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海外現地生産と労使関係
海 外 現 地 生 産 と労 使 関 係 - 自動 車工業の対米直接投資 を中心 として- 代 神 和 俊 これ に ともな ってわ が国企業 の海外 現地 生産 は じめ に が新 たな問題 を引 き起 こす例 が 目立つ ようにな わが国の対 外直接投資は,戦 後,昭和2 6 年に 8年初 めの 田中首相の東南 アジ って きた.昭和4 再 開 されて,昭和3 5 年か ら貿易及び資本 の 自由 ア野間 に さい しての反 日デモは 当時人 々の耳 目 化の なかで段 階的に 自由化措置 が講ぜ られて き を集 め, それ を契機 として,わが国で は国際金 たが,本格 的 な増加 を見 たのは,昭和4 0年代 の I MF.J C)な どが 中心 とな 属 労連 日本協 議会 ( 未以降であ る.大蔵省の対 外直 接投資届 け出統 り, 多 国籍企業労働問題連絡会議が 設置 さ れ 0年代 に一挙 に 40 0億 ドル も 計 でみ る と,昭和5 て,労使 関係 の分野で は国際的に も注 目される 0 年代 に入 る と円高 で さ らに うな ぎ上 り 増 え,6 迅速 な対応 が な されて きた1). た また ま, 当時 2 年末 まで に 1 , 3 9 3億 ドルに急増 に増加 して ,6 は,国連 において も多 国籍 企業 の行動 規範 の策 してい る (第 1表). 定 をめ ぐる議 論が行われて お り,わが 国か らは 第 1表 日米の対外直接投資額 対外直接投資累計額 ( 百万 ドル) 度 年 1 5, 9 4 3 5 5 , 4 8 8 1 2, 21 7 2 2, 3 2 0 3 3 , 3 6 4 昭和 26 - 5 0 - 5 9 51 ′ 5 0 6 1 2 6(4-1 2月) 累 計 額 f 1 3 9 , 3 3 4 注) 1 . 計数は昭和5 2年度までは許可ぺ-ス、同5 3 年 4月 1日から同55年11 月三 0日までは届出の 許可ベース、同年1 2月 1日以降届出ベースで 計上。 2 . 端数調整により合計金額 と合わない。 ( 出所)大蔵省 『 第1 2回大蔵省国際金融局年報』昭和 6 3 年版,p. 5 1 8. わが国の対外直接投資 は, もともと商業,金 敬,不動産 ( 但 し昭和5 5年 1 2月 1日以降 は改正 外為法の施 行 に伴 い,不動産取 得 は対外直接投 資に計上 し ない こ となに った) な どの比重 が高 く, その 目的 も商権 の拡大や海外資源 の開発 な 0 年 間には,貿 ど多岐にわ た ってい るが, この 1 易摩擦の回避 を目的 とす る製造業 の直接投 資 が しだいに重要性 を帯 びて きた. 東大の小宮隆太郎教授 がその議論にエ キス パー トとして参加 されてい たこ ともあって,筆 者 と の問に 「国際公正労働 基準 」 をめ ぐる論争 が行 われた こ ともあ る2 ) . また, た また ま ロ ッキー 1)1 9 7 3 年 7月1 6日に 国際 金属 労連 日本 協諌会 (IMF-JC)加盟の六単産 (自動執 鉄鋼,電気, 造船重機,合金同盟,全機金)が中心に なって,合 繊同盟,合化労連,全化同盟,外資系企業労働組合 連絡会議の五団体に よって 「多国籍企業労働問題対 策労組連絡会議」( 略称, 多国籍労組会議)が 発足 した.同年秋には,多国籍労組会譲は,労働省に対 して政労使三者構成の 「多国籍企業労働 問題連絡会 議」を発足させるよう働 きかけ,1 1 月には政府と労 働側との連絡会議が発足 した.使用者側の参加は遅 れたが翌1 9 7 4 年 4月には日経連代表もこれに加かっ て連絡会譲は正式に発足 した.さらに同年 7月には 在外企業協会が 設立 され,連絡会議に 加わって い 伊 る. 拙稀 「日本企業社会の 国際化 と労働問題J( 束光晴他端 『 世界の企業』第 6巻 r国際企業社会と 日本」,筑摩書房,1 9 7 6年所収)参照. 2) 当時の諌諭の背景 としては,現代総合研究集 1 97 4 年1 団 「日本企業の海外進出に 関する 接雷」( 月) , 国連事務局報告 『多国籍企業 と国際開発』( 国 際開発ジャーナル社, 1 9 7 3年1 2 月),小宮隆太郎 ・ 神代 和欣 「多国籍 企業 と労働 絶食」( 『 経済 セ ミナ ー』1 9 7 6年 8月号 及び 9月号), 小宮隆太郎 「開発 途上国と直接 投資政策- 現代 総研 『 提言』の批 判」( 『 経済セ ミナー』1 9 7 6 年 9月号) ,神代和歌 「国 -約- エ コ 、 ア 第1 0 0号 ド事件 との絡み もあ って,衆 議院 に特別 小委 員 輸 出代替的 な海外現地生産 が急増 し, 国内の雇 会 が設 け られ ,筆者 も参考人 として意見 を述べ 用機会 の 「 輸 出」にか んす る問題が真剣 な議 論 たこ とがあ る3 ) . の対象 として浮 上 して きた.