...

Vol.45 (2017年 1月発行)

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

Vol.45 (2017年 1月発行)
i-net Vol.45 2017年1月発行
2017
建設・環境技術レポート&トピックス
January
V o l . 4 5
Contents
新たな取り組み
02
最新の音響機器による
〝 水中の可視化〟
技術とその応用
インフラ維持管理編
(
)
目に見えない地中の構造を観測データから見える化
地形変化や湧水環境に着目したアユ産卵床適地の評価
06 04
Working Report
08
都市河川・鶴見川における多自然川づくり
UAVを活用した河川のモニタリング技術と
樹林化抑制
10
Column
SDGsをご存知ですか 2015年は、地球環境を保全しつつ、人類の将来
2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の
を見据えた繁栄と安寧を確保するために、二つの極
後継ですが、MDGsが途上国の目標であったのとは
めて重要な国際取り決めが行われた年となりました。
異なり、先進国を含む全ての国に適用される普遍性
その一つは、12月にパリで開催されていた第21回気
が特徴となっています。
候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、「パ
SDGsは国際取り決めなので、中心となって旗を振
リ協定」が採択されたことです。この協定では、産業
るのは国連と各国政府 注1)ですが、企業の取組に注
革命前からの気温上昇を2℃よりも十分下方に抑え
目が寄せられています。企業の社会的責任(CSR)の
ることを世界全体の長期目標として、全ての国に自
一環としての対応が中心になりますが、それに止まら
らが決定する温室効果ガスの削減目標の作成・維
ず、経営リスクの回避やビジネスチャンスとしての活
持・国内対策が義務付けられました。もう一つは、9
用が期待されています。当社は環境・建設のコンサ
月に国連本部で開催された「持続可能な開発サミッ
ルタントとして環境・建設関連のゴールに鋭意取り組
ト」において、「持続可能な開発のための2030アジェ
むとともに、他のゴールにも貢献してまいります。
ンダ」が採択されたことです。このアジェンダには、貧
SDGsをご存知だったでしょうか。初めての方が多
困を撲滅し、持続可能な世界を実現するために17
いものと思います。SDGsと企業の係わりを詳しく知り
のゴール・169のターゲットからなる「持続可能な開
たいという方向けにSDG Compassが作成されていま
発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)が示
す。グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと地
されています。
球環境戦略研究機関による日本語訳注2)があります
SDGsの17のゴールは下のとおりであり、赤色で示
したものは環境や建設に関連するものです。SDGsは
SDGsの 17 のゴール
1. 貧困の撲滅
2. 飢餓撲滅、 食料安全保障
3. 健康 ・ 福祉
4. 質の高い教育
5. ジェンダー平等
6. 水 ・ 衛生の持続可能な管理
7. 持続可能なエネルギーへのアクセス
8. 包摂的で持続可能な経済成長、 雇用
9. 強靭なインフラ、 産業化 ・ イノベーション
10. 国内と国家間の不平等の是正
11. 持続可能な都市
12. 持続可能な消費と生産
13. 気候変動への対処
14. 海洋と海洋資源の保全 ・ 持続可能な利用
15. 陸域生態系、 森林管理、 砂漠化への対処、
生物多様性
16. 平和で包摂的な社会の促進
17. 実施手段の強化と持続可能な開発のための
グローバル ・ パートナーシップの活性化
ので、ご覧になってください。
注1:内閣総理大臣を本部長とし、他の全ての国務大臣を本部員とする
「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置されています。
注2:http://ungcjn.org/gc/pdf/SDG_COMPASS_Jpn.pdf
SDGs のアイコン : 国際連合広報センター Web サイトより
Vol.45
JANUARY 2017
Point
当社では最新の音響機器を導入して“水中の可視化”に取り組んでいます。2015年度に実施
された国土交通省による次世代社会インフラ用ロボット水中維持管理技術の現場検証に参加し、
“試行的導入を推薦”の最高評価をいただきました。
現場検証の成果を含め、インフラ維持管理分野における新たな観測技術をご紹介します。
最新の音響機器による“水中の可視化”技術とその応用
(インフラ維持管理編)
国土環境研究所 環境調査部 技術開発室 古殿 太郎、高島 創太郎、西林 健一郎、大野 敦生、三上 隼
はじめに
事例紹介
近年、わが国の社会インフラは、施設の老朽化、大規
模災害の発生、人口減少・少子高齢化の進行に伴う労
働力不足といった重要かつ喫緊の課題に直面しており、
ICT等を活用した効率的・効果的な技術の開発・導入が
求められています。当社でも音響やレーザーによる新た
な測定技術の開発に取り組んでいます(i-net Vol.40、Vol.42
掲載)。本稿では、最新の音響技術を利用した水中インフ
ラの維持管理技術についてご紹介します。
水中3Dスキャナは小型で汎用性が高いため、測定す
る環境に応じてさまざまなプラットフォームに搭載すること
が可能です。これまで測定してきた事例をご紹介します
(表1)。
(1)水制工や護岸の洗掘部の計測
河道内に存在する水制工やコンクリート護岸周辺では、
大規模洪水時に局所洗掘が発生します。この場合、早急
な現況把握と二次災害への対策工が求められますが、
洗掘部は濁水・高流速となっている場合が多く、潜水士
が近寄れない危険な場所となります。このような状況下で
も、潜水士により洗掘部から離れた流速の緩い河床に水
中3Dスキャナを設置し、3次元計測データを取得するこ
とができました(図2、計測時間約30分)。
水中3Dスキャナは、災害時の緊急点検にも活用が可
能です。
音響機器水中3Dスキャナのご紹介
水中3Dスキャナは、小型マルチビームソナーと据付台
を組み合わせた全周囲ソナーで、濁水中でも使用でき、
遠隔操作により対象物の高精度かつ詳細な形状測定が
可能です(図1)。出力データはXYZ座標を持つ点群として
取得されます。
周波数
ビーム幅
ビーム数
測定範囲
ソナー
1.35MHz
1°×1°
256
30m
9.0m
W H
据付台(雲台)
水平方向(パン機能)
360°
垂直方向(チルト機能) 45°(15°×3回)
水制工天端崩落場所
図1 水中3Dスキャナの仕様
水中3Dスキャナ前方9.0mの水中に
高さ(H)1.0m、奥行(W)0.5mの侵食
を確認
図2 洗掘部計測結果
表1 水中3Dスキャナによる測定事例
測定場所
河川
ダム
2
測定対象物
測定方法
技術的特徴
水制工洗掘部
水中3Dスキャナ単独測定
離れた場所から安全かつ広域に
3次元計測が可能
魚道取水口、垂直護岸
水中3Dスキャナ搭載クローラ型運搬機と
3Dレーザースキャナの組み合わせ
陸上の移動式プラット フォームを利用して
効率的に3次元計測可能
ピア周辺の洗掘、堆積、
障害物の状況
船上艤装型水中3Dスキャナ
船舶に固定した状態で船上から全周囲の
3次元計測が可能
取水口ゲート 、ダム堤体壁面 水中3Dスキャナ搭載ROV
IDEA Consultants, Inc.
