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Ⅲ.交流活動事例から見た岐阜の現状
Ⅲ.交流活動事例から見た岐阜の現状 本章では、新しいライフスタイルによってもたらされる各需要を満たす交流活動例を分析・検討し、岐阜の現状を評価する。 Ⅲ 1.交流活動例 まず各交流需要に即した、モデルとなるような交流活動例を検証し、あわせて岐阜の事例を検討する。その際、各交流活動 はそれぞれ複数の需要を満たすものが多いため、特徴をより強く示していると考えられる需要分野の方に整理することとする。 例えば、 ・伝統文化・技能の理解と習得に関しては、自分が実際にその技能等を習得して作品を製作したり、発表したりする活動は“学 ぶ”に、伝統文化への理解の促進や普及活動に準じるものは“共感する”に分類 ・同様に体験施設を整備しているが、個人が積極的にものづくり・創造活動に参加できる要素が強いものを参加・体験型施設 に、体感的要素が強いものをミュージアムパーク/レジャーミュージアムに分類 している。 ・“安らぐ”は安心感のある生活というイメージで、質のよいエンターテインメント等で得られる癒しや安らぎ感と区別して いる。 なお各交流需要と対応する交流活動分野は、次ページ、図表 4 に示すとおりである。もちろん、これは主だった事例を抽出 したに過ぎず、これで全て網羅しているわけではない。 16 図表 4 交流活動分野一覧表 交流需要 ”学ぶ” 交流活動分野 生涯学習 社会人大学・大学院 伝統文化・技能の習得と継承 知的活動拠点化 【先端技術集積・起業】 【文化資産集積】 【賢人会議】 ”遊ぶ” テーマリゾート 複合商業施設 ミュージアムパーク/レジャーミュージアム イベント 祭り等を含む伝統文化 ”協働する” 世代間交流 ヤング・オールドの活用 テレワークセンター 交流需要 交流活動分野 ”共感する” ネットワーク構築(支援)活動 伝統文化・風土への理解促進活動 映画ロケ/自主制作映画の誘致活動 歴史的建造物 ”触れる” 参加・体験型施設 エコツーリズム ”安らぐ” まちづくり 福祉・介護 【介護付き住宅・グループハウス】 【生活支援ビジネス】 【介護保険関連】 【子育て支援】 環境保護 資料:MRI 作成 17 Ⅲ 1 1.“学ぶ” 交流需要“学ぶ”における交流活動例を、以下の通り集約して検討する。 (1)生涯学習 図表 5-1 にモデルとなる先進事例を、図表 5-2 に岐阜の事例をまとめた。 一人一人が自由に、自らテーマを選び、自分にあった手段・方法を探りながら、年齢を超えて生涯にわたり、必要なことを 必要なときに学ぶことを可能にするのが、いわゆる「生涯学習」である。 IT技術の発達により、通信教育・遠隔教育の可能性と領域は格段に広がった。自宅で、あるいは近所の公民館で、世界を 相手に学習することが可能となってきている。これからの熟年層や高齢者の知識欲は旺盛であり、官民挙げてこうした需要に 応える動きが活発化している。またヤング・オールドは時間・行動に自由がきくことから、宿泊型の学習プログラムが注目さ れている。海外留学にしても最近は定年退職した男性の関心が高まっているなど、従来学習期間とは見なされ得なかった時期 に、専門的な、あるいは趣味に重点を置いた学習を楽しむ動きが拡大している。 先進事例におけるエルダーホステルのような宿泊型学習プログラムは、岐阜においても取り組むとおもしろいと思われる。 その際、先進事例においてはアクティブなヤング・オールドを対象とするものが多いが、岐阜においては、自然の豊かさ、温 泉等の資源を活用し、多少の健康不安を抱える人も対象に含め、南飛騨国際健康保養地構想をベースに、健康増進を図りなが らの宿泊型学習プログラムを提供することが岐阜らしさを出す一つの方向であろう。 18 図表 5-1 生涯学習の事例(1) モデルとなる活動例 まなびねっと(文部省生涯学習局) http://www.manabinet.gr.jp/ 生涯教育に必要な情報を提供するシステムで、都道府県の生涯情報に関するHPへリンクしている。その他文部省関係機関の公開しているデータ ベースへのアクセス、大学の社会人入試や公開講座の検索等ができる。 