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貯蓄率の動向について
【貯蓄率の動向について】 物価高騰や金融危機の影響を受け、個人消費は足下で弱い動きもみられるといわれて おり、家計調査では勤労者世帯における20年9月の消費支出は前年同月比で▲1.1%と 低下している。しかし、可処分所得も減少していることから(同▲1.0%減)、平均消費性向 は 85.7%(同▲0.1 ポイント減)と大きな低下傾向はみられていない。平均消費性向と貯蓄 率は表裏一体の関係であるため、貯蓄率も大きな上昇傾向はみられていないが、世帯主 の年齢や就業状態により貯蓄行動も異なっていると思われる。そのため、今後高齢化の影 響をどのように受けるのか、属性別に貯蓄の動向をみていきたい。 (1)家計調査における勤労者世帯・無職世帯の黒字率の状況 世帯ベースの貯蓄率を示す家計調査の黒字率注1)について、世帯主の就業状態別及 び年齢階級別の状況をみてみる。ただし、家計調査では、勤労者世帯(世帯主が会社、 官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯)及び無職世帯以外の世帯(個人営業 の世帯や自由業者の世帯など)については、営業上の収入と家計収入に切り離してとらえ ることが難しいため月々の収入は調査されておらず、黒字率が算出できる区分は勤労者 世帯、無職世帯のみである。 ①勤労者世帯・無職世帯数割合の推移 ∼高齢化により無職世帯が増加。勤労者世帯も高齢化が進展∼ まず、家計調査における勤労者・無職世帯割合の推移を確認すると、勤労者世帯の割 合は、12年の 59.8%から19年は 54.3%に低下しており、無職世帯の割合は、12年の 19.5%から19年は 26.9%と上昇している(第Ⅱ−1−12図)。勤労者世帯の割合を他調 査と比較すると、同年に調査された労働力調査注2)では 55.6%であり、家計調査の割合は 若干低い値となっているものの、おおむね実態を把握していると推測される。 注1)「 家計調査」では、平均貯蓄率は{(預貯金−預貯金引出)+(保険掛金−保険取金)÷可処分所 得}×100、黒字率は黒字(=実収入−実支出=可処分所得(実収入―非消費支出)−消費支出) ÷可処分所得である。本稿では、国民経済計算の家計貯蓄率と概念の近い黒字率を分析の対象とす る。 注2) 全国で無作為に抽出された約 40,000 世帯の世帯員のうち 15 歳以上の者約 10 万人が対象。 - 88 - 第Ⅱ−1−12図 勤労者・無職世帯割合の推移 12 13 14 15 16 17 18 19年 59.8 19.5 54.3 0 26.9 20 40 勤労者世帯割合 60 無職世帯割合 80 それ以外 100 (%) 資料:「家計調査」(総務省) 勤労者世帯の状況を世帯主の年齢階級別に推移をみると、39歳以下の世帯の割合は、 12年の 30.5%から19年は 27.5%と低下し、60歳以上の世帯の割合は、12年の 11.6%か ら19年は 14.0%と上昇していることから、勤労者世帯において高齢化の進展がうかがえる (第Ⅱ−1−13図)。 第Ⅱ−1−13図 勤労者世帯世帯主年齢階級別世帯数分布の推移 12 13 14 15 16 17 18 19年 29歳以下 30-39歳 40-49歳 50-59歳 60-69歳 70歳以上 0% 20% 40% 60% 80% 100% 資料:「家計調査」(総務省) 無職世帯についても世帯主の年齢階級別の推移をみると、70歳以上の世帯の割合が 12年の 47.9%から19年は 54.7%と上昇しており、高齢化が進展している様子がうかがえ る。また、19年において無職世帯の 95.1%は世帯主が60歳以上の世帯であった注)(第Ⅱ −1−14図)。 第Ⅱ−1−14図 無職世帯世帯主年齢階級別世帯数分布の推移 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 70歳以上 60∼69歳 50∼59歳 ∼49歳 12 13 14 15 16 17 18 19年 資料:「家計調査」(総務省) 注)家計調査で調査された無職世帯のほとんどは、定年退職し引退した高齢者が世帯主であると推測さ れるため、無職世帯の世帯主の年齢別の状況は分析対象外とすることとした。 - 89 - ②各世帯層別の黒字率の推移 ∼世帯主年齢が60歳以上及び無職世帯で黒字率が低下傾向∼ 続いて、勤労者世帯の世帯主年齢階級別及び無職世帯の黒字率の状況をみる。13年 10∼12月期から20年7∼9月期平均の黒字率は、29歳以下は 25.2%であり、30∼39歳 の 32.2%をピークに、それ以降の世帯層は年齢階級が上がるにしたがって、40∼49歳の 28.4%、50∼59歳の 25.5%と若干の低下傾向がみられるが、60∼69歳でも 12.2%、70 歳以上では 19.1%と高い値であった。 