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第2次多久市すくすく健康プラン(健康増進計画)

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第2次多久市すくすく健康プラン(健康増進計画)
第2次
多久市すくすく健康プラン
(健康増進計画)(素案)
平成28年3月
多久市
目
次
第Ⅰ章
1
2
3
4
計画策定にあたって
計画策定の趣旨
計画の性格
計画の期間
計画の対象
1
1
2
2
第Ⅱ章
1
2
3
4
課題別の実態と対策
基本方針
基本目標
取り組み項目
目標の設定と評価
3
3
5
6
第Ⅲ章 1 次計画の評価
第Ⅳ章 具体的な目標と対策
1 生活習慣病発症予防と重症化予防の徹底
(1)がん
(2)循環器疾患
(3)糖尿病
(4)COPD(慢性閉塞性肺疾患)
(5)次世代の健康
2 生活習慣および社会環境の改善
(1)栄養・食生活
(2)身体活動・運動
(3)飲酒
(4)喫煙
(5)歯・口腔の健康
3 社会生活を営むために必要な機能の維持および向上
(1)こころの健康・休養
(2)高齢者の健康
第Ⅴ章 計画の推進
1 健康増進に向けた取り組みの推進
2 関係機関との連携
3 健康増進を担う人材の育成
<資
料>
1.多久市保健対策推進協議会委員名簿
7
10
14
20
26
28
41
48
52
55
57
60
65
67
67
69
第Ⅰ章 計画策定にあたって
1.計画策定の趣旨
市民の健康寿命を延伸し、QOL(quality of life : 生活の質)の向上を図ることや
本市の特徴、市民の健康状態を基にした健康課題を明らかにした上で、健康日本21の
取り組みを最終的な目標と位置づけた「多久市すくすく健康プラン」を平成17年度に
策定し、保健活動を展開してきました。
第 1 次健康プラン策定から9年が経過し、最終評価を行った結果、本市が抱える問題
点や健康課題が明確になりました。
現在、少子化の進行や共働き世帯の増加等によって、子どもを産み育てる環境は大き
く変化しています。また、急速な人口の高齢化や生活習慣の変化により、疾病構造が変
化し、疾病全体に占めるがん、生活習慣病(虚血性心疾患:心筋梗塞、狭心症等、脳血
管疾患:脳梗塞、脳出血、および糖尿病等)の割合が増加し、これら生活習慣病に係る
医療費の国民医療費に占める割合は、約3割を超える状況となっています。
国においても、今後の取り組みの推進に当たっては、「すべての国民がともに支え
合い、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会」の実現への基本的な方向の視点を
取り入れ、活力ある社会を実現するためには、生活習慣病を予防し、社会生活を営む
ために必要な機能を維持・向上すること等によって、国民の健康づくりを推進するこ
とが重要となるととらえ、健康増進法に基づき、「国民の健康の増進の総合的な推進
を図るための基本的な方針」以下「基本的方針」という)を全部改正し、平成25年
度から平成34年度までの21世紀における第2次国民健康づくり運動(健康日本2
1(第2次))を推進することになりました。
このような中、国の「基本的方針」と現計画の評価を踏まえ、生活習慣病の発症予防
と重症化予防の徹底を図り、全ての市民が自分の健康は自分で守るという健康増進に取
り組む意識と行動変容を支援するための施策を推進する「第2次多久市すくすく健康プ
ラン(健康増進計画)」を策定します。
2 計画策定の性格
この計画は、国の「基本的方針」の基本的な方向性を踏まえ、「第2次佐賀県健康プ
ラン(健康増進計画)」を勘案し策定するもので、健康増進法第8条に基づく、市民一
人ひとりの生涯を通じた健康づくり施策についての計画とします。
多久市の第4次多久市総合計画を上位計画とし、「子育て応援のまちづくり-子育て
支援の充実」や「人にやさしい健康・医療・福祉のまちづくり-健康づくりの推進」の
施策を図るための計画として策定するものです。
1
また、「第2次多久市すくすく健康プラン」は、平成26年度に策定した「第2次多
久市食育推進計画」、「多久市子ども・子育て計画」や「データヘルス計画」、「多久
市高齢者福祉計画」など他の計画との整合性を図ります。
3 計画の期間
本計画は、国の「健康日本21(第2次)」等との整合を図り、計画期間を平成28
年度から平成34年度までの7年間とします。
4 計画の対象
乳幼児期から高齢期までのライフステージに応じた健康増進の取り組みを推進するた
め、全市民を対象とします。
2
第Ⅱ章
課題別の実態と対策
1.基本方針
市民が自分の健康増進に取り組むとともに、ともに支え合い、社会保障制度が持続
可能なものとなるよう、健康の増進の総合的な推進を図る。
急激な少子高齢化や疾病構造の変化が進む中で、個々の生活習慣の改善や社会環境の
改善を通じて、社会保障制度が持続可能なものとなるよう、市民の健康増進の総合的な
推進を図ります。
2.基本目標
健康寿命の延伸と健康格差の縮小
高齢化の進展及び疾病構造の変化を踏まえ、生活習慣病の予防及び社会生活を営むた
めに必要な機能の維持及び向上等により、健康寿命の延伸を実現することが重要です。
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定
義づけられています。
人が、自分らしく生活するための生活の質を確保するためには、健康寿命を延ばすこ
とが大切になります。平均寿命と健康寿命のこの差の拡大は、高齢社会では、医療費や
介護給付費の増大に通じます。
生活習慣病予防や健康増進、介護予防により、平均寿命と健康寿命の差を短縮するこ
とができれば、個人の生活の質の低下を防ぐとともに社会保障負担の軽減も期待できま
す。
健康格差とは、地域や社会経済状況の違いが、その集団の健康状態に影響し地域の健
康状態の差となってでてきます。
本市は、地理的にも山間部・平野部と変化がある地域であり、その地域での生活環境
も大きく異なった状況があります。こうした生活環境の違いがあっても、健康を保つた
めの情報はどこででも入手でき、健康づくりの事業に参加できる環境・体制づくりが必
要となってきます。
また、この地域格差の縮小に向けた取り組みの成果の指標は、健康寿命を最も重要な
指標とします。
3
1
このようなことから、「平均寿命」と「健康寿命」との差は、日常生活に制限のある
「不健康な期間」を意味するため、目標値の設定に際しては、要介護認定者の割合を用
いることとし、生活習慣病予防等により、後期高齢者医療保険加入前に健康上の問題で
日常生活が制限される状態(要介護状態)になる人割合の減少を目指します。
目標項目
年齢
現状(H27)
75歳未満の要介
護認定率の減少
40歳~64歳
0.46%
65歳~74歳
5.0%
4
1
目標(H34 )
データソース
減少
多久市
KDBシステム
(二次加工)
3.取り組み項目
1 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
がん、循環器疾患、糖尿病等に対処するため、食生活の改善や運動習慣の定着等によ
る一次予防(生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病の発症を予防することを
いう。)に重点を置いた対策を推進するとともに、合併症の発症や症状の進展等の重症
化予防に重点を置いた対策を推進します。
2 生活習慣および社会環境の改善
市民が自分の健康は自分で守れるよう、自分の健康を形成する基本要素となる栄養・
食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣の改
善が重要です。
生活習慣の改善に向けた働きかけを、乳幼児期から高齢期のライフステージや性差に
着目し、こうした違いに基づき分けられた対象集団ごとに健康課題等を十分把握し、子
どもの頃からの健康な生活習慣づくりに取り組みます。
とくに、生活習慣病を発症する危険度の高い集団については、病気を予防し、発病時
期を遅らせることができるよう生活習慣の改善に向けた働きかけを重点的に行います。
さらに、働く世代のストレス対策等により、ライフステージに応じた「こころの健康
づくり」に取り組むことが必要です。このような社会環境の改善が市民の健康に影響を
及ぼすことも踏まえ、地域や職場等を通じて市民に対し健康増進への働きかけを進めて
いくことが必要です。
3 社会生活を営むために必要な機能の維持および向上
市民が自立した日常生活を営むことを目指し、こころの健康づくりや高齢者の健康づ
くりなどの心身機能の維持及び向上につながる対策に取り組みます。
5
3
1
1
4.目標の設定と評価
1 目標の設定
第2次多久市すくすく健康プランの策定にあたっては、人口動態、医療・介護に関す
る統計、多久市健康診査・多久市国民健康保険特定健康診査のデータ等、市民の健康
に関する各種指標を活用しつつ、健康寿命の延伸の実現に向けて重要な課題を選択し、
その到達すべき目標を設定します。
2 目標の評価
目標については7年間を目途として設定することとし、目標を達成するための取り組
みを計画的に行います。
ただし、既存の他の計画において健康づくりに関する目標が設定されている場合は、
それらとの整合性に留意し、目標項目によって目標期間が異なる取り扱いをします。
また、目標設定後4年を目途に、すべての目標について中間評価を行います。
6
第Ⅲ章 1次計画の評価
1次計画の評価を本計画に反映させるため、指標とした項目の達成状況について評価
を行いました。
達成状況は次のとおりで、Aの「目標値に達した」とBの「目標値に達していないが
改善がみられる」を合わせると、全体の37.1%で改善がみられました。
また、評価指標において、関連する法や事業内容が変わり評価が困難の判定「E]が
9項目16.7 %もあったため、今後の評価指標の設定にも工夫が必要です。
評価区分
該当項目数
全体の割合
A
目標値を達成した
13
24.1%
B
目標値に達成していないが、改善がみられる
7
13.0%
C
変わらない
13
24.1%
D
悪化している
12
22.2%
E
比較データがなく評価が困難
9
16.7%
54
100.0%
項目数合計
これらの評価を踏まえ、基本目標の達成に向けて、市民が健康な生活習慣の重要性に
対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康
の増進に努めることができるよう、市では科学的な根拠に基づいた健康増進に関する具
体的な取り組みを推進します。
1. 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
評価項目
目標値
H17
市の状況
H22
H26
評価
データソース
がん検診受診率
生
活
習
慣
病
の
発
症
予
防
と
重
症
化
予
防
の
推
進
乳がん
18.1%以上
3.7
16.8
24.5
A
大腸がん
23.3%以上
8.7
21.6
26.2
A
子宮がん
29.9%以上
10.4
21.8
24.5
B
肺がん
受診率向上を目指す
48.7
25.5
27.5
D
胃がん
25.5%以上
7.4
14.8
15.0
B
B型・C型肝炎ウイルス検査精密検査受診率
受診率向上を目指す
70.5
76.2
20.0
D
24.3
30.9
24.6
29.6
C
A
11.4
6.1
13.3
6.6
C
C
41.3
52.0
54.7
48.3
18.2
43.0
21.1
53.4
23.3
D
D
78.7
93.2
83.3
88.1
86.8
96.0
88.6
92.1
96.4
96.5
85.2
95.4
A
C
C
B
循環器
男性
女性
減少を目指す
減少を目指す
男性
女性
内臓肥満(BMI25以上または腹囲基準 男性
以上)
女性
減少を目指す
減少を目指す
46.7%以上
特定健診第2期計画では
58.0%
減少を目指す
減少を目指す
乳幼児健診受診率
乳児(0歳児)
1.6歳児
2.6歳児
3歳児
受診率の向上推進
95.6%以上
受診率の向上推進
93.3%以上
脂質割合(LDLコレステロール)
要医療以上
糖尿病
血糖値(HbA1c要医療(6.5以上))
特定健診
7
1
H20
26.3
35.8
H20
11.2
6.5
H20
地域保健・
健康増進報告
国保特定健診
法定報告
A
母子保健事業報告
2.生活習慣および社会環境の改善
評価項目
食
生
活
運
慣動
習
生
活
習
慣
お
よ
び
社
会
環
境
の
改
善
飲
煙酒
喫
歯
児
童
・
生
徒
の
生
活
習
慣
寝る前2時間以内に食事を週3回以上とる割合
夕食後に間食をとることが週3回以上ある割合
食べ物の好き嫌いがある(幼児)
おやつの時間を決めている子どもの割合(幼児)
朝食を食べている幼児の割合
朝食を食べている児童・生徒の割合
児童(小5)
生徒(中2)
ジュースや炭酸飲料を毎日飲ませている状況
運動している人の割合
男性
女性
たばこを吸う割合
休肝日を作っている人の割合
→お酒を飲む頻度として項目を変更:毎日飲む
一日も歯磨きしない人の割合(大人)
男性
女性
仕上げ磨きをしている割合(毎日)(幼児)
乳児のむし歯をどう思うか
絶対むし歯にしたくない
哺乳瓶の使用を1歳6か月児でやめている割合
フッ化物洗口の実施率
幼児
児童
歯磨きをあまりしない(0~1回/日)割合
児童
生徒
規則正しい生活習慣の勧め(登校時または登園時に眠い)
児童
生徒
3時間以上テレビを見る割合
児童
生徒
テレビゲームは1時間以内とする
児童
生徒
目標値
市の状況
H22
H26
15.3
10.1
56.7
64.5
95.3
92.0
90.4
-
H20
33.6
39.0
35.2
H20
22.5
評価
データソース
16.5
10.0
―
71.0
96.8
C
B
E
A
C
特定健診問診票
98.9
94.4
45
84.4
87.6
32.4
D
D
A
朝食実態調査
46.0
40.4
17.2
41.6
38.5
14.0
B
C
B
24.4
23.7
C
1.7
1.1
90.0
7.6
1.3
84.2
-
-
88.3
E
E
C
70.5
75.9
79.2
B
早期に離す割合の推進
78.0
84.6