潜水士が潜れない水深域でも詳細な
3次元データが取得可能
新たな取り組み
(2)河川構造物の効率の良い維持管理点検技術
堰や水門、護岸等の河川構造物は竣工後数十年経
過するものが増加し、老朽化による破損が懸念されてい
ます。垂直護岸や直近の河床形状を効率良く計測する
ためにクローラ型運搬機のアームに水中3Dスキャナを取
り付け、陸上から水中構造物を3次元計測する技術を開
発しました(図3)。
国土交通省による実証試験では、魚道取水口前面に
おいて土砂や流木の堆積、河床の洗掘や窪みを確認し、
船舶が進入できない魚道取水口内においても砂の堆積
状況を確認することができました。測定誤差も約3%と高
い精度を確保しています。
さらに水中3Dスキャナによる水中部測定結果と3Dレ
ーザースキャナによる陸上部の測定結果を統合してシー
ムレスな3D点群モデルを作成しました(図4)。
応できない深度での効果的かつ効率的な維持管理手法
が求められています。そこで当社では、水中3Dスキャナと
高解像度カメラを搭載したROVを用いて、音響計測(概
査)と複数の静止画を統合した3Dマッピング(詳査)により、
効率的に水中構造物の変状や洗掘、土砂堆積状況を
確認できる技術を開発しました(図5)。
国土交通省による実証試験では、本技術を用いて、
取水口天端や下部に堆積物を確認しました。さらにカメラ
の静止画像から壁面の目地の3D点群モデルを作成しま
した(図6)。
ハイビジョン
カメラ
水中3D
スキャナ
高性能GPSにより
作業船の位置を特定
音響測位装置により
ROVの位置を把握
ビデオ
カメラ
モーションセンサーで
ROVの動揺を補正
技術的特徴
測定状況
広範囲
ROVによる移動
(潜水士が潜れない水深での作業が可能)
高密度
水中に浮いた状態で水中3Dスキャナによる
XYZ点群出力
図5 水中3Dスキャナ搭載ROVによる測定技術
クローラ型
運搬機
フォトマッピングにより
3Dモデルを作成
壁面
目地拡大
目地
水中3D
スキャナ
点群表示した
目地の状況
技術的特徴
安価
潜水士を使わず、陸上からの測定
広範囲
クローラ型運搬機による移動
高密度
水中3DスキャナによるXYZ点群出力
ゲートの形状
XYZ(極座標)を持つ
点群から構成される
3D図に変換
カメラの画像から
3Dモデル
取水口天端に堆積物
図3 クローラ型運搬機を用いた測定
取水口下部
堆積物
陸上部(右岸側)
底面
(下流側)
魚道
図6 ダム堤体取水口周辺の3Dモデル
おわりに
水中部
(上流側)
図4 魚道取水口周辺の3Dモデル(水中部と陸上部を統合)
(3)ダムの維持管理計測技術
ダムや貯水池は、洪水調節、利水および流水の正常
な機能の維持等多様な目的を持つ重要な施設です。貯
留水を落水させての点検が困難なため、潜水士では対
水中の構造物を効果的かつ効率的に測定するために
は、測定対象ごとに最適なプラットフォーム(ROV、クロー
ラ型運搬機、作業船等)を選定し、水中3Dスキャナによ
る測定方法を検討することが重要です。今後も最新鋭の
機器を用いた技術開発を進め、港湾も含めたさまざまな
水中構造物の維持管理に対応してまいります。
3
Vol.45
JANUARY 2017
Point
観測データと数値シミュレーションを組み合わせることによって、目に見えない地中の構造を「見え
る化」する技術の開発に取り組んでいます。断層や洞窟があり、複雑な構造を有している沖縄島南
部のカルスト地形を対象として、琉球大学と共同で実態把握に挑戦しています。
目に見えない地中の構造を観測データから見える化
国土環境研究所 水環境解析部 阿部 真己、畑 恭子
※本報告は、「琉球石灰岩帯水層における広域地下水流動モデルの構築」 土木学会論文集B1(水工学),Vol.71, No.4, I_217-I_222 (安元 純、
阿部 真己、中野 拓治) をもとに作成しました。
はじめに
N
N
那覇市
沖縄島
対象地域
真壁
真栄平
地下水が流れる琉球
石灰岩が分布する範囲
地下ダム堤体
地下水が流れない(流れづらい)
島尻泥岩層
地下ダム堤体
真壁
N
土壌や地下水の環境を考える際に大きな問題となる
のは、地中のあらゆる情報が「目に見えない」ということで
す。地下水の流れや貯留量の正確な把握は、地下水の
資源管理や土壌汚染対策のために重要ですが、直接見
ることができない地中がどのような構造(水理地質構造)
になっているかを調べることは、技術的にも経済的にも容
易ではありません。
一方で、地下水の水位(水頭)の情報は、測定が比較
的簡単であるうえに、公開されている情報からもデータが
入手できます。地下水の水位は、地中の構造に影響を
受けながら地下水が流れるという物理法則に従った結果
です。地下水の流れに関する物理法則を紐解くことによ
って、「地下水の水位データから逆に地中の構造を推定
する」という取り組みを行いました(図1)。
真栄平
地中の
構造
物理法則
(地下水の流動)
地下水の
水位
図2 沖縄島南部米須地下ダム流域の地形の概要
逆推定!
