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南海トラフ地震応急対策 活動の 「具体計画 」
4 月号 2015 Vol.29 特集 チャート&リストで把握する 南海トラフ地震応急対策 活 動 の「 具 体 計 画 」 連載 役に立つ地域防災計画の作り方 活火山の避難計画を策定する 政府現地対策本部は、被災府県の災害対策本部との合同会議等を通じ て情報の共有と状況認識の統一を図る。また、救助・救急、消火活動、 医療活動等の実施機関と密接に連携し、災害応急対策を推進する。 ○地震が発生した震央区域が南海トラ フ地震の想定震源域と重なる ②災害緊急事態の布告と対策本部設置 対処方針には、次に掲げる事項を定め、広く国民、企業に 対して協力を要請する。 ○国防、社会秩序の維持、消防のために不可欠な部隊を除 く最大勢力の警察、消防、自衛隊、海上保安庁の部隊、 DMAT その他の応援部隊を被災地に迅速に投入し、人命 救助を第一とした災害応急対策活動に全力を尽くす ○食料、飲料水、医療物資、燃料および生活必需品を被災 地向けに全国からできる限り確保し、遅滞なく供給する ③緊急災害現地対策本部の設置と 都道府県災害対策本部等の関係機関との密接な連携 春4月、新年度がスタートした。例 年、年度変わりの節目には、重要政策 の決定や改定が集中する。防災におい ても同様で、3月の年度末には多くの 重要な決定事項が相次いだ。御嶽山噴 火を受けて火山防災対策の見直しを進 めていた中央防災会議の「火山防災対 策推進ワーキンググループ」は 日、 本計画は 日、死者の半減などの「減 をまとめたし、首都直下地震対策の基 災対策の推進について」という報告書 「御嶽山噴火を踏まえた今後の火山防 26 3月 日に中央防災会議幹事会が公表 いずれも防災対策の充実強化につな がる重要な進展だが、本特集は今回、 災目標」を盛り込んで改定された。 31 想定される太平洋沿岸の 県に、全国 な方策を示した計画だ。甚大な被害が ら3日以内の人命救助に向けた具体的 トラフ巨大地震の発生に備え、発災か に準じて「具体計画」と呼ぶ) 。南海 画について取り上げる(以下、報告書 した南海トラフ地震の応急対策活動計 30 万人余りを投入するなどの方策を盛 から自衛官や消防士、警察官ら最大 10 東 海 地 震、 東 南 海・ 南 海 地 震、 そ の 他 の南海トラフ沿いおよびその周辺地域 で起こり得る地震災害への対応につい て も、 南 海 ト ラ フ 巨 大 地 震 の 被 害 想 定 に基づく活動内容を基本として今後検 討する。 ○南海トラフ地震を想定した各種 訓練を通じて具体計画の内容を評 価 し、 定 期 的 に 改 善 し て い く こ と で、実効性を高めていく ○ イ ン フ ラ、 施 設、 資 機 材 等 の 整 備の進捗に応じて随時必要な見直 しを行う 南海トラフ地震がいつ発災しても対処 で き る よ う、 現 時 点 で 保 有 し て い る 部 隊、 利 用 可 能 な 資 機 材、 施 設、 防 災 拠 点等を前提に活動内容を定めている。 南海トラフ巨大地震の被害想定に基づ き、 国 が 実 施 す る 災 害 応 急 対 策 に 係 る 緊 輸 送 ル ー ト、 救 助・ 消 火 活 動 等、 医 療 活 動、 物 資 調 達、 燃 料 供 給、 防 災 拠 点に関する活動内容を具体的に定めて いる。 南 海 ト ラ フ 地 震 発 生 時 に、 緊 急 災 害 対 策 本 部 や 指 定 行 政 機 関、 指 定 地 方 行 政 機関が行うべき地方公共団体に対する 応 援 に 関 す る 事 項 を 中 心 に、 こ れ ら の 事項に関連して地方公共団体等が実施 すべき役割等も含めて定めている。 「南海トラフ地震に係る地震防災対策の 推進に関する特別措置法」第4条に規 定 す る「 南 海 ト ラ フ 地 震 防 災 対 策 推 進 基本計画」で作成するとされた災害応 急対策活動の具体的な内容を定める計 画である。 具体計画とは? 理していく。 