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プールで感染するおそれのある 感染症について

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プールで感染するおそれのある 感染症について
平成28年度 プール衛生講習会
6月14日(火)ルネ小平中ホール
プールで感染するおそれのある
感染症とその予防
多摩小平保健所
保健対策課 感染症対策担当
1
本日の内容
1 感染症の基本と予防
2 プールで感染するおそれがある疾患
2
本日の内容
1 感染症の基本と予防
2 プールで感染するおそれがある疾患
3
感染症成立の3要素
感染源がある
感染源から感染経路を通じて伝播する
感受性のある人(宿主)が存在する
※どの要素が欠けていても感染症は成立しない
※発症すると「炎症」が起きる(発熱、腫れ、痛み)
4
主な感染経路と感染症(病原微生物)
感染経路
特徴
感染症(病原微生物)
空気感染
・咳、くしゃみなどで、飛沫核(5μm以下)
として伝播する。・空中に浮遊し、空気の流
れにより飛散する。
麻しん、水痘、結核
飛沫感染
・咳、くしゃみ、会話などで、飛沫粒子
(5μm以上)により伝播する。・1m以内に床
に落下し、空中を浮遊し続けることはない。
インフルエンザ、水痘、風し
ん、百日咳、流行性耳下腺炎
他
接触感染
手指、食品、器具等を介して伝播する頻度の
高い伝染経路である。
ウイルス:腸炎(ノロ、ロタ
他)、結膜熱(アデノ他)、
手足口病、ヘルパンギーナ
(エンテロ他)
細菌:とびひ(黄色ブドウ球
菌)、咽頭炎(溶血性レンサ
球菌)、腸管出血性大腸菌感
染症、他
経口感染
手指、食品、器具等を介して伝播する頻度の
高い伝染経路である。
ノロウイルス、サルモネラ菌、
腸管出血性大腸菌
5
感染経路の遮断とは
1 感染源(病原体)を持ち込まないこと
2 感染源(病原体)を持ち出さないこと
3 感染源(病原体)を拡げないこと
6
感染症を予防するには
1 感染源を断つ
(消毒、手洗い)
2 感染経路を断つ
(登園停止、交流を控える、環境の清掃)
3 宿主に抵抗力をつける
(予防接種、生活改善)
7
咽頭結膜熱のうつり方
プールに行かない人もうつる「プール熱」
咽頭結膜熱にかかった人
アデノウィルス
(かかった人ののど、目に潜む。便の中にもいる)
せきや目をこすった手で触れたり、トイレのあと手を洗わない
うつる
〔症状が出ない潜伏期5~7日〕
症状が出る=発症
8
「プール等で公衆に水泳する」とは
• 肌の露出
感染経路が成立しやすい
• 粘膜の間接的接触
(プール水、共用タオル、ビート板等)
• 集団行動
感染源が宿主と接触する機会が増える
• 体力の消耗
• 体温差
宿主が発症しやすくなる
9
プール利用にあたり、
感染拡大を防止するには?
1
2
残留塩素濃度を保持すること
以下を周知すること
・発症しているものはプールに入らない
・水泳直後のうがい・手洗い・シャワー
(目の病気では洗眼も有効)
・タオルなど(目の病気では目薬も注意)
を他人と共有しない
・更衣室の清潔と乾燥
3 水泳後に利用者がプールによると考えられる
伝染性の疾患にかかっていないか注意する。
10
本日の内容
1 感染症の基本と予防
2 プールで感染するおそれがある疾患
11
感染症法の類型
一類感染症
出血熱類, ペスト, マールブルグ病, ラッサ熱他
二類感染症
結核,ポリオ, ジフテリア, SARS, 鳥インフルエンザ(H5N1)
三類感染症
コレラ, 細菌性赤痢, 腸管出血性大腸菌感染症 , 腸チフス他
四類感染症(人から人への伝染はない)
黄熱, 狂犬病, つつが虫病, 日本脳炎 ボツリヌス症, マラリア,
レジオネラ症 他
五類感染症(国が感染症発生動向調査)
麻疹, 風疹, ウイルス性肝炎, クリプトスポリジウム症,
HIV/AIDS, 梅毒, 破傷風, MRSA他
12
「東京都感染症マニュアル2009」
学校保健安全法上の種別
第一種
感染症法の一類・二類(結核以外)
第二種
飛沫感染、児童生徒のり患が多い、
学校で流行を広げる可能性が高い
咽頭結膜熱(プール熱)
第三種
学校で流行を広げる可能性がある
腸管出血性大腸菌感染症, 流行性角結膜炎,
急性出血性結膜炎, その他の感染症
[手足口病, ヘルパンギーナ, 伝染性膿痂疹(とびひ),
伝染性軟属腫(水いぼ),アタマジラミ etc.]