筆者は労働省の要 その後,わが国の海 外直接 投資 に ともな う現 請 を受 けて,数年前 に この間題 の研 究責任者 と 地進 出企業 の労働条件 や労使 関係 については, な り, 自動車,電機等の対米及び対東南 アジア 日本労働協会 の各 国調査 団 が毎年派遣 され,す 現地 生産に伴 う雇用効果 を事例調査 と産業連関 で に十数 ヶ国についての報告書が公刊 されてい 分析 とを 結び つけて 検討 した7) . それ に よる る.筆者 自身 も, 当初 か らそれ に協 力 し,すで と,昭和 5 0 年 の産業連関表 (一部修正) に基 づ に シンガポール, オス トラ リアについては報告 5万 台の乗用 車生産 ラ イ いて,わが国か ら年産 2 書 を公刊 してい る4 ) . また労働省で もその後主 ンを 1本 ア メ リカに移 した場合, それ に ともな 要 国につい て現地 進 出企業 の労使関係にか んす う輸 出代替,部品輸 出,投 資財輸 出な どに よっ る査察報告 を出 してい 85 ) . このほかに も, 筆 て, わが 国の雇用機会 は約3 2 , 6 0 0 人 の純 減 にな 者 は, これ まで折 りにふれ て 国際会讃等で この る と試算 され た. その後 の現地 部品調達比率の 問 題 をと りあげ, 実態把握 に つ とめて きた6 ) . 増 大 や ブー メラン ( 現地進 出企業か らの製 晶の これ とは別 に,昭和 5 0 年 代半 ば以降, 円 レー 逆輸入) の増 大 な どを考慮 す る と,「雇用輸 出」 トの急激 な上昇 に と もな って, わが国製造業 の の規模は さらに大 き くな ってい る もの と想像 さ 際労働条約 と公正労働基準」( 『 経済セ ミナー』1 97 6 年1 0月号). t i na t i oa lEnt e r pr i s e sa ndSo c i l a なお,I LO,Mul Po l i c y( 1 9 7 3 ) ,(日本労働協会訳編 『多国籍 企業 と 労働政策』 日本労働協会,1 9 7 4年) も 「公正 労働基 準問題」を取 り扱 っている. また,多国籍企業時代 の国際的労使関係のルールとしての国際労働の意義 が,既存の国際労働漆たるI LOを中心とした国際労 働法とは基本的性格 を異にす ることについては,花 見忠 『 海外進出企業の労使関係』 日本経済新聞社, 1 9 8 3 年)参照. 3)昭和51 年1 0月2 0日,衆議員外務委員会多国籍 企業等国際経済に 関する小委員会会議録 『 第7 8回 国会第 1類第 4号附属の 1,昭和51 年1 0 月2 0日). 4) このうち筆者が調査団長としてまとめた もの は次の二点である. 日本労働協会編 『わが国海外進 出企業 の 労働問題 - シンガポール』( 昭和5 0 年3 月,同協会);同 『わが国 海外進出企業の 労働問題 - オース トラT )ア』( 昭和51 年,同協会). 5) 日本労働協会 「米国に おける日系企業の労働 問題」第 1次 調査報告 ( 昭和54 年版),第 2次調査 報告 ( 5 5年度),第 4次調査報告 ( 57 年 3月). 6)Ea z ut o s hiKo s hi r o" La bo r Re s po ns e st o t heMul t i na t i o na 一 s:A Vi e wf r o mJ a pa n"( 1 9 7 5 年 3月に東京で開催された t he1 9 7 5A si anCo nf e r e nc e on l ndus t r i l Re a l a t i o nsoft heJ apa nI ndus t r i a lRe l a t i o nsRe s e a r c h As s o c i a t i o nにおける 報告 ;『エコノミア』第54 号,1 9 7 5年 7月所収);秤 代和歌 「日本の対外直接投資と労使関係- 石油危 機後の 日本の経験」 ( 第 7回日独文化交流セ ミナー, 1 9 7 9 年 9月,東京における報告 :大河内-男編 『 比 較研究 ・石油危機後の 日本 ・西 ドイツ経済』 日本経 済新聞社,1 9 8 1 年所収). れ る. また,北米におけ る乗用車の現地 生産規 ( - 1 99 0年 まで には 20 0万台 を超 す もの 模 の拡大 ( と予想 さる) に ともな って, 日本か らの対米輸 出枠 との振替 えな ど不確実 な要 素が増 大 してお り, ア メ リカ新政権 の通商政策の方 向 と も絡 ん で,将来 的には深刻 な事態の発生す るこ とも懸 念 され が ). 本稿では, この よ うな経緯 を潜 ま 7) 日本 労働 協会編 『 海外投資と雇用問題』(日 本労働協会,昭和5 9 年 3月). 8)通産省産業構造審議会 『 21世紀 産業社会の碁 本構想』( 1 9 8 6 年 5月)の推計では, 製造業 の海外 直接投資の 今後の 年平均伸び率を1 5% と仮定する と,西暦2 0 0 0年までに9 7 万人の国内雇用機会が失わ れる.また,経済審議会経済構造調整特別部会中間 報告の推計では,海外現地生産による輸出転換率を 5 0%と仮定して,2 0 0 0年には約6 0万人の国内雇用機 会が失われる.