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レジュメ
『歴史とは何か』 WHAT IS HISTORY? BY E・H・Carr 法学部1年 下川真史 著者紹介 エドワード・ハレット・カー ( 1892年6月28日 1982年11月3日) ・歴史家、政治学者、外交官 ・ロシア革命史が専門 ・『危機の二十年』で国際関係にお けるリアリズムを説く 著作紹介 『歴史とは何か』 • 1961年1月~3月にかけてケンブリッジ大学で行われた講演が元 • 自らの「歴史哲学」について • 過去の歴史観についての反駁(アクトン等) • 「歴史家と事実の間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去の 尽きぬことを知らぬ対話」 • 歴史学の入門書 この読書会の目的 • 大学生活において最も重要なのは「考え方」を学ぶこと • 現実の社会を理解する「視点」を深める • 「歴史」に対する「接し方、心構え」を学ぶ • 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。」 目次 1、歴史の歴史 2、歴史を学ぶ心構え 3、歴史を学ぶ効用 1、歴史の歴史 1-(1) 歴史記述 • 歴史とは? 「人類社会の過去における変遷・興亡のありさま。また、その記録。」 広辞苑より ・今回は後者 ・歴史家という「観測者」を通してしか触れることができない 1ー(2) 歴史学の始まり ヘロドトス『歴史』 ・紀元前5世紀のアケメネス朝ペルシアと古代ギ リシア諸ポリス間の戦争(ペルシア戦争)が中心 ・詳細な記述 ・歴史に対する無関心(一過性の現象) ヘロドトス(紀元前485年頃 - 紀元前 420年頃) ・歴史学の父 ・世界最古の歴史書『歴史』を著す ・循環的歴史観 1-(3) 普遍史(アウグスティヌス) アウレリウス・アウグスティヌス(354年 11月13日 - 430年8月28日) ・古代世界最大のキリスト教思想家 ・『告白』『神の国』 二国史観 ・歴史とはなにか? ↓ 「地上の国」に「神の国」が実現する過程 ・歴史の背後に法則を見出す ・歴史が意味と目的を持つ 1-(4) 近代歴史学(ランケ) 近代歴史学 1、歴史的事実の個別的把握 2、実証主義に基づく資料批判 3、個別事実の一般化(世界史) ↓ 事実の客観的編纂 完全な歴史 • レオポルト・フォン・ランケ( 1795 年12月21日 - 1886年5月23日) • 近代歴史学の父 1-(5) マルクス主義的歴史学 唯物史観 • 生産様式に着目した体系的、堅牢な歴史 哲学 • 歴史の発展は経済の発展段階と同一、 最終的な「共産社会」の到来を予言 • 無茶苦茶な解釈も横行 カール・ハインリヒ・マルクス( 1818 年5月5日 - 1883年3月14日) 1-(6) 現代歴史学(クローチェ) 「すべての歴史は、現代 史である」 • 歴史家を通じてしか歴史は存在しない ↓ 歴史家が事実を選択するから ・歴史家の問題意識によって解釈される ↓ ベネデット・クローチェ(1866年2月 25日 - 1952年11月20日) ・イタリアの歴史哲学者 歴史家の恣意に左右される? 1-(7) 歴史とは何か 「歴史家と事実の間の相互作用の不断 の過程であり、現在と過去の尽きぬこと を知らぬ対話」 ↓ 「過去は過去のゆえに問題となるのでは なく、私たちが生きる現在にとっての意 味のゆえに問題になるのであり、他方、 現在というものの意味は、孤立した現在 においてではなく、過去との関係を通じ て明らかになる」 1-(8) カーの主張 • 1、「事実」と「解釈」の不断の相互作用のなかに歴史がある • 2、歴史家は歴史についての「方向感覚」をもたなければならない • 3、自らの、社会の「価値判断」に敏感でなければならない 2、歴史を学ぶ心構 え 2-(1) 歴史家による影響 • 歴史家の「問題意識」によって事実が選択される • 歴史家はその時代の「産物」である • その時代の社会環境の影響を受ける 2-(2) 歴史家を研究せよ • ex)モムゼン『ローマ史』 • 塩野『ローマ人の物語』 • におけるカエサルの扱い • ↓ • リーダーシップ不在の祖国の現状 を反映? • 2-(3) 創造的理解の必要性 • 現在と過去では「価値判断」の基準が異なる ↓ 乗り越えるには「心のふれあい」が必要 ex)アメリカの奴隷制度 2-(4) 歴史における偉人 • 「ある時代の偉人というのは、(中略)時 代の意思をその時代に向かって表現し、 これを実行できる人間のことである。彼 の行為は彼の時代の精髄であり本質で ある。彼はその時代を実現するものであ る。」 ↓ 卓越した重要性をもつ「社会現象」 アドルフ・ヒトラー( 1889年4月20 日 - 1945年4月30日) 2-(5) 歴史における道徳的判断 「歴史家は裁判官ではない」 • 個人に対して「道徳的」断罪を下すべきではない • 裁くのは制度・体制でなければならない • 歴史解釈は、常に価値判断を含む ↓ 超歴史的な基準で裁いてはならない 2-(6) 歴史における偶然 クレオパトラ7世フィロパトル(紀元前 69年 - 紀元前30年8月12日) • クレオパトラの鼻 • 合理的原因と偶然的原因を区別 • 一般化できるか否か 2-(7) 歴史における不測の結果 • 個々人の意図と社会全体で の結果が異なる Ex)宗教改革(予定説) 3、歴史を学ぶ意味 3-(1) 歴史における因果関係 • 「歴史の研究は原因の研究である。」 • 「歴史家というのは、「なぜ」と問い続けるもので、回答を得る 見込みがある限り、彼は休むことはできないのです。」 ↓ 問い続ければ何が得られるのか? どのように問えばよいのか? 3-(2) 一般化 特殊で個別的なものから一般的 で普遍なものを取り出す操作 • 「歴史家が本当に関心を持つのは、特殊的なものではなく、特殊的なも のの中にある一般的なもの」 • 「私たちは一般化を通して歴史から学ぼうとし、ある一組の事件から得 た教訓を他の一組の事件に適用しようとする。」 ex)戦争の原因 3-(3) 歴史の教訓とは 1、歴史が教えたり、予告していると自ら信じているものの影響をよく受 ける 2、歴史を誤用する場合がある 3、歴史をもっと選択して用いることが出来る ex)イラク戦争 3-(4) なぜ歴史を学ぶのか • 欧米の大学では何故多くの人間が 歴史を学ぶのか? ↓ 社会において求められる能力を養える から • 「証拠を評価する能力」 • 「異なる解釈を評価する能力」 • 「変革を把握する能力」 参考文献 • E・H・カー 清水幾太郎訳(1963)「歴史とは何か」 岩波新書 • アーネスト・メイ (2004) 「歴史の教訓」 岩波現代文庫 • 孫崎享 (2010) 「日本人のための戦略的思考入門」 祥伝社新書 • 堺屋太一 (2010) 「歴史の使い方」 日経ビジネス人文庫 ご清聴ありがとうございました