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第31号:May
5月のご挨拶
目に飛び込んでくる緑がまぶしい季節になりました。
目に映る世界があまりに明るいと、心はうらはらに「ずん」と
してきたり。一方で、様々な種類の若葉の色、それが日々変わっ
ていく姿は、世界の奥行きを感じさせてくれます。また、飛行機
が離陸してから、高度を上げていく時のわくわく感、刻一刻と
変わるからだの傾き、
「さらば!」というすがすがしさと寂しさを
思い出したりもします。
さて、2009年度のL, A, Newsは紙面をリニューアルしてお届け
します。L, A, Newsを片手に、心の世界の旅をお楽しみください。
PCS ニューズレター
2009年5月12日発行
編集/企画:森岡あすか
揖斐衣海 荻本快
国際基督教大学
高等臨床心理学研究所
心理相談室
〒181-8585
東京都三鷹市大沢3-10-2
オープンハウスから
心理相談室では、毎月1回、第2火曜日に、地域の皆様に向けて「オープンハウス」を行っています。
我々心の専門家と皆さんが一緒に思ったこと、感じたことを自由に語り合う場です。
L,A,Newsでは、小谷先生による小講演に参加した相談員が、刺激を受けて感じたこと、思ったことを毎月
お伝えしています。また、オープンハウスに参加された方の小講義レポートや感想などもお待ちしています。
4月のオープンハウス小講演
「心を開く:内なる世界」
「心を開いてみようかな」と思った瞬間、私はいつも油断している。心を開いたら、いつも
と違って何か変化が起こるかもしれないと思う。開いたら自分がなくなるだろうか、裸の心を
見られるのではないかと心配になる。それで、心を開くことを躊躇してしまう。いつも自覚し
ていない心は、宇宙のように神秘的であり、下手すると自分が傷つく可能性があるので怖く感
じる。その怖さはただ怖くて逃げたい感覚だけではなく孤独と苦しみの感覚もあると感じてい
る。その孤独感を埋めるために、私はたまに愛のエッセンスが欲しくなる。そういう時には、
頑固な心を開きたくなる私がいる。不思議なのは愛のエッセンスをもらってすぐに開いた心を
閉じるのも難しいことである。そのエッセンスをもらって逆に罪悪感を感じ、せっかくもらっ
たエッセンスを返したくなるときがある。そのような時、頑固な心は狭くなってしまって縛ら
れている感じをうけ自由を感じられない。
「一人一人の心の中は宇宙である」ということを小谷先生がお話しされた。心の扉が硬くな
る時、扉の裏にある自分だけが所有している無限で、自由で、現在過去未来など色々な風景を
すべて隠している宇宙があることを思い出せば、「なんとかなるさ~」という気持ちになるこ
とがある。
「世界は自分の延長である。世界から自分を見るのではなく、自分の中から世界を見ること
によって、世界と自分の区切り方がはっきりする」と小谷先生はおっしゃった。心の中の宇宙
を感じながら、そのような感覚に自分を置き直すと、頑固な心の扉を自分からやわらかくする
ことができる。恐れが少なくなり心の余裕がさらに多くなると思うので、その感覚をもつと個
人の葛藤を超えられる能力がつくと私は考える。そうすると、異文化の体験がさらに面白くな
ってくるのだろうか。これからの多文化社会に向かって、自分を中心に自分から世界を見るこ
とができれば自分の心の扉に柔軟性が付く。そうすると、文化の葛藤であれ、民族の葛藤であ
れ、ただの「異質」ということはそれほど重要ではなくなってくるのではないだろうか。新し
い世界を広げて今まで見えないことが見えるようになってきて、異質でも分かり合うことがで
きるのではないだろうか。
チャウジイン
(周梓蛍)
コラム:
2009年度L, A, Newsでは、現場で日々フレッシュな心意気で立っている相談員が、
「私の中の子ども・大人」
「私の中の男・女」をテーマに、コラムをお届けします。
私たちの中には、大人の自分、子どもの自分、男の自分や女の自分がすんでいます。
いろいろな自分を感じてみると、心がひろがってくる。
相談員達は様々な自分をどのように感じて、使っているのでしょうか?
「私の中の子ども・私の中の大人」
ザ・ブルーハーツで綴る『自分の中のおとな、自分の中の子ども』
「本当は大きな声で、聞いてほしいのに、ため息だとか、舌打ちだとか、独り言の中に隠してる」
(Party)
ため息や舌打ち、独り言の中に言いたいことを飲み込むことが大人だと勘違いしていた。いつの間
にか、自分でも自分の言いたいことがわからなくなっていた。「大人はわかってくれない」。そんな
思いで世の中に背を向けていた。
「満員電車の中、くたびれた顔をして、夕刊フジを読みながら、老いぼれてくのはごめんだ」
(ラインを越えて)
そんな思いで仕事を飛び出し、この世界に飛び込んだ私。だけど、そこにあったのは、反抗、反発と
その背後の自信のなさだけ。壊すことには熱心だけど、作ることには関心がなく、そのこともわかって
いなかった私。
「いばらの道を見つけ出し、靴を脱ぎ捨てる」(英雄に憧れて)
自分で選んで歩き出したいばらの道。だけど、自分で選んだことが、しばしば見えなくなっては、
「靴がない」、「足の裏が痛い」と嘆く日々。
だけど、靴は自分で脱いだんだ。それを思い出すと元気になる自分。いばらの道こそ気持ちがいい!
