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第 1 回環境不動産普及促進検討委員会 議事要旨

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第 1 回環境不動産普及促進検討委員会 議事要旨
第 1 回環境不動産普及促進検討委員会
議事要旨
(平成 25 年 9 月 19 日 於:中央合同庁舎 2 号館 16 階国際会議室)
Ⅰ.話題提供の概要
1)「環境不動産情報の可視化・流通促進について」
〔三井住友信託銀行(株) 不動産コンサルティング部 環境不動産推進チーム長 伊藤雅人 氏〕
=ポイント=
〇環境不動産に関する国内外の動向
・環境不動産懇談会において、環境不動産は「環境性能が高く良好なマネジメントがなされている環
境価値が高い不動産」と定義された。ここで、
「環境価値が高い不動産」とは、経済価値を含めた概念
であり、経済価値が伴わないと民間セクターでは(環境不動産が)普及しようがない。加えて、我が
国では「環境性能」として省エネ、省 CO2、生物多様性への配慮の他に、BCP を意識すべきである。
・環境配慮の実施は、単に将来に対するリスク回避ではなく、新しい投資機会を拡大するオポチュニ
ティであるとして、(海外の金融機関等が)本腰、本気で取り組み始めている。
〇投資家・テナントが認識する課題
・環境不動産への投資を行う上で、投資家からは「情報の欠如」、
「経済的なパフォーマンスが十分で
はない」、
「投資対象となる商品の欠如」などの指摘がある。また、テナント入居に際しては、「(環境
不動産に関する)情報が少なく、
(環境不動産であることが)入居先の選定基準となりにくい」との指
摘がある。今後、環境不動産に関する情報の示し方は、環境不動産の流通促進を考える上での課題。
〇環境不動産関連情報に関する課題
・個別データは、ビルの設計値・実績値双方を併用する必要があるのではないか。環境性能指標が多
種多様で比較困難となっていないか。更に、計測単位やフォーマットも統一されておらず、このよう
な様々な課題について議論すべき。
・不動産の投資、賃借、改修等各局面に応じてどのようなデータが必要か整理しておく必要がある。
・環境不動産普及の課題として、①環境対応が不動産の評価に必ずしも結びついていない、②環境不
動産の選好・選別に向けて不動産に関する情報を積極的に活用できていない、ことが指摘できる。
2)「環境不動産普及に向けた GRESB 調査結果の示唆」
〔CSR デザイン環境投資顧問(株) 代表取締役社長 堀江隆一 氏〕
=ポイント=
〇GRESB 1 の調査結果
・2013 年調査は投資家等のメンバー数が 38(2012 年)から 51 に増加。LEED の開発・運用を行う
米国グリーンビルディング協会もパートナーとして参加。調査の参加者数はグローバルで 443 社
(2012 年)から 543 社、日本で 24 社(2012 年)から 29 社となった。J-REIT の参加者は 8 社(2012
年)から 14 社に増加、時価総額ベースでは J-REIT 全体の 41%(2013 年 7 月ベース)にあたる。
・グローバル全体で見ると「マネジメントと方針(MP)」のスコアが向上している。地域的には豪州、
1
Global Real Estate Sustainability Benchmark http://gresb.com/
1
次いで欧州の平均値が高く、アジアはやや低い位置にある。
〇環境不動産市場形成に当たっての重要なポイント
・欧州では、不動産(会社)評価へのサステナビリティ(環境・社会・ガバナンス(ESG))評価の統
合が始まっている。オランダの年金基金であるAPGなどでは、GRESBスコアを取得していないと投
そじょう
資委員会の俎上にのらない。
・グリーンビルディング認証についてみると、日本を含むアジアにおける CASBEE、LEED などの総
合的環境認証の普及度合いは欧米などと比較してそれほど見劣りしないものの、省エネ格付について
は、アジアはほとんど普及しておらず、水をあけられた状態。
・グリーンリースについても、既に公的機関や自治体が関与して雛型を策定して普及を図っている豪
州、欧州などと比べ、日本を含むアジアにおいては、いくつかの先進事例が見られるのみである。
・省エネルギー格付を含めた既存ビルの認証の普及、グリーンリースの浸透、双方ともに、エネルギ