82.0
C
実施率の向上推進
実施率の向上推進
91.2
88.4
96.4
93.4
98.4
95.6
A
A
歯科保健統計
歯磨きの徹底の推進
歯磨きの徹底の推進
15.5
9.1
20.7
13.6
16.0
―
D
E
子ども子育てアンケート
規則正しい生活習慣の推進
規則正しい生活習慣の推進
30.0
53.8
4.3
32.8
5.5
―
D
E
長時間見せない環境の推進
長時間見せない環境の推進
35.0
57.8
35.4
50.4
25.7
―
C
E
長時間させない環境の推進
長時間させない環境の推進
8.0
18.5
80.3
84.0
67.9
―
A
E
減らすように推進
減らすように推進
減らすように推進
規則的におやつを与えるよう推進
100%を目指す
100%を目指す
100%を目指す
減らすように推進
増加を目指す
増加を目指す
喫煙者0%を目指す
毎日飲酒する人を減らす
しない人をなくす
しない人をなくす
実施割合の向上推進
むし歯の絶滅推進
8
1
H17
H20
15.8
12.5
60.0
55.0
96.0
幼児健診問診票
幼児健診問診票
特定健診問診票
国保特定健診
法定報告
健康度評価事業(H20まで)
市民アンケート(H22のみ)
幼児健診問診票
幼児健診問診票
多久市健康教育総合推進モ
デル事業(H17)
子ども子育てアンケート
3.社会生活を営むために必要な機能の維持および向上
評価項目
こころ
必
要
な
維
持
機
能
環境
生きがいを持っている人の割合
男性
女性
BCG予防接種の接種率
休日や夜間に受診できる医療機関を知っている割合
育児を楽しいと感じる
子育て中でも息抜きができる
(ゆったりとした気分で子どもと過ごせる時間)
子どもとの会話やスキンシップを大切にしていますか
育児についての相談相手がいる(ほとんどいる)
子どもの前でタバコを吸う人の割合
子どもを気軽に預ける場所がある
目標値
生きがいのある生活創造
生きがいのある生活創造
100%を目指す
周知徹底を目指す
割合を増やす
割合を増やす
100%を目指す
ぜんぶいる
吸わない環境の推進
増えるよう推進
9
1
H17
市の状況
H22
H26
85.8
85.3
65.3
60.0
80.0
85.0
90.6
95.7
89.5
83.7
76.8
72.2
82.5
91.0
88.2
D
D
C
A
A
88.0
88.3
77.7
D
-
ほとんどいる
53.0
-
99.3
95.4
37.7
85.8
53.1
96.2
18.2
94.4
E
D
A
E
評価
データソース
多久市高齢者福祉計画
地域保健・健康増進報告
子ども子育てアンケート
幼児健診問診票
子ども子育てアンケート
幼児健診問診票
子ども子育てアンケート
第Ⅳ章
具体的な目標と対策
1.生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
本市における主要な死亡原因はがんと循環器疾患です。また、糖尿病については重大な
合併症を引き起こす恐れがあり、患者数が増加傾向にあります。
こうしたことから、健康寿命の延伸を図る上でこれらに対処することは、重要な課題で
あり、次の取り組みを推進します。
⑴ がん
① はじめに
がんは本市での死亡原因の第1位であり、平成25年にがんで死亡した市民は84
人で総死亡者数の26.2%を占めています。
また、国のがん対策基本計画において、国民の約2人に1人は一生のうちに何らかの
がんに罹患するといわれています。がんは、遺伝子が変異を起こす原因が多岐にわたる
ため、予防が難しいといわれてきましたが、生活習慣の中にがんを発症させる原因が潜
んでいることが明らかになってきています。
② 基本的な考え方
ⅰ 発症予防
がんのリスクを高める要因としては、がんに関連するウイルス(B型肝炎ウイルス
<HBV>、C型肝炎ウイルス<HCV>、ヒトパピローマウイルス<HPV>、成人T細胞白血病 ウイ
ルス<HTLV-Ⅰ>)や細菌(ヘリコバクター・ピロリ菌<HP>)への感染のほか、喫煙(受動
喫煙を含む)、過剰飲酒、身体活動の低下(運動不足)、肥満・やせ、野菜・果物不足、塩
分・ 塩蔵食品の過剰摂取など生活習慣に関連するものが多くあります。
がんのリスクを高める生活習慣は、循環器疾患や糖尿病の危険因子と同様であるため、
循環器疾患や糖尿病予防の取り組みとしての生活習慣の改善が、結果的にはがんの発症予
防に繋がると考えられます。
ⅱ 重症化予防
進行がんの罹患率を減少させ、がんによる死亡を防ぐために最も重要なのは、早期発見
であり、自覚症状がなくても定期的にがん検診を受けることが必要です。このため、有効
性が確立されているがん検診の受診率を向上させることが重要です。(参考資料 1)
10
参考資料 1
科
学
的
根
拠
の
あ
る
が
ん
検
診
部位
多久市の対象
がん検診
評価判定*1
胃
40 歳以上
胃 X 線検査
相応な証拠あり
肺
40 歳以上
胸部 X 線検査
喀痰細胞診
相応な証拠あり
大腸
40 歳以上
便潜血反応検査
十分な証拠あり
子宮頸部
20 歳以上の女性
子宮頸部擦過細胞診
相応な証拠あり
乳
40 歳以上の女性
視触診とマンモグラフィの併用
相応な証拠あり
*1 ガイドラインに基づいたがん検診の有効性
③ 現状と目標
ⅰがんによる死亡率の減少
がんになる確率の高い高齢者の人口比率が増加していることに伴い、本市のがんによ
る死亡者数は今後も増加していくことが予測されます。本市のがんによる死亡率は横ば
いですが、佐賀県と比べると高い状況です。部位別にみると、気管・気管支及び肺、肝
及び肝内胆管がん、大腸の順に多い状況です。また、肝及び肝内胆管と大腸がんは佐賀
県に比べると約1.5倍と高くなっています。(表1)
今後も、循環器疾患や糖尿病などの生活習慣病対策と同様、生活習慣改善によるがん
の予防及びがん検診での早期発見を推進することや肝炎対策でがんの死亡率の減少を図
ります。
表1 がん死亡率およびがん部位別死亡率(人口 10 万対)
H22 年
H23 年
H24 年
H25 年
佐賀県
多久市
佐賀県
多久市
佐賀県
多久市
佐賀県
多久市
320.7
389.0
338.0
465.4
331.1
391.0
329.9
412.0
肝及び肝内胆管
41.1
65.6
44
99.7
39.4
48.3
35.4
63.8
乳房
11.3
4.7
12.7
14.2
11.4
14.5
10.8
14.7
子宮
12.3
26.2
8.5
0
7.9
9
12.2
18.2
胃
46.2
56.2
46.9
33.2
41.1
57.9
44.7
58.9
気管、気管支及び肺
60.3
56.2
62
90.2
59.4
86.9
61.7
73.6
大腸
36.8
60.9
42.5
42.7
43.2
62.8
38.5
63.8
膵
22.5
18.7
27.5
52.2
25.7
29
26
39.2
0
0
8.5
4.7
8
14.5
8
4.9
9.3
9.4
8.4
19
9.4
0
11.1
9.8
悪性新生物
食道
白血病
(佐賀県保健統計年報)
11
図1 H25年がん部位別死亡率(人口 10 万対)
80
70
73.6
63.8
58.9
60
44.7
50
40
20
10
14.7
10.8
39.2
38.5
35.4
30
63.8
61.7
26
18.2
8
12.2
4.9
11.1
9.8
0
佐賀県
多久市
(佐賀県保健統計年報)
目標項目
がんの死亡率の減少
(人口10万対)
現状(H25)
目標(H34)
データソース
412人
減少
佐賀県保健統計年報
ⅱ がん検診の受診率の向上
本市のがん検診の受診率は、「がん検診事業の評価に関する委員会(H20 年 3 月)」
で提案された計算方法で算出しており、検診が有効とされている胃がん・肺がん・大腸
がん・子宮頸がん・乳がん検診についてはいずれも横ばいの状況です。
国のがん対策推進基本計画では、受診率50%を目指すとなっていますが、本市にお
ける受診率はいずれも達成できていません。(表2)
がん検診で精密検査が必要となった人の精密検査受診率は、8~9割です。がん検診
受診者のうち、どの項目もがんが見つかっているため、精密検査受診率の向上を図って
いく必要があります。(表3)
今後も、有効性が確立されているがん検診の受診率向上を図るための様々な取り組み
と、精度管理を重視したがん検診を推進します。
12
1
表2 がん検診受診率の推移
H22 H23 H24 H25 H26
胃がん (%)
14.8
14.7
14.7
14.6
15.0
肺がん (%)
25.6
25.7
27.0
26.3
27.5
大腸がん (%)
20.4
21.2
24.7
24.3
26.2
子宮頸がん (%)
22.0
24.5
24.6
22.9
24.5
乳がん (%)
16.8
23.3
23.9
23.6
24.5
(地域保健・健康増進事業報告)
表3 がん検診の精密検査受診率とがん発見者数
検診の種類
胃がん検診
肺がん検診
大腸がん検診
子宮頸がん検診
乳がん検診
精密検査受診率 と
H22 H23 H24 H25 H26
がん発見者数
精密検査受診率
(%)
がん発見者数(人)
精密検査受診率
(%)
がん発見者数(人)
精密検査受診率
(%)
がん発見者数(人)
精密検査受診率
(%)
がん発見者数(人)
精密検査受診率
(%)
がん発見者数(人)
90.9
91.1
87.8
88.7
94.4
6
1
4
2
3
76.9
82.2
94.5
87.0
89.8
4
2
1
0
2
75.9
90.4
86.3
83.3
87.1
3
2
3
5
2
86.7 100.0
88.0
84.8
82.1
0
1
0
2
0
91.4
93.3
93.1
90.5
92.5
1
3
0
1
7
(地域保健・健康増進事業報告)
現状(H26)
目標
(H34)
胃がん
15.0%
25.5%以上
肺がん
27.5%
大腸がん
子宮頸がん
26.2%
24.5%
乳がん
24.5%
目標項目
がん検診の
受診率の向上
データソース
地域保健・
健康増進報告
30%以上
④ 対策
ⅰ がんの発症予防
・市報や多久ケーブルテレビなどを利用し、がんの発症予防に関する知識普及を行いま
す。
・肝炎ウイルス検査、子宮頸がん予防ワクチン接種を実施します。
13
1
ⅱ がんの重症化予防
・がん検診対象者への受診調査、個別案内や嘱託員会や市報への掲載などを行い、がん
検診の受診について啓発を図ります。
・胃がん検診、肺がん検診、大腸がん検診、子宮頸がん検診、乳がん検診、前立腺がん
検診を実施します。
・子宮頸がん検診と乳がん検診では個別検診を実施します。
・国の事業として、一定の年齢に達した方に検診手帳及び検診無料クーポン券を配布し
ます(子宮頸がん検診、乳がん検診)。
・地区担当保健師が要精密検査者未受診者へ精密検査の受診勧奨を行います。
・県が実施する職域検診におけるがん検診(大腸がん)事業を実施します。
ⅲ がん検診の質の確保
・精度管理項目を遵守できる検診機関を選定します。
・日曜検診および個別検診を行い、受診しやすい体制づくりに努めます。
⑵
循環器疾患
①
はじめに
脳血管疾患と心疾患を含む循環器疾患は、がんと並んで本市の主要死因となってい
ます。
循環器疾患の確立した危険因子に、高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病の4つがあり、
循環器疾患の予防はこれらの危険因子の管理が中心となるため、それぞれの因子につい
て改善を図っていく必要があります。
なお、上記の4つの危険因子のうち、ここでは高血圧と脂質異常症について扱い、糖
尿病と喫煙については後に詳述します。
②
基本的な考え方
ⅰ 発症予防
循環器疾患の予防において中心となる危険因子の管理には、関連する栄養・食生活、
身体活動・運動、喫煙、飲酒の生活習慣の改善が最も重要です。
市民一人ひとりが、生活習慣と危険因子の関連、危険因子と循環器疾患との関連につ
いての理解を深め、これらの生活習慣改善への取り組みを考えていくための科学的な根
拠は、健康診査の受診結果でしか得られないため、平成20年度に開始された各医療保
険者による特定健康診査(以下「特定健診」と いう)の受診率向上対策が重要になり
ます。
14
12
1
ⅱ 重症化予防
循環器疾患における重症化予防には、高血圧及び脂質異常症の治療率を向上させる必
要があります。どれほどの値であれば治療を開始する必要があるのかなど、自分の身体
の状態を正しく理解し、段階に応じた予防ができるようにするための支援が重要です。
また、高血圧及び脂質異常症の危険因子は、肥満を伴わない人にも多く認められ、し
かも循環器疾患の発症リスクは、肥満を伴う場合と変わらないことが示されていること
から、肥満は伴わないが危険因子を持つ人に対しても保健指導が必要になります。
③ 現状と目標
ⅰ
脳血管疾患の年齢調整死亡率の減少
高齢化の影響を除いた年齢調整死亡率を、循環器疾患対策の総合的な推進の評価指標
とします。
本市の脳血管疾患の年齢調整死亡率は減少傾向にあります。(図2)
図2
脳血管疾患死亡者数と年齢調整死亡率
(佐賀県保健衛生統計)
生活習慣病は、日々の生活習慣の積み重ねがその発症に大きく関与することが明らか
になっています。生活習慣病を予防するためには個人の主体的な健康づくりへの取り組
みが重要であり、健康教育、健康相談、健康診査等の保健事業による生涯を通じた継続
的な健康管理への支援が必要になります。
目標項目
脳血管疾患の年齢調整死亡率の減少
(人口10万対)
現状(H24) 目標(H34)
36.5人
15
71
30.0人
データソース
佐賀県保健衛生統計
ⅱ
虚血性心疾患の年齢調整死亡率の減少
脳血管疾患と同様に高齢化の影響を除いた年齢調整死亡率を見ると、本市の心疾患によ
る年齢調整死亡率は明らかな減少が認められないことから、今後は循環器疾患の中でも心
疾患の対策が非常に重要になります。(図3)
図3 心疾患死亡者数と年齢調整死亡率
(佐賀県保健衛生統計)
特定健診では、心電図検査は循環器疾患に罹患するリスクの高い人のうち肥満の人のみが
受診する検査項目となり、その選定方法については省令で定められています。
心電図検査の対象となるのは、平成26年度では対象者3,594人のうち118人と3.
