受精後8週くらいまでの胎児では,100mSvの
ら,毎月撮っても360μSv(0.36mSv)で,許容範囲内
被曝でも細胞が死ぬおそれがあります。がんの放射線
です。
療法は,この性質を利用して,活発に増殖しているが
放射線を利用する診療行為の場合には,患者さんを
ん細胞に放射線を浴びせ,殺してしまうことを狙って
放射線に被曝させることのプラスとマイナスを考える
行われますが,周囲の健康な細胞への影響を少なくす
必要があり,専門医はプラスのほうが大きい場合に検
るため,放射線を出す源を病巣中心に回転させて,が
査を指示しています。胸部疾患の診断に良く用いられ
んのある場所以外の健康部位への被曝を少なくしてい
ているCT検査は,1回で7mSvになりますが,もし
ます。
結核や肺がんを適切に診断できなかった場合のマイナ
スを考えますと,専門医が指示した場合には,受ける
確率的影響
利益のほうが大きいことを納得していただけると思い
500mSv以下の被曝では,細胞の中の遺伝子が傷害
ます。
されて,白血病やがんになりやすくなることが,広島
心配な風評被害
や長崎の被曝者の方を追跡した成績から分かっていま
す。100mSv以上被曝した場合に,その後長期間経っ
受ける放射線の被曝線量が少なくても,少ないなり
た後でがんになる危険が,被曝線量が多いほど高くな
の影響はあるという現在の考え方ですから,絶対に大
り,これを専門用語では 「確率的影響」 と呼んでいま
丈夫かと訊かれれば,危険はゼロとはいえませんとい
す。私どもの先輩でも,以前暗室で透視をして,結核
う答えになります。しかし,実際の世の中には,危険
の診療をしていた時代に,一番放射線を受けやすい手
がゼロというものはありません。公共の交通手段でも,
の指に定年後にがんが発生した方が数名おられます。
事故はあり得ます。しかし,その危険は極めて少ない
100mSvより少ない量の被曝で起こる健康への影響
ので存在が認められており,皆が利用しています。し
については,はっきりしたデータはありませんが,慎
かも,ATSの設置など,安全を高める努力が行われ
重な立場をとって,少ない被曝線量でもそれなりに影
ています。
響があると考えて,できるだけ余計な被曝をしないよ
今回の福島の原発事故では,放射能を持った物質が
うに配慮しており,一般の方では上述した自然の被曝
外部に漏れましたので,国は周囲住民への万一の危険
に加えて,人工放射線の被曝限度を1年間1mSvとし
を考慮して,周辺住民の方に避難を要請しました。こ
ています。放射線の仕事に従事している方では,1年
のまま事故が無事に収束することを祈念していますが,
間に50mSvと限度が高い値になっています。
心配なのは風評被害です。同じ線量でも一度に浴びた
皆さんに受けていただいている胸部のエックス線に
場合に影響が大きく,分けて浴びた際には遺伝子の変
よる集団検診での被曝は1回50μSvですから,1年
化を修復できますから影響が少なくなります。これら
間の許容量の20分の1であり,まったく心配ありませ
をご理解いただいて,
行動していただきたいと思います。
「被ばく量と健康への影響の目安」
JCO事故で死亡した作業員2人の被ばく量
6,000∼2万
これ以上の線量では99%以上死亡
6,000∼
7,000
約50%が死亡
3,000∼
4,000
吐き気などの症状が表れる。2号機
地下の水たまりは1,000以上
1,000
500
リンパ球の減少
3号機の作業員(退院)の被ばく量
︵単位はミリシーベルト︶
50
20
福島第1原発周辺で「計画避難の」
対象となる年間被ばく線量
6.9
CT検査(1回)
1
約173∼
180
発がんに影響が出はじめる
50
シー
マイ シー
1㍉ ベルトは1,000 クロ ベルト
原発作業員などの
年間被ばく限度
0.19
0.05
一般人の年間被ばく限度
飛行機で
東京―ニューヨーク間往復
胸部エックス線集団検診(1回)
出典:毎日新聞4月14日朝刊
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東日本大震災 被災地支援計画
公益財団法人 結核予防会
東日本大震災 震災対策委員会
東日本大震災は,平成23年3月11日 午後2時46分ごろ,三陸沖を震源に国内観測史上最大規模(M9.0)をもっ
て発生しました。発生後数日を経て明らかになりつつある地震,津波の被害は,いまだかつて我々が経験したことの
ない惨状を呈しています。また,原子力発電所での放射能漏れ事故という局面も加わり,新たな不安を国民にもたら
しています。
現地では,数百万人の住民が被災するとともに,結核予防会の東北地方支部(福島県,宮城県,岩手県)も,
建物・健診器材に被害を受けています。
結核予防会は,結核,呼吸器疾患,生活習慣病対策を核として,国民の公衆衛生の向上に資することを旨
とする公益財団法人で,生命・健康の危機に直面している被災者の衛生上の課題に取り組む必要があり,取
り組むべき被災地支援計画を以下のように策定しています。
各活動の概要
●健康支援チームの活動形態
・医師または看護師・保健師,事務職(または医療職),
1.募金活動
運転手の3名構成を基本とし,1週間を単位として
街頭募金,受診者,健診受託先企業等ご賛同いただ
ワゴン車で被災地を巡回して活動する。
ける方
診療及び健康相談(面談・体操指導)
2.被災支部の緊急応援
基本健診
被災3県(福島県,宮城県,岩手県)の業務再開に
健康ミニレクチャー等
向けての緊急応援を近隣支部の協力を得て行う。
問診 食欲,睡眠,気分
3.被災地住民の中期的健康支援・医療支援活動
身体症状
住居,財産への物的被害,近親者・知人の死亡といっ
既往
た喪失体験は,被災者の心身の健康に大きな負の影響
尿検査(尿糖,尿タンパク) 血圧 体温 体重
をもたらし,医療によるケアを必要とする状態が多く
4.結核対策
発生するが,それらはむしろ,避難場所・ライフライ
高齢等既感染者の環境悪化に伴う結核の発病,集団
ン・食糧といった,生きるために最低限必要な手段が
生活での感染が懸念される。
確保された後に,多くが明らかとなる。
時期的には6ヶ月近辺で検診を行う必要あり。
特に,福島原子力発電所周辺より避難を余儀なくされ
た住民にあっては,さらに放射線被爆の不安と対峙して
おり,健康相談の必要は高まっているものと考えられる。
支援内容 結核対策チームを関東甲信越の支部を中心
に準備する。
また,環境の悪化と疲労・ストレスに伴い懸念されるの
レントゲン車の出動
は種々の感染症であり,その対策と予防が必要となる。
胸部XP撮影,読影(集団感染の疑いがあ
結核予防会は,健診機関として健康相談を通じて心
る場合には,QFT等による検査を行う)
身のバランスを取り戻すための支援を行うとと
もに,医療機関として呼吸器系その他の診療支
【結核予防会 震災対策委員会の活動体制】
援を行う。
●支援内容
・健康支援としては,被災3県(福島・宮城・
岩手)に同時に3チームずつ,第1期として
4∼6月の12週間 にわたり展開する(のべ
108チーム)。
・医療支援としては,被災地の拠点病院等に呼
吸器科をはじめとする医師を派遣し,中長期
にわたる支援を行う。
4
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秩父宮妃記念結核予防功労賞第14回受賞者
秩父宮妃記念結核予防功労賞は,平成7年8月25日逝去されました秩父宮妃殿下のご遺言に基づき,財団
法人結核予防会(当時)に賜りましたご遺贈金を原資として,結核予防に大きな功績のあった方々,あるい
は団体を顕彰し,もって結核予防の一層の推進を図るとともに,半世紀以上にわたり結核予防会総裁をつと
められた妃殿下のご遺志にお応えし,その御名を永く留めようとするものです。
本会では昭和24年の第1回から第48回まで,結核予防全国大会式典の際に165人,24団体を「結核予防功労
者」として表彰してまいりました。この秩父宮妃記念結核予防功労賞は,この結核予防功労者の制度をさら
に発展させ,スケールを大きくしたもので,賞の種類も増やし,授賞対象も世界にまで広げております。
本賞は,結核予防全国大会式典の席上で,総裁秋篠宮妃殿下から表彰していただいております。ただし世界賞に
ついては,国際結核肺疾患予防連合(IUATLD:世界各国の結核予防会の連合組織)の世界大会で,本賞を世界
にアピールする意味をこめて,席上,本会代表から表彰することとしております。
今回の受賞者は,国際協力功労賞1名,事業功労賞団体1個人9名,保健看護功労賞3名,の計13名1団体で,
第62回全国大会が中止になりましたので,別途表彰式を予定しております。また世界賞受賞者1名については,10
月26日から30日にかけてフランスのリールで開催される国際結核肺疾患予防連合の世界会議席上で本会代表から表
彰する予定です。
世界賞
リチャード オブライエン
Richard J. O Brien
医師
所属 新診断技術開発財団(Foundation for Innovative
New Diagnostics)製品評価実証部長
出身 アメリカ
ウエストバージニア大医学部卒。米国疾病予防センター
(CDC)の結核制圧部にて臨床研究に従事(1982-1991年)
,
結核の新薬・診断技術の治験共同体を統括(1996-2004
年)
,
新薬や診断法の研究拡大に尽力してきた。
またこの間,
WHO結核部に出向し,研究開発を主導(1991-96年)した。
国際レベルの結核制圧活動では,内科,呼吸器科,予防
医学/公衆衛生の専門性を背景に,卓越した見識をもって,
WHO,ストップ結核パートナーシップ,抗結核薬開発世界連
合(Global Alliance for TB Drug Development)
,国際結
核肺疾患予防連合(IUATLD)等で,主に結核の新薬・診
断法の研究開発の分野で中心的役割を演じておられる。わが
国でも国際結核セミナー等で新薬開発に関する講演をされた。
2004年より,
スイス・ジュネーブのFIND(Foundation
for Innovative New Diagnostics/新診断技術開発財団)
にて,主に結核の新診断技術開発における治験を総括
されている。
国際協力功労賞
すどう
あきこ
須藤 昭子
医師
クリスト・ロア宣教修道女会
終戦の前年に大阪女子高等医学専門学校(現・関西
医科大)に入学され,在学中,兵庫県の病院を手伝い
していた時に,カナダ人の修道女たちが「死の病」と
恐れられていた結核患者の世話をしていたことに感動
し,医師として生きる決意を固め,洗礼も受けた。
その後,四半世紀にわたり西宮クリスト・ロア病院に
勤務し,国内の結核医療に従事し,同病院の閉鎖をきっ
かけにカナダに留学した。そこで,ハイチの死亡原因
の1位が結核だと知り,自ら志願してクリスト・ロア宣
教修道女会から派遣されるかたちでハイチに赴任した。
28年間ハイチの結核患者の治療に携わってきた。ハイ
チは結核の罹患が高く療養所には連日200人以上の患者
が詰めかける状況の中,貧困にあえぐハイチ国ではクー
デターや国連による経済制裁などで混乱が続き,町では
政情が不安定になるたびに暴動や略奪が繰り返された
が,結核患者のために現地を離れようとはしなかった。
一昨年第一線を退いたが,現在もハイチで地震被害
からの復興と結核医療を絶えず支援している。
保健看護功労賞
たいら
せつこ
平良 セツ子
保健師
宮古福祉保健所 保健総括兼健康推進班長
昭和48年から宮古保健所管内の離島の駐在保健師を
皮切りに,15年間結核在宅患者の治療や家族の二次感
染予防指導,結核検診の受診率向上のために地区組織
を活用し,住民への啓発普及に献身的に取り組んだ。
患者管理表(ビジブルカード)を患者基本情報・菌検
査・治療状況・服薬状況・接触者情報等,地区保健師
が使いやすい様式に改編し,患者管理の効率化を図り
現在も活用されている。また,移動するホームレスの
DOTS支援や接触者健診,定期健診等を実施し感染拡
大防止に貢献した。医療機関では,呼吸器症状受診者
のマスク着用と優先診療,院内感染対策委員会の設置
指導等,院内二次感染防止対策を推進した。発見の遅
れで院内感染が散発していた高齢者福祉施設では,感
染症委員会を発足させ,早期発見・早期治療のための
定期的な職員研修等を実施。
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一方,予防接種率の向上にも努め,その結果,平成
21年度結核罹患率1.9に激減し,現在は,結核低蔓延
地域として潜在性結核患者管理等予防対策に取り組ん
でいる。マスク対策,保健所広報車で夜の巡回,マス
コミ等を活用した広報で普及拡大が推進され,新型イ
ンフルエンザ対策でも功を奏し県内で一番少ない発症
となり呼吸器感染症予防対策に貢献した。
もりした
みゆき
森下 美幸
看護師
財団法人結核予防会大阪府支部大阪病院 看
護師長
と保健所の連携の強化に取り組んだ。服薬手帳の作成
やDOTSカンファレンスの立ち上げ等,治療終了に向
けた服薬支援のための体制整備に関わりながら,九州
地区結核予防婦人研修会でDOTS事業について積極的
に発表するなど地域関係者への普及啓発に努めた。
一人ひとりの患者に対する丁寧な対応や結核対策の
進むオランダを視察するなどの自己研鑽を深める姿勢
は県内保健師の結核対策への関心を高め,現在,結核
担当保健師の相談役として指導的役割を担っている。
事業功労賞(団体)
ふくしまけんけんこうをまもるふじんれんめい
福島県健康を守る婦人連盟
森下氏は,現在の勤務先で平成10年に結核病棟へ配
属となり,結核に対する偏見や将来に不安をもつ患者・
家族に,正しい知識や感染予防,服薬の重要性を指導し
た。また,隔離を伴う入院生活が持続できない患者には,
精神的援助をしながらも確実に服薬できるよう支援した。
平成13年には,糖尿病を合併した結核患者を対象に,
食事に関するパンフレットの作成や,データをもとに
食習慣の改善に向けた指導をした。平成19年には看護
師長として結核病棟に配属され,結核の治療や指導を
円滑に進めるため,結核を漫画で分かりやすく記載さ
れた「結核マンガ読本」を医師らとともに見直した。
この冊子は,保健所からも譲渡依頼があり,今では共
有しながら結核患者の治療中断防止を図っている。
平成20年には,他施設から結核についての講演依頼
を受け,医師とともに結核予防啓発活動を行った。平成
21年には患者の治療完遂に向けて,入院から退院後も,
病院と保健所間で情報を共有しながら服薬支援方法の
連携が実行可能な「服薬継続するための連携アセスメ
ント票」を作成し,院内DOTSだけでなく,地域との定
例会議に使用するなど地域連携へ積極的に取り組んだ。
きぞえ
しげこ
木添 茂子
保健師
宮崎県延岡保健所
福島県健康を守る婦人連盟会長
佐藤 裕子
団体役員
福島県健康を守る婦人連盟は,昭和43年に福島県婦
人団体連合会,福島県農協婦人部協議会,福島県母子
寡婦福祉連合会の3団体が主体となり,
「福島県結核
予防婦人会」として設立された。その後,健康全般を
見据えた婦人団体の役割を目指し,昭和51年に「福島
県健康を守る婦人連盟」に改称し,
「家族の健康は主
婦の手で」
というスローガンのもと活動を展開している。
