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IPベース移動制御技術

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IPベース移動制御技術
次世代移動通信
第4世代移動通信技術
IP
モビリティ
特
集
IPベース移動制御技術
おかじま いちろう いのうえ まさひろ
岡島 一郎 /井上 雅広
おおまえ こ う じ たかはし
ひであき
大前 浩司 /高橋 秀明
うめだ 第4世代移動通信システムにおいて携帯電話等の移動ノードのモビリティを
なるみ
梅田 成視
実現するIPベース移動制御技術のアーキテクチャおよび要素技術を紹介し
NTTドコモ
ます.
IPベース移動制御技術
IPベース移動制御アーキテクチャ
ません.
■構成とプロトコルスタック
NT Tドコモは,ブロードバンド移動
ここでは,4Gシステムが移動制御
移動制御は,原理的にリンク層から
通信サービスを提供する第4世代移動
に課す要求条件を述べた後,これらを
アプリケーション層までの任意の層の
通信システム( 4Gシステム)の実現
満足する制御アーキテクチャを提案し
制御として実現されます.しかしリン
を目指し,その要素技術であるIPベー
ます.
ク層による移動制御は,その適用範囲
ス移動制御技術の研究を進めていま
■要 求 条 件
が同一種類のリンク上に制限されるた
す.IPベース移動制御は,4Gシステ
*
ムにおいてハンドオフ しながら移動す
移動制御への主要な要求条件は次
のとおりです.
め要求条件 ③を満たせません.またト
ランスポート層やアプリケーション層に
る 携帯電話,PDA(Personal Digital
① 高いパケット通信品質
よる移動制御は,複数種類存在する
Assistant)
,ノートP C等の移動ノード
多様なアプリケーションをサポート
トランスポート層プロトコルやアプリ
が送受信するパケットのエンド・ツー・
するため,パケットの伝送遅延,伝送
ケーション層プロトコルがそれぞれ独
エンドの到達性をIP(Internet Pro-
遅延変動,およびロス率の少ない良好
立して移動制御を行う必要があり,制
tocol)層の制御として実現する技術
なパケット通信品質を実現しなければ
御信号量が増加するため要求条件②
です.本制御技術により,移動ノード
なりません.
を満たせません.これに対してIP層に
は,4Gシステム上を自由自在に移動
② 少ない制御コスト
よる移動制御は,IP層が多様なリン
しながら新たな通信を開始し通信を継
有線リンクと比較して通信帯域幅の
ク層,トランスポート層およびアプリ
続できる能力,すなわちモビリティを
狭い無線リンクを効率的に利用するた
ケーション層に共通したプロトコルで
得ることができます.本稿では,「IP
め,移動制御に伴う無線リンク上の制
あることから,要求条件 ②および③を
ベース移動制御アーキテクチャ」を示
御信号量をできる限り少なくしなけれ
満足します.さらに,ハンドオフに伴
した後,主要素である「複数アクセス
ばなりません.
う無線リンクの瞬断やパケット転送経
切替制御」「通信状態移動制御」お
③ シームレスモビリティ
路更新処理の遅れ等のパケット通信
よび「待受状態移動制御」を紹介し
4 G セルラ無 線 リンクだけでなく,
品質の劣化要因に対処することにより
ます.
* ハンドオフ:移動ノードがネットワークとの接
続ポイントを変更する動作.ハンドオーバと同
じ意味.
IEEE802.11等のほかの無線リンクや
要求条件 ①も満たすため,最終的に
イーサネット等の有線リンクにも対応
すべての要求条件を満足します.広大
した移動ノードをサポートするため,
なアドレス空間により非常に多くの移
リンクの種類に左右されないシームレ
動ノードをサポートできるIPv6を前提
スなモビリティを実現しなければなり
としたIPベース移動制御技術の構成
NTT技術ジャーナル 2004.7
29
第4世代移動通信技術
相手ノード
ホームエージェント
インターネット
ページングエージェント
モビリティアンカーポイント
IPネットワーク
ルータ
4Gセルラ無線リンク用
無線機内蔵ルータ
4Gセルラアクセスポイント
IEEE802.11 アクセスポイント
移動ルータ
移動
IP ネットワーク
移動ノード
アプリケーション群
アプリケーション群
TCP/UDP
TCP/UDP
HMIP−Bv6/IPPv6
MIM
802.11 4G
MN
IPv6
HMIP−Bv6
IPv6
IPPv6
IPv6
MIPv6
IPv6
IPv6
4G リンク
リンクリンク
リンクリンク
リンクリンク
リンクリンク
リンクリンク
リンクリンク
リンクリンク
リンク
4G−AP
ルータ群
MAP
ルータ群
PA
ルータ群
HA
ルータ群
CN
…
…
…
…
図1 IP ベース移動制御技術の構成とプロトコルスタック
とプロトコルスタックを図1に示します.
