...

報告集 [PDFファイル/4.51MB]

by user

on
Category: Documents
6

views

Report

Comments

Transcript

報告集 [PDFファイル/4.51MB]
平成23年度
地域医療体験研修(冬期)
報 告 集
研修日
平成24年2月24日(金)~25日(土)
福島県会津保健福祉事務所
福島県南会津保健福祉事務所
目
次
1 実施要頄
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2 スケジュール
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3 柳津町国民健康保険診療所視察
3
・・・・・・・・・・・・・・・
4
・・・・・・・・・・・・・
5
・・・・・・・・・・・
6
・・・・・・・・・・・・
7
・・・・・・・・・・・
8
・・・・・・・・・・・・・・・・
9
5 郷土料理作り・餅つき体験
6 医療従事者・住民との意見交換
7 学生によるディスカッション
8 雪かたし体験、住民宅での懇談
10
体験談
11
視察先マップ
12
おわりに
2
・・・・・・・・・・・
4 福島県立宮下病院視察
9 野口英世記念館視察
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
17
1
実 施 要 頄
1
研修の目的
地域医療に関心を持つ医学生を対象に、地域医療の現状視察や地域住民との交流
などの場を提供し、過疎・中山間地域における地域医療や地域の現状について理解
を深めてもらうことを目的とする。
2
開催日
平成24年2月24日(金)~25日(土)〔1泊2日〕
3
対象者
地域医療に関心を持つ医学部学生
4
募集定員
15名程度
5 研修内容
(1)地域医療現場の視察
奥会津地域の診療現場を視察する。
〔視察予定先〕柳津町国民健康保険診療所(柳津町)、宮下病院(三島町)
(2)医療従事者との懇談
上記医療機関の医師等から、地域医療に対する考え方や体験談など生の声を聞
き、意見交換を行う。
(3)雪かたし体験及び地域住民との交流
地域住民宅に行って雪かたしを体験するともに、住民との交流を通し、地域の
実情について理解を深める。
(4)郷土料理体験
郷土料理作りや餅つきをして、地域住民と夕食会を行う。
(5)野口英世記念館見学
6
7
宿泊場所
森の校舎カタクリ(三島町)
※宿泊費は県負担
集合場所
JR 福島駅、または福島県立医科大学
1
2
スケジュール
月 日
行
程
場
柳津町国民健康保険診療所 視察
柳津町
福島県立宮下病院 視察
三島町
2月24 日
郷土料理作り、餅つき体験
(金)
所
三島町「森の校舎 カタクリ」
医療従事者・住民との意見交換
〃
学生によるディスカッション
〃
雪かたし体験
三島町西方地区
2月25日
住民宅での懇談
(土)
〃
野口英世記念館 見学
猪苗代町「野口英世記念館」
2
3
柳津町国民健康保険診療所 視察
柳津町国保診療所
平上 卙資 所長
【 日
【 場
【 目
時 】 2月24日(金) 11:00~12:00
所 】 柳津町国民健康保険診療所 (福島県河沼郡柳津町大字柳津字竜蔵庵乙 510 番地)
的 】 診療所の概要説明及び施設見学を通して、へき地診療所の持つ役割について知識を
深める。
【 所長講話概要 】
私の診療経験から、地域住民の基本的な医療要求は、「いざという時の安心」と「ぼけや寝たきり
にならず丈夫で長生きしたい」という二つに要約され、それには「住み慣れたところで」という願望
が込められていると思う。医師として、この住民の要求と願望に応える本当にやりがいのある素晴ら
しい場所が診療所だと思う。人〄の生活と人生を深く見つめ、学ぶことができる豊かな天地である。
地域の人〄と一緒になって健康づくり、街づくりに取り組める働きがいのあるところである。
3
4
福島県立宮下病院 視察
福島県立宮下病院
板橋 邦宏 院長
【
【
【
【
日 時 】 2月24日(金) 13:30~15:00
場 所 】 福島県立宮下病院 (福島県大沼郡三島町大字宮下字水尻 1150)
目 的 】 診療見学及び講義を通して、へき地医療拠点病院の持つ役割について知識を深める。
院長講話概要 】
福島県立宮下病院は、昭和44年に現在地に新築移転して以来、只見川流域の中核的医療機関
