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商用車用 運行管理システム 「ひのこんぱす」

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商用車用 運行管理システム 「ひのこんぱす」
商用車用 運行管理システム
「ひのこんぱす」
上月 力(日野自動車株式会社)
顔写真
1.はじめに
を発売した.
昨今のトラック物流では,IT(Information Technology)機
「ひのこんぱす」は,日野が株式会社システック※2 及び
器の導入が進んできている.これは,安全で効率的な物流を
JHR ネットワークサービス株式会社※3 と共同開発した,リ
徹底的に追求する物流業界や,社会の要請によるものである.
アルタイム双方向通信が可能な運行サポートシステムである.
日本における物流の 9 割はトラック輸送が占めている(輸
GPS 及び携帯電話通信網を利用する「位置動態管理」の採用
送トン数ベース).「店に行けば商品がある」「売り切れて
により,車両の現在位置をはじめ,作業状態,積荷の状況な
も明日には買える」というごくあたり前の生活を,トラック
どの運行情報を事務所でいつでも把握することができる.
物流が支えているのである(Fig.1).
さらに,運送事業者の事務所・車両間の双方向通信や,コ
ールセンター・ロードサービス機能も具備した.これにより,
「運転情報」「運行情報」「車両情報」といった,運送事業
者が運行管理上必要な時にすぐ目で確認したい情報のリアル
タイムでの提供を可能とした.また,各メーカー製のトラッ
クに装着可能とすることで,それぞれの運送事業者が所有す
る全ての車両を一括管理できるようにした.
また,「ひのこんぱす」は,運送事業者の事務所側で利用
される管理機能だけでなく,ドライバーの利便性にも着目し,
同カテゴリーの商品で初めて車載機にタッチパネル(7 イン
Fig.1 輸送機関別分担率(平成 17 年度,輸送トン数)(1)
チ)方式を採用※4 して操作性や視認性を向上した(fig.2).
日報の自動生成機能も組み込み,乗務終了後の作業を大幅に
モノを,いかに安全に,確実に,しかも安く届けるか,と
軽減し,さらには緊急時にはコールセンターへ通報すること
いうことを物流業界は常に考えている.昨今では,環境への
でロードサービスが受けられるなど,安心して乗務できる機
配慮,高騰する燃料費,社会的に大きな影響を与える大型車
能を有している.
の事故根絶などに向け,それぞれの運送事業者は日々悩み,
もちろん,VICS 情報(渋滞情報)※5,緊急地震速報,気
考えている.
象情報とも連携することで,安全で効率的な運行のサポート
にも配慮している.
2.運行管理ツールについて
日野自動車株式会社(以下,日野)は,こういった運送事
業者をはじめ,社会に役立てるよう,従来から省燃費運転支
援ツールとしての「日野ドライブマスター」「日野ドライブ
マスターPRO」を開発・展開し,お客様テクニカルセンターな
どでの講習実施とあわせて省燃費運転の普及に努めてきた.
一方で,近年の進化する IT 技術を背景に,運送事業者や社
会の運行管理システムへの期待が急速に高まってきており,
特にリアルタイムでの運行状況把握や車両・事務所間での双
方向通信へのニーズが強まってきている.日野はこれに応え
Fig.2 ひのこんぱす タッチパネル
るべくテレマティクス商品※1の開発を進め「ひのこんぱす」
1
■「ひのこんぱす」の特長
・ドライバーと運行管理者の双方向通信が可能(Fig.4-5)
・車載機はドライバーの操作性と視認性に配慮した7インチ
のタッチパネル式を採用(Fig.2)
・車両ごとの積載状況や配送ルートが検索可能
・運転日報の自動生成・出力が可能
・エンジン始動時にパスワードを入力することで盗難防止に
寄与(Fig.6)
・メンテナンス情報を車両ごとに集計・把握が可能
・省燃費運転・安全運転の評価機能付き
・万一の際にも「日野 S.O.S コール」にてロードサービスの
Fig.6 セキュリティ機能
要請が可能(Fig.8)
・バックアイカメラのモニタとしても連携可能(Fig.9)
Fig.3 ひのこんぱす システム概念図
Fig.7 事務所側PC 「配送実績」画面
Fig.4 ドライバー側メッセージ受信画面
Fig.8 日野 S.O.S 緊急サービス
Fig.5 定型メッセージ送信画面
Fig.9 バックアイカメラ連動
2
3.開発のねらい
また,位置動態管理(どこで何をしているか)などによる
日野は,「ひのこんぱす」の開発にあたり,お客様へのヒ
業務の見える化により,改善ポイントが明確となり,より効
ヤリングを通じて分かった,真に必要とされる機能を,リー
率的な業務運用につながる可能性を生む.