3%にすぎません。
高血圧や脂質異常症の危険因子がある場合の循環器疾患の発症リスクは、肥満を伴う場
合と同程度であるため、市では対象者を拡大して、心電図検査を実施していますが、平成
26年度では心電図検査受診者は548人と受診者の23.4%にとどまっています。
平成26年度の心電図検査受診者の40.9%に異常が認められ、そのうち重症な脳梗
塞に結びつきやすい心房細動も14名が発見されています。
このように、国の基準以外の心電図検査受診者からも有所見者が見つかることから、厚
生労働省令で定められた心電図検査受診者のみでなく、特定健診時に対象者を拡大して心
電図検査を実施することで、心疾患の発症を見逃すことなく重症化予防に繋げることが可
能となります。
目標項目
虚血性心疾患の年齢調整死亡率の
減少(人口10万対)
現状(H26) 目標(H34) データソース
54.9人
16
50.0人
佐賀県保健衛生
統計
ⅲ
高血圧症の割合の減少
高血圧は、脳血管疾患や虚血性心疾患などあらゆる循環器疾患の危険因子であり、日本人
の循環器疾患の発症や死亡に対して大きな危険割合を示し、他の危険因子と比べるとその影
響は大きいことが示されています。
本市では特定健診受診者について、肥満を伴う人だけではなく「高血圧治療ガイドライン
2014」に記載されている「血圧に基づいた脳心血管リスク階層」などにより支援対象者
を明確にした保健指導も実施しています。
その結果、高血圧症(Ⅲ度:160/100以上)の減少などの改善が認められたため、
今後も同様の方法で保健指導を継続することが必要です。(図4)
図4
年度
H22
特定健診受診者の高血圧の状況
健診
受診者
正常高値
Ⅰ度
高血圧
973
389
1,972
49.3% 19.7%
473
24.0%
1,045 418
53.8% 21.5%
389
20.0%
1,122 399
55.5% 19.7%
398
19.7%
1,243 416
60.8% 20.4%
335
16.4%
1,190 369
58.5% 18.1%
390
19.2%
1,942
H23
2,021
H24
2,044
H25
2,034
H26
正常
Ⅱ度高血圧以上
再掲
再)Ⅲ度高血圧
137
6.9%
27
1.4%
90
4.6%
9
0.5%
102
5.0%
21
1.0%
50
2.4%
8
0.4%
85
4.2%
8
0.4%
未治療
治療
70
51.1%
14
51.9%
45
50.0%
6
66.7%
47
46.1%
14
66.7%
22
44.0%
4
50.0%
38
44.7%
5
62.5%
67
48.9%
13
48.1%
45
50.0%
3
33.3%
55
53.9%
7
33.3%
28
56.0%
4
50.0%
47
55.3%
3
37.5%
6.9%
1.4%
4.6%
0.5%
5.0%
1.0%
0.4%
2.4%
4.2%
0.4%
(多久市国保特定健診結果)
目標項目
現状(H26)
高血圧症(Ⅰ度以上:
140/90以上)の
割合の減少
ⅳ
目標(H34)
データソース
多久市国保
23.4%
20.0%
特定健診結果
脂質異常症の割合の減少
脂質異常症は虚血性心疾患の危険因子であり、特に総コレステロール及び LDL コレステロ
ールの高値は、脂質異常症の各検査項目の中でも最も重要な指標とされています。
また、虚血性心疾患の発症・死亡リスクが明らかに上昇するのは、総コレステロー ル値
240mg/dl 以上あるいは LDL コレステロール 160mg/dl 以上からと言われています。
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」では、動脈硬化性疾患のリスクを判断
する上で LDL コレステロール値が管理目標の指標とされました。また、特定健診では、中性
脂肪、HDL コレステロール及び LDL コレステロール検査が脂質に関する基本的な検査項目と
されたため、本市でも総コレステロール検査を廃止し、肥満の有無に関わらず LDL コレステ
17
1
ロール値に注目して保健指導を実施してきました。
多久市国保特定健診受診者の LDL コレステロール異常の割合は改善が見られず、特に治療
なしの人の状況は悪化しています。(図5)
図5 特定健診受診者の LDL コレステロール(LDL-C)の状況
年度
健診 120未 120~ 140~
受診者
満
139
159
1,972
H22
1,942
H23
2,021
H24
2,044
H25
2,036
H26
933
453
330
47.3% 23.0% 16.7%
1,004 452
294
51.7% 23.3% 15.1%
951
506
325
47.1% 25.0% 16.1%
1,050 537
278
51.4% 26.3% 13.6%
959
492
342
47.1% 24.2% 16.8%
160以上
再掲
再)180以上 未治療 治療
256
13.0%
83
4.2%
192
9.9%
64
3.3%
239
11.8%
92
4.6%
179
8.8%
66
3.2%
243
11.9%
78
3.8%
241
94.1%
77
92.8%
176
91.7%
61
95.3%
223
93.3%
84
91.3%
166
92.7%
59
89.4%
226
93.0%
75
96.2%
15
5.9%
6
7.2%
16
8.3%
3
4.7%
16
6.7%
8
8.7%
13
7.3%
7
10.6%
17
7.0%
3
3.8%
13.0%
4.2%
9.9%
3.3%
11.8%
4.6%
8.8%
3.2%
11.9%
3.8%
(多久市国保特定健診結果)
平成24年6月に発行の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」では、脂
質異常症スクリーニングとして、総コレステロールから HDL コレステロールを引いた
nonHDL コレステロールが二次的判断基準に加えられました。
今後は、動脈硬化性疾患予防のため、とくに冠動脈疾患に関連深い脂質異常症について、
検査項目や保健指導対象者の見直し等を行い、対象者の状況に合わせた保健指導を実施し
ていくことが重要となります。
目標項目
脂質異常症の
割合の減少
ⅴ
LDLコレステ
ロール 160 ㎎/dl
以上の者の割合
現状(H26)
目標(H34)
データソース
11.9%
8.5%
多久市国保
特定健診結果
メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の割合の減少
メタボリックシンドロームは、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症リスクが高いため、こ
れを減少させることでそれらの発症リスクの低減が図られるという考え方を基本とし、特定
健診・特定保健指導の制度では、メタボリックシンドロームの該当者等の減少が評価項目の
一つとされました。
18
1
本市では、平成24年度までの目標とされていた、「平成20年度と比べて10%の減少」
については達成できていないため、さらに取り組みを強化していくことが必要になります。
(表4)
表4
特定健診受診者のメタボリックシンドロームの予備群及び該当者の推移
健診受診者
男性85cm以上 メタボリック メタボリック メタボ予備群
女性90cm以上
該当者
予備群
+該当者
H22
1,972
632 32.0%
323 16.4%
226 11.5%
549 27.8%
H23
1,942
619 31.9%
343 17.7%
218 11.2%
561 28.9%
H24
2,021
684 33.8%
379 18.8%
218 10.8%
597 29.5%
H25
2,044
774 37.9%
391 19.1%
270 13.2%
661 32.3%
H26
2,036
777 38.2%
407 20.0%
275 13.5%
682 33.5%
(多久市国保特定健診結果)
目標項目
メタボリックシンドロームの
該当者及び予備群の減少
ⅵ
現状(H26)
目標(H34)
33.5%
30.0%
データソース
多久市 国 保
特定健診結果
特定健診の受診率・特定保健指導の実施率の向上
特定健診・特定保健指導制度は、メタボリックシンドロームに着目した特定健診と保健指
導が医療保険者に義務付けられました。特定健診の受診率・特定保健指導の実施率は、平成
30年度に創設される保険者努力支援制度の指標のひとつにもなっています。
生活習慣病対策に対する取り組み状況を反映する指標ともなりますので、今後も、さらに
医療費適正化にむけて取り組みの推進が必要となります。
本市では受診率、実施率ともに、国、県より高い状態で推移していますが受診率は目標値
の60%に達していないため、今後は検査項目の見直しや保健指導の充実などによる受診率
向上施策が重要となります。
目標項目
現状(H26)
目標(H29※1) データソース
多久市国保
特定健診の
多久市国保特定健診の
受診率・特定保健指導
の実施率の向上
55.6%
60%
受診率
多久市 国 保
多久市国保
特定健診結果
特定保健指
64.1%
60%
導の実施率
※1 「第2期多久市国民健康保険特定健康診査等実施計画」において目標が設定されているため目標期間が異なる
19
1
④ 対策
ⅰ
多久市国保特定健診受診率向上
・多久市一般健康診査及び多久市国保特定健診対象者への個別案内の工夫、広報、地区担当
の訪問などを利用した啓発を行います。
・多久市医師会などによる医療機関との連携を図ります。
ⅱ
保健指導対象者の明確化
・多久市一般健康診査及び多久市国保特定健診を実施します。
・多久市国保特定健診では心電図検査の対象者を拡大して実施します。
ⅲ
循環器疾患の発症及び重症化予防
・多久市一般健康診査及び多久市国保特定健診結果に基づいた市民一人ひとりの自己健康管
理を促進するために、特定保健指導や発症リスク(高血圧、脂質異常症、糖尿病のみでなく、
慢性腎臓病(CKD)も発症リスクに加える)に基づいた、地区担当等による訪問や健康相談、
結果説明会、健康教育など、多様な経路により、それぞれの特徴を生かしたきめ細やかな保
健指導を実施します。
・二次健診として、頸動脈超音波検査を実施します。
⑶
糖尿病
① はじめに
全国の糖尿病有病者(HbA1c6.5%以上の者)数は10年前と比べて約1.3倍に増えてお
り、高齢化に伴って増加ペースは加速することが予想されています。
糖尿病は心血管疾患のリスクを高め、神経障害、網膜症、腎症、足病変といった合併症を
併発することなどによって、生活の質ならびに社会経済的活力と社会保障資源に多大な影響
を及ぼします。
糖尿病は、現在新規透析導入の最大の原因疾患であるとともに、成人中途失明の原因疾患
としても第2位に位置しており、さらに、心筋梗塞や脳卒中のリスクを2~3倍増加させる
とされています。
② 基本的な考え方
ⅰ
発症予防
糖尿病の危険因子は、加齢、家族歴、肥満、身体活動の低下(運動不足)、耐糖能異常
(血糖値の上昇)です。
20
1
糖尿病の発症予防には、循環器疾患と同様に、危険因子の管理が重要であるため、糖尿病
の発症予防にも循環器疾患の予防対策が有効になります。
ⅱ
重症化予防
糖尿病における重症化予防には、健診結果から、糖尿病が強く疑われる人や、糖尿病の可
能性が否定できない人を見逃すことなく、早期の治療開始につなげることが必要であり、そ
のためには、健康診査の受診者数を増やしていくことが非常に重要になります。
また、糖尿病の治療を受けていなかったり、治療を中断したりすることが糖尿病の合併症
の増加につながることは明確に示されています。治療を継続し、良好な血糖コントロール状
態を維持することにより、糖尿病による合併症の発症等を抑制することが必要になります。
③ 現状と目標
ⅰ
糖尿病性腎症による年間新規透析導入患者数の減少
近年、全国的に糖尿病腎症による新規透析導入患者数は、増加から横ばいに転じています。
経年変化が認められない理由としては、高齢化に伴う糖尿病患者総数の増加はあるものの、
糖尿病治療や疾病管理の向上の効果が高まっていることが考えられ、少なくもこの傾向を維
持することが必要です。
本市の国民健康保険加入者、協会けんぽ加入者、後期高齢者医療加入者、生活保護受給者
の糖尿病性腎症による新規透析導入者数は、年度ごとにばらつきはあるものの、平成17年
度からは5名程度が導入されています。平成24年度からはわずかではありますが増えてい
るので、今後も糖尿病重症化予防に向けた対策が急務です。
平成26年度に新規導入された10人のうち、半数は70歳以上で最高齢は82才です。
また、国民健康保険加入者で透析導入に至った4人のうち特定健診を受けていた人はわずか
に1人でした。さらに、糖尿病性腎症の方のほうが導入至るまでの期間が短く、最短2年で
透析導入になっています。糖尿病の発症から糖尿病性腎症による透析導入に至るまでの期間
は約20年間と言われていることから、特定健診等の受診を勧奨するとともに他の医療保険
者における保健指導のあり方を確認し、より多くの市民が保健指導を受けることができるよ
う環境を整備していく必要があります。
21
1
図6 透析患者の推移(多久市国民健康保険及び後期高齢者医療加入者・生活保護受給者分)
(人)
全
160
140
120
数
33
疾患 糖尿病性
26 26
原因 腎炎ほか
100
12
80
15 16
39
29
23
10
60
7 7
4 4
40
1 1 1 1 1
20
~S63
H1
H2
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
0
新規導入者のみ
(人)
14
12
3
2
3
10
8
6
3
新規導入者数 糖尿病性
3
7
0
3
新規導入者数 腎炎ほか
10
4
0
0
0
3
0 2
1
0
0
1
1
3
2
0 0
3 3
7
0
7
7
0 0
10 0
0
5 5 5
4
3
6
3
2
5 5
6
4
0
~…
H1
H2
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
2
0
11
4
(多久市国民健康保険レセプト・多久市身体障害者手帳交付状況)
目標項目
現状(H26) 目標(H34)
データソース
多久市国民健康
糖尿病性腎症による年間新規透析
6人
2人
導入患者数の減少
減少
保険レセプト・
多久市更生医療
台帳
22
ⅱ
糖尿病治療継続者の割合の増加
糖尿病における治療中断者を減少させることは、糖尿病合併症抑制のために必須です。
多久市国保特定健診受診者のうち糖尿病有病者の治療率は、平成22年度から増加の
一途をたどり、平成26年度には最高の72.5%になりました。(図7)
*この計画における HbA1c の表記は NGSP 値を用います
図7 HbA1c6.5%以上の者の治療率の推移
(%)
(多久市国保特定健診結果)
糖尿病は「食事療法」も「運動療法」も重要な治療で、その結果の判断をするために
は、医療機関での定期的な検査が必要ですが、「どうもないので医療機関には行かなく
ても良いと思った」等、糖尿病治療の正しいあり方がわからないまま治療を中断したり、
薬を飲み始めたら「好きなように食べていい」と勘違いし、薬に過度に期待してしまい、
食事や運動などの生活習慣の改善がなされないままの人がいます。糖尿病の薬の効果と
限界を十分理解してもらう必要があります。
今後は、糖尿病でありながら治療を受けていない人や、治療を中断している人を減 少
させるために適切な治療の開始・継続が支援できるよう、より積極的な保健指導が必要
になります。
目標項目
糖尿病治療継続者の割合の増加
現状(H26) 目標(H34) データソース
72.5%
23
1
75%
多久市国保
特定健診結果
ⅲ
血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少
日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010」では、
血糖コントロールの評価指標として HbA1c7.0%未満を「合併症予防のための目標」
として位置づけています。
同ガイドラインでは、血糖コントロールが「不可」である状態とは、細小血管症への
進展の危険が大きい状態であり、治療法の再検討を含めて何らかのアクションを起こす
必要があり、HbA1c8.0%を超えると著明に網膜症のリスクが増えることを指摘して
います。
本市では、健康診査及び特定健診の結果、HbA1c7.0%以上の人には、未治療者は
もちろん、治療中の人についても主治医と連携し、必要に応じて保健指導を実施してい
ますが、その結果、特定健診受診者の HbA1c8.0%以上の人の割合は2.1%で推移
しているものの、正常値の人が若干増えつつあります。
しかし、国の平成34年度の目標値(1.0%)には達成していません。(表5)
表5
特定健康診査受診者の HbA1c の年次推移
上段:NGSP値
下段:JDS値
HbA1cの年次比較
保健指導判定値
正常
正常高値
HbA1c測定
A
受診勧奨判定値
糖尿病の可能性
が否定できない
糖尿病
合併症予防の
ための目標
最低限達成が
望ましい目標
再掲
合併症の危険が
更に大きくなる
5.5以下
5.6~5.9
6.0~6.4
6.5~6.9
7.0~7.9
8.0以上
7.4以上
8.4以上
(5.1以下)
(5.2~5.5)
(5.6~6.0)
(6.1~6.5)
(6.6~7.5)
(7.6以上)
(7.0以上)
(8.0以上)
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
B
B/A
C
C/A
D
D/A
E
E/A
F
F/A
G
G/A
H
H/A
I
I/A
H22
1,906
1,200 63.0%
364 19.1% 169 8.9%
68 3.6%
63 3.3%
42 2.2%
75 3.9%
32 1.7%
H23
1,837
870 47.4%
572 31.1% 201 10.9%
78 4.2%
80 4.4%
36 2.0%
66 3.6%
25 1.4%
H24
1,942
879 45.3%
612 31.5% 243 12.5%
96 4.9%
71 3.7%
41 2.1%
77 4.0%
28 1.4%
H25
1,913
736 38.5%
618 32.3% 316 16.5%
104 5.4%
98 5.1%
41 2.1%
78 4.1%
