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10月15日 9:20〜10:20 MR 検査 基礎 1

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10月15日 9:20〜10:20 MR 検査 基礎 1
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
9:20〜10:20
MR 検査 基礎 1
第 1 会場
(大ホール)
座長:林 則夫
216 MAP-EM
(MRP)
法を用いた MRI 逐次近似画像再構
成法
橘 篤志1,藤堂幸宏1,橋本雄幸2,坂口和也3,
篠原広行1
1)
首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
2)
横浜創英短期大学 情報学科
3)
北里大学 医療衛生学部
【目的】
われわれは以前,直交座標で収集した k 空間データを
極座標に変換し,画像再構成する手法を提案した.逐次近似
画像再構成法の OS-EM 法を使用すると,繰り返し回数に比
例して雑音成分が増加する傾向にあった.本検討では画素近
傍のメディアン値との相対誤差を重みとして与える MAP-EM
(MRP)
法を使用し,OS-EM 法と比較して分解能を低下させ
ることなく雑音が抑制できることを確認する.
【方法】
2 次元 Shepp ファントム,Brain Web MRI 画像をそれ
ぞれ原画像とした.2 次元フーリエ変換した画像を k 空間
データとして,実部と虚部へ平均 0,標準偏差σのガウス雑
音を付加した.これらをシンク補間によって直交座標から極
座標に変換した後,1 次元フーリエ逆変換し投影データとし
た.画像再構成法として OS-EM 法,MAP-EM
(MRP)
法を用
いた.雑音を含む再構成画像は,雑音を含まない原画像との
2 乗平均平方誤差
(RMSE)
によって評価した.また,雑音を
含まない k 空間データを作成し,同様の手順で画像再構成を
行い,プロファイル曲線を作成して分解能比較を行った.
【結 果】
2 種 類 の 原 画 像 に お い て,MAP-EM
(MRP)法 は
OS-EM 法に比べて雑音が抑制され RMSE は良くなり,プロ
ファイル曲線から分解能の低下は見られないことを確認し
た.MAP-EM
(MRP)
法は雑音抑制を目的とした画像再構成に
有効であった.
217 2 次元フーリエ変換 MRI のハーフフーリエ画像再構
成に関する検討
今門隼也人1,篠原広行1,坂口和也2,橋本雄幸3
1)
首都大学東京 人間健康科学健康科
2)
北里大学 医療衛生学部
3)
横浜創英短期大学 情報学科
【目的】
k 空間の位相エンコード数を減らすハーフスキャン 2
次元フーリエ変換 MRI は,データ収集の時間を短縮する撮像
法である.データ数を減らす場合の問題は,1)S/N 比の低
下,2)
アーチファクトの発生
(主としてギブスリンギング)
であ
る.本研究ではハーフスキャン 2 次元フーリエ変換 MRI の計
算機シミュレーションを行い,再構成画像の画質について検
討する.
【方法】
実空間の画像には Shepp の頭部数値ファントム
(256
×256 画素)
,および臨床画像に近い画像として Cocosco ら
による Brain Web Data Base 上で公開されている MRI 画像
を用いた.位相制約画像再構成法として,位相エンコード方
向の重み関数にランプ関数と非対称ハミング関数を用い画像
再構成を行った.周波数空間の画像を移動させ位相に歪みを
もたせた画像に対して画像再構成を行った.ハーフフーリエ
再構成画像の画質は k 空間のすべてを位相エンコードした場
合の画像との違いを視覚的に評価した.
【結果】
位相エンコード数 256 未満の k 空間データにゼロパ
ディングをしたのみの k 空間データから画像再構成すると,
リンギングアーチファクトが顕著であった.一方,k 空間を急
2010 年 9 月
1095
激にゼロに落とさず,ランプ関数や非対称ハミング関数を用
い緩やかにゼロに落とし画像再構成を行うと,すべて位相エ
ンコードを行った場合と同等の画質が得られた.
218 3 次元計測による MRI の動き補正−計算機シミュ
レーションによる検討
橘 篤志1,橋本雄幸2,篠原広行1
1)
首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
2)
横浜創英短期大学 情報学科
【目的】
MRI の撮像中に被写体の動きに伴って発生するモー
ションアーチファクトを補正する方法が臨床応用されてい
る.これらの方法では 2 次元平面内の平行・回転の動きを補
正することは可能であるが,ヒトがうなずくような体軸方向の
動きを補正することは困難である.本研究では 3 次元計測に
よる MRI の動き補正法を提案し,その有効性を計算機シミュ
レーションで検討する.
【方法】
提案する 3 次元 MRI 計測法は直方体状にエコー信号
を収集し,球を覆うように回転しながら 3 次元 k 空間に埋め
ていく.この際,エコー信号の収集は瞬間的に行われると
し,特定の直方体の信号にのみ平行・回転移動の動きがある
と仮定している.動きを含む直方体状の信号からの 3 次元画
像と動きがない信号からの 3 次元画像間との相互相関関数を
求め,平 行・回転 移 動のずれを検出し補 正する.3 次 元
Shepp ファントム,3 次元 MRI 画像を用いモーションアーチ
ファクトを含む k 空間データを作成した.補正を行わない場
合と補正を行った場合の k 空間データから画像再構成を行
い,絶対誤差,平方根 2 乗誤差,相関係数など評価を行っ
た.
【結果】
3 次元 Shepp ファントム,MRI 画像について動き補正
の効果を視覚的に確認することができた.楕円体の集合であ
る数値ファントムだけでなく,解剖学的器官形状を有する数
値ファントムにおいても,3 次元計測による MRI の動き補正
は可能であった.
219 絶対値画像と位相画像を用いた一回収集二画像差分
法による SNR 測定の検討
清水幸三,山谷裕哉,樋垣 誠,野儀明宏,
水野吉将
奈良県立医科大学附属病院 中央放射線部
【目的】
近年 SNR 測定法としてオーバーサンプリングを利用し
た一回収集による二画像差分法
(以下一回収集法)
が報告され
注目されている.しかし,一回収集法は Raw データにアクセ
スする必要があるなど困難である.そこで,入手が比較的容
易な絶対値・位相画像を用いた一回収集法の可否について検
討した.
【方法】
読み出し方向を倍にサンプリングし擬似的にオーバー
サンプリングした絶対値・位相画像を取得し,自作アプリケー
ションにより作成した実数・虚数画像をフーリエ空間で分割
する事で二画像を作成する 1 回収集法を考案した.一回収集
法と二回収集による差分法
(以下従来法)
にて SNR を求め,
両者の比較により妥当性を検討した.使用装置は SIEMENS
社 製 Magnetom Avanto, 使 用 コ イ ル は Body Coil,Head
Matrix Coil,QA 用ファントム.撮像シーケンスは GRE 法を
用い一回撮像法は FOV500×250,Matrix512×256,従来法
では FOV256×256.Matrix256×256 で,その他のパラメー
タは TR 100msec,TE 10msec,加算回数を 1,4,6 回で一
定とした.
【結果】
Body Coil では一回収集法での SNR は従来法と比較し
10月15日
1096
日本放射線技術学会雑誌
誤差 5%程度であった.Phased Array コイルでは従来法と比
較し SNR は 10%程度の誤差があり,加算回数とともに誤差
は増加した.
【考察】
絶対値画像と位相画像を用いた一回収集法は従来法と
比較し Body Coil では同等の結果を得ることができ有効で
あった.Phased Array Coil では従来法に対し 10%程度の誤
差があり局所ノイズの評価については検討を要する.
220 演題取り下げ
221 水溶性デキストリンおよびカルシウムを用いた生体
T1 値,T2 値近似 Phantom の作成
山城晶弘,神谷直紀,大塚 薫,駒津和浩,
伊東洋一,久保田展聡
長野赤十字病院 中央放射線部
【目的】
静磁場強度 1.5 テスラの MRI 装置における,各生体臓
器および組織における T1 値,T2 値の両値が近似した MRI
用 Phantom の簡易作成
【方法】
目的対象臓器および組織は白質,灰白質,骨格筋,心
筋,肝臓,脾臓,膵臓,腎臓とし以下の検討を行った.○蒸
留水 100ml に対し 1. 水溶性デキストリン 2∼100g 2. 水溶
性カルシウム 2∼10g 3. 1 で作成したデキストリン溶解液に
カルシウムを 2∼4g を溶解し T1 値,T2 値の測定を行った.
○ Phantom の経時変化による T1 値,T2 値の変動の測定
【結果】
1. デキストリンの溶解で T1 値,T2 値短縮効果が得ら
れ,100g の溶解で蒸留水の T1 値を 90%,T2 値を 97%短縮
可能であった.他臓器に比べ T1 値,T2 値の差が大きい骨格
筋,心筋以外の臓器で溶解量の変化により近似値を得ること
が可能であった.2. 水溶性カルシウムの溶解で T1 値,T2 値
短縮効果が得られたが,蒸留水 100ml に 10g の溶解で飽和
状態となり目的臓器の T1 値,T2 値の近似は得られなかっ
た.カルシウムはデキストリンに比べ T2 値短縮効果が大き
かった.3. デキストリン溶解液にカルシウムを加えることで
T2 値短縮効果が増加し,溶解量を変化させることで骨格
筋,心筋に関しても近 似 値を得ることが 可能であった.
Phantom 作成より 1 ヶ月の T1 値,T2 値は,ほぼ変化がな
かった.
【結語】
静磁場が 1.5 テスラの MRI 装置において,水溶性デキ
ストリン,カルシウムを使用し生体の T1 値,T2 値と近似し
た phantom を簡易的かつ安価で作成可能であった.
10:20〜11:10
MR 検査 基礎 2
第 1 会場
(大ホール)
座長:永坂竜男
222 吸入酸素による MRI 信号変化の基礎研究: ヒト脳
における血流量の変化
西片純基1,志田原美保2,田頭 豊3,栗田準一郎4,
永坂竜夫4
1)
東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻
2)
東北大学 医学部保健学専攻医用物理学分野
3)
岩手医科大学付属病院 中央放射線部
4)
東北大学病院 放射線部
【背景・目的】
近年,動物実験において,高濃度酸素吸入下の
MRI で虚血組織の状態を判断できる可能性が示唆されてい
る.それを人で確認するために,本研究では pulsed arterial
spin labeling(PASL)
法を用い,正常成人を対象として,高濃
度酸素を吸入した時に脳血流量がどう変化するかを評価する.
【方法】
対象は正常ボランティア 6 名.使用 MRI 装置は SIE-
MENS 社 の MAGNETOM Trio a Tim system 3.0T で 撮 像
シーケンスは Q2TIPS を使用した.室内空気吸入と酸素濃度
約 55%のガス吸入を 10 分毎に切り替えながら,血流画像を
収集した.画素毎に,時間 tと酸素濃度 xについて:血液信
号強度 y=a+bt+cxとして線形最小二乗法を用いて重回帰
分析を行った.推定されたパラメータ a,b,cの有意性につ
いて,F 検定を行い,危険率 5%で判定した.
【結果】
PASL 画像で酸素吸入により 10∼35%の血流信号の
減少が検出された.この信号変化の脳内分布は,雑音の影響
も強く,対象によるばらつきが大きかったが,視床と小脳に
おいては信号減少がほぼ共通して認められた.
【考察】
室内空気吸入時と高濃度酸素吸入時における PASL 画
像より,血流信号の変化が検出できた.しかし,個人差が大
きく,解剖学的構造との相関も明確でないため,信号雑音比
を高める工夫が必要と考えられる.
223 Voxel-based morphometry を用いた脳容積解析
画像の歪み補正の評価
黒須友美1,後藤政実1,渡辺靖志1,佐竹芳朗1,
井野賢司1,飯田恭人1,矢野敬一1,大友 邦2
1)
東京大学医学部附属病院 放射線部
2)
東京大学医学部附属病院 放射線科
【背景・目的】
MRI 画像は傾斜磁場の非線形性などにより画像
が歪み,歪み補正の有用性については報告されている.脳容
積を測定する際には画像の歪みは少ないほうが望ましい.そ
こで 3DT1 強調画像の歪みに対して装置に内蔵されている歪
み補正を行い,脳容積を測定する際に歪み補正が必要か評価
を行った.
【使用機器】
SIEMENS 社製 MAGNETOM Avanto1.5T,Head
Matrix coil
【撮像条件】
MP-RAGE sagittal(J-ADNI の撮像条件に準じる)
【方法】
対象は本研究に同意の得られた健常人 23 名とし,撮
像 後に装置内蔵の 3D の歪み補正を行った.その画 像を
SPM5 にて正規化及びセグメンテーションする.セグメント
された Gray matter と White matter の画像を加算し Brain image
を作成し,FWHM8 で平滑化する.歪み補正前の画像から
3D の歪み補正を行った画像を減算し,補正前後の画像で有
意差が存在するか Voxel-based morphometry
(VBM)
で評価を
行った.
【結果】
有意水準 FWE
(p<0.05)
では補正前と後で有意な領域
が存在しなかったが,有意水準を下げ unc
(p<0.05)
にすると
有意な領域が存在した.有意な領域は主に頭頂部と側頭部・
後頭部の付近にでた.
【結論】
歪みの少ない装置で撮像した画像を VBM で解析する
際には,歪み補正を行う重要性は低いことがわかった.
224 マンガン増感 MRI を用いた放射線照射による腫瘍
細胞増殖能の評価
齋藤茂芳,長谷川純崇,古川高子,須原哲也,
菅野 巌,青木伊知男
放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター
【背景】
現在までに放射線治療後の腫瘍細胞の変性を In-vivo
で早期/非侵襲的に評価をする手法は確立されていない.細
胞内造影剤の Mn2+は,Ca2+チャネルから非貧食性細胞に
も取込まれ,心筋梗塞モデルラットにおいて細胞の生存度が
評価できることが報告された.放射線照射後の腫瘍細胞にお
いて,Mn2+の取り込みを指標に治療効果,細胞生存度およ
び増殖能を評価できるか,マンガン造影 MRI を用いて検討し
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
た.
【方法】
細胞に X 線 20Gy を照射した.その後フローサイトメ
トリーにより X 線照射後のアポトーシス,細胞周期の評価を
行った.照射 24 時間後の培養細胞にて,MnCl2含有培養液
の下で 30 分間培養し,7T-MRI において T1値計 測により
Mn2+の取り込みを評価した.ヌードマウス(n = 15,21.2±
0.3 g)を二群
(MRI 測定:n=7,腫瘍径評価:n=8)
に分け測
定した.マウスの両腰部に腫瘍細胞を皮下移植し,7 日間増
殖させた後,左側腫瘍に X 線 20Gy 照射を行い,24 時間後
を用いて評価した.
にマンガン造影 MRI
(T1強調)
【結果】
X 線照射腫瘍細胞の Mn2+の取り込みは非照射細胞に
比べ減少した.X 線照射細胞において,アポトーシスの増加
が確認された.担がんマウスにおいて,X 線照射側の腫瘍の
成長が減少し,X 線照射 24 時間後において照射側腫瘍での
Mn2+の取り込みは,非照射側に比べ減少した.生存能,細
胞周期と Mn2+の取り込みに相関が示唆され,マンガン造影
MRI は放射線治療後の腫瘍細胞の生体内評価に有用と考え
られた.
225 高速 SE 法撮像時における人体の体表面温度変化に
ついて− 1.0T 装置と 1.5T 装置の比較−
木元 愛1,山口弘次郎2,杉本豪視3,田中栄治3,
鈴木昇一2
1)
藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科医用放射線科
学領域
2)
藤田保健衛生大学 医療科学部放射線学科
3)
中京サテライトクリニック
【目的】
近年,SENSE 法の多用により WB 送 信が主流とな
り,SAR が問題となってきている.一方で,検査中に体温上
昇を訴える人が増加してきており,MR 検査時の体温上昇に
ついて検討する必要性がでてきた.そこで今回,人体の体表
面温度変化について測定,検討したので報告する.
【方法】
高磁場下で RF パルス印加時でも同時多点を時系列的
に体温計測が可能な温度計を使用して MR 検査時の体表面
温度上昇の検討を行った.温度計の貼り付け部位は首,肩甲
骨,腹部,腰部,鼠径部,足首の 6 か所とした.RF パルス
の印加時間は 60 分とし,温度計が平衡状態に入ってから RF
パルスを加えるため,被検者をガントリ内に入れた 15 分後に
印加を開始した.
【結果】
検討した温度測定機は,MR の高磁場環境下と RF パ
ルス印加時でも 5 秒から 10 秒間隔で最長 150 分
(1800 ポイ
ント)
の温度測定を行うことができた.体表面温度は測定箇所
により上昇傾向が異なった.また,体表面温度は RF パルス
印加終了時から低下を示した.
【考察】
温度測定は MRI 室の温度制御状態を示すほど感度が
良かったことから,MRI 検査時の体表面温度上昇が起こって
いると考えられた.温度上昇を緩和するためには,SAR 低減
シーケンスを用いることが有用であると考える.
226 低磁場 MRI 装置における緩和時間温度依存性の基
礎検討
臼井章仁1,古川修人2,前道智也2,田村 元1,
齋藤春夫1,森 一生1,町田好男1
1)
東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻
2)
東北大学 医学部保健学科
【目的】
高磁場 MRI 装置を中心に死亡時画像診断
(Ai)
の検討が
進められており,緩和時間の温度依存性を考慮する必要性が
報告されている.一方,緩和時間には磁場強度依存性もある
2010 年 9 月
1097
ため,高磁場での検討結果をそのまま低磁場で流用できると
は限らない.我々は,低磁場における緩和時間の温度依存性
の基礎データを取得することを目標として検討を進めてお
り,これまでに SE 多点法による水 T1 値の温度依存性の確
認について報告してきた.今回は,T2 値計測法および実際の
計測について初期検討を行ったので,その結果について報告
する.
【方法】
使用装置は日立製 0.3T 永久磁石 MRI 装置である.TE
の異なる SE 画像から多点フィッティングにより T2 値を求め
た.はじめに,SE 画像の信号強度のバンド幅依存性や TE を
変えた際の信号の安定性などの検討を行い,その後,水,ベ
ビーオイル,および肉や卵などを撮像対象として,温度を
4℃,室温,37℃と変えながら緩和時間を計測した.
【結果とまとめ】
バンド幅の固定や受信ゲインの固定などによ
り,TE に依存してほぼ指数減衰するデータが得られた.ノイ
ズレベルデータの除外などの前処理後,フィッテイングによ
り求めた T2 値は,いずれの試料においても温度の低下に伴
い短縮する
(緩和度が増大する)
ことが確認できた.今後は,
さらに計測精度の向上をはかりながら,系統だった T1,T2
緩和時間のデータの蓄積を進めていく予定である.
11:10〜12:10
MR 検査 乳腺
第 1 会場
(大ホール)
座長:伊藤由紀子
227 磁場不均一が乳腺 MRS の測定結果にもたらす影響
加藤義明1,福田 学1,杣澤文紀1,増田圭介1,
矢野昌男1,戸崎光宏2,丸山克也3
1)
亀田メディカルセンター 医療技術部画像診断室
2)
亀田メディカルセンター 乳腺科
3)
シーメンス旭メディテック
(株)
【目的】
乳腺 MRS は脂肪や乳房形状の影響により磁場不均一
環境下での測定機会が多い.それらが測定結果にもたらす影
響につき検討した.
【方法】
装置:SIEMENS-Magnetom-Avanto,測定条件:SESVS / TR=1640ms / TE=270ms / Ave=64.
【方法】
Acetate
(1.8ppm)
を choline
(3.2ppm)
・Lactate
(1.2ppm)
を Lipid
(1.2ppm)
と仮定した MRS 用ファントムを代用. 左腋
下近傍相当位置に 15mm×15mm×15mm の Voxel を設定.
検討項目を,1.マニュアルシム操作における FWHM と T2*
値 8 種類の比較検討,2.Basing-pulse 有無の比較検討
(本
来 Lipid 抑制目的だが代用で Lactate 抑制)
とし,上記各種 3
回計測した平均値より Acetate の積分値・FWHM
(Hz)
を求め
た.
【結果】
1.マニュアルシムの際 FWHM:36.1Hz / T2*:18ms
まで安 定した結 果であった.2.Basing-Pulse
「無」の場 合
FWHM:63.1Hz / T2*:8ms 以上で過少・過大評価があった.
【考察】
高 FWHM・低 T2* 値側で示した乖離結果は,Basingpulse が Lactate 付近の基線安定化をもたらした事で測定結
果も安定したと考えられた.
【結論】
磁場不均一下の測定が多い乳腺 MRS であっても,
ファントム上 Basing-pulse 併用かつ適切なマニュアルシムで
安定した結果が得られた.
10月15日
1098
日本放射線技術学会雑誌
228 乳腺 MRS 測定におけるマニュアルシム条件と測定
結果の検証
加藤義明1,相京佐和子1,齋田 愛1,伊東典子1,
矢野昌男1,戸崎光宏2,丸山克也3
1)
亀田メディカルセンター 医療技術部画像診断室
2)
亀田メディカルセンター 乳腺科
3)
シーメンス旭メディテック
(株)
【目的】
乳腺 MRS はシム結果の個体差が大きい事から,測定
精度調査目的でファントム実験結果と臨床データを比較検討
した.
【方 法】装置:SIEMENS-Magnetom-Avanto.条 件:SE-SVS
/ TR=1640ms / TE=270ms / Ave=256. 対 象:3477
例
(2007 年 4 月∼2010 年 4 月)
.検討 1:ファントム実験結
果に基づいたマニュアルシム不適
(FWHM:36.1Hz 以上/
T2*:18ms 未満)
症例の比率.検討 2:
「ファントム実験結果」
「全結果:3477 症例」
「大病変
(直径 30mm 以上の腫瘤)
群:
41 症例」
における回帰式比較.
【結果】
結果 1:FWHM 不適例 12.8%・水 T2* 値不適例 21.6%.
結果 2:ファントム実験結果
「y = -28.7ln
(x)+ 123.4」
に対
,大病変
し,全症例
「y = -20.1ln
(x)+ 88.46」
(R2= 0.530)
であった.
群
「y = -26.8ln
(x)+ 110.1」
(R2= 0.931)
【考察】
不適例の多くが脂肪多混入や乳房形状等による磁場不
均一例で,全症例対象とした事が R2値を低値にさせたと考
えられた.しかしボクセル内に脂肪を含まない大病変群では
ファントム実験と近似な回帰式であり R2=0.9 以上と良好な
精度と考えられた.
【結論】
脂肪混入が無く確実なシム操作にて安定した乳腺
MRS 検査が可能である.
230 3 テスラ乳腺 MRI における拡散強調画像の最適化
−Biexponential diffusion attenuation analysis−
高長雅子1,林 則夫1,宮地利明2,川島博子2,
松浦幸広1,河原和博1,山本友行1
1)
金沢大学附属病院 放射線部
2)
金沢大学 医薬保健学域保健学類
【目的】
最近,乳腺 MRI でも拡散強調画像
(DWI)
の撮像が行わ
れるようになった.これまでの検討で,悪性腫瘍においては
fast component と slow component を有していることが示唆
された.そこで,我々は 3T-MR における biexponential な信
号曲線の解析方法を確立し,正常乳腺組織や悪性腫瘍におけ
る fast component と slow component の関連性について検討
した.
【方法】
MRI 装置は GE 社製 Signa EXCITE HDx 3.0T を使用
した.撮像シーケンスは Spin-echo EPI 拡散強調像にて,0,
200,400,800,1500,2200,3000 s/mm2の b 値を用いて
撮像した.得られた画像上の正常乳腺と腫瘍部の信号値と
ADC 値を測定し,T2 値の補正した.さらに,信号値と b 値
の減 衰曲線を biexponential な信号曲線に相当するように
フィッティングして,組織による違いを検討した.
【結果および考察】
3T- 乳腺拡散強調 MRI において ADC 値
は,b 値が高くなるにつれて低下した.Fast component の
ADC 値 は 悪 性 腫 瘍 と 正 常 乳 腺 で 有 意 差 が あ っ た
(p<
0.001)
.Slow component においても同様に有意差がみられ
た
(p<0.001)
.Slow component の平均割合は,悪性腫瘍と
正常乳腺でそれぞれ 26.3% ± 14.8%と 8.9% ± 5.5%であっ
た.本手法により,乳腺拡散強調画像の biexponential な信
号減衰での評価が可能となる.
229 3 テスラ乳腺 MRI における拡散強調画像の最適化
−複数の b 値を用いた検討−
林 則夫1,高長雅子1,宮地利明2,川島博子2,
松浦幸広1,河原和博1,山本友行1
1)
金沢大学附属病院 放射線部
2)
金沢大学 医薬保健学域保健学類
【目的】
乳腺 MRI における拡散強調画像
(DWI)
の撮像におい
て,信号強度は設定する b 値によって大きく異なる.そこ
で,我々は 3 テスラ乳腺拡散強調 MRI における最適な b 値
を検討している.これまでに b=800 s/mm2および 1,500 s/
mm2を使用して乳腺組織と腫瘤でのコントラストを比較し
た.その結果,正常乳腺と腫瘤のコントラストについては高
い b 値の方が高くなった.IDC においても同様の結果が得ら
れた.今回は b 値を 200 から 3000 s/mm2まで変化させて b
値によるコントラストおよび ADC の関係を検討した.
【方法】
装置は GE 社製 Signa EXCITE HDx 3.0T,乳腺コイル
はブレストフェイズドアレイコイル
(8ch)
を使用した.撮像
sequence は Spin-echo EPI 拡 散 強 調 像 にて,b 値を 200,
400,800,1500,2200,3000 s/mm2と変 化させて撮 像し
た.各 b 値で得られた DWI に対して正常乳腺と腫瘤のコント
ラストおよび ADC 値を測定した.また,正常乳腺および腫
瘤での b 値を変えたときのコントラストおよび ADC 値の変化
や,各 b 値での ADC 値を比較した.
【結果および考察】
正常乳腺および腫瘤ともに b 値を大きくす
るに従って,ADC 値は低下した.正常乳腺と腫瘤のコントラ
ストは,b 値を大きくすると大きくなる傾向がみられたが,b
値が 2200 s/mm2以上では低下した.腫瘤の b 値と ADC 値
の関係から,腫瘤では slow componennt を持つ組織であるこ
とが示唆された.
231 乳腺 3D MRI の voxel size,形状がコントラストと
空間分解能に及ぼす影響
蛸井邦宏1,工藤秀夫2,柴崎俊郎1,山口貴弘1,
小野勝治1,伊東 一1
1)
山形県立新庄病院 放射線部
2)
地方独立行政法人山形県酒田市病院機構日本海総合病
院 酒田医療センター
【目的】
近年,乳腺 Dynamic MRI の空間分解能は,voxel size
が規定されている.voxel size・形状が,信号強度差の検出,
MIP,MPR にどのように関与するか検討したので,報告する.
【方法】
ボースデルを調整し,正常乳腺の緩和時間に近似させ
た水溶液を作成した.前述の模擬正常乳腺水溶液に Gd 造影
剤を混合し,点滴チューブに封入し,模擬正常乳腺水溶液中
に吊るした.3D Fast TOF SPGR を,スライス厚,マトリク
ス数で,voxel サイズを変化させ,S/N をスライス枚数で調整
し撮像した.ImageJ を用い MIP,MPR,元画像のチューブ
内外のコントラスト,高信号部の FWHM を評価した.
【結論】
スライス厚が厚くなると,MIP,MPR でチューブが肥
大して描出される上,元画像での信号の検出も低下した.
パーシャルボリュームが原因と考えられ,画像の枚数が増加
するなどの問題はあるが,SN の確保を図りつつ,薄いスライ
ス,小さな voxel での撮像・観察が必須であり,ガイドライ
ンの数値は,遵守すべきと考えられる.
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
232 両側乳腺 MR 画像の解析
山本綾香1,木辺優季2,野中 文2,北村茂三2,
西江亨文3,坂中和仁1
1)
吉島病院
2)
広島平和クリニック
3)
広島市民病院
【目的】
ACR BI-RADS-MRI により両側乳腺の撮像の有用性が
拡がりつつある.両側乳腺の撮像にて造影パターンや ADC
値による良悪性の鑑別,対側乳腺の病変検出が可能か検討し
た.
【使用装置】
GE Healthcare 社製 1.5T 4Ch BREAST Coil
【対象】
病理組織確定患者
【撮像方法】
Dynamic を 3phase(1phase=1 分 54 秒,注入速
度 2ml/s,k スペースの中心は造影剤注入後 90 秒・5 分 30
秒)
,Diffusion
(b=1000)
を撮像.早期濃染評価は rapid=>
100%,medium =50∼100%,slow=<50%とし,後期濃染
評 価 は persistent=>+10 %,plateau=±10 %,washout=
<-10%と分類した.各濃染結果から良悪性鑑別を行い,次
に ADC 値での鑑別を行った.更に対側乳腺の病変検出能に
ついて検討した.
【結果】
早期濃染評価では全症例中 84%で rapid を呈し良悪性
鑑別は困難であった.後期濃染評価では悪性病変はほぼ
washout,plateau を呈し良悪性鑑別の可能性が示唆された.
ADC 値については 0.8×10-3mm2/s 以下に悪性病変の可能性
が示唆された.全症例中,約 7%に対側乳腺の濃染を認めた.
【考察】
造影パターンのみでの鑑別には限界があり,腫瘍の形
状や内部信号等の他の因子,他のモダリティを併せた総合的
な判断が必要である.ADC 値での良悪性鑑別の確率が向上
した.対側乳腺の病変検出能は文献と同等であった.
第 1 会場
(大ホール)
13:30〜14:30
座長:前谷津文雄
MR 検査 臨床技術(頭部)
233 口腔内磁性体が頭部血管描出に及ぼす影響について
− 3D TOF 法と 3D-Inhance 法の比較−
久島貴之,山城尊靖
箕面市立病院 中央放射線部
【目的】
3TMRI では,口腔内の磁性体による磁化率アーチファ
クトの影響により血管描出が困難になる場合がある.そこ
で,従来の 3D TOF 法と PhaseContrast 法の変法である 3D
Inhance を用いて撮影した場合における,磁化率アーチファ
クトの影響を比較したので報告する.
【方法】
使用機器は GE 社製 MRI 装置 SIGNA HDxt 3.0T で,
コイルには 8ch Brain Phased Array Coil を用いた.模擬血管
ファントムを作成し,3D TOF 法と 3D Inhance 法,従来の
3D PC 法で撮影を行った.次に,同じファントムに磁性体を
埋め込み同様の撮影を行い血管描出の違いについて比較し
た.また,口腔内磁性体により 3D TOF で撮影した場合,
アーチファクトにより血管描出が困難だった患者に対し,
3DInhance で撮影し,血管病出の比較を行った.この際,患
者に対し検査の安全性等を十分説明し理解を得た上で行っ
た.
【結果】
3D TOF 法で撮影した画像では,磁性体による磁化率
アーチファクトの影響で模擬血管が描出されない,もしくは
実際の太さより非常に細く描出されたが,3D-Inhance
(3D-PC
変法)
では模擬血管が良好に描出された.また患者で使用し
た場合 3DInhance では血管病出が良好であった.
【考察】
3D-Inhance
(3D-PC 変法)
は,静止部分と流れの部分を
2010 年 9 月
1099
識別するために大きさが同じバイポーラグラディエントを正と
負の方向にかけているため,磁性体による位相のずれが補正
され,血管が描出されたと考えられ,磁性体を埋め込んでい
る症例に対して非常に有用であると考えられる.
234 椎骨 脳 底 動脈における Flow Analysis Cine Fusion MRA
加藤丈司1,阿部雅志1,池亀 敏1,永井淳史1,
河井梨恵1,宮坂純基1,河原崎昇1,岡田 進2
1)
日本医科大学千葉北総病院 放射線センター
2)
日本医科大学千葉北総病院 放射線科
【目的】
MR angiography において血管概観表示を行う方法と
がある.本法
して BPAS
(Basi-parallel anatomical scanning)
は SAS を応用し二次元の厚い冠状断で頭蓋内の椎骨脳底動
脈を表 示するものである.我々は Cine Phase contrast に
Flow Analysis と BPAS を用い椎骨脳底動脈領域における
Cine MRA と血流動体表示を試みたので報告する.
【方 法】椎 骨 脳 底 動 脈に Cine Phase contrast および BPAS
(Fast Recovery FSE)
にて撮像,Flow Analysis と Fusion 画
像処理を行った.なお,臨床における撮像では informed-consent を得て行った.使用機種は超伝導型 MR 装置 Signa
(GE
社,静磁場強度 1.5T)
である.
【結果及び考察】
Cine phase contrast は位相シフトを用いて血
流動態を描出する方法である.本法は Flow Analysis により,
血流動態のみならず血流方向の情報を付加することができ
る.我々はこれに BPAS を Fusion することにより血管概観を
表示しつつ血流動体と血流方向の情報を付加表示する方法を
考案した.本法は coronal にスライス設定できるため,短時
間に広範囲の血管および血流情報を得ることができ,椎骨脳
底動脈病変のスクリーニングや経過観察に有用であった.
235 血栓化脳動脈瘤に対する fusion の有用性
阿部雅志1,池亀 敏1,加藤丈司1,河原崎昇1,
岡田 進2,古川一博2,小南修史3,小林士郎3
1)
日本医科大学千葉北総病院 放射線センター
2)
日本医科大学千葉北総病院 放射線科
3)
日本医科大学千葉北総病院 脳神経外科
【背景・目的】
動脈瘤診断の Gold standard は DSA である.ま
た,25mm 以上の巨大動脈瘤では内部に血栓化を伴う事があ
り,3D-CTA や DSA を観察しても過小評価しうる.大きな動
脈瘤では内部の流れが遅く,スライス撮像面に対する流れの
方向がバラバラであることから time of flight 効果が減弱して
動脈瘤の大部分が MRA では描出されない.このため断層像
による壁在血栓の評価も必要になる.今回我々は MRA と
SPGR より得られた画像をワークステーションにて fusion さ
せ脳脈瘤の全貌を把握するために描出を試みた.
【方法・対象】
MRI: Signa Excite 1.5T(GE)
,画像処理装置:
Virtual Place
(AZE)
,Coil: 8 ch 頭部コイル,3D TOF: TR/
TE42/6.9ms,Flip 角 20˚,FOV 200 mm,Matrix 256 ×
256,感度補正あり.血栓に含まれるデオキシヘモグロビン
の磁化率に敏感な SPGR:TR/TE8.7/4.2ms,Flip 角 5∼30˚,
FOV 200 mm,Matrix 256 × 256,感度補正あり.未破裂の
段階で発見された巨大脳動脈瘤内部に急激な血栓化をきたし
た 3 症例を対象とし,3D TOF と 3D SPGR により得られた
画像をワークステーションにて fusion させ脳動脈瘤の形態の
描出を試みた.
【結果】
fusion させた脳動脈瘤画像の視覚評価を同一患者のク
リッピング術を施行した脳神経外科専門医師 2 名に依頼し,
10月15日
1100
日本放射線技術学会雑誌
実際の術野に近い脳動脈瘤の画像であるとの回答であった.
【考察】
TOF と SPGR の fusion は血栓化動脈瘤の形態を描出
することに優れ,スクリーニング検査として臨床的に有用で
あると考えられた.
236 iMSDE 併用 T1w-TFE 法を用いた脳血管描出の検
討
古牧伸介1,木田勝博2,中河賢一1,森本規義1,
大月圭介1,井下裕行1,中田和明1
1)
(財)
倉敷中央病院 放射線センター
2)
岡山赤十字病院 放射線センター
【背景】
improved motion sensitized driven equilibrium
(iMSDE)
法は傾斜磁場を用いて血液スピンの位相分散を引き起こし,
信号を抑制する手法である.この手法は,撮像断面や撮像範
囲に制限がないこと,さまざまな撮像法と組み合わせが可能
であるという利点をもっているため,これまで多施設で検討
されその臨床的有用性が報告されている.当院においても装
置のバージョンアップに伴いこのシーケンスの使用が可能と
なった.
【目的】
脳血管領域における iMSDE 法を用いた非造影 MR Angiography の撮像条件の最適化と臨床的有用性について検討
を行ったので報告する.
【方法】
使用した MRI 装置は,フィリップス社製 Achieva 1.5T
nova dual で受信コイルは 16ch neuro vasucular coil である.
検討方法は同意の得られた健常ボランティアに対して,
iMSDE を併用した T1-TFE シーケンスの撮像条件
(Flip angle,TE,及び flow venc)
を可変し,血管描出について比較
検討を行った.また,最適化された撮像条件を用いて臨床応
用を行いその有用性について検証した.
【結 果】至 適 撮 像 条 件 は Flip angle:10deg,TE:13.8ms,
flow VENC:約 10cm/s であった.また臨床応用
(もやもや
病,脳動脈瘤,脳動脈狭窄症など)
においてその有用性が確
認された.
【結語】
今回,最適化された iMSDE の撮像条件を用いること
で,脳動脈血管を良好に描出することが可能となった.今後
臨床経験を重ね画質改善を行うとともに,他領域への応用も
考えていきたい.
237 Arterial Spine Labeling
(ASL)
の基礎的検討
轟 圭介1,廣木一弘1,沼本健一1,杉村 瞳1,
渡邊博之1,田原孝浩1,平野雅弥2,山田 実3
1)
埼玉医科大学総合医療センター
2)
埼玉医科大学病院
3)
埼玉医科大学国際医療センター
【背景】
脳血流量の測定は PET や SPECT を用いた手法が定
着している.近年 ASL
(Arterial Spine Labeling)
法が,脳血流
量を MRI で求める手法として注目されている.
【目的】
ファントムを使用した ASL 法の評価を行う.
【方法】
MRI システムはシーメンス社製 3.0T
(Verio,VB17)
,お
よび脳血流量を計測するパルスシーケンスと演算処理ソフト
ウェアから構成される ASL パッケージを使用した.また,
MRI システムの観測系に収まるように流水系のファントムを
自作し,これを血流のモデルとした.このモデルにより流水
量の変化にともなって ASL 法で撮像した MRI 画像上の信号
強度の変化が捉えられるようにした.さらにパルスシーケン
スの変更により RF パルスでラベリングを行うタイミング
TI1,TI2 を変化させ,撮像領域内のスライス画像上の信号の
増減を ROI を取って比較した.
【結果】
ファントムの流水量 60ml/min 以下では信号が得られ
なかった.また,流水量・TI1・TI2 を変化させたときの各ス
ライスにおける信号強度は,すべての条件において撮像領域
の両端のスライスで信号強度が低下していることが分かった.
【結語】
観測対象の流速は 60∼70ml/min 前後が適当で,撮像
条件に関しては TI1,TI2 はデフォルト値からある程度外れて
も流速の測定が可能であることが確認できた.本手法は反転
パルスの空間的な位置の違いにより CBF 値に誤差を生じる
可能性があり,撮像条件の設定に留意する必要がある.
238 MRI と PET による脳血流撮像の比較検討
柳下友明1,小林博文1,市川隆史1,菅原香里1,
平野雅弥1,田原孝浩2,山田 実3,和田幸人1
1)
埼玉医科大学病院
2)
埼玉医科大学総合医療センター
3)
埼玉医科大学国際医療センター
【背景】
MRI システムを使用した灌流イメージングである ASL
(Arterial Spine Labeling)
法が,これまでのゴールドスタン
ダードな脳血流量測定法である PET や SPECT に変わって臨
床現場でも試みられてきている.
【目的】
[15O]
酸素ガス 3 次元収集 PET/CT 脳血流検査と MRI
脳血流
(ASL)
検査の比較検討を行ったので報告する.
【方法】
使用した PET/CT システムは Siemens 社製 Biograph
S16 で体幹部からの散乱線を抑制するために自作のネック
シールドを使用した.
[15O]
酸素ガス 3 次元収集は一般的な
steady state 法とし定量画像を算出した.また,MRI システ
ムは Siemens 社製 3.0T
(Verio,VB17A)
,および脳血流量を
計測するアプリケーションは反転パルスを広い範囲に一回の
み照射する pulsed arterial spin labeling(pASL)
法と演算処理
ソフトウェアーから構成される ASL パッケージを使用した.
【結果・考察】
PET 撮像の際にネックシールドを使用すること
で安定した定量画像を求めることが出来るようになった.ま
た,MRI で算出された定量画像は PET の定量画像に比較す
ると若干値が高く算出される傾向があった.さらに MRI 撮像
条件による値の変動も見られ,観測対象の流速は 60ml/min
前後が適当で,TI1,TI2 はデフォルト値からある程度外れて
も流速の測定が可能であることが確認できた.本法は反転パ
ルスの空間的な位置の違いにより CBF 値に誤差を生じる可
能性があり,撮像条件の設定に留意する必要はあるが,被曝
を伴わない脳血流測定法でありパルスシーケンスや撮像条件
の改良により今後,簡易的なスクリーニング検査に多用でき
る可能性があると考える.
第 1 会場
(大ホール)
14:30〜15:20
座長:児玉潤一郎
MR 検査 脂肪抑制・定量
239 T2 補正による脂肪量測定 MRS の妥当性の検討
橋本亜樹生1,中村智哉1,川又郁夫1,松田 豪2
1)
東海大学医学部付属八王子病院 放射線技術科
2)GEヘ ル ス ケ ア・ ジ ャパ ン
(株)
画像応用技術セン
ター
【目的】
我々は以前,プロトン MRS が脂肪肝の評価に有用で
あることを報告した.しかし,水と油を用いた自作ファントム
では,脂肪割合が約 13%過小評価されていた.これは,原理
上 TE=0 のスペクトルを直接得ることが困難であり,T2 減
衰の差による影響を受けたと考えられた.今回我々は,1 回
の息止めで 8 つの異なる TE のスペクトルを得て T2 減衰を
補正するシーケンスを使用する機会を得た.そこでファント
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
ムにおける脂肪割合の妥当性について再検討したので報告す
る.
【方法】
自作ファントムを用いて妥当性の検討を行った.装置
は GE 社製 Signa HDx 1.5T を用い,撮影条件は PRESS 法,
TR1500ms,TE28ms,VOI2×2×2cm3,スキャン数 9,水抑
制 off.解析は装置付属の SAGE を用いて Marquart Fitting を
行った.また,TE の異なる 8 つのスペクトルを用いて水と油
それぞれの T2 値を求め,TE=0 における脂肪割合を算出し
た.