図1 地中の構造と地下水の水位との関係
ここでは、地中の構造が非常に複雑な沖縄島南部の
カルスト地形(図2)を対象として、地下水の水位の観測デ
ータから地中の構造の推定を行い、技術の妥当性につい
て検証しました。対象地域では、「島尻泥岩」とよばれる水
を通しづらい地盤の上に、「琉球石灰岩」とよばれる石灰
岩層があります。石灰岩層は水による浸食を受け、大規
模な洞窟構造を有しています。加えて、地形を分断する
断層が何か所も走っており、地下ダムと呼ばれる巨大人
工構造物も存在しています。
4
IDEA Consultants, Inc.
地中の構造を「見える化」する方法
(1)地下水の流れを表現する物理法則
地中の構造を「見える化」するために、まず地下水の水
位と地中の構造を結び付けている地下水の流れをモデ
ルで表現します。ここではUSGS(アメリカ地質調査所)が
公開しているモデル「MODFLOW」を用いて、仮に設定した
地形条件のもとで地下水が上流側から下流側に流れる
シミュレーションを行いました。
ちなみに、MODFLOWは、非常に長い歴史があるモデ
ルですが、最近大幅にバージョン・アップされました。米須
地下ダム流域のように断層が存在する地形は、従前の
地下水モデルでは計算が難しい地形の一つですが、バー
ジョン・アップされたMODFLOWには、このような地形でも
計算できる新しい仕組みが搭載されています。
新たな取り組み
推定結果
地中の構造を「見える化」した結果を図3に示します。
透水係数の平面図を示したもので、赤色ほど値が大きく、
水が通りやすいことを示しています。既存の報告書をもと
に黒線で地下空洞の分布を重ねました。水が通りやすい
と推定された赤色のエリアとよく整合しています。また、地
下水の流速について、4日で2km物質が輸送された現象
が確認された場所の流速が500m/day程度となっている
等、実流速のオーダー感も整合していることがわかりまし
た。
透水係数: K(m/day)
log10K
2.5
N
真栄平
2.0
仲座
真壁
1.5
1.0
慶座
空洞の分布位置
山城
米須
0 1,250 2,500 5,000m
図3 地中の構造の「見える化」(透水係数の平面分布)
80
透水係数一定(30m/day)
推定した透水係数
70
地下水の水位計算結果(m)
(2)地中の構造を紐解くアルゴリズム
地中の構造を紐解くアルゴリズムは、発想としてはとて
もシンプルで古典的なもので、いわゆる逆問題という問題
を解くものです。
地中の構造を推定することは、地中の「透水係数」とよ
ばれる場所ごとに異なる「水の通りやすさ」に関するモデル
の設定条件を推定することに置き換えて考えることができ
ます。例えば、さらさらした砂の地盤であれば水が通りや
すく、透水係数は大きい値となり、粘土のような地盤であ
れば水が通りづらく、透水係数は小さい値となります。洞
窟がある場合には、透水係数は高くなると考えられます。
ここでは、沖縄島南部の米須地下ダム流域を50m四
方の約3.5万個の四角形格子に分割して地形を表現し、
地下水の水位データ約100個を用いて50mごとに透水係
数の値を推定します。
ただし、注意しなければならない点は、約100個のデー
タから350倍となる約3.5万個の透水係数を推定すること
です。このように手元にあるデータに比べて推定したいデ
ータが著しく多い状況を「不良設定問題」とよび、適切な
留意なしに問題に取り組むと「過剰学習」とよばれる落とし
穴にはまってしまいます。
本検証では、SVD(特異値分解)とよばれる正則化に加
えて、「pilot point」という直感的に扱いやすい技術を組み
合わせることにより、自然な推定結果を得ることに成功し
ました。100個のデータから3.5万個のデータを完璧に推
定できる魔法のような技術は残念ながら存在しません。
100個のデータから引き出せる情報は100個分相当の情
報量だけです。この100個分相当の情報量を十分役に
立つように工夫して3.5万個に適切に割り当てるテクニッ
クが、SVDや「pilot point」とよばれる技術です。
N=100
60
50
40
30
20
透水係数一定: r=0.963
10
推定した透水係数: r=0.998
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
地下水の水位観測結果(m)
図4 地下水の水位計算結果と観測結果の比較
地下水の水位の計算結果と観測結果を比較した散布
図を図4に示します。赤色のプロットは透水係数を一定の
値にしたもので、青色のプロットが図上側の透水係数を推
定した条件で地下水の水位を計算したものです。地下水
の水位の計算結果は、透水係数を推定することで格段
に再現性が向上しました。
おわりに
地中の「見える化」について、限られたデータからの取り
組みでしたが一定の妥当性のある結果が得られました。
引き続き検証が必要ですが、地中の情報を見える化する
技術は、さまざまなことに役立てることができると考えてい
ます。今後も琉球大学等と連携しながら、より高精度な
技術へと発展させていく予定です。
5
Vol.45
JANUARY 2017
Point
濁水長期化が顕在する天竜川においてアユ産卵床を再生するため、これまでに得られたアユ産
卵床に関する知見を集約し、地形変化や湧水環境に着目したアユ産卵床適地の評価手法を開発
しました。
地形変化や湧水環境に着目したアユ産卵床適地の評価
