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図面情報標準化WG - 一般社団法人 日本建設業連合会

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図面情報標準化WG - 一般社団法人 日本建設業連合会
図面情報標準化 WG
1999 年度活動報告書
1
目
次
1 活動経過 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
1-1 活動項目の策定....................................................................................................... 3
1-2 活動項目の概要....................................................................................................... 3
1-3 活動概要 ................................................................................................................ 4
2 C A D 標準化活動の現状. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5
2-1 CAD データ交換標準開発コンソーシアム.................................................................. 5
2-1-1 概要............................................................................................................... 5
2-1-2 JACIC CAD データ交換標準の概要 ................................................................ 7
2-2 成果品の電子化検討委員会−CAD 製図基準検討 WG ............................................... 10
2-3 土木情報システム委員会−土木 CAD 小委員会 ........................................................ 11
2-4 港湾 CALS 研究会−CAD-WG................................................................................ 12
3 活動概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 3
3-1 CAD データ交換標準(STEP/SCADEC) ............................................................... 13
3-1-1 Q&A集作成の経緯 ...................................................................................... 13
3-1-2 Q&A集を読む上での留意点 ......................................................................... 13
3-1-3 Q&A集質問項目 ......................................................................................... 14
3-1-4 SCADEC データ交換の実用性予測 ................................................................. 15
3-2 CAD 部品の標準化と活用 ...................................................................................... 16
3-2-1 現在の方法の問題点 ...................................................................................... 16
3-2-2 CAD 部品データの分散化 .............................................................................. 16
3-2-3 CAD 部品データの分散と一覧性の確保........................................................... 17
3-2-4 検討内容 ...................................................................................................... 19
3-3 土木技術者向けCAD利用教育プログラム.............................................................. 23
3-3-1 CAD 教育プログラムの仕様公開と応募結果 .................................................... 23
3-3-2 CAD 教育本の出版活動.................................................................................. 28
3-4 CAD 図面の利用・活用技術 ................................................................................... 31
3-4-1 図面の CAD 化による作業の変化.................................................................... 31
3-4-2 CAD 図面を取り扱うツール ........................................................................... 32
3-4-3 朱書きソフトの機能と利用例 ......................................................................... 33
4 次年度の研究方向. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 6
2
1活動経過
1- 1活動項目の策定
1999 年度の活動項目は、企画 WG の提示する「現場達成イメージと土工協活動の対応」に
基づき策定した。
「現場達成イメージと土工協活動の対応」表は、現場達成イメージ(案)に対して、土工協の
果たす役割、会員のための指針、実用化研究、調査、実証研究別に整理したものである。
図面 WG は、それぞれのフェーズについて WG との関わりを検討し、6項目の具体的な活
動テーマを定めた。表-1.1.1 に策定の例を示す。活動項目 5「CAD利用技術の研究;CAD
図面の保管・蓄積の研究」は、情報共有サーバを構築する為の課題「電子メールではどこま
でが限界なのか。現場にサーバが必要な理由は何か」を受けて図面 WG として具体化したも
のである。
表-1.1.1 「現場達成イメージと土工協の活動の対応」と図面 WG の活動対応(例)
現場達成イメージ(案)
項
※本イメージは2002年3月に達成すべき目標
内
目
容
イメージ達成への課題や疑問
(土工協に期待されるもの)
土工協の対応項目
会員のための指針
実用化研究
調査
・職員1台/人以上の所有。(ディスプレイは3面/台になろ ・どういう機種を標準にすべきか。ど 電 子 化 技 CALS対 現 場 内 共 有
の程度の性能が必要か。何か業界 術 の 利 用 応 現 場 推 情 報 の 活 用
現場 パソコン・ うとしている。)
ガイド
奨ハード 研 究
環境 周辺機器 ・パソコンの性能は、汎用CAD、マルティメディアに対応した 標準があるのか。
モデルが標準機となる。
一 覧
所内サー
バ
(所内LA
N)
・事務所内の全パソコンは、LANにより接続されている。
・所内サーバ(標準機+外付けHD−写真、図面用各1台
無停電電源装置、バックアップ装置を備えたもの)、プリン
ター、定点カメラは共有。
・現場のLANはどう構築すればいい 現 場 ネ ッ ト
のか。現場のネットワーク整備で作 ワ ー ク 構
業をどう変えようとするのか。
築の手引
き
インター
ネット
・イントラネットをどう活用すべきか。
具体的な業務に使えるソフトはある
のか。
・各自のパソコンはインターネットへ接続されている。
・インターネットへ接続する方法は。
・ISDNの接続環境が確保できなければならない。
ホームページに何か有用な情報は
ないか。