昭和55年度より毎年県内4方部において健康集会を開
催し,地域における結核の現状について研鑽を深め,結
核予防思想の普及啓発と健康意識の向上に努めている。
複十字シール運動においては,街頭キャンペーンや
健康まつり等で積極的に運動を展開し,募金実績は福
島県全体の50%以上を占めるなど,その果たしている
役割は非常に顕著である。
また,結核とエイズの合併症が問題となっているこ
とから,12月1日の世界エイズデーに併せて,県エイ
ズ対策推進協議会にレッドリボンを贈呈するなど県民
の健康づくりに多大な貢献を果たしている。
事業功労賞(個人)
ふかい
しまお
深井 志摩夫
昭和56年に宮崎県に奉職,以来,多数の結核患者の
家庭訪問を行い,地区活動の一環として結核対策に取
り組んできた。平成4年度に結核研究所の長期研修受
講を契機に結核対策への関心を高め,
「延岡保健所にお
ける予防可能例」 の調査を実施した。その結果を基に
保健師の初回面接技術および対策の見直しを行い,平
成6年6月にドイツのマインツで開催されたIUATLD
の第1回看護学会にて発表した。
その後,宮崎県内結核担当保健師の服薬支援の取り
組み状況を調査し,保健師活動の充実を図ると共に,
入院患者の支援を通して,結核病床を有する医療機関
6
医師
独立行政法人国立病院機構茨城東病院 名誉
院長
昭和45年慶應義塾大学医学部を卒業後,同大学外科
教室入局を経て昭和50年から平成22年まで国立療養所
村松晴嵐荘(現独立行政法人茨城東病院)に勤務した。
平成13年4月に国立療養所晴嵐荘病院院長に就任以降
は,結核等呼吸器疾患に関する中心的施設として,地
域の関係医療機関と連携して,高度で専門的な医療及
び情報を提供するとともに,地区医師会理事や,社団
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法人茨城県病院協会常任理事として活躍した。
また,茨城県常陸大宮保健所・ひたちなか保健所の
結核診査協議会委員や感染症診査協議会委員として結
核診査に携わる関係者に必要な指導や助言を行うと共
に,茨城県総合健診協会の読影委員として県内の読影
医師への指導,また,地域の医療機関に対しても,読
影指導や接触者調査の範囲指導を行うなど地域医療の
向上,公的機関への協力等幅広く献身的に尽力した。
さらに,臨床研修医の指導育成にも熱心に取り組み,
指導を受けた医師は,全国各地で治療・予防の第一線
で活躍している。
しおの
たみお
塩野 民雄
医師
元群馬県衛生環境部参事兼伊勢崎保健所長
元群馬県健康づくり財団 嘱託医
昭和29年6月群馬県職員として奉職し,昭和40年4
月からは群馬県内の各保健所長を歴任され,結核制圧
のための普及活動,結核予防事業の推進及び地域住民
の結核健康診断や予防接種の受診率向上に向けて,積
極的に尽力された。
群馬県を退職後,
平成6年から平成22年3月まで
(財)
群馬県健康づくり財団の結核検診読影医師として,胸
部間接読影,精密検査の読影を担当し,また,平成14
年4月から平成20年3月まで(財)群馬県健康づくり
財団の胸部疾患専門委員会の委員長として群馬県内結
核検診に携わる多くの関係者に助言・指導を行い,結
核医療・結核予防に努められた。現在は後進に道を譲
られているが,
結核医療に尽くされた功績は顕著である。
たかぎ
健診を担当し,草加八潮地域連携呼吸器研究会の代表
世話人として呼吸器疾患全般の知識の普及,病診連携
に貢献している。
おおむら
ますいち
大村 益一
医師
医療社団法人平静会 理事長
大村病院 院長
昭和30年日本医科大学医学部を卒業後,財団法人生
光会清瀬療養所に勤務し,結核治療に携わられた。昭
和36年には,地域の健康を守ることを目指して内科・
小児科の医院を市川市に開設し,昭和63年からは現在
の大村病院として,地域に根づいた医療を目標に尽力
されている。また,平成19年に協会けんぽ指定の健診
センターを併設し,住民健診を積極的に行うなど,結
核をはじめ,生活習慣病の早期発見に努力されている。
結核対策については,昭和54年より市川保健所結核
診査協議会委員及び委員長として,30年の長きに亘り
結核医療基準の普及に貢献された。ホームレス健診に
おいても,困難事例もある中,協力医療機関として多
くのホームレス者を受け入れ,排菌者の一次診療に携
わり,入院治療につなげる等,地域に密着した医療機
関の管理者として地域医療の推進・発展に尽力され,
その功績は多大である。
たけうち
としお
武内 駿男
医師
元福井県健康福祉センター 所長
元財団法人結核予防会福井県支部 副支部長
ひろし
高木 寛
医師
高木クリニック 院長
昭和52年東京慈恵会医科大学を卒業後,同大学病院
第4内科に勤務し,その間に自治医科大学呼吸器内科お
よび英国ロンドン大学ハマースミス病院呼吸器科に留学
した。昭和63年より東京慈恵会医科大学柏病院へ移籍
し,内科講師を経て平成6年11月より高木クリニック(平
成7年高木外科内科から名称変更)を開設している。
現在まで千葉県柏保健所,埼玉県草加保健所,越谷
保健所の結核診査協議会委員および委員長を通算15年,
草加保健所の結核相談(予防医務)嘱託医を11年務め,
結核予防および結核医療の適正化に取り組んでいる。
また,学校医の活動を基に平成15年から草加市立小
中学校結核対策委員会会長として結核に関する知識の
啓蒙に努められている。
草加八潮医師会では,草加市胸部(肺がん・結核)
昭和34年に信州大学医学部を卒業後,福井県敦賀保
健所に医師として勤務し,結核検診や患者への指導,
また,結核診査協議会書記として,福井県の結核対策
にあたった。
昭和35年には,旧厚生省が実施した成人病基礎調査
に参加したほか,昭和39年からは福井県三方診療所の
医師として,地域住民の健康調査と生活指導を行うな
ど,地域医療,公衆衛生の向上に尽力した。
昭和43年から平成3年まで各病院に勤務し,結核の
研究,治療,住民の健康調査などにあたった後,平成
3年からは,福井県武生保健所,福井保健所に保健所
長として勤務し,結核診査協議会の主催,運営をはじ
め,県の結核対策の指揮を執り,福井県の結核予防,
医療に大きく貢献した。
福井県を退職後,平成13年からは,
(財)結核予防
会福井県支部の監事,副支部長に就任,支部の育成,
指導とともに,県民の結核予防の普及啓発活動に関す
る事業に尽力した。
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みやけ
あきえ
三宅 鑑江
医師
元多治見保健所 所長
疾病予防等に取り組み,結核予防の普及をはじめ,地
域医療の発展・向上に多大な貢献をされ,その功績は
多大なものがある。
みずはら
ひろゆき
水原 博之
昭和41年2月に岐阜県に奉職され,同年4月多治見
保健所勤務から多治見保健所長として退職するまで通
算29年にわたり地域の結核予防の対策,推進に尽力さ
れた。
多治見保健所が所管する東濃地域は窯業の盛んな地
域であり,じん肺による結核罹患率が高く,特に昭和
40年代後半からは窯業の発展に相まって結核罹患率が
全国平均の3倍にまで増加し,その対策を講じること
が喫緊の課題であった。当時,保健予防課長であった
三宅氏は,結核と窯業の関係について疫学調査を実施
し,因果関係を明らかにし,その結果を基に保健所と
して初めてじん肺問題に着手するに至った。さらにこ
れが契機となり,市町,医師会等関係機関の連携が図
られ,結核対策に対する体制が整備された。
また,多治見保健所在勤中は,事業所の作業環境の
改善,結核検診の普及,若年層の新規結核患者発生の
防止等,結核予防対策に積極的かつ意欲的に取り組み,
結核罹患率,有病率は大幅に減少した。これらの事業
は今なお継承されており,東濃地域における結核予防
対策の礎となったといっても過言ではなく,その功績
は誠に大きなものがある。
岐阜県職員退職後も恵那保健所非常勤医師として,
結核健康診断に従事すると共に(財)岐阜県産業保健
センター非常勤医師として,関係者はもちろん地域住
民の厚い信望のもとに事業所や住民の結核検診等を通
じて,現在も地域の公衆衛生に貢献している。
おか
昭和30年九州大学医学部卒業の後,1年間の実地修
練を終え翌年4月に九州大学付属結核研究所(現胸部
疾患研究施設)に人局し結核医療の道を選ぶ。当時猛
威を奮っていた結核で叔父を21年に,叔母を31年に亡
くし,また級友二人も失った。
教室では約11年間結核と呼吸器疾患の病理,内科,
外科治療を研讃し,次いで国療屋形原(現福岡病院)
にて10年間臨床経験を重ね,その後も民間病院に移り
10数年臨床活動を続けていた。平成6年6月結核予防
会福岡県支部の招きで同支部の一員として勤務,その
後第一線は退き嘱託医となるも,現在なお診療所長と
して「予防,早期発見,治療」を軸に活躍しながら胸
部X線・CTの読影などで後進の指導にあたっている。
また昭和57年3月以来今日まで福岡市結核診査部会
(旧診査協議会)委員,委員長を,また副支部長時代
には福岡県及び北九州市結核対策協議会委員を務める
など結核保健行政への貢献は少なくない。
みやぞの
はるき
宮薗 晴樹
医師
宮薗外科医院 院長
あきら
岡 瞭
医師
元岡内科診療所 所長
昭和43年岡山大学医学部卒業後,国立岡山病院,岡
山大学医学部附属病院,国立療養所南岡山病院の勤務
を経て,昭和59年岡内科診療所を開業。
呼吸器の専門医として,昭和63年から倉敷保健所結
核診査協議会の委員及び委員長として,22年間,結核
の適正医療の診査・普及及び結核まん延防止に努めた
ほか,現在まで30有余年にわたり,地域の結核医療対
策の向上及び結核予防の推進に比類のない貢献をした。
このほか,幼稚園,学校等の校医,倉敷保健所管内
教育委員会結核対策委員会の委員及び委員長として,
長年にわたり,教育分野での児童生徒の結核予防対策
推進の中心的役割を果たした。
現在は後進に道を譲っているが,地域住民の診療,
8
医師
財団法人結核予防会福岡県支部結核予防セン
ター 診療所長
昭和26年に県立鹿児島医療専門学校(現鹿児島大学
医学部)を卒業後,インターン等を経て,昭和33年に
医院を開設し,現在に至る。
開設当時は,結核が国民病とされた時期に当たり,
開設当初から結核指定医療機関としての指定を受け,
通院外来患者の結核診療に数多く携わった。
同時に,昭和33年から近年に至るまで,小・中学校
や幼稚園等の嘱託医として,幼児,児童・生徒の結核
対策を含む健康管理に取り組む。
また,昭和43年1月から平成21年3月までの42年間
は,鹿児島県加世田保健所結核診査協議会の委員及び
委員長代理として,地域における結核対策の推進と適
切な治療及び感染拡大防止のために尽力する。
さらに,保健所の嘱託医や地元医師会の理事など務
め,地域医療に多大な貢献をされてきた。
58年間の長きにわたり,地元に密着した医師として,
結核対策の変遷の歴史と共に公衆衛生行政の推進・進
展に取り組んでこられた功績は極めて顕著である。
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国際シンポジウム
∼世界から関西の結核を考える∼
ストップ結核パートナーシップ日本
タイトル:俳人尾崎放哉の「咳をしても一人(Coughing even;alone)
」から。咳をしても1人じゃないぞ!
ストップ結核パートナーシップ日本だより №
国際シンポジウム∼世界から関西の結
核を考える∼が,ストップ結核パート
ナーシップ日本と関西大学社会安全学部
の共催で,1月15日,関西大学 高槻ミュー
ズキャンパス ミューズホールで,開催さ
れました。300人近くの方が参加され,
結核関係者のほか,学生さんの参加も多かったのが印象的でした。
関西地域は結核罹患率が全国一高いだけでなく,結核罹患率の高いアジア諸国と交流が
活発であり,今後の関西地域の結核対策は世界的な視点に立って進めていくことが必要と
なっていくという,高鳥毛敏夫関西大学社会安全学部教授のあいさつで始まりました。
第一部では,海外から結核対策の実務経験豊富なシンポジストをお招きし,世界の視点
から関西地域の結核対策のあり方を考えるということで,Dr Jacob Kumaresan WHO健
康開発センター所長が,WHOの健康政策とストップ結核パートナーシップ戦略について,
患者の立場で,Ms. Carol Nawina Nyirenda WHOストップ結核パートナーシップ会議委
員が,WHOストップ結核パートナーシップの現状と課題と題して話しました。次に,フィ
リピンの貧困層に対する結核制圧の取り組みと成果について,Dr. Roderick Pobletey結核
予防会フィリピン事務所副所長が,最後に,米国の都市における結核対策の現状とそのプ
ログラムについて,Dr. Paula Fujiwara国際結核肺疾患連合議長から講演がありました。
世界の結核対策の潮流はいまやDOTS戦略とあわせて,政治,行政,医療機関,民間団体,
研究機関に属する人々と市民が協働したパートナーシップ戦略に移されてきています。こ
れは,結核のみならず公衆衛生領域の健康問題解決方策としての戦略の大きな可能性を秘
めています。この保健戦略と関西の結核対策のあり方について考えるというのが,15回の
シンポジウムの目的の1つです。まず,和歌山県の結核罹患状況と結核医療の現状と今後
の課題について,駿田直俊国立病院機構和歌山病院副院長から,兵庫県の結核罹患状況と
結核対策の現状と今後の課題について,田所昌也兵庫県健康福祉部健康局疾病対策課長か
ら,そして,大阪市の結核罹患率と結核対策の現状と今後の課題について,松本健二大阪
市保健所感染症対策監からの報告がありました。
次に,あいりん地域の結核対策の現状と課題ということで,NGOである井戸武實NPO
ヘルスサポート大阪・事務局長から,さらに,地域の結核対策と結核菌のサーベイランス
の現状と課題ということで,田丸亜貴大阪府立公衆衛生研究所感染症部細菌課主任研究員
から,新しい検査法に関して報告がありました。
最後に,甲賀保健所管内における外国人の結核の対策に関して,大井恭子滋賀県甲賀健
康福祉事務所健康衛生課主任保健師から,問題提起がありました。
コメントとして,関西地域における結核対策への期待として,この10年の結核対策のま
とめが 高山佳洋大阪府保健医療部医療監から話されました。
総合討論では,下内昭公益財団法人結核予防会結核研究所副所長が,パートナーシップ
のひろがりに期待するとしめくくりました。
このシンポジウムは,昨年7月に大阪大学で開催されました,「関西地域のこれからの
結核対策のあり方を考えるセミナー・意見交換会」の第2段の企画です。
関西では,様々な,官,民,専門の組織,ボランティアの組織などが現実に対応したアプロー
チをそれぞれがしており,その為,同じ関西地域であっ
ても地域ごとに異なった状況を有しています。そのよ
うな中で,将来的な関西地域の結核対策のガバナンス
の主体となる組織・団体の設立を見据えての今回のシ
ンポジウムとなりました。STBJの事業としては,国内
ハイリスク地域・グループへの結核対策支援(定款1
啓発)にあたります。これからもこのようなシンポジ
ウムの開催などを含め,
