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HP ProLiantサーバー Gen8 +Windows Server 2012 ファイルサーバー
HP ProLiant サーバー Gen8 +Windows Server 2012 ファイルサーバーベンチマーク検証 結果報告書 2013 年 8 月作成 1 1)本ベンチマークテストの目的 本ベンチマークテストは、ファイルサーバーを最新のHP ProLiantサーバー Gen8(以 降、Gen8) とWindows Server 2012の組み合わせに更新した場合の性能向上を確認 する目的で実施しました。比較対象のハードウェアとして、HP ProLiant DL380 G5(以 降、G5)を用意しました。ハードウェアの構成は、導入時期を加味して、ハードディスク の容量や台数、メモリ容量が異なっています。 検証は、ファイルサーバー用のOSとしてGen8ではWindows Server 2012、G5では Windows Server 2003 R2(32ビット版)を使用しました。物理マシン上でOSとファイル共 有サービスを動作させ、ベンチマークを行いました。 2)テスト結果の要約 Gen8はG5と比較して、ファイルサーバーとしての性能が向上していることが確認でき ました。 ・ ファイルの転送では、Gen8はG5に比べてそれぞれ、ディスク読み込み速度は2倍 以上高速となり、転送所要時間は半分以下に短縮されることが確認できました。ハ ードディスクの台数比率以上にGen8の方が高速となっています。 ・ CPU負荷は、G5がファイルサイズ512KBと10MBを比較してCPU負荷が3.5%か ら8.2%と2倍以上上昇しているのに対して、Gen8の負荷は1.3%から1.5%とほとん ど上昇していません。Gen8とWindows Server 2012を組み合わせたファイルサー バーのCPU負荷は非常に低いことが確認できました。理由としてはネットワークイン ターフェースのオフロード機能や、Windows Server 2012の最適化などが考えられま す。 2 3)ベンチマーク詳細 Gen8、G5、それぞれのサーバーにファイルサーバー環境を構築し、ファイル共有を 作成しました。共有内にサイズが40KB、512KB、1MB、10MBのファイルを、それぞ れ合計20GBずつ作成しました。ただし、Windows Server 2003で40KBのファイル を大量に作成した際にパフォーマンスが大幅に劣化したため、40KBのみ5万ファイル 毎にフォルダを分割しています。 サイズ毎に、ファイルをランダムに16GB分コピーするVBスクリプトをロードジェネレー タ上で実行し、ファイルの転送所要時間を測定しました。 ファイルサーバー上では、パフォーマンスモニタを使用して、ディスク読み込み速度、 ディスクキュー長、ネットワーク転送速度、CPU使用率を測定しました。 512KBファイル、1MBファイル、10MBファイルを対象にそれぞれ5回ずつ実行し、転 送所要時間およびディスク読み込み速度などの平均値を算出しました。 ベンチマーク環境構成 HP ProLiant DL380p Gen8 サーバー CPU:Intel Xeon E5-2630(2.3GHz/6Core 12Thread) x 1 メモリ:16GB(4GB PC3-10600 DDR3 REG ECC x 4) HDD:SAS 10krpm 300GB x 4(RAID 1+0) OS:Windows Server 2012 Standard(64ビット版) HP ProLiant DL380 G5 サーバー CPU:Intel Xeon E5450(2.0GHz/4Core) x 2 メモリ:4GB(2GB PC2-8500 DDR2 x 2) HDD:SAS 10krpm 72GB x 2(RAID 1) OS:Windows Server 2003 R2 SP2 Standard(32ビット版) ロードジェネレータ HP ProLiant BL460c G7 CPU:Intel Xeon E5506(2.13GHz/4Core) x 1 メモリ:32GB(16GB PC3-10600 DDR3 REG ECC x 2) ※そのうち20GBをRAMディスクとして使用 3 HDD:SAS 10krpm 146GB x 2(RAID 1) OS:Windows Server 2012 Standard(64ビット版) ネットワーク環境 検証対象のファイルサーバーとロードジェネレータの間は1Gbpsのイーサネットで接続 しました。