として、地域住民の健康に貢猬してきた。昭和 60 年に県議会及び病院審議会において宮下病院
廃止の方針が打ち出された。その折、県立会津病院との兼務ではあるが、第 10 代宮下病院長に
就任した。故・佐藤長雄三島町長の「医のないところに住はなし」の名言とともに「当院のよう
なへき地医療こそ、行政、県が行うべき政策医療である」と主張し続け、審議会での多くの同意
を得て、存続できる事になった。この間、支えてくれた職員、そして地域の方〄に感謝している。
4
5
郷土料理づくり、餅つき体験
【 日 時 】 2月24日(金) 15:15~17:30
【 場 所 】 森の校舎 カタクリ (福島県大沼郡三島町西方字上原 3580)
【 目 的 】 郷土料理作りや餅つきを体験し、地域住民と夕食会を行う。
【 メニュー 】
(1)こずゆ
こずゆは、会津地方の正月や祝い事などの冠婚葬祭で、必ず作られる伝統的かつポピ
ュラーな郷土料理である。食材は、内陸にある会津地方らしく乾物が中心である。
(2)餅つき
杵(きね)と臼(うす)で餅つきを体験した。また、石臼で大豆から「きな粉」を引
きも体験した。
5
6
医療従事者・住民との意見交換
三島町町民課
本名光子
主任保健技師
福島県立宮下病院
三島町町民課
福島県立医科大学
目黒 政寿
課長
大谷 晃司
准教授
会津保健福祉事務所
山口 靖明 所長
柳津町国保診療所
大野 竜一
事務長
福島県立宮下病院
昭和村国保診療所
板橋 邦宏 院長
今井 一男 所長
平上 卙資 所長
福島県立宮下病院
柏木 真人 医員
【 日 時 】 2月24日(金) 17:30~19:00
【 場 所 】 森の校舎 カタクリ
(福島県大沼郡三島町西方字上原 3580)
【 目 的 】 地域医療に従事する医師や地域で暮らす住民から、地域医療に対する考え方や
体験談などを聞き、意見交換を行い、地域医療についての見識を深める。
【 次 第 】 1 開 会
2 あいさつ
福島県会津保健福祉事務所長
山口 靖明
3 出席者紹介
4 意見交換
(1)研修1日目を終えた感想
(2)自由討論
① 医師を目指す学生の立場からの質問や意見(事前アンケートより)
② 地域医療に従事する医師の立場からの意見
③ 医療を受ける住民、地域を支える役場職員の立場からの意見
(3)まとめ
5 閉 会
6
7
学生によるディスカッション
福島県立医科大学
医療人育成・支援センター
大谷 晃司 准教授
【 日 時 】 2月24日(金) 20:00~21:30
【 場 所 】 森の校舎 カタクリ
(福島県大沼郡三島町西方字上原 3580)
【 目 的 】 提示するテーマについて、参加学生間でディスカッションを行い、地域医療に
ついての見識を深める。
【 次 第 】 1 開 会
2 ディスカッション
(座長:福島県立医科大学医療人育成・支援センター
大谷 晃司 准教授)
3 閉 会
7
8
雪かたし体験、住民宅での懇談
【 日
【 場
【 目
【 概
時 】 2月25日(土) 9:00~10:45
所 】 福島県大沼郡三島町西方地区
的 】 医学部学生が患者(住民)宅を訪問し、雪かたしを体験するともに、
住民との交流を通し、地域の実情について理解を深める。
要 】 医学部学生が1名ずつ三島町西方地区内の住民宅で「雪かたし」を体験し
ました。また、その後はその住民宅で、地域の実情などについて話を聞き
ました。
8
9
野口英世記念館 視察
【
【
【
【
時
所
的
要
日
場
目
概
】
】
】
】
2月25日(土) 13:00~14:00
野口英世記念館 (福島県耶麻郡猪苗代町大字三ツ和字前田 81)
猪苗代で生まれ、世界を駆け抜けた医学者、野口英世の軌跡を知る。
1928年(昭和3)5月21日、野口英世卙士が西アフリカで殉職したのち、東京
でも追悼会が行われ、その折りに出席した人〄により「野口英世卙士記念会」を
設立する話がまとまりました。記念会の最初の事業として、翌年に生家の保存と
二つの記念碑を建立、そして1938年(昭和13年)には、文部大臣より財団法
人の設立が許可され、その翌年の卙士の命日には念願の「野口英世記念館」が開
館しました。野口英世の生い立ちと医師としての生涯について見学しました。
9
10 参加者の体験談
〔体験談①〕
会津の人は、おもてなしの精神がすごくて、食べ切れないほどの食事を出してくださった
ことに驚きました。あったかくて、いいな、と思いました。どれもおいしかったです!