支援をしていきたいと思います。
Coughing even; not alone
宮本 彩子
事務局次長 16
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結核対策
活動紹介
小児結核の対策について
∼第1回首都圏小児結核症例検討会の開催∼
東京都福祉保健局健康安全部感染症対策課
宮本 謙一
課務担当係長 1 小児結核の現状
小児の結核患者数は,1960年代以降,成人・高齢者
よりも速い速度で減少を続けており,2009年の全国の15
歳未満の結核新登録患者数は73人となっている。このう
ち58%(42人)を近畿圏と首都圏の都市部が占めている。
小児(15歳未満)新登録結核患者数の推移
児結核研究班の先生方を中心に,近畿地区と同様に小
児結核症例数の多い首都圏での症例検討会開催を望む
声が高まっていた。
そして,2010年11月20日(土曜日)
,台東保健所にて
第1回首都圏小児結核症例検討会が開催された。小児
結核研究班の先生方,症例を提示した横浜市大付属病
院,都立小児総合医療センター,各症例担当保健所の関
係者の皆様,そして会場を提供した台東保健所の皆様
など,多くの関係者のご尽力により,第1回にもかかわ
らず約100名が参加する素晴らしい症例検討会となった。
小児(15歳未満)新登録患者 都道府県別割合(2009年)
急速な患者の減少に伴い,臨床現場や保健所におい
て小児結核を経験することが少なくなり,小児結核患
者の診断の遅れや,患者発生時の対応力の低下が危惧
されている。
2 近畿小児結核症例検討会
このような事情を踏まえ,臨床現場の医療従事者と
保健所等の行政関係者が一堂に会し,小児結核症例に
ついて議論を深め,症例の経験を共有するため,近畿
地区では2003年度から毎年1回,小児結核症例検討会
が開催されてきた。毎回4∼5症例の検討が行われて
おり,関係者間の“顔の見える関係”が作られること
で,近畿地区における小児結核症例の減少と,小児結
核事例発生時の対応力向上に大きく貢献している。
3 第1回首都圏小児結核症例検討会
近畿地区での成果を踏まえ,厚生労働科学研究・小
10
⑴ 基調講演
はじめに,近畿小児結核症例検討会の中心的存在であ
る,たかまつこどもクリニックの高松勇先生の御講演「大
阪における小児結核症例検討会について」と,結核研究
所名誉所長森亨先生の御講演「小児結核対策・研究の
世界的動向−診断技術を中心に」
が行われた。
両者とも
「小
児結核をなくしたい」という強い気持ちが込められた御
講演で,今後は首都圏でも近畿地区に負けないように小
児結核対策に取り組んでいかなければいけないと感じた。
⑵ 小児結核事例の症例検討
基調講演に続き,小児結核事例の症例検討が実施さ
れた。横浜市大付属病院,都立小児総合医療センター,
そして患者居住地保健所の担当保健師による,計4症例
の症例提示が行われ,それぞれの症例ごとに問題点や課
題について様々な意見が出され,活発な討議が行われた。
今回検討された4事例
①父親が感染源と考えられた小児結核性胸膜炎事例
父親が9ヵ月間咳症状を放置した後,
肺結核と診断された。
家族健診にて,2人の子ども(13歳と10歳)がそれぞれ結核
性胸膜炎とリンパ節結核を発症していたことが判明した。
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②母親が多剤耐性結核で家族健診を実施した事例
母親が多剤耐性結核で,4歳と2歳の子どもに家族健
診を実施し,4歳の子供が潜在性結核感染症と診断され
たため,治療等の対応に苦慮した。
③先天性結核が疑われ精査を行った事例
出産後間もない母親が肺結核と診断されたため,子ど
もに先天性結核の可能性があったが,検査入院中に実施
した全身精査の結果,先天性結核は否定され,INHの予
防内服が行われた。
④家族健診を機に診断された小児結核性胸膜炎事例
6歳児が細菌性胸膜炎と診断され,抗生剤投与により
軽快した。しかし,5ヵ月後に父親が肺結核と診断され,
家族健診を実施した結果,6歳児の胸膜炎は結核性のも
のと考えられた。
それぞれ特徴的で課題の多い事例であったが,医療
機関および保健所が工夫を凝らして対応に当たってお
り,参加者全員に参考となる4症例であった。
⑶ 考察
a)感染源について
小児結核の場合,特に小さな子どもの場合は,圧倒
的に接触時間の長い両親が感染源となることが多いと
考えられる。今回の4症例は,すべて両親が感染源と
考えられた。そして,いずれの症例も感染源の受診の
遅れがみられた。子どもに感染を拡げないという観点
からも,社会全体への普及啓発により,有症状時の早
期受診を促すことが重要である。特に,子どもが結核
に感染し発病した場合,医療上の困難さや母子分離の
問題,学校への復帰や教育上の課題,周囲の反響など,
成人以上の難しい対応が求められるということを,世
間に幅広く伝えていくことが必要である。
b)治療について
今回の症例検討会では,小児結核患者の治療につい
て活発な議論がなされた。小児の結核治療に関しては,
特に副作用等の観点から,抗結核薬の種類や投与期間
について迷うことも多い。さらに,多剤耐性結核患者
の接触者に対する潜在性結核感染症の治療については,
予防投薬すべきかどうかを含め,非常に判断が難しい。
小児結核の診療にあたる医師が直接治療について議
論できるというのは,症例検討会の大きなメリットで
あると思われる。
c)患者および家族に対する保健所の支援
保健所の支援という観点から印象に残ったのは,
「母
子分離」と「学校への復帰」についてである。
子どもが結核を発病し入院治療を実施している間,
母親が排菌している場合や排菌の恐れがある場合は,
母親は子供に面会することができない。この期間,保
健所が母子と医療機関の間に入り,母親と子どもを精
神的にサポートしていた。保健所の役割は非常に重要
であったと思われる。
また,小児結核患者の学校への復帰については,結
核への偏見や授業の遅れ,体力の低下などの様々な障
壁が存在する。復帰に当たっては,まず担任教師など
の学校関係者が結核について正しく理解し,その上で
学校・教育委員会・生徒・保護者が,スムーズな復帰
に向けてよく話し合うことが必要である。復帰に向け
ての調整過程で,保健所の役割は大きい。
今回の4症例では,各保健所の努力により,患者・
家族に十分な支援が行われており,他の保健所が支援
を考える上で参考となった。
⑷ 今後の首都圏における症例検討会について
今後,小児結核の発生がなくなることを目標に,行
政・医療機関が連携を強化して対策に取り組むため,
首都圏においても小児結核症例検討会を定期的に継続
して開催していくことが重要である。
「新成人おめでとう!」
世田谷保健所感染症対策課
晴れ着姿の新成人へ結核予防のメッセージ
世田谷保健所では,1月10日(月)に世田谷区民会
館で行われた成人式において,新成人にチラシ等の啓
発資材を配布し,結核予防の普及啓発を行いました。
チラシは,世田谷保健所が東京都結核予防会の協力
を得てこの日のために作成したもので,結核の基礎知
識や,20代でもかかってしまう結核は決して昔の病で
はないことなどをわかりやすく説明しています。
成人式に参加した新成人は4,437名で,当日は多く
の新成人がチラシを受け取り,シールぼうやと記念撮
影するなど盛況でした。
坂本 啓之
右端が筆者
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11
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教育の頁
多剤耐性結核の外科治療
複十字病院 呼吸器センター
白石 裕治
センター長 1.多剤耐性結核の登場
を極力含めるようにしている。
はFQ(levofloxacin, etc)
呼吸器外科の歴史は肺結核に対する外科治療として
多剤併用療法を3ヶ月程行った時点で手術の必要性を
始まった。複十字病院の前身である結核研究所臨床部
判断する。その際に判断基準となるのは排菌停止の有
で1948年に初めて行われた手術も結核に対する胸郭成
無,画像所見改善の有無,耐術能の有無などである。
形術である。その後手術の主体は肺切除術へと移り
基本的には最良の多剤併用療法をもってしてもMDR-
1950年代半ばには結核外科の全盛期を迎える。しかし
TBの根治は難しいという考えの下,可能な限り多く
streptomycin(ス ト レ プ ト マ イ シ ン),para-amino-
の症例に外科治療を行うようにしている。
salicylic acid,isoniazid(イソニアジド)などの抗結
核薬が相次いで開発され,結核外科の役割は徐々に薄
図1.複十字病院MDR-TB手術件数の推移
れていくことになる。さらに1970年代にrifampicin(リ
ファンピシン)が登場し結核は薬で治る時代となった。
しかし抗結核薬が普及するにつれ結核菌のなかには
薬剤耐性を獲得するものが出てきた。特に1990年代に
isoniazidとrifampicinという最も強力な抗結核薬2剤
に 耐 性 を 獲 得 し た 菌, い わ ゆ る 多 剤 耐 性 結 核 菌
(MDR-TB)が出現し大きな社会問題となった 1)。
MDR-TBの化学療法は有効な薬剤が限られるため成
功率は捗々しくなかった。そこで治療効果を上げるた
めに病巣を切除する外科治療が再び注目されるように
なった。
その後fluoroquinolones(FQs)が結核治療へ導入
されMDR-TBに対する化学療法の成績向上が期待さ
れた。しかしMDR-TB治療での化学療法の平均治療
3.多剤耐性結核に対する外科治療
成功率は約60%に留まっている2)。また近年ではFQs
以下の二つの場合に外科治療の適応としている4)
と二次注射薬(kanamycinなど)にも耐性を獲得した
(注2)。第一は多剤併用療法にもかかわらず排菌が
超多剤耐性結核菌(XDR-TB)も出現してきている 。
持続する場合である。排菌持続例は通常排菌源となっ
3)
したがってMDR-TB治療における外科治療の役割は
ている空洞を有している(図2)。空洞には多量の菌
依然として大きいといえる。
がおり,これを摘除しない限り排菌を止めることは難
しい。また排菌源を切除して体内の菌量を減らせば,
2.多剤耐性結核治療の流れ
すでに出来てしまった散布巣の制御もつけ易くなる。
当院は2000年にMDR-TBの治療拠点病院として認
第二は多剤併用療法により排菌は停止したが再発す
定され,それ以降全国各地からMDR-TBの治療依頼
る危険性が高い場合である。例えば耐性薬剤数が多い,
を受けるようになった。これに応えるべく最良の多剤
遺残空洞が大きい,糖尿病を合併しているなどの場合
併用療法に外科治療を組み合わせる集学的アプローチ
である。当院のデータでは排菌停止が得られて手術を
で 治 療 成 績 の 向 上 を 図 っ て き た(図 1)。 当 院 の
行った症例の3割弱で,摘出した肺の空洞内容物から
MDR-TB治療の流れを紹介する(注1)。
菌が培養されている4)。したがって空洞が残っている
入院時に喀痰の塗抹・培養検査を行い,培養陽性検
と再発の危険性は高いといえる。また将来再発した場
体については菌の薬剤感受性試験を行う。さらに紹介
合には有効な薬剤が残されておらず治療に極めて難渋
元の菌情報も参考にして使用する抗結核薬を選択す
する危険性がある。そこで再発を予防する目的で病巣
る。その際新たな薬剤耐性を作らないために可能な限
を切除する。
り多くの薬を組み合わせたレジメンを作る。治療薬に
12
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図2.MDR-TB症例(右肺上葉に空洞)
treatment of multidrug-resistant tuberculosis. J Thorac
Cardiovasc Surg 2009; 138: 1180-1184.
5)Pomerantz BJ, Cleveland JC, Jr, Olson HK, et al.
Pulmonary resection for multi-drug resistant tuberculosis.
J Thorac Cardiovasc Surg 2001; 121: 448-453.
注1 MDR-TBの集学的治療
1)FQを含む最良の多剤併用療法を開始
2)3ヵ月程化学療法を行った時点で手術の必要性を判断
3)切除対象は主病巣(空洞や荒蕪肺)で散布巣は残し
ても良い
4)手術後も化学療法を一定期間継続
4.多剤耐性結核外科治療の成績
注2 MDR-TBの手術適応
1)化学療法にもかかわらず排菌が持続
2)化学療法で排菌は停止したが再発リスクが高い
当院では2000年1月から2007年6月までに56例の
MDR-TB症例に対して計61回の肺切除術を行ってい
る。その成績では5例に術後再発を認めたが,3例は
再手術で,1例は化学療法の強化により菌が陰性化し
多剤耐性結核の問題
た。残る1例が現在も排菌中である。術後遠隔期死亡
結核研究所
が2例あったが2例とも結核の再発は認めず,生存し
下内 昭
副所長 ている54例中53例(98%)で治療成功と良好な結果で
あった4)。また米国からも良好な外科治療成績が発表
最近,世界的に多剤耐性結核の問題が大きくとり
されている5)。
あげられるようになり,各国から定期的に耐性率が
WHOに報告されている。現在,初回治療患者の多
5.おわりに
剤耐性率は3.9%と推定されている。多剤耐性結核
MDR-TBに対する化学療法の治療成績は向上して
菌とは抗結核薬の中で最も効果が強いリファンピシ
きているが,肺切除療法を併用する方がより高い成功
ンとヒドラジドの両方に耐性の場合をいい,加えて
率が得られる。強耐性のXDR-TBが出現している現状
カナマイシンなどの二次注射薬とレボフロキサシン
においては積極的に外科治療を行って,MDR-TB症
などのニューキノロンも効かない場合を超多剤耐性
例を確実に根治させることが重要である。
と呼んでいる。日本では2002年に結核療法研究協議
会が行った全国調査で,多剤耐性結核の頻度は初回
文 献
1)Iseman MD. Treatment of multidrug-resistant tuberculosis.
New Engl J Med 1993; 329: 784-791.
2)Orenstein EW, Basu S, Shah NS, et al.: Treatment
outcomes among patients with multidrug-resistant
tuberculosis: systematic review and meta-analysis. Lancet
Infect Dis 2009; 9: 153-161.
3)World Health Organization. Extensively drug-resistant
tuberculosis(XDR-TB): recommendations for prevention
and control. Wkly Epidemiol Rec 2006; 81: 430-432.