・発注者、施工管理者、協力業者(専門工事業者、資材納入 ・電子取引を有効に使うには何を準
業者等)
は、インターネット経由で所内サーバーへアクセスで 備すべきか。どういう資材購入に使
きる。
えるのか。取引の際には文書や伝
票を標準化する必要があるのか。
情報共有
サーバ
・外部(発注者、施工管理者、協力業者)とのデータ交換用
に、インターネットに接続したwebサーバを設置する。
・サーバは規模によって使い分ける必要がある。
イントラ
ネット
・各自は各々自社のイントラネットにも接続されている。
・電子メールではどこまでが限界な
のか。現場にサーバーが必要な理
由は何か。
JV現場
ネットワー
ク構築指
針
CALS導入
時の現場管
理業務の検
討
会
員
企
業
の
積算ソフトの
情
研 究
報
活動項目5
イ
「 C A D 利 用電技子 術
カの
タ研
ログ
究 ; C AンD 図 面 の 保
管・蓄積の研
の究
研」
究
フ
ラ
■ 図面を整理
すIる実た用め
e x 情官報
保
ED
化の I n d実
民、民
管 ・ 蓄 積 の し研く究み を 中 心 に 研 態
究 民文書の
調 標準化実
査 状調査
CAD応用技
術の研究
1- 2 活動項目の概要
企画 WG の提示する「現場達成イメージと土工協活動の対応」に基づき、以下の6項目を
図面情報標準化 WG(以下図面 WG)の活動項目とした。
活動項目1「CAD標準化の研究;STEP AP202 の研究」
活動項目2「CAD利用技術の研究;CAD 製図基準の検討」
活動項目3「CAD利用技術の研究;CAD 部品の標準化と活用」
活動項目4「CAD利用に必要な教育プログラムの開発と公開」
活動項目5「CAD利用技術の研究;CAD 図面の保管・蓄積の研究」
・図面を整理するための Index 情報、保管・蓄積のしくみを中心に研究
活動項目6「CAD応用技術の研究;図面の利活用技術の研究」
・CAD 図面を有効に利活用するための要素技術研究。作図業務の効率化と図
面品質の向上に寄与する技術としくみの研究
それぞれの活動項目のスケジュールを表-1.1.2 に示す。
3
活動項目
活動項目1
STEP
AP202
表-1.1.2 活動スケジュール(中期)
1999 年度
2000 年度
2001 年度
レベルアップ
勉強・調査
1 回/隔月
会員へ説
活動項目 2
製図基準
の検討
随時継続
活動項目 3
CAD 部品
短期
活動 6 と連携して課題・問題点を随時行う
フォローアップ
日経 BP DB 連携実証
短期
活動項目 4
CAD 教育本出版
教育プロ
初級編作成と公開
フォローアップ
グラム
レベルアップ
活動項目 5
保管・蓄積
文書WGと連携し研究を継続
XML の勉強
随時継続
活動項目 6
CAD 図面
の利活
用
・短期
・・・・
・レベルアップ ・・・・
・随時継続
・・・・
ツール調査、実証を通じてノウハウの蓄積
活動は随時継続
1999 年度末で終了予定
勉強会と調査を中心に活動
前年度の成果を基に引き続き活動内容を深める
1- 3活動概要
1999 年度は CAD に関する標準化活動が活発化した年度である。主な標準化の活動舞台は
CAD データ交換標準を開発するコンソーシアムと CAD 製図基準検討 WG である。いずれも
図面の電子化に欠くことのできない重要な要素であり、図面 WG から 6 名の委員が参加し、
利用者の立場から標準化活動を進めてきた。
1999 年度の前半は2つの標準化活動が中心であった。後半は CAD 教育機関を充実するため
の「CAD 教育プログラム仕様の作成と公開」。教育プログラムに沿った CAD 教育本の出版活
動などがあげられる。
主な成果は、CAD データ交換標準フォーマットに関する会員向け説明書の作成。CAD 教育
プログラムに基づく CAD 教育機関の確保。CAD 図面の利用・活用シーンの現状把握などで
ある。以下、活動の詳細について述べる。
4
2 C A D 標準化活動の現状
2- 1C A D データ交換標準開発コンソーシアム
2- 1- 1 概要
1998 年度までに CAD 図面の描き方については、建設省(総プロ)において「CAD 製図基
準(案)」が作成され、また日本道路公団でも「CAD による図面作成要領(暫定版)」の作成
が行われた。一方、CAD データを受発注者間で受け渡すための CAD データ交換フォーマッ
トについては残された課題となっていた。
そのため、国際標準である ISO10303(通称 STEP)に基づいた建設関係(2次元図面)の
CAD データ交換標準を開発するコンソーシアムをJACICが事務局にとなり 1999 年 4 月
に設立した(通称 SCADEC : Standard for the CAD Data Exchange of Construction
drawing)。
CADデータ交換標準開発コンソーシアムは、学識経験者、発注機関、建設コンサルタン
ト、ゼネコン、建設 CAD ソフトウェアベンダー、一般ソフトウェアベンダー等を対象にメン
バーを公募し 190 社(機関)以上の参画を得て、2000 年 8 月の完成を目指して図-2.1.1 に示
す組織で活動が開始された。
総会
STEP
小委員会
WG1:
AP202WG
WG2:
基盤ソフト開発WG
評議委員会
WG3:
共通トランスレータ開発WG
運営委員会
WG4:
CAD WG
土木
小委員会
WG5:
データ交換仕様標準化 WG
WG6:
実証実験WG
建築
小委員会
WG7:
データ交換仕様標準化 WG
WG8:
実証実験WG
図-2.1.1 SCADEC 組織図
このコンソーシアムでの開発予定成果物は以下の通りである。
受注者B
受注者A
CADソフト
DXF対応
市販CADソフト
STEP/AP202
トランスレータ
DXF-STEP/
AP202トランスレータ
DXFファイル
(特定バージョン)
共通ライブラリ
共通ライブラリ
電子データ交
換標準仕様書
トランスレータ
検証結果
STEP/AP202
ファイル検証用
ソフトウェア
STEP/AP202
ファイル
(電子納入形式)
公開
(海外を含む)
公共発注者
共通ライブラリ
STEP/AP202
ブラウザ
図-2.1.2 開発成果物とその関係
5
( :開発対象)
・交換標準としての SCADEC 規格
・共通ライブラリ
・AP202 ブラウザ(ビューワ)
・検証ソフトウェアおよびデータ
・DXF トランスレータ
2000 年 3 月現在の状況は、昨年 8 月 5 日の合同小委員会で開発仕様(レベル1,レベル2)
が承認された後、共通ライブラリ開発、AP202 ブラウザ、DXF トランスレータ、検証ソフト
および検証データが開発あるいは作成が開始された。なかでも、共通ライブラリが最も重要
な機能を担っており、1999 年 12 月に Ver1.0 が提供された後、他の開発物の開発に伴う実装
上の問題点や仕様の不明確な部分などの詰めを行いながらバージョンアップが行われてい
る。また、現在の SCADEC 仕様では取り扱えないラスター図および等高線の扱いに関する検
討も始められ、データ交換運用時のルールによって交換できるようにする方向で検討を進め、
WG1、WG5、WG7はレベル3,レベル4の検討を開始している。
コンソーシアムでは、共通ライブラリを実装するダイレクトトランスレータ開発会社向け
に実証実験への参加募集を2月に行ったところ3月末時点で24社の応募があり、各自社
CAD への対応を進めている。
実証実験を担当するWG6は、実証実験参加ダイレクトトランスレータ開発会社を含めた
サブワーキングを立ち上げ、実務データ実験計画を6月中旬頃までに作成し、引き続きブラ
ウザ、DXF トランスレータ、ダイレクトトランスレータ(共通ライブラリ)について順次実
験を行い8月には実験結果を纏める予定である。(表-2.1.1)
表-2.1.1 CAD データ交換標準開発工程表
年
月
工程名称
WG1.202
WG2.基盤ソフト
WG3.共通トランスレータ
WG4.CAD
WG5.土木_標準化
WG6.土木_実験
WG7.建築_標準化
WG8.建築_実験
1999
2000
5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7
8
要 件 定 義 単 体 テ ス ト統 合 テ ス ト 実 地 検 証 評 価
6
2- 1- 2J A C I C C A D データ交換標準の概要
(1). STEP/AP202 の概要
CAD データ交換のための国際標準としては IGES および STEP(Standard for the
Exchange of Product Model Data)が有名である。STEP は ISO 10303 として定義されてい
る。JIS では B3700 として定義されており、規格書は一部が日本語に翻訳されているが内容
は同じである。IGES が CAD 形状データの交換を目的としているのに対して、STEP ではそ
の名のように製品データ(形状だけでなく属性情報も含めたもの)を交換できる物である。
STEP 規格は「産業オートメーションシステム及びその統合−製品データの表現及び交換
−」という題がついており、扱う範囲が広いため分冊構成になっている。AP202 は「製品形
状と関連した製図」という題で特定の産業分野に特化しないの分冊の一つである。分冊の中
には他の分冊から参照されるものがあり、これらは Part という呼び方がされている。Part21
は最終的にデータ交換用のファイルの作り方に関する規格であり、Part101 や Part42 は図形