また, 円高の影響の懸念される自動 車,電気機械の両産業については,労働組合の実施 した研究報告書がある. 自動車総連 『自動車産業の国際的構造変化 と労働 組合の対応について』( 1 6 8 8年 5月)の 試算 では, ( イ ) 北米での乗用車2 0 0万台の現地生産に よって完成 車輸出が 1 6 0万台減少する,( ロ ) 完成車輸入が5 0 万台 になる,( J h ) 完成車の国内生産は 1 , 0 6 0万台にととま る (うち国内向け5 5 0 万台),( ⇒部品の現地調達率は 7 5%とす る,㈹部品の輸入比率は1 0%に増える,な ど最悪の条件を仮定 したケ-スで 国内雇用へのマイ ナスの影響は2 3. 5 万人 と試算している .また,電気 労連 『円高と海外直接投資の電機産業に対する影響 度分析』( 1 9 8 7年 6月)では, 電気機械の 海外直接 投資による国内全産業の雇用減は約 5. 3万人 と推定 ( 1 9 8 9 . 3 ) 港 外 現 地 生 産 と労 使 関 係 -8 1- えて, この 2年 ほ どの間に筆者 の蒐 集 した資料 ば, Ne ws we ek 誌 ( 1 9 87 年 2月 2日号) は, に よって, 自動 車 の対 米現 地生 産 の拡 大 に と も " Yo urNextBo s sMaybeJ apane s e" とい う な う労使関係 上の新 た な紛 争事 例 を紹介 す るこ セ ンセー シ ョナル な特集 記事 を組 んだ. 同誌 は とにしたい. 日系現地 企 業 に よるア メ リカでの雇用量 を25万 1 . トヨタ 自動車 の ケ ンタ ッキー州進 出に と もな う建設工事 をめ ぐる労使 紛争 0年 間で は さ らに84万人 に 人 とし, それ が次 の1 まで増 え るだ ろ うとの通 産省の推 定 を紹 介 して い る. また, 同誌 はア メ リカ 現地雇用 量 の大 39 3億 ドルの う 日本 の対外直接 投 資 累計額 1, , 00 0人, ソニきな十企 業 として,松下 電器 8 0 2億 ドル ( 36 % ) を占め, ア ジ ち ア メ リカは 5 7, 0 00 人 , カ リフ ォルニ ヤ第一銀行 4 , 000人, 日 6 7億 ドル ( 1 9%) をは るか に凌 駕 ア地域 への 2 産3, 3 0 0人, ホ ンダ 2, 500 人, トヨタ2, 8 4 7人等 してい る. これ に伴 って,海外 日系企業 の現地 を挙 げてい る10). 9 87 年 7月現在 で 1 54万人 に達 し, 従 業者 数 も1 こ うした現地雇 用量の増大 は, ある程 度必然 この うア メ リカは2 4万人余 りで 第 1位 を占め, 的に 現地 に お け る 労使 関係 上の 紛争 を随伴 す 1万人,第 3位 台湾 1 8万人 , 第 2位 の ブ ラジ ル2 る.例 え ば,住友 ア メ リカの性差 別訴訟 (完 全 4位 韓 国 15万人 を 大 き く ひ き は な して い 敗訴), トヨタの ケ ンタ ッキー州 ジ冒- ジ タウ 第 る9 ) . したが っ七 ァ メ リカ現 地 に おけ る 日系 企 業の プ レゼ ンス も目立 つ よ うに な り, 例 え してい る.電気機械では海外進出が進んでいる割に は国内雇用へのマイナスの影響が比較的少いが,こ れは産業連関に よる他産業への波及効果が 自動車ほ ど大 きくないことを別 として,( イ ) 電機業界自体が内 0 %台か ら2 0 %台へ低 需シフ トによって輸出比率を4 下 させたこと,( ロ ) コー ドレス ・アイロンや大型 TV のように高級品への需要シフ トが生 じたこと,( , う 部 品の海外調達 も一時増えは した ものの,晶質及び納 =) 期の点で 再び 国内調達へ 回帰 しつつ あること, ( 1 9 8 7 年以降,半導体市況が回復 したこと,( d t ) 1メガ DRAM,VTR,CDプレイヤー,ファクシ ミリな ど日本製晶が世界市場 をほぼ独 占している製品の生 産拡大が大 きいこと,などに よる. この うち,( I) ( ・ i T t ) は,海外現地生産による確論上の 国内雇用減の試算 とは直接関係はないが, カラーTV等の海外現地生 産が生 じたさいに, 当該生産 ラインの労働者が失職 することな く社内の他の成長部門配置転換される形 で雇用減少 を喰い止める要因にはなった. なお,今回の円高の直後,労働省では雇用問題政 策会議 を開催 し 「海外直接投資の増大に伴 う雇用問 2 年1 1 月1 6日) 題-の対応の在 り方について」( 昭和6 検討結果を公表 した.その後,円高の進行状況 を見 つつ,6 3 年1 2月には自動車労使の,6 4 年 1月には電 機労使の非公式協議の場を設定 してウォッチ ングを 続けている. 西嶋昭他 「電機産業等我が国企業の海外進出の状 況 と国内雇田への影響に 関する 調査研究」( 雇用職 業総会研究所 及び国際産業 ・労働研究センター,昭 和6 3 年1 1 月)は主に電気機械メーカー 7社の海外進 出にかんす る事例調査である. 