【結果】
従来法では T2 減衰の影響が無視できず,脂肪割合の
誤差があったが,T2 減衰補正を行うことで誤差平均が 1.5%
となった.T2 減衰補正を行うことにより,より正確な評価が
可能となった.
【結語】
T2 減衰補正を行ったプロトン MRS は脂肪割合をほぼ
同等に評価できることがわかった.生体における T2 減衰速
度はファントムと異なるため,動物の肝臓を用いた病理標本
との比較を現在行っている.
240 脂肪抑制パルス強度の違いが信号強度と SNR に与
える影響
松本洋一,山村憲一郎,藤田 修,岡山勝良,
鳴海善文
大阪医科大学附属病院 中央放射線部
【目的】
脂肪抑制パルスの強度を変化させることによる信号値
と SNR の変化を,自作ファントムと臨床画像を用いて検討を
行ったので報告する.
【方法】
1. 脂肪を含むもの 5 種類と精製水の 6 種類を試料とし
てファントムを自作した.2. FSE-XL で,Fat Sat Efficiency
を 0.1 から 1.0 まで 0.1 ずつ変化させて,自作ファントムと正
常ボランティアの骨盤部を T2 と T1 強調で撮影を行った.
3. ファントム各試料の信号値と SNR を求めた.4. 骨盤画像
に ROI を設定し各 ROI の信号値と SNR を求めた.装置は,
GE 社製 1.5T SIGNA HDxt Ver.15 と 3.0T SIGNA HDxt
Ver.15 を使用した.
【結果】
T2WI:脂肪を含む試料では,脂肪抑制パルスの強度
が強くなるにつれて信号値と SNR の低下がみられた.T1WI:
脂肪を含む試料では,弱い脂肪抑制パルスで大きな信号値と
SNR の低下がみられた.中強度以上のパルスでは,ゆるやか
な信号値と SNR の低下がみられた.
【考察】
T2WI では,脂肪抑制パルスの強度によって信号値の
低下がみられるため SNR が低下することになる.SNR は診
断する上で重要な因子となるため分解能や撮影時間の関係を
考慮すると,必ずしも最大の 1 で使用する必要はなく症例に
合わせて強度を使い分けることが必要と考えられる.T1WI で
は,弱い脂肪抑制パルスでも脂肪抑制効果が大きく表れるた
め必ずしも大きな値を設定する必要はないと考えられる.
241 SPAIR 脂肪抑制法における TI Delay の基礎的検討
岡 雅大,石川 剛,叶 亮浩
砂川市立病院 放射線科
【目的】
adiabatic パルスにより周波数選択的に脂肪を 180 度反
転させる SPAIR 法は通常の CHESS 法よりも B1 フィールド
の影響を受けにくく,より均一な脂肪抑制が期待できる.本
法は脂肪が Null point に達するまでの delay time
(TI delay)
が
(SPAIR TR)
に依存し
生じ,これは SPAIR パルスの印加間隔
ているといわれている.今回我々は二者の関係について基礎
的検討を行った.
【使用機器】
Achieva 1.5T Pulsar R1.5,SENSE-Body Coil
2010 年 9 月
1101
(PHILIPS)
【方法】
TSE シーケンスにおいて Olive oil を封入したサンプル
及び健常ボランティアの腹部皮下脂肪を対象に撮像し,各
SPAIR TR に対する TI delay を変化させ,信号が最も抑制さ
れる TI delay を測定した.以上を数種の TE で撮像し信号変
化を評価した.
【結果】
SPAIR TR の延長に伴い TI delay も延長するが,SPAIR
TR が 1000 を超えると TI delay はプラトーに達し,以後の延
長を認めなかった.TE が延長すると TI delay のプラトーにな
る値も延長する結果となった.また対象が Olive oil より腹部
皮下脂肪の方が TI delay が長い結果であった.
【考察】
脂肪が充分回復できる程の SPAIR TR になると前の励
起の影響による脂肪信号飽和が無視できる為,TI delay はプ
ラトーに達すると考えられる.TR ∞の single shot 法や Long
TR での撮像ではプラトー値に注意し条件設定の必要がある.
242 3 point Dixon 法における体動影響の検討
八巻智也,丹治 一,高橋大輔
北福島医療センター 放射線技術科
【目的】
3 point Dixon 法は,TE 可変によって位相シフトの異な
る 3 つの画像を収集し,その計算処理によって水画像や脂肪
画像等を得る手法である.本法は,部位に依存しない均一な
脂肪抑制効果が得られるメリットがある一方,撮像時間の延
長がデメリットとなる.今回,撮像時間の延長を伴う 3 point
Dixon 法において,撮像途中で対象物に動きが生じた場合の
画像影響について検討を行った.
【方法】
使用装置は Philips 社製 3.0T Achiva.自作デバイスに
よって水と脂肪成分を有したファントムに意図的な動きを生
の発生状況および描
じさせ,計算不良画像
(misregistration)
出影響について検討を行った.撮像条件は 2D・3D の gradient echo 法.検討条件に依存した変化の有無を検証するた
め,条 件 範囲は TR15∼200,TE2.3∼16.1,FA10∼60 の範
囲とした.
【結果・考察】
体動シミュレーション時の撮像において,撮像
条件に相関したゴースト周期の変化は生じたが,dixon 収集
に関る misregistration の発生は確認できなかった.また,体
動タイミングや動きの量,速さを変化させても同様な結果で
あった.このことから,時間延長に伴って増加する体動リス
クが,直接 dixon 収集に弊害をもたらす可能性は低いものと
思われる.本法は体動影響を懸念する体幹部領域に十分利用
可能であり,形状や周囲環境によって磁化率影響が生じやす
い乳房領域においては均一な脂肪抑制画像を得る手法として
有用な手法と考える.
243 米を用いた自作 MRI 用画質向上パッドの性能評価
大浦大輔,阿部恭平,富田伸生
市立小樽病院 放射線科
CHESS 法による脂肪抑制では磁場の不均一や磁化率
【背景】
効果により脂肪抑制効果の低下を認める場合がある.局所の
脂肪抑制効果を高める手段として撮像部位に Sat pad を使用
する方法があるが既製品は高価であるため購入しづらい.一
方,米を袋に封入したもので Sat pad を代用できるとの報告
がある.
【目的】
米を用いた MRI 用画質向上パッドを自作しその効果を
検証する.
【方法】
自作ファントムの周囲を米で満たした場合と,空気の
場合での脂肪抑制効果の比較,画像の歪み率を測定した.ま
た,研究主旨を説明しインフォームドコンセントを行ったボラ
10月15日
1102
日本放射線技術学会雑誌
ンティアにおいてパッドなし,Sat pad 使用,自作 MRI 用画
質向上パッド使用の 3 パターンで頸部を撮像し脂肪抑制効果
を視覚的に評価した.
【結果】
自作ファントム周囲を米で満たした場合には,均一な
脂肪抑制効果が認められ,画像の歪み率は改善された.ボラ
ンティアにおいては Sat pad,自作 MRI 用画質向上パッド使
用により気管前面の信号低下部分の改善と脂肪抑制効果の向
上が認められた.また,自作 MRI 用画質向上パッドは Sat
pad と遜色ない効果が得られた.
【考察】
米は乾燥状態であり信号はでないため適した素材と考
えられる.画質改善の原因としては急激に磁化率が変化する
部位に Sat pad や自作 MRI 用画質向上パッドを置くことによ
り磁化率の変化が緩徐になるため,脂肪抑制効果が向上され
ると考えられる.自作 MRI 用画質向上パッドの利点としては
安価である事,また様々な部位やコイル形状に合わせて作成
できる事があげられる.
15:20〜16:10
MR 検査 撮像技術
第 1 会場
(大ホール)
座長:安彦 茂
focusing control”
(以下 RC)
がそれぞれの k 空間充填法に与え
る影響について基礎検討を行ったので報告する.
【使用機器】
PHILIPS Achieva1.5T ver2.6.1,SENSE Torso
Coil/Image J1:Water
(+NaCl)
・olive oil・Agarose+Gd
(T1:
400ms,T2:40ms)
2:2mm 径円柱
(water+NaCl 封入)
【方法】
下記条件にてファントム 1,2 を撮影し,SNR・Contrast・
FWHN を 評 価 す る.TR/TE=3000/750ms,ES=6.5ms,kspace-ordering=linear・asymmetric・rev.linearslice selection:no TSE-factor=232,Band-Width=781Hz/pixel,FOV
=280mmSlice-Thickness1mm,matrix=256×256,fat suppression:yes,RC
(30∼180,10˚ 刻み)
【結果】
SNR: 各 k 空間充填法で RC が小さくなるにつれ,背
景組織の SNR が上昇する傾向が見られた.Contrast:全て
の充 填法において,RC100˚ を境に contrast が 低 下した.
contrast 低下は asymmetric にて顕著であった.FWHN:RC
が小さくなるにつれ,FWHM が大きくなる傾向が見られた.
また asymmetric にて FWHM の増大傾向が顕著であった.
【結語】
k 空間充填法における第一選択は linear 法が最も良
く,refocusing contorol は contrast・SNR・FWHM の観点か
ら 130˚ 程度までに抑えることが望ましいと考える.
244 Binominal pulse を用いた新規水抑制法開発の試み
山岸史明1,八木一夫1,畑 純一2,長田晴行1
1)
首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
2)
東京大学医学部附属病院 放射線部
【背景】
水抑制画像は Hajnal らが 1992 年に発表した FLAIR
(fluid-attenuated inversion recovery)
が広く用いられている.
FLAIR は定量的な水抑制画像を得ることができる.一方で TI
(inversion time)
による撮影時間の延長,スライス枚数の制限
といった短所がある.これらは患者に対する負担を増加さ
せ,motion artifact の原因となる.
【目的】
FLAIR と同等以上の SNR,水抑制効果を保ちながら撮
像時間を短縮した新規水抑制法の開発を目的とする.
【方法】
本法は Preparation pulse として Binominal pulse を用
いることで水抑制画像が得られ,FLAIR より TI の大幅な短縮
に伴い撮像時間の短縮ができる.実験は 1:1 の二分割で励
起間隔を 10∼60
[hz]
まで 10
[hz]
間隔で変化させ最適化を
行った.臨床用 MRI 装置に独自に作成した pulse sequence
を実装し,本学荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を
得て,ヒト健常ボランティアを対象として撮像を行った.
1.5TMRI 装置
(GE Signa Horison LX ver.9.0)
を使用した.撮
像は FSE
(fast spin echo)
法,TE/TR:100/3000
[ms]
,FLAIR
の TI は 2000
[ms]
とした.取得した画像の SNR・水抑制効果・
撮像時間を比較し,新規 pulse sequence の評価を行った.
【結果・考察】
本法は FLAIR と比較し,SNR は約 10%低下し,
水抑制効果は約 70%であった.撮像時間は約 40%の撮像時
間短縮が可能であった.Binominal pulse は分割数が大きくな
るほど選択励起効率が上昇するため,分割数の最適化,更な
る励起間隔の精度向上を行い,臨床に発展させる必要があ
る.
246 FLAIR 法の Refocus Flip Angle がフローアーチ
ファクトに及ぼす影響
井上裕二1,米山正己2
1)
いとう横浜クリニック
2)
メディカルサテライト八重洲クリニック
【背景】
頭部 MRI 検査の FLAIR 画像では,フローによるアー
チファクトが出現することがあり,偽病変を示すなどの問題
があった.
【目的】
今回我々は FLAIR 法の Refocus Flip Angle
(RFA)
を低
くすることで,フローによるアーチファクトが有意に低減する
ことを経験したため報告する.
【使用装置】
SIEMENS 社製 MAGNETOM Avanto 1.5T VB17
【方法】
当院倫理委員会承認済みの健常ボランティアにおい
て,高頻度でフローアーチファクトが出現する頭部領域に対
し,RFA を変更させた FLAIR 法を撮像し,フローアーチファ
クトについての検討を行った.さらに自作ファントムの撮像を
行い,各 RFA に対するコントラストの変化についても検討し
た.
【結果】
RFA を低く設定した頭部の FLAIR 画像にて,フロー
アーチファクトは有意に減少した.ファントム撮像では,低
RFA は若干のコントラスト低下を示した.
【考察】
今回の検討を行った結果,RFA を低く設定した FLAIR
画像では,撮像時間を延長せずにフローアーチファクトを有
意に低減させることが可能であった.この理由としては,再
収束するスピン自体が減少することにより,比較的 T2 値の
長い物質からの信号が低下することに起因すると考えられ
る.しかし,RFA を低くすることで若干のコントラスト低下
がみられるため,パラメータの設定には注意を要する.
245 MRCP における flip angle sweep と k 空間 充 填
法の関連性
梅崎好永
(社)
遠賀中間医師会おんが病院 放射線科
現在当院における MRCP は 3D-TSE 法を用い k 空間
【背景】
充填法 3 種
(linear/rev.linear/asymmetric)
を使い分けている.
【目的】
それぞれの k 空間充填法の最適化には様々な付加
technic が考えられるが,今回は flip angle sweep である
“re-
247 Asymmetric profile order における CNR および
有用性の評価
丸山裕稔,田畑信幸,隅幸四郎
国立病院機構長崎医療センター 放射線部
【目的】
Asymmetric は,TSE factor や TEeff 等によって echo
space が決定される linear とは異なり,任意に echo space を
設定することが可能である.しかし TSE factor と echo space
によって k-space の埋め方が変化するため,コントラストへ
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
の影響が考えられる.そこで linear とのコントラストの比較,
および有用性について検討したので報告する.
【方法】
1. 自作ファントムを使用し,asymmetric において TSE
factor および echo space を変化させ CNR を求める.また
linear における同じ TSE factor,echo space で CNR の比較
を行なう.2. profile order と echo space を変化させ,健常ボ
ランティアにて女性骨盤領域の撮像を行い,画像の比較を行
う.
(健常ボランティアには,本研究の目的と意義に関する説
明を行い同意を得た.
)
【結果】
1.TSE factor を一定とし echo space を変化させた場
合,低い TSE factor では CNR はほぼ一定であったが,TSE
factor が高くなるに伴いばらつきが見られ,echo space が小
さいほど低下した.2. echo space を一定とし TSE factor を
変化させた場合,各 echo space において CNR はほぼ一定
であった.3. 健常ボランティアにおいて,TSE factor を一定
と し た 場 合,linear
(echo space:9.5)に 比 べ asymmetric
(echo space:5)
では motion artifact が低下したが,コントラ
ストの低下も見られた.
【考察・まとめ】
Asymmetric ではパラメータの設定によって
は,コントラストの低下が見られるため,検査目的に応じた
使い分けが必要である.
248 Asymmetric order による画像劣化
(ボケ)
の検討
外村彰啓,馬野清次,福地博史,山本文子,
大矢慶美
聖マリアンナ医科大学病院 画像センター
【背景・目的】
当院の手関節 MRI 検査時の体位は通常,腹臥
位・腕挙上としガントリー中心での撮像を心掛けている.し
かし何らかの理由で体位保持が困難な場合には,仰臥位・腕
体側にて検査を行っている.この際 k スペースオーダーに
Asymmetric order を用いた場合,
“同パラメータにも関らず著
(ボケ)
が生じる.
”
といったことを経験した.そ
しい画像の劣化
こで今回その原因を知るべく検討を行ったので検討をする.
【使用装置・機器ほか】
Philips 社製 Achieva1.5T nova・Flex-S
コイル・硫酸銅ファントム・本研究に同意を得た健常ボラン
ティア
【方法】
硫酸銅ファントムおよび健常ボランティアにて TR・
TE・TSE ファクター・エコー間隔などのパラメータを変化さ
せながら,ファントム位置を変えて
(センターおよびオフセン
ター)
撮像を行う.また同様に撮像を行った他の k スペース
オーダー
(linear order・low-high order)
との比較を行う.
【結果・考察】
パラメータを変化させることで k スペーストラ
ジェクトリーの変化が確認できた.またファントム位置の違
いによる差異も見られた.これは他の k スペースオーダーと
は異なる変化であった.Asymmetric order を用いた場合,エ
コー間隔やスライス枚数,用いる傾斜磁場等の組み合わせに
より,位相エンコードの順番が変わり著しく画像を劣化させ
る場合があると推測する.
第 2 会場
(萩)
13:30〜14:30
X 線検査 血管撮影(造影剤・装置評価)
座長:立花 茂
249 4Fr ピッグテールカテーテルによる左室造影の検討
槌谷慶仁,武田和也,坂尾武彦
日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 放射線科
【目的】
4Fr ピッグテールカテーテル
(以下ピッグテール)
の形状
や側孔の位置および数の違いによる左室造影
(以下 LVG)
の
2010 年 9 月
1103
造影能への影響を検討する.
【対象】
対象は 2009 年 11 月∼2010 年 3 月.心臓カテーテル
検査にて LVG を施行した 151 例.
【方法】
形状や側孔数及び位置の異なる 3 種類の 4Fr ピッグ
テール
(A:通常ループ径,54 側孔,52 例.B:小ループ径,
17 側孔,51 例.C:小ループ径,8 側孔,48 例,側孔の位
置は C が A と B に比べループに近接していた.
)
を使用し,造
影剤注入条件を全注入量 28ml,注入速度 7ml/ 秒に統一して
LVG を行った.造影能の評価方法は 3 段階点数制
(3 点:造
影良好,2 点:左室辺縁のうち一部辺縁描出が不良,1 点:
広範囲の辺縁描出不良)
で行った.期外収縮の発生が無い場
合は+1 点,ピッグテール刺激による心室頻拍造影
(VT 造影)
は除外した.
【結果】
有意差は認めないものの VT 造影は A:1 例,B:1 例,
C:4 例と C で最も多かった.造影能は A:2.80±0.91 点,B:
3.70±0.46 点,C:.3.28±1.22 点で,B のピッグテールを使
用した LVG が最も造影能が高かった
(B v.s. A:P<0.0001,
B v.s. C:P=0.0291)
.
【考察】
B の造影能が良好であった要因はピッグテールの形状
が小ループ径で側孔数が多いことにより注入圧が低くピッグ
テールの動きが少ないことで期外収縮が発生しにくい,側孔
の位置がループに近すぎない為造影剤による左室壁への刺激
が少ないことが挙げられた.
【結語】
良好な LVG を行うためにはピッグテールのループ径が
小さく側孔の位置は先端に近すぎない形状が望ましいと考え
られた.
250 Dual Injector を用いた同時注入と単一注入におけ
る造影剤の混ざり方の比較−CT 値による検討−
湯淺勇紀,米沢鉄平,中原佑基,上田克彦
山口大学医学部附属病院 放射線部
【目的】
血管造影検査において Dual Injector での同時注入によ
る造影剤の混ざり方に関して,永塚,佐藤らにより報告され
ている.それらは主として DSA を用いて検討が行われてい
る.今回我々は,同時注入にて造影剤希釈率を変化させ,カ
テーテル通過直後より CT 撮像を行い,CT 値を指標とした
混合による変化を,同一希釈率の単一注入の場合と比較した
ので報告する.
【方法】
注入条件は 2.0ml/sec とし,各条件下においてカテー
テル通過直後の混合による CT 値の変化を経時的に撮像し
た.単一注入の場合,300mgI/ml の造影剤を 2∼20 倍に希釈
して使用した.同時注入の場合,単一注入と同様の希釈率と
なるように注入速度を調節し,撮像を行った.得られた画像
より造影剤の濃度変化を観察するための CT 値を測定し,単
一注入と同時注入の比較を行った.
【結果】
希釈率が小さい場合,同時注入と単一注入の CT 値に
あまり差がないが,希釈率が大きくなるにつれて同時注入の
CT 値が低下する傾向を示した.また,得られた CT 値より時
間濃度曲線を作成すると,同時注入の場合では,希釈率が大
きくなるにつれて造影剤のピーク到達時間が遅くなる結果と
なった.
【考察】
希釈率が大きくなるにつれ,同時注入時の CT 値が低
下する理由として,ピーク到達時間が遅くなることが考えら
れる.以上より,同時注入を用いて造影剤希釈を行う場合,
必要な濃度が得られていない可能性が示唆された.
10月15日
1104
日本放射線技術学会雑誌
251 血管造影における造影効果評価−ダイマー型とモノ
マー型との比較−
寺田晃子,好井あかね,竹本幸志,山下順一
西神戸医療センター
【目的】
イオジキサノールはダイマー型で浸透圧が 1 に近く頭
頸部および四肢において疼痛の少ない造影剤である.当院で
も導入され頭頸部腫瘍の場合に使用している.今回モノマー
型造影剤との造影効果を比較し検討したので報告する.
【方法】
内径が 6mm,3mm,4mm のチューブを繋ぎ,6mm
のチューブの中に 5Fr のカテーテルを挿入し,模擬血液の
33%グリセリン水溶液と造影剤を流した.注入条件を模擬血
液流速 5,7,9ml/s,造影剤は 3ml/s-9ml,4ml/s-12ml,5ml/
s-15ml の 3 秒注入とし,組み合わせ撮影した.造影剤はイオ
ジキサノール 270
(VSP)
イオパミドール 300
(IOP)
イオベル
ソール 320
(OPT)
イオヘキソール 300
(OMP)
を常 温 時
(約
25℃)
と加温時
(約 37℃)
で使用した.Infinet-R で測定した内
径 6mm の ROI を ROI1 と し, 同 様 に 3mm を ROI2,4mm
を ROI3 とした.それぞれの時間−濃度曲線を描き比較した.
【結果】
ROI1 でのモノマー型造影剤は,常温時に造影剤速度
3ml/s では曲線が山形で,加温時には 4ml/s 以上でほぼ矩形
となった.最大濃度値は常温時が OMP で加温時が OPT で
あった.VSP は常温,加温とも他の造影剤に比べ矩形の曲線
となり,ピーク時間も安定していた.ROI2,ROI3 についても
同様であった.
【考察】
常温では粘稠度が濃度に影響し,加温時は粘稠度が低
くなり,ヨード量が影響することが考えられる.モノマー型造
影剤に比べ VSP のピーク時間が長いのは,模擬血液との混
和が良いためではないかと思われる.VSP は造影剤温度に関
わらずヨード量をできるだけ抑える場合などに有効である.
252 ジェネリック X 線造影剤の副作用
森 薫1,米田義英1,大橋章弘1,出口奈緒美1,
森田新章1,西村茂樹1,谷川 昇2,澤田 敏2
1)
関西医科大学附属枚方病院 中央放射線部
2)
関西医科大学 放射線医学教室
【目的】
近年,ジェネリック医薬品
(後発医薬品)
の X 線造影剤
が市販され医療現場で使用され出した.当院では 2009 年 1
月からすべての X 線造影剤をジェネリック医薬品に切り替え
て使用している.臨床現場では副作用の情報が少ない事と,
他院で使用した際の副作用経験による拒絶反応が少なくな
かった.ジェネリック X 線造影剤の副作用の発生頻度と実態
を知る為に調査を行った.
【方法】
2009 年 1 月から 2010 年 3 月までにジェネリック医薬
品の非イオン性 X 線造影剤を用いた CT11823 例,心臓系血
管造影 1826 例,心臓以外の血管造影 803 例の計 14452 例
について副作用を調べた.副作用をその程度から嘔吐,発
疹,痒みなどに代表される軽度副作用,急激な血圧低下,意
識消失,心停止,呼吸困難を重篤副作用と分類した.調査は
電子カルテを参照して副作用の有無を調べて集計し副作用発
生率を算出した.
【結果】
それぞれの副作用発生率は CT 0.79%
(軽度 0.79%,
重篤 0%)
,心臓系血管造影 1.26%
(軽度 1.21%,重篤 0.05%)
,
(軽度 1.0%,重篤 0%)
で,総計の副
心臓以外血管造影 1.0%
作用発生率は 0.86%であった.
【結論】
ジェネリック X 線造影剤の総副作用発生率は 0.86%
(軽度 0.85%,重篤 0.007%)
で,先発品の総副作用発生率
3%前後より低かった.今後も調査を継続しより確たるデータ
になるようにしたいと考えている.
253 血管撮影室用ラージディスプレイの有用性に関する
検討
太田慎史,臼杵光高,河合信幸,小島慎也,
田中 功,木村 潔,上野惠子
東京女子医科大学東医療センター 放射線科
【背景・目的】
血管撮影室では検査・治療を行う上で,透視撮
影用画像以外に IVUS,ポリグラフ,PACS 等,様々な情報
を同時に表示しなければならず,画像配置や設置場所が問題
となる.当院では血管撮影装置更新の際,これらの問題を考
慮し,複数の画像と情報を同時に分割表示することができ,
検査や状況に応じた様々なレイアウト表示が可能な 56 イン
チ,8M 高精細液晶ラージディスプレイモニタ
(LD モニタ)
を
選択した.今回,導入した LD モニタの有用性や問題点につ
いて検討を行った.
(Siemens
【使 用 装 置】
Artis zee BA,Artis zee Large Display
社製)
【方法】
血管撮影室を使用する各科医師,計 16 名
(循環器内科
医 8 名,心臓血管外科医 3 名,脳神経外科医 3 名,放射線
科医 2 名)
を対象とし,画質及びレイアウトの満足度,レイア
ウトを変更する際の操作性についてアンケートを行った.
【結果】
画質の項目は全員が
「とても満足している」
「満足してい
る」
と回答した.レイアウトの項目は
「必要な情報がすべて表
示されていない」
が4名
(25.0%)
,
「レイアウトが悪い」
,
「表
示サイズが小さい」
が各 1 名
(6.25%)
,問題点として挙げられ
た.レイアウトを変 更する際 の 操 作 性 については 13 名
(81.25%)
が簡単に操作できると回答した.
【結論】
運用上若干の改善点はあるが,検査・治療を行う上で
LD モニタの有用性が確認された.
254 手術室における多軸血管撮影装置の使用方法の検討
長濱航永,熊谷道朝,奥野政一,橋本将彦,
河合敦子,酒井幹緒,新谷光夫
富山大学附属病院 放射線部
【目的】
2010 年 4 月,当院手術部に多軸血管撮影装置
(Sieが導入され,運用を開始した.問題点,工
mens Artis zeego)
夫などを含め,この装置の使用方法を検討したので報告する.
【方法】
2010 年 4 月∼6 月において,手術室における透視検査
の件数と,この装置を使用した検査の件数の割合の比較を
行った.また,この装置を利用した手術内容を検討し,使用
する上での利点と問題点を検討した.
【結果】
この装置を利用した検査の割合は,全体の検査の
25%であった.また,この装置を使用した手術内容には,術
中に血管撮影を行うステントグラフト挿入術,脳動脈瘤ク
リッピング術などがあった.さらに,X 線透視撮影のみを行
う手術にも利用され,主として整形外科領域の手術などが行
われた.
【考察】
この装置は,C アームの角度や高さなどを自由に動か
せ,寝台に傾斜をつけることができるため,通常の血管撮影
装置より手術に使用しやすい.しかし,一般的な手術専用の
寝台に比べ不便な点も認められた.また,移動型外科用イ
メージに比べ,広い範囲の撮像や,鮮明な画像を得ることが
可能であった.さらに,コーンビーム CT の施行が可能なこ
とから,術中の診断や,この画像をナビゲーションとして利
用することで,より正確に手術を行うことができる.しかし,
装置が大きいため,麻酔器や他の装置,清潔野との干渉が問
題となる.これらの点をシミュレーションで解決し,より安全
な手術を行えるようにする必要がある.
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
第 2 会場
(萩)
14:30〜15:30
X 線検査 血管撮影(計測精度) 座長:岡 哲也
255 IVR-CT を用いた穿刺ガイド機能運用の基礎的検討
山田晃寛,木下順一,上原秀夫,河野俊司,
村上雅之,東村享治
京都大学医学部附属病院 放射線部
【目的】
CBCT
(Cone Beam CT)
による穿刺ガイド機能は IVR
において有効であるが,有効視野が狭く,コントラスト比
(CNR)
が低いためストリーク状アーチファクトの影響で低コ
ントラストの描出能に不安がある.本年 4 月より当院では新
たに Angio 装置 Artis Zee
(Siemens 社製)
と同室に IVR-CT と
し て SOMATOM SensationOpen を 導 入 し た.SOMATOM
SensationOpen は 24 列の MDCT で従来の IVR-CT と比較し
て短時間で高分解能な画像が得られる.そのため今回,IVRCT による穿刺ガイドの運用について基礎的検討をしたので
報告する.
【方法】
ファントムを用いて,IVR-CT モードへのワークフロー
について最適化を検討した.またターゲットのコントラスト比
を段階的に変化させた場合の穿刺ガイドの精度について
CBCT の結果と比較,検討した.
【結果】
IVR-CT を用いた場合は CBCT を用いた場合と比較し
て,穿刺ガイドについてワークフロー上安全,効率面で問題
点はなかった.得られた画像の CNR は高く,CBCT に対して
IVR-CT の方が低コントラストなターゲットでの精度は高かっ
た.
【考察】
IVR-CT による画像は CBCT による画像と比較して高
い CNR を持ち,低コントラストなターゲットにおいて穿刺ガ
イド機能が有効だと示された.加えて穿刺で挙上が不要な場
合では体位を変えることがなく安定しており,動きによるリス
クの低減が図られる.有効視野が広いため緊急での CT 使用
の際,IVR-CT の方が有利である.今後は CBCT と IVR-CT
の使い分けについての検討が必要とされる.
256 Dual phase CBCT の開発と基礎的物理特性の検
討
村重勝範1,今田由香理2,東 丈雄2,山口和也2
1)
(株)
フィリップスエレクトロニクスジャパン
2)
大阪大学医学部附属病院 医療技術部放射線部門
【背景】
肝細胞癌の TACE において Cone-beam CT
(CBCT)
撮影は,血管走行や支配血管の把握,塞栓域の確認等に有
用であり治療支援を目的に用いられている.現況では肝動脈
像造影下 CBCT 撮影を連続して 2 相撮影し,後期相でコロ
ナ濃染像を収集することで TACE の治療効果向上に大きく寄
与している.
【目的】
当社では連続 2 相撮影が可能な Dual Phase CBCT 撮
影機能を開発した.その基本特性に関する精度評価を行い,
MTF について報告する.
【方法】
Allura Xper FD20
(Philips)
の Dual phase CBCT 撮影機
能 の 1st phase
(RAO → LAO の 順 方 向 回 転 収 集)と 2nd
phase
(LAO → RAO の逆方向回転収集)
の MTF を測定した.
・ワイヤーファントムを寝台上に配置し 1st phase および 2nd
phase の CBCT 撮影を行った.
・測定点は X 線束の回転軸上
で Iso Center 上の Axial 面内に 6 箇所,Z 軸方向に Iso Center を中心に±4cm の Axial 面内に各々 3 箇所設定し,計 12
箇所で MTF を比較検討した.
【結 果 及び 考察】
MTF の測定を行った 12 点について 10%
MTF で 1.5∼2.0lp/mm のばらつきが見られた.同一測定評価
2010 年 9 月
1105
点のうち 1st,2nd phase の 7 点で MTF に差異がみられた.
最も差異の大きい点で 10% MTF で 1.8∼2.0lp/mm となり,
計 12 点の測定結果のばらつきの範囲内であった.1st,2nd
phase 間の収集で特異な MTF の違いは指摘出来なかった.
【結語】
1st phase および 2nd phase で収集した画像の画質は
同等であり,有意差は存在しなかった.画質評価から双方向
での回転撮影機能の精度が確認された.
257 血管撮影装置における穿刺ナビゲーション機能の精
度検証
佐々木文博,板谷春佑,林久仁彦,太田浩二,
由野博之,大溝 翼
(医)
渓仁会手稲渓仁会病院 診療技術部
【目的】
近年,血管造影撮影装置において FPD
(Flat Panel Detector)
を搭載した機器が国内に普及してきている.当院で使
用しているフィリップス社製血管撮影装置 Allura Xper FD20 は,回転撮影によって取得されたデータを再構成し CT
に近い軟部組織の 3D 画像が取得できる機能
「XperCT」
を搭
載している.さらに,取得した 3D 画像から穿刺シミュレー
ションを行い,穿刺ナビゲーションを行う機能
「XperGuide」
も
備わっている.この XperGuide は従来の X 線テレビによる透
視下穿刺手技よりも格段に情報量が多く安全に手技を施行す
ることが出来る大変便利で有用な機能であると思われる.し
かし,現在,その穿刺シミュレーションの精度
(再現性)
を検
証した報告はまだ少ないように思われる.今回は自作ファン
トムを用いて穿刺シミュレーションの精度を求め
「XperGuide」
の有用性について検討する.
【方法】
自作ファントムを寝台テーブル上に設置し,XperCT に
て当院のプロトコルで撮影する.自作ファントム内のランド
マークを Target と想定し XperGuide による穿刺シミュレー
ションを行い,自作ファントムに穿刺する.シミュレーション
の 深さまで 穿 刺 針 が 到 達した 後,当 院 のプ ロトコル で
XperCT を撮影する.穿刺針の先端から Taeget までの距離
を計測する.穿刺角度・ランドマーク位置等を変更して同様
に計測する.
【結果・考察】
XperGuide の精度は 5mm 以内であり臨床に十
分適応できる有用な機能であることが示唆された.
258 心血管造影装置でのバルーン拡張を目的とした計測
精度の検討
中川貞裕,増田憲昭
旭川医科大学病院 診療技術部放射線技術部門
【目的】
心血管造影などでバルーン拡張する場合,血管造影装
置での計測値を参考にしてバルーンサイズを決定することが
多く正確な値が求められる.しかし計測対象がアイソセン
ターから離れた場合などは計測が不正確になってしまう.そ
こで計測方法を変化させて計測精度の検討を行った.
【方法】
1.模擬血管ファントムとして球径が 1,3,5,7,9,
12mm φのベアリング用ステンレス球をノギスで計測し実験
基準とした.2.1∼12mm φのステンレス球をアイソセン
ターから離れた位置でバイプレーン撮影した.3.キャリブ
レーション用撮影として,a.5cm の鉄球をアイソセンターで
撮影,b.3cm の鉄球を計測用ステンレス球と幾何学的同位
置で撮影した.4.計測方法
(1)
アイソセンターキャリブレー
ション法,方法
(2)
5cm 鉄球によるアイソセンター位置での
キャリブレーション法,方法
(3)
3cm 鉄球による計測用ステン
レス球と幾何学的同位置でのキャリブレーション法,の 3 法
にて計測した.5.ノギスの計測値と 3 法の計測値を比較し
10月15日
1106
日本放射線技術学会雑誌
た.
【結果】
計測方法
(1)
,
(2)
では,ノギスでの計測値との誤差は
最大 0.7mm であった.計測方法
(3)
では最大 0.19mm の誤差
で抑えられた.3 法を比較したところ,方法
(3)
にて優位に誤
差が小さい結果となった.
【考察】
今回の検討にて,3cm 鉄球を用いた幾何学的同位置で
のキャリブレーション法がもっとも正確な計測であった.
259 内頸動脈狭窄症における 3DRA による面積比と狭
窄率,最大収縮期血流速度との比較検討
一ノ瀬良二,湯田逸雄,重松宏樹,宮崎 綾,
古門典子,佐保辰典
社会保険小倉記念病院 放射線技師部
【目的】
内頸動脈狭窄症
(ICS)
の計測法は,NASCET 法が gold
standard であるとされているが,狭窄率の診断として非侵蹴
的でありかつ簡便な診断法としては,ドップラー法による流
速診断が最も高いと言われている.しかし PSV
(peak systolic
velocity:最大収縮期血流速度)
と NASCET 法による狭窄率
は必ずしも一致しないことが確認されている.そこで,3DRA
で得られたクロスセクションによる面積比
(正常と狭窄部)
と
PSV 及び NASCET 法を比較検討し,より診断に役立つ狭窄
率と PSV との関係を確立する.
【方法】
まず既知のファントムを用い 3DRA を撮影,面積値の
精度を検証した.次に臨床で撮影した 3DRA より,NASCET
法で得られた狭窄率と同部位で得られた面積比を比較した.
その際最適であろうと思われる角度で計測した狭窄率も,合
わせて比較検討した.得られた結果と PSV と比較し,検討し
た.
【結果】
ファントムでの面積測定では,信頼にたる計測結果が
得られた.狭窄率
(3 パターン)
と PSV では,正の相関が見ら
れた.面積比と PSV でも正の相関が見られ,狭窄率と比較
して有意であった.また総頸動脈と内頸動脈との関係が,
PSV に影響を与えていることが考えられた.
【考察】
頸動脈エコーでは,手技的に NASCET 法や面積測定
は困難である.今後は総頸動脈との関係を考慮することによ
り,より PSV による信頼度の高い狭窄率が得られるはずであ
る.
260 頸動脈ステント留置術前の CT 評価
鈴木順一,高橋弘也,鵜野英樹,鈴木貴之,
都築亮哉,平井佑典,阪野寛之,宇井雄一
岡崎市民病院 医療技術局放射線室
(CAS)
における病変
【目的】
当院では,頸動脈ステント留置術
部の血管径を術前に施行した造影 CT 検査の 3D 画像や術中
での血管撮影装置,血管内超音波装置
(IVUS)
によって計測を
施行してきた.しかし,それらの方法は術の時間延長や計測
誤差といった問題を生じていた.そこで術前に Advantage
Workstation
(AW)
を用いて血管解析を行い,CAS における有
効な画像表示を試みたので報告する.
【方法】
自作ファントムによる撮影,計測を行った.計測方法
は以下の通りである.1.CT
(VR 画像)
,血管撮影装置,IVUS
による血管径の手動計測 2.CT
(血管直交断面画像)
による
AW を用いた血管径の自動計測.2 においては計測結果の画
像表示方法も検討を行った.
【結果】
方法 1 では,いずれの方法も計測者による計測誤差を
生じた.方法 2 では,撮影条件によらず計測誤差を生じな
かった.また計測結果は,VR 画像,血管断面積グラフ,血
管直交断面画像と計測値
(短径,長径)
,横断面画像の 4 分
割表示とした.
【結論】
AW による計測は,CAS の検査において血管径を術前
に把握できる有用な方法であると考える.今後は,石灰化病
変や術前 CT がない症例においても検討を行う必要があると
言える.
第 2 会場
(萩)
15:50〜16:55
核医学検査 SPECT 再構成技術 座長:鈴木康裕
261 頭部 SPECT における異なる画像再構成法に対する
最適パラメータの基礎的検討
永倉健司,伊藤太之,柴田公望
東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線部
【目的】
当院に新規導入した画像処理装置では SPECT 画像再
構成法として,従来の FBP 法以外に新たに OSEM 法,分解
能補正組み込み OSEM 法が使用可能となった.今回,各画
像再構成法での最適再構成パラメータについて基礎的検討を
行った.
【方法】
SPECT 装置 SKYLight
(Philips)
を使用し,臨床収集条
件
(Projection:90,Acq Time:40sec/step)
にて頭部ファント
ムを撮像する.次に Acq Time を 400sec/step で撮像しこの
データを Reference とする.FBP 法では Butterworth filter を
order:8 とし cutoff を 0.1∼0.5cycles/pixel と変化させた対象
画像と Reference 画像での NMSE 値を算出する.OSEM 法
では Reference を Subset:1,Iteration:55 での再構成画像
を Reference 画像とする.次に対象画像を Subset:1,Iteration:55 で cutoff を 0.1∼0.5cycles/pixel と 変 化 さ せ NMSE
を 算 出し,最 適 cutoff 値 を 求 める.最 適 cutoff 値 を 用 い
OSEM 法での Iteration と Subset を変化させた再構成画像で
最適な組み合わせを求めた.分解能補正組み込み OSEM 法
でも OSEM 法と同様手順にて最適パラメータを求めた.
【結果・結論】
画像再構成に使用される最適 cutoff 値は,各画
像再構成法により異なる結果となった.今まで FBP 法と
OSEM 法での再構成画像の比較を行う報告がされているが,
OSEM 法の cutoff 値を FBP 法で用いている値を使用し比較
検討を行っていることが多い.しかし,今回の結果より FBP
法と OSEM 法を比較する際は,それぞれの画像再構成法に
最適な cutoff 値を用いて比較検討する必要があることが示唆
された.
262 SPECT 画像の減弱補正に用いる線減弱係数の客観
的算出法
藤田尚利1,阿部真治1,中野 智1,櫻木庸博1,
青山裕一1,米田和夫1,加藤克彦2
1)
名古屋大学医学部附属病院 医療技術部放射線部門
2)
名古屋大学 医学部保健学科
【目的】
SPECT 画像における減弱補正法として多く用いられる
Chang 法は,被写体内部の線源弱係数
(μ値)
を一様と仮定し
て減弱補正を行う.従って,収集条件に応じて最適値を設定
しないと正確な補正が行われないため,定量性の高い画像を
得るには最適なμ値を求める必要がある.μ値の決定方法に
は視覚的評価や変動係数を用いる場合が多いが,これらは雑
音成分の影響を受けるため,結果の客観性の低さが否定でき
ない.そこで本研究では,Chang 法で用いるμ値の客観的算
出法を提案する.
【方法】
123I-IMP 溶液を封入した円筒ファントムの SPECT 画
像を取得し,種々のμ値にて減弱補正を行う.得られた画像
に対し,以下に示す 2 種類の評価法を適用した.1)
ファント
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
ム中心を通る 360 度方向に放射状にプロファイルを作成,こ
れらのプロファイルを平均化,二次関数近似し,各μ値と近
似曲線における二次の項の関係を求め,二次の項が 0 になる
点を最適μ値とする方法,2)
画像からエッジ部分を抽出し,
減弱補正が適正であるとする理想の二次元プロファイルを作
成,各μ値においてこの理想プロファイルと実測プロファイ
ルの差を求め,この値が 0 になる点を最適μ値とする方法で
ある.
【結果・結論】
提案手法によって,Chang 法に用いるμ値を客
観的に算出することが可能となった.本法を用い,各施設の
収集条件に応じた最適μ値を決定することで,より定量性の
高い画像を得ることができるといえる.
263 3D-OSEM に組み込まれた散乱補正および CT 減弱
補正についての基礎的検討
三浦一隆,安彦 茂
仙台赤十字病院 医療技術部放射線技術課
【目的】
SPECT 検査における物理的定量性の精度を求めるに
は減弱補正および散乱線補正が必要不可欠である.当院の
SPECT 検査においてもルーチンにて CT 減弱補正および散
乱補正を用いて画像再構成をしている.しかし CT 減弱およ
び散乱補正は Auto で使用しているが,どのように作用してい
るかは確認できていない.そこで CT 減弱補正および散乱補
正のパラメータを変えたとき,補正効果にどのように影響す
るのか調べるため,ファントム実験を行ったので報告する.