要素の表現に関する規格である。
AP202 の機能は2次元および3次元データモデルの 2 次元表示を行うもので、注記要素が
その対象とするモデル要素あるいは別の注記要素に関連付けられる機能を持っている。簡単
に言うと、例えばある線と、その長さを表す寸法表示が連携するもので、これが CAD 間で交
換できると、CAD の機能としてその線を延長すると寸法図形がそれに追随し、数値も変ると
か、寸法の数値を変更すると、その長さに図形の方も変化するような実装が可能となる。
また、アプリケーションプロトコルの中では実際の CAD が実装しやすいように適用範囲を
分けたコンフォーマンスクラス(CC)が定義されているものが多く、AP202 でも CC1∼CC10
の10のクラスがある。
(2). SCADEC の特徴
SCADEC は AP202 の CC2 をベースとして、国内の建設工事(土木・建築・設備)で用い
られる図面の交換に十分な部分だけを抜き出したサブセットを作るものである。
このプロジェクトでは、CAD ベンダーがトランスレータを作り易いように、また STEP フ
ァイルの入出力が速くなるようにレベル分けおよびフィーチャの導入を行っている。
(3). レベル分け
レベルを分けることにより以下の利点が生れる
・CAD ベンダーが段階的に対応できる
・高度な機能を必要としない交換場面ではレベルの低いデータの使用も可能になる
・規格開発そのものが段階的に行える。
SCADEC では次の4つのレベルを想定しており、今回のプロジェクトではレベル1および
2について開発を行う。
・レベル1:画面(紙)上で図面を表示し、再利用するために最低限必要なレベル
・レベル2:2次元 CAD 製図データとして最低限必要なレベル(寸法は寸法として認
識する)
・レベル3:STEP/AP202(CC2)の製図全体レベル(寸法と幾何要素が連動するなど)
・レベル4:STEP/AP202 にこだわらず、土木・建築で必要な情報構造を取り込むレベ
ル
(4). フィーチャの概要
STEP/AP202 のデータはきわめて難解であり、一般の CAD ベンダーが直接このファイルを
読み書きすることは得策でないため、図面の要素を構造化してその一つの単位ごとに入出力
できるように考えたものである。
例えば一本の直線でも AP202 のデータでは、点の定義、直線の方向と長さ、線種、線色、
線幅、注記属性、図面構造のどの部分に属するかなどを単独に記述し、読込みでは、ばらば
らに定義されたデータを記述番号に従って読み込まなければならない。これをトランスレー
7
タで簡単に取り扱うために直線フィーチャとして始点、終点、レイヤ番号、線色番号、線種
番号などのパラメータを一回の読/書きルーチンの呼び出しで行おうとするものである。ま
た、このフィーチャで扱うパラメータを AP202 ファイルにはコメントとして出力しておき、
コメント部のみを読むことで高速読込を実現しようとするものである。
図-2.1.3 に一本の直線における AP202 データとフィーチャコメントの例を示す。
●Part21記述イメージ
(*
#460 = line_feature
( ‘layer1’、 ’p r i m a r y v i e w、’ ’g r e e n ’、 ’continuous’、 ’0 . 1 5 ’、 ’10.0、 20.0’,’20.0,20.0’) … フィーチャ部
*) コメント
#10 = PRE_DEFINED_COLOUR('green'); #20 = PRE_DEFINED_CURVE_FONT('continuous');
#420 = DIRECTION('',(1.0,0.0));
#430 = VECTOR('',#420,10.0);
#440 = CARTESIAN_POINT('',(10.0,20.0));
#450 = LINE('',#440,#430);
#460 = TRIMMED_CURVE
('',#450,(PARAMETER_VALUE(0.)),(PARAMETER_VALUE(1.)),.T.,.PARAMETER.);
#470 = CURVE_STYLE('',#20,POSITIVE_LENGTH_MEASURE(0.15),#10);
#480 = PRESENTATION_STYLE_ASSIGNMENT((#470));
#490 = (ANNOTATION_CURVE_OCCURRENCE()ANNOTATION_OCCURRENCE()
DRAUGHTING_ANNOTATION_OCCURRENCE()GEOMETRIC_REPRESENTATION_ITEM()
REPRESENTATION_ITEM('')STYLED_ITEM((#480),#460));
図-2.1.3 AP202 データとフィーチャのデータの例
(5). 図面構造
前項で図面構造を分解した単位でフィーチャを作り、その単位で入出力を行うことを述べ
た。SCADEC では図面構造の分解を図-2.1.4、図-2.1.5 のように考えている。
2次元CADデータ
・分解方法 :フィーチャ
全要素は図面構造の上に乗る
・実現順 :レベル
・論理構造 :複合図形
作図部品
作図グループ
部分図
用紙
線分
2500
文字
寸法
図-2.1.4 図面構造の概要
8
すなわち、図面用紙の上には部分図を置くことができ、部品やグループを使うことができ
ることを示している。作図部品、作図グループ、部分図はいずれも AP202 では子図の扱いで
あるが以下の特性がある。
・作図部品:一度定義したものを何度も使用でき、拡大縮小、回転ができる
・作図グループ:定義したグループは一度だけ現れ、拡大縮小回転はできない
・部分図:定義した部分図は一度だけ現れ、X,Y 方向別に拡大縮小でき、回転も可能
( 1 ) 複 合 図 形 の 階 層 (レ ベ ル 2 )
部分図配置
用紙
……縮 尺 、 回 転
作図グループ配置
作図部品配置
…用 紙 座 標 系 の 要 素
要素
要素
要素
部分図定義
……….縮 尺/倍 率 /回 転 等 の 影 響 を 受 け な い
作図グループ配置
作図部品配置
…便 宜 上 モ デ ル 座 標 系 の 要 素
要素
要素
要素
作図グループ定義
作図グループ配置
作図部品配置
要素
要素
要素
作図部品定義
要素
:幾何/表記要素、構造化要素
要素
要素
要素
図-2.1.5 複合図形の階層(レベル2)
9
2- 2成果品の電子化検討委員会−C A D 製図基準検討W G
成果品の電子化検討委員会は、建設省の設計や工事における納品物の電子化を検討する委
員会であるが、その下部組織として CAD 製図基準検討 WG が JACIC を事務局として設置さ
れた。このWGは、昨年度まで CALS 総プロ・図面文書WGの外部評価を行うための委員会
として設けられた図面標準化委員会(事務局:国土開発技術研究センター)に代わって設け
られたものである。本 WG の検討事項を以下に、また、委員構成を表-2.2.1 に示す。
① CAD 製図基準の詳細内容の検討
② 実証フィールド実験マニュアルの検討
③ CAD 製図基準の現場への適用方法の検討
表-2.2.1CAD 製図基準検討 WG 名簿
(主査)
田中 成典
関西大学 総合情報学部
(委員)
緑川 和由
関東地方建設局 企画部 技術管理課
山下 真治
関東地方建設局 企画部 技術管理課
田中 雅次
中国地方建設局 企画部 技術管理課
清水 芳郎
中国地方建設局 企画部 技術管理課
塚本 政則
日本道路公団 総務部 情報システム室
中山 亮
(社)日本土木工業協会 CALS 検討特別委員会
川上 雅一
(社)建設コンサルタンツ協会情報部会 CALS/EC 委員会
(事務局)
光橋 尚司
建設省 土木研究所 材料施工部 施工研究室
吉村 洋司
(財)日本建設情報総合センター 建設 CALS/EC センター
國島 廣高
日本工営(株) 総合技術本部 情報システム部
山本 俊雄
(株)長大 企画本部情報推進室
土工協からは図面情報標準化検討 WG から参加し、施工者の立場から意見を提出するとと
もに、親委員会からの電子納品基準に関する意見照会に対しても意見を提出している。
会議は以下の日程で5回開催された。
第一回:平成11年 9月16日(木)
第二回:平成11年10月 6日(水)
第三回:平成11年12月10日(金)
第四回:平成12年 1月21日(金)
第五回:平成12年 2月29日(金)
(財)日本建設情報総合センター
同上
同上
同上
同上
検討は他の CAD 標準化活動、特に CAD データ交換標準開発コンソーシアムとの整合性を
保つことに留意しながら進められた。途中、CAD 製図基準(案)策定のための発注者および請
負者アンケート、同パブリックコメントの検討を行いながら進められた。
最終成果は、建設省より 3 月 30 日付けで発表され、資料等を下記 URL から入手できる。
http://www.pwri.go.jp/WhatNew/html/kikai3/calsrule.htm
10
2- 3土木情報システム委員会−土木C A D 小委員会
土木学会土木情報システム委員会の下部組織である土木 CAD 小委員会は、昨年度まで主と
して土木分野での CAD の使い方に関する「CAD 製図ガイド」作成についての活動を行って
いた。この活動が一段落したことを受けて、新たな活動として土木 CAD 製図基準の策定に取