9)東洋経済 『海外進出企業総覧』1 9 8 8 年版,p ・ による. 3 4 ン工場建 設 に伴 う紛争, サ ン ヨーの アー カ ン ソ ー州 フ ォ レス ト・シテ ィ工場 のス トラ イキ ( 先 任権 の変 更) な どの事件 が注 目を集め た. 9 87 年 2月∼ 2月,文 部省 筆者 は, た また ま1 の短 期在 外研 修で ミシガ ン大 学に滞在 中, 中西 部 の 日系企業 及び ア メ リカ企 業 を調査 す るかた わ ら, トヨタ ・ケ ンタ ッキー事件 の報 道 記事 を 蒐 集 したので , それ に よって この事件 の概 要 を 整理 して み たい. 9 8 6 年 1月24日, ジ ケ ンタ ッキー州議会 は ,1 ョー ジ タ ウン-の トヨタ自動 車工場の誘致 を決 定 した. 同州 上院合 同決議第 7号 11)は, トヨタ 自動 車誘致 の ための インセ ンテ ィブとして概要 次の よ うに 決 定 して い る. すなわち, 同社 が 1 9 8 8年創 業 を 目標 に同州 スコ ッ ト郡 に50 万 ドル 0万台の 自動 車組 立工場 を建 設 を投 資 して年 産2 し, 3, 0 0 0人 を雇用 す るこ とに よって,州 経済 の発展 に寄与 す るこ とにかん がみ 州 政府 は以 1) 工場 用地 の取 下 の特 典 を与 え る.す なわち, ( 得に 1 , 00 0万 ない し 1, 50 0万 ドル ,( 2) 用地 周辺 の整備 に 2, 00 0万 ドル ,( 3 ) ジ ョ- ジタ ウン近 郊 70 0万 ドル, ( 4) 要員の の ハ イウ ェ イの建 設に 4, 1 0 )Ne ws wc e k,Fe b r ua r y2 ,1 9 8 7 ,p. 4 7 . ll )Ge ne r l As a s e mbl y,Co mmo nwe a l t ho fKe nt l uc ky,Re gu l a rSe s s i o n1 9 8 6 ,S e na tJ o i n tRe s o ・ l u t i o nNo .7 ,Fr i da y ,J a u na r y2 4 ,1 9 8 6( Co r r e c t e d) . -8 2- エ コ 、 L l現地での 日本式経営に対す る危倶の念の表 6) 当面最低 1 , 0 0 0万 ドルの基 教育課程 の整備 , ( 金 をもって 自動車工業 に関連す る単科大学 レベ 第1 0 0号 の遅延 (5月 7日) . 募集及び技能訓練 に 6 , 5 0 0万 ドル, 持)スコ ッ ト 郡 に移任 して来 る 日本人家族 を援護す るための ア 明 (東 ケ ンタ ッキー大学経営学教授 Ro be r t ルの技能研究開発 セ ンターの設立.以上 を合計 K.La ndr um の意見) (8月1 8日). ・ コトヨタ-供与 され た 1億 2 , 5 0 0万 ドルの誘 , 70 0万 ドルの 補助 と なる. ただ す る と 1億 5 致策の遺書訴訟 ( 州土地 ・建物委員会vs州 し, その後 1 9 86年に新聞報道 され た数字 では, r r yHa ye s ). フランク リン巡 財務部長 La 州の与 えた補助金 は総額 1億 2 , 5 0 0万 ドルとさ 回裁判所における審問 (8月1 9日). oラル フ ・ネー ダー ・グルー プに よるケンタ れてい る. この誘致 プロジェク tが地元の労働界の大 き ッキー州の対 トヨタ過度助成は税法違反 と な反綾 を招 くに到 った契機は, 同工場の建設 を O の建築 ・ す る批判.これには AFL・CI 請負 った大林組 が,未組織 の建築 労働者 を使用 建設業部門 も同 じ批判 を展 開 してい る (8 月2 4日). しようとし たためで ある. すなわち, 大林組 は,反労組 的で悪 名高い ダン トリー ・デ ィー キ o中曽根首相の 「ア メ リカ人雑種 説」 に対 し ンズ ・メッシュ ・スモ- タ&スチ ュアー トの メ ケ ンタッヰー 州建築 ・建設業 評議会 議 長 ンバーで ある法律事務所 を代理人 として , 同州 J i mmySt e war t(黒 人)が猛反発 ( 1 0月1 5 O 系建築関係1 5労組の組合員の雇 の AFL・CI 日). プン ・シ ョップ制)基準で入札価格の低い もの 01 1月 4日の州知事 予選で現役の トヨタ誘致 派女性知事 Ma r t haLa yneCo l l i ns対民主 覚 の対立候補等 との論戦 ( 1 0月2 2日). 9 86 年 を選 んだにす ぎない と主張 してい るが,1 oケ ンタ ッキー建築 ・建設業労働評議会は ト 用 ( hi r i ngha l lか らの雇用) を 排除 し ようと mer i ts ho p"(オー した.大林組は, たんに " 1月以降,地元では各種 の反対運動が展開 され ヨタ日工-の州の助成が さらに固定資産税 るこ とにな った.