ファイル共有で使用しているSMBプロトコルのバージョンは以下の通りです。 Windows Server 2012 SMB 3.0 Windows Server 2003 R2 SP2 SMB 1.0 図:ベンチマーク環境構成図 4 ベンチマークの実行 ロードジェネレータでファイルコピーVBSを実行して、転送所要時間を計測しました。 ファイルサーバーのパフォーマンスモニタで以下のカウンタの値を測定しました。 表:測定したパフォーマンスカウンタ \Physicaldisk\Disk Read Bytes/sec ディスク読み込み速度 \PhysicalDisk¥Current Disk Queue Length ディスクキュー長 \NetworkInterface\Bytes Sent/sec ネットワーク転送速度 \Processor(Total)\Processor Time CPU使用率 5 4)ベンチマーク結果 ベンチマーク結果は以下の様になりました。 表:所要転送時間(秒) DL380 G5 DL380 Gen8 +Windows Server 2003 R2 +Windows Server 2012 性能比 40K 10735 3780 35.2% 512K 1257 480 38.2% 1M 812 364 44.8% 10M 422 178 42.2% 12000& 10735& 10000& 8000& 6000& 4000& 3780& 1257& 2000& 480& 812& 364& 422& 178& 0& 40K& 512K& G5+Win2003& 1M& 10M& Gen8+Win2012& グラフ:所要転送時間 G5 は全体的に、Gen8 に比べて約 2 倍から 3 倍の時間がかかっています。 ファイルサイズが大きくなるとファイル処理数が少なくなるため、両者の差が縮まってい く傾向を読み取ることができます。 6 表:ディスク読み込み速度(MB/秒) DL380 G5 DL380 Gen8 +Windows Server 2003 R2 +Windows Server 2012 性能比 40K 1.7 4.2 253% 512K 13.9 33.4 240% 1M 21.1 43.4 206% 10M 39.9 93.4 234% 93.4$ 100$ 80$ 60$ 43.4$ 33.4$ 40$ 20$ 39.9$ 21.1$ 13.9$ 1.7$ 4.2$ 0$ 40K$ 512K$ G5+Win2003$ 1M$ 10M$ Gen8+Win2012$ グラフ:ディスク読み込み速度 ファイルサーバーとしての性能はハードディスクの本数と、バッファキャッシュの容量が 影響します。 G5のハードディスクが2本に対して、Gen8は4本搭載しているので、その分ハードディ スクのI/O競合の可能性が低くなります。 また、G5は搭載しているメモリ容量が少ないため、メモリ上のバッファキャッシュに乗り 切らないファイルはハードディスクから読み込む必要があります。Gen8は標準搭載メ モリ量も大幅に増えているため、バッファキャッシュが有効に働き、ハードディスクから の読み込み量が少なくなっていることから、最大で2.4倍の性能差となっています。 7 表:ディスクキュー長 DL380 G5 DL380 Gen8 +Windows Server 2003 R2 +Windows Server 2012 性能比 40K 1.6 2.0 124% 512K 7.6 3.5 46% 1M 8.2 3.3 40% 9 4.2 47% 10M 10$ 9$ 7.6$ 8$ 9$ 8.2$ 7$ 6$ 5$ 4$ 3$ 2$ 4.2$ 3.5$ 1.6$ 3.3$ 2$ 1$ 0$ 40K$ 512K$ 1M$ G5+Win2003$ 10M$ Gen8+Win2012$ グラフ:ディスクキュー長 G5はバッファキャッシュに乗りきらないファイルをハードディスクから読み込まなければ ならないため、ディスクI/O待ちの状態を示すディスクキュー長の値が大きくなる傾向 が読み取れます。 Gen8はディスクI/O待ちが少ないため、ディスクキュー長の値が小さく、さらにファイル の読み込みや書き込みを行える余裕があることが分かります。 