大阪支社 水圏部 兵藤 誠、環境創造研究所 環境生態部 鳥居 高明、建設統括本部 水圏事業部 河川部 山城 健太
情報システム事業本部 防災情報システム部 鄧 朝暉、渡邉 健介
はじめに
研究成果
アユは日本の河川生態系の代表的な魚種です。アユ
の産卵に好適な環境として、瀬であること、浮石環境であ
ること、河床材料の粒径は30mm程度以下の砂礫の割
合が多いこと等が示されています。瀬の特性として、流速
や水深、フルード数、摩擦速度等に着目した研究成果も
みられます。しかし、これらは、静的な指標にもとづく評価
が一般的であり、河床地形の動的な変化や履歴に着目
した研究はほとんどありません。
ここでは、天竜川におけるアユ産卵床の確認箇所の場
を活用して開発したアユ産卵床適地の評価手法をご紹
介します。
(1)湧水環境が創出される条件の検証
天竜川15.2kは、2013年度の調査でアユの産卵床が
発見されており、産卵床創出のポテンシャルが高い地点
です。本箇所を現地で確認すると、図2に示すように、湧
水地点(図2(a))やたまり(図2(b))の周辺に伏流水(図
2(c))が存在していることから、周辺の流路から流入して
いる可能性が考えられました。そこで、湧水環境が創出さ
れる所の物理的特性を把握するため、2015年10月に
15.2k周辺の砂州を対象に、湧水地点の水位に対する
比高分布を調査しました。図3に示す平面分布図は、航
空写真(2014年2月撮影)と無人航空機(UAV)による写
真(2015年10月撮影)のオルソ画像を重ね合せたもので
す。湧水地点の水位に対する比高分布の縦断図および
対象河川と既往知見
天竜川は、長野県の諏訪湖から愛知県、静岡県を流
下して遠州灘にそそぐ一級河川で、本研究が対象とする
下流域では約1kmの川幅を有します。下流域は洪水によ
るかく乱が大きいという特徴があり、河床材料代表粒径は、
アユ産卵床として好適な粒径(30mm以下)よりも大きい60
~73mmです。さらに、洪水後等に濁水が長期化すること
から、アユ産卵床が創出される条件について、空間的な
分布特性や時間的な特性の観点から分析・評価する必
要があります。
これまでに、著者らによる天竜川での研究を通じて得
られた知見を表1に示します。
鉄塔上流側(17.2k)の例
流水環境(たまり瀬)
たまり
本川
副流路2
副流路1
図1 アユ産卵床の確認箇所17.2k(2013年11月撮影)
表1 天竜川での研究を通じて得られた知見(著者らと京都大学防災研究所水資源環境研究センターによる)
項目
アユ産卵床調査
水質および河床軟度調査
地形の動的変化や履歴の分析
6
IDEA Consultants, Inc.
得られた知見
アユ産卵床調査の結果、2013年11月に17.2k、12月に15.2kの計2箇所の礫床のみでアユ
産卵床と卵を確認しました。既往研究等から一般的に好適な環境と言われる流路の瀬では
なく、湧水のたまりから流路に接続される流水環境(以下、「たまり瀬」)でした(図1参照)。
両地点ともに主な河床構成材料は20~50mmの礫が多く、砂による目詰まりが生じていない
浮石環境でした。
アユ産卵床と卵が確認された「たまり瀬」では、近隣のほかの生息場(通常の瀬、たまり、ワンド)
と比較して溶存酸素濃度が高く(表層で10mg/L程度以上)、河床軟度が高い(10cm程度以上)
ことから、流水や湧水環境、軟らかい河床が必要であることが分かりました。
産卵床調査の2ヶ月前(2013.9)に発生した中規模洪水(2~3年に1度発生する程度の規模)
による土砂移動と地形変化の結果として、アユ産卵場が創出されたことが分かりました。
さらに、確認箇所はかつての流路(旧流路)であり、砂州の下流部で土砂堆積により形成された
(洪水により粒径の小さい礫が堆積しやすい)箇所であることが分かりました。
新たな取り組み
平面分布図と縦断図の作成断面
15.4k
15.6k
15.4k
(b)たまり
(c)伏流水
15.2k
湧水地点の水位に
対する比高(m)
15.8k
縦断図(湧水地点の水位に対する比高)
15.2k
2.0
1.5
中央
右岸側
左岸側
1112 15
15.6k
UAV撮影(2015年10月10日)
図2 アユ産卵床の確認箇所15.2k
15.4k
15.2k
41
49 50
26
44
50
動水勾配が大きい
3
0.0
-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400 500 600 700 800
横断図(湧水地点の水位に対する比高)
2.0
湧水地点の水位に
対する比高(m)
15.0k
32 36 34
20 26
1
2
47 48
湧水地点からの距離(m)
平面分布図と横断図の作成断面
15.8k
31
27 29
23
22
15.0k
(a)湧水地点
37
33
1.0
0.5
45
39 38
15.0k
1.5
1.0
39
37
48
41
28 26
0.5
1
0.0
-300 -200 -100
15.2k
15.3k
15.7k
17
29
23
動水勾配が大きい
0 100 200 300 400
湧水地点からの距離(m)
図3 湧水地点の水位に対する比高差分布調査結果
横断図を見ると、湧水地点の水位が周囲より低く、周辺
の動水勾配が大きくなっています(図3)。この結果から水
位差が生じる地形が形成されることが重要であることが
分かりました。また、湧水の経路と推定される箇所では、