4)Shiraishi Y, Katsuragi N, Kita H, et al. Aggressive surgical
治療患者で0.7%,既治療患者で9.8%であった。多
剤耐性結核で治療が成功するのは半数ぐらいであ
り,その他は残念ながら,死に至るか,排菌がとま
らない。既治療患者での多剤耐性結核の発生を防ぐ
には初回治療の際に適切な治療と確実に服薬確認を
すること,また,初回治療患者の耐性率を減らすに
は,多剤耐性結核患者から,他の人に感染させない
ように病院などでの感染予防対策を強化する必要が
ある。
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小・中学校における学校検診は
簡易化の方向
結核予防会
石川 信克
副理事長 平成15年4月に改正された学校保健法(平成21年に
これからの方向
学校保健安全法に改題)では,小・中学校での要精密
検討結果から,現在の方向は以下の通りである。
検査者の選定方法が,全生徒を対象にした問診方式に
1.学校保健安全法で定める定期健康診断項目の「結
変わったが,6年が経過した現在,この方式が有効に機
核の有無」は残す。しかし現行の方法では,対費
能しているか,文部科学省の新たな検討会で見直しが
用効果が低いので,高蔓延国に居住歴があるなど,
行われてきた。最終ではないが,これまでの議論の方向
結核感染のリスクが高い者に対して重点的に対応
と今後の課題を述べる。また検討会の検討の一環として,
し,より効率のよい手法について,引き続き検討
全国の保健所の協力を得て,平成15年∼20年の6年間の
していく。
小中学校児童生徒の結核患者発見状況調査が行われた。
調査結果
て行われている「保健調査票」に統合して使用し
平成15∼20年の6年間に結核を発症した小中学生は
てもよい。ただし,問診項目は原則として現行を
316名(日本国籍262名,外国籍24名,国籍不明30名)
できるだけ生かす。
であった。患者の年齢層は,年齢が高くなるほど人数が
3.結核対策委員会自身は,学校保健安全法施行規則
増える傾向がみられるが,年度によって明らかな患者の
には規定されていないので,必ずしも必要でない。
増減傾向はない。分析対象患者295名のうち,発見動機
学校医が結核の専門的知識を有する者等に意見を
としては,医療機関受診が110名(37.3%)
,接触者健診
聞く必要はあるが,判断する際に参考となる基準
156名(52.9%)
,学校検診19名(6.4%)
,その他10名(3.4%)
をマニュアルで示すことでより効率的にする。今
であった。 学校検診発見患者19名の検診時の問診票の
まで通り結核対策委員会を開催するか,当該事例
項目は,
「本人の予防内服歴あり」が1名,
「家族に結核
について保健所や結核の専門家に持ち回りで対応
患者あり」が9名,
「高蔓延国の居住歴あり」が8名,
「自
を相談するか,いずれでもよいこととする。また,
覚症状あり」が1名,
「BCG未接種」が2名であった。
学校医が,明らかに精密検査を受けた方がよいと
患者19名のうち,感染源が特定された者は10名(父親3
判断できる場合は,結核対策員会の意見を聞かな
名,母親3名,同居の祖父母3名,同居人以外1名)で
くても,精密検査に回してもよいこととする。
あった。小中学生の結核罹患率(人口10万対,6年平均)
14
2.問診票は効率性の観点から,一般の健康調査とし
4.結核の発病はいつでも起こりえるし,いつ転入生
は,全体で0.49,外国国籍は6.2,日本国籍及び国籍不明
が来るかもしれない。学校検診だけでなく日常的
は0.45であり,外国国籍の罹患率が10倍以上高かった。
な健康管理の中で,結核は感染症として忘れては
学校における結核検診の意義
ならない課題である。特に,高蔓延国居住歴,家
近年小中学生の結核患者数が明らかに減少している
族に結核患者がいるなど結核発症のリスクの高い
とは言えず,学校における結核対策は重要である。こ
児童生徒については,普段から健康観察に注意を
れまでの検診の利点としては,健康診断の検査項目に
払う必要がある。
そのためには結核について,
校医・
結核があることで,学校関係者および学校医を含めた
教職員・保護者・児童生徒向けに啓発が必要である。
医療従事者も結核についての関心を高めたことであ
まとめ
る。結核対策委員会は,学校と地域の情報交換の場で
現行の学校結核検診は,今回,問診票,結核対策委
もあり,学校側にとっては感染症の専門家である保健
員会の継続等,一見大きな変革がなされないが,それ
所から助言を得られる貴重な機会となった。
らの適用に関し,マニュアルの中でより簡易化できる
一方,問題点としては,毎年ほぼ1千万人に及ぶ小
方法を示す点で考え方は変わったと言える。学校にお
中学生全員の問診により,6年間で発見された患者数
ける結核対策も,今後これらの方式の見直しを重ね,
は19名(1年に3.2名)であり,対費用効果はかなり低
大きな法的な改正も必要になろう。より効果的な健康
い。また問診票はやや煩雑で,保護者が書くことも,
管理,通年の感染症対策,ハイリスク者への対応とい
学校側が回収することも手間がかかる。
う概念の中で見直されてゆくべきものであろう。
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結核研究所紹介
結核菌の分子疫学的解析
結核研究所 抗酸菌レファレンス部
前田 伸司
結核菌情報科 科長 結核菌は一見全く同じように見えますが,遺伝子
いる株が異なる菌株である確率が高いと判断できま
(DNA)レベルで解析すると菌株ごとに様々な個性(遺
す。逆に,変異しやすいVNTR領域でさえ反復数が一
伝型)があります。このような違いをうまく利用すれ
致するような場合は,同一菌株を調べている可能性が
ば分離された菌の区別が可能となり,感染源の限定,
高いと判断できます。実際の分析では複数のVNTR領
集団感染や院内感染の範囲の特定等に利用できます。
域を組み合わせることによって,結核菌の異同を総合
日本では約10年前から,このような結核菌の型別が公
的に判定します。
衆衛生の現場に応用され,感染事例の裏づけや否定の
多くの利点と今後発展の可能性をあわせ持つVNTR
証拠として利用されてきました。実際に用いられてい
法ですが,ゲノム上のどのVNTR領域を何箇所調べる
る型別法には,制限酵素断片長多型(RFLP)
,スポリ
かでその型別能力が大きく違ってきます。また,それ
ゴタイピング,反復配列多型(variable numbers of
ぞれの国で広まっている結核菌の遺伝系統が異なるこ
tandem repeats, VNTR)分析などがあります。特に
とが多く,どのような組み合わせが最も適切な判定に
VNTR分析法は,判定が迅速かつ容易でさらにデータ
結びつくのかは世界各地で異なります。特にわが国は
比較がしやすいことから,急速に普及が進んでいます。
東アジア地域に位置し,欧米諸国では珍しいタイプの
生物のゲノム上に存在する一定のDNA単位(同じ
結核菌株(北京型結核菌)が全体の70∼80%の割合で
塩基配列から構成されている)が連続して並ぶ領域(ミ
検出されることから,フランスパスツール研究所の
ニサテライトと呼ばれている)において,繰り返し
Supplyらが提唱している国際的標準分析法は,最適
DNA単位が何個存在するかを調べるのがVNTR分析
な分析システムではありません。現在,わが国では国
法です。本分析法は,法医学の分野で親子鑑定や個人
内結核菌の型別のために当研究室で樹立したJATA
特定のためのDNA鑑定に利用されている手法です。
(12)VNTR 分析システム(12箇所のVNTR領域を調
結核菌のゲノムDNA上にも,ヒトと同様にミニサテ
べる)を標準型別法として提唱しています。そして,
ライト(VNTR領域)が存在し,その数は80箇所以上
本分析システムを全国の衛生研究所等の機関に広めて
報告されています。このようなVNTR領域は変化を起
おり,結核菌VNTR分析の普及を図っています。
こしやすく,反復配列数は菌株によって異なることが
分析対象とする領域を定めることにより全国的に統
知られています(図)。つまり,この反復配列単位数
一した遺伝型別データの集積が可能となってきまし
を菌株ごとに分析すれば,同じ株か異なる株かを知る
た。今後は,これまでは難しかった広域にわたる結核
ことができます。また,反復配列単位数の変化頻度は
感染事例での疫学調査において,結核菌の分子疫学解
VNTR領域によって異なっており,変化しにくい(安
析により得られた型別結果を積極的に利用することな
VNTR領域の反復配列数が異なれば,比較して
定な)
どが期待されます。
図 VNTRによる菌株の型別
(a)VNTR領域のDNAをPCRで増幅し,PCR産物の分子量から繰り返し数を算出する。
(b)複数のVNTR領域を個別に解析し,反復数を算出する。各分離株は数字の羅列として表されるので,容易に比較できる。
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平成22年度
胸部画像精度管理
研究会に参加して
平成22年12月9日(木)
・10日(金)結核研究所にお
いて,胸部画像精度管理研究会が盛大に開催されまし
た。結核予防会本部・各支部の医師15名,放射線技師
58名,
フィルム・機器メーカーから9名による胸部直接・
間接フィルムおよびデジタル画像の評価を実施しまし
た。また,デジタル画像については写真およびモニタ
画像をそれぞれ比較しました。続いて,東京特殊電線
株式会社の春日宏明氏から「液晶モニタの原理」
,株
式会社東陽テクニカの小林直樹氏から「液晶モニタの
精度管理」についての講義,東京女子医科大学 坂井
修二先生による「デジタル胸部X線撮影の現状∼原理
から臨床応用まで∼」の講演が行われ,これから主流
になるデジタル撮影および精度管理について,原理か
ら応用まで様々な視点から説明がなされ,今後のデジ
タル装置導入について大変参考になりました。
■胸部画像評価について
平成20年度まで「フィルム評価会」の名称で開催さ
れた,直接・間接撮影フィルムならびにデジタル画像
の評価が実施されました。この会は平成21年度より「胸
部画像精度管理研究会」へ名称変更され今回が第2回
の開催となります。
まず,結核研究所対策支援部放射線学科の星野科長
より下記に記述するそれぞれの評価基準について説明
がありました。
評価基準は写真濃度,コントラスト,尖鋭度等を中
心に間接撮影フィルムは10項目,直接撮影フィルム・
デジタル撮影フィルムについては9項目についてそれ
ぞれ評価し,判定を優れたものから順にA,B,C上,
C中,C下評価とし,読影に極めて困難なものはD評
価,読影不能なものはE評価となります。
評価は昨年同様班長の医師,副班長の放射線技師が
進行役となり,6班に分かれそれぞれフィルムおよび
画像を評価しました。
■画像評価結果について
比較的A評価のフィルムが少なく,目合わせの段階
でB評価からA評価に引上げられたように,完璧なA
評価のフィルムが少なかったようです。B∼C上評価
のフィルムが多く,以前フィルム評価会に出席した頃
と比較して,画質が低下したように思われました。特
に現像かぶりやキズなども見られ,フィルムに対する
精度管理(特に現像)の低下が原因だと思われました。
また,デジタル画像(フィルム)の評価については
以前より画質が向上されているとの声が多く聞かれま
した。これは,日頃の医師,放射線技師,機器メーカー
技術者達の協力のもと,精度がかなり向上した結果だ
と思われます。今後は機器,撮影方法等の精度が向上
16
(財)群馬県健康づくり財団
金古 努
放射線課長代理 され,更に画質が向上することと思われます。
・間接撮影フィルム
A 評 価 は112本 中18本(16.1 % )
, B 評 価 は39本
(34.8%),C上評価は53本(47.3%)でした。
・直接フィルム
A 評 価 は91本 中14本(15.4 % ), B 評 価 は51本
(56.0%),C上評価は23本(25.3%)でした。
・デジタル画像フィルム
A 評 価 は124本 中30本(24.2 % )
, B 評 価 は48本
(38.7%),C上評価は38本(30.6%)でした。
■感想
今後胸部X線検診がアナログ(直接・間接撮影)か
らデジタル撮影に移行する中,今まで評価,検討してき
たアナログ撮影のA評価の写真を利用し,新しいデジタ
ル撮影による画像の評価基準を検討しなければならない
時期に来ていると思われます。そのためには,読影する
医師,撮影する放射線技師,機器メーカー技術者が協
力し合い新たな基準を考えていく必要があると思います。
デジタル画像は近年素晴らしい進歩が見られ,画像
フィルムについては直接撮影フィルムと同等またはそれ
以上になってきている様に思われます。それに伴って今
後直接フィルム,間接フィルムの管理(特に現像管理)
が疎かになりがちになってきてしまう恐れがあります。
今回,A評価・B評価が例年と比較して少なかった傾向
に思われますが,これは各施設の撮影フィルムの精度が
向上したことも考えられますが,目先がデジタル画像に
行きがちで,アナログ処理が疎かになったことが原因で
画質の質が逆に低下していることも考えられるのではな
いでしょうか。今後そういったことも念頭に置き,時代
に沿った胸部画像の管理をこの本研究会を利用し,更
なる撮影技術,
管理の向上に努めていきたいと思います。
また,この研究会に参加して本部,各支部の方々と
様々な情報交換をすることができ大変有意義なものに
なったと思います。今後もこういった研究会が開催さ
れることを望みます。
デジタル画像評価の様子
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第32回(平成22年度)結核予防会事務職員セミナー報告
「サービス向上のための意識改革」
結核予防会福岡県支部
河島 加奈子
企画渉外第1課 平成23年1月18日から20日まで,東京都清瀬市の結
化」ということが必要だと強調されていましたが,自
核研究所で開催された事務職員セミナーに参加しまし
分の現状と比較すると耳の痛いことばかりでした。ま
た。
た,CS向上の基本は「職員全員が接遇スキルを身に
この度の事務職員セミナーへの参加が決まった日よ
つける」ことだと言われ,特に相手の顔が見えない電
り上京するまでの間,私の頭の中では「初めての合宿
話対応に関しては細やかな指導を受けました。特に先
参加への不安」「職場を空けることでの同僚への迷惑」
生から教えていただいた「21日カレンダー」→(人は
「家庭を留守にする心配」などが次々と駆けめぐる中
21日続けると習慣になるというもの)については,自
で,全国の各支部のみなさんと一緒に勉強できるとい
分の弱点矯正のために早速実践しております。
う期待感が交錯し不安な日々を送っておりましたが,
そして2日目のワークショップでは,メンバーそれ
教養を終えて職場に戻ってみると気分は一変し,言葉
ぞれの自己評価が低い項目について,問題点と解決策
では言い表せない充実感を感じながら,微力ながらも
を話し合いました。
組織のために頑張ろうという意識が高まり,やはり参
私の班では,
「エネルギーを一点に集中し,チーム
加して良かったと実感している次第です。
の勢いをつくれるか」と「常に自分づくり・自己革新
セミナーは2泊3日という短期間でありましたが,
にチャレンジしているか」について,まずは互いの業
内容もバラエティに富み,色んなことを勉強し知識を
務について苦労している点を共有しながら討議を重ね
高めることができたことは,何よりの収穫でした。
て発表を行いましたが,要は年々,複雑にして多様化
とりわけ,本部役員の方から結核予防会の活動状況
する健診のサービスを向上させるためには,限られた
や今後の基本方針などの話を直に聞くことができたこ
人材でどのようにすると効率よくこなせるのか,一人
とは,末端の組織で働く私たちにとっては大きな心の
ひとりが考えて仕事に取り組まなければならないとい
支えとなり,今後の励みにもなりました。
うことでした。
さて,今回のメインテーマとなっていた「組織が求
このセミナー参加を機会に意識改革と自己啓発を忘
める事務職員像とは」ということについては,先生か
れることなく,結核予防会を未来につなぐためのパイ
ら講義を受け,班で討議して結果発表などを行いまし
プ役になれるよう日々努力したいと思います。
たが,仕事に対してややマンネリ気味になっていた私
最後に講師の先生方,3日間お世話をしてくださっ
にとっては良きカンフル剤となり,自分自身を振り返
た本部の皆様,仲良くしていただいた各支部の皆様,
るための有意義なセミナーだったと自負しているとこ
ありがとうございました。いつかまた同じメンバーで
ろです。
会える日を楽しみにしています。
高 山 先 生 の「CS接 遇 向 上」
と題する講義では,CS
(顧客満
足度)とES
(職員満足度)につ
いて学びました。CSはESによ
り支えられているので,まずは
ESを高めなければなりません。
その基本は職場改善と組織力強
化であり,具体的には「情報の
共有化,報・連・相の励行,思
い込みの排除」
「計画,実施・
実行,点検・評価,処理・改善
という仕事上の工程管理の強
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3月24日世界結核デー 2011年テーマ解説
結核制圧に向けた闘いに,大きな変革を
結核予防会国際部
世界結核デーは,細菌学者ロベルト・コッホが結核
「2015年までに結核罹患率の増加を食い止め,その後
菌の発見を発表した日(3月24日)にちなんで制定さ
減少に転じさせる」という国連ミレニアム開発目標
れました。国内および世界の結核制圧を目指し,問題
(MDGs)や,ストップ結核パートナーシップの掲げる目
点を共有,対策を立案,そして実行を呼びかけるため
標達成に向け,国際社会が取り組んでいます。しかし成
の運動が世界各地で行われます。
果は未だ十分ではなく,
さらなる強化が求められています。
2011年 の テ ー マ は「ON THE MOVE AGAINST
TUBERCULOSIS / Transforming the fight to-
世界結核デ― キー・メッセージ(概訳)
wards elimination」
(結核制圧に向けた闘いに,大