ー・データの情報共有などテナント・オーナーの協力関係が非常に重要。既存ビルのストックに環境
不動産が普及すると、次第に不動産評価へ環境性能が反映し、そして最終的には不動産会社単位での
評価へのサステナビリティの統合に繋がると期待する。今回の検討委員会では、まさにこの始まりの
認証・格付の部分とグリーンリースを中心に議論させていただきたい。
3)「オーナー・テナント協働の環境対策推進に向けて」
【エナジーセーブ(株) 代表取締役 桝田雄三 氏】
=ポイント=
〇賃貸不動産の構造的問題
・賃貸ビルの場合、環境投資はビルオーナーが負担し、リターンは電力料金削減という形でそのほと
んどがテナントに還元される。ビルオーナーは環境投資のみ、テナントはリターンを享受という不公
平な構造となり、その結果、なかなか環境対策が進まない。
・不動産賃貸借契約の中でエネルギーコスト削減は優先順位が低い。また、グリーンリースの認識も
低く、しかも仕組が複雑で理解しづらい。更には、共益費増額をテナントに持ちかけると、賃料減額
の申出が懸念されるため、なかなかグリーンリースの話をしづらい。
〇グリーンリースの取組による解決策
・この解決策のひとつとして平成 24 年 4 月に(狭義の)グリーンリースを導入した。具体的には、
ビルオーナーからテナントに対してオーナーの費用負担で省エネ機器を導入。テナントは削減された
電気料金の範囲内で費用を一部負担。テナントは毎月の使用料という認識でこのフィーを継続して支
払い続け、退去時には原状回復義務を負わない契約とした。
・グリーンリースはオーナー・テナント双方にとってハードルが高いのではないか。過渡的位置づけ
の制度を設計、整備してはどうかという仮説に基づき、社内でグリーンレント(省エネ機器のレンタ
ル)についてフィージビリティスタディを行い、現在 3 件成立している。
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<ディスカッション>
〇官民ファンド
・私どもは現在、国土交通省と環境省の共管事業である耐震・環境不動産形成促進事業の基金設置法人
として活動を始めている。この事業は耐震化、あるいは環境不動産化しようとする事業主体に対して
出資、あるいは融資していこうという事業であり、今年の7月にファンドマネジャーの募集を行い、
具体的に事業を開始したところである。省エネ改修や環境改修を行う意欲が非常に高くなっている
方々が増えている一方、経済的な効果としてどれだけメリットが出てくるのかというところがなかな
か見えにくいという話が良く出てくる。
・世の中が「環境不動産とは何か」ということに非常に注目していると実感している。私どもの事業
を通して直接その物件、バリューアップに関してのサポート、金融面でのサポートにより、環境不動
産が不動産市場に十分に認識される市場形成に寄与することを目指したい。今回のワーキングの議論
の中でもレーティングであるとか、証券化手法の活用などに関しての議論に期待している。
〇ビルオーナー団体
・環境不動産の普及に向けたインセンティブとして、ここ2年連続、税制改正の際に、環境不動産と
認定されたビルを対象に事業所税を減免してもらえないかと要望している。これはビルオーナーに対
するインセンティブというよりは、テナントが事業所税を負担していることから、テナントが環境性
能に優れたビルを選考する際のインセンティブとして働くことを狙うものである。
・これに加えて環境不動産と認定された場合、地方・中小ビルのビルオーナーに対する固定資産税の
減免も要望している。このような税制改正の要望活動をしている中で環境不動産の認定時の基準(例
えば「CASBEE で S・A ランクを環境不動産とする」)について、確立されたラベリング制度がない
ために、要望先への説明に苦慮している。
〇座長
・シンガポールでは、BCA(Building Control Authority)が GBC(Green Building Council)と協力し
ながら建物のグリーンマーク制度を作っており、その普及率が非常に高い。その理由は、BCA のグリ
ーンマークを取るとオーナーは補助金等が得られ、その建物については明らかに経営上非常に有利と
なる。このようなインセンティブは環境認証普及において非常に効果がある。
〇信託銀行
・当社では 7-8 年前に NEDO の補助金をもらってオーナーとテナントが両方で LLP を作り、ESCO
を入れて省エネ、メリットを還元することでオーナー、テナント両方にメリットを持たせる形で初期