湧水環境に依存して生息すると考えられる種(ホラアナゴ
カイ科、ムカシエビ科、メクラミズムシモドキ)を確認してい
ます。
河床変動土量(m3)
150,000
変動土量縦断図(低水路:2008~2013年2月)
堆積土量
浸食土量
河床変動土量
100,000
50,000
0
-50,000
-100,000
おわりに
13.0
13.2
13.4
13.6
13.8
14.0
14.2
14.4
14.6
14.8
15.0
15.2
15.4
15.6
15.8
16.0
16.2
16.4
16.6
16.8
17.0
17.2
17.4
17.6
17.8
18.0
18.2
18.4
18.6
18.8
19.0
-150,000
(2)アユ産卵床適地の評価手法の開発
アユ産卵床の適地の評価では、①旧流路や砂州の下
流部に土砂が堆積して湧水環境や軟らかい礫河床が創
出されること、②現在の湧水地点であること、③河道の縦
断区分として土砂堆積が卓越する区間であること(図4)
が重要であり、これらの指標を用いてアユ産卵床の適地
を抽出する手法を開発しました(図5)。このような土砂移
動環境を創出することで、既往研究でも示されている好
適な産卵床の条件(瀬[流水環境]、30mm以下程度の
軟らかい礫河床、溶存酸素濃度が高く濁度が低い水質
条件等)を満たせることが分かりました。
距離(k)
図4 アユ産卵床適地の評価(堆積卓越箇所の抽出)
旧流路(2010.8に水域→2011.12に土砂堆積)
大規模洪水により埋め
戻された旧流路
(2010.8→2011.12)
航空写真(2011.12)
航空写真判読による2011.12時点の湧水たまり・湧水ワンド
湧水たまり
湧水ワンド
航空写真(2011.12)
アユ産卵床適地
9.4k -10.0k
10.8k -11.0k
12.0k -12.4k
12.8k -13.8k 14.2k -15.6k
堆積が卓越する範囲
アユ産卵床の適地
17.8k -18.6k
16.6k -17.6k
15.8k -16.4k
図5 アユ産卵床適地の評価(旧流路の抽出)
著者らは、京都大学防災研究所水資源環境研究セン
ターの指導の下、天竜川天然資源再生連絡会議(天竜
川漁業協同組合、電源開発、学識者により構成)と連携
し、生息場環境が形成される過程や履歴、空間的な分
布特性等の現象を分析することで、実態や現象を物理
的な指標を用いて説明する試みを行っています。河川環
境の評価においては、本研究で得られた知見を応用し、
時間的・空間的な土砂移動特性、洪水特性、生息場特
性等のさまざまな視点から実態や現象を説明するための
指標を分析・評価することで、各河川が抱える課題の解
決に向けて技術的な提案をいたします。さらに、河川環
境と調和した河川管理や土砂管理の実現に向けた技術
的な提案も行います。
本研究にあたり、国土交通省中部地方整備局浜松河
川国道事務所より航空写真や測量成果等を提供してい
ただきました。ここに感謝の意を表します。
7
Vol.45
JANUARY 2017
都市河川・鶴見川における多自然川づくり
国土環境研究所 生態解析部 川口 究、勝越 清紀、国土環境研究所 自然環境保全部 鈴木 敏弘
大阪支社 水圏部 兵藤 誠、建設統括本部 水圏事業部 河川部 中田 裕章、大崎奈央子
都市河川・鶴見川において治水と環境保全の両立に資する多自然川づくり整備を検討しました。下流域の貧酸素
水塊発生など、都市河川特有の課題を明らかにするとともに、現状の課題および将来の河道整備による変化をポテン
シャルマップとして定量的に分析し、鶴見川多自然川づくりの方向性と整備計画を検討しました。
※本業務は、国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所からの委託により実施しました。
はじめに
東京都町田市北部を源流とし、神奈川県川崎市、横
浜市を流れる鶴見川は、流域面積235km 2 、流域内人
口約194万人を抱える典型的な都市河川です(写真1)。
流域の急激な都市化により水害が多発したことから、
河川の流下能力の向上や貯留施設の整備、流出抑制
対策等、総合治水対策が行われてきました。
(1)業務の流れ
鶴見川多自然川づくりは図1の流れで実施しました。
[step1] 環境特性把握 [河道、生物、水質の特性、変遷]
[step2] 課題抽出 [河川区分(下流域、中流域)ごとの課題]
[step3] 方向性整理 [保全対象種、生息・生育条件、配慮
事項、将来の変化予測(ポテンシャルマップ)、方向性の整理]
[step4] 具体的進め方検討 [整備メニュー、整備計画検討]
図1 業務の流れ
(2)生息・生育条件把握のための調査
動植物の生息・生育条件を把握するため現地調査を
実施し、得られた知見を整備内容に反映しました。水生
生物生息条件調査では、横断方向に配置した5地点で
統一的手法により調査し、汽水域においては水深2m以
浅で水生生物種類数が多くなることを把握しました(図2)。
業務の技術的特徴
本事例は、制約条件の多い人口集中地である都市河
川・鶴見川において、環境に配慮した治水整備の具体的
対策を提案したものです。
また、河川水辺の国勢調査等の河川管理者が有する
既存データを有効利用するとともに、現地調査および水
理解析結果にもとづき、都市河川特有の課題を把握し、
対策を検討しました。
8
IDEA Consultants, Inc.