い まその経過の うち主な もの , 1 0 0万 ドル を 含 んで い る と 非難 免除亀 6 を拾 ってみ ると12). ( 1 0月31日). O州の トヨタ用地 1 , 6 0 0エー カーの無償供与 の違憲問題 o首都 ワシン トン日本大使館周辺 における全 (1月2 4日). 米建設業労働組合の トヨタの 反組合 主義へ 1 1月1 7日). の抗議 デモ ( o トヨタ誘致 の費用 ・便益の見積 りに対す る 反論.州政府の見積 りでは インセ ンテ ィブ o無組合 の建設業者及び下請業者の全国組織 供与の総額 は 1億 2 , 50 0万 ドル, これに対 ( As o ci at e d Bui l de r sa ndCont r ac t or s ) , 8 9 0万 して州の受 ける税 の増収分は 4億 8 は ケ ンタッキーにおける工事の続行 を求 め ドル とな ってい るが, それ ほ どの利益はな トヨタ支持の キ ャンペ ー ンを展 開. オー プ のではないか との疑問 (3月26日). ンシ ョップ制の もとに組合員 も未組織 労働 o工場 -の ア クセスのための ハ イウェイの建 者 をも使用す るメ リッ ト・シ ョップ制の維 持 を要請 . 設 に対す る-地 主 と州 との訴訟に よる建設 1 2)以下の叙述は主として地元の新聞二紙の下記 日付記事による. TheCo ur i e r Jo ur na l Dec .1 8,1 9 8 5;J a m.2 4 , 1 9 81;Ma r . 2 ,1 9 86;Ma y8,1986:Åu g.18,1986; Oc t .1 2,1 9 8 6;Oc t .1 5,1 9 8 6;Oc t .2 2 ,1 9 8 6;Oc t . 3 1 .1 9 8 6, ・No v.9 ,1 9 8 6;Now.1 8 ,1 9 8 6 . Le x i n gi o nHe r a l dエe ade r Ma y7,1986;Åu g. 1 5 ,1 9 8 6;Åu g.18,1986;Åu g. 1 9 ,1 9 8 6;Åu g. 2 4 , 1 9 8 6;Se pt . 2 8 ,1 9 8 6;Oc t .1 3 ,1 9 86;Oc t .1 4 ,1 9 8 6. O ケ ンタ ッキ-州 が新 たに富士重工 ・いすず グルー プに も トヨタと類似の誘致優遇策 を 提供す るにつ き,攻 めて トヨタ-の インセ l l ンテ ィブの内容について議論が活発化 ( 月 9日). この間,1 9 8 6 年1 0月1 4日には,AFL・CI Oケ ) 刊支部の大会 が開かれ,次の項 目を ンタッキ-, 決議 した.( 1 日 ヨタ ( 大林組) は, ケ ンタッキ ( 1 9 8 9 . 3 ) - 83- 海 外 現 地 生 産 と労 使 関 係 - 州建築労働組合 を分裂 し破壊 しようとした. 前の純益8 , 2 50 万 ドルの一年 当り平均額4 1 5万 ド 2洲 政 われわれは トヨタの政策変更 を求め る, ( ルはほぼ帳消しになり, もし一人 当りの公共費 府の トヨタ-の インセンテ ィブ供与は過大であ 支出が 1 8 0ドル以上になれば,実質的には持ち り,その費用 ・便益の正確な数字 を求める. 出しになってしま うとい う. こ うした世論に押 されて,州議会立法調査委 以上の ようなマスコ ミ及び全国的な世論の注 c ha r dG.Si ms博士の 員会のエコ ノミス ト Ri 目を集めた本件紛争は,結局,大林組 が当初の 0月2 2日提出された. 報告書13)が同年 1 H me r i ts ho p"主義 を改めて,既採用の1 , 1 0 0 人 Si ms報告書に よると, 1 9 89 年完成時におけ (そのほ とん どが非組合員)の ほかは, 州 建築 を トヨタ工場の直接雇用量は 3 , 0 0 0人, その他 hi r i ngha l l )から協定賃金 労組の就労周旋所 ( 1 9 8 7 年 ピーク時で 3 , 2 0 0人)及び に建設関係 ( 翠 ( 既採用者 よりも高い)で雇い入れ るこ とを 産業連関に よる波及効果 を含めて1 9 8 9 年の雇用 認めることに よって解決した.州建築 労組 と大 効果は ピー ク時 8, 1 1 3人,その賃金 ・俸給支払 9 8 6 年1 1月2 3日に 締結 さ 林組 との 間の 協約は1 総額 2億 ドル, また1 9 9 1 -2 0 06 年の問の年平均 れ,同年1 2月 1日発効 した.こ うして,本件紛 8 4 2人, 賃金 ・俸給 支払 総額 1億 雇用量 は 5, 争は労力組合側の完勝で終 った14). 6, 4 0 0万 ドル と推定 された. また トヨタか らの固定資産税,売上税,法人 5 0万 ドル, これに従業員の 所得税等の税収 は 9 2 . 在米 日系 自自動車企業の採用 にお ける人種差別問題 の利子率で現在価値に還元すると 2億 1 , 9 6 1万 1 9 8 7年 3月,ミシガン大学滞在 中に,筆者 は同 be r tE. Col eとともに,隣接す 大社会学教授 Ro Ho nda るオハイオ州 メア リズ ビル在の ホンダ ( o fAmer i c aMa n uf ac t ur i ngl nc . ) を訪ね,Q ドルにと推定 された. C サー クルの実態等 を調査 した.