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3-D CAD ソフトウェアを利用した図形科学カリキュラ

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3-D CAD ソフトウェアを利用した図形科学カリキュラ
日本大学生産工学部研究報告A
2
0
0
7年 1
2月 第 4
0巻 第 2 号
研究ノート
3DCADソフトウエアを利用した
図形科学カリキュラムの構築
今淵正恒
-D CAD Sof
Cons
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3
D CAD
本を担う図形科学教育の必要性が増してきている。しか
1.序論
しながら一般的に CADソフトウエアはバージョンアッ
プに伴い利便性が向上する一方で,専用化すなわち使用
コンピュータの利用は科学技術計算が主体であった
分野(機械系,建築系など)の分化が進み操作の複雑化
が,その利用技術の発達により,工学および工業の分野
を招来している。また,ソフトウエアは教育専用ではな
における利用範囲が拡張され,これらの分野でのコン
いことから,教育への3DCAD導入については,初学
ピュータ利用は今や不可欠の要素となっている。現在で
者に対しては初期教育が必要となる。しかし,本学部の
は,多くの大学で2DCADを利用した製図教育が実施
大多数の学生のように図形の表現法に関する基本知識を
されるようになったが,立体の形状認識に優れ,形状の
持たない学生を対象として,過剰なストレスのない図形
確認が容易なことから,最近では設計製図教育に3-D
科学教育を目指した3-D CADソフトウエアを利用す
特に図形処理
CADを使用する教育が導入されつつある。
る効率的な教育についての研究は少ない。本研究は,図
の領域,すなわち設計製図の領域においては,企業にお
形教育モデルとしてテキサス大学を中心に開発され,ま
ける設計の効率化を目指した2-D CADシステムの普
た米国において多くの大学で実施されているエンジニア
及とともに,生産システムの効率化に対しては,設計か
リ ン グ・デ ザ イ ン・グ ラ フィック ス
ら生産までの自動化あるいは効率化を目指した CAD,
,以降 EDG)の教育内容を対象として
Des
i
gnGr
aphi
c
s
CAE,CAM 等の技術が開発され,現在では3DCADが
実施した。EDGは米国内外で学部の一年次生用のカリ
利用されてきている。このような状況から図形処理の基
キュラムとして教育的評価が高い。この3DCADを利
日本大学生産工学部教養・基礎科学系准教授
― 63―
(Engi
nee
r
i
ng
用したテキサス大学における EDGのカリキュラムにつ
てのみ取り扱うこととする。
いて,その教育内容を分析することにより,図形処理の
2
.1 パート1:幾何形状の概念と要素
基礎プロセスでの教育要素を求め,またその課題につい
2次元の図形に関する課題
CADの基本操作について,
て検討することによって,教育に必要な要素と内容を明
を中心に構成されている。課題としては2DCADの機
らかにし,効率的な図形科学教育カリキュラムを構築す
能を使用する。
ることが目的である。
2
.
2 図面に使用される直線の作図
(実線,破線,一点鎖
線等)と線種の変更,文字の入力
2.エンジニアリング・デザイン・グラフィック
スの概要
主な内容については以下のとおりである。
1)基本図形の作図と図形の編集および変形
2)接線,接円,オフセットした直線と曲線の作図
EDGのカリキュラムは,その特徴として,コンピュー
2
.
3 パート2:幾何モデルとその表現法
タにより作成される幾何モデルであるソリッドモデリン
3DCADの基本操作について,ソリッドモデルに関
グが設計解析,製造工程や製作図面などの作成に利用さ
する課題を中心に構成されている。課題では3D CAD
れるように,設計開発プロセス全般において中核をなす
の機能を使用する。以下に主な内容を示す。
ものであるとの認識のもとに組立てられている
1)ソリッドモデルの表現法
(陰線処理,レンダリング,
。そのために教育内容は,工学の分野に関連した
(
Fi
g.1
)
図的表現についての教育を含んだものになっている。ま
マルチビュー・ウインドウ,視点変換等)
2)ソリッドモデルの生成法(ブール演算,スウィープ
た一方では,学生に設計,解析,および製造工程の総合
操作)
化の重要性を認識させることと機械工学への勉強の動機
3)三面図の作成
付けを目的としている。EDGの教育は半期の科目として
2
.
