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湾岸産油国視点での課題と日本への期待 - JOGMEC 石油・天然ガス
平成26年度第8回海外石油天然ガス動向ブリーフィング 湾岸産油国視点での課題と日本への期待 平成26年11月21日 中東事務所 所長 浅和 哲 0 目次 1.湾岸エリアで今、何が起きているのか? 2.湾岸産油国の現状課題 3.湾岸産油国の取り組み 4.日本に対して期待するものは何か? 5.まとめ 1 2 1.中東湾岸エリアで今、何が起きているのか? 地政学的不安定要因の増大・混迷 • イスラム国との戦い - 「アラブの春」の限界・挫折、内部改革は立ち行かず破綻 - 統治機能・組織力の低下、内部混乱 ⇒ イスラム国の勢力拡大へ - GCC君主制国家は体制維持に懸命、攻めと守り(空爆と国内引締 め) • 同盟・対立関係の流動化 - GCC内部の不協和音 ⇒ サウジ・UAE・バーレーン VS カタール(ムスリム同胞団支 援) ⇒ 他方、最大の脅威(過激イスラム主義)の排除で利害一致 - 米国の中東プレゼンス後退 ⇒ 米・イラン関係改善への不信感(サウジ、イスラエル) ⇒ 欧州、中国他との関係強化へ • 二極化する産油国 - 油価高を享受した政治・経済安定国(GCC)と、その対極にある政 治・経済リスクの高まる不安定国(イラク、イラン等) 3 2.湾岸産油国の現状課題 (1)原油輸出への依存 • ⇒ 原油相場の下落要因 - 中国を中心とするアジア 需要の伸び悩み - 欧州の景気減速 - ドル高の進行 - シェール革命による米国 供給増 - 地政学的リスクにもかか わらず、OPEC全体の生 産は増加傾向 - イラン・イラク・リビア 回復により更なる下落も 湾岸産油国(GCC)の将 来に対する危機感 160.00 油価推移(2013-2014) 140.00 120.00 100.00 80.00 60.00 40.00 20.00 0.00 (US$/bbl) WTI Brent (出所:EIA/ ICE) 4 2.湾岸産油国の現状課題 (2)財政均衡油価比較 • 財政均衡油価比較 - GCCのうち、クウェート・ カタールは優位、オマー ン・バーレーンは厳しい - 経済制裁下のイラン、内戦 下のリビアは突出 - SWF取崩し、財政・プロ ジェクト見直し等の必要性 ⇒ 生産維持or減産? ⇒ 北米シェール(損益分岐コス ト$65-85/bbl)は減速? ⇒ 湾岸産油国は長期的な持久戦 に耐えられるか? (US$/bbl) (出所:mees誌) 2.湾岸産油国の現状課題 5 (3)湾岸産油国の抱える課題 • 外資の有する技術・人材への依存 - 生産減退の焦り、回収率アップへの努力・チャレンジ - エネルギー効率化、国内供給・輸出資源の温存とのバランス - 操業現場での様々なリスク対応能力 - プロジェクトマネジメント能力(複雑化・大型化) • 持続的発展を支える外資の取り込み - 外資に対し、いかに魅力ある投資先に見せるか? ⇒ メキシコ鉱区開放、イランIPC 導入等の新たな動き - 技術革新による外資の投資対象選択肢の増 ⇒ 北米のシェール、ブラジルのプレソルト、西アフリカの深海 等 - 外資の中東離れ、リスクビジネスに対する考え方の変化 ⇒ キャッシュフロー重視の投資家・株主からの圧力 ⇒ 政情不安定な地域での投資懸念、ポートフォリオ再構築の動き (例)米国Oxyの中東資産売却計画、イラク・クルド案件 等 3.湾岸産油国の取り組み 6 (1)戦略的アプローチ • 生産能力維持・拡大及び技術導入・人材育成 - 減退を補う生産性の維持、計画的な能力増強・拡大 - リスクの高い新規探鉱ではなく、既発見・未開発油田の開発促進 - 先進技術の追求(原油増進回収技術EOR:CO2、太陽光等の活用) - 外資からの技術移転、自国民スペシャリストの育成 • 競争主義によるベストの技術を採用 - 多くの外資に競争させ、最もクオリティの高い技術を選定・適用 - ゼロスタートではなく、既存技術の高いレベルからの積み上げ • 総合的な視点でのビジネスパートナー選定 - 技術面・商業面から総合的にパートナー判断 ⇒ アジア市場(日中韓印)にターゲット - GGレベルでの付き合い、消費国とのWin-Win ⇒ 鉱区権益付与とのパッケージ(UAE) ⇒ 日韓印との共同備蓄事業 (出所:JX日鉱日石石油基地株式会社(喜入)) (UAE・サウジ・クウェート) 3.