その一方、無職世帯は▲29.0%とマイナス水準であったが、第Ⅱ−1−14図でみたよう に、無職世帯のほとんどが引退した高齢者で構成されていることから、現役時代に資産を 確保し、退職後は公的年金や資産の取り崩しで生活するという計画に基づいて行動して いると考えると、無職世帯の黒字率がマイナスであるのは当然のことであろう。 次に黒字率の推移を確認するため、13年10∼12月期から20年7∼9月期平均の各世 帯層別黒字率を回帰式に当てはめ、傾きをみると、29歳以下及び30∼39歳はマイナス ながらも0に近い値で横ばいを示しており、40∼49歳は 0.1、50∼59歳は 0.004 と正の値 であった。公的年金の支給開始年齢が徐々に引き上げられたことにより、現在40歳代及 び50歳代の層は、年金が支給されない期間のための資産確保が必要になるため、黒字 率は若干ではあるが上昇していると思われる。一方、60∼69歳では▲0.32、70歳以上で は▲0.36、無職世帯では▲0.31 と、世帯主が60歳以上である層は、他の世帯と比較して 顕著に黒字率自体が低下傾向にある。その要因を探るため、各世帯層別に可処分所得 及び黒字の内訳と貯蓄残高の推移を確認する(第Ⅱ−1−15図)。 第Ⅱ−1−15図 勤労者世帯世帯主年齢階級別及び無職世帯における 黒字率及び傾きの推移(四半期平均、後方4期移動平均) <黒字率> <傾き> (%) 40 30 20 10 0 ▲ 10 ▲ 20 ▲ 30 ▲ 40 ▲ 50 0.2 0.10 0.1 0.004 0.0 ▲ 0.06 ▲ 0.07 ▲ 0.1 ▲ 0.2 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 29歳以下 60∼69歳 30∼39歳 70歳以上 40∼49歳 無職 50∼59歳 資料:「家計調査」(総務省) - 90 - ▲ 0.3 ▲ 0.31 ▲ 0.32 ▲ 0.36 ▲ 0.4 29歳以下 30∼39歳 40∼49歳 50∼59歳 60∼69歳 70歳以上 無職 ③各世帯層別の可処分所得及び黒字の内訳の推移 ∼世帯主年齢が60∼69歳の世帯では勤め先収入、 70歳以上及び無職世帯では社会保障給付が黒字率に影響∼ 各世帯別の貯蓄の状況を分析するため、消費支出及び黒字別の可処分所得の推移、 黒字率の前年比伸び率寄与度、可処分所得の内訳別前年比伸び率寄与度、黒字の内 訳別前年比伸び率寄与度により推移をみてみる(第Ⅱ−1−16図)。 29歳以下においては、黒字の伸び率寄与度をみると、可処分所得と消費支出の両方 の要因がみられる。可処分所得内訳別の伸び率寄与度をみると、勤め先収入が実収入の 94.8%を占めており、可処分所得への寄与が最も高い。黒字の内訳をみると、13年10∼ 12月期から14年4∼6月期、17年7∼9月期から18年4∼6月期及び18年10∼12月期 から19年7∼9月期において、土地家屋借金純減注1)及び財産純増注2)の寄与がみられる ため、住宅取得の動きがみられる。しかし、黒字の推移をみると、ほぼ預貯金純増と連動し ていることから、日常的な収支で貯蓄に回すことができた分は預貯金している様子がうか がえる。 30∼39歳においては、黒字の伸び率寄与度をみると、全期間をとおして、黒字は可処 分所得からの影響を受けていることがうかがえる。しかし足下の20年1∼3月期から7∼9 月期は、原油や穀物などの原材料高の影響を受け、食費、光熱費などの支出金額が増加 したため、黒字は減少している。可処分所得内訳別の伸び率寄与度をみると、勤め先収 入は実収入の 95.2%を占めており、可処分所得への寄与が最も高い。黒字の内訳をみる と、他の年代層と比較すると土地家屋借金純減及び財産純増の寄与が大きく、住宅取得 に積極的な年代であることが推測される。また、土地家屋借金純減及び財産純増の費目 が連動しているため、住宅取得には借入がともなっていることがうかがえる。 40∼49歳においては、黒字の伸び率寄与度をみると、可処分所得が低調のなか、消 費支出を抑制し黒字を保持しようとしている節約傾向がみうけられる。可処分所得内訳別 の伸び率寄与度をみると、勤め先収入は実収入の 96.4%を占めているが、18年10∼12 月期より、定率減税の廃止及び可処分所得の上昇による直接税の上昇の影響も出ている。 黒字の内訳をみると、30∼39歳の層に引き続き、住宅取得の動きもみられるが、預貯金 が占める割合も上昇している。 50∼59歳においては、黒字の伸び率寄与度をみると、可処分所得の伸びがみられな 注1)土地家屋借金純減は、「土地家屋購入ための借入金の返済金」から「土地家屋購入ための借入金」 を引いた金額である。 注2)財産純増は、土地・家屋などの不動産の売却金である「財産売却」から土地・家屋などの不動産の購 入金である「財産購入」を引いた金額 - 91 - いなか、消費支出を抑制し黒字を保持しようとしている様子がうかがえる。