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『ロシアン・モードのカリスマ』-アレクサンドル・ワシリエフ氏、ロシアの海外でのイ メージアップに奮闘中。 4 月 25 日より東京近郊の多摩美術大学美術館で世界的に有名な服飾史家・舞台美術家であ り今回の展示品の収集家であるアレクサンドル・ワシリエフ氏の展覧会「革命とファッショ ン」が開催された。初日のオープニングセレモニーでのワシリエフ氏の講演では、ロシア の芸術・文化を通して、ロシアの海外でのイメージを上げることの可能性が主題の一つであ った。この展覧会の実施には在日ロシア大使館、マルナカ・インターナショナル社とワシ リエフ氏の本を出版しているスローバ社が参加した。 「ロシアン・モードのカリスマ」と呼ばれるアレクサンドル・ワシリエフ氏の舞台衣装の コレクションが日本で公開されるのは初めてで、氏が何十年にも渡って収集してきたレフ・ バクスト、ムスチスラフ・ドブジンスキー、ナタリア・ゴンチャロワ、エルテといったロ シアの巨匠の作品が展示に並ぶ。展示のもう一つのみどころは、ロシア人亡命者による有 名メゾンのドレスやアクセサリーである。ワシリエフ氏は彼らの歴史に捧げた著書「流転 の美」を 1998 年に発表し、以来本書のロシア語版は 8 版をかさね、英語版も出版されてい る。本展覧会には、ドレスに加えバレエを初めとするロシア演劇の写真資料も効果的に展 示されている。 オープニングセレモニーの前に開講されたレクチャーでは、ワシリエフ氏は 1900 年代から 始まったロシアの一般的イメージの向上において、ロシア芸術とロシア・ファッションの 果たした役割を詳細に渡って述べた。中でも今年の5月にパリでの初演から 100 周年を記 念する、セルゲイ・ディアギレフの「ロシア・シーズン」に焦点を当てた。具体例として、 世界文化史において、ロシア人画家、舞台人の芸術的探求と発見が与えた影響が、「ロシア 的」に見えながら、その国民的特質を失うことなく「全世界的な影響」に成り得た事を挙 げている。 イタル・タス社の記者の質問に対する答の中で、ワシリエフ氏はロシアには文化・芸術分野 において世界的に影響を与えうる、また、国外でその印象を上げうる巨大なポテンシャル が眠っている点について触れた。ワシリエフ氏は次のように語った。 「私は、世界中で公開 している自分のロシアン・モードのコレクションで、恒久の価値というプロパガンダを掲 げています。これらの展覧会には全体的なプランがあります。その最大の目的は、勿論、 モードの発信元、洗練美の創造主といったロシアのポジティブなイメージを広げることで す。このような好イメージは、世界中のプレスの持つロシアのネガティブなイメージに取 って代わるべきものです。隠しておくものではありません。」 服飾業界最高の権威であるワシリエフ氏によれば、現在ヨーロッパをリードするファッシ ョンメゾンはロシアをテーマとしたコレクションを展開しており、売れ行きは好調だとい う。しかし「ロシア風ファッション」を製作しているのは例外なく外国人デザイナーで、 本場ロシアではロシア的モチーフへの関心は不十分だとのことである。「私から見れば、も しロシア人が今、少しでも動き出せば、この波に乗らない手はないことを理解するはずで す。」とワシリエフ氏は指摘する。 現代のロシア・ファッションの国際的展望について、ワシリエフ氏はロシア人のヨーロッ パ志向および自国の伝統、過去の功績への関心の不十分さから来る消極性を指摘し、次の ように述べた。「もし私が今ロシアでデザイナーとして活動していたなら、絶対にディアギ レフをテーマとしたコレクションをするでしょう。今年はディアギレフのロシア・シーズ ンの 100 周年ですから、世界中が注目するはずです。ファッションは現実的なものでなく てはなりません。時代の空気の中にあるテーマが必要なのです。今のテーマはディアギレ フです。このテーマで発表してください。プレスに取り上げられるはずです。」 過去に日本の一連のバレエ団とも仕事をしてきたワシリエフ氏の展覧会は、東京の研究 者・芸術関係者の多大なる関心を集めた。展覧会は 5 月 24 日まで開催される。