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海外現地生産と労使関係

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海外現地生産と労使関係
海 外 現 地 生 産 と労 使 関 係
-
自動 車工業の対米直接投資 を中心 として-
代
神
和
俊
これ に ともな ってわ が国企業 の海外 現地 生産
は じめ に
が新 たな問題 を引 き起 こす例 が 目立つ ようにな
わが国の対 外直接投資は,戦 後,昭和2
6
年に
8年初 めの 田中首相の東南 アジ
って きた.昭和4
再 開 されて,昭和3
5
年か ら貿易及び資本 の 自由
ア野間 に さい しての反 日デモは 当時人 々の耳 目
化の なかで段 階的に 自由化措置 が講ぜ られて き
を集 め, それ を契機 として,わが国で は国際金
たが,本格 的 な増加 を見 たのは,昭和4
0年代 の
I
MF.J
C)な どが 中心 とな
属 労連 日本協 議会 (
未以降であ る.大蔵省の対 外直 接投資届 け出統
り, 多 国籍企業労働問題連絡会議が 設置 さ れ
0年代 に一挙 に 40
0億 ドル も
計 でみ る と,昭和5
て,労使 関係 の分野で は国際的に も注 目される
0
年代 に入 る と円高 で さ らに うな ぎ上 り
増 え,6
迅速 な対応 が な されて きた1). た また ま, 当時
2
年末 まで に 1
,
3
9
3億 ドルに急増
に増加 して ,6
は,国連 において も多 国籍 企業 の行動 規範 の策
してい る (第 1表).
定 をめ ぐる議 論が行われて お り,わが 国か らは
第 1表
日米の対外直接投資額
対外直接投資累計額
(
百万 ドル)
度
年
1
5,
9
4
3
5
5
,
4
8
8
1
2,
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4
昭和 26 - 5
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6
1
2
6(4-1
2月)
累
計
額
f
1
3
9
,
3
3
4
注) 1
. 計数は昭和5
2年度までは許可ぺ-ス、同5
3
年 4月 1日から同55年11
月三
0日までは届出の
許可ベース、同年1
2月 1日以降届出ベースで
計上。
2
. 端数調整により合計金額 と合わない。
(
出所)大蔵省 『
第1
2回大蔵省国際金融局年報』昭和
6
3
年版,p.
5
1
8.
わが国の対外直接投資 は, もともと商業,金
敬,不動産 (
但 し昭和5
5年 1
2月 1日以降 は改正
外為法の施 行 に伴 い,不動産取 得 は対外直接投
資に計上 し ない こ となに った) な どの比重 が高
く, その 目的 も商権 の拡大や海外資源 の開発 な
0
年 間には,貿
ど多岐にわ た ってい るが, この 1
易摩擦の回避 を目的 とす る製造業 の直接投 資 が
しだいに重要性 を帯 びて きた.
東大の小宮隆太郎教授 がその議論にエ キス パー
トとして参加 されてい たこ ともあって,筆 者 と
の問に 「国際公正労働 基準 」 をめ ぐる論争 が行
われた こ ともあ る2
)
. また, た また ま ロ ッキー
1)1
9
7
3
年 7月1
6日に 国際 金属 労連 日本 協諌会
(IMF-JC)加盟の六単産 (自動執 鉄鋼,電気,
造船重機,合金同盟,全機金)が中心に なって,合
繊同盟,合化労連,全化同盟,外資系企業労働組合
連絡会議の五団体に よって 「多国籍企業労働問題対
策労組連絡会議」(
略称, 多国籍労組会議)が 発足
した.同年秋には,多国籍労組会譲は,労働省に対
して政労使三者構成の 「多国籍企業労働 問題連絡会
議」を発足させるよう働 きかけ,1
1
月には政府と労
働側との連絡会議が発足 した.使用者側の参加は遅
れたが翌1
9
7
4
年 4月には日経連代表もこれに加かっ
て連絡会譲は正式に発足 した.さらに同年 7月には
在外企業協会が 設立 され,連絡会議に 加わって い
伊
る. 拙稀 「日本企業社会の 国際化 と労働問題J(
束光晴他端 『
世界の企業』第 6巻 r国際企業社会と
日本」,筑摩書房,1
9
7
6年所収)参照.
2) 当時の諌諭の背景 としては,現代総合研究集
1
97
4
年1
団 「日本企業の海外進出に 関する 接雷」(
月)
, 国連事務局報告 『多国籍企業 と国際開発』(
国
際開発ジャーナル社, 1
9
7
3年1
2
月),小宮隆太郎 ・
神代 和欣 「多国籍 企業 と労働 絶食」(
『
経済 セ ミナ
ー』1
9
7
6年 8月号 及び 9月号), 小宮隆太郎 「開発
途上国と直接 投資政策- 現代 総研 『
提言』の批
判」(
『
経済セ ミナー』1
9
7
6
年 9月号)
,神代和歌 「国
-約-
エ
コ
、
ア
第1
0
0号
ド事件 との絡み もあ って,衆 議院 に特別 小委 員
輸 出代替的 な海外現地生産 が急増 し, 国内の雇
会 が設 け られ ,筆者 も参考人 として意見 を述べ
用機会 の 「
輸 出」にか んす る問題が真剣 な議 論
たこ とがあ る3
)
.