しかし、19年7 ∼9月期から20年4∼6月期は、物価高の影響を受けて、保健医療、交通・通信などの支 出金額が増加したため黒字が減少している。可処分所得内訳別の伸び率寄与度をみると、 勤め先収入が実収入に占める割合は 96.0%と高く、また、19年7∼9月期より、直接税の 寄与がみられることから定率減税の影響もうかがえる。黒字の内訳をみると、預貯金が占 める割合が最も高い一方、財産純増の寄与もみられるため、借入をともなわない住宅取得 の動きがうかがえる。 60∼69歳においては、黒字の伸び率寄与度をみると、可処分所得と消費支出の両方 の要因がみられる。可処分所得内訳別の伸び率寄与度をみると、勤め先収入の実収入に 占める割合が 75.4%と低くなり、社会保障給付の割合が 20.1%と寄与が高くなってきてい る。そのため、老齢厚生年金の一部又は全部支給停止や物価スライドによる公的年金の 減額、支給開始年齢の引き上げなども可処分所得の減少に影響していると思われる。また、 社会保障給付減少のこの傾向は、70歳以上及び無職世帯についても顕著にみられる。 黒字の内訳では、借入をともなわない住宅取得、有価証券購入などの投資の動きもみら れる。 70歳以上においては、可処分所得内訳別の伸び率寄与度をみると、勤め先収入の実 収入に占める割合が 54.1%、社会保障給付の割合が 42.2%と社会保障の寄与が高くな ってきている。このことから、勤労者世帯ではあるが、勤め先収入が高額でないため、社会 保障給付の変動に影響を受けていると推測される。実物資産の状況を確認するために、1 2年1月∼20年9月平均の持家率をみると 83.3%であり、60∼69歳の 83.6%、無職世帯 の 88.3%と比較して低い値になっている。持家率と住居費用は負の相関(▲0.96)が高く、 他の高齢者層と比較すると、住居費への支出割合が高いことから、生活を維持するために 働かざるを得ない高齢者世帯の存在が推測される。世帯所得における格差をジニ係数で 確認すると(第Ⅱ―1−17図)、当該層のジニ係数は他の世帯層と比較して最も高いこと から、所得格差が大きいことが分かる。 無職世帯においては、可処分所得内訳別の伸び率寄与度をみると、社会保障給付が 実収入の 83.6%を占めている。そのため、他の高齢者層と同様に、全期間をとおして、社 会保障給付の減少及び18年からは定率減税の廃止にともなう直接税の増加などにより可 処分所得は減少傾向にある。しかし、黒字額の内訳をみると、有価証券純購入の寄与が 高いことから、フローの状況でみた投資意欲は、無職世帯が高いことが推測される。 - 92 - 第Ⅱ−1−16図 勤労者世帯世帯主年齢階級別及び無職世帯における 黒字及び可処分所得の推移(四半期平均、後方4期移動平均、前年同期比) <29歳以下> (消費支出、黒字別の可処分所得の推移) (黒字の伸び率寄与度) (万円) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 消費支出【円】 (%) 40 30 20 10 0 ▲ 10 ▲ 20 ▲ 30 ▲ 40 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 可処分所得 消費支出(逆系列) 黒字(前年比) 黒字 (可処分所得内訳別の伸び率寄与度) (黒字内訳別の伸び率寄与度) (%) 200 (%) 10 8 6 4 2 0 ▲2 ▲4 ▲6 ▲8 ▲ 10 150 100 50 0 ▲ 50 ▲ 100 ▲ 150 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 預貯金純増 保険純増 有価証券純購入 土地家屋借金純減 他の借金純減 分割払購入借入金純減 一括払購入借入金純減 財産純増 その他の純増 繰越純増 黒字 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 事業・内職収入 農林漁業収入 財産収入 社会保障給付 仕送り金(収入) 特別収入 直接税 社会保険料 他の非消費支出 可処分所得 <30∼39歳> (消費支出、黒字別の可処分所得の推移) (黒字の伸び率寄与度) (万円) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 消費支出【円】 黒字 ( %) 20 15 10 5 0 ▲5 ▲ 10 ▲ 15 ▲ 20 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 可処分所得 消費支出(逆系列) 黒字(前年比) (可処分所得内訳別の伸び率寄与度) (黒字内訳別の伸び率寄与度) (%) 6 (%) 30 4 20 2 10 0 0 ▲2 ▲ 10 ▲4 ▲ 20 ▲6 ▲ 30 ▲8 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 社会保障給付 