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研究成果報告書
研究成果報告書 事業名(補助金名) : 基盤的研究開発育成事業(研究開発シーズ育成補助金) 研究開発テーマ名 : 「排ガス CO2 を利用した海藻類のバイオプラントの実施に向けて」 研 究 代 表 者 名 : 嶌田 共 同 研 究 者 名 : 四ツ倉典滋【北海道大学北方生物圏フィールド科学センター/役職 助手】 伊藤 智 【北海道大学創成科学共同研究機構/役職 助手】 等 【所属 日本製紙ケミカル株式会社/役職 勇払製造所 所長】 背景・目的 世界的な人口の増加と産業社会の発展に伴い、地球温暖化などの環境問題、食糧不足や医療・健康増進など への対応は 21 世紀の大きな課題である。産業界においても、CO2 ガスや産業廃棄物を出さない循環型社会の一 員としての対応が求められ、既存技術の改良に加え、新技術の研究、開発が産学官で協力しながら盛んに進め られている。地球温暖化の原因物質として排出削減を強く求められている CO2 に関しては、CO2 の分離や固定化 などの技術開発が各方面で盛んに行われているが(例えば,地下や海中への CO2 貯蔵構想)、実用的には未だ 開発途上にある。その一方で、この CO2 は太陽光エネルギーと共に、植物が陸上や海中で光合成を行なって生 長するために必要欠くべからざる貴重な資源でもある。 技術戦略マップ2006(経済産業省)および二酸化炭素固定化・有効利用技術戦略マップ2006(地球環境産業技 術研究機構)には、海藻類によるCO2固定・吸収・有効利用に関し、以下の可能性と問題点が指摘されている。 1:海洋の生態系を利用した大気中からの二酸化炭素の吸収技術は、大きな削減ポテンシャルが期 待され、特に周囲を海洋で囲まれた我が国にとっての価値が大きいと考えられる。 2:大型海藻を用いた固定・吸収およびその産業的利用も魅力的な技術群になる可能性があり、今後 も検討を続けるべきと考える。 3:大型海藻を栽培・回収し、エネルギー源、肥料、飼料等として利用する方法は、新たなバイオマス 利用技術として魅力的なオプションになる可能性もある。今後コストポテンシャルを含めた実現可 能性の検証と他の自然エネルギー利用と有効性の比較が必要。 4:大量のCO2削減のためには、膨大な面積が必要。生産性向上に関して大幅なブレークスルーが必 要。他の自然エネルギー利用と有効性の比較が必要。 5:増殖させた藻のエネルギー等への利用については、太陽光の利用効率やコストを植林などと比較 すべきであると考える。 「可能性はあり魅力的で ここで述べられているように、海藻類によるCO2固定・吸収・有効利用は、 はあるが科学的理解に乏しく、まだ実証試験もされていない。植林と比較してCO2固定後に分解さ れすぐに系に戻るため、ターゲットには成り得ない」 、とのコンセンサスができている。現に、技術 戦略マップ2006では有効な技術群から除かれている。 しかし、ここ数年で本研究開発の研究代表者らを含めた海藻類の陸上栽培と高効率 CO2 吸収化に関する新技 術・研究成果が蓄積され、上述の問題点の幾つかを解決できる土台ができあがってきた。例えば、本研究開発の 研究代表者らにより特許公開した海藻類の陸上栽培における高密度培養法により、生産性の向上や栽培面積 の縮小に成功している。これにより、海藻類が分解により系に戻る前にエコ燃料として有効利用できるバイオマス の回収が容易になった。 [海藻類栽培の技術革新] ⇒⇒⇒⇒⇒⇒ [従来の海洋での栽培] [新技術による陸上での栽培] 生長が一定方向で生産性が低く栽培面積が必要。 3 次元方向生長・浮遊栽培による生産性向上と栽培 時化や捕食生物などの問題アリ。 面積の減少。気象・海象、他生物からの捕食、ゴミ による品質低下などの影響を受けにくい。 また、褐藻ヒジキ(Zuo 2005)や紅藻スサビノリ(Gao et al. 1991)など、通常の海水中よりも高濃度に CO2 が溶 存した海水(以下、高濃度 CO2 海水)中で生長促進する海藻類(好 CO2 種)が発見されている。 [好 CO2 種の発見] [褐藻類ヒジキ] 通常の 1.5 倍生長 [紅藻類スサビノリ] 通常の 1.9 倍生長 陸上植物でも、高濃度 CO2 条件下で通常時より平均 1.3 倍に生長促進することが報告されている。しかし、これは 人工的に作られた高濃度 CO2 ガスを使用した実験結果である。例えば工場排ガスは大気の 100 倍程度に CO2 が濃縮されており、これを利用できればいいのだが、工場排ガスに含まれる NOx(60ppm)・SOx(40ppm)の影響 で陸上植物は枯れてしまうという問題があり、実用化されなかった。ところが海藻類の場合、溶存した NOxは窒 素源として、SOxは多糖類の一部(硫酸基)として必須であり、工場排ガスに含まれる CO2・NOx・SOxが再利用可 能である。つまり、好 CO2 種発見により、工場排ガスのような大気に放出され続けている CO2 を効率的に海藻類 に吸収し、石油代替エネルギーとして有効利用する循環型社会の構築が実現可能となった。 [工場排ガス中の CO2 は利用できるのか?] → ← [陸上植物] [海藻類] NOx・SOxの影響で枯れる 生長速度が上がる さらに、生物資源であるバイオマスを石油代替エネルギーとして活用する研究が国策として推進されているが、 その中で、海藻類もエコ燃料として利用されている。例えば NEDO 事業として東京ガス(株)が緑藻アオサなどの 海藻類からメタンガスを生成している。これによると海藻類 1t から 20kl のメタンガスが生成できる。海藻類からの エタノール生成も、別機関で実証済みである。これらにより、樹木に比べて炭素保持時間が少ないという海藻類 の問題点も、現在ではカーボンニュートラルへの転換を効率良く速やかに行えるという利点へと変化している。 ただし、解決されていない問題もある。例えば、海藻類資源はエコ燃料として期待されているが、天然からのバ イオマス採取には有限性、季節性、付着する他生物や混入するゴミなどによる品質の低さが問題であり、安定し た石油代替エネルギーを生産するため、安定的で清浄な海藻類バイオマスを生産できる大規模栽培が望まれて いる。また、通常海水中よりも高濃度 CO2 海水中で生長が促進される海藻類(好 CO2 種)が発見されたものの、 種類数は少なく、冬に生長する冬型の種類のみで、生長を最大限にするための最適種・各種栽培条件について も検討されていない。 一方で、北海道の海洋資源は、開拓以来、ニシン、昆布、鮭、ウニ、カニなど盛んに食用として利用されてきた が、最近まで、これだけ豊かな海の資源のほとんどが食用のみの利用に留まっていた。しかし、ここ数年でカニ 甲羅からのキチン・キトサンやガゴメコンブからのフコイダンなど北海道に生育する海洋資源の新利用が開発さ れ、さらに、未だ利用されていない海洋資源の発掘・新利用が求められている。 そこで本研究開発では、未開拓の北海道沿岸海藻類の新利用プロジェクトとして、CO2 吸収体としての北海道 産海藻類を探索する。現在、北海道の工業地域、特に苫小牧地区には火力発電所、紙パルプ工場、石油精製所 など大規模かつ固定的な排ガス CO2 の発生源が多数立地しており、この大量、未利用の CO2 を活用して海藻類 の光合成活性を促進し、石油代替エネルギーなどの有用な物質を生産し、循環型社会の中で貢献できる新たな 産業を立ち上げる。本研究開発では、そのための第一歩として、1.北海道産海藻類のリスト作成、2.海藻採集、 3.新規培養株の DNA 鑑定、4.CO2 の効率的な海水への取り込み、5.好 CO2 種の探索、6.CO2 添加ナシ条件 下と CO2 添加条件下という生育環境の異なる藻体間での発現タンパク質解析、等を行う。 各種調査 1.北海道産海藻類のリスト作成 日本に生育する海藻類は、緑藻 237 種、褐藻 307 種、紅藻 869 種、合計 1413 種である(吉田ほか, 2005)。しかし、 これまで北海道だけに注目した海藻類リストはない。そこで、北海道大学理学研究院・多様性生物学分野・系統 進化学講座で継続的な研究が行われている道内 4 地点(厚岸、室蘭、忍路、オホーツク)に生育する海藻類をま とめ、リストを作成した。これによると、道内には、緑藻 42 種、褐藻 98 種、紅藻 173 種、合計 320 種の海藻類が 生育していることが判った。北の海藻相らしく、褐藻類、特にコンブ類が多いのが特徴である。 