の対象 として浮 上 して きた.筆者は労働省の要
その後,わが国の海 外直接 投資 に ともな う現
請 を受 けて,数年前 に この間題 の研 究責任者 と
地進 出企業 の労働条件 や労使 関係 については,
な り, 自動車,電機等の対米及び対東南 アジア
日本労働協会 の各 国調査 団 が毎年派遣 され,す
現地 生産に伴 う雇用効果 を事例調査 と産業連関
で に十数 ヶ国についての報告書が公刊 されてい
分析 とを 結び つけて 検討 した7)
. それ に よる
る.筆者 自身 も, 当初 か らそれ に協 力 し,すで
と,昭和 5
0
年 の産業連関表 (一部修正) に基 づ
に シンガポール, オス トラ リアについては報告
5万 台の乗用 車生産 ラ イ
いて,わが国か ら年産 2
書 を公刊 してい る4
)
. また労働省で もその後主
ンを 1本 ア メ リカに移 した場合, それ に ともな
要 国につい て現地 進 出企業 の労使関係にか んす
う輸 出代替,部品輸 出,投 資財輸 出な どに よっ
る査察報告 を出 してい 85
)
. このほかに も, 筆
て, わが 国の雇用機会 は約3
2
,
6
0
0
人 の純 減 にな
者 は, これ まで折 りにふれ て 国際会讃等で この
る と試算 され た. その後 の現地 部品調達比率の
問 題 をと りあげ, 実態把握 に つ とめて きた6
)
.
増 大 や ブー メラン (
現地進 出企業か らの製 晶の
これ とは別 に,昭和 5
0
年 代半 ば以降, 円 レー
逆輸入) の増 大 な どを考慮 す る と,「雇用輸 出」
トの急激 な上昇 に と もな って, わが国製造業 の
の規模は さらに大 き くな ってい る もの と想像 さ
際労働条約 と公正労働基準」(
『
経済セ ミナー』1
97
6
年1
0月号).
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なお,I
LO,Mul
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1
9
7
3
)
,(日本労働協会訳編 『多国籍 企業 と
労働政策』 日本労働協会,1
9
7
4年) も 「公正 労働基
準問題」を取 り扱 っている. また,多国籍企業時代
の国際的労使関係のルールとしての国際労働の意義
が,既存の国際労働漆たるI
LOを中心とした国際労
働法とは基本的性格 を異にす ることについては,花
見忠 『
海外進出企業の労使関係』 日本経済新聞社,
1
9
8
3
年)参照.
3)昭和51
年1
0月2
0日,衆議員外務委員会多国籍
企業等国際経済に 関する小委員会会議録 『
第7
8回
国会第 1類第 4号附属の 1,昭和51
年1
0
月2
0日).
4) このうち筆者が調査団長としてまとめた もの
は次の二点である. 日本労働協会編 『わが国海外進
出企業 の 労働問題 - シンガポール』(
昭和5
0
年3
月,同協会);同 『わが国 海外進出企業の 労働問題
- オース トラT
)ア』(
昭和51
年,同協会).
5) 日本労働協会 「米国に おける日系企業の労働
問題」第 1次 調査報告 (
昭和54
年版),第 2次調査
報告 (
5
5年度),第 4次調査報告 (
57
年 3月).
6)Ea
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1
9
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年 3月に東京で開催された t
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nにおける
報告 ;『エコノミア』第54
号,1
9
7
5年 7月所収);秤
代和歌 「日本の対外直接投資と労使関係- 石油危
機後の 日本の経験」
(
第 7回日独文化交流セ ミナー,
1
9
7
9
年 9月,東京における報告 :大河内-男編 『
比
較研究 ・石油危機後の 日本 ・西 ドイツ経済』 日本経
済新聞社,1
9
8
1
年所収).
れ る. また,北米におけ る乗用車の現地 生産規
(
-
1
99
0年 まで には 20
0万台 を超 す もの
模 の拡大 (
と予想 さる) に ともな って, 日本か らの対米輸
出枠 との振替 えな ど不確実 な要 素が増 大 してお
り, ア メ リカ新政権 の通商政策の方 向 と も絡 ん
で,将来 的には深刻 な事態の発生す るこ とも懸
念 され が ). 本稿では, この よ うな経緯 を潜 ま
7) 日本 労働 協会編 『
海外投資と雇用問題』(日
本労働協会,昭和5
9
年 3月).
8)通産省産業構造審議会 『
21世紀 産業社会の碁
本構想』(
1
9
8
6
年 5月)の推計では, 製造業 の海外
直接投資の 今後の 年平均伸び率を1
5% と仮定する
と,西暦2
0
0
0年までに9
7
万人の国内雇用機会が失わ
れる.また,経済審議会経済構造調整特別部会中間
報告の推計では,海外現地生産による輸出転換率を
5
0%と仮定して,2
0
0
0年には約6
0万人の国内雇用機
会が失われる.また, 円高の影響の懸念される自動
車,電気機械の両産業については,労働組合の実施
した研究報告書がある.