エル・ネット「オープンカレッジ」:衛星回線を使った大学公開講座 http://www.opencol/gr/jp/ この公開講座は、文部省が生涯学習の機会を広げるモデル事業として教育情報衛星通信(el-Net)という新しい教育ネットワークを活用して実施す るもので、衛星通信で提供される大学講座を全国各地の公民館や図書館等で受講することができる。各回の講座のテキストは、郵送の他PDFファイ ルでダウンロードすることも可能。質問コーナーでは各講師に質問することもできる。岐阜県では岐阜大学と岐阜女子大学が講座を提供している。 緑区オンライン生涯学級(横浜市) http://www.monty.konan.yokohama.jp/midori/1998/sub3.htm HPを通じて情報提供を行うだけでなく、「国際化に向けた緑区の街づくり」等をテーマに1995年から2年間、日本で初めてのメーリングリストを 使用した区役所主催のオンライン生涯学級を設置。アドバイザーや運営委員を置き、メーリングリストを用いて自由に討論する構成。資料等も随時 添付。各種教材や報告書は、電子図書館を設置して随時ダウンロードすることが可能。オンラインだけでなく、開講式やセミナーではオフラインで で顔を合わせ、交流・親交を深められるシステムを採用。 京都市生涯学習推進課の取り組み http://www.city.kyoto.jp/shogaigaku/index.htm 京都市は1994年11月12日(初めての「京都生涯学習の日」)に、「京都市生涯学習まちづくり憲章」を制定。あらゆる学習資源が結びつく「まな びやコンビナート・京都」としての生涯学習推進計画の策定を進めている。中でも身近な学校で生涯学習を、という取り組みは下記の通りである。 ・学校コミュニティプラザ事業:概ね2中学校区を一つの生涯学習ゾーンとして設定し、地域の特色に応じた生涯学習に活用できる施設を、校舎・ 体育館の改築等の際に小・中学校内に整備して、市民に開かれた新しい学校づくりを促進し、ゾーン内では小学校区の枠を超えて市民の自発的な学 習活動を支援すると共に、地域コミュニティの再生と発展を図る取り組み。事業の推進にあたっては幅広く市民の意見を反映させるために、学識経 験者等で構成する「学校コミュニティプラザ事業推進懇談会」を設置。 ・学校ふれあいサロン事業:学校の教室1室を改修整備し、学区内に居住する子供から高齢者まであらゆる世代の市民が集い、学び合える身近な生 涯学習の場として広く開放するもの。2000年12月現在120教室のふれあいサロンが開設されている。 ・高等学校生涯学習講座:市立の高等学校が持つ専門的な知識・技術・設備を活用し、市民に身近な生涯学習のきっかけづくりとなる様々な講座を 開講。 ・生涯学習フェスティバル:1990年に京都で開催された第2回生涯学習フェスティバルで芽生えた生涯学習に対する機運の盛り上がりを受け、翌91 年より京都市生涯学習フェスティバル(地域単位)を実施。毎年行政区で1校をモデル校に指定し先導的な取り組みを行っていくと共に、全市74地 域で継続した取り組みが行われている。 資料:各種資料より MRI 作成 19 図表 5-1 生涯学習の事例(2) モデルとなる活動例 エルダーホステル(カナダを含む全米):宿泊型生涯学習プログラム http://www.elderhostel.org/ 55歳以上(どちらかが55歳以上であれば、配偶者は55歳未満でも参加可能)を対象とする学習プログラム。ユースホステル運動と北欧の国民高等学 校における生涯教育制度をヒントに、1975年米国のニューハンプシャー州で始まった。各地の教育機関等を会場に、泊まりがけ(通常日曜日の午後 から金曜日あるいは土曜日のお昼まで)で授業や親睦行事、バス見学を楽しむ。歴史、音楽、建築、法律、バードウォッチング等それぞれの地域の 特色を生かした講座がある。奨学金制度もある。カタログは全米の図書館に置かれており、電話注文も可。インターネットでの検索・資料請求もで きる。今週はこの州のこの場所でこの講座を、来週はあの州で、と各地のエルダーホステルの講座を渡り歩く、エルダーホステル・サーキットと呼 ばれる参加者もいる。 