表1 北海道に生育する海藻類リスト:A 厚岸、M 室蘭、O 忍路、H オホーツク Chlorophyta 緑色植物門 Clorosphaerales クロロスファエ ラ目 Collinsiellaceae らんそうもどき科 Collinsiella tuberculata Setchell et Gardner らんそうもどき M Ulotrichales ひびみどろ目 Ulotrichaceae ひびみどろ科 Ulothrix flacca (Dillwyn) Thuret ひびみどろ A Ulothrix pseudoflacca Wille ほそひびみどろ A Ulvales あおさ目 Capsosiphonaceae かぷさあおのり科 M Capsosiphon groenlandicus (J. Agardh) Binogradova ひもひとえぐさ A Kornmanniaceae もつきひとえぐさ科 Kornmannia leptoderma (Kjellman) Bliding もつきひとえ A M O H Monostroma angicava Kjellman えぞひとえぐさ A M O H Monostroma crassidermum Tokida あつかわひとえ A Protomonostroma undulata (Wittrock) Vinogradova しわひとえぐさ A M O H M O H Monostromataceae ひとえぐさ科 Prasiolaceae かわのり科 Prasiola delicata Setchell et Gardner ひめいそかわのり A Ulvaceae あおさ科 Blidingia minima (Kuetzing) Kylin ひめあおのり A Ulva arasakii Chihara ながあおさ M Ulva compressa Linnaeus ひらあおのり M O Ulva intestinalis Linnaeus ぼうあおのり A M O Ulva linza Linnaeus うすばあおのり A M O H Ulva pertusa Kjellman あなあおさ A M O H Ulva prolifera O.F. Müller すじあおのり A O H Ulvaria obscura var. blyttii (Areschoug) Bliding クロヒトエグサ A M O Acrosiphoniales もつれぐさ目 Acrosiphoniaceae もつれぐさ科 Spongomorpha duriuscula (Ruprecht) Collins もつれぐさ A H Spongomorpha duriuscula v. tenuis H Spongomorpha heterocladia Sakai いぶりもつれぐさ M Spongomorpha mertensii Setchell et Gardner かぎもつれぐさ A Spongomorpha saxatilis (Ruprecht) Collins とげなしもつれぐさ A M Spongomorpha spiralis Sakai うずもつれぐさ A M Urospora penicilliformis (Roth) Areschoug しりおみどろ A M O H Cladophorales しおぐさ目 Cladophoraceae しおぐさ科 Chaetomorpha aerea (Dillwyn) Kuetzing たるがたじゅずも A Chaetomorpha moniligera Kjellman たまじゅずも A M O H Cladophora albida (Nees) Kutzing わたしおぐさ Cladophora vagabunda (Linnaeus) van den Hoek ふさしおぐさ O Cladophora glemerata (Linnaeus) Kuetzing かもじしおぐさ A Cladophora opaca Sakai つやなししおぐさ A M Cladophora rudolphiana (C. Agardh) kuetzing たまりしおぐさ M Cladophora sakaii Abbott あさみどりしおぐさ M Cladophora speciosa Sakai みやびしおぐさ M Cladophora stimpsonii Harvey きぬしおぐさ A M Rhizoclonium riparium (Roth) Kutzing ex Harvey ほそねだしぐさ Rhizoclonium tortuosum (Dillwyn) Kuetzing ながもつれ O O O O A M H Codiales みる目 Bryopsidaceae はねも科 Bryopsis hypnoides Lamouroux おばなはねも Bryopsis plumosa (Hudson) C. Agardh はねも M O H O H Codiaceae みる科 Codium yezoense (Tokida) Vinogradova えぞみる(いもせみる) A Codium fragile (Suringar) Hariot みる H M O Derbesiaceae つゆのいと科 Derbesia marina (Lyngbye) Solier ほそつゆのいと A H Caulerpales いわずた目 Chaetosiphonaceae ケートシフォン科 Blastophysa rhizopus Reinke あわみどり O Phaeophyceae 褐藻綱 Ectocarpales しおみどろ目 Ectocarpaceae しおみどろ科 O Acinetospora crinita (Charmichael ex Harvey) Kornmann M O Ectocarpus arctus Kutzing けなししおみどろ Ectocarpus fusiformis Nagai A Ectocarpus siliculosus (Dillwyn) Lyngbye しおみどろ A Ectocarpus yezoensis Yamada et Tanaka えぞしおみどろ A Laminarionema elsbetiae Kawai et Tokuyama らみなりおねま M Pilayella littoralis (Linnaeus) Kjellman ぴらえら A M Spongonema tomentosum (Hudson) Kuetzing かぎしおみどろ A M Streblonema evagatum Setchell et Gardner こぶやどりみどろ A O Sorocarpaceae ソロカルパ科 Botrytella micromora Bory いそぶどう A Polytretus reinboldii (Reinke) Sauvageau きたしおみどろ M O M Ralfsiales いそがわら目 Ralfsiaceae いそがわら科 Analipus filiformis (Ruprecht) Papenfuss いとまつも M Analipus gungii (Yendo) Kogame et Yoshida ぐんじまつも M Analipus japonicus (Harvey) Wynne まつも A Hapterophycus canaliculatus Setchell et Gardner いそがわらもどき O H O H M M Ralfsia fungiformis (Gunnerus) Setchell et Gardner いそがわら A Ralfsia verrucosa (Areschoug) Areschoug いそいわたけ A H M Chordariales ながまつも目 Acrotrichaceae にせもずく科 Acrothrix gracilis Kylin きたにせもずく A Acrothrix pacifica Okamura et Yamada にせもずく H M Chordariaceae ながまつも科 Chordaria chordaeformis (Kjellman) Kawai et S. H. Kim ひもながまつも A H Chordaria flagelliformis f. flagelliformis ながまつも A M H Eudesme virescens (Carmichael) J. Agardh にせふともずく A M H Heterosaundersella hattoriana Tokida からふともずく A Papenfussiella kuromo (Yendo) Inagaki くろも A Saundersella simplex (Saunders) Kylin ごびあ、もつきちゃそうめん A Sphaerotrichia divaricata (C. Agardh) Kylin いしもずく A H O M H Elachistaceae なみまくら科 Elachista fusicola (Velley) Areschoug A Elachista tenuis Yamada ほそなみまくら Halothrix ambigua Yamada そめわけぐさ M A M Leathesiaceae ねばりも科 Leathesia difformis (Linnaeus) Areschoug ねばりも O A M Leathesia monilicellulata Takamatsu なんきんねばりも M A H M Leathesia difformoides Takamatsu Leathesia sphaerocephala Yamada ひめねばりも H M H O Myrionemataceae みりおねま科 Compronema secundum Setchell et