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鑑 定 評 価 書 - ハウスコンサルタント
鑑第201101-00005号 平 成 2 3 年 1 月 2 4 日 鑑 定 ハ ウ ス コ ン サ ル タ ン ト 評 価 書 御 中 大阪市中央区南久宝寺町1-9-1-602 株式会社四ツ不動産鑑定 代 表 取 締 役 谷 勝 博 貴社より、ご依頼のありました後記対象不動産の鑑定評価について、 本鑑定評価書をもってご報告申し上げます。 不動産鑑定士 記 Ⅰ.対象不動産の表示 種 類 土 地 建 物 所 在 大阪市住之江区 西 住 之 江 1 丁 目 大阪市住之江区 西 住 之 江 1 丁 目 2番地8 地番又は 家屋番号 地目・構造用途 2番 8 宅地 公簿・現況 構造: 鉄 筋 コンクリート造 陸 屋 根 3階 建 種類: 共同住宅 2番 8 数 量(㎡) 公 簿 147.60 1階 2階 3階 計 109.68 109.68 109.68 329.04 土地所有者:株式会社ハウスコンサルタント 建物所有者:株式会社ハウスコンサルタント Ⅱ.権利の種類及び類型 権 利 の 種 類 : 所有権 類 型 : 貸家及びその敷地 Ⅲ.鑑定評価額及び価格の種類 価格の種類 鑑定評価額 正常価格 金 60,400,000円 ※ な お 、通 常 の 不 動 産 取 引 に 当 た っ て は 、上 記 評 価 額 か ら 買 主 に 承 継 さ れ る 一 時 金返還債務額を控除した額が決済価額として授受される。 1 Ⅳ.鑑定評価額の価格時点及び評価を行った年月日 価 格 時 点 平 成 23 年 1 月 24 日 行った年月日 平 成 23 年 1 月 17 日 Ⅴ.鑑定評価の依頼目的 売買の参考として Ⅵ.鑑定評価の条件 1.対象確定条件 (1) 数 量 は 、 土 地 ・ 建 物 と も 公 簿 数 量 に て 確 定 す る 。 (2) 対 象 不 動 産 の 現 況 を 所 与 と し た 「 貸 家 及 び そ の 敷 地 」 と し て 鑑 定 評 価する。 2.その他の条件 な し Ⅶ.鑑定評価の依頼目的及び条件と価格の種類との関連 上記依頼目的及び条件により、本件評価は、現実の社会経済情勢の下 で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価 値 を 表 示 す る 適 正 な 価 格 を 求 め る こ と か ら 、価 格 の 種 類 は 正 常 価 格 で あ る。 Ⅷ.関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者に係る利害関係等 1 .関 与 不 動 産 鑑 定 士 及 び 関 与 不 動 産 鑑 定 業 者 の 対 象 不 動 産 に 関 す る 利 害 関 係又は対象不動産に関し利害関係を有する者との縁故若しくは特別の利 害関係の有無 なし 2 2 .依 頼 者 と 関 与 不 動 産 鑑 定 士 及 び 関 与 不 動 産 鑑 定 業 者 と の 関 係( 依 頼 者 と 関 与 不 動 産 鑑 定 士 及 び 関 与 不 動 産 鑑 定 業 者 と の 間 の 特 別 の 資 本 的 関 係 ,人 的関係,及び取引関係の有無) (1) 資 本 的 関 係 の 有 無 ( 不 動 産 鑑 定 業 者 が 依 頼 者 の 関 連 会 社 又 は 依 頼 者 が 不 動 産 鑑 定 業 者 の 関 連 会 社 で あ る 。若 し く は 不 動 産 鑑 定 士 が 依 頼 者 の 議 決 権 の 20% 以 上 を 保 有 し て い る 。 ) なし (2) 人 的 関 係 の 有 無 ( 不 動 産 鑑 定 業 者 又 は 不 動 産 鑑 定 業 者 を 代 表 す る 者 が 依 頼 者 又 は 依 頼 者 を 代 表 す る 者 で あ る 。若 し く は 関 与 す る 不 動 産 鑑 定 士が依頼者又は依頼者を代表する者である。) なし (3) 取 引 関 係 の 有 無 ( 不 動 産 鑑 定 業 者 の 負 債 の 過 半 が 依 頼 者 か ら の 借 入 で あ る 。若 し く は 依 頼 者 と の 取 引 が 不 動 産 鑑 定 業 者 の 価 格 等 調 査 業 務 受 注額の過半を超える。) なし 3 .提 出 先 等 と 関 与 不 動 産 鑑 定 士 及 び 関 与 不 動 産 鑑 定 業 者 と の 関 係( 本 鑑 定 評価額が依頼者以外の者へ開示される場合の当該相手方又は本鑑定評価 書が依頼者以外の者へ提出される場合における当該提出先と関与不動産 鑑 定 士 及 び 関 与 不 動 産 鑑 定 業 者 と の 間 の 特 別 の 資 本 的 関 係 ,人 的 関 係 ,及 び取引関係の有無) (1) 資 本 的 関 係 の 有 無 ( 不 動 産 鑑 定 業 者 が 提 出 先 等 の 関 連 会 社 又 は 提 出 先 等 が 不 動 産 鑑 定 業 者 の 関 連 会 社 で あ る 。若 し く は 不 動 産 鑑 定 士 が 提 出 先 等 の 議 決 権 の 20% 以 上 を 保 有 し て い る 。 ) なし (2) 人 的 関 係 の 有 無 ( 不 動 産 鑑 定 業 者 又 は 不 動 産 鑑 定 業 者 を 代 表 す る 者 が 提 出 先 等 又 は 提 出 先 等 を 代 表 す る 者 で あ る 。若 し く は 関 与 す る 不 動 産 3 鑑定士が提出先等又は提出先等を代表する者である。) なし (3) 取 引 関 係 の 有 無 ( 不 動 産 鑑 定 業 者 の 負 債 の 過 半 が 提 出 先 等 か ら の 借 入 で あ る 。若 し く は 提 出 先 等 と の 取 引 が 不 動 産 鑑 定 業 者 の 価 格 等 調 査 業 務受注額の過半を超える。) なし 後述する鑑定評価額決定の理由の要旨に従い、上記の通り鑑定評価した。 以 上 4 鑑定評価額決定の理由の要旨 §1 . 対 象 不 動 産 の 確 認 対象不動産の確認は現地にて下記要領で行った。 1.実地調査 ☆実地調査を行った年月日 平 成 23年 1月 7日 外 ☆実地調査を行った不動産鑑定士の氏名 谷 勝博 ☆実地調査を行った範囲 土地 : 建物周辺の敷地部分 建物 : 対象建物の共用部分(廊下・階段等) ☆実地調査を一部出来なかった理由及び対応方法 現 況 テ ナ ン ト 入 居 部 分( 賃 貸 各 室 専 有 部 分 )に 関 し て は 、賃 貸 中 で あ る こ と か ら 内 覧 が で き な か っ た 。当 該 部 分 に つ い て は 、依 頼 者 御 提 示 資 料・ 外 部 観 察 等 か ら 把 握 し う る 標 準 的 な も の と 推定し、評価を行った。 2.確認資料 ☆ 確 認 資 料 : 位置図,住 宅地図,公図,建物 図面,登 記事項 全部証明 書( 土地・建物),土 地実測 図 ,建築 計 画 概 要 書 等 ,固 定 資 産 税・都 市 計 画 税( 土 地 ) 証 明 書 ,貸 室 賃 貸 借 契 約 書 等 ,入 居・建 物 管 理 委 託 契 約 書 ( 平 成 22年 12月 24日 付 ) , 土 地 境 界 確 認 書 及 び 覚 書 ( 平 成 22 年 9 月 28 日 付 ) , マ イ ポ ー ト 住 之 江 レ ン ト ロ ー ル ( 平 成 22 年 11 月 5 日 付),建物修 繕履歴 ,物件概要 書,貯水 槽清掃 5 報 告 書 マ イ ポ ー ト 住 之 江( 日 本 ベ ス ト コ ミ ュ ニ ティー株式会社発行) 等 3.実地調査等により確認した事項 土 地・建 物 の 位 置 、形 状 、規 模 及 び 建 物 の 構 造・用 途 並 び に 権 利 関係等について上記資料と照合した結果は、次の通りである。 (1) 物 的 事 項 の 確 認 (土地) 上 記 資 料 と 照 合 し 、対 象 地 の 位 置・規 模・形 状 ・ 現況利用状況等、概ね符合することを確認し た。 (建物) 上記資料 と照合 し、対象建物 の構造・規 模・仕 様・用途等、概ね符合することを確認した。 (2) 権 利 の 様 態 の 確 認 土 地 ・ 建 物 に 係 る 権 利 関 係 に つ い て は 、登 記 事 項全部証明書により確認した。 (3) そ の 他 賃 貸 借 契 約 内 容 等 に 関 し て は 、依 頼 者 提 示 の 賃 貸借契約書,レントロール表等により確認し、 建 物 現 況 利 用 状 況・入 居 状 況 と の 異 同 は 実 地 調 査により調査時点においてほぼ一致すること を確認した。 な お 、 東 側 隣 接 地 ( 地 番 2番 7) よ り 対 象 地 敷 地 側へ雨樋・瓦・マンホール・枡等の越境がある こ と を 依 頼 者 提 示 資 料( 土 地 境 界 確 認 書 及 び 覚 書 、そ の 他 現 地 写 真 等 )及 び 現 地 調 査 等 に よ り 確 認 し 、か か る 状 況 の 取 扱 ・ 解 消 方 法 等 に 関 し ては同依頼者提示資料にて確認した。 6 §2 . 価 格 形 成 要 因 分 析 1.一般的要因の分析 内 内 閣 府 は H23年 1月 21日 に 発 表 し た 月 例 経 済 報 告 の 中 で 、我 が 国 の 景 気 の現状について、『景気は、足踏み状態にあるが、一部に持ち直しに向 けた動きがみられる。但し、失業率が高水準にあるなど依然として厳し い 状 況 に あ る 。先 行 き に つ い て は 、当 面 は 弱 さ が 残 る と み ら れ る も の の 、 海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していく ことが期待される。一方、海外景気の下振れ懸念や為替レートの変動な どにより、景気がさらに下押しされるリスクが存在する。また、デフレ の影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要で ある。』と分析している。景気の基調判断を、「このところ足踏み状態 となっている」から「足踏み状態にあるが、一部に持ち直しに向けた動 きがみられる」とし、また生産については前月の「このところ減少して い る 」か ら「 下 げ 止 ま り の 兆 し が み ら れ る 」と 上 方 修 正 し て い る も の の 、 失 業 率 に つ い て は 前 月 の「 高 水 準 に あ る な ど 厳 し い 状 況 に あ る 」か ら「 高 水準にあるなど依然として厳しい状況にある」と現状維持に留まる見解 を示している。 景 気 が 持 ち 直 し へ の 期 待 感 が 高 ま る 一 方 で 、デ フ レ の 影 響 や 、雇 用 情 勢 の悪化懸念が依然として残っており、我が国の景気動向については、未 だ慎重な見方が必要なものと思われる。 ◆各種経済指数 近時における、各種経済指数を、以下に一覧する。 実質GDP成長率 *内閣府 法人企業経常利益 (全産業) *財務省 2009 Q3 2009 Q4 2010 Q1 2010 Q2 2010 Q3 季節調整済前期比 ▲0.3% +1.4% +1.7% +0.7% +1.1% 前年同期比 ▲32.4% +102.2% +163.8% +83.4% +54.1% 季節調整済前期比 +40.4% +35.8% +5.3% +3.0% ±0.0% *Q1:1月 ~3月 ・Q2:4月~ 6月 ・Q3:7月~ 9月 ・Q4:10月 ~12月 7 企業倒産件数 *財務省 完全失業率 *総務省 コールレート (無担保翌日物) 国債流通利回り (新発10年国債) 日経平均株価 円相場 (対米ドル) 市 街 地 価 格 指 数 2009年度 2010年度 2010年10月 2010年11月 2010年12月 前年同期比 ▲1.0% ▲13.9% ▲9.9% ▲6.2% ▲2.9% 季節調整済前期比 - - ▲6.8% +1.9% +1.1% % 5.2% - 5.1% 5.1% - % 0.105% 0.093% 0.091% 0.091% 0.087% % 1.346% 1.172% 0.893% 1.046% 1.189% 円 9,346 10,006 9,455 9,797 10,254 円 93.61 87.75 81.87 82.48 83.41 2008年9月 2009年3月 2009年9月 2010年3月 2010年9月 62.9 61.4 59.9 58.5 57.3 54.6 53.0 51.5 50.1 48.9 71.7 70.2 68.8 67.4 66.3 63.9 62.5 61.0 59.6 58.4 全用途平均 商業地 住宅地 工業地 2000年 3月末 を 100と した 価 格 指 数 *財 団法 人不動 産研 究所 (以下余白) 8 2.地域分析 対 象 不 動 産 は 、南 海 本 線「 住 ノ 江 」駅 西 方 約 150m付 近( 道 路 距 離 )、大 阪 市 住 之 江 区 西 住 之 江 1丁 目 に 所 在 す る 貸 家 及 び そ の 敷 地 ( マ ン シ ョ ン 名:マイポート住之江)である。 (1) 地 域 の 概 要 と そ の 特 性 対 象 不 動 産 の 存 す る 住 之 江 区 は 、大 阪 市 の 南 西 部 に 位 置 し て お り 、北 は 大 正 区 と 西 成 区 に 、東 は 住 吉 区 に 接 し 、南 は 大 和 川 を 挟 ん で 堺 市 に 隣 接 し て い る 。市 域 は 約 20.77k ㎡ 、人 口 約 12.7万 人( 世 帯 数 約 5.6万 世 帯 ) を擁する行政区である。 主 要 交 通 機 関 と し て は 、大 阪 市 営 地 下 鉄 四 つ 橋 線・南 海 本 線 等 が 南 北 に 、ニ ュ ー ト ラ ル 南 港 ポ ー ト タ ウ ン 線 が 東 西 に 延 び て い る ほ か 、主 要 幹 線 道 路( 国 道 26号 線 等 )や 阪 神 高 速 堺 線 ・湾 岸 線 等 も 縦 横 に 走 り 、区 内 より周辺地域への接近性・交通利便性は良好といえる。 当 区 は 、地 域 ご と に そ の 特 性 を 異 に し て お り 、区 域 西 部 は 、国 内 有 数 9 の貿易港である大阪南港を中心とした臨海工業地域として発展してき た 地 域 で あ る 。区 域 中 部 は 、昭 和 56年 に ニ ュ ー ト ラ ム 線 が 開 通 し 、大 阪 都 心 部 ま で 30 分 圏 と 交 通 利 便 性 が 良 好 と な っ た こ と や 規 模 の ま と ま っ た 未 利 用 の 土 地 が 残 存 し て い た こ と も あ っ て 、現 在 で は 中 高 層 共 同 住 宅 等 が 多 数 建 ち 並 ぶ 地 域 で あ る が 、古 く は 造 船 ・鉄 鋼 ・金 属 関 係 の 重 工 業 地 帯 と し て 発 展 し て き た こ と か ら 、流 通 セ ン タ ー ,倉 庫 ,製 材 所 等 も 多 数 混在する住工混在・準工的色彩の強い地域となっている。 一 方 、区 域 東 部 は 古 く か ら 紀 州 街 道 沿 い に 町 並 み が 形 成 さ れ 、南 海 本 線 や 阪 堺 線 の 開 通 に 伴 っ て 、大 阪 市 内 南 部 の 住 宅 地 と し て 商 店 街 の 形 成 と と も に 発 展 し て き た 経 緯 を 有 し て お り 、現 在 で も 南 海 本 線 「住 吉 大 社 」 駅 及 び 阪 堺 線 「住 吉 公 園 」駅 等 の 駅 前 に 集 積 す る 商 店 街 を 中 心 と し て 、戸 建 住 宅 ・共 同 住 宅 等 が 建 ち 並 ぶ 、 や や 街 区 が 雑 然 と 配 置 さ れ た 市 街 地 が 形成されている。 