...

ゲームの世界にTS転生

by user

on
Category: Documents
223

views

Report

Comments

Transcript

ゲームの世界にTS転生
ゲームの世界にTS転生
メイベル
!18禁要素を含みます。本作品は18歳未満の方が閲覧してはいけません!
タテ書き小説ネット[R18指定] Byナイトランタン
http://pdfnovels.net/
注意事項
このPDFファイルは﹁ノクターンノベルズ﹂﹁ムーンライトノ
ベルズ﹂﹁ミッドナイトノベルズ﹂で掲載中の小説を﹁タテ書き小
説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。
この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また
は当社に無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範囲を超え
る形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致します。小
説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。
︻小説タイトル︼
ゲームの世界にTS転生
︻Nコード︼
N8599BN
︻作者名︼
メイベル
︻あらすじ︼
高校卒業してブラック企業に就職した男性が、気がついたらゲー
ムの世界に居た! しかも、大好きな女性キャラになって!
彼女いない暦=年齢の男性が、女性キャラとなってエッチなシミュ
レーションRPGの世界で生きていく。
女性キャラになった主人公が、ゲームの世界で色々エロエロと頑張
ります!
1
プロローグ︵前書き︶
よろしくお願いします。
2
プロローグ
﹁ふぅ∼、疲れた疲れた﹂
仕事が終わり帰宅して、自宅であるマンションに帰ってきて、第一
声が疲れた疲れたとは⋮。
まるで、仕事に疲れた草臥れたサラリーマンではないかと思うが、
事実そうなので否定出来ない。
高校を卒業し、IT企業に就職、まだ社会人4年目だというのに、
既に心は疲れ切っていた。
昨今の就職難の中、高卒で就職できたと思えば案の定のブラック企
業。
連日の残業徹夜に、デスマーチが続き、休日は月に1日。
明日がその休日と言う事で、今日は無理矢理定時帰宅をした。
﹁今日早く帰った分、明後日出たら怒られそうだなぁ﹂
ワンルームマンションに一人暮らしを続けてるせいか、独り言も多
くなった。
一人だと静か過ぎるので、いつもの習慣でTVをつける。
見るのが目的はなく、自分以外が起す音を流すのが目的だ。
﹃今日は50年に一度の流星群が夜空を︱︱︱﹄
TVから流れるニュースを聞きながら︱︱と言っても、聞き流して
いるが︱︱パソコンの電源を入れる。
3
疲労のせいで食欲もないので、唯一の娯楽兼気晴らしであるPCゲ
ームをするのだ。
パソコンが立ち上がるまで、疲れた頭で、何故今自分はこんなに疲
れる羽目になったのかを考える。
小中の時は平和だった。
高校でアルバイトをしようと思い、両親に相談してからおかしくな
った。
父親が学生は勉強だけしてればいいと、アルバイトを許さなかった
のだ。
それ以降、何かあるたび処か、何もなくとも勉強しろ勉強しろと怒
鳴るようになった。
ある時、アルバイトや友人と遊ぶのも社会勉強だ。と言ったらぶん
殴られた。
昔から人の言う事を聞く人ではなかったが、殴ってきたのは許せな
かった。
それ以降、口も聞かず、険悪なまま︱︱
﹁高校卒業と同時に就職して、家を出て、今に至る。と﹂
大学に行かせたかった父親に対する意趣返しは出来たが、ハッハッ
ハ、現実は甘くない物だ。
社会人になり既に4年、22歳で貯金は300万以上ある。
コレだけ見ると、順風満帆なのだが、貯金がたまる理由が嬉しくな
い。
﹁友人を作る時間もないし、お金を使う時間がないからなぁ⋮﹂
4
家を出てからの友人は0。ついでに言うなら、恋人もいない。
入社同期のやつらは既に辞めてるし、IT系の仕事場には女性がほ
とんどいないので、恋人を作る出会いもない。よしんば、女性が居
ても、仕事が忙しくて声かける暇もないわけだが。
今の自分の現実を考えても楽しくなので、意識をパソコン画面へと
移す。
目的のゲームを起動させて、画面には﹃カオスブレード﹄の文字が
映る。
3年前からやり続けてるシミュレーションロールプレイングゲーム
だ。
一応大人向けソフトなのだが、そういうシーンは少なめだ。
では何が気に入っているかと言うと、分岐が非常に多いマルチスト
ーリーと、エンディングが多数あるマルチエンドな所だ。
大まかなストーリーは、連邦、法国、帝国の3国が争う中、戦争孤
児の主人公が成り上がっていく、よく言えば王道、悪く言えばあり
きたりな物なのだが、そのストーリーの量がすごい。
連邦、法国、帝国のどこに主人公が味方するかで話が分かれ、さら
に進め方次第では独自の国を立ち上げたり、魔物の軍勢を率いた魔
王プレイも出来るのだ。
味方になるNPCも進め方次第で変わるし、ほとんどの女性キャラ
とは恋人になれる。
やろうと思えばハーレムも作れる。とは言っても、基本が純愛路線
の為、爽やかな物だが。
5
自分の人生が思い通りに行かない分、好きなように戦い、好きな勢
力に味方したり敵対したり、色々な女性キャラと恋愛も出来るこの
ゲームにはまったのだ。
就職してから買ったパソコンとセットで初めて買った大人向けゲー
ムの﹃カオスブレード﹄が、唯一の息抜きだ。
それ故、暇がないとは言え3年もしてたら、ストーリーもエンディ
ングも80%以上クリア済みだ。
﹁明日休みだしなぁ。久しぶりに最初から始めるかぁ﹂
いつもはLoadを選ぶが、今回はなんとなくNewを選ぶ。
Newを選ぶと、クリア済みの場合少し特典があるが、Loadで
クリアデータを選んだ時のように、装備の持ち越しはない。
自分の過去を思い出したことで、新しい人生と言うわけではないが、
なんとなくNewを選びたくなったのだ。
﹁ふ、序盤のチュートリアルステージなどお手の物ですよ﹂
ゲームを進めると、最初主人公の村がどこかの軍に襲われ壊滅され
る。
その後、連邦の特殊部隊が一人ぼっちの主人公を保護して、4ステ
ージほどチュートリアルがあるのだ。
連邦の特殊部隊と言うと、白い何かを思い出すな。
最初の3ステージで、操作や簡単な世界観を説明してくれるのだが、
現れる敵はかなり強い。
それもそのはずで、この特殊部隊を率いるのが、ゲーム中でも強キ
ャラのセシリア・マリンズなのだ。
6
設定では、味方には慈愛を持った優しい女性だが、敵に対しては鬼
神の如き強さと冷酷さを持つ女性士官。
チュートリアルだからか、主人公にとても優しく、かなり好きなキ
ャラだ。
金髪の長髪に赤い目、背が高くて胸もあって、最初にゲームをやっ
た時は年上のお姉さんとして憧れた。
﹁今では、同じ22歳になったと思うと⋮﹂
自分の言葉に一抹の寂しさを感じつつ、ステージ4まで進めた。
このステージ4では、帝国、法国との連戦の上に、最後は魔物の集
団に襲われる。
そしてセシリアは主人公や部隊の仲間を逃がす為、一人で魔物に挑
み死亡する。
キャラの強さ的には後半の敵とも戦えるセシリアだが、イベントの
為か雑魚の魔物に崖から落とされてしまうのだ。
﹁チュートリアル用キャラと部隊だから、終わったら用済みってか
ー⋮﹂
ご老人及び幼女を除けば、唯一主人公の恋人にならないのがセシリ
アだ。
自分の好きなキャラと恋愛できない上に、強制死とか⋮許せん。
﹁強さ的には、ステージ4の敵には無双できるはずなのに⋮開発者
めぇ﹂
このステージ4は何度やっても悔しくなる。
7
気晴らしのはずが、イラついてどうするというのか。
わかってて始めからやった僕はアホですか。アホですね。そうです
か⋮。
セシリアが崖から落ちるシーンを見てやる気が落ちた処で、自分が
疲れているのを思い出したので、さっさと寝て明日改めて続きをし
ようと決意する。
﹃︱︱まもなく日本上空に流星群が︱︱﹄
つけてたTVを消し、部屋の明かりも消してベッドに横になる。
﹁どうせなら、セシリアを助けるルートも作ってくれればなぁ。い
や、いっそ主人公をセシリアにして⋮。はぁ、僕がセシリアなら、
あんな魔物に負けないのになぁ﹂
疲れてるせいか、自分でアホな事言ってるなぁと思いつつ、独り言
を呟いてしまう。
﹁あれだね、僕がカオスブレードの世界でセシリアになったら解決
だ﹂
徹夜で32時間勤務の後にゲームをしたのがまずかったのかもしれ
ない。
とっとと寝ようと、目を閉じる事にした。
目を閉じる寸前、窓の外にたくさんの流れ星が見えた。
確か流星群だかってニュースで言ってたなぁ。
どうでもいいやと思いながら、意識を手放した。
8
目覚めたら知らない天井、ではなく、天井の代わりに青空が広がっ
ていた。
﹁とうとうアレか、仕事のストレスで夢遊病でも発症したか⋮﹂
いつか来るだろうと思った事態だけに、冷静に状況を受け入れられ
たのが救いだ。
溜息をつきながら体を起すと、色々と違和感を感じた。
まず着ている物が変だ。
﹁これは⋮鎧? ガントレットにレギンス⋮?﹂
ファンタジーゲームよろしく、胴だけじゃなく手足にも手甲だか具
足だかをつけている。
動かしても軽いから、本物じゃないとはわかるが⋮。
﹁夢遊病でコスプレまでしたのか⋮﹂
さらに頭の後ろに手を伸ばすと、明らかに長い後ろ髪がある。
﹁長髪のカツラまでするとか、どんだけ本格的なの⋮。無意識の僕、
恐ろしい子⋮﹂
半分本気で自分にビビリながら、誰かに見られたらピンチだと思い
9
周りを確認する。
どうやらここは渓谷のようで、上を見上げたらどこぞのお空ツリー
より高い崖と、すぐ近くを川が流れていた。
それを確認して、つーと汗が流れる。
﹁やばい、コスプレして野外で寝たとか言うレベルじゃない。これ
はもしや、コスプレして山にでも入って、ハッスルした後なのでは
⋮﹂
山に来るという事は、自宅の町から移動した訳で。
そうすると、コスプレは移動前にしたのか移動後にしたのかが重要
だ。
もしも、もしもだが、移動前にコスプレしていた場合、誰かに見ら
れた可能性がある。
﹁近所の人に見られてたら、引越しを考えなきゃ⋮﹂
いくらストレスが堪ってたとは言え、もう少し発散する方法を考え
てほしいものだ。
自分の事とは言え、文句を言わずには居られない。
﹁よ、よし、とりあえず⋮どうするか﹂
周りを見ても、崖と川と寝てた岩場しかない。
ドウシヨウカと悩んでいて、ふと自分の居る真下を見ると赤黒い液
体が広がっていた。
﹁うへぇ、何これ。ねちょっとして気持ち悪い﹂
10
触ってみると、ねっとりして気持ち悪かった。
地面に広がってることを考えると、寝てた自分の背面はこの液体が
くっついていると思われる。
﹁はぁ⋮とりあえず、川で洗い流そう﹂
寝起きにしては最悪の目覚めで、げんなりしながら川辺に近づく。
まず手を洗ってから顔を洗おうと、水面を見ると違和感を感じた。
水面に映った部分のみだが、自分の姿が見慣れたものではなかった
のだ。
コスプレしているせいとも思ったが気になったので、水面に映る自
分がよく見えそうな流れが緩やかな場所を探す。
目当ての場所を見つけ、水面に可能な限り自分の姿を映して確認し
た。
そこに映っていたのは、鎧を着込んでても解るほど自分より細身で
足が長い姿。
そして腰まである長髪の金髪で、赤い瞳をした美女。
その顔は自分が大好きなゲームの、さらに大好きなキャラの顔。
﹁僕がセシリアになってるぅぅぅぅぅ!?﹂
11
プロローグ︵後書き︶
プロローグということで、えっちぃのは次からです。
12
第1話 二つの双丘
本日は晴天、快晴也。
そんな事を空を見上げながら思っても、事態は進展しない。
水面に映ったセシリアが自分ではないと言うことを証明しようと、
小一時間ほど動き回った。
特殊メイクか、どこぞの怪盗が使う変装かと疑い顔を引っ張ったり、
ラジオ体操をして水面の美女も同じに動くか確認したり、水面に向
かって好きとか言ってみたりと。
うん、最後のは必要ない気もするが、今の僕は見た目セシリアだと
結論付けた。
﹁ハッハッハ⋮⋮⋮。なんじゃそりゃ!﹂
乾いた笑いをし、虚空へとツッコミを入れる。
実はドッキリとかいうオチも期待しているのだが、一向にレポータ
ーが現れる気配がない。
﹁ここはSEらしく、順序だてて考えようではないか、僕﹂
実態はプログラマーだが気にしない。
まず、何故セシリアに成ったか。
答え、わからん。
終わり。
13
﹁ふむ⋮。さすが僕、一瞬で答えを出すとは⋮﹂
まったく意味がない答えなんだけど、仕方ない。事実わからないし。
考えたくはないけど、もう少し真剣に考えよう。
セシリアそっくりに生まれ変り⋮死んだ覚えがないので却下。
どこぞの神様が、いたずらした⋮そんな神居たら、世界中でオタク
が大喜びしとる。ありえない。
ぐるぐる思考を巡らせていると、寝る前に流星群とか言ってたニュ
ースを思い出した。
流れ星に願いを言うと叶う。そんな事を聞いたことがある。
﹁しかし、願った覚えは⋮。あ! 寝る前の独り言!?﹂
だがあれですよ、流れ星に願いは、三回言うのがお約束では。
﹁1個の流れ星じゃなく、流星群だっただけに、一言で叶ったとか
? ハッハッハ⋮あほかっ!﹂
誰もいないので、一人でボケて一人でツッコム。
非常に虚しい。
結局、結論の出ないまま暫くボーとしていた。
太陽が真上に来るまでボーとしていると、さすがに何か行動せねば
という気持ちになる。
⋮うん? 太陽が二つあるね。
﹁⋮⋮⋮ハッハッハァ∼∼∼﹂
14
乾いた笑い声すら、最後は溜息へ変わる。
確か地球は太陽が一つだった。なのに、現在は太陽二つなう。
セシリアと太陽二つを結びつけると、ある考えが浮かぶ。
﹁﹃カオスブレード﹄の世界も太陽が2個だったなぁ。すると、こ
こって⋮﹂
カオスブレードの世界に、セシリアとして転生しちゃった⋮とか。
中学生の時分なら、ひゃほぉーいと喜んだかもしれない。
だが今の僕は、仕事もある自立した社会人なのだ。
自分の生活を投げ捨てて、ゲームの世界に転生とか喜べ⋮な⋮い?
﹁家族とは離縁中、仕事も出来れば逃げ出したかった。友人も恋人
も居ない。⋮あれ? 実は問題なし?﹂
僕が頑張ってた生活は、よく考えれば投げ出したい物でした。
﹁あれだな。今の状況になった理由はわからないけど、戻る方法も
わからないし、前向きにセシリアをやろう﹂
仕事の事とか考えると、むしろ戻りたくないね。
カオスブレードの世界は自由度の高い世界だ。
冒険者になるもよし、傭兵になって士官するもよし。何かの職人ジ
ョブを目指すもよし。
そう考えれば、トイレを行く時間すら削る日本での仕事など忘れて、
この世界で頑張る方が燃えると言う物だ。
﹁それに⋮あの赤黒い液体、もう乾いてるけど、あれってセシリア
が落下した痕跡だよな﹂
15
自分が目覚めた場所を見ながら、寝る前のゲームの状況を思い返す。
赤黒い液体の正体は、たぶんだけどセシリアの血の跡。
ステージ4で崖から落下後にゲームを止めたせいか、セシリア死亡
後からスタートのようだ。
﹁本気でなかったとは言え、自分が言った事が叶ったんだ﹂
願いが叶うという奇跡を実感しつつ、血痕を見て思い出す。
既に乾いたと思うが、背中の血を洗い流さないと。
未だに手も洗っておらず、よくよく考えると血だらけのまま体操し
たりしてたのだ。
とりあえず手を洗う前にガントレットをはずそうとするが、ガチャ
ガチャ鳴るばかりで外れない。
﹁腕に吸い付くようにフィットしてるが、どうやってはずすんだこ
れ﹂
いくら外そうとしても外れずイライラが募る。
ゲームだったらステータス画面ではずすのコマンドがあるのに!
そう思った瞬間、目の前の虚空に半透明のメニュー画面が現れた。
﹁なるほど、ゲームの世界ならメニュー画面が出て当然か⋮﹂
予想外の事態でも冷静に言葉を発する。
独り言スキルはかなり高い。ちっとも嬉しくないが。
メニュー画面から装備のタグを選ぼうと手を動かそうとしたら、意
識しただけで装備画面へ移行した。
16
思うだけで画面が動くとか、仕事してる時に欲しかった機能だ。
﹁んじゃ、早速装備をはずして∼っと、面倒だから︻全てはずす︼
で、うわっ﹂
︻全てはずす︼を選ぶと決めた瞬間、ガチャガチャガチャと着てた
装備全てが周りに散乱した。
そう、着てた装備、す・べ・て・がだ。
﹁なんで! ゲームの時は最後の一枚は残ったのに!﹂
思わず素っ裸になってしまい、心の底から焦ってしまう。
何に焦るかと言うと裸になった事ではなく、考えないようにしてた
考えが頭を占め始めたからだ。
生まれてこの方、彼女が居たためしはない。
だからって女性に興味がなかったわけじゃなく、むしろアリアリだ
った。
そんな自分が美女のセシリアになったのだ。
そうなれば考えることは一つ。自分の体を思う存分見てみたい。
だがそれはなんだかいけないような事の気がして、考えないように
してたのに⋮。
なのに今、自分の目の前には裸の女性の体があるわけで。
僕の手は、自分の意志とは関係なく、自然と下を向いた所にある双
丘に伸びていた。
17
豊かな女性を示す二つの双丘は、力を入れたとおりの形に変わる。
すべすべした手触りに、極上の綿のような柔らかさで、いくら触っ
ても飽きる事がない。
﹁はぁ、はぁ、はぁ﹂
始めは触るのが気持ち良いだけだったが、徐々に触られている胸が
熱を帯びてくる。
触る手も触られる胸も気持ち良くなり、立って居られなくて自然と
少しずつ腰を落としていく。
胸を揉んでいる内に、いつの間にかぷっくりと硬くなった乳首に指
が当たり、手が勝手に指でつまんでひねりあげた。
﹁あぁぁ、ひぃぃ、気持ちいぃぃ﹂
自分の体と成ったとは言え、恋人でもない女性の胸を触る背徳感と、
初めて触る双丘の気持ち良さに、男の時以上の快感を感じる。
片手で乳首をつまみながら、もう片手で胸を揉み続けていると、あ
る欲求が浮かんでくる。
﹁ちくびぃ、ちくびをひっぱってぇ﹂
声に出すとゾクゾクした快感が湧き出て、自分の手は欲望に違わず
に両の乳首を摘み引っ張り上げる。
引っ張り上げた瞬間、胸だけではなく全身を駆け巡る快感に頭が真
っ白になる。
18
﹁アッ、アッ、アッ、イク、イっちゃっ、イっちゃうぅぅぅ﹂
引っ張り上げて快感が駆け巡る中、股の間からぷしゅぅと水音が漏
れた。
頭の中が快感で真っ白な最中に、昔の事を思い出した。
会社の先輩が、Mじゃなきゃうちの仕事は続けてられないよ。と言
ったのを。
未だに両手で乳首を摘んで弄りつつ、先程の快感を思い出す。
乳首引っ張ってイッちゃうなんて、僕ってMだったんだなぁ。
そのまま双丘を揉んだり、乳首を摘んだり引っ張ったりしながら、
初めての女性としてのオナニーを気絶するまでしてしまった。
意識を取り戻しても体がだるいせいで動く気がしない。
気づけばもう、日も落ちそうな様子だった。
えーと、この世界も日本と同じ24時間で、日の落ちる時間も大差
ないから⋮うわぁ、5時間くらいしてたって事?
いくら女性に免疫がないとは言え、今は自分の体なのに夢中に成り
すぎた事が恥かしい。
﹁でも、男の時より全身が気持ちよくてさぁ。仕方ないじゃん﹂
19
誰に対する言い訳かもわからず、言い訳を口にすると思わぬ返事が
返ってきた。
﹃グルルルルルルル!!﹄
唸り声をする方に顔を向けると、そこには狼が4体居た。
明らかに自分を睨み、獲物と決め付けてる気がする風貌で、だ。
﹁アハハ⋮。今僕って裸で装備何もしてない⋮やっばっ﹂
焦って体を起そうとするより早く、裸の僕に先頭の狼が飛び掛って
きた、
﹁裸で狼に襲われるなんて、なんでだぁぁぁ﹂
そんな叫びも関係なく、狼の牙は目前まで迫っていた。
20
第1話 二つの双丘︵後書き︶
誤字の指摘や、感想等、お待ちしておりま∼す。
21
第2話 狼さんと神秘の装備
飛び掛って来た狼に対して、反射的に右手を前に出す。
体を守る為に出した訳ではなく、恐怖で無意識に出した右手に狼の
牙が突き刺さる。
﹁ひぃぃ﹂
噛まれた!と思った瞬間、右手を振り回すと、狼は口を離し少し離
れた場所に着地する。
すぐに腕を振り回したのが良かったのか、手には赤い跡があるだけ
で、怪我はないようだ。
ホッとしたのも束の間、残りの3体が一斉に飛び掛って来た。
﹁4対1とか、卑怯だと思わないのか!﹂
カオスブレードに限らず大抵のゲームの場合、敵一人を複数の味方
でぼこるのはお約束で、全く卑怯ではないのだが。
僕の魂の咆哮も無視され、3体の狼は噛み付き、噛み付き、体当た
りをかましてくる。
噛まれた手を振り回して、隙だらけになった体に突撃されて地面に
突き倒された。
大地に立つ、処か起してた上半身すら倒されてしまった。
22
もはや人生を諦めかけて自分を囲む4体の狼をを見ると、じっと此
方を伺い待機している。
これは、カオスブレードがターン制のゲームだったから、次は俺の
ターンだ!と言うやつか。
ターン制に感謝しつつ、そこに一縷の望みをかけて逃げ出そうとし
た瞬間、狼達が再び襲い掛かってくる。
﹁お、お前ら、ずっと俺のターンとか卑怯ですよ!?﹂
僕のターンになる事はなく、再度腕を噛まれたり体当たりを食らう。
その最中、恐怖で闇雲に振り回してた腕が一匹の狼の顔面にクリー
ンヒットした。
﹃ギャゥゥゥン﹄
痛そうな叫びを上げて吹き飛んだ狼が地面に横たわり、そのまま動
かなくなる。
予想外の事態に僕だけじゃなくて、狼達も動きを止めて倒れた仲間
を注視している。
その隙に頭をフル回転させて今の状況を考える。
ターン制ではないようだったが、ここはゲームの世界。
そうなると、生き物の強さってレベルやステータス値で決まると思
われる。
先程噛まれた腕を見ると、ほんのり赤い跡があるだけで傷一つない。
じっと狼の中の一匹を見てみる。
カオスブレードでは、アイコンを合わせたキャラの名前やHPにM
Pが見れたのだ。
23
意識を1体に集中して即、目の前の空中に半透明のウィンドウが現
れた。
◇ウルフ
HP:??/??
MP:??/??
詳細を知る為にはスキルや魔法、又はアイテムが必要だが、とりあ
えず今は名前がわかっただけで問題ない。
﹁ウルフ⋮ふふ⋮序盤に出てくる最弱のモンスターの一種か⋮﹂
ウルフのレベルは個体で変動するが、せいぜいが1∼4レベルだ。
対して、セシリア・マリンズのレベルは60。
決して作中最強ではないが、ウルフ如きに負けるレベルではない。
﹁つまり、貴様ら如き、裸の僕でも圧倒できると⋮﹂
装備補正がなくとも、素の状態で圧倒的に勝っている。
その結論に達したと同時に、1体の狼が飛び掛って来た。
それを冷静に︱︱内心は焦ったが︱︱右のパンチで迎撃する。
﹃ギャゥ﹄
前の一体と同じ様に、叫び吹き飛び動かなくなる。
動かないそれを確認すると、体の中からゾクゾクした快感が湧いて
くる。
本来なら村人Aであろう僕じゃやられるウルフをあっさり倒せた。
24
元の自分より強い強者を圧倒できる快感と、昔では考えられなかっ
た暴力的衝動で体が熱く火照ってくる。
目の前の残り2体に警戒しながらも、股間の秘所がじゅんと濡れる
のを感じた。
﹁ふふふ、僕のデビュー戦だ。精一杯、頑張ってやられてね﹂
快感と衝動に駆られ、残る2体に襲い掛かった。
結果的にはウルフ達をあっさり撃退したが、今は疲労感で地面に寝
転んでいる。
自分のほうが強いとわかってからは、積極的に動いて攻撃したのが
まずかった。
裸でも股間のプランプランした物がないので動きやすいと思ったが、
意外とそうではなかった。
﹁素早く動くと、胸が跳ねて痛いとは⋮﹂
胸のサイズには詳しくないが、DかE位のサイズがあるのではない
だろうか。
スレンダーな体に巨乳、ゲームでは何か装備している画面しか確認
できずこんなに巨乳とは思わなかったが、正に脱いだら凄いんです
って感じだ。現実の世界じゃ、こんなナイスボディの持ち主は居ま
い。
25
戦闘後に痛くなった胸をさすってる内に、うっかりまたオナニーを
してしまった。
さすってる内に気持ち良くなって、下から押し上げるように胸を揉
むのが気持ちよくて⋮。
﹁この胸は凶器だ。動くのに邪魔だし、痛いし、思考の邪魔をする
し⋮﹂
快感に身を浸してる間に辺りはすっかり暗くなっている。
月明かりで明るい為に真っ暗ではないのが救いだが。
空を見上げると太陽に代わって月が2個。
大月と小月と呼ばれる月だったか、それを見上げると実感してしま
う。
﹁やっぱりここは、地球じゃないんだなぁ﹂
しみじみと呟いて一人黄昏るが、裸で言っても締まらないか。
仕方なく服を着ようと装備が散乱した場所へ移動する。
﹁仕方なくじゃない! 僕は露出狂じゃないし!﹂
自分の内なる言葉にツッコミを入れる。
別に服を着たくないわけじゃない。
ただちょっと、まだ見てたいと思っただけなんだ。
胸とか、胸とか、胸を。
ならば、まだ裸でもいいんじゃなかろうか?
裸でも強いし⋮。
26
胸が見たいから裸のまま。その考えが準魔法使いな気がしなくもな
いが、気にしたら負けた。
﹁まぁとりあえず∼、装備は回収しときますかね﹂
だけど回収ってどうやるんだろうか。
メニューを開いてアイテム欄を確認しても装備カテゴリーには何も
ない。
つまり今落ちてる装備は、メニューから装備する事は出来ないとい
うわけだ。
もしやアレか、ステータス等は確認できても、謎のアイテムボック
スとかは機能していないのだろうか。
そうなると装備を付ける方法は現実と同じなのだろうか。
﹁⋮鎧の着方なんて、わかりません﹂
⋮詰んだ。
血糊をつけて転がる鎧に体を預け、よよよとしなを作って居ると、
唐突に鎧が消える。
鎧が消えて地面に体を預けながら考えた。
﹁回収するには、直接触ればいいのか?﹂
それを確かめる為に周りにあるガントレットに触ってみる。
そしてアイテムボックスへと思った瞬間、ガントレットは消え去っ
た。
すぐにメニューを開きアイテム欄を確認してみると、装備カテゴリ
27
ーに2個のアイテムが並んである。
鉄の鎧に鉄の手甲か。
ゲームではセシリアの装備を確認できなかったが⋮かなりショボイ。
﹁特殊部隊の隊長が、ただの鉄シリーズとか⋮手抜きだ﹂
意匠も凝ってたので、実はユニーク装備を期待してたのだが残念な
結果だ。
多少落ち込みながら残りの装備も回収する。
大方回収し終わりゲームとの差異を見つける。
﹁布の上着とか、布のズボンとか、ゲームではなかったけど、1ア
イテム扱いなのか﹂
画面に表示されて鎧の下等に絵としてだけあった物だと思うが、そ
れもしっかりアイテムとして存在する。
戦闘がターン制でなかった事もゲームとは違った。
﹁つまり、ここはゲームを基にした別の世界と言うわけか⋮﹂
ゲームと似ているがゲームとは違う世界である事を確認しつつ、残
り2個を残し落ちてた装備を回収し終わる。
そしてその2個を手に持ち観察する。
﹁剣と魔法のSLRPGだというのに、すごい綺麗なブラとショー
ツだ﹂
綺麗な模様とかがあるだけじゃなく、手触りもすべすべで気持ちい
28
い。
男の下着とは比べるのも憚られるほどの滑らかさだ。
中世がモデルだろう世界なのに、現代日本でも高級に入りそうな高
品質だ。
ショーツはVの字になっており、最低限秘所を隠すだけではなかろ
うか。
そういえば下は少しも見ていない。
胸が大きくて下を向いても見えないので、弄ってもいない。
そしてブラだ。
メロンでも収められそうなカップが2個付いた不思議装備だ。
ショーツはまだしも、男の時はブラにはとんと縁がなかったので興
味津々だ。
﹁ブラを付けてみたいけど、ぬ、く、どうやって背中のホックを留
めるんだろ?﹂
見えない背中にあるせいでホックが留められない。
背中に手を回してると、ぱりぱりした物が張り付いてるのを感じた。
﹁ハッ!? 推定血糊を落としてなかった!﹂
つい初の快感や初の戦闘、神秘の装備に目を奪われて忘れていたが、
一番最初にやろうとしてた事を思い出す。
綺麗なブラが汚れてはまずいと、急いでアイテムボックスへと収め
る。
ショーツも入れるのを忘れない。
﹁夜でも暖かいし、このまま川に入って洗えばいいか﹂
29
念の為、川の温度を確認してから入る。
川の水は冷たくもなく、少し温いお風呂って感じだ。
川の深さは少し進んでも腰の辺りまでしかないようだ。
血糊はもちろんだが、胸しか弄ってないとは言え股間も十分によご
⋮れてはいないけど、洗わなきゃいけない。
そう思い、ゆっくりと手を自分の股の間に持っていく。
神秘との初めての出会い。
﹁あぁぁ、あっ!﹂
秘密の花園を触った快感で油断をし、脚を滑らせてしまう。
流れが急ではないとは言え、沈んだ体は川の流れに持っていかれ流
される。
﹁ちょ、裸のまま急流下りとか、勘弁してぇぇええ﹂
叫ぶ暇があるなら何とかしろと思うが、体はぷかぷか浮かんでしま
い流されるままになる。
二つの浮き輪があるせいかぁと、実にどうでもいい事を考えながら
川下へと流されていく。
﹁せめて服を着させてぇぇぇぇ⋮⋮⋮﹂
心の中からのお願いも空しく、川の流れと共に渓谷を後にするのだ
った。
30
31
第2話 狼さんと神秘の装備︵後書き︶
主人公は、エッチでアホの子かもしれないですね∼。
誤字の指摘、感想等、お待ちしておりま∼す。
32
第3話 ステータスと3国事情
ドドドドドドドという、大迫力のサウンドを奏でる大瀑布を横目に、
体を大の字にして地面へと倒れ込む。
﹁死ぬかと思った⋮。ヒールが使えて助かった⋮﹂
桃太郎のように、どんぶらこどんぶらこと川を流れる事一晩。
流れながら石やら岩やらに体を叩きつけられ続け、最後は大滝から
のダイブだ。
落ちる途中、突き出た岩に体をぶつけ、比喩ではなく血反吐を吐い
た。
滝つぼに叩きつけられた後は必死に陸を求めて泳ぎ、陸に上がって
回復魔法のヒールを使い、何とか一命を取り留めた。
そして肉体的にも精神的にも疲労してしまい、地面に倒れ込んだ今
へと至る。
﹁小3から水泳教室に行ってなければ、滝つぼに落ちた処で終わっ
てた⋮。ありがとう母さん﹂
カナヅチだとダメだという事で強制的に水泳教室に通わせてくれた
母さんに、今は心から感謝をしたい。
危うくゲームの世界に転生して一日目で、どざえもんエンドを迎え
るところだった。
それにしても自然は恐ろしい。
33
ウルフの攻撃ではダメージを受けなかったというのに、死ぬほど痛
い目に遭わされた。
﹁ヒールを使えなかったら、危なかったよなぁ﹂
セシリアが初級回復魔法のヒールを使えたからいい物の、そうでな
ければ⋮。
背中にゾッとした寒気が走り、自分の迂闊さを反省する。
セシリアに成った事とセシリアが強い事に浮かれて、慎重に行動を
しなかった。
これは反省するべき事だ。
﹁まずは、自分のステータスを確認しよう﹂
ステータスを把握して何が出来て何が出来ないかを確認だ。
まぁセシリアについては大体知ってるのだが念の為確認するべきだ
ろう。
ソードマスター
ステータスを確認する為にメニュー画面を開き、ステータスのタグ
を選ぶ。
◇セシリア・マリンズ
Lv60 年齢:22 職業:剣聖
HP:1050/1126
MP:320/400
力 :482
器用:294
体力:290
速さ:310
34
賢さ:182
精神:184
魅力:360
HPとMPが減ってるのは置いといて⋮。
ステータスを見て、改めて思う。
セシリア強いなぁ。
大体レベル60∼80くらいでメインストーリーをクリア出来る事
を考えれば、レベル60は破格の強さだ。
ステータスは前衛系で、本来剣聖が使えないヒールとファイアーボ
ールが使える。
なんだか魅力も本来の剣聖よりずっと高い。
チュートリアルの為に魔法をつけて、特殊部隊長だから魅力も上げ
ました。と言った感じだろうか。
﹁開発者、セシリアに関してはすんげ∼適当だなぁ⋮﹂
スキルや必殺技に関しても確認すると、それは剣聖に準拠している
ようだった。
職業剣聖、それは即ち剣を極めたジョブだ。
片手剣、両手剣はもちろん、二刀流で片手剣を両手に持つことも出
来る。
使える必殺技はもちろん剣技で、剣から衝撃波まで飛ばせるので中
距離もお任せだ。
剣聖の長所を思い出して、アイテム欄の装備品を確認する。
35
﹁よしっ! やはり剣処か武器その物がない!﹂
川に流される前から武器がないのはわかってたが、しっかり確認す
ると凹む。
今の僕は剣聖の力をほとんど全く発揮出来ないという事だ。
攻撃方法を問われたら、拳で殴るになるんだろう。
範囲魔法のファイアーボールが使えるが魔法威力に関係する賢さが
低い為、期待するのは危険だろう。
今の自分の状態を確認したので今後について考える。
これからのこの世界の流れとしては、3国での戦争が大きな物にな
って行き、国の存亡を賭けた戦いになるはずだ。
その中でゲームの主人公は成り上がり、英雄や国王、魔王等に成っ
て行く。
折角ゲームをやり込んで先を知っているのだし、その知識を元に今
後の行動方針を決めたい。
ワータイガードラゴニアン
3国と魔物の勢力について軽く思い返してみよう。
まずブルート連邦。
キャットピープル
亜人と人間の混合国家。
猫人の姫が代表を勤めており、リザードマン、虎人、竜人、エルフ、
ドワーフ等の亜人と人間が暮らす国。
次にアリストラス法国。
人間が全てを治めるべきと言うアリストラス教を掲げている国。
法王の聖女が国主を勤め、住民は人間オンリー。
36
最後にアルザード帝国。
若き皇帝が治める、実力至上主義の国だ。
亜人、人間問わず実力があれば認められ、軍備に力を入れる3国最
強国家だ。
おまけで魔物の勢力。
各地に追いやられた魔物、オーク、ゴブリンを始め、オーガ、ヴァ
ンパイア、ラミア等に加え、ドラゴンも入る。
基本的に各地に散らばって勝手に活動しており、主人公が魔王でも
目指さない限り徒党を組むことがない。
ファンタジー最強種とも言えるドラゴンもすでに2匹しか残ってお
らず、主人公が3国どれかに加わった場合、絶滅決定の可哀想な勢
力だ。
﹁さて、どこかの国に協力するか?﹂
元々セシリアは連邦の士官だが⋮。
連邦は人より亜人の方が有力で、種族が人間のセシリアは扱いが良
くなかったはずだ。
さらに進め方次第では各部族で争いが起きる仲の悪さ。
法国は宗教国家なので行きにくい。
なんとなく宗教怖いとか思う。
帝国は実力があれば居心地がいいんだろうけど、仕事が凄くきつそ
うだ。
ワーカーホリックは昔で懲りてるので遠慮したい。
そもそもセシリアって連邦の士官で、法国帝国の両方と戦った経験
37
があって、下手すると2国では賞金首とかになってるんでは?
ゲームではセシリアについてそういう情報はなかったが、両国の評
判はすこぶる悪いのではなかろうか。
下手に行けばスパイ扱いだろうし。
ならば連邦しかないのだが、そもそもステージ4は無茶な任務を振
られたせいで危機に陥った。
そう考えると連邦で厄介者扱いでもされてたのでは⋮。
悪い方向に考える始めると、どんどん良くない考えばかり募ってい
く。
﹁⋮だったら主人公に合流して、国建ち上げルートへ誘導するとか﹂
問題は主人公がどこにいるかわからない。
マルチストーリーだから、主人公の行く先に当てをつけて先まわり
も難しい⋮。
さらにステージ4をクリアしてから名前入力をするので、名前すら
わからない。
﹁⋮﹂
ゲーム知識があるのに、マルチストーリーのせいで歴史的な意味で
は役に立たない事が発覚。
遊んでる時はマルチ最高∼とか、ちょっと危なく聞こえる感想を持
ってたのに、今はマルチが恨めしい。
今後の行動方針を考えてもなかなか決まりそうにないので、装備で
も洗って気晴らしでもする事にした。
38
真剣に今後を考えてた訳だが、未だに素っ裸だったのだ。
アイテム欄から装備一式を取り出して洗おうと、半透明の画面を見
ながら装備出て来い∼と思っても、一向に出てこない。
あれですか、一々装備して外さないと出てこないのか。
イラっとしながら、鎧出て来いやぁと思ったら、鉄の鎧が空中に出
現して地面に落ちた。
﹁1個1個のアイテム毎に出て来いと思わないとダメなのか⋮﹂
だから着てた装備一式だと出てこなかったわけね。
しかし空中に出るのは勘弁して欲しい。
瓶のポーションとかだったら割れるじゃないか。気をつけよう。
出現した鎧を持とうとすると、妙に綺麗な事に気づく。
ぐるっと前面から背面まで鎧を確認すると、血糊処か汚れ一つない。
﹁アイテムボックスに入れると、新品の状態になる?﹂
正直とてもありがたい。
洗濯機もなく服とか洗濯したくなかったし、鎧の手入れとか正直さ
っぱりわからない。
水洗いして錆びました。では、目も当てられない。
鎧をアイテムボックスに戻し、ふぅと溜息をつきながら座り込む。
やる事もなくなったので再び今後について悩もうとしたが、一息つ
いたせいなのかお腹がぐぅぅと鳴った。
39
﹁はぁ∼、生きてるだけでお腹は空きますか﹂
よっと声を上げて立ち上がり、町を目指して歩くことにする。
サバイバル技術など持ち合わせていないので、このままでは空腹で
餓死してしまう。
﹁戦争も国も英雄も関係なく、お腹が空いたから行動とかってどう
なのかね∼﹂
行動する為に装備画面を出して、鉄の靴を頭の中で選びながら装備
すると思った瞬間、足には鉄の靴が履かれていた。
空腹に突き動かされ、足装備だけ装備して歩き出す。
何故足装備だけかと言うと、裸足で歩くと足が痛いからだ。
⋮⋮⋮問題は、そんな事ではないと解っているのだが⋮。
﹁街道に出るか、人を見かけるか、危ないと思ったら他の装備も着
込もう⋮﹂
誰に対する宣言か自分でもわからないが、足以外は裸で滝つぼの周
りの森へと歩を進める。
今の僕は柔らかぷにぷにの二つの双丘を、いつでも見たい触りたい
と夢中なのだ。
移動中は触らないとしても、ちょくちょく見るくらい良いじゃない
か。
僕は露出狂ではなく、ぷにぷにを常に見たいだけなのだ。
マップ画面を確認するのも忘れ、僕は森へと入って行った。
40
自分を見る、複数の視線に気づかずに⋮。
41
第4話 赤髪のイベント︵前書き︶
男子諸氏には、衝撃のシーンがあるので気をつけてください!
42
第4話 赤髪のイベント
昼間だというのに、薄暗い森の中を歩いて早30分位だろうか、認
めたくないが認めよう。
﹁遭難したか∼、そうなんですよ∼﹂
言わなかった事にしたい。
しかし、男は吐いた言葉は飲み込めない。
⋮かっこよく誤魔化しても余計虚しい。
腰を下ろした状態で、チョロロロという音が消えるのを待つ。
音がしなくなったら、足を伸ばして立つと同時に、手を上に上げて
伸びをする。
﹁ん∼∼、はぁ、迷子になって、尿意を催して外でしちゃうとは、
恥かしい﹂
恥ずかしいのは本当だが、女性としては初めての事で若干興奮した
わけですが。
ゲームの世界とは言え空腹に成るのだ。生理現象全般はあって当然
か。
﹁いやいや、中々可愛らしくてそそったぜ﹂
羞恥と興奮の狭間に居ると、僕の独り言に返事があった。
まずい。とうとう独り言スキルを極め昇華し、見えないお友達を作
43
り出したか。
僕はそんなにロンリーで、寂しがりではないはずだ。
仕事で朝から机に座ってパソコンに向かい、誰とも話さず1日を終
える1週間を数え切れないほど繰り返したくらいだ。
あれ、社会人になってからかなりぼっちだった?