12
10
0.0
コイ科
シマイサキ科 ボラ科
ハゼ科 ギマ科 テナガエビ科
モクズガニ科
●水深
1.0
8
2.0
6
3.0
4
4.0
2
5.0
0
地点1
2
3
4
5
6.0
図2 水生生物生息条件調査結果
(3)ポテンシャルマップの活用
現況および将来の環境変化を予測し、整備計画に反
映させるためポテンシャルマップを活用しました。ポテンシ
ャルマップとは、特徴的な種の生息・生育条件を具体的
な指標で設定し、その条件を用いて、現在、将来の生物
の生息・生育状況を予測、地図化したものです(図3)。
ポテンシャルマップを用いた予測・評価により、必要な
対策の場所と量(面積、距離)を定量的に示すとともに、
河道整備により予測されるマイナス面の影響だけではなく、
プラス面の効果を「見える化」しました。
水深(m)
高度な土地利用が進む都市空間において、短期間で
河川の流下能力を向上させるには、浚渫や河道掘削に
よらざるを得ません。そのため、矢板護岸を主体とした単
調な河道断面が形成され、河川環境が単調化しており、
動植物の生息・生育・繁殖環境は必ずしも好適でない状
況にあります。
本業務では、現在の鶴見川の環境上の課題等を整理
し、治水と環境保全の両立に資する河道整備の実施を
目的として、多自然川づくりにおける現状把握から整備計
画検討にわたる幅広いプロセスを検討しました。
種類数(種)
写真1 鶴見川下流域(写真提供:京浜河川事務所)
Working Report
汽水海水性魚類生息適地
4.0
現在(2012年の河道)
3.0
2.0
1.0
生息適地面積(ha)
淡水性魚類生息適地
0.0
14
12
10
8
6
4
2
河口からの距離(km)
0
-2
3.0
汽水海水性魚類の生息範囲拡大
淡水性魚類
生息適地の増加
2.0
汽水海水性魚類
生息適地の減少・消失
1.0
生息適地面積(ha)
4.0
将来(従来の整備計画実施後の河道)
魚類生息適地の変化予測
0.2ha以上の減少
0.2~0haの減少
0~0.2haの増加
0.2ha以上の増加
0.0
14
12
10
8
6
4
2
河口からの距離(km)
0
-2
※汽水域の水深2m以浅を汽水海水性魚類生息適地、淡水域の水深0.5m以浅(水生植物生育可能水深)を淡水性魚類生息適地としました。
図3 ポテンシャルマップ評価結果例
鶴見川の環境上の課題
(1) 河川環境の単調化
鶴見川では、1980年頃に実施された大規模浚渫、矢
板護岸の整備により自然河岸が消失し、単調な河道断
面となりました。特に下流域は、水際が矢板護岸からな
る単断面河道区間がほとんどであり、近隣の河川と比較
しても水生生物の個体数および種類数が少ない状況で
す。
(2) 河道底層の貧酸素化
大規模浚渫により塩分濃度の高い区間が延伸し、底
層が恒常的に貧酸素状態となっていました。特に、水深
が深い場所では貧酸素化により、水生生物の生息にとっ
て厳しい環境となっていました。
なお、各整備メニューについては、将来計画により形
成される河道についてポテンシャルマップにより予測され
る河川環境の変化にもとづいて検討しました。
表1 鶴見川多自然川づくり整備計画(案)
多自然川づくり配慮事項
・アユ仔稚魚の生息場
・多様なハゼ類の生息場・
繁殖場
・ヨシの生育場
①干潟・浅場の整備
・干潟浅場整備
・多様なハゼ類の生息場・
繁殖場
・ニホンウナギの生息場
・陸生カニ類の生息場
・回遊生物の遡上、分散、
降河のための連続性確保
②河道断面の工夫
・湾曲掘削
・浅場保全
・貧酸素の緩和
④澪筋掘削
鶴見川の多自然川づくり
鶴見川における環境上の課題を踏まえ、多自然川づく
りの配慮事項、整備メニューを検討しました。
多自然川づくりの配慮事項検討にあたっては、当該河
川環境が良好であるかを判断する際の目安と考えられる
種(特徴的な種)を設定しました。
整備メニューの検討にあたっては、単調化した河川環
境を改善するため、干潟・浅場の整備によって水生生物
の生息・生育・繁殖場を確保するとともに、河道底層の貧
酸素水塊より魚が待避できる浅場を縦横断的に整備す
る計画としました。
整備メニュー
③護岸の工夫
・袋詰め
・多孔質パネル
・植栽フィン
おわりに
今後は、本業務で検討した多自然川づくり整備計画を
もとに、具体的な整備内容を検討する予定です。
全国的にも都市河川における多自然川づくりの事例は
乏しいことから、鶴見川の取り組みが都市河川の環境保
全・再生の知見やノウハウの蓄積に寄与することが期待さ
れます。
9
Vol.45
JANUARY 2017
UAVを活用した河川のモニタリング技術と樹林化抑制
大阪支社 水圏部 森 友佑、兵藤 誠、田村 智貴、大阪支社 生態・保全部 平野 亮
無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を活用することにより、平面的な地形や植生の繁茂状況を容
易に把握することが可能です。また、平面二次元流況解析と組み合わせたメッシュ分析によって、これまでよりも詳細
な検討を行うことが可能となります。
※本業務は、国土交通省近畿地方整備局姫路河川国道事務所からの委託により実施しました。
はじめに
UAVに搭載したカメラによる画像撮影は、立ち入り困難
な被災現場の状況把握や橋梁等の構造物点検等に幅
広く活用されています。河川分野では、試験施工後のモ
ニタリングや堤防・構造物等の河川管理施設の変状把
握、洪水時の状況把握等、さまざまな活用事例があり、
今後も多様な活用が期待されます。
ここでは、当社が国土交通省近畿地方整備局姫路河
川国道事務所からの委託業務により実施した、UAVを活
用した河川のモニタリング調査と、その調査結果を用いた
樹林化抑制に関する取り組み事例をご紹介します。
UAVによる測量精度の検証
UAVで撮影した画像から取得した標高データの精度検
証を行いました。撮影は撮影高度と地上基準点(Ground
Control Point:以下、GCP)の設置数による差異を検証す
るため3つのケースを設定し(表1)、表2に示す機材を使
用しました。
各ケースで撮影した画像をもとにデータを3次元化しま
した。UAVによる測量(ケース1)と定期横断測量結果を比
較したところ(図1)、地表面を捉えることができる砂州(礫
河原)部分では、標高の誤差は最大約7cm、平均3cmで
あり、横断測量と同等の精度があることを確認しました。植
生域では樹木・植生の高さが標高として測量されました。
また、各ケースの測量結果を比較した結果、ケース1と
ケース2の撮影高度による差異は、最大約8cm、平均
5cm、ケース2とケース3のGCPの設置数による差異は、
最大約7cm、平均5cmでした(図2)。
表1 各ケースの撮影高度およびGCP設置数
ケース
撮影高度
1
50m
2
150m
3
150m
表2 使用機材
GCPの設置数
備考
ケース1とケース2の比較により、
200mごとの左右岸の距離
撮影高度の違いによる写真測量
標地点と砂州上にGCPを
精度を検証
設置
ケース2とケース3の比較により、
400mごとの左右岸の距離 GCPの設置数の違いによる写真
標地点にGCPを設置
測量精度を検証
項目
寸法
機体重量
操作
駆動
電源
連続飛行可能時間
操作可能範囲
耐風
使用カメラ
22.0
UAV写真測量
(ケース1)
2015年横断測量
21.0
20.5
20.0
UAV写真測量ケース1と
横断測量による違いは
最大で約7cm、平均で3cm
19.5
38
樹木・植生の高さを確認
36
34
32
30
28
26
24
22
20
18
植生域
16
14
-200m
-150m
-100m
-50m
樹高
標高(T.P.m)
19.0
0m
10m
20m
30m
IDEA Consultants, Inc.