自動車総連 『自動車産業の国際的構造変化 と労働
組合の対応について』(
1
6
8
8年 5月)の 試算 では,
(
イ
)
北米での乗用車2
0
0万台の現地生産に よって完成
車輸出が 1
6
0万台減少する,(
ロ
)
完成車輸入が5
0
万台
になる,(
J
h
)
完成車の国内生産は 1
,
0
6
0万台にととま
る (うち国内向け5
5
0
万台),(
⇒部品の現地調達率は
7
5%とす る,㈹部品の輸入比率は1
0%に増える,な
ど最悪の条件を仮定 したケ-スで 国内雇用へのマイ
ナスの影響は2
3.
5
万人 と試算している .また,電気
労連 『円高と海外直接投資の電機産業に対する影響
度分析』(
1
9
8
7年 6月)では, 電気機械の 海外直接
投資による国内全産業の雇用減は約 5.
3万人 と推定
(
1
9
8
9
.
3
)
港 外 現 地 生 産 と労 使 関 係
-8
1-
えて, この 2年 ほ どの間に筆者 の蒐 集 した資料
ば, Ne
ws
we
ek 誌 (
1
9
87
年 2月 2日号) は,
に よって, 自動 車 の対 米現 地生 産 の拡 大 に と も
"
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sMaybeJ
apane
s
e" とい う
な う労使関係 上の新 た な紛 争事 例 を紹介 す るこ
セ ンセー シ ョナル な特集 記事 を組 んだ. 同誌 は
とにしたい.
日系現地 企 業 に よるア メ リカでの雇用量 を25万
1
. トヨタ 自動車 の ケ ンタ ッキー州進 出に
と もな う建設工事 をめ ぐる労使 紛争
0年 間で は さ らに84万人 に
人 とし, それ が次 の1
まで増 え るだ ろ うとの通 産省の推 定 を紹 介 して
い る. また, 同誌 はア メ リカ 現地雇用 量 の大
39
3億 ドルの う
日本 の対外直接 投 資 累計額 1,
,
00
0人, ソニきな十企 業 として,松下 電器 8
0
2億 ドル (
36
% ) を占め, ア ジ
ち ア メ リカは 5
7,
0
00
人 , カ リフ ォルニ ヤ第一銀行 4
,
000人, 日
6
7億 ドル (
1
9%) をは るか に凌 駕
ア地域 への 2
産3,
3
0
0人, ホ ンダ 2,
500
人, トヨタ2,
8
4
7人等
してい る. これ に伴 って,海外 日系企業 の現地
を挙 げてい る10).
9
87
年 7月現在 で 1
54万人 に達 し,
従 業者 数 も1
こ うした現地雇 用量の増大 は, ある程 度必然
この うア メ リカは2
4万人余 りで 第 1位 を占め,
的に 現地 に お け る 労使 関係 上の 紛争 を随伴 す
1万人,第 3位 台湾 1
8万人 ,
第 2位 の ブ ラジ ル2
る.例 え ば,住友 ア メ リカの性差 別訴訟 (完 全
4位 韓 国 15万人 を 大 き く ひ き は な して い
敗訴), トヨタの ケ ンタ ッキー州 ジ冒- ジ タウ
第
る9
)
. したが っ七
ァ メ リカ現 地 に おけ る 日系
企 業の プ レゼ ンス も目立 つ よ うに な り, 例 え
してい る.電気機械では海外進出が進んでいる割に
は国内雇用へのマイナスの影響が比較的少いが,こ
れは産業連関に よる他産業への波及効果が 自動車ほ
ど大 きくないことを別 として,(
イ
)
電機業界自体が内
0
%台か ら2
0
%台へ低
需シフ トによって輸出比率を4
下 させたこと,(
ロ
)
コー ドレス ・アイロンや大型 TV
のように高級品への需要シフ トが生 じたこと,(
,
う
部
品の海外調達 も一時増えは した ものの,晶質及び納
=)
期の点で 再び 国内調達へ 回帰 しつつ あること, (
1
9
8
7
年以降,半導体市況が回復 したこと,(
d
t
)
1メガ
DRAM,VTR,CDプレイヤー,ファクシ ミリな
ど日本製晶が世界市場 をほぼ独 占している製品の生
産拡大が大 きいこと,などに よる. この うち,(
I)
(
・
i
T
t
)
は,海外現地生産による確論上の 国内雇用減の試算
とは直接関係はないが, カラーTV等の海外現地生
産が生 じたさいに, 当該生産 ラインの労働者が失職
することな く社内の他の成長部門配置転換される形
で雇用減少 を喰い止める要因にはなった.