チャート図やリスト形式の表などに整 把握できるよう、計画のポイントを 本特集では、具体計画の概要を簡便に 体を挙げて取り組む方針を明確にした。 り込んだ。国難とも言える事態に国全 14 特集 チャート& リストで把握する 南海トラフ地震 応急対策活動の 「具体計画」 ①判断基準に基づき初動対応を開始 b2 b3 (*1) 南海トラフ巨大地震に関する津波高・震 度分布等(平成24年8月29日公表資料) (*2) 気象庁「地震情報で用いる震央地名」 http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/ joho/region/ 政府現地 対策本部 ○被災地域以外の警察、消防が被災地への対応に全力を挙 げなければならないことを踏まえ、広く国民、企業に対 して、防犯、防災、防火、救急等に関し、自助・共助の 意識をもって各地域で取り組むよう、積極的な理解と協 力を求める 緊急災害 対策本部 政府は、南海トラフ地震が発生した場合には、被害状況に応じて、速 やかに中部地方、近畿地方、四国地方、九州地方のうち被害が甚大な 地域に、緊急災害現地対策本部(以下、政府現地対策本部)を設置する。 政府 ○被害が特に甚大と見込まれる地域に対して、応援部隊を 重点的に投入する 緊急災害対策本部は、災害 応急対策を的確かつ迅速に 実施するため、応援部隊の 災害現場への投入を迅速化 するための輸送手段の確保、 交通規制や道路啓開等を通 じた緊急通行車両の通行の 確保などについての総合調 整を行う。 対処方針 政府は、速やかに災害緊急 事態の布告、緊急災害対策 本部の設置を閣議にて決定 し、速やかに災害対策基本 法第 108 条に基づく災害 緊急事態への対処基本方針 を定める。 政府 ○中部地方、近畿地方、四国・九州地 方の 3 地域で震度 6 強以上の震度が 観測された、または大津波警報が発 表された 右の基準に相当する地震発生後、内閣危機管 理監が招集する緊急参集チームは、防災関係 機関が具体計画に基づく行動を開始している ことを確認する 緊急参集 チーム 具体計画に基づく初動対応を行う 判断基準 防災関係機関(国や地方公共団体の機関、指 定公共機関など)は、右の基準に相当する地 震が発生した場合、被害全容の把握を待つこ となく、具体計画に基づく災害応急対策活動 を直ちに開始する 防災関係 機関 南海トラフ巨大地震の 想定震源断層域 (*1) と震央地名図 (*2) 具体計画に基づく初動対応と 活動体制確立の流れ 緊急輸送ルート計画と 発災後の対応のフロー 南海トラフ地震における 各活動の想定されるタイムライン(イメージ) 想定時間 緊急輸送ルート計画(具体計画) 緊急輸送 ルート設定 の考え方 発災前 緊急輸送 ルートの内 訳(全国) 広域移動ルート 部隊等の広域的な移動のためのルート 被災地内ルート 甚大な地震・津波被害が想定される地 域内のルート 代替ルート 被災地内ルートのうち、津波浸水で通 行できない場合に考慮するルート 拠点接続ルート 特に重要な航空搬送拠点、製油所・油 槽所と他のルートを結ぶルート 高速道路 88 区間 一般国道 自動車専用道路 75 区間 都市高速道路 44 区間 市町村道・臨港道路 (※発災時間 により変化 することに 留意) 1日目 緊急輸送ルート 救助・救急、消火等 217 区間 被災地内部隊の最 大動員、広域応援 部隊の先遣隊派遣 緊急点検の実施 ●順次点検 緊急輸送ルートの 通行可否状況の集 約、迂回路設定 情報共有 ○発災時の人員配置計画の作成 ○発災時のTEC−FORCE活動計画の作成 道路管理者 による通行 禁止等 ○車両・船舶・資機材の事前配置 ○民間事業者・ボランティアの確保 ○訓練の実施 12h 緊急輸送ルートの通行・航行可否情報の確認 発災後 緊急輸送 ルートの 修正・変 更 ○都道府県公安委員会が必要に応 じて緊急交通路を指定 ○海上保安庁が必要に応じて船舶 交通を制限または禁止 陸路 波 漂 流 者、 孤立者等) 広域移動ルート の概ねの啓開 ●主な被災地 へのアクセ スルートの 概ねの啓開 48h 3 日目 72h 4 日目以降 被害が甚大な被 災地内ルートの 