Gardner A Hecatonema terminale (Kuetzing) Kylin M Myrionema corunnae Sauvageau M Scytosiphonales かやものり目 Schytosiphonaceae かやものり科 H Colpomenia bullosa (Saunders) Yamada わたも A M O Colpomenia peregrina (Sauvageau) Hamel うすかわふくろのり A M O Petalonia fascia (O. F. Mueller) Kuntze せいようはばのり A M O Petalonia zosterifolia (Reinke) Kuntze ほそばせいようはばのり A M O H Scytosiphon lomentaria (Lyngbye) Link かやものり A M O H Scytosiphon canaliculatus (Setchell et Gardner) Kogame かやもどき M Scytosiphon tenellus Kogame ひらかやも M H Dictyosiphonales ういきょうも目 Asperococcaceae こもんぶくろ科 Melanosiphon intestinalis (Saunders) Wynne きたいわひげ A M Coilodesmaceae えぞぶくろ科 Akkesiphycus lubricum Yamada et Tanaka こんぶもどき A H Coilodesme cystoseirae (Ruprecht) Setchell et Gardner ほそえぞふくろ A H Coilodesme japonica Yamada えぞふくろ A M Delamareaceae にせかやも科 Delamarea attenuata (Kjellman) Rosenvinge にせかやも A H Stschapovia flagellaris A. D. Zinova Dictyosiphonaceae ういきょうも科 Dictyosiphon foeniculaceus (Hudson) Greville ういきょうも H A M Punctariaceae はばもどき科 Litosiphon groenlandicus var. japonicus Kawai et Kurogi いそひげも M Pogotrichum yezoense (Yamada et Nakamura) Sakai et Saga こぶのひげ A M Punctaria flaccida Nagai ちしまはばもどき A Punctaria latifolia Greville はばもどき Punctaria plantaginea (Roth) Greville はばだまし H M M A H M Sphacelariales くろがしら目 Sphacelariaceae くろがしら科 H Sphacelaria plumigera Holmes はねくろがしら A Sphacelaria rigidula Kuetzing わいじがたくろがしら A Stypocaulaceae かしらざき科 O H M H Stypocaulon durum (Ruprecht) Okamura えぞかしらざき Desmarestiales うるしぐさ目 Desmarestiaceae うるしぐさ科 Desmarestia ligulata (Stackhouse) Lamouroux うるしぐさ A M Desmarestia viridis (Muellar) Lamouroux けうるしぐさ A M O H O H Laminariales こんぶ目 Alariaceae ちがいそ科 Alaria angusta Kjellman ほそばわかめ A Alaria crassifolia Kjellman ちがいそ M H Alaria fistulosa Postels et Ruprecht おにわかめ Alaria praelonga Kjellman あいぬわかめ A Undaria pinnatifida (Harvey) Suringar わかめ O M Chordaceae つるも科 O Chorda filum (Linnaeus) Stackhouse つるも M Laminariaceae こんぶ科 H Agarum cribrosum Bory あなめ A Arthrothamnus bifidus (Gmelin) Ruprecht ねこあしこんぶ A Costaria costata (C. Agardh) Saunders すじめ A Kjellmaniella crassifolia Miyabe がごめ Kjellmaniella gyrata (Kjellman) Miyabe とろろこんぶ H M O H O H M M A Laminaria angustata Kjellman みついしこんぶ M Laminaria cichorioides Miyabe ちじみこんぶ Laminaria coriacea Miyabe がっがらこんぶ、あつばこんぶ A Laminaria diabolica Miyabe おにこんぶ A Laminaria japonica Areschoug まこんぶ O M Laminaria longissima Miyabe ながこんぶ A Laminaria longipedalis Okamura えながこんぶ、かきじまこんぶ A M Laminaria ochotensis Miyabe りしりこんぶ H O Laminaria religiosa Miyabe ほそめこんぶ Laminaria yendoana Miyabe えんどうこんぶ Laminaria yezoensis Miyabe ごへいこんぶ M A Pseudochordaceae にせつるも科 Pseudochorda nagaii (Tokida) Inagaki にせつるも A Dictyotales あみじぐさ目 Dictyotaceae あみじぐさ科 O H H Dictyopteris divaricata (Okamura) Okamura えぞやはず M O Dictyota dichotoma (Hudson) Lamouroux あみじぐさ M O Dilophus okamurae Dawson ふくりんあみじ Fucales ひばまた目 Fucaceae ひばまた科 H Fucus distichus ssp. evanescens (C. Agardh) Powell ひばまた A M Silvetia babingtonii (Harvey) E. Serrão et al. えぞいしげ A M H Cystoseiraceae うがものく科 H Coccophora langsdorfii (Turner) Greville すぎもく Cystoseira crassipes (Turner) C. Agardh ねぶともく M A H O H Cystoseira hakodatensis (Yendo) Fensholt うがのもく A M Sargassaceae ほんだわら科 Sargassum boreale Yoshida et Horiguchi ほっかいもく A Sargassum confusum C. Agardh ふしすじもく A O M Sargassum horneri (Turner) C. Agardh あかもく O O H H Sargassum miyabei Yendo みやべもく A M Sargassum muticum (Yendo) Fensholt たまははきもく A M O M O Sargassum thunbergii (Roth) Kuntze うみとらのお H Sargussum yezoense (Yamada) Yoshida et T. Konno えぞのねじもく Rhodophyta 紅色植物門 Porphyridiales ちのりも目 Goniotrichaceae べにみどろ科 Stylonema slsidii (Zanardini) Drew べにみどろ A M H Erythropeltidales エリスロペル ティス目 Erythropeltidaceae エリスロペルティス科 Erythrocladia irregularis Rosenvinge (とげ)いそはなび Erythrotrichia carnea (Dillwyn) J. Agardh ほしのいと O A M Bangia atropurpurea (Roth) C. Agardh うしけのり A M Porphyra amplissima (Kjellman) Setchell et Hus べにたさ A Porphyta takadae Miura そめわけあまのり A H Bangiales うしけのり目 Bangiaceae うしけのり科 Porphyta kuniedae Kurogi まるばあさくさのり Porphyra kurogii Lindstrom