なお,今回の円高の直後,労働省では雇用問題政
策会議 を開催 し 「海外直接投資の増大に伴 う雇用問
2
年1
1
月1
6日)
題-の対応の在 り方について」(
昭和6
検討結果を公表 した.その後,円高の進行状況 を見
つつ,6
3
年1
2月には自動車労使の,6
4
年 1月には電
機労使の非公式協議の場を設定 してウォッチ ングを
続けている.
西嶋昭他 「電機産業等我が国企業の海外進出の状
況 と国内雇田への影響に 関する 調査研究」(
雇用職
業総会研究所 及び国際産業 ・労働研究センター,昭
和6
3
年1
1
月)は主に電気機械メーカー 7社の海外進
出にかんす る事例調査である.
9)東洋経済 『海外進出企業総覧』1
9
8
8
年版,p
・
による.
3
4
ン工場建 設 に伴 う紛争, サ ン ヨーの アー カ ン ソ
ー州 フ ォ レス ト・シテ ィ工場 のス トラ イキ (
先
任権 の変 更) な どの事件 が注 目を集め た.
9
87
年 2月∼ 2月,文 部省
筆者 は, た また ま1
の短 期在 外研 修で ミシガ ン大 学に滞在 中, 中西
部 の 日系企業 及び ア メ リカ企 業 を調査 す るかた
わ ら, トヨタ ・ケ ンタ ッキー事件 の報 道 記事 を
蒐 集 したので , それ に よって この事件 の概 要 を
整理 して み たい.
9
8
6
年 1月24日, ジ
ケ ンタ ッキー州議会 は ,1
ョー ジ タ ウン-の トヨタ自動 車工場の誘致 を決
定 した. 同州 上院合 同決議第 7号 11)は, トヨタ
自動 車誘致 の ための インセ ンテ ィブとして概要
次の よ うに 決 定 して い る. すなわち, 同社 が
1
9
8
8年創 業 を 目標 に同州 スコ ッ ト郡 に50
万 ドル
0万台の 自動 車組 立工場 を建 設
を投 資 して年 産2
し, 3,
0
0
0人 を雇用 す るこ とに よって,州 経済
の発展 に寄与 す るこ とにかん がみ
州 政府 は以
1)
工場 用地 の取
下 の特 典 を与 え る.す なわち, (
得に 1
,
00
0万 ない し 1,
50
0万 ドル ,(
2)
用地 周辺
の整備 に 2,
00
0万 ドル ,(
3
)
ジ ョ- ジタ ウン近 郊
70
0万 ドル, (
4)
要員の
の ハ イウ ェ イの建 設に 4,
1
0
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2-
エ
コ
、
L
l現地での 日本式経営に対す る危倶の念の表
6)
当面最低 1
,
0
0
0万 ドルの基
教育課程 の整備 , (
金 をもって 自動車工業 に関連す る単科大学 レベ
第1
0
0号
の遅延 (5月 7日)
.
募集及び技能訓練 に 6
,
5
0
0万 ドル, 持)スコ ッ ト
郡 に移任 して来 る 日本人家族 を援護す るための
ア
明 (東 ケ ンタ ッキー大学経営学教授 Ro
be
r
t
ルの技能研究開発 セ ンターの設立.以上 を合計
K.La
ndr
um の意見) (8月1
8日).
・
コトヨタ-供与 され た 1億 2
,
5
0
0万 ドルの誘
,
70
0万 ドルの 補助 と なる. ただ
す る と 1億 5
致策の遺書訴訟 (
州土地 ・建物委員会vs州
し, その後 1
9
86年に新聞報道 され た数字 では,
r
r
yHa
ye
s
). フランク リン巡
財務部長 La
州の与 えた補助金 は総額 1億 2
,
5
0
0万 ドルとさ
回裁判所における審問 (8月1
9日).
oラル フ ・ネー ダー ・グルー プに よるケンタ
れてい る.
この誘致 プロジェク tが地元の労働界の大 き
ッキー州の対 トヨタ過度助成は税法違反 と
な反綾 を招 くに到 った契機は, 同工場の建設 を
O の建築 ・
す る批判.これには AFL・CI
請負 った大林組 が,未組織 の建築 労働者 を使用
建設業部門 も同 じ批判 を展 開 してい る (8
月2
4日).
しようとし たためで ある. すなわち, 大林組
は,反労組 的で悪 名高い ダン トリー ・デ ィー キ
o中曽根首相の 「ア メ リカ人雑種 説」 に対 し
ンズ ・メッシュ ・スモ- タ&スチ ュアー トの メ
ケ ンタッヰー 州建築 ・建設業 評議会 議 長
ンバーで ある法律事務所 を代理人 として , 同州
J
i
mmySt
e
war
t(黒 人)が猛反発 (
1
0月1
5
O 系建築関係1
5労組の組合員の雇
の AFL・CI
日).
プン ・シ ョップ制)基準で入札価格の低い もの
01
1月 4日の州知事 予選で現役の トヨタ誘致
派女性知事 Ma
r
t
haLa
yneCo
l
l
i
ns対民主
覚 の対立候補等 との論戦 (
1
0月2
2日).