社会保険料 事業・内職収入 仕送り金(収入) 他の非消費支出 農林漁業収入 特別収入 可処分所得 預貯金純増 土地家屋借金純減 一括払購入借入金純減 繰越純増 財産収入 直接税 - 93 - 保険純増 他の借金純減 財産純増 黒字 有価証券純購入 分割払購入借入金純減 その他の純増 <40∼49歳> (消費支出、黒字別の可処分所得の推移) (黒字の伸び率寄与度) ( %) 25 (万円) 60 20 50 15 40 10 30 5 20 0 10 ▲5 ▲ 10 0 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 消費支出【円】 ▲ 15 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 黒字 可処分所得 (可処分所得内訳別の伸び率寄与度) 消費支出(逆系列) 黒字(前年比) (黒字内訳別の伸び率寄与度) (%) 8 (%) 30 6 20 4 10 2 0 0 ▲ 10 ▲2 ▲4 ▲ 20 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 預貯金純増 保険純増 有価証券純購入 土地家屋借金純減 他の借金純減 分割払購入借入金純減 一括払購入借入金純減 財産純増 その他の純増 繰越純増 黒字 ▲6 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 事業・内職収入 農林漁業収入 財産収入 社会保障給付 仕送り金(収入) 特別収入 直接税 社会保険料 他の非消費支出 可処分所得 <50∼59歳> (消費支出、黒字別の可処分所得の推移) (黒字の伸び率寄与度) ( %) 20 (万円) 60 15 50 10 40 5 30 0 20 ▲5 ▲ 10 10 ▲ 15 0 ▲ 20 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 消費支出【円】 ▲ 25 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 黒字 可処分所得 (可処分所得内訳別の伸び率寄与度) 消費支出(逆系列) 黒字(前年比) (黒字内訳別の伸び率寄与度) (%) 4 (%) 40 30 2 20 0 10 0 ▲2 ▲ 10 ▲4 ▲ 20 ▲6 ▲ 30 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 ▲8 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 事業・内職収入 農林漁業収入 財産収入 社会保障給付 仕送り金(収入) 特別収入 直接税 社会保険料 他の非消費支出 可処分所得 預貯金純増 土地家屋借金純減 一括払購入借入金純減 繰越純増 - 94 - 保険純増 他の借金純減 財産純増 黒字 有価証券純購入 分割払購入借入金純減 その他の純増 <60∼69歳> (消費支出、黒字別の可処分所得の推移) (黒字の伸び率寄与度) (万円) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 消費支出【円】 ( %) 120 100 80 60 40 20 0 ▲ 20 ▲ 40 ▲ 60 ▲ 80 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 黒字 可処分所得 (可処分所得内訳別の伸び率寄与度) 消費支出(逆系列) 黒字(前年比) (黒字内訳別の伸び率寄与度) (%) 10 ( %) 300 5 200 100 0 0 ▲5 ▲ 100 ▲ 10 ▲ 200 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 預貯金純増 保険純増 有価証券純購入 土地家屋借金純減 他の借金純減 分割払購入借入金純減 一括払購入借入金純減 財産純増 その他の純増 繰越純増 黒字 ▲ 15 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 事業・内職収入 農林漁業収入 財産収入 社会保障給付 仕送り金(収入) 特別収入 直接税 社会保険料 他の非消費支出 可処分所得 <70歳以上> (消費支出、黒字別の可処分所得の推移) (黒字の伸び率寄与度) (万円) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 消費支出【円】 ( %) 350 300 250 200 150 100 50 0 ▲ 50 ▲ 100 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 黒字 可処分所得 (可処分所得内訳別の伸び率寄与度) 消費支出(逆系列) 黒字(前年比) (黒字内訳別の伸び率寄与度) (%) 