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2014A1-37 - 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
Hydrodynamic Instability of laser-produced high-energy-density plasmas under strong magnetic field 藤岡慎介、Zhe Zhang、松尾一輝,長友英夫,坂田匠平,小島完興, 佐野孝好,原由起子,坂和洋一,重森啓介 (大阪大学レーザーエネルギー学研究センター) 森田太智(九州大学総合理工) 蔵満康浩(国立中央大学) Philippe Nicolai, Jerome Breil(ボルドー大学 CELIA) Feilu Wang(中国国家天文台) 1. 研究背景 強磁場下におけるレーザー生成プラズマの流体運動の研究について,いくつかの重要な 実験結果が報告されている.ただし,これらの実験で用いられている磁場強度はせいぜい 10 T 程度であり,レーザー生成プラズマの特徴である「高エネルギー密度プラズマ」と磁 場が相互作用領域には踏み込めていない. 近年,キャパシター・コイル・ターゲットを用い,kJ クラスのレーザーでキロテスラレ ベルの磁場を生成することが可能になった.キロテスラ級の磁場を使うことで,高エネル ギー密度プラズマと強磁場の相互作用を調べられるようになった. 強磁場と高エネルギー密度科学の相互作用の応用として,二つがあげられる.一つは, Perkins らが発表した磁場アシストの中心点火レーザー核融合の研究,もう一つは宇宙物理 と関係した強磁場下でのプラズマ流体運動である. 2. 強磁場下での電子熱伝導 強磁場がプラズマの流体運動に与える影響は,大きく分けて二つに分類される.一つ は,プラズマ圧力と磁気圧の比であるベータ値が 1 を下回る場合であり,この場合,磁場 の圧力によって,プラズマの流体運動は変化する.もう一つは,熱伝導を担う電子の平均 自由行程とラーマ半径の比であるホール係数が 1 よりも大きい場合である.ホール係数が 1 よりも大きくなれば,磁場によって熱電子の軌道が大きく曲げられ,熱伝導は磁場無し の場合よりも大きく変わる.本研究では,ベータ値は 1 よりも十分大きく,磁気圧は直接 プラズマ運動に作用し無いが,ホール係数が 1 程度であり,磁力線に垂直な方向の熱伝導 係数が約半分になる. 図 1 に簡単な模式図を示した. 図 1 磁場中での電子 熱伝導の模式図.プラ ズマの膨脹方向に平 行な磁場を印加する ことで,ターゲット面 に平行な方向の電子 熱伝導が抑制される. 3. ヘルムホルツ型コイルを用いた空間的に均一な磁場発生 強磁場下でのプラズマ流体運動を研究するためには,空間的に均一な磁場を生成するこ とが望ましい.本研究では,二つのキャパシターコイルを並べて,空間的に均一な磁場を 作り出した.図 2 は実験レイアウトと,LADIA コードを用いた空間分布を示す.磁場強度 は,ファラデー回転法及び磁気プローブを使って測定し,ターゲット位置で 350 +/- 19 T であった. 図 2 二つのキャパシ ター・コイルターゲッ トを用いたヘルムホル ツ配置,及び磁場の空 間分布の計測 4. 強磁場下でのプラズマ流体運動 350 +/- 19 T の強磁場下においたプラ スチック薄膜に,1 x 1013 W/cm2 のレーザ ーを照射し,プラスチック薄膜の加速の 様子を計測した.レーザーの波長は 0.35 µm で,照射の均一性を高めるために,ラ ンダム位相板を挿入した.測定結果は 1 次元の流体シミュレーションコード (HELIOS-1D)と比較した. 左は磁場無しの状態での実験結果とシ ミュレーション結果である.互いに良く 一致していることが分かる.右が磁場を かけた場合の実験結果(黒点)と,実験 と同じレーザー強度で計算した磁場無し でのシミュレーション結果である.磁場 を加えることで,ターゲットの飛翔が早 くなっていることが分かる. 図 3 (左)磁場を印加しない場合のポリス チレン薄膜の加速軌跡, (右)磁場を印加した 場合の加速軌跡. 5. 2 次元の MHD シミュレーション との比較 2 次元の放射流体シミュレーションに,磁場による影響を考慮したシミュレーションを 行い,実験結果と比較した.シミュレーションから明らかになったことは,外部磁場を印 加することで,ターゲット表面に沿った方向の熱伝導が抑制され,アブレーションプラズ マの温度が上昇し,結果として飛翔速度が増加するという機構である.