自分の過去の惨状を思い返して涙していると、エアフレンド︵エア
ギターの友達版︶からさらに言葉を頂いた。
﹁こんな森の中で素っ裸で一人たぁ、襲ってくれって言ってるわけ
だよなぁ﹂
その言葉の内容に引っかかった。
いくら僕が性癖Mを自覚したとは言え、無理矢理願望はないはずだ。
そこまでハードなのは、もう少し慣れてから⋮いやいやいや。
項垂れてた頭を上げて回りを確認すると、ぼろぼろの服を着た男が
5人ほど僕を囲んでいた。
﹁あんたら、だれ?﹂
﹁あん? 俺たちゃこの辺りを縄張りにしてる盗賊様よ。げへへへ﹂
先頭のヒゲ親父の言葉に、僕は二重の意味で安心する。
ウルフ戦で学んだ事を生かす為、ヒゲ親父に視線をあわせ確認する。
◇盗賊A
HP:??/??
44
MP:??/??
しっかりと盗賊と確認できたので、ホッと息を吐く。
カオスブレードにも、ファンタジーでお約束の盗賊、山賊、海賊が
登場する。
こいつらの敵としてのレベルは、1∼20。
賊を束ねるお頭が、5∼25レベルだ。
こいつらのゲームでの役割は、ギルドで討伐クエストを受けて資金
稼ぎのカモにする。
仲間になった低レベルのキャラの育成の為のカモにする。
ストレス発散のカモにする。
等々実に素晴らしい、カモ・オブ・ザ・カモなのだ。
基本的に盗賊系は、レベルアップ時のステータス上昇の期待値が低
いので、実に安心出来る敵NPCだ。
それよりも重要なもう一つの安心の理由。
﹁エアフレンドじゃなくてよかった。ぐすんっ。もう僕はダメかと
思った分、安心した﹂
僕の様子を見て、ヒゲ親父その他が引き気味の引き攣った顔をして
いる。
森の中で裸の美女が訳解らない事を言って涙ぐんでたら、僕ならド
ン引きして回れ右だ。
﹁ちっ、泉から遠めで確認してたが、やっぱ頭のイカレタ奴だった
か﹂
45
こいつらまさか、滝つぼでのんびりしてた時から僕を見てたのか⋮?
胸の内から、無性に怒りが湧いてくるのを感じる。
﹁お前ら、僕の裸を見るとは許せない!﹂
﹁頭は残念なようだが、こんな美女が裸ならなぁ、見るのが礼儀っ
てもんだろぉ。なぁ?﹂
ヒゲ親父の言葉に、残りの男達が下卑た笑いで同意を示す。
確かに、僕ことセシリア程の美女が裸なら、見たくなるのが男の性
だ。
だが実際見ることが出来るのは、女性に免疫がある奴だけだろう。
僕なら見たい心を紳士な精神で包み、決して知らない女性の裸を見
ないはずだ。
だからこそ、裸になって自分で自分を見てたと言うのに!
こいつら、許せん。
まず僕のセシリアボディを視線から守る為、装備を付けることにす
る。
強く装備と意識すると、メニュー画面をすっ飛ばして装備画面が現
れる。
装備画面から順番にショーツ、ズボン、上着と選んでいく。
﹁っと、ブラジャー忘れた。おや、後から選んでもちゃんと着れる
んだ﹂
46
ブラジャーなんて、男の時には要らなかったので、先に上着を着て
しまったが問題ないようだった。
きちんとブラジャーを付けているのを確認したら、鎧と手甲も装備
する。
﹁な、なんだ? 急に鎧を着た? 魔法か?﹂
手品のように一瞬にして、服や鎧を装備した僕に驚いているようだ。
この世界では、装備画面からの着脱は僕だけの特別な能力なのかな。
﹁まぁいい。大人しくすりゃぁ命だけは助けてやるからよ。へへ﹂
腰の剣も抜かずに、ヒゲ親父が無遠慮に近づいてくる。
ハッハッハ∼、僕の裸を見た罰として、お仕置きしちゃうぞ∼。
﹁えいっ﹂
﹁ぎゃぁぁぁあぁあぁっぁあぁぁ﹂
警戒もせずに近寄ってきていたヒゲ親父の股間目掛けて、蹴りをし
てあげました。てへ。
絶叫を上げて倒れこんだヒゲ親父は、股間を両手で押さえて顔から
汗をだらだら流し、目から涙を溢れさせながらビクビク震えている。
気絶しているわけではなく、ヒッヒッヒッと声がするので、痛みに
耐えているようだ。
﹁ちょ、お前⋮そりゃひでぇ﹂﹁鬼だ、悪魔だ⋮﹂﹁慈悲ってもん
がねぇのか⋮﹂
47
周りの男達が、それぞれ自分の股間を手で抑えながら僕を非難して
くる。
ちょっとしたお仕置きのつもりだったのだが、倒れてるヒゲ親父を
見ると⋮。
うん、ごめん。正直悪かった。
元男として僕も思う処があるので、回復してあげることにする。
ヒゲ親父の横に膝を着いて、ヒールを唱える。
﹁ヒール、ヒール﹂
2回ほど唱えると、ヒゲ親父の顔が和らいでいく。
肉体的には癒されたかもしれないが、精神的に大ダメージだったの
か、まだ動けないようだ。
回復が終わって立ち上がるついでに、ヒゲ親父の腰の剣をすっと抜
いて手に持った。
﹁てめぇ、やろうってのか﹂
さすがに武器を持った僕に対し、ヒゲ親父を除いた4人の盗賊が警
戒する。
たぶん戦っても負けないだろうけど、今の僕は少量の経験値とかよ
り欲しい物がある。
何より、まだ人を斬る覚悟がなかったし。
と言う訳で、前方を囲んでる男達に背中を向けて、後ろの木々目掛
48
けて剣を振る。
﹁疾風剣!﹂
剣に特性があるジョブが、20∼30レベル帯で覚える必殺技だ。
剣聖の場合はレベル5で覚えるわけですが。
自分から直線5マス先までの敵にダメージを与える、便利な剣技で
す。
縦に振り抜いた剣からは、蒼い疾風の風が飛び出し、木々を裂いて
いく。
少し経つと、バギバギバギと音を鳴らして何本かの木が倒れた。
示威行動と必殺技の実験だったんだけど、上手く出てよかった。
静かになった後ろを振り返り、笑顔で質問してみる。
﹁僕と戦ってみる?﹂
言った瞬間、男達は武器を投げ捨て両手を挙げる。
﹁僕さぁ、お腹空いてるんだよね。食べ物くれないかな?﹂
笑顔のまま希望を伝えると、コクコクと何度も頭を振って答えてく
れた。
社会人2年目で学んだ、契約は笑顔で押し通すが役に立ったな。
﹁ね∼、まだぁ?﹂
49
﹁へっへっへ、もうすぐでさぁ﹂
手持ちの食料がないという事で、男達のアジトへ向かい歩いている。
金的が効いたのか、ヒゲ親父は凄い下手で案内してくれる。
ヒールをかけて立ち直った後、女神様とか言われたからヒールが効
いたのかもしれない。
ヒールをする事になった原因が、僕だという事を失念してそうだっ
たな。
ヒゲ親父以外は、先に向かって用意すると言う事で一緒にいない。
暫く歩くと森が開け、中々立派な砦が現れた。
﹁ここが俺らのアジトでさぁ﹂
﹁へぇ、立派だねぇ﹂
小さいながら、石作りで実に立派だ。
ゲームの時は思わなかったが、こんな立派な砦を作れるなら、土建
関係で堅気の仕事すりゃいいのに。
ヒゲ親父に先導され、門を潜ると︱︱20人くらいの男達が、僕と
ヒゲ親父を囲むように立っていました。
﹁な、なんだおめぇら。これはどういう事だ﹂
ヒゲ親父が動揺している所を見ると、この状況になる事を知らなか
ったようだ。
50
これはどう考えても、先に戻ってた男達が用意した罠ですね。
﹁なんだじゃないよ。あんたこそ、そいつから離れてさっさとこっ
ち来な﹂
僕が状況に納得していると、男達の後から赤毛の少女が現れた。
肩くらいまである赤髪を、乱暴にバンダナでまとめた少女。
日本で見かける染めた赤ではなく、きっちりかっちり真っ赤っか。
周りの男達に比べれば、幾分上質な服を着て居るが、鎧などは見か
けられない。
﹁姐さん、この人は女神様なんだ。乱暴はしないでくだせぇ﹂
﹁バカ言ってんじゃないよ。盗賊家業は舐められたら終わりなんだ
よ﹂
僕が少女を観察してる間も、着々と会話は進んでいた。
背が推定150∼160、胸が貧乳、赤い髪に青い目の盗賊⋮。
どこかで見た覚えがあると、むむむと唸り記憶を取り出そうとする。
﹁おい、あんた、あたしと勝負しな﹂
唐突に腰に差した短剣を抜き、その先を僕へ向けてきた。
吃驚して少女を見たら、ポンッとウィンドウが目の前に出た。
︹盗賊エインと決闘 受けますか?︺
51
Yes
No
それはゲームでお馴染みの、選択肢。
そして、表示された名前を見て思い出した。
盗賊エイン。
大陸の南東にある帝国内で現れる盗賊で、仲間に出来るNPCだ。
盗賊を仲間にしてもなぁと言うことで、僕は初プレイ以降放置して
たキャラだ。
決闘で勝つと仲間になり、決闘を受けないと身包み剥がされ町に返
される。
昔過ぎて記憶もあやふやだが、多分そんな感じだった。
﹁さぁ、どうするんだい? ビビッて怖気づいちまったかい?﹂
正直、まだ仲間とか考えておらず、ゲームのイベントにも関わるか
決めてない。
しかし無常にも﹃ぎゅるぅぅ﹄と、僕のお腹は訴えてくる。
背に腹はかえられぬ。
﹁僕が決闘に勝ったら、食べ物くれないかな?﹂
初プレイの僕すら勝てたのだ。
セシリアな僕が、盗賊エインに負けるはずはない。
お頭クラスとしても、精々最大レベル25だろうし。
﹁はん! 勝てたら食い物でも何でもくれてやるよっ!﹂
52
了承を貰った瞬間、選択肢のウィンドウが消えた。
話の流れで、Yesを選んだ事になって消えたのかな?
さて、決闘の前に言わなきゃいけない事がある。
﹁えー、君達、こんな小さな少女に従ってて、何か疑問に思わんの
か﹂
周りに群れてる男達に向かい問いかける。
ゲームだと気づかないが、大の男達が見た目15,6の少女に従っ
ているのは違和感ありすぎる。
僕の問いかけに、男達はしかめっ面をした。
彼らも多少は疑問に思ってたんだろう。
﹁あたしがこいつらより強いから、従うのは当然なんだよっ!﹂
エインが言葉と共に、短剣を向けて突撃してきた。
僕は咄嗟に、前に居たヒゲ親父を横に移動させ︱︱咄嗟だったせい
か吹き飛ばしてしまったが︱︱エインに対して身構える。
ヒゲ親父から奪った片手剣は、移動中にアイテムボックスに入れた
ままだ。
ゲームだとHP0にして降参させた気がするが、この世界でHP0
にして無事かわからない。
イベントっぽいから無事かもしれないけど、最悪死んでしまうかも
しれない。
53
と言う訳で、手加減する為素手︵手甲付き︶で迎え撃つ。
真っ直ぐ僕を目掛けて突き出された短剣を、左手の手甲部分で弾く。
エインは弾かれた勢いを利用して、体を回転させながら左足で蹴り
を放ってくる。
﹁ぐっ﹂
蹴りを太ももに喰らい、思わず声を出すが痛くない。
﹁あんた、中々やるようだね﹂
蹴りの後に距離をとったエインは、笑いながら凄んでくるが⋮。
今のやり取りで確信した。
こやつ、ウルフ並みの雑魚だ。
刃物は怖いから避けたが、試しに食らった蹴りはノーダメージ。
動きも大して早くないし、なんとなく殴ったら動かなくなりそうな
イメージだ。
﹁はっ!﹂
先程と同じく、エインが掛け声と共に突撃してきて、右手で短剣を
突き出す。
その右手を左手で掴み押さえつける。
グーで殴るとまずそうだから⋮パーでビンタしてみよう。
﹁えい﹂
54
﹁ふぎゃぁぁ!?﹂
軽く叩いたつもりが、盛大に見学してた男達の輪へ吹っ飛んだ。
ゲームでは、手加減なんてコマンドなかったしなぁ。アハハハ⋮ハ
⋮。
やっちまった感を多大に感じつつ、吹き飛んだエインを見ると、健
気にも立ち上がろうとしていた。
﹁姐さん、がんばれ!﹂﹁立て、立つんだ。お頭﹂﹁駄目そうなら
無理すんじゃねぇぞ﹂
ギャラリーから様々な声援が飛んでいる。
その様子を見る限りあれか、この人達、従ってるんじゃなくて実は
保護者的に見守ってたようだ。
﹁うぐぐ、ぐすっ﹂
泣きながら決闘を再開しようとする少女の姿に、物凄い罪悪感を覚
える。
僕には、少女を苛めて喜ぶような趣味はないのだ。
さり気無く周りを見ると、こっそりと体を張って止めに入ろうと武
器を構えてる人が数人。
これ、完全に僕が悪者じゃん⋮。
﹁はぁ∼∼∼﹂
55
深い溜息をつきながら、エインに向かって手を向けてヒールを唱え
る。
少し距離があったが、ちゃんと発動したようだ。
ゲームでのヒールの素の射程は2マスだったしな。
エインは最初ビクっと体を震わせていたが、怪我が治っていくと疑
問顔になる。
﹁な、なんで?﹂
﹁あ∼、少女を痛めつける趣味はないし⋮これ以上は無理。僕の負
け﹂
両手を挙げて降参をアピールすると、意外な事が起こった。
﹁なんて優しい女性だ!﹂﹁慈悲深い方だ!﹂﹁結婚してくれ!﹂
最後だけ聞き捨てならんが、それ以外は僕に向かって感動の声が上
がる。
よく見ればエインも感動したのか、目をうるうるしていた。
﹁姐さん、言っただろ。この人は女神様だ﹂
﹁そうだね。こんなに優しくされたのは初めてだ⋮。勝負はあたし
の負けだ﹂
ヒゲ親父がエインの横に現れて、諭すように言っている。
さっき咄嗟に吹き飛ばしたが、無事だったようだ。
56
﹁確かあんたが勝った場合は食い物が欲しいんだったか⋮。お前ら
! 酒と食料をありったけ持ってきな。今日は女神様を歓迎する宴
だ!﹂
﹁﹁﹁わかりやしたぁ!﹂﹂﹂
何故か決闘の負けを宣言し、僕は女神扱いされた上に歓迎の宴が開
かれるようだ。
ヒゲ親父もエインも感動するのはいいんだけど、感動する前の怪我
を負わせたのは僕なんだが⋮。
なんだかんだと訳が解らないうちに、宴の準備が進められ、肉の塊
やお酒が用意されていく。
色々とこの流れに疑問はあったが、空腹の僕は歓迎の宴で大いに食
べて大いに飲んだ。
日も沈んで暗くなっても宴は続いたが、久しぶりの暴飲暴食で眠気
に勝てず、僕は砦の客室に案内してもらい寝る事にした。
鎧と手甲と靴を仕舞い、意外と綺麗なベッドに横になるとすぐに眠
ってしまった。
周りが自分より弱い事と、久しぶりの酒で気持ち良くなり油断して
たんだろう。
57
まだ暗い夜の中ふと目が覚めると、寝てる僕を跨ぐ様に誰かが居た
のだから。
58
第4話 赤髪のイベント︵後書き︶
次話は、サービスサービス∼。
⋮言ってみたかっただけです。
誤字脱字の指摘、感想等、お待ちしておりま∼す。
59
第5話 赤髪のイベント2
気持ちよく眠っていると、チュパチュパとした水音が聞こえた気が
した。
音が気になって、うっすら目を開ける。
深酒で頭がボーとするせいか、それともまだ深夜で暗いせいか辺り
が良く見えない。
チュ⋮ペロペロ⋮チュゥ⋮
音がかなり近い場所から聞こえてくるので、眠さに負けず目を凝ら
す。
目を凝らすと、自分の胸の上にもさもさした何かが動いていた。
そのもさもさが動くたびに、ペロペロチュパチュパ音がなる。
まさかお化け!?
ファンタジーだからって、お化けとかいらんとですよ!
二日酔いの頭で僕が戦々恐々としていると、もさもさお化けが顔の
方に来て頬をペロッと舐めていった。
﹁ひぃ﹂
﹁あら、お姉様、目が覚めました?﹂
驚いて声を上げたら、もさもさお化けから返事があった。
60
ビクビクしながら、もさもさお化けを良く見ると⋮。
﹁えーと、エインさん⋮何してるんですか?﹂
その顔は昼間戦った盗賊エイン。
バンダナで髪を上げてないので普通の少女に見えるが、確かにエイ
ンだ。
﹁初めてあたしが負けたお姉様に、あたしの初めてを捧げようと思
って⋮ポッ﹂
喋り方変わってますよ。と言うツッコミを言う余裕もなく、突然の
事態に頭がパニックだ。
だってエインはもちろん、僕もいつの間にか裸だったんだから。
決闘後にそんなイベントがあった気もする⋮。
一応大人向けゲームだから、そういうイベントもどこかであるので
はと期待してたが、僕は年下萌えでも貧乳属性でも⋮貧乳は好きだ
が、今は巨乳一押しなのだ。だから、こういうのはまだ早いって言
うか。
僕が内心あわあわパニくっていると、エインが僕の頬に手を当てて
優しく語りかけてきた。
﹁お姉様、あたしが気持ち良くしてさし上げますね﹂
昼間の姉御口調と打って変わり、凄い丁寧な口調で喋ってる。
61
こ、これがギャップ萌えか。と驚愕しつつ、僕は未知の世界へと誘
われた。
チュ、チュ、チュゥ。
エインが、僕の右胸の乳首を口で吸いながら、左の胸を手で優しく
揉んでくる。
自分で触った時と違い、次にどう触れるか分からなくて先読みでき
ない分、より気持ちよく感じる。
﹁はむ、んんんん、チュゥゥ﹂
﹁あぁぁあん、いいぃ﹂
乳首を噛まれながら歯でこね回され、最後はバキュームの様に吸わ
れ引っ張られる。
その間反対の乳首は、手で摘まれてクニクニ動かされ、口のバキュ
ームに合わせる様に同時に引っ張られた。
﹁ふふ、お姉様は乳首を弄られるのが大好きなんですね﹂
唾液で唇を濡らしながら、妖艶な笑顔で語りかけてくる。
月明かりに照らされて反射する唇が、妙に艶やかだ。
僕が何も返事をしないと、エインも黙って僕の胸を舐めだした。
62
先程と違って、乳首ではなく乳輪を執拗に舐めてくる。
手の方も胸を揉んだりするだけで、乳首には一切触れない。
ペチャペチャペチャ。
静かな夜に、エインが舐める音だけが響く。
﹁ん、ふぅ、はぁ﹂
気持ち良さで声が出るけど⋮。
暫く乳輪と胸を揉まれる時間が続き、耐える時間が続く。
﹁お姉様、お辛そうですね﹂
﹁ハァハァ、んっ、ハァ﹂
舐めるのを辞めて、エインが心配そうに僕を見てくる。
心配そうに見てた顔が、今度は優しい笑顔になる。
﹁お姉様、どうして欲しいか仰ると楽になりますよ﹂
そう言われても、それを言うのは凄く恥かしい。
誰かに自分の体を弄られるのなんて初めてだし、自分の弄ってほし
い場所を言うなんて⋮。
僕が羞恥で口を閉ざしていると、唐突にエインが髪を掻き揚げ明後
日の方を向いた。
﹁あたしがお姉様にしてあげられそうな事がないので、部屋に戻り
ますね﹂
63
そう言うと、僕の上から体をどけてベッドを降りようとする。
それに焦って、僕は急いで声を出す。
﹁ち、乳首、乳首を引っ張ったり噛んだり弄って欲しいのっ!﹂
﹁任せて下さい。お姉さ、まっ!﹂
言葉と同時に、エインは僕の乳首を両手で摘み、捻りながら思い切
り引っ張った。
﹁あぁぁぁあぁ、いいぃ、イク、イクゥ、イッチャウゥ﹂
乳首を引っ張り持ち上げられたまま、全身に痺れる様な快感が走り
続け、体を震わせながら僕は絶頂を迎えた。
﹁ハァハァハァハァ﹂
﹁うふふ、お姉様、まだ夜は長いですよ﹂
僕が余韻に浸っていると、エインは耳元でそう呟いた。
﹁そ、そこは恥かしいよ﹂
﹁あら、お姉様、ここは初めてですか?﹂
余韻に浸っていたら、エインは僕の脚を広げて股の間に移動したの
だ。
64
僕が顔だけ動かしてYESの返事を示すと、エインはパァァッと破
顔した。
﹁まぁ、あたしもです。一緒ですね﹂
﹁えぇ、あんなに慣れてそうなのに?﹂
自然と返した疑問に、膨れっ面で返事が返ってきた。
﹁自分で触ったことはありますが、誰かとするのは初めてですよ。
そんな事言うお姉様なんて、チュ﹂
﹁ひゃぅ﹂
エインが突然、僕の股間に顔を埋めて舐めてきたので、反射的に脚
を閉じて挟んでしまった。
脚で挟まれてるにもかかわらず、僕の秘所を舐め続ける。
そのゾワリと全身で感じるような快感に、閉じてた脚も徐々に力が
抜ける。
﹁チュウゥ、あむ、ぺろっぺろっ⋮お姉様、もう脚で挟まないで良
いんですか?﹂
エインが何か言ってくるが、気持ち良くて頭に入らない。
﹁下も金髪で綺麗ですね。洪水みたいに濡れて⋮喜んでくれて嬉し
いです﹂
65
﹁あぁぁ、んん、はぁぁあん﹂
﹁待ちきれませんか﹂
では、行きますね。と聞こえたような気がした瞬間、僕の中に何か
が入ってきた。
﹁やぁ、何、怖い﹂
﹁大丈夫ですよ。お姉様。少し指を入れただけです﹂
僕のお腹に優しく左手を置きながら、大丈夫大丈夫と撫でてくれた。
入った異物感にも慣れた頃、ソレはゆっくり動き始めた。
反射的にビクっと体を震わせると、先程と同じ様に大丈夫と言いな
がらお腹を撫でてくる。
徐々にソレの動きが早くなり、自然と僕の息遣いも荒くなる。
ジュプジュプジュプジュプと鳴る水音がしっかり聞こえる。
﹁ハァハァハァァァン、ジュプジュプいいのぉ﹂
﹁じゃあもっと動かしますね﹂
ジュプジュプジュプジュプジュプジュプジュプジュプ。
リズミカルに鳴る音にあわせて、僕の膣内もヒクヒク動いて痙攣し
そうな快感が生まれる。
息も絶え絶えになってると、いきなり中を思い切り押し上げるよう
66
に突き上げられた。
﹁アァァァアアアアッァ⋮⋮﹂
初めて膣を弄られた快感に耐えられず、僕はそのまま意識を失った。
﹁お姉様、気持ちよかったですか? ⋮気絶するほどですか。⋮お
姉様本当に初めてだったんですね。うふふ、お姉様の初めてを奪え
て、嬉しい﹂
朝起きたら、ベッドの上には僕しかおらず、あれは夢だったのかと
思ったのだが⋮。
シーツの上には、昨夜の事が夢ではないと示す純潔の証が広がって
いた。
﹁は、初めてを年下にリードされっぱなしで終わるとか。しかも僕
だけ気持ち良くなって⋮﹂
思い出しても恥かしい。
初エッチという感動より、純粋に恥かしさで身悶えてしまう。
﹁初めてでも気持ち良く成れてよかったと思おう。うん﹂
何の解決にもなってないが、そう決め付けて昨夜の事はこれ以上考
えない。
67
ようにした処で、次々と頭の中では昨日の痴態と気持ち良さが蘇る。
走りたくなる衝動を押さえ、部屋の椅子の上に畳んであった自分の
服を掴みアイテムボックスに入れ、即フル装備になる。
そして衝動のままに走り出そうと外へ行くと︱︱盗賊達が正座をし
て並んでいた。
正座したままの多数の視線に睨まれて、混乱しながら質問する。
﹁あ、あ、えっと、僕が何かしましたか!?﹂
昨日確かにナニはしたかもしれないけど、それ以外は何もしてない。
それが決定的に問題だと思うけど、自分から言うことじゃないと思
う。
混乱したままの僕の背中から、昨夜の声が飛んで来た。
﹁お姉様に、お頭になって貰うって皆で決めたんです。そうだな!
お前ら!﹂
﹁﹁﹁へい!﹂﹂﹂
﹁はぁ!?﹂
なんとなくエインが仲間になりそうな気はしていたが、盗賊団丸ご
とは予想外だ。
さらにお頭とかは遠慮したい。
何故かって?
盗賊団なんて、潜在能力この世界最強の主人公のカモにされるか、
68
はたまた冒険者や傭兵団、国の軍隊に狙われるだけだ。
育った主人公だけじゃなく、冒険者や国の要人でセシリアより強い
奴は確実に居るのだ。
﹁お姉様、よろしくお願いします!﹂
﹁﹁﹁よろしくお願いします!!!﹂﹂﹂
﹁ま、待って、僕の話を聞いてくれ!﹂
この世界で初めて、僕は心から真剣に行動した。
盗賊のお頭にならない為に。
69
第6話 僕だけの特別♪
僕とエインは、砦から出て行く最後の一行を見送る
﹁お前ら∼、達者で暮らすんだぞ∼﹂
﹁お頭に姐御も、お元気で∼﹂
エインと元盗賊達が元気に声を張り上げ別れを済ます間、僕は力な
く手だけ振り続けた。
お頭回避の説得は大変だった。
まず、盗賊をする事の危険性を理解するまで説いた。
盗賊なんて、冒険者や傭兵にしたらカモだと。
勝手に宝を溜め込んで、討伐依頼を受ければ報酬まで貰える宝箱扱
いだと。
危険を納得して貰ったら、次は別の生活をする方法だ。
盗賊辞めろだけじゃあ、その後生きていけない。
僕はゲーム知識を活用し、冒険者ギルドで割と安全に取れる薬草等
を納品するクエストや、簡単な街中だけのお使いクエストの事を説
明した。
大多数は、そんな簡単なのがあるのかと驚きつつ納得してくれた。
納得できなかった奴らは、こんな砦作れるんだから土建の仕事をせ
い!とファンタジー的には夢も希望もないリアルな職を薦め納得し
70
て貰った。
この石造りの砦は、聞いたら本当に彼らが作ったという⋮。
何故盗賊をしてたんだ⋮。
その後、残った食料と金目の物︵凄く少なかった︶を全員で分けて、
各自町を目指して旅立ったと言うわけだ。
﹁はぁぁ∼∼∼∼∼﹂
﹁お姉様、溜息をつくと幸せが逃げますよ?﹂
エインは当然のように僕と残った。
昨日まではエインを仲間にするのは悩んでいたが、今は仲間にする
気満々だ。
﹁一度のエッチで好きになるとか⋮。もしや僕って伝説のちょろい
ん!?﹂
﹁? お姉様、皆も行ったし、中で休みませんか?﹂
僕は自分のチョロさに苦悩しつつ、エインに手を引かれ砦の中へと
入っていった。
砦に入ったら裸でベッドの上に居た。何を言ってるかわからないと
思うが僕も⋮って、まぁナニしたと言うかされたと言うか⋮。
部屋に入ったらエインが突然﹁ようやく二人きりですね﹂って言っ
て襲ってきたのだ。
71
鎧やら手甲を器用に外され、またも弄られるままにイカされた。
日本で予習をばっちりしてた僕なので、次こそは僕がリードする!
と決意してたのに⋮。
予習内容が、自分が男の場合だったのがダメだったのか、僕が単に
ヘタレなのか⋮。
現在、僕を襲った犯人は椅子に座って優雅にお茶、ではなく水を飲
んでる。
仕返しとばかりに、裸で居るエインをジロジロ凝視してやる。
お椀型の手に納まりそうな小さな胸がとてもおいし⋮いや、可愛ら
しい。
そこから目を下にやると⋮まさか生えてない!?
驚愕の事実にドキドキワクワクしていると、下半身にぶるっと寒気
がした。
﹁ちょっとトイレ行ってくる﹂
﹁は∼い、いってらっしゃ∼い﹂
笑顔で見送ってくれるエインに、次こそは!と心に誓いながらトイ
レへ向かった。
宴の夜からお世話になってるトイレだ。
中世モデルのファンタジーにしてはかなり清潔だ。
72
穴を掘ってその上に穴の空いた板を置いた簡易なものなのだが、そ
れで終わりじゃない。
その穴に、清浄の石と言うのが入っているのだとか。
清浄の石というのは、人の出した物をすぐに綺麗な土へと還すらし
い。
そのおかげか、トイレは変な匂い等はせずむしろ空気が澄んでる気
さえする。
ちなみに土が貯まったら、また穴を掘って石ごと再利用可能なんだ
とか。
﹁ゲームの時には、トイレの描写なんてなかったからなぁ﹂
ファンタジーのゲーム等でトイレ事情とか見たことないからな。
裏設定的なトイレ事情に感心しつつ、股間に手を持って行きおしっ
こをしようとするが︱︱手はスカッと空を切る。
﹁そうだった⋮。すでに我が相棒は居ないのだった⋮﹂
22年間培った癖で、既に何回かこの体でしてると言うのに手は相
棒を求めてしまう。
立ったまま穴へ向かって小水を出しながら、相棒の事を想う。
﹁未使用で逝ってしまったお前の分も、僕は色々頑張るからな⋮﹂
それにしても、立ったまま裸でおしっこするのはゾクゾクして気持
ちよかった。
73
部屋に戻ると、椅子に座って色々と必要な事を考える。
エインは椅子に座ってニコニコしながら僕を見ている。
明確に思い出せない記憶だが、エッチイベント後にこんなに良い子
になったっけか?
バンダナもしてないし、喋り方も丁寧だし⋮。
主人公が男で僕が女だから対応が違うのか、それともこの世界だと
ゲームの時と対応が違うのか、考えてもわからない。
⋮目の前の人に直接聞けばいいんじゃないか?
﹁ねぇエイン、バンダナしてないし、喋り方も違うけど、なんで?﹂
﹁バンダナも喋り方も、男に舐められないように迫力出す為にして
ただけです。こっちが素ですよ﹂
なるほど。
これまたゲームでは見なかった裏設定的な事を知れた。
ゲームの場合主人公が男だったので、そのままだったわけか。
ついでとばかりに色々聞こう。
﹁アイテムボックスってわかる?﹂
ゲームでは当たり前にあるアイテム無尽蔵収納機能だが、この世界
にもあるんだろうか。
74
﹁アイテムを仕舞っておく調度品の事ですか?﹂
﹁そうじゃなくて、こうやって服とかを仕舞う空間⋮かな?﹂
僕は落ちてた上着を手に持って、エインの目の前でアイテムボック
スへ収納した。
﹁え? 服が消えた? え?﹂
一瞬で服が目の前から消えた事に混乱している。
どうやらこの世界の人にはアイテムボックスは使えないようだ。
主人公辺りは、もしかしたら使えるかもしれないが。
﹁あと、こんな事出来たりする?﹂
﹁え? あれ? いつ服を着たんですか?﹂
収納した上着を装備画面から着てみたが、それにも驚いたようだ。
ゲームの機能が使えるのは、僕だけっぽいな。
もっと直接的に聞いてみよう。
﹁ここに半透明の何かが見えない? それと、僕みたいにいきなり
物を消したり服を着たり出来る人って聞いた事ある?﹂
﹁はぁ? お姉様の豊かな胸が見えるだけですが⋮。いきなり物を
消したり服を着る人は聞いたことありません。秘匿された魔法とか
ですか?﹂
ウィンドウは見えないし、僕と同じ様なゲーム機能を使える人も知
75
らないようだ。
ふふふふふ、僕だけの特別能力。
なんて素敵で心くすぐる言葉だろう。
﹁お姉様の特別な能力なんですか。すごいですね﹂
どうやら思った事が声に出ていたようだ。
自分の独り言スキルの高さを再確認しつつ、今後痛い人扱いされな
い為に気をつけよう。
仕事の時隣に座ってた同僚が、ずっとぶつぶつ独り言いってて怖い
と言ってたからな。
上着を収納して椅子に座りなおす。
何故上着を仕舞ったかと言うと、乳首が微妙に擦れてチクチク痛い
からだ。
ブラジャーって胸の形を整える為の物かと思ってたが、乳首が擦れ
るのを守る為でもあるのかもしれない。
じゃあ、ブラジャー付けろよとかツッコまれそうだが、それには胸
を張って答えよう。
着るのと脱ぐのを選ぶなら、今の僕は間違いなく脱ぐ方を選ぶ!
だって巨乳が見れるんだから。
﹁お姉様、考え事終わりました?﹂
僕が裸のジャスティスを脳内で語ろうとしていたら、エインが笑顔
で質問してきた。
76
﹁まだ考えなきゃいけない事はあるけど、どうした?﹂
﹁まだでしたか⋮。でも休憩も必要ですよね。えいっ♪﹂
エインはテーブルの反対側から、僕の乳首を摘んで引っ張って来た。
まだ君のステータス確認や方針やら転職やら装備やら考えなきゃい
けないのに、何をするんだこの子は。
﹁ひゃ、まだ考えなきゃいけない事、いたっ、わ、わかった、わか
ったから引っ張らないでぇ﹂
僕が止めようと口にすると、乳首を思い切り引っ張ってベッドの方
へ誘導しようとする。
﹁ちゃんと休憩しないと、良い考えも浮かびませんよ?﹂
優しく諭すように言いながら、乳首を摘んだまま僕をベッドの上に
押し倒した。
きゅ、休憩って言うのはホテルの休憩的なアレですかぁぁ。
またしても僕は、エインに弄られるままにヤられてしまった。
ベッドで横になりながら、椅子に座ってお茶⋮ではなく水を飲むエ
インを見つめる。
既視感を感じるまでもなく、さっき見た光景だよこんちくしょう。
77
今度は僕がリードするとか思ってた気もしたが、気持ち良くなって
くると弄られるままにされてしまう。
もし相棒が居れば、舐めろとか咥えろとか言ってリード出来たはず
だ。⋮たぶん。
僕がされるがままになるのも、セシリアのナイスボディがいけない。
男と違って気持ち良さが相棒に集中するんではなく、胸揉まれたり
乳輪触れらたり乳首摘まれたり、秘所のお肉をさわさわされたり膣
をジュプジュプされたりと、全てが別々の気持ち良さがあり、同時
に相乗効果があって快感に溺れてしまう。
﹁あ、そうなんですか。じゃあ次は今言われた場所を重点的にしま
すね﹂
今言った場所以外あるのか!?
と驚いてる場合ではなく、どうやらまた考えがどこからか不明だが
独り言として漏れたようだ。
僕の独り言は早めに治さないと、致命的な事が起きそうな気がして
きたぞ。
僕は疲労でぐったりしてるのに、エインは顔がつやつやしてる気が
する。
笑顔の彼女は置いといて、メニュー画面を開きパーティーを選ぶ。
ゲームと同じで、仲間になったキャラはここに名前が出るようだ。
エインの名前を意識で選び、ステータス画面を開く。
◇エイン
78
Lv5 年齢:15 職業:盗賊
HP:47/47
MP:16/16
力 :10
器用:16
体力:11+1
速さ:22
賢さ:5
精神:10
魅力:11+1
年齢15だとぅ!?
7つも年下に手玉に取られ⋮い、いや、今はそれは置いておこう。
パッケージには出演するキャラクターは全員成人です。みたいに書
いてたしな。
地球年齢に直すと成人だろう。きっとそうだ。
それより、ステータスが全体的に低い。
レベル5と言うのを差し引いてもだ。
ビ、ビンタを凄く手加減して良かった。
色々と吃驚ステータスで気づかなかったが、じっくり見てると気に
なる事が何個かあった。
ゲームの時は仲間になるとレベル1になってたが、そうじゃないん
だな。
敵の時は高レベルが、仲間に成るとレベル1と言うお約束はないら
しい。
と言うことは、これから会うキャラクター達は主人公の仲間でもゲ
79
ーム時の敵としてのレベルなわけか。
メインストーリー中最強のレベル80の帝国皇帝には特に気をつけ
よう。
後は体力と魅力に+1ついてるけどなんでだ?
今は真っ裸で装備補正ではないだろうし。
う∼んと悩んでいると、ステータス画面の称号と言うボタンが目に
入った。
カオスブレードには色々な称号があって、取得すればボーナスが付
く物もあった。
例えばゴブリンキラーって称号は、連続でゴブリン100匹連続で
倒すと取得できて、ゴブリンに対してクリティカルが発動しやすく
なる。
男心を熱くするドラゴンキラー、所謂竜殺しもあるが⋮。現在する
ドラゴンが2匹な上に、取得するにはワームと言われるレベル40
前後の巨大ミミズ︵下等な竜属性モンスターらしい︶を100匹連
続で倒す必要がある。
手間の割りに、ミミズ以外のドラゴン無双が出来ないので取得した
ことはない。
エインの称号を確認しようと、称号ボタンを選ぶ。
そこには一つだけ、お頭という称号があった。
説明を見ようとお頭に意識を向ける。
□お頭:盗賊のお頭 体力+1 魅力+1
80
不遇な盗賊系に相応しいほどに、がっかりなボーナスだ。
椅子に座ってテーブルに手を置いてボーとしてるエインを見る。
この世界では、強くなければ危険が多い。
そんな中でこのまま盗賊としてレベルを上げても正直微妙だろう。
僕と同じレベル60になっても、ステータスは半分くらいしかない
だろうしな。
とすると、クリア特典の転職を利用するのがベターだろう。
カオスブレードは、初回プレイは主人公を除いたキャラのジョブは
固定だ。
しかし一度クリアした後ならば、忘れられた神殿と言う場所でアイ
テムを使って転職できるのだ。
主人公のみ、初回プレイ時でも進め方次第で途中でジョブが変わる。
騎士とか魔道士とか魔王とかに。
転職するとレベルが1からになるが、転職前のステータスが半分に
なった状態なので弱くはない。
それに覚えたスキルや必殺技も使えるので、自キャラを最強にした
いなら転職は必須といえる。
必要なアイテムは○○の魂︵○○の部分にジョブ名が入る。例:剣
聖の魂︶と言ったアイテムが必要なのだが⋮。
﹁どの敵でもランダムで落とす可能性があるけど、逆を言うとジョ
ブの狙い撃ちが出来ない﹂
それにレアドロップで、大量には手に入らないはずだ。
81
後は同系統アイテムで、転職せずにレベルを1に戻すだけの無垢な
魂と言うアイテムもあるが⋮。
﹁転職アイテムの方よりレアドロップだしなぁ﹂
行動方針をどうするか悩んでいると、エインが手招きをしていた。
気晴らしも兼ねてベッドから椅子に移動すると、真剣な顔で見つめ
られた。
﹁お姉様にお話があります﹂
その瞳は真っ直ぐ僕を見つめ、笑いなど一切ない。
過去女性にこんなに真剣に話しかけられた事がないので、内心ガク
ガクしてしまう。
ま、まさかもう別れたいとか?
付き合ってるわけじゃないけど⋮。
じゃあ仲間から外れたいとか?
僕の独り言スキルのせいか!?