か か る 区 域 東 部 に あ っ て 、対 象 不 動 産 の 存 す る 近 隣 地 域 は 、最 寄 駅 で あ る「 住 ノ 江 」駅 に 近 接 す る 戸 建 住 宅・共 同 住 宅 等 の 建 ち 並 ぶ 利 便 性 等 の良好な住宅地域である。 (2) 対 象 不 動 産 に 係 る 市 場 の 特 性 対 象 不 動 産 の 属 す る 同 一 需 給 圏( 対 象 不 動 産 と 代 替・競 争 の 関 係 が 成 立 す る 範 囲 )は 、大 阪 市 内 南 部 の 利 便 性・居 住 快 適 性 等 の 良 好 な 住 宅 地 域 と し て 把 握 さ れ る が 、南 海 本 線「 住 吉 大 社 」駅 ~「 住 ノ 江 」駅 周 辺 に 形成される駅前住宅地域と特に強い価格牽連性を有しているものと判 断される。 ① 不動産取引市場の現況と需給動向 対 象 不 動 産 は 賃 貸・収 益 を 目 的 と す る 共 同 住 宅 及 び そ の 敷 地 で あ り 、 そ の 中 心 的 な 需 要 者 層 ・ 市 場 参 加 者 と し て は 、規 模 ・ 総 額 ・ 対 象 不 動 産の特性等からその収益性に着目する投資家層と把握される。 か か る 収 益 用 不 動 産 に 関 し て は 、一 時 不 動 産 の 証 券 化 等 の 進 展 に 伴 10 っ て 大 阪 市 内 に お い て も 収 益 用 不 動 産 の 取 引 が 活 性 化 し 、大 型 オ フ ィ ス ビ ル や 商 業 施 設 等 を 中 心 と し て 、REITや 私 募 フ ァ ン ド 等 に よ る 取 得 が 進 ん で き た 。市 場 規 模 が 拡 大 す る に つ れ 、優 良 物 件 へ の 取 得 競 争 は 過 熱 し 、取 引 利 回 り の 低 下 が 顕 著 と な っ て い た 。し か し 、サ ブ プ ラ イ ム ロ ー ン に 端 を 発 し た 信 用 不 安 問 題 及 び 不 動 産 市 況 の 悪 化・企 業 や 投 資家層を取り巻く経済環境の悪化等の影響によって収益物件に対す る需要は反転・縮小し、ここ数年来低迷が続いていた。 現況においても依然として需要は低迷しているものの、一部企業・ 業種等における業績回復等の影響や物件価格の低下による値頃感や 物 件 価 格 の 下 落 に 伴 う 投 資 利 回 り の 上 昇 等 に よ り 、良 質 な 物 件 に 対 し ては需要の回復傾向も見られる状況となってきている。 な お 、大 阪 主 要 都 市 部 に お け る 収 益 物 件 の 取 引 利 回 り は 、ワ ン ル ー ム マ ン シ ョ ン 等 の 小 規 模 物 件 に つ い て は 粗 利 回 り で 15 % ~ 20 % 前 後 の も の も 見 ら れ る が 、 総 額 4000~ 1億 円 強 の 共 同 住 宅 等 で は 粗 利 回 り で 概 ね 8% ~ 12% 程 度 と 把 握 さ れ る 。 当 物 件 は、やや築 古 であるものの、駅 近 接 で利 便 性 等 が良 好 な地 域 に存 し て い る こ と か ら 、 投 資 物 件 と し て の リ ス ク ( 空 室 リ ス ク 等 ) は 低 位 で ある と 判 断 され、安 定 的 な需 要 を 有 するものと思 われる。 ② 不動産賃貸市場の現況と需給動向 対 象 不 動 産 の 存 す る 住 之 江 区 東 部 は 、南 海 本 線 等 に よ り 難 波 等 の 大 阪 都 心 部 へ 直 結・近 接 し て お り 、利 便 性 等 が 良 好 な 地 域 で あ る こ と か ら 、旧 来 よ り 居 住 選 好 性 等 の 比 較 的 良 好 な 地 域 で あ る 。こ の た め 賃 貸 需 要 は 安 定 的 に 存 し て お り 、ま た 地 域 的 特 性 等 を 反 映 し 単 身 者 用 よ り もファミリータイプを指向する傾向が強い地域である。 対 象 不 動 産 同 様 の 専 有 面 積 40~ 50㎡ 程 度 ( 概 ね 2D K ~ 3D K ) の 共 同 住 宅 の 賃 料 水 準 に つ い て は 、地 域 の 標 準 的 な 水 準 を 周 辺 事 例 等 か ら 勘 案 す る と 、 共 益 費 込 で 1,500 円 / ㎡ ~ 1,650 円 / ㎡ 程 度 ( 総 額 60,000 11 円 ~ 80,000円 弱 /室 程 度 ) と な っ て い る 。 所在地 用途 賃貸面積 支払賃料 管理費 共込賃料 (㎡) (円/月) (円/月) (円/月) 共込賃料単価 (円/㎡) (円/坪) 一時金 建 物 概 要 敷金・保証 礼金・償却 構造 金(月) (月) 階層 最寄駅 駅徒歩 (分) 住ノ江 4分 所在階 築年数 住之江区西住之江2丁目 居宅 52.17 75,000 4,000 79,000 1,510 4,990 0.0ヶ月 0.0ヶ月 W 2 1 1995年 住之江区粉浜3丁目 居宅 42.12 65,000 5,000 70,000 1,660 5,490 1.0ヶ月 4.0ヶ月 SRC 4 3 1978年 住吉大社 1分 住之江区西加賀屋2丁目 居宅 48.12 69,000 3,000 72,000 1,500 4,960 0.0ヶ月 2.0ヶ月 RC 4 2 1988年 北加賀屋 5分 住之江区中加賀屋3丁目 居宅 40.00 60,000 3,000 63,000 1,580 5,220 4.0ヶ月 0.0ヶ月 S 5 3 1995年 北加賀屋 10分 住之江区安立4丁目 居宅 53.52 71,000 9,000 80,000 1,490 4,930 0.0ヶ月 2.0ヶ月 RC 7 7 1990年 5分 住ノ江 対象不動産は、やや築後経過しているものの、駅に近接しており、 また最寄駅である「住ノ江」駅より都心部へ直結していることから、 賃 貸 需 要 は 継 続 的・安 定 的 に 存 す る と 思 わ れ る 。こ の た め 賃 料 水 準 に 関 し て も 概 ね 安 定 的 と 思 わ れ 、そ の 適 正 賃 料 水 準 と し て は 、概 ね 1,600 円 /㎡ 程 度 ( 総 額 67,000円 ~ 80,000円 弱 /室 程 度 ) と 認 め ら れ る 。 ③ 土地価格の推移 対 象 地 域 及 び 対 象 地 周 辺 の 地 価 水 準 は 、 平 成 20年 度 以 降 、 サ ブ プ ラ イ ム ロ ー ン に 端 を 発 し た 信 用 不 安 問 題・取 引 市 場 の 静 態 傾 向・需 要 の 低 迷 等 に よ っ て 下 落 傾 向 を 示 し て い る 。価 格 下 落 懸 念 に よ る 不 動 産 投 資意欲の冷え込み等もかかる地価下落に一層の拍車をかけているも の と 思 わ れ る こ と か ら 、当 面 は か か る 地 価 下 落 は 持 続 す る も の と 考 え られる。 こ れ ら 社 会 的 状 況 を 背 景 に 、 平 成 22年 地 価 公 示 ( 平 成 22年 1月 1日 ) < 住 之 江 - 1> の 対 前 年 変 動 率 は △ 5.1% と 下 落 幅 が 拡 大 し て お り 、一 部 に 底 打 ち 感 は 見 ら れ る も の の 、当 面 は 下 落 傾 向 が 継 続 す る も の と 思 料される。 参 考 と し て 、対 象 地 と 価 格 牽 連 性 を 有 す る と 判 断 さ れ る 同 標 準 地 の 推 移 を 示 す と 次 の 通 り で あ り 、こ れ ら プ ラ イ ス デ ー タ 等 や 周 辺 取 引 価 格 水 準 等 を 勘 案 す る と 、対 象 不 動 産 の 接 道 す る 北 西 側 道 路 沿 い に お け 12 る 標 準 的 な 画 地( 地 積 約 150㎡ 程 度 の 整 形 地 )で 概 ね 300,000~ 320,000 円 /㎡ 程 度 と 把 握 さ れ る 。 