湾岸産油国の取り組み 7 (2)補完対策 • • • 非在来型資源の開発推進 - 非在来型ガス開発(サウジ/シェールガス、オマーン/タイトガス 等) - 輸出向け原油の温存、輸出収入の確保対策 原子力・再生可能エネルギーへのシフト - UAE:電源構成の多角化を目標(2020年 原子力25%、再生エネ7%) - サウジ:原発導入を検討 - アブダビ資本のマスダールは国内外での 再生エネ事業への積極投資 国民の意識改革 - マスコミ、広報等を通じた省エネ推奨 - 補助金改革(クウェート、オマーン等) ⇒ 国民の反発の中で断行できるか? (出所:各種新聞・情報誌) 8 4.日本に対して期待するものは何か? (1)先進技術の現場適用・技術革新 • 石油開発事業は高度な技術力を要求 - 操業現場での多くの課題に直面(Subsurface/Surface両分野) - 付加価値を高める技術・知見に関心大 探査、油層解析、モニタリング技術 掘削、坑井仕上げ技術 省力化・自動化、腐食・防食対策技術、随伴水処理 環境負荷低減技術、HSE 等 - 開発対象が在来型案件から、非在来型油ガ ス田、重質油、極地・氷海・大水深等のよ り困難な案件に拡大傾向 ⇒ 外資が有する独自の強みの技術に期待 ⇒ お互いに競争相手である外資は、産油 国側にとっては頼りになるパートナー - 経済性・安全性の重視 (出所:ジャパン石油開発株式会社JODCO(アブダビ)) 4.日本に対して期待するものは何か? (2)具体的ニーズの見極め • 産油国の最重要課題や政策目標の 実現にいかに貢献できるか? • 産油国が最重視する課題に焦点 - 増産対策、環境問題 等 ⇒ UAEは、2017年350万 b/d・原油回収率70%の 政策目標を設定 ⇒ CO2-EOR等の原油増進 回収技術を志向 • 産油国ニーズの掘り起こし - 技術ソリューション事業 ⇒ 産油国から注目・評価 (JOGMEC技術ソリューション事業コンセプト) 9 概念図 10 4.日本に対して期待するものは何か? (3)人材育成・教育面での貢献 • • 自国民の早期戦力化、マンパワーの有効活用 - 若い世代の教育・育成、現場派遣への道筋、次世代リーダー育成支援 ⇒ 若いナショナルの研修機会・人材育成を引き受け、数年で現場 に送り込めるほどに鍛えてほしいとのリクエスト大 ⇒ 優秀な女性エンジニアの活用に力 ⇒ 高い失業率、求職の一部偏り(高給な職種や公務員人気)の解 消 産油国と日本とのパイプ役強化 - 世代交代によるビジネスライクな付 き合いへの変化 - 知日派・日本応援団の増やす努力 - 研修事業は継続性がカギ ⇒ JOGMEC研修生OBが日本企業 の事業円滑化に貢献 (JOGMEC研修事業の各国研修生) 11 5.まとめ (1)湾岸産油国が直面している転換期 • 地政学的不安定要因の増大、目まぐるしい情勢変化の中での舵取り - 混迷の中での自国の立ち位置確保に腐心 ⇒ 合従連衡・相互牽制 - 危機感の高まり、意識改革の進行 ⇒ 変化への対応が急務 • 不確実性の時代におけるサバイバル戦略 - 自国の持続的発展のためのベストの選択肢の追求 ⇒ 政策の再構築 (2)日本の中東ビジネス・産油国協力のあり方 • 産油国ニーズの把握、日本の強みである技術の掘り起し - 環境・省エネ、エネルギー有効利用等の分野でのWin-Win - メジャー/サービスコントラクターとの連携・共同戦線 • 産油国はベストの技術を貪欲に取込み り ⇒ 国際競争に打ち勝つ実績作 • 人材育成を通じた中長期的な関係作り ⇒ ネットワーク構築・強化 • リスクをチャンスに転換 ⇒ その後押しのためのAll Japanの協力体制 12 お問合せ先 JOGMEC中東事務所 Japan Oil, Gas and Metals National Corporation (JOGMEC) Middle East Office Address: P. O. Box 6270 Al-Masaood Tower #904 Sheikh Hamdan Street, Abu Dhabi, U.A.E. TEL: +971-2-633-0366 FAX: +972-2-633-0280 e-mail: [email protected] (アブダビ市内に建設中のアブダビ国営石油会社ADNOC本社ビル (左側))