頭が高速で事態回避の為に回転するが、妙案が浮かんでこない。
僕用のコップに水を注ぎ、落ち着く為に水を飲もうとしたら︱︱
﹁お姉様の名前を知りません! 教えてください!﹂
﹁ぷぅぅぅぅ﹂
今更名前か!と予想外すぎて吹いてしまった。
82
エインの顔目掛け盛大に水を吹いたが、彼女は文句も言わず白い布
で顔を拭いている。
拭き終わるのを待ってから、僕は今の名前を教えてあげた。
﹁えーと、セシリア・マリンズ?﹂
﹁ぶぅぅぅう﹂
僕が名乗ると、今度はエインから水を吹きかけられた。
﹁ご、ごめんなさい﹂
謝りつつ白い布を渡してくれたので、それを使って顔を拭く。
﹁セシリア・マリンズって、あの赤眼の鬼女と言われた⋮?﹂
﹁やっぱり結構有名?﹂
﹁帝国の軍が、セシリアの部隊にかなりやられてたみたいで、帝国
では有名ですよ。法国じゃわかりませんけど⋮﹂
﹁有名なのに、僕がセシリアって分からなかった?﹂
﹁連邦の将官が、部隊も率いずにこんな所に居るとは思いませんよ。
それに、噂では有名でも見たことある人なんて軍の人くらいじゃな
いですか?﹂
今の情報は今日一番の収穫だ。
実は町に行ったら即御用とかあるんじゃないかと心配してたが、意
外と大丈夫そうだ。
83
いつか町に行かなきゃとは思ってたが、今のエインの言葉で決めた。
﹁よしっ、冒険者になる為に明日町へ行こう﹂
﹁冒険者⋮ですか﹂
僕が決めた今後の方針は、冒険者になってレベルを上げつつ資金と
装備を整え、転職関連のアイテムを集める事だ。ファンタジーの王
道と行ってもいい計画だ。
⋮あんなに悩む必要あったんだろうか。
戦利品の仕組みがどうなっているかは、今後調べる必要があるが、
まぁなんとかなるだろう。
﹁わかりました。じゃあ、私は夕飯の準備をしますね﹂
僕が白い布を握りながら突っ立っていると、エインは走って部屋か
ら出て行った。
動く白いお尻がとても魅惑的だった。
いつの間にか外が暗くなっているのを確認すると、布をテーブルに
置いて椅子に座った。
﹁ってこの白い布って下着じゃ⋮。僕のじゃないからエインのか﹂
あの子は何て物で顔を拭かせるんだ。
エインの下着と解った瞬間、かなりドキドキして興奮してしまった
じゃないか。
84
エインが夕飯を持ってくるまで暇なので、なんとなく自分のステー
タスを見ることにした。
◇セシリア・マリンズ
Lv60 年齢:22 職業:剣聖
HP:1100/1126
MP:400/400
力 :482
器用:294
体力:290+50
速さ:310
賢さ:182−100
精神:184−100
魅力:360
﹁は?﹂
ステータスを見て思わず目が点となる。
装備を何もしていないのに、ステータス補正が付いている。
体力の+は良いとしても、賢さと精神の−が酷い。
装備をしていないと言うことは、エインと同じく称号の補正なんだ
ろう。
しかし、ゲームでは称号で−補正はなかった。
装備と違い称号は消したり外せない為だ。
しかも、ただでさえ低い魔法関連の補正に関係した賢さと精神が−
だ。
焦りながら称号を確認すると、1個だけあった。
85
半ば無意識にそれを選び詳細を確認する。
□M属性:性奴隷の資質あり 体力+50 賢さ−100 精神−
100
﹁なんじゃそりゃーー!﹂
ゲームの時にはなかった称号。
いや、達成率82%だったので、僕が知らないだけかもしれないが。
だが攻略サイトでも−補正の称号は無かったから、こんな称号は無
い筈だ。
100歩譲ってMなのは認めよう。
しかし、性奴隷の資質ありと言うのがやばい気がする。
MのNPCキャラも居たが、この称号は持ってなかった。
こんな僕だけ特別設定は欲しくない。
﹁お姉∼様∼。スープと干し肉持ってきました∼♪﹂
﹁おうふっ﹂
突如現れたエインに驚き、奇声を上げてしまう。
エインは僕の奇声をスルーして、テーブルの上に食事を乗せていく。
﹁いただきま∼す﹂
﹁い、いただきます﹂
86
僕は自分のM属性の称号を見た動揺を引きずったまま、その後を過
した。
そのせいかわからないが、寝る前もエインに弄り倒されて何度も何
度もイカされた。
最後はお腹がジンジン痛いからもう勘弁して、と伝えると
﹁お姉様、ヒール使えるんですよね? おへその下に向かってヒー
ルしたらいいんじゃないですか?﹂
と言われたので、ヒールを使ってみるとウソの様に痛みが引いて楽
になった。
痛みが引いた後、胸を弄られて気絶するまでイカされた。
こんなんで、明日から冒険者としてやっていけるんだろうか⋮。
87
第7話 残念なお姉様
チュンチュンと雀が鳴く早朝から︱︱雀か正確には不明だが︱︱僕
とエインは町へ向かう為に、砦の入り口に立っている。
﹁さぁ、早速町へ行って冒険者ギルドに行こう﹂
﹁はぁ⋮﹂
冒険者を目指す記念すべき日の朝だと言うのに、エインの返事は気
が抜けたものだ。
まったく、君の為に考えた安全なルートだというのに。
僕が若干憤りを感じていると、エインは胡乱な眼をして問いかけて
きた。
﹁お姉様、まさか﹃裸﹄で町へ向かう訳ではありませんよね?﹂
﹁うん? 町に着く前に街道や人が居そうな場所に出たら、服着る
よ?﹂
僕は露出狂ではなく、ただちょっと裸になるのが好きなだけなのだ。
最初は巨乳を絶えず見たいという、崇高な理由で裸で居たが今は少
し違う。
この世界に来て感じたが、裸で外を歩く事のなんと気持ち良い事か。
澄んだ空気、木々から溢れるマイナスイオン、それを直接肌で感じ
88
ると心が休まるのだ。
日本に居た時は、出向先のサーバールームが設定温度16度で夏で
もコートを着て作業してたりと、どこまでも服に頼った生活をして
いた。疲れてコートを脱がずに帰宅してたら、不審者扱いされたり
したな。
僕が裸で居る事の心の開放と爽快感を口に出すと、エインは眼を細
めて極めて優しい表情になった。
﹁お姉様、強くて美しいのにとても残念な方だったんですね﹂
﹁エインだって、さっきまで裸だったじゃないか﹂
元盗賊連中を見送ってから今朝まで、エインだってずっと裸で居た
のだ。
僕が当然の主張をすると、エインは﹁ハァァァァァァ﹂と、とても
長い溜息をついた。
﹁良いですかお姉様? 自分が住んでる場所で裸で居るのと、外で
裸で居るのは意味が違います。さらに言えば、私とお姉様二人きり
と分かっていたので裸で居たのであって、それだって普段は服を着
るのが当然です。昨日は特別だったんです。それに、野外は色々な
危険があるんですよ? 外には魔物も徘徊してるし、盗賊だって︱
︱︱﹂
僕はいつの間にか正座をして、懇懇と諭すようにエインに説教をさ
れた。
野外での裸の危険から女性の羞恥に関して、それはもう懇切丁寧に
89
だ。
7つも年下の元お頭の盗賊少女に、優しく説教されるのは凄く辛か
った。
ヤクザ面の上司に怒鳴られた方がずっとましだ。
説教中に、一昨日ヒゲ親父達が僕に近寄ってきたのは捕まえる為で
はなく、裸で可哀想な女性が居たので保護しようとしてたとわかっ
た。ヒゲ親父の下品な台詞は、盗賊としての演技だったとか。
僕が剣を奪った為に、決闘という流れになったらしいが⋮。
年下少女からの説教と、下と見てた盗賊より実は僕が下だった事実
で打ちのめされた。
結局僕は、フル装備で出発した。
出発してから4時間程で近場の町が見えてきた。
⋮ここまで来る間も、僕はさらに打ちのめされた。
︱︱休憩中の一幕︱︱
﹁んぐんぐんぐ、ぷはぁ。はぁ、美味しい﹂
﹁あれ? それって水筒?﹂
90
﹁? そうですよ?﹂
﹁いつの間にそんな物用意してたの?﹂
﹁遠出する時は、最低限の水と食料を持つのは常識ですが⋮﹂
﹁そう言えば、エインは腰にポーチやら袋やらさげてるね﹂
﹁火着け石や干し肉を入れた袋に、お金を入れた袋や水筒をさげて
るんです﹂
﹁そ、そうなんだ﹂
﹁お姉様は持っていませんが、アイテムボックスとやらの中なんで
すね﹂
﹁え、えーと、アハハ∼⋮そういうの一切持ってないかも⋮﹂
エインは無表情の訝しげな視線でセシリアを見つめた。
︱︱休憩中の一幕 終了︱︱
ゲームの世界で強キャラセシリアに成ってたり、24時間処か30
時間以上戦えますか?な仕事から解放されて浮かれていたが、僕っ
て実はかなり危険な状況に居るのではなかろうか?
エインが居なければ、町にもたどり着けなかっただろうし⋮。
91
︱︱移動中の出来事︱︱
﹁先導してくれてるけど、町の場所分かるの?﹂
﹁一番近いギルドのある町は海都カルドですから、地図がなくても
わかりますよ﹂
カルドは大陸の南東にある帝国のさらに一番南の都市だ。
よく利用した都市の名を聞いてセシリアはピンと来る。
﹁そう言えばマップ画面があったな。地図見れるかも﹂
﹁あ、地図持ってるんですか。それは助かります﹂
マップ画面を開き固まるセシリア。
﹁ゲームだとフィールドは点と点の移動だったから、大雑把な風景
の画面じゃないですか、やだー﹂
﹁あのぉ⋮﹂
﹁ち、地図はなかった﹂
エインは感情を篭めない表情でセシリアを見つめた。
︱︱移動中の出来事 終了︱︱
92
マップ画面は都市やダンジョン等を基点に線で繋がってる道をオー
トで移動するだけだったから、大雑把過ぎて地図としては微妙すぎ
た。
自分の現在位置が表示されるので、大体の位置関係は分かるのが救
いだ。
大体の位置が分かるなら、行きたい場所の方角に向かえばいいのだ
が⋮。
どっちが北で南で東で西かわからん⋮。
この世界も確か太陽は東から登って西に沈むので、日の出と日没時
は方角がわかる。
しかし、日が昇ってる状態だとさっぱりわからない。
﹁おまけに情報のある場所しかマップに出ないからな⋮。忘れられ
た神殿が表示済みなのが救いか⋮﹂
表示される基点は、NPCからの噂話やクエストや任務で情報を得
ない限りマップ画面に現れない。
現在カルドの表示はされてないので、僕一人なら迷子確定だった。
レベル60で、しかも元プレイヤーの自分がレベル5のエインに頼
りっぱなしの状況に凹む。
僕が凹みつつちょぼちょぼエインの後を歩いていると、彼女が振り
返った。
93
﹁お姉様、もうすぐ着きますが大丈夫ですか?﹂
大丈夫ですかの意味は、セシリアな僕が帝国の都市に入ろうとして
大丈夫か?と言う事だろう。
道中エインに何度か言われた質問なのだが、その対策は考え済みだ。
﹁ふふふ、大丈夫。決して僕がセシリアだとはばれない。見てるが
いい!﹂
そう言って装備画面を開き、不要になったと言う事で貰って仕舞っ
てたエインの赤いバンダナを装備する。
﹁⋮私のバンダナをつけたみたいですが⋮?﹂
装備したバンダナは、鉢巻の様に僕の頭に装着された。
違う。違うんだよ装備機能君。そうじゃないんだ。
僕はバンダナを手で外し、後ろ髪を後頭部の上部に纏めた状態でバ
ンダナを使って結んだ。
﹁コレで大丈夫! そして今から僕はセシルって偽名を使うので完
璧だ!﹂
﹁⋮えーと?﹂
﹁髪型をストレートからポニーテールにして偽名を使えば、誰も僕
をセシリアだと気づかないはず!﹂
髪色が同じで髪形が違うだけジャン!って感じの別人キャラって、
アニメやゲームでよく居ると思う。だから、髪型を変えて偽名を使
94
えば、僕がセシリアだとバレないはずだ。
僕の完璧な作戦に言葉もないのか、エインは無言で歩き出した。
その無言の背中に圧力を感じつつも、遅れない様に駆け足で追いか
けた。
海都カルド。
海に接した大都市で、帝国の水産物と塩を扱う産業的に重要な都市。
陸地部分を壁で囲って、海側は屈強な海軍が守る帝国屈指の都市だ。
同じく海に面した都市を持つ連邦と海戦を繰り広げる軍事都市でも
ある。
治めるのは帝国の誇る四将軍、所謂四天王の一人のネーブル将軍だ。
この人レベル70でセシリアより強いので、可能な限り会いたくな
い。
﹁はぁ∼⋮。人がいっぱいだねぇ﹂
﹁そうですね﹂
海都カルドの街中は、通りには露天があったりで大勢の人が行き交
う活気ある町だった。
建物は茶色のレンガだったり白い壁で、屋根は赤茶色の物が多いよ
うだ。
建てられてから少し古い感じが、修学旅行で行ったイタリアの町並
みを思い出す。
95
さらに歩くのは普通の人間だけじゃなく、猫耳で尻尾のある人や長
い耳の人、背が低いヒゲもじゃの人やら二足歩行のワニのような人
まで居る。
ゲームの時はコマンドで店を回るだけだったので、その光景に感動
する。
﹁それにしても、あんなにあっさり入れたのは意外です﹂
﹁案ずるより産むが易しって言うしね﹂
戦時だからか門の処で検問をしてるようだったが、思った以上に簡
単に通れた。
﹁冒険者になりに田舎から来たセシルと言います。って言ったらあ
っさり通してくれたな﹂
﹁私みたいな無名の盗賊はまだしも、お姉様が問題なかった事に帝
国の将来が心配ですね﹂
元お頭に心配されるようでは、帝国の未来は暗いかも知れぬ。
僕は変装︵髪型変えただけだが︶が成功した事で、とても気分がい
いです。
﹁それでお姉様、どうしますか? すぐにギルドに行きます?﹂
その言葉に、少し考え込む。
時刻は15時34分。
96
システム設定画面で時刻が確認出来るのは便利だ。
セーブ&ロード、タイトルに戻る、ゲーム終了、コンフィグ等のコ
マンドがなくなって、時計専用画面になったわけだが。
﹁まずは冒険者ギルドに向かおう。お役所仕事で何時までやってる
かわからないし﹂
﹁わかりました﹂
エインも了解してくれたので、冒険者ギルドに向かおうとして︱︱
足が止まる。
﹁どうしたんですか?﹂
﹁⋮場所が分からん﹂
﹁﹁⋮﹂﹂
いや、だってね?
ゲームの時は町に着くと、コマンドで冒険者ギルドを選ぶだけで行
けたのですよ?
僕がドウシヨウカと思案に耽っていると、エインが袖を引いてきた。
﹁東の大通りにあるらしいです。行きましょうお姉様﹂
エインが僕の手を引っ張って歩き出す。
どうやら通行人か誰かに聞いてくれたようだ。
大通りを真っ直ぐ進み都市の中央にそびえ立つ城まで来ると、城の
97
城壁を回るように左手に進む。
城壁を横目に暫く進むと、先程と同じ様な大通りがあった。
先程の通りに比べると、武器を持って鎧を着込んだむさい男達が多
い。
﹁この東通りに、冒険者ギルドや傭兵ギルド、それに武具を売って
るお店や鍛冶屋が多いらしいです﹂
﹁なるほどなるほど、さっきの通りは市民用で、こっちは傭兵や冒
険者御用達通りってわけか﹂
冒険者ギルドの場所だけじゃなく、通りの特徴まで聞いてるとはエ
インさん頼りになります。
﹁それじゃあ、冒険者ギルドへ行きましょう﹂
エインに付いて行くと、レンガ作りの入り口に扉のない大きな建物
に入っていった。
看板も特になかったので、知らなければわからないんじゃないだろ
うか。
僕もエインに遅れないように中に入ると、複数の視線に晒される。
﹁女が入ってきたから珍しいのかな⋮?﹂
﹁知らない人間が入ってきたので、警戒されているのかもしれませ
ん﹂
良く見ると女性の冒険者らしき人も結構居たので、エインの言うと
おり見知らぬ人間を警戒したのか。
多数の視線は意識的にスルーして、建物の中を観察する。
98
銀行の受付の様なカウンターがあり、カウンターの前には木の椅子
があって何人か座っている。
待合席のような長椅子もあって、そちらにも何人か居た。
少し離れた場所には、壁にボードが立てかけられて紙が何枚も張ら
れている。
きっとあれがクエストの依頼書なんだろう。
さらっと全体を見回してみた感想は、郵便局みたいだなぁだった。
﹁空いてるカウンターで登録をしましょう﹂
エインの言葉でカウンターを見る。
空いてるのは耳長女性と筋肉質なおっさんの2個。
僕は迷わずエインを連れて、耳長女性が待ち受けるカウンターの椅
子に座った。
﹁こんにちは、今日はどういったご用件でしょうか?﹂
長い耳に緑の髪をしたエルフの女性に笑顔で挨拶されて思わずにや
ける。
生エルフを見れるとは、ファンタジー最高。
﹁冒険者登録をしに来ました﹂
﹁お一人ですか? それともお二人共ですか?﹂
﹁二人で﹂
99
﹁お二人共にですね。わかりました﹂
受付エルフさんは、テキパキと対応してくれる。
ゲームでは主人公だけ登録して仲間は付いてくるだけだったので、
僕一人が登録でも良かったかもしれない。反射的に二人でと答えた
が⋮。
実はゲームではこっそり仲間も登録してたかもしれないし、登録し
て損もないだろうし問題ない⋮はず。
﹁では此方に記入をお願いします﹂
僕が登録について考えていたら、受付エルフさんが用紙と羽ペンを
僕とエインの前に置いた。
記入と言う言葉に、この世界の文字が読めるか考えてなかった僕は
焦って用紙を見る。
するとそこには⋮日本語で名前、年齢、備考と書かれていた⋮。
ファンタジー代表の耳長なエルフさんと用紙を何度も見比べてしま
う。
国産のゲームだったから、使われているのも日本語なのか⋮?
そう言えば僕も日本語で普通に話してて言葉通じてるし⋮。
﹁お姉様、もしや字が書けないんですか?﹂
僕が記入しないで居るとエインが声をかけてきた。ちょっと呆れた
感じで⋮。
100
﹁書けます。書けますよ∼。書類仕事もお任せですよ∼∼﹂
書類仕事も得意なのをアピールしたが、エインの呆れた感じは変わ
らなかった。
急いで書こうとしたら、日本での自分の名前を書きそうになり慌て
て止める。
今の僕はセシリアで、念の為に偽名のセシルと書かないとな。
偽名を使うなら昔の自分の名前でもいいかもしれないが、セシリア
で男の名前などお断りだ。
﹁これでお願いします﹂
﹁エイン様にセシル様ですね。少々お待ち下さい﹂
名前にセシル、年齢に22と書いて備考には特に何も書かなかった
が問題なかったようだ。
受付エルフさんは用紙を持って席を立ち、カウンターの奥へと消え
ていった。
ゲームの時は、ギルドに登録しますかYesで済んだのに、この世
界だとパスポートの登録みたいだ。
少しすると、細い鎖のついた銀色の板を4枚持ってきた。
僕とエインの前にそれぞれ2枚ずつ置いて、それについて説明して
くれた。
﹁こちらがギルド証明タグになります。本人登録をするので、2枚
101
の板に指を置いて下さい﹂
僕とエインが指を置くと、受付エルフさんは静かに言葉を紡いだ。
受付エルフさんの言葉が終わると、4枚の板が金色にポォと光った。
﹁これで登録が終わりました。1枚は本人確認の為にギルドが預か
ります。証明タグを無くした時は再発行できますが、手数料がかか
るので注意して下さい。チェーンが付いているので、無くさないよ
うに首にかけておくことをお勧めします﹂
マニュアルでもあるかのように、スラスラ言葉を重ねる受付エルフ
さん。
その後は、冒険者にはランクE∼Aまであって自分のランクより上
のクエストは受けることが出来ず、最初はEである程度をこなし実
績を積んで、昇格クエストを受けて良いと認められ成功すれば昇格
できる、とか。
クエスト失敗時又は期限切れの違約金は、成功報酬と同額を支払っ
て貰う、とか。
依頼達成の為、自分以外の冒険者や傭兵を雇っても良い。
等々、説明してくれた。
ゲームの時と同じ説明に懐かしさを覚えた。
同時に、途中から受付エルフさんが住民票を移した時に行った役所
の人に見えてげんなりもしたが。
﹁以上です。何かご質問はありますか?﹂
﹁いえ、特にないです﹂
102
﹁それでは、命を落とさぬように頑張って下さい﹂
ゲームの時と同じ締めを頂き、僕とエインは席を立った。
受付カウンターから少し離れて、待合席の椅子に二人で腰を下ろす。
﹁⋮なんだか疲れましたね﹂
﹁⋮あんなにスラスラ途切れる事なく一遍に説明されると疲れるよ
ね﹂
ボタン連打で飛ばせないで肉声で言われると、意外と疲れるものだ
った。
少し休んでから、手に持ってたギルド証明タグを首にかける。
ゲームではなかったアイテムなので、気になってよく見てみた。
タグにはカタカナでセシルと書いてあった。
名札かぃ!
と思わず心でツッコンだが、本人証明アイテムなので名札と同じか
と思い直す。
﹁お姉様、タグに喋ってないでクエスト依頼書のボードを見に行き
ましょう﹂
心の中だけじゃなく、口に出してツッコンでたようだ⋮。
タグの事は忘れて、二人でボードの方へ行く。
ボードは5個あって、それぞれのボードの上にA∼Eと書いた文字
があった。
ランク毎にボードも分けているようだ。
103
ゲームの時は依頼一覧となっていた事を考えると実用的かね。
僕とエインがEのボードの前に行って張ってある依頼書を見ようと
すると、背中から声をかけられた。
﹁やぁお嬢さん達、初心者のようだが大丈夫かな?﹂
後ろを振り向くと、そこには大剣を背中に背負った顎鬚リーゼント
が居た。
﹁先程冒険者登録をしたばかりのようなのでね。良ければ俺が冒険
者の心得を教えてあげよう﹂
﹁おぉぉ﹂
見知った人、というかキャラだったので思わず唸ってしまう。
少し気障ったらしいこの人は、主人公が冒険者ギルドに来た時に色
々説明してくれる説明キャラだ。
﹁最初は討伐系は避けた方がいい。薬草を採ってきて納品なんかの
敵と戦う危険の少ないクエストがお勧めだ﹂
﹁そうなんですか﹂
説明キャラと言っても帝国の冒険者ギルドの場合で、他国だと別の
人だが。
﹁外に出る自信もなければ、武器屋や防具屋から頼まれる街中での
荷物運びもあるから、それをすると良い﹂
104
﹁なるほど﹂
先程から頷いているのは、僕ではなくエインだ。
先輩冒険者の説明だからか、凄く真剣に聞いている。
この人の名前はダグラスと言って、説明後に仲間にするかの選択肢
でYesを選べば無条件で仲間になるNPCだ。
その割にはジョブが戦士で色々な武器を使えて使い勝手がよい。
何より初心者冒険者である主人公に、冒険者の心得を説明してくれ
るくらい良い人だ。
主人公が魔王ルートに行く時、好感度が高い仲間以外は離反するか
主人公を殺しに来るのだが、ダグラスさんはどちらもせず、主人公
についてきてくれる。
しかもただ付いてくるだけじゃなく、人に絶望し魔王になっていく
主人公を叱咤したり諭したり、残虐すぎる事は止めたりと、どこま
でもいい人だ。
もし誰かを仲間にするならダグラスさんが良いと思ってたが⋮。
隣でダグラスさんの説明を真剣に聞くエインを見る。
眼を輝かせて話を聞いて頷くエインを見ると、モヤモヤした気持ち
になる。
﹁さて、一通り説明も終わったし、良ければどうだね。俺とこの依
頼を一緒に受けてみないか?﹂
説明が終わったダグラスさんは、一枚の依頼書を取って見せてくる。
105
その瞬間、ポンっとウィンドウが開いた。
︹ダグラスと一緒に依頼を受けますか?︺
Yes
No
これにYesを選ぶとダグラスさんが仲間になるのだが⋮。
﹁ごめん、ダグラスさん、今日は僕ら疲れてるから、また今度﹂
﹁ふむ、そうか。俺は良くギルドに居るから、何か困ってら声をか
けてくれ﹂
﹁エイン、行こう﹂
﹁お、お姉様急にどうしたんですか﹂
僕が急にダグラスさんの提案を断った事に混乱してるエインの手を
引っ張って、早足でギルドの外へ向かう。
外に出た瞬間、ウィンドウが消えた。
それを確認したら少しずつ歩く速度が落ちていく。
﹁お姉様、急にどうしたんですか?﹂
﹁え、あー、えーと、疲れたから早くギルドから出ようと思っただ
けで⋮﹂
上手い言い訳が浮かばず、言いよどんでた僕を見たエインが急に笑
顔になる。
106
﹁そうですね。疲れたので早く宿を探しましょう。お姉様行きまし
ょう﹂
今度は逆にエインに手を引かれ、町を歩く。
太陽が沈みかけて外は少し薄暗くなっていた。
東通りを城に向かって進んでいると、INNという文字の看板のあ
る建物に入った。
﹁お泊りでしょうか?﹂
﹁二人部屋一泊でお願いします﹂
中に入るとホテルのフロントのような場所があり、黒スーツの初老
の男性が迎えてくれた。
二人が何やらやり取りをしているが、さっきの気持ちのせいで頭に
入らない。
エインが腰から金貨数枚を出して、男性から鍵を貰っていたので部
屋を取ったようだとわかる。
そう言えば僕って今無一文だから、宿代もなかったのか⋮。
世話するつもりだった少女に宿代を払ってもらうって、僕ってヒモ
!?
自分の現状にショックを受けてる僕をエインが引っ張る。
階段を上り二階の端のドアまでくる。
エインが鍵を使ってドアを開けた。
107
﹁さぁお姉様、入りましょう﹂
ドアを開けたエインが僕を中へ引っ張った。
中に入ると、綺麗な白い壁と白いベッドに高そうな黒塗りの丸テー
ブルと椅子がある部屋だった。
﹁女二人なら高いけど泊まるならここが良いって、さっきの男性が
言ってました﹂
さっきの男性とはダグラスさんの事だろう。
ゲームではそんな事言わないはずなのに。
教えてくれたのがダグラスさんと分かり、複雑な顔をしてたであろ
う僕に向かいエインは優しい声で言ってくれた。
﹁私が好きなのは、お姉様だけですよ﹂
﹁でも、さっきあんなに眼を輝かせて真剣に話を聞いてたじゃん⋮﹂
﹁バカですね∼﹂
﹁いたっ﹂
バカと言いながらデコピンされた。
一体何がバカだと言うのだ。
﹁さっきの人の話してた事って、私達にお姉様が話してくれた事と
同じじゃないですか。それでお姉様が言ってた事は正しかったって
分かって、喜んでただけですよ﹂
108
私達と言うと⋮元盗賊団の人達の事だろうか。
確かに、一部の説明は被ってたけど。
﹁お姉様は、確かに色々残念ですが⋮﹂
﹁そうしみじみ言われると、より傷付く事を知ってるか⋮?﹂
﹁でも、戦った私には分かります。お姉様なら私達を皆殺しにも出
来たはずです。なのにそれをしなかった。その上、私達に盗賊以外
の生き方を教えてくれました﹂
それは人を殺す覚悟とかないし、お頭に成りたくなかっただけで⋮。
﹁全部自分の為だよ⋮﹂
﹁いいえ、お姉様は優しいんです。そんな優しいお姉様以外、私は
好きに成りませんよ﹂
こんなに純粋な好意を向けられたのは、いつ以来だろう。
エインを見てるだけで泣きそうになる。
﹁お姉様、裸になってください。嫉妬なんて出来ないくらい、私が
どれだけお姉様を好きか教えてあげます﹂
エインの言葉に従い、装備を︻全てはずす︼で脱いだ。
﹁お姉様のそれ、着るだけじゃなく脱げるんですか。便利ですね﹂
裸になった僕に向かって延ばされる手に誘われるまま、二人一緒に
ベッドに向かった。
109
110
第7話 残念なお姉様︵後書き︶
長くなったのでエッチパートは次話です。
1話を5000文字くらいにしたいんですが、上手くいきませんで
した⋮。
主人公セシリアさんが色々残念ですが、クエストでレベル60の力
を見せてくれるはず!
次回⋮はエッチパートだから、次々回からセシリアさんが本気出す
!⋮はず。
それにしても、エインさん良い人⋮。
誤字脱字の指摘、感想等お待ちしてまっす。
111
第8話 痛いのがお好き♪
僕をベッドに寝かせると、エインが服を脱ぎ始めた。
﹁エイン、ちょっと待って﹂
試してみたい事があったので、声をかけて脱ぐのを止めた。
そして素早く装備画面を出して、画面上部の左右に︽︽ ︾︾マー
クを発見する。
頭の中でそれを押すイメージをすると、画面が変わりエインの装備
画面になった。
ゲームで仲間の装備も変更できるので、同じ様にエインのもと思っ
たら案の定だった。
エインの装備画面で︻全てはずす︼を選ぶ。
﹁わっ。お姉様の脱衣魔法、私に対しても使えたんですね﹂
いきなり自分が裸になった事に驚いたようだ。
人を脱衣させる。そんな素敵な魔法はカオスブレードにありません
っ。
ただの装備変更機能です。
何故か︻全てはずす︼はオール脱衣機能になってますが。
﹁ふふふ、裸が大好きなお姉様に相応しい魔法ですね﹂
112
エインはそう言いながら、ベッドの上の僕にゆっくり近づいてきた。
﹁んっ、はぁ、んんっ﹂
完全に日が暮れて、窓から差し込む仄かな月明かりのみの暗い部屋
に僕の声だけが響く。
ベッドに腰を下ろしたエインは、僕の体中を優しく撫で続ける。
頬、首、腕、脇、胸、腰、お腹、太ももから足の指先まで。
彼女の手が体を滑る度に、くすぐったくてムズムズする。
﹁お姉様、気持ちいいですか?﹂
﹁うん、気持ちいい﹂
気持ち良いってよりくすぐったい。
だが、折角してくれる彼女を無下にしたくなかった。
﹁無理しなくていいんですよ﹂
﹁無理なんてしてないよ?﹂
本気で疑問顔の僕に対して、エインは口を手で押さえて笑った。
﹁ぷっ、お姉様、自分で気づいてないんですか?﹂
﹁気づいてないって何を?﹂
113
エインは返事をせずに、いきなり僕の乳首を引っ張る。
﹁あひぃ、いたぃ、いたいよっ﹂
僕が痛いと言うと、エインは乳首を離した。
﹁急に引っ張るなんて酷い﹂
﹁そうは言いますが、これを見てください﹂
﹁ひゃっ﹂
エインの手が、僕の秘所の割れ目を掻き分けて掬うように撫でた。
そして、その手を僕の目の前に持ってくる。
その手の指は濡れたようにてかてかしていて⋮。
﹁お姉様、痛いのがお好きでしょう? 乳首引っ張っただけで濡れ
てますよ﹂
﹁ち、ちがっ、そんな事ないはずっ﹂
﹁いいえ、何度か試したので分かってます。だから、まだあまり濡
れてないですけど、んっ﹂
エインが掛け声と共に、僕の膣内に指を突き込む。
指を入れられた瞬間、プツッって音が体から聞こえ膣から痛みが走
る。
114
﹁痛いっ、それ本当に痛いよっ﹂
﹁え? あれ?﹂
エインが、僕の膣から抜いた自分の指を見て驚いている。
その指には赤い液体が付いていた。
﹁お姉様の初めては、奪ったはずなのに⋮﹂
﹁ハァハァハァ﹂
僕は膣内から感じる痛みに耐えながら考える。
確かに昨日の朝シーツに処女の証があったはず。
﹁もしかして、ヒールをしたから膜が治った?﹂
エインの呟いた言葉にまさかと思う。
昨夜のエッチ途中にお腹が痛いと言って自分にヒールをかけた。
あれは何回もされて、擦れて痛いからだと思ったが⋮。
M属性の称号を確認した時HPが減ってたような気がしたが、もし
や⋮。
もしや処女膜喪失は傷扱いで、だからHPが減っていて、傷だから
ヒールをしたら治った?
僕がそう考えていたら、エインがにっこり笑っていた。
﹁良かったですね。お姉様。ずっと処女で居られそうですよ﹂
115
処女と言う響きには憧れる。
しかしそれは好きな女性に対してであって、自分が処女で居たいと
かは思ってない。
﹁嬉しくて溢れそうなほど濡れだしましたね。お姉様、笑顔で嬉し
そうですね﹂
﹁う、うそ﹂
破瓜の痛みなんて、何度もはごめんだって思ってる。
だから僕が笑顔のはずがない。
﹁じゃあ、本格的にしますね﹂
僕が混乱していると、エインが膣にチュプンと右手の指を2本入れ
てきた。
チュプンと鳴った音で、僕の股間が凄く濡れていたのだと分かって
しまう。
エインは入れた指をゆっくり出し入れするよう動かす。
指が動くたびに、チュプチュプ水音が鳴る。
二度目の処女を失ったばかりで、僕は痛いと言うのに⋮。
﹁あん、はっ、あん、あっ、はっ﹂
チュプチュプチュプチュプチュプ。
自分の股間から聞こえるエッチな音にあわせ、喘ぎ声が出てしまう。
指が動く度にジンジン痛みが走る。
116
だけど同時に、膣からお腹を通して体全体にゾクゾクした快感も感
じてしまう。
﹁あぁ、いい、もっとぉ﹂
﹁こんなに︵パチン︶、腰とか細いのに︵パチン︶、大きな胸です
ねっ︵パチンッ︶﹂
僕がもっとぉと言うと、エインは膣を弄ったまま反対の手で僕の胸
を叩く。
大きな胸を叩かれて、痛みを感じる。
でも少しすると叩かれた場所が熱を持って、じわぁっと気持ちよく
なる。
膣内を弄られ易いように脚を開いたまま、気持ち良さで胸をブルン
ッと震わせてしまう。
﹁あぁ、んふぅ、ふぅ、ふぅ、はぁ﹂
胸と膣が痛いのに気持ちよくて声を出すと、エインの手の動きが激
しくなる。
ジュブジュブジュブジュブジュブ。
バチンバチンバチンバチン。
両方強くされて痛みが上がる。
同時に痺れるようなゾクゾクした快感が全身を駆け巡る。
﹁うひぃ、あひぃ、あぁん、いたっ、いぃぃ、ちゃうぅ﹂
117
﹁イキ、そう、です、かっ。じゃあ、これでっ!﹂
ジュブゥ!バチンッ!
今まで一番強く胸を叩かれて、同時に股間を押しつぶす様に膣に指
を押し込まれた。
﹁あはぁぁあん﹂
気持ちよすぎてどこが気持ちいいのかわからないまま、僕は絶頂に
達した。
﹁あぁぁぁ、はぁぁぁ、んんぅぅん﹂
気持ち良さの余韻に溺れていると、手を止めてたエインが僕の下っ
腹を押した。
ぷぅぅぅぅ。
すると、僕の股間から恥かしい音がする。
恥かしくて、余韻から冷めて言葉が出る。
﹁ち、違う。これは⋮えっと﹂
﹁わかってますよ。お姉様の大事な所に空気が入ってたのを抜いた
だけですから﹂
僕は何で音が出たのか良く分からなかったが、エインは分かってる
ようだ。
118
﹁お姉様が嫉妬すら出来ないように、まだまだ可愛がってあげます﹂
エインが僕の頬にキスをしながら告げてくる。
そういえば、そういう理由で始めたんだった。
エインが腰を上げ僕の顔を跨いで、そのまま腰を下ろしてきた。
﹁お姉様、私はまだ処女なので、優しく舐めて下さいね﹂
処女と言う言葉と、初めて触れる女性器に興奮する。
暗かったのと、今は顔の上に座られているので良く見れなかったの
が残念だ。
言われたとおりに舌を出してゆっくり舐める。
﹁ん、ん、ちゅぅ、ん﹂
﹁あん、お上手ですね﹂
エインの割れ目は毛が無いからか、舌触りがつるっとしてて滑らか
だ。
舐めているとヌルッとした味のない液体が出てきた。
﹁さて、お姉様。次はここを弄りましょうね﹂
僕がエインの秘所を舐めていると、彼女は僕の股間に向かうように
119
体を倒す。
胸に体重がかかり、押し潰される感じが気持ちいい。
﹁本当にさらさらした金色の毛で、お姉様はここも綺麗ですね﹂
エインが楽しそうに言葉を紡ぐ。
そして、エインの指が僕の秘所を左右に開くように弄りだした。
﹁うふふ、見つけました﹂
﹁ひゃぅ﹂
﹁やん。急に叫ばないで下さい﹂
股間をエインに弄られていたら、いきなりクリっと皮を剥かれる様
な感触がして体が跳ねてしまった。
まるで今は亡き相棒を初めて剥いた時のような⋮。
﹁ピンク色で綺麗。お姉様、いっぱい喜んで下さいね﹂
嬉々とした声色でエインが言った直後︱︱股間から頭まで一気に貫
くような刺激を感じて、体が再度跳ねた。
﹁ひぎぃぃぃ﹂
股間に噛まれたような痛みを感じ叫んでしまう。
﹁あぐぅぅ、ひぐぅぅ﹂
120
小さな突起を噛まれては舐められ、そして噛まれる感触が股間から
頭に走り抜ける。
こ、これってクリトリスを噛まれてる!?
女性の体の敏感な場所を噛まれる度に体が跳ねる。
体が跳ねても、エインは両手で僕の腰に抱きついて離れず噛むのを
辞めない。
﹁ひぎぃぃぃぃ、あぅぅぅぅ、ああぁぁぁ﹂
暫くたつと、痛かったはずがそれ以外の感覚が湧いてくる。
﹁ハッハッハッハッ、ひぅ、ハッハッ﹂
噛まれても体が跳ねなくなってきた。
クリの感覚に慣れてきたと油断した瞬間、強く噛まれる。
﹁ひぎぃぁぁっぁぁん﹂
痛みか快感でかわからないが、僕は一瞬で意識が飛んだ。
﹁ぷふぅ。お姉様イキましたね。潮まで吹いて。あら? お姉様?
また気持ちよくて気絶したんですか? 本当に駄目なお姉様です
ね。でも、大好きですよ﹂
121
第8話 痛いのがお好き♪︵後書き︶
エターナルバージンを手に入れたHにヘタレな生活力今のとこ0な
Mの22歳TS女子な主人公!
今の君のポジションは、気のせいかヒロインポジだぞ主人公!
はたして、スリムな巨乳の金髪ボディを使いこなす日は来るのか!
⋮こんな主人公だけど、需要あるのかなぁ。
誤字脱字の指摘、感想等お待ちしておりまふ。
122
第9話 変身はあと1回?
セカンドバージンを失った翌日の朝、僕らはギルドへ向かって東通
りを歩いていた。
今朝起きて、まずはお腹と言うか自分の膣にヒールをかけさせられ
た。
次に宿にあった共用男女別のお風呂に入った。
残念ながら他の客は居なかった。本当に残念ながら。
そして、宿の食堂で朝食を食べた。
内容は野菜のスープにパンにスクランブルエッグだ。
前日夕飯に何も食べてない事を差し引いても、かなり美味しかった。
朝食後にチェックアウトして、今はギルドへと向かい中だ。
もはや高級ホテルと言っても差し支えないほど、素晴らしい宿だっ
た。
日本に居た頃なんて、寝るのは自宅の硬いベッドにユニットバスの
狭い風呂。
飯はコンビニ弁当かカロリーバー、良くてファストフードだ。
柔らかい清潔なベッドに、広いお風呂、朝は手作りご飯。
どう考えても、ファンタジー世界の今の方が豊かな生活だ。
﹁お姉様、顔色が悪いですが大丈夫ですか?﹂
123
﹁大丈夫大丈夫。ちょっと自分の過去を振り返って、げんなりして
ただけ﹂
日本の生活は置いといて、新たな発見を思い出す。
宿を出る時に自分の衣類は装備画面から着たのだが、面白い事がわ
かった。
バンダナを装備したらポニーテール状態で装備できたのだ。
気になったのでアイテムボックスに戻してから、鉢巻で装備と思っ
て装備したら鉢巻状に装備された。
装備する時、どう装備するか意識すると融通が利くようだ。
やるな装備機能君。
それとエインの持ち物についてだ。
水筒その他を腰にさげているが、それはアイテム欄には表示されな
い。
服やら短剣は装備画面で表示されている。
仲間の装備管理はゲームと同じだが、アイテム類は別のようだ。
︻全てはずす︼だと水筒とかも下に落ちてたが、あれはベルトやズ
ボンにくっ付いてたからか?
通りで確認するわけにはいかないので、頭のメモに要確認と記して
おく。
﹁お姉様、考え事も良いですが、今日からしっかり稼がないとまず
いですよ﹂
﹁必要な事を考えてたんだよ。今日からちゃんと稼ぐ気だけど⋮。
124
まずいって?﹂
﹁お金がもうほとんどありません﹂
そういえば所持金の確認はしてなかった。
僕は無一文なので、今の所エイン頼りだ。
﹁残り金額は?﹂
ゴールド
﹁4万Gくらいです﹂
ゲームで町の宿に泊まるのは一人500Gだったので、4万もあれ
ば暫く大丈夫だと思うんだが。
﹁昨日泊まった宿は一泊二人で14000Gかかるので、後2泊分
しかありません﹂
﹁なにぃ!? 一泊500Gじゃない!?﹂
﹁⋮⋮そんな安宿はないと思います﹂
目の上下に一本線を引いた、所謂ジト目でエインが僕を見てくる。
ゲ、ゲームの時と価格が大違いだ。
﹁何もしないと三日後には二人揃って娼館に身売りですよ﹂
その言葉を聴いて、物凄い焦りと共にやる気が出てきた。
﹃M属性﹄を持つ僕が娼館などに行ったらどうなるか⋮。
125
﹁せ、性奴隷になど成るものか﹂
闘志を漲らせ、僕とエインはギルドへと入った。
ギルドに入るとざわざわとした活気に満ちていた。
ボードを見る人。
待合席で雑談に花咲かせている人。
カウンターに骨やら皮やらを置いて受付の人と話している人。
昨日より人が多い。
朝だからか?