【方法】
ファントムには 99mTC 水溶液を封入した円柱ファント
ムを使用した.散乱補正の補正モードを変えたとき,補正荷
重係数を変えたとき,収集ウインドウを変化させて,補正効
果をカウントの変化およびプロファイルカーブで求めた.CT
減弱補正については補正モードを変えたとき,補正係数を変
えたときの補正効果をμ-map を求めて確認した.
【結果】
散乱補正において荷重係数は収集ウインドウのメイン
とサブの比を変えたとき,DEW 理論計算式と同様の値となっ
た.過重係数の変化により中心部カウントの変化がみられ
た.CT 減弱補正については散乱補正のメイン,サブウインド
ウを変えると補正係数が変化した.ビームモデルおよび補正
係数を変えるとそれに伴いμ-map が変化した.
【結語】
CT 減弱補正は理論上再現性,精度に優れた補正法で
あるが,散乱を考慮した減弱補正を行わないと過補正,補正
不足になる.まだ検討の余地が多いが,今回の実験にて散乱
補正を考慮しμ-map を作成していることがわかった.
264 減弱補正法の違いによる局所脳血流カウント変化に
ついての検討
三浦一隆,鈴木 陽,横山高広,高橋和義,
安彦 茂
仙台赤十字病院 医療技術部放射線技術課
【目的】
脳血流シンチには FBP 再構成法に減弱補正の Chang
法を用いた画像が一般的であるが,SPECT/CT は CT を用い
た減弱補正法
(CT Attenuation Correction;CTAC)
を使用す
ることが可能である.しかし CTAC を用いると,臨床上脳底
部カウントが高いために画像表示に大きな違いがでる.先が
けて行ったファントム実験においては CTAC に過補正は見ら
れなかったが,ここで実際に臨床における局所脳血流力ウン
トがどの様に変化しているのか,また mCBF に変化があるか
を検討し報告する.
【方法】
当院で行われた 1231-IMP 脳血流シンチの最近 15 症
例を対象に,FBP 画像再構成に Chang 法,および CTAC と
2010 年 9 月
1107
散 乱 線 補 正(Scatter Correction;SC)を 組 み 込 ん だ 3DOSEM 画 像 再 構 成を行い,自動 ROI 設 定ソフト NEUROFLEXER を使用して各スライスでの Territory カウント値を求
め比較した.Graph -Plot 法を用いて結果として作成した mCBF
を比較した.
【結果】
CTAC と SC を組み込んだ 3D-OSEM 画像再構成は
FBP 画像再構成に Chang 法に比べ,各局所脳血流カウント
は 42∼65%高く,脳底部領域は他の領域より変化率が高
かった.変化率が 90%をこえる症例もあった.mCBF は同
等∼やや高値であった.
【結語】
CTAC は精度,再現性が良く,散乱補正も含め定量性
に優れているが,実際には各施設,NDB の現状により減弱補
正法は選択されている.今回の結果から脳血流シンチにおい
て減弱補正法の違いよる各領域でのカウントの変化を確認す
ることができた.
265 心筋動態ファントムによる 3D-OSEM 分解能補正
の検討
本田勝敏1,佐竹一博1,鈴木宏昭1,栗原英之2
1)
竹田綜合病院 放射線科
2)GEヘルスケア・ジャパン
(株)
【目的】
分解能補正
(Evolution)
による画像を用いて QGS 処理
を行う際の最適な画像再構成条件を心筋動態ファントムから
求める.
【方法】
GE 社製 Infinia にて Tc は 60 Projections,Tl は 30
Projections の 64X64 Matrix データを収集した.Evolution を
用いて,Iteration を順次増加させ,ED の短軸断層像の中間
のスライスから Noise と Contrast を求めた.また,QGS を
用いて EDV,ESV を求めた.
【結果】
Tc において Iteration の増加に伴い Noise と Contrast
が上昇し,Iteration が 12 にて Noise がプラトーになり,EDV
と ESV も増加し,Iteration が 12 以上にて一定値になる傾向
が認められた.また,Tl においても Iteration の増加に伴い
Noise と Contrast が 上 昇し,Iteration が 16 にて Noise が プ
ラトーになり,EDV と ESV も増加し,Iteration が 16 以上に
て一定値になるのが確認された.
【結語】
Evolution による画像を用いて QGS 処理を行う場合,
Tc においては Subset 10,Iteration 12,Tl においては Subset
6,Iteration 16 が最適な条件であると思われる.
266 「核医学画像における空間分解能補正に関する研究
班」
中間報告
夏目貴弘,大西英雄,藤埜浩一,原本泰博,
本村信篤
核医学画像における空間分解能補正に関する研究班
【目的】
各装置メーカによって提供されている線源−検出器間
距離における分解能劣化補正プログラムについて,基本的精
度について評価を行う.
【方法】
微小球体および円錐を模した自作ディジタルファント
ムを用いて Prominence Processor version 3.0 によりシミュ
レーション投影データの作成を行った.シミュレーションには
分解能劣化のみを考慮し,散乱・減弱は考慮せずに行った.
得られた投影データを各社のワークステーションへ転送し,3
次元分解能補正を組み込んだ OSEM 法により再構成を行っ
た.Subset は 10 にて固定し,iteration 回数を変化させた場
合における微小球体部分の半値幅計測および円錐部分の評
価や profile 測定を行い,評価した.
【結果・考察】
半値幅を用いた分解能補正効果の検討では
10月15日
1108
日本放射線技術学会雑誌
subset と iteration の積が 80 から 100 程度で分解能補正なし
の再構成よりも半値幅が低値となった.分解能補正を組み込
んだ OSEM では補正無し再構成と比較し,収束に多くの iteration を必要とした.また円錐部分にて対象サイズと iteration の関係を検討したが,円錐の先端部分では収束に他の部
分より多くの iteration が必要であった.各社において,球体
周辺や円錐頂点部分でのアーチファクトのパターンや程度が
異なっていた.これらの結果より,分解能補正組み込み
OSEM では通常の再構成よりも多くの iteration を必要とし,
特徴的なアーチファクトを生じるため,導入する際には詳細
な検討が必要であると考えられた.
9:20〜10:20
CT 検査 小児撮影技術
第 3 会場
(橘)
座長:吉川秀司
267 小児心臓 CT における被ばく線量低減を目的とした
低電圧撮影の有用性について
舛田隆則1,今田直幸1,稲田 智1,松本頼明1,
丸山尚也1,麻生弘哉1,工藤正幸2
1)
(医)
あかね会土谷総合病院
2)GE Healthcare
【目的】
64 列 MDCT による小児心臓検査において,放射線感
受性の高い小児領域では,成人と同一条件で撮影を行った場
合,臓器あたりの被ばく線量は約 2 倍から 5 倍になることが
知られている.しかし,装置が表示する DLP 値は小児に最適
化されておらず,把握が困難である.そこで,低電圧撮影に
よる被ばく低減効果を検証し,撮影条件の最適化を検討し
た.
【使用機器】
LightSpeed VCT,ADW4.4,
円柱状ファントム
10cm,18cm,CT-Expo
【方 法】内 部 に 300H.U. と 100H.U. の 円 柱 を 水 で 封 入した
10cm,18cm の自作ファントムを用いて,管電圧
(80,100,
120,140kV)
と管電流 30mA∼700mA
(30mA step)
を変化さ
せ撮影を行った.得られた Axial 画像より CT 値,SD 値から
CNR を算出し,円柱状ファントムでの管電圧,管電流,CNR
の関係を求めた.臨床での CNR を算出し円柱状ファントムと
対比させ,得られた管電流から CT-Expo を用い実効線量を
算出し管電圧との関係を検討した.
【結果】
臨床での CNR は 13 であった.円柱状ファントムの
CNR 13 での管電流値は,管電圧 80kV で 60mA,100kV で
45mA,120kV で 35mA,140kV で 30mA と管電圧が高くな
るに従い管電流は低値を示した.この条件で CT-Expo より
得 られ た 実 効 線 量 は,管 電 圧 140kV で 1mSv,120kV で
0.8mSv,100kV で 0.6mSv,80kV で 0.5mSv と管電 圧が 低
くなるほど実効線量は低値を示した.
【結語】
小児心臓 CT における低電圧撮影は被ばく線量の低減
に有用であると考えられる.
268 造影剤の Dual concentration 注入法による小児心
臓 CT 検査の検討
川崎直正,瀧口雅晴,井上友紀,吉川エミ,
西坂秀彦,近藤正美
九州厚生年金病院 画像診断センター
【背景及び目的】
当院では先天性心疾患の手術前後に心臓 CT
検査を行うことが多くなってきた.特に新生児期の心臓 CT
検査は血流の速さと使用できる造影剤量が少ない事から,注
入方法と撮影タイミングが成人の場合と大きく異なり,その
精度が要求される.症例によっては複雑心奇形や手術後の形
態を把握するために多時相撮影を行い,重ね合わせた 3D 画
像を作成してきた.今回,被ばく低減と検査精度の向上を目
指し,一回の撮影で複雑な血管を描出させるために,後押し
用の生理食塩水に少量の造影剤を混入させた Dual concentration
(二重濃度)
注入法について検討を行った.
【使 用 機 器 及 び 方 法】
64 列 Aquilion
(東 芝 社 製)
,デュア ル
ショット
(根本杏林堂社製)
,オムニパーク 300
(第一三共製
薬)
,VirtualPlace
(AZE 社製)
を使用した.造影剤を生理食塩
水で段階的に希釈させ CT 値と希釈倍数の換算式を導き出
す.症例別に従来法
(後押しに生理食塩水)
と Dual concentration 注入法で比較検討を行う.
【結果及び考察】
CT 値と希釈倍数の関係を把握することに
よって造影剤を増量することなく注入時間を延長させること
が可能となり,目的部位の CT 値を確保できるようになっ
た.特に左右の上大静脈の造影を必要とする BCPS 術後は
多相撮影を必須としてきたが,今回の方法を用いる事で一回
の撮影で必要なデータを収集する事が可能となり,被ばく低
減と検査精度,維持向上に寄与することができた.
269 小児造影 CT 検査における至適撮影条件の検討
間渕景子,後藤菜月,小林秀行,土屋甲司
聖隷浜松病院 放射線部
【背景・目的】
当院では先天性心疾患を持つ患児の術前後,血
管評価のための造影 CT 検査が行われ,3D 画像提供が求め
られている. 3D 画像を作成するために高線量での撮影にな
りがちであるが,小児は放射線感受性が高く,被ばく低減を
心がけなくてはならない.今回 CT 装置のバージョンアップ
に伴い,逐次近似法を利用した画像再構成法 ASiR
(Adaptive
Statistical iterative Reconstruction)
の使用が可能となり,被
ばく低減が見込まれる.そこで小児における大血管描出の至
適撮影条件の検討を行ったので報告する.
【方法】
管電圧・管電流を変化させ Catphan を撮影し,以下の
検討を行った.1.撮影管電圧決定のため,各管電流下での
SD と CNR・CTDIvol との関係を求めた.2.再構成関数・
ASiR の画質への影響を調べるため,関数・ASiR の割合を変
化させ MTF・SD・CNR を算出した.また,模擬血管ファン
トムを各条件にて撮影・再構成し,3D 画像の視覚評価を行っ
た.
【結果・考察】
SD が同等な画像を比較すると,低管電圧であ
るほど CNR は高くなり,CTDIvol の増加もほぼ見られないこ
とから,80kV 撮影の有用性が示された. 再構成関数は,画
像の鮮鋭度・被ばく低減の両観点から,標準関数の使用が望
ましいといえる.SD の高い画像から 3D 画像を作成すると辺
縁が不明瞭となり,血管狭窄や奇形の評価に支障をきたすお
それがあることが確認され,3D 画像を作成する元画像は
SD30 以上を確保することが必要だと考える.また,ASiR の
使用により従来と比較して 50%程度の線量での撮影が可能
であることが示唆された.
270 CT-AEC を用いた小児頭部 CT 検査に対する水晶
体被曝低減の試み
阿部修司,水野直人,谷 正司,島田 真,
田邊智晴,村上育生
大阪府立母子保健総合医療センター 放射線科
【目的】
頭部 CT において水晶体の被曝低減は重要である.当
院では頭部 CT にヘリカルスキャンを用いており,被曝低減
方法として遮蔽物を置く方法がある.しかし,遮蔽物のアー
チファクトが診断に影響を及ぼす可能性がある.そこで,CT-
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
AEC の基準となる位置決めスキャン時に吸収物質を用いて線
量を変化させ,水晶体被曝を低減させる方法について検討を
行ったので報告する.
【方法】
AEC 線量の設定方法は,眼窩上縁から頭頂まで吸収
物質を設置して,位置決めスキャンを撮影する.AEC 基準位
置を吸収物内とし,その部分の線量を日常と同様の線量に設
定する.これにより,日常の吸収物質を用いない場合と比
べ,水晶体以外は同等の,水晶体は低減した線量による撮影
が可能となる.基礎的検討として,円柱アクリルファントム
を使用し,吸収物質にアクリルとアルミを用いて,吸収物質
の厚みと AEC 線量の関係について検討した.また,吸収物
質の有無に対する被曝線量の変化について求めた.臨床評価
は,術後経過観察などが目的の患者を対象に,今回の方法で
水晶体被曝低減を行い,過去の撮影データとの比較による画
質と被曝線量の変化について検討した.
【結果】
位置決めスキャンに吸収物質を用いることで,AEC 線
量の調整が可能であった.吸収物質の比較では,アルミが優
れていた.臨床においても,水晶体に対する線量の低減が可
能となった.線量低減と画質の関係については,症例を重ね
て検討する.
271 乳幼児体幹部 CT 撮影における寝台天板が画像に及
ぼす影響とその改善策について
佐々木忠司1,村中健太1,武田雅之1,千葉工弥1,
上山悠太1,神原芳行1,小野政敏2
1)
岩手医科大学附属病院 循環器医療センター放射線部
2)
岩手医科大学附属病院 中央放射線部
【背景・目的】
乳幼児体幹部 CT 撮影では成人の体幹部撮影に
比べ被写体厚が小さい.当院では被ばく低減を目的に低い管
電圧で撮影するため,寝台天板の影響は相対的に大きいと考
えられる.そこで,本研究は寝台天板が乳幼児体幹部撮影に
どのように影響するか検証し,さらに改善策について考案し
たので報告する.
【方法】
1.乳幼児の被写体厚に相当する円筒形の自作ファント
ムを作成し,ガラス線量計を用いその表面線量を測定した.
さらにそのファントムを用いてノイズを測定した.結果を天板
の影響を受けない天板のない状態と天板直上に配置した場合
で比較した.2.1 により理想的な配置を検討し,自作ファン
トムを用いて CNR を測定した.
【結果】
1.表面線量を測定した結果,ファントムを天板がない
状態に配置した場合と,天板上に配置した場合を比較する
と,天板が吸収体となるため天板に接する部分の表面線量の
減少が認められ,ノイズの増加が認められた.2.天板とファ
ントム間に空気等価物質を用いることで,均一な画像を得る
ことができ,CNR も向上した.
【考察】
乳幼児を撮影する際に,天板直上に配置すると天板の
吸収により画像の均一性が損なわれる.天板と被写体間距離
を離すことにより,天板を通過しない X 線データが増加する
ことで均一性が向上した.本法は乳幼児体幹部 CT 撮影に有
用と考えられる.
272 小児頭部 CT 検査における空間線量分布及び介助者
被ばくの装置間比較
鈴木康介1,越田吉郎2
1)
国立病院機構金沢医療センター 中央放射線部
2)
金沢大学 医薬保健研究域保健学系
【目的】
小児頭部 CT 検査は外来,救急を含め薬剤投与を行わ
ず覚醒状態で検査を行っている.そのため固定具を用いても
2010 年 9 月
1109
体動が激しく,介助者が小児頭部を固定した状態で検査を行
うことになり,介助者の手指,頭部及び甲状腺の被ばくが問
題となる.本研究では空間線量の測定により,散乱線による
介助者の被ばく線量の測定を行った.
【方法】
(1)
アンケート調査
(31 施設)
により小児頭部 CT の介
助方法,プロテクターの使用状況,撮影プロトコルに関する
集計を行った.
(2)
自作頭部ファントムを用い,4 列と 64 列
CT での空間線量分布の比較を行った.OSL 線量計を用い,
床から 30cm 間隔で 180cm までの点,ガントリー表面を 0cm
とし,30cm 間隔で線量測定を行った.測定データから空間
線量分布図を作成した.
【結果】
(1)
アンケート集計結果により 62%の施設では覚醒状
態で検査を行っている.80%の施設では検査時に介助者によ
る抑制を行っているが,体幹部のエプロン型プロテクター使
用率 85%に比べ,ネックガードの使用は 10%,防護メガネ
の使用は 0%であった.
(2)
4 列 CT では 4 列×5mm,64 列
CT では 16 列×0.625mm でデータ収集を行っており,4 列で
は寝台側の床から 60cm の点で 0.21mGy,64 列ではガント
リー側の床から 150cm の点で 0.39mGy と最も高い値を示し
た.
10:20〜11:20
CT 検査 支援画像
第 3 会場
(橘)
座長:羽手村昌宏
273 CT による甲状腺体積測定
高田光雄,荒木啓介,木村宗平,中宮音雪,
石黒 充,太郎田融,上田良成
浅ノ川総合病院 放射線部
【目的】
多くの病院
(当院含む)
でバセドウ病の 131I 内用療法に
おいて,投与量決定のために甲状腺エコーを用い,甲状腺体
積を求めている.しかし,この方法では測定にばらつきが大
きく,体積は過小評価されやすい.そこで単純 CT を用いて
甲状腺体積を求め,測定に必要なスライス厚を検討した.ま
た測定者間による誤差を調べた.
【方法】
バセドウ病の患者 1 名をビーム幅 10mm の単純 CT 撮
影で撮影し,ワークステーション AZE を用いてスライス厚
5mm
(インターバル 5mm)
と 2.5mm
(インターバル 2.5mm と
1.25mm)
を再構成し,スライス毎に甲状腺に ROI をとり,そ
れぞれ甲状腺体積を求めた.また技師による誤差を調べるた
め,上記の条件で 4 人の技師がそれぞれ体積を求めた.
【結果及び考察】
技師 1 名によるエコーで求められた体積 97ml
に対し,技師 4 名によって CT で求められた体積は 150ml∼
180ml であり,2 倍近い値となった.原因として峡部が腫大し
ていた症例であったためと考えられる.測定に用いるスライ
ス厚は,分解能が良い 2.5mm の画像で誤差が小さくなり,
ROI を囲む作業量の面から 2.5mm
(インターバル 2.5mm)
の
画像を用いることにした.
274 CT ボリュームデータを用いた肺気腫定量化の検討
赤井亮太,伊藤暢浩,福岡秀彦,桑山真紀,
玉木 繁,佐野幹夫
(医)
豊田会刈谷豊田総合病院 放射線技術科
【目的】
近年,慢性閉塞性肺疾患の診断に CT が広く用いら
れ,気腫性病変の低吸収域描出に Thin Slice の Axial 画像が
有用とされてきた.しかし,そのほとんどがある一部分の
Axial 画像で評価されており肺野全体での評価に至っていな
いのが現状である.今回,肺気腫の評価に全肺野 CT のボ
リュームデータを用いるソフトを使用する機会を得たため,
10月15日
1110
日本放射線技術学会雑誌
ボリューム解析で肺気腫の定量化が可能か検討をおこなっ
た.
【方法】
使用機器:Aquilion64
(東芝社製)
,肺気腫解析ソフト
ウェア
(ザイオソフト社製)
.2009 年 11 月から 2010 年 5 月ま
でに胸部単純 CT と肺機能検査を同時期に施行した患者 20
例を対象とし,全肺野 CT のボリュームデータから算出した
低吸収域
(Low Attenuation Volume: %LAV)
と肺機能検査の
1 秒率
(FEV1%)
について相関を求めた.また同時に,スライ
ス厚 1mm の Axial 画像を用いて特定の位置で測定した低吸
収域
(Low Attenuation Area:%LAA)
と FEV1%についても相
関を求めた.
【結果】
CT の低吸収域閾値を CT 値 -950 に設定した結果,
%LAV と FEV1%の相関係数は -0.57 で相関を認めた.また,
%LAA でもすべての項目で相関係数が -0.5 以上と相関を認
めたが,気腫性病変の好発部位については個々で片寄りがみ
られた.
【考察】
全肺野のボリュームデータを用いることによって肺気
腫の定量化は可能であった.ボリュームデータによる解析
は,Axial 画像上で行う評価と比較して相関に大きな差はみら
れなかったが,気腫性病変の発生部位に影響されないことが
示唆された.
275 3DCT
(RAY SUM)
画像を用いた人工股関節置換術
テンプレーティングの検討
伊泉哲雄1,四俵 敬1,竹綱 猛1,黒田貴顕2,
椋本成俊3
1)
大阪市立総合医療センター 中央放射線部
2)
大阪市立総合医療センター 整形外科
3)
神戸大学大学院
【目的】
人工股関節置換術
(以下 THA)
の術前計画には一般撮
影画像を用いたテンプレ−ティングが一般的であるが,拡大
や可動制限等の問題で正確な計測が不可能である.そこで
我々は RAY SUM 画像を用いた THA のテンプレ−ティング
に関して検討を行ったので報告する.
【背景】
我々の施設では THA を行う全症例に関して,腸骨上
縁から膝関節下縁まで CT の撮影を行っている.このデータ
を利用して,一般撮影で撮影していた骨盤正面・側面,両大
腿骨正面・側面,検側股関節正面・側面を RAY SUM 画像
で代用している.
1. RAY SUM 画像と一般撮影画像で THA を施工され
【方法】
た人工股関節のカップおよびステム長を計測し,実サイズと
比較する.2. 代用画像で撮影を省略した一般撮影の皮膚表面
線量を測定する.3. CT 撮影時の許容し得る下限の撮影線量
を検討する.
【結果】
1. カップ・ステム長のどちらも RAY SUM 画像ではほ
ぼ 100%の値を示したが,一般撮影画像では 106∼120%の
ばらついた拡大が生じていた.2. 代用画像の一般撮影での皮
膚表面線量は 16.1mGy であった.3. 撮影線量を 1/3 に設定
しても RAY SUM 画像では画質の劣化は見られなかった.
【結論】
THA の術前計画に RAY SUM 画像を用いることで実
寸大でのテンプレ−ティングが可能となり,これまでのノウ
ハウもそのまま活かすことが可能である.以上のことより
3DCT
(RAY SUM)
画像を用いた人工股関節置換術テンプレ−
ティングは非常に有用である.
276 TKA 手術における脛骨側コンポーネント設置位置
決定のための脛骨 CT 三次元評価
横山 剛1,加藤大輔1,平瀬繁男1,橋本茂男1,
赤田壮市2,徳植公一2,久保宏介3,宍戸孝明3
1)
東京医科大学病院 放射線部
2)
東京医科大学病院 放射線科
3)
東京医科大学病院 整形外科
【目的】
人工膝関節全置換術
(TKA)
における良好な機能再建に
は適正なコンポーネントの設置が求められ,脛骨コンポーネ
ント設置においても回旋位置の決定が重要な因子の一つであ
る.今回 3D-CT を用い脛骨近位・遠位関節面の形状の評価,
脛骨の捻じれ角の計測を行い脛骨の 3D 評価が TKA 手術の
脛骨側コンポーネント回旋位置の決定に有用であるかを検討
した.
【対象・方法】
CT にて TKA を行う変形性膝関節症例 50 例を
対象に脛骨全長を撮影し 3D,MPR を用い計測を行った.脛
骨近位関節面の前後軸
(AP-1)
と定義し,脛骨遠位関節面の前
後軸
(AP-2)
と定義した.脛骨近位・遠位関節面の形状の評価
のため AP-1 と脛骨粗面の位置と AP-2 と足関節内外果を結
ぶ線の垂直とのなす角度を評価した.また AP-1 と AP-2 を用
いて 2 つの線のなす角度を脛骨の捻じれ角として算出した.
AP-1 と脛骨粗面の位置と AP-2 と足関節内外果を結ぶ
【結果】
線の垂直となす角度は症例間で明らかな有意差は認めなかっ
た.脛骨の捻じれ角は -15∼23 度,平均 -0.66 度±8.58 で 5
度以上内旋位のものが 9 関節
(18%)
5 度以上外旋位のものが
16 関節
(32%)
であった.
【考察・結論】
脛骨の捻じれ角は症例によりばらつきが大きく,
脛骨コンポーネントの回旋位置決定に脛骨アライメントを指
標とする場合には術前に 3D-CT を用いた脛骨の捻じれ角を
計測し,解剖学的な特徴を把握しておくことが重要である.
277 術中 CT を用いたナビゲーションでの精度向上の検
討
山本崇史,古川研治,君島 誠,山本綱記
社会
(医)
孝仁会釧路孝仁会記念病院 診療放射線科
【目的】
当院では,脊椎固定術を術中 CT の画像でナビゲー
ションを行う.しかし,骨表面が不鮮明で Registration に苦
慮し,ナビゲーションの精度が低い症例を経験する.精度を
向上させる上で,骨表面を鮮明に描出する事は重要である.
そこで,骨表面をより鮮明に描出する為にナビゲーションシ
ステムに合わせた撮影条件で精度を向上できるか再構成関数
とスライス厚の検討をした.
【方法】
1. 均一な水ファントムをスライス厚 0.5mm と 1.0mm,
再構成関数を鮮鋭度の違う 5 種類の腹部条件と 2 種類の骨
条件で撮影しノイズを測定した.また,骨の再構成関数は 10
種類の量子フィルタを用い測定した.2. スライス厚 1.0mm の
臨床画像を,7 種類の再構成関数で 3D 表示し骨表面を視覚
評価した.3. 腹部の再構成関数と量子フィルタを用いた骨条
件で視覚的に比較した.
【結果】
ノイズは,スライス厚が 1.0mm で少なく,腹部の再構
成関数でシャープなほど多いが,顕著な差はない.骨の再構
成関数は量子フィルタを用いてもノイズが多く 3D 表示に向
かない.視覚評価は,腹部の再構成関数でシャープなほど骨
表面が鮮明だった.
【考察】
スライス厚は装置の特性上 1.0mm 以下で撮影しても
3D の構築は 1.0mm 程度になるため,ノイズの少ない 1.0mm
にし,比較的ノイズはあるが腹部のシャープな再構成関数を
用いる事で骨表面が鮮明に描出できるため,Registration が
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
容易になりナビゲーションの精度を向上できると考える.
278 CT fluoroscopy における穿刺端の CT 透視画像上
での誤差
板谷春佑,佐々木文博,神山哲也,秋吉和也,
渡邊一雄,長崎卓弥,安達 元,大溝 翼
(医)
渓仁会手稲渓仁会病院
【緒言】
近年 CT の飛躍的発展により,当院でも CT 透視下
RFA や骨セメント術が行われるようなった.しかし実際の CT
透視画像を見てみると穿刺先端は,特に骨セメントでは正確
な位置が把握しにくく,穿刺のたびに helical CT を撮影し確
認しているのが現状である.
【目的】
CT 透視下で,実際の穿刺深と CT 透視画像上の穿刺
深との誤差がどの程度かを把握することで,手技の正確性や
効率性の向上による時間短縮,さらに確認の為の helical CT
の回数減により患者の被曝低減をできないかを検討する.
【方法】
CT Aquilion16
(TOSHIBA)
を用いて,数種類の穿刺針
を自作ファントム表面から 50mm の深さで穿刺しファントム
を撮影した.得られた画像でファントム表面から穿刺先端の
距離を計測し,誤差
(実測値 -50mm)
を計測した.また X 軸
方向で放射状に角度をつけて穿刺し,同様に撮影し誤差を測
定し解析した.
【結果,考察】
誤差は X 軸で最大 2mm,Y 軸で最大 5mm で
あった.CT 透視下で穿刺先端はビームハードニングやバー
シャルボリューム効果の影響で読み取り誤差が生じた.しか
し誤差は±5mm 以内であったので誤差を把握していれば十分
に優位な手技であり,より正確な穿刺が行える.当院におけ
る CT fluoroscopy の穿刺の誤差及び傾向を把握する事がで
き,今後手技時間の短縮,確認 helical CT が減少し,患者被
曝が少なくなることが示唆された.
11:20〜12:20
CT 検査 画質評価
第 3 会場
(橘)
座長:村上克彦
279 CT におけるやすり型アーチファクト低減の検討
小澤昌則,渡部隆治,植木茂樹,洞田貫啓一
メディカルスキャニング
【目的】
近年の CT では肩,骨盤部等に生じるやすり型アーチ
ファクトを低減するためのアプリケーションが装填されている
機種がある.しかし,一部の CT ではその機能が明示されて
いないため十分に活用されていなかった.今回,我々はやす
り型アーチファクト低減を目的に,補正のかかる条件やその
活用法を検討したので報告する.
【方法】
CT 装置 SOMATOM Emotion16
(SIEMENS)
,CT 評価
用ファントム MHT 型
(京都科学)
,骨ファントム 1.アーチ
ファクト補正発生条件を検索するため,全部位のシーケンス
を撮影した.2.方向依存性を確認するため骨ファントムの位
置を変え撮影した.3.低コントラストファントムを用い,補
正の有無で評価を行った.
【結果】
1.アーチファクト補正が発生するのは,neck,shoulder,pelv,spine のシーケンスのみであった.再構成関数に
は依存しなかった.2.方向依存性はなく補正された.3.補
正のない場合はファントムが歪み,小さいターゲットは視認
できなっかたが補正が入ることにより改善された.
【考察】
一部のシーケンスのみ補正がかかったのは装置特有の
もので部位別に設定されていた.方向依存性がないことから
横方向だけに作用するものではなく,アーチファクトに対して
補正される.アーチファクトが低減されたため画像は改善さ
2010 年 9 月
1111
れた.
【結論】
やすり型アーチファクト補正の発生条件また,その性
能を把握することができた.常に決まったプロトコールでな
く,場合によっては他部位のプロトコールを使用することに
よりアーチファクトの少ない画像を再構成できると考えた.
280 ハイブリッド CT 画像のアーチファクト改善
高木聡志1,長瀬博之2,齊藤雅之3,別所貴仁4,
林 達也5,作田啓太6,小池正行1
1)
防衛医科大学校病院 放射線部
2)
前橋赤十字病院 放射線部
3)
福井県立病院 放射線室
4)
恵寿総合病院 放射線課
5)
虎の門病院 放射線部
6)
金沢大学附属病院 放射線部
【目的】
閾値処理のみで作成したハイブリッド CT 画像は,軟
部ウィンドウ条件において,CT 値の大きく異なる組織の境界
でアーチファクトが顕著である.そこで本研究の目的は,CT
画像のハイブリッド化のアルゴリズムを改良することにより,
アーチファクトを改善することである.
【方法】
ハイブリッド CT 画像は軟部条件画像を基準とし,閾
値処理により骨条件画像や肺野条件画像の CT 値を代入して
作成する.代入した CT 値にアンダーシュート・オーバー
シュートが発生していると,ハイブリッド CT 画像上でアーチ
ファクトとなる.そこで代入する CT 値に対して,アンダー
シュート・オーバーシュートの発生の有無を確認し,発生し
ていなければ軟部条件画像に代入し,発生していれば代入せ
ずに軟部条件画像の CT 値のままとする処理を追加した.
【結果】
頭部ハイブリッド CT 画像・胸部ハイブリッド CT 画
像ともに,対象としたすべての画像において,軟部ウィンド
ウ条件において顕著であったアーチファクトが改善した.
【考察】
ハイブリッド CT 画像のアーチファクトを改善したこと
により,臨床で利用できる可能性が高くなったと考える.
よって今後は,アルゴリズムのさらなる改良や視覚的評価を
行い,実用性を検討する必要があると考える.
281 Dual-source CT における high-pitch spiral scan
mode のスライスプロファイル評価
丹羽伸次,原 孝則,加藤秀記
中津川市民病院 医療技術部
【目的】
Dual-source CT は,約 95 度オフセットされた 2 対の
X 線管と検出器を用いることによって,最大 3.4 の pitch factor
(PF)
を選択して high-pitch spiral scan
(Flash spiral)
を行う
ことが可能である.本研究の目的は,この Flash spiral のスラ
イスプロファイルに関して評価を行うことである.
【方 法】
CT 装 置 は,SIEMENS 社 製 の SOMATOM Definition
Flash を用いた.スライスプロファイル評価には,直径 1.0
mmφ,厚さ 0.05 mm のマイクロディスクを使用し,ガントリ
中心部に配置した.スキャン条件は,管電圧 120 kVp,実効
管電流積 100 Eff.mAs,rotation time 0.28 sec,scan configuration 128×0.6 mm とし,PF を 1.55∼3.2 と変化させ各 PF
におけるスライスプロファイルを評価した.
【結果及び考察】
Flash spiral のスライスプロファイルは,PF
2.0 付近から PF の増加に伴い,プロファイルの裾野の部分に
CT 値の上昇がみられ,特異的なデータとなった.従って,プ
ロファイルの裾野部分に対して zeroing 処理を行う際には慎
重な検討が必要であると考える.
10月15日
1112
日本放射線技術学会雑誌
282 MSCT の体軸方向分解能の評価法の検討
亀田拓人1,山口 仰1,島 洋介1,潟端純也1,
山下明美2,山下道明1,笹木 工1
1)
北海道大学病院 放射線部
2)
大道内科呼吸器科クリニック
【目的】
CT における体軸方向分解能の評価には slice sensitivity
profile on Z-axis
(SSPz)
を取 得して,full width at half maximum
(FWHM)
を実効スライス厚とするのが一般的な方法であ
る.さらに SSPz から MTF を求めて評価することもある.こ
のとき,体軸方向の MTF では,XY 平面内
(以下面内)
の場合
と異なり,インパルスに対する応答ではなく,矩形の入力に
対する応答を扱うことになる.このため,面内の MTF と同様
の解釈を行うことができない.本研究では,矩形入力の解析
にエッジ法を利用することによって体軸方向の MTF の評価を
行う手法について紹介する.
【解析手法】
本手法では,矩形の入力信号が CT システムを通
過することによって生成されたのが SSPz であると考え,
SSPz に対してエッジ法と同様の処理を行うことによって,
MTF を求める.
【データ収集条件】
Aqulion64
(東芝メディカルシステムズ社
製)
,LightSpeed VCT
(GE medical)
を使用した.自作のマイ
クロコインファントムを回転中心に配置して,データ収集を
行った.収集スライス厚は Aq:0.5
(VCT:0.625)
mm×64,
再構成スライス厚は Aq:0.5,3,5
(VCT:0.625,2.5,5)
mm,
エッジ法により MTF を求めた.
【結果】
Thin slice 画像では 2 機種の間に大きな差は見られな
かった.再構成スライス厚が厚くなるに従って,機種による
差が大きくなった.
【結語】
本手法によって,体軸方向の MTF についても面内の
場合と同様の解釈を行うことができるようになった.体軸方
向分解能の周波数解析が可能となることが示唆された.
283 64 列 128 スライス MDCT における pitch,管球
回転速度が画質に及ぼす影響について
高田 賢,奥村恭己,遠藤斗紀雄,藤原 宏,
竹中和幸,春日井麻子,市川宏紀
大垣市民病院 診療検査科中央放射線室
【目的】
MDCT はスクリーニング・精査・救急など検査対象と
なる領域が非常に広く,数多くある撮像パラメータの中で撮
影時間に直接関係する pitch は日常でも変化させて使用す
る.今回,当院で使用している 64 列 128 スライス MDCT に
おいて pitch の変化が画質にどのような影響を及ぼすか検討
したため報告する.また同様に管球回転速度の影響について
も検討した.
【方法】
pitch を 0.35/0.5/0.8/1.0/1.5 の 5 段階,管球回転速度
を 0.3 秒 /0.5 秒の 2 段階に変化させ,空間分解能,体軸方向
分解能,時間分解能をそれぞれワイヤ法,微小コイン法,金
属球体法により測定を行った.また各条件においてアクリル
球を撮像し,artifact の有無およびその強度について診療放
射線技師 7 名にて視覚評価を行った.
【結果・考察】
iso-center において空間分解能,体軸方向分解
能に変化は見られなかった.管球回転速度が速いほど実効時
間分解能は短縮し,その差は low pitch ほど大きくなった.ま
た high pitch になるほど実効時間分解能は指数関数的に短縮
した.Artifact の視覚評価では,体軸方向への sampling が倍
密化していることにより明らかな helical artifact は見られな
かったが,high pitch では streak artifact が出現し,off-center
でその強度は増した.
284 異なる MDCT 装置間の画質の比較および撮影条件
の標準化
川内 覚,多賀谷靖,高橋順士,大波一男,
濱田祐介,鈴木 斎
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 放射線部
【目的】
当院では,関連病院を含めると 5 台の MDCT 装置を所
有し,それぞれデータの収集列数が,4 列,16 列,64 列と異
なっている.また装置のバージョンも異なるため,フォロー
アップの検査の場合には,異なる CT 装置間で行われること
が多い.それぞれの画像を比較すると,ノイズや撮影線量が
異なっているケースが見受けられ,画質の標準化がなされて
いるとはいい難い.そこで各装置の空間分解能やノイズ特性
を比較し,当院における CT 画像の標準化を試みたので報告
を行う.
【方法】
画質の評価を行うために,ファントムおよび臨床画像
を用いて検討を行った.評価項目は,1. MTF による空間分解
能,2. ノイズ特性,3. ファントム画像,臨床画像
(腹部)
の
CT-AEC による画像ノイズ,mAs 値の測定,である.
【結果】
空間分解能の測定結果は,装置間で使用する再構成関
数により差が認められた.またノイズ特性も,撮影条件の設
定に伴って装置間で違いが見られた.また臨床画像による比
較では,CT-AEC により個々の装置で画像 SD 値は担保され
ていたが,装置毎に臨床的に適する画像 SD 値の設定が必要
であった.
【考察】
装置間の空間分解能やノイズ特性の差は,使用してい
る再構成関数や撮影条件の違いにより,生じた現象であると
考えられた.当院における CT 画像を標準化させるために
は,これらの物理的特性を理解し,撮影条件や再構成条件
(再構成関数,ノイズ除去フィルタの使用等)
を決定すること
が重要である.
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
9:20〜9:56
放射線治療 線量分布評価・小線源 展示
座長:林 直樹
285 品質管理用 Radiochromic Film を用いた線量検証
山根正聡1,神崎竜二1,安井謙一郎1,井上 聖1,
久冨庄平1,正木杏美1,高橋昌太郎2,沖本智昭2
1)
山口大学医学部附属病院 放射線部
2)
山口大学医学部附属病院 放射線科
【背景・目的】
当院では,IMRT の線量検証に GAFCHROMIC®
EBT2 を用いている.EBT2 は多くの不確定要素が存在する
との報告がある.当院で購入した Lot の EBT2 を用いて線量
検証を行った際にも,治療計画装置
(RTPS)
と EBT2 の解析
結果にこの不確定要素が原因ではないかと思われる大きな差
が生じた.われわれは,この Lot の検証を行い,当院で使用
していた Lot の EBT2 の不具合を推測した.そこで,一般的
には幾何学的 QA に使用する RTQA2 を用いて線量検証を行
うことを試み,実際に臨床に用いることができるのか検討を
行ったので報告する.
【方法】
1)
基礎的検討として,均一性,粒状性,低線量域の直
線性などの検討を行う.2)
幾何学的条件など,誤差の要因と
なりうる不確定要素の影響を排除し,検討を行う.
【結 果】基 礎 的 検 討,実 際 の 線 量 検 証 の 解 析 結 果ともに
RTQA2 で良好な結果が得られた.
【結論】
RTQA2 での実際の線量検証の解析結果から,IMRT
の線量測定解析に RTQA2 は使用可能であると考えられる.
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
286 一眼レフディジタルカメラを用いた簡 易 Radiochromic Film 解析システムの改良
西井厳夫1,鈴木友輔1,藤永啓史2,松本龍典2,
加藤秀起2,林 直樹2,福間宙志3,廣瀬保次郎3
1)
藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科
2)
藤田保健衛生大学 医療科学部放射線学科
3)
名古屋市立大学病院 中央放射線部
【背景と目的】
我々は第 66 回の総会学術大会において,IMRT
の線量検証を行うために一眼レフディジタルカメラを用いた
簡易 Radiochromic Film 解析システム
(以下 RacFA)
の構築に
関して発表した.しかし,RacFA で使用しているデータ数の
関係により R-tech 社の DD-System で取得した線量分布と誤
差が生じていた.そこで今回はその誤差を改善することを目
的とした.
【方法】
Clinac23EX
(Varian)
を使用して 6MVX 線を照射した
Gafchromic EBT2 および RTQA2 フィルムをフラットベッド
スキャナで読み取り,DD-System を使用して解析した.また
同フィルムを一眼レフディジタルカメラにより撮 影し,
RacFA を使用して解析した.RacFA で線量分布を作成する
際に,データを部分的に取り出し再度読み込ませることで,
PC モニタの 1 ピクセルに 1ドット描くようにした.
【結果と考察】
以前は線量分布を DD-System と比較した場合
にかなり低線量側に分布が流れてしまっていたが,今回改良
した RacFA ではその低 線量側への流れが 緩和され,DDSystem で取得したものに近い結果となった.これは以前の
RacFA で使用しているデータが PC モニタのマトリックス数
よりも多く,分布を描出する際に 1 つのピクセルに対して 2
つ以上のデータが存在していたためであると考えられる.
287 ラジオクロミックフィルムドジメトリーに対するフ
ラットベッドスキャナによる影響
上原隆三1,橘 英伸2,松林史泰1,吉野慎一1,
伊藤 康1,佐藤智春1
1)
癌研究会有明病院 放射線部
2)
癌研究会有明病院 放射線治療科
【目的】
ラジオクロミックフィルムの利用において,スキャナの
垂直,水平の走査方向や感光層にある粒子より引き起こされ
る光源の拡散によって不均一性を示され,その影響を補正す
る必要があるという報告がある.当院ではラジオクロミック
フィルムの運用を考えており,当院で利用しているスキャナ
および ISP 製 EBT2 での影響に関して検証したので報告す
る.