概ねの啓開 プッシュ型支援の実施決定 物資関係省庁 による調達の 開始 SCU設置 災害拠点病院、 SCU等での活動開始 ●病院支援 ●現場活動 ●地域医療搬送 ●業界との調整 ●必要数量の確保 広域物資輸送 拠点開設 広域医療搬送開始 情報共有 (津波警報解 除後) 重点継続供給の施設指 定、供給体制の確保 ●燃料輸送・供給 体制の確保 優先供給施設の特定、 要請把握 調達物資の輸送開始 情報共有 ●通行可路 線に必要 に応じて 指定 ●製油所・油槽所、中核 給油所の稼働状況確認 ●輸送調整 ●SCU活動 ●機内活動 船による 救助等活動 系列BCPおよび連携計画 による安定供給体制構築 ●数量調整 ●広域物資拠点の受入体 制確認 空路 DMATの被災地参集、 派遣先府県指示 広域応援部隊の 順次到着、活動 本格化 緊急交通路指定 現場における円滑 な災害応急対策の 実施 航空機に よる救助 等活動(津 救助活動拠点設定 2 日目 救助・医療・緊急 物資関係省庁等へ 情報を伝達 遠方DMATの空路 参集拠点への参集 ●順次啓開 24h 発災直後から、定 期的に緊急災害対 策本部へ集約 ●進出・ 順次到着 ●広域進出拠点 ●進出拠点 情報共 有 通行可の場合 迂回路の 検討 災害時石油供給連携計画 の発動 DMAT出動 広域応援部隊の 編成・出動 163 区間 ○発災時の優先点検路線の選定 施設管理者に よる啓開・応 急復旧等 燃料 【防災関係機関】ヘリ、カメラ等を活用した被害状況の概括把握 関係機関による発災後の備え・体制整備 通行不可の場合 物資 災害緊急事態の布告、緊急災害対策本部の設置、対処基本方針の作成、政府調査団の派遣 185 区間 都道府県道 医療 JMAT、 日本赤十字社 等の 医療活動 被災が軽微な地域からの 追加的な派遣含め、最大 勢力の派遣・活動 広域物資拠点まで物資を輸送 優先供給施設への 供給開始 情報共有 ●被災地内の医療機 能の確保・回復 ●以降、被災地域全域への ルートを早期に啓開 市町村、避難所まで 物資を輸送 ●必要に応じて継続 ●重点継続供給と優先供給を含む 供給対応を継続 上記タイムラインは、防災関係機関による活動の事例として作成したものであり、実際の被災状況により相違があることに留意が必要。 具体計画の大きな特徴となってい るのが、国や地方公共団体等の防災 関係機関の発災後の対応を時系列で 示したタイムラインの設定だ。南海 トラフ地震が発生した際、各防災関 係機関は上に示したタイムラインを 踏まえ、政府内に設置される緊急災 害対策本部の総合調整に従って、相 互に連携、迅速に行動することが求 72 められている。タイムラインは人命 救助のために重要とされる 時間を 意識して設定されている。 タイムラインとして整理されてい るのは、 「緊急輸送ルートの通行確 5 保」 「救助・救急、消火活動」 「医療 活動」 「物資供給」 「燃料供給」の 分野の活動。これらは、複数の防災 関係機関が整合的かつ調和的に活動 を展開するための目安となるが、実 際には地震の発生時間や被災状況、 各防災関係機関の実情に応じて相違 があることに留意する必要がある。 南海トラフ地震が発生した場合、 被害が甚大な被災地域へのアクセス 確保がすべての災害応急対策活動の 基礎となる。緊急輸送ルート計画に おいては、全国からの人員・物資・ 燃料の輸送が迅速かつ円滑にできる よう、あらかじめ通行を確保すべき 道路を定めている。 発災後、国や地方公共団体などの 道路管理者は、緊急輸送ルートの通 行を最優先に確保するため、通行可 否情報の共有、必要に応じた啓開活 動・応急復旧に当たる。加えて、都 道府県警察は、交通規制(緊急交通 路の指定等)のオペレーションを一 体的かつ効率的に実施し、緊急通行 車両の円滑な通行を確保する。 b5 緊急輸送 ルート計画 タイムラインの 設定 b4 広域応援部隊の 進出の手順 南海トラフ地震における救助・ 消火活動等に関する計画の概要 被害想定、情報収集を踏まえ、地域ごとの被害規 重点受援県 模に応じて派遣先・規模を調整 回転翼機 警察 出動する広域応援部隊は、被災地域に向かう1次 的な進出目標である広域進出拠点に向けて進出を る。 