雪かたし体験では、雪の量がとても多くて、高齢の方がこれをかたすのはとても大変だと
感じました。空き家になってしまっている隣の家の雪までかたすこともあると聞き、負担が
大きいなと思いました。仕事がなくて、若い人が地域から出ていってしまうと聞き、雇用の
創出は重大な問題だと思いました。でも、人が少ないと仕事の場をたくさん作っても、うま
く回らなくて結局仕事の場がつぶれてしまって…ということもあるので、むやみに仕事をつ
くるわけにはいかないし、問題の解決は難しいなと思います。
診療所の先生方とお話させていただいたとき、「社会構造や患者さんのバックグラウンド
までみることのできる医師になってほしい」という言葉がありました。地域の方〄との関わ
りが密接な地域医療には特に必要なことだと思います。病院や診療所での自分の仕事だけで
はなく、地域が抱える問題についても行動できる医師になりたいです。
はじめは、「私は地域医療に携わりたい。だから総合医になりたい。」と安易に考えてい
ました。しかし、いろんな人の話を聞いたり、考えたりしているうち、「本当にそれでいい
のかな?単純に考えてないかな?」と思うようになりました。このことを先生に質問したと
ころ、「地域医療だから総合医、と考える必要はない。その地域で、自分ができることをす
ればいい。」という答えが返ってきました。もう少し柔軟な考えで、自分が将来どうしたい
のか、必要とされていることは何なのかを探っていきたいと思います。様〄な科に興味を持
って、勉強していきたいです。
とても楽しく研修させていただきました。勉学に対するモチベーション、地域医療に体す
るモチベーションが上がりました!!ありがとうございました。
〔体験談②〕
「もっとたくさん、見て、聞いて、感じたかった」というのが今回の研修の一番の感想で
す。病院や診療所の見学、地域の医療従事者や住民の方〄との意見交換など、どれも未消化
のままに、2日間があっという間でした。私は、自分自身や家族の経験から、地域医療の質
にはネガティブなイメージを持っていましたし、大学のゼミで地域医療の問題点を学んでい
たので、やはり医療はどうしても中央が優れていると考えています。それでも今回の研修に
参加したのは、現在地方大学で学んでいる以上、医療過疎地域で働くことになる可能性は低
くないと思ったこと、また中央が地域医療を理解しなくては、地域医療は成り立たないと考
えたからです。研修に参加してみて、やはり問題点や疑問が多く見いだされ、地域の方〄の
感覚は都市部の合理主義の中で育ってきた私には理解できないと思われることもたくさんあ
りました。しかし、それらをわからないままにしたくはないと私は思っています。その地域
に生きる方〄には、私には見えないものが見えているはずです。それを私にも見えるように
してほしい。今回のような研修、特に様〄な立場の方〄との意見交換は、そういった意見で
非常に有用だと思います。今後も地域医療についての知識を深めるとともに、研修を利用す
るなどしてその地域の実情を理解し、考えを深めていきたいです。
10
〔体験談③〕
大学での地域医療実習では大学病院とつながりの深い病院を回るのみで、医師1人で対応
している診療所などは視察できないが、今回は全国でも1、2を争う高齢化率の地域で、地
域住民の方〄を含めた医療の現状を直接知ることができた。参加して良かったと思う。
今後は南会津町や檜枝岐村など、会津若松から更に離れた地域での救急体制はどうなって
いるのかなどを知りたいと思う。
「地域医療」とは何なのかについては、わからないことが多い。「地域」に対する言葉は
何なのだろうか。地域とは本来その市町村などのレベルにおいてのareaを示すものだと
思うが、いわゆる「田舎」を口当たり良く表現して使われるように思う。だとしたら都市部
には「地域」が無いのだろうか。都市部ではコミュニティが形成されにくいことを示唆して
いるようにも思える。まるで都市部の医療がスタンダードのような言い方で地域医療と呼ば
れるが、その実態は地域に根ざし、医療従事者がより住民に身近にある医療形態の1つの形