ズナブルな価格で提供できる商品をめざした.
社会や多くの運送事業者に役立ててもらえる,運行管理ツ
「お客様にメリットのあるサービスメニューの提供」「使
ールを,IT を活用して,最適仕様、最適価格で提供すること
いやすさ」「バージョンアップで拡張できる機能」「必要な
が我々メーカの課題である.
各種機能を適宜選択いただけるリーズナブルな価格設定」と
いった「うれしさ」をお届けすることを可能とした.
5.おわりに
このような IT 機器は,トラックメーカ各社,車載機メーカ
各社が提供しており,運送事業者の IT 機器導入による,より
安全でより効率的な業務を支えている.
また,IT 技術の進歩は著しく,運送事業者や社会のニーズ
の変化も早い.これに応えるため,各社とも定期的な提供機
能の拡充を行うなどして対応している.
現時点では,まだ「管理ツール」という色が濃いが,IT を
活用し,更なる低価格で提供できれば,ドライバーへのエン
Fig.10 お客様の課題や状況
ターテイメントコンテンツの提供や,社会とのつながり強化
による新たな効果が生まれる可能性がある.
4.課題
トラックを運転するのも,物流を管理するのも,荷物を待
IT 機器導入の課題の一つに,初期導入費用や運用費用があ
つのも,すべて人である.我々はトラックや IT 運行管理シス
げられる.運送事業者の規模の大小にかかわらず,投資対効
テムを通じて,世界中の人々の期待に応えていきたい.
果が明確でなければ,いくら効率的でより安全な運行管理の
可能性があっても,導入には慎重にならざるを得ないのは当
※1:テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス
然のことである.我々メーカとしては,最適価格で最大の効
(情報工学)から生まれた造語で,車両などの移動体に
果が得られる機能,サービスを提供することが非常に重要で
携帯電話等の通信システムを利用したサービスを提供す
あり,各社とも日々その課題に向かって推進している.
ることを総称
地球環境を守るのはもちろんだが,現実的に昨今の燃料費
※2:株式会社システック(本社 鹿児島県鹿児島市 代表取締
の高騰は,運送事業者の経営を圧迫しているのも実態である.
役 坂元士郎) GPS 情報を利用して車両の現在位置や状
トラックドライバーはプロであるが,それでも運転方法で
態が管理できる車両運行管理システムを主力商品とする
燃費に差が出てくる場合が多い.例えば,省燃費講習会を受
システム開発企業
ける前後では,2 割以上の燃費効果が出ることもある.
※3:JHRネットワークサービス株式会社(本社 東京都港
一般乗用車と異なり走行距離の長いトラックにおいて,こ
区 代表取締役 藤井千世) 大型車両を対象としたレッ
れは非常に大きな効果を生むことになる.
カーロードサービスを中心に事業を展開している企業
例えば,東京から九州までの約 1,500 キロを月に 5 往復す
※4: 国内商品でリアルタイム車両位置把握や緊急時のコール
れば月間 15,000 キロ,年間では 180,000 キロにも及ぶ走行距
センター通報機能などを装備するもの
離となる.これを燃費 3 キロ/リットル程度の大型トラック
(2008年7月末日現在)当社調べ
で走行すれば,60,000 リットル/年の軽油を消費する.150
※5:ひのこんぱすで使用するVICS交通情報は,住友電工シ
円/リットルの軽油であれば 900 万円/年の燃料費となる.
ステムソリューション株式会社から提供される.
ここで 2 割の燃費効果があれば 180 万円/年の削減となり非
ひのこんぱすで使用するVICS交通情報は,財団法人日
常に大きな効果となるのである.同時に,CO2 削減効果も約
本道路交通情報センターから提供される道路交通情報
31 トン/年となり,燃費を良くすることは,地球環境にも運
データを利用して作成されたものであり,道路交通情
送事業者の経営にも大きく影響する.
報データの作成には財団法人道路交通情報通信システ
一方で,省燃費運転を徹底することは,ドライバーへの運
ムセンターの技術が用いられている.
転指導と,それを徹底するための厳しい管理を強いることに
なる.プロのドライバーが極力ストレスを感じることなく,
参 考 文 献
最大の省燃費効果をも導くことができる最適な省燃費運転サ
(1) 全日本トラック協会:日本のトラック輸送産業2007
ポートが重要となってくる.
3
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