32 1.7%
H26
1,910
907 47.5%
547 28.6% 256 13.4%
89 4.7%
70 3.7%
41 2.1%
68 3.6%
21 1.1%
(多久市国保特定健診結果)
とくに、治療中の人のコントロール不良者(HbA1c7.0%以上の者)は年々増加し
ていることから、今後も医療関係者と本市の糖尿病治療等に関する課題の共有などを図
りながら、コントロール不良者の減少に努めます。(図8)
24
1
図8
年度
H22
特定健康診査受診者のHbA1cの状況
HbA1
5.5以
c
5.6~5.96.0~6.4
下
測定
1,200 364
169
1,906
63.0% 19.1% 8.9%
1,837
H23
1,942
H24
1,913
H25
1,910
H26
870
572
201
47.4% 31.1% 10.9%
879
612
243
45.3% 31.5% 12.5%
736
618
316
38.5% 32.3% 16.5%
907
547
256
47.5% 28.6% 13.4%
6.5以上
再掲
再)7.0以上 未治療
173
9.1%
105
5.5%
194
10.6%
116
6.3%
208
10.7%
112
5.8%
243
12.7%
139
7.3%
200
10.5%
111
5.8%
66
38.2%
31
29.5%
73
37.6%
28
24.1%
68
32.7%
25
22.3%
81
33.3%
32
23.0%
55
27.5%
17
15.3%
治療
107
61.8%
74
70.5%
121
62.4%
88
75.9%
140
67.3%
87
77.7%
162
66.7%
107
77.0%
145
72.5%
94
84.7%
9.1%
5.5%
10.6%
6.3%
10.7%
5.8%
12.7%
7.3%
10.5%
5.8%
(多久市国保特定健診結果)
目標項目
現状(H26) 目標(H34) データソース
血糖コントロール指標におけるコン
トロール不良者(HbA1c7.0%以上)の
4.5%
5.8%
割合の減少
ⅳ
(県平均)
多久市国保
特定健診結果
糖尿病有病者の割合の増加の抑制
健康日本21では糖尿病有病率の低下が指標として掲げられていましたが、最終評価
においては目標値には達したが、糖尿病有病率が改善したとはいえないとの指摘がなさ
れました。
糖尿病有病率の増加を抑制できれば糖尿病自体でなく、さまざまな糖尿病合併症を予
防することにもつながります。
本市の糖尿病有病率の推移は、多久市国保特定健診開始後の平成22年度以降、上昇
傾向となっていましたが、平成26年度から減少傾向にあります。(図8)
また、HbA1c7.0%以上の人については治療中の人の割合が増えており、治療につ
ながっています。
なお、多久市国保特定健診受診者は、糖尿病有病者率は10.5%と県平均に比べ
て高い状況にあります。また、糖尿病の合併症予防の目標値である HbA1c 7.0%以
上の人の割合はさらに高く、佐賀県内でも上位に位置していて、過食や運動不足等の生
活習慣が、この結果を招いている可能性が考えられます。
25
1
過食や運動不足などの生活習慣は、特定健診を受ける40歳から74歳の世代だけ
のものではなく、親から子へとつながっていく可能性が高い習慣です。
また、60歳以上ではインスリンの生産量が低下することを踏まえると、今後、高齢
化が進むことによる糖尿病有病者の増加が懸念されます。
乳幼児期・学童期から健康診査データにより健康実態を把握し、本市の食生活の特徴
や市民の食に関する価値観なども踏まえた長期的な視点での糖尿病の発症予防への取り
組みが重要になります。
目標項目
現状(H26) 目標(H34) データソース
10.5%
糖尿病有病者の割合の増加の抑制
9.8%
H26
④
多久市国保
県平均 特定健診結果
対策(循環器疾患の対策と重なるものは除く)
糖尿病の発症および重症化予防
・HbA1c 値に基づいた家庭訪問や結果説明会等による保健指導および同じ身体状況の
人が集団で学習できる健康教育を実施します。
・高リスク者に対する二次健診(頸動脈超音波検査・75g糖負荷検査・微量アルブミ
ン尿検査)や、歯周病検診を実施します。
・小城多久地区糖尿病連絡会などによる医療関係者との連携を図ります。
・糖尿病専門医による個別健康相談を実施します。
(4) COPD(慢性閉塞性肺疾患)
① はじめに
COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコなどの有害な空気を吸い込むことによって、
空気の通り道である気道(気管支)や酸素の交換を行う肺(肺胞)などに障害が生
じる空気です。空気の出し入れが難しくなり、息がしにくくなることで、息切れな
どの症状が長い期間にわたり起こります。
かつて、慢性気管支炎(咳や痰の症状が長期間にわたり続く状態)や肺気腫(炎
症が進んで肺胞が壊れてしまった状態)と言われていた疾患が含まれます。
COPD の90%以上に長期間にわたる喫煙習慣があることから、「肺の生活習慣
病」「タバコ肺」とも言われています。
26
1
② 基本的な考え方
COPD の原因の90%はタバコ煙であり、喫煙者の約20%が COPD を発症すると
されています。COPD の発症予防と進行の阻止は禁煙によって可能であり、早期に
禁煙するほど有効とされています。
また、COPD は「肺の炎症性疾患」と位置付けられており、心血管疾患、消化器
疾患、糖尿病、骨粗しょう症、うつ病などの併存疾患が多く、COPD の抑制はこれ
らの疾患の低減効果も期待されています。
COPD という疾患は、国民の健康増進にとってきわめて重要な疾患であるにもか
かわらず、高血圧や糖尿病などの疾患とは異なり新しい疾患名であることから、十
分に認知されていません。そのため COPD という疾患の認知率を高めていく必要が
あります。
③
現状と目標
ⅰ 成人の喫煙率の減少
COPD の最大の発症リスクである喫煙に関する実態について特定健診受診者の
喫煙率推移でみると、男性は年々低下していますが、女性は横ばい状態です。
国の喫煙率に比べると、高くなっています。(図9)
また、市内のたばこ販売本数は年々減少し、平成10年度と比較すると約5
0%減少しています。(図10)
「がん」の章でも述べていますが、肺がん検診受診者を増加させることで、
COPD の早期発見、重症化予防につながると思われます。
図9
喫煙率の推移
(%)
国の目標 12%
(多久市国保特定健診問診)
27
1
図10 たばこ売上本数
(多久市定期監査資料)
④ 対策
ⅰ
COPD の認知度の向上
・種々の保健事業の場での禁煙の助言や情報提供を行います。
ⅱ たばこのリスクに関する教育・啓発
・母子健康手帳交付、特定健診結果説明会、がん検診など、さまざまな保健事業の場
での禁煙教育や情報提供を実施します。
ⅲ 禁煙支援
・一般健康診査および特定健診の結果に基づいた禁煙支援、禁煙治療に向けた保健指導
を実施します。
(5)
①
次世代の健康
はじめに
生涯を通じすこやかで心豊かに生活するためには、妊娠中や子どもの頃からの健康、
次世代の健康が重要です。妊娠前・妊娠期の心身の健康づくりを行うとともに、子ども
の健やかな発育とより良い生活習慣を形成することで、成人期、高齢期等の生涯を通じ
た健康づくりを推進していくことができます。
また、子どもが成長し、やがて親となり、その次の世代をはぐくむという循環におい
ても子どもの健やかな発育や生活習慣の形成は、その基礎となるものです。
本市では第 1 次策定から取組みを開始してきたところです。今回の対象が乳幼児期か
らライフステージに応じた全市民であることから、これから父母になる思春期世代から
胎生期(妊娠期)を含め、生まれてから成人するまでを次世代と位置付けます。
28
1
②
基本的な考え方
ⅰ 生活習慣病予防
子どもの頃からの生活習慣病対策の重要性については、日本学術会議(2008 年)も
提言しているところですが、健やかな生活習慣を幼少時から身につけ、生活習慣病予
防の基盤を固め、生涯にわたって健康な生活習慣を継続できるようにすることが重要
です。
ⅱ 生活習慣の確立
子どもの健やかな発育や生活習慣の形成の状況については、子どもの体重(全出生数
中の低出生体重児の割合、肥満傾向にある子どもの割合)や生活習慣(生活リズム)、う
蝕有病状況、運動やスポーツ習慣などで確認ができます。
また、子どもの健やかな発育のためには妊娠前・妊娠期の心身の健康づくりと基本的
な生活習慣が重要であり、適正体重の維持(20 歳代の女性のやせ、肥満の減少)や妊
娠中の喫煙や飲酒をしないことが必要です。
③
現状と目標
ⅰ 適正体重の子どもの増加
ア.全出生数中の低出生体重児の割合の減少
低出生体重児は、胎児期に低栄養の状態に置かれることで倹約遺伝子によって作られ
た体(体質)と、生まれてからの環境(過剰な栄養摂取など)が合わないことで、生活
習慣病のリスクが高まるとの報告があります。
妊娠期から適切な生活習慣で自分のからだに合わせた体重増加を図り、妊娠高血圧
症候群などの異常を予防することは、低出生体重児の予防につながります。(図11)
本市における低出生体重児の割合は、平成24年度以降は全国より高い状態でした
が、平成26年度は 10.3%でした。(図12) 低出生体重児の予防のために、ハイ
リスクとなる妊娠期の実態をとらえ、妊婦への支援を行うとともに、出生後は生まれた
子どもの将来の生活習慣病予防についての支援が必要と考えます。
29
1
図11 低出生体重児の予防の流れ
低出生体重児の発症予防
妊娠前
妊娠中
妊娠中の体重増加
が目標より少ない
妊娠前 やせ
BMI18.5未満
妊娠前 肥満
BMI25以上
対
象
者
の
明
確
化
の
視
点
妊娠高血圧症候群
妊娠中の体重増加
が目標より多い
妊娠糖尿病
胎
盤
の
働
き
血
管
損
傷
→
不適切な
食習慣
飲酒
喫煙
ストレス
過剰
睡眠不足
胎
児
低
栄
養
〈既住・遺伝あり〉
腎疾患 高血圧
糖尿病
〈35歳以上〉
低
出
生
体
重
児
早
産
巨大児
胎児期に低栄状態であると、少ない栄養に見
合った代謝をつくる(インスリン抵抗性1)
胎児期につくられた代謝は、生まれた後も変
わらない
生後、栄養状態が良くなり、胎児期との差が大
きいと、生活習慣病になりやすい(低出生体重
児は、差が大きくなりやすい)
図12
多久市の低出生体重児の推移
14(%)
12.3
12
10
8
9.7
8.5
10.7
9
9.8
9.1
9.3
9.1
12.5
10.3
9.7
6
多久市
4
3.6
佐賀県
2
国
0
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市出生届)
1)出生週数と胎児の発育
低出生体重児の子の出生週数をみると、正期産にもかかわらず低体重であった子ども
が48.0%でした。この子たちは胎内において何らかの要因で十分発育が出来なかっ
たと考えられます。妊婦の背景をみていくことが必要です。(表6)
30
1
表6
低出生体重児、発育不全児の出生週数
正期産
早産
37 週以上
37 週未満
人数
人数(割合)
割合
人数
割合
426
385
90.4
36
8.5
3
33
5(1.1)
50
24
48.0
25
50.0
2
23
1(2.0)
1000~1499g
2
0
0
2
100
2
0
0
1500~1999g
9
2
22.2
7
77.8
0
7
0
2000~2499g
39
22
56.4
16
41.0
0
16
1(2.6)
出生体重 2500g未満
2500
g未
満の
内訳
週数
不明
人数
出生(H24.4~H27.3)
(
再
掲
)
出
生
体
重
(再掲)
早産の内訳
31 週
32
未満
~36 週
人数
人数
(多久市出生届)
2)低出生体重児と母の妊娠前の体格
体格がやせ(BMI18.5 未満)の女性は、低出生体重児を出産するリスクが高いと言わ
れています。
低出生体重児を出産した母の体格をみると、やせの割合が20.5%となっています。
低出生体重児の予防のために、やせの妊婦に対して胎児が発育できる環境を整えられる
支援が必要です。(表7)
また、体格が肥満の妊婦については、妊娠高血圧症候群などのリスクが高く、発症す
ると胎児の発育に影響するため、予防が重要です。
胎児が発育するためには、妊娠前の体格(BMI)に合った目標体重増加量に、母が体重
を増やす必要があります。妊婦の食については、妊婦が自分のからだに合った体重増加
について理解して必要な栄養をとり体重を増加していくための支援が必要です。
表7 H24~H26低出生体重児(計50名)の母の妊娠前の体格
妊娠前の
母の体格
やせ
適正体重
肥満
(BMI18.5未満)
(BMI18.5
~25)
(BMI25以上)
人数
8
29
2
割合
20.5
74.3
5.1
不明
11
(多久市乳幼児台帳)
31
1
3)妊婦健康診査の結果
妊娠高血圧症候群は、胎盤から胎児への血流が悪くなり胎児の発育が障害される危険が高
くなります。低出生体重児の母の状況をみると、12.0%に妊娠高血圧症候群がみられ、
全出生児の割合(5.7%)より高くなっていました。妊娠高血圧症候群を予防することは
低出生体重児の予防にとって重要です。
また、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を発症した母は、将来の生活習慣病の発症リスクが
高いと言われています。このような母にとって妊娠で増加した体重が出産後も戻らず肥満と
なることは、40 歳代以降に生活習慣病を発症する危険がさらに高くなります。
リスクの高い母に対して、体重を戻すなどの生活習慣改善への働きかけと、健康診査を勧
奨しからだの状態を確認することは、生活習慣病の発症予防のために重要です。
本市では受診中または一般健診や職場の健診で管理できている母親が43.5%でした。
今後も、健診につながっていない母親へは次回妊娠時の母体管理と将来の生活習慣病予防
のため働きかけることが必要です。(表8)
表8 妊婦健診の結果(乳幼児健診時にママチェックとして声かけを実施)
(内訳)
H24~H26のデータ
乳児健診対象者 419人
再掲
追跡
対象者
78人
低出生体重児 50人
追跡対象者
妊娠高血圧症候群
血圧140/90以上
蛋白2+以上
妊娠糖尿病
尿糖(2+)または(+)2回以上
血糖異常
24人
5.7%
57人
13.6%
6人
12.0%
4人
4.0%
人数
78
受診中
3
3.8%
受診勧奨
1
1.3%
21
26.9%
9
11.5%
転出
10
12.8%
健診につながらず
34
43.6%
一般健診受診
職場健診
32
(多久市乳幼児台帳)
割合
43.5%
4)生活習慣(喫煙)の状況
妊娠中の喫煙は胎児発育不全の危険因子と言われています。全国と比較していくと
高くありませんが、生活習慣改善のために胎児への影響について妊婦に伝えていくこ
とが必要です。(表9)
表9 妊婦の喫煙の状況
多久市
全国
H25 アンケートデータ
健やか親子21ベースラ
インH25データ
1.5%
3.8%
喫煙
目標項目
現状(H26) 目標(H34)
低出生体重児の減少
10.3%
10%未満
妊婦健診追跡者のうち産後の一般健診受診率
43.5%
50%
データソース
多久市
出生届
多久市
乳幼児台帳
イ.肥満傾向にある子どもの割合の減少
1)幼児期の肥満
幼児の肥満は、学童・思春期の肥満に移行しやすく、さらに成人期に肥満になる確
率が半数といわれ、将来の生活習慣病に結びつきやすいとの報告があります。 特に低
出生体重児の場合は将来にわたって生活習慣病のリスクである肥満には注意が必要で
す。
小児の肥満とは、幼児では標準体重と比較し15%以上、学童では同じく20%以上の
体重の場合を言います。
本市では出生後、赤ちゃん訪問、乳幼児健康診査・相談、就学時健康診断健康相談
などの保健事業を通じ子どもの発育に関する相談を行い、乳幼児期における適正体重
の維持、肥満の子の割合の減少、月齢に応じた適切な生活習慣の確立を目指していま
す。
本来、幼児期の体脂肪率は少なく、5歳~7歳に見られるアディポシティ・リバウ
ンド(※2)が3歳などの早期に現れると、成人期の肥満へ移行しやすいといわれて
います。
33
しかし、平成 26年度に行った1歳6か月児健康診査で1.4%、2歳6か月児健
康診査で8.2%、3歳6か月児健康診査で 4.8%の子に、小児肥満の状態がみられ
ました。(表10)
図13 出生から生活習慣病予防の流れ
生活習慣病予防
乳幼児 幼児期 学童期
低
出
生
体
重
児
成人期
肥満
不適切な生活習慣
食習慣
運動(あそび)
睡眠
不適切な食習慣
運動不足
適量以上の飲酒
喫煙
ストレス過剰
睡眠不足
生
活
習
慣
病
発
症
標
準
体
重
児
肥満
胎児期につくられた代謝は、生まれた後も変わらない
生後、栄養状態が良くなり、胎児期との差が大きいと、
生活習慣病になりやすい(低出生体重児は、差が大
きくなりやすい)
胎児期、腎臓が成熟する前に生まれると腎は
早くに傷みやすい
※2アディポシティ・リバウンド
乳児期を過ぎ、下降傾向にある BMI や体脂肪率が再び上昇に転じること。通常7歳頃に
現れるが、 早期(特に3歳未満など)に起こると成人肥満、内臓脂肪症候群に移行するこ
とが多いとされる。
34
1
表10 1歳6か月児健康診査・2歳6か月児健康診査・3歳6か月児健康診査結果
総数
肥満
15%以上
人数
割合
適正体重
-14.9~14.9%
人数
割合
やせ
-15%以下
人数
割合
1歳6か月児健康診査
139
2人
1.4
133
95.7
4人
2.9
2歳6か月児健康診査
110
9人
8.2
101
91.8
0人
0
3歳6か月児健康診査
146
7人
4.8
138
94.5
1人
0.7
平成26年度健康診査等結果(肥満度)
表11
肥満度 15%以上の1歳6か月児・2歳6か月児・3歳6か月児の体格の変化
子どもの体格
3歳6か月
年
齢
1
歳
6
か
月
児
2
歳
6
か
月
児
3
歳
6
か
月
児
2歳6か月
1歳6か月
10か月
出生時
4~5か月
2か月
母の妊娠前・妊娠中の状態
出生体重
在胎週数
妊娠前BMI
母の妊娠中の状態
性
肥満度15%以上
カウプ指数(※3)19以上 肥満
女
18
16.6
17.1
16.3
2418
39
18.9
女
17
市外
市外
市外
3325
不明
不明
2
名
9
名
7
名
女
18
11
未
19.7
18.3
2986
39
23.6
男