被害が想定されている地域 静岡県、愛知県、三重県、和歌山県、徳島県、 香川県、愛媛県、高知県、大分県、宮崎県 重点受援県の域内の警察・消防機関の体制 開始する。被災状況に応じて、重点受援県に進出 するための進出拠点にできる限り速やかに進出す 被害が想定されない地域 域内の警察・消防機関の勢力に比 して甚大な被害が想定される県 約 480 機 固定翼機 1.6 万人 消防 警察職員 消防職員 消防団員 2.5万人 3.6 万人 14.8 万人 ※北海道、沖縄県からは、あらかじめ想定する区 間の民間フェリーにて本州に迅速に移動 被災地内で救助・消火活動 ⃝陸路での交通途絶を想定し、空・海からの救助 活動を行えるよう、ヘリポート(空路)、港湾・ 砂浜(海路)をあらかじめ明確化 ⃝部隊間の円滑な調整の仕組み(各本部レベルで の活動調整会議、現場での合同調整所等)を明 確化 約 140 機 艦船・船舶 約 470 隻 1.7 万人 自衛隊 派遣 11 万人 中部地方 重点受援県以外の 37 都道府県 の広域応援部隊(最大値 ) 近畿地方 2割 四国地方 九州地方 1割 3割 被害規模の目安 南海トラフ地震による甚大な被害 に対して、発災直後から、被災府県 内の警察・消防は最大限の動員にす る。被災地域内の警察・消防機関の 勢力に比して甚大な被害が想定され る県(重点受援県)に対しては、全 国から最大勢力の 「警察災害派遣隊」 「緊急消防援助隊」 「自衛隊の災害派 遣部隊」 (広域応援部隊)を可能な 限り速やかに的確に投入する。各地 域ブロックの被害規模は、事前の被 害想定から、中部地方約4割、四国 10 地方約3割、近畿地方約2割、九州 37 地方約1割を設定している。 広域応援部隊は、重点受援県 県 以外の 都道府県から派遣される。 南海トラフ巨大地震による被害が想 定されていない地域の広域応援部隊 は直ちに、被害が想定されている地 域の広域応援部隊は発災後の被害が 軽微である場合には早期に、それぞ れ出動する。 b7 4割 救助・消火 活動等に 関する計画 b6 物資調達の考え方 発災後3日まで DMATの派遣要請 発災後4∼7日 (備蓄にて対応) (プッシュ型支援にて対応) 調達先 食料 育児用調製 粉乳 民間調達 毛布 地方公共団体 備蓄の融通 消防庁 簡易トイレ 携帯トイレ 民間調達 経産省 地方公共団体 備蓄の融通 消防庁 食料 農水省 育児用調 製粉乳 71,732.9 千食 参集拠点候補地の指示 ○厚生労働省DMAT事務局は、被害状 況に応じ、緊急災害対策本部と調整の 上、陸路参集、空路参集の場合の参集 拠点候補地を適宜修正し、DMATの 派遣要請の際に具体的に指示する。 54,422,570 回 大人用 おむつ 乳児・小児 用おむつ ○緊急災害対策本部は、上記指示にあわ せて、自衛隊等の防災関係機関の航空 機の確保の調整、空港管理者への協力 要請を行う。また、必要に応じ民間航 空会社への協力要請を行う。 797,034 枚 3,981,750 枚 ●プッシュ型支援先 被災府県による 受入体制の整備 備蓄では食料等が不 足すると見込まれる 府県 ⃝物資関係省庁は物資の 調達準備に着手 ⃝広域物資輸送 拠点の開設 ⃝輸送関係省庁は輸送手 段の調整に着手 緊急災害対策本 部から物資関係 省庁へ必要量の 調達を要請 1,323 チーム 642 チーム ※実際の派遣チーム 数は、各DMATが 所属する医療機関の 業務の状況による。 原則陸路参集 DMATは、被災地における機動的な移動のため、 車両による陸路参集を原則とする。 被災都府県内 輸送に関する調 整と輸送の実施 広域物資輸送拠 点での物資受け 入れ 市町村の地域物 資拠点や避難所 へ輸送 空路参集 ドクターヘリの運用 北海道、東北地方など遠隔地に所在するDMATは、 原則として空路参集とする。参集拠点となる空港に 参集する。 非被災道県のドクターヘリの第1陣は、迅速な活動 のため、被災地から 300km圏内を基準とし、非 被災道県が、地域の実情に合わせて派遣を行う。ま た、被災状況に応じて、第2陣、第3陣を全国から 派遣する。 