り組むことになり、今年度はその準備期間として新委員会立ち上げの活動を行っている。
これは、従来の紙ベースの基準である「土木製図基準」の CAD 版を目指すもので、建設省
の CAD 製図基準(案)や、SCADEC 標準((1)参照)を包含する。より広い土木 CAD 製図に関
する項目を明らかにすること、および各種の機関で策定が進められている CAD 製図基準を包
括するものを作成することなどを目標としている。今年度は少数のコアメンバーにより準備
会として活動方針の検討を行うもので、本格活動は来年度からになる。
7月の準備会で活動骨子が確認された。確定しているコアメンバーは表-2.3.1 の通りであ
る。
表-2.3.1 新土木 CAD 小委員会コアメンバー
(委員長)
田中 成典
関西大学情報学部
(副小委員長)
光橋 尚司
建設省土木研究所材料施工部
(主査)
磯部 猛也
建設技術研究所
川上 雅一
大日本コンサルタント
宮永 克弘
横河技術情報
千葉 洋一郎
パシフィックコンサルタンツ
山崎 元也
日本道路公団
2000 年 3 月に土木学会ホームページを通じてメンバーの公募が行われ、4 月中にはメンバ
ーが確定する予定である。
小委員会には以下の2つの分科会を設けることが予定されており、各分科会の活動方針決
定のための会合がもたれている。
① 設計情報分科会
従来の小委員会活動で残された検討課題を研究する分科会。具体的にはプロダクトモデルに
関するもので、設計情報・製品情報に関する属性情報の調査検討を行うものである。
② 基準策定分科会
土木学会としての CAD 製図基準策定を目的としているが、単なる既存基準の横ならべでな
く、「あるべき姿」からのアプローチも行う。また、「製図」という見た目だけでなく、ある
程度の属性情報についても言及する予定である。
11
2- 4港湾C A L S 研究会−C A D - W G
(財)港湾空港建設技術サービスセンターは港湾 CALS 研究会を設置し、CALS に関する調
査と研究および CALS の推進を行っている。その中で港湾整備事業への CAD 適用を進めるた
めに CAD-WG を編成した。本 WG の検討事項を以下に、また、委員構成を表-2.4.1 に示す。
① CAD 図面作成要領(案)の検討
② 作成要領(案)に基づく実証実験要領の検討
表-2.4.1 港湾 CALS 研究会−CAD-WG
(主 査)
藤澤 泰雄
港湾技術コンサルタンツ協会
(委 員)
赤嶋 和弥
運輸省 港湾局 建設課
菊池 一志
運輸省 港湾局 技術課
吉田 行秀
運輸省 港湾技術研究所 情報センター計算室
新倉 彰
港湾技術コンサルタンツ協会
中山 亮
(社)日本埋立浚渫協会 CALS検討会
(事務局)
平原 昇
松田 修二
(財)港湾空港建設技術サービスセンター 研究第一部
(財)港湾空港建設技術サービスセンター 研究第一部
会議は下記日程で4回開催された。
第一回:平成11年 7月29日(木)
第二回:平成11年 9月13日(月)
第三回:平成11年10月22日(金)
第四回:平成11年11月10日(水)
(財)港湾空港建設技術サービスセンター
同上
同上
同上
港湾構造物の CAD 図面作成要領(案)は、他の CAD 標準化活動の成果、特に建設省の CAD
製図基準(案)と平仄がとられている。
12
3 活動概要
3- 1C A D データ交換標準(S T E P / S C A D E C )
1999 年 4 月から CAD データ交換標準開発コンソーシアムが活動を開始したが、図面標準化
WGでは、この情報を入手し、内容を CALS 検討部会会員に紹介することを本年度活動項目
としてあげた。主な活動としては、情報入手、施工者の立場からの標準作りへの提言と標準
の評価、土工協会員への情報提供である。具体的成果としては、CAD 交換標準について図面
を作成している一般技術者のためのQ&A集を作成した(添付資料××)。
3- 1- 1Q&A集作成の経緯
CAD データ交換標準開発コンソーシアムへは土工協が特別会員として参加している他、
CALS 検討部会会員企業の殆どが参加していることから、図面標準化WGではコンソーシアム
活動に積極的に参加し情報収集を行ってきた。当WGメンバーの参加状況を表-3.1.1 に示す。
表-3.1.1 メンバー参加状況
メンバー
参加組織
職位
川西 広師
土木小委員会
副小委員長
植松 健
土木実証実験WG
主査
楠 達夫
STEP WG
副主査
佐藤 郁
STEP WG
委員
小島 竜二
土木実証実験WG
委員
このコンソーシアムは取り扱う領域が CAD という専門領域であること、また、国際標準の
ため規格が英文で、しかも難解な STEP を扱っていることから、得られた情報を一般会員に
紹介するには入手資料を提供するだけでは困難であると思われた。そのため、図面を扱う一
般土木技術者にも何とか分かってもらえるようにするため、土木技術者が発するであろう質
問に答えるというQ&A形式で構成した解説書「Q&A でわかる CAD データ交換標準」を作
成することになった。
本年度の活動成果としてまとめているので、2000 年 3 月時点のできるだけ新しい情報をも
とに作成しているが、今後の開発状況では変更しなければならないことが発生することが予
想され、適当な時期をみて改訂していく予定である。
3- 1- 2Q&A集を読む上での留意点
(1). 実際利用した上での解説ではない
コンソーシアムの活動期間も 2/3 以上経過しているが、2000 年 3 月現在では各成果物とも
開発途上であること、実証交換実験も計画段階であるため、多くの項目が推定で書かなけれ
ばならなかった。したがって、実際に SCADEC フォーマットによるデータ交換を行ったとき
に、多少状況が異なる恐れがある。
(2). 交換フォーマット上の機能解説である
CAD 利用や作図方法に関する項目で「・・・・ができる」と書いてあっても、その機能が
CAD に実装されていなければ利用できないことを認識しておいて頂きたい。あるいは、交換
フォーマットでは使えても、CAD 製図基準で制限があれば実際には使用できないこともある。
また、レベル1、レベル2の 2 種類の実装があるので、CAD トランスレータのレベルにも注
意しておいていただきたい。逆に、交換フォーマット上はできなくても、CAD トランスレー
タの工夫によって可能となる機能もあるものと思われる。
13
3- 1- 3Q&A集質問項目
第 1 版では解説項目 49 項目で、CAD コンソーシアム関係の解説、規格そのものの解説、
CAD 利用に関する解説、作図方法に関する解説に分類している。以下に質問項目を示す。
【全般的事項】
Q.1 建設 CALS/EC での CAD データ交換の標準化状況や標準化の基本を教えて下さい
Q.2 STEP を詳しく勉強したいのですがいい参考書はありますか
【コンソーシアムについて】
Q.3 CAD 交換コンソーシアムの位置づけや組織を教えて下さい
Q.4 CAD 交換コンソーシアムでは何を開発するのですか?
Q.5 STEP/AP202 という規格があるのに建設 CALS 用の標準をあらためて開発する必要がある
のですか
Q.6 土木と建築の別に仕様を決める必要がありませんか
Q.7 建設省や日本道路公団の CAD 図面基準との関係はどうなっていますか
Q.8 コンソーシアムは 2000 年 8 月以降はどうなるのですか
【規格・開発物内容について】
Q.9 STEP とは何ですか
Q.10 AP202 とは何ですか
Q.11 SCADEC データモデルを簡単に教えて下さい
Q.12 SCADEC には交換のレベルがあるそうですが
Q.13 レベル1とレベル 2 の違いについて具体的に教えて下さい
Q.14 トランスレータの検証・認証や提供方法を教えて下さい
Q.15 共通ライブラリとはどんなものですか
Q.16 STEP ブラウザでは何ができますか
Q.17 共通トランスレータは何故 DXF だけなのですか
Q.18 開発成果が公開され誰でも利用できるというのは本当ですか
Q.19 開発された標準のメンテナンスはどうなるのですか
【CAD 利用に関して】
Q.20 CAD 図面の交換になぜ DXF ではなく STEP を使用するのですか
Q.21 CAD 図面交換に SCADEC 標準を使うとどんなメリットがありますか
Q.22 STEP ファイルによる交換はどんな場合に使用するのですか
Q.23 STEP は難しいと聞きましたが、利用者は詳しく知る必要があるのですか
Q.24 4つのレベルのうちどのレベルで納品してもよいのですか
Q.25 レベルの違う CAD 同士でのデータ交換は可能ですか
Q.26 海外からの STEP データの図面が読み込めますか
Q.27 本当に実業務でこれを使うことになるのですか
Q.28 今後 SCADEC 対応 CAD を使わないと設計業務や工事はできませんか
Q.29 土工協では AutoCAD を推奨していますが、影響がありますか
Q.30 利用者としてはどんな CAD ソフトを採用すればよいのですか
Q.31 JW_CAD を使っているのですが、この交換標準に対応できますか
Q.32 DXF 形式ファイルの入出力ができれば、どの CAD でも使用可能ですか
Q.33 DXF のバージョンが上がった場合にも対応できますか
Q.34 実際に SCADEC トランスレータを一般ユーザが入手できるのは何時ですか
【作図方法について】
Q.35 受注者側での作図方法にどんな影響がありますか