30 ( %) 400 20 300 10 200 0 100 ▲ 10 0 ▲ 20 ▲ 100 ▲ 200 ▲ 30 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 預貯金純増 保険純増 有価証券純購入 土地家屋借金純減 他の借金純減 分割払購入借入金純減 一括払購入借入金純減 財産純増 その他の純増 繰越純増 黒字 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 事業・内職収入 農林漁業収入 財産収入 社会保障給付 仕送り金(収入) 特別収入 直接税 社会保険料 他の非消費支出 可処分所得 - 95 - <無職> (消費支出、黒字別の可処分所得の推移) (黒字の伸び率寄与度) (万円) 30 25 20 15 10 5 0 ▲5 ▲ 10 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 消費支出【円】 ( %) 15 10 5 0 ▲5 ▲ 10 ▲ 15 ▲ 20 ▲ 25 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 黒字 可処分所得 (可処分所得内訳別の伸び率寄与度) 消費支出(逆系列) 黒字(前年比) (黒字内訳別の伸び率寄与度) (%) 4 3 2 1 0 ▲1 ▲2 ▲3 ▲4 ▲5 ▲6 ▲7 ▲8 ( %) 40 20 0 ▲ 20 ▲ 40 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 事業・内職収入 農林漁業収入 財産収入 社会保障給付 仕送り金(収入) 特別収入 直接税 社会保険料 他の非消費支出 可処分所得 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 13 └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 預貯金純増 保険純増 有価証券純購入 土地家屋借金純減 他の借金純減 分割払購入借入金純減 一括払購入借入金純減 財産純増 その他の純増 繰越純増 黒字 (注)可処分所得 = 実収入(勤め先収入+事業・内職収入+農林漁業収入+財産収入+社会保障給付+ 仕送り金(収入)+特別収入) – 非消費支出(直接税 + 社会保障 +他の非消費支出) 資料:「家計調査」(総務省) 第Ⅱ−1−17図 世帯主年齢階級別の世帯所得のジニ係数(18年) 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 29歳以下 30∼39歳 40∼49歳 50∼59歳 60∼69歳 70歳以上 資料:「国民生活基礎調査」(厚生労働省) 以上により、貯蓄の動向は、勤め先収入や社会保障給付の変動及び物価の高騰など の影響を受けているが、年齢階級及び就業状態によって影響度が異なることが推測され たため、各世帯層別に黒字率を被説明変数、勤め先収入、社会保障給付、社会保険料、 定期預金の平均金利及び消費者物価指数を説明変数として回帰分析を行った(第Ⅱ―1 −5表)。すべての層において決定係数が 0.6 を、60歳以上及び高齢者層では 0.8 を超え ており、当てはまりの良い結果となった。決定係数の高かった60歳以上及び高齢者層の 回帰分析結果を要因分解したのが、第Ⅱ―1−18図である。60∼69歳の層において勤 - 96 - め先収入、70歳以上及び無職世帯においては、社会保障給付の影響を受けていること が確認できる。また、足下では、消費者物価指数や社会保険料が黒字率の低下に影響を していることがうかがえる。 第Ⅱ―1−5表 勤労者世帯世帯主年齢階級別及び無職世帯において、 黒字率を被説明変数として回帰分析した結果 (13年1∼3月期から20年7∼9月期、四半期平均、後方4期移動平均) 自由度調 整済決定 係数 29歳以下 0.662 30∼39歳 0.604 40∼49歳 0.768 50∼59歳 0.615 60∼69歳 0.869 70歳以上 0.894 無職 0.916 説明変数 勤め先収入 係数 t値 係数 t値 係数 t値 係数 t値 係数 t値 係数 t値 係数 t値 54.534 4.091 24.621 2.209 12.521 0.944 ▲ 1.366 ▲ 0.088 90.330 9.739 18.159 2.722 10.825 2.482 社会保障給 社会保険料 付 ▲ ▲ ▲ ▲ 2.662 6.083 0.831 0.924 9.204 1.084 1.949 1.169 1.850 1.014 34.874 6.542 95.693 4.970 ▲ 29.594 ▲ 2.878 20.629 1.923 0.222 0.325 38.286 2.316 ▲ 19.076 ▲ 2.186 