時刻は9時32分。
朝から仕事を探しに大勢来ると言う事は、冒険者は勤勉なのかもし
れないな。
姿格好や種族がまちまちで、雑多な雰囲気だ。
鎧を着てる人も居ればローブを着てる人も居る。
種族も様々で、人間だけじゃなく虎顔の人やワニ顔︵多分リザード
マン︶や角生えた竜顔︵多分竜人︶の人が居る。
残念ながら、人間に猫耳と尻尾の生えた猫人や、耳長のエルフ、ロ
リッ娘なドワーフ冒険者はいない様だ。
ヒゲモジャなドワーフのおっさんは居たが。
﹁お姉様、きょろきょろ見てないで行きますよ﹂
126
エインが僕の手を引いてEのボードの前で止まる。
ボードの前で事前に決めていた依頼書を一緒に探す。
受けるのは街中のお使いクエストだ。
ゲーム中、クエストをクリアすると仲間全員に経験値が入る。
レベルやクエストのランクや内容によって取得経験値は変わるが、
どのクエストでも入るのだ。
クエストをクリアして経験値が入るかを、まずは安全な街中クエス
トで確認したい。
ボードに張られた依頼書を確認するが︱︱
﹁ありませんね﹂
﹁ないな﹂
街中で終わりそうなクエストが一個も無い。
ゲームでは街中クエストは報酬も低く数も少なかったが、まさか0
とは⋮。
﹁あ∼、お嬢さん達、ちょっといいかな?﹂
僕らが依頼書を探していると、背中から声をかけられた。
振り向いた先に居たのは、昨日会ったダグラスさんだ。
﹁昨日はすまなかった。女性にいきなり、一緒にクエストを受けな
いかと言うのは色々失礼だった。警戒されても仕方ないと思う﹂
127
昨日の事を頭を下げて謝って来る。
昨日は僕が嫉妬に駆られて断ったと言うのに、ダグラスさん、マジ
いい人だ。
﹁ダグラスさんは丁寧に説明してくれたのに、此方もすいませんで
した﹂
﹁い、いや、そう言ってくれるとありがたいが、俺もいきなりすぎ
た。すまん﹂
お互い頭を下げて謝り合う。
すると、横に居たエインが口を開いた。
﹁あの、街中で済むような依頼がないんですか、何かご存知ですか
?﹂
﹁ん? あぁ、一昨日20人くらいの新規登録の冒険者の集団が居
て、彼らが受けたらしい﹂
⋮心当たりがある話だな。
エインと目を合わせると、頷いてきた。
きっと彼らの事だろう。ちゃんと堅気として冒険者を始めたようで
良かった。
その内再会する事もあるだろう。
﹁俺も一つ質問があるんだが⋮。お嬢さんに名乗った覚えがないの
に、何故俺の名前を?﹂
128
﹁へ?﹂
ダグラスさんの質問に内心焦る。
こっちは説明キャラ兼頼れる兄貴として知ってたので、名前を言っ
たが⋮。
初めて会う他人が名前を知ってたら怪しいよな。
僕の素晴らしい頭脳は高速で言い訳を捏造する。
﹁初心者に優しいダグラスって言うナイスガイな冒険者が居るって、
噂で聞いてたんですよ∼﹂
﹁そうなのか! ハッハッハ、俺も有名になったもんだ﹂
あっさり信じてくれるダグラスさん、マジいい人。
エインは、そろそろ見慣れてきたジト目で見てくるので、適当なウ
ソだとばれてそうだ。
﹁俺はギルドによくいるからよ。何かあったら気軽に声かけてくれ。
じゃあな、お嬢さん達﹂
最後まで気遣いある言葉を残し、去っていくダグラスさん。
﹁で、お姉様、どうします?﹂
﹁仕方ないから、第2案でこれを受けよう﹂
僕は一枚の依頼書を取って、エインと受付カウンターへと向かう。
129
向かうのはもちろん受付エルフさんのカウンターだ。
猫や長耳やロリの冒険者が見れなかった分、受付エルフさんを見る
のだ。
向かう途中に人とぶつかり、反射的に頭を下げる。
﹁あ、すいません﹂
﹁おっと、こっちこそ悪かったな、お嬢さん﹂
その人は謝る僕を、軽く手を上げて制するが⋮。
リアル虎顔、近くで見るとちょ∼怖いっす⋮。
﹁は∼、良い天気だなぁ﹂
僕らは現在、カルドの東門を出て1時間ほど歩いた場所にある﹃東
の草原﹄に来ている。
受けたクエストは薬草納品。
報酬は納品する薬草の量で決まり、期限は1週間だ。
クエストを受ける時に紹介された場所で、マップにも地名が載った。
ギルドから借りた背中に背負える籠を持って、現在薬草を採取中だ
アイテムボックスがあるので不要なのだが、借りないと悪目立ちし
そうなので借りてきた。
130
﹁お姉様、ボーとしてないで薬草を採ってください﹂
﹁だってさー、一時間もこのだだっ広い草原で薬草探してたら、飽
きた﹂
﹃東の草原﹄は見渡す限りの草原で、たまに大きな岩や背の高い草
が生えている。
僕等以外には人が一人も居ない、静かな草原だ。
その大きな草原の中で、思ったよりたくさんゲームの時と同じ見た
目の薬草が生えていた。
ゲームの時は目的の場所に到着したら、採取コマンドを押すだけだ
った。
だが今は⋮。
﹁一個一個引っこ抜くのめんどくさいぞ﹂
﹁めんどくさいから、お金もらえるんですよ。ちゃんとやって下さ
い﹂
エインは薬草を見つけては腰をかがめ、引っこ抜いて背中の籠に入
れる。
僕は引っこ抜いてアイテムボックスに入れ、後で纏めて籠に入れる
つもりだ。
﹁お金になるって言ってもなぁ。1時間もしたら飽きるよなぁ﹂
手に持った薬草を見つめ、つい愚痴る。
ファンタジーの癖にやってることが、日本の農家の皆様と同じでご
131
ざる。
そこで頭の中の確認事項を思い出す。
装備画面を開いても、薬草は装備されていない。
と言うか、装備品じゃないので装備カテゴリーに無い。
手に薬草を持ったまま︻全てはずす︼を実行する。
着てた服や鎧と共に、手に持ってた薬草も地面へ落ちる。
﹁おぉぉ、つまり︻全てはずす︼は、装備品以外もはずすヌード機
能と言うことか﹂
これでいつでもエインを裸に剥ける。
と邪な事を考えていた僕に叱責が飛ぶ。
﹁お姉様!﹂
はい、すいません!
へんな事考えててすいません!
﹁後です!﹂
﹁む﹂
﹁グルルルル﹂
エインの声に反応して僕が後ろを振り向くと、そこには狼が2匹居
た。
132
僕は素早く狼に視線をあわせ名前を確認する。
2匹はお馴染みウルフさんだ。
仕舞ってたヒゲ親父から奪った剣を装備すると、手の中に剣が生ま
れた。
この剣、名前は﹃錆びた剣﹄。
錆びた状態がデフォルトなのか、アイテムボックスに入れても錆び
たままだ。
僕が剣を構えた瞬間、1匹が飛び掛って来た。
その飛び掛って来た狼の軌道から体をずらし、横をすり抜けるよう
に通ると同時に、剣を上顎と下顎の間を通過するように薙ぐ。
すると狼は体を上下に分断されて、僕の後方の地面へと落ちていっ
た。
剣聖だからかセシリアの体のせいか、剣を持った状態だととても素
早く的確に、そして優雅に動ける。
中学の剣道の授業時とは大違いだ。
あの時は、武道を学ぶと言うより共用の防具の強烈な匂いに耐える
精神的修行だったな。
懐かしさに微笑みながら斬った狼を見ると⋮。
グロ⋮。
上下に斬ったものだから、色々と悲惨なことになっていた。
133
ここってゲームの世界か、それを基にしたした世界だったら、もっ
とデフォルメして欲しい。
僕が気持ち悪くなっていると、もう一匹が襲い掛かってくる。
反射的に剣で斬りそうになるが、先程の光景を思い出しグーパンチ
で撃墜した。
パンチで吹っ飛んだ狼は、そのまま動かなくなる。
戦闘が終わったことを確認すると、エインが近づいてきた。
﹁はぁ∼、お姉様、戦闘力だけは凄いですね﹂
﹁だけ、はいらないと思うんだ﹂
剣をボックスに戻し、僕は殴った狼に近寄りその死体をつんつんす
る。
ゲームだとステージの敵を全て倒すか勝利条件を満たすと、戦利品
画面に移行するのだが⋮。
きっちり死んでるが、戦利品関連は出ない。
﹁戦利品は出ないのかぁ⋮﹂
﹁毛皮とか売れますよ。持って帰りましょう﹂
なるほど、普通に死体を持って帰って売ればいいのか。
この毛皮が戦利品かぁと思いながら死体を触っていると、ポンッと
戦利品ウィンドウが出た。
134
戦利品にあるのは狼の毛皮。
何故急に戦利品画面が出たのかと考える。
アイテムボックスに入れるのと同じ感じで、倒した敵に触って戦利
品と思えばいいのか?
もう一匹で確認する為に、今出てる戦利品処理画面で毛皮を取得に
移動させOKボタンを選択。
すると、狼の死体が塵となって崩れるように消えた。
﹁きゅ、急に死体が﹂
﹁あ、僕のせいっぽい﹂
どうやら戦利品をとると死体は消えるようだ。
ちっ、戦利品画面と死体の二重取りは出来ないようだ。
もう一匹のスプラッターな惨状を見ないように足の先を触りながら、
戦利品と考える。
さっきと同じく戦利品画面が出てきて、同じ様に毛皮があった。
同じ様に処理して回収する。
死体も同じく塵と化し消えた。
戦利品が取れる事を知って、僕は胸が高鳴るのを感じた。
﹁ふふふふ、戦利品が取れるならどうとでもなる! ふはははは!﹂
135
僕が高笑いを上げていると、エインが正面に立ち厳しい目で見てく
る。
いくら僕がM属性の称号持ちだからって、そんな目で見られても嬉
しくないんだぞ。
﹁お姉様がお強いのも、狼から戦利品を回収したのもわかりました﹂
﹁うんうん、毛皮はアイテムボックスにあるはずだから、儲かった
儲かった﹂
﹁で・す・が! 外で裸になって戦うのはやめてください!﹂
﹁へ? ⋮あ!﹂
︻全てはずす︼の機能確認の為、裸になってたところを襲われたん
だった。
エインが怖い目をしたままだったので、僕は急いで装備を回収し服
や鎧を着る。
くそぅ、裸になると襲ってくるウルフが悪い。
僕が装備をしっかりしたのを確認すると、エインは薬草取りに戻っ
ていった。
さっきのようにウルフがでたら、エインではまだ危ない為、守れる
様に僕はエインの側へ行く。
そこで戦利品が本当にあるか、アイテムボックスを確認する。
ふふふ、ちゃんと毛皮が2個ある。
136
ちゃんとゲームのように戦利品が回収できるのを知り、安堵する。
ついでとステータス画面を確認し、経験値バーの状態を見る。
カオスブレードは、どんなにレベル差がある敵でも倒せば経験値は
入るのだ。
まぁウルフと僕じゃレベル差がありすぎて、微々たる物だが。
経験値バーを確認すると、ちみっと1ミリくらい青くなっていた。
経験値の確認が問題だったが、それ以上に気になることがあった。
◇セシリア・マリンズ
Lv60 年齢:22 職業:剣聖
HP:1126/1126
MP:400/400
力 :482
器用:294
体力:290+50
速さ:310
賢さ:182−150
精神:184−150
魅力:360
賢さと精神のマイナスが50も増えている。
今特別な装備をしていないとすると、またも称号補正だろう。
前も思ったが、カオスブレードには−補正の称号は無い。
その事から考えて、この世界特有の称号。
下手すると僕だけ得られる特別な称号。
137
恐る恐る称号を確認すると、知らない称号が2個ほど増えていた。
□裸族:防具なしの場合、被ダメージ大幅減少 賢さ−50 精神
−50
□露出狂:防具なしの場合、攻撃力に大幅ボーナス
今度の称号はマイナスだけじゃなく、パッと見よい効果もあるよう
だ。
だが、だが⋮。
﹁裸族に露出狂ってどういう事だ! 僕がよく裸で居たからか!?
だからか!?﹂
露出狂の効果を見るに、スキルのバーサーク、日本語に訳すと狂暴
の狂とかけてやがるな。
予想外の称号を得てしまい、動揺する。
効果だけ見ると決して悪くないが、防具なしってつまり裸って事だ
よな。
今の装備だと裸が最強状態になるのではなかろうか。
僕はこのまま進んだ未来を考える⋮⋮⋮
︱︱セシリアの脳内劇場︱︱
皇帝﹁くっくっく、強く美しい貴様もここまでだな﹂
セシリア﹁くっ、強い、強すぎる﹂
138
皇帝﹁貴様、やはり物凄く美しいな。よし、余の肉奴隷にしてやろ
う﹂
セシリア﹁に、肉奴隷だと!?﹂
皇帝﹁嬉しかろう。毎日アンアン言わせてやる﹂
セシリア﹁ふ、ふふふ、甘い。甘いぞ皇帝!﹂
皇帝﹁なんだと?﹂
セシリア﹁僕はあと1回変身を残している!﹂
皇帝﹁な、なんだと!?﹂
セシリア﹁とぅ! ︻全てはずす︼﹂
皇帝﹁き、貴様、裸に!? それは変身ではなく、変態だぞ!?﹂
セシリア﹁問答無用! とりゃ!﹂
皇帝﹁ぐわぁぁああ﹂
︱︱セシリアの脳内劇場 終了︱︱
仮想最終ボスとのシリアスな戦いで、裸で戦う自分。
139
どんなに盛り上がった最終局面でも、裸な時点で台無しだ。
﹁な、何とかしなければ!﹂
僕が将来に苦悩して叫ぶ横で、エインは淡々と薬草を採っていた。
︱︱海都カルドにある城の一室
﹁へっくしゅ!﹂
﹁陛下、風邪ですか?﹂
﹁いや、大丈夫だ﹂
その部屋には、黒を基調とした金糸や宝石で飾られた豪奢な服を着
た男と、青いドレスを着て左目に眼帯をした女が居た。
金髪金眼の男は、膝を折り頭を垂れた女を見下ろしながら言葉を発
する。
﹁ネーブル、兵の増強はどうなっている?﹂
﹁ハッ! ご指示通り、錬度を上げ兵数を増やそうとしております
が⋮﹂
言葉を止めた女を、男は厳しい目で見つめる。
140
﹁先日の作戦の被害が予想より大きいのか﹂
﹁遺憾ながら、セシリアの部隊との戦闘でこうむった被害が大きく
⋮﹂
その言葉に、男は苛立ちを露にする。
﹁忌々しい女だ。セシリア・マリンズめ。あいつのせいで、どれだ
け煮え湯を飲まされたか﹂
﹁部隊を壊滅させる事は出来ませんでしたが、セシリアの死亡は確
認しております﹂
セシリアの死亡は喜ばしい事だが、部隊を壊滅させられなかった事
は腹立たしい。
同じ様に忌々しい法国と手を組んでまで行った作戦だけに、最大限
の成果を期待していたのだから。
﹁だが、これで連邦は自由に動く牙を失った﹂
予想以上の被害は受けたようだが、これで連邦を攻略できる。
神出鬼没に自由に動くセシリアの部隊は、実に厄介だった。
少しずつ連邦を切り取った後は、法国だ。
﹁ネーブル、優秀な傭兵団や冒険者は積極的に軍にスカウトしろ。
大陸の制覇を余の代で成し遂げるぞ﹂
﹁ハッ!﹂
141
野心溢れる若き皇帝は、確実に動き出していた。
142
第9話 変身はあと1回?︵後書き︶
裸族
取得方法 野外での裸で居る時間の累計、及び、裸での戦闘勝利の
有無
露出狂
取得方法 野外での裸で居る時間の累計、及び、野外で複数に裸を
見せる事、裸での戦闘の有無
とこんな感じです。
ゲームの世界に転生して女の子になってきゃっきゃうふふする予定
だったのに、主人公が変な方向に成長していく⋮。
誤字脱字の指摘、感想等お待ちしております。
143
第10話 海のネーブル︵前書き︶
今回は怖いお姉さんその他にビシバシされるお話です。
痛いのはいや!って方は、中盤をすっ飛ばしてお読み下さい。
144
第10話 海のネーブル
﹁今日もしっかり稼ぎますかね﹂
﹁私も少しは成長しましたし、二人でがんがん稼ぎましょう﹂
﹁エインも強くなったよね∼。具体的に言うとレベル5くらい﹂
﹁未だにお姉様の言うレベルってよく分かりませんが⋮。あ、ギル
ドタグ家に忘れたので取ってきますね﹂
﹁あいよぅ。先にギルド行ってる﹂
家にタグを取りに戻るエインの背中を見送り、僕はギルドへ足を向
ける。
初クエストを受けてから2ヶ月が経過した。
その間に様々な事があった。
借家だが家を手に入れた。
宿代がきついと受付エルフのネルファさんに相談したら、借家を紹
介してくれた。
ネルファさんの個人的な紹介ではなく、冒険者ギルドの業務だそう
だ。
ギルドは冒険者へ依頼の仲介だけでなく、武具関連のお店への紹介、
不要な装備の回収、冒険で得た素材等の買取、加えて必要なら支度
金を貸してくれたり、住む場所を紹介してくれたり、怪我や体力の
145
衰えで引退した冒険者の次の仕事を紹介したりと、冒険者へのケア
が凄かった。
まるで日本のお役所やハロワのようだと思った。
よく考えるとギルドって国が運営しているので、お役所そのものな
んだよな。
ランクもDになり、僕はレベル61、エインはレベル10になった。
クエストを成功すると経験値が入ったので、エインは5もレベルが
上がった。
クエスト成功報告時に経験値が入るのは僕とエインだけのようで︵
他の人は強くなる為に厳しい訓練や実戦をするらしく、ギルドのク
エストを受けているだけで強くなった人は居ないらしいから︶、こ
れはきっと元プレイヤー特典だろう。
あまり訓練や戦闘をしないで動きが前よりよくなった自分に、エイ
ンは不思議がってた。
どうやらステータスやレベルの概念が、この世界にはないらしい。
ネルファさんにさり気無く聞いたが、相手のステータスを調べる魔
法等もないようだ。
そう言えば嬉しい誤算があった。
僕の戦利品機能で取った素材等は高品質らしく、通常より高く買い
取ってくれた。
おかげで、借家の家を借りたり、エインの装備を整えたり出来た。
僕も新装備﹃鉄の剣﹄を購入した。
まぁ、ただの鉄の剣でレベル61には不釣合いだ。
146
だけど、初めて買った武器と言う事でお気に入りで、今も腰に差し
ている。
それに冒険者の知り合いもそれなりに出来た。
虎顔のトラさん︵本名は違う︶、竜顔のリューさん︵別にジャンプ
は得意じゃない︶その他諸々だ。
ダグラスさんとは一緒にクエストもした。
残念ながら、女性の冒険者とはお友達に成れていない。
お近づきになろうとすると、エインが優しく怒るのだ。
そうそう、転職用のアイテムも得ることが出来た。
ホーンラビット︵角がある小さなウサギ︶から戦利品を取ったら出
たのだ。
その名も﹃真祖の魂﹄。中二心くすぐるイカした名前だな。
職業をトゥルーヴァンパイアにする為のレアなアイテムだ。
魔王ルートでの仲間のヴァンパイアにしか使えないので、正直いら
ない。
でも、転職用アイテムの存在を確認出来た事が大事だ。
﹁河童ならぬ裸の川流れから今日まで、色々あったが順調だ﹂
エインと二人で仕事して、家に帰ればイチャイチャする。
お金の管理はエインがしているが、ちゃんとお小遣いは貰える。
高校生の時に憧れた、彼女や新妻とのイチャイチャ同棲生活のよう
で素晴らしい。
147
﹁今日も頑張るぞ∼﹂
僕はスキップしそうなほど浮かれながら、ギルドへと入っていった。
ギルドに入ると、いつもと空気が違った。
それもそのはずで、黒い全身鎧を着た兵士らしき人が何人も居たか
らだ。
しかも、あの黒鎧は帝国の精鋭部隊の印なので、ただの兵士ではな
い。
何故兵士がギルドへ?
兵士がギルドに居る事で思い当たるのは、名声を上げた主人公を軍
にスカウトする時だ。
まさかここに主人公が居るのか。
と思いながら兵士達を見ていると、中心に居た人物と眼が合った。
眼が合った瞬間、ゾワッとして汗が吹き出る。
青い髪をして左目に眼帯をした黒い軍服の女性。
帝国四将の一人で﹃海のネーブル﹄と言われる将軍。
作中四人しかいない職業が将軍のキャラで、皇帝に忠誠心厚いキャ
ラ。
魔法も近接攻撃も得意と言う、敵としては厄介なNPCだ。
148
レベルも70で僕より高いはず。
それに、今の僕は魔法耐性に関連する精神に大きな−補正を受けて
いる。
もし戦う事になったら、絶対に勝てない相手だ。
ギルドにネーブルが来るイベントなんて知らない。
主人公をスカウトするにも、ただの兵士Aが来るだけのはずだ。
ネーブルの迫力に思わず後ずさると。
﹁セシリア!?﹂
その声を聴いた瞬間、逃げようとするが︱︱
﹁逃がすか! スリープ!﹂
僕は逃げられずに意識を失った。
﹁ん⋮あぁ⋮﹂
眠りから覚めるように目覚めた僕は、眼を開けて驚愕する。
目の前には、水色のドレスを着た眼帯の女性。
そして牢屋の様な鉄格子の部屋。
﹁やっと目覚めたか。セシリア﹂
149
その声に反応してビクッとすると、ジャラっと音がした。
音のした方を見てみると⋮。
手足に鎖の付いた枷をされてる。
体を見ると、服も一切なく裸だった。
﹁さて、貴様良く生きてたな。どうやって助かった? 何故カルド
に居た?﹂
⋮どう答えるべきなんだろうか。
もし僕は本当の事を話したらどうなるか考える。
セシリアに転生して云々⋮崖から落ちて頭がおかしくなったと思わ
れそうだ。
じゃあ、ただ単にセシリアと認め、運よく助かり軍を抜けて冒険者
となったと言えば?
僕が言われても信じられない内容だ。
裏があると考えると思う。スパイしてたとか。
そもそもセシリアと認めた時点でアウトな気がする。
﹁貴様の事だ。簡単には口を割るまい。おいっ、やれ﹂
僕が悩んで無言で居ると、ネーブルが部屋の中に居た部下に声をか
けた。
その部下達が、壁に在るレバーを動かした。
すると、僕の両手に繋がる鎖が段々と上に上がっていく。
そして、僕の体が空中で浮かぶくらい引きあがった処で止まった。
150
それを確認したネーブルは、部下から鞭を受け取り構える。
僕は焦って声を出す。
﹁ま、待って、僕はセシリアじゃない! ひゃぁ、いたっ、やめっ、
てっ﹂
ビチン、バチン、ピシャン、バチン。
ネーブルは僕の声を気にする事無く、鞭を振るう。
﹁いっ、あっ、つっ、ぐぅぅ﹂
鞭は僕の体中を痛めつけた。
腕、胸、お腹、背中、お尻、脚と。
僕の全身に赤い線が刻まれた処で、ネーブルは鞭を止めた。
﹁はぁ、ひぃ、ぼ、僕はセシリア、じゃ、ない﹂
﹁戯言を。ここまでされて話さんとはな⋮。仲間の為に囮になるだ
けはある⋮か﹂
そう言うと、ネーブルは部下に向かって手を上げた。
僕が痛みと腫れで熱くなった体に耐えていると、徐々に脚が前に引
っ張られあがっていく。
僕は両手両足を伸ばされた仰向きの状態で吊るされた。
151
﹁さて、これは耐えられるかな﹂
﹁ひぎぃぃぃぃ﹂
開かれた脚の間、つまり僕の秘所に強烈な痛みを感じた。
﹁ひぎゅ、あぐっ﹂
何度か秘所を鞭で叩かれ、気絶しそうになる。
その痛みに、セシリアと認めたら殺されると強く思った。
痛みに耐えながら、僕は必死に否定の言葉を出す。
﹁ぼ、ぼきゅ、はセシリ、ヒャじゃない⋮﹂
﹁ふぅ。我慢強いにも程があるな。仲間の為に一人身を投げ出す等、
将のする事ではないぞ﹂
僕の横に来たネーブルが、見下ろしながら言ってきたが⋮。
苦し紛れに、一言僕の口から言葉が出た。
﹁あんた、だって、する、だろ⋮﹂
ネーブルは仲間にも厳しいスパルタお姉様キャラだ。
だが、皇帝がピンチの時に身を張って殿を務めようとする。
それに、好感度を上げて攻略すれば、主人公と二人の時は優しくデ
レる。
本当は根は優しいツンデレお姉さんだ。
ゲームでの事を知ってたので、つい出た一言だった。
152
﹁お前からそう言われるとはな⋮⋮﹂
考え無しで反射的に言ったが、何故か大人しくなるネーブル。
どうやら良い方に転がったようだ。
僕が束の間の平穏にホッとしてると、ネーブルは僕の股の間に移動
し︱︱
﹁やめっ、そこは、血が、でる﹂
﹁貴様、処女か⋮ちっ﹂
僕の股間に手を触れてたネーブルが、僕の言葉を聴いたら手を離し
た。
そのまま後ろを向き、部下達へ言葉を投げる。
﹁この女が事情を吐くまで辱めろ。ただし女性兵だけで行う事と、
前は使うなよ﹂
﹁﹁ハッ﹂﹂
そのままネーブルは牢を出て姿を消した。
僕の悪夢が始まった。
﹁ネーブル様、男達にさせないのと女性器を使わせないのは、慈悲
ですか?﹂
153
﹁慈悲? バカを言うな。憎きセシリアが処女だと知ったら、万が
一だが陛下が望まれるかもしれんからだ。男共では言った処で守ら
んかもしれんからな﹂
﹁なるほど﹂
﹁貴様はとっとと人員を集め、作業を開始しろ﹂
﹁ハッ!﹂
﹁⋮⋮仕事とは言え、嫌なものだな﹂
吊るされた僕を囲むように、女性達が立っている。
人間にエルフに猫人の女性達だ。
手には短い短鞭を持った状態で⋮。
﹁何の目的でカルドに潜入してたか、早く吐いた方が身の為よ﹂
﹁ぼ、僕はセシリアじゃなくて、セシルでただの冒険者、あぁ、い
たっ、やめてっ﹂
バチ、バチン、ピチ、パチン。
僕の言葉が終わる前に、体へ鞭が振るわれる。
﹁や、やめ、てぇ﹂
154
﹁アハァ、何、この子叩くの気持ちいいわね﹂
﹁こいつ、叩かれて濡れてるにゃ﹂
﹁そ、それは、勝手にっ﹂
﹁ネーブル様が前はダメって言ってたんだから、辞めなさいよ﹂
﹁前がダメなら、ここは良いってことにゃ﹂
猫人の女性がそう言うと、僕のお尻に短鞭の持ち手部分を突き入れ
た。
﹁ひぎ、そこは、ちがぅぅ﹂
﹁こんなにヌルヌルだから、すぐに楽になるにゃ﹂
﹁楽にしてどうするのよ﹂
﹁じゃあ、楽にならないように激しくするにゃ﹂
言葉通りに、お尻に入ってる鞭を乱暴に出し入れし始める。
男女生活を通しても初めて感じるお尻の異物感に、ただただ僕は呼
吸して耐える。
突き入れられる度にお腹を押し上げられ、引き抜かれる度にお尻の
お肉を引っ張られ広げられる。
暫くの間、人間とエルフの女性は横に立ち、僕のお尻の方を見てい
た。
155
﹁ハァ、ハァ、ハァ﹂
﹁にゃ? 汁の量が増えたにゃ﹂
﹁感じてるんじゃないの?﹂
初めての異物感と恐怖で硬くなってた体も、お尻の感覚になれてき
た。
慣れてきたしせいか、少しずつ気持ち良さが出てきてしまう。
僕は感じたくないのに、押される時の苦しさと引っ張られる時の痛
みが気持ちいい⋮。
﹁こんなに大きな胸だから、凄くエロイんじゃないの?﹂
﹁ん、やぁ、はぁ、はぁ、やめ、てぇ﹂
﹁胸を力いっぱいも揉まれて感じてるんじゃないわよ!﹂
﹁いや、それ、あんたがエルフで貧乳なことの八つ当たりじゃ⋮﹂
お尻を弄られたまま、エルフの女性に痛いほど強く胸を掴まれる。
グニグニと胸の形が激しく歪に変わる。
痛いはずなのに、お尻が気持ち良くなってきていて、胸の痛みとお
尻の快感で訳が分からなくなる。
﹁はぁ、あぁん、あぁ、ひぃん﹂
﹁乳首が凄い立ってる⋮。もしかして、痛いのが気持ち良いの⋮?﹂
156
﹁ち、ちがぁ、うぅ﹂
体は女性だけど男だから、お尻に入れられたり、胸を無理矢理揉ま
れて気持ちよくなんてない。
⋮ないはずなのに、鞭で叩かれた痛みの熱とは別の熱で、体が火照
ってくる。
﹁ぼ、僕は、男だからぁ、お尻でなんか、気持ちよくないぃ﹂
﹁む、こんなに濡らしてて良く言うにゃ﹂
﹁ふ∼ん、男の子なんだ。じゃあ、ここ弄ってあげる﹂
今まで見学してた人間の女性が、僕の股間へ手を伸ばす。
そして股の上部にある肉を掻き分けてクリの皮を剥いた。
﹁ぷっくり立って、確かに男の子かしら。でも、男の子って言うに
は小さすぎるから伸ばしてあげるわ﹂
﹁ひぎゃぁぁ﹂
クリを強く摘まれ、そのまま上に引っ張られた。
今度は純粋な痛みで悲鳴を上げる。
﹁あんた達も楽しんでないで、これくらいしなさいよ﹂
﹁はいはい、この無駄な駄乳を痛めつけてやるわ﹂
﹁貧乳の恨みは怖いにゃ⋮。にゃ∼ももっと広げるように手でする
157
にゃ﹂
﹁﹁﹁せーのっ﹂﹂﹂
﹁ひぎゅあぁぁあああ﹂
胸を潰れるほど握られ、クリトリスを取れるかと思うほど引っ張ら
れ、お尻を指で裂けるほど広げられて、白目を剥いて僕は気絶した。
﹁この人、おしっこでたにゃ∼﹂
﹁胸が大きいからって、やりすぎたわね⋮﹂
﹁でも、この子見てると、なんか苛めたくなるわよね⋮?﹂
パチュパチュパチュパチュ。
何かがぶつかり合う音で目が覚める。
眼を開けると、知らない裸の人間の女性が、僕の股の間に入り腰を
動かしていた。
﹁あら、お目覚め? 気分はどう?﹂
﹁な、なに、を?﹂
﹁ん? あぁ、これね﹂
158
その女性は、腰を動かすのを辞めて僕の顔の横に来た。
その腰には、黒い男性器が生えていて⋮。
﹁ひっ﹂
﹁あぁ大丈夫よ。本物じゃないわ。貴女を喜ばす為に、わざわざ用
意したのよ﹂
笑顔でそう告げると、僕の股間の方へと戻っていく。
﹁ぼ、僕は、セシリアじゃないし、男だから、それはいや、だ﹂
﹁あら。貴女が気絶してる間にちゃんとほぐしたわ。どうせならお
互い気持ち良くなりたいでしょう?﹂
女性は僕のお尻に股間の物をあてがうと、一気に突き入れる。
﹁ひっ、はっ、、やめっ、やだっ﹂
﹁んっ、んっ、あはぁ、貴女も、気持ちい、いでしょぉ?﹂
あてがわれた男性器は、僕のお尻にスルリと入り、つっぷっつっぷ
っと音を立ててピストンする。
心は男なのに、形を模した偽物とは言え男性器で犯されて涙が出て
くる。
﹁うっ、ふぅ、ぐぅ﹂
﹁ご、ごめんなさい。痛かった? 大丈夫?﹂
159
僕が涙を流すと、女性は男性器を抜いて指で涙を掬ってくる。
僕は抜けて露になった男性器に向かい、気持ちを吐露する。
﹁ソレはいやぁ﹂
﹁そう、ごめんなさいね。わかったわ﹂
僕の言う事を聞き入れてくれたのか、女性は腰につけていた男性器
を外した。
そして、優しく僕の胸を揉む。
﹁これはどう? 痛くない?﹂
﹁痛くない⋮﹂
女性は優しく胸を揉んで、僕の反応を確認する。
僕が痛くないと言うと、片手を股間に伸ばして指をお尻に入れてき
た。
それに驚いて、僕は体を震わせた。
﹁ごめんなさい。でも、さっきの鋳型よりは怖くないでしょ?﹂
﹁う、うん、アレよりはまし⋮﹂
女性は胸を揉んだまま、お尻に入れた指を動かす。
それは決して痛くなくて、僕を気遣うようにゆっくりとだ。
﹁貴女がイキたい時にイッていいのよ﹂
﹁ふぅ、ふぅ、はぁ、ふぅん﹂
160
優しく語りかける女性に少し安心して、気持ちいい感覚が体に広が
る。
中々イケないのに、女性は辛抱強くずっとしてくれた。
かなりの時間がたった後、お尻の入り口に指が擦れる感触が気持ち
良さだけになる。
﹁はぁ、あぁ、お尻、ダメなのに、感じちゃう﹂
﹁そう、良かったわ。少し早く動かすから、そのままイクといいわ
よ﹂
女性がお尻の指を少し早く動かすと、入り口のお肉が指を強く締め
る。
強く締めると快感が一気に増えて、イキそうになる。
﹁あっ、あっ、あっ、い、イクぅぅぅぅ﹂
イッた時の絶頂と疲労で、僕はまたも意識を失った。
﹁イッたのね。良い子。次は苦痛の組だけど、この子大丈夫かしら
⋮﹂
あれから僕は、何度も何度も違う女性達に体を弄られた。
凄く痛くされ、時には優しくされ。
眼を覚ませば鞭で全身を叩かれたり、ある時は胸を撫でられ、次の
161
時はクリを引っ張られ、その次はお尻の穴を広げられ。
疲労と空腹と快感と苦痛で、気絶と目覚めを何度繰り返したか分か
らない。
﹁僕、はぁ、セシリ、アだか、らぁ、もう、やめてぇ⋮﹂
起きてるのか寝てるのか分からない状態で、僕は自分がセシリアだ
と白状した。
﹁これは⋮。貴様らやりすぎだ!﹂
﹁ハッ!! す、すいません。この女性を見ると、痛めつけるのを
止められない者も居てつい⋮﹂
﹁⋮⋮貴様もその一人か?﹂
﹁ひっ。も、申し訳ありません﹂
﹁⋮⋮いつからこの状態だ﹂
﹁三日前かと⋮。そのどうしましょう?﹂
﹁こいつはセシリアと別人だと、エインと言う冒険者の証言があり、
複数の冒険者からも証言が取れた﹂
﹁それでは、開放を?﹂
﹁いや⋮。セシリアと瓜二つ故に、他国が知れば使い道が色々とあ
るのでな。開放は出来ん﹂
162
﹁では、このまま牢に入れておきますか﹂
﹁はぁ、前に冗談で言ったんだがな、陛下のお耳に入った。この娘
は帝都へと輸送する﹂
﹁ハッ!! ではすぐに準備いたします!﹂
﹁⋮⋮聞こえないとは思うが、すまなかった。セシリアでないなら、
陛下の許へ行けば悪いようにはならんはずだ。⋮⋮すまなかった﹂
ガラガラガラ、ガチャ、ガチャ、ガラララララ。
地面の揺れで眼を覚ますと、知らない部屋に居た。
﹁土砂崩れで通れないだと? ちっ、では沼地を通るしかないか⋮﹂
﹁隊長、大丈夫でしょうか? 沼地にはあの⋮﹂
﹁こういう時の為に日ごろ訓練をしてるんだろうが! 行くぞ!﹂
部屋の外からそんな会話が聞こえたが、僕は疲労で意識が保てずに
すぐに眠った。
163
遠くで人の叫び声がする。
﹁敵襲だ! 剣を持て! ぐっ、ぐがっ﹂
﹁た、隊長!? くそ、うわぁぁああ!﹂
聞こえてくる声も、夢の中のようにふわふわしてて聞き取れない。
体がぽかぽかして熱っぽくて、僕はまたすぐに寝入ってしまった。
ガチャ。
﹁よっほ∼っと。帝国の奴ら、馬車を守ってたけど何を隠してたの
かな∼っと﹂
キョロキョロ。
﹁おや、これは綺麗なお譲ちゃんだねぇ﹂
164
第10話 海のネーブル︵後書き︶
作者は不幸なエッチは嫌なので表現控えめに⋮なってますか?
感想やご意見などお待ちしておりまする∼。
165
第11話 ヌルヌル♪︵前書き︶
主人公の受難?は続くよどこまでもぅ∼。
人型以外とムニムニモニモニが苦手な方は、最後の5行くらいだけ
読んでくださいっ。
166
第11話 ヌルヌル♪
僕はボーとする意識のまま、目が覚めた。
女性達に責められ続け、首から下はどこも腫れていた。
腫れによる熱と痛みは慣れてしまったので、気にならなかった。
と言うより、じわじわ感じる腫れの痛みと熱が少し気持ちよくすら
あった。
目覚めると、今度は全身をヌルヌルとした温かい物に包まれた感触
がした。
また違う攻めかと思って、抵抗せずに身を任せた。
疲れとか空腹とかで衰弱していて、抵抗なんて出来ないけど。
﹁はぁ、うぅん、ふぅ、あぁん、はぁ﹂
夢見心地のまま、その感触に身を任せる。
全身に吸い付くような温かいヌルヌルに包まれて、吐息を上げる。
足の先から首の下までヌルヌルして気持ちいい。
﹁あぁん、いぃ、ぃぃ、あぁ﹂
僕の言葉に反応するように、胸を持ち上げ影になってた部分にもヌ
ルヌルが吸い付く。
胸の次は、腫れて少し大きくなってたクリの皮を剥いて、クリも根
167
元まで包まれる。
﹁ひぃん、はぁん、らめぇ、むにぃ、らめぇ﹂
ヌルヌルはクリや胸を丁寧に揉むように動く。
温かくて余す所なく肌に吸い付き揉まれて、気持ちよくて声が出る。
気持ち良くてぽわぽわする中で、眼に入った周りの風景が変わって
る事に気づいた。
いつの間にか、岩ばかりの洞窟のような場所に居るようだ。
そう言えば周りに誰もいない。
﹁ひぃ、はぁ、んふぅ、はぁぁ﹂
周りを見てる間も、ヌルヌルが全身を優しく愛撫してくる。
それが気持ち良くて、周りの事が気にならなくなってしまう。
﹁あ∼、はぁ、あぁ﹂
僕が喘ぎ声を出していると、ヌルヌルが僕の脚を持ち上げ左右へ広
げた。
その直後、ヌルヌルが膣とお尻の穴を押し広げて入ってきた。
今まで弄られなかった膣に入りそうになって、驚きと不思議に思っ
て声を上げた。
﹁そこはぁ、ちぃ、でちゃう、のぉ﹂
僕が言うと、ヌルヌルは一瞬止まる。
168
しかし、すぐに両方の穴の奥目掛けてヌルルルと突き進む。
﹁あへぇ、いたく、なぁぃ、あぁん、いぃ﹂
破瓜の痛みはなく、むしろ初めて迎える指以外の感覚が気持ちいい。
膣の中に入られた事に嫌悪感はあった。
でも、膣とお尻の中をぴったり吸い付く温かいヌルヌルが気持ち良
かった。
﹁やぁ、なのにぃ、いぃ、あはぁ﹂
全身を包んだまま、膣とお尻に入って動かないヌルヌルの感覚に感
じていたら、伸びたヌルヌルが口の中に入ってきた。
﹁ん、ぐ、ぐぅ﹂
急に口に入ってきたヌルヌルで息が出来ずにいると、口、膣、お尻
のヌルヌルが一瞬膨らんで︱︱。
﹁げほっ、げほっ、んぐ、ごく﹂
口の中には温かい液体が溢れ、膣とお尻の中は温かい何かが広がっ
た。
僕の口︱︱たぶん膣とお尻にも︱︱液体を出したら、ヌルヌルは僕
からサッと離れた。
口の中の液体を反射的に出すが、少し飲んでしまった。
ヌルヌルが離れて快感から開放されて、それでも余韻でまどろみな
169
がら、ゆっくりとまた眠りについた。
口に残った液体が、甘いなぁって思いながら。
目が覚めたら、牢屋ではなく洞窟のような場所に居た。
顔を動かして回りを確認しても誰もおらず、ここがどこだかわから
ない。
快感と痛みと疲労でグルグルしてた頭が、少しすっきりしている。
体の腫れはまだジンジンして熱いが、目覚める前より痛みが引いて
る気がする。
だけど体は全身軋み、動けそうに無い。
動けない体でボーとしていたら、サッサッサッと地面を擦るような
音が聞こえた。
音がする方に眼を向けると、そこに1メートル位の背丈の水玉が居
た。
﹁す、すらい、む?﹂
液体の水が固まったような、ふにふにしたスライムがそこに居た。
スライムはプルプル何度か震えると、ゆっくりその身に僕の体を脚
から飲み込んでいく。
﹁う、ぐ、つぅ﹂
食べられると思い逃げ出そうとするが、体は動いてくれない。
170
僕の首までぷよぷよした体で覆うと、動きを止めた。
それから少しすると、スライムが温かくなって、僕の全身がヌルヌ
ルした感触と温かさで気持ちよくなる。
﹁やめて、食べないでぇ﹂
スライムが僕の全身をマッサージするように動く。
クリや乳首も器用に摘んで揉みしだく。
溶かされて食べられると思いつつも、気持ち良くて声が出る。
﹁あひぃ、やぁ、とけるぅ、やぁぁ﹂
それなりに長い時間、スライムに飲まれて揉まれて居た。
だけど、僕が溶ける気配はなかった。
なんとなく僕を食べる気が無いという事を察し、安心したら別の声
がでた。
﹁あぁ、いい、クリ優しく揉んでぇ、いいのぉ﹂
スライムは僕の全身を揉みながら、クリだけ少し強く丁寧に揉んで
くる。
自分の言った言葉に反応された事に驚きつつ、気持ち良さが高まっ
ていき⋮。
﹁あぁん、スライムで、イクゥゥ、あぁぁぁ﹂
僕がスライムの中でイッてビクビク体を震わせていたら、お尻に圧
迫感を感じた。
何?と思う間もなく、お尻の中にスライムが侵入してきた。
171
﹁お尻、なに、んぐぅ﹂
お尻だけじゃなく、口にも伸びたスライムの一部が突き入れられる。
口が塞がれ混乱してる最中も、お尻のスライムはどんどん奥へ入り
込む。
お尻のスライムが止まったと思ったら、口とお尻のスライムが膨れ
る。
そして、一気に先端からビュルっと液体を注ぎ込んできた。
これって、まさか!?