【方法】
ガフクロミックフィルムは EBT2 を使用し,比較として
二次元配列検出器および Kodak 製 EDR2 を使用した.Tough
Water を使用し,深さ 10cm,照射野 20×20cm2,10MV X
線でそれぞれ照射を行った.スキャナは EPSON ES-1000G
を使用し,スキャナの走査方向において垂直方向と水平方向
のプロファイルをそれぞれ測定し比較を行った.フィルム解
析ソフトは Triangle Products 製の Simple IMRT Analysis を
使用した.
【結果】
二次元配列検出器と比較し,EDR2 は 1%以内の一致
を示した.一方 EBT2 はスキャナの照射野内辺縁部におい
て,スキャナの走査方向に対して平行方向では -3%から+
3%の線量差を示したのに対して,垂直方向では+3%以上,
最大で+8%程度の線量差を示した.
【結論】
本検証から,L.Menegotti らの報告と同様に EBT2 はス
キャナの走査方向に対して垂直方向の線量に影響が見られ
た.また EDR2 より EBT2 の方が線量の影響が顕著に見られ
2010 年 9 月
1113
た.そのため,その影響を補正する必要があると考え,L.Menegotti らの補正法など当院で実装可能であるか検討中であ
る.
288 ポリマーゲル線量計を用いた線量評価
山本瑛一1,越田吉郎2,藤川博司3,上田伸一4,
磯村直樹4
1)
石川県立中央病院 医療技術部放射線室
2)
金沢大学 医薬保健研究域保健学系
3)
金沢大学 医薬保健学域保健学類
4)
金沢大学附属病院 放射線部
【目的】
ポリマーゲル線量計は有機モノマーのラジカル重合反
応を利用した三次元測定可能な線量計である.現在放射線治
療においては IMRT や粒子線治療など複雑な線量分布を持っ
た治療が盛んに行われている.しかしその線量分布を三次元
的に正確に測定する方法は確立されていない.そこでポリ
マーゲルを用いた線量測定について検討したので報告する.
【方法】
使用したポリマーゲルは MGS 社製 BANGkitTM.照射
に利用した治療器はエレクタ社製 Elekta Synergy.測定には
GE 社製の MRI 装置を用いた.今回の実験ではポリマーゲル
線量計のエネルギー依存および線量率依存ならびに深部量百
分率の測定など実際の線量分布への応用とその経時変化を調
べた.
【結果と考察】
線量依存はすべての測定において非常に高い直
線性が見られた.エネルギー依存においては X 線,電子線双
方において高いエネルギーの方で値が大きくなり,線量率依
存においては低い線量率において値が大きくなったがともに
その違いは小さくほとんど影響がないといえる.またポリマー
ゲル線量計において測定した深部量百分率と電離箱線量計に
よって測定した深部量百分率は数%以内の誤差で一致した.
時間の経過による変化も数%以内とほとんど見られなかっ
た.ポリマーゲル線量計は X 線,電子線双方においてエネル
ギー依存が見られず,実際の線量分布の測定も行うことがで
き将来の臨床への応用も期待される.
289 前立腺癌 I-125 永久挿入治療の post-plan におけ
る最適画像取得方法の検討−ファントム作成とその有用
性−
濱口明佳,花田 健,堀井慎太郎,表田真弓,
南 利明,岡山貴宣,川光秀昭
神戸大学医学部附属病院 医療技術部放射線部門
【はじめに】
前立腺癌に対する I-125 シード線源永久挿入治療
の post-plan
(術後線量計算)
は,その治療を評価するうえで非
常に重要な役割を果たす.そのシード線源の同定は,治療計
画装置による自動計算と手動による確認作業が行われてい
る.しかし,手動による確認作業の割合が多い場合,その線
量計算精度が低下することは明らかである.
【目的】
今回我々は,post-plan 用の前立腺ファントムを作成す
ることにより,当院における post-plan 画像取得方法の最適
化を試みたので報告する.
【方法】
1)
post-plan 用として模擬シード線源を挿入した前立腺
ファントムを作成した.線源の間隔を,1 層目を 5mm とし,
2 層目を 5∼0mm として配置した.また,体軸方向に 1 列に
なるよう 6 本の線源を配置した.2)
当院既設の X 線 CT 装置
を用い,さまざまな撮影条件・再構成関数を用い CT 画像を
取得した.3)
すべての画像に対し治療計画装置
(Vari-Seed)
よりシード線源の同定を自動で行い,取得した CT 画像ごと
に検出精度の検討を行った.
10月15日
1114
日本放射線技術学会雑誌
【結果】
今回,post-plan 用の前立腺ファントムを作成したこと
で,当院の post-plan における最適画像取得方法が確認さ
れ,本法の有用性が示唆された.
290 モンテカルロシミュレーションを用いた I-125 線源
の線量特性の検討と線量計算パラメータの算出
松永卓磨1,片岡直也3,安井啓祐4,下郷智弘2,
布施 拓1,織部祐介1,五十嵐幸哲1,小幡康範2
1)
名古屋大学大学院 医学系研究科
2)
名古屋大学 医学部保健学科
3)
愛知県厚生連安城更生病院
4)
名古屋市健康福祉局 健康部クオリティライフ21城北
推進室
【背景・目的】
前立腺癌の治療に用いられている I-125 密封小
線源は,国内では 2 種類
(model 6711,STM 1251)
が供給さ
れている.この 2 種類は線源の構造や組成が異なるため,異
なる物理挙動を示す.本研究ではモンテカルロシミュレー
ションを用いて,線源の違いによる物理特性の違いを理解
し,また,治療計画等で用いられる線量計算の理論式に含ま
れる各種関数を算出する.
【方法】
モンテカルロシミュレーションコード Electron Gamma
Shower version (
5 EGS 5)
を用いて,各線源の光子スペクト
ル,線量分布を計算した.また,非等方関数や放射状線量関
数などのパラメータを算出し,2 種類の線源の違いを比較検
討した.
【結果・考察】
model 6711 からは銀からの特性 X 線が観察さ
れた.STM 1251 は線源に含まれる各種金属からの特性 X 線
が発生しているが,ほとんどが線源内の金属で吸収されてお
り,線源外ではほぼ観察されなかった.2 種類の線源間で,
放射状線量関数,非等方性関数共に違う傾向が見られた.放
射状線量関数は特性 X 線の有無,非等方性関数は線源の構
造や組成の違いによる影響がそれぞれ大きいと考えられる.
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
9:56〜10:32
放射線治療 クオリティマネージメント・ 座長:加藤貴弘
環境管理 展示
291 第三者機関による放射線治療装置出力の評価
牧原由佳1,小澤修一2,古谷智久2,山本英男1,
小島秀雄1,原 直哉1,三浦康平1
1)
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線部
2)
順天堂大学大学院 医学研究科先端放射線治療医学物
理学講座
【目的】
放射線治療装置の QA・QC は自施設で実施されるの
が一般的であるが,近年,第三者機関による検証の重要性へ
の認識が高まってきている.当院では,米国で実施されてい
る TLD を用いた郵送調査を 2007 年から利用しており,今回
は 2007 年から 2009 年までの調査結果について報告する.
【方 法】米 国 の RPC
(Radiological Physics Center)に X 線 は
4,10MV,電子線は 6,9,12MeV の郵送調査を依頼した.
RPC より郵送された TLD に規定された照射条件で照射を
行った.照 射後,TLD と照 射報告書,電子 線については
PDD のデータを RPC へ返送した.
【結果・考察】
X 線は 10cm 深での水吸収線量が評価され,
RPC の基準は±5%以内とされているが,その結果は全て
±2%以内であった.また電子線は,Dmax での水吸収線量,
及びエネルギーごとの RPC が指定した深さにおける PDD が
評価の対象となる.出力は±5%,PDD は TLD で得られた基
準深 PDD と当院の PDD データの差±5mm が基準であり,
当院の結果は,出力が±2%以内,PDD は±1mm 以内であっ
た.自施設での QA・QC だけでなく,第三者機関に評価され
ることで出力の信頼性が向上した.
【結論】
第三者機関を利用することで,放射線治療装置の出力
評価を客観的に行うことが出来た.今後も継続していくこと
で当施設での QA・QC の更なる向上を図り,安全と信頼のあ
る放射線治療の提供をしていきたい.
292 当院における放射線治療業務の人的リスクマネージ
メント
太田誠一1,井ノ上信一1,有村武浩1,川越康充1,
隅田伊織2,高橋 豊2,尾方俊至2,小泉雅彦2
1)
大阪大学医学部附属病院 医療技術部放射線部門
2)
大阪大学大学院 医学系研究科放射線治療学講座
【目的】
近年の放射線治療の安全を担保するガイドラインは,
AAPM TG142 に代表されるように装置管理に関するものが中
心である.しかし,WHO の Radiotherapy risk profile には,
放射線治療におけるインシデント
(ニアミス,アクシデントを
含む)
のうち 60%もしくはそれ以上が人的要因によると記され
ている.人的要因によるインシデント防止のため,当院にお
けるニアミスの所在と発生頻度を検討した
【方法】
当院では,CT シミュレーション,治療計画,Verify &
Record システムへの治療パラメータ登録,Portal image 撮影
と医師の照合承認,照射,照射中フォローという作業工程で
放射線治療業務を行い,各工程に作業手順書,チェックリス
トを配備し,ダブルまたはトリプルチェックを行っている.集
計開始から 3 ヶ月間で検出したニアミスを開示し,各作業工
程の再確認,是正を行った.その後,これらニアミスについ
ての集計を 6 ヶ月間引き続き行った.
【結果】
ニアミス件数は開示前 3 ヶ月では,122 件で,内 25 件
が線量・照射位置に関係するものであった.開示後の 6 ヶ月
では 65 件に減少し,線量・照射位置に関係するものは 14 件
となった.
【考察】
装置管理と同様に人的な作業を明示的に管理または是
正することで作業者への再教育につながり,ミスが減少した
と考える.
【結論】
より安全な医療を担保するために定期的な作業工程の
見直し,是正を行うことは重要である.
293 医療用リニアック室コンクリート壁における中性子
遮蔽の最適化
森祐太郎,青木美遊,山口雅絵,藤淵俊王,
小原 哲
茨城県立医療大学 保健医療学部放射線技術科学科
【目的】
医療用リニアック運転時,放射線治療に用いる光子の
発生とともにターゲット等ビーム軸上構成物質との光核反応
により光中性子が発生する.これらの光中性子線量は,光子
線量に対して非常に相対的に少ないと評価されてきた.しか
し近年,15MV の X 線では遮蔽外壁表面における光子及び中
性子線量率測定値が,従来の評価値を大幅に上回る測定が
報告されている.本研究では,コンクリート壁内部に配置さ
れている X 線遮蔽材である鉄材領域において生成される 2
次中性子に着目した遮蔽設計について検討した.
【方法】
コンクリート及び鉄ブロックを用いて遮蔽壁の構造を
再現し,リニアック運転モード 10MV
(EXL-15SP:三菱電
(Clinac iX:VARIAN)
の X 線をガントリ 90˚
機)
,及び 15MV
方向よりコンクリート壁面へ垂直に照射した.中性子検出
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
に,CR-39 を各ブロック間へ配置し,壁内における中性子フ
ルエンスを実測した.また,汎用輸送計算コード PHITS を使
用し,コンクリート内の中性子挙動を計算した.
【結果】
放射線治療室の X 線の遮蔽材として壁内部に配置さ
れている鉄材周辺部において,光核反応による速中性子フル
エンスの減衰の緩和と熱中性子フルエンスの増加を確認し
た.これらの測定結果を踏まえ,モンテカルロ計算により鉄
材の配置位置を検討した.
【結論】
電子加速エネルギーが 15MeV を超える運転が想定さ
れる X 線を使用しているリニアック室の場合,鉄遮蔽材位置
による 2 次中性子を考慮した遮蔽計算が必要であると考えら
れる.
294 固体飛跡検出器を用いた放射線治療場における 2
次中性子測定の基礎的検討
山口雅絵1,藤淵俊王1,小原 哲1,小平 聡2,
安田仲宏2
1)
茨城県立医療大学
2)
放射線医学総合研究所
【目的】
X 線と物質構成原子核との間の相互作用の一つに光核
反応を介した中性子の発生がある.放射線治療では照射中に
装置のターゲット,フラットニングフィルタ,二次コリメータ
などで光核反応を起こして 2 次中性子が発生してしまい,患
者へ照射されてしまう.中性子は 2 次発がんの発生リスクの
増加につながるため,線量評価が重要となる.中性子測定法
として,レムカウンタやボナー球があるが,これらは形状が
大きく放射線場を乱すことからファントム内の 2 次中性子の
線量分布測定は困難である.本研究では X 線に不感で中性
子にのみ感度を持つ CR-39 を用い,放射線治療場における 2
次中性子測定について基礎的検討を行った.
【方法】
リニアックのビーム射出口に CR-39 およびラジエータ
としてポリエチレン,窒化硼素を 1 枚のプレートに貼り付け
て素子全体に照射を行い,X 線照射線量と飛跡数の関係を測
定した.次に,CR-39 を水ファントムの入口付近,中央付
近,底付近に 1 枚ずつ配置して,またはスタックにして,水
ファントム中での線量分布測定のための検討を行った.
【結果】
ビーム射出口での測定により,CR-39 に生成する中性
この飛跡数と X 線線量の関係を取得した.水ファントム中で
の測定により,CR-39 の配置によって生成する中性子数に差
があるか確認し,水ファントム中での線量分布測定時の
CR-39 の配置を決定した.また,本基礎検討を基に,放射線
治療場で発生する 2 次中性子の線量寄与割合や人体内の線
量分布を系統的に取得することができると考える.
295 粒子線照射時における二次中性子線の評価
溝延数房1,赤城 卓2,須賀大作2,手島昭樹1,
村上昌雄2
1)
大阪大学大学院 医学系研究科
2)
兵庫県立粒子線医療センター
【目的】
粒子線が患者体内やビームライン上の物質と相互作用
することによって,二次中性子線を発生させる.中性子は二
次発癌リスクの要因とされており,その発生について評価す
ることは重要である.本研究では,ブロードビーム法の二次
中性子線の発生由来を解明する事を目的とした.
【方法】
20cm×20cm×30cm の MixDP ファントムに,190MeV
陽子線ブロードビーム
(10cm 平方照射野,SOBP 幅 10cm)
と
ペンシルビームを照射した.高エネルギー中性子線を検出可
能なサーベイメーターを用いて線量を測定した.また,ファ
2010 年 9 月
1115
ントムから発生する中性子線量を評価するため,ペンシル
ビームの測定結果から計算によってスポットスキャニング法
の中性子線量を求めた.
【結果】
ブロードビーム法による測定結果とスキャニング法に
よる計算結果を比較すると,二次中性子線量の比はおよそ
10:1 であった.ファントム内から発生する中性子線量は
10%であることから,ビームライン上から発生する中性子線
量は 90%であることが判った.
【結論】
本研究では,粒子線照射時における二次中性子線の発
生由来について検討した.二次中性子線の 90%はビームライ
ン上から発生している事が分かった.今後更に検討を重ね,
ビームライン上の発生二次中性子線の低減について考察して
いく.
296 放射線治療における疥癬患者
(角化型)
の感染対策
神田 学
東京都立墨東病院 診療放射線科
【はじめに】
疥癬は,ヒゼンダニの寄生による皮膚感染症であ
る.通常の疥癬は 1 患者当たりのダニ数がせいぜい千個体程
度であるが,角化型疥癬は 100 万 -200 万個体に達する.こ
のため感染力はきわめて強くなる.当院にて角化型疥癬のが
ん患者へ放射線治療を行ったので,感染対策について報告す
る.
【目的】
放射線治療患者及び,放射線治療スタッフがどのよう
な感染予防対策が必要か検討し,実施する.
【方法】
感染管理認定看護師
(ICN)
より放射線治療時の装備や
接触手技の指導を受け,感染対策を行った.
【結果・まとめ】
角化型疥癬患者が発生したので,通常患者に
対しては標準予防策+接触予防策,角化型疥癬患者には標準
予防策+接触予防策+特別対策を実施した.ICN との検討に
より行った特別対策は,当該患者さんへの説明と協力依頼,
治療直後の専門委託業者による清掃,治療時の対応手順書
の作成である.
【考察】
スタッフの装備は,患者さんに恐怖感・威圧感を与え
る可能性があり,事前の説明と同意が大事であると考える.
効果的かつ迅速に感染対策を行うためには,感染管理室,感
染症科,皮膚科,リネン,清掃など他部門との強力な連携が
不可欠である.
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
10:32〜11:08
放射線治療 線量分布・線量計算 展示
座長:遠山尚紀
297 前立腺放射線治療において直腸ガスが線量分布に及
ぼす影響
川上正邦1,田辺啓太1,辻 雅之1,富田 聡1,
村上義和1,佐藤清香2,宮部結城2,伏木雅人3
1)
市立長浜病院 放射線技術科
2)
京都大学大学院 医学研究科放射線腫瘍学画像応用治
療学
3)
市立長浜病院 放射線科
【目的】
前立腺放射線治療において IGRT により画像照合をし
ていると,直腸ガスの状態が計画 CT と大きく変化している
ことがある.ガスによって前立腺が変位し PTV から明らかに
外れるような場合は排ガス処置が必要であるが,変位が許容
範囲内であれば排ガス処置は行わない.その際,ガスにより
線量分布が変化していることが考えられる.そこで,3D-CRT
と IMRT で直腸ガスが線量分布に及ぼす影響の違いについて
10月15日
1116
日本放射線技術学会雑誌
検証した.
【方法】
RTP にて直腸内腔へガスを想定した CT 値 -1000 の
Structure を入力し,その容積が 0∼100%まで変化したとき
の線量分布の変化について,DVH および線量分布の比較検
討を行った.
【結果】
DVH による比較の結果,3D-CRT,IMRT 共に直腸ガ
ス容積の増加に従って直腸壁の高線量域は減少していき,
PTV の高線量域は増加していったが,IMRT がより影響が大
きく約 3%の変化があった.また,線量分布を比較した結
果,直腸内の分布は前立腺側へ,PTV 内の分布は直腸側へ
共に変位していたが,IMRT の方がより大きく変位していた.
【考察】
ビームは直腸ガスによって吸収・散乱が減少し,直腸
壁の線量を低下させており,ガスを通過後に PTV へ入射し
たビームは,実効深が短くなり減衰が少なくなることによっ
て PTV 線量が増加したものと推測される.特に IMRT では照
射野辺縁付近の線量勾配が急峻であるためにその影響が大き
いと考えられる.
298 電子線の側方電子平衡不成立照射野での Extended
SSD における線量分布の検討
布施 拓1,小幡康範2,下郷智弘2,松永卓磨3,
織部祐介3,坪井孝達1
1)
浜松赤十字病院 放射線技術課
2)
名古屋大学 医学部保健学科
3)
名古屋大学 医学系研究科
【目的】
SSD が異なる場合の散乱線の影響を,実際に測定した
結果とモンテカルロシミュレーションによる結果で線量分布
を比較し検討する.
【方法】
Cutout 照射野として直径 2,5,8cm を作成した.SSD
は 100,110,120cm の 3 点を設 定した.Varian2100C を使
用し,公称値で 4,6,9,12,15MeV の電子線において,3D
水ファントムで電離箱線量計を用いてを測定した.モンテカ
ルロシミュレーションコード BEAMnrc/DOSXYZnrc を使用
し,測定時と同様の幾何学的条件によって,深部量百分率と
軸外線量比の計算を行った.また,LATCH オプションを使用
し,散乱線の解析を行った.
【結果】
測定中心軸の電離箱線量計による測定とモンテカルロ
シミュレーションとの比較では,Output Factor は約±2%の
違いが見られた.線量分布は,SSD を大きくすると低エネル
ギーほど半影領域が拡大した.各 SSD の最大線量部下での
角度分布を観察すると,SSD が大きくなると粒子数が減少
し,線量計に入射する粒子進行方向の広がりが少なくなるこ
とが示された.
【結論】
Output Factor の測定の精度,モンテカルロシミュレー
ションの統計誤差を考慮すると大きな違いはないと考えられ
る.Extended SSD で測定を行うと散乱線の線量計への入射
量が変化するため注意が必要である.
299 呼吸同期 Dynamic Wedge と呼吸同期回転照射の
基礎検討
庭山 洋,小板橋健一
(財)
太田綜合病院附属太田西ノ内病院 放射線部
【目的】
当院では,EDW を用いて照射を行っているが,SBRT
と乳腺照射は物理 Wedge を用いて照射を行っている.この
ため,呼吸移動の伴う SBRT と乳腺照射に呼吸同期 EDW が
行えるかを検討した.また,当院の SBRT において,呼吸移
動がある場合は固定多門の呼吸同期照射を行い,呼吸移動が
ない場合は回転照射を行っている.このため,線量分布をよ
り改善できるように呼吸同期回転照射の可能性を検討した.
【方法】
呼吸同期 EDW では,線量率 300 と 600,Wedge 角
度 15˚ と 60˚,同 期 の 有 無 の 条 件 で Profiler と Film に 照 射
し,線量分布を比較し,ファントムを用いて吸収線量を比較
した.呼吸同期回転照射では,同期の有無,CW と CCW の
条件で線量分布と吸収線量を比較した.また,線量率と
Gantory 角度毎の MU 値を変えて呼吸同期回転照射を行い,
エラーが発生せず,最適に照射できる条件を検討した.
【結果】
線量分布:Wedge 角度が大きいほど分布が良かった.
呼吸同期照射は,分布に影響を与えた.線量率が大きいほ
ど,線分布が乱れた.呼吸同期回転照射の分布は,良好で
あった.吸収線量:線量率が小さいほうが,変動が少なかっ
た.呼吸同期照射は,吸収線量に影響を与えた.呼吸同期回
転照射の照射条件:線量率 400 以下になるように照射すれ
ば,Gantory 角度毎の MU 値が大きくても照射可能であった.
【結語】
呼吸同期 EDW と回転照射の線量分布と吸収線量の差
は,許容範囲であると思われた.このため,線量率 300 であ
れば,呼吸同期 EDW と回転照射を行えると考えられる.
300 口腔領域の放射線治療における金属冠による影響の
基礎的検討
五十嵐幸哲1,伊藤善之2,下郷智弘1,織部祐介1,
松永卓磨1,小幡康範1
1)
名古屋大学大学院 医学系研究科
2)
名古屋大学医学部附属病院 放射線科
【背景と目的】
口腔外科,耳鼻科領域の金属存在下における放
射線治療において,散乱による局所的な線量増加,線量低下
が懸念される.そこで,フィルム法による実測,モンテカル
ロ計算を用いて相対線量分布を取得し,比較を行うことで散
乱による影響を検討することを目的とした.
【方法】
4MVX 線を用いて,口腔模擬ファントムにフィルムを
挟み込んだ状態において対向 2 門照射を行い,相対線量分布
を取得し,モンテカルロによるシミュレーションの結果と比較
した.次に,モンテカルロによるシミュレーションにより金属
冠がある場合とない場合の相対線量分布を取得し,比較を
行った.
【結果】
フィルム法による実測の結果はモンテカルロによるシ
ミュレーションの結果と比較的良く一致した.また,シミュ
レーションによる金属冠の有無による線量分布の比較におい
ては,皮膚表面から近い方で 10%以上,皮膚表面から遠い方
で 4%以上の線量増加がみられた.
【考察】
フィルム法による実測とモンテカルロによるシミュレー
ションの結果から,散乱線による線量増加の影響が確認でき
た.シミュレーションによる金属冠の有無による線量分布の
比較において線量増加がみられたのは後方散乱や側方散乱に
よる影響のためと考えられる.今現在,線量増加低減のため
にスペーサーが用いられることが多いが,今後,そのスペー
サーの最適な厚み・線量軽減の割合について検討していきた
い.
301 CT アーチファクト画像のペンシルビーム計算とモ
ンテカルロ計算との比較
宮島祐介,石見 浩,吉峰 正,池口俊孝,
辻 佳彦,福神 敏
奈良県立医科大学附属病院 中央放射線部
【目的】
頭頸部領域 CT の歯科補填剤のアーチファクトは,正
確な CT 値を算出することができず RTPS の線量計算に影響
を与える.しかし新しい計算アルゴリズムであるモンテカル
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
ロ法を使用した場合に,アーチファクトの影響が線量分布計
算にどのような影響を与えるのか不明である.そこで,線量
分布計算への影響を従来のペンシルビーム法と比較検討し
た.
【方法】
メタルアーチファクトが含まれるよう金属を埋め込ん
だ複数のファントムの CT 画像を RTPS で計算する.そして
MU 値を揃えた同条件の計画を複数作成し,それぞれフィル
ム法により検証を行う.RTPS は,BrainLab 製 iPlan を使用
した.線量分布はアールテック社の DD システムで比較した.
【結果】
モンテカルロ法とペンシルビーム法の線量分布の比較
では,高線領域で同程度であったが,低線量域で若干の差が
みられた.
【結論】
自作ファントムを使ったフィルムでの比較では,線量
分布に有意な差がなかった.このことはアーチファクトのあ
る画像を含んだ CT データを使ってモンテカルロ法による治
療計画を行う場合においても,ペンシルビーム法と同程度の
注意でよいことが示唆された.しかし実際の頭頸部領域では
口腔や副鼻腔等の空気層の存在によりさらに複雑なアーチ
ファクトを形成していることがありそういった場合の線量分
布への影響をさらに検討する必要があると考える.
302 MVCT 画像を利用した均質ファントムの線量計算の
精度検証
伊藤 旭1,菅 尚明2,宗川高広3
1)
東北大学大学院 医学系研究科
2)
宮城県立がんセンター 診療放射線技術部
3)
北福島医療センター
【目的】
画像誘導放射線治療は治療直前に CT 画像等を取得
し,計画時の解剖学的位置情報と比較・修正することで標的
への線量を担保する技術である.位置照合が主な使用目的で
あるが,その CT 画像を用いて線量計算が十分精度良く行え
るのであれば,再治療計画のための有用な線量情報を得るこ
とが可能となる.従って今回は均質水等価ファントムでの
MVCT 画像を利用した線量計算の精度検証を目的とする.
【方 法】水 等 価ファントムを kVCT
(GE 社)
と MVCT
(TomoTherapy 社)
で撮像し,治療計画装置 Xio
(CMSJ 社)
に取り込
んだ.Xio で両画像セットに 0 度方向から 6MV-X 線,SAD=
10cm,照射野 10 × 10cm2,100MU,1 門照射の計画を作成す
る
(その他のパラメータは全て同様に設定)
.そしてリニアック
Clinac iX
(Varian 社)
,ファーマ 型 電 離 箱 線 量 計 TN30013
(PTW 社)
と電位計 RAMTEC Smart
(東洋メディック社)
を用
いてファントム中心及び中心から A/P/ R/L/ 方向に 3cm の点
で測定を行い,各計算値との比較を行う.
【結果・考察】
実測値との誤差は kVCT 画像の計算値で平均
0.7%,MVCT 画像の計算値で平均 -0.8%であり,両者とも
実測値に対し概ね 1%以内で一致していた.kVCT と MVCT
画像での計算値の差は各 CT 値から相対電子密度に変換した
際,両者に差が生じていたことを示す.
【結論】
均質ファントムのポイント線量で,MVCT 画像を利用
した線量計算は kVCT 画像を利用したものと同程度の精度を
保つことが確認できた.
2010 年 9 月
1117
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
13:30〜14:06
放射線管理 機器・環境管理 展示 座長:木村 均
303 放射線治療装置における加速度センサを用いたガン
トリ回転軌道の歪み検証法の検討
青木美遊,森祐太郎,山口雅絵,藤淵俊王,
小原 哲
茨城県立医療大学 放射線技術科学科
【目的】
放射線治療において回転照射を行う際,ガントリ回転
軌道の歪みの解析は重要な品質管理項目である.しかし,
Winston Lutz test やスターショット法等,複雑な QC を頻繁
に行うことは,検証時間がかかり技師への負担が大きい.今
回,加速度センサを用いて簡便なガントリ回転中心の測定法
を考案し,臨床で有用な精度で検証が可能か検討した.
【方法】
加速度センサとジャイロセンサをガントリに設置し,1
回転させる間の加速度と角速度情報を得た.得られたデータ
から位置情報に変換し,回転軌道が真円になっているか解析
を行った.また,電子線照射用ツーブスやウエッジフィルタ
をつけガントリの重量を増加させた状態でも同様の測定を行
い,回転軌道に変化を確認した.
【結果】
ガントリ回転角 90˚ や 270˚ 周辺で回転の歪みが大きく
なった.サンプリング間隔を変えた際,100 msec 程になると
測定値のばらつきが大きくなった.ツーブスやウエッジを装
着することによる軌道の変化は見られなかった.
【考察・結語】
本検証方法は,センサをガントリに固定するだ
けで照射などの必要もなく,また解析も容易である.よっ
て,ガントリ回転軌道の点検として,日常項目として導入可
能である.
304 FPD 搭載血管撮影装置における始業前点検時の
FPD 管理についての検討
野村孝之,福岡通大,竹井泰孝
浜松医科大学医学部附属病院 放射線部
【目的】
血管撮影装置における FPD の品質管理は,各施設が
独自の方法で管理しているのが現状である.当院では,平成
21 年に FPD 搭載血管撮影装置を導入してから,定常性テス
ト用ファントム NORMI13 を使って,FPD のデジタル値を測
定・記録してきており,今回そのデータの解析を行った.
【使用機器】
Infinix Celev-i
(東芝)
,NORMI13
(PTW 社)
【方法】
始業前点検時に NORMI13 を同一ジオメトリになるよ
う配置し,撮影条件を固定にした OneShot 画像と,管電圧の
み固定とした DSA 画像,オートモードとした DA 画像,そし
(Mean)
と SD
て透視画像を収集.得られた画像のデジタル値
値を FPD 中心部及び四隅で ROI の大きさを固定して計測し
た.
【結果】
付加フィルタの変更や X 線管交換,FPD 調整,撮影
パラメータの変更等を行っており,その都度デジタル値や
SD 値に変化が見られた.しかし,日常の変動は DA,OneShot,透視についてはデジタル値で±5%以内に,SD 値では
約±10%以内であり,DSA についてはデジタル値で約±10%
以内,SD 値で約±15%以内に収まっていた.また,どの撮
影種もデジタル値は中心部で高い値を,周辺部は低い値を示
しており,SD 値は中心部で低い値を,周辺部は高い値を示
していた.
【考察】
撮影者の違いによる撮影方法のズレの補正,FPD の
キャリブレーションを行う等で,デジタル値の変動を少なくす
ることができた.
10月15日
1118
日本放射線技術学会雑誌
305 三次元混合を利用した新型血管撮影用 Dual Injector チューブの検討
河合信幸,臼杵光高,太田慎史,田中 功,
小島慎也,上野惠子
東京女子医科大学東医療センター 放射線科
【背景・目的】
通常,希釈造影剤を使用した撮影時に,必要な
混和量,混和比の造影剤を用意するのは煩雑である.本年よ
り当施設に Dual Injector が導入され,造影剤と生食同時注入
が可能になった.従来の T 型チューブでは低速注入時に造影
剤と生食の混和不良の問題があったが,新しく Dual チュー
ブの混合部を改良したスパイラルチューブが開発された.今
回,従来型と新型チューブ内での造影剤と生食の混和状態を
検討したので報告する.
【方法】
使用装置は Artis zee BA
(Siemens 社製)
,造影剤はイ
オヘキソール 300mgI/ml とし,従来の T 型と新型チューブ
(根本杏林堂)
を以下の条件において DSA 撮影した.1. 造影
剤と生食の希釈率を固定し注入速度を変化,2. 注入速度を
4ml/s 固定で希釈率を変化させた.撮影方向は側面方向と
し,撮影位置はチューブの近位部,中央部,遠位部の 3 箇所
とした.得られた画像にて,チューブ内に ROI を設置しその
SD より各チューブの混和状態を評価した.
【結果】
1. 希釈率を固定し注入速度を変化させた場合,従来型
では低い注入速度ではチューブの混和直後
(近位部)
において
SD が大きくなったが,新型では各位置において一定であっ
た.2. 注入速度を 4ml/s 固定で希釈率を変化させた場合,従
来型ではチューブの中央部において造影剤の割合が高くなる
につれて SD が大きくなったが,新型では各位置において一
定であった.
【結論】
新型チューブの方が従来型と比較して,造影剤と生食
の混和状態が良好であった.
307 透視検査室における音響測定
(残響時間の測定およ
び吸音対策)
香川清澄1,村上 徹1,甲山精二1,西 政美1,
川光秀昭1,佐藤逸人2,星野 康2,森本政之2
1)
神戸大学医学部附属病院 医療技術部放射線部門
2)
神戸大学大学院 工学研究科
【目的】
透視検査室は,X 線防護のため壁材にはモルタル等を
用いている為,音の残響時間が長く術者と患者の音声コミュ
ニケーションが取りにくい環境となっている.特に,透視検
査は,音声コミュニケーションが十分に取れなければ最適な
検査はできない.本邦において透視検査室における残響時間
の測定および吸音対策についての報告はなく,今回残響時間
の測定および吸音対策を行なったので報告する.
【方法】
残響時間の測定は,FPD 搭載型透視撮影装置を設置
している 2 室で行う.1)
残響時間は,フルレンジスピーカを
透視室に設置し,中心周波数 125Hz から 4kHz 領域で測定を
する.2)
吸音材
(グラスウール吸音材)
を透視検査室の壁面に
設置する.3)
吸音材を設置した場合の残響時間を 1)
と同様に
測定し,両者の比較を行う.
【結果】
1)
残響時間は,音声伝送性能に大きな影響を及ぼす
500Hz から 2kHz の帯域では,両室において 0.8 から 1.3 秒
の間であった.2)
吸音材を透視検査室の壁面に設置した場
合,残響時間は,0.5 秒程度に短縮され吸音処理で十分な効
果が確認できた.
【考察】
本法は壁面に吸音材を貼るのみで透視検査に大きな影
響が出るような工事の必要がなく,残響時間の短縮が可能で
ある.これは,既存の検査室および新規検査室の双方に対応
でき非常に汎用性の高い方法と言える.
306 血管撮影装置で利用される面積線量値について
塚本篤子,渡辺 誠,西村雄介,浜野安淳,
白倉敬久,今井宜雄
NTT東日本関東病院 放射線部
【目的】
診断参考レベル
(Diagnostic reference level:DRL)
とし
て面積線量値を使用している国がある.日本でも血管撮影装
置では面積線量計を備えている装置が多くなっている.当院
で行った血管撮影と治療
(IVR)
に関して,面積線量値につい
て検討したので報告する.
【方法】
当院で
(2003 年∼2010 年 5 月)
行った診断と治療
(心
臓カテーテル検査・PCI・アブレーション・腹部血管撮影・
頭部血管撮影・頭部 IVR)
の,面積線量計値,装置表示線量,
透視時間等を検討した.使用装置:Multistar PLUS,Angiostar PLUS,Bicor Top
(シーメンス旭メディテック社)
【結果】
1. 心臓カテーテルは,平均 4,014 ± 2,194 cGycm2,
514 ± 277 mGy,頭 部 診 断カテーテルは,平 均 4,925 ±
2,362 cGycm2,442 ± 210 mGy.2.PCI は 平 均 7,311 ±
5,283 cGycm2,1,142 ± 884 mGy,アブレーションは平均
5,824 ± 4,908 cGycm2,620 ± 543 mGy,頭部 IVR は平均
8,453± 6,001 cGycm2,1,022 ± 930 mGy,腹部 IVR は平均
5,147 ± 3,325 cGycm2,415 ± 310 mGy,下肢 PTA は平均
1,314 ± 1,909 cGycm2,142 ± 239 mGy であった.
【考察・結論】
部位により,面積線量計値と装置表示線量値の
比率が違い,透視,撮影時の照射野面積,被写体の厚み等
が関係していると考えられる.面積線量値は一つの検査,治
療において装置が出力している総線量であり,検査ごとの
DRL として有用であると考えるが,手技の内容や使用する装
308 節電効果による放射線機器 CO2 排出量削減の試み
村上晴海1,鈴木 航1,奥村真由子1,隅真一郎1,
中村雅美1,梅田宏孝1,中澤靖夫2
1)
昭和大学附属豊洲病院 放射線部
2)
昭和大学病院 統括放射線技術部
【目的】
世界的規模で地球温暖化について議論されるなか,京
都議定書が作成され,日本は温室効果ガスの排出量を 6%削
減することを課せられている.電力消費量の多い放射線機器
の節電効果が CO2 排出量削減にどの程度寄与し地球環境お
よび運営コストに影響するかを実際に測定,算出したので報
告する.
【方法】
1.平日の当直時間
(17:00∼20:00)
における,放射
線機器の電力量および CO2 排出量を算出する. 2.豊洲病院
全体の消費電力から,節電前後
(17:00∼20:00)
放射線機
器消費電力の差を求め実測値とし,計算値と誤差がないか確
認した.また 17 時以降節電対策に努めた 2009 年度と前年
度を病院全体の消費電力で比較する. 3.昭和大学関連病院
の 600 床以上の 3 病院における 1 日の放射線機器待機電
力,及び CO2 排出量を求め,条例に沿う為の節電時間を算
出する. 4.待機電力を各モダリティー別に比較,検討する.
【成績】
1 日当たりの節電効果:189.0kW/h.1 日当たりの節電
による電気代換算:約 4158 円.1 日当たりの節電 CO2 排出
量:64kg-CO2/kW/h.CO2 排出量を 24%削減.
【結論】
豊洲病院放射線機器の節電効果によって CO2 排出量
は最大 24%運営コストは 1 日あたり 4158 円削減した. 各施
設機器の新設・更新においても省エネタイプの機器導入を考
慮する必要があると考えられる.
置
(照射野サイズ等)
により差が生じ検討が必要である.
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
1119
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
14:06〜14:36
放射線技術概論 技師教育・他 展示
ができ,情報共有化と進捗状況把握において有用であった.
今後 WG の活動を継続し,さらに質の高い技師教育に努めた
い.
309 時間的概念を加えた撮影を学ぶための X 線単純撮
影マニュアル作成
加藤順二,出川輝浩,西川真理,石川栄二,
村山茂康
横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部
【はじめに】
X 線単純撮影を学ぶにあたり,撮影手技
(以下,
「手技」
)
,臨床画像
(以下,
「画像」
)
,撮影マニュアル
(以下,
「マニュアル」
)
の三要素をつなげることが重要と考える.そし
て,手技とマニュアルをつなげるために,撮影手順の法則
(時
間的概念)
を第 64 回総会学術大会で報告した.
【目的】
上記の三要素をつなげた撮影を学ぶための X 線単純撮
影マニュアルを作成する.
【方法】
ウェブ形式を採用し,各撮影法について,以下の項目
を作成した.1)
マニュアルと画像をつなげる
「画像の X・Y・Z
軸回転の分解」
2)
手技と画像をつなげる
「画像からの体表基
準点発見」
3)
手技とマニュアルをつなげる
「撮影手順の法則」
【結果】
1)
画像の 3 次元的な分解を行うとともに,それらをマ
ニュアルの文章に照らし合わせる項目を作成した.2)
画像か
ら体表基準点を発見する項目を作成した.これは X 線中心,
1)
で分解した各行程を
撮影範囲を決める手助けとなった.3)
撮影手順の法則に従い並べ変え,マニュアルの文章を構成し
た.1)
∼3)
を行き来することによって,撮影を学ぶことができ
る仕組みとした.
【考察】
今まで空間的概念のみを取り扱ってきた撮影マニュア
ルに,撮影手順の法則といった時間的概念を加えたことによ
り実際の撮影手技により近づいたものが作成できたと考える.
311 On the job training を用いた 9 年間における新人
技師育成効果
崔 昌五1,加藤京一2,梅田宏孝3,新田 勝4,
中澤靖夫5
1)
昭和大学病院 放射線部
2)
昭和大学藤が丘病院 放射線部
3)
昭和大学附属豊洲病院 放射線部
4)
昭和大学横浜市北部病院 放射線部
5)
昭和大学 統括放射線技術部
【目的】
今回,当大学附属病院における 2001∼2009 年度まで
の OJT を用いた新人技師の育成効果について報告する.
【方法】
1)
業務習得計画表を作成する.2)
新人が起こしたイン
シデント・アクシデント報告の年度別,レベル別件数を求め
評価する.3)
年度毎の研究発表演題数,論文数を求め評価す
る.
【結果】
1)
検査を 8 項目,付帯事項を 5 項目と分類し業務習得
計画表を作成した.2)
インシデント・アクシデントを新人技
師一人当たりの発生件数に換算すると,年度毎に 5.3,5,3,
2.8,2.7,2.7,2.3,2.6,2.6 件と全体的に減少傾向であっ
た.年度別,レベル別のインシデント・アクシデントを分析
した結果,9 年間でレベル 3b 以上は未発生であった.レベル
3a 以上に着目すると,年度毎に 2,1,2,2,1,1,3,1,2
件であった.3)
2001 年度は研究発表数が 49 演題であった
が,2009 年度は 70 演題と約 1.4 倍になった.また,論文数
は,2001 年度が 3 題であったのに対し 2009 年度は,6 題と
2 倍になった.
【考察】
新人のインシデント・アクシデント発生件数の減少,
レベルが年度毎に減少したのは,新人を対象としたチェック
項目を設け,指導したことが大きな要因であると考えられた.
研究演題発表数および論文数が増えたのは,OJT を通じて
1・3・5 年目研究を行い研究をする事,論文を執筆すること
の楽しさを教育できたことが考えられた. 座長:土佐鉄雄
310 当院における診療放射線技師新人教育マニュアル作
成について
野田孝浩,川地俊明,小川定信,藤原 宏,
川島 望,近藤賢洋,伊藤益弘,奥村恭己
大垣市民病院 医療技術部診療検査科
【はじめに】
当院は,平成 21 年 3 月に日本医療機能評価機構
による病院機能評価の認定
(Ver.5.0)
を取得した.その準備段
階において私共は,撮影技術・機器管理等各種マニュアルを
改訂したが,新人教育についてはこれまでマニュアルがな
く,慣習的に on the job training
(OJT)
を実施してきた.