ちしまくろのり H M A Porphyra moriensis Ohmi かやべのり Porphyra occidentalis Setchell et Hus きいろたさ O M H M A Porphyra onoi Ueda おおののり M Porphyra pseudocrassa Yamada et Mikami まくれあまのり A Porphyra pseudolinearis Ueda うっぷるいのり A M Porphyra seriata Kjellman いちまつのり M Porphyra suborbiculara Kjellman まるばあまのり M Porphyra variegara (Kjellman) Kjellman ふいりたさ A M Porphyra yezoensis Ueda すさびのり A M O H O Nemalionales うみぞうめん目 Acrochaetiaceae アクロケチウム科 Acrochaetium alariae (Jonsson) Bornet Audouinella codii (Crouan) Garbary M A Audouinella daviesii (Dillwyn) Woelkerling M O Audouinella densum (Drew) Papenfuss O Audouinella pulmosa (Drew) Garbary O Audouinella rhizoidea (Drew) Garbary Audouinella sessile (nakamura) Lee et Yoshida A H M O Rhodochorton purpureum (Lightfoot) Rosenvinge M Rhodochorton subimmersum Setchell et Gardner M Helminthocladiaceae べにもずく科 Helminthocladia australis Harvey べにもずく M Helminthocladia yendoana Narita ほそべにもずく M Nemalion vermiculare Suringar うみぞうめん A M O Bonnemaisoniaceae かぎけのり科 Bonnemaisonia hamifera Hariot かぎのり M Gelidiales てんぐさ目 Gelidiaceae てんぐさ科 Gelidium elegans Kutzing まくさ O Gelidium subfastigiatum Okamura なんぶぐさ M Gelidium vagum Okamura よれくさ M Pterocladiella capillacea (Gmelin) Santelices et Hommersand おばくさ M O Corallinales さんごも目 Corallinaceae さんごも科 Amphiroa zonata Yendo うすかわかにのて O Bossiella cretacea (Postels et Ruprecht) Johansen いそきり A Clathromophum compactum (Kjellman) Foslie あなあききたいしも A M O Corallina confusa Yendo みやひば O Corallina officinalis Linnaeus さんごも O Corallina pilulifera Postels et Ruprecht ぴりひば A M O Lithophyllum okamurae Foslie ひらいぼ O Lithophyllum yezoense Foslie えぞいしごろも O Lithothamnion japonicum Foslie みやべおこし H H M Lithothamnion lenormandii (Areschoug) Foslie あっけしいしも A Lithothamnion obtectulum (Foslie) Foslie あっけしおこし A Lithothamnion pacificum (Foslie) Foslie あっけしいぼいし A Melobesia pacifica Masaki あばたもかさ M Neopolyporolithon reclinatum Adey et Johansen かさきのこいしも A M Pneophyllum zostericola (Foslie) Fujita もかさ A M O Cryptonemiales かくれいと目 Dumontiaceae りゅうもんそう科 Constantinea rosa-marina (Gmelin) Postels et Ruprecht おきつばら A Constantinea subulifera Setchell おおばおきつばら A Dumontia alaskana Tai, Lindstrom et Saunders りゅうもんそう A Dumontia simplex Cotton へらりゅうもん Masudaphycus irregularis (Yamada) Lindstrom にせかれきぐさ H M O A Hyalosiphonia caespitosa Okamura いそうめもどき H M O Neodilsea crispata Masuda ちじれあかば H Neodilsea longissima (Masuda) Lindstrom ながあかば M Neodilsea tenuipes Yamada et Mikami まるばあかば A M Neodilsea yendoana Tokida あかば A M O H A M O H Endocladiaceae ふのり科 Gloiopeltis furcata (Postels et Ruprecht) J. Agardh ふくろふのり Gloiosiphoniaceae いとふのり科 Gloiosiphonia capillaris (Hudson) Carmichael いとふのり M O M O M O H Halymeniaceae むかでのり科 Grateloupia asiatica Kawaguchi et Wang むかでのり Grateloupia divaricata Okamura かたのり A Grateloupia lanceolata (Okamura) Kawaguchi ふだらく O Grateloupia livida (Harvey) Yamada ひらむかで O Grateloupia turuturu Yamada つるつる M Grateloupia elliptica Holmes たんばのり M Polyopes lancifolia (Harvey) Kawaguchi et Wang きょうのひも O H H O Polyopes affinis (Harvey) Kawaguchi et Wang まつのり M O Hildenbrandiaceae べにまだら科 Hildenbrandia rubra (Sommerfelt) Meneghini べにまだら M Kallymeniaceae つかさのり科 Callophyllis cristata (C. Agardh) Kuetzing ゆうそら A Callophyllis rhynchocarpa Ruprecht ひめとさかもどき A Cirrulicarpus gmelinii (Grunow) Tokida et Masaki えぞとさか A Kallymenia ornata (Postels et Ruprecht) J. Agardh きたつかさのり A Kallymenia reniformis var. cuneata J. Agardh えぞつかさのり H M M Tichocarpaceae かれきぐさ科 Tichocarpus crinitus (Gmelin) Ruprecht かれきぐさ A M H M H Ahnfeltiales いたにぐさ目 Ahnfeltiaceae いたにぐさ科 Ahnfeltia fastigiata (Endlicher) Makijenko ねつきいたにぐさ Gigartinales すぎのり目 Schizymeniaceae べにすなご科 Schizymenia dubyi (Chauvin) J. Agardh べにすなご M O M O Solieriaceae みりん科 Turnerella mertensiana (Postels et Ruprecht) Schmitz えぞなめし A Caulacanthaceae いそもっか科 Caulacanthus usutulatus (Turner) Kuetzing いそだんつう Rhodophyllidaceae あみはだ科 Rhodophyllis capillaris Tokida いとあみはだ A M Gracilariaceae おごのり科 Gracilaria chorda Holmes つるしらも A Gracilaria textorii (Suringar) Hariot かばのり O