50m
22.0
ケース1(高度50m)
ケース2(高度150m)
ケース3(高度150m+GCP減)
撮影高度の違いで
最大約8cm、
平均5cmの差
21.9
礫河原では横断測量と同等の精度がある
水域
砂州(礫河原)
0m
50m
100m
図1 UAVによる測量結果と横断測量結果の比較(21.2km上流地点)
10
40m
標高(T.P.m)
【拡大図】
標高(T.P.m)
21.5
仕様
1,000×1,000×400mm
3.8kg
手動および自律飛行
モータ
バッテリ(リチウムポリマー電池)
20~25分
約1km
15m/s以下
Sony α7R 約3,640万画素
UAV写真測量
(ケース1)
2015年横断測量
150m
200m
21.8
21.7
21.6
GCPの設置数で
最大約7cm、平均5cmの差
砂州(礫河原)
21.5
130m
132m
134m
136m
138m
140m
図2 UAVによる測量結果各ケースの比較(21.2km地点)
Working Report
樹種・樹高・密生度の把握
るメッシュごとの無次元掃流力と併せてメッシュ分析を行
い、樹林化抑制に関する水理指標について検討しました。
その結果、図4に示すように自然裸地が存在するのは
無次元掃流力が0.04以上であり、0.06~0.08の範囲で
ピークとなりました。また、ヤナギは0.00~0.04程度、マダ
ケは0.00~0.01程度の範囲で多く見られるという結果に
なりました。
既存の航空レーザ測量データから作成したモニタリン
グ調査対象範囲の地盤高メッシュと、UAVによる写真測
量結果から得られた標高点群データとの差分を用いて、
植生域の比高(樹高)を算出しました。ランク(高さ)ごとに
分類した比高のメッシュ内に占める割合を密生度として
算出しました。
その結果、各比高ランクから裸地・植生域、樹木群(低
木・高木)の区分が可能となり、かつ図3に示すように樹木
群の密生度の違いから樹種の区別も可能であることが分
かりました。
おわりに
これまでの定期横断測量結果からの測線上の地形か
らの評価方法に比べ、UAVを活用することで平面的に評
価することが可能となりました。
今後は、UAVを活用した持続可能な河道管理手法の
確立や、河川環境のモニタリングとともに生息場特性等
の環境評価をすることで、各河川が抱える課題を解決で
きる技術的な提案をしてまいります。
樹林化抑制に関する水理指標の検討
上記において作成した植生分布図から地形・樹木特性
(ヤナギ・マダケ・自然裸地)をメッシュに反映し、平面二次
元流況解析により算出した平均年最大流量流下時におけ
60
50
マダケ植林
40
自然裸地
メッシュ数
メッシュ数
200
180
65~100%の範囲ではマダケが優占
160
140
120
100
80
60
40
20
0
65~100
30~65%の範囲では 30~65
密生度(%)
ヤナギ類が優占
ジャヤナギ-アカメヤナギ群集
30
比高(樹高):4.0m以上
20
95~100
90~95
85~90
80~85
75~80
70~75
65~70
60~65
55~60
50~55
45~50
40~45
30~35
0
35~40
10
密生度(%)
図3 植物群落と密生度の関係
植生分布
無次元掃流力
0.01未満
無次元掃流力分布
0.01~0.02
0.02~0.03
0.03~0.04
0.04~0.05
0.05~0.06
囲
評価範
囲
評価範
0.06~0.07
0.07~0.08
群落名
ジャヤナギ-アカメヤナギ群集
ジャヤナギ-アカメヤナギ群集(低木林)
マダケ植林
自然裸地
0.08~0.09
0.09~0.1
0.1以上
500
ジャヤナギ-アカメヤナギ群集
400
マダケ植林
メッシュ数
自然裸地
300
200
0.20~0.21
0.19~0.20
0.18~0.19
0.17~0.18
0.16~0.17
0.15~0.16
0.14~0.15
0.13~0.14
0.12~0.13
0.11~0.12
0.10~0.11
0.09~0.10
0.08~0.09
0.07~0.08
0.06~0.07
0.05~0.06
0.04~0.05
0.03~0.04
0.02~0.03
0.01~0.02
0
0~0.01
100
無次元掃流力
図4 無次元掃流力による地形・樹木特性の分析結果(平均年最大流量流下時)
11
CORPORATE DATA
社会基盤の形成と環境保全の総合コンサルタント
商
号
創
業
本社所在地
資 本 金
役
員
従 業 員 数
いであ株式会社
昭和28年5月
東京都世田谷区駒沢3-15-1
31億7,323万円
代表取締役会長 田畑 日出男
代表取締役社長 細田 昌広
887名 (2016年4月1日現在、嘱託・顧問を含む)
事業内容
■社会基盤整備に係る企画、調査、計画、設計、管理、評価
-河川計画、海岸保全計画、河川・海岸構造物・港湾の設計・維持管理、道路・交通・都市計画、橋梁の設計・維持管理
(要素技術一例)・現地調査(波浪観測、漂砂調査、測量、道路環境・交通量調査等)
・シミュレーション(氾濫・土砂動態・水理解析、波浪変形・海浜地形変化予測、高潮・津波解析、各種構造解析等)
・交通需要予測・解析、交通事故対策、社会実験、PI、景観予測評価、構造物劣化予測等
■社会基盤整備に係る環境アセスメント(調査計画立案、現地調査、予測評価、対策検討、事後調査)、環境計画
-港湾、埋立、空港、ダム、発電所、河口堰、道路、新交通システム、清掃工場、住宅・工業団地、下水処理場等
(要素技術一例)・環境調査(水域・陸域・大気域、動植物の分布・生態、景観、航空・リモートセンシング調査、気象観測等)
・理化学分析(水質、底質、大気質、生物、土壌、廃棄物等)