9
86
年
を選 んだにす ぎない と主張 してい るが,1
oケ ンタ ッキー建築 ・建設業労働評議会は ト
用 (
hi
r
i
ngha
l
lか らの雇用) を 排除 し ようと
mer
i
ts
ho
p"(オー
した.大林組は, たんに "
1月以降,地元では各種 の反対運動が展開 され
ヨタ日工-の州の助成が さらに固定資産税
るこ とにな った.い まその経過の うち主な もの
,
1
0
0万 ドル を 含 んで い る と 非難
免除亀 6
を拾 ってみ ると12).
(
1
0月31日).
O州の トヨタ用地 1
,
6
0
0エー カーの無償供与
の違憲問題
o首都 ワシン トン日本大使館周辺 における全
(1月2
4日).
米建設業労働組合の トヨタの 反組合 主義へ
1
1月1
7日).
の抗議 デモ (
o トヨタ誘致 の費用 ・便益の見積 りに対す る
反論.州政府の見積 りでは インセ ンテ ィブ
o無組合 の建設業者及び下請業者の全国組織
供与の総額 は 1億 2
,
50
0万 ドル, これに対
(
As
o
ci
at
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de
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sa
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)
,
8
9
0万
して州の受 ける税 の増収分は 4億 8
は ケ ンタッキーにおける工事の続行 を求 め
ドル とな ってい るが, それ ほ どの利益はな
トヨタ支持の キ ャンペ ー ンを展 開. オー プ
のではないか との疑問 (3月26日).
ンシ ョップ制の もとに組合員 も未組織 労働
o工場 -の ア クセスのための ハ イウェイの建
者 をも使用す るメ リッ ト・シ ョップ制の維
持 を要請 .
設 に対す る-地 主 と州 との訴訟に よる建設
1
2)以下の叙述は主として地元の新聞二紙の下記
日付記事による.
TheCo
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4
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8
6.
O
ケ ンタ ッキ-州 が新 たに富士重工 ・いすず
グルー プに も トヨタと類似の誘致優遇策 を
提供す るにつ き,攻 めて トヨタ-の インセ
l
l
ンテ ィブの内容について議論が活発化 (
月 9日).
この間,1
9
8
6
年1
0月1
4日には,AFL・CI
Oケ
)
刊支部の大会 が開かれ,次の項 目を
ンタッキ-,
決議 した.(
1
日 ヨタ (
大林組) は, ケ ンタッキ
(
1
9
8
9
.
3
)
- 83-
海 外 現 地 生 産 と労 使 関 係
- 州建築労働組合 を分裂 し破壊 しようとした.
前の純益8
,
2
50
万 ドルの一年 当り平均額4
1
5万 ド
2洲 政
われわれは トヨタの政策変更 を求め る, (
ルはほぼ帳消しになり, もし一人 当りの公共費
府の トヨタ-の インセンテ ィブ供与は過大であ
支出が 1
8
0ドル以上になれば,実質的には持ち
り,その費用 ・便益の正確な数字 を求める.
出しになってしま うとい う.
こ うした世論に押 されて,州議会立法調査委
以上の ようなマスコ ミ及び全国的な世論の注
c
ha
r
dG.Si
ms博士の
員会のエコ ノミス ト Ri
目を集めた本件紛争は,結局,大林組 が当初の
0月2
2日提出された.
報告書13)が同年 1
H
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p"主義 を改めて,既採用の1
,
1
0
0
人
Si
ms報告書に よると, 1
9
89
年完成時におけ
(そのほ とん どが非組合員)の ほかは, 州 建築
を トヨタ工場の直接雇用量は 3
,
0
0
0人, その他
hi
r
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ngha
l
l
)から協定賃金
労組の就労周旋所 (
1
9
8
7
年 ピーク時で 3
,
2
0
0人)及び
に建設関係 (
翠 (
既採用者 よりも高い)で雇い入れ るこ とを
産業連関に よる波及効果 を含めて1
9
8
9
年の雇用
認めることに よって解決した.州建築 労組 と大
効果は ピー ク時 8,
1
1
3人,その賃金 ・俸給支払
9
8
6
年1
1月2
3日に 締結 さ
林組 との 間の 協約は1
総額 2億 ドル, また1
9
9
1
-2
0
06
年の問の年平均
れ,同年1
2月 1日発効 した.こ うして,本件紛
8
4
2人, 賃金 ・俸給 支払 総額 1億
雇用量 は 5,
争は労力組合側の完勝で終 った14).
6,
4
0
0万 ドル と推定 された.
また トヨタか らの固定資産税,売上税,法人
5
0万 ドル, これに従業員の
所得税等の税収 は 9
2
. 在米 日系 自自動車企業の採用 にお
ける人種差別問題
の利子率で現在価値に還元すると 2億 1
,
9
6
1万
1
9
8
7年 3月,ミシガン大学滞在 中に,筆者 は同
be
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tE.
Col
eとともに,隣接す
大社会学教授 Ro
Ho
nda
るオハイオ州 メア リズ ビル在の ホンダ (
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.