4 パート3:モデルの利用
(複面投影図,解析,製作)
講義は1時間(6
0分)
/週,演習は2時間(1
20分)
/
週×
3次元のソリッドモデルを利用して複面投影図を作成
15週で実施されている。教育内容は幾何形状の概念と要
し,FEA (
Fi
ni
t
eEl
ementAnal
ys
i
s
)を利用した設計解
素,幾何モデルとその表現法,モデルの利用(複面投影
析(重心点,体積,慣性モーメント)の課題を中心に構
図,解析,製作)
,工業図面の作成の4つの構成パートか
成している。以下に主な内容を示す。
ら組み立てられている。本研究では,演習の内容に関し
1)ソリッドモデルを作成し複面投影図を作成する。
2)ソリッドモデルの解析(重心点の計算,FEA 機能の
利用)
3)プロトタイピング
2
.
5 パート4:2D図面の作成
パート3までに学習してきた知識を応用する総合課題
として,製図規格に沿った製作図面の作成をする。この
課題において,ソリッドモデル化した部品から組立図を
作成する。
3.EDGカリキュラムの教育プロセス
3
.
1 教科の内容
EDGの内容は,カリキュラムのコンセプトに沿って
Fi
g.2に示したように
1)BASI
C ELEMENT,
2)GEOMETRI
C MODELI
NG,
3) ENGI
NEERI
NG ANALYSI
S &
RAPI
D
PROTOTYPI
NG,
4)ENGI
NEERI
NG DRAWI
NG
の4つのパートから構成されている。
3
.
2 教育の形態
授業は半期で講義とコンピュータルームでの CADソ
Fi
g.1 Conce
ptofEDG
フトウエアを使用しての実習で構成されており,1週間
―6
4―
3
.
3.
2 幾何モデル生成プロセス(可視化)
立体を表現するために必要な投影の知識,
および CAD
による二次元幾何形状の生成に関する理解が得られた後
のプロセスとして GEOMETRI
C MODELI
NG Par
tが
置かれている。この過程では,三次元幾何形状の生成と
その表現法をワイヤフレームモデル,サーフェイスモデ
ル,ソリッドモデル等を使用して教育する。特に,設計
解析(FEA による力学解析)および製造過程(プロトタ
イピング)で通常使用されているソリッドモデルに関す
る実習については,三次元の幾何データの入力による立
体の生成とともに,立体の表現法(モデリング,投影法
Fi
g.2 Te
ac
hi
ngPr
oc
es
sofEDG
等)
,複数の基本立体(プリミティブ)を組合せることに
のうち,それぞれ異なる曜日に1回実施される。講義で
よって複合立体を生成すること,そして複合立体の生成
は,通常4週毎に合計4回の小テストが実施されるとと
法を応用して立体に貫通穴を開けたり,切り欠きを設け
もに,手描きによる作図課題が講義ごとに宿題として課
たりすることで目的の形状へ複合立体を加工すること
せられ,翌週に提出することになっている。CAD実習は
等,についても教育している。
三次元の処理が出来る CADソフトを使用しており,課
3
.
3.
3 解析プロセスと試作プロセス
(設計解析,製造
題については,あらかじめ教科書 に基づいた課題が実
工程)
習室のサーバに課題ファイルとして用意されており,学
3
.
3.