33
27
未
20.5
17.2
2710
38
不明
男
19
13
未
15.7
14.7
3036
40
16.4
女
21
17
未
18.2
15.5
3514
不明
22.2
女
23
市外
市外
市外
市外
不明
不明
不明
女
16
15
未
17.3
市外
2214
不明
不明
男
16
7
17.6
16.3
16.7
3304
39
不明
女
15
13
16.6
17.1
16.5
2974
39
19.1
女
17
0
未
16.2
13.1
3054
40
34.7
男
32
市外
市外
市外
市外
市外
不明
不明
不明
男
20
25
20
未
20.0
14.8
3146
40
不明
男
18
19
11
未
14.3
17.5
3566
40
不明
女
16
14
14
17.6
17.9
15.0
3382
39
不明
男
20
14
7
未
19.1
16.1
2738
38
不明
女
17
20
19
未
20.1
18.2
4066
39
不明
女
17
14
20
19.0
21.4
16.9
2720
40
不明
尿糖2+あり
尿糖2+
蛋白2+ 1回のみ
尿糖+ 2回のみ
(多久市乳幼児台帳)
※3
35
カウプ指数は肥満、やせに関する指標
1歳未満の基準
13未満 やせすぎ
13~15未満 やせぎみ
15~19未満 標準
19~22未満 太りぎみ
22以上 太りすぎ
2)学童の肥満
本市の5年生と8年生の身体計測結果から肥満の状況は、5年生の7.0%および
8年生5.9%が肥満であり、中学生の女子は全国平均より高い状況でした。(図14)
小児生活習慣病予防健診(以下「多久っ子健診」という)の結果では、肥満傾向にある児の
食事は、間食(お菓子、ジュース)の摂取過多や炭水化物(菓子パン等)に偏る食事もみられ
ました。運動をしている児童・生徒もいますが、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回って
いる状況や食事内容も糖質のみでなく、脂肪摂取の増加などが背景にあると考えられます。
(表12)
将来の生活習慣病発症へとつながらないよう、今後も5年生と7年生を対象に多久っ子健診
を実施し、生活習慣に関しての意識づけと行動変容を支援していきます。
また、多久っ子健診の結果は、教育委員会や学校保健委員会で紹介し、連携した取り組みも
展開していきます。
図14
小中学生の肥満状況(H26)
(%)
8年生
5年生
*全国は肥満度、多久市はローレル指数(※4)で太りすぎの者の割合(学校保健統計調査・食育推進計画)
※4ローレル指数は、主に児童や生徒の肥満度を測る指数
表12 多久っ子健診受診児童の肥満傾向(肥満度20%)にある児の実態(H26)
学年
性
別
摂取状況
女
男
5 年生
7 年生
男
間食多い
朝食に菓子
パン
夕食後の間
食
食事
運動
嗜好品
スポーツ
ジュース
バレー
スナック菓子
剣道
ふりかけごはん、菓子
パン
水泳
男
摂取過多
ジュース
男
摂取過多
ジュース
400 ㏄
男
摂取過多
チョコレート、菓子パ
ン
ステッパー
36
1
生活リズム
その他
夕食遅い
たちくらみ、めまい、だるさ、
疲れやすさ有り
3 年生の時、自由に好きなもの
を好きなだけ食べさせていた、
改善にはすでに取り組んでいる
心疾患あり。
目標項目
現状(H26) 目標(H34)
データソース
幼児の適正体重者の割合を増やす
(3歳6か月児健診)
5年生の適正体重者の割合を増やす
8年生の適正体重者の割合を増やす
94.5%
96.5%
乳幼児健診結果
53.5%
56.2%
食育推進計画
52.4%
55.0%
食育推進計画
3 ) 健康的な生活習慣(栄養・食生活・運動)を有する子どもの割合の増加
ア.幼児肥満の実態
1歳6か月児、2歳6か月児、3歳6か月児健康診査で肥満に該当した児の食事は、
子どもの成長に本来必要のない「お菓子やジュース」の摂取が多い例や、「炭水化物
や牛乳」の摂取過剰などがありました。成長に不可欠な栄養素については、摂取のバ
ランスの悪さもみられました(表13)。
生活リズムでは、就寝時間が22時を過ぎる子が27.8%でした。3食の食事時間
は、ほぼ目標どおりに過ごしていました。
小児期の肥満の7割が成人期の肥満に移行すると言われます。平成26年度の1歳6
か月児、2歳6か月児、3歳6か月児健康診査で肥満に該当した児の過去の健診結果を
確認すると、3~4割に、1 年前の健診時も肥満度が高いことがわかりました。
小児肥満は、食事(栄養)、運動、生活リズムなどの生活習慣、妊娠中の状態(子宮内
低栄養)、肥満関連遺伝子、その他複数の要因が重なっておこります。子どもの生活習慣
は関わる大人の影響が大きい事から、妊娠中や出生直後の早い時期から、規則的で健康
的な生活習慣の重要性を理解し、家族ぐるみ、地域全体でよりよい生活習慣の確立をめ
ざすことが、小児の健康な成長を促がし、肥満を防ぐ事につながります。
37
1
表13 肥満児の生活背景
栄養
年
齢
1
歳
6
か
月
児
摂取量
特徴
指導内容
生活習慣
起床 就寝
女
無
なし
7時 21時
女
コーラ好き
おやつ多い
野菜苦手
無
なし
8時 21時
コーラ→麦茶へ
おやつ量考えて
女
牛乳
800~1000cc
ムラ食い
無
なし
8時 22時
牛乳減
無
あり
無
あり
7時 21時
女
無
あり
7時 21時
女
無
あり
6時 不明
女
無
あり
7時 22時
男
無
あり
6時半 21時
無
あり
8時 23時
男
ごはん多い
女
3
歳
6
か
月
児
虫歯の有無 入園の有無
性
男
2
歳
6
か
月
児
生活リズム
野菜嫌い
牛乳嫌い
女
麺類が好き
無
あり
男
家では食べ続ける
食後30分でお腹空いた
有(2本)
あり
7時 21時
男
よく食べる
パンが好き
有(3本)
あり
7時 22時
男
有(1本)
あり
7時 21時半
女
無
あり
6時半 21時
有(6本)
あり
7時 22時
女
無
あり
6時半 21時
女
無
あり
7時 21時
男
ジュース・お菓子多
い
お腹を空かせて食事を
(多久市乳幼児台帳)
38
1
イ.学童の実態
子どもの肥満については、従来から健康診断に基づく健康管理指導や体育等の教育の
一環として、肥満傾向児を減少させる取組みが行われているところですが、肥満に関わ
らず、子どもの健やかな発育や生活習慣の形成は、市民が生涯にわたって健康な生活習
慣を継続できるようにするための、非常に重要な生活習慣病対策です。
子どもの健やかな発育や生活習慣の形成の状況については、他のライフステージと同
様に健診データで見ていくことが必要であり、それぞれのガイドラインに基づいた検査
の予防指標も明確にされています。
本市では、平成24年度より5年生および7年生には、多久っ子健診を実施し、実態
把握と共に早期から健康を意識した生活習慣を身につけるための意識付けを個別に行っ
ています。(図15)
受診率は30%に満たない状況となっていますが、今後も、受診率向上につとめ、子
どもの生活習慣の実態把握を進めていく必要があります。
また、定期的に学校保健委員会に参加し、養護教諭との連携を密にしながら学校と協
働した取り組みを行います。
図15 多久っ子健診結果における保健指導値以上該当者の状況(H24~H26)
※
項目別
※
(多久っ子健診結果)
※該当ありは、検査項目のうち一つでもガイドラインによる保健指導値以上を超えている者。
目 標 項 目
保健指導値以上該当者
の減少
現状(H26) 目標(H34)
5年生
58.1%
減少
7年生
73.6%
39
1
データソース
子ども生活習慣病予
防健診結果
④
対策
ⅰ.生活習慣病の発症予防・重症化予防のための取組みの推進
・妊産婦は、妊婦健診を実施し、実態把握に基づいた学習の推進を行います。
・若年者への一般健診の受診を勧めます。
・肥満傾向児の実態把握と個々の状況に合わせた保健指導を実施します。
・多久っ子健診結果に基づいた個別の保健指導を実施します。
ⅱ.健康な生活習慣の確立のための取組みの推進
・妊産婦は、母子手帳交付時に自分のからだに合わせた生活習慣(食事など)
の学習を行います。
・飲酒、喫煙の実態把握を母子手帳交付時に行い、禁酒・禁煙学習を行います。
・乳幼児は、各種健診や相談事業を通じ、適正体重の維持のために栄養・運
動・生活リズムの実態に基づいた教育を行います。
・予防接種の接種率向上を図ります。
・多久っ子健診受診者と保護者への個別の健診結果説明を行い、意識づけから
行動変容へとつながるよう指導します。
・食育事業の推進を図ります。
・市内小中学校と課題の共有を図ります。
・市思春期保健連絡会において情報提供を行います。
40
1
2
生活習慣および社会環境の改善
生活習慣病の発症を予防し、健康寿命を延伸させるためには、市民の健康の増進を
形成する基本的要素となる栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、歯・
口腔の健康に関する生活習慣の改善が重要であるため、次の取り組みを推進します。
(1) 栄養・食生活
① はじめに
栄養・食生活は、生命を維持し、子どもたちが健やかに成長し、また人々が健康
な生活を送るために欠くことのできないものであり、多くの生活習慣病の予防の観
点からも重要です。また同時に、栄養・食生活は社会的、文化的な営みでもありま
す。
本市でも自然環境や地理的な特徴、歴史的条件が相まって、地域特有の食文化を
生み出し食生活の習慣をつくりあげてきています。
生活習慣病の予防のためには、栄養状態を適正に保つために適正な量と質の食事
を摂取することが求められています。
② 基本的な考え方
主要な生活習慣病(がん、循環器疾患、糖尿病)予防に科学的根拠がある血液デ
ータと食品(栄養素)との具体的な関連は表14のとおりです。
食品(栄養素)の欠乏または過剰については、個人の健診データで確認していく
必要があります。
生活習慣病予防のためには、ライフステージを通じて適正な量と質の食事摂取が
実践できる力を十分に育み、発揮できることが重要になります。
41
1
表14
血液データと栄養素・食品
★ 嗜好品( ビール、チョコレ ート) を取らない 場合は、 ごはんで50g、 料理油(マーガ リン・種実)で5gプラスし ます。
42
1
③ 現状と目標
個人が適正な量と質の食事をとっているかどうかは、健診データに反映されま
す。
なお、健診データについての目標項目は、「1.生活習慣病発症予防と重症
化予防の徹底」において掲げているため、栄養・食生活については、適正体重の維
持を中心に、目標を設定します。
ⅰ 適正体重を維持している人の割合の増加
体重は、日本人の主要な生活習慣病や健康状態との関連が強く、とくに肥満
はがん、循環器疾患、糖尿病等の生活習慣病との関連、若年女性のやせは低出
生体重児出産のリスク等との関連があります。
適正体重については、ライフステージごとの目標を設定し、評価指標としま
す。
43
1
表15
ライフステージにおける健康診査項目一覧表
(省令)児童福祉施 設最
低基準第35条
母子健康法
法律
母子健康手帳(第16条)
妊婦健康診査(第13条)
妊婦健診
健診の名称等
健診内容を規定する法令・通知等
対象年齢・時期等
幼児
3~5歳
項目
小学生
6~8歳
9~11歳
8週前後
中学生
12~14歳
高校生
15~17歳
妊婦
成人
65歳以上
身長
体重
BMI・肥満度
内
臓
脂
肪
の
蓄
積
44
血
管
を
傷
つ
け
る
条
件
中性脂肪
HDLコレステロール
AST(GOT)
肝
ALT(GPT)
機
γ -GT
能
(γ -GTP)
血圧(mmHg)
尿酸
空腹寺血糖
易
血
栓
性
肥満度20%未満
120/70未満
51IU/l未満
125/70未満
130/75
5.3mg/dl未満
6.2mg/dl未満
100mg/dl未満
血
随時血糖
糖
HbA1c
尿糖
5.2 %未満
LDL-C以外の主要危険因子数(※1)
0
1~2
3以上又は糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化疾患の合併
冠動脈疾患の既往あり
e-GFR
0.5未満
0.4未満
0.6未満
0.6未満
0.7未満
正常GFR 133±27ml/分
0.8未満
0.9未満
0.7未満
0.8未満
男子 140±30ml/分
女子 126±22ml/分
(-)
(-)
ヘモグロビン
26週前後
36週前後
高齢者の医療の確保に関す
る法律
特定健診
(第20条)
定期健康診断 特定健診 後期高齢者健診
厚生労働省令 保育 所保育
学校保健安全法施行規則第6
指針 「第5章 健康および安
条「検査の項目」
全」
厚生労働省令
1歳6ヶ月
3歳6か月
年間14回
該当年齢
該当年齢
●
●
●
●
●
●
健康診査
小学校、中学
校、高等学校
(幼稚園について は、学
年1回
校保健安全法のもと実
保育所
幼稚園
●
●
●
●
●
●
大学
20~39歳
40~74歳
75歳以上
年1回
年1回
年1回
●
●
●
●
●
☆
●
●
☆
☆
☆
☆
☆
☆
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
☆
●
年1回
●
●
150 mg/dl未満
☆
☆
40歳未満
☆
130/85
7.1mg/dl未満
140mg/dl未満
5.2%未満
●
●
●
●
●
●
●
☆
☆
☆
●
●
●
●
書略可
1.05未満
0.8未満
60ml/分以上
46%未満
男 13.1~17.9g/dl
女 12.1~15.9g/dl
●
●(いずれか
の項目で可)
☆
目標値(mg/dl)
159以下
139以下
119以下
99以下
赤血球数
ヘマトクリット
学校健診
男 85㎝未満
女 90㎝未満
(-)
男
女
健康診断(第13条)
BMI25未満
(食後2時間)
120mg/dl未満
5.8%未満
140mg/dl未満
LDLコレステロール
尿蛋白
尿潜血
妊娠初期(5~16週)
25未満
妊娠中期(17~28週)
27.2未満
成人と同様
妊娠後期(29~40週)
28.3未満
腹囲75㎝未満
腹囲80㎝未満
腹囲/身長比 0.5未満
120 mg/l未満
40 mg/dl 以上
31IU/l未満
31IU/l未満
腹囲
血清クレアチニン
(mg/dl)
腎
臓
●
肥満度 15%未満
健康診査(第12条)
1歳6ヶ月児健診 3歳6ヶ月児健診
平成8年11月20日児発第934号厚生省 児
童家庭局長通知「第4 妊娠時の母 性保
健」 平成21年2月27日雇児母発第
0227001 号厚生労働省雇用均等・児童家
庭局母 子保健課長通知「2 妊婦健康診
査の 内容等について」
労働安全衛
生法
健康診断(第
66条)
学校保健安全法
●
●
●
●
●
☆
☆
●
☆
☆
☆
☆
☆
●
☆
●
●
●
●
●
●
●
●
●
☆
☆
☆
☆
●
●
●
☆
☆
☆
☆
●
●
●
☆
☆
☆
☆
実施が望ましい 実施が望ましい
省略可
省略可
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
●(いずれかの
項目で可)
●
☆
☆は多久市独自で実施している項目
ア.男性(20歳~60歳代)及び女性(40歳~60歳代)の肥満者の割合の減少
年代別にみた肥満の傾向は、20歳~60歳代男性及び40歳~60歳代
女性に最も多く認められるため、この年代の肥満者の割合の減少が健康日本
21の目標とされていましたが、最終評価では、20歳~60歳代男性の肥満
者の割合が増加し、20歳~60歳代女性の肥満者の割合は変わらなかった
ことから、引き続き国の指標として設定されました。
本市の20歳~60歳代男性、40歳~60歳代女性の肥満者の割合はい
ずれも国の目標値を上回っており、とくに女性においては大幅に上回る状
況となっています。
近年減少傾向にはあるため、今後も引き続き肥満者の減少を目指した活動
を行っていきます。(図16)
図16 男性(20歳~60歳代)及び女性(40歳~60歳代)の肥満(BMI25 以上)
の割合の推移
35
(%)
33
29
32
30.8
31
28.1
28.9
27
25.8
25
26.8
26.6
28.6
国の男性目標値(28%)
24.6
24.4
23
21
男性20~69歳
19
女性40~69歳
17
国の女性目標値(19%)
15
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市一般健康診査及び国保特定健診結果)
目標項目
肥満者
の 割合
の減 少
現状(H26) 目標(H34)
男性(20~69歳)
28.6%
女性(40~69歳)
24.4%
25%
データソース
多久市一般健康診
査及び特定健診結
45
1
21%
果
イ.低栄養傾向(BMI20 以下)の高齢者の割合の増加の抑制
高齢期の適切な栄養は、身体機能を維持し、生活機能の自立を確保するうえでも
極めて重要です。
低栄養については、疾病的要因以外にも、社会的・精神的・加齢による要因など
さまざまな要因があります。
このような中、老化に伴う種々の機能低下を基盤とし、さまざまな健康障害に対
する脆弱性が増加する状態となるフレイルティ(※5)や加齢にともなう筋力低下と
されるサルコぺニア(※6)などの状態が栄養と関連してきます。
本市の65歳以上の高齢者の BMI20以下の人の割合は、平成34年度の国の目標
値を下まわっていますが、平成24年度より増加に転じており、今後高齢化の進展に
伴って増加する可能性があるため、これ以上の増加を食い止めることが重要です。
(図17)
図17
65~74歳の高齢者の BMI20 以下の人の割合の推移
%
23.0
22.0
国の目標値(22%)
21.0
20.0
19.0
18.8
18.0
18.0
17.0
16.7
16.8
16.4
16.0
15.0
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市国保特定健診結果)
目標項目
低栄養傾向(BMI20 以下)の高齢
者の割合の増加の抑制
現状(H26) 目標(H34) データソース
18.0%
15%
多久市国保特定
健診結果
※5フレイルティ…フレイルティとは老化に伴う種々の機能低下(予備能力の低下)を基盤とし、様々な健
康障害に対する脆弱性が増加している状態、すなわち健康障害に陥りやすい状態を指す 1〕
1〕葛谷雅文.老年医学における Sarcopenia & Frailty の重要性.日老医誌 2009 ; 46 : 279─85.