被災都府県外 北海道、東北、関東 参集拠点における ロジスティクス支援 県境を越えて陸 路参集するDM ATは高速道路 のサービスエリ ア等の参集拠点 に参集する。 厚生労働省DMAT事務局 および被災都府県のDMA T都道府県調整本部は、具 体計画に基づくDMAT派 遣が行われた場合には、被 災地内参集拠点に参集した DMATの交通手段、物資・ 燃料、通信手段の確保、緊 急輸送ルートの情報提供等 を行うロジスティックチー ムを参集拠点に速やかに配 置する。 ●広域物資輸送拠点(77 カ所) (選定基準) ・新耐震基準を満たすこと ・屋根があること ・フォークリフト使用可能 ・大型トラックの進入、荷役作業 のスペース等 全国のドクターヘリ 新千歳空港、花巻空港、仙台空港、 羽田空港等 陸路参集拠点 高速 SA/PA 空路参集拠点(空港) 静岡空港、名古屋飛行場、南紀白浜空港、高松空港、松山空港、 熊本空港、鹿児島空港 厚生労働省DMAT事務局は、具体的な派遣先府県を指示する。 被災都府県のDMAT都道府県調整本部、 DMAT活動拠点本部は、当該都府県における具体的な活動場所、 業務等、必要な任務付与を行う。 DMATへの任務付与、指揮 被災府県からの要請 を待たず、具体計画 に基づき、関係省庁 が支援を準備 (平成 26 年 4 月 1 日現在) うち 最大震度5強以下の 地域(23 都道県) 全国の DMAT数 遠方 DMAT 全国の DMAT 自らの所在する 都府県内に派遣 されるDMAT は、原則として 災害拠点病院に 直接参集する。 必要量は、4日目から7日目の4日間分を示す。 プッシュ型 支援準備の流れ 災害派遣医療チーム(DMAT)数 ○緊急災害対策本部の設置が決定された段階で、直ちに、厚生労働省 DMAT事務局は都道府県に、文部科学省は大学病院に対し、人口・ 医療資源に比して甚大な被害が想定される被災府県へのDMAT派 遣を要請する。上記の要請に基づくDMAT派遣は、派遣先の府県 が要請を行ったものとみなす。 DMATの参集 22,995kg 6,014,204 枚 厚労省 民間調達 ○発災直後、全てのDMAT指定医療機 関は、厚生労働省が定める「日本DM AT活動要領」に基づき、都道府県、 厚生労働省等からの要請を待たずに、 DMAT派遣のための待機を行う。 プッシュ型支援による 物資の必要量 調整担当 省庁 品目 おむつ (大人・乳幼児) DMAT派遣の手順 被災地内の災害拠点病院等 航空搬送拠点・SCU 病院支援、現場活動、地域搬送支援等の活動に従事 SCU・機内活動に従事 都道府県 DMAT 活動調整本部の指揮下で活動 南海トラフ地震では、建物倒壊等 による多数の負傷者と医療機関の被 災に伴う多数の要転院患者が発生し て医療ニーズが急激に増大し、被災 地内の医療資源のみでは対応できな い状況が予測されている。 に参集させ、安定化処置(一時的に このため、全国の災害派遣医療 チーム(DMAT)を被災地に迅速 全身状態を維持させる処置)などの 最低限の対応が可能な体制の確保を 図ることが重要になる。また、被災 地内で対応が困難な重症患者を域外 へ搬送し、治療する体制を早期に構 築する必要もある。 DMATの主な業務は、病院支援、 地域医療搬送、 現場活動、 SCU(航 空搬送拠点臨時医療施設)活動およ び航空機内の医療活動であり、医療 ニーズに応じた活動を展開する。 南海トラフ地震では、被災地方公 共団体や家庭等で備蓄している物資 が数日で枯渇する一方、発災当初は、 被災地方公共団体において正確な情 報把握に時間を要すること、民間供 給能力が低下すること等から、被災 地方公共団体のみでは、必要な物資 量を迅速に調達することは困難と見 込まれる。 このため、国は、被災府県からの 具体的な要請を待たないで、必要不 可欠と見込まれる物資を調達し、被 災地に緊急輸送する(プッシュ型 支援) 。被災府県は、できる限り早 期に具体的な物資の必要量を把握 し、必要に応じて国に要請する仕組 み(プル型支援)に切り替えること をめざす。 