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健康で発育の良い和子牛を育て よう!
健康で発育の良い和子牛を育て よう! 1 地域の実態 2 データから判断できること 3 子牛の栄養レベルを高めるために 分娩直後の管理 初乳の果たす役割 子牛の生時体重を計る 母牛のほ乳能力を知る 初乳の品質に注意 粗飼料の給与 配合飼料の給与 新鮮な水の給与と尿石の防止 別飼い 運動 離乳 予防プログラム 1 地域の実態 南後志(黒松内、寿都、島牧)で飼育されている和子牛50頭(生後7∼316日)から採血された血液を 分析すると、血液中に含まれるビタミン、ミネラル類が非常に低い値を示す、低栄養牛が数多く確認さ れました。 この血液中の栄養不足を引き起こす要因には、ほ育から育成期の管理と繁殖雌牛に大きな問題があ りそうです。 ここでは、子牛の飼養管理にポイントを絞って改善策を考えてみます。 2 データから判断できること (1)ビタミンA ア ほ育から離乳期までのレベルが低い、特に欠乏限界値に近い個体は危険度大、 感染症やかぜにかかりやすくなる。 イ 離乳後も低いレベルの個体は、粗飼料の質や食欲に注意する。 (2)ビタミンE ア ほ育から出荷前までの個体でVEのレベルが低い。中でも欠乏限界値のを下回る個 体が多い。 イ 初乳の適正な給与がされていない。 (3)セレン ア 特に欠乏限界値にある個体では、VE不足と合わせて白筋症の発生が懸念される。 イ 子牛、繁殖雌牛のセレン対策が不備。 ようするに、ほ育、育成期の管理がいかに手抜き状態であるかが読みとれます。 表1 血中濃度基準値(日本全薬工業) 欠乏限界値 不足域 正常低値 ビタミンE (μg/mL) 1.5 − 4.0 ビタミンA換算値 (IU/dL) 30 60 100 セレン (ng/mL) 40 − 70 3 子牛の栄養レベルを高めるために 健康で高発育の子牛を育てるには、特に離乳までの管理が重要です。 (1)分娩直後の管理 生まれたばかりの子牛は免疫抗体がまったくなく、病原菌に対して無防備の状態にあります。 病原菌から子牛を守るために、次のことを実行してください。 ア イ ウ エ 分娩房内は衛生的な環境にする。 分娩直後に子牛の体を乾かす。 臍帯の消毒をする。 分娩には必ず立ち会い確実に初乳を飲ませる。 (2)初乳の果たす役割 生まれたばかりの子牛は、初乳の摂取あるいは給与 によって免疫機能(抗病性)を獲得します。免疫機能 は、時間とともに急激に低下します。そのため、分娩 後初乳を素速く確実に飲ませることが大切です。 図4は、SSTT値と子牛の死亡率を示したものです。S STT値が低いほど子牛の死亡率が高くなっています。 また、子牛が初乳を飲めない場合を想定し、凍結初乳 や人工初乳を常備しておきましょう。 ア 初乳は2∼6時間以内に飲ませる。 イ 飲ませる量は、最低1.5L 以上。 (3)初乳の品質に注意 初乳中の免疫グロブリンは、初産牛や漏乳のあった牛などは一般的に低く、逆に産次の進んだ牛ほど 高い傾向があります。特に、乳牛の初乳を凍結保存し、使用される場合は凍結前に品質をチェックする ことを薦めます。 チェックする方法として初乳計というものがあり、比重を計ることで品質を判定します。 表2 初乳の品質判定 区 分 比 重 判 定 1.035 以下 品質が悪い 初 乳 1.036∼1.046 容認できるもの 1.047 以上 高品質 常 乳 1.028∼1.034 安定している (初乳は分娩一回目のもの) 新生子牛の免疫グロブリン簡易測定(SSTT)とは 新生子が生後6時間以内に良質初乳をどの程度ほ乳し、免疫グロブリンがどれだけ体内に移行したか を簡易的に測定する方法です。 数値の高低により初乳を充分飲んでいたか、それとも飲めていなかったが推測できます。SSTT値が 高いほど疾病と闘えられる物質が多いと判断出来ます。 (4)子牛の生時体重を計る 初産牛では、生時体重が小さい傾向にありますが、2産目からの平均生時体重は雌子牛が28㎏、雄 子牛が30㎏です。 母牛か妊娠期間に栄養不足だったり高齢牛になると、生時体重が小さくなる傾向があります。 体重測定の仕方 ●子牛の生時体重は、生後24時間以内に測定しましょう。 ●生まれた仔牛の活力や、大きさは母牛の健康状態・妊娠期間中の飼養管 理に問題がなかったかの判断材料となります。 ●生時体重が小さく母乳量が少ないときには、代用乳でほ育管理をしましょ う。 図、東胆振地区農業改良普及センター 黒毛和種飼養管理マニュアル『これ牛飼いの哲学』より (5)母牛のほ乳能力を知る 子牛の発育を良くするためには、母牛のほ乳能力を知った上で管理することが重要です。 それには、子牛の生時体重と生後14日目の体重を計ればわかります。 表3 1日あたりの増体重とほ乳量 1日あたりの増体量 0.4kg 0.6kg 0.8kg 1.0kg 1.2kg 推定ほ乳量 4.1kg 5.5kg 6.8kg 8.1kg 9.2kg 表、東胆振地区農業改良普及センター 黒毛和種飼養管理マニュアル『これ牛飼いの哲学』より 【計算例】 ●生時体重30㎏ ●生後14日目の体重38.4㎏ ●1日当たり増体重=(38.4㎏−30㎏)÷14日=0.60㎏ 表3から、1日当たり0.6㎏の増体量では、1日当たり約5.5㎏の乳量が出ていることになります。1 日当たり増体量は最低0.5㎏以上は必要です。 0.4㎏以下になると出荷体重にも影響が出はじめます。特に体重が小さく1日当たり増体量の低い子 牛は確実に出荷体重が小さくなります。 母乳のほ乳能力が低いときには、代用乳によるほ乳を考えましょう。 (6) 粗飼料の給与 子牛は栄養価の高い時期に収穫された、粗飼料を与えることで順調に発育します。母牛に与える粗飼 料とは区別して考えましょう。 ア 生後1週間くらいから、粗飼料の給与開始する。 イ 給与する粗飼料は、栄養価の高い良質な乾草を ウ 10ヶ月齢までに乾草3㎏/日は採食できるようにする 図5 生育ステージ別栄養率(オーチャードグラス1番草) 東胆振地区農業改良普及センター 黒毛和種飼養管理マニュアル『これ牛飼いの哲学』より (7)配合飼料の給与 一般的に、生後1ヶ月齢頃から母牛の母乳と乾草だけではエネルギー不足になってしまうため、それを 補うために配合飼料の給与が必要です。 3ヶ月齢頃からは採食量が増えますが、過剰摂取による太り過ぎにならないよう気を付けましょう。 ア 1∼6ヶ月齢はスターターを、以降は育成用配合に切り替える。 イ 配合飼料は採食量、糞の状態を観察しながら給与量を調節する。 (8)新鮮な水の給与と尿石の防止 充分な量の水が飲めないと、採食量の低下を招き発育に悪影響を及ぼします。 また、暑い時期には水分要求量が増加しますので、充分な給水を行うようにしましょう。 ア 濃厚飼料のカルシウムとリンのバランスを図る。 イ 飲料水の確保。 (9)別飼い 子牛だけが自由に出入りできる育成牛専用のスペースを設けて、その中で飼料給与を行います。 ア 別飼いは、ルーメン機能の働きを促し発育を良くする。 イ 生後10日頃から別飼い施設を設ける。 (10) 運動 運動は子牛の足腰の骨・筋肉の発達を促すために必要です。また、子牛を過肥させないためにも有効 です。 ア 自由に運動できるスペースを設ける。 イ 運動場には、傾斜をつけて水が溜まらないようにする。 ウ 運動場の地面は泥濘化しないように糞尿を処理し、火山灰を入れるなどの処置をす る。 (11) 離乳 離乳方法には、次の4つの方法があります。 ア 6ヶ月齢程度で離乳する自然ほ乳 イ 自然ほ乳の期間を3∼4ヶ月に短縮する早期離乳 ウ 分娩直後親子分離をし人工ほ乳する方法 エ 自然ほ乳を行いながら、分娩後15∼28日間は親子を分離し、1日2回程度にほ乳 回数を制限する制限ほ乳方法 どの方法をとるかは、農家の管理状況や労働条件等によって変わってきます。 自然ほ乳は、母牛の泌乳量で子牛の発育が大きく左右しますので、発育が遅れる場合は親子分離を し、人工ほ乳に切り替えます。 離乳方法は、イの早期離乳を実施することが、優良地域の事例からも言えるように、発育が良いようで す。 (12) 予防プログラム 大切な子牛を疾病から守るためには、適正な飼養と予防管理が必要です。次の予防対策で健康な子 牛を生産しましょう。 呼吸器・下痢病対策 SE・VE注射液による対策 イベルメクチン製剤による線虫駆虫対策 表4 飼料給与と管理の目安 表、しりべし和牛の飼養管理(子牛管理のポイント)より一部修正