13
「東京都感染症マニュアル2009」
出席停止について
(学校保健安全法)
第一種
治癒するまで
第二種
咽頭結膜熱:症状の消退後2日を経過
第三種
病状により, 学校医その他の医師に
おいて伝染のおそれがないと認めるまで
14
「東京都感染症マニュアル2009」
出席停止の期間の考え方
○感染様式と疾患の特性を考慮し、感染が成立し
やすい程度に病原体が排泄されている期間を基
準としている。
○微量の病原体が存在していても、他人に感染す
るおそれがない程度であれば、出席停止の措置
を講じる必要はない。
○便中に病原体が排泄される疾患では、手洗いの
励行やプール前後のシャワーの使用などにより、
他人への感染のおそれは低くなるので、出席は
可能。
15
「東京都感染症マニュアル2009」
咽頭結膜熱(プール熱)
病原体
感染経路
潜伏期
主症状
アデノウィルス(主に3型)
飛沫感染、接触感染
2~14日
咽頭炎(のどの腫れと痛み、リンパ節の腫れ)
結膜炎(目の充血、痛み、目やに)
高熱(39-40℃、変動あり、4-5日間)
学校保健安全法 第2種
「出席停止」主要症状が消退した後2日を経過するまで
16
流行性角結膜炎(はやり目)
病原体
感染経路
潜伏期
主症状
アデノウィルス(8型、19型、37型etc.)
飛沫感染、接触感染
2~14日
角膜と結膜の炎症。まぶたの腫れ、目やに、
流涙
学校保健安全法 第3種
「出席停止」医師において感染のおそれがないと認められるまで
17
急性出血性結膜炎
病原体
感染経路
潜伏期
主症状
エンテロウィルス、 コクサッキーウイルス
飛沫感染、接触感染
1~3日
急性の結膜炎、出血。まぶたの腫脹、流涙、
目やに
学校保健安全法 第3種
「出席停止」医師において感染のおそれがないと認められるまで
18
手足口病
病原体
感染経路
潜伏期
主症状
コクサッキーウィルス、エンテロウイルス
飛沫感染、接触感染、経口(糞口)感染
3~6日
手、足、臀部に痛みを伴う水疱
高熱はまれ
学校保健安全法 第3種
「出席停止」医師において感染のおそれがないと認められるまで
19
ヘルパンギーナ
病原体
感染経路
潜伏期
主症状
コクサッキーウィルス
飛沫感染、接触感染、経口(糞口)感染
3~6日
突然の高熱(39℃以上)、咽頭痛、
口腔の奥に小水疱疹→破れて潰瘍に
不機嫌
学校保健安全法 第3種
「出席停止」医師において感染のおそれがないと認められるまで
20 20
腸管出血性大腸菌感染症(O157,O26,O111等)
病原体
感染経路
潜伏期
主症状
腸管出血性大腸菌(ベロ毒素を産生)
経口感染
10時間~6日
初期は、かぜ様症状
激しい腹痛と下痢(水様性→血便)
予防
症状を有する人をプールに入れない
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レジオネラ症
レジオネラ菌
病原体
感染経路 空気感染、飛沫感染
人工水環境(循環式浴槽、冷却塔、温水プー
ル、給湯設備など)で菌がしぶきなどのエアロ
ゾルとともに飛散し、吸い込むことにより感染。
2-10日間
潜伏期
主症状
レジオネラ肺炎:全身倦怠感、筋肉痛、高熱、
咳、肺炎、下痢、意識障害
ポンティアック熱:発熱、頭痛などのインフルエ
ンザ様症状
22
伝染性軟属腫(みずいぼ)
病原体
感染経路
潜伏期
主症状
ポックスウィルス
接触感染
2週間以上?
光沢のある1-10mmの丘疹
皮膚に中央部にくぼみ
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の見解
プールの水ではうつらないので、プールに入っても
構わない。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを
介してうつることがあるので、これらの共用は避け
る。プール後はシャワーで肌を洗う。
23 23
日本小児皮膚科学会ホームページ「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」平成25年5月
伝染性膿痂疹(とびひ)
病原体
黄色ブドウ球菌
感染経路 接触感染
潜伏期間 1-数日
主症状
1-2mmの水疱が1-2
日後に指頭大に増大
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の見解
滲出液、水疱内容などで次々にうつる。プールの水
ではうつらないが、触れることで症状を悪化させた
り、ほかの人にうつす恐れがある。
→プールや水泳は治るまで禁止。
24
日本小児皮膚科学会ホームページ「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」平成25年5月
アタマジラミ
病原体
感染経路
主症状
アタマジラミ
接触感染
頭皮のかゆみ
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の見解
アタマジラミが感染しても、治療を始めればプール
に入って構わない。タオル、ヘアブラシ、水泳帽な
どの貸し借りはやめる。
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日本小児皮膚科学会ホームページ「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」平成25年5月
アタマジラミはプールの中で広がる?