南海トラフ地震のような大規模・ 広範な災害では、全国的に物資の生 産・物流体制に大きな支障が生じる 可能性がある。緊急災害対策本部、 物資関係省庁は、非被災地も含めた 物資の安定供給について関係業界団 体と連携し、安定供給に向けた緊急 輸入や増産といった協力要請など必 要な措置を講じる。 b9 物資調達に 関する計画 医療活動に 関する計画 b8 各部隊が被災地において部隊の指 ※被災地に所在する中核給油所のう ち重要なものも必要に応じて重点継 続供給を実施 があらかじめ想定し、発災後には速 やかに確保すべきもの 国が調整して調達する物資を都道府 県が受け入れ、これを各市町村が設 優先供給 向けて送り出すための拠点。都道府 井野盛夫 常葉大学客員教授 救助部隊等の活動拠点 (運動公園等) 輸送するために想定する港湾。耐震 海上輸送拠点 県の要請に応じて、 優先的に供給 または固定翼機が離発着可能な拠 航空搬送拠点 を行う拠点。都道府県および市町村 救助活動拠点 置する地域内輸送拠点や避難所に 広域物資輸送拠点 航空機用救助活動拠点の 給油事業所 (被災地内または近隣) 揮、宿営、資機材集積、燃料補給等 県が設置する 広域医療搬送を行う大型回転翼機 点。SCUが設置可能なもの 人員、物資、燃料、資機材等を海上 性および機能性が高いもの 昨年9月 日に御嶽山が突然噴 火し、山頂にいた 人の登山者が 噴火災害に遭遇した。火山災害は 噴火する位置が明確で、前兆とな る火山性微動の増加が確認できれ ば、地震予知に比べて危険を察知 することは易しそうに思われるが、 噴火のタイプやその規模、そして 活動がどれくらい継続するか、同 じ火山でも前回とは異なる形の噴 火をすることもあり、予測は難し いようだ。さらに、火山特有の低 周波地震を捉えたとしても、噴火 につながるのかどうか判断すると なると、経験があったとしても単 純には処理できない。こうした背 景を考えると、活火山を有する地 域では苛酷な状況を想定した避難 火山避難計画は火山が噴火した 際の避難経路や避難場所を示した もので、山体が複数の自治体にお よぶ場合には、防災協議会方式に よ っ て 計 画 の 策 定 が 可 能 と な る。 基本的には、山麓に住む住民の生 命の安全を図ることが目的である が、御嶽山の例もあり、登山者の 安全対策についても計画に盛り込 むことになった。 富士山の 避難計画例 活火山の防災計画を立てるため に は、 噴 火 に と も な う 現 象 と そ の影響範囲を予測する必要があ る。富士山噴火を想定した富士山 火山防災対策協綴会(静岡県・山 梨県・神奈川県・東京都・国)が 進めている火山広域避難計画を例 にとってみる。富士山は山体の中 心で噴火する成層火山で、山頂火 口から流動性のあるマグマが流下 してくることを想定している。こ れらは噴出した際の溶岩の種類に よって流動する速さが変わり、噴 火も線状の割れ目の形態をとる場 合もあるがこれらは対象外として いる。また、地中の水分が噴火す る際の熱で一気に水蒸気になる水 蒸気爆発を起こす形態は想像外で あり、今回の想定災害からは除外 している。噴火時に火口から火山 灰や火山弾、火山岩塊が高温のガ スと混じり合って時速百キロの速 画」に基づく系列を超えた相互協力 法で定める「災害時石油供給連携計 継続計画を基本としつつ、石油備蓄 発災時、資源エネルギー庁は、石 油精製業者の系列供給網ごとの業務 かつ円滑に供給する必要がある。 に必要な燃料を確実に確保し、迅速 災したとしても、災害応急対策活動 南海トラフ地震により、太平洋沿 岸部の多くの製油所・油槽所等が被 図りつつ、効果的な災害応急対策を らの防災拠点との間で密接に連携を 区)と地方公共団体が運用するこれ 基幹的広域防災拠点(堺泉北港堺2 の輸送に当たり中心的役割を果たす 緊急災害対策本部、政府現地対策 本部および防災関係機関は、国が運 整理すると上記リストのようになる。 具体計画に定められた防災拠点の 種類は多い。それらの種類と機能を 用し広域的な緊急物資や復旧資機材 を行う供給体制を直ちに構築する。 実施する。 必要な措置を講じる。 