であると今回の研修で感じた。むしろ都市部では失われつつある「地域」という1つのモデ
ルが、この「地域医療」によって示されていると思う。
〔体験談④〕
今回の地域医療体験研修で初めて私は福島に初めて来た。今回のような機会がなければ中
〄福島に来る機会はなかっただろう。研修前よりも地域医療を現実的に想像し、自分の将来
設計にも選択肢の一つとして考えられるようになった。地域医療をその土地でしようと思う
ときに知りたいことは、もちろんその土地の医療であるが、私は衣食住やその土地の人の人
柄も大事であるように思えた。今回の研修では、地域医療に関してはもちろん、住民や医師
と接する機会が多く設けられていたので、いろいろなことを知ることができた。
福島県立宮下病院の院長先生の言葉が印象的だったので紹介したい。「地域医療をするの
は幅広い範囲の医療を行うことになり大変ではないか」という質問に、先生は「医師になっ
たということは、みんな国家試験を受かるだけの力があるんだから大丈夫だよ。そんな専門
的なことを求められているわけじゃないんだから。それに、自分が専門の科に行くときにも
地域医療をした経験は役に立つよ。」というようなことを言っていた。それなりの覚悟はい
るが、躊躇するのではなく専門は関係なく、まず医師としてできることをやればいいという
ことだと理解した。この言葉は私にとって大変で自分にはできないだろうと少し諦めの気持
ちがあった地域医療への意識を変える一言になった。
11
〔体験談⑤〕
私は、生まれてからずっと福島県で生活してきましたので、地域医療の問題はよく耳にし
てきました。そこで実際の地域医療の現場はどのようになっているのか、地域の方〄はこの
問題に関してどのように思っているのかを私自身の目で見てみたいと思い、今回の研修に参
加させていただきました。
その中で感じたことは、医師が医療を行う上で地域に密着することの重要性でした。患者
さんはご年配の方が多く、「この先生は話を聞いてくれるからこの先生のいるときだけ来る」
という声や、「隣町の大きい病院に行くのには、時間がかかる上、診察時間も短く、聞きた
いことが聞けない」という声が聞かれました。つまり患者さんが先生とのつながりを重視し
ているようでした。
また、地域で働いている医師や地域住民の方〄の生のお話を聞けたことで、地域の問題点
を少しながら感じることができました。過疎の原因は働く場所が少ないことが原因であり、
そのために若い人が出ていってしまう、昔と違い農業が職として成り立たなくなっていると
いった話は、私自身考えさせられました。
今回学んだことは想像していたこともあれば、まったく知らなかったこともあり、非常に
考えさせられる内容でした。地域医療といっても病院ごとに実状は異なります。次の機会に
はもっと数多くの病院をまわり、それぞれの問題点を見てみたいと感じました。
今回の経験を、これから医療について学んでいく上で活かしていきたいと思いました。
〔体験談⑥〕
福島駅に降りたつと真っ白な雪が出迎えてくれました。初めて福島県に来て、日頃見慣れ
ない雪に歓迎されてとてもうれしかったので、駅の警備員さんに写真をお願いしました。最
初戸惑っていらっしゃったのですが、快く引き受けてくださり、これから向かう会津のこと
をいろいろ教えていただきました。とても親切にしていただいたので、さっそく福島県のこ
とが好きになりました。
駅前のバスロータリーで待っていると、ひときわ大きな笑顔で手を振っている人がいて、
すぐに福島県会津保健福祉事務所の職員さんであるとわかりました。そして、用意していた
だいたバスに乗り、奥会津へと向かいました。バスでは参加者の自己紹介が行われ、県外の
参加者が多いことにびっくりしました。私も大阪府出身で現在は群馬大学に在籍している学
生なので、少しホッとしました。
最初の視察先は、とてもこぢんまりとした佇まいの「柳津町国保診療所」でした。ここは
医師1人、看護師2人、事務職員1人という「最小単位の医療機関」という雰囲気でした。
なので、見学者7人がひとつの部屋にそろって所長のお話を聞くのもままならないような、