0.524 0.387 ▲ 22.960 ▲ 3.489 定期預金の 平均金利 消費者物価 (1000万円 指数(前期 以上・総 比) 合) ▲ 2.168 ▲ 1.069 ▲ 6.226 ▲ 1.048 0.807 ▲ 0.704 2.982 ▲ 1.173 1.100 ▲ 0.773 5.455 ▲ 1.887 1.631 ▲ 1.934 4.897 ▲ 2.599 0.239 ▲ 2.353 0.627 ▲ 1.712 0.708 ▲ 5.225 1.391 ▲ 3.609 0.334 ▲ 2.176 0.647 ▲ 2.161 切片 ▲ 350.478 ▲ 2.990 ▲ 501.720 ▲ 4.944 ▲ 237.059 ▲ 2.139 ▲ 387.867 ▲ 3.944 ▲ 949.272 ▲ 7.007 ▲ 624.686 ▲ 11.577 ▲ 1080.307 ▲ 4.086 第Ⅱ―1−18図 回帰分析結果による要因分解 (60∼69歳) (70歳以上) 15 12 10 10 8 6 5 4 0 2 0 ▲5 ▲2 ▲4 ▲ 10 ▲6 ▲8 ▲ 15 ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ └ 13 年 ┘ └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 社会保障給付 社会保険料 定期預金の平均金利 消費者物価指数(前期比) 黒字率 ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ └ 13 年 ┘ └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 社会保障給付 社会保険料 定期預金の平均金利 消費者物価指数(前期比) 黒字率 (無職) 12 10 8 6 4 2 0 ▲2 ▲4 ▲6 ▲8 ▲ 10 ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ └ 13 年 ┘ └ 14 年 ┘ └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ └ 20 年 勤め先収入 社会保障給付 社会保険料 定期預金の平均金利 消費者物価指数(前期比) 黒字率 (注)1.黒字率=ln(勤め先収入)+ln(社会保障給付)+ln(社会保険料)+ln(定期預金の平均金利)+消費者物価 指数(前期比)+切片 - 97 - 2.網掛けは、t 値の絶対値が2以上を示す。 3.無職世帯における勤め先収入は、他の世帯員の勤め先収入である。 4.直接税は多重共線性が確認されたため除外した。 5.要因分解式:黒字率=(X1i-X10)β1+(X2i-X20)β2+(X3i-X30)β3+(X4i-X40)β4+(X5i-X50)β5+u X1: 勤め先収入、X2: 社会保障給付、X3: 社会保険料、X4: 定期預金の平均金利、X5: 消費者物 価指数、Xi:各変数の値、X0:各変数の平均値、βk:各変数のパラメータ、u:残差 資料:「預金・貸出関連統計」(日本銀行)、「消費者物価指数」、「家計調査」(総務省) ④貯蓄残高の状況 ∼世帯主年齢が29歳以下及び70歳以上の世帯において貯蓄残高が減少傾向。 世代内格差は年齢が進むにつれ拡大∼ 以上、フローの状況から黒字率の推移をみてきたが、次はストックの観点から、貯蓄残 高の推移を各世帯層別にみる。 17年を100として貯蓄残高の推移を確認すると、29歳以下の世帯層は、18年からの減 少が顕著であり、20年1∼3月期に 68.8、4∼6月期に 69.5 まで減少している。70歳以上 では、14年10∼12月期に 138.8、15年10∼12月期に 139.7 と高水準だったが、16年に 入り急落し、17年は横ばいで推移したものの、20年4∼6月期は 98.5 まで減少している。 世帯主の年齢が高い無職世帯注)では70歳以上でみられたような減少傾向はなかった(第 Ⅱ−1−19図)。 第Ⅱ−1−19図 勤労者世帯世帯主年齢階級別及び無職世帯における 貯蓄残高の推移(17年=100、四半期平均、後方4期移動平均) ①指数水準(17年=100) ②貯蓄残高の推移 140 130 (万円) 3000 120 2500 110 2000 100 1500 90 1000 80 500 70 0 60 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 29歳以下 60∼69歳 30∼39歳 70歳以上 40∼49歳 無職 50∼59歳 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 29歳以下 60∼69歳 30∼39歳 70歳以上 40∼49歳 無職 50∼59歳 資料:「家計調査」(総務省) さらに各世帯層別に金融資産の種類別に推移をみてみる(第Ⅱ−1−20図)。 