【目的】
今年度 3 名の新人技師を採用するにあたり,最近の医
療情勢・社会ニーズに対応できる医療人を育成することを目
的として,平成 22 年 1 月に新人教育ワーキンググループ
(WG)
を発足,診療放射線技師新人教育マニュアルを作成し
たので,その取り組みと実績について報告する.
【方法】
1. 採用 5 年未満の技師 4 名に聞き取り調査し,新人教
育の問題点を抽出した.2. 一般撮影と救急業務に携わる 6 名
の WG メンバーを選任した.3. WG メンバーは,接遇・医療
安全・感染対策等の院内活動に参加し,教育する側の意識改
革を進めた.4. マニュアル草案作成後,当院と同規模の複数
施設からの助言を参考に,自己申告制チェックシート等追加
し,平成 22 年 3 月に初版発行した.
【実績】
4 月より新人教育を開始し,自己評価・面接の結果を
分析し,5 月下旬にマニュアルを改訂した.現在,6 月末から
の宿直業務に向け,指導係とマンツーマンで練習当直を開始
している.
【結論】
本マニュアルは,OJT のみによる教育の限界を補う事
2010 年 9 月
312 看護師の放射線に対する知識の現状及び放射線教育
の重要性
森島貴顕1,繁泉和彦1,千葉浩生1,片平美明2,
庄子孝子3,千田浩一4
1)
東北厚生年金病院 中央放射線部
2)
東北厚生年金病院 循環器センター
3)
東北厚生年金病院 看護局
4)
東北大学大学院 医学系研究科放射線検査学専攻
【目的】
ここ数年,循環器,消化器系疾患の増加により,心臓
カテーテル検査の血管系検査も PCI 等のカテーテル治療へと
拡大しており,X 線透視・撮影時間が長くなる傾向にある.
東北厚生年金病院
(以下当院)
では診断・治療を含め年間
1,500 件以上の心カテ検査が行われており,また非血管系検
の件数も増加しつつありスタッフの放射線被
査
(ERCP など)
曝が懸念される.そこで,当院看護師における放射線に対す
る意識調査を行い放射線に関する知識の現状を把握し放射線
教育の重要性について検討する.
【方法】
当院看護師
(約 300 人)
を対象に,放射線教育,放射線
被曝,また日頃から疑問に思っていることをアンケート形式
で調査を行った.また結果を当院職員研修会にて発表した.
【結果】
放射線教育に関しては,学生の頃授業を受けていない
10月15日
1120
日本放射線技術学会雑誌
という回答もあり,放射線被曝に関しては誤解があることが
わかった.職員研修会後のアンケートでは疑問に思っていた
こと,日頃聞けないことを解決することができたなどの意見
があった.
【考察】
放射線に関する知識は決して正しいとはいえず,定期
的な勉強会等が必要であると思われる.今後は教育訓練の一
環として入職時に放射線講習会を実施していきたい.さらに
近隣の病院とも連携し調査を行うことにより,放射線に対す
る誤解や不安を取り除くことができればと考えている.
313 異なる教育機関における核磁気共鳴画像
(MRI)
検査
に関する教育の相違
元日田和規1,田川まさみ1,池田賢一1,福士政広2,
亀岡淳一3
1)
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科
2)
首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
3)
東北大学大学院 医学系研究科
【目的】
MRI 検査は,診療放射線技師と臨床検査技師に撮像が
認められているが,各教育機関での教育については検討され
ていない.我々は MRI に関する教育の特徴を明らかにするた
めに教育機関の比較検討を行った.
【方法】
東北大学医学部保健学科放射線技術科学専攻
(T-R)
・
検査技術科学専攻
(T-L)
,首都大学東京健康福祉学部放射線
,鹿児島医療技術専門学校診療放射線技術学科
学科
(M-R)
(K-R)
の 2009 年度シラバスを解析対象とし,1)
検査の遂行と
撮像の知識,技術等の総授業時間数,2)
解剖,疾患と診断,
撮像技術,装置,画質の評価,ペイシェントケア,チーム医
療・医療安全の各授業時間数,3)
シミュレーション実習・臨
床実習の時間数の比較を行った.
【結果】
1)
MRI に関する講義時間数は T-R 234 時間,T-L 118.5
時間,M-R 148.5 時間,K-R 231 時間であり診療放射線技師
養成課程が上回っていた.T-L では実習は行われていなかっ
た.2)
T-R と M-R の比較では類似した比率で各項目の教育を
行っていた.しかし,M-R ではペイシェントケア,T-R では医
療安全,K-R では両項目とも教育されており,患者や他医療
職との対応や安全に関する教育に差異がみられた.3)
T-R は
臨床実習,M-R はシミュレーション実習に重点を置いていた.
MRI に関する教育は教育機関の専攻での違いが顕著で
【結論】
あった.
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
14:36〜15:12
放射線管理 医療安全管理 展示 座長:加藤英幸
314 病室ポータブル撮影における二重撮影防止策の考案
西川真理,平野祉江,児玉裕治,柳田 隆,
石川栄二,菊池 暁,村山茂康
横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部
【背景・目的】
当院
(720 床)
の病室ポータブル撮影件数は約 3
万件 / 年,平均 95 件 / 日で,これまで二重撮影の事例報告
は 1 件 / 年程度であったが,平成 21 年 1 月から 5 ヶ月間に 4
件の報告があった.カセッテにはカセッテ管理や二重撮影防
止を目的に,固有のカセッテ番号を表記していたが,その効
果が疑われた.今回,新たな二重撮影防止策を考案し,良好
な結果が得られたので報告する.
【方法】
1.現状の二重撮影防止策の調査.2.防止策の考案.
3.安全管理室と協議して防止策を決定.4.防止策の部内周
知.
【結果】
1.二重撮影防止策に個人ルールがあることが明確に
なった.2.考案した防止策は a. カセッテ側面に
「未撮影」
「撮
影済」
を明記した色違いテープを 90˚ 違えて貼付し,撮影後は
「撮影済」
が見える方向で収納することとした.b. 撮影準備時
に持参するカセッテの番号一覧表を作成し,撮影直前に使用
カセッテ番号をチェックすることとした.3.安全管理室は,
「未撮影」
「撮影済」
が明確になり,再発防止に有効との見解で
あった.4.防止策をビデオ撮影し,視覚的に職員へ周知し
た.
【考察】
本対策は,未撮影と撮影済の視認性が高くなり,ま
た,使用カセッテ番号を記入し,撮影者自身が再チェックす
る方法としたことで,二重撮影防止策として有効と考える.
【まとめ】
本対策実施後,二重撮影の事例報告が皆無となり,
二重撮影防止策として有効であった.
315 診療放射線技師のヒューマンエラー防止対策案の評
価
五十嵐博1,福士政広2,高橋康幸1,星野修平1,
杉野雅人1,齋藤享子1,篠田直樹3
1)
群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部
2)
首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
3)
駿河台日本大学病院 放射線部
【目的】
これまで実施した質問紙調査において,モダリティ別
のヒューマンエラーの内容が明らかになった.一般撮影・回
診撮影では,
「患者を誤って撮影したこと」
が最も多く,MRI
検査では,
「磁性体の検査室内への持込み」
が最も多かった.
本研究では,エラー内容から立案したエラー防止対策案につ
いて,中央大学 中條武志らの開発した SPN を用いて評価
を行った.
把握したエラー内容から,エラー防止対策に効果的と
【方法】
思われる対策を診療放射線技師 5 名で立案した.その対策
は,
「有 効 性」
,
「コスト」
,
「実施の容 易さ」
の 3 項目につい
て,各 1∼3 点
(高得点ほどよい)
で評価を行い,3 項目の積
(1∼27 点)
を SPN とした.
【結果】
一般撮影・回診撮影で最も多かった
「患者を誤って撮
影したこと」
に対する効果的な防止対策案としては,
「患者自
身に氏名等を名乗ってもらう」
が 23.25 点で最も高く,次いで
「指差呼称の実施」
が 16.50 点であった.MRI 検査で最も多
かった
「磁性体の検査室内への持込み」
防止対策案としては,
「患者自身に口頭で確認する」
が 21.80 点,
「指差呼称の実施」
が 13.20 点であった.
【考察及び結論】
考案したエラー防止対策について SPN を用
いることで簡易的に評価することができた.しかし,実際に
は,各施設の職員がエラー防止対策の立案・評価を行うこと
で,より具体的かつ効果的なものになると考える.
316 可視化
(VTR)
を用いた医療安全教育の取り組み
坂本重己1,新藤博昭2,佐藤幸光3,鳥谷尾秀行4,
渋井二三男5
1)
日本医療科学大学 保健医療学部診療放射線学科
2)
日本医療科学大学
3)
公益社団法人地域医療振興協会
4)
秀明学園
5)
城西大学
【目的】
臨床実習事前教育の医療安全教育教材として,診療放
射線技師の業務を分野ごとにビデオ教材,1.画像診断学実
習
(一般撮影,MRI)
,2. 核医学診断学実習
(PET・SPECT)
,
3. 放射線治療学実習
(LINAC)
を作成した.診療放射線技師が
いかに医療安全に関して注意して業務を遂行しているか可視
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
化を通じて学生に認識させ,臨床実習を安全に終了するとと
もに医療安全に対する理解と意識の向上を図る.
【方法】
・臨床実習を控えた学生に,作成した可視化
(VTR)
教
材により事前教育を実施.
・本教材・教育方法についてアン
ケート調査を実施.
【結果及び考察】
・可視化することにより,医療安全に対する
認識が高まった.
・臨床実習中の医療事故に対する理解を深め
ることができ,不安が解消された.
・可視化による医療安全教
育は,文章や口頭による従来の教育に比べて有用であった.
317 MR 検査における安全管理の取組み〜東京都立病院
および関連病院の技師向けアンケート調査結果〜
佐藤 浩1,菊池俊英2,奥村昭雄3,山下 明4,
水上省一5,金谷知幸5,齊藤裕晃6,徳山武一7
1)
東京都立大塚病院 診療放射線科
2)
東京都立神経病院 神経放射線科
3)
保健医療公社東京都がん検診センター
4)
東京都立多摩総合医療センター
5)
東京都立駒込病院 放射線診療科
6)
東京都立墨東病院 診療放射線科
7)
保健医療公社豊島病院 診療放射線科
【目的】
MR 検査に従事する技師は,患者の着替えから入室,
検査終了まで常に,患者や周囲の状況に関し安全管理に努め
ている.今回,都立病院および関連病院の技師を対象とし,
日常の安全管理に関するアンケート調査を行った.リスクマ
ネージメントの観点から,集計結果をフィードバックし,MR
検査に対する安全管理の強化を目的とする.
【方法】
東京都立病院 10 施設,保健医療公社 6 施設,独立行
政法人東京都健康長寿医療センターの計 17 施設,152 名の
MR 検査に従事した経験のある技師に対し,アンケート調査
を行う.
【結果・考察】
都立病院と関連施設との技師層を比較すると,
年齢や技師としての経験年数が極端に異なる.人材育成を進
める上でクリアしなければならない問題点である.また,検
査をすすめていく中で,担当技師は患者の体内金属への不安
や造影剤のショックに対する危険性,救急患者への迅速な対
応,検査の傍ら別の業務の遂行など目には見えないストレス
を感じていることが伺える.患者が MR 検査を安全・安心に
終了するためには,日頃から事故防止の訓練と危険を予知す
る能力の習得に努める必要がある.
318 造影剤副作用報告書の有用性の検討
大澤三和1,佐藤久弥1,崔 昌五1,野田主税1,
岡部圭吾1,石田秀樹1,中澤靖夫2
1)
昭和大学病院 放射線部
2)
昭和大学 統括放射線技術部
【目的】
当施設では副作用症状が発生した場合,副作用報告書
を作成し保管している.この造影剤副作用報告書は,記録内
容を改善しながら 10 年が経過している.そこで今回は,過去
5 年間の造影剤副作用報告書より当院における造影剤副作用
の発生傾向を分析し,報告書の有用性について検討したので
報告する.
【方法】
過去 5 年間の造影剤副作用報告書より,当院で使用し
ていたヨード造影剤における造影剤副作用発生頻度,造影剤
別発生頻度,副作用症状および重篤度,副作用症状の発生
時間の推移を年度別に比較する.また,造影剤副作用報告書
が有用であった事例として,副作用発生患者に対する 2 回目
以降の造影剤使用対策について調査する.
2010 年 9 月
1121
【結果・考察】
造影剤の種類によって,副作用の発生頻度に違
いがあった.また,副作用が発生する時間は 10 分以内が最
も多く 90%を占めていた.副作用の症状は軽度と中等度症状
で 90%を占めていた.副作用発生患者に対する 2 回目以降
の造影剤使用対策として,商品名の変更,副作用に対する薬
剤の事前使用,単純検査への変更など,すべての事例でいず
れかの処置が取られていた.
【まとめ】
今回,過去 5 年間のデータを分析したことで,造影
剤の商品名に注意喚起を徹底することや副作用発症の確率の
高い時間までの観察の必要性,2 回目以降の造影剤使用対策
の必要性が明確になった.造影剤副作用報告書は,検査・治
療に対して安全で安心を担保するために有用であると示唆さ
れた.
319 放射線部内情報の統合管理の有用性について
阿部養悦1,坂本 博1,梁川 功1,引地健生2
1)
東北大学病院 診療技術部放射線部門
2)
栗原市立栗原中央病院
【目的】
近年,医療の質向上の観点より,適切な放射線機器の
保守管理,研修の実施等が求められている.また,これらに
付随した記録についても適切な管理が求められている.しか
し,施設によっては,検査室等が数カ所に分散配置されてい
ることも多く,情報が散在している例も少なくない.本院に
おいては,この問題を解消するための管理ツールを開発し,
これを第 66 回総会学術大会にて報告した.今回,この管理
ツールを用い,放射線部内情報の統合管理の有用性について
検討を行った.
【方法】
管理ツールを用い,装置基本情報の管理,装置の日常
管理,マニュアル管理等を行った.また,各種支援ツール等
を用いて職員の研修等を行った.
【結果・考察】
本院で開発した放射線部内の情報管理ツールを
用いて放射線部内の情報の管理を行った.本ツールを用いる
ことにより放射線部内情報を一元的に効率的に管理すること
ができ,放射線部内の情報及び記録の共有化に有用であっ
た.本ツール等の統合管理ツールの普及により,各施設にお
いて,放射線部内の情報管理が効率的に行えることが示唆さ
れた.
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
15:12〜15:42
放射線管理 CT(線量測定・他) 展示
座長:小山修司
320 薄型半導体検出器を用いた X 線 CT 装置のビーム
プロファイル測定
大村祐貴,佐藤 斉,五反田留見,江原真宏,
奈良昌敏,田上美里,根本宏美
茨城県立医療大学 保健医療学部放射線技術科学科
【目的】
X 線 CT 装置の体軸方向のビームプロファイル測定に
はフィルム,TLD,OSL などが用いられ,測定精度,測定に
要する時間,経費などの要因により使い分けられている.こ
こでは,薄型半導体検出器と OSL 線量計を用いて測定した
X 線 CT 装置のビームプロファイルを比較し,両者の測定法
の特徴を調べた結果を報告する.
【方法】
X 線 CT 装置
(ECLOS:日立メディコ)
と CTDI 測定用
ファントムを用い,薄型半導体 検出器
(CT Dose Profiler:
RTI)
と OLS CT 線量計
(Landauer)
により X 線 CT 装置のビ
ームプロファイルを測定した.シングルスキャンとマルチス
キャンの場合で,管電圧
(100 kV,120 kV,130 kV)
,スライ
10月15日
1122
日本放射線技術学会雑誌
ス厚
(0.625 mm,1.25 mm,2.5 mm,3.75 mm,5 mm,7.5
mm,10 mm)
,テーブルピッチ
(0.625∼1.625)
の組み合わせ
を変えて測定を行った.
【結果】
薄型半導体検出器を用いた方法はその場で結果を確認
できるが,OSL 線量計は結果を得るまでに時間がかかる.
ビームプロファイルの形状は相対的にほぼ一致した.OSL は
線量に換算された結果であるが,薄型半導体検出器は適切に
線量校正を実施して用いる必要がある.
321 X 線 CT の位置決め撮影時における体軸方向の線量
分布
山崎詔一
自治医科大学附属病院 中央放射線部
【目的】
X 線 CT の位置決め撮影では左右方向の線量分布は,
辺縁部分と比較して中心位置の線量分布が高くなるが,体軸
方向ではどのような線量分布になるか測定し検討を行った.
【方法】
イメージングプレートを寝台にセットし位置決め撮影を
行い,そのときの濃度変化を比較することにより線量分布の
状態を調査した.また寝台の移動方向やパラメータの違い,
装置間の差異についても比較を行った.
【結果】
位置決め撮影の際に助走をとる装置ととらない装置が
あり,後者の装置では位置決め撮影の開始直後に高線量の分
布がみられた.またこの高線量領域は CT のパラメータを変
化させても存在した.
【考察】
位置決め撮影開始直後に高線量領域がある CT 装置で
は,その領域に放射線感受性が高い組織が一致してしまわな
いように,寝台の移動方向を変える等の考慮をする必要があ
る.
322 CTDIw 測定に与える誤差要因
日比亮輔1,田中敬介1,松永雄太1,大塚智子2,
小林正尚3,片岡由美3,鈴木昇一1
1)
藤田保健衛生大学 医療科学部放射線学科
2)
藤田保健衛生大学大学院
3)
藤田保健衛生大学病院
【目的】
CTDIw 測定の際,CT 用電離箱と PMMA ファントムの
配置を常に一定にする必要があるが,ベッドが動くなど人的
誤差がある.測定配置の違いによる線量の変化を把握する.
【方法】
東芝社製の 320 列 CT 装置を用い,スライス厚は 2,
8,12,32,80,120,160mm とした.ガントリ中心と PMMA
ファントム
(16cmφ,32cmφ)
の中心を一致させ,その位置を
基準として CTDIw を測定した.線量計を基準からベッド側へ
1,2,3cm と移動させて線量を測定した.また PMMA ファン
トムを基準の位置からベッド側とガントリ側へ 1,2,3cm と
移動し,線量を測定した.
【結果】
基準の位置に対して,各スライス厚とも線量計の配置
のずれ,ファントムのずれが大きいほど,測定値は低下し
た.線量計を 3cm 引き出した場合は最大で 15%程度低下
し,スライス厚が大きくなるほど測定値は基準に近づいた.
線量計引き出しと,PMMA ファントムベッド側への移動は,
ほぼ同様の傾向になった.ガントリ側への移動は,移動距離
1cm で大きく低下した.CTDIw はスライス厚一定としたとき
2mm から 32mm では 1cm 引き出しで大きく低下し,2cm 引
き出し以降は変化が少なかった.80mm から 160mm では変
化は小さく,2cm 引き出し以降は大きく低下した.
【まとめ】
測定を行う際の線量計や PMMA ファントムの配置に
ずれが大きいほど,測定値,CTDIw ともに低下が大きくなる
ことが判明した.特に,表示スライス厚が小さいほど,差は
大きく生じることが判明した.
323 ガントリ傾斜時における CTDI 測定と評価
小林正尚1,大塚智子2,片岡由美1,井田義宏1,
木野村豊1,鈴木昇一3
1)
藤田保健衛生大学病院 放射線部
2)
藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科
3)
藤田保健衛生大学 医療科学部
【背景】
2002 年以降,CTDI
[Gy]
は国際電気技術委員会 IEC
60601-2-44 Ed.2 の勧告に準拠し医用 X 線 CT 装置の操作卓
に表示されている.2009 年勧告の Ed.3 では面検出器を考慮
した CTDI の定義を追加した.しかし,ガントリを傾斜させた
際の CTDI に関する基本的な報告はされていない.今回,ガ
ントリ傾斜時における操作卓表示の CTDIvol と測定した CTDIvol の比較を行い精度の評価を行った.また,測定時の問
題点を示唆した.
【方法】
線量測定は Aquilion CX,電離箱線量計
(Radocal9015)
,
PMMA ファントム 16cmφを使用した.スキャン条件は管電
圧 120kV,管電流 100mA,回転時間 0.35sec/rot,有効視野
240mm,スライス幅 32mm とした.ガントリの傾斜は -30˚
から 30˚ まで 5˚ 間 隔 で IEC Ed.3 に 準 拠した CTDI 測 定を
行った.
【結果】
操作卓表示の CTDIvol はガントリの傾斜に依存せず
15.2mGy を示した.測定した CTDIvol はガントリ傾斜 -25˚
から 25˚ において最大の差が 0.3mGy となった.±30˚ では
差が約 1mGy となった.
【考察】
CTDIvol はガントリの傾斜に依存せず一定の値を示し
た.傾斜をさせた際は PMMA ファントム 0,6 時方向に挿入
した電離箱における CTDI 測定が実効長の中心で測定が行え
ない問題がある.そのため傾斜角度が大きくなると線量が低
くなった.このような角度における CTDI の測定は従来の電
離箱線量計,PMMA ファントムでは困難であることを示唆し
た.
324 CT 透視検査用鉛エプロンの検討
平井隆昌1,村野剛志2,稲垣 明1,麻生智彦1,
梶谷敏郎1,福平貴之3
1)
国立がん研究センター中央病院
2)
国立がん予防・検診研究センター
3)
(株)
保科製作所
【目的】
IVR での CT 透視検査は,難易度の高い手技での一助
として利用されている.CT 透視は一断面で連続して照射を
行うため,患者からの散乱線による術者の被ばくが問題とな
る.今回,当施設における CT 透視検査の散乱線分布を確認
し,術者の被ばく低減を図るための鉛エプロンを作成した.
【方法】
ガントリー中央部に人体ファントムを配置し,直接線
と直接測定部より離れた位置 5,7.5,10,12.5,15,20,
30cm 地点でのファントム表面の散乱線を測定した.また,
ファントム に 鉛 エプ ロン 0.25,0.35,0.50,0.70mmPb を
覆った場合においても同様に測定した.胸部照射における頭
部,胸部,腹部,骨盤内の被写体散乱線を測定した.以上の
結果に基づき,最適な厚さ,大きさの鉛エプロンを作成した.
【結果・考察】
鉛エプロン 0.25,0.35,0.50,0.70mmPb を覆っ
た場合,鉛エプロン無しに比べて 5cm 地点で 68%,77%,
80%,81%減であった.胸部照射における頭部,胸部,腹
部,骨盤の被写体散乱線は 1.08mGy,253mGy,2.83mGy,
0.19mGy であった.この結果を踏まえて骨盤まで覆える大き
さ且つ,散乱線が多い場所にはエプロンを折り返して使用す
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
1123
る 60cm×60cm の 0.25mmPb 鉛エプロンを作成した.散乱
線が多い場所にはエプロンを折り返して 0.50mmPb 厚として
使用することで,散乱線を 75%以上低減できる.また,骨盤
まで覆える大きさの鉛エプロンを使用することで患者からで
る大部分の散乱線を遮蔽することができ,それによる術者の
被ばく低減が可能となる.
に適していることがわかった.
【結語】
従来の 3T システムでは頭部検査に重点を置いて設計
され,体幹部の外輪の信号低下や歪みを生じるのが一般的で
あった.しかし,今回導入されたシステムは照射する RF や
画像処理の補正技術により,画質の向上が認められ,画像診
断に有用であると考える.
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
15:42〜16:06
MR 検査 ハードウェアー 1 展示
327 3 テ ス ラに お け る Multi Transmit を 用 い た 4DTRAK の検討
濱口裕行,中西光広,杉森博行,石坂欣也,
水戸寿々子,田村弘詞,横山英辰,仲 知保
北海道大学病院 診療支援部
(放射線部)
(以下 4D【背景】
4D time-resolved angiography using keyhole
TRAK)
は,高時間分解能を可能とする 3D 高速撮像法であ
る.RF 送信が従来のシングル RF トランスミット
(以下 ST)
の 3 テスラ MRI で使用した場合,Specific Absorption Rate
(以下 SAR)
によりパラメータが制限されていた.Multi Transmit
(以下 MT)
は,局所 SAR の上昇を低減させパラメータ制
限が ST に比べ緩和される.そこで本研究では MT を用いた
場合の 4D-TRAK について検討を行ったので報告する.
【方法】
使用装置は Philips Achieva 3.0T TX,RF コイルは 32ch
torso cardiac coil を使用した.MT による効果を調べるために
ST と比較検討した.検討したパラメータは flip angle
(以下
FA)
,repetition time(以下 TR)
である.体内の血管を模した
ファントムにて検討を行った.
【結果】
MT を使用すると FA を大きくすることができたが,血
管と背景とのコントラスト比には大きな差は見られなかった.
TR は短く出来るので時間分解能の向上が見られた.
【考察】
FA を大きくしていくとコントラスト比は一定の値に収
束していくので,MT を使用して FA を大きくしても ST に対
してコントラスト比に大きな違いが見られなかったと考える.
TR は MT を使用することにより短くすることができ時間分解
能が向上するので,有効であると考える.
座長:小林正人
325 MRI 装置の SNR 経時変化
後藤政実1,藤井佳太1,宮地利明2,井野賢司1,
飯田恭人1,矢野敬一1,大友 邦3,J-ADNI 研究グループ4
1)
東京大学医学部附属病院 放射線部
2)
金沢大学 医学系研究科保健学専攻
3)
東京大学医学部附属病院 放射線科
4)J-ADNI
【目的】
J-ADNI
(Japanese Alzheimer's Disease Neuroimaging
Initiative)
などの多施設参加型脳容積評価研究では,複数種
の装置から得られたデータを同じグループ解析に使用するた
め,画質を統一することは大きな課題である.また,同じ装
置で得られた画像の画質に変化がないかをモニターする必要
がある.モニターに使われる一つの要因として信号対雑音比
(SNR)
があるため,SNR の日常的経時変化を調査することを
目的とする.
【方法】
4 つの装置において ADNI ファントムを約 1 月の間に
11 回撮像し空中信号法にて SNR の変化比率
(%)
を調査した.
【結果】
(protocol:最大値,最小値)
,
(GE3T protocol:9.85%,
,
(SIEMENS
,
(GE1.5T protocol: 10.1%,-6.04%)
-4.64%)
protocol: 9.63%,-5.84%)
,
(TOSHIBA protocol: 5.87%,
.
-4.55%)
【結論】
したがって,4 つの MRI システムにおける SNR の変
化比率は,約 1 ヵ月間で 11%未満であり,それよりも大きな
変化が生じた場合には,装置の不具合を疑うことができる.
326 最新 3T MRI システムの画質評価
沼本健一1,廣木一弘1,轟 圭介1,杉村 瞳1,
渡邊博之1,田原孝浩1,平野雅弥2,山田 実3
1)
埼玉医科大学総合医療センター
2)
埼玉医科大学病院
3)
埼玉医科大学国際医療センター
【背景】
3T MRI システムが臨床現場で使用され久しくなるが,
近年では全身領域の撮像に重点を置いた,より広いボア径を
持った 3T MRI システムが開発されている.
【目的】
最新の 3T MRI システムの画質評価を行う.
【方法】
MRI システムはシーメンス社製 3.0T Verio
(VB17)
,
最 大 傾 斜 磁 場 強 度 45mT/m,スリューレート 200mT/m/s
(VQ-engine)
,ボア径 70cm である.また,比較のために使
(VB17)
,
用した 1.5T システムは同社製 MAGNETOM Avanto
最大傾斜磁場強度 45mT/m,スリューレート 200mT/m/s
(Qengine)
,である.ボア内を十分に満たすボディーファントム
を撮像して得られた MRI 画像より ROI を作成してこの ROI
値より信号の均一性の分布を調べた.また,1.5T のシステム
でも同様の測定を行って比較した.
【結果】
従来の 1.5T のシステムでは,撮像領域内の画質の均
一な部分がほぼ球状になっているのに対し,新しい 3T のシ
ステムでは円柱状に分布
(TrueForm)
しており,体幹部の計測
2010 年 9 月
328 CAROTIDS COIL の性能評価
濱崎 望,佐藤秀二,谷口昌穂,宇野健二,
長澤 徹
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線部
【目的】
CAROTIDS COIL は,頸動脈 plaque image を対象と
した 4ch.phased array coil である.今回我々は,plaque image に 対 する CAROTIDS COIL と,通 常 使 用されている
Neck MATRIX coil・4cm Loop coil の性能評価の比較,また,
CAROTIDS COIL の他部位撮像への検討を行ったので報告す
る.
【使 用 装 置】
SIEMENS 社 製 MAGNETOM Avanto 1.5T,
MACHNET CAROTIDS COIL
【方法】
ファントムにて各コイルの SNR,均一性,感度特性の
測定及び,感度補正 filter 使用前後での物理的評価.本研究
の趣旨を理解したボランティアにより,頸部 plaque image 撮
像,CAROTIDS COIL にて他部位の視覚的評価を行った.
【結果・考察】
SNR,感度特性から,頸動脈 plaque image に
対する CAROTIDS COIL の有用性が示唆された.しかし小径
口コイルで感度域の狭いことから,設定位置に十分の注意が
必要である.4ch.phased array coil である CAROTIDS COIL
は,高い SNR を有するためパラレルイメージングを用いた短
時間撮像で,撮像領域の狭い四肢領域での応用が可能であ
ると考えられる.
10月15日
1124
日本放射線技術学会雑誌
第 4 会場
(桜 1)
展示 A
16:06〜16:36
MR 検査 ハードウェアー 2 展示
座長:金沢 勉
329 脳 1H-MRS においてコイル選択が局在法別に及ぼ
す影響
菊池千絵,井上光広,仙田 学,大川浩平,
田口純一,稲田耕作
石心会新緑脳神経外科
【背景・目的】
当院では放射線壊死と再発の鑑別目的に 2DCSI
を,Glioma の浸潤域把握に 3DCSI を施行しているが,MRS
のみでなく灌流画像併用にて Sensitivility 上昇が期待できる.
MRS では均一性に優れた QD コイルを使用しているが,灌流
画像では PhasedArray コイル
(以下 8ch コイル)
が優位であ
る.今回我々はコイル選択が局在法別に及ぼす影響を調べ,
MRS にコイル依存性はないか検討した.
【方法】
各コイルにて代謝物 integral から相対値・均一性を
(SVS・2DCSI)
求め,また 3DCSI においては Z 軸方向への影
響も調べた.また健常者ボランティア脳においても同様の検
証を行った.
【結果】
SVS と 2DCSI の代謝物相対値はコイルに関与せず近
似.また CSI の均一 性もコイル間では変 化しなかった.
3DCSI では,8ch コイルにて X-Y 面に各 integral 差を認めた
が,両コイルの相対値は近似した.しかし Z 軸方向各外側ス
ラブの測定値に一貫性はなかった.また CSI では 2D・3D 間
の相対 値は異なった
(両コイル)
.健常者 脳では X-Y 面の
NAA は両コイル同様の分布を示し,後頭葉任意の voxel にお
ける NAA/Cho・NAA/
(Cho+Cr)
も近似した.
【考察・結語】
両コイル SVS・2DCSI 共に測定位置に依存せ
ず相対値も近似し,灌流画像を考慮すると 8ch コイルへの移
行が有意といえる.2D・3DCSI 間の相対値は変化したが,コ
イルによる依存はない.相対値差は CSI マップのレンジ調整
にて視覚的に同様の分布を捉える事は可能である.また Z 軸
方向各外側スラブは Chemicalshift や Contamination を受け
やすく評価に不適切である.
330 コイルセッティングの違いによる画質変化
長澤宏文,曽根原純子,宇津野俊充,廣井建太,
梶谷敏郎
国立がん研究センター中央病院 放射線診断部
【目的】
臨床での患者ポジショニングの際体型によりコイルの
配置が変わる.このコイル配置の違いによる画質への影響を
確認する為,昨年新規導入された 32ch Body Matrix coil と従
来使用していた 12ch Body Matrix coil を使用し画質を比較,
検討する.
【方法】
コイルを頭尾方向に 30 度,0 度
(水平)
,-30 度の角度
に傾けその他の条件は一定にした状態で直径 22cm の球体
ファントムを T1WI にて撮像を行う.また感度補正フィルタ
有り,無しの状態でも撮像を行いそれらの均一度,SNR,各
方向のプロファイルを求めた.
【結果・考察】
SNR において 2 種のコイルとも 0 度の画像が
角度付きよりも約 10∼20%すぐれた.また,32ch コイルの
方が角度による差が大きかったが,32ch コイルでの撮影の方
がどの角度で撮影しても 12ch コイルより良好な結果が得ら
れた.均一度において 12ch コイルの 0 度で約 50%,角度付
きで約 60%,32ch コイルではすべての角度で 81∼85%で
32ch 撮影の方が角度を付けた影響が少ない結果となった.
また,フィルタ無しの画像では 32ch コイルが 12ch コイルよ
りも劣る結果となったがフィルタの使用により改善された.こ
れらはコイルの設計やサイズ,配列の違いによりコイル間の
画質に違いが出たと考えられる.
【結論】
コイル配置の違いによる画質への影響を 2 種のコイル
にて確認する事が出来た.コイル設置の角度は画像に影響を
及ぼし重要でコイルの設計により画質への影響に違いがある
為,特性を良く理解する必要がある.
331 8chBrain コイルにおけるスライス間の信号変化の
検証
早川 勧,平田洋介,小野政敏
岩手医科大学附属病院 中央放射線部
【目的】
バージョンアップに伴い 8chHighResBrainArray
(8chBrain)
コイルが使用可能となり臨床で使用したところ,撮像
枚数の中で奇数画像は信号値が高く偶数画像は低くなるとい
う信号変化が見受けられた.そこで 8chBrain コイルに関して
以下の検証を行った.
【方法】
1. SE 法および FSE 法における信号値.2. スライス枚
数の違いによる信号値.3. SE 法における TR の変化に対す
る信号比.4. スライス厚とインターバルを変えた時の信号
値.5. QDHEAD および 8chBrain コイルの差分法および 5 定
点差分法による SNR.6. スライス厚
(FWHM・FWTM)
の計測.
【結果】
信号変化は SE 法および FSE 法両方において起きて
いたが,SE 法の変化が大きかった.8chBrain の SNR は高
く,QDHEAD の約 1.4 倍であった.TR を延長させるとスラ
イス間の信号変化は少なくなった.スライス厚に対してイン
ターバル間隔を大きくしても信号変化は少なくなった.撮像
枚数を徐々に増しても信号変化は変わらず見受けられたが,2
回収集撮像にすると信号変化はおこらなかった.設定スライ
ス厚に対して QDHEAD の方が 8chBrain より誤差は少なく,
FWTM ではより 8chBrain で悪い結果となった.
【結論】
信号変化は SE 法および FSE 法両方で生じていた.し
かし 8chBrain のスライスプロファイルは QDHEAD より悪
く,ある条件下ではクロストークの影響と思われるアーチファ
クトが出現しやすい.スライス厚に影響を与える因子として
選択励起パルスの印加時間が最も関係するが,今回のように
コイル間で RF パルスの送受信方法が異なることやコイル形
状が違うことも影響のひとつである.パルスとコイルのマッ
チングが悪い場合には同じような現象が現れると考えられ,
各コイルのスライス厚を計測し臨床で影響のないシークエン
スで撮像する必要があると思われる.
332 Atlas System を用いた円背患者の頭部 MRI の検
討
中岡宏安,星谷知也,山崎さゆり,吉倉 健,
木村喜昭
公立山城病院 放射線科
【背景・目的】
高齢化に伴い円背の患者が増加傾向でポジショ
ニングに困ることがある.今年導入した Atlas では様々なコイ
ルを組み合わせて撮像することができる.ヘッドコイルの
Base 部分とφ 200 フレックスコイルを組み合わせることで頭
部撮像に使用可能か検討を行った.
【使 用機 器】
MRI 装置東芝 社製:EXCELART Vantage powered by Atlas,富士製:SYNAPSE VINCENT
【方法】
1)
頭部ファントム撮像プロトコルにてファントムを Atlas SPEEDER ヘッドコイル・ヘッドコイル Base のみ・ヘッ
ドコイル Base & φ 200 フレックスコイルとの組み合わせの
3 種類で Axial 断面と Sagittal 断面を撮像し WS にて解析し
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
感度分布の観察を行った.2)
1)
より撮像した画像を用いて
SNR の測定を空中信号法を用いて行った.R-L・A-P・H-F
方向の分布の測定も行った.
【結果】
1)
感度補正なしはヘッドコイル以外は両断面共に前方
に感度低下とむらが生じ補正ありのはヘッドコイルとヘッドコ
イル Base & 20F コイルにおいて Axial 断面は中心が高く周
囲が低い感度分布を示した.Base のみではファントム外にノ
イズが出現した.Sagittal 断面では感度の高い順はヘッドコイ
ル・ヘッドコイル& 20F コイル・Base のみであった.2)
感度
補正なし・あり共に SNR の高い順はヘッドコイル・ヘッドコ
イル Base & 20F コイル・ヘッド Base のみであった.
【考察】
今回の結果,頭部 MRI 検査でポジショニングに困り
Head Anterior Coil が装着できない時は代わりに 20F コイル
を使用すると感度分布・SNR 共にヘッドコイルに近い値が得
られ有用であった.
333 Atlas System を用いた円背患者への臨床評価
星谷知也,中岡宏安,山崎さゆり,吉倉 健,
木村喜昭
公立山城病院
【背景・目的】
近年の高齢化に伴い円背の頭部 MRI 検査も増
加し,頭部コイルが正常に接続できず検査に支障をきたすこ
とがある.今年導入した Atlas では,様々なコイルを組み合
わせて撮像することが可能になったため,ヘッドコイルの
Base 部分とφ 200 フレックスコイルを組み合わせることで頭
部 MRI 検査に対応できるかの検討を行った.
【使用機器】
MRI 装置東芝社製:EXCELART Vantage powered
by Atlas,Coil 東芝社製:Atlas SPEEDER ヘッドコイル
(12ch)
φ 200 フレックスコイル
【方 法】健 常 ボ ラン ティア 5 名を SE 法 T1WI に て Atlas
SPEEDER ヘッドコイル,ヘッドコイル Base & φ 200 フ
レックスコイル
(以下,20F コイル)
の 2 種類について可能な
限り同一部位の Axial 方向を撮像した.
(SE 法 TR677.7ms
TE=10ms FA=70 スライス厚=5mm ギャップ=1mm マトリ
クス 224*320 NAQ=1 FOV=230mm)
1)
得られた画像を用
いて白質・灰白質の CNR を測定した.2)
得られた画像を用
いて MRI 検査に携わる診療放射線技師 4 名で 3 段階視覚評
価を行った.
【結果】
それぞれの白質・灰白質の CNR 比は 1:0.69 となり
SNR での検証に近い結果となった.2)
視覚評価では 20F コ
イルを用いた方がスコアは低くなった.
【考察】
信号強度の弱い 20F コイル側の感度補正によるノイズ
成分増加や,同一位置で CNR を測定するため位置依存性の
影響を強く受けたものと考える.視覚評価では上部のノイズ
が目立つ結果となったが頭部コイルが正常接続できない場合
でも 20F コイルを用いることで円背患者の頭部 MRI 検査に
有効であることが示唆された.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
9:20〜9:50
X 線検査 血管撮影(画質) 展示
座長:加藤 守
334 新しい Contrast Curve による DSA 画像の評価
今田由香理,東 丈雄,山口和也
大阪大学医学部附属病院 医療技術部
【目的】
近年,FPD 搭載の血管造影装置が普及し,DSA 画像
の大幅な画質改善が成されている.DSA 画像は診断や IVR
手技の参考画 像に用いられ,装置に設 定される Contrast
2010 年 9 月
1125
Curve は DSA 画像の画質を決定する重要な因子の 1 つであ
る.本研究では腹部血管系 IVR
(HCC の TACE)
を対象として
新たな Contrast Curve を使用したときの DSA 画像の画質評
価を行ったので報告する.
【方法】
Allura Xper FD20
(PHILIPS 社製)
を使用し,現在使用
中の Contrast Curve と新たに設定した Contrast Curve の画
質を比較,検討した.1)
ファントム内の造影剤濃度を変化さ
せて造影剤濃度とデジタル値の関係を求め,コントラスト,
CNR を算出した.2)
CDRAD ファントム
(東洋メディック社
製)
を撮影し,CDRAD Analyzer
(Artinis Medical Systems BV
社製)
にて Contrast detail curve
(CDC)
および The inverse image quality figure(IQFInv)
の評価を行った.
【結果・考察】
新たな Contrast Curve は 1)
高コントラストで,
Noise が多く全体的に CNR が低いが低コントラスト領域では
逆転していた.2)
使用中の Contrast Curve より IQFInv は常
に高く,低コントラスト分解能では CDC より深さが 0.8
[mm]
から 0.4
[mm]
に,微小検出能では直径が 0.8
[mm]
に対してか
ら 0.6
[mm]
に向上した.これによって新たな Contrast Curve
を使用した方が,TACE の DSA 画像ではより淡く小さな腫
瘍陰影も検出することが可能であると考えられる.
【結論】
新たな Contrast Curve は低コントラスト分解能,微小
検出能ともに高く,Hypo vascular な腫瘍の検出に有用であ
ると考える.
335 高電圧撮影と高濃度造影剤の組み合わせによるコー
ンビーム CT の画質改善
西尾広明,山本和幸,瀬尾 誠,原口信次
東海大学医学部付属病院 放射線技術科
【目的】
コーンビーム CT
(CBCT)
は FPD 搭載 C アーム装置に
より CT のような画像を得るシステムである.近年,CBCT
における希釈造影剤によるストリークアーチファクト
(SA)
低
減の有用性が報告されているが,希釈作業の煩雑さや希釈に
よる DSA 画像のコントラスト低下などの問題がある.今回,
高電圧撮影と高濃度造影剤の組み合わせにより,SA の低減
を試みたので報告する.
【方法】
23cm φの円柱寒天ファントムに,造影剤を封入した
ファントムを挿入し,以下の条件で CBCT 撮影を行い,得ら
れた AX 画像のプロファイルを測定した.