) を訪ね,Q
ドルにと推定 された.
C サー クルの実態等 を調査 した.その さい,請
1
9
86
年か ら 2,
0
0
6年 まで2
0
年間毎年 5
所得税 (
%の賃上げ を想定) を加えると誘致に よる税収
3
5万 ドル と推定 され た.これ を8%
増は 5億 2
他方, 州政府に とって の誘致 コス トは, 各
がたまたまホンダの現地における要員採用原則
種の インセ ンテ ィブ (
訓練費の6
0
%, 5年間で
l
e教授は 同社が メア リズビ
の問題にふれ, Co
3,
3
0
0万 ドル等),公債支払利子 (
2
0
年間,利率
7.
5%)8,
5
8
7万 ドル,合計 2億 1
,
0
8
7 ドルとな
4
51万 ドル.した
り, 同じく現在価値で 1億 2,
ルに立地 して以来,労働者の募集範囲 を通勤時
間 との関係か ら半径2
5マイル以 内に制限してい
がって 差額 としての 純益は 現在価値ベースで
ら約3
0マイル)周辺の黒人人口の多い地域 を回
9,
5
1
0万 ドルに 上 ると推定 され た.
避する ものであ り,実質的な人種差別であると
しかし な が ら, 公債 (
i
ndus
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nue
bo
nd)に よる 資本調達に 伴 う潜在的な税収減
2,
0
1
9万 ドル (
現在価値ぺ-スで1,
2
5
6万 ドル)
,
2
5
4万 ドルに減る.さら
を控除する と純益は 8
るのは,事実上州都 コロンバス (ホンダ工場か
の説 を展開 された.氏 はかねてか らこのこ とを
日本の ジェ トロ会長に も私的に 申し入れていた
と述べていた.
在米 日系企鼠
とくに自動車 メーカーや 自動
,
8
4
2人 (家族 を含め ると
に, 労働者の 流入 5
車部品 メーカーがすべ て反組合政策や人穫差別
23,
0
0
0
人) に伴 う州の公共費用 (学校,警察等
政策 を採 っているわけではない.筆者の個人的
の行政費用)の 負担は 無視 されて いる. そこ
な限 られた見聞だけで も, 日産 テネシ-州 スマ
3,
0
0
0人に一人 当り年間
もし も流入人口増2
-ナ工場やホンダ (ボ イラーマン3人 を除 く)
1
8
0ドルかかると す ると, 上記公共費用増控除
は UAW の再三の組織 化攻勢 を斥け無組合 を維
で
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r22,1986.
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1
4
) 日本労働協会 『海外労働時報』No
.1
1
9(
1
9
87
年 4月);AFL
・
・CI
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,3
1
4
8
,Nov.2
9,1
9
8
6,
pp.
1
26.
- 84-
エ
コ
持 してい るが,NS
K (日本精工) ミシガ ン州 ア
ミ
ア
第1
0
0号
アメ リカの 自動車工業は,伝統的に黒人に対
ンナ-パー工場や 日立金属 の ミシガン州エ ドモ
して相対的に多 くの良い雇用機会 を提供 して き
ア工場 は,元 々ア メリカ企業 との合弁事業 とし
た.例 えば,EEOCの報告書に よると,1
9
8
4年
て始まった沿革か らして, もとか らあった全米
に ア メリカの ビッグ ・ス リーの雇用す る全労働
UAW)の支部又は分会に組織 され
自動車労組 (
者 の1
7.
2%,及び ホワイ ト・カラ-の 8.
4%が
ている.しかし,かつて反組合政策で 「有名」
黒人で あ った.これは, アメ リカの軍隊 を除 く
を ととろかせ た 東芝 テネシー工場15)の ほかに
労働力人 口の1
1
%が黒人であることに比べて,
ち, 日本電装の ミシガ ン州 バ トル グリー グ工場
ビッグ3が相対的に多 くの黒人労働者 を雇用 し
の ごとく,農村地帯に立地 してデ トロイ ト周辺
9
7
9
年 9月以
てい る証左 と なる. とこ ろが, 1
よりは安い労賃で非組合員のみ を雇用 してい る
栄,外国企業 との競争激化に ともな って, ア メ
会社 も少 くない.一般 には, 日系企業 は南部や
リカ自動車工業の雇用量は激減 し, それに伴 っ
中西部で も農村地帯 に新現工場 を立地 し,若い
て UAW の 組合員数は 1
9
7
9
年の 1
5
0万人 か ら
非組合員の 労働者 を 雇い 入れ るので, 既存の
1
9
8
7
年の 1
0
0万人にまで三分の一 も減少 した.