※6サルコペニア…サルコペニアとは「加齢に伴う筋力の減少、又は老化に伴う筋肉量の減少」を指す 2)
2)Rosenberg IH. Summary comments. Am J Clin Nutr 1989 ; 50 : 1231─3.
46
1
ウ.朝食を家族と一緒に食べる人の割合の増加
家庭は、食生活の習慣が形成される場でもあります。国内外の研究では、家族
との共食頻度が低い小中学生で肥満・過体重が多いことが報告されており、思春
期の共食頻度の高さがその後の食物摂取状況と関連するという報告もあります。
将来にわたる健康づくり、健全な食習慣の確立につながるよう、学童・思春期の
共食を推進します。
目標項目
朝食を家族と 一
現状(H26)
5年生
21.7%
目標(H28)
30%以上
佐賀県朝食
緒 に 食 べ る人 の
割合の増 加
データソース
7年生
15.4%
25%以上
実態調査
④ 対策
ⅰ ライフステージに対応した栄養指導
・乳幼児健康診査、乳幼児相談(乳幼児期における栄養指導)を実施します。
・学齢期の保健指導を推進するために、学校で行われている様々な検査および本
市で取り組んでいる多久っ子健診に関して、小中学校の養護教諭との情報共有
や、肥満傾向児の詳細な実態把握などを行います。
・食生活改善推進員による教育事業(青年期・壮年期・高齢期)を推進します。
・多久市一般健康診査や多久市国保特定健診結果に基づいた、家庭訪問や健康相
談、結果説明会、健康教育など、多様な経路により、それぞれの特徴を生かし
たきめ細やかな栄養指導を実施します。(青年期・壮年期・高齢期)
ⅱ 管理栄養士によるより高度で専門的な栄養指導の推進
・糖尿病や慢性腎臓病などの医療による薬物療法と同様に食事療法が重要な生活
習慣病の重症化予防に向けて、一般健康診査および特定健診結果に基づいた栄
養指導を実施します。
ⅲ 低栄養傾向(BMI20 以下)の高齢者割合の増加を抑制するための施策
・健康相談、健診結果説明会、介護予防事業による栄養指導を行う
・生活習慣病予防栄養改善教室における栄養教育を行う
47
(2)身体活動・運動
①
はじめに
身体活動とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費するすべての
動きを、運動とは身体活動のうち、スポーツやフィットネスなど健康・体力の維
持・増進を目的 として行われるものを指します。
身体活動・運動の量が多い人は、不活発な人と比較して循環器疾患やがんなどの
非感染性疾患の発症リスクが低いことが実証されています。
世界保健機関(WHO)は、高血圧(13%)、喫煙(9%)、高血糖(6%)
に次いで運動不足(6%)を、全世界の死亡に関する危険因子の第4位と認識して
おり、日本でも、身体活動・運動の不足は喫煙、高血圧に次いで非感染性疾患に
よる死亡の3番目の危険因子であることが示唆されています。
最近では、身体活動・運動が非感染性疾患の発症予防だけでなく、高齢者の運動
機能や認知機能の低下などの社会生活機能の低下とも関係することも明らかになっ
てきました。
また、高齢者の運動器疾患が急増し、高齢者が要介護となる理由として増えてい
ることから、運動器の障害のために自立度が低下して介護が必要となる危険性の高
い状態が「ロコモティブシンドローム(運動器症候群※7)」と定義されました。
このように身体活動・運動の重要性が明らかになっていることから、多くの人が無
理なく日常生活の中で身体活動・運動を実施できる環境づくりや、運動等の方法に
ついての情報の提供が求められています。
※7 ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の定義
・運動器(運動器を構成する主な要素には、支持機構の中心となる骨、支持機構の中で動く部分で
ある関節軟骨、脊椎の椎間板、そして実際に動かす筋肉、神経系があり、これらの要素が連携
することによって歩行が可能になっている。)の障害のために自立度が低下し、介護が必要と
なる危険性の高い状態をいう。 運動器の機能低下が原因で、日常生活を営むのに困難をきたす
ような歩行機能の低下、あるいはその危険があることを指す。
・ロコモティブシンドロームは、すでに運動器疾患を発症している状態からその危険のある状態を
含んでいる。
②
基本的な考え方
健康増進や体力向上のために身体活動量を増やし、運動を実施することは、個人
の抱える多様かつ個別の健康課題の改善につながります。
主要な生活習慣病予防とともに、ロコモティブシンドロームによって、日常生活
の営みに支障が出ないようにするための身体活動・運動が重要になります。
48
1
③
現状と目標
ⅰ 日常生活において歩行又は同等の身体活動を1日1時間以上実施する者の
割合の増加
歩数は、比較的活発な身体活動の客観的な評価指標です。歩数の不足ならび減
少は、肥満や生活習慣病発症の危険因子であるだけでなく、高齢者の自立度低下
や虚弱の危険因子でもあります。
本市では、一般健康診査・特定健診受診者に対して、歩行と同等の身体活動の
実施状況を確認していますが、日常生活において、よく身体を使っていると意識
している人は、男女ともに平成23年度まで60%を超えていましたが、その後
50%台と急減し、減少傾向にあります。
とくに女性においては、平成26年度30%台となっており、減少は顕著とな
っています。(図18)
図18 日常生活において歩行又は同等の身体活動を1日1時間以上
実施する者の割合の推移
% 80
70
67.1 69
65.763.7
60
50.1 50.4
50.7
50.2
50
47.8
37.4
40
男
女
30
20
10
0
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市国保特定健診問診票)
身体活動量を増やす具体的な手段は、歩行を中心とした身体活動を増加させる
ことです。
まずは、減少に至った原因を探ると同時に、運動のみならず就業や家事などの
場面での生活活動も含めた身体活動全体の増加や活発化を促すことが必要になり
ます。
目標項目
日常生活において
歩 行 又 は 同 等 の身
体 活 動 を1 日 1 時
間以 上 実 施 する 者
の 割 合の増加
現状(H26)
目標(H34)
男性
47.8
57%
女性
37.4
45%
49
1
データソース
多久市国 保特
定健診問診票
ⅱ 運動習慣者の割合の増加
本市では、特定健診問診票の結果から、男女ともに40%前後の人に運動習慣
があり、男性よりも女性の方が運動習慣を持つ方の割合は低くなっています。ま
た近年では、男女ともに運動習慣は減少傾向にあります。
運動は余暇時間に取り組むことが多いため、運動習慣者の割合は、就労世代と
比較して退職世代の方が明らかに多くなると言われているため、今後は世代別に
集計し、身体活動とともに結果を追っていく必要があります。(図19)
図19 1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、
1年以上実施しているの割合の推移
%
80
70
60
50
46.1
40.4
40
47.2
39.3
42.4
36.9
42.2
37.3
40.4
37.4
男
女
30
20
10
0
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市国保特定健診問診票)
要介護状態となる主な原因の1つに、運動器疾患がありますが、高齢化に伴
う、骨の脆弱化、軟骨・椎間板の変形、筋力の低下、神経系の機能低下による
バランス機能の低下などが大きな特徴となります。
ライフステージの中で、骨・筋・神経は幼児期や学齢期には成長発達してい
きますが、高齢期には機能低下に向かいます。それぞれのステージに応じた運
動を行うことが最も重要になります。(表16)
50
1
表16 運動器の変化
保育園・幼稚園児
4~6歳
年齢
小学生
7~12歳
中学生
13歳~15歳
高校生
16~18歳
20歳代
18歳
紫外線、重力、圧力、カルシウムの摂取によって
骨密度が高くなる
骨
成人 高齢者
30歳代
40歳代
50歳代
60歳代
70歳代
閉経
骨密度
ピーク
80歳代
女性ホルモンの影響で、大腿骨・脊髄の骨密度
が優先的に低下
12~14歳 14歳~16歳
筋
力
筋力減少
始まる
持久力最大発達時期 筋力最大発達時期
目立って
減少
ピーク時約2/3に減少
10歳
神
経
平衡感覚
最大発達時期
運動神経発達
開眼片足立ち(平衡感覚・足底のふん
ばり・大体四頭筋の筋力・柔軟性)が2
0歳代の20%に低下
6歳
足
底
土踏まず
の完成
運動習慣ありの人
割合が低い
体育の授業
園での遊び
運
動
スポーツ少年団
持久力・筋力の向上
部活動
持久力・筋力の維持
運動器を向上・維持するためには、全ての年代において、運動を行うことが重要
目
標 項 目
現状(H26)
目標(H34)
1回30分以上の軽く
汗をかく運動を週2日
④
ⅰ
データソース
多久市一般健康
男性
40.4%
50%
女性
37.4%
47%
以上、1年以上実施し
ているの割合
参考:長野県松川町保健活動計画等
診査 、 多 久 市 国
保 特 定 健 診 問診
票
対策
身体活動量の増加や運動習慣の必要性についての知識の普及・啓発
・ライフステージや個人の健康状態に応じた適切な運動指導を実施します。
・「ロコモティブシンドローム」についての知識の普及を図ります。
ⅱ
身体活動及び運動習慣の向上
・各課や関係機関が実施するスポーツ推進事業、介護予防事業への参加を勧奨
します。
・多久スポーツピアの事業利用を推進します。
51
1
(3)飲酒
① はじめに
アルコール飲料は、生活・文化の一部として親しまれてきている一方で、意識状
態の変容を引き起こす到酔性や、慢性影響による臓器障害・依存性・妊婦を通じた
胎児への影響等、他の一般食品にはない特性を有します。
健康日本21では、アルコールに関連した健康問題や飲酒運転を含めた社会問題
の多くは多量飲酒者によって引き起こされていると推定し、多量飲酒を「1日あた
り平均純アルコールで約60gを超える」と定義しました。
がん、高血圧、脳出血、脂質異常症などの飲酒に関連する多くの健康問題のリスク
は、1日平均飲酒量とともにほぼ直線的に上昇することが示されています。
また、全死亡、脳梗塞及び冠動脈疾患については、男性では44g/日(日本酒2
合/ 日)、女性では22g/日(日本酒1合/日)程度以上の飲酒で、リスクが高
くなることが示されており、女性は男性に比べて一般に肝臓障害など飲酒による臓
器障害をおこしやすいことも知られています。
世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、アルコール関連問題リスク上昇の
域値を男性1日40gを超える飲酒、女性1日20gを超える飲酒としており、ま
た、多くの先進国のガイドラインでも許容飲酒量に男女差を設け、女性は男性の2
分の1から3分の2としています。
健康日本21(第2次)においても、生活習慣病のリスクを高める飲酒量につい
て、男性で1日平均40g以上、女性で20g以上と定義されました。
② 基本的な考え方
飲酒については、アルコールと健康の問題について適切な判断ができるよう、未
成年者の発達や健康への影響、胎児や母乳を授乳中の乳児への影響を含めた、健康
との関連や「リスクの少ない飲酒」など、正確な知識を普及する必要があります。
③ 現状と目標
ⅰ 生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している人(1日当たりの純アルコー
ルの摂取量が男性40g以上、女性20g以上の者)の割合の減少
生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、このような多量飲酒の予防を図るため、
一日の平均純アルコールの摂取量が男性で40g以上に相当する2合以上、女性
で20g以上に相当する1合以上と定義し、指標として設定します。
本市の多量飲酒している人の割合は、男性で平成23年度から平成25年度
52
1
まで減少傾向にあったものが平成26年度には増加に転じており、女性におい
ては、平成24年度以降横ばいではありますが、微増傾向にあります。(図20)
図20 多量飲酒(男2合以上、女1合以上)をしている人の割合の推移
%
14
11.9
12
11.3
11
10
10.5
8.9
8
男
女
6.2
6
5
4
5
5.5
5.1
2
0
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市国保特定健診問診票)
今後は、国や県などとの正確な比較を行った上で、飲酒への対策を検討・推
進していく必要があります。
目標項目
現状(H26) 目標(H34)
多量飲酒(男2合
以上、女1合以
男性
10.5%
女性
5.5%
上)をしている人
の割合の減少
ⅱ
8.5%
4.5%
データソース
多久市国保特 定
健診問診票
肝機能異常者(γ-GTP)の割合の減少
飲酒量と関係が深い健診データである γ-GTP については、異常者の割合は横ば
いですが、常に高い異常率で推移しています。(表17)
表17 γ-GTP 異常者の推移
①γ-GTP が保健指導判定値者の割合(51U/I 以上)
H22
H23
H24
H25
H26
男性
11.7
10.2
11.7
11.5
11.3
女性
3.9
4.2
3.4
3.7
3.7
②γ-GTP が受診勧奨判定値者の割合(101U/I 以上)
H22
H23
H24
H25
H26
男性
3.9
3.8
3.8
3.5
3.6
女性
0.9
1.3
0.9
0.6
0.7
(多久市国保特定健診結果)
53
1
また、γ-GTP の異常者は、男女共にほとんどの検査項目で、異常率が高くなって
います。(表18)
表18 γ-GTP 異常者(51U/I 以上)の検査項目別異常者数割合(H26)
メタボリックシンドローム
男性
総数
割合
基準該当
人数
全体
予備群該当
割合
人数
低HDL-C
割合
人数
割合
人数
高中性脂肪
割合
人数
割合
1,027
100%
292
28.4%
190
18.5%
281
27.4%
114
11.1%
278
27.1%
265
25.8%
107
40.4%
61
23.0%
99
37.4%
33
12.5%
100
37.7%
γ-GTP異常者
HbA1c
境界領域
人数
脂質
肥満
血圧
糖尿病領域
割合
人数
割合
人数
LDL
Ⅱ~Ⅲ度
正常高値~Ⅰ度
割合
人数
割合
人数
尿蛋白
割合
人数
尿酸
割合
人数
割合
273
26.6%
91
8.9%
731
71.2%
31
3.0%
360
35.1%
123
12.0%
131
12.8%
80
30.2%
39
14.7%
244
92.1%
21
7.9%
117
44.2%
48
18.1%
76
28.7%
メタボリックシンドローム
女性
総数