(1)
撮影時間変化
(4s,8s)
(2)
管電圧変化
(Cu フィルター+,−)
(3)
造影剤濃度
変化
(25%,50%希釈)
【結果・考察】
撮影時間が増えるほど,造影剤濃度が低いほ
ど,また,高濃度造影剤で高電圧撮影を行うことで SA が減
少した.SA はプロジェクション数に依存しており,撮影時間
が増えるほど低減される.また,被写体コントラストにも依
存し,造影剤濃度が低いほど質量減弱係数が低下し,被写体
コントラストが下がり SA は低減したと考える.一方,高電圧
撮影で実効エネルギーを高くし線減弱係数を低下させ,被写
体コントラストを下げることでも,SA が低減することができ
ると考える.希釈作業の煩雑さや DSA 画像でのコントラスト
低下の問題を考慮すると,希釈造影剤を用いることなく SA
の低減ができる,高電圧撮影と高濃度造影剤の組み合わせは
有用であることが示唆された.
10月15日
1126
日本放射線技術学会雑誌
336 3D Angiography における血管描出能の基礎的検
討
小野勝範,茅野伸吾,高野博和,白鳥和敏,
中田 充,立花 茂,梁川 功
東北大学病院 診療技術部放射線部門
【目的】
近年 IVR に 3D Angiography が多用されており,IVR
支援ツールとして必須なものとなっている.今回我々は 3D
Angiography の血管描出能について 2 機種の血管撮影装置を
用いて基礎的検討をおこなった.
【方 法】撮 影 装置は AXIOM Artis dBC
(SIEMENS)
,Infinix
Celeve-i INFX8000V
(TOSHIBA)
を用い,血管ファントムは
DSA ファントム
(DSA-2 型:京都科学)
と自作ファントム,画
像ワークステーションは ZIOSTATION
(ziosoft)
を用いた.検
討項目として血管ファントムの走行の違いについて,造影剤
の濃度の違いについて,収集視野サイズ・マトリックス数の
違いについて,2 機種で比較検討を行った.
【結果】
血管ファントムの走行を変化させた場合,アーム回転
軸に対する角度が大きくなるほど描出能は低下し,狭窄部に
関しては陰影欠損が生じた.また,造影剤濃度を変化させた
場合,高濃度では細かな血管の描出能は向上したが,血管走
行によってはアーチファクトを増強させる結果となった.収集
視野サイズに関しては小さい視野サイズの方が描出能は向上
した.これらの結果から 3D Angiography 使用の際は,手技
内容や解剖を十分に把握した上で収集視野サイズの選択,血
管走行によってはアーチファクトの影響を考慮し,2D Angiography との比較を行いながら IVR をおこなう必要がある
と思われた.
337 頭部血管内手術におけるロードマップ画質改善の検
討
安田光慶1,先山耕史1,内山裕史1,浅沼眞一1,
高橋俊行1,鈴木義曜1,加藤京一1,中澤靖夫2
1)
昭和大学藤が丘病院
2)
昭和大学 統括放射線技術部
【目的】
血管撮影装置を用いた血管内手術において,カテーテ
ルを病変部位まで安全に進めるための,ロードマッピング機
能
(以下マップ)
は重要である.しかし様々な条件によりマッ
プの血管描出が低い場合がある.そこでマップ画質に影響す
ると考えられる条件を変化させ,改善を試みたので報告する.
の異なる 3 本の模擬血管に対
【方法】
それぞれ内径
(4∼2mm)
し,生理的食塩水
(以下生食)
を 1.0ml/sec で灌流させた状態
で,総量 10ml 一定で造影剤注入速度を,1.0∼10.0ml/sec 間
で 6 段階変化させた.次に造影剤注入速度・注入量一定で,
X 線管電圧を 70∼110kV 間で 4 段階変化させ画像を収集し
た.以上の各条件によって得られた,マップ模擬血管像の近
位∼遠位部の SNR・CNR を測定し,マップ改善につながる
条件があるか検討を行った.
【結果・考察】
造影剤の注入速度を変化させた結果,SNR・
CNR ともに 3ml/sec まで高値を示し,その後 10ml/sec まで
ほぼ変化はなかった.これは,灌流する生食よりも造影剤を
急速注入することにより,造影剤が生食により希釈される割
合が小さくなったためと考えられた.また,X 線管電圧を
70kV から 110kV に変化させた結果,SNR で 20%,CNR で
は最大 60%の低下がみられた.これは,管電圧が高くなるこ
とにより被写体コントラストが低下したためと考えられた.
【まとめ】
マップを改善するには,目的とする血管の血流速度
に応じ造影剤を急速注入し,且つ管電圧を低く設定すること
により改善される.
338 Dynamic 3D Roadmap における精度評価
池亀 敏1,阿部雅志1,原田耕次1,渡邊英樹1,
河原崎昇1,伊藤慎悟2
1)
日本医科大学千葉北総病院 放射線センター
2)
(株)
フィリップスエレクトロニクスジャパン
【目的】
2010 年 3 月当院に FPD 搭載血管撮影装置が導入され
た.本装置には,3D 画像をライブ 2D 透視像に重ね合わせて
リアルタイムなロードマップをもたらすことのできる Dynamic
3D roadmap 機能が搭載されている.この機能を用いること
により,脳動脈瘤の瘤内塞栓術のナビゲーションなどでワー
クフローの向上が図れるのではないかとの期待が寄せられて
いる.しかし,血管内治療は高い精度の要求される手技であ
り,その補助をする機能にも相応の精度が要求される.そこ
で,今回 Dynamic 3D roadmap における精度の評価を行い,
本機能の特徴を考察することができたので報告する.
【方法】
Dynamic 3D roadmap の精度評価として,金属の円柱
を格子状に各 9 点置き,各条件
(視野サイズ等)
を変更し,3D
像とライブ 2D 透視像のずれについて調べた.撮影装置は
Philips 社製 Allura Xper FD20 を用いた.
【結果】
視野サイズの変更,ローテーションおよびアンギュ
レーションパラメータの変更,SID の変更においては 3D 像と
ライブ 2D 透視像は高い相関を示した.テーブル位置の変更
では,3D 撮影中心より離れるほど 2D 透視像とのずれが生じ
た.
【考察】
C アームの回転,SID 変更,撮影視野変更によるずれ
に関しては補正が行われているが,テーブル移動に関しては
補正が行われず,若干のずれが生じた.Dynamic 3D roadmap 併用の血管内治療においては,テーブルを動かした場
合,3D 撮影中心にテーブル位置を戻し本機能を用いること
が望ましい.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
9:50〜10:14
X 線検査 乳房撮影(画質・医療安全) 展示
座長:平井和子
339 デジタルマンモグラフィ装置の基本特性−視覚評価
による検討−
安藤緑子1,宮島佳子2,中村智哉2,川又郁夫2,
五味 勉1
1)
北里大学 医療衛生学部
2)
東海大学医学部付属八王子病院
【目的】
マンモグラフィ装置がアナログからデジタルへ転換
し,現在までに多くの基礎・臨床評価が報告されている.今
回我々は,GE 社製 Senographe DS におけるフルオート撮影
の基本的な特性を把握するために,主に低コントラスト分解
能を視覚評価によって検証した.
【方法】
CDMAM ファントムの上下に PMMA ファントムを配置
し,PMMA ファントム厚を変化させながら各モード別にフル
オート撮影を行った.撮影モードは,標準的な STD モード,
線量優先の DOSE モード,画質優先の CNT モードである.
併せて,平均乳腺線量
(AGD)
の測定も行った.試料は,高精
細モニタ上で診療放射線技師 5 名によって視覚評価を行い,
C-D 曲線を作成後,IQF を算出して低コントラスト分解能を
評価した.加えて,CNR についても精度管理マニュアルに準
じた実験配置を採用し,低コントラスト分解能評価と同様な
撮影モード及び可変 PMMA ファントム厚を使用した撮影を行
い評価した.
【結果】
CDMAM ファントムを使用した低コントラスト分解能
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
評価及び CNR による評価について,各撮影モード間の IQF
値は薄い PMMA 厚の場合に格差が生じ,厚い PMMA 厚の場
合には僅差となる傾向となった.特に薄い PMMA 厚の場合
では,IQF,CNR 値は CNT モードが最も高値となる傾向と
なった.
【考察】
厚い PMMA 厚では各撮影モード間の IQF,CNR 値が
僅差であることから,更なる定量評価の検討を加えることに
よって,画質と被ばく線量を考慮に入れた最適撮影モードの
選択が示唆できると思われる.
1127
れた.
乳腺のデジタル値はヒストグラム解析から決定されて
【考察】
いるため,乳腺構造によって階調パラメータが変化してもほ
ぼ一定の値を示した.それに対し脂肪のデジタル値はヒスト
グラム解析から決定されていないため,乳腺構造による階調
パラメータの変化が大きく影響し,デジタル値のばらつきと
なって表れた.以上のことより今回求めた乳腺と脂肪の CNR
において乳腺構造による違いが認められたと考えられる.
342 演題取り下げ
340 デジタルマンモグラフィ装置における至適撮影条件
の検討−管電圧について−
後藤由香,由地良太郎,野崎美沙子,杉尾智美,
大矢慶美,田沼隆夫,大橋冬美,大河原伸弘
聖マリアンナ医科大学病院
【目的】
我々は直接変換型 FFDM(Full Field Digital Mammography)
装置における撮影条件高電圧化の是非について,第
66 回日本放射線技術学会総会学術大会にて基本的物理特性
の観点から検証した.そして同大会にて画像処理を含んだ
CNR の測定方法について提唱し,報告した.そこで今回は提
唱した CNR の測定方法を用いて管電圧が臨床画像に与える
影響を検証したので報告する.
【方法】
当院にて皮下全摘乳腺切除術および全乳房切除術を
施行し摘出された切除検体を,平均乳腺線量
(AGD)
一定下で
管電圧のみを変化させた撮影条件で撮影した.得られた画像
から本装置のヒストグラム解析によって決定される階調パラ
メータ
(基準点 1,基準点 2 ,WW,WL)
を抽出し比較検討し
た.次に切除検体を撮影した撮影条件で同様にステップファ
ントムを撮影し,切除検体で得られた階調パラメータを付加
し,画像処理を含んだ乳腺と脂肪の CNR を求めた.
【結果】
すべての切除検体画像の階調パラメータには一様の傾
向がみられた.また AGD 一定下で管電圧のみを変化させた
場合の CNR はほぼ変化がなかった.
【考察と結論】
切除検体と新しく提唱した CNR の測定方法を
用いたことにより,臨床に近い状態で管電圧が臨床画像に与
える影響を検証することができた.今回の CNR の結果より,
撮影条件の高電圧化は妥当であると考えられる.
341 デジタルマンモグラフィ装置における階調パラメー
タの検討〜乳腺構造による違いについて〜
由地良太郎,後藤由香,大矢慶美,齋須貴史,
田沼隆夫,大河原伸弘
聖マリアンナ医科大学病院
【目的】
我々は第 66 回総会学術学会において画像処理を含ん
だ CNR の測定方法について検討を行ったが,乳腺構造に
よって階調パラメータが変わるため,乳腺構造による検討が
課題となった.そこで今回,乳腺構造による階調パラメータ
の変化と CNR の検討を行ったので報告する.
【方法】
臨床画像から管電圧 31kV で撮影された画像を選び,
乳腺構造別に分類した.選んだ臨床画像から階調パラメータ
(基準点 1,基準点 2,WW,WL)
を抽出し,乳腺構造による
階調パラメータの違いを求めた.次に乳腺構造別の撮影条件
でステップファントムを撮影し,それぞれの階調パラメータを
付加して,画像処理を含んだ乳腺と脂肪による CNR を測定
した.
【結果】
階調パラメータは乳腺密度が高くなると WW が広くな
り,基準点 1,基準点 2,WL はほぼ変わらなかった.今回求
めた乳腺と脂肪による CNR は乳腺構造による違いが認めら
2010 年 9 月
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
10:14〜10:50
X 線検査 トモシンセシス 展示
座長:平野浩志
343 トモシンセシスにおける症例別最適再構成フィルタ
の検討
森下あゆ美1,横井知洋1,能登公也1,高 悦郎1,
河村昌明1,山本友行1,佐藤行雄2
1)
金沢大学附属病院 放射線部
2)
島津製作所 医用機器事業部
【目的】
トモシンセシスは高精細な断層画像が作成可能であ
り,金属症例においては,アンダーシュートを軽減させる再
構成フィルタについての研究も多く報告されている.しか
し,これを軽減することにより,微細な骨梁構造も減少す
る.当院では整形外科医より,創外固定,人工骨,人工関
節,骨癒合の評価において臨床的有用性が期待されている.
今回,新たな再構成フィルタを作成し,医師が重視する骨梁
構造を優位に描出し,各症例に応じた最適な再構成フィルタ
の臨床評価を行った.
【方法】
装置は X 線透視装置 Sonialvision safire2
(島津製作所
社製)
を使用した.人工股関節置換術後症例,骨折固定術後
症例,人工骨症例を対象とした.5 種類の標準再構成フィル
タにそれぞれ 2%,4%,6%の DC 成分
(直流成分)
を加えた
再構成フィルタを作成した.ImageJ を用いた画像評価,及
び医師と診療放射線技師による視覚評価を行った.
【結果・考察】
画像評価では,全ての標準再構成フィルタに
DC 成分を増すことでアンダーシュートの低減と,骨梁成分
の減少を確認した.骨梁構造を観察するには低い DC 成分が
有効であった.また,DC 成分を固定し標準再構成フィルタ
を変化させることで,骨梁の描出に差が見られた.医師の視
覚評価では,微細な骨梁構造を観察できる再構成フィルタの
評価が高かった.体内金属の特徴を考慮し骨梁構造を描出す
ることで,各症例における再構成フィルタの決定が可能と
なった. 344 画像処理ソフトを用いた,トモシンセシスの再構成
原理の簡易な実験法
油原俊之,島田 豊,森 孝子,田村美恵子,
木村 潔,町田治彦,上野惠子
東京女子医科大学東医療センター
【目的】
トモシンセシスの画像再構成過程の一つとして,異な
る断層面の画像を構成する方法について,専用装置を使用せ
ず,汎用の画像処理ソフトをもちいることにより,簡易に実
験する方法を検討した.
【方法】
1)
デジタル出力が可能な一般撮影装置を用い,被写体
とともに,再構成断面の目安となるマーカー
(高コントラスト
を再構成しようとする高
で,画像上位置の特定が容易なもの)
10月15日
1128
日本放射線技術学会雑誌
さに配置し,これが写りこむように撮影する.角度や位置を
変えて撮影を繰り返し,必要とする画像データを収集する.
2)
収集した各画像から再構成しようとする断面の高さに相当
するマーカーの位置を特定する.3)
画像処理ソフトにより,
各画像のマーカーの位置をそろえるように合成し,再構成画
像を作成する.
【結果・考察】
再構成断面はマーカーの数により限定されるが,
画像収集方向の形状
(断層軌道方式)
が直線以外の円軌道な
どにも対応し,任意の撮影回数や振角など撮影条件を変更し
ても画像化が可能であった.
【結論】
トモシンセシスの各断面の再構成方法について,関心
断面にマーカーをいれた画像データを,画像編集ソフトで重
ね合わせることにより作成が可能であった.この方法を用い
ることにより,撮影条件の制限が少なく,各撮影要素が画像
やアーチファクトに対する影響の観測のための基礎検討を行
なう上で適した実験方法であり,さらに再構成方法について
の概念を複雑な計算を用いずに,簡易で直感的に理解するこ
とが可能と考える.
345 トモシンセシスの被写体位置の違いによる画像の変
化の検討
小山雄幸,池澤勇志,辻本加奈子,今井宜雄
NTT東日本関東病院 放射線部
【目的】
トモシンセシスは FPD の登場により実現した新しい概
念の断層撮影法であり,近年注目を集めている.撮影方法は
機械的な制約もあり,収集数や X 線管振り角などの自由な設
定が出来ないことが多い.このような状況において今回我々
は被写体と X 線受像面間距離の変化による画像の変化を検
討したので報告する.
【方法】
1.X 線受像機前面からの距離の違いによるスライス厚
の変化を評価するため,受像機前面に対して 45 度に傾斜し
て張った直径 0.2mm のスチールワイヤーを断層撮影し,得ら
れた画像のプロファイルカーブから半値幅をスライス厚と仮
定して比較検討した.2.臥位トモシンセシスはテーブル上で
の通常の撮影に加え,受像機前面に直接ポジショニングが可
能であったことからテーブル上と受像機前面上でのファント
ム画像の評価を行った.
【結果】
1.X 線管振り角 40 度,収集数 40 で得られた画像の
プロファイルカーブから半値幅を求めた結果,受像機前面か
ら離れるほどその値は小さくなった.2.テーブル上と受像機
前面上のファントム画像を評価した結果,受像機前面上のほ
うがリップルの発生は観察領域からわずかに離れ良好な結果
となった.
【結論】
X 線受像機前面からの距離によってスライス厚やリッ
プルの発生に変化が見られたことは被写体厚や位置によって
は,画像再構成のパラメーター等を考慮する必要があると考
えられる.
346 トモシンセシスにおける顎関節撮影の検討
福井亮平1,石井里枝1,赤島啓介1,雨河茂樹2,
小谷 勇2,木谷憲典2,田窪千子2,野坂明寛2
1)
鳥取大学医学部附属病院 放射線部
2)
鳥取大学医学部附属病院 歯科口腔外科
【目的】
当院は顎関節症の患者に対し増感紙フィルム
(S/F)
系
による断層撮影を施行してきた.しかし,検査時間が長いこ
と,フィルムレス化などの点から撮影方法の改善を考えてい
た.今回,当院にトモシンセシス撮影が可能な X 線 TV 装置
が導入されたため,トモシンセシスによる顎関節撮影の検討
を行った.
【使用機器】
X 線 TV 装置は島津社製 SONIALVISION Safire
17 である.頭部ファントムは ARL XR-100 を用いた.従来の
断層装置は島津社製 SFC-110,フィルムは Kodak の INSIGHT
を使用した.観察用モニタは TOTOKU 社製 CCL254i2 を使
用した.
【方法】
頭部ファントムの撮影体位は右顎関節を下にし
(L-R 撮
影)
,矢状面を寝台に対し平行とした.再構成は FBP 法を使
用した.X 線管の振り角,撮影線量,再構成フィルタおよび
スライス厚を検討項目とし,当院の歯科口腔外科医 6 名によ
る観察実験を実施した.顎関節症における診断部位をそれぞ
れ得点化することで比較した.観察対象は右顎関節だが,同
時に収集した左顎関節
(寝台から遠位)
も比較観察した.加え
て,従来の S/F 系の断層装置でファントムを撮影し,同様の
観察実験を行った.これらの結果を受けて,次にボランティ
ア 20 名をトモシンセシスと従来の断層装置で撮影し,再度
検討を行った.
【結果】
以上の検討により X 線管の振り角や再構成フィルタな
どを具体的に決定することができた.また,左右の顎関節の
スコアに差は認められなかった.
347 Tomosynthesis を使用した胸部断層撮影の被ばく
線量低減と至適撮影条件の検討
大橋一範,渡邊慎吾,長谷部寛秋,諏訪和明,
山之内美之,風見 章,中島正弘,伊澤康幸
獨協医科大学越谷病院 放射線部
【目的】
デジタル断層装置
(Tomotynthesis)
を使用した胸部断
層撮影は CT よりも被ばく量が少なく一般撮影での胸部 2 方
向撮影よりも被ばく量が多い.しかし診断上における病変描
出率においては一般撮影よりも検出能は良いとされている.
今回 Filter Back Projection
(FBP)
を使用している点を考慮し
て,被ばく線量低減を目的とした至適撮影条件の検討を行っ
た.
【方法】
X 線束に厚さの異なる金属フィルターを入れて実行エ
ネルギーを変化させ,なおかつ,撮影条件を変えて,バーガ
ファントムによる低コントラスト分解能評価と,胸部ファント
ムに CT 値 -600 の模擬病変を入れ,視覚評価による検出能
の比較を行った.
【結果】
金属フィルターを使用することにより表面線量が約 10
分の 1 に低減することが可能となり,胸部 2 方向撮影とあま
り変わりなく撮影することが可能であることが示唆された.
【結語】
Tomotynthesis は CT と同じ FBP 再構成であるため実
行エネルギー上昇によるコントラストの低下が少なく,被ば
く線量の低減が可能である.今後プロジェクションデータへ
のフィルタリングによりさらなる被ばく低減と画質向上が可
能であると思われる.
348 トモシンセシス撮影およびデュアルエナジー撮影の
X 線出力の解析
池澤勇志,小山雄幸,塚本篤子,今井宜雄
NTT東日本関東病院 放射線部
【目的】
当院に新たに導入された GE 社製 FPD 搭載型一般 X
線撮影装置 Discovery XR650 には,トモシンセシスやデュア
ルエナジーサブトラクションといった先進のアプリケーション
が搭載されている.その撮影原理や,画像処理方法等につい
ては多くの報告があるが,X 線照射中の X 線出力に関する報
告は少ない.今回は,これらの撮影技術の X 線出力の解析を
行ったので報告する.
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
【方法】
トモシンセシスについては撮影時の X 線蛍光強度波形
から,照射間隔,X 線出力を検討した.デュアルエナジー撮
影については,直接接続形測定器で管電圧,管電流を計測す
るとともに,蛍光強度波形から X 線照射間隔,X 線照射精度
について検討した.
【結果】
トモシンセシス撮影時は,設定パルス数の X 線が約
165ms の等間隔で照射されていた.また,胸部トモシンセシ
ス撮影時には 3 種類の強度の X 線が照射されていた.デュ
アルエナジー撮影は,1 番目に低管電圧,2 番目に高管電圧
が照射され,1 番目の X 線照射が終了してから一定の間隔で
2 番目の照射が開始されていた.管電圧,管電流の誤差はと
もに管電圧±10%,管電流±20%の許容誤差範囲内であっ
た.
【結論】
今回の測定から,トモシンセシス撮影では 1 回の撮影
中に強度の異なる X 線が照射されていることが判明した.
デュアルエナジー撮影では,第 1 の X 線照射終了時から一定
の時間後第 2 の X 線が照射されていることから,被写体厚の
違いにより撮影時間が大きく変化することが理解できた.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
10:50〜11:14
座長:宮下宗治
CT 検査 ノイズ特性 展示
349 ノイズ加算画像を用いた臨床画像における画像ノイ
ズの影響についての評価
渡邊 亮,青木崇祐,早野瑞穂
北九州総合病院 放射線科
【目的】
CT 検査において撮影線量の最適化を図る上では,撮
影対象となる臓器や疾患に応じた根拠のある画質基準を決め
る必要がある.これには,撮影対象となる吸収値差を適正に
診断できる画像ノイズ量が明確になればよい.しかし,臨床
画像の画像ノイズ量を任意に調整し,画像ノイズと画質の関
係を評価することは困難である.そこで,簡易的に臨床画像
にノイズを付加するノイズ加算画像作成法を用いて,画像ノ
イズが臨床画像の画質に与える影響について検討を行った.
【方法】
肝臓ダイナミック CT 検査の平衡相において,CTAEC の画質レベル設定
(SD10)
により線量調整が行えていた
被検者を対象とした.1)
正常例および肝実質部に病変を指摘
された症例に対して,水ファントム画像を基に作成したノイ
ズ画像を加算した.これより,original 画像から段階的に SD
を増加させたノイズ加算画像を作成した.2)
病変を指摘され
た original 画像およびノイズ加算画像において,病変部の
CNR を算出した.3)
全ての original 画像およびノイズ加算画
像に対して視覚評価を行った.4)
病変部の吸収値差
(CNR)
に
対する視認性と画像 SD の関係を評価した.
【結果】
ノイズ加算画像を用いて評価することにより,吸収値
差
(CNR)
に対する視覚評価の結果と画像 SD の関係を整合す
ることが可能であった.本手法は,簡便に画像ノイズ量と撮
影対象となる吸収値差との関係を SD で定量化できることか
ら,撮影対象に応じた画質基準を検証できることが示唆され
た.
350 画像雑音測定における低周波数領域の精度向上につ
いての試み
後藤光範1,小山内実2,山田文夫1,加賀勇治1,
森 一生1
1)
仙台厚生病院 放射線部
2)
東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻
【はじめに】
CT において画像雑音の評価は重要な評価項目の
2010 年 9 月
1129
一項である.しかし我々は第 65 回日本放射線技術学会総会
学術大会において,画像雑音の質的評価である NoisePowerSpectrum
(以下 NPS)
は通常の測定法では低周波数領域のノ
イズ量が過大に評価されることを報告した.そこで今回,測
定試料にウィンドイング処理
(窓関数処理)
を施すことにより
低周波数領域における測定精度の向上を試みたので報告す
る.
【方法】
CT と同様の周波数特性を持つノイズ画像をシミュ
レーションにより作成する.シミュレーション画像は計算によ
り真の NPS 値が求められる.この画像の NPS を,ウィンド
イング処理を行った場合と行っていない場合で測定し,低周
波数領域の精度について比較検討を行った.
【結果】
NPS はウィンドイング処理を行った方がより真値に近
い値となった.
【考察】
NPS は測定範囲が大きいほど精度が向上することは既
に報告されている.しかし,CT 実機での測定においては測定
範囲を大きくするとウェッジフィルターの影響など面内位置
依存性の影響を受けるため,中心付近の限られた領域を測定
することになる.さらに IEC では測定領域の分画を奨励して
いるが,切り出した試料をさらに細分化することは,低周波
数領域でノイズ量過大評価の原因となる.しかし今回我々が
提案したウィンドイング処理を行うことにより,NPS 測定の
低周波数領域において,これらの問題による影響を軽減し,
精度を向上できることが示唆された.
351 再構成関数の違いにおける線質硬化補正の基礎的検
討
城處洋輔,志藤正和,土田拓治,富田博信
埼玉県済生会川口総合病院 放射線技術科
【目的】
X 線管から照射される放射線
(連続スペクトル)
は被写
体により低エネルギー領域は吸収され,X 線の入射よりも射
出部位の線質が硬くなる.この影響により,均一なファント
ムを撮影すると,cupping effect により中心よりも外縁部に
CT 値の上昇が生じるため,フィルタや補正計算などの前処
理補正が行われている.そこで,当院における装置での CT
値変動を測定し,補正特性を検討した.
【方 法】頭 部
(H10,20,30,37)及び 体 幹 部
(B10,20,25,
30)
用再構成関数にて水ファントム
(φ 230mm)
を撮影し,ImageJ を用いてプロファイルを描出し,CT 値の変動を測定し
た.同様に,水ファントムの周囲に高吸収体を置き測定し
た.使用機器は SIEMENS 社製 SOMATOM Sensation64 で
あり,高吸収体には金属缶を使用した.
【結果】
水ファントムのみに比べ,高吸収体が存在する場合は
全体的に CT 値の上昇がみられた.高吸収体の有無にかかわ
らず外縁部の CT 値上昇は体幹部より頭部用再構成関数が大
きく,中心付近での CT 値の差は少なかった.また,各再構
成関数番号の違いによる CT 値の差はほとんど認められな
かった.
【結論】
水ファントムを測定したことで,当院 CT 装置での線
質硬化補正の特性を把握することができた.また,体幹部用
再構成関数は頭部用よりも外縁部での CT 上昇が少ないた
め,皮膚や皮下組織の感染症である蜂窩織炎など,体表部付
近の病変にも有用であることが示唆された.
10月15日
1130
日本放射線技術学会雑誌
352 Dual Reconstruction Volume Subtraction
(DRVS)
法における最適高周波数強調関数の検討
永田弘典,田辺悦章,小浜義幸,田仲由香,
古田 寛
国立病院機構関門医療センター 放射線部
【背景・目的】
田辺らの開発した Dual Reconstruction Volume
Subtraction
(DRVS)
法は,高周波数強調関数で再構成された
画像から骨を抽出し,ボリュームサブトラクションすることに
より,造影 CT 画像のみで骨構造を除去した 3 次元画像を作
成する手法である.この手法は,ボリュームサブトラクション
の際に生じる造影前後のミスレジストレーションや MASK 画
像撮影による被曝線量増加といった問題を解決できる.この
手法を使用する際,空間分解能やノイズ成分が骨抽出過程に
大きな影響を及ぼすため,選択再構成関数の物理特性を知る
ことが重要である.そこで今回,空間分解能,ノイズ成分の
定量値評価により,DRVS 法に最適な高周波数強調関数の検
討を行ったので報告する.
【方法】
Aquilion64
(東芝メディカルシステムズ)
で選択可能な
高周波数強調関数を対象とし,それぞれの関数についてファ
ントムを使用し,空間分解能
(MTF)
,ノイズ成分
(NPS)
の定
量値測定を行った.また得られた結果より,有用である再構
成関数を使用し実際の臨床画像データにおいても評価した.
【結果・考察】
ファントムを使用した定量値測定より,FC50 が
DRVS 法に有用であると考えられた.しかし,臨床において
は撮影条件や部位,骨状態等も骨抽出過程に影響を及ぼして
いた.DRVS 法は様々な部位で有用であり,今後それぞれの
部位,状況に応じた再構成関数の選択基準を確立するなど更
なる検討を行っていきたい.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
11:14〜11:50
CT 検査 心臓 CT(臨床技術) 展示
座長:山口裕之
353 胸部心電同期撮影における最適心位相の検討
川合祐子,神谷正貴,澤井俊雅,大石哲也,
冨田雄平,八重樫拓,宮崎健介,寺田理希
磐田市立総合病院 放射線技術科
【背景】
近年,CT 撮影における心電同期法は心臓 CT を中心
とし他の領域にも応用され始めており,胸部領域にも用いら
れている.しかし肺野における最適心位相の報告は少ない.
【目的】
心周囲肺野の心拍動による動きを検討し,胸部心電同
期撮影時における心拍動の影響の少ない最適心位相の検討を
した.
【方法】
Philips 社製 Brilliance iCT
(256 スライス)
で得られた心
臓 CT による心機能解析画像を用いて,左心耳レベル・僧帽
弁レベル・横隔膜レベルの横断像を抜粋し,各レベルで隣り
合う心周期 5%間隔の画像同士を subtraction する.得られた
subtraction 画像より各レベル 4 点の ROI を心臓付近且つ異
なった肺区域に設定し SD 値を計測して,各心周期の動きに
よる SD 値の変動を検討した.
【結果】
心室収縮期及び急速流入期において心拍動の影響は大
きく,特に心室近傍の右内側中葉区・左舌区は大きく影響を
受ける.心室緩速流入期においては影響が小さく,収縮末期
は比較的心拍動の影響が小さいことがわかった.高心拍症例
においても心室緩速流入期の心拍動の影響は比較的小さかっ
た.
【結論】
胸部心電同期撮影における最適心位相は心室緩速流入
期であり,心室緩速流入期での位相画像を用いることが有用
である.
354 左室機能が冠動脈位相に与える影響
樋口壮典,庄司友和,飯田哲也,稲垣公俊,
圓川 勉,矢本俊一
東京慈恵会医科大学附属病院 放射線部
【背景・目的】
我々は第 37 回秋季学術大会において,左室容
積曲線と冠動脈位相との関係について検討し,同等の心拍数
の症例においても左室拡張に有する時間により位相が収縮末
期や拡張期で決定されていることを報告したが,臨床例にお
いて容積変化が少ない位相であっても冠動脈を静止した位相
として捉えられない症例を経験する.今回我々は左室容積変
化と壁厚変化を評価し,位相との関係について検討したので
報告する.
【対象・方法】
当院において CardiacCT を施行した症例を対象
とし,平均心拍数別に位相が拡張期と収縮期で決定されてい
た群とに分け,容積曲線
(5%間隔 20 分割)
と局所壁厚評価
(17 区域)
を行い,決定された位相がそれぞれどの位相に一致
しているのかを検証した.
【使用機器】
CT 装置:SIEMENS SOMATOM Definition Flash,
解析ソフト:AquariusNetStation TVA プログラム,VCDiff
(富
士フイルム RI ファーマ)
【結果・考察】
容積曲線より算出した収縮末期から拡張中期に
達するまでの時間は,同等の心拍数群において位相が収縮期
で決定されていた群において大きな値を示す傾向にあり,収
縮末期から左室拡張に有する時間が遷延したことによる拡張
期静止相の短縮が影響すると考えられた.また,冠動脈 3 枝
が同一位相において静止像として捉えられない症例では局所
壁厚において収縮・拡張の不一致が認められ,壁運動障害や
左室非同期性の影響が考慮された.
355 心電図同期再構成法の時間分解能の評価− FOV サ
イズと位置の影響−
加藤亮平1,兼子武士1,高木雅悠1,吉見 聡2,
三田祥寛3,安野泰史1,片田和広3
1)
藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科
2)
藤田保健衛生大学病院 放射線部
3)
藤田保健衛生大学 医学部放射線医学教室
【目的】
第 66 回総会学術大会ではモーションアーチファクトを
利用した心電図同期再構成法における時間分解能を評価でき
る動態ファントムを考案し報告した.前回ではガントリー中
心,FOV サイズ 32cm で時間分解能を評価したが,今回は撮
影 FOV サイズと位置座標を変化させた時の影響と,再構成
FOV サイズの影響も評価した.
【方法】
ファントムは弧状に往復運動し,静止時間と RR 間隔
を任意に変化させることが可能なプログラムとした.この
ファントムを用いて 320 列 ADCT
(Aquilion ONE:東芝メディ
カルシステムズ)
で撮影し,心電図同期ハーフ再構成を行っ
た.再構成位相を連続的に変化させ,モーションアーチファ
クトを定量的に評価した.FOV サイズを変化させ,ファント
ムの位置はガントリー中心,中心から 5cm,10cm と変化さ
せて時間分解能を評価した.また,それぞれに再構成 FOV
12cm で拡大再構成を行った時の時間分解能を評価した.
【結果】
時間分解能は撮影 FOV サイズが小さいほど低下し
た.ガントリー中心から離れるほど時間分解能は低下した.Z
軸方向の時間分解能は一定であった.拡大再構成を行っても
時間分解能は変化しなかった.
【結論】
ガントリー中心の時間分解能が高いことを確認され,
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
これより心臓をガントリー中心に整位をすることの有用性が
示唆された.
356 心電図同期再構成法の時間分解能の評価−心拍変動
モデル−
兼子武士1,高木雅悠1,加藤亮平1,吉見 聡2,
三田祥寛3,安野泰史1,片田和広3
1)
藤田保健衛生大学大学院
2)
藤田保健衛生大学病院 放射線部
3)
藤田保健衛生大学 医学部放射線医学教室
【目的】
第 66 回総会学術大会にてモーションアーチファクトを
利用して心電図同期再構成法の時間分解能を評価できるファ
ントムを考案し,報告した.前回の発表では一定の心拍での
時間分解能を評価したが,今回はデータ収集時の心拍を変動
させた場合について検討した.
【方法】
ファントムは弧状に往復運動し,静止時間と RR 間隔
を任意に変化させることが可能なプログラムとした.320 列
ADCT
(Aquilion One:東芝メディカル)
で撮影し,心電図同期
セグメント再構成法を行った.評価方法は再構成位相を連続
的に変化させ,モーションアーチファクトを定量的に測定し
た.回転時間 0.35sec/rot における異なる RR 間隔
(ex. 920,
893,866msec)
の 3 心拍を選択し,再構成に使用する心拍の
組み合わせと時間分解能の関係について検討した.
【結果】
3 心拍を使用したセグメント再構成法では時間分解能
のハーフ再構成法と同等の時間分解能となった.2 心拍を使
用したセグメント再構成法では使用心拍の組み合わせを変更
しても時間分解能はあまり変化しなかった.
【結論】
今回はファントムを使用することにより心拍が変動し
た場合の心電図同期セグメント再構成法の時間分解能が評価
できた.しかし時間分解能を決定させる因子として心拍数と
ガントリー回転時間,データ収集時のガントリー角度が考え
られ,それらの因子が複雑に影響し合っているのでさらなる
検討が必要である.
357 心電図同期 Conventional Scan における位置補正
機能の影響の検討
竹内和幸1,原 規浩1,山本博昭2,小林正経2
1)
長野中央病院 放射線科
2)
長野中央病院 循環器内科
【目的】
心臓 CT 検査の被曝低減手法として心電図同期 Conventional Scan がある.心電同期をかけた間欠撮影のため Z
方向が不連続となる.Philips 社製 Brilliance64 は Edge Correction
(以下:EC)
によりステップ間の位置,濃度ムラ補正を
行うことができるが逆に疑陽性症例を疑わせることがある.
そこで今回 EC の基礎的な検証と臨床で出やすい場所や頻度
を調べ読影時の影響を検証した.
【方法】
1. Center,Off Center に配置した模擬血管を撮影しつ
なぎ目の位置ズレの有無を確認した.2. 2010 年 1.4∼5.17 の
171 症例
(1797 ヶ所)
の主要 3 枝の各つなぎ目の位置ズレの
発生頻度を確認した.3. 無作為に疑陽性あり,なしを 5 例ず
つ選び循環器内科医
(読影経験 4 年,2 年)
が CPR と EC あ
りの Axial で読影しその後 EC なしの Axial を加え読影し結果
の変化を確認した.
【結果】
1. Center と Off Center ともズレはなかった 2. LAD:
52/599
(8.7 %)
,LCX:29/599
(4.8 %)
,RCA:10/599
(1.7 %)
にズレを確認し発生頻度は Proximal が多かった.3.CPR と
EC ありで読影精度 60%,80%が EC なしを加えたら 90%,
100%に改善した.
2010 年 9 月
1131
【考察】
EC ありは血管をひとつながりで表示でき CPR を作り
や すく解 析,読 影 が 簡 単 になる.しかし,LAD,LCX の
Proximal にズレが生じやすく撮影方法や読影方法での対策が
必要である.EC なしの画像と合わせ読影を行うことで疑陽
性かどうかの判断も可能で診断精度が担保される.
【結語】
Edge Correction あり,なしを併用することで読影上問
題のないことが示唆された.
358 心臓 CT による大動脈弁輪計測の有用性
菅原寛之1,鶴巻文生1,福澤 純2
1)
(医)
北晨会恵み野病院 放射線科
2)
(医)
北晨会恵み野病院 循環器内科
【はじめに】
心臓各部位の正確な計測は,手術を含めた治療方
針の決定及び,効果判定などに重要であるが,心エコー図検
査による大動脈弁の弁輪径計測は,その測定原理より,誤差
を生じる可能性が高い.一方,心臓 CT 検査はボリューム
データから任意の断面が得られ,誤差の少ない計測が期待さ
れる.
【目的】
大動脈弁置換術が施行された人工弁径をゴールドスタ
(TEE)
各検査
ンダードとして,心臓 CT と,経食道心エコー
による,計測の有用性を検討した.
【方法】
大動脈弁置換術を行った連続 10 症例を対象とした.
心臓 CT では,ボリュームデータを用い,バルサルバ洞に平
行な角度で左室流出路遠位端をトレースし面積を求め,その
直径を,TEE においては,左室流出路長軸断面を描出し,左
室流出路遠位端の径を,それぞれ弁輪径とした.
【結果】
人工弁と心臓 CT による計測値とは非常に強い
(r=
0.98,p<0.01)
,TEE による計測値とは中等度
(r=0.43,p<
0.5)
の,それぞれ相関を認めた.実際の弁輪径との誤差
(割
合)
は,心臓 CT による測定
(0.4%±0.039)
が,TEE による測
定
(16.0%±0.13)
よりも有意に低かった
(p<0.01)
【結論】
心臓 CT による大動脈弁輪径の計測は,より誤差の少
ない測定法である事が示された.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
13:30〜14:06
核医学検査 SPECT マルチモダリティ技術
展示
座長:金谷信一
359 心 筋 シ ン チ
(201Tl)と 冠 動 脈 造 影 CT の 3D-Fu sion 画像について
四元雄矢,鶴田智司,市原正道,有田英男,
紫垣誠哉,若松秀行,長町茂樹
宮崎大学医学部附属病院 放射線部
【目的】
近年,冠動脈 CT と心筋 SPECT の Fusion 画像が注目
されている.当院においても冠動脈 CT と心筋 SPECT の
Fusion 画像を作成するに当り,Manual および Auto Fusion
について検討したので報告する.
【方法】
Manual Fusion : Fusion 画像を作成するにあたり虚血
部位の位置が作成者によって差が生じてしまう.そこで誤差
をどのようにしたら最小限にできるか,3 軸
(X 軸,Y 軸,Z
軸)
の移動量,3 軸の回転角から,その移動量と回転角の誤差
を複数の作成者から平均値を求め,平均値からの誤差を 3D
モデリングにより比較検討した.Auto Fusion: CT 画像から
心臓を抽出しない場合,心臓を抽出した場合,左室を抽出し
た場合で抽出方法の違いによる画像位置を 3D モデリングに
より比較検討した.
【結果】
Manual Fusion:安静時心筋 SPECT 及び GATE-SPECT
の拡張期全ての範囲において誤差は少なかったものの,負荷
10月15日
1132
日本放射線技術学会雑誌
時においては,作成者間の誤差が見られた.また,GATESPECT で 4 分割以上の ED 期では作成者間の誤差が少な
かった.安静時心筋 SPECT と CT の Fusion の位置情報か
ら,負荷時心筋 SPECT と CT の Fusion 画像を作成したもの
は,安静時と負荷時の位置ずれの少ない画像が得られた.
Auto Fusion:心臓抽出方法の違いによる評価では,左室だけ
抽出した画像を Auto Fusion することで安定した結果が得ら
れた.また,安静時心筋の Auto Fusion 位置情報を元に負荷
時心筋の Auto Fusion を行うことにより,負荷時でも安定し
た Fusion 画像を得ることができた.
360 心筋 SPECT/ 心臓 CT の Heart Fusion software
の基礎的検討
近松 孝1,中野 勉1,岡本孝男1,菊地正次1,
岡本孝英1,宮澤亮義3,神長達郎2,古井 滋2
1)
帝京大学医学部附属病院 中央放射線部
2)
帝京大学医学部附属病院 放射線科
3)
帝京大学医学部附属病院 循環器内科
【目的】
機能診断としての心筋 SPECT と形態診断としての心
臓 CT は異なった側面よりの診断法であり両データの融合に
より精度の高い心臓画像診断を行うことが可能である.これ
ら異なる種類の画像をフュージョンすることにより双方の弱
点を補った画像情報が得られる.今回,AZE Virtual place
に搭載された心臓フュージョンの機能
(以下,Fusion EX)
に関
して評価を行ったので報告する.