小規模な診療所でした。私たちは診療所の患者さんとお話させていただきました。大勢で押
しかけたので、患者さんはとても戸惑っている感じでしたが、あいさつすると体調が悪いに
もかかわらず、とても素敵な笑顔で話しかけてくれました。私が診療所から見える只見川の
景色に感心していると、患者さんは柳津町の四季の美しさについていろいろ教えてくれまし
た。また、地元の農業や産業についても話を伺い、ちょっとした病気や怪我があってもこの
12
診療所があるからとても助かっている、診療所の平上先生にとても感謝しているというお話
を伺いました。
その後、平上先生の診察を見学しました。規模からは想像できないほど患者さんの数が多
く、平上先生はとても忙しそうでした。その中で、平上先生は患者さんと落ち着いて話を聞
き、診察を続けていました。特に私の印象に残ったのは、平上先生と患者さんの距離がとて
も近いことです。そして、机に広げられたカルテを患者さんと一緒に確認しながら、患者さ
んと一緒になって問診を進めている姿です。患者さんも平上先生を信頼して、気になること
やお薬の種類や量について丌必要な遠慮をせずにどんどん質問していました。人と人の温か
な交流のある地域医療のお手本を見たように感じました。
最後に、平上先生を囲んで学生と対談をしました。柳津町の町民のみなさんからとても慕
われている姿を拝見したので、平上先生が60代後半でこちらに来られたことを聞いてたい
へん驚きました。縁もゆかりもない柳津町で第二のライフワークを始めた理由が、柳津町の
自然と町民からの強い要望であったと伺い、そういうことがきっかけで地域医療に関わる医
師がいることを初めて知りました。また、農作業とスキーが趣味という平上先生のライフス
タイルがとてもかっこよく感じられました。
次に、病床数32床、医師数5名の僻地医療拠点病院である福島県立宮下病院を視察しま
した。こちらも拠点という名から想像できないほど、小規模の医療機関でした。大学病院や
都市の基幹病院で見慣れた医療資源はほとんどなく、ここで本当に診断や手術ができるのか
な?と思いました。
宮下病院の院長である板橋先生から病院の歴史を伺いました。その中で、宮下病院に廃院
の危機があったこと、そして、それに対して宮下院長らが治療実績と拠点病院としての利点
を福島県に示して廃院が撤回されたことを伺いました。心臓血管外科で培った技術があれば、
この限られた設備であっても大学病院に負けない治療実績を残せるという熱いお話に医師の
誇りを感じました。それを伺ってから改めて宮下病院での仕事を見ると、医療資源に頼らな
い「ほんものの医者の実力」が身につく修行の場所であることが少しわかりました。医師が
地域を育て地域に医師が育ててもらうという地域医療の神髄を垣間見たように思います。
研修初日の夜には、この日視察した医療機関で働く医師の方〄、福島県立医科大学の大谷
先生、福島県会津保健福祉事務所の山口所長を交えて、医療従事者と参加学生による地域医
療に関するディスカッションを行いました。ここでは、先輩医師が地域医療に携わるように
なったきっかけ、地域医療のやりがい、大学病院とは異なる地域医療で求められる医師の能
力、地域の人口や産業の長期的な変化に対して医療がどのように対応することができるのか、
などについていろんなお話を伺うことができました。この中で特に印象に残っているのは、
地域医療と医師の専門性、地域医療から受けるプレッシャーとプレジャーというふたつのお
話です。
同級生の中にはできるだけ早く地域にでて、全人的な医療や家庭医をやりたいという人が
少なくありません。しかし、どうすれば家庭医や総合医になれるのか、大学にいてもよくわ
かりません。また、今回視察した先生方はみな大学病院で専門を極めた人ばかりでした。そ
の先輩方が「どうすれば、地域で役立てていただける医師になることができるか」と尋ねら
れた時、どのようにお答えになるかとても興味を持ちました。それに対する答えを私なりに
まとめると「若い頃に専門を極めることは大切です。たしかに、僻地で働くと専門が直接活
13
かされる症例はほとんどない。しかし、専門を極めることで、専門外の症状に対する判断能