今こそ,障壁を乗り越え,結核のない世界へ
きな変革を(仮訳))。
結核に取り組む世界の動きが高まっている中,診断
結核への取り組みをさらに進めなければ,2015年までに4000
万人が結核を発病し,800万人が命を失うだろう。21世紀には
治療が可能な結核で1人も死なせてはならない。
法,治療薬,ワクチン等の技術開発,すべての結核患
今こそ,野心的な研究計画を
者を早期に診断し,治療する努力を推し進め,結核対
近年の技術開発により,新しい迅速診断が今年中には可能に
なるだろう。しかし,簡易簡便な検査法,多剤耐性結核の治療
薬,ワクチン開発のための研究資金は不足している。更なる資
金提供を。
策に大きな変化をもたらし,制圧に向けて道筋をつけ
るという思いが込められています。
今こそ,すべての患者に届く公衆衛生プログラムを
世界の結核は今
患者の3分の1以上は
未だ診断されていない…
結核を発病している人の3分の1が正確な診断と適切な治療
を受けることができていない。すべての患者が診断され,治療
を受けられるよう,市民社会,保健医療関係者,企業の連携の
推進を。
アジア,アフリカなどの結核高蔓延国を中心に,世
今こそ,多剤耐性結核治療に野心的な目標を
界では年間940万人が新たに結核を発病し,170万人が
多剤耐性結核の治療を拡げるには,政府の関与,質の良い薬
の安定供給,保健医療関係者やコミュニティの協力が欠かせな
い。2015年までに,すべての多剤耐性結核患者に正しい診断と
効果的な治療を。
死亡していると推定されています。患者発見率(推定
患者数に対する診断された患者数の割合)は63%であ
り,目標とされる70%を下回っています。つまり,結
核患者の3分の1以上は診断されていないと推定さ
れ,患者の早期発見は今後の大きな課題です。
結核/HIVの重複感染,多剤耐性結核の問題も深刻で
今こそ,結核/HIV二重感染による死者ゼロに向けて
目指すゴールは明確である。2015年には結核/HIVの二重感
染で死亡する人を半減する。すべての結核患者にHIV検査を。
HIV治療を受けているすべての人に結核の検査を。すべての
HIV感染者に適切に予防薬や抗結核薬を。
す。毎年新たに発病する結核患者のうち約12%(110万人)
がHIV感染を合併し,その約8割がアフリカ地域に集中
参照Web:
しています。また,毎年新たに44万人が多剤耐性結核菌
・Stop TB partnership:World TB Day 2011, 2010/2011 Tuberculosis Global Facts
・WHO: Global Tuberculosis Control Report 2010
による結核を発病したと推定され,その半数以上を中国,
インド,ロシア,南アフリカの4カ国が占めています。
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結核対策―世界の動向―
ストップ結核パートナーシップ理事会
(2010年10月,南アフリカ)の報告
結核研究所
加藤 誠也
副所長 ストップ結核パートナーシップ理事会はWHOス
HIV結核対策の進歩
トップ結核部と協同しながら,結核対策に関わる各界
結核患者の中でのHIV検査実施はアフリカでは2005
の代表が方向性を議論する機会であり,年2回開催さ
年に11%であったのが2008年には45%に達するなど進
れている。第19回は2010年10月14,15日,南アフリカ
展している。インドでも同時期にHIV検査実施数が4
のヨハネスブルグで開催された。
倍になっている。
2010年7月にウィーンで開催されたエイズ会議でス
多剤耐性結核対策の枠組み
トップ結核パートナーシップと国連エイズ合同計画
多剤耐性結核対策は2006年から始まったWHOのス
(UNAIDS)の間で2年計画の合意書(MOU)が締
トップ結核戦略の中でも重要事項となっているが,対
結された。目標は2015年までに結核に関連したHIV死
策拡大は緩慢なままに留まっている。この原因は様々
亡を半減させることである。これに基づき,様々な活
あるが,政府の関与が不十分なこと,多剤耐性結核の
動が開始されている。
管理能力が低いことの他,グリーンライト委員会(以
下,GLC)が申請国の薬剤購入の可否,対策の評価と
市民団体の活動
監視等の全てを管理してきたが,能力が限られている
今回から市民団体のワーキンググループが加わった。
ために対策拡大の隘路になっている。このため,GLC
市民団体はアドボカシー,コミュニケーション,コミュ
は解散することになり,新しい枠組みが作られること
ニティの参加などによって,重要かつ必須の役割を持っ
になった。新しい枠組みでは,各国がそれぞれの責任
ていることが確認された。なお,新しく理事会のメン
においてGDFその他を通して二次抗結核薬を購入す
バーに加わった市民団体 代表Ms Blessiana Amulya
ることが可能となり,要望がある時のみ,それぞれの
Kumarは,任期切れとなったDr. Jeremial Chakayaの
国に対する技術評価委員会が薬剤の評価を行う。政策
後任として副議長に選出された。
的な助言は必要に応じて行われ,多剤耐性結核対策を
行っている国に対する技術支援はTB TEAMが行う。
新事務局長の選出
すなわち,GLCが全てを管理していたのを改め,基本
長らく務めたDr. Marcos Espinalに代わる事務局長
的に実施国の責任で対策を進めることとして,それに
はルーマニア出身のDr Lucica Ditiu女史(42歳)とな
対してWHOはTB TEAMの機能を用いて技術支援を
ることが,2011年1月19日に発表された。
実施することになった。
まとめ
新ワクチン開発
世界の多剤耐性結核対策の枠組みは大きく変革する
2050年までに結核を根絶させるためには,BCGよ
こととなった。これまではGLCが全てを管理していた
りも効果が高いワクチン開発が必須である。現在まで
が,今後は各国が薬剤の購入も出来るようになり,技
に12の候補ワクチンが臨床試験期に入っており,9候
術支援はTB TEAMに代わることとなる。これによっ
補は既に始まっており,10番目も当年(2010年)中に
てGlobal Fund等の資金も,これによる薬剤購入や技
開始することになっている。しかしながら,画期的な
術支援の需要の拡大をサポートする方向をとるものと
ワクチンにはなっていないようで,ワクチン開発ワー
思われる。
キンググループは今後10年の開発の青写真を作成する
HIV合併結核対策はHIV合併が大きな問題となって
ことになった。Global Planによると,2011∼15年に
いるアフリカを中心に進展が報告されており,数は少
必要な資金は19億ドルとされているが,基礎的研究に
ないとはいえ,感染者が増加し続けている我が国でも
より多く予算配分をする必要があるのではないかとい
取り組みを強化する必要があると思われる。
う意見が出されたのが印象的であった。
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ずいひつ
ベルリン鷗外記念館再訪
∼複十字315号に続く∼
公益財団法人結核予防会
長田 功
理事長 20
11月11日∼15日の5日間,第41回国際結核肺疾患予
である。興味のある人には垂涎の光影であろう。
防連合(IUATLD)世界大会が,結核菌発見者である
長い間のご無沙汰を詫びて,日本から携えてきた2
ロベルト・コッホ(1843-1910)の没後100年を記念し
冊の書籍をお土産として差し出した。一冊は前回のこ
てドイツ・ベルリンで開催された。学会の様子は複十
の記念館訪問記「ベルリン森鷗外記念館一瞥」を載せ
字の前号(337号)に下内研究所副所長により要領よく
た複十字(315号)であり,他の一冊は鷗外の「歌日記」
纏められているので,読んでいただければ幸いである。
についての評論である佐藤春夫の「陣中の竪琴」が最
私は結核予防会を代表して,大会セレモニーにおい
初に掲載された雑誌「文芸」
(昭和9年5月号)である。
て秩父宮妃記念結核予防功労賞世界賞を授与する任を
長い間,私は一読したくてこの本を探してきたが果せ
果たす立場であった。受賞者はG.R.Khatri(カトリ)
ず,たまたまこれが初掲載された当時の雑誌に回り
氏(インド)。大会期間中,シンポジウムやワークショッ
会ったのである。古本とは不思議なもので,それから
プにできるだけ出席する積りであったので,宿舎のホ
半年もたたない間に第2本を手に入れることになった。
テルと会場の往復で時間がほとんど消えてしまうこと
平生,同一の本を2冊も持つことはないのであるが,
になった。しかし,せっかくベルリンまで来たわけで
鷗外か春夫に興味のある人にでも進呈しようかと停め
あるから,4年半前に訪問した思い出の多い森鷗外記
置いていたもので,この記念館かこれを管理するベル
念館だけは訪ねてみることにした。
リンフンボルト大学日本文化科において何かの役に立
最終日の前日の午前,学会の演題プログラムに少々
つこともあるかと持参したものである。私自身はこの
未練を残して,記念館最寄りのS.B
(近郊電車)のフリー
作品は古代エジプトのテーベスの百門に譬えられる鷗
ドリッヒ・シュトラーセ駅に下車した。地図と記憶をた
外の多様な業績の中でも,小さからざる門である詩歌
よりに街路を進むと前回とは街並の雰囲気が大きく変
の分野で重要な意味をもつものと考えているのである。
化していることに気がついた。街路を一筋間違えたこと
ベアーテ女史は流暢な日本語で快活に話をされた。
もあるが,そのためだけではない。建物群そのものは以
現在,副館長の要職に就任していること,最近結婚を
前と同じものであるが,以前のくすんで淀んでいた景色
されたことまで話をされたが,うかつにも「おめでと
が明るく清潔になり,街並が東西統一以後大きく整備
う」と一言を言うのを忘れてしまった。申し訳ない思
されてきたことが感じられた。ようやく新しく,大きく
いである。現在はコッホと鷗外の関係を研究のテーマ
書き直された標示のある,外層が明るくなった石造のア
にしている由である。偶然としても,我々の今回の学
パート内にある鷗外旧居の記念館にたどりついた。
会もコッホ記念を冠したものであり,持ち合わせてい
建物の内に入り,受付で「ベアーテさんは居られま
た学会抄録の表紙がコッホ像で全面を飾っていること
すか」と問いて事情を説明していると「ベアーテは私
を見せると,コピーをさせて下さいと喜ばれた。
ですがどなたですか」と顔を出された。一瞬,怪訝な
鷗外はベルリンのコッホに師事して細菌学を修める
表情をされたが,しばらくして私の説明に,あの時の
ことを留学当初から熱望していた。衛生学の耆宿ペッ
時間外の闖入者かと理解してくれた。「よい時に来て
テンコーヘルについて充実した研究生活を送ったミュ
くれました。これから外出するところだったのです」
ンヘンから最後の滞在地となるベルリンに移る日の
と忙しい時間を割いてくれて,隣の応接室に導かれた。
「独逸日記」にも生々しくその期待が溢れている。
室には数幅の鷗外の書がさりげなく掛けてあった。あ
『(明治20年)4月15日,民顕府(ミュンヘン)を発
の独特の肉細の字体からなり,高湛の署名があるもの
して晋国伯林府(プロイセン国ベルリン)に赴く。ロ
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ベルト・コッホ(Robert Koch)に従ひて細有機物学
五十年」)がありますからお役に立つでしょう。帰国
を修めんと欲するなり。』
後に送りますと約した。
万事が控え目な日記にあって,はっきりと自分自身
一通り話が終わるころ,これからコッホ記念館館長
の希望を表現しているのは稀である。しかし,首都ベ
に電話してあげるから寄っていきなさいと強く勧めて
ルリンでの生活は必ずしも研究だけに専念できる立場
くれたが,時間の関係でせっかくの親切を無にせざる
ではなくなっていたことは不本意であったであろうこ
を得なかった。
となど,ベアーテ女史と話が一致した。
私にとって鷗外は史伝を中心として,学生時代から
何か研究のお役に立てればと伺うと,コッホの日本
細々としたものではあるが,終生の読書となっている
訪問(明治41年)当時の資料がドイツでは入手し難く,
ものであり,鷗外ゆかりのベルリンで鷗外について語
特に当時の日本の結核の状態を知りたいとのことで
り合える人が存在することは至福の体験である。再び
あった。私の属する日本結核予防会(JATA)の師で
フリードリッヒ・シュトラーセ駅で乗車して,新築なっ
あり先輩である2人の著作(青木正和,
「結核の歴史
たベルリン中央駅方面に向かって発車して直ぐ車窓の
―日本社会との関わりその過去,現在,未来」,島尾
右手(北側)に,以前よりもっと大きく美しく森鷗外
忠男,「Living with TB for fifty years 結核と歩んで
記念館の標示がある石造アパートが見えた。
〈TBアーカイヴだより〉
第5回TBアーカイヴ事業推進・
運営委員会の報告
公益財団法人結核予防会
竹下 隆夫
総務部長 平成22年12月22日(水)に第5回TBアーカイヴ事
和郎結核研究所顧問ほか3名で進められているが,ホ
業推進・運営委員会が開催され,最初に岩井和郎結核
ルマリン(フォルムアルデヒド)は特定化学物質で,
研究所顧問ほか3名の臓器ワーキングチームによって
この作業には作業者へのホルマリン蒸気暴露による健
進められている,結核剖検例(病理標本)保存整備に
康障害を防ぐ装置の設置を必須としている。このため,
関する報告があった。
労働基準監督署への届出が必要であり,作業の場所と
結核研究所には,戦前に中野診療所から寄贈された
して選定した結核研究所の裏手に6畳のプレハブ小屋
結核解剖ホルマリン固定保存例164をはじめとする剖
を建て,その内部に「プッシュプル型換気扇装置」を
検資料がプレハブ2棟分あり,その病理解析とデータ
設置し,三鷹労働基準監督署に届け出てから作業を開
化(教材化)や永久的保管方法が課題であった。
始している。
一昨年,これらのうち今後の研究にも役立つ重要な
次に前回委員会以降,新たにご寄贈いただいた「南
剖検・手術臓器,病理標本を選別し,ポリバケツにし
湖院絵はがき」や著書『南湖院と高田畊安』などの報
て200余りを残すこととし,その他は僧侶に来ていただ
告と,大阪の小松病院から「杏医療資料館」の全資料
き懇ろに供養をしたうえで廃棄した。そして,これを
を保管・管理してほしい旨の申し出でについての協議
研究に供するため,昨年から今年にかけて,その病理
が行われた。
所見を記載し,肉眼所見の写真撮影を行い,ホルマリ
また,現在,断続的に本誌に掲載している「結核に
ンを新しい10%ホルマリン液に入れ替え,劣化したポ
関するゆかりの地」訪問取材の報告と今後の予定とし
リ容器を新しい容器に交換する作業を行っている。
て,刀根山・須磨の浦及び富士見高原の療養所跡地や
また,並行して病巣からの結核菌DNA抽出のため
野麦峠の取材について話し合われた。
の資料採取を実施し,抗結核薬導入前と導入後での病
そして,資料の保管場所としては,検体・機械類・
理診断比較に供することとしている。
一部の書籍等は結核研究所エネルギー棟倉庫に,ポス
作業は,TBアーカイヴ事業推進・運営委員会の病
ター・書籍・切手類は結核研究所図書室視聴覚室にす
理標本整理部会(臓器ワーキングチーム)として岩井
ることが決められた。
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エイズ流行の世界の現状
公益財団法人エイズ予防財団 会長
結核予防会 顧問
島尾 忠男
12月1日の世界エイズデーに合わせて,UNAIDS
2009年の1年間に新たにHIVに感染した者の数は
(国連合同エイズ計画)から2009年末現在を含むエイ
260万人,エイズのため死亡した者の数は180万人,成
ズの動向が公表されたので,その報告を中心に,世界
人のHIV陽性率は0.8%と推定されている。
のエイズ流行の動きを眺めてみたい。
地域別に見ると,HIV感染者の推定数はサハラ以南
エイズの流行が始まってから30年が経過した。2009
のアフリカが最も多く,全世界のHIV感染者総数の3
年末の世界の地域別に見たエイズの流行状況を表1に
分の2を占めており,成人のHIV陽性率も5.0%と群
示してある。エイズウイルス(HIV)に感染している者
を抜いて高くなっている。次いで成人のHIV陽性率が
の総数は,エイズを発症しているものを含めて3,330万
高いのはカリブ海沿岸諸国で,1.0%となっている。
人と推定されており,このほかに既に約3,000万人がエ
流行の状況を知る疫学指標として最も役に立つの
イズのため亡くなっていると推定されるので,流行が
は,新たにHIVに感染したものの数と,エイズで死亡
始まって以来30年間に地球人口の約1%がHIVに感染
した者の数の推移なので,これらの全世界の状況を図
したと推定される。エイズの場合には,エイズを発症
1,2に示した。新たにHIVに感染した者の数は,1990
している患者だけでなく,エイズを発症する前の,症
年代後半に320万人に達したところで峠を越えて,
状のないHIV感染者も,血液や体液の中にはHIVがい
2009年には260万人まで低下してきた。最も蔓延が著
るので,感染源となりうる。結核の場合には,痰から
しかったサハラ以南のアフリカで,流行が峠を越えた
結核菌が検出される肺結核患者(喉頭結核,気管・気
ことが,全世界のエイズの推移に大きく影響している。
管支結核患者を含む)が感染源となり,軽症の結核患
エイズによる死亡数は2005年の210万人を頂点にして,
者は感染源とはならず,ましてや感染したが病変の見
こちらも減り始めている。世界基金が設立され,途上
られない者は,まったく問題がないのとの大きな違いで
国でも抗エイズ薬が使用できるようになり,現在では
ある。結核の場合には,感染源となりうる患者数は数
520万人が抗エイズ薬の恩恵に浴しているためである。
百万人と推定されているのに対して,エイズの場合の
先進諸国では1995∼6年以降開始された抗エイズ薬
感染源となりうる者の数は1桁多い3,330万人いると推
の3剤を併用する治療法のおかげで,エイズによる死
定されていることは,
エイズ問題の重要性を示している。
亡が激減し,エイズは死の病ではなくなり,エイズ患
表1.世界の地域別に見たエイズの現状(2009年)