【方法】
Fusion EX は心筋 SPECT と心臓 CT の fusion ソフト
であるが,これまでの fusion ソフトと異なり心筋 SPECT か
ら作成された ATLAS データと呼ばれる座標補正データを用
い,心筋 SPECT と心臓 CT のデータをマッチングさせ,両
データの fusion を行う.この ATLAS データはソフトにも添
付されているが,自施設での臨床で得られた心筋 SPECT
データを用い作成することにより,より正確な fusion を行う
事ができるようになる.そこで,本研究においては Fusion EX
の精度を検証するため,1)
心筋ファントムを用い ATLAS
データを作成し fusion の精度および ATLAS データが fusion
の結果にどのような影響を与えているかを検討した.2)
臨床
データでの検証を行った.
【結果】
ファントムによる検証結果に関しては,精度の高い fusion 画像をえることが可能であったが,臨床画像においては
拡張型心筋症等,心筋の大きさが極端に異なる場合旨く重ね
合わせ作業ができなく,検討が必要である.
361 SPECT/CT 撮影における画像再構成パラメータの
比較検討
小原理恵1,佐藤 静1,小田桐逸人1,児玉裕康1,
竹内孝至1,南部武幸1,梁川 功1,福田 寛2
1)
東北大学病院 診療技術部放射線部門
2)
東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野
【目的】
SPECT データ収集ではコリメータの開口径が存在する
ために検出器−線源間距離が離れるほど空間分解能が低下し
ボケを生じる.近年 SPECT 画像再構成において,コリメー
タ開口径補正による体軸方向の分解能補正が組み込まれた
3D-OSEM が開発され,昨年当院にも 3D-OSEM が組み込ま
れた装置が導入された.OSEM 法の iteration と subset は条
件によってパラメータを変化させる必要がある.今回,2DOSEM と 3D-OSEM の減弱・散乱補正の有無におけるパラ
メータの検討を行ったので報告する.
【方法】
核種は Tc を用い,コントラストファントムで陽性:BG=
4:1 とし陰性部分は水で満たし,円軌道にて SPECT/CT 撮
影をする.画像再構成は 2D-OSEM,3D-OSEM を用い,減
弱・散乱補正ありとなしの画像をそれぞれ作成する.各々の
画像から NMSE 法,視覚評価による最適パラメータを求め
る.
【結果】
NMSE 法と視覚評価より求めた画像再構成条件は 2DOSEM,3D-OSEM の 減 弱・散 乱 補 正の 有 無で iteration と
subset のパラメータに違いが見られた.
【結語】
コントラストファントムにおける最適再構成パラメータ
を求めた.これらの値を用いて他の SPECT 評価用ファント
ムの画像を再構成し,空間分解能や部分容積効果,また臨床
画像について比較する必要があると考えられる.
362 SPECT/CT 撮影における再構成画像の比較検討お
よび臨床画像への応用
佐藤 静1,小原理恵1,小田桐逸人1,児玉裕康1,
竹内孝至1,南部武幸1,梁川 功1,福田 寛2
1)
東北大学病院 診療技術部放射線部門
2)
東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野
【目的】
昨年,当院にも 3D-OSEM が組み込まれた装置が導入
された.減弱・散乱補正の有無による 3D-OSEM と 2D-OSEM での再構成画像を比較し,3D-OSEM のコリメータ開口
径補正の有用性を検討する.
【方法】
核種は Tc を用い,ラインソースファントム,濃度比を
陽 性:BG=4:1 とした部分容 積ファントムを使 用した.
SPECT/CT 撮影を円軌道にて回転半径を変え収集し,減弱・
散乱補正の有無による 3D-OSEM と 2D-OSEM で画像再構
成を行なった.再構成パラメータは事前の実験で求めた値を
使用した.各データより FWHM,部分容積効果の影響を比較
検討する.また臨床画像における減弱散乱補正を加味した
3D-OSEM の有用性を検討する.
【結果】
2D-OSEM に比べて,3D-OSEM では特に体軸方向に
おいて分解能が向上した.3D-OSEM を使用することで,部
分容積効果の影響が軽減し,減弱・散乱補正を加えることで
球径の実測値に近づいた.臨床画像評価でも 3D-OSEM の
方がボケが改善され,明瞭な画像になることがわかった.ま
た,減弱・散乱補正ありの画像の方が分解能が向上した.
【結 語】減 弱・散 乱 補 正ありの 3D-OSEM を用いることで
SPECT 画像の分解能の向上に有用であることが示唆された.
363 既存の CT 装置画像を用いた吸収補正効果の比較検
討
中村浩人1,実重英明1,大岡敏彦1,石原修二1,
小西一省2,仙石 真2
1)
松江市立病院 中央放射線科
2)
山陰労災病院 画像センター
【目的】
Symbia T6 の吸収補正専用 CT 画像と当院既存の CT
装置画像との吸収補正効果を比較検討する.
【方法】
CT 値の異なる吸収体を配列させたファントムを 3 台
の CT 装置で撮影し,次にそのファントム中に濃度の異なる
67
Ga ロッドを配列させて E.CAM で SPECT 撮像を行い以下
の検討を行った.1. ファントム中の各吸収体の CT 値を測定
し,装置間での CT 値の違いを把握した.2. 各 CT 装置画像
を用いて吸収補正を行った SPECT 画像中の 67Ga 注入部位
と吸収体部に ROI を設定し,カウントとコントラスト比を比
較し補正効果を検討した.3. 吸収補正画像の違いを NMSE
を用いて評価を行った.
【結果】
1. 装置間で吸収体の CT 値が約 300HU 以上で CT 値
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
に差が生じ,その差は CT 値が上昇するにつれて大きくなっ
た.2. 67Ga 注入部位でのカウント,コントラスト比は各装置
ともに同程度であった.吸収体部位でのカウント,コントラス
ト比は各装置で異なった.3. NMSE の差はほとんど認められ
なかった.
【考察】
1. CT 値の差は各装置の実効管電圧の差により生じて
いると考えられた.2. 吸収体部位でコントラスト比が異なっ
たのは,吸収体部位の ROI カウントは散乱成分であるため,
吸収補正により散乱成分も CT 値を反映し上昇したためと考
えられる.3. 今回用いた撮影装置,管電圧での CT 値の差で
は,画像上の差異はほとんど見られないと考えられる.
【結論】
既存の CT 装置画像を用いての吸収補正は可能である
が,補正効果を把握した上で吸収補正専用 CT 装置を決めて
おく必要がある.
364 心筋血流画像
(Polar map)
と CT 冠動脈画像の融合
画像の検討
西村圭弘,徳 俊成,西原隆生,井元 晃,
大島康慈,福本真司
国立循環器病研究センター 放射線部
【目的】
Coronary CT angiography による冠動脈と核医学検査
による心筋血流の融合画像表示は,心筋灌流異常とその責任
冠動脈の同定を目的に臨床応用されつつある.融合画像の作
成には,レジストレーションの精度,再現性が重要である
が,これまで詳細な検討の報告はまだない.今回,心筋血流
Polar map 上に CT 冠動脈の走行を融合表示させるソフト
ウェアのレジストレーションの精度,再現性について検討を
行った.
【方法】
Coronary CT angiography は,1 つのガントリに 2 管
球を装着した Dual Source CT
(Siemens 社)
を用いた.心筋
SPECT は,2 検出器型ガンマカメラ
(MCD,ADAC 社)
を用
い,両者の融合画像はマルチモダリティーワークステーショ
ン
(Siemens 社)
にて作成した.本法の精度,再現性について
は,1 枝病変を対象として,冠動脈の走行と血流欠損の位置
を計測し検討を行った.
【結果】
本法による心筋血流 Polar map と冠動脈の融合画像は
良好に作成できた.測定者内,測定者間の冠動脈の走行と血
流欠損の位置関係は,良好に一致した.本法は融合画像を
Polar map 上に作成することで,心筋灌流と冠動脈の解剖学
的位置関係を一度に評価できることから,臨床上有用な手法
であると考えられた.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
14:06〜14:42
核医学検査 SPECT 画像処理技術 展示
座長:夏目貴弘
365 Split-Dose 法を基に 1 点動脈・静脈採血に対応し
た局所脳血流定量法の基礎的検討
増原 晃1,中村誠治2,菊池隆徳2,新藤泰史1,
池田良一1,高橋由武3,吉岡克則3
1)
愛媛県立中央病院 放射線部
2)
愛媛県立中央病院 放射線科
3)
富士フイルムRIファーマ
(株)
【目的】
当院では,6 分間の持続動脈採血による Split-Dose
(SD)
法にて局所脳血流量
(rCBF)
定量を行ってきた.今回 SD
法を基に,rCBF 定量をより低侵襲・簡便に施行するため,
SPECT Data と 1 点動脈および静脈採血による血中放射能カ
ウントから推定される値
(Ca)
を入力関数とした定量法を検討
2010 年 9 月
1133
した.
【方法】
対象は,2006 年 10 月から 2008 年 10 月に rCBF 定量
を行った脳血管障害患者 78 例.8 分時 1 点動脈採血および
56 分 時 1 点 静 脈 採 血 の 血 液 放 射 能 カウントと Dynamic
SPECT Projection Data 各フレーム中央における画像の時系
列放射能カウントを説明因子として,推定される Ca と 6 分
間持続動脈採血の血液放射能カウントとの相関を重回帰分析
にて検証する.使用機器は,東芝社製 3 検出器型カメラ
GCA-9300A を用いた.
【結果】
目的因子とする観測値
(実測値)
を説明因子
(時系列脳
内放射能&血液放射能カウント)
で重回帰分析した結果は 6
分持続動脈に対し,8 分時動脈では R2=0.882 また 56 分時
静脈では R2=0.872 と,精度良く放射能カウント Ca の推定
ができた.
【結論】
8 分時 1 点動脈採血および 56 分時 1 点静脈採血に
よって 6 分間持続動脈採血の血中放射能カウント Ca の推定
が可能である.これらの検証結果から各採血データを基にし
た局所脳血流定量法の開発を行った.当日は,定量ソフトウ
エアの概要および,2 検出器型カメラへの可能性についても
説明の予定である.
366 ガンマカメラの数え落としが Brain-Uptake-Ratio
法の安定性に与える影響
中川浩人1,山田優佳1,山本聡明1,瀧本政盛1,
塩崎 潤1,井上 寿1,宮崎吉春2
1)
公立能登総合病院 放射線部
2)
先端医学薬学研究所
【はじめに】
99mTc を用いた脳血流量測定法は RI 投与時の
Dynamic-Data より算出する方法であるため,算出された値は
ガンマカメラの数え落としの影響を受ける.数え落とし量は
投与 RI 量や患者体格などによって異なるため,算出値の再
現性低下の要因となる.今回,Brain-Uptake-Ratio 法
(以下
BUR 法)
において,数え落としの影響を検討した.
【方法】
簡易的に数え落としの補正を行い BUR 法,Patlak-Plot
法にて mCBF を求め比較検討する.次に,ポイントソース法
で真の数え落とし量を算出し,数え落としが BUR 法の算出
値に及ぼす影響を検討.
【結果】
BUR 法,Patlak-Plot 法ともに数え落としの影響が表
れ,その量は BUR 法が Patlak-Plot 法より多く認められた.
【まとめ】
99mTc を用いた脳血流量測定法は数え落としによる
影響を受けるため,再現性のある mCBF の算出には数え落と
し補正が必要である.数え落とし量は諸要因によって異なっ
てくるため,補正はポイントソース法が良いと思われた.
367 頭部 SPECT 収集における回転軌道が定量性に与え
る影響
永倉健司,伊藤太之,柴田公望
東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線部
【目的】
当院に新規導入された SPECT 装置は,頭部 SPECT
収集にメーカー独自の回転軌道である脳追跡軌道が実装され
ている.頭部 SPECT 収集には一般的に円軌道が使用され,
当院でも他 SPECT 装置では円軌道にて収集を行っている.
今回新規装置の臨床導入にあたり,頭部 SPECT 収集での回
転軌道が定量性に与える影響を検討したので報告する.
【方法】
SPECT 装置 SKYLight
(Philips)
を使用し,臨床収集条
件
(Projection:90,Acq Time:40sec/step)
にて頭部ファント
ムを脳追跡軌道および回転軌道にて回転半径を変化させ収集
を行う.画像再構成法は FBP 法,OSEM 法,分解能補正組
10月15日
1134
日本放射線技術学会雑誌
み込み OSEM 法の 3 法について行い,各再構成画像を ROI
値およびプロファイルカーブにて比較し定量性の評価を行
う.また,灰白質部にてプロファイルカーブより各再構成画
像での半値幅を求め,分解能についても評価する.
【結果】
各回転軌道による定量性に有意差は認めなかった.し
かし,画像再構成法の違いにより定量性に有意差を認めた.
分解能については回転軌道および画像再構成法ともに回転半
径に依存し有意差を認めた.
【結論】
回転軌道の違いが定量性に与える影響は少ない.むし
ろ画像再構成法の違いにより定量性は影響を受ける.従来か
ら使用している画像再構成法 FBP 法より分解能および定量
性の高い OSEM 法を導入することにより正確なデータを提供
することが可能となる.しかし,脳血流 SPECT では定量評
価以外に統計学的画像解析,また経過観察検査などの理由
から新規再構成法の導入は慎重に検討する必要がある.
368 投影データ補間法を用いた SPECT 像の画質向上に
関する研究
池田良弘1,大倉保彦1,山本めぐみ2,秋山實利1
1)
広島国際大学大学院 医療・福祉科学研究科医療工学
専攻
2)
広島国際大学 保健医療学部診療放射線学科
【目的】
SPECT 像は投影データ数と 1 投影当たりの撮像時間
が再構成画像の画質に影響を及ぼす.特に投影データ数が少
ない場合アーチファクトが増加し,SPECT 像の画質は低下
する.本研究では撮像した投影データから新しい投影データ
を作成し,投影数を増やすことで少ない投影数で表れるアー
チファクトを軽減させた SPECT 画像を得ることを目的とす
る.
【方法】
サンプリング角 9˚
(投影データ数 40)
で撮影された 40
ラインのサイノグラムから隣接する投影データを,再構成画
像におけるピクセル位置から計算した量をシフトさせることで
サンプリング角 3˚
(投影データ数 120)
の 120 ラインサイノグ
ラムを得た.例えば,9˚ の投影データをシフトさせることで
前後 3˚
(6˚ と 12˚)
の投影データを作ることができる.これを
40 ライン分行うことで 120 ラインのデータを作成した.作成
したサイノグラムから 1 ピクセル分逆投影演算をすることで
再構成を行い,この処理を全ピクセルに行うことで再構成画
像を得た.
【結果】
ファントム内のロッド径の異なる各スライスにおいて
HotSpot 周辺の%RMSU の平均は 40 ラインデータと 120 ラ
インデータでそれぞれ 12.07,11.49 となった.また BG 領域
の%RMSU の平均は 40 ラインデータと 120 ラインデータに
おいても 18.1,17.5 となった.この結果より 120 ラインデー
タでアーチファクトが減少した結果となった.各ロッド径にお
いても 120 ラインデータでアーチファクトが減少した結果に
なった.
369 オフセット画像再構成法による信号成分の検出性に
ついて
高橋美香1,横田 径1,瀧野真之1,齋藤享子1,
高橋康幸1,嶋田博孝2
1)
群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部診療放射
線学科
2)
群馬大学医学部附属病院
【目的】
オフセット画像再構成法は,対向位置にある投影デー
タを 1/2 角度ずらした収集形態で,検出効率及び分解能が向
上する.原理については第 36 回秋季学術大会にて報告し
た.本報告では信号成分の検出性を比較した.
【方法】
脳血流 SPECT 像や心筋血流 SPECT 像を想定した信
(以下,信号内信号)
と骨や腫瘍 SPECT を想
号の内部の信号
定した信号の周囲の信号
(以下,信号外信号)
の検出性を 3DMAC デジタルファントムと脳ファントム
(IB-10 型)
実験によ
り評価した.信号成分の濃度は 1.00
(99mTc-ECD の集積率
による 37MBq)
に対し 2.00,0.50,0.25 を設定した.なお,
信号成分の大きさは信号内信号が 15mm φ,信号外信号が
20,15,10mm φである.収集条件は,サンプリング角度が
オンセット
(従来法)
6˚,オフセット 12˚,オンセット 12˚ で,1
投影方向あたり 30 秒とした.画像再構成は ML-EM 法であ
る.
【結果】
オンセット 6˚ を基準として画質を比較すると,信号内
信号ではオフセット 12˚ がオンセット 12˚ より改善され基準画
像に近づいた.一方,信号外信号はそれぞれの画像再構成で
あまり差が認められなかった.
【考 察】
ML-EM 法 によるオフセット 画 像 再 構 成 法 により
SPECT 収集時間の短縮が可能になることが示唆された.
370 デジタルファントムによる心筋 SPECT 短軸断層像
における 11 時方向の偽欠損に関する検討
山下高史,神谷 陽,板垣紀子,長山鎭治郎,
畠山謙二,村上 剛
東海大学医学部付属病院 放射線技術科
【目的】
心筋 SPECT 短軸断層像にて,11 時方向に偽欠損が出
現することが以前より報告されている.そこで異なる分解能
を持った投影像による再構成への影響をシミュレーションに
て評価したので報告する.
【方法】
心筋デジタルファントムの投影像作成と画像再構成及
び断面変換は Prominence Processor を使用した.まず初め
に心筋デジタルファントムの axial 像を作成し,これを投影像
に変換した.次に自作ソフトにて作成した投影像に対し,回
転 半 径 の長 軸
(横 方 向)
と短 軸
(縦 方 向)
の 比を 1.5 倍,2.0
倍,2.5 倍と変化させた楕円軌道,回転半径 250mm の円軌
道を想定した心筋−コリメータ間距離に相当するボケを投影
像に加算させた.これらの投影像を FBP 法による 180 度画
像再構成及び断面変換を行い,短軸断層像に変換した後,画
像を評価した.また 180 度再構成範囲による影響として再構
成開始角度を変化させた場合も評価した.なお,画像再構成
の際に BWFilter 等のフィルタは使用していない.
【結果・考察】
楕円軌道収集による短軸断層像には 11 時に相
当する方向に偽欠損が認められ,これは回転半径の長軸と短
軸の比が増すにつれて強調される傾向を示した.また画像再
構成開始角度を変化させた場合でも偽欠損の出現位置に変化
は見られなかった.円軌道では 11 時方向の偽欠損が認められ
なかった.これにより 11 時方向の偽欠損の原因は分解能の
異なる投影像による画像再構成である事が示唆された.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
14:42〜15:18
核医学検査 PET 技術一般 展示
座長:細貝良行
371 薬剤供給システムの異なる FDG PET/CT 検査にお
ける臨床画像の比較検討
我妻 慧,三輪建太,田村慎太郎,大澤 敦,
滝口智洋,秋本健太
(財)
癌研有明病院
【目的】
当施設ではサイクロトロン導入に伴い,デリバリー
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
FDG から院内製造 FDG を使用した PET/CT 検査へ移行し
た.本研究の目的は,異なる薬剤供給システムを用いて撮像
した臨床画像を比較検討することである.
【方法】
対象はデリバリーと院内製造による FDG PET/CT 検
査を,両方経験した被検者 40 人の臨床画像である.投与量
は,デリバリー FDG を 1 バイアル全量,院内製造 FDG を
4.0MBq/kg とした.臨床画像の物理的評価には,被検者雑音
等価計数
(P-NEC)
,被検者雑音等価計数密度
(D-NEC)
およ
び肝 SNR を用いた.さらに,異なる薬剤供給システムの検
査プロトコルの違いによる臨床画像の影響について検証する
ために,検査プロトコルの因子と物理的評価指標との関係性
を見出した.
【結果・考察】
デリバリーと院内製造 FDG の検査内容は,平
均投与量が 286MBq と 222MBq,平均待機時間が 65 分と
58 分,平均撮像時間 /1bed が 132 秒と 136 秒であった.臨
床画像の最低基準を P-NEC>13,D-NEC>0.2,肝 SNR>
10 と設定した場合,全例で基準値を超えた.また物理的評価
において,デリバリーと院内製造 FDG による臨床画像間に
統計学的有意差は認められなかった.しかし一部デリバリー
の場合において,院内製造と比べて極端に異なる値を示し
た.これは投与量と待機時間の違いに起因していると考えら
れる.よって,複数のスタディにて臨床画像を定量的かつ経
時的に比較評価する場合,定量値の変動を最小限に抑えるた
めに,各薬剤供給システムに適した検査プロトコルの工夫が
必要である.
372 TOF PET 装置高分解能撮像における微小病変に対
する収集条件の検証
武井めぐみ,櫻井 実,長谷康二,須田匡也,
金谷浩司
日本医科大学健診医療センター
【目的】
18F-FDG を使用した PET 検査において微小な病変は
部分容積効果などの影響で偽陰性が高いことが知られてい
る.当施設では,微小病変の集積を評価したい場合,全身
(以下 WB)
スキャンのあとに追加検査として高分解能
(以下
HR)
スキャンを行っている.第 64 回東京部会春期学術大会
において,肺野での最適 HR スキャン条 件の検討を行い
Time-of-flight
(以 下 TOF)装 置では 180sec という結 果を得
た.しかし,肺野以外での HR スキャンの収集条件は確立さ
れておらず,腹部や頭頸部リンパ節などの微小病変に対する
最適な条件設定とその評価について検討を行ったので報告す
る.
【方 法】使 用 装 置は Gemini-TF
(PHILIPS 社 製)
で,IEC body
phantom の background に 5.3kBq/ml の 18Fを封入し,hot 球
に 2,4,8 倍の 18Fを封入した.リストモードで 10 分間収集
し,収集時間による画像を比較した.臨床症例は 5mm から
15mm 程度の微小なリンパ節を対象とし,ファントム実験で
得られた基準収集時間の約 1.5 倍でリストモード収集を行っ
た.1 分刻みで作成した画像において SUV の変化率,バック
グラウンドの均一性,視覚評価などを行った.
【結果】
ファントム実験から基準 HR 収集時間を 180sec と設
定した.腹部や頭頸部のリンパ節における視覚評価では,
180sec 以上の画像で良好な結果が得られた.病変部の SUV
を HR と WB で比較すると,HR で有意に上昇し,微小病変
の SUV 評価の信頼性が向上することが示唆された.
2010 年 9 月
1135
373 超大型 pool phantom による PET/CT 臨床画像の
再現−薬剤投与量・被写体断面積と NECphantom・QH,10mm・
N10mm−
大澤 敦1,滝口智洋1,田村慎太郎1,三輪建太1,
秋本健太1,我妻 慧1,小山眞道2,早坂和正2
1)
(財)
癌研有明病院 放射線部核医学チーム
2)
(財)
癌研有明病院 核医学部
18
F-FDG による全身 PET 検査の薬剤投与量は,デリバ
【目的】
リー FDG を使用する場合,被検者の体格により過少・過大
投与量となる場合がある.また,サイクロトロン所有の施設
では,体重や BMI により薬剤投与量を可変させている.当院
ではデリバリー FDG からサイクロトロンによる院内製造へ移
行した経験を持つ.よって,臨床で様々な条件に遭遇した.
われわれは,LSO クリスタルを装備した PET/CT 装置によ
り,人体を模倣した大型の pool phantom で臨床の再現を試
みた.
【方法】
PET/CT の画像評価は,NEMA2001 NU-2 Standard で
規定された phantom を使用するのが一般的である.しかし,
規定された phantom では被写体断面積を変えられない.今回
は視野外散乱線を考慮し,幅 350mm×長さ 1000mm×高さ
(可変)
の pool phantom で
「がん FDG-PET/CT 撮影法ガイド
ライン」
の第一試験を参考に NEC phantom・QH,10mm・N10mmを算
出した.
【結果・考察】
薬剤投与量の増大は NEC phantomを上昇させ,
QH,10mmの確実性を高めた.被写体断面積の増大は NEC phantom
を低下させ,QH,10mmの不確実性を高め,N 10mmを高値のまま
収束させた.極端な短時間撮影は QH,10mmの不確実性を高め
た.
374 超大型 pool phantom による PET/CT 臨床画像の
再現−被写体断面積が極端に大きい場合の考察−
大澤 敦1,滝口智洋1,田村慎太郎1,三輪建太1,
秋本健太1,我妻 慧1,小山眞道2,早坂和正2
1)
(財)
癌研有明病院 放射線部核医学チーム
2)
(財)
癌研有明病院 核医学部
18
F-FDG による全身 PET 検査の薬剤投与量は,サイク
【目的】
ロトロンを所有する施設の場合,体重や BMI により可変させ
ている.しかし,臨床では体格に個人差があり,特に肥満体
の画質は良好であると言えない.われわれは,LSO クリスタ
ルを装備した PET/CT 装置により,人体を模倣した大型の
pool phantom で,大きな被写体断面積を持つ肥満体の画像
を再現した.
【方法】
PET/CT の画像評価は,NEMA2001 NU-2 Standard で
規定された phantom を使用するのが一般的である.しかし,
規定された phantom では被写体断面積を変えられない.今回
は視野外散乱線を考慮し,幅 350mm×長さ 1000mm×高さ
(可変)
の pool phantom で
「がん FDG‐PET/CT 撮影法ガイド
ライン」
の第一試験を参考に NEC phantom・QH,10mm・N10mmを算
出した.
【結果・考察】
薬剤投与量の増大は NEC phantomを上昇させた
が,QH,10mmの確実性を高めることは困難であった.被写体断
面積の増大は CH,10mmに対して偽陰性を,C B,10mmには偽陽性
を生じさせた.また,被写体断面の中央ほど pixel value が上
昇するため N10mmに影響を与えた.
10月15日
1136
日本放射線技術学会雑誌
375 放射線治療計画を意識した PET/CT 装置の quality assurance −放射線治療とのコラボレーションを目指
して−
大澤 敦1,滝口智洋1,吉野慎一2,上原隆三2,
小山眞道3,早坂和正3
1)
(財)
癌研有明病院 放射線部核医学チーム
2)
(財)
癌研有明病院 放射線部治療チーム
3)
(財)
癌研有明病院 核医学部
【目的】
画像診断情報を有効に利用して的確な放射線治療計画
を行うため,target volume の決定に PET/CT を応用した報告
がある.また,以前から機能画像を利用した概念として biological target volume が提唱されており,核医学がこの分野に
貢献できることを示唆している.現在の放射線治療計画は,
CT-simulator の情報から Radiation Treatment Planning System で MU を算出する.よって,PET/CT を利用すれば CTsimulator の役割を部分的に置き換えることができる.これを
意 識した PET/CT も販 売され 始 め,gantry bore の 拡 大 や
AAPM TG66 に適応された設計をしたものもある.われわれ
は,CT-simulator の quality assurance を PET/CT で実施した.
【方法】
CT-simulator の QC 作業で,実施可能な項目を PET/
CT で行った.また,CT の相違による relative electron density の変化を求めた.位置再現性と Fusion 精度を調べるた
め,PET/CT に特化した cross wire phantom を製作した.
【結果・考察】
PET/CT で CT-simulator の QC 作業を行った.
作業項目に実施できる範囲は広く,放射線治療部門にある精
度管理ツールの使用も可能である.
376 点広がり関数を組み込んだ画像再構成法の基礎的検
討
小田桐逸人1,小原理恵1,佐藤 静1,竹内孝至1,
児玉裕康1,梁川 功1,福田 寛2,細貝良行3
1)
東北大学病院 診療技術部放射線部門
2)
東北大学加齢医学研究所 機能画像研究分野
3)
東北大学 医学部保健学科
【目的】新しい 画 像 再 構 成 法の High Definition PET Reconstruction
(以下 HD-PET 法)
を組み込んだ PET/CT 装置を使用
する機会を得た.この方法は従来からの画像再構成法である
OSEM 法に数百万箇所で実測した Point Spread Function を
再構成アルゴリズムに組み込んでいる.今回,2D-OSEM
法,3D-OSEM 法,HD-PET 法の再構成条件を求め,比較を
行ったので報告する.
【方法】
NEMA IEC Body Phantom を使用し,PET/CT 撮影法
ガイドラインに従って,標準体型の被検者に約 3.7MBq/kg の
18F-FDG を投与して 1 時間後に撮影することを想定し作成す
る.2 分と 30 分のスタティック収集を行い NMSE 法より各
再構成方法の Iteration 数,Subset 数とフィルタ関数を決定
する.求めた再構成条件にて各ホット球のリカバリー係数を
算出し,ガイドラインの基準値を満たすかを検討する.
【結果】
各再構成法において最適な OSEM パラメータに違い
がみられた.また,PET/CT 撮影法ガイドラインによる 10
mm ホット球のリカバリー係数基準値を得るための各再構成
条件を得ることができた.
【考察】
各再構成方法における適正なパラメータを求め,適正
な画像処理を行う事で,再構成方法の違いによる SUV 値の
変動が把握でき,臨床画像への応用が可能であるといえる.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
15:18〜15:54
核医学検査 核医学技術一般 展示
座長:大阪 肇
377 PC-BUR ソフトにおける最適パラメーター条件の検
討
西山健一1,鈴木清文1,木林由布1,武末雅史1,
菊池明泰2
1)
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 画像診断部
2)
富士フイルムRIファーマ
(株)
【目的】
我々は BUR の定量解析処理を PC 上で実施するソフ
トウェア
(以下 PC-BUR)
の有用性について前回報告した.こ
のソフトは Angio データと Projection データを同時に読み込
こませ,ソフトウェア内で再構成を行い平均脳血流量
(以下,
mCBF)
および 3D-SRT を用いた局所脳血流値までを算出す
るものである.実際の臨床使用においては,幾つかのパラ
メーター設定が必要となるが,今回はこのパラメーターの最
適な値について検討したので報告する.
99m
Tc-ECD 脳血流 検査の臨床データ 10 例に対し,
【方法】
PC-BUR の以下のパラメーターを変化させ mCBF 値が安定
するパラメーターについて検討した.1)
OS-EM における Iteration および Subsets の値を変化させた場合 2)
基底核レベ
ルのスライス範囲を変化させた場合 【結果】
1)
の Iteration,Subsets 値の組み合わせにおいて,両
方とも低い数値の組み合わせでは,mCBF 値にばらつきを示
した.2)
では設定するスライス位置により mCBF 値を低下さ
せる場合があった.
【考察】
1)
について定量値にばらつきが出たのは再構成画像作
成においてノイズ等を多く含む画像が作成されたことによる
ものであることが示唆された.また,2)
における定量値のば
らつきは,基底核レベルの範囲設定にある程度依存する可能
性が考えられた.
【まとめ】
設定パラメーターによって mCBF 値が,どのように
変化するかが理解できた.またパラメーターの特性を理解す
ることで,信頼性もより高くなることが示唆された.
378 心筋血流シンチにおいてプラナー像から SPECT の
画質推定は可能か?
櫻井 実1,須田匡也1,柳川豊彦2,武井めぐみ1,
長谷康二1,金谷浩司1
1)
日本医科大学健診医療センター
2)
日本医科大学付属病院 放射線科
【背景】
成人における心筋血流シンチグラフィにおいて,体格
や検査開始時刻が異なっていても放射性医薬品を全量投与
し,決められた収集時間で SPECT 収集を行っているという
のが一般的である.心筋集積の多少に関わらず,同じ収集時
間で撮像しているため,中にはカウント不足から適正な画像
が得られないケースがある.
【目的】
SPECT 撮像前に収集したプラナー像から SPECT 像
の画質推定が可能かどうかを検討した.
【方法】
2006 年 6 月以降に収集された心筋血流 SPECT 像お
よびプラナー像を利用し,プラナー像上のカウント及び
SPECT 像の画質の関係について後ろ向き検討を行った.
SPECT 像はフィルタバックプロジェクションで再構成し,
カットオフ周波数は一定とした.プラナー像では,心筋部の
カウント,heart/mediastinum
(H/M)
比を求めた.また,画像
全体のカウントを T
(total)
とした場合の heart/total
(H/T)
比,
mediastinum/total
(M/T)
を求め,SPECT 像の画 質と比較し
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
た.
99m
Tc 製剤では,プラナー像の心筋部カウントよりも
【結果】
H/M 比に相関が 強く,H/M 比が 2.5 以 上になると 70%以
上,3.0 以上になると 80%以上の SPECT 像の画質が良好と
評価された.また,SPECT のプロジェクションデータ上の心
筋カウントは 100 カウント以上で,SPECT 画像が良好と評
価された.
【結語】
心筋血流 SPECT 画像の画質は,直前に撮像したプラ
ナー像から推定が可能であることが示唆された.
379 Dual energy window 散乱線補正法による 67Ga
シンチグラフィの画質改善
横田 径1,高橋美香1,瀧野真之1,高橋康幸1,
斎藤享子1,勘崎貴雄2,嶋田博孝2,前田清一3
1)
群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部診療放射
線学科
2)
群馬大学医学部附属病院
3)
東芝メディカルシステムズ
(株)
【目的】
Ga シンチグラフィの撮像方法や画像処理法はこの数
十年間ほとんどかわっていない.本検討では撮像方法を見直
し,また Dual energy window
(DEW)
散乱線補正法を導入し
て画質改善を試みた.
【方法】
DEW 法による散乱成分の推定は,光電ピークに近接
した高エネルギー側のサブウインドを利用する.ここでサブ
ウインド幅を変化させ散乱線除去効率と画質の関係をファン
トム実験
(ILS,JPS)
により比較した.収集条件は,1. エネル
ギーピーク
(93,184,296keV)
,2. サブウインド幅
(5,7,
10,15,20,25,30%)
,3.LEGP および MEGP コリメータ
について,それぞれを組み合わせた.なお,従来法は MEGP
コリメータによりエネルギーピーク 93,184keV でウインド幅
を 20%とし,またこれとは別に本法と TEW 法の散乱線除去
効率を比較した.
【結果】
ILS ファントムによる欠損部および JPS ファントムに
よる陽性球の描出性は,LMEGP コリメータによる DEW 法で
画質が向上した.
【考察】
TEW 法は収集条件により画質が劣化する場合がある
が,本法は従来の収集条件でも定量性をあまり損なうことな
く画質が改善された.
380 123I-IMP 脳血流検査において SPECT 収集方法の
違いによる画像の検討〜ファントムを用いて〜
嶋田博孝,小川奈緒美,新井啓祐,岸 和洋,
大竹英則
群馬大学医学部附属病院 放射線部
123
I-IMP 脳血流検査において SPECT 撮影では収集方
【目的】
法や核種・投与量によりアーチファクト並びに血流低下程度,
重症度が異なる問題点が指摘されている.今回我々はその収
集方法の違いによるアーチファクトについて検討した.
【方法】
ファントムを使用し,連続反復回転収集による回転回
数の比較検討やステップアンドシュート収集との比較検討を
した.また,同機種の違う装置やコリメータの違い,再構成
処理装置の違いによる検討も行った.
【結果】
連続反復回転収集ではファントム中心部において高集
積部分を認めた.しかし,連続反復回転収集において回転回
数が少ないとアーチファクトは軽減され,1 回転のみの連続
収集ではアーチファクトは出現しなかった.同様にステップ
アンドシュート収集でもアーチファクトは出現しなかった.ま
た,同機種の違う装置やコリメータの違い,再構成処理装置
2010 年 9 月
1137
の違いによる差もなかった.
【考察】
連続反復回転収集を設定する際は,カウントや S/N 比
の影響が考えられ検討が必要である.また,装置の依存性の
問題なのか回転速度,回数を考慮し確認も必要と思われる.
381 骨シンチグラフィにおける eGFR の影響
木南眞治
淀川キリスト教病院 放射線課
【はじめに】
現在,骨シンチグラフィに使用されている放射性
医薬品の添付文章では,用法及び用量の項目で投与量を,年
齢や体重により適宜増減することが記載されている.また薬
物動態の排泄の項目では,累積尿中排泄率は投与後 2 時間ま
で増加することが,記載されている.実際の検査では,骨盤
部読影の妨害となる膀胱の描出を避けるため,直前に排尿さ
せ撮像することが行われている.これらのことから,腎機能
の影響が存在することが考えられるが,あまり考慮されてい
ないのが現状である.また,簡便に腎機能を評価できる検査
として,クレアチニンがあり,これと年齢,性別をもとに算出
される eGFR
(推定糸球体濾過率)
は,臨床に広く利用されて
いる.今回,体重,クレアチニンおよび eGFR が骨シンチグ
ラフィに与える影響を検討したので報告する.
【方法】
99m-Tc-HMDP555MBq 投与後 2 時間後に骨シンチグ
ラフィ全身像の撮像を行った患者で口頭により同意を得た 20
名を対象に検討を行った.検討方法として,骨シンチグラ
フィ全身後面像において第 2 腰椎とその右外側部に ROI を
設定し,それらのカウントと体重およびクレアチニン,eGFR
の比較を行った.
【結果】
体重およびクレアチニンと腰椎および外側部のカウン
トに相関は認められなかったが,eGFR とは相関が認められ
た.
382 核医学に携わる専門家のためのオンライン教育プロ
グラム
(IAEA-DATOL2)
の初期検証
谷口杏奈,齋藤享子,渡邉直行
群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部
【目的】
核医学分野における技術進歩は著しく,核医学診療に
携わる専門家相当の知識・技術の習得が要求される.国際原
子力機関
(IAEA)
によって,核医学診療に携わる専門家の生涯
教育のために標準化されたトレーニングプログラムを構築す
ることを目的として,オンライン化された教育プログラム
(IAEA-Distance Assisted Training Programme for Nuclear
が完成した.この
Medicine Professionals On-Line:DATOL)
プログラムは 200 以上の臨床実習を含み,16 モジュール・
33 ユニットからなる教材で構成されている.今回,日本でこ
のオンライントレーニングの融合画像診断技術領域
(PET/
CT)
を実施・検証したので,その有効性について報告する.
【方法】
トレーニング参加者は http://www.datnmt.org にアクセ
スし,PET/CT 領域の自己学習を主体的に行う.内容として
は,PET に係る,物理,放射線医薬品や臨床プロトコル等を
学ぶ.質問点,疑問点があれば随時 Tutor,Supervisor の指
導をインターネットを通じて受けることが出来る.そして,
Local discussion groups や Introduction for students にて世界
中の参加者間で情報交換が出来る.
【結論】
IAEA-DATOL2 は,核医学分野における 1 つの教育リ
ソースとなり,非常に有用であると考える.この教育プログ
ラムを介して,より質の高い核医学技術による医療サービス
の充実を図ると共に,同プログラムの日本での適正化がなさ
れ,我が国において普及・浸透することを願う.
10月15日
1138
日本放射線技術学会雑誌
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
15:54〜16:24
画像工学 LCD 評価・視覚評価 展示
座長:坂野隆明
383 視覚特性を考慮した信号対雑音比
(SN 比)
の検討
林 結伊1,片岡千尋2,山田麻希1,加藤友理3,
藤田尚利4,小寺吉衞5
1)
名古屋大学大学院 医学系研究科
2)
総合上飯田第一病院 放射線科
3)
愛知医科大学病院 中央放射線部
4)
名古屋大学医学部附属病院 医療技術部
5)
名古屋大学 医学部保健学科
【目的】
現在用いられている画質評価には物理的評価と視覚評
価がある.これらをより一致させるために,人間の視覚特性
を考慮した物理的評価法について検討する.
【方法】
物理的評価法として,振幅モデル,マッチドフィルタ
モデル,及び視覚系の MTF と内部雑音を考慮した知覚化統
計的決定理論モデルの 3 種類の SN 比を用いた.対象とする
信号の径とコントラスト,表示条件,撮影条件を変化させた
種々の条件における SN 比を算出し,視覚評価で得た信号検
出率との相関を調べることで,これらの SN 比の比較検討を
行った.
【結果及び考察】
用いた SN 比は,どれも信号径が小さくなる
ほど,信号のコントラストが低下するほど,また縮小するほ
ど,値が減少した.信号検出率との相関は,知覚化統計的決
定理論モデルが最も良い値を示し,信号検出率の増加に従い
SN 比も増加する結果が得られた.このことより,視覚特性を
物理評価法に考慮することの必要性が示唆された.
【結論】
今回算出した 3 種類の SN 比モデルの中で,視覚系の
MTF と内部雑音を考慮した知覚化統計的決定理論モデルが
信号検出率と最も良い相関を示したことから,視覚的な画質
を評価する方法として最適なモデルであると考える.
384 高解像度液晶ディスプレイにおける縮小画像の画質
特性の評価
木村行善1,横山大悟2,藤田尚利3,小寺吉衞2
1)
名古屋大学大学院 医学系研究科
2)
名古屋大学 医学部保健学科
3)
名古屋大学医学部附属病院 医療技術部
【目的】
本研究では,5M 液晶ディスプレイを用い,種々の補間
法で縮小表示した画像と,ISD
(independent sub-pixel driving)
を用いて表示した画像の画質特性を NPS と MTF を用い
て評価を行う.
【方法】
CR
(computed radiography)
を用いてマンモグラフィと
同等の条件で均一画像とエッジ像の PCM(phase contrast
mammogram)
撮影を行い,画像を取得した.得られた画像を
一般に用いられる補間法で縮小し,5M 液晶ディスプレイに
表示した時の NPS をディジタルカメラで撮影し算出した.専
用ビューアを用いて,分割表示を 5M と ISD による 15M で表
示したときの NPS をディジタルカメラで撮影し算出した.
MTF は presampled MTF と display MTF から overall MTF を
算出した.
【結果】
画質の粒状性はバイリニア法において最も良く,バイ
キュービック
(シャープ)
で最も悪い結果が得られた.MTF に
おいてバイキュービック
(シャープ)
で最も良い結果が得られ
た.ISD を用い 15M 表示することにより,解像度のみならず
粒状性の改善もみられた.
【結論】
補間法においてバイリニア法を用いることで良い画質
特性を持った画像が得られた.ISD により解像度だけでな
く,粒状性の良い読影環境が得られた.
385 解像力の異なる複数の LCD の物理評価と視覚評価
の検討
比企修一1,青木 聡2,諏訪和明3,斉藤慎治4
1)
(財)
日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 放射
線科
2)
立正佼成会附属佼成病院
3)
獨協医科大学越谷病院
4)
(株)
ナナオ 映像商品開発部商品開発1課
【目的】
自施設で使用している PC 等に使用されている汎用
LCD と医用画像表示用 LCD
(以下,医用 LCD)
の差異を明確
にするため,物理評価及び視覚評価を行い,知見を得たので
報告する.