NPO法人エルダーホステル協会:上記の運動に賛同し、日本人を対象に講座を提供する民間の非営利団体 http://www.elder.or.jp/ 1986年3月にエルダー国際交流協会が、米国エルダーホステルの日本における提携団体として創立された。アメリカ人高齢者が日本各地を廻って歴 史・文化等を学ぶ「日本学講座」の開催を皮切りに、88年には50歳以上の日本人を対象にした「国内講座」「海外講座」が始まり、同年「エルダー ホステル協会」に改称。2000年12月には経済企画庁より特定非営利活動法人の認証を受け、法人を設立している。同協会の各種活動は「高齢者の教 養を深め視野を広げるために、国際的な生涯学習の場を提供し、定年後の豊かな人生を目指す生きがいづくりと国際理解を推進する」ことを目的と している。エルダーホステルのモットーは「学習と冒険」であり、シンプルな学習環境に身をおいて心の豊かさを求めるものである。同協会はエル ダーホステル講座事業の他に、講演会などのイベント事業、出版事業や調査研究事業を活発に行っている。 資料:各種資料より MRI 作成 20 図表 5-2 岐阜の生涯学習の事例 岐阜における活動例 岐阜県生涯学習センター http://cscns.csc.gifu.jp/shozo/center/ センターのホームページの「生涯学習情報」では、情報が「学習機会」「施設」「団体・グループ」「指導者」「視聴覚教材」「資格」「生涯学習 作品展」「お知らせ」の8つに分けて整理されている。特に「施設」「指導者」「視聴覚教材」は、利用者が生涯学習を自分達でコーディネートする のにも役立つ構成となっている。また「アンヨはじょうず」「私のメグちゃん」というコーナーもあり、生涯学習と呼ぶにふさわしい幅広い学習層 を想定している。子育て相談や生涯学習相談のコーナーもあり、双方向の交流が可能。 岐阜県総合教育センター 岐阜県総合教育センターは、学校や学年という従来の枠にとらわれないインターネット上の学習提供拠点「岐阜県学園」を、2001年度から3年間で 構築する方針を決めた。インターネットで学年の枠を超えた履修内容が配信されることから、不登校や飛び級を目指す子供に役立つことが期待され る。また、スポーツや音楽、実業界、国際交流など各分野で活躍している専門家が学校や地域に出向く派遣事業も計画されており、ユニークな「授 業」を提供する試みとして注目される。 国際ネットワーク大学構想 http://www.pref gifu.jp/consoritium/index.htm 近年高等教育に対するニーズは多様化し、最新の情報や技術を習得するためのリカレント教育や高度な知識や教養を修得するための生涯学習の 機会を拡充する必要性が高まっている。岐阜県では上記のニーズに的確に対応すると共に、国際的視野を備えた人材を養成することを通じて、 県民が豊かな社会生活を享受することができる機会を得られるよう、国際ネットワーク大学構想を推進している。同構想は「大学」としての特別な 施設、設備、教員を持たず、国内や海外の大学等との連携により多様な授業を提供し、かつ単位や学位が取得できる「バーチャル大学」創設を 目指すもので、将来に向けて段階的に実現を目指している。 関市教育委員会が英語塾開設 21世紀を担う国際人の育成を図ろうと、関市教育委員会は、学校外で小学生を対象に英会話を教える「英語塾」を平成13年度に開設する方針を 固めた。学校教育を補完する形で学習塾などの役割がクローズアップされているが、市教育委員会が独自で小学生を対象とした塾を設けるケースは 全国的にも珍しい。「日常英会話講座」と名付けられる「英語塾」は、市内の生涯学習館と各ふれあいセンターの5ヶ所に設置され、小学4年生か ら6年生を対象に、実際に塾で英語を教えている講師や英会話に堪能な市民、市内在住外国人などに有料で講師を依頼し、開設日は学校が休みとな る土、日曜日を予定し、親や一般市民の受講も可能となる開かれた塾とする計画。同市では、国際人になるためには英会話の能力は重要で、早い時 期から英語に親しんでもらいたいと期待を寄せている。 資料:各種資料より GPC 作成 21 (2)社会人大学・大学院 図表 6-1 にモデルとなる先進事例を、図表 6-2 に岐阜の事例をまとめた。 