Gracilaria vermiculophylla (Ohmi) Papenfuss おごもどき A Gracilaria asiatica Zhang et Xia おごのり A M A M H Phyllophoraceae おきつのり科 Ahnfeltiopsis flabelliformis (Harvey) Masuda おきつのり O H Gigartinaceae すぎのり科 Chondracanthus intermedius (Suringar) Hommersand かいのり Chondrus armatus (Harvey) Okamura とげつのまた O A M Chondrus nipponicus Yendo まるばつのまた Chondrus pinnulatus (Harvey) Okamura ひらことじ O O A M O H Chondrus yendoi Yamada et Mikami くろはぎんなんそう A M O H Mazzaella japonica (Mikami) Hommersand あかばぎんなんそう A M O H A M O H M O Petrocelidaceae いぼのり科 Mastocarpus pacificus (Kjellman) Perestenko いぼのり(ほそいぼのり) Rhodymeniales まさごしばり目 Rhodymeniaceae まさごしばり科 Chrysymenia wrightii (Harvey) Yamada たおやぎそう Rhodymenia intricata (Okamura) Okamura まさごしばり Sparlingia pertusa (Postels et Ruprecht) Saunders et al.あなだるす O A M H Champiaceae わつなぎそう科 Champia parvula (C. Agardh) Harvey わつなぎそう M O H Lomentariaceae ふしつなぎ科 Binghamia californica J. Agardh かえるでぐさ O Lomantaria catenata Harvey ふしつなぎ O Lomentaria hakodatensis Yendo こすじふしつなぎ A M O H Palmariales だるす目 Palmariaceae だるす科 Halosaccion firmum (Postels et Ruprecht) Kuetzing かたべにふくろのり A Halosaccion yendoi Lee べにふくろのり A Palmaria marginicrassa Lee あつばだるす A Palmaria palmata (Linnaeus) Kuntze だるす A M O H Pseudorhododiscus nipponicus Masuda べにごろも A M O H M O M O Rhodophysema elegans (Crouan) Dixon うすふちとりべに Rhodophysema georgii Batters ふちとりべに A Rhodophysema odonthaliae Masuda et Ohta ひめふちとりべに M M Ceramiales いぎす目 Ceramiaceae いぎす科 Antithamnion densum (Suhr) Howe きぬいとふたつがさね A Antithamnion nipponicum Yamada et Inagaki ふたつがさね Antithamnionella spirographidis (Schiffner) Wollaston ほそがさね M M H O A Aglaothamnion callophyllidicola (Yamada) Booet. al. きぬいとぐさ M Campylaephora crassa (Okamura) Nakamura ふといぎす M O H M O H Campylaephora hypnaeoides J. Agardh えごのり A Ceramium aduncum Nakamura まきいぎす O Ceramium boydenii Gepp あみくさ O Ceramium cimbricum Petersen まつばらいぎす A Ceramium fastigiramosum Boo et Lee ひめいぎす M H M Ceramium japonicum Okamura はねいぎす A M O H Ceramium kondoi Yendo いぎす A M O H Ceramium paniculatum Okamura はりいぎす O Griffithsia japonica Okamura かざしぐさ O Herpochondria elegans (Okamura) Itono さえだ Neoptilota asplenioides (Esper) Kylin かたわべにひば Pterothamnion yezoense (Inagaki) Athanasiadis et Kraft よつがさね M A M Ptilota filicina J. Agardh くしべにひば A M Plilota phacelocarpoides Zinova こばのくしべにひば A M Scagelia pylaiesii (Montagne) Wynne からふとよつがさね A Tokidaea corticata (Tokida) Yoshida べにはねも A O H H M Delesseriaceae このはのり科 Acrosorium yendoi Yamada はいうすばのり M O Acrosorium polyneurum Okamura すじうすばのり M O Branchioglossum nanum Inagaki ひめむらさき M Congregatocarpus pacificus (Yamada) Mikami このはのり A M Delesseria serrulata Harvey ぬめはのり M Erythroglossum pinnatum Okamura ひめうすべに M Neoholmesia japonica (Okamura) Mikami すずしろのり A Neohypophyllum middendorfii (Ruprecht) Wynne ながこのはのり A Nitophyllum yezoense (Yamada et Tokida) Mikami あつばすじぎぬ A Phycodrys fimbriata (Pylaie) Kylin かしわばこのはのり A Phycodrys radicosa (Okamura) Yamada et Inagaki ひめこのはのり A Tokidadendron kurilensis (Ruprecht) Perestenko らいのすけこのは A H O M H H M M H Dasyaceae だじあ科 Dasya sessilis Yamada えなしだじあ M Heterosiphonia pulchra (Okamura) Falkenberg しまだじあ O H O Rhodomelaceae ふじまつも科 Benzaitenia yenoshimensis Yendo べんてんも M Chondria crassicaulis Harvey ゆな M Chondria dasyphylla (Woodward) C. Agardh やなぎのり A M Enelittosiphonia stimpsonii (Harvey) Kudo et Masuda まきいとぐさ A M Janczewskia morimotoi Tokida もりもとそぞまくら A M O H O Laurencia capituliformis Yamada まるそぞ O Laurencia intermedia Yamada くろそぞ O Laurencia intricata Lamouroux もつれそぞ O Laurencia nipponica Yamada うらそぞ A M Laurencia okamurae Yamada みつでそぞ(おもてそぞ) H O O H Neorhodomela aculeata (Perestenko) Masuda ふじまつも A M O H Neorhodomela munita (Perestenko) Masuda いとふじまつ A M O H Neorhodomela oregona Masuda あっけしふじまつも A Odonthalia annae Perestenko ありゅうしゃんのこぎりひば A Odonthalia corymbifera (Gmelin) Greville はけさきのこぎりひば A M Odonthalia macrocarpa Masuda おおのこぎりひば A M Odonthalia yamadae Masuda あっけしのこぎりひば A Polysiphonia fragilis Suringar くろいとぐさ A Polysiphonia japonica Harvey きぶりいとぐさ A M Polysiphonia senticulosa Harvey しょうじょうけのり Polysiphonia morrowii Harvey もろいとぐさ O O A Polysiphonia yendoi Segi えんどういとぐさ Pterosiphonia arctica (J. Agardh) Setchell et Gardner いなぼぐさ A Pterosiphonia bipinnata (Postels et Ruprecht) Falkenberg いとやなぎ A M O M O Rhodomela lycopodioides f. tenuissima (Ruprecht) Kjellman みやびふじまつ A も Rhodomera sachalinensis Masuda からふとふきまつも H Rhodomela teres (Perestenko) Masuda ほそばふじまつも Symphyocladia latiuscula (Harvey) Yamada いそむらさき Symphyocladia marchantioides (Harvey) Falkenberg こざねも M A M O H M 2.