投資モデルというのを一応考え、それなりに形にした。そのときの知見も全て還元したい。
・グリーンリースによる省エネが CASBEE の評価を引き上げるなど、相互に関連させるストラクチ
ャーが望ましい。そのためにも、ワーキンググループ(WG)A・B 双方の連携は非常に重要。
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〇エネルギーコンサル会社
・最近、築 80 年のエンパイアステートビルが約 2,000 万ドルかけて改修された。年間約 440 万ドル
のコスト削減に繋がっている。テナントビルなのでこの利益はテナントに還元されるため、経済合理
性の問題が残る一方で、ビルオーナーは LEED を取得し、それまでエンプティーステートビルという
ふうに揶揄されて空室率 18%程度であったが、調査段階で空室率 11%、しかも全て引き合いがついて
いる。加えて、賃料もスクエアフィート当たり 26.5 ドルが 50 ドルに上昇した。全テナントの賃料単
価が一気に倍になるわけではないが、仮にそうなったとすると、4,000 万ドルの価値、省エネのリタ
ーンとして電力料金が削減される以外にもバリューが生まれたことになる。このような環境改修を通
じた好循環が日本でも実現できれば、より省エネ取組が加速されるのではないか。
〇ビルオーナー団体
・以前、当協会でも LLP 制度を活用した補助制度の提案をした。具体的な制度の中身としては、「オ
ーナーとテナントが LLP を作り、LED などの設備投資をした後のテナント電力料削減の還元につい
て、指定書式で締結がなされた場合に補助金が下りる」という形で、補助金とグリーンリースを連携
する仕組である。これを国の主導で行えば、行政の認定を得ることにより、オーナーとテナントの双
方が歩み寄ることになり、グリーンリースの阻害要因が払拭されるのではないのか、と提案した。
〇座長
・グリーンリースのリースとは不動産賃貸契約か。設備等々の所有権がテナント・オーナーいずれに
あるのか、更には所有権との関連で考えた場合に、例えば照明器具や小型の設備機器だと、電気会社
や照明会社のメーカーがリースをするとスキームは組みやすくなるのか、あるいは複雑になってしま
うのか。例えば、照明器具の所有権はリース会社に留保され、そこで便益が発生するとテナントとオ
ーナーで分与するといったような可能性はあり得るのか。
〇エネルギーコンサル会社
・十分あり得るが、残念ながら現状ではメーカー、金融機関もフルペイアウトを前提とした割賦販売
の一手法をレンタルと言っている。これは最低 5 年契約などとなり、長期にわたる債務を負う。それ
をメーカー、金融機関が省エネのオファー側でそのリスクを分散して負担する。期間限定で、途中キ
ャンセルされた場合、借り上げたものを 2 次利用していくという作業が発生するが、この部分のリス
クをオファー側が取るという仕組が必要。
〇座長
・不動産だけではなく、その不動産で使われている動産の取り扱いをどう投資の中で入れていくかが、
条件によっていろいろな可能性があり得るということを理解した。
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〇エネルギーコンサル会社
・グリーンリースにとどまらず、省エネを導入する際に定量化は極めて重要。導入する前にどれだけ
の費用・リターンとなるかを計算し、導入後に定量的に効果検証する。先ほどのグリーンリースの紹
介の中でも、成立するための要素として、①一定以上の投資効果が見込めること、②追加性の要素が
あること並びに、③その効果が定量的に検証できることが重要と述べた。
〇座長
・今日紹介された事例等を総括すると、ゆっくりではあるけれども、しかしながら確実に環境不動産
に関わる動きが我が国で起きつつあり、可能性も開けつつあると言える。今後、情報の開示、見える
化、流通、あるいはグリーンリースをはじめとした何らかの省エネアクションを起こしていくこと、
しかも、それが現実の経済社会の中で成立するようなビジネスモデルとして立ち上がっていくことが、
今日この進み始めた、動き始めた歯車がより確実に動き、スピードを上げていくために大変重要な課
題だと考える。ぜひ今後、2 回、3 回とワーキングを開いていただき、皆様でご検討いただきたい。
(以
5
上)
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