社会人大学・大学院は、社会で即戦力となる知識・技能を修得するためのプロフェッショナル・スクールである。終身雇用 制度の崩壊や個人の個性・能力を重視するライフスタイルから、人々は常に自分の専門能力を向上させねばならず、さらに自 分によりふさわしい職種を求める動きが活発化しており、専門知識の修得、業務遂行能力の向上や転職に向けた資格取得を支 援する社会人大学・大学院は、今後需要増が期待される。やはりIT技術の恩恵を受けて、eラーニング等も注目を集めてい る。仕事も続けながらのダブル・スクールや、休職・退職しての留学など、自分の可能性を高め広げる学習に大きな期待が寄 せられている。今や岐阜県民も、こうした社会人大学等に積極的にチャレンジする気運が求められよう。 岐阜における、こうしたプロフェッショナル・スクールへの取り組みは始まったばかりである。一例としては、伝統ある地 場産業の人的・技術的蓄積を活かした、ものづくりを伝承する高等教育機関の可能性を検討すべきであろう。すなわち、シニ アからヤングへの技術の継承と、世代間交流から創造される新しい知の蓄積を目指す、専門特化型大学院大学である。地場の 企業からも講師を招くと同時に、例えば企業の技術研修等をここで行えるようにする。また特殊な実験設備の充実、研究交流 等があれば、産官学の連携が一段と進み、大きな成果が期待できる。 情報科学芸術大学院大学は 4 月から開学されるが、その前身の国際情報科学芸術アカデミーは、既にメディア分野での教育 レベルに対し高い評価が得られており、ユニークな大学として、さらに日本国内はもとより世界に向けて情報発信していくこ とが期待される。さらに連携大学院においても、専門性の特化・質の向上と合わせて、情報発信や研究開発・人材交流など広 く学外との交流を図ることを重要視しており、その成果が注目される。 22 図表 6-1 社会人大学・大学院の事例(1) モデルとなる活動例 放送大学 http://www.u-air.ac.jp/hp/ 全ての国民に開かれた大学教育を行うことを目指して1983年に設置された、我が国の生涯学習の中核的機関であり、開学以来延べ60万人の学生が 学んでいる。1998年には「スカイパーフェクTV!」のCSデジタル放送により対象地域を全国に拡大すると共に、全都道府県に学習センターを 設置。1999年からは本部と学習センターを結ぶキャンパス・ネットワーク・システムやテレビ電話システムの運用を開始すると共に、既存の学習 センターの機能充実を図っている。現在放送大学の特色を生かし、高度専門職業人の育成などを目指した通信制大学院の創設に向けて、準備を進め ている。放送大学は正規の大学であり、全科履修生として4年以上在学して所定の単位数を修得すれば、学士(教養)の学位を取得できる。また卒 業を目的とせず、1年あるいは1学期間学習する制度(選科履修生または科目履修生)もある。他の大学と同様に放送大学で所定の単位を修得するこ とにより、公認会計士試験や司法試験等国家試験の一部免除や受験資格を取得できる。 バリントン大学 http://www.barrington.gr.jp/ 世界最大のインターネット遠隔学習大学で、40以上の専門科目の中から学位や資格を取得することができる。スイス、ジュネーブのInternational Association of Universities and Schoolsの公認を受け、優れた非常勤の教職員を揃えている。ビジネス学科、コンピュータ・サイエンス学科、経 営学修士課程、芸術・科学学科、理工学科、栄養学科、国際法学科、旅行・観光事業学科、ホテル・レストラン管理学科、外国語学部、農学部が あり、学位取得プログラムは全て学生のニーズに合わせてカスタマイズされている。 一橋大学大学院 国際企業戦略研究科(東京都) http://www.ics.hit-u.ac.jp/ 一橋大学の6つめの大学院研究科として1998年4月に設置。神田一橋にキャンパスを置く。経営法務、租税・公共政策、国際経営戦略および金融戦略 という4つの職業分野において、グローバルな規模で社会に貢献できるスペシャリストの育成に焦点をあてた高度な専門教育を実施する。昼間の授業 は全て英語。