その さい,請 1 9 86 年か ら 2, 0 0 6年 まで2 0 年間毎年 5 所得税 ( %の賃上げ を想定) を加えると誘致に よる税収 3 5万 ドル と推定 され た.これ を8% 増は 5億 2 他方, 州政府に とって の誘致 コス トは, 各 がたまたまホンダの現地における要員採用原則 種の インセ ンテ ィブ ( 訓練費の6 0 %, 5年間で l e教授は 同社が メア リズビ の問題にふれ, Co 3, 3 0 0万 ドル等),公債支払利子 ( 2 0 年間,利率 7. 5%)8, 5 8 7万 ドル,合計 2億 1 , 0 8 7 ドルとな 4 51万 ドル.した り, 同じく現在価値で 1億 2, ルに立地 して以来,労働者の募集範囲 を通勤時 間 との関係か ら半径2 5マイル以 内に制限してい がって 差額 としての 純益は 現在価値ベースで ら約3 0マイル)周辺の黒人人口の多い地域 を回 9, 5 1 0万 ドルに 上 ると推定 され た. 避する ものであ り,実質的な人種差別であると しかし な が ら, 公債 ( i ndus t r i a lr e ve nue bo nd)に よる 資本調達に 伴 う潜在的な税収減 2, 0 1 9万 ドル ( 現在価値ぺ-スで1, 2 5 6万 ドル) , 2 5 4万 ドルに減る.さら を控除する と純益は 8 るのは,事実上州都 コロンバス (ホンダ工場か の説 を展開 された.氏 はかねてか らこのこ とを 日本の ジェ トロ会長に も私的に 申し入れていた と述べていた. 在米 日系企鼠 とくに自動車 メーカーや 自動 , 8 4 2人 (家族 を含め ると に, 労働者の 流入 5 車部品 メーカーがすべ て反組合政策や人穫差別 23, 0 0 0 人) に伴 う州の公共費用 (学校,警察等 政策 を採 っているわけではない.筆者の個人的 の行政費用)の 負担は 無視 されて いる. そこ な限 られた見聞だけで も, 日産 テネシ-州 スマ 3, 0 0 0人に一人 当り年間 もし も流入人口増2 -ナ工場やホンダ (ボ イラーマン3人 を除 く) 1 8 0ドルかかると す ると, 上記公共費用増控除 は UAW の再三の組織 化攻勢 を斥け無組合 を維 で 1 3)Ri c ha r d G.Si ns ," Ec o no mi ca ndFi s c a l Ef f e c t so ft heTo y o t aAut oFa c i l i t yo nt h eKe n ,Oc t o b e r22,1986. t u c kyEc o n o my" 1 4 ) 日本労働協会 『海外労働時報』No .1 1 9( 1 9 87 年 4月);AFL ・ ・CI D Ne ws ,3 1 4 8 ,Nov.2 9,1 9 8 6, pp. 1 26. - 84- エ コ 持 してい るが,NS K (日本精工) ミシガ ン州 ア ミ ア 第1 0 0号 アメ リカの 自動車工業は,伝統的に黒人に対 ンナ-パー工場や 日立金属 の ミシガン州エ ドモ して相対的に多 くの良い雇用機会 を提供 して き ア工場 は,元 々ア メリカ企業 との合弁事業 とし た.例 えば,EEOCの報告書に よると,1 9 8 4年 て始まった沿革か らして, もとか らあった全米 に ア メリカの ビッグ ・ス リーの雇用す る全労働 UAW)の支部又は分会に組織 され 自動車労組 ( 者 の1 7. 2%,及び ホワイ ト・カラ-の 8. 4%が ている.しかし,かつて反組合政策で 「有名」 黒人で あ った.これは, アメ リカの軍隊 を除 く を ととろかせ た 東芝 テネシー工場15)の ほかに 労働力人 口の1 1 %が黒人であることに比べて, ち, 日本電装の ミシガ ン州 バ トル グリー グ工場 ビッグ3が相対的に多 くの黒人労働者 を雇用 し の ごとく,農村地帯に立地 してデ トロイ ト周辺 9 7 9 年 9月以 てい る証左 と なる. とこ ろが, 1 よりは安い労賃で非組合員のみ を雇用 してい る 栄,外国企業 との競争激化に ともな って, ア メ 会社 も少 くない.一般 には, 日系企業 は南部や リカ自動車工業の雇用量は激減 し, それに伴 っ 中西部で も農村地帯 に新現工場 を立地 し,若い て UAW の 組合員数は 1 9 7 9 年の 1 5 0万人 か ら 非組合員の 労働者 を 雇い 入れ るので, 既存の 1 9 8 7 年の 1 0 0万人にまで三分の一 も減少 した. 大都市周辺のア メリカ系 メーカ- よりもレーバ と くに大潮地方における黒人の失業率は3 6% と ー ・コス トが安い.地方,現地 アメリカ企業は 7% を上回 り,その被害 を集 中的に蒙 っ 白人の2 先任権 に よる雇用保障 とか らんで高齢労働者 を た.こ うした背景のなかで, 日系 自動車 メー カ 多 く抱 える結果になるため,年金等の付加給付 ーの進出, と くに南部-の進出は,競争上 ア メ の コス トが嵩む傾 向があ が 6 ). 