信状態にある移動ノードが,ハンドオ
時のパケットの転送経路の更新処理の
MIM(Multiple Interface Man-
フの際にバッファリング機能を備えた
頻度を低減する制御です.
agement)は,移動ノードが備える
MAP(Mobility Anchor Point)を
複数種類のアクセスの中から,ユーザ
使用することにより,低ロス率かつ低
の嗜好に適合したアクセスを上位プロ
伝送遅延の IPパケット通信を実現す
トコルに提供するとともに,使用しな
る移動制御です.
いアクセスのパワーマネジメントを行
IPPv6( IPv6 Paging Protocol)
複数アクセス切替制御
ここでは,複数種類のリンク層の切
替制御に対する要求条件を整理した
後,NT Tドコモの提案するMIMを概
う移動ノード上の複数アクセス切替制
は,PA(Paging Agent)が待受状
説します.
御です.
態にある移動ノードの位置をエリア単
■要 求 条 件
HMIP-Bv6( Hierarchical Mobile
位で管理するとともに,パケットの到
IPv6 with Buffering at MAP)は,通
着を通知することにより,ハンドオフ
30
NTT技術ジャーナル 2004.7
複数アクセス切替制御への主な要求
条件は次のとおりです.
特
集
MIM GUI
アプリケーションプロトコル
TCP/UDP
HMIP−Bv6/IPPv6
ユーザ
プリファレンス
情報
MIM
最適NIC選択機能
IEEE802.11
NIC
IEEE802.11
リンク
4Gセルラ
NIC
4Gセルラ
リンク
IEEE
802.11
AP
IPパケット
イーサネット
NIC
イーサネット
リンク
4G
セルラ
AP
LAPI
イーサネット
ハブ
MIM内情報
図2 MIMの構成
① ユーザの希望に応じたNIC選択
リンク層プロトコルを備えた通信イ
ノードに実装されます.
① ユーザプリファレンス情報
で,バッテリーセービングを実現しま
す.本機能は,リンク層と上位層 の間
ンタフェース装置であるNIC(Net-
MIM GUI( MIM Graphic User
で制御や情報交換を行うための内部手
work Interface Card)の低廉化や
Interface)を介して入力されたユー
順であるLAPI(Link layer Application
高集積化に伴い,今後は1つの移動
ザの嗜好(プリファレンス)を保持す
Programming Interface) を用いて,
ノードが複数のNICを搭載することが
るデータベースです.プリファレンス
NICの通信可否状態の検出,上位層
予想されます.複数アクセス制御は,
には,伝送速度優先,通信品質優先,
への通信可能NICの通知,使用しない
各NICの通信可否状態を判定し,最
通信コスト優先などがあります.
N I C の電源オフを行います.例えば
(2)
適なNICをユーザの希望に応じて選択
② 最適NIC選択機能
ユーザプリファレンスが伝送速度優先
できなければなりません.
移動ノードに搭載された複数のNIC
の場合には,通信可能なNICの中か
② バッテリーセービング
の通信可否状態を周期的に検出し,
らもっとも伝送速度の速いリンク層に
移動ノードのバッテリーセービング
通信可能なNICの中からユーザの嗜好
対応したNICを選択します.
のために,効率的に各NI Cの消費電力
にもっとも合致するものをユーザプリ
管理を行えなければなりません.
ファレンスに従って選択し,選択した
■MIMの構成
NICを上位層の通信に提供する機能
ここでは,通信状態における移動制
です.さらに,選択したNIC以外の使
御に対する要求条件を整理し,NT T
用しないNICの電源をオフにすること
ドコモの提案するHMIP-Bv6を,その
前記要求条件を満足するMIMの構
(1)
成を図2に示します .MIMは移動
通信状態移動制御
NTT技術ジャーナル 2004.7
31
第4世代移動通信技術
表 音声通信品質評価結果
評価項目
要求条件
(12)
MIPv6
シミュレーション
HMIPv6
実 験
シミュレーション
HMIP-Bv6
実 験
シミュレーション
実 験
ハンドオフ1回当りのパケットロス
3
16.24
17.66
12.93
14.38
0.00
0.00
パケットロス率(%)
0.1
1.02
1.10
0.81
0.90
0.00
0.00
伝送遅延変動(ms)
50
0.00
2.91
0.00
2.99
21.02
28.60
伝送遅延(ms)
400
111.87
108.94
111.87
108.94
111.88
109.54
要求条件不満足
オフ時更新処理を高速化する機能であ
HAの拡張で実現されます.
