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釧路市 - 公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター HIECC

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釧路市 - 公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター HIECC
釧路湿原が
釧路市
「国際化」に一段と拍車
釧路管内
転機となったラムサール条約
釧路市の北約5キロに位置する釧路湿原は、面積1万8千
ヘクタールに及ぶ日本最大の湿原(ウエットランド)である。
8割がヨシ、スゲにおおわれた低層湿原で、絶滅の危機に
あるタンチョウ、シマフクロウ、オジロワシをはじめ、貴重
な生物の豊かな多様性を誇っている。
1971年(昭和46年)、「特に水鳥の生息地として国際的に重
要な湿地に関する条約」
、いわゆる「ラムサール条約」がス
タートしたが、80年(同55年)に釧路湿原は日本で最初のラ
釧路国際ウエットランドセンターの技術委員会による現地調査で湿
地保護が図られている
ムサール登録湿地に指定された。
国際化の大きな転機になったのが、93年(平成5年)に釧
路市で開かれたラムサール条約第5回締約国会議。
釧路国際ウエットランドセンター
(KIWC)の誕生
95カ国、約1千200人が参加し、延べ4千人の地域の人々
が通訳や会議運営、観光ボランティアとして活躍した。
同時に近くの厚岸湖・別寒辺牛(べかんべうし)湿原、霧
この会議を機に高まった湿地保全と国際協力の気運を生か
多布湿原(浜中町)もラムサール登録湿地に指定されたこと
すために、釧路市が音頭を取って95年(同7年)に設立した
もあって、地域ぐるみで国際化をさらに進めようとの動きが
のが釧路国際ウエットランドセンター(KIWC)。
国際会議を経験した市民、民間団体の熱意による4千万円
広まってきた。
の寄付も同センターの基本財産になった。
釧路市が翌94年度の「先進的地域国際化推進のまち」部門
中心になっているのは釧路市だが、同じく登録湿原を持つ
で総務大臣表彰を受けたのは、これらの活動が評価されての
厚岸町、浜中町などの隣接5町村、関係行政、教育機関、釧路
ことだ。
ラムサール登録湿地に指定された貴重な釧路湿原
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自然保護協会などの関係団体で構成する半官半民の組織体だ。
湿原の生態系保全のために専門的な研究に取り組んでいる
湿原の保全とその賢明な利用(ワイズユース)を図る活動
同センター技術委員会は04年(同16年)、3年間にわたって
拠点と位置づけし、その活動は文字通り多岐にわたっている。
実施した調査研究報告書「湿地及びその環境の修復・再生の
項目だけみても、①国連訓練調査研修所(UNITAR)など
試み」を作成。一般にも無料配布することで湿地復元や自然
による年1回以上の国際会議の開催②国際協力機構(JICA)
再生、人と自然の関わり合いのあり方を模索する「エコツー
の渡り鳥研究などの研修事業③湧水などの調査研究④国際教
リズム」の提唱などの貴重な情報を住民に提供した。
育専門家の派遣⑤ニュースレター発行などによる普及啓発―
同センターは釧路市環境部環境政策課が事務局を担当して
―などで、活動内容の幅広さが端的にうかがえる。
いるが、
「地域の人々ともっと積極的に連携プレイをしてい
くのが今後の課題」という。
だが、その一方で、釧路湿原自然再生協議会が湿原の全体
実を結ぶ幅広い活動
的な再生事業を盛り込む「全体構想」づくりに、地域住民の
活動の具体的な内容を見てみよう。例えば、2002年(同14
意見を反映させるため開催している「地域検討会」には釧路
年)、JICA帯広、社団法人北方圏センター(帯広国際セ ン
市や釧路町の住民も参加し、活発な議論を展開するなど、活
ター)と共に実施した「ブータン・ツル飛来湿地の保全とワ
動の輪は地域住民の中にも広がり始めている。
イズユース研修」では、ブータン王国の非政府機関(NGO)
である王立自然保護協会から職員2人が来道した。
4カ国6地域との多様なつながり
同国のフォブジカ湿地が希少種のオグロヅルの重要な飛
来、越冬地だったのが縁だが、従来なら全く交流のないブー
かつては北洋漁業の日本一の基地、極東、ロシア、北米と
タン王国との具体的なつながりは、
「今後の新たな財産にな
もつながる北太平洋の産業港、そしてラムサール条約の登録
りうる」と関係者は期待する。