40KBのみGen8の方が値が大きくなっていますが、むしろG5の方が読み込み処理が 行えていないと考えられます。 8 表:ネットワーク転送速度(MB/秒) DL380 G5 DL380 Gen8 +Windows Server 2003 R2 +Windows Server 2012 性能比 40K 1.7 4.8 282% 512K 15.0 37.3 248% 1M 22.2 45.1 203% 10M 42.4 100.6 238% 120$ 100.6$$ 100$ 80$ 60$ 37.3$$ 40$ 20$ 45.1$$ 42.4$$ 22.2$$ 15.0$$ 1.7$ 4.8$ 0$ 40K$ 512K$ G5+Win2003$ 1M$ 10M$ Gen8+Win2012$ グラフ:ネットワーク転送速度 ディスクI/O待ちが少ない分、Gen8の方が沢山のファイルをクライアントに対して転送 することができています。ファイルサイズが10MBになると、ネットワーク帯域の限界に 近い転送速度となっています。 9 表:CPU 使用率(%) DL380 G5 DL380 Gen8 +Windows Server 2003 R2 +Windows Server 2012 性能比 40K 1.1 1.0 91.0% 512K 3.5 1.1 30.8% 1M 4.9 1.2 24.2% 10M 8.2 1.5 18.0% 9# 8# 7# 6# 5# 4# 3# 2# 1# 0# 8.2# 4.9# 3.5# 1.1# 1# 40K# 1.2# 1.1# 512K# 1M# G5+Win2003# 1.5# 10M# Gen8+Win2012# グラフ:CPU使用率(%) 全体的にGen8の方がCPU負荷が低くなっています。 G5のCPU使用率が高くなる原因として、ネットワーク転送が増えるにつれてネットワー クインターフェースの処理が増えたことなどが考えられます。 Gen8は、ネットワーク処理をネットワークインターフェースのハードウェアに任せるオフ ロード機能や、Windows Server 2012のネットワーク処理の最適化などがCPU使用率を 抑える効果を発揮していると推測されます。 10 5)ベンチマークテスト結果の評価 ベンチマークの結果、Gen8はG5と比較してファイルサーバーとしての性能が向上し ていることが確認できました。性能向上の理由としては、標準で搭載されているメモリ 容量が増加したこと、Windows Server 2012の内部処理が最適化されたことなどが 考えられます。 Gen8のG5に対するハードウェア面での優位性として、ハードディスクやメモリの性能、 容量のアップが挙げられます。ファイルサーバーとしての利用では、ハードディスクや メモリの単価が下がり、大量に搭載できるようになったことが性能アップにつながってい ることがベンチマーク結果から分かります。 Gen8ではハードディスクの読み込み速度の高速化やメモリのバッファキャッシュの効 果により、ディスクキュー長の値が低く抑えられているため、ハードディスクに対してさら に沢山のファイルI/Oを行う余裕があります。ユーザの増加などにも十分対応できるで しょう。 ネットワーク転送量が増えるに従って、G5ではCPU使用率が増加していますが、 Gen8ではほとんど変化が見られず、低いCPU使用率に抑えられています。ネットワー クインターフェースのオフロード機能や、Windows Server 2012のファイル処理やネ ットワーク処理が最適化されていることなどがCPU使用率が低い理由として考えられま す。 Gen8はCPU使用率やディスクI/Oが低く抑えられているので、Active Directoryやそ の他のサーバーを同じサーバー上で動作させることも可能でしょう。 Gen8にはまだまだ沢山のファイルサーバー処理が可能な余裕がありますが、ギガビッ トイーサネットの帯域がボトルネックとなる可能性があります。より高いファイルサーバー 性能を要求する場合には、10Gイーサネットの活用も検討するべきでしょう。 ファイルサーバーをHP ProLiant Gen8とWindows Server 2012に更新することは、 今後ファイルサイズが大きくなる傾向にある中で、快適なファイルサーバー環境を実現 する方法として適していると考えられます。 11