Q.36 SCADEC のデータから積算への連動は可能ですか
Q.37 ラスター図面を使うことができますか
Q.38 EXCEL の表を貼り付けることが可能ですか
Q.39 レイヤの交換はどうなっていますか
Q.40 一枚の図面に異なる尺度の図を入れることができますか
Q.41 道路縦断図のような縦横尺度の異なる図は書けますか
14
Q.42
Q.43
Q.44
Q.45
Q.46
Q.47
Q.48
Q.49
測地座標系のデータは使えますか
B系列の用紙は使えますか
特殊な線種は使えますか
線色はどうなっていますか
線幅が線色と独立に定義するようになっていますが、実現可能ですか
特殊な寸法(曲線に沿った寸法)は使えますか
ハッチングや塗りつぶしはどうなっていますか
日本語文字使用で問題はありませんか
3- 1- 4S C A D E C データ交換の実用性予測
利用者としては、この交換フォーマットが実用に耐えるかが最も気になると思われる。これ
については実際に使ってみないと何とも言えないというのが正直なところである。とは言え、
規格策定に参加した当事者として何らかの予想をたてる必要があると思われる。
SCADEC フォーマットの利害得失を簡単に列記すると以下のようになる。
・フォーマット定義が厳密であり、トランスレータの検証もできるため、従来の交換で
発生していたトラブルの多くが解決できそうである
・データファイルはテキスト形式であるため長期の保存にも有利である
・特定の CAD に拘束されない
・国際的に認められる
・データサイズ(ファイル)が大きくなる
・読み込みや書き込みに時間がかかる
・特定 CAD の便利な機能が失われる
これらのことを勘案すると、以下のように言える。
・電子納品用のフォーマットとしては使用できる
・日常の作図作業で頻繁に図面交換する際には効率が低下する懸念がある
・異なる CAD 間のデータ交換で、従来から不具合があるのが分かっているいる場合は
利用したほうがよい
15
3- 2C A D 部品の標準化と活用
本活動は 1997 年度から取組んでいる。1997 年度は各社の保有する CAD 部品を収集し分類
と作図体裁についての標準化研究を行った。1998 年度は収集した CAD 部品をインターネッ
ト上に公開し共有実験を行った。本年度は、昨年度の実績をふまえ、より広範囲な利用を促
進するため、新しい方式の検討を行った。
3- 2- 1現在の方法の問題点
CAD 部品はプロトタイプを土工協のサーバで公開している。現在の方法は全てのデータを
土工協のサーバ内におくため、
・サーバのディスク容量の圧迫
・部品のダウンロードによるインターネット接続回線の圧迫
が問題となり、1部品あたりのデータ容量を制限する必要があり、様々なニーズに対応する
ことが困難である。(図-3.2.1)
また、土工協サーバのセキュリティー確保のため、第3者が自由に CAD 部品の掲載や改変を
行うことができず、掲載はWGで行わなければならない。このため、今後もメンテナンスを
継続するためには、手間の増大、更新の遅れが指摘されている。
一方で、SCADEC の開発や電子納品の進行は進んでおり、今後、設計はもちろん作業所に
おいても CAD 利用が急速に拡大する方向にあり、省力化の決め手ともいえる CAD 部品のニ
ーズは拡大していくことと思われる。
そこで、本年度は上記の問題点を解決するための手法について検討を行った。
図-3.2.1 現在のしくみ
3- 2- 2C A D 部品データの分散化
現在の状況で負担がかかるのは、
・CAD 部品データの保存領域
・CAD 部品データを転送する通信回線
・CAD 部品データの更新作業
の3点である。CAD 部品データの分散化によって土工協サーバへの負担を軽減することが
できる。以下にその方策を示す。
16
(1). CAD 部品データの保存領域
CAD 部品データは現在、1部品 100kb 以内と制限を加えている。このデータ容量で作成で
きる部品は DWG ファイルのような高圧縮のファイル形式の場合でも相当簡略化する必要が
ある。たとえ1図面が 100kb であっても、平面、側面、正面、全体図の4つのファイルで 500kb
程度となる。
このファイルに閲覧用の dwf ファイルと html ファイルで約 100kb 必要なので、1部品あ
たり、600kb が必要となる。たとえば 5000 部品を掲載した場合、3GB の容量となる。さら
に、SCADEC フォーマットはテキストファイルであり、DWG の 10 倍程度のデータ容量が予
想されるため、SCADEC フォーマットによる CAD 部品データの掲載のためにも現状の方式
では限界となる。
そこで、URL リンクによって、部品データを部品提供者のサーバに保存することにより、
CAD 部品データの保存領域を減少させるができる。土工協に必要な領域は html ファイルの
保存領域だけとなり、1部品あたり 50kb 程度となる。
(2). CAD 部品データを転送する通信回線
インターネットの回線は無料のように思えるが、インターネットに接続する費用は、利用
者はもちろんサーバを設置する提供者も負担している。土工協の場合、128kbps の専用線を
契約して利用しており、CAD 部品のファイルもこの回線を共有している。
先程の 600kb の CAD 部品一式を利用者がダウンロードするためには、64kbps の ISDN 回
線を利用した場合でも約 100 秒(効率 70%で計算)必要である。土工協の回線は 128kbps で
あるが、2人が同時に利用すると1分 30 秒の間回線が占用されてしまうことになる。
現状では部品点数が少ないためにこのような状況はあまり見受けられないが、点数が増え
たり、SCADEC フォーマットによる CAD 部品データの掲載となると、土工協会員利用の妨
げとなる可能性がある。
こちらも(1)同様、部品データ提供者のサーバに CAD 部品データをおくことによって、
利用者は部品提供者のサーバより(土工協の回線を利用せずに)データを取得することにな
り、土工協の回線利用量は 600kb から html ファイルを取得するための 50kb(約 6 秒)程度
まで減少させることができる。
(3). CAD 部品データの更新作業
CAD 部品データの更新作業は現在WGで行っている。これは、
・CAD 部品データの内容,容量をチェックする
・土工協サーバへのセキュリティーを確保する
の2つの目的がある。
CAD 部品データを提供会社のサーバ内におくことにより、容量のチェック、セキュリティ
ーは各提供会社にまかせることが可能であり、提供会社としても常に最新データとしてメン
テナンス可能であるので、利便性も高い。
3- 2- 3C A D 部品データの分散と一覧性の確保
CAD 部品データを提供会社のサーバへ保管することは双方におおきなメリットがある。し
かし、CAD 部品データがインターネット上に分散して保管されると、部品ごとにサーバを探
さなければならず、別メーカの部品の一覧もできない。
つまり、この方法では、利用は部品によって掲載したサーバを変更する必要があるため、
「部
品データが集まっている」という現在の土工協サーバのメリットが失われてしまうことにな
る。このように、現在の利便性を確保するためには一覧性は必須の条件といってよい。
17
一覧性を確保するためには、土工協のサーバ上にすべての部品ごとの html ファイルを作成
しておくだけで良い。しかし、CAD 部品データを提供会社に分散化して更新頻度を向上させ
たとしても、土工協サーバ内の html ファイルを更新しなければ、その更新は反映されない。
もちろん、土工協のサーバ内の情報を提供会社が書き換える方法もあるが、こちらもセキュ
リティーの観点から困難である。
そこで、検索エンジン(Infoseek、Goo 等)が行っているように、部品データの内容から
作成したインデックスを1箇所設置することによって、利用者からは「ひとつのサイトに部
品がある」ように利用することができる。このインデックスを作成するデータの自動収集シ
ステムの活用が必要となる。
現在想定している利用手順は以下の通りである。(図-3.2.2)
1.個々のサーバに CAD 部品仕様ファイル(XML)、CAD 部品ファイルを作成、公開し、URL
を検索エンジンに登録する。
2.検索エンジンが定期的に巡回し、XML ファイルを取得し、インデックスデータベースを
作成する
3.利用者は検索エンジンで目的の部品を探し出し、【部品の表示】ボタンを押す。
4.検索エンジンは、部品掲載ページの URL と部品ファイルへのリンクを備えた部品のペー
ジを作成し、利用者へ送付する。
5.利用者には検索エンジンより部品ページが、個々の部品サーバより部品データが送信され
る。
図-3.2.2 CAD 部品サーバの分散化
18
3- 2- 4検討内容
現在、上記の手順を想定し、以下の 3 点の検討を行っている。
(1). XML 案の作成
分散化を実現するためには、検索エンジンと個々のサーバ間で情報交換が必要である。従
来の検索エンジンでは、拡張子が”html””htm”というテキストファイルを探し、このファイ
ル内の文字列から適当に検索語句を取得する方法を用いている。
しかし、部品の検索には、「能力」「大きさ」「メーカ」など様々な検索条件が必要となるた
め、現在の検索エンジンの方法では対応できない。検索エンジンに必要データを入力する方
法や、Yahoo が行っているように HTML 内に特殊な記述を行う方法もあるが、一般的ではな