地価公示<住之江-1> 近年の価格推移 265 2% 260 1% 0% 255 -1% 250 -2% 245 -3% 240 -4% 235 -5% 230 -6% 2006 2007 2008 単価(千円/㎡) 時点 単価(千円/㎡) 対前年変動率 2006 252 -2.7% 2007 255 1.2% 2009 2010 対前年変動率 2008 259 1.6% 2009 255 -1.5% 2010 242 -5.1% (3) 近 隣 地 域 の 状 況 対 象 不 動 産 の 存 す る 近 隣 地 域 は 、南 海 本 線「 住 ノ 江 」駅 近 接 の 戸 建 住 宅、共同住宅等が建ち並ぶ住宅地域である。 当 地 域 は 、既 述 の 通 り 、最 寄 駅 に 近 接 し て お り 、ま た 同 駅 よ り 都 心 部 ア ク セ ス も 良 好 な 地 域 で あ る こ と か ら 、古 く よ り 住 宅 地 域 と し て 熟 成 し た 地 域 で あ る 。加 え て 、公 法 上 も 近 隣 商 業 地 域 に 指 定 さ れ て お り 、土 地 の 高 度 利 用 が 可 能 な 容 積 率 ( 300% ) 指 定 を 受 け て い る こ と か ら 、 今 後 は小規模画地の併合や建替え等によって中層の共同住宅等としての土 地 利 用 の 比 重 が 高 ま る 可 能 性 が 予 測 さ れ 、将 来 的 に は 一 層 の 地 域 的 な 発 展が期待される地域といえる。 以 上 の 地 域 分 析 を 踏 ま え て 、標 準 的 使 用 を 共 同 住 宅 等 と し て の 敷 地 利 用であると判定した。 13 3.個別分析 (1) 土 地 に 関 す る 要 因 <位置的要因等> 価格形成要因 対象地の個別的要因 交 通 ・ 接 近 条 件 街 路 条 件 南 海 本 線 「 住 ノ 江 」 駅 西 方 約 150m (道路距離) 北西側 南西側 北東側 幅 員 約 7.3 m 市 道 ( 住 之 江 区 第 6 11 号 線 ) 幅 員 約 5.5 m 市 道 ( 住 吉 区 第 621 号 線 ) 幅 員 約 2.4 m 市 道( 住 之 江 区 第 614 号 線 の 1 ) ※ 北 西 側 道 路 は 附 則 5項 道 路 で あ り 、 道 路 中 心 線 よ り 2mの 後退が必要となる(対象地は後退済み) 駅近接の戸建住宅・共同住宅等が建ち並ぶ住宅地域 環 境 条 件 供給処理施設:上水道、都市ガス整備済 行 政 的 条 件 近隣商業地域 指 定 建 蔽 率 80% , 指 定 容 積 率 300% 準防火地域 埋蔵文化財の有無 及 び そ の 状 態 周知の埋蔵文化財包蔵地の地域指定はない。 土 壌 汚 染 の 有 無 及 び そ の 状 態 対象地については、専門機関による調査等がなされて いないため、土壌汚染の有無については不明である が 、 住 宅 地 図等 の 地 歴調 査 に よ る と、 昭 和 49年 7月 : 戸 建 住 宅 、 昭和 53年 7月: 空 ( 未 記 入) 、 昭 和 53年 10 月:現況同様となっており、その他不動産鑑定士の独 自調査によっても特に端緒は認められなかった。従っ て、対象地には価格形成に大きな影響を与える土壌汚 染は存しないと判断した。(後日、汚染が判明した場 合、その状況とその措置に要する費用及び期間等によ り、本件鑑定評価額は影響を受けるものである)。 そ 地勢・地盤等概ね標準的 の 他 14 <画地条件> 価格形成要因 対象地の個別的要因 147.60㎡ ( 公 簿 ) 地 間 積 口 ・ 奥 形 ※但し、道路後退部分等を除く有効宅地面積は 135.30㎡ と な っ て い る 。 行 間 口 : 約 12.2m ( 北 西 側 を 間 口 と し て 記 載 ) 奥 行 : 約 8.5~ 8.7 m 状 概長方形状地 接面道路との関係 三方路地 等高接面 そ 特になし の 他 <対象地の特性> 対 象 地 は 、北 西・南 西・北 東 の 三 方 で 接 道 す る 画 地 で あ り 、建 物 配 置 ・ 入 口 等 の 複 数 設 置 等 の 敷 地 の 有 効 利 用 度 等 の 面 や 、日 照 ・ 通 風 ・ 乾 湿 等 居住の快適性・利便性等の面で増価の認められる画地である。 一 方 で 、敷 地 の 一 部 が 道 路 と な っ て い る こ と に よ る 有 効 面 積 の 減 少 等 による減価もまた認められる画地である。 そ の 他 、規 模 ・ 形 状 等 に つ い て は 地 域 内 に お い て 概 ね 標 準 的 と 認 め ら れる画地である。 <更地としての最有効使用の判定> 上 記 要 因 等 を 踏 ま え 、近 隣 地 域 の 標 準 的 使 用 及 び 将 来 の 動 向 並 び に 対 象 地 の 画 地 条 件 等 、更 に 地 域 内 の 行 政 的 条 件 等 に 基 づ き 、対 象 地 の 更 地 としての最有効使用を、共同住宅等の敷地利用と判定した。 15 (2) 建 物 に 関 す る 要 因 建 項 目 築 時 名 概 期 昭和54年3月14日新築(公簿) 称 マイポート住之江 構 造 ・ 用 途 各 主 階 要 面 用 要 鉄筋コンクリート造陸屋根3階建 共同住宅(公簿) 1階 2階 3階 計 積 途 109.68㎡ 109.68㎡ 109.68㎡ 329.04㎡ 50㎡ 42㎡ 賃貸面積合計 各 室 専 有 面 積 (共同住宅) (共同住宅) (共同住宅) (3戸…各階1戸) (3戸…各階1戸) 276㎡ 維持管理の状態 概ね標準的と判断される。 使用資材の品等 施工の質及び量 概ね標準的と判断される。 耐 性 新耐震基準以前の建物であり、定期的なメンテナンスは施され ているものの、新耐震以降の建物に比して耐震性に関してやや 劣るものと推定される。なお、耐火性については構造等から概 ね標準的と思われる。 有害物質の使用の 有 無 及 び 状 態 鑑定評価主体が行った目視による現地調査等の結果、確認可能 な範囲において、特に有害物質の使用及び飛散等の事実は認め られなかったが、対象建物の建築年次等から推測するとアスベ ストの使用の可能性が認められ、建物の改修等の際には飛散防 止に配慮を要する。 設 計 ・ 施 工 設計:不動建設一級建築士事務所 施工:不動建設株式会社大阪本店 環 境 と の 適 合 概ね標準的と判断される。 そ 特に無し 震 の 他 16 (3) 建 物 及 び そ の 敷 地 に 関 す る 要 因 ① 敷地と建物の適応の状態 対 象 不 動 産 は 、 地 上 3階 建 の 共 同 住 宅 及 び そ の 敷 地 で あ り 、 や や 容 積 消 化 率 は 低 位 で あ る も の の 、用 途 ・ 建 物 配 置 等 の 観 点 か ら 、敷 地 と の適応状態は概ね良好であると判断される。 ② 対象不動産の現行賃貸借状況概要 部 屋 数 6戸 に よ っ て 構 成 さ れ る 共 同 住 宅 で あ る が 、 価 格 時 点 現 在 で は満室稼働しており、稼働率・収益性等の良好な物件といえる。 現況の賃貸借状況は以下の通りである。 階層 用途 101 102 201 202 301 302 居宅 居宅 居宅 居宅 居宅 居宅 合計 賃貸面積 (㎡) 賃料(月額) 支払賃料 共益費 50.00 42.00 50.00 42.00 50.00 42.00 54,000 54,000 65,000 60,000 64,000 67,000 16,000 8,000 5,000 7,000 0 0 276.00 364,000 36,000 賃料/T 賃料単価 共益費/T 3,570 4,250 4,298 4,723 4,231 5,274 1,058 630 331 551 0 0 共込/T 4,628 4,880 4,629 5,274 4,231 5,274 敷金 0 50,000 100,000 100,000 100,000 0 一時金 月数 礼金(敷引) 月数 0.0 2.6 140,000 0.9 5.6 300,000 1.5 3.8 250,000 1.7 4.2 250,000 1.6 4.7 300,000 0.0 3.7 250,000 350,000 1,490,000 ③ 市場における対象不動産の優劣と競争力の程度 対 象 不 動 産 は 、昭 和 54年 に 竣 工 さ れ た 共 同 住 宅 及 び そ の 敷 地 で あ る 。 