海藻採集 好 CO2 種の探索に先立ち、実験に用いる海藻類の採集を行った。勇払郡にある厚真発電所付近に生育する海 藻類をシュノーケリングで採集した(9 月 28 日、11 月 15 日)。 <図1,2>海藻採集風景 3.培養株化 採集した藻体は、生きたまま研究室に持ち帰った。藻体の一部を滅菌海水でクリーニングし、20℃、明暗周期 12:12、光量 100µEm-2s-1 に維持されている培養室で PES 培地(Provasoli 1968)入りの細胞培養用マルチウェ ルプレート(FALCON 社)にて培養株化を行った。 #Tomi 8:緑藻アナアオサ(Ulva pertusa)は、3 日後に遊走子が放出され、それを別の細胞培養用マルチウェル プレート(FALCON 社)に移し、単藻の直立体を得た。#Tomi 6:緑藻ミル(Codium fragile)は、小嚢とよばれる藻体 構成ユニット1つずつ細胞培養用マルチウェルプレート(FALCON 社)にて培養し、珪藻等のコンタミがない単藻 培養株を得た。本種は静地培養条件下ではフィラメントのままであるが、エアレーションをすることで小嚢が形成 され、正常な形態形成が促進された。#Tomi 3:紅藻オキツノリ(Ahnfeltiopsis flabelliformis)は、発出されて間もな い新枝を1mm 程度切り出し、細胞培養用マルチウェルプレート(FALCON 社)にて培養し、珪藻等のコンタミがな い単藻培養株を得た。#Tomi 22:褐藻ミツイシコンブ(Laminaria angustata)は、天然藻体から胞子を単離し、発芽 した雄性配偶体と雌性配偶体から卵と精子を得て、それらを受精させ胞子体を得た。 また、研究代表者は、文部科学省新世紀重点研究創生プラン(RR2002)ナショナルバイオリソースプロジェクト ではサブ機関代表者であり、これまで約 150 株の海藻類単藻株を単離し、系統を維持している。そこで、このナシ ョナルバイオリソースに保存されている 4 株 Hok-67:紅藻カタオバクサ(Pterocladiella capillacea)、Hok-62:紅藻 マクサ(Gelidium elegans)、Hok-71:緑藻ウスバアオノリ(Ulva linza)、Hok-118:緑藻オオバアオサ(Ulva lactuca) も以下の実験に使用した。さらに、共同研究者である北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの四ツ倉氏 が保存する Yotsu-1:褐藻ホソメコンブ(Laminaria religiosa)も実験株に加えた。合計9種の培養株(表2)は、各種 500mlの三角フラスコで増殖させ、以下の実験に使用した。 表2 実験に使用した海藻種 サンプル番号 学名 和名 採集場所 採集日 tomi003 Ahfeltiopsis flabelliformis Pterocladiella capillacea Gelidium elegans Ulva linza Ulva lactuca Ulva pertusa Codium fragile Laminaria angustata Laminaria religiosa オキツノリ 北海道勇払郡 2006.9.28 カタオバクサ 北海道忍路 1996.9.15 マクサ 青森県深浦 19984.6 ウスバアオノリ 北海道忍路 2002.4.6 オオバアオサ 北海道留萌 2004.8.19 アナアオサ 北海道勇払郡 2006.9.28 ミル 北海道勇払郡 2006.9.28 ミツイシコンブ 北海道勇払郡 2006.9.28 ホソメコンブ 北海道泊 2005.11.16 Hok-67 Hok-62 Hok-71 Hok-118 tomi008 tomi006 tomi022 Yotsu-1 4.新規培養株の DNA 鑑定 形態からでは同定が難しいアオサ属とミル属に関しては、新規に単離した培養株の種のDNA鑑定を行った。DNA 抽出用サンプルは,培養藻体の一部(湿重量約100mg)を滅菌海水で洗浄し,吸引ポンプによって減圧乾燥させ た。DNA抽出用乾燥サンプルからDNeasy Plant Mimi Kit(QIAGEN社)を用いてプロトコルに従いDNAを抽出した。 PCR反応における1サンプル当たりの分量はTakara Ex taq=0.2μl(Takara社),PCRバッファ=3.0μl(Takara社), dNTPmix=2.3μl(Takara社),#Tomi 8:アナアオサはアオサ属用のプライマーセット(Shimada et. Al. 2003): Forward プライマー=0.5μl(5’-CTCTCAACAACGGATATCT-3’),Reverse プライマー=0.5μl (5’-TGATATGCTTAAGTTCAGC-3’);#Tomi 6:ミルはミル属用のプライマーセット(Shimada et. Al. 2004): Forward プライマー=0.5μl(5’- ATGGTTCCAAAAACTGAAACT -3’),Reverse プライマー=0.5μl(5’CTTTCGCACATTGTGCACGTT -3’),DMSO=1.5μl,DW=21.0μl,抽出DNA=1.0μlの合計30μlである。PCRの 反応条件は94℃=45秒,50℃=45秒,68℃=60秒を35サイクルで行った。塩基配列はダイレクトシークエンス法で 決定した(ABI PRISM 310 Genetic Analyzer,Applied Biosystems社)。 Ulvaria fusca Umbraulva japonica Caulerpa prolifera 54 Umbraulva amamiensis 56 Umbraulva olivascens Bryopsis maxima U. flexuosa 61 C . minus U. cylindracea C . arabicum U. prolifera U. californica 86 100 "U. flexuosa" C . capitulatum 61 98 C . hubbsii 75 U. tanneri U. stenophylla C . spongiosum 64 U. linza C . lucasii U. procera 63 60 C . cylindricum U. taeniata U. fasciata 98 99 99 Codium fragile : ミル U. ohnoi 88 U. clathlata 60 97 U. scandinavica C . yezoense U. armoricana 95 #TOMI 6 C . dimorphum U. rigida 75 C . intricatum U. arasakii 58 U. lactuca 56 74 79 Ulva pertusa: アナアオサ 93 91 #TOMI 8 C . subtubulosum U. compressa 55 C . contractum C . repens U. intestinalis 56 C . latum U. intesitinaloides C. barbatum Ulva lobata 5 changes <図3>アオサ属の分子系統樹 10 changes <図4>ミル属の分子系統樹 Genbankに登録されているアオサ属種およびミル属種の配列をダウンロードし,本研究で決定したサンプルと ともに二次構造を考慮してアライメントを行った(Zuker 1989)。最大節約法による系統解析にはPAUP 4.0b10 (Swofford 2002)を用い,heuristic search (simple addition),TBR branch swapping optionにて系統樹を構築した。 Bootstrap値は100回繰り返しで算出した。 アオサ属の分子系統樹を図 2 に、ミル属の分子系統樹を図 3 に示した。