地 域
HIV感染者数
(万人)
1年間の新感染者数 成人HIV陽性率 1年間の死亡数
(万人)
(%)
(万人)
サハラ以南アフリカ
2,250
180
5.0
130
中東・北アフリカ
46
7.5
0.2
2.4
南・南東アジア
410
27
0.3
26
東アジア
77
8.2
0.1
3.6
大洋州
5.7
0.45
0.3
0.14
中南米
140
9.2
0.5
5.8
カリブ海地域
24
1.7
1.0
1.2
東欧.中央アジア
140
13
0.8
7.6
西・中欧
82
3.1
0.2
0.85
北米
150
7.0
0.5
2.6
総数
3,330
260
0.8
180
出典 UNAIDS
22
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(百万人)
4.0
(百万人)
2.5
3.5
2.0
3.0
2.5
1.5
2.0
1.0
1.5
1.0
0.5
0.5
0.0
0.0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
図1.世界の1年間の新HIV感染者数の推移
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
図2.世界の1年間のエイズによる死亡数の推移
出典 UNAIDS
出典 UNAIDS
者は社会生活を続けながら治療を受けられるように
ら母乳保育を行うように方針の転換が行われた。途上
なった。しかし,抗エイズ薬は高価であるため,途上
国で抗エイズ薬の使用が可能になったことがもたらし
国のエイズ患者にはその恩恵が及ばず,エイズの国際
た大きな恩恵である。
学会があるたびに,会場の周辺でエイズ患者が途上国
世界の大勢はこのように流行の山を越えたことを示
でも抗エイズ薬を使えるようにせよという強いアピー
しているが,地域によっては流行が増えつつある地域
ルを繰り返す事態が続いていた。
があることを忘れてはならない。急激に増加している
抗エイズ薬が途上国でも使えるようになった背景に,
のが,旧ソ連の東欧・中央アジア地域であり,従来少
日本が大きく貢献していることを忘れてはならない。
なかった中東・北アフリカ地域や,中国や日本を含む
2000年に沖縄で行われたG8サミットの際に,当時の森首
東アジア地域で,HIV 感染やエイズによる死亡が増
相が,世界の途上国が貧困に苦しんでいる最大の原因
加している。日本は世界の中で最も蔓延が低い地域の
であるエイズ,結核,マラリアなどの感染症の対策につ
一つであるが,インフルエンザの影響を受けた一昨年
いて,G8が協力することを提案し,G8の同意を得,翌
(2009年)を除いて,新たなHIV感染者,エイズを発
2001年には国連エイズ特別総会が開催され,その結果
症した者とも,増加を続けている事実を忘れてはなら
2002年に設立されたのが世界エイズ結核マラリア基金で
ない。(本誌336号23ページ参照)
あり,基金は2003年から活動を開始して,途上国での抗
世界のエイズ対策は母子感染の防止,青少年に対す
エイズ薬の使用を資金面から支援した。一方,抗エイズ
る教育の普及,女性特に少女の保護を中心に進められ
薬の特許権問題については,国際的な話し合いの結果,
ている。UNAIDSは最近新しい感染ゼロ,差別ゼロ,
途上国で使用する抗エイズ薬の製造を途上国が行う場
死亡ゼロの3つのゼロを提唱している。ここでいう差別
合については,
特許料の支払いを免除する合意が得られ,
ゼロは,法的に入国拒否,男性同性愛者を罰すること
インド,ブラジル,タイなどの製薬会社が抗エイズ薬の
などHIV感染者を差別して扱うことを止めることを求め
製造を開始して,特許料を含まない比較的安い価格で
ている。日本では地域によってはこの目標が既に達成さ
途上国に抗エイズ薬を供給することが可能になった。
れている地域もあり得るであろう。しかし,我が国の場
抗エイズ薬の効果には限界があり,服薬を止めると
合差別なしはもう少し厳格に,
HIV感染者に対する差別・
再びウイルスが増え始めるので,一生服薬せねばなら
偏見をなくすることを目標にするべきではないだろうか。
ない。個人や家族だけでなく,社会にとっても大きな
結核関係者としては,世界の結核問題を考える際に
負担である。増え続ける需要に対して,資金をいかに
エイズの問題は避けて通れない課題である。HIV感染
切らさずに供給を続けるか,全人類に課せられた大き
者が結核に感染すると発病率は著しく高く,感染から
な課題である。
発病までの期間も短縮する。空洞はできにくくなる代
母子感染については,従来は母乳保育中の感染を恐
わりに血行性転移を起こしやすく,放置した際の予後
れて,HIV陽性の母親には母乳保育を避けるよう指導
は極めて悪い。途上国の結核対策の支援を考える際に,
が行われていたが,最近では抗エイズ薬を使用しなが
エイズ対策も取り入れた支援を考えるべきであろう。
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日本COPD対策推進会議設立会と記者会見
12月16日(木)16時から設立会,続いて17時から記
者会見が,日本医師会館5階507会議室(設立会)と
501・502会議室(記者会見)において行われた。
1.日本COPD対策推進会議設立会
設立会は,今村聡日本医師会常任理事が進行役とし
て開会の口火を切り,議事が進められた。
議事は,「①規約の承認,②会長の選任,③副会長
の選任,④幹事の選任,⑤啓発資料について,⑥その
他」で,活発に討議された。
規約は,目的・構成・組織・役員・会議・細則・庶
務について定めたもので,構成団体は日本医師会,日
本呼吸器学会,結核予防会,日本呼吸ケア・リハビリ
テーション学会の4者が承認された。規約に則って役
員選任に進み,会長に原中勝征日本医師会会長,副会
長に永井厚志日本呼吸器学会理事長,工藤翔二結核予
防会理事,木田厚瑞日本呼吸ケア・リハビリテーショ
ン学会理事長,羽生田俊日本医師会副会長の4名,幹
事に相澤久道日本呼吸器学会常務理事,山下武子結核
予防会事業部顧問,福地義之助日本呼吸ケア・リハビ
リテーション学会名誉会員・GOLD日本委員会委員長,
今村聡日本医師会常任理事の4名が選任された。
啓発資料については,開業医向けB5判二つ折りパンフ
レット「COPD診療のエッセンス」を日本COPD対策推進
会議編で作成・配布することが決定され,今後実情に応
じて改訂を重ねて進歩・発展させていくことが確認された。
今後啓発用ポスターを作成することについての検討や,
構成団体でそれぞれ発行している資料の紹介も行われた。
その他として,自由討議に移り,「COPD診療のエッ
センス」配布によってかかりつけ医への啓発を進める
と共に,「COPD」という言葉の普及など国民への啓
発が重要であることや,健康診断の場を利用した取り
組みについて話し合われた。また,日本COPD対策推
進会議が設立され,今後これを全国展開するには,各
都道府県にCOPD対策推進会議を置くことが重要で,
構成団体の都道府県レベルでのより地域に密着した連
携の重要性について認識を深めた。
また,日本COPD対策推進会議が平成23年度の「呼吸
の日」イベント後援団体として参画することを決定した。
2.記者会見
17時から,501・502会議室に場所を移して記者会見
が行われた。20名近くの記者が集まり,今村聡日本医
師会常任理事が進行役となって,副会長と幹事8名が
取材を受けた。
最初に副会長4名が構成団体それぞれの特色を生か
して日本COPD対策推進会議に貢献していく決意表明
を述べた。
続いて質疑に入り,具体的健診方法,日本COPD対
策推進会議の具体的活動内容,元々「肺気腫,慢性気
管支炎」と呼んでいたのをなぜ「COPD」としたか,
その際のメリット・デメリットは?等の質問を受けて,
これらの質問に回答・解説して,17時40分に終了した。
(文責・編集部)
APACT2013準備委員会開催
1月13日(木),2月21日(月) 結核予防会会議室
2013年8月18日(日)∼21日(水)千葉の幕張メッ
セにおいて第10回アジア太平洋たばこ対策会議(The
10th Asia Pacific Conference on Tobacco or Health)
が開催されます。
準備委員会は2010年2月25日(FCTC締約5周年記
念)に発足し,シドニーで行われた第9回会議を視察
するなど,さまざまな検討を始めています(詳細は,
複十字№333の23pと№336の24∼25p参照)。
準備委員会の主なメンバーは,APACT2013の大会
長である島尾忠男先生や,日本禁煙学会の作田学先生,
宮 恭一先生,また日本禁煙医師歯科医師連盟の森亨
先生や,全国結核予防婦人団体連絡協議会事務局長の
24
山下武子先生を中心として開かれており,1月13日に
第8回目,2月21日に第9回目が行われました。
この2回で,具体的な委員会の立ち上げと開催まで
の工程に必要な情報共有を図りました。2013年まで時
間があると思っていましたが,アジア太平洋の皆さん
と打合せたりする機会を模索し,そのタイミングまで
に準備するため,会議やメールでのやりとりをするこ
となどが話し合われました。
また,禁煙をテーマにしたウォーキング大会などの
企画も提案され,大いに盛り上がりました。
(文責・編集部)
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結核予防会支部紹介のページ
沖 縄 県 支 部
県民の長寿復活を目指して!
財団法人沖縄県総合保健協会(結核予防会沖縄県支部)
城間 一男
事務局長 グ医療センターをオープン,キレーション,点滴療法
1 はじめに(沿革)
のアンチエイジング医療をはじめ,温水プールを活用
米国統治下の昭和27年(1952年),米国の太平洋学
した水中運動やアロマテラピーとしてのアロマカプセ
術調査団の1人として結核専門医,ギルバートS・ペ
ルやフットマッサージ,アンチエイジングのための皮
スケラー中佐が来沖し,結核蔓延の兆しを確認,官民
膚科外来などを実施しています。
一体となった結核対策を進めるべきと考え,米国民政
府と協議の上,米国結核予防会クリスマスシールを譲
3 普及啓発事業
り受け,琉球結核予防会設立資金として琉球シール募
複十字シール募金運動のはじめに,沖縄県結核予防
金活動を非公式に行いました。また,その財源を一部
婦人連絡協議会の皆様と同行,県知事,県議会議長を
に,結核ベッド60床を有する結核研究所が米国の多額
表敬訪問し,同運動のご協力をお願いしております。
の援助を受け設立されました。それと相俟って,琉球
結核予防週間には,県民広場で沖縄県,那覇市の行政
政府等医療関係者も参画して昭和28年9月19日,元沖
機関と沖縄県結核予防婦人連絡協議会の協力の下に街
縄民政府知事志喜屋孝信氏を初代会長とする「財団法
頭キャンペーンを実施し,「結核の常識」やリーフレッ
人琉球結核予防会」が戦後誕生しました。
ト等を配り,県民への結核の現状等を訴えております。
その後,昭和47年5月15日には本土へ施政権が返還
また,保健所や各市町村へポスター掲示やリーフレッ
され,結核予防会全国支部に加盟し,沖縄県支部とな
ト等を配布していただき普及啓発をお願いしておりま
りました。更に,平成2年9月には,健診は総合的な
す。
方向に進むべきであると県主導で(財)沖縄県結核予
防会,(財)沖縄県予防医学協会,(財)沖縄県対がん
4 終わりに
協会の団体が統合し,「財団法人沖縄県総合保健協会」
健診機関を取巻く環境は,大変厳しい状況にありま
を設立し,当該3団体の沖縄県支部となりました。平
す。地域の住民健診は制度改革もあって,個別健診へ
成4年3月,南風原町宮平に成人病検診センターを建
の移行等もあり受診率が大幅に落ち込んでいます。が
設し,新体制で諸事業を推進し,現在に至っています。
ん検診もその影響を受け減少しています。また,長引
く経済不況もあって,当支部の経営は厳しいものがあ
2 事業概要
ります。
地域,職域,学校の巡回健診と一般健診,人間ドッ
費用管理におきましては,無駄な費用の徹底的排除
ク,労災二次健診及び生活習慣病外来等の施設内健診
を行い,人件費の低減化を図って経営改善を行ってお
を中心に,がん検診としては,胃がん・大腸がん・肺
ります。
がん・乳がん・子宮がん等を行っています。
多くの団体,機関,組織の方々のお力をいただいて,
肺がん死亡率が全国でも上位のため,平成15年度の
成り立っている当支部は公益法人としての使命の下,
がん征圧全国大会における禁煙宣言を機会に,県下36
「地域住民の健康増進と福祉の向上に貢献する」を基
団体により構成された「沖縄県禁煙協議会」を設立,
本理念に,諸事業に取り組んでいるところであります。
主として小,中,高生の防煙活動,校内全面禁煙運動
今後ともご指導,ご支援をよろしくお願い致します。
を展開しています。また,がん征圧月間には,ヘリカ
ルCT検診車で肺がん健診を行っています。
なお,究極の予防医学としての抗加齢医療を実施す
べく,平成18年よりアンチエイジングドックを新設し
ました。通常の人間ドックの検査に加えて,筋肉や血
管,ホルモン,脳(神経),酸化ストレス度などの老
化度を評価しアドバイスを行い,健康長寿を目的にし
ています。また,平成20年9月1日にアンチエイジン
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25
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第9回新山手病院・保生の森・グリューネス
ハイム新山手合同業績発表会 開催報告
大会実行委員長・新山手病院
瀬崎 和典
循環器病センター長 2010年11月27日(土)に,第9回新山手病院・保生
の森・グリューネスハイム新山手3事業所合同業績発
表会を開催しました。一般演題56,ポスターセッショ
ン11の発表の他,杏林大学医学部長の後藤元先生はじ
め特別講演を3題と安全講習会を併せて行いました。
また,終了後には保生の森において懇親会も開催しま
した。9回目ということもあり,皆堂々とした発表ぶ
りで,内外から約200名もの参加をいただき大盛況で
した。これもひとえに,日頃目的意識をもって医療・
看護・介護等の向
上に努力してきた
職員一同の協力の
賜物です。また応
援いただいている
地域の医師会の先
生方,本部並びに
本会各事業所の先
生方・職員の皆さ
まにはあらためて感謝申し上げます。
私ども医局スタッフが医師の立場で理想的な臨床活
動をできるのは,私たちを支えてくれている職員の努力
があればこそのことで,
その努力を理解し,
医療や看護・
介護等全職員のチーム活動で成り立つことをあらため
て認識する機会になればと,この会を始めたのが8年
前のことでした。その後,その基本は変わりありません
が,全職員が共同して患者・家族の医療・看護・介護
等の向上を目指すという方向も見えてきた気がします。
これからも職員
一丸となって,地
域で必要とされる
医療を行っていき
たいと思いますの
で,引き続きご理
解・ご支援をお願
いいたします。
複十字病院第6回院内発表会
複十字病院
吉山 崇
診療主幹 複十字病院院内発表会は2005年から年1回複十字病
院の各職場および各委員会の研究報告,活動報告,活
動の改善報告,および広報の場として,最近は12月の
第2土曜日に行ってきました。数演題をまとめて一人
の座長の司会のもとで発表,質疑応答を行うという学
会発表形式です。
今回は第六回となり,2010年12月11日結核研究所4
階の講堂で13時から17時5分まで44演題の各職場,委
員会から口頭発表(発表3分,その後平均2分の質疑
応答)
,および研究所1階エントランスで放射線防護
委員会の掲示を行い演題数は合計45題でした。ここ3
回ほどは,基本的には口演で,各職場は毎年,各種委
員会は3年に一度発表をしてきています。
「NPPV装着における患者の苦痛の改善」など研究
報告が多く,今年は患者に直接接することの少ない職
26
場では,経営改善の最中で多忙な中準備が大変という
声もありましたが,専門職の職場の他事務部,健康管
理センターなど事務部門からも多彩な発表がなされま
した。また,当院内発表会では,毎年,院内院外の10
名弱の選考委員の方に,各演題の点数をつけていただ
き,その合計点を元に,優秀演題を5演題選んで表彰
することとしています。これは,発表会の薬味であり
ますが,今年も,看護部,歯科,地域連携室,核医学
技術科などから優秀演題が選出されました。
今年は,同じ題目を扱っても,たとえば,退院につ
いては,病棟,医療相談室,訪問看護科など,多様な
切り口からの発表がありました。また,抗がん剤のミ
キシングについては,以前の発表会における病棟での
ミキシングの危険性についての発表に対応して,今年
行われるようになった薬剤科におけるミキシングの成
果と問題点の発表など,以前の発表と比較して聴くと
病院の業務の変化が浮かび上がってきました。結核予
防会の中では,本部,第一健康相談所,新山手病院な
ど各所の方々にも出席いただいていますが,最初から
最後まで通して聴くと,複十字病院の現在がよくわか
る会となっています。
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平成23年度結核感染症課予算(案)の概要
事 項
平 成 22 年 度 平 成 23 年 度 差
予
算
額 予
算 (案) 増
千円
[19,181,246]
(11,867,167)
8,431,772
千円
[15,216,168]
(8,932,075)
8,097,332
△
減
引
額
平成22年12月
(単位:千円)
主 な 内 容
千円
[△3,965,078]
(△2,935,092)
△334,440
〈対前年度伸率 △20.7%〉
〈対前年度伸率 △24.7%〉
〈対前年度伸率 △4.0%〉
[4,259,331] [3,327,104]
(1,887,855) (1,790,930)
1,879,700 → 1,790,930 1 感染症の発生・拡大に備えた
事前対応型行政の構築
・感染症対策特別促進事業費【補助金】
うち、結核対策特別促進事業(DOTS等) 補助率10/10
うち、新型インフルエンザ対策事業
(協議会設置、診療従事者訓練・研修、説明会) 補助率1/2