週1日は企業のラボやIT施設、トレーディングフロアを使っての学外授業。モルガン・スタンレーやドット・コム系企業との提携が決 まっている。 法政大学大学院 ITプロフェッショナルコース(東京都) http://www.itpc.i.hosei.ac.jp/ 実践的IT技術者教育を目的にした日本初の1年制大学院。これまでの産業が低迷する中でIT産業は非常な勢いで拡大しており、その人材は世界 的規模で枯渇しているため、主に社会人を対象に、これまでの経験を活かしながら情報科学・工学の基盤を確立し先端的な分野についても学ぶこと で、IT分野の高度で専門的な技術者として育成するという、「情報技術者への転換教育」を目指している。春と秋の学期は午前中に、また夏には 集中講義が設定されており、働きながらの履修も可能。講義科目は演習と一体となっており、従来の修士論文に代えて開発型のITプロジェクトを 行う。 資料:各種資料より MRI 作成 23 図表 6-1 社会人大学・大学院の事例(2) モデルとなる活動例 慶応義塾大学大学院 経営管理研究科(慶応ビジネススクール)(神奈川県) http://www.kbs.keio.ac.jp/ 本修士課程は、ゼネラリストとしての総合的な経営能力の養成に重点を置いている。実際の経営状況をまとめたケースを素材にディスカッションを 通して新しい知恵を共創する、いわゆる「ケースメソッド」を採用、常に最新の経営課題をカバーするケースが開発されている。博士課程(3年)は 経営に関する専門的な研究・教育機関において研究と教育活動に携わる研究者を養成すること、および高度の専門家として活躍しようとする人材を 育成することを目的としている。他にトップ・ミドル・ジュニアマネジメントの経営管理能力の向上を企図した「エグゼクティブセミナー」、社会 のあらゆる活動の中で創造性を発揮しようとする人のための「アントルプレナー・スクール」、そして多様なIT技術を駆使しディスカッション形 式の講義が提供できる「遠隔セミナー」(同スクール初の夜間開講講座)がある。2000年4月には日本で初めて、米国のマネジメント教育に関する 協会AACSB(The International Association for Management Education)による認証を受けている(1999年末現在同協会による認証を受けた 学校は合計370校のみで、米国以外の大学ではわずか12校)。 国際大学(新潟県) http://www.iuj.ac.jp/ 国際社会に貢献するために必要な、高度な相互理解と専門的かつ実践的な知識を持つ人材を養成することを主目的とする大学院大学。我が国経済界 と教育界の支援をもとに設立された大学で、授業は全て英語で行われている。留学生には日本語教育も行われており、30ヶ国以上から集まった 200名以上の学生が共に学び生活している。同校は大学院国際関係学研究科と大学院国際経営学研究科の2科で構成されており、後者はアジア地域で トップランクの評価を得ている。文部省から認可を受けた日本で初めての「英語によるMBAプログラム」であり、日本とアジアに視座を据えた 国際的な比較分析を積極的に経営教育に取り入れる特色を持つ。またIT革命に対応できる人材の速やかな育成のために、2001年秋より、1年制の 修士課程としてEビジネス経営学プログラムを開設する。 静岡県立大学大学院経営情報学研究科(静岡県) http://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/ 各組織体でリーダーとして活躍できる幹部候補生及び高度専門職業人の養成を図ると共に、広く社会人の高度基礎教育を目指す。主たる研究・教育 領域を経営管理、財務・会計、経営科学の三本柱とし、それを支援する情報科学、数理科学、自然・環境システムの領域との学際的研究・教育を 行うことによって高度基礎教育を行う。なお同大学経営情報学部は自己評価委員会を有し、自己評価の結果をホームページで公開している。 ハーバード&スタンフォード・ビジネス・スクールのeラーニング教材開発 多様な分野で既に洗練されたオンライン教育プログラムを誇るハーバード・スタンフォード両大学は共同で、オンライン教材を開発。