我々が新規に採集し、培養株化した #Tomi 8 は緑藻アナアオサ(Ulva pertusa)、#Tomi 6 は緑藻ミル(Codium fragile)と分子同定できた。 5.CO2 の効率的な海水への取り込み 好 CO2 種の探索の前に、CO2 の効率的な海水への取り込みに関してどのような方法が実験に適しているのか予 備実験を行った。20ℓ水槽を2つ用意し,そこに人工海水(Sealife:マリンテック社)を 10ℓずつ入れた。それぞれの 水槽中に純粋な二酸化炭素ガス(エアウォータ社)を海水のpH が 6.0 になるまで加え続け、pH 6.0 になった時点 でガスを止めた。1つの水槽には紅藻オキツノリ(Ahfeltiopsis flabelliformis)を 500mg質重量を加え,もう 1 つは他 q いしょうじっけんとして,何も加えなかった。両方をバブリングし、2 分おきに pH の値を測定し、pH 変動を調べた。 8.0 7.5 pH 7.0 紅藻 対照実験 6.5 6.0 5.5 5.0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 時間(min) <図5>紅藻オキツノリ(Ahfeltiopsis flabelliformis)を CO2 添加条件下で生育させた場合の海水 pH 変動 その結果、紅藻オキツノリ(Ahfeltiopsis flabelliformis)を入れた水槽では、対照実験よりも CO2 減少速度が速くな った。海藻の光合成により添加された CO2 が使用されていることが判る。高額なモデルガスを使用しなくても、安 価な CO2 ガスボンベを用い、pH 調節することで高濃度 CO2 海水を作り出し、実験を行えることが判った。ただし、 バブリングをしてしまうことで、添加した CO2 は急速に大気に出て行ってしまうことも判明した(対照実験)。そこで、 バブリングはぜずに、スターラーで海水を回転させながら培養することにした。これによると、対照実験系ではpH が 1 日中変化せず、よけいな CO2 の大気放出が防げた。 また、20ℓ水槽は、滅菌できずバクテリアの混入が防げなかった。1週間も培養を続けると、海水はバクテリア で白濁してしまった。これではバクテリアの影響が強く、正確な海藻類の生長率を測定することができず、好 CO2 種の探索ができない。そこで、500ml ガラス三角フラスコ(Iwaki 社)を乾熱滅菌し、そこにオートクレーブで滅菌し た人工海水を準備し、滅菌海水 500ml に対して強化培地である PES 培地(Provasoli. 1968)を 10ml 添加し、培養 した。すると、バクテリアの混入は防げ、海藻類の適正な生長を観察することができた。 以下の結果から、好 CO2 種の探索には、CO2 ガスボンベからガスを滅菌海水に注入し、pH 調整しながら CO2 濃度を一定に保ち、滅菌した 500ml ガラス三角フラスコで実験を行うことにした。 <図6>CO2 添加の実験風景 6.好 CO2 種の探索 好 CO2 種の探索のために表2にある9種の単藻培養株を使用した。それぞれの単藻培養株につき、二つの滅菌 海水 500ml(PES10ml 添加)をいれた三角フラスコを準備し、そこに藻体約 100mg(湿重量)を加えた。一つは対照 実験として、もう一方は CO2 を加えて pH6-7 の状態に保った。pH6 の場合、通常海水の約 100 倍の CO2 を含んで いる。水温 20℃、光量 50-60μmol/cm2 の条件下で7日間生育させた。4日目と最終日にそれぞれ湿重量を計測 した。 表3 CO2 添加による生長率の影響 CO2 なし サンプル番号 学名 和名 初期重量 4日 7日 生長率 tomi003 Ahfeltiopsis flabelliformis オキツノリ 101 158 185 183.17% Hok-67 Pterocladiella capillacea カタオバクサ 149 165 170 114.09% Hok-62 Gelidium elegans マクサ 13 19 22 169.23% Hok-71 Ulva linza ウスバアオノリ 110 164 170 154.55% Hok-118 Ulva lactuca オオバアオサ 100 167 182 182.00% tomi008 Ulva pertusa アナアオサ 95 240 268 282.11% tomi006 Codium fragile ミル 204 433 480 235.29% tomi022 Laminaria angustata ミツイシコンブ 90 101 102 113.33% Yotsu-1 Laminaria religiosa ホソメコンブ 105 112 121 115.24% サンプル番号 学名 和名 tomi003 Ahfeltiopsis flabelliformis オキツノリ 104 180 231 222.12% Hok-67 Pterocladiella capillacea カタオバクサ 144 282 228 158.33% Hok-62 Gelidium elegans マクサ 37 37 38 102.70% Hok-71 Ulva linza ウスバアオノリ 113 129 147 130.09% Hok-118 Ulva lactuca オオバアオサ 118 216 379 321.19% tomi008 Ulva pertusa アナアオサ 106 206 194 183.02% tomi006 Codium fragile ミル 200 437 525 262.50% tomi022 Laminaria angustata ミツイシコンブ 101 28 33 32.67% tomi023 Laminaria religiosa ホソメコンブ 114 105 104 91.23% CO2 あり 初期重量 <図7>CO2 添加による生長率の影響グラフ(白:CO2 なし、青:CO2 あり) 4日 7日 生長率 CO2 を海水に加えることによって生長率が高くなった種は、紅藻オキツノリ(Ahfeltiopsis flabelliformis)、紅藻カタオ バクサ(Pterocladiella capillacea)、緑藻オオバアオサ(Ulva lactuca)、緑藻ミル(Codium fragile)、の計 4 種だった。 残りの 5 種は、CO2 添加条件下で生長率が低くなった。生長率が低くなった 5 種のうち、褐藻ミツイシコンブ (Laminaria angustata)、褐藻ホソメコンブ(Laminaria religiosa)の2種が初期の重量よりも低くなっていた。これら2 種は、共に褐藻類で生育する途中で藻体が白色化し、死滅した。おそらく、弱酸性下に弱いことが原因であると 思われる。緑藻オオバアオサ(Ulva lactuca)は CO2 添加条件下で最も生長率が高く、1 週間で 321.19%増加した。 表4 CO2 添加ナシ条件下の生長量に対する CO2 添加条件下での生長量比較 和名 学名 生長率比較 オキツノリ Ahnfeltiopsis flabelliformis 146.83% カタオバクサ Pterocladiella capillacea 413.98% オオバアオサ Ulva lactuca 269.74% ミル Codium fragile 120.11% CO2 を海水に加えない条件よりも、CO2 添加条件下で生長率が増加した 4 種で、CO2 添加ナシ条件下の生長量に 対する CO2 添加条件下での生長量を比較したところ、紅藻カタオバクサ(Pterocladiella capillacea)が 413.98%と最 も高くなった。 7.生育環境の異なる藻体間での発現タンパク質解析 紅藻オキツノリ(Ahfeltiopsis flabelliformis)で、CO2 添加ナシ条件下と CO2 添加条件下で14日間生育させた藻体 50 mgからトータルタンパク質を抽出した。可溶可バッファーは Tween 20 を使用した。電気泳動後、CBB で染色し た。 Tween-20 (Polyoxethylene(20)sorbitan monolaurate)可溶化 buffer ・1M Tris-Cl (pH 7.5) 250μl [50mM] ・2-メルカプトエタノール 110μl [0.31M] ・5% Tween-20 1ml [1%(v/v)] ・137mM PMSF 292μl [8mM] Fill up to 5ml (DW) ランニングゲルは 12.5%を使用した。 12.5% running gel DW 3.39ml L solution 2.49ml N solution 4.17ml 10% APS 39.8μl TEMED 10μl 50kDa 25kDa アリ ナシ アリ ナシ アリ ナシ <図8>CO2 添加ナシ条件下と CO2 添加条件下で14日間生育させた藻体のトータルタンパク質比較 結果、Tween 20 で抽出したトータルタンパク質の CBB 染色では、明瞭なタンパク質バンドの違いは見られなかっ た。 