湿地に指定された世界的な湿原―釧路は地政学的にも、経済
現に03年にJICAの地域提案型による草の根技術協力事業
的にも、自然環境の面でも自ずと恵まれた国際性を備えてい
の事前調査のため、釧路国際ウエットランドセンターの職員
るといえる。
が同国に事前確認調査を行った結果、同事業の3カ年の研修
40年前の1965年(昭和40年)にカナダ・バーナビーと姉妹
プログラムが実現し、04年と05年には、ブータン王立自然保
都市提携を結んだのを皮切りに、現在、姉妹都市、姉妹校、
護協会の職員各2人が相次いで釧路管内阿寒町(現在は釧路
港街友好都市、友好湿地は4カ国6地域にも及んでおり、釧
市)の阿寒国際ツルセンターや釧路湿原でタンチョウや湿原
路市がその特性を生かして積極的に国際交流を推進している
などの保護策を学んだ。
ことを裏付けている。
帰国後、同協会として釧路で吸収した研修結果をオグロヅ
ルなどの自然保護に生かすと同時に、釧路湿原同様エコツー
[姉妹都市]
リズムの実施も検討したいとしている。
「バーナビー市(カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州)」
3年目となる06年もさらに同協会職員4人が道東に派遣さ
カナダ西海岸のバンクーバー市に隣接し、文教施設が整備
れてくる予定で、日本側からの研修員の相互派遣も合わせ、
されているほか、通信機器などの先端技術産業が進出し、商
自然環境保護を絆とした国際交流は予想以上に大きな成果を
業都市としても発展している。
釧路市とほぼ同緯度で都市の形態も似ていることから、65
挙げているといえる。
年、カナダの自治体とは道内では第1号の姉妹都市提携を結
んだ。
両市関係者の相互訪問、中・高校生の交換事業だけでなく、
釧路公立大学とサイモンフレーザー大学、キャピラノカレッ
ジとの間で姉妹校提携を結ぶなど、交流の実績が挙がってい
るという。
「ホルムスク市=旧真岡=(ロシア・サハリン州)
」
サハリン州南西部に位置し、同州最大の港湾施設を利用し
た鉄道貨物ターミナル基地建設で物流の拠点になっている。
姉妹都市提携も30年前の旧ソ連時代の75年(同50年)。
港湾、紙パルプなどの基幹産業の類似性に加え、旧真岡市
を故郷にする釧路市民が多いことなどが理由だが、記念植樹
自然の保全と共生を肌で感じるエコツアーもスタートしている
133
い港街友好都市提携に調印した。
提携5周年の2003年8月には、市長以下75人の大訪問団が
訪れ友好を深めたが、もともと民間の釧路カムチャツカ研究
会が提携年の1998年から年1回の割合で両都市間にチャー
ター便を飛ばすなどの民間交流が基盤となっており、さらに、
北海道教育大釧路校と国立カムチャツカ教育大が、姉妹校提
携で留学生の交換を行うなど、民間主導の国際交流という特
徴を持っている。
[姉妹湿地]
「クーラガング湿地およびその周辺湿地(オーストラリ
ア・ニューサウスウエールズ州)
」
提携5周年で釧路市の大訪問団がペトロパブロフスク・カムチャツ
キー市を訪れ、なごやかな交歓を繰り広げた=2003年8月
「姉妹湿地」は、やはり湿原を持つ地域同士ならではの具
や文化・スポーツ・教育分野での交流のほか、保育園の相互
体的な国際交流だろう。
交流なども行われている。
釧路西高校の野外科学部が、以前から釧路湿原で繁殖し
オーストラリアで越冬する、渡り鳥のオオジシギの調査研究
[姉妹港]
を続けてきたことに加え、93年の釧路市でのラムサール条約
「スワード港(米アラスカ州)
」
締約国会議が契機となって翌94年(同6年)
11月姉妹湿地提
姉妹港提携は82年(同5
7年)のこと。アンカレジ市の南300
携が実現した。
キロに位置し、北洋漁業における補給基地、貿易の拠点とし
同校は、同湿地のあるニューカッスル市のジェスモンド高
ての経済交流が深かったのが理由。
校と姉妹校提携を結び、交換留学を行っているほか、同湿地
その後北洋漁業の終焉と共に関係は疎遠になっているが、
周辺のポートスティーブンス郡の人々が釧路を訪れて友好、
それでもスワード市開基100年の2
003年(平成1
5年)には副
交流を深めたり、研究者の交流による湿地再生研究、意見交
市長が訪問し、大歓迎を受けるなど、姉妹港としての関係は
換を行うなど、湿地を媒体・原動力としたユニークな国際交
続いている。
流が確実に結実し始めている。
「ニューオーリンズ港(米ルイジアナ州)
」
1984年(昭和59年)の提携で2004年(平成16年)に20周年
を迎えた。同港はルイジアナの穀倉地帯を抱えた米国の物流
拠点で釧路西港とは穀物、飼料輸送など船舶の往来による経
済的な結び付きが強く、双方の利害が一致した経済主導の姉