液体を注いだスライムは、僕を体から出して地面に置く。
地面に置かれてすぐに、僕は口の液体を吐き出そうとした。
しかし、スライムが僕の鼻と口を塞ぎ吐き出せず、それ処か殆ど全
部飲み込んだ。
﹁ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ングッ﹂
僕が飲み終わると、スライムは口と鼻を塞ぐのを止め、何度もプル
プルプルプル震えた。
やる事が終わったとばかりに、そのままスライムはどこかへ行って
しまう。
その去っていくスライムを見ながら、僕は急激に眠気に襲われた。
眠りに落ちながら、スライムとの事を考えた。
172
さっきのってスライムの精子だよね⋮。
僕を食べるんじゃなくて、子供を生ませる気なんだ⋮。
眠りそうになりながら、唇をペロっと舐める。
元男として、男とエッチするのなんかごめんだ。
男の精子とか考えただけで寒気が走る。
スライムのだってそれは例外じゃないはずだ。
なのに⋮。
さっきのは、凄く甘くて美味しかった⋮。
僕が目覚めた頃、またスライムがやって来た。
まだ体は全身だるく、動かすと痛みが走り逃げ出せそうに無い。
試しにヒールをしてみたけど、体のだるさや軋みは取れなかった。
怪我には効くけど、体力とかは回復しないとかだろうか。
プルプル震えた後に、スライムがまた僕の全身をその体に入れる。
女性達にたくさん弄られ、スライムに精子を口とお尻に出され、気
持ちが投げやりになってた僕は抵抗する気が起きなかった。
男のプライドが砕けて自棄になってるんだろう。
スライムは僕の首から下を包み込むと、前と同じ様にマッサージす
173
るように揉み始めた。
﹁んっ、はぁ、イイ、もっとぉ﹂
子供を生ませる気だとしても、もうお尻に出されてるので、どうに
でもなれという気持ちで快感を貪る。
スライムに包まれながら、自分で可能な限り体を動かす。
僕が腰を押し付けると、前と同じにスライムはクリトリスを剥いて
撫で回す。
それが気持ち良くて股間が熱くなり、膣からお汁が溢れてくる。
﹁イイ、クリ、いいのぉ、もっとクリ、してぇ﹂
僕が言うと、スライムはクリの部分だけを全身とは別にプルプル震
わせて振動させる。
クリが痛くない位の強さで、細やかに振動して気持ちよさでクリだ
けでなく、膣もヒクヒクするのが分かる。
﹁ねぇ、膣にはぁ、入れないのぉ?﹂
どうせ子供を生まされるなら膣も犯されるだろうと思って、自分か
ら言った。
するとスライムは、クリの振動も全身のマッサージもピタッと止め
る。
それから少し間を置いて、僕の膣にゆっくりと入ってきた。
ヒールで治し続け、未だに処女膜があるので破瓜の痛みを想像して
眼を瞑る。
174
先端が処女膜に触れたと感じた瞬間、中のスライムの部分がヌルッ
と溶けたようになる。
そして、水が流れるように膣の奥へと流れていく。
﹁膜を破らないようにぃ、してくれたのぉ?﹂
膣の奥に入ったスライムの先端は、中でまた他の部分と同じ様に固
まる。
感覚的には、膣の入り口が閉じたまま、奥だけ広げられてる。
﹁アハァ、処女なのにぃ、奥まで犯されちゃったぁ﹂
自分の言葉に自分で酔う様に気持ち良くなり、腰を動かしてしまう。
スライムも全身のマッサージを再開した。
クリの振動も再開する。
﹁いい、もっとぉ、もっとぉ、ぁぁ、いぃ、いぃよぉ﹂
クリの振動で気持ちよいのか、膣が反応して中のを締めたり緩めた
りする。
その初めての感覚が気持ち良くて、膣とクリの快感が高まっていく。
﹁あっ、ぁっ、クリ、とっ、膣、で、イクゥ、イク、イク、イッっ
ちゃぅぅ﹂
僕はスライムの中で、自分の膣の中を犯されながらイッた。
僕がイクと、スライムが入った時と同じ様にヌルッと溶けて膣から
出て行く。
その後、僕のお尻にゆっくり入り、口にも伸ばした部分を咥えさせ
175
てくる。
毒を食らわば皿までと、僕はそれを自分から迎え入れた。
少しすると、口とお尻に液体を注がれる。
今度は自分からそれをゴクゴクと飲む。
﹁やっぱりぃ、甘くてぇ、おいしぃ﹂
お尻の方は、前より量が多いのかお腹が少しぷっくりしている。
僕に出したスライムが、包んでた僕の体を地面にゆっくり置いて去
ろうとするが︱︱
﹁どこ行くのぉ? まだ僕はぁ、元気だよぉ﹂
イったせいか、眠気に襲われながらも、スライムの一部を掴んで引
き止める。
開き直ったせいか、スライムを掴むくらいは体を動かせた。
僕に掴まれたスライムはプルプル震えていたが、僕が離さないと分
かったのか、再び僕の全身を包んだ。
﹁あひぃ、あふぅ、あひぃん、もっと、胸もぉ、お尻もぉ﹂
僕はスライムに全身を揉まれ、お尻を犯されながら艶声をあげる。
176
気持ちよく声を上げていたら、サーーーサーーーと砂を掃いたよう
な音がした。
﹁おや、順調なようだねぇ﹂
音と声がした方を見ると、裸で上半身の胸を丸出しの女性が居た。
しかし、肌は青くて下半身はまるで蛇のようで⋮。
﹁ラ、ラミア⋮﹂
それは、女性の上半身に蛇の下半身を持つ、ラミアと言われる魔物
だった。
177
第11話 ヌルヌル♪︵後書き︶
捕まってはヒィヒィされる。
誘拐?されてはアヒアヒされる。
もはや主役と言うより、どこの姫だと言ったような、エッチに目覚
めたヒロイン主人公の明日はどっちだ!
スライムさんが何をしてたか分かる人はいるんじゃろか。
いやまぁ、どうみてもナニしてたんですけど⋮。
冒険ファンタジーの主役らしく、格好良くて優しくて強い!抱いて
!な主人公にするのを、作者は諦めました!
ご意見ご感想等、お待ちしておりまっする。
178
第12話 エルフと闇エルフって︵前書き︶
今回はほのぼのです。
いつもエッチしてたら、主人公が妊娠しちゃうし!
179
第12話 エルフと闇エルフって
﹁おや、順調なようだねぇ﹂
僕の前に、唐突にラミアが現れた︱︱
﹁ラ、ラミア⋮あぁん、んぅん、はぁん、そこぉ、動いてぇ﹂
︱︱が、スライムは動きを止めず、僕のエッチな場所を責め続ける。
﹁いやぁ、大分回復したようで何よりだねぇ﹂
﹁ひぃん、そぅ、お尻ぃ、上手ぅ﹂
﹁見つけた時は衰弱が酷くてねぇ﹂
﹁あん、いぃ、もっとぉ、もうすぐぅ﹂
﹁⋮⋮話を聴かんかぃ!﹂
﹁イクゥ、イクゥ、いだっ!?﹂
ラミアが僕に強烈なチョップをしてきた。
僕はチョップを食らい動きを止める。
﹁大事な話してる時に、アンアン言ってんじゃないよ!﹂
﹁⋮はい、すいません﹂
180
真剣な剣幕で言ってくるので、反射的に謝ってしまう。
﹁あんたも、治療なのにアンアン言わせてるんじゃないよ﹂
ラミアの言葉に、スライムがプルプル震える。
﹁あぁ? 何? 普通に治療してただけぇ?﹂
﹁プルプルプルプル﹂
﹁この娘が動いてって言うから、少し動いたけどぉ?﹂
現れたラミアは、スライムと会話をしているようだ。
会話を始めてからすぐに、僕の体はスライムから出されている。
説教臭い雰囲気なので、日本人の癖か正座しようとしたが出来なか
った。
なので、上半身をスライムにしな垂らせた。
倒れないように、スライムがさり気無く僕の腰を支えてくれてる。
﹁まぁ、大分元気になってよかったねぇ﹂
僕を見てうんうん頷きながら話すラミア。
えーと⋮状況が見えないんですけど⋮。
﹁あのぉ、僕ってスライムの子供生まされるんですよね?﹂
﹁はぁ? 何言ってんだい。良いかい? あんたはねぇ︱︱︱﹂
181
説明を始めたラミアの話を要約するとこうだ。
ラミアの住処の沼地に、帝国兵が侵入してきたので撃退した。
帝国兵が守ってた馬車の中に僕が居た。
僕は体中腫れたりしてた上に、酷い衰弱をしてた。
治療の為にスライムが僕の全身に薬みたいな効果のある体液を塗り
こんでくれた。
口やお尻に出してた液体は、高栄養で消化にいいスライムミルクだ
そうだ。
痛みを和らげたり、良く休めるように睡眠効果も足してたらしい。
つまり、帝国兵に捕われてた僕を救出して治療してくれてた、と。
﹁えっと、助けてくれてありがとうございます﹂
﹁同じ女同士、気にしなくていいよぁ。困った時は、持ちつ持たれ
つってねぇ﹂
優しく微笑んで言ってくれるラミアさん。
顔青くて怖いけど。
﹁あ、スライムさんも、ありがとうございます﹂
﹁プルプルプルプル﹂
﹁最初に怪我具合を調べた時、大丈夫そうだったけど念の為に膣に
も薬を出しといたってさ﹂
182
﹁あ、そうなんですか﹂
最初に調べた時っていつなんだろ。
膣に挿れられたのって、僕の記憶だと二回目なんだけどなぁ。
﹁ちゃんと処女膜は破らないようにしたから、安心して∼だってさ
ぁ﹂
﹁あ、重ね重ねありがとうございます﹂
破れてもヒールで回復できるけど、この世界の一般的には知られて
ないのだろうか。
﹁そういえば、腫れとかならヒールで治らないのかな?﹂
﹁あんたほど衰弱してると、回復魔法は効かないからねぇ﹂
なるほど。
ファンタジーさん御用達の回復魔法も、万能ではないんだね。
﹁質問なんですが、僕人間なのに、どうして助けてくれたんです?﹂
﹁私らは人族だからって、誰でも襲うわけじゃないんだよぉ? 兵
士どもは私らを殺そうとしてくるから襲ったけどねぇ﹂
ゲームだと魔物達は国の軍に駆逐されていく存在だったっけ。
﹁あんたどう見ても兵士に見えなかったしねぇ。それに、私らラミ
ア族って女だけでねぇ。婿は他種族から取るんだよぉ。人間とかね
ぇ﹂
183
そう言いながら、姿を人へと変えていく。
魔王ルートで仲間にしたラミアさんとエッチなイベントはあった。
その時に、ラミアのままか人間の姿か選択肢があったね。
⋮ラミアのままだと主人公が襲われてるようにしか見えなかったな。
﹁人族とは本当は仲良くしたいのさ。昔は人族ともっと仲が良かっ
たんだけどねぇ。どうしてこうなったんだか﹂
長髪の黒髪で肌も肌色の美人さんになったラミアさんが、しみじみ
とおっしゃる。
僕が言っても説得力がないが、人前で裸で仁王立ちは良くないと思
います。
物凄い目に毒でけしからんです。素敵、もっとやれ。
﹁で、こっちも質問だけど、あんた一体何者なんだい? どうして
そんな酷い状態で帝国兵に捕まってたんだい?﹂
答えようとして思わず言葉に詰まる。
素直に言って良い物だろうか。
でも、恩人︵人じゃないけど︶に嘘をつくのもなぁ。
少し悩んだが、すぐに決めた。
良い人︵人じゃないけど︶そうだし、素直に言おう。
﹁連邦の元軍人のセシリアって言って、今は冒険者のセシルって名
乗ってます。元連邦の軍人って事で、帝国に捕まって、拷問されて
ました﹂
184
僕が言うと、ラミアさんはポカーンとした顔になった。
﹁そ、そうかい、あんたも苦労してんだねぇ﹂
僕的一大告白だったのに、軽く流される。
帝国領に住むラミアさんには、セシリアとか有名じゃないんだろう
か。
﹁とりあえず、元気になるまで面倒みてあげるからさぁ﹂
﹁んっと、お世話になります。ふぁぁ﹂
色々聞いて、自分がスライム製造機じゃなく治療されてただけと分
かり安心した。
安心したら、凄い眠気が襲ってきた。
﹁眠いなら今はゆっくり寝るといいよぉ。あんたみたいなのは、時
間を掛けてゆっくり治すしかないからねぇ﹂
﹁ありがとうございまふ。ふにゅぅぅ﹂
僕は睡魔に身を任せ、スライムさんに寄り掛かったまま眠りについ
た。
﹁あんたの子を生まされるとか勘違いしたり、ヒールが衰弱者に効
かないのを知らないとか、自分が元軍人とあっさり言うとか⋮﹂
185
﹁プルプルプルプル﹂
﹁そうだねぇ。悪い娘じゃないんだろうけど、抜けてそうで心配だ
ねぇ﹂
﹁プルプルプル﹂
﹁かもねぇ。着てた服も囚人にしては変だったし、世間知らずっぽ
いし、軍に入れられたどこぞの貴族のお嬢様なのかもねぇ﹂
﹁プルプルプルプル﹂
﹁あいよぉ。あんたも治療よろしくねぇ﹂
こうして、スライムさんによる僕の治療の日々が始まった。
起きたらスライムさんが全身をマッサージ。
終わったら、ご飯のスライムミルクを飲ませてもらう。
その後眠って、起きたらそれの繰り返し。
たまに気持ち良くて調子に乗って、お尻にいっぱいミルクを出して
貰ったり。
ミルクいっぱいでぽっこり膨らんだお腹を見たラミアさんに注意さ
れたり。
治療に必要ないけど、気持ち良くて興奮しすぎると膣にも入れても
らったり。
治療の日々で、ラミアさん達の事も聞いた。
186
弱いスライムさんをラミアさんが守る。
スライムさんがミルクを出してラミアさん達の子育てを助けたり、
怪我したラミアさんの治療をする。
所謂共生関係だという事。
アブラムシとアリンコみたいだと思ったのは内緒だ。
ゲームで仲間になる族長のラミアロードのティティスさんは、所用
で不在だとか。
代わりに僕の面倒を見てくれているフェシスさんが族長代理だとか。
少し気になってたスライムさんの子作りについてなんだけど。
大きく成長したスライムさんが、分裂して増えるそうです。
他の種族に孕ませて生ませるとかはないそうだ。
そうした日々を過す内に、僕は自分で動けるくらいに回復した。
リハビリと言う事で、外に行く為に服を渡された。
﹁あのぅ⋮。フェシスさん、この服はナンデスカ?﹂
﹁何って、あんたが着てた服だよぉ?﹂
渡された服はピンクのドレス!
下着もピンクでブラはフリル付き!
ショーツは前に赤いリボンがちょこっと付いて可愛い!
187
靴がブーツなのだけが救いか⋮。
﹁他に服はナイデスカ?﹂
﹁私ら服着ないからねぇ﹂
ですよねー。
ゲームでも裸で戦ってましたしねー。
僕は生まれて初めて、ドレスを着た。
それも下着からブーツまでピンク一色で。
これは一体誰の趣味だ!
動けるようになってから、色々確認したんだけど⋮。
﹁パーティーにエインの表示がなくなってるなぁ﹂
故意にパーティーから外したりしなくても、イベントで別れたりす
るとパーティーから表示が消える。
ゲームのそれと同じで、僕が捕まったせいだろう。
﹁エインって∼と、あんたの恋人、だったっけぇ?﹂
﹁えーと、たぶん、恋人デス﹂
僕達恋人だよねって、確認したわけじゃないので言い切れないのが
悲しい。
188
﹁女同士で、非生産的だねぇ﹂
生産性はないけど、凄くいいものだと思います。えぇ。
それは置いといて。
﹁お金はエインが管理してたし、お小遣いは腰袋に入れてたから、
再び一文無しだし⋮﹂
さらに言うと、アイテムボックスの中にも碌に物がない。
僕用の水筒と非常食の干し肉、それと真祖の魂⋮。
アイテムボックス内だと腐ったりしないので、水筒の中の水と干し
肉は食べられるのだけど。
﹁それよりも武器がない⋮﹂
愛剣、鉄の剣さんは今どこにいるんでしょうか。
﹁あぁ、武器なら余ってる私らのをあげるよぉ﹂
﹁本当ですか! ありがとう。フェシスさん!﹂
感謝を篭めて、フェシスさんに抱きつく。
僕と居る時は気をつかってか、人間形態で居てくれるフェシスさん
に強く抱きつく。
﹁んでぇ、体も治ってきたようだし、今後どうするんだい?﹂
﹁んー﹂
189
治療中に、今後について色々悩んだ。
エインを探しにカルドに行きたいけど⋮。
行ったらまた捕まるだろう。
そもそも、今回の事で人里に行きにくい。
連邦はまだしも、法国に行ったら同じ目に遭う気がしてならない。
﹁あぁ、人族の町とかに行きにくいならぁ、オークとかゴブリンの
集落を紹介するけどぉ?﹂
フェシスさん、それは陵辱孕み出産フラグです。
﹁いや、それは断固断ります!﹂
﹁あっはっはっ、だろうねぇ。奴ら、私らには手を出さないけど、
あんたじゃ襲われちまうしねぇ﹂
くそぅ、わかってての冗談かぃ。
﹁じゃあ、ダークエルフのとこなんかどうだい?﹂
ダークエルフ。
褐色の肌を持ったエルフの近親種。
ゲームでは魔物扱いされていて、特にエルフとは仲が悪い。
出てくるキャラは女性しかおらず︵設定では男も居る︶エルフと違
い巨乳ばかりだ。
拷問されてた時のエルフを思い出す⋮。
190
もしや、エルフとダークエルフが仲悪いのって、巨乳のダークエル
フをエルフが逆恨みしてるからか⋮?
世界の深謀に悩んでいた僕に、フェシスさんが追加で言ってくる。
﹁あいつらもエルフ以外の女にゃ優しいしね。それにあんた、ダー
クエルフみたいな体型だしねぇ﹂
僕も結構な巨乳だからね。
拷問されて腫れたせいか、前より少し大きくなった気がします。
﹁う∼ん﹂
ダークエルフさんに会うのは魅力的な提案だ。
でも、と考える。
今後この大陸は戦乱が激しくなる。
主人公の行動次第だが、後3∼6年くらいで激化するだろう。
捕まった事で思ったが、何より強さが必要なのではなかろうか?
今エインを探しに行ったり、どこかに隠れ潜んでも、何かあった時
に今の僕じゃ勝てない相手はたくさんいる。
カオスブレードは、2週目以降なら転職を使って1ユニットで無双
が出来る。
ゲーム知識を生かし真面目に強くなれば、文字通り一騎当千の強さ
が手に入るはずだ。
191
セシリアになって、巨乳美女だひゃっほ∼い。
エインとエッチな新婚生活︵注:結婚してません︶でひゃっほ∼い。
それで満足して自分が強くなろうとか思ってなかった。
しかし、今こそ目指そう!
﹁フェシスさん、僕、最強を目指す事にするよ!﹂
192
第12話 エルフと闇エルフって︵後書き︶
ラミアさんとにょろにょろ期待してた方はごめんなさい。
ピンク色一式はネーブルさんの趣味。
別人認定されてからは、薬を塗られたり、流動食を食べさせられた
りしたけど、アヘアヘ状態だった主人公は覚えておらず。
12話にしてやっとファンタジーらしい事を言った主人公!
でも、そのまま強くなれるワケモナク。
今回は箸休め的お話でした。
この先どうなるか考えてないけど、ドウシヨウ。
とりあえず次話は主人公ガンバル。色々と。
感想等、お待ちしております。
予約掲載と言うのを使ったけど、何かミスったらしくアップされて
なかったYO!
193
第13話 双子のエルフ
強くなろうと決めた僕らは、現在大陸の北東へ向かっている。
ワームと言う竜種が生息する岩山、通称ワーム山を目指しているの
だ。
ワームは戦利品も微妙で、竜殺しの称号をつける為だけのモンスタ
ーだ。
しかし、レベル40と高めなレベルで特殊な攻撃もなく、大型モン
スター扱いで経験値ボーナスもある。
経験値だけを考えるなら、悪くない敵だ。
早く強くなる為には、仲間を集めて装備を整えてクエストをやった
り、ダンジョンに篭るべきだろう。
でも、仲間を集めるにも装備を整えるにもクエストするにも町やら
村へ行く必要がある。
例外的に、フィールドのイベントで仲間になるNPCも居たけど⋮
エインみたいに。
んで、ダンジョンに篭るにしても、麻痺とか石化を使う敵とかは一
人じゃ不安だ。
特に今の僕は、魔法系の攻撃に対して滅法弱い。
その点ワームは体当たりや巻きつきの物理攻撃だけなので安心だ。
かなり消去法だが、ワームのみ生息する岩山を目指す事にしたのだ。
﹁ってわけなんだけど、本当についてくるの?﹂
194
僕は隣に居る同行者へ再度確認する。
同行者は僕に質問されると、プルプル震えた。
﹁プルプルプル﹂
うん、何言ってるかわかんない。
隣に居るのは僕を治療してくれたスライムさんだ。
何故、同行することになったかと言うと︱︱
︱︱体も全快し、沼地を出発する日。
﹁あんたが、人里を避けて武者修行したいのはわかったけどねぇ﹂
﹁心配しないでも、僕こう見えて強いんですよ﹂
なんせレベル61ですから。
﹁強さ以前にねぇ⋮。ワームの居る山に行くって言っても、あんた
場所わかるのかぃ?﹂
﹁大雑把だけど地図もありますし⋮大体の位置はわかってます﹂
大体の方向があってれば、きっとたどり着けるさ。うん。
﹁食料は、飲み物や食べ物はどうするんだぃ?﹂
﹁途中の川とかで水を飲んだり、獣狩ったり、果物とか取れば大丈
195
夫⋮なはず﹂
﹁へぇ∼﹂
﹁⋮⋮⋮﹂
﹁この子がさぁ、あんたが心配だから付いていくって行ってるから、
連れていきなよぉ﹂
﹁プルプルプルプル﹂
﹁いやでも、それは悪いですよ﹂
﹁助けたのに野垂れ死にました。じゃ、こっちの寝覚めが悪いんだ
よねぇ﹂
﹁野垂れ死になんてしないですよ。⋮たぶん﹂
﹁へぇ∼∼∼∼∼﹂
冒険者となっても、カルドと言う大きな都市で活動してた。
そんなシティボーイの僕はサバイバル技術に自信なんかなく、断れ
ませんでした。
﹁日本育ちの人間が、ファンタジー世界でサバイバルとか無理なん
だよ。くそぉ﹂
﹁プルプル﹂
196
﹁うぅ、慰めてくれるのか、スライムさん。ありがと﹂
そんな訳で、僕はスライムさんと二人?旅と相成りました。
スライムさんとワーム山を目指して森を歩きながら、ステータスを
確認する。
◇セシリア・マリンズ
Lv61 年齢:22 職業:剣聖
HP:1144/1144
賢さ:185
−110
−160
+100
MP:406/406
力 :489
器用:299
体力:295
精神:187
+25
速さ:315
魅力:366
ステータス補正が色々変わっている。
どうせ称号補正だろうと思い称号を見る。
新しい称号が何個が増えていた。
□博愛主義:好感度上昇時にボーナス 魅力+5
□快楽主義:H行為での快感にボーナス 賢さー10 精神ー10
H行為をする事で仲間の強化が可能 精神+5
□被虐嗜好:痛みで得られる快感にボーナス 体力+50
□性処女:聖処女
197
0 魅力+20
博愛主義と快楽主義についてはいい。
ゲームでもあった。
複数の種族とエッチイベントをすると博愛主義が。
戦闘やクエストをせずに、エッチばかりしていると快楽主義が取得
できる。
しかし、下二つは⋮。
僕はMかもしれないが、痛いのが好きなわけじゃない。
ただちょっと、痛くされると少し興奮するだけだ。少し。
最後の性処女ってなんだ。性処女って。
説明文の方にある聖処女でいいだろうに。
しかもHで仲間強化とか、H好きの淫乱みたいじゃないか。
⋮だから性処女なのか?
精神は少し持ち直したが、賢さのマイナスが増えている。
まるで僕がお馬鹿みたいじゃないか。
ゲームにはなかった称号にぷんぷんしつつ、森の中を進んでいった。
あ、スライムさんが同行する事で仲間になったみたいで、パーティ
ーにスライムって載ってた。
だけどステータスは割愛だ。
だってレベル1で初めて会ったエインより弱かったんだもの⋮。
198
スライムさんと旅をして二日目、道の先に襲われてる馬車を発見し
た。
ゲームでもあった襲われた商人を助けるイベントだ!と思い、走っ
て近づく。
スライムさんは、道の脇にそれて隠れながら来るように伝える。
助けた商人はお礼+相場より安く物を売ってくれる。
﹁そこまでだ! お前ら!﹂
お礼目当てで、馬車に近づいてならず者達を指差した。
﹁あぁん、なんだお前は﹂
返事をした男の前に、太った男の人が血まみれで倒れている。
うん、手遅れでした。
﹁お前達、念の為に聞くが⋮その人が悪徳商人で、貧乏人にお金を
配る為に襲ったとかじゃないな?﹂
﹁バカかお前、自分達の為に襲ったに決まってるじゃねーか。ピン
クのドレスと同じで、頭もピンクか? お嬢様よぉ。ハッハッハッ
ハッ﹂
集まってきた他の男達も一緒に笑う。
裸の女性を保護しようとした、良い盗賊もいるんだよ。
後このドレスは、僕の趣味じゃないんだ。くそぅ。
199
﹁事情は分かった﹂
フェシスさんから貰った、鋼鉄の剣を手の中に出す。
﹁あぁん、ドレスのお嬢様よぉ。抵抗しないで大人しくしたら、可
愛がってやるぜぇ﹂
僕は倒れて動かない商人らしき人を見る。
真面目に商売してる人を襲って、金品を奪い取る行為。
実際に目の前にすると、とても許せそうになかった。
﹁お前ら、覚悟しろよ﹂
僕はならず者の男達に襲いかかった。
5人のならず者達は、10分もせずに切り伏せた。
奴らが盗賊だろうが山賊だろうが、ぶっちゃけ僕の敵じゃない。
動くものが居なくなって静かになったら、スライムさんが現れた。
僕が剣をアイテムボックスに仕舞おうとしたら、ガタガタと馬車の
中から動く音がした。
男達の生き残りかと、幌の中を覗くと︱︱
﹁﹁ひっ﹂﹂
ぼろい服を着たエルフの子が2名居た。
200
首には金属の首輪をしていて、長髪と短髪と違いはあるが、そっく
りの双子みたいだ。
﹁あー、奴隷かぁ⋮﹂
そう言えば奴隷制度のある世界だった。
﹁えーと、商人さんは死んじゃったけど襲ってた盗賊達は倒したよ。
だから、安心して?﹂
怯える双子エルフに、剣を仕舞い優しく語りかけた。
言ってる内容は割と物騒ですが。
﹁あ、ありがとう﹂
僕が何もしないで居ると、長髪の子がお礼を言ってくれた。
二人が馬車の中から出ようとするので、手を差し伸べて手伝った。
外に出た二人を見ると、かなり美形の双子少女だった。
﹁ス、スライム⋮﹂
﹁あ、えーと、このスライムさんは僕のペットだから大丈夫だよ﹂
﹁そうなんですか⋮﹂
スライムさんをみて驚いた少女達だが、僕の言い訳を信じてくれた。
それでも短髪の子は、長髪の子の背中に張り付いて離れなかったが。
背中をスライムさんにポンポン突かれてるが、気にしな∼い。
201
﹁んーと、君達は⋮奴隷⋮だよねぇ﹂
﹁はい⋮﹂
僕の言葉に頷く長髪の子。
正直困った。
奴隷のNPCを買ってエッチするイベントはあったが、こうやって
助けるイベントはなかったと思う。
どうして良いか対応がわかりません。
﹁あー、君達、どこかの町とか村に送り届けようか?﹂
﹁いえ⋮﹂
顔を横に振って答える長髪エルフっ娘。
奴隷だったら町とか行っても奴隷として扱われるのか、別の商人に
引き取られたりするのか?
奴隷制度なんて、詳しく知らないのでわからない。
まぁ町とかに行っても、碌な事にはならないんだろう。
﹁んじゃあ⋮どうしようか⋮﹂
僕のその言葉に、誰も答えてくれなかった。
202
パチパチとなる焚き火の音を聞きながら、寝てる二人をみる。
あれから商人さんの亡骸を、道の脇に埋めてお墓を作った。
馬車から食料だけを貰い、二人を連れて現場から離れた場所で夕飯
をとった。
ご飯を食べると、二人はすぐに寝入ってしまった。
二人が寝たのを確認したら、僕は我慢が出来なくなってきた。
﹁スライムさん、僕ちょっと用があって離れるね。二人をお願い﹂
﹁プルプルプルプル﹂
たぶん、快く返事をしてくれたスライムさん。
二人を任せ、僕は森の奥へと進んでいく。
少し離れると開けた場所を見つけた。
僕はすぐに裸になる。
﹁ん、ハァ、ハァ﹂
初めて人を斬った興奮で、体が火照ってたまらなかった。
人を斬って興奮するとか、自分でもやばいなぁと思うが、慰めずに
は居られない。
203
﹁ハァ、ン、もういっぱい濡れてるぅ﹂
自分の割れ目に沿うように指を動かし、溢れる汁を秘所全体に塗る
ように動かす。
﹁ハァ、イィ、そこぉ、イィ﹂
割れ目の中に、突起を見つけて先端を中指で抑えてこね回すように
動かす。
﹁クリ、いいのぉ、あぁ、大きくなったクリぃ、感じるぅ﹂
治療が終わっても、クリは前より大きなままだった。
皮に埋まってるんじゃなくて、皮から先端が常に出るようになって
たのだ。
﹁クリいいのぉ、気持ちいぃ﹂
今度は指でクリを摘み、軽く捻ったり潰したりする。
するとクリからじわっと体に快感が広がる。
その快感で、膣とお尻がヒクヒクする。
﹁クリヒリヒリが気持ちいぃぃ、膣もぉ、お尻もぉ﹂
スライムさんに直腸からの栄養補給をされてた。
そのせいでお尻はすっかり色に目覚めてしまった。
クリを弄りながら、もう片手でお尻に指を入れる。
﹁ハァン、お尻もイィ、指に吸い付いちゃうぅぅ﹂
204
前から垂れる汁でヌルヌルになってるお尻は、指を抵抗なく飲み込
む。
そして隙間なく指にぴったりと吸い付く。
クリを捻るとクパっと開き、少しするとまた指に吸い付く。
﹁気持ちいいからってぇ、指をチュパチュパしちゃってるぅ﹂
チュパチュパ吸い付くだけでは我慢できず、指を出し入れし始める。
﹁ヒィ、フゥ、お尻ぃ、なのにぃ、感じちゃうぅ、ダメェ﹂
クリの痺れるような快感と、お尻のじんわりする快感に夢中になる。
﹁ハァ、アァン、ヒャン、クリとお尻でぇ、気持ちいいのぉ﹂
チュッポッ、チュッポッ。
お尻からいやらしい音が聞こえて、二箇所の指の動きが早くなる。
﹁んっ、はっ、はっ、んっ、んぅん﹂
気持ちよさに徐々に頭が真っ白になっていき、更なる快感を求める。
﹁アッ、ハッ、もっとぉ、早く、クリもっ、つよくぅ﹂
クリを捻りながら引っ張り、お尻の出し入れも早くする。
﹁んっ、そう、もうちょっ、とぉ、イク、イきそう、もうすぐぅ、
もっとぉ﹂
205
気持ち良さが全身を覆い、足の指がピクピクしてる。
絶頂にイキたくて、僕は自分のクリトリスを思い切り引っ張った。
﹁ひぎぃ、あぁぁ、クリとれちゃ、ぁぁああ、イックぅぅう﹂
クリを引っ張った瞬間、気持ちよさで頭が真っ白になり、全身を痙
攣するような快感が走って絶頂を迎えた。
﹁はぁ、はぁ、はぁ、うぅん﹂
ガサガサ。
僕が余韻に浸ってとろんとした顔で横になっていると、草の擦れる
音がした。
音をした方を向くと、髪の長いエルフの少女が立っていた。
﹁あぁ、はぁ、んぅ﹂
頬を上気させて、服の上から自分の股間を手で押さえたエルフの少
女が。
206
第13話 双子のエルフ︵後書き︶
主人公はエルフの双子を拾った♪
さて、次回はどうなるのか。
殆どの方にばれてそうですが、内緒です。
山篭りに行こうとして、双子のエルフを拾った主人公はどうするの
か!
こっそり、胸とかクリとかお尻がパワーアップしてそうな主人公の
将来が心配だ!
普通に強くなる冒険譚は、諦めた作者デス。
感想等、色々お待ちしております∼。
207
第14話 双子丼♪︵前書き︶
今回の話は⋮えーと。
注意して下さいねっ。
何をかを書いたら、すごいネタバレ故に⋮書けない⋮。
208
第14話 双子丼♪
長髪のエルフ少女が、目を潤ませ頬を赤く染めながら股間を押さえ
て立っている。
息も荒く、僕を見る目が心なしか助けを求めてるような⋮。
﹁え、えっと、その⋮﹂
﹁はぁはぁ⋮ラミュー⋮です﹂
﹁えと、僕はセシル。ラミュー、その、大丈夫?﹂
セシリア云々は、色々めんどくさいのでセシルで済ませた。
していなかった自己紹介をすませ、ラミューに近づく。
﹁セ、セシルさんを見てたら、ここが⋮﹂
潤んだ眼をして上目遣いで僕を見てきた。
幼気な少女が発情してる様を見て、ゾクゾクとした気持ちが湧いて
くる。
据え膳食わねば、日本男子の恥じだよね!?
﹁僕を見て興奮しちゃったんだね。ソレ解消してあげるから、こっ
ちおいで﹂
ハァハァ息を荒げて耐えるラミューに手を差し伸べると、手を出し
209
て握ってきた。
ラミューを抱き寄せると、ゆっくりを服を脱がせていく。
上は申し訳ない程度に膨らんだ胸、下は緑色の産毛が生えてピッチ
リ閉じた一本の筋。
﹁ふわぁぁ、綺麗だ﹂
﹁セ、セシルさん、恥かしい⋮です﹂
穢れの無いその体を見て、ゴクリと喉が鳴る。
⋮実はエッチはエインとしか経験がない︵拷問&スライムさんはエ
ッチじゃないよね︶。
しかもいつも一方的に弄ってもらってた。
自分が主導と言う慣れない事態に、次にどうしたらいいか頭を総動
員する。
﹁こ、ここに横になって﹂
﹁は、はい﹂
ラミューは言われたとおり横になる。
まずは、えっと、じっくり濡らさないといけないんだよね。
日本でやってたHゲームの知識を引き出し行動に移す。
﹁ん、ちゅ、ぺろ、ぺろ﹂
210
﹁やぁ、セシルさん、そんな所、舐めたらぁ﹂
ラミューの少し濡れてた割れ目に舌を沿わせ、丁寧に舐めていく。
ペロ、ペロ、ペロ、ペロ。
﹁だめぇ、せしる、さぁん、そこだめぇ﹂
舐める音とラミューの切ない声だけが辺りに響く。
割れ目の線を舌で上下に舐め続ける。
﹁んっ、んっ、んっ、ちゅぅ﹂
﹁んはぁ、お股、きもちぃです﹂
﹁ん、ここって、オマンコって言うんだよ﹂
﹁セシルさぁん、オマンコォ、気持ちいぃですぅ﹂
僕が言い方を教えてあげると、すぐに声に出した。
舐めるほどにヌルヌルしてくるラミューの割れ目。
少女が口にする卑猥な言葉。
その二つで、僕も凄く興奮してくる。
ペロペロペロ、チュゥゥゥ、ペロペロ。
﹁んはぁ、す、吸われると、すごくいぃですぅ﹂
舐める合間に強く吸い付く。
211
ラミューは口を開いたまま、焦点の合わない眼をしていた。
﹁お、おねえ、ちゃん、ハァ、ハァ﹂
ラミューの割れ目を舐めていたら、横からソプラノ調の声がした。
そちらに眼を向けると、短髪のエルフ少女が息を荒げて立っていた。
妹さんの方も、僕とラミューの情事を見て興奮しちゃった、と。
ラミューはトロンとした顔で妹を見るが何も言わない。
妹さんもヤっちゃって良いって事ですね!
ふ、ふふ、ふふふ。ばっちこい姉妹丼!
