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山椿/花水木

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山椿/花水木
Yamatsubaki
山 椿
13
私は30期で、私が最初に入
を学べたことが最大の収穫だっ
出します。
った事務所は、日本人弁護士の
たと思います。
アメリカ人が顧客でよかった
ほかに準会員という外国人の弁
ボスは契約書の作成のみなら
点は、女性弁護士ということで
護士のいる事務所でした。当時
ず、リーガルな観点からビジネ
お客さんより疎まれるというこ
は渉外事務所と呼ばれていまし
ス上のアドバイスを顧客に対し
とがなかったことです。あの当
た。私の入った事務所にいた準
て行っていました。渉外事務所
時においても、アメリカでは女
会員はアメリカ人で、私のボス
性弁護士の数が日本より多かっ
はその準会員でした。ボスの顧
たので、
「日本にも女性の弁護
客はアメリカの企業が多く、そ
士がいるのですか」程度の反応
の当時はアメリカが日本に投
でした。日本国内では女性弁護
資し日本がそれにより経済成長
士の数は少なかったので、女性
していた時期でした。合弁契約
弁護士が出てくるとあからさま
書、ライセンス契約書をはじめ
にいやな態度を取られることも
とし、各種契約書があり、その
あったと聞きます。
形式、内容とも見たこともない
今の関心はこれからどうやっ
ものばかりでした。といっても
て次の世代に今までの成果を引
新人は調べものが主で、裁判所
き継いでいくかということで
に行くことはほとんどありませ
す。今までにも何人かの弁護士
んでした。当時は日本の産業を
澤井 憲子(30期)
が若い弁護士に引き継ぎをする
保護するために、現在に比べて
●Noriko Sawai
のを身近に見てきましたが、い
いろいろな規制がありました。
つの間にかそれが自分の問題に
多分、現在発展しつつある海外
というのは何をやるところなの
なっているわけです。弁護士の
の諸国にはあの当時の日本と同
か分からないままに飛び込んだ
個性が必要とならないほど組織
じような制限があるのではない
のですが、研修所の世界とは違
化されていれば引き継ぎという
かと思います。また、アメリカ
う世界に驚きました。
問題はたいしたことではないの
の顧客は自国民の弁護士が東洋
それから30年以上たち、こ
でしょうが、現実はそのような
の敗戦国にいたことで安心して
の頃は「渉外」という言葉は死
ものではなく、大変な問題で
いたと思います。
語になり、企業法務という言葉
す。私がこの弁護士を信頼して
準会員のボスの下で学んだこ
に変わりましたし、企業法務の
いるのだ、ということを顧客に
とは、弁護士業務もサービス産
中身も複雑になりました。昔は
示していくことが必要なのだと
業であるということです。常
企業法務は弁護士として傍流の
思います。
に、
「顧客のために何ができる
感がありました。さらに企業内
今考えてみますと、あまり難
のかを考えろ」と言われていま
弁護士がこれほど増えるなどあ
しい覚悟もなく弁護士となり、
した。弁護士は顧客のために何
の当時は考えられませんでし
あっという間に時間が経過し本
ができるかを考えることによ
た。アメリカより顧客が来日し
日に至ったという感じです。こ
り対価を得ているということで
た際に、ボスが「あの人は弁護
のような機会に弁護士としての
す。外国人のボスというのは難
士資格を有している人だ」と言
道のりを振り返ることができた
しい点もありましたが、この点
っていたことがあったのを思い
のを幸いと思います。
22 NIBEN Frontier●2015年12月号
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山椿 花水木
Hanamizuki
花水木
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国に病院等を建設するプロジ
したことがあり、その学部生
ェクトをはじめ、その国の保
に共感できたからでした。困
健衛生の向上や雇用創出、技
っている全ての人を一人残ら
昨年12月に弁護士登録を
術発展等、人権保障の充実に
ず助けたいと、懸命に社会問
し ま し た、67期 の 我 妻 由 香
多少なりとも関係するような
題に取り組んでいる弁護士の
莉 と 申 し ま す。 縁 あ っ て こ
案件に携わっています。時に
先生方と出会い、その情熱的
のような寄稿の機会をいただ
は、自分の未熟さを痛感して
な姿勢に共感し、気持ちが高
き、大変嬉しく思います。私
悔し涙が出てくることもあり
揚したのを今でも覚えていま
は、国境にとらわれることな
ます。それでも、目指してい
す。すぐには難しいかもしれ
く、広く法的援助を必要とす
た弁護士像に少しずつ近づい
ませんが、いつか、これまで
る人の力になりたいという思
ているような気がして、慌た
に出会った先生方の情熱的な
い で 弁 護 士 を 目 指 し、 運 よ
だしくも充実した毎日を過ご
精神を後輩へつなぐことで、
くこのような仕事ができる環
しています。
少しでも恩返しができること
境で、勤務弁護士として働い
弁護士になって半年ほどが
を願っています。恩返しとい
ています。普段の業務は、義
経ったある日、嬉しい出来事
う意味では、私の故郷である
務研修の国選刑事事件を除く
がありました。それは、同期
宮城県に対しても同じで、震
と、法廷で弁論をすることは
の弁護士を通じて知り合っ
災で甚大な被害を受けた東北
あまりなく、事務所内で法律
た、ある学部生と話した時の
の復興のため、また私という
文書を作成したり、メールや
ことです。その学部生は、将
人間を育ててくれたことの恩
電話による依頼者からの法的
来官庁で働き、国内の外国人
返しに、何か少しでも貢献し
な質問に回答する(またはそ
に関する社会問題に取り組も
たいと強く思っています。
の準備としての調査をする)
うと勉強をしていたそうなの
未熟者ではありますが、先
のが主な内容です。主に企業
ですが、弁護士として問題に
輩方の教えを守りつつも、若
法務を扱う事務所に所属して
取り組むことの意義を感じた
者らしくよい変化を生み出
いるので、周囲からは、いわ
と言って、もっと話を聞かせ
し、広く社会に貢献できるよ
ゆるビジネスロイヤーで、人
てほしいと連絡をくれたので
う努力したいと思います。先
権問題や弁護士会会務にあま
す。乏しい経験の中から私自
生方におかれましては、今後
り関心がないと思われがちで
身の思いを語ったに過ぎない
ともご指導ご鞭撻の程、よろ
す。しかし、私の司法試験受
のですが、弁護士ではない道
しくお願い申し上げます。
験を支えたのは、人権という
を目指して勉強してい
国境を越えた概念を1つの軸
る人が、弁護士に対す
として、当たり前に守られる
る魅力を感じてくれた
べきものが守られていない
ということに感激しま
(日本を含めた)世界中の人
した。嬉しかったのに
たちのために、少しでも力に
は も う1つ 理 由 が あ り
なりたいという強い気持ちで
ます。それは、私もかつ
した。この強い思いが通じた
てロースクールや修習
のか、事務所入所後は、途上
中に同じような経験を
我妻 由香莉(67期)
●Yukari Wagatsuma
同じ事務所に勤務する高校の同級生
(右)
と筆者
(左)
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