当物件は 、最寄 駅で ある「住 ノ江」駅に 近接し、かつ当 駅よ り難波 等 の 都 心 部 へ の ア ク セ ス 等 も 良 好 で あ る こ と か ら 、居 住 選 好 性 等 が 良 好な地域に存しているといえる。 ま た 、 貸 室 部 分 に つ い て は 、 専 有 面 積 が 42 ㎡ タ イ プ 3戸 ・ 50 ㎡ タ イ プ 3戸 と な っ て お り 、 テ ナ ン ト 属 性 が 主 と し て フ ァ ミ リ ー と な る こ と か ら 、単 身 者 用 住 宅 等 と 比 し て も 継 続 的 ・ 恒 常 的 な テ ナ ン ト 付 、安 定 的な収益確保が可能となるものと考えられる。 以 上 の 立 地・物 件 特 性 等 の 面 か ら も 安 定 収 益 を 享 受 出 来 得 る 物 件 で あ る と 思 わ れ る こ と か ら 、当 該 不 動 産 は 、同 一 需 給 圏 内 に お け る 同 種 物件間においても、市場競争力を有するものと思料される。 17 ④ 建物及びその敷地の最有効使用 上 記 価 格 形 成 要 因 の 分 析 に 基 づ き 、対 象 不 動 産 の 最 有 効 使 用 を 現 況 と同様の共同住宅及びその敷地としての継続使用と判定した。 (以下余白) 18 §3 . 鑑 定 評 価 手 法 等 の 指 摘 本 件 評 価 は 、現 況 賃 貸 借 に 供 さ れ て い る 対 象 不 動 産( 貸 家 及 び そ の 敷 地 ) の評価に係るものである。 評価手法としては、原価法及び収益還元法(直接還元法)を適用し、各 試算価格を調整の上、鑑定評価額を決定する。 複合不動産としての取引事例比較法については、近隣地域及び同一需給 圏内の類似地域等において規範性の高い同種の取引事例の収集が困難であ ったためその適用を断念した。 <原価法> 再調達原価 積算価 格 = ・更地 ・建物(新築想定) <収益還元法> a(標準化純収益) 収益価 格 = CR(還元利回り) (以下余白) 19 減価 - ・土地 ・建物 ・土地・建物 §4 . 原 価 法 の 適 用 対象不動産の再調達原価を査定し、この再調達原価について適正に減価 修正を行い積算価格を求めるものとする。 1.再調達原価の査定 (1) 土 地 価 格 の 査 定 ① 対象地更地価格の査定 対 象 地 の 更 地 価 格 に つ い て は 、取 引 事 例 比 較 法 を 適 用 し 、更 に 公 的 価格との均衡性にも充分留意して査定するものとする。 Ⅰ. 取引事例比較法の適用 対象地が北西側で接面する市道沿いに、標準画地※を設定し、取 引事例比較法を適用して標準画地比準価格を求める。 ※標準画地の概要 規模・形状等 150㎡ ( 間 口 約 15m ×奥 行 約 10m ) , 長 方 形 公法上の規制 近 隣 商 業 地 域 ( 建 蔽 率 80% 、 容 積 率 300% ) 公法上の規制 街 路 条 準 防火地域 件 北 西 側 市道 幅員約7.3m ⅰ .標 準 画 地 比 準 価 格 の 査 定 後掲「別表-標準画地比準価格の査定・規準とすべき公的価格 との均衡性の検証」により、住之江区内において現実に取引され た事例を収集・選択の上で補・修正,地域格差の判定等を適正に 行い、標準画地比準価格を次の通り査定した。 310,000円 /㎡ 標準画地比準価格 Ⅱ. 公的価格との均衡性の検討 対象地の周辺土地利用状況等を総合的に勘案し、類似性が高いと 認 め ら れ る 地 価 公 示 標 準 地 < 住 之 江 - 1> を 採 用 し 、 後 掲 「 別 表 - 20 標準画地比準価格の査定・規準とすべき公的価格との均衡性の検 証」により標準画地規準価格を次の通り査定した。 283,000円 /㎡ 標準画地規準価格 Ⅲ .標 準 画 地 価 格 の 査 定 以上より、各価格等は次の通り求められた。 比 準 価 格 公的価格(地価公示 <住之江-1 >)を 規 準 と し た 価 格 ……… 310,000円/㎡ ……… 283,000円/㎡ 各価格について、それぞれ鑑定評価方式及び採用した資料の信頼 性に基づき再吟味する。 比準価格は、不動産の市場性に着目して求めた価格であり、本件 ではまず近隣地域の現況及び将来動向等を反映した標準画地を設 定 し 、近 隣 地 域 及 び 同 一 需 給 圏 内 の 類 似 地 域 等 に 存 す る 取 引 事 例 を 中 心 に 収 集 の 上 、規 範 性 の 高 い 事 例 か ら 要 因 格 差 等 を 判 定 し て 査 定 し た も の で あ り 、不 動 産 市 場 に お け る 現 実 の 取 引 価 格 か ら 求 め ら れ た実証的な価格として規範性は高いと言える。 以上の各価格の性格、規範性等及び近隣地域の特性等を総合的に 勘 案 し 、規 範 性 に 優 れ た 比 準 価 格 を 妥 当 と 判 断 し 、規 準 と す べ き 公 的価格との均衡にも留意し、次の通り標準画地価格を査定した。 310,000円/㎡ 標準画地価格 21 ②対象地の個別的要因による格差率(個性率)の判定 標 準 画 地 及 び 対 象 地 に 係 る 個 別 的 要 因 の 比 較 を 次 の 通 り 行 い 、対 象 地 の 個 性 率 を 98.4/100と 判 定 し た 。 (イ) 三方路 … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … +7% 対象地は三方路 地であり、建物配置や入口等の複数設置等、敷 地の有効利用度等の面で増価要因が認められ、か か る 要 因 に よ る 増 価 を右 記 の通 り と判定 し た 。 (ロ) 道路部分… … … … … … … … … … … … … … … … … … … 対象地のうち一部が道路となっており、有効宅地面積の減少に 基づく減価要因が認められ、かかる要因による減価を右記の通 りと判定した。 △8% (ハ) そ ±0% の 他 ……………………………………………… 概ね標準的 <格差率の相乗積> 100+(イ) 100 × 100+(ロ) 100 × 100+(ハ) 100 ≒ 98.4 100 ③更地価格の査定 以上の鑑定評価手法の適用によって求められた標準画地価格 ( 310,000円 /㎡) に 対 象 地 の 個 性 率 ( 98.4/100) を 乗 じ て 、 以 下 の 更 地価格(単価)が求められた。 (算式) (標 準 画 地 価 格 ) (個 性 率 ) 310,000円 /㎡ 対 象 98.4 100 × 地 更 地 価 格 305,000円/㎡ ≒ 305,000円/㎡ 単 価 (地積) × 305,000円 /㎡ 金45,020,000円 総 額 (更地単価) (更 地 単 価 ) 147.60㎡ 22 (更地価格) ≒ 45,020,000円 (2) 建 物 の 再 調 達 原 価 対 象 建 物 の 再 調 達 原 価 に つ い て は 、同 種 ,同 規 模 の 建 設 事 例 等 を 参 考 と し 、各 対 象 建 物 の 1㎡ 当 た り の 再 調 達 原 価 を 求 め 、こ れ に 延 床 面 積 を 乗 じ て当該建物の再調達原価を次の通り査定した。 