い。
そこで、サーバ間通信に XML 言語を採用することによって、検索エンジンのインデックス
データベースへの入力や、利用者のニーズに合わせた表示、検索が可能となることから、CAD
部品に対応した XML 仕様の案の作成を行っている。
図-3.2.3 に IE5 での表示例を、図-3.2.4 に現在検討中の XML 案を示す。
図-3.2.3 XML 案の IE5 での表示例
19
<?xml version="1.0" encoding="shift_jis" ?>
<cadpart>
<partsname>部品名1</partsname>
<partsurl>部品ファイル名称1.html</partsurl>
<copyright>著作権1</copyright>
<partscategory>
<category>大分類1</category>
<category>中分類1</category>
<category> 小分類1</category>
</partscategory>
<partsmaker>
<makername> メーカー名1 </makername>
<productname>製品名1 </productname>
<productmodel>製品型番1</productmodel>
</partsmaker>
<partsprofile>
<profile>
<equipment>仕様名称1</equipment>
<unit>単位1</unit>
<number> 数量1</number>
</profile>
</partsprofile>
<partsfile>
<file>
<filetitle>ファイルタイトル</filetitle>
<filename>ファイル名</filename>
</file>
</partsfile>
</cadpart>
図-3.2.4 CAD 部品用XML案
(2). ホームページ作成ソフトの公開
サーバを分散化するためには、メーカ等で自社のホームページに CAD 部品のファイルと
XML ファイルを保存しておくだけでよい。しかし、ファイルだけを置いておくのでは視覚的
に内容がわからないため、メンテナンスの機会が失われる可能性がある。
そこで、メーカーのホームページに CAD 部品を公開することが必要となるが、CAD 部品
のホームページの作成は特殊なタグを必要とするため、一般には難しいとされている。
また、XML を検索エンジンのDB入力として利用するためには、共通の XML ファイルの
作成が必要であるが、こちらも一般的な技術ではないため困難が予想される。
20
図-3.2.5 CAD 部品ホームページ作成ソフトと作成例
そこで、土工協の CAD 部品ページ作成のために開発したソフトウエアを初心者でも扱える
ように改良し、同時に XML ファイルの出力機能を付加したものを公開した。(図-3.2.5)
(3). 外部機関との協力
③ 日経BP
日経BP社では、「DNA21」という建設資材の検索エンジンの展開を始めている。本年度に
入り、DNA21 は従来の「データベース入力による検索システム」から、「ホームページ巡回
による検索システム」へ移行している。(図-3.2.6)
21
新ヴァージョンの DNA21 では、検索結果で表示される『詳しい情報は各社 HP へ』ボ
タン でリンク設定されている各社のホームページに掲載されているテキスト 1000 文字ま
でが検索の対象となります。
また、そこから 200 文字のテキストを特徴欄に表示しています。つまり常に最新の情報 が
掲載されています。
新ヴァージョン完全対応データは、DNA21 から、各社 WEB 掲載製品まで検索できて、
しかも、製品掲載ページまでダイレクトにジャンプできるわけです。
新ヴァージョンに対応していない掲載データは、『詳しい情報は各社 HP へ』のリンク先 が
トップページになっているものが多く、トップページに掲載されているテキストが検索対
象となっています。
図-3.2.6 DNA21(日経 BP 社)の説明文
④
経済調査会
経済調査会では、電子調達WGと協力し、昨年度より CAD 部品も含めた電子カタログの検
討を行っている。本WGでは CAD 部品についての技術的な支援を行っている。
22
3- 3土木技術者向けCAD利用教育プログラム
3- 3- 1C A D 教育プログラムの仕様公開と応募結果
(1). 仕様公開
1998 年度からの継続活動である。1998 年度は導入教育を 12 回各地で開催し、その結果を
もって導入教育プログラムを開発した。1999 年度に入り、実務者を対象に初級教育を 2 回東
京で開催し、同様に初級プログラムを開発したのち、1999 年 9 月 9 日にホームページ上に公
開した。以下公開内容を記す。
公開資料
土木技術者向けCAD利用教育プログラム仕様の公開
CAD教育機関 殿
建設CALSの進展に伴い、CAD製図が設計者に限らず幅広く求められるようになって
きています。しかしながら、土木技術者向けのCAD講座を開設しているCAD教育機関は
少なく、CADを普及するためには多くの教育機関からの支援が必要と考えています。
そこで、CALS検討部会図面標準化WGでは、CAD教育機関の皆様に対し、土木向け
CAD利用教育プログラム仕様を開発しました。この仕様に沿って教育実証を行なったとこ
ろ大変好評でありました。
実践的な内容と例題を取り入れる事により、土木現場の皆様に対して理解し易い内容に仕
上っております。本主旨にご賛同のうえ、下記の仕様に沿った教育企画をご検討くださるよ
うお願い致します。
なお、教育場所については東京、大阪以外の各地方の拠点でもできることがのぞましいこ
とを追記しておきます。
1.導入教育プログラム仕様
・教育目的
現場の土木技術者が容易に受講できるような講習時間、値段を設定し、多くの土木技術者
にCADに慣れてもらう。それによりCAD利用の有用性を理解し、CAD導入に向けた動
機づけを図る。
・教育内容
簡単な構造図(ポンチ絵)の作図を体験する。
・受講対象者
CADの導入を検討している所長、主任クラス、CADとはどんなものか理解したい係員
など。(いずれも、word、Excel などが操作できる設計、技術、現場の土木技術者)
・講習時間
2 時間程度
23
表-3.3.1 導入教育プログラム仕様(ソフト:AutoCAD LT)
内容
説明
画面構成
画面操作
図面の移動、拡大、縮小
作図補助モード
Oスナップ、直交モード
1 基本操作
画層の理解
オブジェクトの選択・削除
Oスナップ
一時Oスナップ
線分
マウスによる(直交モード)躯体作
成
オフセット
基礎作成
ハッチング
躯体ハッチング
コンテントエクスプローラ 栗石ブロック挿入
2 L型擁壁の作成
移動・複写
栗石複写
寸法記入
躯体寸法作成
文字入力
表題欄作成(氏名記入)
印刷
・使用図面
図-3.3.1 L 型擁壁
2.初級教育プログラム仕様
・教育目的
初心者∼中級者までを対象にCADの基本的操作や、一般的な作図・修正コマンドを習得
して、CADを業務で利用できるようにする。
・教育内容
簡単な構造図や仮設図を作図する。
作図をとおして一般的なコマンドを練習する。
・受講対象者
24
業務の中でCADを使用する係員、主任など。(いずれも、word、Excel などが操作できる
設計、技術、現場の土木技術者)
・習得目標
CAD の基本的操作を習得し、簡単な構造図や仮設図を作図、修正ができる。
・講習時間
8 時間程度
表-3.3.2 初級教育プログラム仕様(ソフト:AutoCAD LT)
1 基本操作
内容
画面構成
画面操作
作図補助モード
画層の理解
オブジェクトの選
択・削除
Oスナップ
2 L型擁壁の作成
3 作成コマンド
4 修正コマンド
5 足場計画図の作成
説明
図面の移動、拡大、縮
小
Oスナップ、直交モード
一時Oスナップ
線分
マウスによる(
直交モー
ド
)
躯体作成
オフセット
基礎作成
ハッチング
躯体ハッチング
コンテントエクスプ 栗石ブロック挿入
ローラ
移動・複写
栗石複写
寸法記入
躯体寸法作成
線分
座標入力・相対座標入
力
円
ポリライン
Oスナップ
定常Oスナップ
回転
鏡像
配列複写
トリム・
延長
フィレット・
面取り
尺度変更・ストレッ
チ
オブジェクト編集
画層の作成
法面の作成
オフセット
法面の作成
線分
法面の作成
コンテントエクスプ 足場ブロック挿入
ローラ
文字入力
表題欄作成(氏名記入)
印刷
面積計算
掘削断面積
WORD・
EXCELへの
貼り付け
25
・使用図面
図-3.3.2 L 型擁壁
図-3.3.3 足場計画図
26
(2). 応募結果
1999 年 9 月 9 日から 2000 年 1 月末日までの 5 ヶ月間、土工協ホームページ上に仕様を公
開し、CAD 教育機関を募集した。
募集した結果、3 月末日までに 13 社からの問い合せがあり、教育内容の審査などをとおし
て最終的に 8 社の CAD 教育機関からの支援を受け、現在、開講に至っている。
以下、表 3-3-3 に応募結果を示す。
表 3-3-3 土木技術者向け「CAD利用教育プログラム仕様」の応募結果
会社名
ヒューマン
アカデミー
住所
会社概要
東京都新宿区
西新宿 6-6-2
新宿国際ビル 5 階
導入編
に協力
・コンピュータ利用システムの研究、
東京都渋谷区
開発、情報の提供及びコンサルティン
ヤマトシステム
代々木 2-1-1
グ業務
開発株式会社
新宿マインズタワー18 ・情報処理の受託、コンピュータシス