ハーバード・ ビジネス・スクールでは、同校で実際に使用されている教材や書籍、マルチメディアに対応した様々な教材を提供。スタンフォード大大学院経営 学部からは、ビジネスリーダーの対談や様々な事例をめぐる討論等の内容が盛り込まれたリサーチ結果等の教材が提供された。 資料:各種資料より MRI 作成 24 図表 6-2 岐阜の社会人大学・大学院の事例 岐阜における活動例 情報科学芸術大学院大学 http;//www.jamas.ac.jp/ 2001年4月開学予定。県が設置する公立大学で、学部を置かず大学院のみを置く大学院大学(公立初)。編成はメディア表現研究科メディア表現専 攻の一研究科、一専攻。情報化が進む中、メディアを活用し社会に貢献できる人材育成を目的に、国際情報科学芸術アカデミーのアートアンドメディ ア・ラボ科(大学院相当)を充実させて大学院として設置。同大学院大学では双方向性による情報交換機能の可能性を追求するインタラクティヴメ ディア、時系列的な映像やサウンドなどの表現メディアの可能性を追求するタイムベースドメディア、ディジタル技術と人間・社会との間をつなぐ 情報デザインを研究するインターフェース、情報化時代の新しい文化の理念や世界観の構築から、それにふさわしい情報的表現空間の可能性までを 追求するメディア美学の4つのスタディオを設定し、多方面で視野の広い活動を展開することを目指している。また、付属のメディア文化センター は、国際的な展覧会やシンポジウム、アーティスト・イン・レジデンスの企画・運営、世界のメディア教育や研究の拠点とを結ぶネットワークの構 築、アーカイブ、出版など、グローバルな活動を行っている。 県と東京農業大学による連携大学院 県と東京農業大学は、2001年3月「連携大学院方式による教育研究協定(連携大学院)」の協定を結んだ。同大学大学院生物産業学研究科と県生物 産業技術研究所で、2001年度から、食品の安定確保に向けての共同研究や人的交流を進めていく。同大学院は、大学が国立試験研究所、民間企業や 地方公共団体の研究所などと連携して大学院教育を行う。これにより、教育研究の進展や人材交流の効果が期待される。県では岐阜薬科大学と県保 健環境研究所の協定に次ぐ2例目だが、県外大学とは初めて。 資料:各種資料より GPC 作成 25 (3)伝統文化・技能の習得と継承 図表 7-1 にモデルとなる先進事例を、図表 7-2 に岐阜の事例をまとめた。 工業社会の到来により日本経済が飛躍的に成長、グローバル化が進展する中で、ややもすると我が国固有の伝統文化や技能 が失われていくという事態が発生した。そこで貴重な文化の記憶を次代に継承するために、伝統文化・技能の習得を積極的に 推進する動きが見られるようになった(伝統文化への理解促進と普及のための体験型施設についてはⅢ (1)参加・体験型施設 1 5.“触れる” を参照のこと)。 岐阜においては、歴史的には信長の時代、すなわち安土桃山から江戸初期にさしかかる時期が、一つの大きな基点であると いえよう。フランスでは桃山時代が“日本のバロック”と呼ばれるという。桃山時代はその時代を動かすパワーを求めて、個 人の才能や創造性に光をあてた時代であった。陶芸という、日常の物の中に非日常を内包する創造活動においてもまた、しか りである。陶芸は茶道と密接不可分であり、その作品は自ずと深遠な精神世界をも表現するものとなっている。個人の芸術が 「○○代」と引き継がれていく伝統は日本に独特のものといえるが、この継承においても実は“(先代の)破壊と(自らの) 創造”が絶え間なく行われているのである。 岐阜においては伝統文化・技能の資源は豊富にありながら、継承活動は必ずしも十分ではないといえよう。桃山時代という 根っこを心に留めながら、陶芸・からくり人形や人形浄瑠璃、地歌舞伎等に焦点をあてた、伝統文化・技能の習得の機会を体 系立てて提供することに、より力を注いでいくべきである。また失われてしまった伝統文化・技能の掘り起こしを図っていく ことも重要である。こうした努力が、若い人達をして郷土を見直し、郷土に誇りを持ってもらうことにつながるであろう。 26 図表 7-1 伝統文化・技能の習得と継承の事例 モデルとなる活動例 石川県立九谷焼技術研修所 将来の九谷焼を担う人材を養成する機関。