﹁えっと、僕はセシル。君も楽にしてあげるから、おいで﹂
﹁う、うん。ボクはレム⋮﹂
ラミューを舐めるのを止め、指で割れ目を上下しながらレムに服を
脱ぐように伝える。
姉と同じ様に頬を上気させながら服を脱いでいく。
姉妹そっくりな顔で、胸も同じく控えめだ。
レムが短パンを脱いで、真っ白いショーツを脱いでいく。
少女の秘所を触りながら、同じ顔の少女の服を脱ぐ姿に興奮してし
まう。
﹁ハァ、ハァ、ハァ、ハァ﹂
チラッと見ると、ラミューは快感で息を漏らすだけになっている。
212
服を脱ぎ終わったレムも、と思いレムに眼を戻すと。
﹁あ、あれ、小さくて細いけど、これって⋮﹂
レムの股間には僕の知ってる大人の物に比べると小さいが、皮が被
ったままの勃起したオチンチンが⋮。
﹁レ、レムちゃ、レムくんって、男の子⋮?﹂
僕の問いに小さく首を縦に振る。
その顔はラミューと瓜二つの、どう見ても女の子。
でも股間には、小さいけどいきり起ったオチンチン。
﹁セシル、さぁん﹂
﹁あ、ご、ごめん﹂
ラミューが切なげな声を上げる。
驚いて止まってた指を再び動かす。
切なげな顔で僕とラミューを見てるレム。
お、男の子って事で驚いたけど、可愛い⋮。
ここは色々な先輩として、が、頑張らねば。
﹁んと⋮レムもここに横になって﹂
僕の指示通り、ラミューの真横に寝転がる。
213
レムの為に、初めての自分の時を必死に思い出す。
確か剥くだけでも痛くて⋮後乾いてるとヒリヒリしたっけ。
皮が被って小さいけど、立派に勃起したレムのオチンチン。
オチンチンを濡らすのどうしようと悩む。
口で⋮するのは少し抵抗がある。
僕はラミューを弄ったまま、レムに跨った。
﹁ぼ、僕の股のお汁で濡らしてあげるから、動かないでね﹂
レムのオチンチンに自分の割れ目を押し付けるように座る。
そして、腰を前後に動かす。
﹁ん、ハァ、これぇ、僕もきもちいぃ﹂
﹁セ、セシルさぁん、ボクのおしっこする所が、ヌルヌルして気持
ちいいですぅ﹂
姉のラミューと同じ声で話すレム。
まだエッチに関する事を知らないと思わせる台詞に、僕の中で何か
が疼く。
﹁レムゥ、そこはオチンチンって言うんだよぉ﹂
﹁オ、オチン、チンです、か﹂
﹁ふふふ、僕のオマンコとぉ、擦れて気持ちいいって言ってみてぇ﹂
214
﹁セ、セシルさんの、オマンコとぉ、ボクのオチン、チンが擦れて
ぇ、気持ちいい、ですぅ﹂
その言葉に、割れ目から感じる快感とは別の快感が体に走る。
無垢な少女⋮じゃない⋮少年を染める快感⋮。
﹁セシルさぁん、レムばかりぃ﹂
またうっかり手を止めてたせいか、ラミューは抗議の声を上げる。
そろそろ丁度良いと思い、レムの上からどいて二人の間に座る。
﹁あっ⋮﹂
僕がどいて、切ない声を上げるレム。
いちいち可愛い。男の子なのに。
﹁ん、大丈夫、ちゃんと弄ってあげる﹂
左手をラミューの割れ目に当て、右手でレムのオチンチンの皮を握
るように摘む。
ラミューの割れ目を、下から弾くように擦りあげる。
レムのオチンチンを、ゆっくり皮を剥いて上下にしごく。
﹁んぁ、はぁ、オマンコ、きもちぃ﹂
﹁はぁ、うぅん、オチンチン、気持ちぃですぅ﹂
レムのオチンチンは剥いた後、べっとり袋の方まで付いた僕のお汁
を絡めるようにしごく。
215
初めてで強くして、その上乾いたら痛いもんね。
ゆっくり、優しく。
﹁﹁ハァ、ハァ、ハァ、ハァ﹂﹂
二人の少女、ではなく、双子の嬌声が重なる。
ラミューの秘所は、処女膜を破らないくらい穴に指を入れたりしな
がら擦る。
レムのオチンチンは、指ではなく掌全体で包むように皮ごと上下さ
せる。
チュプチュプチュプチュプ。
ニチュニチュニチュニチュ。
﹁﹁んはぁん、気持ちイィ﹂﹂
二つの声と水音が淫らに重なる。
暫く二人の性器を弄っていると、二人が少しだけど腰を動かし始め
た。
それに合わせる様に僕も手を早く動かす。
﹁あ、あ、あ、セシ、ルさ、ん、何か、きちゃ、うぅ﹂
﹁ボ、ボクもぉ、オシッコ、でちゃうぅ﹂
﹁大丈夫だから、二人とも我慢せずに、そのまま感じて﹂
216
二人がイケるように、動きを強める。
ラミューには、割れ目を押し付け穴と皮の中のクリトリスを弾くよ
うに。
レムには、カリの部分を人差し指で作った輪で締め上げながら上下
に。
﹁あぁ、からだ、が浮いちゃう、とんでっ、ちゃうぅ﹂
﹁でちゃ、うぅ、でちゃう、よぉぉ﹂
﹁﹁アァァァ!!﹂﹂
ラミューはピュッと割れ目から汁を飛ばして。
レムはオチンチンから白い精子を出して。
二人は揃ってイったようだ。
二人の性器から手を離す。
﹁二人とも、すっきりした?﹂
僕が問いかけても二人は返事をしなかった。
どうやら眼を閉じて寝てしまったようだ。
レムが男の子なのには吃驚した。
正直男とエッチ行為なんて今でもゴメンだ。
﹁でも、レムってどう見ても女の子だしなぁ﹂
217
それにチンチンも小さくて可愛かった。
僕は右手に付いたレムの精子を見る。
スライムさんのミルクみたいだな。
ペロッと舐めてみた。
﹁う、苦い。可愛い顔と声と反応とオチンチンでも、苦いのか⋮﹂
エッチゲームでも苦いと言ってたけど、もしやと思い舐めたが。
﹁やっぱり口でするのとかは無理だなぁ﹂
僕が口でしなくて良かった。と思っていたら、肩をツンツン叩かれ
た。
後ろを向くとそこには、スライムさんが立って︵?︶居た。
僕は裸で、エルフ姉妹、いや、姉弟も裸。
それぞれの股間は濡れてて、僕の手には白濁液が⋮。
﹁ハッ!? い、いや、これは、ち、違うんだよ。スライムさん!﹂
﹁プルプルプル﹂
﹁僕が二人を襲ったわけじゃなくてね。なんて言うか、苦しそうに
してた二人を助けたって言うか﹂
﹁プルプルプルプル﹂
218
何を言ってるかさっぱりわからないが、なんとなく呆れられている
気がする。
﹁ち、違うんだってばぁ﹂
僕の言い訳は、その後暫く続いた。
219
第14話 双子丼♪︵後書き︶
そっちの趣味が全くなかった方はごめんなさいm︵︳︳︶m
双子と勢いでヤっちゃった主人公。
このまま山篭りできるのか!?
次回は、アホの子な主人公に天罰が!︵予告内容は確定ではなく次
話未定デス︶
作者もアホの子なので、そのうち天罰きそぅ⋮。
ご意見、ご感想等お待ちしております。
220
第15話 口の奥まで♪︵前書き︶
今回のエッチは⋮。
ネタバレにならないで言う技術が欲しい⋮。
221
第15話 口の奥まで♪
朝ごはんの用意が進むのを見ながら、昨日の事を考える。
エルフの双子を拾ってヤっちゃった。てへ♪
てへ。とか可愛く言ってもヤった事実は消えないか⋮。
僕の左右に座る双子を見る。
僕の右手を首に回し胸の前で抱きしめている、ラミューことラミュ
エル。
ぴったりと体をくっつけて、顔と言うか頭を僕の胸に押し付けてる。
頬を桜色に染めてうっとり顔だ。
僕の左手に自分の右手を絡めて握る、レムことレムリア。
チラチラと僕の胸や顔を見てくる。
顔を真っ赤にして上目遣いでチラチラ僕を窺うのは、凄く初々しい。
ラミューとレムってのは、本名じゃなくて愛称とか呼び名だったん
だね∼。
何でそんなことが分かるかって?
はっは∼、いつの間にかパーティーに二人の名前があったからだY
O!
レベル2の治癒術師と魔道士と言う、ファンタジー代表職業な二人
です。
222
治癒術士は回復魔法のエキスパート。
魔道士は攻撃魔法のエキスパート。
さらに﹃ご主人様﹄って称号をゲットしたんだよね!
ゲームで奴隷200万Gを購入したら手に入る称号なんだけど、な
んでだろうね。
⋮まぁ、わかってる。わかってるんだ。
謎のシステムが奴隷双子エルフの主人に僕を認定したって事だろう
けどさ!
﹁プルプルプル﹂
﹁あ、ありがと。スライムさん﹂
昨日の事を考えてた僕に、スライムさんが串に刺して焼いた野菜を
渡してくれる。
あ、朝ごはんを用意してたのはスライムさんなんだよね。
僕が材料を出したらテキパキと串に刺して、焚き火の周りを囲うよ
うに串を地面に刺した。
串はその辺の木の枝を加工して作ったらしい。
器用に野菜や干し肉を串に刺してた。
そう言えば僕の乳首やクリだけ摘んだりしてたし、見た目と違い器
用なようだ。
目の前の光景は、見た目完全にBBQです。
串を受け取ろうとするが、両手が現在使用され中だ。
223
僕が困ってたら、ラミューが受け取り僕に食べさせてくれた。
﹁はい、セシルさん、美味しいですか?﹂
﹁う、うん﹂
まだ産毛しか生えてない少女が、うっとりとした表情で聞いてくる。
﹁セ、セシルさん、ボクのも﹂
﹁ん、モグモグ、美味しい﹂
対抗するように、レムが干し肉の串を僕に食べさせる。
顔真っ赤にして恥かしそうにしてるけど、レムに掴まれてる腕に棒
のような固い感触を感じる。
うん、朝だし起つよね。
朝だからじゃないだろうけど。
モグモグしながらこれからの事を考える。
二人を連れてワーム山へ行くとすると食料が心配だ。
僕とスライムさんだけなら、スライムさんからミルクを貰えばとか
考えてた。
二人がスライムさんからミルクを貰うところを想像する。
︱︱セシリア改め、セシルの煩悩劇場︱︱
224
うっとりした表情で、口を開けて舌を出す二人。
スライムさんの伸ばした手︵?︶から白いミルクが垂れていく。
二人の口だけじゃなく、顔や胸にもミルクがかかる。
﹁ねっとり甘くて、美味しいですぅ﹂
舌を出してミルクを唇に塗るように舐めるラミュー。
﹁お姉ちゃん、顔や胸の白いお汁はボクが舐めてあげるぅ﹂
姉の顔や胸のミルクを舌で掬うように舐めるレム。
最後はお互い裸になって大事なところを舐めあい⋮。
︱︱セシルの煩悩劇場 終︱︱
﹁ふぅぉぉお、禁断の双子プレイ!? それはダメだと思います!﹂
﹁﹁わっ﹂﹂
急に謎の叫びを上げた僕に驚く二人。
でも僕の手は離さないのね。
スライムさんは一瞬動きを止めるが、すぐ火の番に戻った。
225
興奮して声に出すのは気をつけよう。
二人を連れて山篭りは難しいだろう。
こんなに可愛く儚げな少女達⋮見た目両方少女だ。
ちゃんとした住居を拠点にせねば。
﹁ねぇ、スライムさん。フェシスさんが言ってたあそこに行きたい
んだけど、大丈夫かなぁ?﹂
﹁プルプルプルプル﹂
﹁ほら、僕に集落を紹介するって︱︱﹂
次の進路をスライムさんと相談した。
スライムさんは胸を張って︵びよーんと伸びた︶任せろと応えてく
れた。⋮気がする。
﹁とりゃー!﹂
襲ってきたホーンラビットやキャタピラー︵でっかい芋虫︶を一刀
のもとに斬り捨てる。
今僕らが歩くのは、沼地の北西、3国の境界に跨いで広がる魔の森
だ。
魔の森は、その名の通り魔物が多く住む森だ。
と言っても敵は弱く、ゲーム序盤の慣れた頃の狩場と言った場所だ。
何故そんな場所を歩いているかと言うと、ダークエルフの集落へ行
226
く為です。
人里はNG。
ならば行くのは魔物の集落。
オークやゴブリンのとこは3人揃って孕んじゃうので、ダークエル
フさんのところだ。
﹁あの、セシルさん、ダークエルフの集落って大丈夫なんでしょう
か⋮?﹂
﹁んー、大丈夫だよ∼。僕に任せてっ﹂
エルフと仲が悪いから心配しているんだろう。
だが大丈夫。
ゲームでは魔王ルート、魔物を従えるルートがある。
魔王ルートで魔物を仲間にする方法は戦い倒す事だ。
ダークエルフの首長であるレミネールは倒せば仲間になる。
倒せば仲間になるだけじゃなく、ダークエルフの里を普通の町とし
て使えるのだ。
魔王ルートの主人公は、各地の魔物を倒し仲間にしていく。
当然、魔物を連れているので人の町とかは使えないのだが、仲間に
した魔物の集落は町として使える。
﹁レミネールのレベルは30、くくく、僕より弱いから大丈夫﹂
魔物達は、特別なダンジョンのレアモンスターでもない限り割と弱
い。
227
人族に辺境に追い込まれてる設定の為か、はたまたゲーム進行の為
かしらんけど。
でもまぁ、レアモンスターだけは要注意だ。
ダンジョンにランダムで現れるサイクロプス。
フィールドで稀に出るオーガ。
宿に泊まった時に超低確率で襲ってくるサキュバス。
その他諸々。
魔の森にもレアモンスのアルラウネが居るけど、レアだしね∼。
出会わないっしょ。
レミネールを倒して、ダークエルフの里で衣食住をお世話になる。
完璧な計画に我ながら惚れ惚れする。
﹁よーし、ガンガン行こう∼∼﹂
﹁プルプルプルプルプル﹂
道案内してくれるスライムさんが、僕のやる気溢れる声に応えてく
た。
魔の森に入って3日目です。
そろそろ疲れの見えてきたエルフ姉妹だ。
スライムさんが言うには︵質問にプルプルしてただけだが︶、ダー
クエルフの里はもうすぐらしい。
228
出てくる敵がレベル10前後の為、僕は気軽に歩いていたら異変は
突然起きた。
ビュンビュンビュンビュン。
無数の蔦が、ラミューとレム目掛けて襲ってきた。
﹁甘い甘い!﹂
その蔦を素早く剣で斬る。
﹁あ、ありがとうございます﹂
﹁いえいえ∼、って、あり?﹂
斬った蔦はどこからか伸びてきて、ゆっくり動きを再開する。
﹁むむぅ﹂
襲ってくる蔦を切りながら考える。
蔦で思い浮かぶのは、植物系のレアモンスターアルラウネ。
遠距離攻撃では種を飛ばしてたから、蔦が目の前と言う事は近くに
居るはず。
しかし、見回しても華の魔物は見つからない。
僕一人なら、蔦を切りながらゆっくり探せそうだけど⋮。
なんかこの蔦、二人を狙ってるんだよねぇ。
スライムさんは同じ魔物だからか、全く相手にされていない。
229
﹁スライムさん、ダークエルフの里ってもうすぐなんだよね?﹂
﹁プルプル﹂
うんうん。って言ってる気がする。
ならば。
﹁スライムさんは二人を連れて里へ行って。僕は足止めしとく。二
人を里につれてったら、僕を迎えにきて﹂
﹁プルプルプル﹂
わかった。そっちも気をつけて。と言ってる気がする。願望9割で
すが。
二人にもちゃんと伝わったようで、スライムさんが先導して進んで
いった。
二人と一匹が見えなくなり、僕は改めて蔦へ向き直る。
﹁さーて、幼気な少女達を狙う魔物はお仕置きだぞ∼﹂
僕が向き直って剣を前に構えた瞬間、右足首に蔦が巻きつき一気に
体を持ち上げられた。
﹁ちょぉぉ、不意打ちとかいくないぃぃ﹂
僕は右足を持ち上げられ、捲くれたスカートで上半身を覆われた状
態で吊り上げられた。
230
吊り上げられスカートが邪魔で足に絡んでる蔦を斬れない。
﹁ぬ、む、くそぅ﹂
僕がわたわたしてると、右足にチクっとした痛みが走った。
﹁何を⋮。あ、ぅ、うう﹂
チクっとしてすぐに体全体が痺れて動けなくなる。
﹁ま、麻痺、かぁ﹂
麻痺毒を食らったようで体が痺れる。
体は痺れるが完全に動けないほどではなく、左手の剣は持ったまま
だ。
ゆっくり上半身を起し右足に絡む蔦を切ろうとしたら、たくさんの
蔦が体に絡み付いてきた。
蔦は左足にも絡み、大股をあけた状態で吊らされる。
それだけじゃなくドレスの下から僕の上半身に潜り込む。
﹁ひん、な、なに、をぉ﹂
潜り込んだ蔦は僕の腰にぐるぐる巻きつきながら、胸まで到達した。
胸に当たるとブラを押しのけ、胸の根元から螺旋を描くように締上
げながら巻きついた。
231
﹁む、胸、しぼら、ないでぇ﹂
麻痺とドレスの中のせいで、胸の蔦をどうにもできない。
﹁ド、ドレス、はず、そう﹂
急いでドレスだけ装備から外す。
、う
﹂
ドレスを外したと同時くらいに、両方の乳首に痛みが走る。
﹁い、あ
両乳首に麻痺毒を刺され、今度は痺れで完全に動けなくなる。
痺れても呼吸はできるみたいで、息が吸えたのが救いか。
眼だけ動かし締上げられて伸びた胸と乳首を見る。
乳首には、蔦の先端から出た棘が刺さっていた。
﹁ぢ、ぐ、び、や、め、でぇ﹂
僕の訴えも空しく、蔦がショーツの中に侵入してきた。
、あ
、あ
、イ、グゥ﹂
僕がまさかと思っていると、クリトリスにチクリと痛みが走り︱︱。
﹁あ
全身を突き抜けるような快感が駆け抜け、一瞬にして絶頂に達した。
余りの快感にオシッコが出て、口から涎も垂らしてしまう。
膣からのお汁も、オシッコが続いてるように溢れ出てくる。
232
僕は快感と麻痺で力が抜けて剣を落とした。
、あ
、あ
あ
あ
﹂
プラーンと吊られたままにされていると、膣に蔦が入ってきた。
﹁あ
入ったと思ったら、一気に子宮口まで突き入れられる。
処女膜が破れたが痛さを感じず、逆に快感でよがってしまう。
蔦が僕の膣の奥、子宮口を撫でるように中で動く。
体は麻痺してるというのに、快感は普段の何倍にも感じる。
蔦が僕の膣を出し入れし始める。
膣の最奥の子宮口まで突き入れて、一気に入り口まで戻し引き抜く。
ジュルルル、チュポッ、ジュルルル、チュポッ。
入れて抜いてのいやらしい音が上から聞こえる。
子宮口を押される時と、チュポッと膣から抜かれる時が気持ちよす
ぎだよぉ。
僕が快感に身を任せると、麻痺毒が弱まったのか声だけ出せるよう
になった。
﹁あぁ、オマンコぃぃ、あはぁ、抜く時ぃ、お汁が飛び散ってぇ、
綺麗ぃ﹂
出し入れを始めてショーツが横に避けられ、完全に露になった僕の
オマンコ。
233
そこからジュプジュプされる度にお汁が飛び散る。
締上げられて真っ赤になってた胸も、気づけば痛みがちっともなく
気持ちいい。
﹁はぁ、いいのぉ、もっとぉ、僕のエッチな場所ぉ、弄ってぇ﹂
体は動かせず、声だけで快感を吐き出す僕。
僕が膣から感じる快感に酔っていると、急に膣がミチリと広げられ
た。
そのまま中もミチミチと広げられていく。
﹁あ、ぐぅ、な、なに、あぁぁ﹂
下から見る僕の視界に、膣に向かうように複数の蔦が見えた。
膣は入り口のお肉が皺一つないくらいピチピチに広げられてる。
だと言うのに、僕は痛みじゃなく快感で喘いでしまう。
﹁やぁ、膣広げられてぇ、痛いはずなのにぃ、気持ちいいのぉ、あ
ぁぁん﹂
気持ち良さでヒクヒク動きが止まらない膣内で、多数の蔦を締め上
げる。
膣内の壁肉を動かし蔦の快感を味わっていると、子宮口に何か刺さ
った。
﹁あへぇ?﹂
234
刺さった感じはするのに痛みを感じない。
それを疑問に思ってると、一本の蔦が子宮口を押し始めた。
﹁だぁめぇ、そこはぁ、入らないのぉ﹂
押される気持ちよさで涎を垂らしながら声を出す。
子宮口を押される快感を楽しんでいると、中でつぷっとした音が聞
こえた気がした。
音は気のせいじゃなかったようで、蔦が本来は入れない僕の子宮口
に先端を入れた。
﹁な、なんでぇ、そこぉ、入れない、はずぅ﹂
徐々に子宮口をこじ開け、僕の子宮に蔦が入ってくる。
﹁は、ぐぅ、そこはぁ、だめなのぉ、ふぐぅ﹂
膣にオチンチンさえ入れた事がないのに、子宮まで蔦に犯される。
お腹に圧迫感を感じるが痛みはなく、子宮に入られる事に快感を感
じる。
気持ち的には嫌なのに、体は快感以外は感じなかった。
﹁やぁ、子宮にぃ、入られ、ちゃったぁ﹂
蔦が子宮口を抜け子宮に入った。
膣の入り口と子宮口、2箇所で強く蔦を締めつけている。
少しすると子宮口の部分の蔦が少し膨らんだ。
235
その後、コロンとした丸い感触が僕の体の中に生まれる。
﹁え? ん、ぐぅ、はぁ、うぅん、あはぁ﹂
少しすると、また子宮口の蔦が膨らみ︱︱子宮の中に何かが当たる。
﹁え、え、え、あぁ、まさかぁ﹂
3度目に膨らんだ時、しっかりと子宮に何か出されてる気配を感じ
た。
﹁いやぁあ、種付けされてるぅ﹂
4,5度と出される度に、子宮が重くなるのを感じた。
﹁やだぁ、やめぇてぇ、孕んじゃうぅ、魔物の子をぉ、孕んじゃう
ぅ﹂
蔦に種付けされる度に拒否の言葉を出す。
しかし子宮に重さが加わる度に、僕の体は頭が痺れるような快感を
感じる。
﹁やめてぇぇ﹂
その後も、蔦は僕の子宮に丸い何かを出し続ける。
言葉とは裏腹に、僕は快感を感じながら子宮を犯され続けた。
236
第15話 口の奥まで♪︵後書き︶
主人公はどこかの金ぴか様と同じくらいの慢心王。
確かな実力がない分、もっと酷いか⋮。
魔物に種付けされた主人公!
このまま魔物の母となってしまうのか!
ダークなお話ではないので、なってもライトな感じで行きたいです
が。
あと1,2話進んだら、エインさんその他の視点で真面目外伝物語
⋮書いてもいいですかねぇ?
真面目は苦手だけど、エッチな話ばかりだと、それはそれで疲れる
ぅ。
感想等お待ちしておりまする。
237
第16話 性活は計画的に︵前書き︶
今回レム君がほにゃららなので、好まない方は気をつけてくださぃ。
238
第16話 性活は計画的に
﹁ヒッヒッフー、ヒッヒッフー﹂
﹁頑張って力んで下さい﹂
﹁ヒッヒッフー、ヒッヒッフー﹂
ベッドの横に立つダークエルフさんに、お腹を摩られながら息を吐
いて力む。
裸で脚を開いて力む僕の膣に、スライムさんが手︵?︶を入れる。
その手が僕の子宮口を開き、子宮の中の種子を出そうとする。
﹁ヒッヒッフゥゥ、んぎぃぃ﹂
﹁頑張って!﹂
子宮口が種子で拡げられる痛みと快感で頭がグルグルする。
ゆっくり子宮口を通過した種子をスライムさんが一気に引き抜く。
スライムさんに引っ張られて、緑のゼリーのような玉が僕の膣から
チュポンと出た。
﹁んはぁ、ひぃひぃ﹂
﹁漸く1個目ですね。トレントの拡張毒が残ってる内に、子宮内の
種子を取り出しましょう﹂
239
僕のぷっくりと膨れたお腹を摩りながらダークエルフさんが言って
くる。
﹁こ、これって、後どのくらい入ってるのぉ?﹂
﹁そうですね。30∼50個入ってると思いますよ﹂
﹁ひーーー﹂
﹁子宮口が開く拡張毒の効果が残っている内に出さないと大変です。
さぁ、力んで﹂
ヒッヒッフーと呼吸をしながら、何故こうなったかを考える。
僕は蔦に種付けされてる途中に快感で気絶した。
で、気づいたら今いるベッドの上だ。
目覚めたら横にはスライムさんと見知らぬダークエルフさんが居て、
僕の状況を説明してくれた。
トレントに種付けされてた僕を助けて、急いでダークエルフの里へ
連れて来てくれたと。
あの蔦はトレントが操ってたらしい。
木に擬態してて、目の前に居たらしいけど気づきませんでした。
ゲームでは魔物としてデフォルメされたユニットだったしなぁ。
生トレントは見事に木にまぎれていた。
240
ゲームと違い、レベル10くらいの魔物でも油断できないようだ。
﹁ヒッヒッフー、ねぇ、これ出さないと、本当にトレントになっち
ゃうの?﹂
﹁正確には中の種子が成長してトレントの養分にされます﹂
﹁ひぃー、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、んぎゅぅぅ﹂
再びスライムさんが子宮から種子をとって子宮口を通過する。
そしてチュルッと言う音と共に、膣からゴルフボール大の緑の玉が
出る。
﹁んひぃ、んはぁ、はぁ、はぁ﹂
ゴルフボール大といっても子宮口には大きくて辛い。
﹁強い女性の場合、何故かアルラウネとなる事もあるそうです。が、
女性と言えど強ければ普通は種子を埋め込まれないのですが﹂
﹁ひっひっふぅ、んぎぃぅぅ﹂
種子を抜かれる度に子宮口が引っ張られる。
強いってのはレベルが高い女性って事かな。
レベルが高くて女性じゃないと、アルラウネにならないのか。
だからアルラウネって女性の姿でレアモンスターなのか。
﹁んふゅぅぅ、んぁぁあ﹂
241
チュポン。
また一つ、緑のゼリー玉が膣から出た。
抜かれる度に子宮口がニチッと拡がって痛い。
でも、拡がる感覚と膣の入り口の方に引っ張られる感覚が気持ちい
い。
スライムさんのニュルッとした感触も膣壁で気持ちよく感じちゃう。
﹁さぁ、力んで!﹂
﹁んひぃ、んはぁ、あはぁ﹂
いつの間にか喘ぎ声が混ざりつつ、子宮から種子出しが続く。
﹁んぎぃぃ、んぁぁ、あぁぁん、イクぅ﹂
途中で何度かイキつつ、僕の種子出しは3時間近くかかった。
﹁別室で長老方がお待ちです﹂
僕を助けてくれた巨乳ダークエルフのアルシアさんについて行く。
折角、鎧を着てても胸元谷間が見える巨乳様だと言うのに⋮。
種子46個出産で、僕は精神的にげっそり疲労中だ。
処女膜はちゃんとヒールをかけてを治した。
242
余裕があったわけじゃなく、エインとのエッチで身についた癖みた
いなものです。
げっそりな僕とスライムさんが後ろを歩いてると、アルシアさんが
扉を開けて部屋に入った。
﹁長老方、お客人のセシル様を連れてきました﹂
﹁ふむ、来たか﹂
その部屋に入るとパラダイスだった。
長老様達と思われる3人の女性達が居た。
しかしその呼び名に反し、全員巨乳でむっちりとした熟女。
決してお年寄りではなく、唇や肌に艶のある巨乳奥様って感じだ。
﹁ラミア族のお客人、無事で何よりだった。スライム殿がご一緒だ
ったのが幸いだったの﹂
﹁あ、ども。ありがとうございます﹂
褐色銀髪のムチムチ熟女に無事を祝われ、反射的に頭を下げた。
﹁お主がラミアの客人である事はスライム殿より聞いている。我等
が町ではゆるりとなさるがよい﹂
﹁ありがとうございます﹂
どうやらスライムさんが話を通してくれてるようだ。
243
﹁色々疲れたであろう? 此方に座り雑談でもしながら寛いでくだ
され﹂
3人の熟女が座るテーブルの席へとアルシアさんに案内される。
良くみるとラミューとレムも座って居た。
巨乳熟女に気を取られて気づかなかった。
テーブルにはお菓子と飲み物が置かれ、二人とも歓待されてたよう
だ。
エルフと言う事でどうなるか心配だったので、よかったと安心した
が⋮。
レムを見るとチラチラと奥様方の方を見ている。
すぐにその視線が奥様方の胸を見てると気づく。
何故気づいたか。
それは僕も見てたからね!
ゆったりした服から覗く巨乳の谷間を!
そのレムの様子に腹を立てる。
僕が種子出産で大変だった時に熟女とイチャイチャしおってぇ。
それに僕以外の胸を見るのがなんだか腹立たしい。
少し僕より大きいからって、僕だって巨乳なのに。
これはお仕置きが必要だ。
奥様方と反対側のレムの隣の席へと座る。
座ったら隣のレムを持ち上げ自分の膝へ座らせた。
244
座らせた後にぎゅっと抱き寄せ、頭を胸の間に押し付ける。
﹁え? え?﹂
レムは急に膝上に座らされ混乱してる。
ふふふ、小さい頃に親戚の集まりがあった。
そこで年上の従姉弟のお姉ちゃんに膝上に座らされた事がある。
あの時は嬉しいやら恥かしいやらで大混乱だった。
頭とかに当たる胸が柔らかで気持ちいいけど、それがどういう物か
よくわからず悶々し続けた。
﹁セシル殿、スライム殿、ラミューちゃんやレムちゃんを連れての
旅は大変だったろう?﹂
﹁いえいえ、そんな事は∼﹂
﹁プルプルプル﹂
真ん中の一番色気がある奥様に、僕とお誕生席︵上座?︶に陣取っ
たスライムさんが答える。
なんか思った以上に友好的だ。
もしかしたらレミネールと戦わないで済むかも?
レベル10位のトレントに良い様に種付けされた身としては、レベ
ル下とは言え無用な戦いは避けたい。
﹁トレントに襲われたと聞いたが、無事でよかった﹂
245
﹁アルシアさんとスライムさんのおかげです﹂
﹁さすがスライム殿、そう言えばあの時も︱︱﹂
﹁プルプルプルプル︱︱﹂
スライムさんと奥様達は知己らしく、何やら昔話を始めたようだ。
膝に乗せたレムは自分の胸の前で手を組んだまま動かない。
僕の巨乳やムチムチの太ももにドキドキしてるんだろう。
くっくっく⋮ん?
これってもしやお仕置きではなくご褒美なのでは⋮?
美人のお姉さん︵僕︶に抱っこされる。
これではご褒美だと思うし、もっと恥かしい目に遭って貰おう。
僕はそぉっとレムの股間へと手を伸ばす。
テーブルの反対側に座る奥様達からは見えない。
予想通り起ってたレムのオチンチンをズボンの上から撫で回す。
﹁んあ、セシル、お姉ちゃん﹂
レムが小声で僕へ訴える。
人前で隠れてオチンチンを触られて気持ち良いけど物凄く恥かしか
ろう。
ふふ、皮が被ってるレムのなら、直接よりズボン越しが気持ち良い
かもね。
246
オチンチンの亀頭を摘んで撫でたり、袋の下から先端までツーと撫
でたりする。
レムのオチンチンは僕が触るのに反応してビクビク動くのが分かる。
奥様方を見るのも忘れ、レムが気持ち良さで僕に体を預ける。
お仕置きのつもりだったが、少し楽しくなる。
もっと弄ろうとしたら右手を引っ張られた。
2個隣に座ってたラミューが、隣の席に座り僕の右手を引っ張った
ようだ。
引っ張った僕の手をどうするかと思ったら、そのまま自分の股間に
︱︱。
って、えぇぇ迷わずズボンの中、じゃなくてショーツの中に!?
僕の右手を自らのショーツの中に入れたラミューは頬を染めて見て
くる。
これは自分も弄れって事だよね。
僕は左手でレムのオチンチンを撫でながら、右手でラミューの割れ
目に指を入れた。
﹁ふぁ、セシルさぁん﹂
ラミューは小さな声で頬を染めながら僕の名前を呼んでくる。
ラミューの秘所は柔らかでぷにっとして、それでいてすべすべだ。
247
軽く撫でるだけで僕も興奮する。
ラミューの秘所を弄るのに夢中になるのに比例して、レムのオチン
チンもいっぱい弄る。
ズボンの中に手を入れて皮が被ってる亀頭を摘んでクニクニする。
その感覚が無くなった自分の相棒を思い出し、より興奮した。
ラミューの割れ目に中指を添えながら、横のお肉を人差し指と薬指
で挟む。
オマンコ全体を握るように掴んで揉むと、ラミューが体をビクッと
させた。
夢中で二人の性器を弄っていたら、奥様の一人から質問が飛んで来
た。
﹁それでセシル殿、我等ダークエルフの町へ何用で参られたのかな
?﹂
﹁レミネールを倒して衣食住のお世話をしてもらおうかと﹂
﹁ほぅ⋮⋮﹂
楽しい午後の奥様談議な雰囲気が一変、周りが急に静かになる。
二人を弄るのに夢中だったので無意識に答えてしまったが⋮。
今僕は何て言った⋮?
﹁生憎と族長であるレミネールは不在ですが⋮レミネールに次ぐ実
力者をもって迎えましょう﹂
248
﹁あ、あれ? えーと⋮﹂
﹁アルシア! 明日セシル殿との決闘を申し渡す﹂
﹁はっ! 長老様の命、承りました!﹂
﹁なんですとぉぉぉお!?﹂
いきなりな展開に吃驚する僕。
スライムさんはテーブルに体の一部を乗せ、やれやれって感じでプ
ルプルしてる。
友好的だった長老様方は、僕の一言で決闘する事を決めたのでした。
夜も更けて寝る時間となったが、宛がわれた部屋のベッドの上で頭
を抱える僕。
﹁ラミア族の客人として、ダークエルフにも友好的に迎えられてた
のにぃ﹂
うっかりの一言で決闘をする事に。
族長レミネールは不在らしいが、相手はそれに次ぐ実力者のアルシ
アさん。
レミネールは回復、攻撃、補助の魔法に剣も使える魔剣士。
アルシアさんも多分同じ魔剣士だろう。
魔剣士の魔法は専門職に比べると劣るが⋮。
249
﹁今の僕って称号のせいで魔法に弱いし⋮﹂
レベル差あるし大丈夫!と思ってたけど、トレントの事で不安です。
トントントン。
僕が自分のうっかりに悔やんでたら誰かがドアをノックした。
﹁どなたですか∼?﹂
﹁ラミューです⋮﹂
確かにラミューの声だったのでドアを開けた。
するとそこには、手を繋いで頬を上気させる二つの少女の顔があっ
た。
﹁あの⋮さっき途中で終わっちゃったので⋮辛くて⋮﹂
決闘云々で途中で止めちゃったからか。
そうじゃなくても、あの場で最後までする気はなかったけど。
二人ともエッチな事は僕としたのが初めてっぽかった。
だから悶々してもどうして良いか分からずに僕の所へ来たのかな。
﹁セシルお姉ちゃぁん﹂
レムが切なそうな声を出す。
その声を聞いて、決闘の事は置いといて二人をすっきりさせる事に
250
した。
僕が純真な美少女双子とエッチな事がしたいわけじゃないんだから
ねっ。
⋮⋮いえ、本当はとってもしたいです。
二人を部屋へ招き入れ︻全てはずす︼で3人裸になる。
いきなり裸になったからか、二人は一瞬体をビクンとさせるが何も
言わない。
何故か二人の首輪ははずれなかった。
隷属の首輪?
なんか呪いでもかかってるんかね。
しかし⋮全裸で首輪ってなんかエロイね!
ベッドに腰掛け二人を見る。
ラミューはポ∼とした表情で僕を見つめてる。
レムは僕の首より少し下を凝視してた。
﹁レムって長老さん達の胸も見てたよね∼。オッパイ好きなんだ∼
?﹂
﹁え、えと、その⋮﹂
僕が意地悪かなって思う質問をすると下を向いてモジモジするレム。
ラミューと同じ少女の顔で恥かしがる姿はとても可愛い。
251
﹁オッパイ触ってみる?﹂
﹁はい﹂
返事をしたのはレムではなくラミュー。
レムはと言うと、恥かしがって下を向いたままだ。
ラミューは返事をすると僕の右足の上に跨いで座り、僕の胸にそっ
と手を当てた。
﹁セシルさんの胸、大きくて柔らかくて肌もすべすべで素敵です﹂
﹁ありがと。んっ、ふぅ﹂
レムに言ったつもりだったけど、積極的に僕の両胸を揉み始めるラ
ミュー。
﹁お、お姉ちゃん、ボクも﹂
姉が僕の胸を揉むのを見て我慢できなくなったのか、レムが声を上
げた。
思春期男子はオッパイ触りたくても、恥かしくてすぐにうんなんて
言えないよね。
ラミューなんて即答だったけど、思春期は女の子の方が性に積極的
なのかな。
﹁じゃあ、レムはこっちにおいで﹂
252
モジモジしてるレムを左足の方に座らせた。
するとラミューは左のオッパイを弄るのを止めて右だけ触る。
空いた僕の左のオッパイをレムが両手で触ってくる。
ラミューの強くはないけどしっかり揉まれる快感。
レムの優しく探る様に全体を撫でてくる快感。
その二つの快感が暫く続いた。
﹁んっ、ふぅ、はぁ、んんぅ﹂
﹁ん⋮ん⋮﹂
﹁ハァ、ハァ﹂
僕の小声の喘ぎに重なるように二人の吐息が重なる。
気づけば二人は僕の太ももの上で腰を動かしていた。
ラミューの秘所からは汁が溢れ、水気とオマンコの柔らかさが僕の
脚に伝わり気持ちいい。
だが左足のレムの方は⋮。
小さいけど硬いオチンチンの感触が太ももに押し付けられる。
意図しない所でオチンチンを感じるのは、なんかちょっと嫌だ。
僕が弄るのはいいけど、勝手に擦り付けられるのはお断りだ。
﹁レム、ベッドの上に寝て。ラミューはレムを跨いで立って﹂
二人は指示通りに動く。
253
僕はレムの上に跨り割れ目をレムのオチンチンに押し付ける。
そして立ってるラミューの割れ目に舌を入れて舐める。
﹁ちゅぅ、んっ、ちゅ、ちゅ﹂
﹁んうぅん、セシルさぁん﹂
﹁んぁ、セシルお姉ちゃんぅ﹂
ラミューの割れ目を吸ったり膣に舌を入れたりしながら、自分の割
れ目でレムのオチンチンをしごく。
挿れるのは嫌だけど、胸を揉まれてもっと気持ち良くなりたいと膣
がムズムズしてた。
二人を気持ちよくさせつつ、自分も気持ちよくなる為に腰を前後に
動かす。
﹁じゅるぅ、ちゅる、んっ﹂
﹁ひぅ、あぁ、んあぁ﹂
﹁はぁ、はぁ、はぁぁ、でちゃうぅ、うあぁ﹂
ラミューの愛液を舐めながら腰を動かしていたら、レムが精子を吐
き出した。
しかしレムがイったのも構わずに僕は腰を動かし続ける。
皮が被ってるせいか飛び散らずに僕のお汁と混ざり合い、レムのオ
チンチンとの潤滑油として加わる。
254
﹁セシル、お姉ちゃん、ボク、ボクぅ﹂
イっても無理矢理しごかれるからか、レムが辛そうに声を出した。
聞こえない振りをしてラミューの膣に舌を奥まで入れて抜いた直後
に思い切り吸い付く。
﹁んっ、んっ、じゅるぅぅ﹂
﹁んぁぁぁ、セシルさぁぁあん﹂
﹁僕も、イクっぅぅ﹂
ラミューのイキ声を聞いて、僕も動かしてた割れ目の快感で軽くイ
ッた。
イって倒れそうなラミューを抱き寄せる。
3人ともイケたので終わろうと二人に声をかけた。
﹁ラミューもレムもイケて良かった。レムはイった後も弄ってゴメ
ンネ﹂
僕がイク為とは言え、射精後に擦り付けたのは悪いなぁと思ってた。
レムの上から退いてラミューを寝かそうとしたら、レムがベッドの
上で立ち上がった。
﹁セシルお姉ちゃん、ボクここまだ治まらないの⋮もっとしてぇ﹂
レムは皮から頭だけ少し剥けたオチンチンを僕の目の前に出して懇
255
願してきた。
目の前のオチンチンを驚いてじっと見てたら、乳首が柔らかい何か
に包まれる。
﹁ん、ちゅぅ。セシルさぁん、私も、体が熱くてたまらないですぅ﹂
ラミューが僕の乳首に吸い付いて離した後にそんな事を言う。
﹁え、えっと、二人とも1回じゃ満足できなかった?﹂
﹁﹁はい、もっとして欲しいですぅ﹂﹂
二人はユニゾンして答えてくる。
﹁で、でもほら、僕って明日決闘だし? そろそろ寝ないとみたい
な?﹂
﹁セシルさぁん﹂
﹁セシルお姉ちゃぁん﹂
﹁わふ﹂
二人に押し倒された僕は、そのまま乳首を同じ顔の双子に吸われた。
﹁あ、吸っちゃダメ。まだ少し余韻で体が敏感で、あっ﹂
﹁﹁ちゅぅぅぅぅうう﹂﹂
﹁あぁぁん﹂
256
自慰すら知らない性に目覚めたばかりの双子の性欲は凄まじかった。
結局、僕は朝方まで二人としっぽり過しました。
257
第16話 性活は計画的に︵後書き︶
時間がとれずに毎日更新が出来ない⋮。
どこまでアホなのか主人公!
策略とか考えられなくても、もうちょっと器用に立ち回ってほしい!
双子に対して責めてたけど、最後押し倒されるとかヒロイン体質が
抜けない主人公!
16話考えてる時は、そんな締めじゃなかったんだけどなぁ。
次回は巨乳さんが餌食に⋮なるのかな。
感想や、エロだけじゃなくもっと冒険しろよ。とかのツッコミもお
待ちしております。
あ、ツッコミは優しくだと嬉しいデス。
258
第17話 決闘 魔剣士闇エルフ︵前書き︶
今回はエロがない!?
吃驚デス。
259
第17話 決闘 魔剣士闇エルフ
長老ダークエルフの一人に案内されて石造りの建物の中を歩く。
ラミュー達とのエッチの後、3人で裸で寝てたのをスライムさんに
起された。
起きてすぐに服を着て部屋を出た。
そして部屋の外に居た長老さんにそのまま案内され中です。
徹夜と言ってもいいほど寝てないせいか、全身がだるく下っ腹が重
くて気分が悪い。
僕はアンニュイな気分で長老さんについていく。
アンニュイ気分で長老さんのセクシーな背中を見てたら、急に止ま
ったその背に顔をぶつけた。
﹁ふふ、やる気満々ですのね。ではセシル殿、この先へ﹂
手で示された石の扉を通過すると︱︱高い石の壁に囲まれた広場に
出た。
天井は無く空が見えてる。
ぐるっと高校の体育館位の広さを囲う石壁には魔方陣のような紋様
が書いてある。
壁の上、2階部分には座席があり見学者っぽいのが多数居た。
﹁⋮⋮闘技場かぃ﹂
260
僕が出てきた反対側にはアルシアさんが立っている。
黒のボディスーツのような物の上から銀の鎧を着て、腰には剣を差
している。
スーツも鎧も胸の谷間の部分は開いている。
長髪の銀髪褐色美女の凛々しい鎧姿は素敵だ。
ずっと見ていたいものです。
決闘じゃなければだが。
﹁それでは、これよりアルシアとセシル殿の決闘を始める﹂
日差しがついた豪華な席にいる、長老様方で一番セクシーな熟女が
大声で宣言した。
その席にスライムさんとラミューにレムも居た。
昨日から思ってたが、スライムさんVIP扱い?