・新型インフルエンザ対策事業費(正しい情報の共有)
・新型インフルエンザ対策費(抗インフルエンザウイルス薬等の保管)
新 ・感染症対策アドバイザー養成セミナー経費
新 ・情報提供迅速化経費
・病原体等管理体制整備事業
・感染症発生動向調査事業費【負担金】 補助率1/2
・麻しん排除対策推進費
・予防接種導入効果等検証推進費
346,313 303,008 30,793 13,302 97,334 462 3,291 74,539 769,258 3,383 11,314 ※平成22年度補正予算において
新型インフルエンザ対策の推進(プレパンデミッ
クワクチンの備蓄等)(医薬食品局) 113億円
2 良質かつ適切な医療の提供体制の整備
・感染症指定医療機関運営費【補助金】 補助率1/2
・結核医療費【負担金・補助金】 補助率1/2・3/4
(沖縄:1/2・3/4・8/10・10/10)
感染症対策
・保健衛生施設等設備整備費補助金 補助率1/2
・保健衛生施設等施設整備費補助金 補助率1/2
[7,662,017] [4,790,704]
(7,662,017) (4,790,704)
4,269,520 → 3,990,704 673,240 3,288,665 1,700,000の内数 783,000の内数 3 感染症の発生予防・防止措置の充実
・感染症予防事業費【負担金】 補助率1/2・1/3
[1,231,178] [1,168,814]
676,371 → 667,197 600,000 4 調査研究体制の強化
・結核研究所補助【補助金】
[3,927,184] [3,914,204]
479,734 → 477,391 456,884 〈厚生労働科学研究費〉
・新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究【補助金】
(HTLV-1関連疾患に関する研究(一部再掲))
5 人材育成の充実及び国際協力の強化
・新型インフルエンザ対策事業費(診療従事者研修)
・政府開発援助結核研究所補助【補助金】
2,248,795 1,000,000 [994,155] [872,782]
(69,374) (67,284)
34,631 → 32,541 9,957 15,800 [49,198] [36,498]
33,633 → 32,507 29,265 6 動物由来感染症対策
・動物由来感染症対策費
7 その他
・新型インフルエンザ予防接種健康被害給付金
・予防接種事故救済給付費【負担金】 補助率2/3
[1,058,183] [1,106,062]
(1,058,183) (1,106,062)
1,058,183 → 1,106,062 81,019 1,015,682 ※平成22年度補正予算において
子宮頸がん等のワクチン接種の促進 1,085億円
千円
[11,621,473]
(6,134,906)
2,699,511
千円
[7,331,031]
(3,525,331)
2,690,588
感染症対策の内数
千円
[△4,290,442]
(△2,609,575)
△8,923
〈対前年度伸率 △36.9%〉
〈対前年度伸率 △42.5%〉
〈対前年度伸率 △0.3%〉
[4,460,678] [2,871,259]
1 医薬品の備蓄と研究開発の推進等
150,284 →
97,334 ・新型インフルエンザ対策費(抗インフルエンザウイルス薬等の保管)
97,334 〈厚生労働科学研究費〉
・新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究【補助金】
新型インフル
エンザ対策
2,248,795 ※平成22年度補正予算において
新型インフルエンザ対策の推進(プレパンデミッ
クワクチンの備蓄等)(医薬食品局) 113億円
[4,212,929] [1,577,338]
(4,191,906) (1,559,561)
2 地域の医療体制等の確立
799,409 → 759,561 ・感染症対策特別促進事業費【補助金】
43,305 30,793 うち、新型インフルエンザ対策事業(協議会設置、診療従事者訓練・研修、説明会) 補助率1/2
・感染症指定医療機関運営費【補助金】 補助率1/2
673,240 ・新型インフルエンザ対策事業費(診療従事者研修)
9,957 新 ・感染症対策アドバイザー養成セミナー経費
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平成23年度厚生労働省予算(案)
事 項
平
予
成 22 年
算
度 平
額 予
成 23 年 度 差
算 (案) 増
△
減
引
額
主 な 内 容
〈保健衛生施設等設備整備費補助金〉 補助率1/2
1,700,000の内数 ・感染症外来協力医療機関設備(HEPAフィルター付パーティション・空気清浄機の補助)
・新型インフルエンザ患者入院医療機関設備(人工呼吸器、PPE、簡易陰圧装置の補助)
〈保健衛生施設等施設整備費補助金〉 補助率1/2
783,000の内数 ・新型インフルエンザ患者入院医療機関施設
[41,136] [22,349]
(36,836) (22,349)
28,681 → 22,349 13,302 3,291 3 国民各界各層に対する取組の要請
・新型インフルエンザ対策事業費(正しい情報の共有)
新 ・情報提供迅速化経費
新型インフル
エンザ対策
4 国・地方公共団体等の体制整備
・感染症予防事業費【負担金】 補助率1/2・1/3
・感染症発生動向調査事業費【負担金】 補助率1/2
・感染症発生動向調査システム費
・インフルエンザ薬耐性株サーベイランス事業費
[1,864,086] [1,946,690]
(1,725,962) (1,816,822)
1,691,219 → 1,782,079 600,000 769,258 311,017 34,349 5 水際対策の強化等
・動物由来感染症対策費
[625,003] [585,827]
29,918 → 29,265 29,265 6 国際協力
[417,641] [327,568]
〈世界保健機関等拠出金〉
・感染症対策事業【拠出金】
千円
1,167,698
千円
1,209,418
感染症対策の内数
予防接種対策
千円
41,720
321,182 〈対前年度伸率 +3.6%〉
1 健康被害救済給付費【負担金】 補助率2/3
⑴ 一類疾病に係る救済給付費
(単価改正)
・医療手当
入院8日・通院3日以上
入院8日・通院3日未満
・障害児養育年金
1級
2級
・障害年金
1級
2級
3級
・死亡一時金
その他
・葬祭料
・介護加算
1級
2級
⑵ 二類疾病に係る救済給付費
(単価改正)
・医療手当
入院8日・通院3日以上
入院8日・通院3日未満
・障害年金
1級
2級
・遺族年金
・遺族一時金
・葬祭料
1,015,682 → 1,015,682
1,007,444
35,800円/月
33,800円/月
1,531,200円/年
1,225,200円/年
4,897,200円/年
3,915,600円/年
2,937,600円/年
42,800,000円
201,000円
837,700円/年
558,500円/年
8,238
35,800円/月
33,800円/月
2,720,400円/年
2,175,600円/年
2,378,400円/年
7,135,200円
201,000円
2 保健福祉相談事業【補助金】
⑴ 保健福祉相談事業
⑵ 研修事業費
⑶ 啓発普及事業
40,350 → 38,773
34,299
1,582
2,892
3 予防接種後副反応等調査事業
22,850 → 20,507
4 予防接種従事者研修事業
5 予防接種センター機能推進事業【補助金】 補助率1/2
※予防接種センター事業実施ヵ所数
・予防接種要注意者への予防接種等の実施
・休日・時間外の予防接種実施
3,554 → 2,986
18,340 → 14,239
17ヵ所
2ヵ所
6 ポリオ生ワクチン2次感染者対策費【補助金】 補助率2/3
・予防接種事故救済給付費の二類疾病と同等の救済給付の実施
9,761 → 7 麻しん排除対策推進費
3,471 → 3,383
8 予防接種導入効果等検証推進費
⑴ 検証準備機関設置経費
⑵ 検証情報提供経費
5,300 → 11,314
4,806
6,508
48,390 → 93,173
9,996
2,158
81,019
9 その他
⑴ 予防接種調査等事業費
⑵ 予防接種事故発生調査費【補助金】 補助率2/3
⑶ 新型インフルエンザ予防接種健康被害給付金
9,361
※平成22年度補正予算において
子宮頸がん等のワクチン接種の促進 1,085億円
※1.[ ]内の数字は厚生労働省計上分 ※2.( )内の数字は健康局計上分
※3. で囲んだ事項は他課計上分 ※4. で囲んだ事項は平成22年度補正予算計上分
28
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平成23年度予算(案)の概要〈生活習慣病対策室〉
事 項
(項)健康増進対策費
(大)健康増進対策に必要な経費
疾病対策事業費生活習慣病等予防対策事業費
(目)疾病予防対策事業費等補助金
疾病予防事業費等補助金
改 健康増進事業費補助金(生活習慣病対策室所管分)
健康的な生活習慣づくり重点化事業
たばこ対策促進事業費
改 糖尿病予防戦略事業
新 実践的な予防活動支援事業
新 糖尿病疾病管理強化対策事業
(目)国民健康づくり運動推進事業費補助金
健康増進重点プロジェクト事業
国民健康・栄養調査委託費
(目)国民健康・栄養調査委託費
(大)健康増進に必要な経費
健康増進行政経費
健康栄養対策費
健康増進情報化経費
生活習慣病対策推進費
生活習慣病予防対策推進費
生活習慣病予防対策費
健康日本21推進費
すこやか生活習慣国民運動推進事業費
生活習慣病予防対策実態調査旅費
新 健康づくりのための運動指針改定経費
栄養対策総合推進費
食事摂取基準等策定費
管理栄養士・調理師等養成・育成対策費
国民健康・栄養調査経費
改 疾病の重症化予防のための食事指導拠点整備事業
たばこ・アルコール対策推進費
脳卒中等対策推進費
糖尿病等の生活習慣病対策推進費
糖尿病等対策事業費
健診・保健指導データシステム保守運用等経費
中核機関の連絡調整会議費
健康増進総合支援システム事業費
医師等国家試験費
管理栄養士国家試験費
(項)国際機関活動推進費
(大)国際分担金等の支払に必要な経費
(目)国際がん研究機関等分担金
たばこ規制枠組条約締約国会議事務局分担金
(項)保健衛生施設等施設整備費
(大)保健衛生施設等施設整備に必要な経費
保健衛生施設等施設整備費補助
(目)保健衛生施設等施設整備費補助金
計
平 成 22 年 度 平 成 23 年 度 差
引
予
算
額 予 算 額(案)増 △ 減 額
(A)
(B) (B)−(A)
2,472,117
2,154,589
2,029,653
1,930,065
1,930,065
1,841,887
88,178
50,972
37,206
0
0
99,588
99,588
124,936
124,936
317,528
2,922
2,922
268,664
167,762
74,757
6,373
17,302
50,625
457
0
52,764
15,492
2,841
13,019
21,412
10,159
1,193
28,889
284
25,813
2,792
100,902
45,942
45,942
82,824
82,824
82,824
82,824
1,922,098
1,600,080
1,475,144
1,475,144
1,475,144
1,225,090
167,650
40,777
36,873
90,000
82,404
0
0
124,936
124,936
322,018
0
0
276,490
175,588
98,961
6,373
17,498
71,040
841
3,209
46,351
11,049
3,174
13,019
19,109
9,491
0
20,785
0
20,785
0
100,902
45,528
45,528
78,418
78,418
78,418
78,418
▲
▲
▲
▲
▲
▲
550,019
554,509
554,509
454,921
454,921
616,797
79,472
▲ 10,195
▲ 333
90,000
82,404
▲ 99,588
▲ 99,588
0
0
4,490
▲ 2,922
▲ 2,922
7,826
7,826
24,204
0
196
20,415
384
3,209
▲ 6,413
▲ 4,443
333
0
▲ 2,303
▲ 668
▲ 1,193
▲ 8,104
▲ 284
▲ 5,028
▲ 2,792
0
▲ 414
▲ 414
▲ 4,406
▲ 4,406
▲ 4,406
▲ 4,406
−
2,554,941
−
2,000,516
−
▲ 554,425
平成22年12月
(単位:千円)
備 考
補助先:都道府県、指定都市
補助先:都道府県、保健所設置市、特別区
公募(公益法人、NPO法人等)
補助先:都道府県
補助先:(財)日本食生活協会 補助先:都道府県、保健所設置市、特別区
委託先:(社)日本栄養士会
(メニュー)
農村検診センターの整備
(単位:千円)
事 項
〈厚生科学課計上分〉
(項)厚生労働科学研究費
(目)厚生労働科学研究費補助金
循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究経費
循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究費
循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究推進事業費
計
平 成 22 年 度 平 成 23 年 度 差
引
予
算
額 予 算 額(案)増 △ 減 額
(A)
(B) (B)−(A)
1,572,311
1,532,462
39,849
1,572,311
1,170,616
1,142,722
27,894
1,170,616
備 考
▲ 401,695
▲ 389,740
▲ 11,955
▲ 401,695
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平成23年度厚生労働省予算(案)
平成23年度がん対策関係予算案の概要
項目・事業名
がん対策の総合的かつ計画的な推進
1.放射線療法及び化学療法の推進並びにこれらを専門的に行う医師等の育成
⑴ がん専門医等がん医療専門スタッフの育成
がん専門医臨床研修モデル事業
国立がん研究センター委託費
がん医療水準均てん化の推進に向けた看護職員資質向上対策
専門薬剤師研修事業
⑵ がん診療連携拠点病院の機能強化
改 がん診療連携拠点病院機能強化事業
⑶ 国際共同治験及び新薬の早期承認等の推進
日米欧三極治験相談推進事業費
治験実施状況調査事業費
ファーマコゲノミクス等利用医薬品臨床評価推進費
未承認・適応外医薬品解消検討事業費
2.治療の初期段階からの緩和ケアの実施
⑴ 治療の初期段階からの緩和ケア及び専門的な緩和ケアの推進
インターネットを活用した専門医の育成等事業
都道府県がん対策推進事業(緩和ケア部分)
がん医療に携わる医師に対する緩和ケア研修等事業
がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修事業
がん患者に対するリハビリテーションに関する研修事業
医療用麻薬適正使用推進事業
⑵ 在宅療養・緩和ケアの充実
訪問看護推進事業
在宅医療推進支援事業
3.がん予防・早期発見の推進
⑴ がんの予防
栄養対策総合推進費(管理栄養士・調理師等養成・育成対策費)
生活習慣病対策推進費(たばこ・アルコール対策推進費)
健康的な生活習慣づくり重点化事業(たばこ対策促進事業)
健康増進総合支援システム事業費
肝炎等克服緊急対策研究費
肝炎対策費・肝炎ウイルスに関する相談事業等委託費
第3次対がん10か年総合戦略経費(がん相談事業)
⑵ がんの早期発見
がん検診精度管理評価事業
がん検診受診促進企業連携委託事業
がん検診受診率向上企業連携推進事業
がん検診従事者研修事業
マンモグラフィ検診精度向上事業(メニュー)
女性特有のがん検診推進事業
新 働く世代への大腸がん検診推進事業
新 がん検診受診率分析委託事業費
4.がん医療に関する相談支援及び情報提供
改 都道府県がん対策推進事業(緩和ケア研修を除く)
新 がん総合相談に携わる者に対する研修プログラム策定事業
5.がん医療水準均てん化の促進
がん診療施設情報ネットワーク事業(メニュー含む)
がん医療の地域連携強化事業費
がん対策評価・分析経費
6.がんに関する研究の推進
第3次対がん総合戦略研究経費
新 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究経費(がん関係分)
肝炎研究基盤整備事業
新 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究経費(肝炎関係分)
地球規模保健課題推進研究経費
培養生物資源保存管理基盤整備費・難病研究用ヒト疾患試料資源バンク事業費
7.がん対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な経費
がん対策推進費
がん対策推進協議会経費
8.独立行政法人国立がん研究センター運営費交付金
計
30
(単位:千円)
平 成 22 年 度
予
算
額
平 成 23 年 度
予
算
案
対 前 年 度
増 △ 減 額
31,604,038
4,281,981
763,551
404,085
199,123
68,836
91,507
3,431,000
3,431,000
87,430
9,606
10,106
5,154
62,564
621,290
524,349
77,516
257,960
137,946
28,226
13,218
9,483
96,941
38,027
58,914
10,607,317
2,209,339
2,841
10,159
50,972
100,902
1,994,785
16,942
32,738
8,397,978
6,803
277,820
140,364
45,000
354,375
7,573,616