29歳以下では、貯蓄残高は、通貨性・定期性預貯金を中心に減少傾向を示しており、 14年10∼12月期に 368 万円だった残高が20年4∼6月期には 246 万円まで減少してお り、対前年増加率四半期平均(以下「増加率」という)は、▲6.4%と預貯金を大きく取り崩し 注)第Ⅱ−1−18図参照 - 98 - ている傾向がうかがえた。しかし、取り崩しが顕著にみられた18年以降、当該世帯層では 持ち家率が上昇しており、持ち家率と貯蓄残高の相関係数を算出すると、▲0.85 と有意な 値であったため、18年以降の残高の減少は主に住宅取得によるものと推測される。 30∼39歳では、14年10∼12月期が 719 万円であったところ20年4∼6月期は 650 万 円に減少しており(増加率▲1.8%)、そのうち、生命保険(増加率▲5.2%)や定期性預貯 金(増加率▲5.5%)の減少が目立っている。一方、通貨性預金は増加率が 8.5%とその保 有割合を増やしている。 40∼49歳は、14年10∼12月期の 1108 万円が20年4∼6月期では 1114 万円に残高 が上昇し(増加率▲0.2%)、金額ベースで勤労者世帯層の中で唯一上昇した層であった。 中でも、有価証券の増加率が 13.2%と高かった。 50∼59歳は、定年退職を間近に控える年代であるため、定期性預貯金などの安定的 な商品を蓄積していく傾向がみられると推測されたが、14年10∼12月期の 1659 万円が2 0年4∼6月期では 1608 万円に減少しており(増加率▲1.0%)、定期性預貯金の増加率 が▲3.9%と減少する一方、有価証券の増加率は、9.7%と上昇している。このことから、低 金利などの影響を受け、金融商品の選択基準として収益性も重視してきている様子が推 測される。 60∼69歳は、14年10∼12月期の 2278 万円が足下の20年4∼6月期では 2223 万円 に減少しているが(増加率 0.2%)、金額ベースで勤労者世帯層の中で最も高い水準であ る。この高い貯蓄残高は退職金により形成されたものと考えられる。また有価証券の増加 率が 10.3%と高いことから、資金も比較的余裕があるため、リスクを許容できる層である事 が推測される。 70歳以上は、14年10∼12月期は 2839 万円であり、すべての層の中で最も残高が高 かったが、20年4∼6月期では 2014 万円に減少し、増加率▲4.9%は、29歳以下の層に 次いで大きな減少幅であった。すべての金融商品において減少がみられるが、中でも定 期性預貯金は、16年7∼9月期に大きく減少し、増加率▲7.4%と目立っている。世帯主 の平均年齢の推移をみると、14年10∼12月期で 71.9 歳、20年4∼6月期で 72.3 歳とほ とんど上昇していないことから、高齢化の影響はないと考えられる。14年10∼12月期から 20年4∼6月期の定期性預貯金額を被説明変数、勤め先収入及び社会保障給付を説明 変数として回帰分析をしたところ、t 値は、勤め先収入が 3.80、社会保障給付が▲0.67 と いう結果であった。このことから、貯蓄残高減少には、勤め先収入の減少が影響していると 推測される。 無職世帯では14年10∼12月期の 2308 万円が20年4∼6月期では 2399 万円と上昇し - 99 - ており(増加率 0.7%)、同様な年齢構成である70歳以上勤労者世帯と対照的な結果とな った。商品別にみると、有価証券の増加率が 11.2%と高く、20年4∼6月期において金額 ベースで最も有価証券を保有している世帯であった。また、フローでみられた黒字率低下 による貯蓄残高の減少への影響はみられなかった。 商品別の特徴をみると、通貨性預金の割合は、30∼39歳及び40∼49歳の層におい て上昇しており、定期性預金の割合はすべての層で低下した。有価証券の割合は、高齢 者層において高く、株価変動の影響を最も受けやすい層であることが推測される。 第Ⅱ−1−20図 勤労者世帯世帯主年齢階級別及び無職世帯における金融資産別 一世帯当たりの貯蓄残高(ストック)の推移(後方4期移動平均) <29歳以下> <30∼39歳> ( 万円) ( 万円) 400 800 350 700 300 600 250 500 200 400 150 300 100 200 50 100 0 0 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 通貨性預貯金 定期性預貯金 生命保険など 有価証券 通貨性預貯金 金融機関外 <40∼49歳> 定期性預貯金 生命保険など 有価証券 金融機関外 <50∼59歳> (万円) (万円) 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 通貨性預貯金 定期性預貯金 生命保険など 有価証券 金融機関外 ⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 