﹁勝者は相手の全てを手に入れるものとする。双方始めるが良い!﹂
ルール説明とかは無く、すぐに決闘は始まった。
さて、どうするか。
左手に出した剣を握りながら悩む。
アルシアさんはトレントから助けてくれた恩人なので斬るとかはな
しだ。
261
理想はあれだ。
首筋に剣を当てて、動くなとか言って相手を降参させる。
アニメやゲームであるお約束的決着だ。
接近戦なら剣聖レベル61の僕に分があるだろう。
そう思い一気に距離をつめる。
アルシアさんは剣すら抜かず手を僕に向けた。
するとその手から火の玉が現れ僕に向かってきた。
ヒュゴォォ⋮ボカァン。
﹁熱ちっ、痛っ、うっぷっ、いぢぢぢ、ヒール、ヒール、ヒィィル
ゥ﹂
一直線に距離を詰めてた僕は火球に直撃した。
右手で咄嗟に受けたが、熱さと痛さで堪ったものじゃない。
僕がヒールをしてると次々と火球が襲ってくる。
﹁遠距離から魔法連打とか卑怯ですのことよぉおおぉ!?﹂
距離をとって必死に避ける。
ゲームの時はターン制で魔法を一方的に打たれることはなかった。
魔法系ユニットなど、魔法を一発耐えて近寄れば剣聖等の前衛系が
圧倒のはずが⋮。
﹁ぐっ、リアルチックなこの世界だと、長距離攻撃って卑怯だぁ∼﹂
262
真面目な顔をして一切手加減をしない雰囲気のアルシアさん。
手を向けてファイアボールを打ってくる。
距離があれば身体能力で避けられるが、逆を言えば一方的に攻撃さ
れている。
ゲームよろしく、ここは一撃二撃耐えて近寄るか⋮。
そう思ったが最初に食らった痛みを思い出して却下する。
HP的には耐えられるだろうけど熱痛いのは嫌です。
ヒュゴォォォと僕の横を通過する火球を見て悔しくなる。
僕も魔法が使えればぁ。
と思った時に思い出した。
﹁セシリアってファイアーボール使えるじゃん﹂
チュートリアル時に使ってた魔法を思い出す。
アルシアさんの火球に合わせ、僕もファイアボールを唱える。
﹁ファイアーボール!﹂
僕とアルシアさんの火球がぶつかり合い相殺︱︱されないで僕に向
かって来た。
﹁なんとぉぉ!﹂
ゲームの時は打ち合いなど無かったから結果が予想できなかった。
かっこよく右手を前に出すポーズから一転して必死に避ける。
称号のせいで賢さ実質25の僕のファイアボールは一方的に撃ち負
263
けるんかぃ!
魔法の打ち合いに負けても僕は凹まない。
あまり広くないこの闘技場ならば中距離の技で十分。
﹁こんな技がありましたよっと。疾風剣!﹂
縦に振った剣から鋭い剣撃の波が生まれ、アルシアさん目掛けて進
む。
その波をアルシアさんはひょいと横に動いてかわす。
﹁あんですとぉ!?﹂
疾風剣は自分から5マス先までの敵を貫通してダメージを与える。
直線技で1マスずれたら当たらないが⋮。
﹁よ、横に一歩ずれただけで当たらないのね⋮って!?﹂
剣を振り下ろし油断してた僕に火球がぶつかる。
肩にぶつかりドレスの左胸部分が吹き飛んだ。
﹁ぐ、うぅ、ヒール﹂
ヒールを唱えて回復するが、その後も次々と火球が迫る。
一方的な攻撃による精神的圧迫感と、体調不良の体の重さで少しず
つ動きが鈍る。
たまに掠ったり食らったりしてドレスがぼろぼろになっていく。
ぼろぼろになったドレスから左胸やショーツが見えてしまう。
264
﹁怪我はヒールで治せるけど、MPがもつかなぁ﹂
アルシアさんは僕よりレベルは下だと思う。
だが戦い方が圧倒的に上手だ。
例えばファイアーボールを真っ直ぐ撃つだけじゃない。
僕の手前の地面に当てたりしてフェイントを入れる。
手前に当てて砂埃で見えなくなったところへ、本命を上から放物線
を描くように撃ってきたりだ。
それなりの時間一方的に攻撃され続け、精神と体力が削られる。
﹁はぁ、はぁ、はぁ﹂
僕の息は乱れてると言うのに、アルシアさんは涼しい顔のまま剣も
抜かずに立っている。
切り札はある。
今でも火球は熱いし痛いが即死するわけじゃない。
ならば切り札を使えばダメージを軽減するので痛みも減るだろう。
痛みが減れば気持ち的に距離を詰め易い。
距離さえ詰めれば推定魔剣士のアルシアさんに圧倒できるはずだ。
しかし、切り札は使えない。
観客がいっぱいだし何より決闘だ。
こんなシリアスな場面で僕の切り札は色々な意味で危険すぎる。
﹁うー、せめて疾風剣が横に長ければなぁ﹂
265
縦の剣撃が飛ぶ疾風剣は、一歩横に動けば避けられる。
打開策を考えていたら次なる火球が迫ってきた。
﹁うひょぉぉぉぅ﹂
何故か火球が来る頻度が落ちてきたので、避ける合間に必死に考え
る。
シュート回転で僕に襲い掛かる火球を避けてたらピンときた。
ファイアーボールも色々撃ち方とか工夫できるなら疾風剣もできる
んじゃ?
自分の考えを試すように、僕は縦ではなく横に剣を振った。
﹁疾風剣!﹂
横に振った剣からは地面と水平に横長い剣撃が飛んだ。
縦と違い横に長いそれを、アルシアさんは驚きつつも避ける。
避けられたが縦の時より明らかに必死に動いてた。
﹁く⋮くっくっく。横長くなった分避けにくいと﹂
その事実を確認した僕は横振りの疾風剣を撃ちまくる。
すると先程とは逆に、僕が一方的に攻め立てる。
﹁ふっふっふ∼。とりゃとりゃ∼﹂
一応アルシアさんが避けれるようにタイミングをみて撃っている。
直撃しても死なないと思うけど、女性を傷つけるのは本意ではあり
266
ません。
﹁ハァ、ハァ、ハァ﹂
暫くするとアルシアさんが息を荒げ始めた。
それを見て僕が疾風剣を止めると、アルシアさんがファイアーボー
ルを撃ってきた。
火球を疾風剣で迎撃すると爆炎が上がる。
炎と煙で前が見えなかった一瞬で、アルシアさんが剣を抜きつつ距
離を詰めてきた。
﹁ハァァァ!﹂
気合一閃、鞘から抜きながらの一撃を僕は剣で受ける。
力と力による鍔迫り合いになる。
﹁んぐぐ、近寄れば僕の勝ちだよぉ!﹂
﹁それは、どうですか、ねっ!﹂
アルシアさんは後に一歩飛んだかと思うと、激しい撃ち込みをして
きた。
僕はそれを剣でしっかりと受ける。
セシリア性能の僕は剣術に関してはかなりのものだ。
魔剣士のアルシアさんの攻撃は正直余裕を持って受けれた。
受けれるけど⋮えーと、どうしよう。
267
攻撃すると斬っちゃうし。
ならばアルシアさんの剣を狙うか。と思ったらあるスキルを思い出
した。
そう言えば、武器破壊と鎧破壊ってスキルがありました。
剣聖や一部の前衛職が持つスキルだ。
必中でないしダメージも与えられないが、文字通り相手の武器や鎧
を破壊する。
早速実行と、振り下ろそうとしてるアルシアさんの剣を目掛けて︱
︱。
﹁ウェポンブレイク!﹂
僕の剣はアルシアさんの剣を根元から叩き斬った。
﹁くっ﹂
それを見たアルシアさんが剣を捨てて掌を僕に向ける。
にゅぉぉぉ、剣が無くても諦めませんか。
近距離のファイアボールを警戒して焦って鎧破壊を使う。
﹁アーマーブレイク!﹂
僕の剣はアルシアさんの胸元目掛けて進み、下から切り上げながら
鎧の胸の部分を破壊する。
アルシアさんの胸元の鎧と黒いボディスーツが吹き飛ぶ。
268
同時にその大きな胸が上に跳ね伸びたかと思うと重力に引かれ下に
落ちる。
その巨乳はポヨンポヨンとでも言いそうなくらい上下に揺れている。
くっ、鎧の下に物凄い凶器を隠していたか!
﹁ま、参りました﹂
僕が凶悪な巨乳を見つめていると、それを両手で隠しアルシアさん
が座り込む。
﹁勝負はそこまで! 勝者はセシル殿!﹂
アルシアさんが座り込むと同時に、長老さんの勝利宣言が響き渡る。
闘技場の観客達は、その宣言を聞くとォォオォと驚くように声を出
していた。
その声を聞いて、ほっと安堵した。
最初は負けそうで焦った。
何とか勝ててよかったぁ。
僕は安心して一歩下がり深呼吸をする。
深呼吸をした時に地面をみたら、自分が立ってた場所に赤い液体が
落ちていた。
胸を押さえて座ってるアルシアさんを見ても血とかは出ていない。
そーと自分の体を見ると、ぼろぼろのスカートの隙間から脚に血が
付いてるのが見える。
269
ソレを見て顔を引き攣らせつつ、スカートの隙間から自分の太もも
に手を当ててみた。
するとねっとりとした感触を感じた。
手を目の前に持ってくるとベットリと血が付いていた。
﹁あ、あれ⋮。実はこっそり致命傷を貰ってた⋮?﹂
火球を食らった時と違い、痛みが無い事に手遅れ感を感じた。
決闘の疲れ、体調不良の体のだるさ、痛みが無いのに出血してる恐
怖。
その3つから僕はフラっとして倒れかける。
﹁セ、セシル殿? その血は!? 一体どうしたのです!?﹂
倒れかけた僕をアルシアさんが受け止めて抱きしめてくれた。
﹁痛くないのに、血が出てるの⋮。僕もうダメかも⋮﹂
フラフラした頭で応える僕。
﹁そ、そんな⋮傷は見当たらない⋮? すぐにスライム殿に治療を
して貰いましょう!﹂
彼女は僕の脇とお尻の下に手を通して持ち上げる。
アルシアさんにお姫様抱っこされながら僕は闘技場を後にした。
270
271
第17話 決闘 魔剣士闇エルフ︵後書き︶
長くなったのでエッチパートは次話です。
16話のあとがきで書かれた餌食になる巨乳とは一体誰かな∼。
最後お姫様抱っこされる主人公!
主人公の謎の出血は一体!?
主人公の切り札や出血についてわかる人は多そうデス。
だけど、良い子も悪い子もエロい子も自分の心の中だけで内緒でね!
感想等お待ちしておりま∼∼す。
読んでくれる読者の方々のおかげで書き続けられます︵*ノノ︶
272
第18話 決湯 巨乳闇エルフ
僕はベッドの上に裸になって診断を待った。
スライムさんが僕の体を調べ終えてアルシアさんと何やら話してい
る。
ベッド横にはラミューとレムが居て心配そうに僕の手を握っている。
もしかして昨日のトレントの種子が残ってて発芽したとかだったら
⋮。
エイン、ラミュー、レム、スライムさん、フェシスさん。
先立つ僕を許して下さい。
緑美人のアルラウネになる覚悟をしようとしてたら、アルシアさん
が笑顔で僕を見た。
﹁セシル殿、ただの月経のようです。大丈夫ですよ﹂
﹁げ、げっけい! ⋮って何?﹂
﹁えぇっと、人間の場合言い方が違う? 女性の月の物なんですが﹂
﹁あ、生理の事?﹂
﹁そうとも言いますね﹂
﹁はぁ∼∼⋮生理かぁ﹂
273
僕が溜息しつつ安堵すると部屋全体の空気が軽くなった気がした。
女性には生理があるとは知ってたけど、自分がなるとは考えもして
なかった。
この体になって既に3ヶ月くらい。
もう1,2回なっててもおかしくないと思うんだけど⋮。
エインとのエッチで処女膜破った出血とまぎれたとか。
ネーブルの処での拷問中になってたとかだろうか。
体調不良でのんびり寝てた日もあったから、もしかしてその時がそ
うだったのかなぁ。
部屋の中でレムだけ訳が分からない様子だ。
それを察したラミューがレムに説明してる。
﹁あ∼、朝から具合悪くて体が重かったのはそのせいかぁ﹂
﹁セシル殿は重い方ですか⋮。その様な時に決闘など、申し訳あり
ませんでした﹂
黒いワンピースに着替えたアルシアさんが頭を下げた。
さっきまで戦ってたのに、アルシアさんの態度は丁寧で優しい。
﹁いやぁ僕も生理って気づいてなかったし、終わった事だから気に
しないで∼﹂
生理の影響もあったと思うけど、ほぼ徹夜での双子とのエッチの影
響の方がありそうだし⋮。
274
﹁プルプルプルプル﹂
﹁スライム殿が、旅や種子取りでも疲れてただろうからゆっくり休
んで∼と言ってます﹂
﹁スライムさん、いつもありがとぅ﹂
スライムさんにはお世話になりっぱなしだ。
﹁ゆっくり休む前に、髪に絡んだ埃とか落としたいなぁ﹂
﹁それならお風呂に入られてはどうですか? 疲れも取れると思い
ますが﹂
お風呂かぁ。
カルドを出てから水浴びしかしてないからとても入りたい。
﹁でも、生理の時ってお風呂入ったらダメなんじゃ?﹂
﹁体を清潔にしてた方がいいので、入れるなら入った方がいいと思
います﹂
そうなんですか。
んじゃぁ、折角だし。
﹁お風呂入ろうかな∼﹂
275
アルシアさんに案内されたお風呂に来ました。
浴室は木作りで、浴槽から桶まで全部木で出来ていた。
10畳くらいの広さで湯船も広く、暖かそうに湯気がたっている。
﹁檜⋮かはわからないけど、綺麗な木材。まるで日本の温泉地のお
風呂みたいだなぁ﹂
この世界、意外とお風呂関係が充実だ。
カルドにはお風呂付の家も多いし、公衆浴場もあった。
僕が桶で湯を体にかけようとしたら、ガラっと入り口の扉が開いた。
吃驚してそっちを見たら、女神様がそこに居た。
全身綺麗な褐色で長い銀髪をなびかせて、碧い瞳が美しい。
すらっとした高い身長にしっかり張りのある大きな胸。
腰のくびれやおへそも綺麗で、下の毛も輝くような銀色だ。
﹁アアア、アルシアさん、どうしたんですか?﹂
﹁セシル殿のお世話をしようかと﹂
﹁な、なんでですか?﹂
﹁決闘に負けたので、私はセシル殿に全てを捧げ仕える義務があり
ます﹂
始まる前に長老さんが、勝者は相手の全てを手に入れるとか言って
276
たっけ。
ハッ!?
と言う事は、この美人グラマーダークエルフなアルシアさんを自由
にして良いって事!?
﹁セシル殿は女性がお好きと思って来たのですが⋮勘違いだったで
しょうか⋮﹂
﹁何でそう思うんデスカ?﹂
今の僕は女なので、女性好きと思われた理由が気になる。
﹁エルフの少女の奴隷を2名もつれていますし、その⋮昨日長老方
と話してた時に触ってましたよね﹂
昨日のテーブルの影でレムとラミューの性器を弄ってたの見られて
た!?
あの時って前に居る長老さん達しか気にしてなかったっけ⋮。
レムが男の子と言うツッコミはしないでおく。
﹁じゃ、じゃあ、僕を喜ばす為に来てくれた⋮と?﹂
﹁仕える主の望みを叶えるのは従者のつとめかと﹂
真面目顔で答えるアルシアさん。
決闘に負けて仕える事になった相手が女好き。
だから裸でお世話しにお風呂に来たって訳ですか。
277
アルシアさんって、真面目すぎてズレるタイプな気がします。
﹁⋮ご迷惑だったでしょうか?﹂
﹁是非お世話して下さい!﹂
美人グラマーお姉さんがお世話してくれるのを断る人は居ませんよ
ね。
﹁んっ、んっ、んっ﹂
浴室に一定のリズムで綺麗な声が響く。
椅子に座って胸に石鹸をつけたアルシアさんに背中を擦ってもらい
中です。
背中にムニムニ当たる感触とヌルッとすべる肌触りが気持ち良い。
﹁アルシアさん、もっと押し付けて﹂
﹁こ、こうですか?﹂
アルシアさんが僕の背中に胸を押し潰すように押し付けてきた。
背中にむっちりした胸が上下に動くのを感じて顔がにやけてしまう。
カルドの借家ではお風呂がなかったので公衆浴場を使ってた。
そしてエインは公の場だとエッチ行為どころか変な行動一切禁止だ
ったからなぁ。
278
お風呂での初エッチ。
しかも巨乳美人。
﹁にひひひ﹂
﹁セシル殿?﹂
﹁あ、ごめん。嬉しくてつい﹂
﹁そうですか﹂
嬉しいと言ったからか背中の上下運動が早くなる。
アルシアさんの胸が当たるのが気持ち良くて、股間がジュンとして
お汁が漏れてくる。
生理中だって言うのにエッチだなぁ僕。
背中以外も気持ちよくなりたいので次をお願いしよう。
﹁アルシアさん、次は前お願い﹂
﹁は、はい﹂
恥かしそうに顔を赤らめて僕の前に来る。
そして僕の膝の上に向かい合うように座らせる。
胸を擦り合わせようと思ったんだけどアルシアさんの胸をよく見た
ら︱︱。
﹁乳首、埋まってるんだ﹂
279
﹁そ、その⋮すいません﹂
陥没乳首というやつだろうか。
僕はアルシアさんの胸を少し持ち上げて胸の先端を口に含む。
﹁んぁ﹂
﹁ちゅぅ、ちゅぷっ。ふふ、乳首でたね﹂
アルシアさんの胸に吸い付いて両胸の乳首を吸い出す。
乳首を吸った時に胸全体がプルプルした。
自分以外の巨乳は初めてだからか興奮する。
﹁貧乳もいいけど⋮今は巨乳最高!﹂
﹁ありがとうございます﹂
顔真っ赤にして照れて可愛い。
自分より年上っぽいお姉様が照れるのって素敵ですね。
﹁アルシアさん、今度はその胸で僕の胸を洗って﹂
﹁はい﹂
僕の首に手を回して胸を動かし始める。
お互い同じくらい大きな胸が潰れたり胸の谷間に挟まれたりして気
持ちいい。
280
乳首が擦れ合うとピリっとした快感が走る。
僕はアルシアさんを抱き寄せ、隙間がないほど胸を押し付け合わせ
た。
すると胸が楕円に広がり乳房全てが気持ちよくなる。
﹁あぁ、んふぅ、気持ちいいね。アルシアさん﹂
﹁はぁ、ふぅ、はい。セシル殿﹂
暫く胸を擦り合わせた。
胸の快感でぽぉとしてると艶のある唇が目に入った。
キスしたいなぁ。
エインはほっぺにチューはしてくれたけど唇同士でキスしたことは
なかった。
日本に居た頃にエッチに憧れてたけど、同じくらいキスにも憧れて
た。
﹁ねぇ、アルシアさん、キスしていい?﹂
﹁え? キ、キスですか?﹂
﹁うん。だめ?﹂
﹁それは唇と唇で、ですよね?﹂
﹁うん﹂
281
キスしたいと言ったら驚いて質問してくる。
実はキスは決めた相手が居る。とかだったのかな。
僕が言った事を少し後悔してるとアルシアさんが真剣な顔になった。
﹁わかりました。では、どちらからしますか?﹂
どちらから?
ふみゅ。
位置的にアルシアさんの顔の位置が上だし、アルシアさんから近づ
いて貰おう。
﹁じゃあ、アルシアさんが僕にして?﹂
﹁は、はい。その命、承りました﹂
僕はそっと眼をつぶり気持ち唇を前に出す。
アルシアさんは喉をゴクリと鳴らしてからキスをしてくれた。
唇と唇が触れるだけの淡いキス。でも⋮。
﹁胸を擦り合わせるのより気持ちいいかも⋮﹂
初キスはふわぁっとした気持ちになり、言葉に出来ない快感が全身
を包み込んだ。
﹁セシル殿!﹂
ほわぁとしながらアルシアさんを見てたら、頭を抑えられて再度キ
282
スされる。
今度のキスは口の中に舌を入れてきた。
アルシアさんの舌が僕の口の中を嘗め回す。
僕の舌を見つけたのか舌を絡め合わせてくる。
ヌメッとして柔らかい舌が、僕の舌を味わうように絡みつく。
初めて他人に口の中を蹂躙された。
その感覚は信じられないほど気持ち良くて頭がとろけてしまう。
胸や秘所を弄られるのかそれ以上に気持ち良くて為すがままになる。
気持ちよさで力が抜けると椅子から落ちてしまう。
木の床に倒れこんだ僕を上から覗き込むアルシアさん。
﹁セシル殿、全て私にお任せ下さい﹂
﹁⋮はい﹂
初キスの快感でとろけた僕は、それ以外に答えられませんでした。
﹁ふぅ、はぁ、あぁ﹂
アルシアさんが優しく僕の割れ目を撫でながら胸を舐める。
僕の秘所は既に凄く濡れていた。
﹁これだけ濡れていれば大丈夫ですね﹂
283
アルシアさんが僕の膣に指を2本入れてきた。
プツッと音が鳴った気がしたと同時に痛みを感じた。
﹁んぁぁ﹂
アルシアさんはそのままジュプジュプ僕の膣に指を出し入れする。
﹁あ、セシル殿月経でしたね。大丈夫ですか?﹂
僕の膣からお汁と混じった血が出てきたようだ。
でもたぶん、それ生理の血じゃなくて。
﹁えっと、生理は今は気分悪かったりしないから大丈夫。その血は
処女膜が破れたからだと思う﹂
﹁え? だってトレントに⋮﹂
処女膜がある理由についてアルシアさんに説明した。
﹁ヒールでですか⋮。で、では痛かったですか? すいません﹂
﹁ううん、大丈夫。少し痛い位の方が僕は気持ちいいし﹂
エインに何度か破られて慣れてるし。
それに認めたくないけど少し痛いのが割りと好き。
初キスでとろけた頭だったせいか、素直に自分の性癖を認めた。
﹁痛いのが好き⋮ですか。わかりました﹂
284
アルシアさんは僕の膣に指を三本入れてジュプジュプ動かした。
同時にもう片方の手で僕のクリを摘み、軽く引っ張りながら廻した。
﹁これは気持ちいいですか?﹂
﹁んはぁ、ひぅぅ、うん、クリぴりぴりしてぇ、いいのぉ﹂
僕がいいと言うとさらにクリを引っ張る。
それが痛気持ち良くて膣がヒクヒク動きアルシアさんの指を締め付
けた。
﹁指を痛いくらい締めて⋮。本当に気持ちいいのですね﹂
僕がクリの気持ちよさによがってるのを確認すると、クリを弄るの
を辞めてしまう。
﹁ふぇ、なんでぇ、んむっ﹂
僕が不満を言おうとしたら口を口で塞がれた。
舌が僕の歯や歯茎を嘗め回す。
﹁ぷはぁ、はぁぁぁぁ﹂
﹁ふふ、私に任せてください。いっぱい痛くしてさし上げます﹂
口を解放したアルシアさんはニタァとした笑い顔で言ってきた。
真面目なアルシアさんには似合わない顔。
三度目のキスでトロトロの頭に変なことが浮かぶ。
285
もしかして、M属性とか被虐嗜好って称号は隠し効果でエッチ相手
のSっ気でも引き出すのかな。
ぽーとアルシアさんを見てたら急に股間にメリっとした痛みが走る。
﹁うぎ、うぅ、な、なに﹂
﹁膣に手を入れようとしてるだけです。トレントの蔦を飲み込んだ
んですから痛くても壊れませんよ﹂
それは毒で拡がるようにされてたからで。
僕が言葉を発しようとしたら再び口を塞がれる。
その間もアルシアさんの手が僕の膣にゆっくり入ってくる。
みっちり膣が広げられて少しの痛みがある。
あるけど、気持ち良さが上で気にならない。
﹁んむぅ、むぅ、うぅ﹂
アルシアさんの手が手首まで僕の膣に飲み込まれた。
﹁ふぅ。もっと入れて欲しいですか?﹂
キスをやめたアルシアさんが僕に聞いてくる。
手が入って広がってジンジンするけど裂けたりはしなそう。
裸族や被虐嗜好、快楽主義の称号で痛みが軽減されて気持ちいいの
かな。
286
僕が首を上げて自分の股間を見ていたらクリを引っ張られた。
﹁セシル殿。痛くして欲しければ、ちゃんと言わないとダメです﹂
﹁ひぁぁ、あふぅん、挿れてぇ、僕のオマンコにぃ、アルシアさん
の手をぉ﹂
﹁よく言えまし、たっ﹂
﹁ひぎゅぅぅぅうう﹂
アルシアさんが僕の膣の奥まで一気に腕を突っ込んだ。
入れられた手は子宮口まで到達してる。
ぐらっと気絶するような快感が股間から頭を駆け抜けた。
﹁えへぇ、気持ちいぃ﹂
﹁だらしなく舌を出して喜ぶなんて。セシルはまるで性奴です﹂
アルシアさんが腕を出し入れし始めた。
膣いっぱいに感じる腕が気持ちいい。
膣中で指を引っ掛けて上や横の膣壁を押しながら出し入れされてる。
﹁ふぁぁ、僕の膣でぇ、遊ばないでぇ﹂
﹁セシルの膣は、この激しくて少し痛いのが好きって言ってます﹂
膣から手を抜く時に中でグーに拳を作られ、膣の入り口のお肉が出
287
来るだけ引っ張られるようにされる。
ジュポッと名残惜しそうな音を僕の膣が奏でる。
﹁普通ならこんなに広げられて伸ばされたら痛いだけでしょうが⋮﹂
﹁うにゃぁ、あぁぁ、気持ちいいのぉ、気持ちよくてぇ、オシッコ
漏らしちゃうぅ﹂
﹁漏らし易いようにクリを引っ張ってあげます﹂
﹁んむぅ﹂
クリを引っ張られると同時にキスをされる。
クリとキスの快感で緩んだ僕の股間が、ぷしゅぅぅと水音を発した。
﹁ふぅ、夫となったからには妻の為に頑張ります﹂
﹁おっとぉ?﹂
﹁両者が合意の唇同士のキスは婚姻の誓いじゃないですか。妻にな
る者が眼を閉じ、夫がキスをするのを待つ。女同士ですが、誓いは
絶対です﹂
ゲームでの主人公と女性キャラの結婚の時キスしてた。
だけどそんな設定があるなんて知らなかった。
なんだか婚姻ってとても重要な事の気がしたけど、頭がとろけてた
僕はもっと快感が欲しくて。
288
﹁うん、僕ぅ、アルシアさんの妻ぁ、だからぁ、もっとぉしてぇ﹂
﹁えぇ。もっともっと痛くしてあげます﹂
その後、アルシアさんにお尻や胸を叩かれたり。
クリや乳首が取れるかと思うほど引っ張られたり。
膣やお尻の穴を手で裂けるくらい拡げられたりした。
﹁あぁぁん、イクぅ、またイっちゃうぅ﹂
﹁何度でも何度でもイカせてあげます﹂
アルシアさんの責めは段々エスカレートして行き、最後はどこまで
されたか分からない。
だって、僕は途中で痛みと気持ちよさで何も考えられなくなっちゃ
ったから。
289
第18話 決湯 巨乳闇エルフ︵後書き︶
餌食になった巨乳は主人公でした∼!
アルシアさん、忠誠厚い騎士キャラにするはずが、あんれぇ?
主人公はこのまま主人公でいいのかしらん。
乙女の夢の新妻となった主人公!
後残すは妊娠出産くらい?か主人公!
次話は、エインさんともう一方の外伝でも書いてみたいです。
その後は、平和な主人公の闇エルフの町での生活、性活?でも書こ
うかな。
感想とかお待ちしております∼。
290
閑話 何故RPGの主人公は弱いのに旅に出るのか︵前書き︶
今回はセシリアさんが出ないので真面目ですにゃ∼。
291
閑話 何故RPGの主人公は弱いのに旅に出るのか
海都カルドのとある酒場の一室に、一人の少女と厳しい顔をした複
数の男達が居る。
表では話せない取引をする場合や、静かに飲みたい裕福な冒険者が
利用する部屋だ。
部屋は防音で外に声が漏れることはない。
部屋の上座に座る赤毛の少女がテーブルを囲う男達を見渡す。
﹁お姉様が帝都に送られるって話は本当らしい﹂
﹁お頭、俺達の証言は信用されなかったってことですかい?﹂
少女の言葉に男達は動揺した。
﹁信用されなかったのか⋮或いは信用した上でかもしれない﹂
﹁ど、どういう事ですかい?﹂
赤毛の少女︱︱エインは考えを纏める為、改めてこれまでの事を思
い返す。
エインはセシリアが兵士に連行されたと聞いて焦った。
セシルと偽名を使ってたが、きっとセシリアの顔を知る者が軍に居
292
たのだろう。
或いはセシリア似の冒険者が居ると誰かが軍に情報を流したか。
やはり髪型を変えたくらいではダメだった。
何度も注意したのに﹁髪型を変えたら別キャラだから大丈夫!﹂と
訳の分からない理由で聞いてもらえなかった。
連行されてすぐにセシリアを開放する為に行動した。
まずカルドで冒険者や他の堅気の仕事についてた元手下を集めた。
そして、セシリアことセシルは一緒にカルドに職を探しにきた地方
の村の娘だ。
と言うウソの証言を個別に城に行かせ言わせた。
同時に全員で行けば怪しまれただろうが、日を変え職も違う複数人
が証言すれば多少は怪しまれないはずだ。
それからエインは城の兵士に賄賂を渡しセシリアの拷問が終わった
事を知った。
そこまでは順調だったのだが︱︱。
エインは元手下達を再度見渡し言葉をかける。
元盗賊だけに、嘘の証言をする事は命懸けだったはずだ。
命を懸けた元部下達にはせめて真実を教えようと。
﹁お姉様の正体は連邦の鬼女セシリア・マリンズだ﹂
﹁﹁﹁は?﹂﹂﹂
293
エインの言葉を聞いた男達は困惑する。
全員が只者ではないと思ってた。
しかしまさか帝国ですら有名な連邦の将官とは思っていなかったの
だ。
﹁ってぇことは、正体がばれて捕まったと⋮﹂
﹁たぶんね。お前らには詳しく説明せずに証言させて悪かったね﹂
﹁い、いえ、俺らに今の生活を教えてくれた姐さんの為なら構いま
せんが⋮﹂
正体を知って動揺はしても、男達のセシリアに対する感謝が変わら
ない事にエインは安心した。
﹁しかし、帝都に連れてかれるってこたぁ、俺らの証言は信用され
なかったって事ですかぃ⋮﹂
ヒゲ面の男が再度同じ言葉を口にした。
﹁信用されたかわからないけどね。お姉様がセシリアじゃないとし
ても利用する気なのさ﹂
﹁それってぇと?﹂
エインは自分の中での考えを言うか戸惑う。
自分はなんとしても助けるつもりだが、男達が自分の予想を聞けば
どうするか。
義理堅い男達なら感謝してる分、今の生活を捨てても助けようとす
294
るかもしれない。
それは出来れば避けたかった。
この町に来て既に伴侶が居る者もいるのだ。
協力者の宛てもあるのに、下手に話してしまっていいか迷う。
﹁お頭、ここまで来て内緒事ってぇのは勘弁してほしいですぜ﹂
﹁⋮⋮私はなんとしてもお姉様を助け出す。でも、お前達が私の話
を聞いて今の生活を投げ捨てて協力はして欲しくない。たぶん、そ
れはお姉様も不本意だと思う﹂
その言葉で部屋の全員がセシリアの事を思い出す。
盗賊をしてた自分達に対して、熱い情熱を持って堅気の生活の素晴
らしさを語ってくれた。
そんなセシリアが、今の自分達の生活を投げ出すのは確かに望んで
いない気がした。
﹁わかりやした。しかし、今の仕事をしながら出来る事はしますぜ﹂
エインは全員の顔を見た。
すると男達は全員が頷いた。
﹁お姉様がセシリアではないとしても、セシリアにそっくりなわけ
だ。本人なんだから当たり前なんだけどね﹂
ハハハと軽い笑い声が響くが、すぐに静まる。
295
﹁セシリアに瓜二つ。それをセシリア本人としてしまえば、連邦や
法国に外交カードとして使える﹂
人質交換や金品での売り渡し。
相手が連邦ならまだしも、もし売り渡し先が法国ならば待ってるの
は悲惨な結末だろう。
﹁それよりも帝都に連れて行くって事から、私は公開処刑が一番確
率が高いと思ってる。帝国の士気を高める為、有名な敵国の将軍様
を処刑してのプロパガンダさ﹂
エインの言葉を聞いて全員が押し黙る。
実力と成果至上主義とも言うべき今の皇帝ならやりそうだと思った
からだ。
﹁私は連行されるお姉様に先回りして、護送中に奪還するつもりだ﹂
﹁お頭、俺達も行きますぜ!﹂
予想通りの反応をする男達に頭を抱えるエイン。
さっきそう言うのは辞めろと言ったはずなのに、と。
コンコンコンコン。
男達がやる気になってたところにノックの音がする。
部屋の全員が椅子から立ち警戒した。
警戒の中、ゆっくり開くドアから現れたリーゼントの顎鬚男を見て
全員が安堵した。
296
﹁なんだ、ダグラスの兄貴ですかぃ﹂
﹁ダグラスさん、どうしました?﹂
エインは先程までの荒い口調から、丁寧な言葉遣いになる。
ダグラスはここに居る全員が世話になった事があり、セシリア救出
の為の証言もしてくれたのだ。
﹁ん、あぁ、ゲオルグにグレイヴも譲ちゃんを助けるのに同意して
くれたからな。それの報告にきた﹂
﹁本当ですか!﹂
ゲオルグとグレイヴと言うのは、セシリアが仲良くしてた冒険者だ。
セシリアは二人をトラさんリューさんと呼んで仲良くしていた。
﹁リアルタイガーマスク最高!﹂とか﹁竜人で槍使い!?ツボを心
得すぎ!﹂とエインとしてはよく分からない事で興奮していたが。
﹁先回りするなら、すぐにでも出発したいが⋮。エインの譲ちゃん、
どうする?﹂
﹁すぐに行きましょう!﹂
エインは有能な冒険者であるダグラス、ゲオルグ、グレイヴが協力
してくれる事を理由に男達に町に残るように説得した。
エインや3人に比べれば、弱すぎて足手まといなのが分かってた男
達は説得に応じる。
297
﹁お姉様、待っててくださいね。必ずお助けします!﹂
こうして、エインのセシリア奪還の旅が始まった。
298
閑話 何故RPGの主人公は弱いのに旅に出るのか︵後書き︶
主人公が居るのと同じ世界と思えない真面目さ⋮。
頑張れエイン!
あほな主人公を助けてエイン!
もう一人の外伝もしたいんだけど、次話どうするかなぁ。
今回で纏めるはずだったけど、真面目モードの頭が長く続かない作
者。
花粉症が辛い∼∼。
299
閑話 RPGの主人公はなんでモテるのか︵前書き︶
驚きの2話連続主人公が出ない!
いや、主人公って言うかセシリアさんが出ない。
真面目時空のお話です。
300
閑話 RPGの主人公はなんでモテるのか
洞窟内に叫び声が響く。
﹁ギァァァ﹂﹁ヒィィィ﹂﹁アァァ⋮﹂
洞窟の入り口から悲鳴が聞こえ、奥に居た男達が立ち上がる。
男達の中でも一番屈強な肉体をした獣のような顔の男が指示を出し
た。
﹁何人か入り口の方へ行って様子を見てこい。状況次第じゃ裏口か
らずらかるぞ﹂
屈強な男︱︱この洞窟を根城にしている盗賊団の首領︱︱の言葉に
何人かの男が頷き駆けて行った。
何人かの男が様子を見に駆けて行ってすぐ、再び悲鳴が上がる。
﹁お頭、こりゃやばそうですぜ﹂
﹁あぁ、仕方ねぇ。裏からずらかるぞ﹂
首領の言葉を聴いて、周りの15人の男達が悲鳴が聞こえる反対側
へと向かう。
少し進んで丁度角になってる場所にさしかかった。
すると角を曲がろうとした先頭の男の首が突如跳ね飛んだ。
﹁な、なんだ、一体どうした﹂
301
首が飛んだ男の体からプシュゥと吹き出す血の雨を見て男達が動揺
する。
﹁やっは∼。逃げ出すなんて寂しいじゃないかぁ﹂
目の前の惨状に似合わない明るい声と共に、声の主が角から姿を見
せた。
その姿は女性の上半身に蛇の下半身を持った青い肌の化け物︱︱ラ
ミアだ。
そのラミアは手に3mを超える巨大な槍を持っていた。
﹁ちっ、何でここに化け物が。おめえら、とっととそいつをぶち殺
して進むぞ﹂
首領が命令すると、男達は剣や斧を手にラミアを囲んだ。
男達は盗賊とは言え、人族だけではなく魔物と戦った事もある。
ゴブリンやオーク等を殺して武具やら金品を奪うのは日常の事。
それ故に、目の前に突如ラミアが現れても動揺はしなかった。
﹁やっちまえ!﹂
首領の合図で一斉に斬りかかる。
次の瞬間には仲間の誰かが犠牲になったとしても、ラミアは死んで
いる。
そう確信していた男達だが︱︱。
302
ヒュンヒュン。
そのラミアは目にも留まらぬ速さで槍を振る。
﹁ギャァァァ﹂﹁いでぇぇ﹂﹁足、足がぁ﹂
ラミアの前方に居た者は腕を斬られ、或いは胴や脚を斬られる。
仲間が斬られるのも構わずに、ラミアの後方に居た男達が斬りかか
る。
﹁ぐあっ﹂﹁ぐげげぇっ﹂
しかしある者は尾に吹き飛ばされ、ある者は体に巻きつかれ絞め殺
された。
運よくラミアの体に刃を当てた男も居たが。
﹁な、なんで傷つかねぇ⋮﹂
﹁あんたら程度じゃねぇ。私の鱗に傷なんて付けれないんじゃない
かねぇ。よいさ∼っと﹂
﹁ぎぎゃぁぁあ﹂
ラミアは腕や脚を斬られ動けない男達に楽しげに止めを刺しながら
説明する。
生きてる10人の男に向かい首領が叫びながら命令をした。
﹁ギグ、ゼス、お前らその化け物の相手をしてろ﹂
303
﹁お、お頭はどうするんで?﹂
﹁お前ら二人以外は俺と来い。表口の方へ行く﹂
﹁あっはっは∼。仲間を捨石にして自分は助かろうってかぃ? 盗
賊らしくていいねぇ﹂
現れてから変わらない陽気さで楽しそうに言うラミア。
その様子を見てギグとゼスの二人は、ラミアが居る反対の表口へと
走り出す。
﹁い、いやだ、俺はまだ死にたくねぇ﹂
﹁俺たちの代わりにお頭が化け物の相手をしててくれっ﹂
二人は忘れていた。
表の入り口から悲鳴が上がって危険だと思ったからこそ、今自分達
がここに居る事を。
ヒュゴォォォォ。
﹁ぎぁぁぁ、熱い、痛い、ああっぁぁぁ⋮﹂
﹁な、何が、女!? あ、が⋮﹂
駆けていた二人、ギグは火球に焼かれ、ゼスは剣で胸を刺され絶命
した。
男達は二人を殺した者を見て驚きの声を上げた。
﹁な、なんでこんな所にダークエルフが居やがる!?﹂
304
二人を殺したのは、褐色の肌に長い銀髪の女性。
エルフと近似種とされながら魔物と扱われるダークエルフだ。
そのダークエルフは二人の死体を蔑んだ目で見ながら呟く。
﹁ふん、仲間を見捨てて逃げるか。クズが﹂
﹁いやいや∼。先に見捨てたのはこいつ等だからさぁ。その二人が
逃げたのはまぁ、仕方ないんじゃないのかねぇ?﹂
ダークエルフの呟きにラミアが明るく応える。
その有り得ない光景に首領が叫ぶ。
﹁ラ、ラミアとダークエルフが手を組んでるってのか!?﹂
彼らの常識では魔物が別種族同士で手を組むなど有り得ない事だ。
同時に人族を襲ってくることもあるが、それは手を組んだわけでは
なく偶然同時に襲われた場合だろう。
ラミアの実力は自分達より上。
手を組んでるとしたら、あのダークエルフも同等だろう。
首領は自分が生き残る為に必死に考える。
魔物が好んで盗賊の根城を襲う事はないはずだ。
なのにわざわざ襲ってきたと言う事は、ここにしかない物を求めて
だろう。
﹁貴様らの目的は何だ? 金だったら、俺達の貯めたもんを全部く
305
れてやる﹂
﹁おぉ、それは太っ腹だねぇ﹂
首領はラミアの楽しげな反応を見て心の中で安堵する。
もしや金品狙いかと思ったが、その通りでよかったと。
首領以外の男達も明らかに安心した顔をした。
しかし、ダークエルフの次の一言で男達全員が青ざめる。
﹁ティティス殿、金品など皆殺しにした後に貰っていけば良いでし
ょう﹂
﹁あぁ、それもそうだねぇ﹂
さらにダークエルフの言葉は続く。
﹁それに今回は主殿の修行が目的でしょう? こやつらには主殿の
為に死んでもらわねば﹂
その言葉に全員が絶望した。
正に化け物的に強いラミアにダークエルフを従える主が居る。
その主が自分達をこれから殺すのだと知って。
誰もが黙って沈黙する中、カツンカツンと洞窟内に歩く足音が響い
た。
少しするとダークエルフの後から何かが現れる。
﹁坊やぁ、強そうなのは残してあげたから、しっかりやるんだよぉ﹂
306
その現れた何かに、ラミアが楽しげに語りかける。
盗賊達は驚きで声が出なかった。
現れたのは化け物を従える化け物ではなく。
﹁人間のガキじゃねぇか⋮﹂
ダークエルフの横に立っているのは黒髪の人間の少年。
それもまだ子供と言ってもいいくらいのだ。
﹁お前達盗賊は、殺しても気が咎めないからいいよね﹂
いつの間にか手に剣を持った少年は、笑顔で男達へゆっくり歩いて
いく。
﹁お、おい、このガキがお前らの主ってのか?﹂
﹁そうだ﹂
﹁もしこのガキを殺せたら、俺達を見逃してくれ﹂
首領の男は必死にラミアとダークエルフへ叫んだ。
化け物二人より、少年の方が明らかに弱そうだ。
ならばきっと人間のガキに呪術か何かで無理矢理に従わされている。
そう考えた上での提案だ。
﹁あっはっはっ。いいねぇ、もし坊やを倒せたら見逃してあげるよ
ぉ﹂
307
﹁本当だな!﹂
﹁ティティス殿!﹂
﹁大丈夫さぁ、レミネール。たぶん、こいつら勘違いしてるんだよ
ねぇ﹂
その場の会話など関係ないとばかりに、ゆっくりと歩を進める少年。
その少年に向かって、生き残る為に男達が襲い掛かる。
﹁精々苦しみながら死んでくれ﹂
最初に襲ってきた男の腕を切り飛ばしながら、少年は静かに呟いた。
パチパチとなる焚き火の音を聞きながら、ラミアの族長ティティス
はとぐろを巻いた自身の下半身の上で寝る少年を見つめる。
﹁あの程度の相手に手傷を負うのはいただけませんね﹂
正面に座るダークエルフの族長レミネールがティティスに話しかけ
た。
﹁まぁ坊やは、まだまだだからねぇ﹂
ティティスの言葉に顔を顰めるレミネール。
308
﹁貴女に決闘で負けたから従いますが、その少年に付いて行く価値
があるんですか?﹂
﹁やだねぇ。ま∼だ私に負けた事を恨んでるのかぃ?﹂
﹁別に恨んでません。ただちょっと、貴女の口車に乗って魔法なし
にした事を後悔してるだけです﹂
レミネールが人間の少年に従うのは決闘に負けた為だ。
しかし微妙に納得がいってない。
決闘は代理でティティスが相手だった。
さらにティティスの話術で魔法禁止とされた。
代理の上に得意な魔法が使えない決闘だったので納得しきれていな
い。
それよりも一番納得できない事が︱︱。
﹁従うべき主が自分より弱いことに、貴女は何も感じないのですか
?﹂
﹁武力だけが強さじゃないでしょうよぉ?﹂
﹁それは⋮そうですが﹂
主と仰ぐ少年には不思議な力があった。
物を虚空へと仕舞い自由に出し入れできるのだ。
309
それにこの少年に従う様になってから、レミネールは自分が強くな
っているのを感じている。
﹁強さに関してもねぇ。坊やを私が拾った時は、剣も碌に振れない
素人だったんだよぉ?﹂
﹁? それはおかしいでしょう? 未熟とは言え、人間の盗賊を圧
倒してましたよ?﹂
ティティスが少年を拾ったのは一ヶ月前と聞いていた。
いくら才能があり努力しようと、素人から一ヶ月で今の少年ほどは
強くならないはずだ。
﹁助けた後にねぇ。家族や恩人を殺した人間に復讐したいってんで、
実力を見る為にマッドグラブの相手をさせてみたのさぁ﹂
マッドクラブとは、ラミアが住む沼地に生息する全長2m程の蟹だ。
動きは素早くはない。
しかし甲殻は硬く、ハサミに鋏まれたら危険な生物だ。
﹁初日はボロボロさぁ。でもねぇ、二日目には逆にマッドクラブを
惨殺してたよぉ﹂
﹁嘘でしょう?﹂
まさかたった二日で、そんなに進歩するはずがない。
ティティスは少年の髪を優しく撫でながら語る。
﹁この子はねぇ。何かを殺せば殺すほど強くなるみたいでねぇ。魔
310
の森でも、最初は苦戦してたけどねぇ。あっという間に森の魔物を
圧倒してたよぉ﹂
レミネールは信じられなかった。
そんなにすぐに成長する存在が居るはずがない。
﹁その成長性に賭けて、貴女は従っているんですか?﹂
﹁あぁ、私が従ってるのはお願いされたからだよぉ。家族と恩人を
奪った人族に復讐したいけど、どうすればいいかわからないって言
うからねぇ。ふふふ、だから言ったのさぁ。じゃあ、魔物を従えて
人族と戦えば良いってぇ﹂
﹁それで私と決闘を⋮﹂
ティティスの話を聞いて納得したレミネール。
この少年は魔物を従えて成ろうとしているのだ。
伝説に語られる魔の軍勢を従えた魔王へと。
﹁レミネールも納得いかないなら、もう少ししたら坊やと戦ってみ
るといいよぉ?﹂
﹁そうですね。貴女の話を信じる為にも、是非試してみましょう﹂
レミネールは話の確証を得る為にも、自身で一度少年と戦おうと決
める。
﹁しかし、頼まれただけで協力するとは、ラミア族はそんなに優し
い種族でしたか?﹂
311
﹁あ∼、それはねぇ∼。そのぉ、泣いてたこの子を慰める為に、ち
ょぉ∼と肌を重ねて情が移ったって言うかぁ﹂
照れ笑いをしながら説明するティティスに呆れるレミネール。
異常な成長を見せる少年に魔王を見て従ってると思いきや、情事の
果てに惚れただけと知り気が抜ける。
﹁次はゴブリンの所に行くとしてぇ、今度は坊やに戦ってもらうつ
もりさぁ﹂
﹁では主殿には、さらに強くなってもらわないといけませんね﹂
﹁そうだねぇ。道中の獣や盗賊には可哀想だけどねぇ﹂
ティティスは全く可哀想だと思ってない笑顔で少年を見つめながら
言う。
少年は魔物を従え人族へ復讐する為、二人の族長と旅を続ける。
312
閑話 RPGの主人公はなんでモテるのか︵後書き︶
セシリアさんが出ないと、ここまで真面目なんだNE!