妹港提携といえる。
20周 年 の0
4年8月 の 世 界 こ ども サ ミ ッ ト 釧 路 大 会 に は
ニューオーリンズ市の子供5人が出席、さらに、くしろ港ま
つりにもニューオーリンズ・ブラスバンドの7人が本場の
姉妹関係にあるオーストラリアのクーラガング湿地周辺の人々との
珍しい交流も始まっている=2004年9月、釧路市で
ジャズ演奏を披露するなど硬軟織り交ぜた交流が続けられて
いる。
同年10月ニューオーリンズで行われた姉妹港提携20周年記
目立つ民間の活動
―世界こどもサミットの成功にも力
念の友好調印式には、釧路から市長、市議会議長、海運関係
者ら18人が出席し、両市と両港の経済、文化交流の一層の拡
前にも触れたように釧路市はもともと、北洋漁業など環太
大を誓い合った。
平洋に目を開いた国際性があり、姉妹都市提携などの長い歴
[港街友好都市]
「ペトロパブロフスク・カムチャツキー市(ロシア・カ
ムチャツカ州)
」
史を誇るが、それには釧路カムチャツカ研究会のロシアとの
両市が物流や漁業に重要な不凍港を持ち、港の産業を中心
特に、93年釧路でのラムサール条約締約国会議で活躍した
に発展した港街だったことから1998年(同10年)8月、珍し
ボランティアを母体に、誕生した釧路国際交流ボランティア
チャーター便交流を例に出すまでもなく、活発な民間活動に
よる下支えが大きな特徴となっている。
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ボランティア中心で運営し、成功を収めた第1回世界こどもサミット釧路大会=2004年8月
の会は、年2回機関誌「VISTA」を発行、留学生のホームス
ア、中国などの参加者の入国査証(ビザ)申請手続きなども
テイを受け入れるなどのさまざまな活動を続けている。
インターネット情報を収集して、自分たちで実行し、また、
「釧路にとっては、色々な意味で釧路湿原という自然条件
通訳なども従来の学術会議のような形式にとらわれず、英語
とラムサール条約締約国会議が国際化の新たな土壌になっ
を中心に身振り手振りも交えて対話を図るという手づくりの
た」(釧路市企画財政部企画課)といえる。
大会に徹した。
そんな流れの中で「釧路の国際化」の実力が試されたのが、
期間中、釧路だけでなく釧路管内厚岸、浜中、標茶、釧路
2004年(同16年)8月に開かれた第1回世界こどもサミット
の各町で「ソフトクリーム・地引き網」競技などの地域を挙
釧路大会(大会実行委主催)だろう。
げた体験プログラムも行われた。
最終日には「さまざまな体験を通して得た釧路での多くの
アメリカ、カナダ、ロシア、オーストラリア、韓国、中国、
ベトナム、シンガポールなど9カ国2
36人の子供が5日間に
思い出を胸に、かけがえのない文化や自然を守るために、宇
わたって、湿地を中心にした自然資産を学びながら国際交流
宙船地球号の乗組員として努力していくことを誓います」と
を楽しんだ。
いう釧路から世界の友だちへの「こども宣言」を発信し、成
ラムサール条約締約国会議とそれを支えたボランティア活
功裏に大会を終えた。
動による成功が評価された結果、この第1回世界こどもサ
関係者は「最初は何が出来るだろうと不安だったが、今ま
ミットが釧路で開かれることになったわけだが、前年の12月
での経験を基に力まず自然体でやれたのが良かったと思う」
に立ち上げた大会実行委員会にはさまざまなジャンルの14団
としており、単に官民の協調態勢だけでなく、根付き始めた
体が参加、地域を挙げた取り組みとなった。
ボランティアを中心にした地域ぐるみの高い国際性が、釧路
事務経費の節減のためでもあったが、ボランティアによる
の国際化に新たなエネルギーを付加してきているといっても
運営を基本に置き、例えば、普段は旅行会社に依頼するロシ
過言ではないようだ。
釧路市
!
http : //www.city.kushiro.hokkaido.jp/
人口:約1
9万5千人
釧路湿原国立公園を持ち、戦前から北洋漁業の基地
として日本有数の水揚げを誇る水産都市。太平洋炭
鉱の閉山などで経済の地盤沈下はあるものの、経済、
文化など東北海道の中核、拠点都市の地位は変わら
ない。2004年大みそかのNHK紅白歌合戦で水森か
135
面積:1,
3
6
3
おりさんがヒット曲「釧路湿原」を歌った。05年10
月11日、釧路管内阿寒町、音別町と道内では第1号
の「飛び地合併」を実現した。
国際交流の問い合わせ先
釧路市企画財政部企画課
℡(0154)
23―5151
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