通貨性預貯金 定期性預貯金 生命保険など 有価証券 金融機関外 <60∼69歳> <70歳以上> (万円) (万円) 2500 3000 2000 2500 2000 1500 1500 1000 1000 500 500 0 0 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 通貨性預貯金 定期性預貯金 生命保険など 有価証券 金融機関外 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 通貨性預貯金 - 100 - 定期性預貯金 生命保険など 有価証券 金融機関外 <無職世帯> ( 万円) 2500 2000 1500 1000 500 0 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ 14 └ 15 年 ┘ └ 16 年 ┘ └ 17 年 ┘ └ 18 年 ┘ └ 19 年 ┘ 20 年 通貨性預貯金 定期性預貯金 生命保険など 有価証券 金融機関外 (注)1.生命保険など…民間の保険会社が販売している積立型の生命保険,損害保険(積立型)のほか,農 業協同組合などが取り扱っている各種の共済,郵便局で取り扱っている簡易保険(保険商品,年金商 品)など。なお,掛け捨ての生命保険は貯蓄には含めない。 2.金融機関外…社内預金、無尽・頼母子講、その他 3.有価証券…株式(時価)、債権(額面)、株式投資信託(時価)、公社債投資信託(時価)、貸付信託 (額面)、金銭信託(額面) 4.時価で把握される商品を含むため、実質化することが困難であることから、名目値で推移をみている。 資料:「家計調査」(総務省) 70歳以上の層において、フローの状況をみた際に、世帯所得の格差が確認されたため、 貯蓄残高についても世帯主の年齢階級別のジニ係数を算出した。その結果、29歳以下 は 0.37、30∼39歳は 0.31、40∼49歳は 0.36、50∼59歳は 0.44、60∼69歳は 0.46、70 歳以上は 0.49 と、最も低い層は30∼39歳であり、それ以降の層は年齢が高くなるほどジ ニ係数が高くなっている。このことから、世帯所得と同様に、金融資産についても年齢があ がるほど同一層内の格差が拡大していることがうかがえた(第Ⅱ−1−21図)。 第Ⅱ−1−21図 世帯主年齢階級別の貯蓄残高のジニ係数(19年) 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 29歳以下 30∼39歳 40∼49歳 50∼59歳 60∼69歳 70歳以上 資料:「家計調査」(総務省) (2)まとめ 家計調査を用いて、勤労者世帯の世帯主年齢階級別及び無職世帯の貯蓄の動向に ついてフローとストックの観点からみてきた。 高齢化の影響を受け、世帯主が60歳以上の勤労者世帯及び無職世帯の比率が高ま ってきており、各世帯層別の黒字率の推移をみると、60歳未満の勤労者世帯では、黒字 率が横ばい傾向であるのに対し、60歳以上の勤労者世帯及び無職世帯では低下傾向に - 101 - あった。無職世帯の95%以上が60歳以上であることから、黒字率の低下は60歳以上の 世帯において顕著である。 この黒字率の低下傾向の要因を探るため、黒字率を被説明変数として回帰分析を行っ た結果、60∼69歳の世帯では勤め先収入、70歳以上及び無職世帯では社会保障給付 が、黒字率に影響をしていることがわかった。また、それら項目以外にも社会保険料や物 価高の影響もうかがえた。現在、雇用環境も悪化しており、保険料率の引き上げは29年ま で予定されていることから、今後も高齢者層の黒字率がさらに低下することが推測される。 消費が可処分所得を上回った際の家計の不足分は、金融資産の取り崩しなどで補填さ れるため、ストックの状況についてみると、29歳以下及び70歳以上の勤労者世帯におい て貯蓄残高の減少が顕著だったものの、60∼69歳及び無職世帯では貯蓄残高減少の 傾向がみられず、黒字率が低下している影響はまだみられなかった。しかし、今後、高齢 者層における黒字率の更なる低下が予想されるため、貯蓄残高の減少が起こる可能性が 高いと考えられる。 また、世帯所得及び貯蓄残高において、年齢階級別にジニ係数により格差の状況を確 認すると、ともに30歳代以降、格差は年齢とともに拡大していることがわかった。このことか ら、今後高齢化により、格差の大きい世帯が占める割合が上昇することが予想される。 本稿で使用したデータは、統計データ入手の制約上、フローについては20年9月時点、 ストックについては6月時点であるため、金融危機にともなう急激な株価乱高下の影響は 反映されていない。百年に一度といわれている現在の金融危機の状態が、貯蓄及び金融 資産選択行動に与える影響は大きいと思われるため、今後の動きにも注視していきたい。 - 102 -