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リポ蛋白Lp(a)に学ぶ
リポ蛋白(a)に学ぶ 岐阜医療科学大学 安部 彰 2009.2.21 第19回生物試料分析科学会 大会長講演 名古屋国際会議場 2号館 1. Lp(a)との出会い 2 医療界の変遷 私の勤めた時代 1966 1960 70 80 90 2000 61国民皆保険制度 臨床検査技師制度と教育 59衛生検査技師 71臨床検査技師 60山口県医科大 80大阪大検査診断学講座 85岐阜大検査医学講座 臨床検査の自動化 65テクニコンAA 医療経済 73ロトケム 75日立705 81検査マルメ 98DRG(疾患別分類) /PPS(包括支払い方式) 03ISO15189 08特定健診・特定保健指導制度 3 2. Lp(a)とは 4 Lp(a)発見から研究の進展 1963 Berg Lp(a)の発見 年代 63-80 1972 Dahlen 冠動脈疾患 81-85 1974 Albers RID、RIA測定法 1982 Murai 脳梗塞 1984 Kawade 急性期蛋白 1987 Utermann 日本 世界 91-95 アイソフォーム(フェノタイプ) McLean アポ(a)DNAシーケンス 1988 Abe ELISA測定法 1992 Kraft 86-90 96-00 01-05 アイソフォーム(ジェノタイプ ) 06-08 2005 Tsimikas 酸化Lp(a) 0 200 400 600 論文数 PubMedから検索 800 5 プラスミノゲンとapo(a)の相同性 (McLean 1987, Koschinsky 2006) プラスミノゲン 末端ペプチド I 活性プロテアーゼ II III IV V クリングル apo(a) IV1 IV2 IV3 IV4 IV5 IV6 IV7 IV8 IV9 IV10 V n n=3~40 アイソフォーム 非活性プロテアーゼ WLBS(IV5ー8) SH(IV9) SLBS(IV10) WLBS:弱いリジン基結合域 SLBS:強いリジン基結合域 SH:apoB100とSS結合 6 Lp(a)構造 (Koschinsky, 2006) LDL K4(1-10) S K4-7-8: B100のLys残基と弱い結合 K4-9:B100と共有結合してLp(a)が生まれる K5: プラスミノ ゲン活性阻害、 酸化リン脂質と 結合 10 K5 K4-10:FibrinのLys残基と強い結合 7 7 電気泳動によるLp(a)のパターン (Extra pre-β lipoprotein) PAG 0.5%アガロース、ズダンブラック染色 Origin Origin CM CM VLDL Lp(a) LDL LDL Lp(a) VLDL HDL HDL 117 124 69 (前田 1980) 148 mg/dl 8 Lp(a)抗原精製と抗体作製 (川出、1983) プール血清10容に① 0.5%デキストラン硫酸+ 1mol/lCaCl2 混液1容を加えて ①全血清 ②LDL+VLDL沈殿 ・LDL+VLDL分画沈殿② ③1.065<d<1.120分画 Lp(a) CBB R250染色 ・沈殿物を1mo/lNaCl2 2容+ 0.2mol/lシュウ酸アンモウム1容に溶解 10,000g 10分遠心 ・上清を透析 Origin 超遠心1.063<d<1.120③ ・分画を透析 ・BioGel精製 抗原を家兎に免疫 抗Lp(a) ① ② ③ 9 3. Lp(a)の研究 10 ELISA法による Lp(a)測定の確立 POD標識抗体 CHM:N-(4-carbokycyclohexylmethyl) mareimide マイクロプレートELISA法 検出感度:0.04mg/dl 2,600倍希釈を血清20μl 第1抗体反応2時間 第2抗体反応1時間 (Abe, 1988) 11 11 血清Lp(a)のELISA法による測定 成人血清濃度 平均値 14.1 中央値 9.8mg/dl 臍帯血濃度 平均値 1.56 中央値 0.98mg/dl 新生児は1歳経過後成人値になる 12 Lp(a)は他の脂質と独立した存在である Lp(a)、総コレステロール、トリグリセリド、 アポ蛋白(AI, AII, B)の相関性と主成分分析した 13 Lp(a)血清濃度は民族差がある 血清Lp(a)濃度は遺伝により規定されている アフリカ黒人 チロル人 中国人 対数正規分布 0.1~100mg/dl 1414 血清濃度はapo(a)分子サイズに負相関する 白人 中国人 黒人 1515 4千万年前に進化した旧世界のサルと ヒトにのみapo(a)遺伝子は存在 新世界 Lp(a)はアスコルビン 酸合成能力のない 動物にある。 Lp(a)は組織修復の 役割をする 。 (Pauling, 1990) 旧世界 (Makino, 1989) 16 16 Lp(a)アイソフォーム測定法 (フェノタイプ) 還元剤:2メルカプトエタノール(2ME) 泳動:4%SDS-PAGE 転写:ニトロセルロース膜 検出:1次抗体抗 apo(a)抗体 2次抗体 金標識IgG抗体 (1998年改良) 17 アイソフォームとクリングル繰り返し数 Utermannの分類 クリングル数 apoB100より速い F 11~13 apoB100を基準 B 14~16 LMW LMW:low molecural weight 遅い S1 17~19 HMW:high molecural weight S2 20~22 S3 23~25 HMW S4 >26 アイソフォームマーカー(クリングル42のナンバー) アイソフォームマーカーのクリングル数(三和化学) 18 フェノタイプのクリングル数表示 フェノタイプとジェノタイプの比較 19 ジェノタイプ法の測定法 EDTA処理血液からリンパ球を採取 リンパ球を1%LMPアガロース・プラグにする プロテアーゼK、48hr 55℃ apo(a)DNAを制限酵素KpnIで断片化する パルスフィールド電気泳動 メンブランに転写 DIGラベル化DNAプローブとハイブリダイズ DIG発光法でDNAを検出 (DIG:digoxigenin) 20 パルスフィールド電気泳動 分子量の大きいDNA断片を泳動する。 電場を2方向に交替させてDNA断片をジ グザクに分子ふるい効果で分離する。 21 Lp(a)のジェノタイプ分析 ・KpnI制限酵素に よりDNAの断片が できる ・クリングル4の1個 は5.6kb ・クリングル4の繰り 返し数12~52個を 検出できる (クリングル42として340個) 22 22 Lp(a)の臨床的意義 デシジョンレベル >30mg/dl 動脈硬化(虚血性心疾患) 血栓症(脳血管障害) 診療報酬 3ケ月に1回 1993年250点 2008年120点 23 図:Mebio, 5(7),1988から引用 一瀬白帝:Brain Nerve, 2008 Lp(a)の動脈硬化 促進作用 抑制 内皮細胞 血小板 亢進 放出 aTGFβ←LTGFβ tPA PAI-1 プラスミン←プラスミノゲン 血小板 放出 PDGF 増殖抑制 ←Lp(a) PAI-1産生亢進 ↑ Lp(a) Plg活性抑制 平滑筋細胞 増殖 酸化Lp(a)→ Lp(a)→ 放出↓ IL-8産生亢進 IL-8 粥状動脈硬化巣 24 24 酸化LDL抗体とLp(a)の反応 酸化ホスホリルコリン 酸化フォスファチジルコリン MDA化LDL (MDA:マロンジアルデヒド) DLH3抗体 E06抗体 B100抗体 OxPL OxPL OxPL OxPL apo(a) apo(a) B100 B100 B100 MB47 (B100抗体) Tsimikas 2004 MDA B100抗体 協和メデックス 抗MDA 抗LDL抗体 積水メディカル 25 Lp(a)は酸化LDLと相関 (リン脂質抗体E06) ブルーニコ地方(イタリア)の研究 r=0.87 対象:1995年と2000年に40~79歳 男女について 頚動脈、大腿部 の動脈硬化性疾患1,990人を調査。 成績:OxPL/apoB比とLp(a)との 相関性r=0.87。 疾患群のOxPL/apo比は 0.087 以上と有意に高値o 結論:OxPL/apoBバイオマーカー は冠動脈疾患の診断と経過観察 に意義がある。 (Tsimikas 2004) 26 お世話になった研究者の方々に感謝いたします(敬称略) 岐阜大学 川出眞坂、野間昭夫、前田悟司、福井加代子、国立栄養研究所 板倉弘重、 順天堂大学 李 英俊、霊長類研究所 竹中 修、増子記念病院 利見和夫、栄研化学 浦田武義、 シノテスト 山田晋呉、インスブルグ大学 G.Utermann, H.G.Kraft, F.Kronenberg 、 岐阜県赤十字血液センター、千手堂病院、岐阜医療科学大学 2727 ご清聴ありがとうございました http://homepage2.nifty.com/abe-akira/ 28 29 クリングル繰り返しを認識しない モノクロナール抗体の開発 (Yamada,1999) T1~10 kringle 4 5' 1 2 2 3 4 5 6 7 8 kringle 5 protease 9 10 V P variable repeats 2B3 243F7 203E2 202A9 3' Lp(a)の血管新生抑制作用 血管新生(angiogenesis) 慢性炎症 創傷治癒 悪性腫瘍の進展 Lp(a)は心血管に影響するほ か抗血管新生作用がある Lp(a)はアンギオスタチン(クリ ングル3~4個のPlg断片、 38kDa)のファミリー (Lippi, 2007) 31