・シミュレーション(水質、底質、大気質、悪臭、騒音・振動、波浪、気候変化、汀線・地形変化、漂流物等)
・自然再生技術、環境保全対策技術、生態系評価(生活史・生息環境・干潟生態系モデル等)、PI
・地球温暖化対策調査、再生資源利用調査、アメニティ環境調査、自然環境DB構築、地域特性の可視化、LCA
■環境リスクの評価・管理
-ダイオキシン類・PCB類・POPs・放射性物質・重金属類・環境ホルモン・VOC等の調査・分析、ヒト生体試料中(血液、臍
帯血、尿、毛髪等)の化学物質・農薬等代謝物分析、土壌汚染評価、GLP対応の生態影響・毒性試験、化学物質の環境実態
・曝露量の解析・評価、汚染メカニズムの解明
■食品衛生・生命科学関連検査
-食品中の有害物質・残留農薬・微生物・異物・アレルゲン検査、食品の機能性評価、生体・細胞中の代謝物・タンパク質
・遺伝子解析
■自然環境の調査・解析、生物生息環境の保全・再生・創造
-動植物調査、サンゴ礁・藻場・干潟・海浜の保全・再生・創造、河川・湿地・ヨシ帯の自然再生、魚道・多自然水辺空間・
ワンド・淵の計画・設計、アオコ・赤潮発生対策、生物の移植・増殖
(要素技術一例)・生物同定・分析技術(DNA分析、アイソザイム分析、細菌・ウィルス検査、データ集計・解析処理システム等)
・解析(営巣・行動圏・採餌環境解析、生態系・生活史モデル、統計解析、漁業資源解析、アオコ・赤潮発生予測等)
・生物飼育実験設備における飼育・増殖試験、希少生物の保護・育成技術開発、埋土種子による植生の復元
■情報システムの構築、情報発信
-河川水位計測システム、衛星画像解析、GISアプリケーション開発、基幹系システム開発、気象・海象・防災情報配信
■災害危機管理、災害復旧計画
-危機管理支援(危機管理計画、災害時対処マニュアル作成、災害訓練企画・運営)、災害査定・被害状況調査、災害復旧・
改良復旧事業支援、人命・資産の安全確保
-災害情報支援システム、降雨・洪水予測システム、氾濫解析・予測システム、洪水・津波浸水ハザードマップ
-除染計画策定支援
■海外事業
-環境に配慮したインフラ整備(地域総合開発、水資源開発、上水道、港湾、海岸、道路、橋梁、下水・廃水・廃棄物処理)
-災害マネジメント(治水・砂防)、環境保全・創出(環境社会配慮、環境アセスメント、環境保全計画、公害対策等)
-アメニティ(観光開発、都市計画、水辺の再生等)、技術者受け入れ、専門家派遣
本
社
国 土 環 境 研 究 所
環 境 創 造 研 究 所
食 品 ・ 生 命 科 学 研 究 所
亜 熱 帯 環 境 研 究 所
大
阪
支
社
沖
縄
支
社
札
幌
支
店
東
北
支
店
福
島
支
店
北
陸
支
店
名
古
屋
支
店
中
国
支
店
四
国
支
店
九
州
支
店
シ ス テ ム 開 発 セ ン タ ー
IDEA
R&D
Center
富
士
研
修
所
営
業
所
海
連
外
結
事
子
JANUARY 2017 Vol.
務
会
45
所
社
〒154-8585 東京都世田谷区駒沢 3-15-1
電話:03-4544-7600
〒224-0025 神奈川県横浜市都筑区早渕 2-2-2
電話:045-593-7600
〒421-0212 静岡県焼津市利右衛門 1334-5
電話:054-622-9551
〒559-8519 大阪府大阪市住之江区南港北 1-24-22
電話:06-7659-2803
〒905-1631 沖縄県名護市字屋我 252
電話:0980-52-8588
〒559-8519 大阪府大阪市住之江区南港北 1-24-22
電話:06-4703-2800
〒900-0003 沖縄県那覇市安謝 2-6-19
電話:098-868-8884
〒060-0062 北海道札幌市中央区南二条西 9-1-2
電話:011-272-2882
〒980-0012 宮城県仙台市青葉区錦町 1-1-11
電話:022-263-6744
〒960-8011 福島県福島市宮下町 17-18
電話:024-531-2911
〒950-0087 新潟県新潟市中央区東大通 2-5-1
電話:025-241-0283
〒455-0032 愛知県名古屋市港区入船 1-7-15
電話:052-654-2551
〒730-0841 広島県広島市中区舟入町 6-5
電話:082-207-0141
〒780-0053 高知県高知市駅前町 2-16
電話:088-820-7701
〒812-0055 福岡県福岡市東区東浜 1-5-12
電話:092-641-7878
〒370-0841 群馬県高崎市栄町 16-11
電話:027-327-5431
Klong Luang, Pathumthani 12120, Thailand
〒401-0501 山梨県南都留郡山中湖村山中字茶屋の段 248-1 山中湖畔西区 3-1
青森、盛岡、秋田、山形、福島(いわき)、群馬、茨城、北関東、千葉、神奈川、相模原、富山、金沢、福井、山梨、伊那、長野、岐阜、恵那、安八、静岡、伊豆、
菊川、豊川、三重、名張、滋賀、神戸、奈良、和歌山、山陰、岡山、下関、山口、徳島、高松、高知、北九州、佐賀、長崎、熊本、宮崎、奄美、沖縄北部
ボゴール(インドネシア)、マニラ(フィリピン)
新日本環境調査株式会社、沖縄環境調査株式会社、東和環境科学株式会社、以天安(北京)科技有限公司
人と地球の未来のために
(2017年1月発行)
編集・発行:いであ株式会社 経営企画本部企画部
〒154-8585 東京都世田谷区駒沢3-15-1
TEL. 03-4544-7603 , FAX. 03-4544-7711
ホームページ. http://ideacon.jp/
お問い合わせ先
E-mail:[email protected]
Fly UP