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世界を変えた哲学者たち

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世界を変えた哲学者たち
世界を変えた哲学者たち
1. ニーチェ
躁鬱病により 45 歳で発狂
キリスト教「この世のすべてに意味がある。不幸も神が与えた試練で、あの世で報われる」
そう考えることで「すべてはむなしい」と感じるニヒリズムへの転落をさけることができ
た
しかし、多くの人が「神は死んだ」と考えることになるだろうと予言
歴史は何かの目標(幸福の実現など)に向かって流れるとの考え方を否定
進歩の幻想(啓蒙主義、共産主義)が崩れていく時代の中で人気を博す
表現が奔放で過激 「この世は偶然である」
妹のエリザベートは廃人となったニーチェの後見人
「ニーチェをナチスに売り渡した女」と呼ばれる
2. ハイデガー
ナチス党員
第一次大戦後、ロシア革命を受けドイツでも帝政が崩壊しワイマール共和国が誕生したが、
政治も経済も不安定
ナチス 肉体労働を賛美、若者による下からの大衆運動、行動主義と決断主義
「存在と時間」
伝統的な哲学と違い小説のような書
死を直視することで本来の生き方について考えることができる
「あなたの内なる良心の声を聴け!」
「覚悟を決めて惰性的な日常を捨てよ!」
ドイツ、ロシア、日本等の半後進国は、
「近代を超克せよ」と、金儲け優先の資本主義を超
えるものとして家族的な国家、民族を持ち出した
和辻哲郎の「倫理学」にこうした考えが示されている
3. レーニン
1
マルクス主義は「社会主義は資本主義の発展を前提とする」
レーニンの父親は高級文部官僚・貴族、母親は農奴付領地を持つ貴族の出身
シベリアに流刑にされたが結婚するなど自由な暮らし
流刑後は外国へ
国内の革命運動はスターリンなどの理論活動に向いていない下層階級の者が担っていた
「国家と革命」
民衆による直接民主主義を行うための機関がソヴィエト
万人は能力に応じて働き、必要に応じて受け取る社会を目指す
4. ケインズ
映画「俺たちに明日はない」で描かれた 1929 年の世界大恐慌の頃、米国の失業率は 25%
ケインズは英国ケンブリッジのエリートが暮らすハーヴェイロードに実家がある
「国はエリートに任せておけば大丈夫との考えだ(ハーヴェイロードの仮説)」と批判され
ることがある
「自由放任の終焉」
「一般理論」
需要総額(=消費+投資+政府支出)が減少すると不況になる
(政府支出により生み出された財を販売するための需要が必要になるのだが)
5. ウィトゲンシュタイン
父親はユダヤ人でオーストリアの財界の大物・大金持ち
ウィトゲンシュタイン家はウィーンの芸術家たちのパトロン
同性愛者
価値を生まない哲学者であることを恥じて、いろいろな職を転々とする
清貧の生活に対する憧れを持つ
「語りえないことについては、沈黙しなければならない」
「哲学の正しい方法は、語られうるもの、つまり自然科学の諸命題以外のことは、なにご
とも語らないということである」
哲学を形而上学から切り離し科学的にしようとするのが論理実証主義者(ウィーン学団)
2
6. フロイト
ウィーンで精神科病院を開業
ユダヤ人でナチから逃れるためロンドンに亡命
幼児期の性的体験や夢の解釈を重視
ヒトは性行動と生殖が分離するなど自然からみれば異常
近親相姦、人食い、殺人の 3 つが人間の基本欲動
文化は人間の基本欲動を抑制する
したがって、文化は人間を不幸にする
7. マルクーゼ
「新左翼の父」と呼ばれる。ユダヤ人で米国に亡命
3M(マルクス、毛沢東、マルクーゼ)が人気となった
大衆消費社会の到来で、旧左翼の労働条件闘争などは古くさく見え、文化的な要求が強く
なる
カウンターカルチャーの運動(フェミニスト、エコロジスト、同性愛者、ヒッピー)
マルクーゼはフロイト風の文明論をマルクスで味付け
労働させることで性的衝動を抑制するような、過剰抑圧をとりのぞけ!