Do head lice spread in swimming pools?
(D Canyon. International Journal of Dermatology 2007, 46, 1211-1213)
オーストラリアの研究。
1. 各25℃のイオン交換水、海水、食塩水、塩素水(0.2,2,5mg/L)中
で、頭髪にしがみついた状態のアタマジラミを20分間×10回観察。
→どの水中でも、アタマジラミは頭髪に強くしがみついたまま、全く動
かない状態だった
2. 元々アタマジラミのいる子ども4名(年齢5-19歳)を選び、一旦全
ての成虫を除去して、改めて成虫10匹を頭皮に戻し、30分間プール
で泳いでもらう。お互いは触れ合わないように、また通常やるように
髪の毛を触ってもらう。3セット実施。
→実験後も全てのアタマジラミが頭皮に残っていた。
26
とはいえ,状況に応じた判断を・・・
• 疾患に関わらず、
– 症状がある(体調が悪い, おなかの調子が
悪い, 鼻水や咳, 熱っぽい, など)
– 皮膚病変の範囲が広い, 出血・化膿してい
る
などはプールを避ける。
• 子ども個々人の経過に応じた, 主治医の判断
は重要。
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プール利用にあたり、
感染拡大を予防するためには?
(再掲)
1. 残留塩素を保持すること
2. 以下を周知すること
・発症しているものはプールに入らない
・水泳直後のうがい・手洗い・シャワー
(目の病気では洗眼も有効)
・タオルなど(目の病気では目薬も注意)
を他人と共有しない
・更衣室の清潔と乾燥
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その他の対策
• 感染症の情報を定期的に把握しておく
• 平常時より、対象者の健康に配慮する
日常生活で心がけてもらうこと
バランスのよい食事
体調を整える適度な運動
十分な休養・睡眠
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感染症の情報を定期的に確認しましょう
30
31
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参考文献
• 文部科学省,学校において予防すべき感染症の解
説, 平成25年3月
• 厚生労働省, 2012年改訂版保育所における感染症
対策ガイドライン, 平成24年11月
• 東京都福祉保健局, 東京都感染症マニュアル2009,
平成21年3月
• 東京都福祉保健局, プールの安全・衛生の管理,
平成20年5月
33
最後に…
インフルエンザ、
ノロウイルス等による感染性胃腸炎の
集団発生時の保健所への報告のお願い
34
発生時には
発生状況の把握
• 個々の把握:症状のある園児は, 可能な限り受診を保護者
にお願いし, 結果を確認。
• 全体経過の把握:いつから,どのクラスの誰(何人)が, ど
のような症状か, 重症者はいたか, どう対応したか,などま
とめる。
対策の指示
• 職員等に発生を告げ, 注意を喚起, 対策の再確認
• 園医(顧問医)へ相談, 指示を受ける
感染拡大の防止
• 集団活動の縮小や一時停止:冬期はクリスマス会,
餅つき大会など行事も多いですが・・・状況に応じて検
討を
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• 原因に応じた適切な環境消毒を
集団発生時の報告
各市保育主管課・教育委員会への報告
保健所への報告
• 情報をざっと整理, まずは電話で一報を
• 発生時期や発生状況, 対処法などを一緒に確
認
• 保健所の指定の書式にまとめなおす
• 対応窓口は一本化を
• 新規発生が落ち着くまで日報等の提出を
家族への状況説明
• 集団発生があれば、掲示などで情報提供を
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“集団発生”の定義
インフルエンザ
- 死亡者or入院者
≧7日間に2名
- 疑い (38℃以上,鼻汁,咽頭痛,咳) ≧7日間に10名
または≧全園児の半数
ノロウイルス等による感染性胃腸炎
- 診断(疑い含)死亡者or重症者
≧1週間以内に2名
- 診断(疑い含)者
≧10名
または≧全園児の半数
※その他、施設長が報告を必要と認めた場合(症状のある者
が通常を上回る数,など)も報告
(厚生労働省, 社会福祉施設における感染症等発生時に係る報告について)
(東京都福祉保健局, ノロウイルス対応標準マニュアル)
(東京都福祉保健局, 社会福祉施設におけるクラスターサーベイランスについて)37
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