力や勘が養われるのは確かなこと。それに、専門を極める中で苦労や修羅場を経験していな
いと、いざという時に役に立たない。」ということでした。また、地域医療のやりがいにつ
いて、「患者さんは地域で働く医師のことを知りすぎているので、診療に対する責任とプレ
ッシャーが大きい。期待が大きい分だけ難しいが、逆に、それが大学病院のような顔のみえ
ない医療にないやりがいを感じる。このプレッシャーを楽しみ(プレジャー)に変えられる
人が地域医療に向いているのかもしれない。」という話に私はとても感激しました。
今回の研修で楽しみにしていたことのひとつは、奥会津との出会いです。それは医療関係
者だけでなく、奥会津に住む地域の人との出会いを期待していました。宿泊先の「森の校舎
カタクリ」は廃校になった小学校を利用した施設で、ここには三島町の方〄による手作りの
おもてなしがたくさん待っていました。「こづゆ」という会津の郷土料理、餅つき、石臼で
引くきな粉作り。とにかく、地元の方がとても親切で、「押しつけがましいぐらいのお節介」
がとてもうれしかったです。「お餅、おいしいからお代わりいっぱい食べて」と常にお勧め
してくれました。その姿に奥会津への愛着とそれを私たちに伝えたいというおもてなしの心
を強く感じました。
それは「雪かたし」体験でも同様でした。お世話になる住民の方とのあいさつもそこそこ
に、どんどん雪かきの手項を教えてくれる。丁寧で優しいのだけれどお構いなしの感じで、
着いていくのがやっとでした。でも、それが楽しかったです。そして、体験をパッと切り上
げて、温かな自宅へ招待していただきました。そして、素敵な奥様とかわいい猫を交えて、
三島町での暮らしについていろんな話をしました。ここでも奥さんにたいへん気を遣ってい
ただき、お茶や食べきれないほどのお菓子をごちそうになりました。話の最後に「ずっと気
になっていたのですが」と、歴史を感じさせるお住まいについて尋ねました。築100年以
上、昔は茅葺きに囲炉裏があったこと、ここに何世代も暮らしてきたことを伺い、三島町に
住む人の暮らしや文化に少しだけ触れたような気持ちがしました。
今回の研修で感じたことは、奥会津に住む人の「お節介なほどの親切心」と「清廉潔白と
して一筋通った物腰」です。それは地域住民の方だけでなく、今回お会いした医療関係者や
お世話になった県の職員の方も同じです。みな温かく、熱く、かっこいい。これは私が人と
して一番魅力的に感じることであり、そして、医師として目指す理想像でもあります。私も
医師として、専門的な裏付けのもとに「お節介なほど熱意をもって診療する」そんな人にな
りたいと思いました。また、奥会津の地域医療に関わる医療関係者の半生や仕事ぶりを拝見
して、「すぐではないかもしれないけど、いつかこういう場所で働いてみたい」というぼん
やりとしたライフプランを想像することができました。これは意外な収穫でした。
福島県でも感じたことですが、医学部に入って感じることは、自分ひとりの力で医師にな
るわけではないこと、地域の人に支えられて交流の中で成長することで医師になっていくと
いうことです。そこで重要なのは、知識や技術の良し悪しではなく、いかに「いい人、いい
町」に出会うかということだと思います。たった二日間だけでしたが、奥会津は私が医師に
なることを全力で応援してくれているように感じました。その気持ちに応えるためにも、医
学部での勉強を頑張ろうという意欲が湧きました。そして、人としてすぐれた医師になるこ
とで、奥会津への感謝を返そうと思いました。二日間、本当にありがとうございました。再
びお会いする日を楽しみにしていてください。
14
〔体験談⑦〕
自分の好きな町に自分も 1 人の住民として町の人〄と共に生きている実感を持ちながら、
自分と深くつながった人〄が病気になったり元気が無くなった時に医師として役に立てるよ
うな場所で将来働きたいと思う気持ちが大学で学ぶうちに強くなり、今回偶然ホームページ
で見つけた地域医療体験研修プログラムに参加させて頂きました。
シンプルですが、もっとも強く感じたのは、「実際に行って、自分の目で見てみないとわ