と緊密に連携し、安定供給に向けて 定供給について、石油関連業界団体 よび資源エネルギー庁は、燃料の安 込まれるため、緊急災害対策本部お 全国的に燃料の生産・ 物資と同様、 物流体制に大きな影響が生じると見 への円滑な優先供給を実現する。 整による重要施設、救助活動拠点等 点継続供給、緊急災害対策本部の調 航空機用救助活動拠点等に対する重 送網を速やかに確保し、進出拠点や 航路の優先的な啓開等により燃料輸 緊急輸送ルートに設定されている 製油所・油槽所へのアクセス道路・ 防災拠点の 概要 エリア)とし、火口直下周囲が危 囲を第一次避難対象エリア(一次 性が高く、この現象による影響範 度で斜面を流下する火砕流は危険 とになっているが、避難先は自治 自治会(町内会)の単位で行うこ することになる。なお、避難は各 口が確認できれば対象地滅を特定 は全斜面を避難対象とするが、火 治体を経由して住民等に周知され れらの情報は直ちに報道機関と自 ベル4の噴火警報が発表され、こ が予想されれば避難準備としてレ していればレベル5、被害の発生 が必要な範囲に住家が含まれ切迫 る。登山者には緊急速報メールで 体が他の災害と同じように勧告や いる。 指示の内容で示されるのでこれに も検討されている。いずれにして 衛星携帯やアマチュア無線の利用 るが、確実に情報を伝えるために 自動配信するシステムが整備され 従うことになる。 火山ガス、火山岩塊が噴出するの で危険性は非常に高い。爆発的な 噴火の際に放出される火山弾や岩 マグマが、高温の液休として地表 アとしている。火口から噴出した すると想定される範囲を二次エリ ロまで飛散することがあり、到達 した場合に、生命に危険を及ぼす 命に危険を及ぼす火山現象が発生 いる。噴火警報は噴火に伴って生 報の3種類の予警報が決められて 噴火警報、火口周辺警報、噴火予 これらの避難行動は情報の内容 と 伝 達 方 法 に 関 わ っ て く る の で、 が大切である。 プを使って常に認識を高めること 提供と避難についてハザードマッ 住民には火山活動に関する情報の 意すべき事柄の厳守、そして地域 対策と地元自治体からの登山に注 は自分を守るための自主的な防護 も突発噴火の恐れもあり、登山者 を 流 れ る 現 象 を 溶 岩 流 と い う が、 範囲を明示して発表される。警戒 塊は、弾道を描いて火口から数キ 噴火開始後3時間以内に先端が到 リア、そして3時間から 時間に 達する可能性のある範囲を二次エ 3種類の予警報で 情報伝達 御嶽山では火口付近にいた人々 が被災したが、火口ではマグマや 険度ランクとしては最高となって 活火山の避難計画を 策定する ※以上のうち、救助、医療、物資の機能を全て有する拠点のうち主要 なものを「大規模な広域防災拠点」として明確化 時間から7日間にかけて到達す かけて到達する範囲が三次エリア、 24 計画を作る必要がある。 定 燃料供給に 関する計画 井野盛夫(いの・もりお) 1937 年静岡市に生まれる。61 年 東京教育大学卒業後、静岡県職員に採 用される。工業用水道課、水資源課、 地震対策課長を経て 92 年より防災局 長。96 年より静岡県防災情報研究所 長。2000 年より富士常葉大学環境防 災学部長、07 年度退職。理学博士。 中央防災会議専門委員、地震調査研 究推進本部専門委員、静岡県立大学客 員教授、兵庫教育大学講師、静岡大学 講師などを歴任。97 年国土庁長官防 災功績者表彰。 著書に『21 世紀東海地震』 (羽衣出 版) 『こうすれば東海地震はこわくない』 『抗震—東海地震へのアプローチ』 『抗 震(改版)』(静岡新聞社) 『今だから知 りたい東海地震』(共著、静岡新聞社) 『名水を科学する』(共著、技報堂) 『地 震予知がわかる本』 (共著、オーム社) 『地域防災計画の実務』 (共著、鹿島出 版)『東海地震いつ来るなぜ来るどう備 える』(共著、清文社) 『ジュニア防災 士研修指導マニュアル』 (監修共著・日 本防災士静岡県支部)など。 なる拠点。各施設管理者の協力で設 る範囲を四次Aエリア、さらに7 日間から約 日間に到達する範囲 を四次Bエリアに設定している。 