大都市周辺のア メリカ系 メーカ- よりもレーバ
と くに大潮地方における黒人の失業率は3
6% と
ー ・コス トが安い.地方,現地 アメリカ企業は
7% を上回 り,その被害 を集 中的に蒙 っ
白人の2
先任権 に よる雇用保障 とか らんで高齢労働者 を
た.こ うした背景のなかで, 日系 自動車 メー カ
多 く抱 える結果になるため,年金等の付加給付
ーの進出, と くに南部-の進出は,競争上 ア メ
の コス トが嵩む傾 向があ が
6
). 日系企業への程
リカ企業の南部への 移転 をも促す 形に な り,
々の批判の背景にはこ うした問題 も絡 んでい る
UAW の潜在的不満 を刺激 してい る. その うえ
ように思われ る.
・
日系 メーカーは高能率のため思 ったほ ど雇用吸
それは ともか く,Col
e教授は,その後前記の
,
収 力がな く, またエ ンジン, トラス ミッシ ョン
問題意識 を 掘 り下げ 「在米 日系 自動車企業の
な どの主要部晶の多 くを日本か ら輸入 してい る
工場立地 と 雇用 パタ← ン に おける 人種差別要
ため,他産業-の雇用の波及効果 も少い, とい
因」17)なる 論稿 を 『カ リフ ォルニア ・マネジメ
うわけである.しか も, 日系企業 は先述の ホン
1
9
8
8年1
0月号) に発表 さ
ン ト レビュ-』誌 (
ダの事例に見 られ るように,意図的な人種差別
れた. それに よって, 日系 自動車 メーカー の
をして い るの では ないか, とい のが Coel&
「人種差別」的採用政策 を概観 してみ よう.
Des
ki
ns調査の問題意識である.
1
9
8
8年 3月2
4日, ア メリカの雇用機会平等委
Col
e & De
s
ki
nsは, まず北米の 日系 自動車
員会 (
EEOC)は, ホンダ (
HAM)が その労働
メーカ-7社 と部品 メ-カ-9
1
社 を 対象 とし
者採用における差別政策についての訴訟 に対す
て,各工場の従業員 中の黒人比率 と, それ ら各
る和解金 として, 3
7
0名の黒人及び女性に対 し
工場の所在地半径2
6マイル以 内 (これは通常の
て総額 6
0
0万 ドルのパ ック ・ペ イを支払 うこと
通勤可能距離 と考え られてい る) の人 口の中の
に同意 した 旨発表 した.
黒人比率 とを比較す る.同様 の方法で, アメ リ
1
5)東芝テネシ-工場の反組合政策については,
拙稿 「日本の対外直接投資と労使関係」(
前掲)の
なかで詳 しく分析してある.
1
6)例えばフォー ド社が労働者の高齢化に伴 うコ
ス ト増に悩んでいることは, Wo
l
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,
1
9
8
7
年 3月1
5日紙上で報じられている・
1
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9
8
8.
の ビッグ 3の 旧来 か らの 21工場, ビッグ 3が
1
9
8
0年以降新たに建設 した 8新組立工場 (実際
はすべて GM の工場), 及び ビッグ 3が1
9
80
年
1「
再
以降 2億 ドル以上の近代化投資 を加えた3
生 」工場 と比較す る.また,念のために,最近
閉鎖 されたペ ンシル ヴァニア州の フォル クスワ
-ゲ ン工場 (同社はやは り黒人比率が少い と非
難 されていた) をも比較対象に含めてい る.
(
1
9
8
9
.
3
)
海 外 現 地 生 産 と労 使 関 係
第 2表
各工場の労働者募集区域内の
黒人人口比率
地域平均黒人
工 場 の 類 別
人口比率(
形)
フォルクスワーゲン社 ・ペンシル
6.
9
ヴェニア工場
ll
.
7
日系自動車部品企業
1
2.
8
日系自動車組立工場
1
6.
0
GM新鋭8工場 (
Sa
t
um工場を含む)
1
5
.
2
ビ ッグ 3「再生 」3
1
工場
1
9.
8
ビ ッグ 3旧式2
1
工場
GM新鋭工場と日系自動車及び同部品
工場の黒人従業員比率と地域人口の黒
人比率との比較
差
地域人口の従業員中の 格
黒人人口比 黒人比率 C企業の類別
GM新鋭工場
(
除Sa
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n工場)
ホ
ン
ダ
日
産
マ
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ダ
日系自動車部品
5
0社
Co
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s
ki
ns(
1
9
8
8
)
,p.
1
7.
評 を博 してい るマツダの場合で さえ も,周辺地
域の人 口の黒人比率に比べ ると従業員 中の黒人
の割合 は著 し く少い. さらに, 日系 自動車部品
メ-カーは,先述の 日本電装のバ いレグ リ-グ
工場に見 られ るように , 黒人人 口の少い農村地
帯 に立地 して, そこか らさらに少数の黒人 しか
雇用 していない傾向がはっきりうかがわれ る.
選ぶ傾 向があると指摘 されてい る.
第 3表
(形) B
ッ ト・ロックに進出して UAW を受け入れ,好
日系企業は,一般に ドイツ系人 口の多い地域 を
(出典) Co
l
e&De
s
ki
ns(
1
9
8
8)
,p.
1
6,
(形) A
-8
5-
(A-B)
8.
8
- 7.
7
- 5.