からないことはたくさんある!」ことでした。これまで自分がどういう医師になって何をや
りたいのかを考えてきて、その悩みが今回の実習で解消され、次の目標や夢が生まれました
が、それ以上に、これまで持っていなかった、逆に地域の人〄がどういった医療を求めてい
らっしゃるのかという視点で考えることの大切さを学ぶことができたのが大きかったです。
初めて今回医学生として地域の医療現場を見学させていただき、お話を伺ってみて、自分
の想像とのギャップに驚いてしまいました。住民の方〄が楽しくコミュニケーションの場と
なっていることに感動し、最少人数の常勤医、スタッフで地域の人〄に安心を不えている病
院を知り、その裏にある町を支える人〄の努力と町への愛を強く感じました。ますます進む
高齢化や過疎化をどう捉え、行政や医師が地域での医療のあり方を真剣に考えていくことが
大切だと感じ、僕もそうしなければいけないと思いました。
柳津町を始めとした福島県のたくさんの方〄の支えのおかげで、今回たくさんのことを勉
強させて頂くことができました、実習に同行下さった課の職員の方〄、宿泊先や実習先でお
世話になった住民の方〄がおっしゃっていた「この地に、この先もずっとお医者さんがいて
くれるとわかるだけでも安心なのです。」という言葉がとても心に強く残っています。僕自
身も住み慣れた町で安心して働きたい願望が強いので、住民の方〄のおっしゃることの意味
が少し分かったのだと思います。
卒業/研修後すぐにでも地域医療に携わることも考えてみたりしていたのですが、今回実
習先で先生方にお話を伺ううちに考え方も少しかわり、若い間に大学病院や関連病院でたく
さんの経験を積んで自分自身の長所を見つけ、一人で様〄な問題に対処することができ、困
った時も頼りにできる仲間を持った本当に強い一人前の医師に成長してから、地域の医療に
貢猬し、生涯医師として周りの人に喜んでもらえたら幸せだと思いました。
最後になりましたが、この度の実習プログラムに関わってくださった全ての方〄に、この
場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました。
15
11 視察先マップ
野口英世記念館
柳津町国保診療所
福島県立宮下病院
16
12 おわりに
医師及び医師を志す学生の皆さまへ
本県は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によ
り、甚大な被害を受けましたが、全国から多大なる御支援、
御協力をいただいた結果、復興に向けた息吹きが感じられ
るまでになりました。
特に、県民の命を守るため、多くの医師、看護師等医療
従事者の皆さまが、いち早く避難所での巡回診療や在宅訪
問診療など、医療・保健の両面で県民の安心・安全を支え
ていただき、大変心強く思うと同時に、医師確保を始めと
した更なる医療体制の整備が急務であり、より一層地域医
療を確保していくことの必要性を痛感しているところです。
全国的に医師不足が叫ばれている中、福島県では、産科や救急医療を担う医
師の処遇改善、女性医師支援センター設置等による女性医師のキャリア維持・
向上への支援、研修医の受入体制の整備、福島県立医科大学医学部入学定員の
増員や医学生に対する修学資金貸与制度の拡充など、様々な取組みを展開して
いるところです。
日本を代表する医聖、野口英世博士が生まれ育った福島県。復興までには、
時間が必要となるかもしれませんが、
「がんばろう ふくしま!」を合言葉に、
県民と一丸となって、復興に向けて全力で取り組んでまいります。
皆さまには是非とも、福島県の地域医療の復興にお力添えくださることを、
心より願っております。
(福島県保健福祉部地域医療課ホームページより転載)
地域医療体験研修(冬期)報告集
平成24年3月27日 発行
福島県 会津保健福祉事務所
福島県 南会津保健福祉事務所
総務企画部 総務企画課
電話番号 0242-29―5506
F A X 0242―29―5509
[email protected]
17
Fly UP