噴火の恐れが生じた時に火口の 位置を予測するのは難しく、当初 b10 b 11 広域応援部隊が応援を受ける都道 緊急輸送ルート上の広域進出 拠点、進出拠点等の中核 SS 油槽所 製油所 府県に向かって移動する際の目標と 進出拠点 災害拠点病院、官庁舎、 防災関連施設等の重要施設 40 管理者の協力で設定 緊急輸送ルート 緊対本部の要請により、都度個別 の 要 請 を 受 け ず と も、民 間 取 引 ベースで重点的かつ継続的に燃料 補給し、給油活動を維持 の一時的な目標となる拠点。各施設 緊対本部の調整により、被災府県 または所管省庁の要請に基づき、 優先供給 24 災害発生直後、直ちに広域応援部隊 66 役 に 立 つ 地 域 防 災 計 画 の 作 り 方 27 28 重点継続供給 製 油 所・油 槽 所 へ の緊急輸送ルート や航路は優先して 通行確保(道路啓開、 優先通行等) が被災地方面に向かって移動する際 広域進出拠点 燃料供給の考え方 防災拠点の種類 連載 Editor's Voice 今回の特集では、南海トラフ地震の応急対策計画の概要を整理した。この具 体計画の別表には、地区毎の防災拠点等の候補個所が具体名とともに例示さ れている。南海トラフ地震対策が、いよいよ現実味を帯びてきたことを実感する。 南海トラフ地震は今後 30 年以内に 60 〜 70%の確率で発生するとされている。 「b side」の名称には、 「防災パビリオンの B 面」 「防災(bosai)」 「B to G(Business to Government、 民間企業と政府官公庁との取り引き)の 橋渡しをビジネスの側(B side)から促進する」 という意味を込めています 実際に発生する地震の規模は大小あるだろう。しかし、発生確率を示す数値 そのものは、地震が発生するまで上昇し続ける。 南海トラフ地震の発生の日をどのように迎えるか。具体計画を含めてさまざま な対策メニューは出揃ってきた。あとは、日ごろからの体制整備や訓練等を通 じて、こうした各種対策を練磨し、実効性を高めていくほかないだろう。 東日本大震災から4年。今年も美しい桜花をめでることができる喜びに静か に満たされながら、生きる者の務めに思いをめぐらす春だ。 (大浜) b side 編集部 表紙の写真 STAFF 宮城県岩沼市の沿岸に震災がれき を活用して築造された「千年希望の 丘」。人と人とが支え合うイメージの 記念碑が立つ。10 0 0年後の子ども たちが笑顔で過ごせるようにとの希 望を込めて。 editorial b side 編集部 ティダヌファ design THS デザイン室 発行:株式会社東京法規出版〒 113-0021 東京都文京区本駒込 2-29-22 ■記事に関するお問い合わせ:東京法規出版 b side 編集部 tel03-5977-0355 fax03-5977-0357 ■広告に関するお問い合わせ:東京法規出版事業推進部プロモーション企画課 tel03-5977-0300(代) fax03-5977-0311(代) b side FAX用アンケート回答用紙 アンケート回答方法 ご記入いただけましたら、ファクスにてご返送いただきますようお願いいたします。 Q1 Q3 今後特集などで取り上げてほしいテーマがありましたらご回答ください。 その他、貴職として、本誌への提言や注文があれば自由にお書きください。 ①災害時要援護者対策 ②自主防災組織の活性化対策 ③効果的な防災訓練の実施方法 ④災害ボランティアについて ⑤国民保護対策 ⑥その他 ご協力まことにありがとうございました。皆さまのご意見をもとに、今後とも 誌面の充実につとめてまいります。 Q2 都道府県名 民間の防災ビジネスについてお知りになりたいことはありますか。 貴団体名 ①住民用防災グッズについて知りたい ご担当部署名 ②団体用防災資機材について知りたい ご担当者様名 ③防災サービスについて知りたい ④他団体の民間利用の実態を知りたい ご住所 〒 ⑤その他 電話 FAX お寄せいただいた個人情報につきましては、雑誌製作の参考以外には一切使用いたしません。 送付先 FAX番号 03-5977-0357 担当/ b side 編集部 b12