日系企業への程 リカ企業の南部への 移転 をも促す 形に な り, 々の批判の背景にはこ うした問題 も絡 んでい る UAW の潜在的不満 を刺激 してい る. その うえ ように思われ る. ・ 日系 メーカーは高能率のため思 ったほ ど雇用吸 それは ともか く,Col e教授は,その後前記の , 収 力がな く, またエ ンジン, トラス ミッシ ョン 問題意識 を 掘 り下げ 「在米 日系 自動車企業の な どの主要部晶の多 くを日本か ら輸入 してい る 工場立地 と 雇用 パタ← ン に おける 人種差別要 ため,他産業-の雇用の波及効果 も少い, とい 因」17)なる 論稿 を 『カ リフ ォルニア ・マネジメ うわけである.しか も, 日系企業 は先述の ホン 1 9 8 8年1 0月号) に発表 さ ン ト レビュ-』誌 ( ダの事例に見 られ るように,意図的な人種差別 れた. それに よって, 日系 自動車 メーカー の をして い るの では ないか, とい のが Coel& 「人種差別」的採用政策 を概観 してみ よう. Des ki ns調査の問題意識である. 1 9 8 8年 3月2 4日, ア メリカの雇用機会平等委 Col e & De s ki nsは, まず北米の 日系 自動車 員会 ( EEOC)は, ホンダ ( HAM)が その労働 メーカ-7社 と部品 メ-カ-9 1 社 を 対象 とし 者採用における差別政策についての訴訟 に対す て,各工場の従業員 中の黒人比率 と, それ ら各 る和解金 として, 3 7 0名の黒人及び女性に対 し 工場の所在地半径2 6マイル以 内 (これは通常の て総額 6 0 0万 ドルのパ ック ・ペ イを支払 うこと 通勤可能距離 と考え られてい る) の人 口の中の に同意 した 旨発表 した. 黒人比率 とを比較す る.同様 の方法で, アメ リ 1 5)東芝テネシ-工場の反組合政策については, 拙稿 「日本の対外直接投資と労使関係」( 前掲)の なかで詳 しく分析してある. 1 6)例えばフォー ド社が労働者の高齢化に伴 うコ ス ト増に悩んでいることは, Wo l lSi r e e iJo wna l , 1 9 8 7 年 3月1 5日紙上で報じられている・ 1 7 )Ro be r tE.Co l e&Do na ldR.De s ki ns ,J r . , u Ra c i a lFa c t o r si nSi t eLo c a t i o na ndEmpl o yme nt Pa t t e r nso fJ a pa ne s eAut oFi r msi n Ame ic r a " Ca l i fo r ni aMa na ge me ntRe v i e w,31 1 ,Fa l l1 9 8 8. の ビッグ 3の 旧来 か らの 21工場, ビッグ 3が 1 9 8 0年以降新たに建設 した 8新組立工場 (実際 はすべて GM の工場), 及び ビッグ 3が1 9 80 年 1「 再 以降 2億 ドル以上の近代化投資 を加えた3 生 」工場 と比較す る.また,念のために,最近 閉鎖 されたペ ンシル ヴァニア州の フォル クスワ -ゲ ン工場 (同社はやは り黒人比率が少い と非 難 されていた) をも比較対象に含めてい る. ( 1 9 8 9 . 3 ) 海 外 現 地 生 産 と労 使 関 係 第 2表 各工場の労働者募集区域内の 黒人人口比率 地域平均黒人 工 場 の 類 別 人口比率( 形) フォルクスワーゲン社 ・ペンシル 6. 9 ヴェニア工場 ll . 7 日系自動車部品企業 1 2. 8 日系自動車組立工場 1 6. 0 GM新鋭8工場 ( Sa t um工場を含む) 1 5 . 2 ビ ッグ 3「再生 」3 1 工場 1 9. 8 ビ ッグ 3旧式2 1 工場 GM新鋭工場と日系自動車及び同部品 工場の黒人従業員比率と地域人口の黒 人比率との比較 差 地域人口の従業員中の 格 黒人人口比 黒人比率 C企業の類別 GM新鋭工場 ( 除Sa t ur n工場) ホ ン ダ 日 産 マ ツ ダ 日系自動車部品 5 0社 Co l e& De s ki ns( 1 9 8 8 ) ,p. 1 7. 評 を博 してい るマツダの場合で さえ も,周辺地 域の人 口の黒人比率に比べ ると従業員 中の黒人 の割合 は著 し く少い. さらに, 日系 自動車部品 メ-カーは,先述の 日本電装のバ いレグ リ-グ 工場に見 られ るように , 黒人人 口の少い農村地 帯 に立地 して, そこか らさらに少数の黒人 しか 雇用 していない傾向がはっきりうかがわれ る. 選ぶ傾 向があると指摘 されてい る. 第 3表 (形) B ッ ト・ロックに進出して UAW を受け入れ,好 日系企業は,一般に ドイツ系人 口の多い地域 を (出典) Co l e&De s ki ns( 1 9 8 8) ,p. 1 6, (形) A -8 5- (A-B) 8. 8 - 7. 7 - 5. 3 -1 4. 9 - 3. 