3
.1 解析プロセス
生は各自で自分のコンピュータに読み込み,教科書を読
ソリッドモデリングの生成に必要な知識と操作法およ
みながら自習方式で順次に実施する。このコンピュータ
びモデルの表現法について理解した後のプロセスとして
の課題は時間内に終了しなければならない。なお,実習
EN GIN EERIN G
室には担当の教官のほ か に 大 学 院 の 学 生 一 名 が TA
,が置かれている。実際の設計に
PROTOTYPI
NGPar
t
(ティーチング・アシスタント)として,学生からの課題
おいて設計の構想から展開へと進んだ段階で,設計の検
に対する質問やコンピュータの操作に関する質問に対応
証と試作が必要となるが,EDGの過程においても,実際
している。
の設計と同様に三次元モデル生成過程の後に置かれてい
3
.3 EDG教育の流れ
る。この解析プロセスでは平板部品の力学解析を実施し
AN ALYSIS &
RAPID
教科のコンセプトからわかるように,機械工学科の科
ているが,まだ力学についての知識のない学部の一年次
目として機械系の設計製図への導入とその基礎を教育す
生を対象としているため,あらかじめ用意されている部
るだけではなく,機械系以外の学生に対して設計から製
品について FEA による応力解析を実施することにより
造までの一連のプロセスを経験させることも目的のひと
コンピュータによる力学解析を教育している。
つである。したがって,CADによる設計からの一連のプ
3
.
3.
3
.2 試作プロセス
ロセスにおいて,三次元の幾何データベースの利用が不
一方,製造過程に対応する試作プロセスでは,試作の
可欠であることから,EDG教育ではコンピュータ幾何モ
ために用意されている加工機器の数と試作にかかる費用
デル(ソリッドモデル)を三次元 CADで生成して利用す
との関係から,個人単位での実施は難しいので,そのた
る教育法を採っている。Fi
g.2に示したように教育の流
め に 4 名 で 1 グ ループ を 編 成 し,グ ループ 毎 に コ ン
れを見ると,前述の4つのパートが設計から製造までの
ピュータ上に生成したソリッドモデルを利用して試作を
プロセスに対応していることが判断できる。
実施することにより,コンピュータ幾何モデルを利用し
3
.
3.
1 EDG教育導入プロセス(可視化)
た試作を教育している。
Fi
g.2に示されているように,設計概念形成の部分に
3
.
3.
4 図面化過程
おいて三次元コンピュータ幾何モデルを生成する前段階
設計を展開し,検証と試作を完了した次のプロセスと
までの基礎を教育するプロセスとして BASI
C ELE-
して,設計情報の保存を工業図面の形で行うが,同様に
MENT Par
tが置かれている。ここでは,作図に必要な
EDGの最終プロセスとして,三次元のモデルを工業規格
投影法の基本,および二次元の基本的な図形や製図規格
に準拠した二次元の図形表現,および寸法の表記法の基
に基づく線の種類と用法を教育するとともに,
CADソフ
本について教育をしている。
トウエアを使用して二次元の作図を実施するために必要
な線および図形に関する基本について教育している。
― 65―
ンピュータ上のモデルを製造するまでのプロセスを経験
4.教育内容の分析
できることは教育上貴重であると
形教育または設計製図教育を
設計製図の基礎プロセスとしての EDGカリキュラム
える。これからの図
えた場合,
CAD教育には
プロトタイピングは有用であると
える。
そのためには,
は,3DCADソフトウエアを使用したソリッドモデリ
従来から利用されている2-D CADから3-D CADへ
ングが中心の構成となっている。そのために,作図や投
の移行が必要である。
影図を作成するための機能が複雑であ る た め,コ ン
5.教育内容の検討および結果
ピュータ操作法に関する情報は教科書にマニュアル化さ
れて詳細に記載されており,学生はあらかじめ配布され
た講座日程表に沿って予習するようになっている。EDG
3D CADを利用した設計製図のカリキュラムを追
教育のコンセプトに基づいてカリキュラムが展開されて
求するために,米国の設計製図の導入教育として,大学
いるが,そこで使用されている課題は設計製図の基礎プ
1年次生を対象にして現実に実施されている EDGのカ
ロセスに良く見られるように,作図の基本(線の種類)
リキュラムをモデルとすることによって,その教育に含