割合
基準該当
人数
全体
予備群該当
割合
人数
低HDL-C
割合
人数
割合
人数
高中性脂肪
割合
人数
割合
1,312
100%
122
9.3%
102
7.8%
283
21.6%
25
1.9%
174
13.3%
87
6.6%
16
18.4%
8
9.2%
35
40.2%
5
5.7%
24
27.6%
γ-GTP異常者
HbA1c
境界領域
人数
脂質
肥満
血圧
糖尿病領域
割合
人数
割合
正常高値~Ⅰ度
LDL
Ⅱ~Ⅲ度
人数
割合
人数
尿蛋白
割合
人数
尿酸
人数
割合
468
35.7%
73
5.6%
1,192
90.9%
33
2.5%
672
51.2%
95
割合
7.2%
人数
24
割合
1.8%
38
43.7%
8
9.2%
82
94.3%
5
5.7%
44
50.6%
7
8.0%
5
5.7%
高山市国保特定健康診査
(多久市国保特定健診結果)
飲酒は、肝機能の低下のみならず高血糖、高血圧、高尿酸の状態を招き、その結
果血管を傷つけるという悪影響を及ぼします。
また γ-GTP異常者では、心電図所見にも違いが見られ、重症な心電図所見である
心房細動においては、γ-GTP 異常者が3.7%であったのに対し、そうでない人
の2.3%に比べ多くなっています。
今後も個人の健診データと飲酒量を確認しながらアルコールと健診データとの関
連についての保健指導が必要になりますが、飲酒の習慣は、本市の地理・地形、気
候や歴史・風土などを背景とした文化や食生活の中で形成されたものでもあるため、
飲酒に関する個人や地域の価値観を把握しながらの指導も必要です。
目標項目
肝機能異常者
現状(H26) 目標(H34) データソース
男性
11.3%
9%
女性
3.7%
3%
(γ-GTP51 以上)
の割合の減少
54
1
多久市国保特定健
診結果
④
対策
ⅰ
飲酒のリスクに関する教育・啓発
・母子健康手帳交付時、特定健診結果説明会、がん検診時など関連する
事業等の場で教育や情報提供を実施します。
(4) 喫煙
① はじめに
たばこによる健康被害は、国内外の多数の科学的知見により因果関係が確立して
います。具体的には、がん、循環器疾患(脳卒中、虚血性心疾患等)、COPD(慢性
閉塞性肺疾患)、糖尿病、周産期の異常(早産、低出生体重児、死産、乳児死亡等)
の原因になり、受動喫煙も、虚血性心疾患、肺がんに加え、乳幼児の喘息や呼吸器
感染症、乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因になります。
たばこは、受動喫煙などの短期間の少量曝露によっても健康被害が生じますが、
禁煙することによる健康改善効果についても明らかにされています。
とくに長期の喫煙によってもたらされる肺の炎症性疾患で、咳・痰・息切れを主
訴としてゆっくりと呼吸障害が進行する COPD は、国民の健康増進にとってきわめ
て重要な疾患であるにもかかわらず、新しい疾患名であることから十分認知されて
いませんが、その発症予防と進行の阻止は禁煙によって可能であり、早期に禁煙す
るほど有効性は高くなる(「慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見に関する
検討会」の提言)ことから、たばこ対策の着実な実行が求められています。
② 基本的な考え方
たばこ対策は「喫煙率の低下」と「受動喫煙の曝露状況の改善」が重要です。
喫煙と受動喫煙は、いずれも多くの疾患における確立した原因であり、その対策
を講じることにより、がん、循環器疾患、COPD、糖尿病等の予防においても、大き
な効果が期待できることから、たばこと健康について正確な知識を普及する必要が
あります。
③ 現状と目標
ⅰ 成人の喫煙率の減少
喫煙率の低下は、喫煙による健康被害を確実に減少させる最善の解決策である
ことから、評価指標として重要です。本市の成人の喫煙率は、全国と比較すると
低く推移しており、男女ともに年々、低下しています。(図21)
55
1
図21 喫煙率の推移(図9再掲)
%
50
45
40
35
33.6
男
30
30
28.8
25
27.2
20
17.4
16
14.9
15
25.6
14.5
14.3
10
女
全体
国の目標値
5.2
5
4.7
4.8
0
H22
H23
5.2
H24
4.1
H25
H26
(多久市国保特定健診問診より)
たばこに含まれるニコチンには依存性があり、自分の意思だけではやめたくて
もやめられないことが多いため、今後は禁煙に取り組む人に対する支援と同時に、
喫煙によるリスクがより高い人への健診データに基づいた支援が重要になります。
目標項目
成人の喫煙率の減少
現状(H26) 目標(H34)
14.3%
12%
データソース
多久市国保特定健
診問診票
ⅱ 受動喫煙の機会を有する者の割合の低下
受動喫煙の曝露状況の改善は、短期的に急性心筋梗塞や成人および小児の喘息
等の呼吸器疾患による入院を減少させるなど、確実な健康改善が期待できます。
国においては、平成15年に施行された健康増進法において、多数の者が利用
する施設を管理する者に対し、受動喫煙防止のための措置を講じることを努力義
務として規定したほか、平成22年の厚生労働省健康局長通知では、「今後の受
動喫煙防止対策の基本的な方向性として、多数の者が利用する公共的な空間は、
原則として全面禁煙であるべき」「官公庁や医療施設においては、全面禁煙とす
ることが望ましい」ことが示されました。
56
1
12%
④ 対策
ⅰ たばこのリスクに関する教育・啓発
・母子健康手帳交付、特定健診結果説明会、がん検診などの保健事業の場での
禁煙教育や情報提供を実施します。
ⅱ 禁煙支援
・一般健康診査および特定健診の結果に基づいた禁煙支援、禁煙治療に向けた保
健指導を実施します。
(5) 歯・口腔の健康
① はじめに
歯・口腔の健康は、口から食べる喜び、話す楽しみを保つ上で重要であり、身体
的な健康のみならず精神的、社会的な健康にも大きく寄与します。
また歯の喪失による咀嚼機能や構音機能の低下は、多面的な影響を与え、最終的
に生活の質に大きく関与します。
平成23年8月に施行された「歯科口腔保健の推進に関する法律」の第1条にお
いても、「歯・口腔の健康は、国民が健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重
要な役割 を果たしている」ことが定められています。
すべての国民が生涯にわたって自分の歯を20本以上残すことをスローガンとし
た「8020(ハチマルニイマル)運動」は、以前から展開されているところですが、
超高齢社会の進展を踏まえ、生涯を通じて歯科疾患を予防し、歯の喪失を抑制すること
は、高齢期での口腔機能の維持につながるものと考えられます。
歯の喪失の主要な原因疾患は、う歯(むし歯)と歯周病で、歯・口腔の健康のために
は、う歯と歯周病の予防は必須の項目です。
幼児期や学齢期からの生涯にわたるう歯予防に加え、近年のいくつかの疫学研究
において、糖尿病や循環器疾患等との密接な関連性が報告されている成人における
歯周病予防の推進が不可欠です。
② 基本的な考え方
歯の喪失は、健全な摂食や構音などの生活機能に影響を与えますが、歯の喪失を予防
するためには、「う歯予防」および「歯周病予防」をより早い年代から始める必要があ
ります。これらの予防により生涯にわたって歯・口腔の健康を保つためには、個人で自身
の歯・口腔の状況を的確に把握することが重要です。
57
1
③
現状と目標
ⅰ 幼児・学齢期のう歯(むし歯)の罹患率の減少
本市の3歳児でう歯がある子どもの割合は、平成24年度頃よりは微減して
いますが、全国と比べると高い割合になっています。(図22)
図22 う歯がある 3 歳児の割合の推移
多久市
45 %
40
35
佐賀県
39.7
35.4
34.3
37.5
30
25
32.7
33.2
31.4
24.6
21.5
21
20
全国
35
28.5
20.3
28.8
25.8
20.5
17.9
19.1
15
10
5
0
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市3歳6か月児健診結果)
生涯にわたる歯科保健の中でも、とくに乳歯咬合の完成期である3歳児のう歯
の改善は、幼児の健全な育成のために不可欠です。
乳幼児期の歯科保健行動の基盤の形成は、保護者に委ねられることが多いため、
生まれてくる子どもの歯の健康に関する意識を妊娠中から持っていただくことが
必要です。
目標項目
う歯(虫歯)の
現状(H26) 目標(H34)
3歳児
28.8%
罹患率の減少
ⅱ
20%以下
データソース
多久 市 3 歳 児 健
診結果
歯周病検診個別受診者の増加
定期的な歯科検診による継続的な口腔管理は、歯・口腔の健康状態に大きく寄与
します。とくに定期的な歯科検診は、成人期の歯周病予防において重要な役割を果
たしており、自身の歯・口腔の健康状態の把握を可能とし、個人のニーズに応じた
歯石除去や歯面清掃、個別的な歯口清掃指導といったプロフェッショナルケアに繋
がっていきます。
58
1
まずは一定の年齢を対象とした歯周病検診の受診から、定期的な歯科検診受診へ
とつなげていただくために、歯周病検診の対象者を拡大し、実施を継続します。
目標項目
歯周病検診受診者の増加
④
現状(H26) 目標(H34)
2人
16人
データソース
多久市歯周病検診結果
対策
ⅰ ライフステージに対応した歯科保健対策
・すくぴょん相談(10か月児相談)、各幼児歯科健診(乳幼児期における歯
科指導)において、歯科教育を行います。
・8020運動の推進を行います。
ⅱ 専門家による定期管理と支援の推進
・1歳6か月児、2歳6か月児、3歳6か月児健診、歯周病検診(40歳・
50歳・60歳・70歳)を実施します。
・多久市歯科医師会との協働による歯科保健事業を実施します。
59
3.社会生活を営むために必要な機能の維持および向上
少子高齢化が進む中で、健康寿命の延伸を実現するには、生活習慣病を予防する
とともに、社会生活を営むための機能を高齢になっても可能な限り維持していくこと
が重要です。社会生活を営むための必要な機能を維持するために、身体の健康と共に
重要なものが、こころの健康です。その健全な維持は、個人の生活の質を大きく左右
するものであり、自殺等の社会的損失を防止するため、健やかな心を支える必要があ
ります。また、高齢化に伴う機能の低下を遅らせるためには、高齢者の健康に焦点
を当てた取り組みも必要となるため、次の取り組みを推進します。
(1) こころの健康・休養
① はじめに
こころの健康は、人がいきいきと自分らしく生きるための重要な条件です。 し
かし、こころの健康を保つには多くの要素があります。適度な運動や、バランスの
とれた栄養・食生活は、身体だけでなくこころの健康においても重要となります。
とくに、十分な睡眠をとり、ストレスと上手につきあうことは、こころの健康に
欠かせない要素となっています。
また、健やかなこころを支えるためには、こころの健康を維持するための生活や、
こころの病気への適切な対応について多くの人が理解することが不可欠です。代表
的なこころの病気であるうつ病は、多くの人がかかる可能性を持つ精神疾患であり、
自殺の背景にうつ病が多く存在することも指摘されています。
うつ病は、不安障害やアルコール依存症などとの合併も多く、それぞれに応じた
適切な治療が必要になります。こころの健康を守るためには、社会環境的な要因か
らのアプローチが重要で、社会全体で取り組む必要がありますが、ここでは、個人
の意識や行動の変容によるこころの健康を維持するための取り組みに焦点をあてま
す。
②
基本的な考え方
現代社会はストレス過多の社会であり、価値観の多様化が進む中で、誰もがここ
ろの健康を損なう可能性があります。そのため、市民一人ひとりが、こころの健康
問題の重要性を認識するとともに、自分や周囲の人の心の不調に気づき、適切に対
処できるようにしていくことが重要です。
悩みを抱えた時に、気軽にこころの健康問題を相談できない大きな原因には、一
般的に精神疾患に対する偏見があると考えられていることから、精神疾患に対する
60
1
正しい知識を普及啓発し、偏見をなくしていくための取り組みが最も重要になります。
また、睡眠不足は、疲労感をもたらし、情緒を不安定にし適切な判断力を鈍らせ事
故のリスクを高めるのなど、生活の質に大きく影響します。睡眠障害はこころの病気
の一症状としてあらわれることも多く、こころの病の再発や再燃リスクも高めます。
さらに、近年では、睡眠不足や睡眠障害が肥満、高血圧、糖尿病の発症・悪化要因
であることも知られています。心身の健康を保つためにも質の良い睡眠、休養につい
ての対策も必要です。
③
現状と目標
ⅰ 自殺者の減少
本市の平成20年からの自殺死亡者の累計を見てみると、毎年2~6名の方
がなくなっており、40歳代の男性、60歳代の男性、女性は50歳代が多く
なっています。20歳代、30歳代の青年期の死亡割合も25%となっています。
(図23、図24)
図23
自殺者数の推移
人
5
4
4
3 3
4
3 3
3
3
3
男
2
2
1
女
1
1
1
0
0
0
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市死亡統計)
図24 平成20年から平成26年の自殺者の年齢内訳(男性20人、女性11人)
6
5
5
4
4
3
3 3
3
男
3
2
2
2
2
1
2
1
1
0 0
0
61
1
(多久市死亡統計)
女
世界保健機関(WHO)によれば、うつ病、アルコール依存症、統合失調症に
ついては治療法が確立しており、これらの3種の精神疾患の早期発見、早期治療
を行うことにより自殺率を引き下げることができると言われています。しかし現
実には、こころの病気にかかった人の一部しか医療機関を受診しておらず、精神
科医の診療を受けている人はさらに少ないとの報告があります。
本市国民健康保険におけるうつ病での診療状況をみると、40歳代、60歳代
において全国や県より高い受療率となっています。また、40歳代では、とくに
女性の受療率が高いことがわかりました。(多久市40歳女性前半5.1%、後
半9.4%)60歳代では男性も女性も半々の割合でした(図25)。性別やラ
イフステージ毎の課題に対応できる体制の整備も必要と思われます。
図25 年代別うつ病診療状況(H26国保レセプト件数から)被保険者千人当たりの比較
%
6.6
7
多久市
佐賀県
全国
6
5
4.4
4
3
2
2
1
0
0.60.4
2.4
2.2
1.6
0.8
1.2
0.9
1.6
1.3 1.1
1.3
0.8
1.8
1.2
0.6
0
1.4
0.4 0.5
0
15~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65~69歳 70~74歳
多久市 15~39歳
40~44歳
45~49歳
50~54歳
55~59歳