階
テムの運営管理及びこれに伴う業務
・ソフトウェアの開発及び売買業務
・設計コンサルタント業務(開発許認
㈱ コマツ設計事務
可・道路・下水道)
福岡県福岡市南区
所パソコン環境研
・パソコン運用コンサルタント、
横手 1 丁目 10-14
究室
・AutoCAD を主体とするパソコン教
室
・CAD の教育事業
・CAD による情報処理及び入力業務
・建築物の設計、施工、監理
東京都新宿区
㈱ CAD ネット
下落合 3-21-1
ワークサービス
Nk フジビル 4F
㈱ 大塚商会
東京都千代田区
三崎町 1-2-8
水道橋HSビル
財団法人 中央工学
東京都北区王子本町
校生涯学習センタ
1 丁目 26-17
ー
CAD ACADEMY
京都府京都市下京区
JPN ネットスクー
河原町五条上る西側
ル シ ス テ ム ジ ャ パ 西橋詰町 743
ン
シャリマー河原町 10F
日経 BP 社
東京都千代田区平河町
パソコンスクール
2-7-1
塩崎ビル 6F
事務局
応募
日時
・各種コンピュータおよび周辺機器の
販売・メンテナンス
・コンピュータ各種システム、ソフト
ウェアの開発・設計・販売
・各種 OA 機器の販売・メンテナンス
・パソコン・ワードプロセッサ、UNIX
など、各種スクールの実施ほか
初級編
に協力
9/20
11/18
12/21
・社会通信教育
・国家試験受験対策講座/技術講座
・生涯学習ビデオ講座
・AutoCAD オペレーターの育成
・AutoCAD スクール
・CAD 利用技術者1,2級試験対策
1/27
・CAD,VBA,Linux のシステム構築、
中小企業の経営者向け講座等
2/28
27
2/4
3- 3- 2C A D 教育本の出版活動
「土木技術者向けCAD教育に関する活動」の一環としてCAD教育本の出版活動を行ってい
る。これは教育機関によるCAD教育を側面から支援すると共に、これらの教育を受ける機会
の少ない現場の土木技術者などにCAD操作に慣れ親しんでもらうためのものである。
(1). 出版の目的
現在 CAD ソフトの解説書は数多く出版されており、CAD の普及には欠かせないものとなっ
ている。しかし、これらは建築や設備・機械に関するものが多く、土木技術者、特に施工者
向けに書かれた教本はほとんどないのが現状である。また、CAD 講座を開設している教育機
関は都市部に集中し、インフラ整備に携わる土木技術者が通える場所には少ない。このため、
土木技術者の多くは、他分野の CAD 入門書や解説書を使って独学で CAD をマスターしよう
と試みるが、これらは難解で取り付き難いため、途中で諦めてしまうことが多い。
そこで、機械や建物ではなく、土木技術者になじみの深い構造物(逆 T 型擁壁)を題材とし
た CAD 教育本を作成、出版することにより、少しでも多くの土木技術者が挫折せずに CAD
をマスターしてもらうことを願うと共に、現場業務の効率化の一助となることを期すもので
ある。
(2). CAD 教育本の概要
出版社:山海堂
価 格:¥2,800(予定)
仕 様:B5 版、CD-ROM 付き(AutoCAD LT 2000 体験版入り)、二色刷り
使用ソフト:AutoCAD LT 2000
執 筆:佐藤(戸田建設)、加藤(東洋建設)、伊藤、小島(淺沼組)村瀬(矢作建設工
業)、平尾、外川(新井組)
検証・広報:川西(清水建設)、植松(佐藤工業)、楠(ハザマ)、中山(東洋建設)
出版予定:2000 年 7 月初旬
入門書題名:所長から新入社員まで「これで大丈夫 AutoCAD LT 2000(入門編)」擁壁
を 1 日で描こう
(3). CAD 教育本の目次
1時間目 「準備工」
2時間目 「基本を学ぼう」
3時間目 「擁壁を描こう」
4時間目 「図面をもらって楽しよう」
5時間目 「図面作成の応用」
6時間目 「作成した図面を印刷しよう」
全体は、上記目次のように学校の授業一日のイメージで、基本の6時間にトピックスを含
む構成となっている。
各章は、B5板の見開き1ページを1項目とし、画面キャプチャと説明文で操作をわかりや
すく解説している。また、各ページの終わりには、そのページで重要な言葉についての説明
を<ポイント解説>として設けている。
最終的には、約150ページとなる予定である。
(4). CAD 教育本の内容
① 1時間目「準備工」
この章では、AutoCAD LT 2000 の起動、画面説明、図面の読み込みと保存等ソフトの基
本操作を習得する。
28
②
2時間目「基本を学ぼう」
この章では、まず画面上の長さや尺度についての概念を身につけ、実際に CAD で線をひ
いたり、色々な図形を描き、コマンドや図面を描くための基本操作を習得する。また、ここ
では、CAD の特徴である拡大縮小の習得や画層(レイヤ)についても解説している。
③ 3時間目「擁壁を描こう」
この章では、前の時間で学んだ操作を使って、土木構造物の「逆 T 型擁壁」
(図-3.3.1)を
実際に描く。ここでは、オフセットコマンドのような便利な機能の習得や、コンクリートの
断面(ハッチ)や基礎砕石の表示(ブロック図形)及び図面に欠かせない寸法線の記入方法
を習得する。
図-3.3.4 3時間目完成図
④
4時間目「図面をもらって楽しよう」
この章では、事前に作成された配筋図を利用して型枠計画図(図-3.3.2)を作成すること
により、図面のコピー、画層の新規作成、補助線とオフセットを使った線分入力、ブッロク
図挿入等、色々な機能を習得する。
29
図-3.3.5 4 時間目完成図
⑤
5時間目「図面作成の応用」
この章では、前の時間までに習得した機能を使って足場計画図を作成する。
また、この章では、地盤線と掘削線、埋め戻し線から、土量計算をするために必要な、単
位当り面積の算出例を紹介する。
図-3.3.6 5 時間目完成図
⑥
6時間目「作成した図面を印刷しよう」
この章では、AutoCAD を使う時にハードルとなる図面の印刷について、5時間目で作成
した図面を使って、印刷尺度、“ペン”の概念等、印刷の基本機能を学習し、色々な印刷方法
を習得する。
30
⑦
トピックス
Excel、Word への CAD データ貼り込み、Excel、Word から CAD へのデータ貼り込み、ま
た、他の CAD ソフトとのデータ交換についてや、インターネット HP からのデータ入手につ
いて解説する。
3- 4C A D 図面の利用・活用技術
本活動は以下の2点を目的として、1999 年度から始めた活動である。
① 「CAD 図面を有効に利活用するための要素技術研究」
② 「作図業務の効率化および図面品質の向上に寄与する技術と仕組みの研究」
今年度は、現状の設計から施工・竣工の各段階で図面を取り扱う作業を調査し、今後図面が
CAD 化された時における作業の変化を想定した。また、CAD 以外のソフトで CAD 図面の閲
覧や図面中に簡易作図を行うソフトの調査を行った。さらに、図面を取り扱うソフトの利用
例として、設計変更願いから承認までの手続きを、朱書きソフトを利用して電子メールによ
り行う手順を作成した。
3- 4- 1図面のC A D 化による作業の変化
現状の図面を取り扱う作業が CAD 化されたことにより、どのような変化が生じるかを、計
画段階、施工段階、竣工段階に区分し、現状と CAD 化後の作業内容を整理した。
表-3.4.1 作業シーン別現状と CAD 化後の比較
計画段階
作業シーン
CAD 化後
現状
設計図面の入手
原図を借用し, 複製作成後に返
却する.
電子ファイルとして MO や CD-ROM
にて入手する.
図面の保管
目的別に紙の複製を作成し保
管する.
コンピューターにて管理する. 各フ
ァイルにはフォルダー毎に保管する.
仮設図面の作成
第2原図をおこし, 青焼き図面
を通常使用する.
CAD で作成し、必要なときに紙へ出
力する.
現場平面図
の作成
平面図は平板測量で作成し , 外
注して図面化する.
測量データを CAD が取り込み,平面
図を自動作成する.
仮設図面の外注
鋼材リース業者が作成した土
留めの図面を紙図面として保
管する.
仮設図面が CAD 化され, 計算書も電
子ファイルにて納品される.
設計図面の確認
発注者へ出向き設計図面の確
認を紙図面で行う.
ビューワで表示したり, 紙 へ 出 力 し
て、打ち合わせを行う.
設計図面の
仮承認
設計図面を A3 版の図面集にし
て仮承認を受ける.
設計図面を電子ファイルにて提出し、
デジタル署名で仮承認を受ける.
設計図面の提出
A1版の用紙に出力して提出
する.
設計図面を電子ファイルにて提出す
る. 媒体は MO またはCD−ROM,
承認印はデジタル署名
31
実施段階
図面中に朱書きソフトで変更案を記
入し, 発注者へ電子メールで送付す
る。発注者は朱書きソフトで内容を確
認し,指示事項を記入し返送する。
設計図面の修正
設計図面から変更が生じた場
合には図面中の変更履歴欄を
追加する.
設計図面の変更願に修正後の図面フ
ァイルを添付する.承認はデジタル署
名にて行われる.
進捗報告
平面図などに進捗状況を書き
込み紙図面として提出する.
平面図等に進捗状況を彩色し電子フ
ァイルとして報告する.
立会検査
承認印が押された図面を基に
検査が行われる.
デジタル署名がされた図面を紙へ出
力し,この図面を基に検査が行われる.
竣工検査
同上
同上
竣工時
発注者への問い
合わせ
現地の状況と変更案をCAD
にて作成し紙図面を発注者へ
持参する.指示事項は, 図面中に
記入する.