から始まり,機械の基本部品が採りあげられている。半
まれる CADに関する要素の分析を行った。その方法は,
期という短期間に多彩なトピックをこなすための教育内
3DCADの導入について,教育に必要な作図上の要素
容に関する配慮が見られる。それは時間外に学生に課せ
を特定できれば理想的なカリキュラムの実現が可能にな
られる宿題や作業である。たとえば,宿題の手描き課題
ると
を有効に使用して基本的な作図法(図学)を実施してい
1からパート4までのプロセスのそれぞれに用意されて
るが,コンピュータでの作図に共通する思
力を,宿題
いる課題について,CADにより作図をするために必要と
としての手描きの課題を実施することによって,養成し
される技術要素の種類について分析を行った。ただし,
ていることが判断できる。また,プロトタイピングでは,
その内容は,パート1からパート4までの課程を図形教
経済的な理由から接着面をもつ用紙を使用した積層モデ
育への応用を
ルを作製するため,多くの時間を要するが,学生が生成
応用 (
Appl
i
ed)の3課程に分類して,作図に関する技術
した三次元の立体を直接的に現物で確認でき,また,コ
要素の種類について分析を行なった。本研究で取り扱う
え,本研究では,カリキュラムに含まれるパート
慮し,導入 (
,基本 (
,
I
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or
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Tabl
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e
w
11
4
―6
6―
技 術 要 素 の 種 類 に つ い て は[表 示 (
]
,
[作 成
Vi
e
w)
-Dから3Dに移行する過程の作図課題に関して,
],
[ツール (
]
,[修正 (
]
等の作図と
(
Dr
aw)
Tool
)
Modi
f
y)
[表示]および[修正]要素に関する2Dの課題と
画面表示関係の基本操作に必要な要素についてその種類
3過
Dの課題間の利用件数を調整することにより,
と使用件数を調べた。その結果を Tabl
e1に示す。分析の
剰なストレスを与えない効率的な教育が実現できる
結果[作成]
,
[ツール]要素の件数は2(Ex1
,Ex2)
D
と判断できる。
と3-Dの(Ex3以降)間では顕著な変化は見られない。
2Dの作図では視点変換および図形の変換の必要が無
謝辞
いため[表示]および[修正]要素の項目では3Dの作
本研究の一部は平成 1
7年度日本大学学術研究助成金
図との間に変化が認められる。この[表示]および[修
一般(個人)によるものである。日本大学の学術研究助
正]要素の項目の変化は,実際にテキサス大学で経験し
成金援助に対し感謝します。また,本研究を実施するに
た EDGの授業で,作図所要時間に変化が見られた事と
あたりテキサス大学工学部機械工学科 Pr
of
.DavorJ
ur
-
符合していることが認められた。
i
c
i
c
,Pr
of
.Ronal
dE.
Bar
r両先生の協力に対し感謝しま
す。
6.結論
参
文献
以上の検討結果から,次に示す結論を得た。
1
(
) 手描きの作図課題を有効に使用することにより,コ
ンピュータの作図と共通する思
1)DavorJ
(
:エン
ur
i
c
i
c抄訳:鈴木賢次郎,今淵正恒)
力を養成している
ジニアリング・デザイン・グラフィックス・カリキュ
ことが判断できる。
ラムの現代化,図学研究,Vol
3
1
,No.
3,
(199
7)
.
2
(
) 図形教育や設計製図教育で,
CADを使用する教育の
.
p41
なかで,立体の形状認識力の養成にはプロトタイピ
2)Ronal
d E.Bar
r
, Davor Jur
i
ci
c, Thomas J.
ングが有効であるとともに,モデリングから製造ま
Kr
ue
ge
r
,Laneda S.Wal
l
,Bi
l
l
y H.Wood:Engi
-
での過程を経験することも設計製図教育上有効であ
nee
r
i
ng Des
i
gn Gr
aphi
csWor
kbook 2 Edi
t
i
on,
ると判断できる。
(
1
99
8
)
.
3
(
) CADを使用する図形教育や設計製図教育での,2
― 67―
(H 19
.
8.
7受理)
Fly UP