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社説 : ケネディ大使 大統領の被爆地訪問を

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社説 : ケネディ大使 大統領の被爆地訪問を
信濃毎日新聞 2013 年 11 月 19 日
社説 : ケネディ大使 大統領の被爆地訪問を
新たな駐日米大使として、ケネディ元大統領の長女キャロライン・ケネディ氏(55)
が着任した。
日米間には米軍普天間飛行場移設問題をはじめ多くの難問が横たわっているが、
任期中にぜひ、実現してもらいたいことがある。原爆被爆地の広島、長崎へのオバマ
大統領の訪問だ。大使にはその強い動機があるはずだ。
オバマ氏は大統領に就任した 2009 年の 4 月、プラハでの演説で「核兵器のない
世界」の実現に向けた構想を示した。「核兵器を使用したことがある唯一の国として米
国には道義的な責任がある」とし、具体的措置を取ると宣言した。この構想などを理
由に同年のノーベル平和賞を受賞した。
唯一の被爆国、日本にとって核廃絶は悲願である。広島、長崎には大統領訪問で
「被爆者の願いを吸い上げてほしい」との期待も大きい。
オバマ氏は大統領就任後、2 回、来日している。1 回目は 2009 年 11 月、最初のア
ジア歴訪。2 回目は 2010 年 11 月、横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)
首脳会議出席のためだった。
いずれの機会も広島、長崎訪問の期待が高まったが、見送られた。理由は「十分な
時間が取れない」との米政府の判断とされた。 ところが、内部告発サイトのウィキリー
クスが公開した機密扱いの米外交公電によって、日本政府側の意向だったことが明ら
かになった。 初来日に際し、反核グループへの影響を考慮し、広島訪問に否定的な
姿勢を示したとされる。
ケネディ氏の前任のルース氏は米大使として初めて広島、長崎の平和式典に参加。
2010 年夏に信濃毎日新聞社を訪れた際、大統領も 1 期目に広島を訪問する可能性
を示唆したが、実現しなかった。
ケネディ氏は、この状況を過去の体験を基に打開してほしい
ケネディ氏は 35 年前、20 歳の大学生のころ、叔父の故エドワード上院議員らと広
1
島を訪れている。 原爆資料館で熱心なあまり一人遅れて展示に見入り、原爆病院で
は患者のケロイドに「思っていた以上のむごさ」と語った。
ことし 9 月、大使の承認を得るための米上院公聴会で、この時の経験を「心を大き
く揺さぶられた」と回想。 「日本こそ私の奉仕先」と言い切った。
オバマ政権は核兵器実験を度々行うなど核廃絶とは逆方向の動きも見られる。
大統領の広島、長崎の訪問で、プラハでの宣言を一歩前に進めたい。
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