再調達原価(円/㎡) A 床面積(㎡) B 再調達原価(円) A×B 170,000円/㎡ 329.04㎡ 55,940,000円 (3) 減 価 修 正 ① 土地の減価修正 本 件 対 象 地 上 に は 、 3階 建 の 共 同 住 宅 が 存 す る が 、 や や 使 用 容 積 率 が 少 な く 、土 地 の 持 つ 効 用 を 最 高 度 に 発 揮 で き て い な い こ と か ら 、か か る 効 用 の 低 下 を 建 付 減 価 と し て 把 握 し 、 そ の 減 価 率 を 5% と 査 定 し た。 (更地価格) (減価率) 45,020,000円 × 5% (減価額) ≒ 2,250,000円 ② 建物の減価修正 対 象 建 物 の 減 価 修 正 は 、耐 用 年 数 に 基 づ く 方 法 、観 察 減 価 法 を 併 用 し適正に減価額を求めるものとする。 ・ 耐 用 年 数 に 基 づ く 方 法 (定 額 法 採 用 ,残 価 率 は 0) (査定式) 再調達原価×構成割合×(経過年数/(経過年数+残存年数))=減価額 構成割合 経過年数 残存年数 減価額 主 体 80% 31.8年 18.2年 28,460,000円 設 備 20% 31.8年 5.0年 9,670,000円 合 計 38,130,000円 23 ・観察減価法 対象建物の経過年数及び維持管理・修繕の状況等を勘案し、経年 相 応 の 減 価 と 判 断 し 、「耐 用 年 数 に 基 づ く 方 法 」に 更 に 観 察 減 価 を 追 加する必要はないものと判断した。 ・建物の減価額 以 上 、 「耐 用 年 数 に 基 づ く 方 法 」と 「観 察 減 価 法 」を 併 用 し て 、 対 象 建物の減価額を次の通り査定した。 耐用年数に基づく方法 観察減価法 38,130,000円 建物減価額合計 0円 38,130,000円 (4) 積 算 価 格 以 上 よ り 、対 象 不 動 産 再 調 達 原 価 よ り 減 価 修 正 額 を 控 除 し 、対 象 不 動 産 の積算価格を以下の通り試算した。 再調達原価 減価額 減価修正後価格 土地 45,020,000円 2,250,000円 42,770,000円 建物 55,940,000円 38,130,000円 17,810,000円 総 額(万円単位四捨五入) (以下余白) 24 ≒ 60,500,000円 §5 . 収 益 還 元 法 の 適 用 収益還元法については、直接還元法を採用し、標準化純収益(現行賃料 と市場賃料とを比較することにより、標準的かつ安定的な純収益として把 握 さ れ た 純 収 益 ) を 還 元 利 回 り で 還 元 し て 収 益 価 格 を 60,400,000円 と 試 算 し た 。( 次 頁 直接還元法による収益価格 参 照 )。な お 、評 価 上 の 設 定 数 値等は下記の通りである。 <主な設定数値等概要> 項 目 設定数値等 現 行 賃 料 (共 益 費 込 ) 標準化賃料 (共 益 費 込 ) 空 室 率 (現 況 空 室 率 ) 設定根拠等 1,280円 /㎡ ~ 1,595円 /㎡ (4,231円 /坪 )~ (5,274円 /坪 ) 64,000円 /室 ~ 70,000円 /室 1,600円 /㎡ (5,289円 /坪 ) 67,200円 /室 ~ 80,000円 /室 3.0% ( 0.0% ) 現行賃料水準 近傍同種の一般的な共同住 宅等の成約賃料及び募集賃 料、対象建物の特性・個別 性、入居テナントの現行賃 料水準・契約の個別性等を 参考に査定。 市場空室率、対象不動産の 市場競争力及び賃料水準等 を 考 慮 し 、左 記 の 通 り 査 定 。 駐車場賃料 その他収入 現 行 の 収 支 等 に 基 づ い て 計 上( 本 件 で は 特 段 該 当 す る も の がないことから計上しない) 修 繕 費 資本的支出 修繕費:建物再調達原価に対する料率の0.2%と査定。 資本的支出:建物再調達原価に対する料率の1.0%と査定。 還 元 利 回 り (キャップレート) 対象不動産から得られる純収益の対象 不動産の価格に対する割合を示すもの であり、純収益を還元利回りで除する ことにより対象不動産の価格が求めら れる。本件還元利回りの査定に当たっ ては、基準不動産(市場競争力が極め て高位にある共同住宅を想定)のベー ス 利 回 り ( 4.0% と 査 定 ) に 対 象 不 動 産 の地域性リスク(周辺地域での需給動 向,流通市場の成熟度に基づく市場性, 将来発展性等)・個別性リスク(テナ ント,権利関係,建物格差等)につい て 比 較 を 行 い 、 利 回 り 格 差 を 2.0% と 査 定し還元利回りを左記の通り査定し た。 6.0% 25 <計算式> 純収益(NCF) 直接還元法による収益価格 還元利回り = 3,628,267円 ≒ 60,400,000円 ÷ 6.0% ◆賃貸借条件の査定 月額支払賃料 階層 用途 延床面積 (㎡) 居宅 329.04 賃貸面積 (㎡) 総額 (円) 276.00 400,200 276.00 400,200 月額共益費 総額 (円) 単価 (円/㎡) 1,450 一 時 金 敷金 単価 (円/㎡) 41,400 月数 150 1 41,400 礼金 金額 月数 400,200 400,200 3 金額 1,200,600 1,200,600 ◆運営収益の査定 査 定 根 拠 項 目 a.共益費込賃料収入 月額支払賃料 400,200円 ( 賃貸面積 276.00㎡ b.水道光熱費収入 c.駐車場収入 時間貸し = 5,299,200円 × × 12ヶ月 = 364,320円 × 台数 0台 × 12ヶ月 = 0円 0円 礼金 = × = × = × = × = 36,018円 左記合計 36,018円 地域の慣行に鑑み、計上しない その他 0円 × = × = × = 左記合計 0円 上記a.~d.合計 e.空室等損失 居宅 (貸室部分) 水光熱費収入 × × = × × = × × = × × = 158,976円 左記合計 169,906円 可能水光熱費収入/年 平均空室率 364,320円 × 3.0% = 10,930円 可能駐車場収入/年 空室率 0円 × = 0円 f.空室等損失 駐車場収入 月極 時間貸し その他 5,699,538円 可能共益費込賃料/月 空室率 441,600円 × 3% × 12ヶ月 = 共益費込 賃料収入 (駐車場その他) ) × 12ヶ月 水道光熱費単価 110円/㎡ 礼金 入替率 1,200,600円 × 3% 居宅 1.可能運営収益 月額共益費 41,400円 特に無し d.その 他収入 更新料 + 単価 月極 査定値 収入査定の段階で考慮 0円 左記合計 0円 0円 収入査定の段階で考慮 2.空室等損失合計 上記e.~f.合計 3.貸倒れ損失 敷金等により担保されるため計上しない 169,906円 A.運営収益 1.-(2.+3.) 0円 5,529,632円 26 ◆運営費用の査定 項 目 査 定 根 拠 賃貸面積 276.00㎡ g.維持管理費 (BM) 査定値 月 額維持管理 費 25円 /㎡ × × 12ヶ 月 = 82,800円 × 12ヶ 月 = 414,000円 = 111,880円 ※類似物 件の事例 等を参考に 査定 賃貸面積 276.00㎡ h.水道光熱費 支出 月額 水光熱費 支出 125円/㎡ × ※類似物 件の事例 等を参考に 査定 建 物再調達原 価 55,940,000円 建物修繕費 0.2% × ※経過年 数、修繕 実績等を参 考に査定 i.修繕費 賃貸 面積 退去 率 × 1,400円/㎡ 276.00㎡ × 3% 居宅 原状回 復 費 用 j.プロパティマネジメントフィー(PM) 賃料収入 等 5,140,224円 × × × × × × × × = = = = = 11,592円 左記合 計 11,592円 5.0% × = 257,011円 ※現行契 約・標準 的契約形態 を考慮して 査定 ※賃料収入等:賃料+共益費+駐車場+その他(礼金・更新料を除く) 月額 支払賃料 入替 率 × 400,200円 × 3% 居宅 k.テナント募 集費用 l.