「本科」(陶磁器に関する基礎的知識と技術を習得するためのコース)、「研究科」(陶磁器に関する 専門的で高度な知識と技術を習得するためのコース)、「実習科」(陶磁器関係の仕事に従事している人がより高度な知識と技術を習得するための コース)の3課程がある。 金沢職人大学校(金沢市) http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/sangyou/shokunin/ 金沢には藩政期以来、人の手から手に伝えられた職人の技が今日まで受け継がれ、職人の技が独自の文化を形作る街として発展してきた。しかしこ うした金沢の個性そのものといえる伝統的な職人文化についても、近年の生活様式の近代化、機械化の中での技法の衰退、後継者不足等厳しい状況 にある。本大学校は金沢に残る伝統的で高度な職人の技の伝承と人材の育成を行うと共に、資料の収集、調査及び公開を図ることにより、文化財の 修復等を通じ、匠の技への高い社会的評価と一般の理解と関心を深めることを目的としている。「集う」「伝える」「創る」「交わる」を運営基本 方針とする。研修科と修復専攻科があり、研修科では3年間の就学期間において月4回のペースで、教養・精神性から実技までを学ぶ。修復専攻科で は3年間で基礎理論から建築技法、保存科学、製図等を習得する。 下館若囃太鼓会(茨城県) 1980年8月に結成し、青少年の健全育成と生涯学習を勧め、太鼓を打つ体力と精神力を養い、郷土の祭り囃子を習得、継承、普及することを目的と し、創作太鼓にも力を入れ活動している。(財)日本太鼓連盟、全日本郷土芸能協会、邦楽教育を推進する会に加盟し、県外活動も積極的に行い、 富士山太鼓まつり大太鼓一人打ち全国大会で最優秀賞を2回、第8回国民文化祭作調一人打ち全国大会で優秀賞を獲得し、NHK衛星放送で放映され る。また平成7年4月と10年4月の2回、海外公演としてニューヨークカーネギーホール公演を行う等世界的に活動している。 小原中学校の「総合学習」(愛知県) http://www.vill.obara.aichi.jp/ 和紙の里・小原村の小原中学校では「総合学習」の時間に、小原歌舞伎など村に伝わる伝統文化の継承、高齢化が進む村の現実を踏まえた福祉活動 等に取り組んでいる。歌舞伎、和紙工芸は「クラブ活動」として既に二十数年の実績がある。両講座とも一年間では技術習得が難しいため、三年間 継続が原則。和楽器(和太鼓、琴、三味線)と共に、講師は歌舞伎保存会会員や和紙工芸作家、愛好者ら村内の人に依頼している。小原村には和紙 工芸館があり、和紙づくりを体験することができる。「和紙のふるさとゲストハウス」という紙漉き研修のための宿泊施設もあり、小原村の文化・ 自然・歴史等の学術調査を行う人も利用することができる。 資料:各種資料より MRI 作成 27 図表 7-2 岐阜の伝統文化・技能の習得と継承の事例(1) 岐阜における活動例 多治見市陶磁器意匠研究所(多治見市) http://www.rd.pref.gifu.jp/ ceram/tajimi.html 地場産業である美濃焼のデザイン向上を目的とした機関で、陶磁器のデザイン、上絵付などを中心に研究開発、人材育成、依頼業務の3つを業務の 柱としている。時代の要望と共に、人々の暮らしを豊かにする環境問題を考慮に入れた開発も心がけている。特に人材育成業務では、陶磁器産業を 担う人材育成を目的として、2年間の養成期間で毎年全国各地から研究生20名(デザイン・技術コース、各10名)を受け入れている。東濃西部地域 セラミックス関連大学・公設試験研究機関の一つである。 岐阜県セラミックス技術研究所(多治見市) http://www.com.re.pref.gifu.jp/ ceram/ ①セラミックス関連産業や社会のニーズに対応した技術開発、製品開発等の研究開発、②あわせて中小企業の技術力や製品企画力向上のための相談 ・指導、情報化時代に向けた人材育成講座の開催等の技術支援、③ニューセラミックス、ファインセラミックス等の原材料や製品の品質など企業の 依頼を受けて各種試験を行い、試験成績書を発行する依頼試験を三本柱にしている。