性を生殖から解放することで、人間の性生活は豊かなものとなる
先進国では大衆消費社会が進展し大衆は既存の体制に不満を持たなくなってしまう
「不法移民、ホームレス、ヒッピーなどの国内アウトサイダーが第 3 世界の貧しい人々と
連帯して世界革命を遂行すべき」と唱える
8. ハーバーマス
人々の関係を制御する手段に、権力、金、コミュニケーションがある
コミュニケーションが重視される世界を「生活世界」という。これに対して、権力が制御
する世界は「政治」であり、金が制御する世界は「経済」
国家権力も市場経済も必要である。生活世界に権力と金が入り込み支配することを阻止す
る必要がある
こうした「理想的なコミュニケーション状況」を実現する条件を研究
3
国家と市民社会の間に政治的公共圏が必要になる。その中心はマスメディア(大衆紙は除
く)
60 年代末の学生運動に最初は好意的であったが、暴力的になると激しく反発
ドイツでは新左翼運動が下火になった頃赤軍が生まれテロ活動を開始
思想調査により過激派とみなされた教授は公職追放となった
ソ連崩壊後のグローバリゼーションの中で、国連などの国際機関への期待を高めていく
「アメリカとヨーロッパが手を組めば、より良い世界が生まれるだろう」
9. フーコー
フランスでは文化人は尊敬され、哲学者にも政治的発言が期待される
フランスではエリートは大学に行かずグラン・ゼコール(Grand School)を目指す
卒業生の給与や待遇は大卒とはまるで違う
大学の教育環境は悪く、これが 1968 年の学生叛乱の一因
ドゴール大統領はドイツのフランス軍基地で巻き返しを図り、総選挙で圧勝
フーコーはフランス共産党員で同性愛者
若くしてコレージュ・ド・フランス(College of France)の教授となった
フーコーは、「我々は今日、ベンサムが設計した一望監視システム(パノプティコン)が支
配する社会に生きている」とし、「親が子どもの生活をケアするように、国民の生活に配慮
する福祉国家」に批判的
ハイエクにとって、
「福祉国家は全体主義であり、ナチス国家への道」
こうした新自由主義者に近い考えだが、権力をすべて否定しているわけではない
「長い間の修練と毎日の労苦」によって、みずからの人生を美しいものとするべしと説く
10. アーレント
ナチス時代を生きた女性哲学者で、学生時代にはハイデガーと情事
ユダヤ人で米国に脱出
アテネのポリスの市民生活を現代によみがえらせよう
4
家を単位とする経済を担う私的世界は、奴隷、暴力が支配する
これに対し、公的世界は対等で自由、討論と説得の世界
フランス革命のように、貧困を解決しようとする革命はすべて失敗する
貧しい民衆には、自由よりもパンの獲得が優先する
アメリカ革命(独立戦争)は唯一成功した自由のための革命
アーレントの期待する革命は、生活に余裕のある人々による革命
代議制度に不満で、評議会制度(コミューン、ソヴィエト等)の直接民主主義にすべき
経済は専門化が行うべきものなので、評議会は経済に介入してはいけない
11. ハイエク
新自由主義の神
第2次世界大戦前夜、「自由放任の終焉」が常識となっていた時期に、「隷属への道」の中
で「社会主義もファシズムも同類」と述べていた。福祉国家も同じという
戦後の東西対立の時期には注目されなかったが、レーガン、サッチャーの時代に復活
ハイエクの哲学のキーワードは「自生的秩序」=スミスの「自然的自由」
新自由主義を生み出したシカゴ学派の創設者フランク・ナイトは、「ハイエクは、政治によ
って組織された自由を軽蔑している。しかし、自由は政治によって組織されるものである」
と批判している
自生的秩序は、