【方法】
1)
物理評価:3 種類の LCD で MTF 及び WS をサブピ
クセル方向と非サブピクセル方向で測定した.2)
視覚評価:
a)
,小児臥位胸部と成人胸部を想定した複数の撮影条件で
バーガーファントムを撮影し,各 LCD で IQF および C-D ダ
イヤグラムを用いて評価した.b)
,a)
で IQF 等で求めた適当
と思われる撮影条件を用い,成人胸部ファントム画像を撮影
し,得られた画像を物理評価と同環境下にてデジタルカメラ
で撮影し解析した.
【結果】
1)
MTF は両方向でモノクロ医用 LCD が 優位であっ
た.WS は医用モノクロ LCD がサブピクセル方向の高周波側
で優位であった.2)
a 視覚評価では,汎用 LCD は医用 LCD
には及ばない事が IQF 及び C-D ダイヤグラムより判明した.
b 臨床画像の評価においても医用 LCD の方が優っていること
が判明した.これらの結果より,汎用 LCD より医用 LCD の
方が高い評価が得られた.
【考察】
今後,医用画像のデジタル化が進む中,安価な汎用
LCD はあくまでも参照画像観察用の使用に留め,読影診断を
行う際は医用 LCD を使用する事が望ましいと考える.近年カ
ラー LCD はピクセル開口率を高め高輝度化しており,本実験
結果も変化する可能性が有る為,今後検証したい.
386 2 機種の CR 装置における胸部 X 線画像の階調特
性の統一化-モニタ輝度測定による階調調整と ROC 解析
による検討−
小笠原一洋,常丸武敏,永井克昭
社会福祉法人北海道社会事業協会帯広病院 画像診断科
【目的】
当院は現在 PACS が導入されており,2 社の CR 装置
を使用している.各社独自の画像作成技術を用いており階調
等も異なるため,撮影室により画像が異なり特に胸部フォ
ローの際に問題があった.従来階調測定にはフィルムに出力
して濃度を測定する方法が用いられているが,この方法だと
モニタに表示されるものと異なる可能性がある.デジタル値
による測定も考えられるが,装置メーカーによりデジタル値
の定義が異なるために単純に比較することができない.そこ
で,撮影した Al step をモニタに表示し,輝度を測定すること
による階調測定と,ROC 解析により統一化を図った.
【方法】
使用装置は FCR5501 と Regius190 とした.Al step を
撮影し,FCR は E 階調,Regius は THX-01,02,07 の 3 種
類の LUT でともに FIX モードにて処理を行った.撮影した Al
step をモニタに表示し輝度を測定し,グラフ化した.FCR の
階調に一番近い Regius の LUT を選択して,胸部ファントム
を撮影し,肺野と縦隔の輝度が FCR に近づくように Regius
の肺野濃度と縦隔濃度を調整した.決定したパラメータにて
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
2 機種の CR 装置で処理を行い ROC 解析による視覚評価を
行った.
【結果】
この方法により,異機種の画像を近づけることが出来
た.ROC 解析は現在予備実験の段階であるが,両者の画像
に有意な差はないと予想される.
387 FPD 画像確認用モニタの精度管理について
諏訪和明1,渡邊慎吾1,中島正弘1,柳田 智2,
今花仁人2,伊沢康幸1,鶴谷 弘3,向笠泰司4
1)
獨協医科大学越谷病院 放射線部
2)
北里大学北里メディカルセンター病院 放射線部
3)
東京特殊電線
(株)
4)
キヤノンマーケティングジャパン
(株)
【目的】
当院では,一般撮影の FPD の画像確認に高精細モニ
タを使用し,撮影者はこの高精細モニタで画像確認しデータ
を出力している.DICOM PS 3.14 で表示の一貫性が示されて
いる中,装置に付随しているモニタを精度管理している施設
は少ない.今回,FPD 画像確認用モニタの劣化が表示画像
に及ぼす影響について検討した.また,FPD 撮影装置から画
像確認用モニタの精度管理を遂行できる環境を整え,利便性
についても検討した.
【方法】
健常ボランティアの胸部画像を撮影し,この画像に模
擬腫瘤を埋め込んだデジタルファントムを複数枚作成し,精
度管理前の画像確認用モニタで視覚評価を行った.同一の画
像を,精度管理されている読影用の高精細モニタで同様に評
価した.次に画像確認用モニタのキャリブレーションを行
い,再度同一の評価を行った.
【結果】
経時的劣化した精度管理前の画像確認用モニタでは,
全ての腫瘤陰影を観察できなかった.読影用の高精細モニタ
では,全ての腫瘤が観察できた.キャリブレーション後の画
像確認用モニタでは全ての腫瘤が観察できた.
【考察】
撮影者が最適な画像を観察できないことは,出力画像
の質に影響することが考えられる.適切な画像を提供するに
は,撮影室にも画像確認用モニタが必要で,画像確認用モニ
タの精度管理も放射線技師の立場から必ず必要であると考え
る.
第 4 会場
(桜 1)
展示 B
16:24〜16:54
画像工学 ディジタル画像(画質評価・処理)
展示
座長:田中利恵
388 ディジタルマンモグラフィにおける低線量画像のシ
ミュレーションによる検討
齋藤優希1,河合 綾1,藤田尚利2,山田麻希3,
小寺吉衞1
1)
名古屋大学 医学部保健学科
2)
名古屋大学医学部附属病院 医療技術部
3)
名古屋大学大学院 医学系研究科
【目的】
患者の被曝線量低減の為にはできる限り低線量での撮
像が望ましい.しかし,実際に患者を種々の撮影条件で撮影
し,最適な線量の判断を行うことは臨床上好ましくない.そ
こで,一般に用いられている線量の画像にシミュレーション
による雑音を付加して,低線量と同等の画像を作成し,臨床
に寄与するか検討する.
【方法】
乳房撮影装置を用いて一般的な撮影条件で撮影した画
像に,線量の差を考慮した雑音をシミュレーションにより付
加する.その際,雑音には CR プレートの解像特性として
point spread function
(PSF)
の畳み込みを行った.また,得ら
2010 年 9 月
1139
れた画像を実際の低線量画像と比較し,シミュレーションの
結果を検証する.
【結果】
様々な線量でアクリル階段を撮影し,画像のピクセル
値と雑音の標準偏差
(SD)
を測定した所,ピクセル値が大きく
なる
(線量が大きくなる)
ほど SD は小さくなる傾向が見られ
た.この傾向を用い,画像のピクセル値に応じた雑音を作成
した.この雑音に算出したシステムの PSF を畳み込み,CR
の解像特性も考慮した雑音を得た.また,実際の低線量画像
と作成したシミュレーション画像を目視,プロファイルで比較
した所,大きな差異はみられなかった.
【結論】
本手法を用いて低線量画像をシミュレーションで作成
できた.今後,様々な撮影対象と線量においてもシミュレー
ションを行い,再現性の検証を行いたい.
389 ディジタルマンモグラフィにおける最適管電圧の検
討
山田麻希1,加藤友理2,藤田尚利3,小寺吉衞4
1)
名古屋大学大学院 医学系研究科
2)
愛知医科大学病院 中央放射線部
3)
名古屋大学附属病院 医療技術部
4)
名古屋大学 医学部保健学科
【目的】
CR 系ディジタルマンモグラフィにおいて種々の乳房厚
で最適な画質
(雑音特性)
を与える管電圧の検討を目的とする.
【方法】
CR 系を用いた乳房撮影装置において撮影条件を Mo/
Mo
(25,28,30,32 kV)
,Mo/Rh
(25,28,30,32,35 kV)
とし,グリッド有りで密着撮影を行った.mAs 値はそれぞれ
の管電圧で平均乳腺線量が EUREF 目標値前後になるように
選択した.仮想被写体には 2,4,5,7 cm アクリル板を用い
た.以 上 の 条 件 で,Noise power spectrum
(NPS)
,NEQ,
DQE を求めた.NPS は各条件における画像のコントラストで
規格化し評価した.また,視覚の MTF 及び視覚神経系に生
じる雑音を考慮して SNR を算出した.
【結果・考察】
4 cm 以上の厚さの仮想被写体に対しては,
NPS および NEQ では Mo/Mo より Mo/Rh で雑音特性が良く
なり,管電圧による差はほとんど見られなかった.ただし仮
想被写体 7 cm の場合は Mo/Rh 35 kV で雑音特性が良い傾
向を示した.一方で SNR ではいずれの厚みでも Rh の有用性
が認められなかった.乳房撮影の X 線エネルギー領域ではコ
ントラストを一定とする場合,管電圧による粒状性の差はほ
とんど無いと考えられ,今回の結果からは最適な管電圧を判
断することができなかった.
390 一般 X 線撮影法の評価のためのデジタル人体ファン
トム
竹田 智1,前正康志2,相馬宏美2,白石順二3
1)
熊本大学大学院 保健学教育部
2)
熊本大学 医学部保健学科
3)
熊本大学大学院 生命科学部
【目的】
あらゆる一般撮影法の評価を行うことを目的として,デ
ジタル人体ファントムを構築する.X 線撮影用人体ファント
ムを実際に撮影した X 線画像と,そのファントムを CT で撮
影したデータから構築したデジタル人体ファントムを用い
て,その投影像から再構成した模擬 X 線画像を,アライメン
トの点で比較・評価し,デジタル人体ファントムの有用性に
ついて検討した.
【方法】
使用した X 線撮影用人体ファントムは,撮影用人体
ファントム
(京都科学
(株)
PB-10)
で,その胸部部分を CT で撮
影し,得られた 3D の CT 画像データを等方ボクセルに変換
10月15日
1140
日本放射線技術学会雑誌
した.使用 CT 装置は 64 列の MDCT
(Philips 社製 Brilliance
64)
で,マトリックスサイズは 512×512,スライス厚は 1mm
で撮像した.模擬 X 線画像は,コンピュータ上で,様々な入
射角,距離,パラメータで投影データを求め,作成した.そ
して,この模擬 X 線画像と実際に撮影した人体ファントムの
X 線画像のアライメントが一致するかを評価した.なお,X
線撮影装置は CR システム
(コニカミノルタエムジー REGIUS
MODEL 170)
を使用した.
【結果・結論】
一般 X 線撮影法の評価のためのデジタル人体
ファントムの作成は現在,研究中であり,アライメントの評
価法は当日発表する.
FPD よりも DQE は高値を示した.また,X 線エネルギーが
上昇することで,低エネルギー側より X 線エネルギーが上昇
することで CsI:Tl と GOS の DQE の差は大きくなった.
【まとめ】
2 種類の蛍光体の FPD 装置を比較した結果,CsI:
Tl の蛍光体では GOS より全ての物理特性に対して良い結果
が得られた.また,入力に対して出力の応答が良いことによ
り,GOS より CsI:Tl を使用している FPD 装置では低い照
射線量で撮影が可能であると思われる.また高い X 線エネル
ギーを使用する胸部撮影等では CsI:Tl を使用している FPD
装置では X 線照射線量をより低減可能であることが示唆され
た.
391 FPD 搭載型歯科用コーンビーム CT における CT 画
像の物理的評価
伊藤理江子1,藤田尚利2,後藤賢一3,小寺吉衞4
1)
名古屋大学大学院 医学系研究科
2)
名古屋大学医学部附属病院 医療技術部
3)
愛知学院大学歯学部附属病院 放射線部
4)
名古屋大学 医学部保健学科
【目的】
近年,歯科用コーンビーム CT の使用が広まってき
た.また,検出器も従来の I.I から FPD へと進歩したことで
小視野から大視野まで様々なモードの選択が可能となった.
そこでコーンビーム CT の画質を測定し,物理特性を検討し
た.
【方法】
直径 15cm の水を満たした円柱容器を,FOV:5cm,
10cm,15cm,20cm
[ボクセルサイズは順に 0.1mm,0.2mm,
0.3mm,0.39mm]
のモードで撮影し,NPS を算出した.これ
より Z 軸方向における XY 平面の違い,ボクセルサイズの違
いによる粒状性への影響を検討した.次にワイヤ法により
MTF を算出し,一般用 CT との比較および Z 軸方向における
XY 平面の違い,Axial 面内での位置の違いによる影響を検討
した.
【結果・考察】
粒状性:どのモードにおいても XY 平面の違い
による粒状性への影響は見られなかった.一方,ボクセルサ
イズの違いは粒状性に影響することが確認できた.解像度:
一般用 CT と比較すると良い MTF 値を示したが,XY 平面の
違いおよび Axial 面内での位置の違いにより解像度に違いが
生じた.中心から離れた位置での解像度が劣化する結果と
なった.
【結論】
コーンビーム角は粒状性には大きく影響しないが,辺
縁の解像度の劣化を引き起こすことが分かった.
第 6 会場
(白橿 1)
13:30〜14:35
JIRA 発表会(技術- 1)座長:小林一郎・本間龍夫
392 異なる蛍光体の間接型 FPD 装置における物理特性
の比較
山之内美之,渡邊慎吾,長谷部寛秋,諏訪和明,
大橋一範,中島正弘,伊澤康幸
獨協医科大学越谷病院 放射線部
【目的】
間接型 FPD 装置の蛍光体には希土類蛍光体
(GOS:
Gd2O2S:TB3+)
またはヨウ化セシウム蛍光体
(CsI:Tl)
が使
用されている.ヨウ化セシウムの蛍光体は光変換効率が高い
ため必要 X 線照射量の低減が可能であるとされている.今回
当院では同一メーカの異なる蛍光体の FPD 装置を使用する
機会を得たので物理的評価を行い,比較検討を行った.
【方法】
国際標準 IEC61267 に規定される標準線質 RQA3,
5,7,9 の X 線エネルギーにおいて,FPD の物理特性を測定し
入出力特性を測定し,DQE を求める 2 種類の蛍光体の FPD
装置を比較し,各線質での X 線検出効率を比較した.
【結果】
蛍光体に CsI:Tl の FPD の方が GOS を使用している
393 FPD 搭載一般撮影システムのデュアルエナジーサ
ブトラクション
船木新壽
GEヘルスケア・ジャパン
(株)
【目的】
当社の高性能 FPD 搭載システムは,従来方式よりも
線量を増やすことなく診断価値の高い画像を提供し,医療生
産性も高めるようなシステム開発を進めている.そうした開
発コンセプトのなかで,今回はデュアルエナジーサブトラク
ション機能を紹介する.
【方法】
・本システムは,Two Shot デュアルエナジーサブトラ
クション法を採用している.
・一回のエクスポージャー操作で,
200msec 以内に 2 種類の X 線エネルギーの画像データを収
集し,オート画像処理で 15sec 以内にサブトラクション画像
が再構成され表示される.
・①高 DQE の FPD を搭載し,② 2
種類の X 線エネルギーの差を十分大きく設定し,③両エネル
ギーの X 線光子数をバランスよく放射することにより,高
CNR を持つ高画質を得ることに成功している.
【結果】
・胸部検診において,標準画像と軟部組織画像と骨画
像を観察することにより,疑わしいケースを大幅に減らすこ
とができ,検診の効率を改善することができ,また,受診者
の安心感を高めることができた.
・喉頭部で従来,広く用いら
れてきた高電圧撮影に比較して,本法は声帯等の変化を明瞭
に観察できることが示された.
【考察】
胸部検診は,全受診者の 0.05%をしめる肺がん症例を
効率的に拾い上げるために,効率性の改善が求められてい
る.一方,受診者が多いことから,被ばく低減への期待も大
きい.胸部画像診断領域では,単純 X 線撮影と X 線 CT が
広く普及している.そうしたなかで,本法は,検診効率と被
ばく低減の両立を求めるニーズにむけて,新たな可能性を与
えるものとして,今後の広がりに期待できる.
394 新型 FPD を搭載した X 線透視撮影システム
(Sonialvision Safire 17)
の開発
奥村武志,岡村貴由,藤原雅志,平澤伸也
(株)
島津製作所 医用機器事業部技術部
【背景と目的】
X 線透視撮影システムは,検査室をより多目的
に使用できることが望まれるようになってきており,消化管
検査以外に整形検査への対応も必要となってきている.今回
我々は,新たに開発した直接変換型 FPD を搭載した,デジタ
ル X 線透視撮影システム
(Sonialvision Safire 17)
の開発を
行った.整形検査を含む各種検査に本システムを適用しその
有用性を検証したので報告する.
【方法】
新型 FPD では電気回路系の新規設計などによりノイ
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
ズを低減し S/N 特性を向上させた.また,従来の透視画像に
加え,撮影画像も対象とした画像処理エンジン
(撮影 SURE)
を新規にシステムに搭載した.画像処理エンジンではノイズ
リダクション処理,マルチ周波数処理,及び階調変換処理を
行うことにより,特に整形検査部位での視認性を向上させる
ことができる.
【結果】
本システムは脊椎の側面撮影など従来はコントラスト
がつきにくかった部位においても注目部位だけでなく画像全
体をバランスよく視認性を向上することができ,透視撮影シ
ステムとしてより多目的に使用可能である.また,長尺撮影
に対応する SLOT 撮影を標準搭載しており整形検査に有用で
ある.
395 FPD 搭載新型デジタル X 線 TV システム
(RaffineTM)
の開発
吉田知行
東芝メディカルシステムズ
(株)
X線事業部
【目的】
近年,高級機を中心に X 線 TV システムに X 線平面検
出器
(FPD)
を搭載した装置が増加している.FPD を組合せる
ことにより,歪のない高精細な画像を収集することができ
る.このメリットをそのまま消化管検査専用のシステムにも
適用するため,13 インチ以上の広い視野をもつ新型 FPD を
搭載した新型デジタル X 線 TV システム
「Raffine」
を開発した
ので報告する.
【方法】
X 線 TV システムとして必要な機能をコンパクトにまと
めつつ,FPD /デジタル処理のメリットである高画質画像の
提供を実現するために,以下の機能を盛り込んだ.
① 13 インチ以上の広い視野をもつ新型 FPD の搭載による歪
のない高精細な撮影画像収集.② FPD の 1 画素
(143μm)
ご
との信号をそのままリアルタイムで表示することができる透
視機能.③高濃度部に加え低濃度部にも対応した透視デジタ
ル補償フィルタ
(オプション)
の搭載.④ FPD の画素サイズに
最適な焦点サイズ 0.4 / 0.6mm を有し,検診向けに必要な
高熱容量 600kHU の X 線管球を搭載.⑤ FPD から出力され
る画 像をストレスなく処 理することができる高性能コン
ピュータの採用.⑥全世界で実績のある起倒式 X 線透視撮
影台および X 線高電圧装置の採用.
【結論】
これら技術の開発/導入により,歪のない高精細な透
視像および撮影像を収集できる新型デジタル X 線 TV システ
ムをつくりあげた.これにより病院の導入コスト低減と高画
質画像の提供という 2 つの要求に応えることができる.
396 新型 C アーム搭載透 視撮影システム Versiflex
VISTA
内田千尋
(株)
日立メディコ 【目的
(開発の必要性)
】
IVR 手技の普及により,胆膵系や呼吸
器,泌尿器,婦人科においても内視鏡装置を用いて治療を伴
う検査が実施されてきた.このとき,関心部位と内視鏡プ
ローブの重なりを避けるためアーム角度を体軸方向のみでな
く体軸周りに変えることが必要である.また,呼吸器や整形
外科では側面方向からの検査が必要となる.これらの要望に
対し,C アームを搭載した透視撮影台,第 3 世代 FPD であ
る VISTA Panel,オープンスタイルコンソール VISTA desk
と画像処理エンジン FAiCE-V からなる多目的イメージングシ
ステム Versiflex VISTA を開発した.
【方法
(特長・機能)
】
本システムの主な特長は以下のとおりで
ある.
2010 年 9 月
1141
(1)
透視撮影台…広いワークスペース,ODL 表示機能,テー
ブル固定トラッキングモード
(2)
VISTA Panel…広いダイナミックレンジの撮影像,高 S/N
の透視像,詳細透視
(6
“×6”
視野)
(3)
VISTA desk…被ばく線量概算表示/管理,高輝度 LCD×
2 面,カラー LCD タッチパネル
(4)
FAiCE-V…ダイナミックレンジ圧縮,バイキュービック補
間表示,マルチモダリティ表示,SEC 機能
(5)
オプション…ハイビジョン透視像と内視鏡画像/超音波
画像を Picture in Picgture 表示/録画できる.
【結果
(臨床有用性)
】
(1)
テーブル周囲
(特にテーブル奥)
に広いワークスペースを確
保できるため,内視鏡装置や超音波装置など,IVR 手技に必
要な機材を術者の傍に置いて,ストレスなく検査を進めるこ
とができる.
(=被検者)
を固定した状態で視野移動が可能な
(2)
テーブル
ため,術者は検査に集中できる.
(3)
“
6 ×6”
視野の詳細透視&高 S/N 透視像により,マイクロ
デバイスの視認性が大幅に向上する.
(4)
穿刺する際,ODL 表示することにより,針の深さを感覚
的に捉えやすい.
(5)
CT/MR などマルチモダリティ画像を参照表示することに
より,検査効率と治療精度の向上に貢献する.
(6)
被ばく線量概算表示により,線量計がなくても被検者の
表面線量概算値を定量的に表示・管理できる.
【考察
(W.I.P.)
】
新開発のアルゴリズムにより,透視像のさらな
る高 S/N 化を実現する.
397 X 線 一 般 撮 影 用 医 用画 像 表 示 3.9MsP モノク
ローム液晶ディスプレイの開発
春日宏明
東京特殊電線
(株)
情報機器事業部営業技術課
【目的】
日本でもモニタ診断が進むにつれ医用画像表示用ディ
スプレイの導入例が増える中,診断用途に区分けなく
「高解
像度モニタを使いたい」
という本来のニーズは今までと変わら
ないのではないだろうか?当社ではこの長年のニーズに応え
るべく,X 線一般撮影用に使われる 1.3MP モノクローム液晶
モジュールを用いた当社独自技術である ISD
(Independent
Sub-pixel Drive)
テクノロジー
(特許出願中,以下 ISD)
による
水平方向
(サブピクセル方向)
の解像度を 3 倍化した 3.9MsP
(3.9 メガサブピクセル独立表示)
モノクローム液晶ディスプレ
イを開発したのでここに紹介したい.
【特徴】
・ISD により撮影装置が持つ解像度の画像情報をより
効果的にディスプレイに表示し鮮鋭度が飛躍的に向上.
・
「特
殊 AR コート」
(特許出願中)
により X 線フィルムの引き締まっ
た黒と粒状性を極限まで抑えた低ノイズでの画像表示を実
現.
・3061 階調のルックアップテーブルから 1276 階調を選択.
・表示により滑らかなグレースケール表示が可能.
・JIRA
(日
本画像医療システム工業会)
規格である
「医用画像表示用モニ
タ−の品質管理に関するガイドライン JESRA X-0093*
に適応し品質維持・管理を高次元に対応.
A-2010」
【検証】
今回開発した 3.9MsP モノクローム液晶ディスプレイ
について,2MP モノクローム液晶ディスプレイと物理評価
(フォーカス特性
(MTF)
・ノイズ特性
(NPS)
)
および臨床評価
での比較をそれぞれ行い,3.9MsP モノクローム液晶ディスプ
レイにおける表示性能の有効性を確認した.
【結果】
今回開発した 3.9MsP モノクローム液晶ディスプレイ
は,物理評価・臨床評価ともに 2MP モノクローム液晶ディス
10月15日
1142
日本放射線技術学会雑誌
プレイと同等または上回る表示性能であるという結果となっ
た.今後も X 線撮影装置の技術革新が進み高解像度への対
応が予想される中,各医療施設においてはそれぞれの撮影装
置が持つ解像度に適した医用ディスプレイを選ぶことにも配
慮してほしい.
398 30 インチ 10M モノクロ LCD モニタの開発
橋本憲幸
(株)
ナナオ 映像商品開発部
【目的】
デジタルマンモグラフィの診断には,通常は 2 面のモ
ニタを並べ画像を表示している.これらの表示情報量を一つ
の画 面に表 示できる 10M モノクロ LCD モニタ RadiForce
GX1030 を新しく開発した.
【特長】
RadiForce GX1030 は,対角 30 インチ
(76.3cm)
の大
画面に高解像度 10 メガピクセル
(4096×2560=1048 万画
素)
の情報表示を可能とした.画像表示面積は 647.2×404.5
mm,画素ピッチは 0.158mm である.従来の 5M ピクセル
(2048×2560=524 万画素)
モニタの 2 台分の表示情報量を
一つの画面に集約している.画素は,3 サブピクセル構造で
はなく単一ピクセル構造となっている.機能の特長として
は,品質管理業務の負担軽減のためベゼル部とパネル間の内
蔵フロントセンサー,画像再現性向上に貢献する 10bit
(1024)
の多階調同時表示,輝度均一性を向上する DUE
(Digital Uniformity Equalizer)
機能,デジタルマンモグラフィ /US/MRI な
どの画像に適した輝度や階調に調整された表示モードが選べ
(管理グレード 1)
る CAL Switch 機能,JESRA X-0093*A-2010
による出荷試験報告書の同梱などを備えている.
【結果】
RadiForce GX1030 による画像表示は,2 台分の調整
や評価試験,パネル間の色調の違いを調整する手間が省け画
質の維持管理が容易になる.さらに,モニタ間の額縁が存在
しないため視認性が高まり作業効率の向上,視線移動の最小
化によるストレス軽減が期待できる.
399 無鉛空調防護衣
「Windpia II」
の紹介
石見泰三
(株)
保科製作所 【目的】
従来の X 線防護衣は通気性が乏しく,長時間の着用で
は蒸れて大量の汗をかき,長年の使用においては匂いの元や
カビの原因といった清潔面での改善が要求され,且つ長時間
使用の為,防護衣の重量が術者への負担となっていた.そこ
で弊社はこれまで無かった涼しさ
(= 清潔感)
等重量負担の軽
減を一枚の防護衣に採用させるべく無鉛空調防護衣
「Windpia
II」
の開発に至った.
【方法】
①涼しさ:㈱
「空調服」
との共同開発により,腰の辺り
に取り付けた 2 個のファンを採用する事によって外気を取り
込み,空気を流すことによって汗を瞬時に蒸発させる仕組み
を人工的に作り出し最適な冷却システムを採用.②清潔さ:
防護衣内にあるインナーウエアの取り外せることで,汚れや
匂いが付着しても水洗い可能とした.③重量感:ベルト一体
型のバックフレームを考案し,樹脂製バックフレームとベル
ト&ウェストパットの相乗効果で,人体への負担が大幅に軽
減出来る様に工夫を図った.
【結果】
「Windpia II」
はその独自の構造と技術を採用した結果,
長時間の着用において,通常の防護衣とは比較しようのない
空調効果を発揮し,汗をかかない防護衣が実現となった.さ
らに新しく採用したインナーウエアーの交換機能を利用する
事により洗濯が可能となり衛生面が向上した.重量における
人体の負担に関してはバックフレームを採用した事により全
重量を分散でき術者への大幅なる負担軽減を実現した.
【考察】
「Windpia II」
最大の特徴は今までの防護衣のイメージ
である暑い ・ 重いをくつがえし軽量でしかも体への負担を軽
減する爽やかな理想の防護衣である.今後もこの無鉛空調防
護衣は現場の声を重視し広く意見を採用することで理想の防
護衣として進化を続けて行けるようメーカーとして取り組ん
でいく所存である.
400 「JSGI ファントム」
について
中沢 洋1,伊予木勉1,五十嵐雅美1,埋橋喜次2,
札元将史3,青木 聡4
1)
トーレック
(株)
2)
練馬区医師会医療検診センター
3)
京王八王子クリニック
4)
立正佼成会病院
【目的】
日本消化管画像研究会が X 線 TV 装置の管理ツールと
して JSGI ファントムを開発,販売を開始した.JSGI ファン
トムは消化管 X 線画像の画質に関与する X 線 TV 装置の日
常管理と装置評価が行えるという特長を持ち,X 線 TV 装置
を日常的に管理することができる.それにより装置の異常,
劣化を把握することができるので,事故や過大な被ばくを未
然に防ぐことと装置による検査精度のばらつきを防ぐことを
目的としている.その使い方,有効性,簡便性などについて
検証する.
【方法】
JSGI ファントムはアクリルの凹凸によるコントラスト
分解能とマイクロチャートを使用した鮮鋭度を評価すること
ができる.使い方は X 線 TV 装置の寝台に JSGI ファントム
を置き照射野を合わせ,X 線は日常使用する条件で放射す
る.得られた透視画像でコントラスト,鮮鋭度を目視による
官能評価で行い,日常管理シートに記録する.
【結論】
X 線 TV 装置の日常管理ツールは作業の簡便性が重要
である.JSGI ファントムは小型でセッティングが簡単である
のと,通常使用している条件で X 線照射するだけであるので
日常的に使用することに適している.不変性試験ツールとし
て,また装置評価として全国の X 線 TV 装置標準
「ものさし」
としても使える.これにより X 線 TV 装置の検査精度の格差
是正,使用される機器の精度維持といった安全で質の高い検
査レベルを確保出来る.
第 6 会場
(白橿 1)
14:35〜15:25
JIRA 発表会(技術- 2)座長:日置達男・前田幸一
401 超音波による血管壁の弾性率測定
宮地幸哉1,近藤祐司1,長谷川英之2, 金井 浩3
1)
富士フイルム
(株)
R&D統括本部メディカル開発セン
ター 2)
東北大学大学院 医工学研究科
3)
東北大学大学院 工学研究科
【はじめに】
近年,食生活の欧米化や高齢化社会の急速な進展
に伴い,循環器疾患の増加が問題になっている.これらの疾
患を防ぐためには,その原因の一つである動脈硬化症の早期
診断が重要である.動脈硬化の進展に伴い,動脈壁の組成が
変化し,壁の弾性特性が大きく異なることが知られている.
共著者等は,超音波を用い,心拍による微小な動脈壁のひず
み・弾性特性を局所ごとに計測する位相差トラッキング法を
開発し,動脈硬化症の診断を行う手法に関する研究を行って
きた 1).
【目的】
当社,超音波画像診断装置 FAZONE M で測定した頸
第 66 卷 第 9 号
第38回日本放射線技術学会秋季学術大会 一般研究発表予稿集
動脈動画の Raw データに,位相差トラッキング法を適応し,
頸動脈の血管壁の弾性率を測定,弾性率の断層像画像を作
成することを目的とした.
【方法】
表在臓器用 FZT L10-5 リニアプローブを用い,200Hz
の高速フレームレートで測定,PC 上で弾性率を解析した.
血管を模擬したゴムチューブファントムを作製,レーザー変
位計を用いた内圧−外径試験を行い,弾性率の検証を行っ
た.
【結果】
作製した 4 種類のゴムチューブファントムの弾性率
は,位相差トラッキング法による測定で,29, 123, 520,
760kPa,レーザー変位計を用いた内圧−外径試験による測
定で,35, 141, 458, 704kPa となり良く一致した.ヒト頸動脈
血管壁への適応例として,35 才男性の健常者で 120kPa,82
才男性の冠動脈疾患患者で 704kPa という結果が報告されて
いるが 2),これらの弾性率範囲において,本手法を使用する
妥当性が確認された.
【結論】
FAZONE M の Raw データより解析した頸動脈壁の弾
性率より,動脈硬化症の診断を行える可能性が示唆された.
【参考文献】
1)H. Kanai, et al.:IEEE Trans. UFFC, 43, 791, 1996.
2)Y. Ogata, et al.:Proc. Int’
1. Conf. on EUROSON, 85, 73,
2008.
402 ヘリカル型放射線治療装置の新機能の紹介
清野秀徳
(株)
日立メディコ
【目的
(新機能の必要性)
】
本装置は IG-IMRT
(画像誘導 - 強度
変調放射線治療)
が可能な,米国 TomoTherapy 社製放射線
治療装置である.高速開閉バイナリー方式マルチリーフコリ
メータ
(以下 MLC)
による簡易で高精度な強度変調治療と,
ソース源に Linac を用いた MV 断層撮影装置
(MVCT)
による
高い位置決め精度が特長である.また,ガントリ連続回転と
治療台移動によりヘリカル方式照射が行え,小領域から大領
域までをカバーできる.これらの特長から,定位放射線治療
から全脳全脊椎照射まで多岐にわたる治療に利用されてい
る.本装置は従来ヘリカル照射機能のみ備えていたが,治療
部位あるいは症例によっては,シンプルかつ迅速な治療の実
現が求められていた.これを実現するため TomoDirect と呼
ばれるガントリ角度固定方式 IMRT が可能になったので紹介
すると共に,WIP で進められている新機能についても簡単に
紹介する.
【方法・特長】
TomoDirect はガントリ角度を固定して治療台を
移動しながら MLC を開閉するガントリ角度固定方式 IMRT で
ある.単なる固定照射では無く,強度変調が可能なため,例
えば,乳房接線照射等の場合,最適線量分布実現のために利
用されるウエッジフィルターを用いなくても接線照射が可能
である.また,現在 WIP で進められている新機能
(ダイナ
ミック機能)
は,MLC 上部ブロックコリメータ開度と治療台速
度を治療中可変とする機能であり,さらなる高精度化と高ス
ループット化が可能となる.
【結論
(まとめ)
】
ヘリカル型放射線治療装置は従来からのヘリ
カル方式放射線治療により複雑な症例をカバーすると共に,
ガントリ角度固定方式 IMRT によりシンプルな治療計画と照
射プロセスも実現した.また,さらなる高精度・高スループッ
ト化実現のための検討が進められており,放射線治療装置に
求められる,あらゆるシナリオをカバーできる装置になってき
ている.
2010 年 9 月
1143
403 マンモグラフィ診断支援システム
「NEOVISTA IPACS CAD type M」
の特徴
加野亜紀子1,太田恵理2,松村茂樹2,椎野富晴2
1)
コニカミノルタエムジー
(株)
2)
コニカミノルタヘルスケア
(株)
【背景】
乳がん検診の受診率向上に伴い,臨床現場ではマンモ
グラフィの読影数が急増している.また,最近のディジタル
化の流れを受けてソフトコピー診断への移行が加速してお
り,撮影から読影までをトータルにカバーする,使い勝手が
よく信頼性の高いマンモグラフィシステムが望まれている.
【概要】
コニカミノルタは,このたび
『マンモグラフィ診断支援
』
をラインナップ
システム
「NEOVISTA I-PACS CAD type M」
に加えた.本製品は,コニカミノルタ REGIUS のコンソール
からマンモグラフィ画像を受信し,微小石灰化クラスタおよ
び腫瘤陰影等のパターン検出処理を実行して,処理結果を読
影システム
「NEOVISTA I-PACS MG/EX 読影マンモオプショ
ン」
に送信する.読影システム上では,簡単なボタン操作によ
り,検出された病変候補位置にマークをオーバレイ表示する
ことができる.
【特長】
「NEOVISTA I-PACS CAD type M」
の特長は以下のと
おりである.
(1)
REGIUS マンモグラフィの優れた画質を活かす独自の検出
アルゴリズムを搭載
(2)
乳腺濃度の比較的高い日本女性のマンモグラフィにも高
い検出性能を発揮
(3)
納得感
(検出意図の理解しやすさ)
を重視したアルゴリズム
設計
(4)
淡く細かい石灰化まで高精度に検出することにより,微小
石灰化の見落とし低減と読影のストレス軽減に寄与
(5)
病変を覆い隠すことのない,
「線で囲む」
マーキング表示を
採用
(6)
入力モダリティは最大 2 チャンネル,出力は最大 3 チャン
ネルまで対応
【結語】
読影医の信頼できるパートナーとして,より高い臨床
価値を提供することを目標に,今後もシステムの充実と機能
向上を続けていきたい.
404 改良型 CT Dose Profiler のご紹介
長田一郎
アクロバイオ
(株)
【目的】
CT 撮影において,画像が鮮明化されると同時に被ばく
線量も問題である.そして,CT 装置の品質管理も重要とな
る.日常業務の中で,最小限の時間を要して CT 装置の品質
管理を行える装置を紹介する.
【特徴】
一般撮影,透視,マンモ,デンタルに使用する管電圧
計
(Piranha:ピラニア)
に専用プローブを接続することで,CT
の品質管理が行える.測定項目は,
「CTDI100」
,
「CTDIw」
,
「CTDIvol」
,
「DLP」
,
「FWHM」
,
「Scatter Index」
等の測定項目
「CTDIw」
は
を一回の照射で解析が可能となっている.本来
「CTDI100」
を含め,5 点測定をする必要があるが,CT Dose
Profiler は
「CTDI100」
の 1 点から算出することが可能となって
いる.これらの測定結果は Windows に表示させ,txt. ファイ
ルでアウトプットすることも可能.
【結果】
コンパクトなボディに,多機能を備えた管電圧計を
ベースに,専用のプローブ
「CT Dose Profiler」
を接続すること
で,CT の品質管理等を行う上での測定項目を簡便に計測す
ることが可能な装置である.
10月15日
1144
日本放射線技術学会雑誌
405 Optima CT660 の開発
渡辺誠記1,真尾洋子2
1)GEヘルスケア・ジャパン
(株)
技術本部CT技術部
2)GEヘルスケア・ジャパン
(株)
CT Sales & Marketing部
【目的】
日本のユーザのニーズを取り入れた 64 列 CT
「Optima
CT660」
を開発したので報告する.
【方法】
64 列 CT で,0.35 秒回転,最大 72kW 出力可能な X
線管を搭載しつつも,100kVA
(又は 75kVA)
という低設備電
源,ガントリ幅 205cm を実現し,設置面積を低減した.ま
た,ガントリ
(機構部)
上部に 12 インチのカラーモニタを初め
て搭載し,アニメーションや検査内容を説明する動画や患者
の位置決めを迅速化できるセミオートポジショニングモード
を搭載し操作性の向上を実現した.コンパクトな操作コン
ソール側では,低被ばくと高画質を両立する新しい画像再構
成法
“ASiR
(Adaptive Statistical Iterative Recon)
”
を搭載する
とともに,アイコン 1 つで撮像領域などが簡単に選べる救急
モードを開発した.さらに,夜間待機電力を削減する省電力
モードを開発・搭載した.
【結果】
新しく開発したガントリにより,操作室の最小設置面
積は 3m
(縦)
× 5m
(横)
と当社製 64 列 CT に比べて約 12 ∼
24%削減し,コンパクトな操作コンソールを含めた全体でも
最小設置面積 25m2 を可能とした.また,ガントリのカラーモ
ニタにより,検査時の患者不安の軽減や操作性の向上を実現
した.緊急検査モードにより夜間・休館時の急患が発生した
際にも専任操作者以外が対応可能な操作性を実現した.新た
に開発した省電力モードにより,従来の当社製装置に比べて
電気代を 6 割節約可能となった.
【結論】
日本のユーザのニーズである,小型化や電力消費量の
削減など高い経済性,操作性の向上を実現した,0.35 秒回
転,最大出力 72kW の 64 列 CT を開発した.
第 6 会場
(白橿 1)
15:25〜16:00
JIRA 発表会(技術- 3)座長:日置達男・前田幸一
407 X 線診療室防護工事標準化の調査研究
(2)
佐々木政彦
JIRA標準化部会サイト設備設計G SC-7108主査
【目的】
X 線画像情報は診断および治療等に必須の情報でかつ
その技術の進歩は著しいものがある.我が国はその X 線診断
の利用が,X 線装置の普及が進んでいることから拡大してお
り,X 線の使用に対する安全面の配慮が求められている.X
線診療室の防護工事は法令に即した形で,X 線診断業務に従
事する医療関係者と周囲にいる人々の安全のため設計・施工
しなければならない.通常,X 線診療室の設計・施工は建築
の専門業者が行うことが多く,必ずしも適切な X 線の防護が
行われていないことがある.X 線防護工事は,病院・診療所
の X 線診断業に従事する医療関係者,X 線装置サプライ
ヤー,建築の設計・施工者および X 線防護の専門業者が連
携することで,過剰でなく適切な防護を行うことができるよう
になる.そこで,X 線防護工事の標準化と防護専門業者の活
用をはかるため,
「X 線防護工事標準化の調査研究 平成 22
年版」
をまとめた.
本工業会において X 線装置サプライヤー・X 線防護専
【方法】
門工事施工者からなる委員会を組織し,
「X 線診療室防護工
事標準化の調査研究 平成 15 年版」
の見直しを行い,また新
しい X 線防護工事の組み入れを行なった.
【結果】
この X 線防護工事標準化マニュアルは,X 線防護の必
要性・対象となる場所・及び具体的な施工方法を表や図及び
図面を多く入れることでわかりやすくしたことと,JIRA 標準
化部会サイト設備設計 G SC-7108 の登録 X 線防護専門業
者を記載し,建築業界における設計者・施工者の X 線防護に
対する理解を深め,利用しやすい
「X 線診療室防護工事標準
化の調査研究 平成 22 年度報告書」
を作成した.
406 X 線 CT 装置 AquilionTM ワークフローを向上した
システム
原田智和
東芝メディカルシステムズ
(株)
CT事業部CT開発部
【目的】
現在販売している X 線 CT 装置 Aquilion について,患
者の位置決めから画像の表示までの一連の作業性
(ワークフ
の向上を行ったので報告する.
ロー)
【方法】
ワークフロー向上のため,以下 5 点の装置の機能改善
を行った.1)
ヘリカル撮影時の患者の位置決めをより簡易に
するための正中線の表示をより長くした投光器の搭載.2)
頸
部から腹部にかけての撮影時の患者固定をより簡易にするた
めの樹脂製固定具
(新アームアップホルダ)
の搭載.3)
更なる
低被ばくのための AIDR
(Adaptive Iterative Dose Reduction)
の搭載.画像ノイズが最大 50%低減し,被ばくは最大で約
75%低減することが可能.4)
画像再構成装置の処理速度の
高速化.5)
本体の傍にいなくても,撮像したデータをネット
ワークを介して専用の PC で臨床アプリケーションを利用で
(オプション)
の搭載.また,再構成
きる SUREXtensionTM 機能
装置の構成にバリエーションの設定を設けることで,ニーズ
に合わせた Aquilion を提供することが可能となった.
【結論】
これら技術の開発/導入により,高機能かつ性能アッ
プした X 線 CT 装置 Aquilion を開発することができ,受診者
の被ばく低減やオペレータの検査効率改善が期待される.
第 66 卷 第 9 号
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