6 十 Col e& De s ki ns調査の問題点 Col e& De s ki nsは,この調査に基づ く政策 的結論の なかで 次の ような 問題 を捷超 してい る. すなわち,これ まで アメ リカの 自動車工業は 黒人 口対 して相対的に多 くの高賃金雇用機会 を 提供 して きたが, 日系企業 の進 出に よって (ど ッグ 3自体の工場の南部-の移転 を促 したこと も加えて), 黒人から 良い雇用機会 を奪 う結果 になってい る. しか るに,各州政府は (前節で 見たケ ンタッキー州の ごとく), 州民の税金で 立地自体の非黒人選好 日系企業の誘致優遇策 を講 じ, ただで さえ不平 これ らの各工場 を比較 してみ る と, まず第- 等な雇用機会 をます ます不平等 にしてい る.州 に, フォル クスワ-ゲ ンや 日系 メーカー及び 日 の税金 は,むしろ旧式工場の近代化 とそこでの 系部 品企業は, もともと黒人人 口比率の比較的 労働の再訓練に こそ使われ る べ きで は ないの 少い地域 に立地 を 選 んで い る こ とが 判明す る か.将来的に,EE OCは,外国系企業の対米進 ( 第 2表). 立地地域の黒人人口比と従業員中の黒人比 出に 当って立地選定 をするさいに,人種差別 を い ま一つは,それぞれの立地地域の内部にお 排す る ような新 しい規制 を加えるべ きで はない か. いて,母集団たる地域人 口中の黒人比率 と従業 この ような Co l e& De s ki nsの主張には,人 員 中の黒 人比率 とを対比す るこ とである.第 3 種問題,公民権法 とい う複雑な問題 を抱 えるア 表の ように,明 らかに 日系各社は GM の新設工 メリカに進 出す る場合のデ リケー トな問題 を鋭 場に比べて も黒人従業員の比率が地域の黒人人 く指摘 した もの として, 傾聴に 値す る 点が多 , 口比率に 比べて 著 し く低 く 「人種差別」 を行 い. しかし,い くつかの問題がない わけではな って い る証拠の ように 思われ る. すなわち, い.一つは,彼 らの研究に即してい えば,周辺 GM の新鋭工場では工場の従業員の25. 4%が黒 地域 の人 口中の黒人比率で はな く,労働 力人 口 人で あ り, その比率は周辺地域の人 口の黒人比 中の黒人比率 と従業員中の黒人比率 とを比較 し 率 よりもはるかに高い.他方, ホンダは,元 々 た方が良か ったであろ う. 黒人人 口の少い地域に立地 してい るうえに,周 第二は,彼 らも論文中でふれ てはいることで 辺地域の人 口に比 べて も従業員 中の黒人比率が あるが, これ まで欧米企業に此 して外国での現 きわ立 って少い. また, デ トロイ ト近郊の フラ 地生産に不 馴 れな 日本企業がは じめてア メリカ -8 6- エ = l ミ ア 第1 0 0号 に進出する場合には,種 々の リスクを負 ってい 第三は, 最 も大事な論点で あるが, Co l e& るわけであるか ら,あるてい との危険回避は, Denki ns論文では,間接的な雇用効果にふれて 企業 として当然考えなければな らない18). もち いないことで ある.たまたま筆者の ミシガン大 ろん,それはその国の法的秩序及び公序良俗に 学滞在中に見聞した事例だが, 日本研究センタ 反するものであってほならないが, 日系企業の -で働いていた某女性職員 ( 彼女は 日本語が堪 現地進出に よってアメリカの国内雇用に プラス 能であった) が, フラ ッ ト・ロックで創業 した の効果があることを思えば,少 くとも現地進出 マツダ社に二倍以上の高給で引 き抜かれた.こ の当初には若干の危険回避策 をとることは認め の場合, もし も後任のポス トに黒人が雇用 させ 9 7 0 年代初頭 られ るべ きであろ う.そ もそ も,1 までは,ア メリカの労働組合 自身がアメ リカの るな らば,マツダその ものは前述の ように比較 的僅かの黒人 しか雇用 していない として も,間 多国籍企業の海外 「 逃避」に よる 「雇用輸出」 接的に黒人の雇用機会 を拡大することに貢献 し を非難 していたのであるか ら,今や 日本が 日本 たことになるはずである.すなわち,現地の雇 国内の雇用 をあるてい ど犠性にして も現地生産 用拡大効果 を計測するさいに産業連関表 を用い にの り出してい ること,しか もそれがアメリカ るように, この場合に も二次的,三次的な黒人 製造業の再生のために も少なか らざる刺激 を与 雇用-の波及効果 を考慮すべ きであろ う. えている点 を評価すべ きであろう. 1 8 )この点は,Co l eの別の論文であるていと吟味 されている.Pe t e rAr ne S e n & Ro be r tE.Co l e , " J a pa ne s eAut oPa r t sCo mpa ni e s, ・The i rRe l a ・ t i o nt oAut o mo t i veMa na f a c t ur e r sa ndl mpl i c a t i o n sf o rU.S.Co mpe t i t o r s "( mi me o )Se pt e mbe r 1 0 ,1 9 8 6 . ( 横浜国立大学経済学部教授)