(財を努力に応じて分配する等)正義にかなっているから擁護されるのでは
ない。個人の自由が保証されるからである。長い眼で見れば経済を成長させ豊かな社会を
もたらすから。
ハイエクは自由主義者ではあるが、
(自由を制限する権力を政府に与えることができる)民
主主義は大きらい。古代ローマの元老院のような政治(名望家政治)を提案。民衆による
支配を恐れた
12. ポパー
ユダヤ人でナチスから逃れニュージーランドへ
「ヒストリシズムの貧困」の冒頭に「歴史的命運という法則を信じたファシストや共産主
義者の犠牲となったあらゆる信条、国籍、民族に属する男女への追悼に本書を捧ぐ」
5
ヒストリシズムの源流はプラトンにあり、ヘーゲルとマルクスに引き継がれる
プラトンはソクラテスの口を借り、
「十歳以上の人間たちをこの国から追放せよ!」と語ら
せる
ポパーは、ピースミール(漸次的)な社会改良を提唱する
「地上に天国を作ろうとする企ては必ず地獄を生み出すだろう」
ピースミールな社会工学は幸福ではなく、不幸を減らすことをめざすのである
ポパーの批判的合理主義とは、理性に過度の期待を持たない
「論理的論証も経験も合理主義的態度を確立することはできない。なぜなら論証と経験に
よって深い印象を与えられるのは、既に経験と論証を重視する合理的態度を受け入れてい
るものだけだから」
啓蒙主義者の楽観的な期待とは異なって、人々の偏見を除去することは原理的に不可能
私たちが直面している選択は、理性を信仰するか、
「人間を集団に統合する神秘的諸能力」
を信仰するかという選択であり、結局のところ偶然の問題
13. ロールズ
原爆投下後の広島を訪れた経験が、彼の哲学の背景の一つ
リベラル派 = 米国ではアカと同義語
「正議論」自由を守れ、差別をやめよ、恵まれない人々を助けよ
しかし、ロールズは福祉国家型の資本主義には反対
「財産所有の民主主義」や「リベラルな社会主義」を提唱
14. サンデル
ユダヤ系アメリカ人、
コミュニタリアン、常識的なアメリカ人の感覚(宗教性を含む)でリベラリストの個人主
義的な社会観を批判する
正議論の対象:妊娠中絶、公立校での宗教教育、生命倫理、安楽死、同性婚、アファーマ
ティブアクション(ユダヤ人は黒人の公民権運動を支持したが、アファーマティブアクシ
ョンには反対で、黒人と対立している)
こうした問題を議論するとき、やたらと理屈っぽくなる
6
共有する「常識」が無いから
日本人は正義を論理で議論できるとは考えておらず、ほどほどの議論で終えてしまう
人々の利己的な行動を抑制し、社会全体と個人の調和を図るためには、共通善(人々が共
通に持つ善の観念)が必要
道徳問題を恐れず公的世界において論じ、国家に道徳性を取り戻すべし
15. ローティ
米国人、
どちらが正しいかを決める客観的な基準は存在しない(相対主義)
どちらを選択するかは育ってきた環境の違い(自文化中心主義)
市民が同じ信念を持っていなくとも民主社会は成立しうる
社会のルールを守るという外面が大切であって、道徳価値という内面を押し付けてくれば
排除されるであろう
政治に期待していた崇高な事柄を追放し、各人の私的な世界に閉じ込めよ
公共哲学が盛んになれば公共精神が高まるといったことはない。サンデルはアメリカは公
共哲学を必要としているというが、それは錯覚だ
ロールズやローティのリベラリズムは社会正義を目指す左派リベラリズムで、
「個人の自由
を守れ、国家は干渉するな、福祉国家は全体主義だ」という右派のリベラリズムとは違う
コミュニタリアンも個人の自由を軽視するわけではない
両者はともにリベラルな左翼
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