評価結果とともに紹介します.
■要 求 条 件
通信状態移動制御への主な要求条
① エージェント発見機能
り,パケットの伝送遅延時間を低減し
エージェント発見機能は,移動ノー
ます.
ドがMAPを動的に発見する機能です.
件は次のとおりです.
① 移動ノードおよび移動ネットワー
これにより移動ノードは,IPネットワー
■HMIP-Bv6の評価
シミュレーションおよび実験による
ク上に存在する複数のMAPに関し,
MIPv6,HMIPv6,HMIP-Bv6のパ
単独の移動ノードのモビリティはも
各MAPと移動ノードの現在位置との
ケット通信品質評価結果を紹介します.
とより,電車,バスなどの移動体とと
距離や各MAPのパケット転送処理の
(1)
もに集団で移動する移動ノードから構
負荷状態などを比較しながら最適な
① 評価項目
成された移動ネットワークのモビリティ
M A P を選 択 できます. 本 機 能 は,
図4のネットワークモデルにおいて,
クのモビリティ
評価方法
(7)
ADP(Agent Discovery Protocol)
相手ノードから移動ノードへ音声また
② 導入の容易性
として定義され,待受状態移動制御
はデータを送信した場合の移動ノード
4Gシステムを迅速に,かつ低コス
で後述するようにPAの発見にも使用
における通信品質を,次の項目により
トで展開するために,装置の導入は容
されます.なお本機能の使用において
評価しました.
易でなくてはなりません.
は,移動ノードやルータにMAPやPA
も実現しなければなりません.
・VoIP音声通信:ハンドオフ1回
③ 高いパケット通信品質
に関する情報を設定する必要がなく,
当りのパケットロス数,パケット
多様なアプリケーションにおいて,ハ
IPネットワークへのMAPやPAの設置
ロス率,伝送遅延変動,平均伝
が容易となります.
送遅延
ンドオフ時の通信品質劣化を抑えるた
めに,音声などリアルタイム系通信に
② MA Pバッファリング機能
おいては表の要求条件を満たし,デー
MA Pのバッファリング機能は,移
タ通信においてはハンドオフ時のスルー
動ノードのハンドオフ中にMAPに届
② ネットワークモデル
プット低下を抑えなければなりません.
いた移動ノード宛 パケットをバッファ
本ネットワークモデルでは,相手ノー
■HMIP-Bv6の構成
リングし,パケットロスを防止します.
ド,H Aおよび IP ネットワークがイン
図3に,ハンドオフ時のHMIP-Bv6の
ターネットを介して相互に接続され,
動作を示します.
IPネットワーク内にはMAPおよび複数
(3)
従 来 のMIPv6( Mobile IPv6)
や HMIPv6( Hierarchical Mobile
(4)
・F T Pデータ通信:ファイル転送の
所要時間
IPv6) は,移動ノード宛パケットを
③ サブネットプレフィクス管理機能
のルータが配置されており,移動ノー
HAおよびMAPが転送することでモビ
HAおよびMAPにおいて移動ネット
ドはルータ間をハンドオフします.イ
リティを実現していましたが,ハンド
ワークが使用するすべてのサブネット
ンターネットおよびIPネットワーク内
(8)
オフに伴ってバースト的なパケットロ
プレフィクスを管理する機能です .
のパケット伝送遅延値は,それぞれ
スを発生するなど,上記の要求条件を
これにより,移動ネットワーク内の全
(9)
(10)
5 0 ms ,10 ms です.
満たしてはいませんでした.これを受
ノードのモビリティを実現します.
けて,HMIPv6に次の機能を付加し
(5),(6)
④ 高速移動検知機能
③ トラヒックモデル
上記ネットワークモデルにおいて,
.次
移動ノードがパケットの転送先とし
相手ノードから移動ノードへ送信した
の機能は,移動ノード,MAPおよび
て使用するCare-of Addressのハンド
音声,データのトラヒックモデルは次
たHMIP-Bv6を提案します
32
NTT技術ジャーナル 2004.7
特
集
移動ノード
ルータ1
MAP
HA
CN
ハンドオフ条件発生
Binding Update(バッファリング ON)
Binding Acknowledgement
リンク層ハンドオフ処理
Care−of Address更新処理
パケット
バッファリング
処理
ルータ2
Binding Update(バッファリング OFF)
Binding Acknowledgement
バッファリングされた
データパケットの送信
データパケット
制御パケット
図3 HMIP-Bv6の動作
のとおりです.