3
-1
4.
9
- 3.
6
十
Col
e& De
s
ki
ns調査の問題点
Col
e& De
s
ki
nsは,この調査に基づ く政策
的結論の なかで 次の ような 問題 を捷超 してい
る.
すなわち,これ まで アメ リカの 自動車工業は
黒人 口対 して相対的に多 くの高賃金雇用機会 を
提供 して きたが, 日系企業 の進 出に よって (ど
ッグ 3自体の工場の南部-の移転 を促 したこと
も加えて), 黒人から 良い雇用機会 を奪 う結果
になってい る. しか るに,各州政府は (前節で
見たケ ンタッキー州の ごとく), 州民の税金で
立地自体の非黒人選好
日系企業の誘致優遇策 を講 じ, ただで さえ不平
これ らの各工場 を比較 してみ る と, まず第-
等な雇用機会 をます ます不平等 にしてい る.州
に, フォル クスワ-ゲ ンや 日系 メーカー及び 日
の税金 は,むしろ旧式工場の近代化 とそこでの
系部 品企業は, もともと黒人人 口比率の比較的
労働の再訓練に こそ使われ る べ きで は ないの
少い地域 に立地 を 選 んで い る こ とが 判明す る
か.将来的に,EE
OCは,外国系企業の対米進
(
第 2表).
立地地域の黒人人口比と従業員中の黒人比
出に 当って立地選定 をするさいに,人種差別 を
い ま一つは,それぞれの立地地域の内部にお
排す る ような新 しい規制 を加えるべ きで はない
か.
いて,母集団たる地域人 口中の黒人比率 と従業
この ような Co
l
e& De
s
ki
nsの主張には,人
員 中の黒 人比率 とを対比す るこ とである.第 3
種問題,公民権法 とい う複雑な問題 を抱 えるア
表の ように,明 らかに 日系各社は GM の新設工
メリカに進 出す る場合のデ リケー トな問題 を鋭
場に比べて も黒人従業員の比率が地域の黒人人
く指摘 した もの として, 傾聴に 値す る 点が多
,
口比率に 比べて 著 し く低 く 「人種差別」 を行
い. しかし,い くつかの問題がない わけではな
って い る証拠の ように 思われ る. すなわち,
い.一つは,彼 らの研究に即してい えば,周辺
GM の新鋭工場では工場の従業員の25.
4%が黒
地域 の人 口中の黒人比率で はな く,労働 力人 口
人で あ り, その比率は周辺地域の人 口の黒人比
中の黒人比率 と従業員中の黒人比率 とを比較 し
率 よりもはるかに高い.他方, ホンダは,元 々
た方が良か ったであろ う.
黒人人 口の少い地域に立地 してい るうえに,周
第二は,彼 らも論文中でふれ てはいることで
辺地域の人 口に比 べて も従業員 中の黒人比率が
あるが, これ まで欧米企業に此 して外国での現
きわ立 って少い. また, デ トロイ ト近郊の フラ
地生産に不 馴 れな 日本企業がは じめてア メリカ
-8
6-
エ
=
l
ミ
ア
第1
0
0号
に進出する場合には,種 々の リスクを負 ってい
第三は, 最 も大事な論点で あるが, Co
l
e&
るわけであるか ら,あるてい との危険回避は,
Denki
ns論文では,間接的な雇用効果にふれて
企業 として当然考えなければな らない18). もち
いないことで ある.たまたま筆者の ミシガン大
ろん,それはその国の法的秩序及び公序良俗に
学滞在中に見聞した事例だが, 日本研究センタ
反するものであってほならないが, 日系企業の
-で働いていた某女性職員 (
彼女は 日本語が堪
現地進出に よってアメリカの国内雇用に プラス
能であった) が, フラ ッ ト・ロックで創業 した
の効果があることを思えば,少 くとも現地進出
マツダ社に二倍以上の高給で引 き抜かれた.こ
の当初には若干の危険回避策 をとることは認め
の場合, もし も後任のポス トに黒人が雇用 させ
9
7
0
年代初頭
られ るべ きであろ う.そ もそ も,1
までは,ア メリカの労働組合 自身がアメ リカの
るな らば,マツダその ものは前述の ように比較
的僅かの黒人 しか雇用 していない として も,間
多国籍企業の海外 「
逃避」に よる 「雇用輸出」
接的に黒人の雇用機会 を拡大することに貢献 し
を非難 していたのであるか ら,今や 日本が 日本
たことになるはずである.すなわち,現地の雇
国内の雇用 をあるてい ど犠性にして も現地生産
用拡大効果 を計測するさいに産業連関表 を用い
にの り出してい ること,しか もそれがアメリカ
るように, この場合に も二次的,三次的な黒人
製造業の再生のために も少なか らざる刺激 を与
雇用-の波及効果 を考慮すべ きであろ う.
えている点 を評価すべ きであろう.
1
8
)この点は,Co
l
eの別の論文であるていと吟味
されている.Pe
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6
.
(
横浜国立大学経済学部教授)
Fly UP