0
0
682,040
682,040
0
456,148
158,907
278,123
19,118
6,133,579
5,805,595
0
35,955
0
218,297
73,732
18,778
15,956
2,822
8,802,905
31,604,038
34,334,746
3,619,589
107,385
0
77,884
29,501
0
3,430,000
3,430,000
82,204
9,579
10,106
0
62,519
383,468
355,755
52,654
117,500
136,036
28,226
12,860
8,479
27,713
27,713
0
13,814,582
1,780,945
3,174
9,491
40,777
100,902
1,611,397
15,204
0
12,033,637
7,546
140,285
126,328
42,400
354,375
7,216,552
4,081,502
64,649
871,217
822,500
48,717
83,873
83,873
0
0
6,785,262
4,634,736
1,400,000
34,741
500,000
143,226
72,559
21,569
16,963
4,606
8,755,186
34,334,746
2,730,708
△ 662,392
△ 656,166
△ 404,085
△ 121,239
△ 39,335
△ 91,507
△ 1,000
△ 1,000
△ 5,226
△ 27
0
△ 5,154
△ 45
△ 237,822
△ 168,594
△ 24,862
△ 140,460
△ 1,910
0
△ 358
△ 1,004
△ 69,228
△ 10,314
△ 58,914
3,207,265
△ 428,394
333
△ 668
△ 10,195
0
△ 383,388
△ 1,738
△ 32,738
3,635,659
743
△ 137,535
△ 14,036
△ 2,600
0
△ 357,064
4,081,502
64,649
189,177
140,460
48,717
△ 372,275
△ 75,034
△ 278,123
△ 19,118
651,683
△ 1,170,859
1,400,000
△ 1,214
500,000
△ 75,071
△ 1,173
2,791
1,007
1,784
△ 47,719
2,730,708
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マンモグラフィ講習会・乳房超音波講習会の
ご案内
既報のとおり,結核予防会は昨年7月より公益財団
き,全国支部で取り入れが進んでいるデジタル・マン
法人格を得て再出発しました。予防会の基本方針には,
モグラフィの診断精度を高く保つことを目的としてい
結核の制圧,結核対策での国際協力,肺がんやCOPD
ます。乳房超音波講習会では,臨床検査技師や診療放
などの呼吸器疾患対策の強化,生活習慣病対策の推進
射線技師等の読影技術の向上を図りたいと考えていま
の4つが上げられています。その中でも,国民の健康
す。
を預かる立場として,今日的な国民病とも言える「が
結核予防を推進する中で形成された本部と47都道府
ん対策」はとても重要な使命であると言えます。
県支部による健診網は,質の高い全国的組織として稀
様々な「がん対策」の中でも,乳がんは日本女性が
有な存在です。これまで築き上げてきた経験と実績を
最も罹りやすいがん疾患であり,生活環境や食生活の
乳がん対策に最大限傾注していくために,多くの技術
欧米化に伴って年間4万人が乳がんに罹患すると言わ
者がこの講習会を修了していただき,予防会が行う乳
れています。ただし,マンモグラフィ(乳房エックス
がん検診の更なる精度向上に繋がることを期待してい
線検査)併用検診を受診することにより初期の段階で
ます。
見つかる頻度が高くなるため,これからは検診受診率
(結核研究所対策支援部放射線学科科長 星野 豊)
の向上が重要です。また,40歳代の若い世代は乳腺の
密度が高いため,乳房超音波検査の検診への取り入れ
マンモグラフィ講習会 平成23年 11月25日∼27日
が検討されています。
予防会では平成16年度から,それらの技術講習会を
事業化してきました。マンモグラフィ講習会では,何
よりも診療放射線技師の撮影技術の向上を念頭に置
マンモグラフィ講習会 平成24年 2月10日∼12日
乳 房 超 音 波 講 習 会 平成24年 2月18日∼19日
予防会だより
●平成22年度結核予防会全国支部事務連絡会議
2月25日(金),ホテルフロラシオン青山(東京都港区)において76名の参加を得て標記会議が開催された。
プログラム
14:00 1.挨 拶
結核予防会理事長 長田 功
2.事務連絡会議
⑴ 説 明
結核予防会総務部長 竹下 隆夫
本部公益認定後の経過
全国支部の状況
本部支部の呼称
今後の対応について
⑵ 協 議
諸規程の改正及び支部役員解嘱について(案)
結核予防会総務課長 菊地 健司
業務提携事業計画について
各事業担当責任者 平成23年度 普及啓発事業計画(案)
平成23年度 出版事業計画(案)
平成23年度 複十字シール運動実施計画(案)
平成23年度 国際協力事業計画(案)
⑶ 連絡事項
「第62回結核予防全国大会」について
「平成23 年度結核研究所研修日程」について
「病院賠償責任保険」について
⑷ そ の 他
16:45∼ 3.意見交換会
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31
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多額のご寄附をくださった方々
〈指定寄附者〉
ヤンセンファーマ株式会社(本部),肥沼隆男(複
十字病院),奥原喜三郎,井上淳子(新山手病院)
〈複十字シール募金〉(敬称略)
東京都―帝京中学校・高等学校,東京都交友会,
東京都福祉保健局職員一同,宝仙学園小学校,
江戸川区さくらんぼ倶楽部,東京都地域婦人団
体連盟,本田昭夫,カツミ医療器,山崎春生,
昭和女子大学付属中学校・高等学校,多摩あお
ば病院
新潟県―山口医院,波多俊二,新潟地域振興局,
新発田地域振興局,見附市健康福祉課,南魚沼
市保健課,佐渡地域振興局,長岡地域振興局,
新潟県福祉保健部健康対策課,貝谷伸一,南魚
沼薬剤師会,栃尾支所,小千谷市健康センター,
佐渡市市民生活課,新潟市保健所保健管理課,
新発田市健康福祉部健康推進課,高田建築事務
所,おがた医院
京都府―小原幸信,中井克是,山田文諒
大阪府―山野新,坂東覺,松山診療所,中井司
法書士行政書士合同事務所,チェス,松岡隆永,
小畠陽一,井上紀代子,青山初穂,柳瀬昌弘,
近藤吉輝,山本雅弘,田中秦,鎌田清,河面孝子,
春日井志津子,三野哲治,後藤洋治,新井道煥,
坂井正勝,梅本清嗣,宇賀一郎,土田元浩,森
垣友二郎,寺澤恒子,下出喜久子,菅田孝之,
磯田勝信,小元園子,山本英子,新いづもや,
月岡榮子,横道薫,甲田博和,西川秋男,山本智
英,北本スミエ,山川英治郎,北條秀樹,中山
幸蔵,吉野孝幸,上田英雄,降簱森,山口保彦,
郡慶三,高松勇,佐藤存,清水敦,江川雄一,
津本清次
愛媛県―伊予銀行,愛媛県看護協会,高圧ガス
工業松山営業所,イサムモーター,佐伯ビル管理,
太陽印刷,ボイラー総合管理センター,伊予鉄
髙島屋,愛媛新聞社,郵便局四国支社,伊予鉄道,
司法書士藤田行雄事務所,明長寺,善復寺,愛
媛メディカルラボラトリー,宮原医院,山下医院,
秋川会計事務所,大久保内科クリニック,白石
安藤法律事務所,眞理神経クリニック,潮冷熱,
吉野病院,シンワ,ロッキー産業,中島建設,
西蓮寺,伯方造船,松山城東病院,セトデン,
村上耳鼻咽喉科,はざ整形外科,クロスタニン
四国販売,森熊,朝倉診療所,松崎クリニック,
浦岡胃腸クリニック,喜多医師会,武智ひ尿器
科内科,関西建物,愛媛交安,吉田眼科,菅原
法律事務所,西部包装,日本食研,伯方塩業,
セラテック,片山医院,矢野智澄世,眞田明志,
松浦米雄,木元裕子,池田築
平成23年5月25日 発行
複十字 2011年臨時号
編集兼発行人 藤木 武義
発行所 公益財団法人結核予防会
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-3-12
電話 03(3292)9211(代)
印刷所 勝美印刷株式会社
東京都文京区小石川1-3-7
電話 03(3812)5203
結核予防会ホームページ
URL http://www.jatahq.org
沖縄県―うるま市,沖縄市,名護市,嘉手納町,
金武町,北谷町,大宜味村,今帰仁村,沖縄市
立コザ小学校,沖縄市立山内小学校,豊見城市
立伊良波小学校,豊見城市立上田小学校,那覇
市大名小学校,那覇市立上間小学校,那覇市立
開南小学校,那覇市立金城小学校,那覇市立城
東小学校,那覇市立城南小学校,那覇市立前島
小学校,那覇市立松川小学校,南風原町立翔南
小学校,南風原町立津嘉山小学校,沖縄県立石
川高等学校,北大東村婦人会,宮古地区婦人連
合会,ゆかり会(天妃小学校同窓),比嘉おかず,
那覇市,豊見城市,嘉手納町,北谷町,国頭村,
伊平屋村,伊江村,宜野座村,読谷村,渡嘉敷村,
宇栄原小学校,垣花小学校,真和志小学校,与
儀小学校,真嘉比小学校,真地小学校,天妃小
学校,安謝小学校,上山中学校,石嶺中学校,
首里中学校,浦添小学校,神森小学校,内間小
学校,前田小学校,牧港小学校,当山小学校,
浦西中学校,泡瀬小学校,豊見城小学校,座安
小学校,とよみ小学校,南風原小学校,北丘小
学校,翔南小学校,辺土名高等学校,本部高等
学校,北部農林高等学校,読谷高等学校,浦添
商業高等学校,南風原高等学校,沖縄水産高等
学校,沖縄県立芸術大学,沖縄県立農業大学校,
沖縄ろう学校,沖縄盲学校,美咲特別支援学校,
泡瀬特別支援学校,鏡が丘特別支援学校,八重
山特別支援学校
本部―愛和総業,シン・ネットワーク,村井金属,
プライムマリッジ,フォレスト出版,日栄国際
特許事務所,永山コンピューターサービス,日
本メンモウ,スチールエンジ,菊弥,西川,ラッ
キーヒルズ,伊東春海,ボイラ・クレーン安全
協会,JMA・アソシエイツ,ワイ・エス・コー
ポレーション,五十嵐工具,シュア,東京中央
セレモニーセンター,アイゼン総業,望月産業,
吉野電設,大綱建設,関百合子,相原清,台東
区立桜橋中学校-守原,佐藤吉信,神鳥満子,角
泰人,坂本淳子,聖翔会-山口康弘,石油連盟総
務-青山,ウインズ,アークン,スタイル運輸,
北村佶正商店,ニナファームジャポン,旅行業
健康保険組合,宇田京子,愛和,いさみや洋裝,
アプト会計事務所,クリナップテクノサービス,
かがやけ福祉会,片岡製作所,誠伸運輸,中央
商事運輸,正力運輸,東京坂本運輸,東日商運,
アチーブメント,水谷自動車工業,フエロールー
ム,東日本フーズ,東興,シーズウエルネス,
進光プリント,昇陽会,ピーディーアイ,寿栄会,
江和電設,三和薬品,日産サニー城北販売,千
代田流通サービス,安藤建設,成増興業,成友会,
ヨシダン建設,八王子東町クリニック,サンメ
ディカル,武美会,青芳会,ティーピーアイ,
フカノ,ジーディーシー,ファッションヴィレッ
ヂ,ヘル・グラビア・ジャパン,ヴァリアス・ディ
メンションズ,イービーエムズ,大谷清運,木
村産業,デンキョウ,山本スプリング製作所,
ナイスケア,ダイナビジョン,栄光舎,大正薬
学工業,パブリシティ・アドベンチャーズ,武
蔵野,中島不動産,深代会計事務所,日本心臓
血圧研究振興会,多摩精機,今井弘行,飛世克之,
杉山達朗,村上邦仁子,鈴木洋子,田隝靖宏,
近畿労働金庫有田支店,賀澤迪子,吉川華代子,
新企画出版-中澤みづほ,関政弘,池田泰章,宮
原恵子,花見忱,外装専科,わかさとビル管理,
KEN INTERNATIONAL JP, 信 和 電 気, 吉 田
商店,三友印刷,文田昭仁デザインオフィス,
エジック,タニ,野口成功堂,一二三建設,日
本工業,駿河屋商店,産経商事,前川本店,花月,
髙山明雄,大津興業,エルフォー企画,島村総業,
ユニコム,山本喜則,ヨウシン,PVクリスタロッ
クスソーラ.エコ設備,KUSAKAI,斉藤商事,
一雅会,徳原土木,ラッキーコーポレーション,
町田タイヤ商会,岡村産業,佐々木産婦人科,
江戸川個人タクシー事業協同組合,パンドラ,
DropWave,J・STAGE,ノブレス,加島美術,
吉田誠,島田智通,今井田和規子,大田屋道子,
村田哲夫,斎藤恵美子,押野茂,大崎喜代志,
渡辺政和,布目鐘,山田養蜂場本社総務部総務
室庶務課,小川,横井正豊,末正恵子,越智猛文,
松原賢秀,石井敏恵,丸山満,中野彩子,永美
きよ子,Dr.アントニオジョセマトス,MARIA
はるなGARDE,田代茂,愛媛県立新居浜西高等
学 校 生 徒 会, 清 水 昭 治, 飯 塚 友 子,Dr.GiorgioRoscigno,片庭慶子,綿引一,損害保険ジャ
パン営業開発第二部第二課,豊工業,アイ・エス・
シー・ジー,スズショー,中村工業,寿豊,サ
ワ商事,愛洋商事,丸山不動産,ヤマサ商事,ジョ
イ商事,真営工業所,マーケティングユウ,サ
ントミ,オフコーラル,坂間電機商会,要堂,ユー
トシャルム,ケアメイト大岡山,カーベル,塩
崎表具店,ジェイ・ディー・エス
本誌は皆様からお寄せいただいた複十字シール募金の益金により作られています。
複十字シール運動
―みんなの力で目指す、結核・肺がんのない社会
平成22年度複十字シール
複十字シール運動は,結核や肺がんなど,胸の病
気をなくすため100年近く続いている世界共通の募
金活動です。複十字シールを通じて集められた益
金は,研究,健診,普及活動,国際協力事業など
の推進に大きく役立っています。皆様の暖かいご
協力を,心よりお願いいたします。
運動の輪を広げてください。シールは,はがきや,手紙や包装の封印,何にでも使えます。
問い合せ:普及広報課 TEL03-3292-9287(直)
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新結核関連切手紹介シリーズ(5) ベルギーの慈善切手 第2弾
小林佑吉先生からの貴重な切手のご紹介は5回目となり,今回は第2期(1925-1940年)の切手から,前回に引き続きベルギー
の慈善切手をご紹介します。
①
②
③
④
⑤
①(1931),②(1935),③(1936),④(1937),⑤(1938)
これらは王室シリーズとして発行されたものです。①はエリザベス妃が描かれています。1940年から1944年までナチス・ドイツ占領下
にあったベルギーで,自身のドイツとのつながりと影響力を巧みに使い,ナチスに捕われたユダヤ系の子供たち約100人を強制収容所送り
から救いました。②はエリザベス妃の息子 レオポルド3世の最初の妃のアストリッド妃が描かれています。スウェーデン王家出身で,子
供たちのためになるべく普通の生活を送るように心がけており,多くの国民から愛されました。しかし,この切手の発行された年に車の事
故で命を落としてしまいました。③から⑤はレオポルド3世とアストリッド妃のこどもたちが描かれており,③はボードゥアン王子(後の
ボードゥアン1世),④はジョセフィーヌ=シャルロット王女(後のルクセンブルク大公ジャンの妃),⑤はアルベール王子(現国王のアルベー
ル2世)です。
⑦
⑥
⑥1932
1815年にナポレオンのフラ
ンス軍とイギリス,オランダ,
ドイツの連合軍が戦い,フラ
ンスが大敗したワーテルロー
の戦いの古戦場近くに建てら
れたサナトリウムを図柄にし
た切手です。ワーテルローは
首都ブリュッセルの南方20㎞
にあります。
⑦1939
教会シリーズとして発
行されたもので,リール
の聖グマラス教会が描か
れています。リールは聖
グマラスが教会を建てた
ことからはじまった都市
で,世界遺産にも登録さ
れている市庁舎や鐘楼の
ある文化的な場所です。
⑩
⑧
⑨
⑩1940-1941
都市のシンボルを
集めた都市シリーズ
として発行されたも
のです。各都市のシ
ンボルとともに複十
字マークが描かれ,
国をあげて結核予防
活動が展開されてい
ることが伺えます。
⑧(1933),⑨(1934)
共に結核を社会問題として描いたシリーズです。⑧は複十
字をかざし祈る女性,⑨は十字軍の騎士が描かれており,結
核をなくすという強い願いがこめられています。
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平成23年度複十字シール 図案の原画
安野光雅氏の楽しい世界 第10回
● 外国のあそび ●
平成23年度は,安野光雅先生にデザインをお願いして10年目となります。
また,複十字シールを発行して60周年の記念の年です。
テーマは,「外国のあそび」です。
原画の1枚は,人形劇のパペットでしょうか…。童謡に登場する動物ですね。
よく見ると,うさぎのパペットには,「卯」と入ってあります。そういえば今年は,卯年で
すね。
他の原画では,子供が縄跳びをしたり,フラフープ,バトミントン,木馬,けん玉などに興
じる姿が描かれています。また,衣装のチェック柄,個性的な髪型にも文化,気候風土の違い
が垣間見えます。シールの中になにが隠れているか,新しいシールができるまでのお楽しみ。
なお,平成22年度の複十字シールが昨年11月のIUATLD国際会議のシールコンテスト部門で
1位となりました。
事業部普及広報課
安野光雅(あんの みつまさ)プロフィール
大正15年3月20日,島根県津和野町生まれ。昭和43年,絵本「ふしぎなえ」で絵本界にデビュー。画文集,エッセ
イも多い。その業績に対し,国内外から数々の賞が贈られている。
「ふしぎなえ」「ABCの本」「天動説の絵本」「旅の絵本」「檜本平家物語」「口語訳 即興詩人」司馬遼太郎の歴史紀
行「街道をゆく」の装画など。
津和野町立安野光雅美術館に足を運んでみてください!
CW3_A4065A04.indd 2
〒699-5605 島根県鹿足郡津和野町大字後田イ60-1
TEL0856-72-4155 http://www.town.tsuwano.lg.jp/anbi/anbi.html
2011/05/19 13:46:21
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