・音声トラヒック:パケットレート
毎秒 50パケット,IPパケットサイ
インターネット
伝送遅延:50 ms
(11)
ズ80バイト
HA
・データトラヒック:5メガバイト
MAP
のファイルのFTPを用いたダウン
IP ネットワーク
伝送遅延:10 ms
ロード
(2)
相手ノード
ルータ
評価結果
音声通信における通信品質の評価
結果および要求条件を表に示します.
MAPのパケットバッファリング効果に
移動ノード
より,ハンドオフ1回当りのパケット
ロス数 , およびパケットロス率 は
図4 ネットワークモデル
HMIP-Bv6だけが要求条件を満たし
ていることが分かります.また平均伝
フ周期が8秒,16秒,32秒であるそ
かし,HMIP-Bv6の場合は,ハンドオ
送遅延はいずれの方式も要求条件を満
れぞれの場合においてダウンロード時
フ頻度によらずほぼ一定のダウンロー
たしています.
間を測定した結果,実験系とシミュ
ド時間を示しています.HMIP-Bv6で
データ通信における通信品質の評価
レーションでは同様の傾向がみられま
はダウンロード速度低下の最大要因で
結果を図5に示します.各方式につい
した.MIPv6または HMIPv6につい
あるTCPデータセグメントのロスが生
て,移動ノードがハンドオフを行わな
ては,ハンドオフ頻度が上昇するにつ
じないため,ダウンロード時間はハン
い場合,および移動ノードのハンドオ
れダウンロード時間は長くなります.し
ドオフの影響を受けません.
NTT技術ジャーナル 2004.7
33
第4世代移動通信技術
待受状態移動制御
ここでは,待受状態の移動制御に対
ページングエリア形成機能を持ったPA
ノードの位置を管理する機能です.移
の中からもっとも近いPAを動的に発見
動ノードが1つのページングエリア内
します.
で移動する限り,経路更新処理が不
する要求条件を整理し,NT Tドコモ
② 待受状態移行判定機能
要なため,通信状態移動制御よりも制
の提案するIPPv6を,その評価結果
移動ノードが無通信状態の継続時
御パケット数が低減します.
とともに紹介します.
間を待受状態移行タイマにより監視し
④ ページング機能
■要 求 条 件
て,待受状態への移行を判定する機
図6(b)が示すように,PAが移動ノー
能です.待受状態移行タイマは,移動
ド宛 パケットを受信したことをページ
ノードの通信特性や移動特性に合わ
ングエリア内に通知し,移動ノードが
せて最適化します.
通信状態へ移行する機能です.
待受状態移動制御への主な要求条
件は次のとおりです.
① 制御信号量の低減
移動ノードはパケットを送受信して
③ ページングエリア形成機能
⑤ パケットバッファリング機能
いない状態(無通信状態)で,通信
図6(a)が示すように,待受状態に
ページング機能によって移動ノード
状態の移動制御よりも制御パケット数
なると移動ノードの移動特性や通信特
にパケットの到着を通知している間,
を低減しなければなりません.
性に応じて最適なページングエリアを
P Aが移動ノード宛のパケットをバッ
形成し,ページングエリア単位で移動
ファリングする機能です.これにより
② スムーズな通信再開
いつでも高いパケット通信品質で通
信を再開できなければなりません.
■IPPv6の構成
(秒)
120
実験
前述の要求条件を満足する待受状
態移動制御としてI P P v 6 を提案しま
す
(13)
シミュレーション
100
ハンドオフなし
32秒周期
16秒周期
8秒周期
ダ
ウ 80
ン
ロ 60
ー
ド
時 40
間
20
.IPPv6は,次の機能により構
成され,移動ノードとPAに実装され
ます.
① PA 発見機能
移動ノードが待受状態において使用
0
するPAを発見する機能です.移動ノー
MIPv6
HMIPv6
HMIP-Bv6
図5 データ通信品質評価結果
ドは,前述のA D P を用いて希望する
HA
インターネット
インターネット
IP ネットワーク
①受信パケット到着
⑥エリア登録要求
PA
ルータ
②エリア登録
要求
IP ネットワーク
②パケット
バッファリング
③ IP ページング
PA
④ IP ページング応答
⑤パケット転送
ルータ
ルータ
4G-AP
802.11AP
4G-AP
802.11AP
4G-AP
4G-AP
移動ノード
①パケット未送受信状態
③ AP 間遷移
(送信不要)
④サブネット間遷移
(送信不要)
⑤ページングエリア
間遷移
(a) 待受状態移行動作
(b) ページング動作
図6 IPPv6の動作
34
NTT技術ジャーナル 2004.7
移動ノード
ページングエリア
特
集
Services,”Feb. 2002.