公租公課等 × × × × × × × × 1ヶ月分 土地 依頼 者提示の課 税明細に基 づき査定 建物 同上 償却資 産 計上 せず 12,006円 左記合 計 12,006円 85,000円 319,500円 建 物再調達原 価 55,940,000円 m.損害保険料 = = = = = 左記合 計 0円 404,500円 55,940円 × 0.10% = × 0.0% = ※標準的 な料率を 設定 運営収益 5,529,632円 n.その他費用 0円 B.運営費用 上記g.~n.合計 1,349,729円 C.運営純収益 (NOI) A.-B. 4,179,903円 ◆純収益の査定 項 目 査 定 根 拠 査定値 敷 金等 運用利 回り 1-空室 率 × 400,200円 × 2% 97.0% 居宅 o.一時金の運 用益 駐車場 × × × × × × × × 0円 × 2% × 100.0% = = = = = = 7,764円 左記合 計 7,764円 0円 ※敷金1ヶ月と査定 p.資本的支出 建 物再調達原 価 55,940,000円 1.0% × = 559,400円 ※経過年 数、修繕 実績等を参 考に査定 D.純収益(NCF) C.-上 記o.+p. 3,628,267円 27 §6 . 試 算 価 格 の 調 整 及 び 鑑 定 評 価 額 の 決 定 以上より、各試算価格は次の通り試算された。 積 算 価 格 ……… 60,500,000円 収 益 価 格 ……… 60,400,000円 上記両試算価格には開差が認められるため、両試算価格の特徴に留意し ながら検討を行うものとする。 1.試算価格の再吟味 (1) 積 算 価 格 積 算 価 格 は 、不 動 産 の 費 用 性 に 着 目 し て 求 め た も の で あ る 。土 地 に つ い て は 、取 引 事 例 比 較 法 を 採 用 し 、規 準 と す べ き 公 的 価 格 と の 均 衡 性 に 留 意 し て 求 め て い る ほ か 、建 物 に つ い て も 、類 似 建 物 の 建 築 工 事 費 等 を 参 考 に し た 再 調 達 原 価 を 基 に 、耐 用 年 数 法 及 び 観 察 減 価 法 を 併 用 し て 残 存 価 値 を 把 握 す る 等 、多 面 的 な 検 討 を 踏 ま え た 精 度 の 高 い 価 格 が 得 ら れ たものと認められる。 (2) 収 益 価 格 収 益 価 格 は 、対 象 不 動 産 の 収 益 性 に 着 目 し た 理 論 的 な 価 格 で あ る 。本 件 で は 直 接 還 元 法 を 適 用 し 、現 行 賃 料 と 市 場 賃 料 、現 行 費 用 と 標 準 的 費 用等を比較検討し、標準的な収益・費用等諸項目を査定の上で計上し、 標 準 的 か つ 安 定 的 な 標 準 化 純 収 益 を 還 元 し て 求 め た も の で あ る 。結 果 求 め ら れ た 直 接 還 元 法 に よ る 収 益 価 格 は 、対 象 不 動 産 が 本 来 持 つ ポ テ ン シ ャルを反映した価格と言える。 (3) そ の 他 の 計 算 過 程 等 の 検 討 さらに本件では、以下の諸点についての検討を加える。 ①資料の選択、検討及び活用の適否 位 置 図 、住 宅 地 図 、公 図 、建 物 図 面 、登 記 事 項 証 明 書 、土 地 実 測 図 、 建 築 計 画 概 要 書 等 、 固 定 資 産 税 ・ 都 市 計 画 税( 土 地 )証 明 書 、貸 室 賃 貸 借 契 約 書 等 、入 居・建 物 管 理 委 託 契 約 書 、土 地 境 界 確 認 書 及 び 覚 書 、 28 レ ン ト ロ ー ル 、建 物 修 繕 履 歴 、物 件 概 要 書 等 の 確 認 資 料 を 適 切 に 活 用 し、対象不動産の確認・確定を行った。 内 閣 府 月 例 経 済 報 告 や 地 価 公 示 等 の 一 般 資 料 、住 宅 地 図 や 都 市 計 画 図 等 の 地 域 資 料 、竣 工 図 や 貸 室 賃 貸 借 契 約 書 等 の 個 別 資 料 等 、各 種 要 因資料については、対象不動産の特性に応じて選択・活用を行った。 取 引 事 例 、賃 貸 事 例 等 の 事 例 資 料 に つ い て は 、対 象 不 動 産 の 価 格 水 準・賃料水準形成との相関関係を踏まえた選択を行い、試算上の比 較・検討に活用した。 ②不動産価格諸原則の当該案件に即応した活用の適否 評 価 の 各 局 面 に お い て 、不 動 産 価 格 諸 原 則 の 活 用 を 行 っ た( 本 件 に おいて、特に重視した価格諸原則は以下のとおりである)。 地 域 分 析 に お い て は 、予 測 の 原 則 を 活 用 し 、地 域 要 因 の 将 来 予 測 を 踏まえた標準的使用の判定をおこなった 個 別 分 析 に お い て は 、均 衡 の 原 則・適 合 の 原 則 を 踏 ま え 、土 地 建 物 の 均 衡 性 や 環 境 と の 適 合 性 に 係 る 判 断 を 行 い 、最 有 効 使 用 の 原 則 を 活 用して最有効使用の判定を行った。 事 例 資 料 は 、特 に 代 替 の 原 則・競 争 の 原 則 に 留 意 し て 、対 象 不 動 産 と代替競争関係の成立するものについて収集・選択を行った。 ③価格形成要因分析の適否 一 般 的 要 因・地 域 要 因・個 別 的 要 因 の 各 項 目 の 分 析 に つ い て 、市 場 実 態・地 域 の 特 性・対 象 不 動 産 の 個 別 性 等 に 即 し た 分 析 を 行 っ て お り 、 妥当性は高いものと認められる。 ④各手法における各種補修正等に係る判断の適否 土 地 の 取 引 事 例 比 較 法 に お け る 事 情 補 正 ・ 時 点 修 正 、要 因 比 較 に お い て は 、対 象 不 動 産 の 存 す る 地 域 性 や 価 格 水 準 等 を 考 慮 し た 補 修 正 を 行った。 原 価 法 の 減 価 修 正 に お い て は 、敷 地 と 建 物 等 と の 適 合 性 等 、建 物 経 29 過年数、複合不動産としての市場競争力等を踏まえた査定を行った。 収 益 還 元 法 の 現 行 賃 料 に 対 す る 市 場 賃 料 の 設 定( 補 正 )に お い て は 、 共同住宅賃貸市場・収益物件取引市場等に留意した査定を行った。 当該補修 正等は 、価 格形成要 因(一 般的 要因・地 域要因・個 別的要 因)分析を踏まえたものであり、適正と判断される。 ⑤各手法共通の価格形成要因に係る判断の整合性 対 象 不 動 産 の 存 す る 地 域 性 は 、原 価 法 に お け る 土 地 価 格 や 収 益 還 元 法における賃料設定等において、整合的に反映した。 対 象 不 動 産 の 市 場 競 争 力 は 、原 価 法 に お け る 一 体 と し て の 価 格( 市 場 性 )や 収 益 還 元 法 に お け る 賃 料 ・ 利 回 り 把 握 等 に お い て 、整 合 的 に 反映した。 ⑥単価と総額との関連の適否 分 析 ・ 試 算 の 各 過 程 に お い て 、両 面 か ら の 検 討 を 行 っ て い る こ と か ら、単価・総額の関連は妥当なものと認められる。 2.各試算価格が有する説得力に係る判断 (1) 地 域 分 析 及 び 個 別 分 析 の 結 果 と 各 手 法 と の 適 合 性 対 象 不 動 産 は 、共 同 住 宅 及 び そ の 敷 地 で あ る 。中 心 的 な 需 要 者 は 、そ の 収 益 性 等 に 着 目 す る 投 資 家 層 と 把 握 さ れ 、こ れ ら の 需 要 者 は 収 益 性 を も と に 判 断・意 思 決 定 を 行 う も の と 考 え ら れ る こ と か ら 、収 益 価 格 は 各 分析内容とより適合し、その持つ説得力は高いものと判断される。 (2) 採 用 資 料 の 特 性 及 び 限 界 か ら く る 相 対 的 信 頼 性 本 件 に お い て 採 用 し た 資 料 は 、土 地 取 引 事 例 資 料 ・ 賃 貸 事 例 資 料 ・ 複 合 不 動 産 取 引 事 例( 還 元 利 回 り )・そ の 他 市 場 分 析 資 料 ・ 対 象 不 動 産 の 個別資料等である。 以上の各資料は、いずれも対象不動産の特性に即応したものであり、 係る観点からの相対的信頼性に軽重はないものと考えられる。 30 3 .試 算 価 格 の 調 整 及 び 鑑 定 評 価 額 の 決 定 各 試 算 価 格 に つ い て 、そ れ ぞ れ 資 料 に 基 づ い て 再 吟 味 す る と 、積 算 価 格 は、不動産の費用性に着目して求めたものである。土地については、対 象地周辺地域において取引された事例を中心に、規準とすべき公的価格 との均衡性に留意して査定しており、建物についても、耐用年数法及び 観察減価法を併用しているなど、適切な方法並びに豊富な資料に裏付け られた精度の高い価格である。 一方、収益価格は対象不動産の収益性に着目した理論的な価格であり、 本件では直接還元法を採用して試算した価格である。収益価格は、当地 域の賃料動向等及び建物用途性等を総合的に勘案して賃料収入の査定を 行い、また対象不動産の特性に応じた純収益・適用利回り等の査定を適 正に行い試算したものであり、対象不動産の収益性を反映した規範性の 高い価格である。 本 件 評 価 に お い て は「 貸 家 及 び そ の 敷 地 」と し て の 類 型 を 踏 ま え 、市 場 参加者(需要者)の対象不動産に対する価格形成過程を考慮し、対象不 動産は一棟の賃貸用共同住宅であり、収益性を重視した価格形成がなさ れると判断されることから、収益価格にて鑑定評価額(正常価格)を次 の通り決定した。 金60,400,000円 鑑定評価額 な お 、本 件 は「 貸 家 及 び そ の 敷 地 」の 類 型 に 係 る 複 合 不 動 産 と し て の 評 価であるが、参考として、鑑定評価額を積算価格の土地・建物価格比に よって配分すると次の通りとなる。 土地 60,400,000円 × 70.6% ≒ 42,600,000円 建物 60,400,000円 × 29.4% ≒ 17,800,000円 以 上 31 [別表-1]-標準画地比準価格の査定・規準とすべき公的価格との均衡性の検証 ◆取引事例等の概要 所在 (価格時点) 標準画地 地目 数量(㎡) 接面道路 類型 形 状 接面状況 宅地 150㎡ 大 阪市 住 之 江 区西 住 之 江1丁 目 2-8付 近 H23.1.17 更地 宅地 事例A 大阪市住之江区西住之江2丁目付近 宅地 大阪市住之江区西住之江1丁目付近 宅地 大阪市住之江区住之江3丁目付近 <住之江-1> 長方形 105㎡ 長方形 118㎡ H21.8 (調査時点) 地価公示 127㎡ H21.9 建付地 事例C 長方形 H21.4 建付地 事例B 最寄駅等 法令上の 規 制 等 北西7.3m 南海本線 近商・準防火 市道 住ノ江駅 80%・300% 取引時点等 大 阪市 住 之 江 区西 住 之 江2丁 目 46番4 H22.1.1 更地 略台形 更地 211㎡ 宅地 西住之江2−11−27 略長方形 中間画地 150m 特になし 南東7.0m 南海本線 1住居・準防火 市道 住ノ江 80%・200% 中間画地 350m 南西5.4m 南海本線 1中高・準防火 市道 住ノ江 60%・200% 中間画地 200m 西6.0m 南海本線 1住居・準防火 市道 住ノ江 80%・200% 角地 650m 北 7.3m 南海本線 2中高・準防火 市道 住ノ江駅 60%・200% 中間画地 260m 特になし 周辺地域の状況 低層共同住宅・戸建 住宅等が建ち並ぶ駅 近接の住宅地域 戸建住宅、共同住宅 等の建ち並ぶ住宅地 域 戸建住宅、共同住宅 等の建ち並ぶ住宅地 域 戸建住宅、共同住宅 等の建ち並ぶ住宅地 域 中規模一般住宅、共 同住宅等が多い住宅 地域 ◆試算比準価格の算定 取引価格 事情補正 100 事例A 260,000円/㎡ × 94 . 5 × 100 296,000円/㎡ × 100 100 事例C 272,000円/㎡ × 1 0 0. 0 100 96 . 2 100 100 1 0 0. 0 1 0 6 .1 = 3 2 0 , 0 00 円 / ㎡ = 3 1 0 , 0 00 円 / ㎡ 100 100 × 3 0 3 , 0 00 円 / ㎡ 100 × 87.3 100 × = 100 100 × 1 0 2 .0 100 × × 100 × 79.4 100 × 試算比準価格 個性率 100 × 1 0 2 .0 100 × 地域格差 100 × 1 0 0. 0 96 . 4 × 標準化 補 正 100 × 100 100 事例B 建 付 増減価 時点修正 100 × 79.6 100 *各種補修正の詳細については、次ページに記載 ◆標準画地比準価格の査定 南海本線「住ノ江」駅周辺の住宅地域において取引された3事例を選択し、比準を行った結果、上記価格を得た。 求められた価格は概ね均衡しており、また、事例の選択・各種補修正の過程を再吟味するも妥当と判断さた。 以上より、各事例による価格は、何れも同等の規範性を有するものと判断し、概ね中庸値をもって標準画地比準価格を査定した。 標準画地比準価格 310,000円/㎡ ◆規準とすべき公的価格との均衡性の検証 地価公示価格 事情補正 100 地価公示 242,000円/㎡ <住之江-1> - × 100 標準化 補 正 100 97 . 9 × × 建 付 増減価 時点修正 100 99.0 *各種補修正の詳細については、次ページに記載 32 100 × 84.6 規準価格 個性率 100 × × - 地域格差 = 100 2 8 3 , 0 00 円 / ㎡ ◆事情補正・時点修正 事情補正 時点修正率(年率) 補正の内容 事例A 補正率 H21.1.1~ H22.1.1~ 不要と判断 ±0% △5.1% △2.0% H23.1.1~ 不要と判断 ±0% △5.1% △2.0% △2.0% 事例C 不要と判断 ±0% △5.1% △2.0% △2.0% 地価公示につき補正不要 ±0% △2.0% △2.0% <住之江-1> 補正の内容 査定根拠 △2.0% 事例B 地価公示 建付増減価補正 取引事例の時系列分 析、売り希望価格等 の推移・動向の分 析、公的価格の推移 等を総合的に勘案し て査定。 補正率 不要と判断 ±0% 不要と判断 ±0% 更地につき不要 ±0% 地価公示につき補正不要 ±0% ◆標準化補正 要因① 要因② 要因③ 相乗積 要因④ 事例A 方位 +2% 102.0 事例B 方位 +2% 102.0 事例C 角地 +5% 方位 △1% 地価公示 <住之江-1> +1% 方位 106.1 99.0 ◆地域格差 条 件 事例A 事例B 事例C 地価公示 <住之江-1> 要因① 要因② 要因③ 小計 街路条件 幅員等 ±0% ±0% 交通接近条件 最寄り駅への接近等 △2% △2% 環境条件 周辺土地利用状況 △10% △10% 行政的条件 容積率等 △10% △10% その他条件 特になし ±0% ±0% 街路条件 幅員等 △2% △2% 交通接近条件 最寄り駅への接近等 △1% △1% 環境条件 周辺土地利用状況 ±0% ±0% 行政的条件 容積率等 △10% △10% その他条件 特になし ±0% ±0% 街路条件 幅員等 △1% △1% 交通接近条件 最寄り駅への接近等 △6% △6% 環境条件 周辺土地利用状況 △5% △5% 行政的条件 容積率等 △10% △10% その他条件 特になし ±0% ±0% 街路条件 幅員等 ±0% ±0% 交通接近条件 最寄り駅への接近等 △1% △1% 環境条件 周辺土地利用状況 △5% △5% 行政的条件 容積率等 △10% △10% その他条件 特になし ±0% ±0% ◆個性率 標準画地につき、個別的要因に基づく増・減価は有しない。 33 相乗積 79.4 87.3 79.6 84.6