3- 4- 2C A D 図面を取り扱うツール
CAD 図面を有効に利用するためのソフトを調査した。現在、市販または流通している CAD
以外のソフトで、図面の閲覧、印刷、簡易作図、朱書きの機能を持つものを調査した。
表-3.4.2 図面を取り扱うツール
ソフト名
機能、特徴
利用されるシーン
備考
ホームページ上の CAD(DW ホームページ上の CAD 図面
F)図面を閲覧する
を閲覧する.
InternetExplore,NetscapeNa
vigator に組み込むプラグイン
ソフト
フリーソフト
DWFファイル作成
に は 、 AutoCAD や
AutoCAD LT が必要
Autodesk 社製
CAD(DWG)図面の閲覧,印刷
設計図面や施工図の閲覧
フリーソフト
Autodesk 社製
Autodesk
View
CAD(DWG)
図
面
や
Word,Excel,Access フ ァ イ ル
等の閲覧,印刷,朱書き
設計図面や施工図の閲覧
図面中に注記を記入した作業
指示や問い合わせ
日本語版は無し
Autodesk 社製
MYRIAD
CAD(DWG)
図
面
や
Word,Excel フ ァ イ ル 等 の 閲
覧,印刷,朱書き
同上
AutoVue
同上
同上
AD-View
CAD 図面の閲覧,印刷,朱書き,
画像ファイルの表示
同上
Whip!
VoloView
Express
販売元:新日本製鐵
32
販売元:コダマコーポ
レーション
アドデザイン社製
3- 4- 3朱書きソフトの機能と利用例
(1). 朱書きソフトの機能
朱書きソフトとは、CAD 図面を表示させ印刷するビューワとしての機能と、CAD 図面に
文字・簡易図形(矩形、円、雲形)などを記入し、電子情報として保存する朱書き機能
を持つソフトである。また朱書きソフトには、CAD 以外のファイル表示や、2 つの CAD
図面を比較する機能を持つものなどもある。朱書きソフトを利用すると、図面中に手書
きで記入し FAX や郵送で送付していた情報が、電子情報として交換できるようになる。
(2). 朱書きソフトの機能評価
現在市販されている朱書きソフトの中から、「AutodeskView2.0(英語版)」(Autodesk) 、
「MYRIAD 4.1」(新日本製鐵)、「AD-View 2.0」(アドネット)に対して機能評価を行った。
ソフト名
AutodeskView2.0
MYRIAD 4.1
AD-View 2.0
表-3.4.3 朱書きソフトの評価結果(ビューワ機能)
CAD 図面の表示機能
ファイル形式
日本語表示
R12
R13
R14
DWF
R12
R13
R14
DWF
レイヤの表
示切り替え
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
×
×
○
×
○
○
×
○
○
×
○
○
×
×
○
○
○
判定基準: ○:対応 ×:未対応
表-3.4.3 朱書きソフトの評価結果(朱書き機能)
朱書き機能
作図機能
日本語入力
ソフト名
雲形
多角形
○
○
○
○
○
○
AutodeskView2.0
MYRIAD 4.1
AD-View 2.0
引き出
塗りつぶ
し線
し図形
○
○
△
○
○
△
テキスト
文字列枠
レイヤの切
替機能
×
○
○
○
○
○
○
○
○
判定基準 ○:対応 △:対応するが操作性に難あり ×:未対応
①
各プログラムの評価
[AutodeskView2.0]
CAD 図面の表示機能に関しては、すべてのファイル形式に対応しており、日本語の表示も
可能であった。朱書き機能では、テキスト入力で日本語表示が文字化けてしまった。追加機
能としては、図面中での距離計測や面積計算機能があり、CAD を使用せずに図面中の計測が
でき便利である。
このソフトは英語版であり日本語版の販売は予定していない。開発元の Autodesk では、
CAD データの表示と朱書き機能に限定した VoloView を開発中で、このソフトは日本語版の
販売を予定している。
[MYRIAD4.1]
33
CAD 図面の表示に関しては、すべてのファイル形式で日本語が正しく表示されなかった。朱
書き機能については、図形の作図、文字列の記入ともに特に問題はなかった。追加機能とし
て、CAD 図面をクリッピングしてワープロに貼り付ける機能があるが、貼り付け形式がビッ
トマップにしか対応していない。
[AD-View 2.0]
このソフトは、まだ開発途中の段階である印象であった。図面の表示、朱書き、両機能にお
いて操作性に問題があり改良を必要とする。
② まとめ
評価したすべてのソフトで日本語の表示に関する問題や、朱書きの操作性に関する問題があ
った。日本語の表示に関する問題は、AutoCAD が日本語の表示に Windows の標準フォント
以外のフォントを使用している点と、朱書きソフトが CAD 用に日本語フォントを別途用意し
なければならないことに原因がある。また、朱書きの操作性に関しては、現段階では各朱書
きソフトが発展途中にあるため、今後のソフト改良に期待したい。
本活動は来年度も、今年度評価を行ったソフトの改良版や、新規のソフトの評価を継続する
とともに、インターネット上のホームページで図面の閲覧や朱書きができるソフトについて
の評価も行う予定である。
(3). 朱書きソフトの利用例
図面の有効利用・活用の手段として、実際の現場における朱書きソフトの利用例を作成した。
橋梁下部工の工事現場における設計変更申請から承認までを想定した手順を作成した。
①
受注者側で朱書きソフトを利用して変更希望箇所を設計図面に記入し、コメントを挿入
する。
朱書きソフトで
朱書きソフトで
元図を開く
元図を開く
変
変更
更箇
箇所
所の
の作
作図
図
・コメント挿入
図-3.4.1 朱書きソフトで変更箇所の作図とコメントを挿入
34
②
朱書きデータをファイルに保存し、発注者へ電子メールで送付する。
受注者
朱書きソフトで
朱書きソフトで
元図を開く
元図を開く
発注者
変更箇所の作図
変更箇所の作図
・
・コ
コメ
メン
ント
ト挿
挿入
入
添付ファイル
(朱書きデータのみ)
朱書きデータを
朱書きデータを
保存
保存
メールにデータを
添 付 ・送 信
メール
図-3.4.2 電子メールによる送付
③
発注者は送付されたメールの内容を確認し、コメントを追加して受注者へ返信する
メールの
メールの
添付ファイルを開く
添付ファイルを開く
変
変更
更依
依頼
頼に
に対
対し
して
て
コメントを挿入
図-3.4.3 発注者による変更依頼の確認
変更が認められれば、受注者側では CAD を使って変更図を作成することになる。
以上のように、CAD データをもとに、朱書きソフトを活用することにより、図面を発注者
の事務所まで持参することなく、設計変更業務を行うことができ、時間を有効に利用できる
ようになる。
35
4 次年度の研究方向
2000 年度 CALS 検討部会アクションプログラム(案)によると、活動対象を明確にして実
施することが求められている。活動対象は、発注者、土工協会員会社、関連企業や協力会社
である。アクションプログラムの行動計画から図面 WG に関係する行動計画を抜き出すと以
下のとおりである。
1.発注者に対してやるべき事
・工事関係書類の電子化・標準化への意見交換、提案を行う(建設省)
・工事完成図書の電子納品における標準化の効果的な運用について(建設省)
・標準化の対象範囲について、項目についての選択(建設省)
・標準化の動向についての情報提供(発注者全体)
2.土工協会員企業に対してやるべき事
・実際の現場で発注者との対応事例を収集・紹介する。
・実際の現場で協力業者との間の活用事例を収集・紹介する。
・実際の現場で管理業務に適用し、運用している現場環境や処理システムあるいはサ
ーバ利用などの実例を収集、紹介する。
3.関連企業・協力会社に対してやるべき事
・CAD 図面に交換の実情と問題点の実情調査
以上の行動計画と昨年度の活動実績を踏まえ、3 項目を 2000 年度の主要活動に掲げる。
(1)CAD 製図基準(案)に基づいて作成された設計図面を、施工側で有効に利用するため
の研究。
1) CAD 製図基準(案)の評価、 CAD 製図基準(案)への反映
2) 同基準を踏まえた施工図面を作成するうえでの解説・標準類の整備
3) CAD を有効活用するためのルール、ノウハウ、留意点などの整備
4) 図面を整理するための Index 情報、保管・蓄積のしくみを中心に研究勉強
(2)CAD 利用環境の整備(底上げ教育)
1) CAD 利用プログラムの改善と教育機関フォロー
2) 利用ケースに応じた教育プログラム仕様の整備
(3)ASP 事業における CAD 図面交換技術の調査と検討
・ ASP 事業の CAD 図面交換技術調査
・ ASP 環境での CAD 利用シーンの実用化検討
以上
36
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