(13) 井上・岡島・梅田:“IPベース移動通信シス
テムにおけるIPページングの検討,”電子情
報通信学会 RCS研究会,RCS2004-3,April
2004.
1.4
7 サブネット
19サブネット
37サブネット
61サブネット
1.2
セッション発生間隔=1 800 s
1
制
御
パ 0.8
ケ
ッ
ト
数 0.6
︵
正
規
化 0.4
︶
0.2
0
20
60
121
181
ハンドオフ周期
244
(s)
図7 IPPv6による制御パケット数低減効果のシミュレーション評価結果
パケットロスのない転送が可能となり
ます.
■IPPv6の評価
IPPv6による制御パケット数低減効
果のシミュレーション評価結果を図7
に示します.ページングエリアを構成
するサブネットの数と移動ノードのハ
ンドオフ周期をパラメータとしたときの
制御パケット数を示しています.制御
パケット数は,通信状態移動制御だけ
の場合の制御パケット数で正規化され
ています.なお,移動ノードの通信セッ
ションは,平均30分間隔の指数分布
で発生させています.IPPv6は,移動
ノードのハンドオフ周期が短くなるほ
ど,つまり移動ノードが頻繁に移動す
るほど,制御パケット数を低減します.
さらに,ページングエリアを構成する
サブネットの数が多いほど,制御パ
ケット数を低減します.例えば,ペー
ジングエリアが7サブネットで構成さ
れハンドオフ周期が平均 20秒ならば,
IPPv6は制御パケット数を半減します.
■参考文献
(1) 池田・岡島・梅田:“IPベース移動通信シス
テムにおけるリンクマネージャ,”2001信学
ソ大,B-5-58,Sept. 2001.
(2) 小林・井上・岡島・梅田:“IPベース移動通
信システムにおけるリンク層に共通化した制
御情報交換方式の検討,”2003信学ソ大,B-5128,Sept. 2003.
(3) D.Johnson, C.Perkins, and J.Arkko:
“ Mobility Support in IPv6,” draft-ietfmobileip-ipv6-24.txt,June 2003.
(4) H. Soliman,C.Castelluccia,K.El Malki,and
L.Bellier:“Hierarchical Mobile IPv6 mobility
management(HMIPv6),”draft-ietf-mobileiphmipv6-08.txt,June 2003.
(5) 大前・岡島・梅田:“階層型Mobile IPv6拡張
方式の提案および特性評価,”電子情報通信
学会IN研究会IN2001-178,Feb. 2002.
(6) H.Takahashi,R.Kobayashi,I.Okajima,and
N.Umeda:“Transmission Quality Evaluation
of Hierarchical Mobile IPv6 with Buffering
Using Test Bed,”Proceedings of IEEE VTC
2003 Spring,April 2003.
(7) 大前・井上・岡島・梅田:“階層型IPモビリ
ティ制御方式における階層エージェントの自
律 的 発 見 法 ,” 2 0 0 3 信 学 総 大 , B - 5 - 1 1 6 ,
March 2003.
(8) I.Okajima, N. Umeda, and Y.Yamao:
“Architecture and Mobile IPv6 Extensions
Supporting Mobile Networks In Mobile
Communications,”Proceedings of IEEE VTC
2001 Fall Volume 4,Oct. 2001.
(9) http://average.matrix.net/
(10) http://www.iij.ad.jp/
(11) ITU-T Recommendation G.729 Annex A:
“Reduced complexity 8kbit/s CS-ACELP
speech codec,
”Nov. 1996.
(12) ITU-T Recommendation Y.1541:“Network
Performance Objectives for IP-Based
(上段左から)岡島 一郎/ 井上 雅広
(下段左から)大前 浩司/ 高橋 秀明/
梅田 成視
4Gシステムにおける移動ノードのモビリ
ティを実現するため,複数アクセス切替制
御,通信状態移動制御,待受状態移動制御
から構成され,高いパケット通信品質,少
ない制御コスト,シームレスモビリティな
どの各種要求条件を満足したIPベース移動
制御技術を提案しました.今後は,すべて
の要素技術を実装したテストベッド上で総
合的な評価を行うとともに,国際標準化に
取り組んでいく予定です.
◆問い合わせ先
NTTドコモ
ワイヤレス研究所 通信方式研究室
TEL 046-840-3759
FAX 046-840-3789
E-mail [email protected]
NTT技術ジャーナル 2004.7
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