今後の展開 今回、好 CO2 種の探索に用いた9種のうち、CO2 添加条件下でより生長量が増加した海藻類を 4 種:紅藻オキツ ノリ(Ahfeltiopsis flabelliformis)、紅藻カタオバクサ(Pterocladiella capillacea)、緑藻オオバアオサ(Ulva lactuca)、緑 藻ミル(Codium fragile)も発見できた。約半数が好 CO2 種であった。これら好 CO2 種 4 種は分類学的にまったく関 係はなく、系統的に遠い仲間である。逆に、系統的に近い仲間で CO2 添加条件下で生長が伸びない例が見られ た。例えば、紅藻テングサ目の仲間のカタオバクサ(Pterocladiella capillacea)は好 CO2 種だが、マクサ(Gelidium elegans)は非好 CO2 種である。同じく、緑藻オオバアオサ(Ulva lactuca)は好 CO2 種だが、同じアオサ属のウスバ アオノリ(Ulva linza)は非好 CO2 種であった。一方、今回調べた褐藻コンブ類の2種は、共に初期の重量よりも低く なっていた。種類数が少なく、このデータだけで褐藻コンブ類がこの実験に向かないかどうかは判断できない。道 内には、緑藻 42 種、褐藻 98 種、紅藻 173 種、合計 320 種の海藻類が生育していて、今後さらに好 CO2 種の探 索を進めることで、より多くの好 CO2 種が発見されると期待できる。探索を行う場合、近縁種間でも好 CO2 種であ ったり、非好 CO2 種であったりすることが予想され、網羅的な探索が必要であると考える。 本研究開発の好 CO2 種の探索において、最も生長率の高かったのは、緑藻オオバアオサ(Ulva lactuca)で 1 週 間で 321.19%増加した。この種は、日本においては北海道でしか確認されていない(Shimada et. al. 2003)。今回は、 通常海水の約 100 倍の CO2 濃度、水温 20℃、光量 50-60μmol/cm2 の一定条件下で培養し、生長量を測定した。 海藻類の光合成速度は一般に水温や光量に影響を強く受けることから、将来的にはこれら各種環境条件の最適 値を調査し、生長率を最大限に上げる努力が必要であろう。 また、工場排ガスのような濃縮 CO2 を実際に屋外プラントで利用した例はない。そこで、世界初の高濃度 CO2 海水を利用したモデルプラントを未利用地に建設し、天然海水と太陽光エネルギーを用い1年を通じて好 CO2 種 を陸上栽培し、CO2 吸収量および石油代替効果を試算する必要がある。季節による水温や光量の変化に対応す るため、生長最適条件を考慮しながら季節毎に栽培種を変えたりパネルによる太陽光集積効果を検討したりして、 1年間安定した生長を目指す。これにより、収穫された海藻バイオマスから CO2 吸収量とメタン発酵した場合の石 油代替効果を算出し、森林の場合と比較でき、実用化の規模と効果が予測できるであろう。 さらに、高 CO2 という刺激によって変化すると思われる転写因子やキナーゼ等のシグナル伝達に関わるタンパ ク質と高 CO2 吸収能との関連性についての知見は皆無である。本研究開発で、予備実験的ながら、CO2 添加ナ シ条件下と CO2 添加条件下で14日間生育させた藻体からタンパク質を抽出し、バンドの違い、つまり、活性タン パク質の違いを調査した。残念ながら、Tween 20 での抽出と CBB 染色という組み合わせでは、明瞭なタンパク質 バンドの違いは見られなかった。可溶化バッファーは他にも Triton-X、CHAPS、CTAB などがあり、また染色方法 も、さらに感度の良い銀染色もある。さらに調査を進め、CO2 添加条件下で特異的に発現するタンパク質の解析 を行っていく予定である。もちろん、タンパク質からだけでなく、発現遺伝子からの探索も行う。CO2 添加ナシ条件 下と CO2 添加条件下で14日間生育させた藻体から mRNA を抽出し、逆転写によって cDNA を作成し PCR 後の バンドを比較する。これらの解析から得られる高 CO2 吸収に関する遺伝情報を駆使し、将来的には CO2 吸収ビジ ネスモデルを策定し、将来の「生物利用による CO2 吸収工場」へのビジョンが展開されれば、各種波及効果や研 究分野の広がりが期待でき、新たなシーズを産み出すことも可能であろう。 本研究開発は,社会ニーズである「地球温暖化対策の議長国として発布した京都議定書に盛り込まれている CO2 削減技術」にマッチし、また、工場排ガスの CO2 を削減できることから、「CO2 削減の実用化の実現」や「環境 対策に積極的な企業であるというイメージ戦略」などの産業ニーズとなりうる重要なテーマである。これまでの植 物による CO2 固定は、植林を想定している。植林は CO2 を固定させておくだけならば海藻類よりも優れている。そ の木が枯れるまで、他の有効技術を開発するための猶予期間を与えてくれる。しかし、植林による CO2 固定能は その若齢段階(20 年生前後)まで増加し 20 年生で 15t CO2/ha/yr に達し、20 年間・1ha 中で吸収される CO2 量 は 205 t CO2 となるが、つまり 20 年間は石油代替エネルギーとして有効利用できず、原油換算で 57.7kL にしかな らない。また、幼木作製、地ごしらえ、下草刈り、除伐、枝打ち、間伐、山奥まで人間が入っていく、育った木を切 って山からおろすためのコストとエネルギーがかかってしまう。一方、本研究開発における海藻類の陸上栽培は、 植林の場合と単位を同じくすると、20 年間・1ha 中で吸収される CO2 量は 2640t CO2 となり、CO2 吸収量は植林を 上回り、かつ、1 ヶ月で収穫可能になるため、20 年間・1ha 中の石油代替効果は原油換算で 526kL となる。つまり、 植林よりも、海藻類のほうが、カーボンニュートラルへの転換を効率良く速やかに行える。栽培に用いる種苗の 問題も、本研究開発の代表者らの陸上栽培に適した種苗生産と栽培技術が特許化されており(特許公開 2002-176866)、容易に安価でできる。また、海藻類を用いることで、大気に放出され続けている工場排ガスを濃 縮 CO2 源として有効利用でき、CO2 吸収と石油代替エネルギーとしての利用が可能となる。これは陸上植物では 今のところ不可能で、海藻類ならではの利点・優位性である。もちろん、植林による CO2 固定は非常に大事で今 後も続けていくべきであるが、周囲を海洋で囲まれた我が国において、海岸線は世界第6位の 34850 ㎞もあり、 これを利用しない手はない。陸上植物も海藻類も有効に利用しながら、地球規模の問題である CO2 吸収と有効 利用に関して、我が国が世界のイニシアチブを取っていけることが最良であると考える。 参考文献 Gao, K., Aruga, Y., Asada, K., Ishihara, T., Akano, T. & Kiyohara, M. 1991. Enhanced growth of the red alga Porphyra yezoensis Ueda in high CO2 Concentrations. J. Appl. Phycol. 3: 355-362. Provasoli, L. 1968. Media and prospects for the cultivation of marine algae. In: Cultures and Collections of Algae. (Ed. by Watanabe A. & Hattori A.), pp. 63-75. Satoshi Shimada, Masanori Hiraoka, Shinichi Nabata, Masafumi Iima & Michio Masuda. 2003. Molecular phylogenetic analyses of the Japanese Ulva and Enteromorpha (Ulvales, Ulvophyceae), with special reference to the free-floating Ulva. Phycological Research 51: 99-108. Satoshi Shimada, Masanori Hiraoka, Yukihiko Serisawa & Takeo Horiguchi. 2004. Phylogenetic studies in the genus Codium (Chlorophyta) from Japan. Japanese The Journal of Phycology 52: 35-39. 吉田忠生、嶌田智、吉永一男、中嶋泰:日本産海藻目録(2005 年改訂版) 藻類 vol 53 (3): 179-228. Zou, D. 2005. Effects of elevated atmospheric CO2 on growth, photosynthesis and nitrogen metabolism in the economic brown seaweed, Hizikia fusiforme (Sargassaceae, Phaeophyta). Aquaculture 250: 726-735.