「生きるということに、命をかけてみたい。歴史が始まる前、人はけだものだった」
(世界の真ん中)
私の中の『けだもの』は元気だろうか。『けだもの』にエサはやっているだろうか、飼いならしてい
るだろうか。ときに『けだもの』が、自分の預かり知らぬところで暴れまわって、内臓を食い荒らされ
たこともありました。だけど、、、
「人間はみんな弱いけど、夢は必ずかなうんだ。瞳の奥に眠りかけた、くじけない心」
(僕の右手)
夢があるということ。自分は夢をかなえるんだということ。今、大きな声でそう言いたい。
夢がかなうと信じている自分。そう思うところからエネルギーも湧いてくる。
そんな自分が大人であり、子どもでもある。そんなふうに思います。
(河崎一郎)
「私の中の男・私の中の女」
「私の中の女 私の中の男」
「私の中の女、私の中の男」というと、Freudが言った人生の「働くこと」と
「愛すること」を連想する。「働くこと」は私の中の男がリードし、「愛する
こと」は私の中の女が導き、互いに手を取り合って自分というものを動かして
いるような気がする。
私の中の男はどこから来ているのか。すぐに、父の姿が思い浮かぶ。たんた
んと、もくもくと、働いた父。家にいる時でさえも、もくもくと草むしりを
していた。私はその姿にさみしさと反発を覚えながらも、格好いいとも思って
いた。私の中の男は、たんたんと、もくもくと、働く大人の男に近づこうとし
てもがく。どうもいつももがいているような気がする。
私の中の女は、我をも忘れて好きなものに熱中し、ちゃめっけたっぷりに
日々を、家族を、人を、人生を愛する母の姿とともに生きる。私の中の女はそ
の女に近づき、憧れ、反発し、妬み、圧倒され、頼り、競い、そしてともに笑
い、涙する。女としてのたくましさも、繊細さも、さみしさも、愉しさも、怖
さも、「愛すること」の営みと共に触れることになる。その度胸を私の中の女
はその女からもらった。
いつも、私の中の男はもくもくと、たんたんと、私の中の女は情熱的で疑い
を知らずに、前に進みたがった。そしていつも戸惑ってきた。いいのか?また
傷つくぞ。どちらもどうしようもなく不器用で、無防備でもあった。私は女を
捨て、男も捨て、その不器用さを克服するがために、どれだけ無生物になろう
としたか。あるいは、どれだけ違う人間になろうとしてきたか。
結局その時間は何をもたらしたのだろうか。少しの慰めと、終わりのない
自己否定ではなかったか。
今、私の中の男はこういう。かまわずたんたんと働けよと。女はこういう。
愛するのに臆病になるなと。私の中の男も女も、ようやくこの不器用さに、
降参しつつある。そうしたら意外にも、男も、女も、私の中に少しずつ張られ
た湖の中で、水を得た魚のように動き始めた。私の中の男も、女も、人生を
魚のように自由に、たくましく、美しく、でも不器用に、湖いっぱいに、生き
ていけばいい。
(揖斐衣海)
このコラムを読んで、
自分のことを表現して
みたくなった読者の皆
さん、是非お便りをお
寄せください。
相談員紹介
House of L, A, にはたくさんの職員や相談員の先生方がいます。
このコーナーでは、心理相談員に自己紹介をして頂きます。
今月は、筒井先生と塚本先生のお二人です。
筒井真衣子先生
塚本洋平先生
相談室にいると、愛情と怒りを素直に感じ
ます。ふだんの私は、その空間にほわっと
居座っていますが、人に会うとちゃきっとして
楽しくなったり、あくせくしたりします。
そんな私と会って、みなさんはどんな体験を
するでしょうか?
私は身体が大きく、普段はかなりのんびり屋
なので、深夜に空を見上げ、月に照らされ、
心が広がる感覚が好きです。そうしていると、
のんびりした気分の中にも、何か熱いものが
沸々と内側から湧いてきて、その秘めた情熱を
大事にしたいと思う毎日です。
心理相談室からのお知らせ
2009年度オープンハウスのご案内
皆さんのご参加をお待ちしています。
14:00-15:00 小谷英文室長による小講演
年間テーマ 「心の世界」
6月9日 大人の心:愛する力
7月14日 七夕の心:子どもと大人の間
9月8日 心を閉じる:見える自分
10月13日 感じる心:感じる心:痛む力
11月10日 深まる心:受け入れる力
12月15日 心の再生
1月12日 世界との出会い:新たな自分
2月9日 響きあう心
15:15-16:15 ご関心のあるグループにご参加いただけます
フリーグループ(石川与志也・小谷英文) 私のストレス対処法(苫米地憲昭)
ミニ・ワークショップ(西村馨・西川昌弘・足立正道)
子育て談議(西川昌弘・中村有希)4月6月9月11月1月に実施します。
16:15-17:00 L, A, 会
参加者全員で集まる会です。
編集者より:
■ L, A, Newsの企画編集を始めて3年目になりました。書く人も読む人も、お互いに動いている心が感じられ
るような場にしたいと思います。読者の皆さまもオープンハウスやコラムの感想、HLAに思うこと、愛や怒りを
感じた瞬間のこと、ぜひお便りをお寄せください。
(森岡 あすか)
■ House of L, A, の前を散歩中に、このニュースを読んでくださっている方々がいらっしゃいます!その方た
ちも含め、読んでくださっている皆さんの心がドキドキするような、そんなニュースを今年もお送りしていきます。
楽しみにしていてくださいね。
(揖斐 衣海)
■ 新しく、編集に携わることになりました。荻本快です。心に湧き上がることばを、大事に伝えていきたいです。
(荻本 快)
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