また東濃研究学園都市内の研究機関との連携で、先端技術応用 研究室を併設している。東濃西部地域セラミックス関連大学・公設試験研究機関の一つで、世界第一のセラミックス研究開発、文化、情報の拠点を 目指している。 土岐市立陶磁器試験場・セラテクノ土岐(土岐市) http://www.rd.pref.gifu.jp/ ceram/toki.html 美濃焼の歴史・文化を体感できる施設。普段は陶磁器に関わる試験研究が行われているが、土日は一般にも開放される。「やきもの」ができるまで を紹介したパネルや陶磁器原料である粘土や原石などの実物を通して、美濃焼の生産現場の様子を学ぶことができる。また全国の学校や病院の給食 で使われている高強度磁器、紙のように薄い「やきもの」、土岐市が開発したセラートなどが展示されている。東濃西部地域セラミックス関連大学 ・公設試験研究機関の一つである。 職業訓練開発校「木匠塾」(中津川市) 木材産業に携わる県内外民間企業170社が運営主体となる職業能力開発校「木匠塾」が、2001年4月に開校。3月末に、県立高等技能専門校の再編 整備で閉校となる県立中津川高等技能専門校の土地、建物を、県が職業訓練法人「木匠塾職業訓練協会」に無償貸与して、「木匠塾」として生まれ 変わる。各企業の若手社員を教育(建築施工系木造建築科・定員30人)し、伝統的木造建築技術の伝承を図りながらスペシャリストを育成し、国産 材による住宅建築復権を目指す。 本美濃紙伝承事業(伝承者の養成) 重要無形文化財本美濃紙を漉く技術を後世に伝えるため、後継者として美濃市在住の2名を対象に、年間を通じて本美濃紙を漉くための技術と知識 を伝承している。国、県の補助を受けて実施し、各会員工房及び和紙工房で研修が行われており、研修期間は年間210日間。この中では、一部では あるものの、この研修を通して実際に独立して本美濃紙を漉く人材も巣立っている。 WFC岐阜国際学生ファッションコンテスト 次代のファッション産業を担う人材の発掘・育成並びに岐阜アパレルのイメージアップを図るため、全世界の学生を対象に作品を募集する。例年応 募点数1万点以上、応募国30ヶ国以上と定着してきており、世界へ向けて「GIFU」の情報発信は着実に進んでいる。また受賞者の中からも県内 のアパレル産業に就職する者もあり、徐々に成果が現れている。1993年度より毎年開催し、2001年度で9回目を迎える。県、岐阜市等の補助金あり。 資料:各種資料より GPC 作成 28 図表 7-2 岐阜の伝統文化・技能の習得と継承の事例(2) 岐阜における活動例 地歌舞伎、文楽・能の伝承教室 地歌舞伎については1994年度から、太夫師、三味線師の育成を図るため、八幡町、美濃加茂市、中津川市、山岡町、下呂町の県内5会場で、県の 補助を受けて実施している。一方文楽・能の伝承については95年度から、太夫師、三味線師、操り等の養成を図るため、根尾村、付知町、瑞浪市、 中津川市、真正町、恵那市、養老町の県内7会場で、県の補助を受けて実施している。これらはいずれも保存会を対象に実施しているが、これ以外 にも一般の人を対象にした講座もある。 a.真桑文楽同好会 真桑文楽同好会では、町の伝統文化を学ぼうと、部活動の一つとして1990年から地元神社の祭礼で文楽を上演している他、町外、アメリカ・ユタ 州での海外公演なども行っている。三味線、語り、人形の3グループに分かれ、三味線と語りは週1回地元の真桑文楽保存会から指導を受けており、 人形は公演前や夏休みに集中して練習している。このような活動が認められ2000年には、小中学校で伝統文化の継承や国際理解教育などで優れた 教育の取り組みをしている団体や個人に贈られる「第31回博報賞」を受賞した。 b.村国座、白雲座の子供歌舞伎 各務原市の村国神社の境内にある、国の重要有形民俗文化財に指定されている「村国座」では、毎年秋に地元保存会によって、子供歌舞伎が地域の 伝統行事として受け継がれている。祖父から3代にわたって舞台に立つ児童もおり、地元では、共通の体験として地域や家庭を結ぶ大切な行事となっ ている。同様に下呂町にある、国の重要有形民俗文化財に指定されている「白雲座」でも、毎年秋に子供歌舞伎が受け継がれている。 資料:各種資料より GPC 作成 29