60~64歳
65~69歳
70~74歳
男性
0
0
4.3
0
0.4
4.4
1.2
0
女性
0
5.1
9.4
0
2.2
4.4
2.4
0.6
(国保データベースシステム)
目標項目
自殺者の減少
(人口10万人当 たり)
現状(H25) 目標(H28※8)
24.0
20.0以下
データソース
多久市の
死亡統計
※8「佐賀県自殺対策基本計画」において目標が設定されているため目標期間が異なる
62
1
ⅱ.産後うつ病スクリーニング高得点者へのフォロー体制
周産期におけるメンタルヘルスについては、予防が重要です。妊婦自身やその
家族が妊娠中から産後のメンタルヘルスについて正しい知識と対処法を知り、予
防行動と早期発見・早期対応を取ることが必要です。
現在、乳児訪問において、EPDS※9を用いています。1割弱の方が9点以
上となっており、その後、再訪問や臨床心理士の個別相談、養育支援事業にて継
続した支援をしています。(表19)
表19
産後うつ病(EPDS9点以上)の実態
EPDS9点以上
回収数
人数
割合
H21
162
10
6.2%
H22
142
14
9.9%
H23
138
13
9.4%
H24
144
9
6.3%
H25
146
12
8.2%
H26
141
11
7.8%
(多久市乳児訪問 EPDS 結果)
※9
EPDS(エジンバラ産後うつ質問票)は、産後うつ病を発見するために開発されたもので
合計30点満点であり、日本では9点以上をうつ病の可能性があるとしてスクリーニングしています。
こころの健康は脳の働きによって左右されますが、うつ病など、より客観的
な診断を目指した脳の血流量を図る検査の研究なども進みつつあります。ここ
ろの病気に伴う様々な言動や症状は、脳という器官の働きの低下によるものと
客観的にとらえ、理解を深めることで、精神疾患に対する偏見の是正を行うこ
とが最も重要です。
家族などの周囲の人が、精神疾患についての正しい理解を深め、精神疾患に対
する偏見をなくすことで、早期治療へ向けた専門家へのつなぎを実現し、専門家
の指導のもとで本人を見守っていくことができることが重要になります。
また各ライフステージに応じた場面において、周囲の人が相談相手になるなど、
ゲートキーパーの役割を担うことができるような孤立を防ぐ支援も引き続き行っ
ていく必要があります。
ⅲ.睡眠で休養が十分とれている者の割合の増加
こころの健康を保つためには、十分な睡眠をとることと、ストレスと上手に付
き合うことが欠かせない要素です。本市で実施している特定健診問診票に聞き取
63
1
りによると、睡眠で休養が十分とれている割合は男女とも割合が低下しています。
(図26)今後も引き続き睡眠など休養に関する情報提供など普及啓発につとめ
るとともに必要な場合は個別に保健指導等で対応していきます。
図26
睡眠で休養が十分とれている人の割合の推移
%
90
82.1
81.9
80
76.5
70
71
75.7
男
68.2
67.9
65.3
60
女
68
67.8
50
H22
H23
H24
H25
H26
(多久市国保特定健診問診票)
目 標 項 目
現状(H26)
目標(H34)
67.9%
77%
睡眠で休養が十分とれて
いる者の割合の増加
④
データソース
多久市 国 保 特 定 健
診問診票
対策
ⅰ こころの健康や自殺予防に関する教育・啓発
・こころの健康についてのパンフレットの設置や、市報による正しい知識の啓発、
CATVを使った啓発コマーシャルを放送するなどあらゆる機会を活用し啓発し
ます。
・乳児訪問、乳幼児健診時における母親のメンタルヘルスの実態把握を行います。
・学童期から命を大事にする子どもを育てる教育を行います。
・ゲートキーパー的な役割を担う人材の育成に努めます。
・睡眠と健康との関連等に関する啓発を行います。
ⅱ 専門家による相談事業
・臨床心理士による個別相談を実施します。
・地区担当保健師による訪問指導を実施します。
64
1
(2)高齢者の健康
① はじめに
本市の人口推移では、人口は減少を続けると予想される中、高齢者人口は増加を
続け、平成32年には、6,756人
高齢化率35.8%を超えると予想されて
います。
ライフステージに応じた生活習慣病の発症および重症化予防に取り組むことで、
高齢期の虚弱化を予防又は先送りし、個々の高齢者の生活の質の向上を図っていく
ことが求められています。
② 基本的な考え方
健康寿命の延伸を実現するためには、生活習慣病や要介護状態に至る過程を予防
する観点を重視し、フレイルティとそれに関連するサイコぺニアを予防することで、
日常生活を営むための機能を可能な限り維持していくことが重要です。
「1.生活習慣病発症予防と重症化予防の徹底」、「2.生活習慣および社会環
境の 改善」に掲げた対策に取り組むことによって、認知症並びに認知機能障害の予
防などが重要になります。
③ 現状と目標
ⅰ 認知機能低下ハイリスク高齢者の把握率の向上
高齢化の進展に伴い、認知高齢者は確実に増加すると推定されていますが、現
時点 でアルツハイマー型認知症を予防することは不可能です。
認知機能の障害程度区分の分布をみてみると、認知機能の障害あり(1レベル
以上)と評価される者の割合が最も高いのは、要介護者、要支援者、二次予防事
業対象者、一般高齢者の順になっています。
介護が必要になった原因としても、認知症は42.9%(平成26年度多久市
高齢者福祉計画参照)と最も多くなっています。
軽度認知障害の高齢者に対しては、運動などに関する様々な介入を行うことに
よって認知症発症の時期を遅らせたり、認知機能低下を抑制したりできることが
明らかになっています。
健康日本21(第2次)では、介護予防事業においてスクリーニングとして用
いられている「基本チェックリスト」で、認知症関連3項目のうち1項目以上に
該当した者(認知機能低下ハイリスク高齢者)の発見率が指標とされました。
市では、認知機能低下ハイリスク高齢者の把握率の向上を目指し、また発見さ
れた 高齢者に対する介護予防事業の実施に努めます。
65
1
目標項目
現状(H26) 目標(H34)
認知機能低下ハイリスク高齢者の
把握率の向上
14.0%
増加
データソース
多久市高齢者福
祉計画
④ 対策
ⅰ 認知機能低下の予防
・青壮年期からの生活習慣病の発症予防と重症化予防を徹底することで、認知
機能低下の予防を推進します。
・認知機能低下者が健康を維持しながら、できる限り介護を必要とせず、いき
いきと過ごし、認知症の発症時期を遅らせることができるよう、各種介護予
防事業との連携を図ります。
66
1
第Ⅴ章
計画の推進
1.健康増進に向けた取り組みの推進
⑴ 活動展開の視点
健康増進法は、第2条において、各個人が生活習慣への関心と理解を深め、自ら
の健康状態を自覚して、生涯にわたって健康増進に努めなければならないことを、
国民の「責務」としています。よって、健康増進に向けた取り組みを進めるための
基本は、科学的根拠に基づく個人の身体状況(健診結果)をよくみていくことにな
ります。
また、少子高齢がすすむ本市にとっては、市民の健康増進を図ることは、とって
も重要な課題です。健康増進施策を本市の重要な行政施策と位置づけ、取り組みを
推進します。
一人ひとりの身体は、今まで生きてきた歴史や生活環境・社会背景、本人の価値観
によって作り上げられてきているため、それぞれの身体の問題解決は画一的なもので
はありません。市民一人ひとりの生活の状態や、能力、ライフステージに応じた主体
的な取り組みを重視して、健康増進を図ることが基本になります。市は、市民一人ひ
とりの健康増進活動を支えながら、個人の身体に対する理解や考え方を深め、確かな
自己管理能力が身につくよう、支援を積極的に進めます。
また、同時にともに生活を営む家族や地域の習慣や特徴など、個人の生活習慣や価
値観の形成の背景となる共通性の実態把握にも努めながら、地区担当制を推進し、地
域の健康課題に対し、市民が共同して取り組みを考え合うことによって、個々の気づ
きが深まり、健康実現につながることができる地域保健活動を推進します。
2. 関係機関との連携
ライフステージに応じた健康増進の推進に当たっては、事業の効率的な実施を図
る観点から、健康増進法第6条で規定された健康増進事業実施者との連携が必要で
す。
市が実施する健康増進事業は様々な部署にわたるため、庁内関係各課との連携を
図ります。(図27)
また、ライフステージを通じた市民の健康の実現を目指し、市民一人ひとりの主
体的な健康づくり活動を支援していくため、医師会や歯科医師会、薬剤師会などに
加え、保健対策推進協議会の構成団体等とも十分に連携を図りながら、関係機関、
関係団体、行政等の協働による健康づくりを進めます。
67
1
[テキストを入力]
[テキストを入力]
[テキストを入力]
図27
ライフステージに応じた健康の推進を図るための庁内の関係機関
妊娠中(胎児)
1 歳 6 ヶ月 3 歳
母子保健法
健康増進法
小学生中学校
中学生 高校生
高校
小学校
生
保育園児 幼稚園児
学校保健安全法
20 歳
30 歳 40 歳
60 歳
70 歳
労働安全衛生法等
児童福祉法(保育)
健康増進事業実施者
(第 6 条)
50 歳
高齢者の医療の確保に関する法律
介護保険法
健康推進係
福祉事務所
福祉課
保健師 8 人 管理栄養士1人
こども係・保護係・地域包括支援係・高齢・障害福祉係
市
58
68
1
市民生活課
教育委員会
学校教育課
法 律
母子健康法
母子健康手帳(第 16
条) 妊婦健康診査(第
13 条)
8 週前後
26 週前後
年間 14 回
[テキストを入力]
1 歳 6 ヶ月
児 健診
妊婦健診
健 診
学校保健安全法
健康診査
(第 12 条)
36 週前後
1 歳 6 ヶ月
該当年齢
(省令)児童福祉施
設最低基準第 35
条
3歳
児健
3歳
該当年齢
健康増進法
健康診断(第 13 条)
学校健診
保育所
認定
こども園
(幼稚園について
は、学校保健安全法
のもと実施)
[テキストを入力]
第 19 条の 2
健康診査
労働安全衛生法
高齢者の医療の確保に関する法律
健康診断(第 66 条)
特定健診(第 20 条)
定期健康診断
小学校、中学校、
高等学校
大学
18~39 歳
40 歳未満
年1回
年1回
年1回
年1回
雇入時、35
歳、 40 歳
以上
年1回
特定健診
後期高齢者健診
40~74 歳
75 歳以上
年1回
年1回
[テキストを入力]
3.健康増進を担う人材の育成
生活習慣は個人のみで作られるものではなく、社会の最小単位である家族や、その
家族が生活している地域などの社会的条件の中でつくられていきます。
今後、地区担当制により、各地域の生活背景も含めた健康実態と特徴を明確にする
とともに解決可能な健康課題を抽出し、各地域の特性に応じた健康増進施策を推進す
ることが重要になります。
市においては、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、管理栄養士、歯科衛生
士、臨床心理士等が、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・こころの健康づくり、
喫煙、飲酒、歯・口腔の健康など、生活習慣全般についての保健指導を担当していま
す。
中でも保健師、管理栄養士は、ライフステージに応じた健康増進を推進していくため
に、市民の健康状態を見る上で最も基本的なデータである健診データを、将来にわた
って見続 けていく存在です。(表20)
保健師、管理栄養士は、医療保険者、地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、栄養
士会などの関係団体や、学校保健担当者や福祉事務所などとも相互に連携を図るよう
努めるとともに、市民の健康増進のために科学的根拠の知見に基づく研修の受講など
による資質の向上を図ります。
69
1
表20
平成26年度
佐賀県20市保健師設置状況
No
市名
総人口
(H26.10.1)
(A)
面積
(㎢)
1
佐賀市
235,358
431.84
53
4,441
2
唐津市
123,503
487.54
29
4,259
3
鳥栖市
72,078
71.72
13
5,544
4
多久市
20,102
96.96
10
2,010
5
伊万里市
55,824
255.28
14
3,987
6
武雄市
49,477
195.40
15
3,298
7
鹿島市
29,914
112.12
14
2,137
8
小城市
44,509
95.81
19
2,343
9
嬉野市
27,649
126.41
8
3,456
10
神埼市
32,007
125.13
15
2,134
11
吉野ヶ里町
16,365
43.99
5
3,273
12
基山町
17,491
22.15
4
4,373
13
上峰町
9,421
12.8
4
2,355
14
みやき町
25,479
51.92
10
2,548
15
玄海町
6,006
35.9
4
1,502
16
有田町
20,151
65.85
7
2,879
17
大町町
6,860
11.5
3
2,287
18
江北町
9,531
24.49
4
2,383
19
白石町
24,127
99.56
9
2,681
20
太良町
9,164
74.3
5
1,833
868,674
2,441
佐賀県市町計
保健師数
総数
(B)
245
保健師一人
あたり人口
(A/B)
70,941
(平成 27 年度市町村保健師名簿、佐賀県市町勢一覧より)
70
1
<資料>
1.多久市保健対策推進協議会委員(健康増進計画策定委員)名簿
№
氏
1
◎太
2
池
3
○副
4
名
所
体
市
等
市
田 正 憲
田 英
属
雄
団
体
医
師
会
医
師
会
島 洋 二
市
陣
内 宏
子
市
5
田
渕
厚
市
6
○伊
川 照 明
市
7
市
丸 悦
子
地
8
野
北 光
枝
食生活改善推進協議会
9
田
中 羊
子
健
10
山
口 光
之
保健福祉事務所代表
11
中
川 正 博
教
12
後
藤 祐
学
◎会長
大
歯
科
薬
医
剤
師
師
会
会
国 保 運 営 協 議
区
長
会
会
域 婦 人 連 絡 協
議 会
康 推 進 員 会
育
識
○副会長
関
経
験
係
者
平成27年4月1日現在
2.庁内会議名簿
所
属
担当者名
1
福祉課
こども係
白濱
直子
2
福祉課
高齢・障害者福祉係
今泉
修一
3
福祉課
地域包括支援係
4
市民生活課
国保年金係
5
学校教育課
学務指導係
森
村山
南里
哲子
敏郎
豊
平成27年4月1日現在
71
第2次多久市健康増進計画
発行日
発行者
平成28年3月
多久市健康増進課
〒846-8501
佐賀県多久市北多久町小侍7-1
TEL:0952-75-3355
FAX:0952-74-3398
Email :[email protected]
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