情に厚いラミア族に拾われてたゲーム主人公!
このままいけば、魔物女子のハーレムだねゲーム主人公!
この子の方が主人公らしい気がするョ⋮。
次話は懐かしいセシリアさんの新婚性活?で∼す。
次回こそ、えっちぃのを!えっちぃのを!
大事だから2回言った!
感想とかおまちしてるんだからねっ!
313
第19話 新婚生活︵前書き︶
ちみっとレム君とのもにょもにょありま∼す。
あと、思ったほどエッチシーン入れられなかったです⋮。
314
第19話 新婚生活
パンッ。
洗い済みの洗濯物を干す為に伸ばす音が心地いい。
決闘から一ヶ月。
新妻として頑張ってる僕です。
アルシアさんの奥さん生活も慣れました。
一番グラマーだった長老さんの娘だったアルシアさん。
今はそのお義母様とアルシアさんの家に、スライムさん、ラミュー、
レムと一緒に住んでます。
他種族の、しかも女同士で結婚とかどうなの!?
と思ったんだけど、お義母様には予想外に歓迎されました。
決闘に勝った相手が自分の家に嫁に入る、という形が面目を保てた
らしい?です。
それとダークエルフは今男が少なくて、女性同士の婚姻も認められ
てるとか。
元々女系な種族なのに、数年前に男達は人族に反撃する為に戦争に
出て死んでしまったそうな。
ゲームで女性ばかりだった理由は、そんなんだったんだねぇ。
そう言えばラミューとレムのレベルが上がってました。
315
二人ともレベル5です。
戦闘やクエストをしたわけじゃないのにレベルが上がってます。
性処女のH行為で仲間強化って、Hした仲間に経験値が入るようで
す。
決闘に勝ったからかパーティーに加わったアルシアさん。
最初は魔剣士レベル25だったのに今はレベル26です。
Hをすると僕が気絶するまでやるので、最近はHしてないから伸び
が悪いです。
僕を痛くさせるのを自制出来ないらしく、目が覚めたら毎回土下座
してました。
そんな中、スライムさんはレベル1のままなんだよねぇ。
僕の膣や子宮も触られた事があるのにレベル1。
スライムさんは完全な治療行為としてやってくれてたんだね。
それを悟った瞬間、スライムさんを拝んでました。
スライムさんは拝まれて凄く嫌がってましたが。
後は新しい称号を手に入れました。
□痴女:猥褻行為を好む女性
□新妻:結婚相手の側に居ると各ボーナス+
痴女はゲームではなかった称号で、特にボーナスもないみたい。
取得した原因はテーブル下でのエルフ姉弟へのいたずらが原因だよ
ね⋮たぶん。
新妻はゲームにもあった称号で、主人公と結婚した女性キャラに付
316
く。
主人公の横のマスにいると、ステータスやら取得経験値やらに色々
ボーナスが付く。
僕の場合はアルシアさんの側だと思う。
アルシアさんに結婚した主人公が持つ旦那様って称号あったし。
﹁セシルさぁん、おやつできましたよ∼﹂
﹁わかった∼。すぐ行くよ∼﹂
僕が洗濯物を干し終えると、ラミューがおやつの時間を教えてくれ
た。
洗濯籠を仕舞って、皆が居る居間へと行く。
﹁セシルさん、今日もご苦労様ですわ﹂
﹁あはは∼、お義母様、スライムさん、ラミュー、レム、お待たせ
∼﹂
居間のテーブルには既に皆揃ってた。
アルシアさんは見回りやらダークエルフの訓練監督の仕事で居ない。
﹁今日はクッキーなんだね∼﹂
﹁ボクとミューお姉ちゃんで作ったの﹂
﹁あむっ。美味しい﹂
この家の家事の分担はこうなっております。
317
料理、掃除、洗濯がラミュー&レム&お義母様。
洗濯物を干す係り、僕。
洗濯物を干すだけと馬鹿にしないで欲しい。
この干す係りだって、僕が勝ち取ったものなのだ。
新妻として僕は頑張った。
日本で碌に料理をした事がなかったけど、チャレンジはしたんだ。
⋮⋮出来たものは炭素物質だったけど。
掃除も頑張ったんだ。
⋮⋮お約束のようにツボとか花瓶とか割りましたが。
洗濯だってちゃんとやったんだよ?
⋮⋮やる気だしすぎて服をぼろぼろにしましたが。
だって、手洗いなんて初めてだったんだもん。
洗濯機さまカムバァァァァック。
そんな新妻としてダメダメだった僕。
でも、お義母様はドラマの姑のように嫌味を言ったりはしなかった。
出来る事をすればいいのよ。と言ってくれた。
そして洗濯物を干す事ならできる!と、僕は自分の存在価値を見出
したのだ。
⋮⋮便利な機械に囲まれた元日本人男子が、戦国時代の様な家事な
んて出来るわけないでしょ?
自分のダメップリを思い返すと目から汗が出ちゃう。
﹁うぅ、ダメダメでごめんなさい﹂
318
﹁あ、あら? セシルさんどうしたのかしら?﹂
﹁僕って駄目な新妻だなぁって⋮⋮。女同士で子供も産めないのに、
家事できないし⋮﹂
﹁あら、それは大丈夫よ? ちゃぁんと対策はありますからね﹂
落ち込んでる僕を笑顔で慰めてくれるお義母様。
衣服から見える胸の谷間が素敵です。
﹁セシルお姉ちゃぁん﹂
隣に座ってたレムが切なそうな顔をして僕を見てくる。
﹁あ∼、お義母様、スライムさん、ラミュー。ちょっと席外します
ね。レム、おいで∼﹂
僕はレムを連れて自分の部屋へと行った。
ニチュニチュニチュ。
部屋の中で一定のリズムでニチュニチュと音が鳴る。
僕はレムのスカートを上げて、リボンの付いたショーツからオチン
チンを出してしごいてる。
﹁んぁぁ、気持ちいいよぉ、セシルお姉ちゃぁん﹂
319
僕の膝の上に乗ってるレムがうっとりとした声を上げる。
もっと気持ち良くしてあげようと、先走り汁︱︱カウパー液を手に
絡めながら上下にしごく。
小さくて硬いオチンチンがニュルニュル濡れる。
皮を先端まで被せて、亀頭を親指でクニクニ撫でる。
﹁ふぁぁ、それ、すごく好きぃ﹂
﹁ふふ、レムはこれ好きだよね∼﹂
竿の部分をレバーのように握りながら、先端を親指でこね回す。
先端の尿道口を皮の上からクニクニしてたら、オチンチンがビクビ
ク動いた。
﹁も、もぅ、出ちゃう、よぉ﹂
﹁いいよ∼、出して♪﹂
﹁んあぁぁ﹂
僕が笑顔で言うと、レムのオチンチンはビクビクしながら精子を吐
き出した。
皮が被ったままだったので、僕の手にベットリ白い精子がついてい
る。
その手を上に持って行くと︱︱。
ペロペロペロ。
320
﹁あむ、んっ、ちゅ、ちゅる﹂
﹁レム、美味しい?﹂
﹁んっ、ぺろ、うん﹂
ここに住むようになってからも、ラミューとレムの性欲処理はして
る。
ラミューは夜にこっそり部屋に来くるので、その時にする。
レムはラミューより性欲が強いのか何時でも発情しちゃう。
女性だらけの自宅に、女性ばかりのダークエルフの町に居れば仕方
ないのかもしれないけどね。
ある時、一緒に買い物に行った時に起っちゃった事があった。
その時に外の木陰で処理した。
んで、手に付いた精子の処理に困って舐め取った事がある。
ネットリして苦くて喉に引っかかるお味でした。
それを見たレムが、それ以来自分から僕の手に付いた自分の精子を
舐め取るようになった。
﹁はむ、あむ、ちゅ﹂
僕の手を舐めるレムを見て思う。
僕ってば、おけけも生えてない子に何覚えさせてるんだろう⋮。
321
﹁お姉ちゃん、綺麗になったよ﹂
﹁うん、そっか。じゃあ、皆のところに戻ろっか﹂
﹁うん﹂
ショーツとスカートを正して走るように戻るレム。
ちなみに、この双子に対する性処理はアルシアさんにお義母様公認
です。
自分の奴隷のお世話は自分でしなさい。みたいな感じでした。
﹁でもねぇ、一つ引っかかることがあるんだよね∼﹂
レム用の服は全部女物なのだ。
服はスカートやらワンピースやら。
下着は可愛いリボンつきショーツ等。
﹁レム君、女の子だと思われてるよね∼﹂
男の子だと広まったら、ダークエルフのお姉様達に大人気になりそ
うな予感。
そんなこんなで、僕のダークエルフの町での新婚生活は順調です。
﹁ただいま帰りました﹂
322
﹁おかえりなさ∼い﹂
日が落ちてきた頃にアルシアさんが帰ってきました。
夫の帰宅直後は新妻としてやらねばならない事がある!
﹁ねぇアルシアさん、ご飯にする? お風呂にする? それとも、
あ・た・し?﹂
ちょっと体をクネクネしてしなを作りながら言うのがコツです。
日本に居た頃、何度このシチュエーションを夢見たか。
立場逆だけどね。
﹁お風呂ですかね。汚れていますし﹂
﹁じゃあ、一緒にはいろ?﹂
﹁セシルと一緒に入ると時間かかるので、また今度で﹂
﹁きーー!﹂
最近、肌の触れ合いを極端に避けるアルシアさん。
最初の一週間は物凄くイチャイチャしまくりだったのに。
激しいプレイばかりされて、おかげで僕は毎晩体が火照って堪らな
いと言うのに。
エプロンの裾を噛んで悔しがる僕に、アルシアさんが苦笑しながら
言ってきた。
323
﹁もう少ししたら、いっぱいしますから、後数日我慢して下さい。
んっ﹂
﹁んっ﹂
言葉の最後にキスをしてくる。
キスをされると幸福感と言うか満足感と言うか、ぽわぁんとしてし
まう。
キスをされてぽーとしてたら、いつの間にかアルシアさんが居なか
った。
﹁今日も逃げられた∼﹂
一ヶ月でセックスレスなんて酷いです。
﹁んっ、はぁ、んぅ﹂
深夜にベッドの上で自分を慰める。
最近はアルシアさんが相手にしてくれないので、毎夜自分で慰めて
ます。
セシリアになってから自分がエッチな自覚はあります。︵注:なる
前もエッチだった︶
それに加えキスを覚えてからは、さらにエッチになった気がします。
﹁アルシアさんも、んぁ、僕をよりエッチにしといてぇ、はぁ、放
324
置とか酷いよぅ﹂
文句を言いながら自分の秘所を弄る。
﹁体が火照って火照って、堪らないよぅ﹂
﹁ンフ∼∼、じゃあ、私が気持ち良くしてあげるのねん﹂
﹁ひょえ!?﹂
突如声がした方を見ると何かが浮いてた。
ピンクの髪に頭の横に2本角が生えて、真っ赤な瞳と黒い羽に鉤尻
尾。
格好は、胸と割れ目を黒い何かが控えめに覆ってるだけ。
﹁サ、サキュバス!?﹂
﹁アハ∼ン、私の事知ってるのね∼ん?﹂
サキュバスはレアモンスターでレベルはなんと60。
町の宿屋に泊まった時に低確率で現れる。
基本は後衛系のユニットで、状態異常魔法や魅了のスキルもちだ。
しかし一番の特徴は、仲間のユニットに変身出来るところだ。
ステータスは元の自分のままだが、変身した仲間のスキルや魔法を
使えるトリッキーなユニットだ。
戦闘に勝てば仲間に。
負けてもゲームオーバーにはならない。
325
問題は、どっちの場合でもエッチイベントがある事だけど。
僕は女だし、精気を吸いに来たとかじゃないと思うけど油断はでき
ない。
﹁え、えーと、サキュバスのリオティネックさん、ですよね?﹂
﹁そうよ∼? 顔見知りだったかな∼ん?﹂
﹁い、いえ初対面ですが⋮。何しに僕の部屋に?﹂
僕が質問すると、リオティネックは顎に人差し指を当てて考え込む。
その仕草が可愛らしくて魅力的なのが恐ろしい。
さすが淫魔サキュバスだ。
﹁ここに居る人間の娘を孕ませて欲しいって言われてね∼ん﹂
﹁は?﹂
あまりに予想外の答えに固まる僕。
固まってる間に、リオティネックの目が赤く光った。
あ、これってもしかして⋮。
光った目を見た後に、僕は頭に靄がかかったように何も考えられな
くなる。
﹁ンフフ∼、チャームにかかったようねん。服を脱いでベッドに横
になるのよん﹂
326
言われたとおり、僕は裸になってベッドに横になった。
﹁淫魔サキュバスの名に賭けて、ちゃんと気持ちよ∼く孕ませてあ
げるのねん。ンアッ﹂
リオティネックが自分の股間に手を当てると、何もなかった股間に
立派な男性器が生えてくる。
レムとは違う、しっかりした男性器を見ても僕は何も感じない。
﹁ンハァ∼ン、じゃあ、いくわよ∼ん﹂
327
第19話 新婚生活︵後書き︶
本格的エッチは次話です。
期待した人ごめんなさい。
オチンチンに狙われた主人公!
とうとうオチンチンを挿入されちゃうのか主人公!
アルシアさんに食べられて、すっかり快感の虜の主人公だし。
あっさり受け入れそう⋮。
次話こそえっちぃのをぉぉ。
328
第20話 淫魔リオティネック︵前書き︶
今回はふたなりに変身したサキュバスさんのお話です。
329
第20話 淫魔リオティネック
﹁アハ∼ン。それじゃあ、しっかり舐めてね∼ん﹂
サキュバスのリオは、ベッドの上で仰向けになってる僕の顔の上に
オチンチンをぶら下げる。
僕は無感情に言われたとおり、そのオチンチンに舌を這わせた。
﹁ンフゥ、そう、最初は優しく唾液をつけるように先端からぁん﹂
ペロ、ペロ、ペロ。
初めての事で慣れない僕は、ゆっくりと丁寧に舐めていく。
﹁いいわぁん。先端が湿ったら、カリに舌を這わせて綺麗にお掃除
するように舐めるのよん﹂
レムと違ってしっかりしたカリに舌を当てる。
僕がリオのオチンチンを舐めてると、割れ目にヌルっとした感触が
した。
﹁ンフフ。こっちの準備もしてあげるわ∼ん﹂
ペロ、ペロ、ペロ、ペロ。
チュゥ、ペロン、ズズズ、ペチョ。
僕がオチンチンを舐める音。
330
リオが僕の秘所を吸って舐めて吸い付いて舐めとる音。
その二つの音だけが部屋に響く。
﹁先っぽが終わったら、全体を濡らすのよん。奥まで入れるから頑
張って∼ん﹂
そう言うとリオが腰を落として喉までオチンチンを挿し込んできた。
僕は口をオチンチンで埋められて苦しくなる。
﹁ヌフ∼ン。焦らないで、鼻で息をするのねん。落ち着いたら、口
の中のオチンポに舌を絡ませるのよん﹂
鼻で呼吸をして落ち着いてきたら、硬いオチンチンに舌をねじるよ
うに絡ませた。
目の前にリオの割れ目が見えて、そこから透明の液体が垂れて口に
入る。
その液体と唾液が混ざって、口の中がよりヌルっとした。
リオの股間にはクリの部分がオチンチンになっただけで玉がない。
なのでお汁が竿を伝って口にたくさん入る。
﹁ウハァ∼ン、いいわぁん。貴女のお汁舐めて色々分かったけどぉ、
初めてのフェラとは思えないわぁん﹂
オチンチンを必死に舌で舐めてると、顔を上げてリオが褒めてくる。
褒めたと思ったら、僕の口からオチンチンを引き抜いた。
﹁ハァハァン。ディープフェラだけで淫魔の私がイキそうになっち
331
ゃったわん。貴方処女なのにエッチ慣れしてて、痛いのが好きっぽ
いけど⋮かなりの変態ねん﹂
僕は口からオチンチンがなくなったので、ただぼーとリオを見つめ
る。
﹁チャームが効き過ぎてマグロ状態ねん⋮。まぁ意識はあるはずだ
し説明してあげるわん。私達淫魔は相手の体液を舐めたら、舐めた
相手のエッチの嗜好がわかっちゃうのよ∼ん﹂
リオはいつの間にか黒い衣装がなくなり、裸でお椀型の胸を張って
説明している。
説明されても、命令がないのでボーとするだけの僕。
﹁⋮⋮貴方、赤い目をしてるから私ら悪魔族の血を引くと思うんだ
けどねん。なのになんでそんなにチャームが効いたのかしらん⋮﹂
そう言えば赤い目をしてるキャラはあまりいなかった。
エインは赤髪なのに青目だし。
赤い目って淫魔等の悪魔族の証なんだぁ。
ボーとした頭でそんな事を思った。
﹁ンフフ∼ン、貴方処女だけど痛いの好きらしいし、激しくイクの
ねん﹂
僕の股の間に移動したリオが楽しげにしゃべりってくる。
股間に何か硬いものが当たったと思った直後に、ズンと膣に硬くて
熱い物が突き入れられた。
332
﹁んっ、あっ、はっ、あぁ﹂
﹁ンハァン、ぷちっと処女膜破るのは気持ちいいのねん♪﹂
パンパンパンパン。
オチンチンを突き入れられて痛いと思う間もなかった。
リオは激しくオチンチンを出し入れして、僕のお尻とリオの股間が
当たる音が連続で鳴る。
﹁アラ∼ン? 貴方、膣は締めれば良いって訳じゃないのよ∼ん。
締めすぎてオチンポ痛いじゃないのん﹂
パチンパチン。
お仕置きとばかりに、膣にオチンチンを突き入れたまま僕の胸を叩
く。
﹁いいのねん? オマンコで気持ちよくなる為にはぁ、オチンポを
気持ちよくしてあげなきゃダメなのよん﹂
リオは僕のお尻を持ち上げ、両足が僕の顔の横にきた。
オチンチンが僕のオマンコに入ってるのがよく見える。
リオは黒い小さな羽をパタパタ動かし浮かんだまま説明してきた。
﹁まんぐり返しで貴方に見えるように出し入れしながら、教育して
あげるわん﹂
333
リオは浮かびながらゆっくりとオチンチンの出し入れを開始する。
﹁まずね∼ん、挿れて貰う時は程よく締めるのよん。そしてぇん、
引かれた時は少し強く締めるのよん﹂
リオの出し入れに合わせ、僕は膣を言われたとおりに締める。
ジュプジュプジュプジュプジュプ。
﹁ンハァァァン、いいわぁぁん。オチンポをしゃぶるように、膣で
パクパクしめるのよ∼∼ん﹂
﹁んっ、ふっ、はっ、はぁっ﹂
リオのオチンチンを気持ちよくする為に、必死に膣を動かす。
膣の動きに合わせるように、リオの出し入れも激しくなる。
﹁アハァ、貴方上手ねん。もう出ちゃいそうよぉん。ンハァン﹂
ジュプジュプジュプ⋮。
出し入れの最中にリオのオチンチンが膣の奥まで突き入れられた。
﹁アァァン、イク、出ちゃう、いっぱいのザーメンをご馳走するわ
ぁぁぁぁん﹂
﹁んあぁ﹂
リオが腰を突き出すと、ビュルビュルビュルと膣の中でオチンチン
がはじける。
334
僕は膣の中に熱い何かが広がるのを感じた。
チュポン、コポッ。
リオがオチンチンを抜くと膣から白い精子が溢れ出た。
﹁フゥン、貴方エッチ相手の性欲を増幅するような能力があるのね
ん。もしかして、お母さんは私と同じ淫魔だったとかかしらぁん?﹂
リオは僕の顔の横にオチンチンを持ってくる。
﹁淫魔の私には効かないけどねん。ンフ、気持ちよくしてくれたオ
チンポを綺麗にするまでが女の子の役目よん﹂
その意味を察して、僕のお汁とリオの精子でヌメったオチンチンを
舐める。
﹁ん、良い子ねん。中の残ったザーメンも吸い出すのよん﹂
チュゥゥゥ、ポンッ。
中に残った精子も綺麗に吸出し飲み込む。
オチンチンを綺麗にした僕をリオが優しく撫でる。
﹁ンフフフフ。もっと注いで孕ませてあげるのねん﹂
ガチャ。
﹁セシル、夜中に騒ぐほど溜まってるならそう言ってくれれば⋮⋮
は?﹂
335
唐突にドアを開けてアルシアさんが部屋に入ってきた。
そして僕とリオを見て固まる。
そんなアルシアさんを見てリオが片手を上げて挨拶した。
﹁ヤッホー、アーシャーちゃん。頑張ってこの娘を孕ませてるよ∼
ん﹂
﹁き、き、き﹂
﹁ウッキッキー?﹂
体を震わせ、きききとだけしか言わないアルシアさん。
チャームで意識があやふやな僕は無表情に二人を見続ける。
﹁貴様ぁ、リオティネックゥ、人の妻に何をしてるんですか!﹂
﹁え? え? だって、一緒に住んでる人間の娘に子供を生ませた
いって手紙に⋮﹂
﹁淫魔の貴方の力を借りて、いつも通り女性同士の夫婦にダークエ
ルフの子を、この場合私の子供を産んで貰うために貴方を呼んだん
です!﹂
﹁ア、アッレ∼ン? もしかして、私まずっちゃった∼ん?﹂
汗をだらだら流しながら焦るリオ。
それを見ながら手に氷の槍を出すアルシアさん。
336
アイスジャベリン、氷の槍の魔法を投げるんじゃなく手に持ったん
だろうか。
﹁そぉこになおれぇぇ、淫魔リオティネックゥゥ!!﹂
﹁キャイーーン!? 手伝う、アーシャーちゃんの子が出来るよう
に手伝うからぁ、許してぇぇん﹂
ベッドで裸で白濁液まみれな僕を放置して部屋を出て行く二人。
﹁潔く槍に突き刺されなさい!﹂
﹁イヤン、突き刺されるならオチンポがいいわん﹂
離れていく大声を聞いて、靄のかかった頭で思う。
楽しそうだなぁって。
337
第20話 淫魔リオティネック︵後書き︶
ふたなりのリクあったけど、これでいいですか?ダメですか?
チャームのマグロ状態で性教育、主にオチンチンの喜ばし方を教え
られた主人公!
そして頭が軽そうなサキュバスのリオちゃん!
アホな登場人物が増えて大丈夫か!同じくアホの子な作者!
次回もふたなりな流れが続きます。
最後ギャグになって、エッチを書く気分じゃなくなったので区切り
ました。
感想とかおまちしてます。
338
第21話 初めての子作り♪︵前書き︶
ふたなりなアルシアさんが出ます。
苦手な方はパスで!
339
第21話 初めての子作り♪
真夜中の騒動も静まり、上着を着てベットに腰掛ける僕の前に正座
する二人。
僕はその二人を見て、胸の下に手を組みながら説明を求めた。
﹁私達ダークエルフは女系の種族でして、さらに今は男性が非常に
少ない状態なのです﹂
﹁ンフ∼ン。そこでサキュバスの私が協力してぇ、レズレズエルフ
ちゃん達でも子供が作れるようにしてあげてるのよ∼ん﹂
﹁リオには女性に男性器を生やす能力がありまして、その力を借り
て一族の子種を絶やさずにいるのです﹂
正座する二人をジーと見る。
チャームで夢を見てたようだからって、オチンチンに犯されたのだ。
ホワホワして実感はないけど、かなりショックです。元男的に。
﹁んで、なぜリオさんは僕を犯したのかな∼?﹂
﹁アハ∼ン。それはね、アーシャーちゃんの手紙に、家に住んでる
人間の娘に子供を生ませたいってあったらかよ∼ん﹂
﹁そこで何故、貴女が自分の子を産ませようとするんですか?﹂
﹁ヤ、ヤン。アーシャーちゃん本気で怒ってるん⋮。えっと⋮いつ
340
も協力してる私へのご褒美なのかなぁって⋮思ったのよん⋮﹂
アルシアだからアーシャーちゃんか。
中々可愛いあだ名かも。
目の前の漫才に、本筋と関係ない事に感心する。
アルシアさんのレベルは26。
リオのレベルは多分60。
レベル下のアルシアさんが、リオにゲンコをくれている。
この世界、レベルやステータスじゃ計れないものがあるのね∼。
﹁うぅ、セシりん、いきなり犯してごめんなさいなのん﹂
ピンク髪の頭にでっかいタンコブを添えて土下座してきた。
チャーム中だったせいか、色々された事に嫌悪感は沸かない。
でもなんていうか、女の子になったからいつかはと思ってたけど。
﹁初めては、好きな人としたかったなぁ﹂
我ながら乙女的と言うか、童貞的と言うか。
初めてのオチンチン挿入はオチンチンへの嫌悪感とか吹き飛ぶくら
い好きな人と、ロマンチックにしたかったなぁ。
ちなみに僕の好きな人は、アルシアさん、エイン、ラミュー&レム、
スライムさんだ。
肌を重ねた全員が好きとか、僕はとっても軽くてチョロイ気がする
⋮。
341
い、いや、情が厚いんだ。きっと。
僕の呟きを聞いてリオがさらに頭を下げる。
﹁ご、ごめんなの⋮。処女膜も破っちゃったの⋮﹂
﹁あ、処女膜はヒールで治したから大丈夫だよ﹂
﹁⋮ハイ? ヒールでなのん⋮?﹂
﹁セシルの処女膜は私が何度か破ってますけど、ヒールでいつも治
してますよ﹂
僕とアルシアさんの言葉に、リオは口をあけて唖然としている。
﹁⋮処女膜をヒールで治す発想はなかったわん。そんな私ですら思
いつかない発想⋮。セシりんはやっぱり淫魔の血を⋮﹂
口に手を当ててぶつぶつ呟き始めた。
処女膜をヒールで治すって、そんなに吃驚なのかな⋮。
﹁それでですね。リオ。セシルの心の傷を癒す為にも、早速今お願
いしたいのですが﹂
﹁あ、アー、ハイハイなのん﹂
呟きから戻り返事をしたリオは、アルシアさんの黒いショーツの中
へ手を入れる。
アルシアさん、寝る時は下着だけのエロい人です。
しかも下着は黒色と男心をわかってるよね。
342
﹁ん、あぁぁ﹂
﹁ンハ∼ン、中々立派なのね∼ん﹂
リオがショーツから手を抜くと、ショーツからはみ出るくらい勃起
したオチンチンが生えた。
﹁ンフ∼。生えさす為には、性欲や愛欲を溜め込んでなきゃいけな
いけど、アーシャーちゃんいっぱい溜め込んでたのねん﹂
なるほど。だから最近アルシアさんがエッチしてくれなかったんだ
ね。
﹁セシル、あの能天気淫魔にされた傷を癒す為に、私が今から頑張
ってみます。んっ﹂
﹁う、うん、んっ﹂
凛々しく綺麗な顔でキスをしてくるアルシアさん。
口の中を全部舐められて、舌まで絡められ口内を占領される。
その力強いキスに、僕はあっさりと体の力が抜ける。
﹁あ、その娘、痛いのとキスが物凄く好きよん。オチンポは朝まで
は生えてると思うからがんばってね∼ん﹂
﹁﹁あむっ、んむっ、れろっ、んむぅ﹂﹂
リオを放置して、服を脱いでベッドの上で激しいキスをする僕とア
343
ルシアさん。
好きな人とのキスをするだけで、僕の股間はトロトロに濡れちゃう。
アルシアさんがキスを止めて、僕の足を広げて股間にオチンチンを
宛がう。
﹁セ、セシル、私もコレは初めてなので上手くできるかわかりませ
んが⋮﹂
﹁う、うん。僕もオチンチンは初めて⋮﹂
リオとの事はチャーム中だったしノーカンって事で。
﹁行きます﹂
そう言って腰を沈めるアルシアさん。
ゆっくりと僕の割れ目に埋まっていくオチンチン。
やがてプツッとした痛みが走る。
それも超えてオチンチンが僕の膣の奥へ入ってくる。
僕とアルシアさんの子作りが始まりました。
﹁ハァ、ハァ、ハァ、ハァ﹂
オチンチンを入れられハァハァと息を荒げる。
入れられる事に恐怖や戸惑い不安がいっぱいだった。
344
奥まで挿入されてる今も、心臓がバクバクいってる。
﹁セシル、大丈夫ですか?﹂
﹁ハァ、ハァ、う、うん、凄く緊張してるけど、大丈夫だよ﹂
エッチで肌を合わせたり、乳首やクリを摘まれたりもドキドキした。
けれど今膣にオチンチンを入れられるドキドキは別物です。
指や手を入れられた事はあるけど、それとは全く違う。
オチンチンは熱くて硬くて、入ってるだけで気持ち良い。
同時におへその下がくすぐったくてむずむずする。
肉体的な事だけじゃなく、精神的にもドキドキする。
セシリアと言う女性の体になってるとは言え、オチンチンが挿入さ
れて気持ちいい。
そのオチンチンに気持ち良いって事実が、罪悪感や背徳感を感じで
鼓動が早くなる。
﹁セシル、動きますよ﹂
アルシアさんが、ゆっくりを出し入れを始めた。
パチュ、パチュ、パチュ。
僕とアルシアさんの肌が当たる音がする。
ゆっくりと動くオチンチンが、挟んでる膣壁に擦りつけられる。
挿入する時には、閉まってる膣壁を押し広げ、引き抜く時は締める
345
膣壁を引っ張っていく。
﹁んふぅ、はぁ、アルシアさんの、オチンチン、気持ち良いのぉ﹂
﹁あっ、んっ、私も、セシルの膣が、オチンチンに吸い付いて、は
ぁん﹂
大きな胸を揺らしながら、腰を振って僕の膣を犯すアルシアさん。
お互いの掌を合わせながら、僕も一緒に腰を前後する。
腰を少し上げた僕に対して、アルシアさんは前傾姿勢で圧し掛かる
様に挿入を繰り返す。
アルシアさんの乳首は普段は埋まってるけど、今は起ってて頭が出
てる。
お互いの起ってる乳首が時折擦れあうとピリッとした快感が素敵。
その内に膣内のオチンチンの感覚に慣れてきて、気持ち良さでいっ
ぱいになる。
﹁アルシア、さぁん、もっとぉ、いっぱい、動いてぇ﹂
﹁はぁ、はぁ、セシルのオマンコが、私のチンチンを、しゃぶるよ
うに、パクパクと、はぁはぁ、締めたり緩めるので、そろそろ限界
です﹂
アルシアさんが腰を打ち付けるように激しく動かす。
パン、ジュプ、パン、ジュプ。
346
肌の重なる音と、膣の水音が交互に聞こえる。
気持ち良さの中でアルシアさんの限界って言葉を考えた。
それって僕の中に精子を出すって事だよね。
オチンチンを挿入されるドキドキばかり考えてたけど、オチンチン
とエッチするって事は⋮。
なし崩し的にオチンチンに慣れてきたけど、子供を生む覚悟は全く
ない僕です。
それをアルシアさんに言おうと口を開きかけたら︱︱。
﹁セシルッ、私の子産んで、くださいっ。んっん﹂
﹁あ、んむぅぅ﹂
膣の奥の子宮口までオチンチンが届く位に押し込まれ、同時にキス
で口を塞がれる。
激しく舌と舌を絡ませられて、快感で頭が真っ白になる。
直後、僕の膣内、それも子宮口に凄く熱いものがビュッビュッとか
けられた。
﹁んむぅぅぅ﹂
熱い物を感じた瞬間、反射的にアルシアさんに抱きつこうとした。
手は押さえられてたので、足でかにバサミのように抱きついた。
﹁ふぅぅんむ、はぁはぁ﹂
347
膣内に熱い物を感じて僕もイってしまった。
射精したアルシアさんが、僕から唇を離していく。
﹁セシル、まだまだしますからね﹂
﹁はい﹂
うっとりとした気分で無意識に返事をする。
キスとイッタ快感で、子供云々をすっきり忘れる僕。
﹁んっ、ふっ、はっぁ﹂
射精したまま抜かないで、出し入れを始めるアルシアさん。
﹁やっ、ま、まってぇ、イった、ばかりでぇ、敏感、んっ、あぁ、
またイっちゃうぅ﹂
﹁今日は、いくらでも、ハァ、ハァ、イっていいですっ﹂
イったばかりの敏感な膣内を、硬くて熱いオチンチンで激しく犯さ
れる。
痙攣するようにオチンチンを包み込む膣壁が気持ち良くて、すぐに
イってしまう。
﹁またイクゥゥゥ﹂
﹁私もイケるように、しっかり膣で気持ちよくしてくださいね。セ
シル﹂
僕とアルシアさんの営みは、朝になるまでずっと続いた。
348
349
第21話 初めての子作り♪︵後書き︶
冗長だから書きませんでしたが、この後6回ほど中出しされたセシ
リアさんです。
朝方レム君が来て、レム君とも!のはずが、アルシアさんが思った
よりエロくてIFの世界へ。
すっかり色々抵抗がなくなっていく主人公!
もう主人公はヒロインって事でいいですか!?
主人公サイドは生活落ち着いてエロしかなくなってきたなぁ。
真面目成分が必要か、エロイままがいいのか⋮。
ご意見、ご感想をありましたら是非∼。
350
第22話 頑張れ新妻妊婦セシルさん︵前書き︶
今回はレム君やアルシアさんやセシリアさんがエッチな事してます。
351
第22話 頑張れ新妻妊婦セシルさん
僕とアルシアさんが子作りエッチをしてから∼
︱︱2日後︱︱
ニチュニチュニチュ。
今日も今日とてレム君の性処理です。
いつも通り手で弄ってるのはいいんだけど。
﹁アハーン。子供のお世話は大変ねん﹂
﹁レムは僕の子供じゃないですよ﹂
リオがパタパタパタと背中の小さな羽根を動かし、ふわふわ浮いた
まま見学してる。
﹁ンフ∼? あ、そっかぁ、変な首輪してるし、セシりんそういう
子飼うのが趣味なのねん﹂
﹁飼ってないし!? この首輪は僕の趣味じゃないよっ! 外そう
としても外れないだけだよ!﹂
女顔の男の子を飼う趣味とか僕にはないので、断固否定しとく。
お義母様に相談しても、この首輪は外せなかったんだよね。
352
﹁アァ∼ン、じゃあ、奴隷の子でも拾ったのねん?﹂
﹁その通りです﹂
意外にもリオが賢しく悟ったようだ。
エロイだけの人かと思ってたけど、頭も意外と回る?
﹁なんだか失礼な事考えられてる予感ねん。その首輪、要らないな
ら∼ぽいちょっと﹂
リオが首輪を触ると、パキンと音を立ててあっさり外れた。
﹁な、なんで?﹂
﹁ンッフッフ∼。淫魔の私にこの程度の呪いの解除は容易いわん。
まぁ引き篭もりリッチーンや若作りヴァンパイアとかもできると思
うけどねん﹂
レムのオチンチンをニチュニチュしながら、目を見開き感心する僕。
エロイ事やオチンチン生やす以外にも特技があったのか。
﹁リオお姉ちゃん、ありがとう﹂
﹁どう致しましてなの∼ん﹂
レムが驚きながらもしっかりお礼を言う。
うんうん、とても良い子です。
しかしリオが居て緊張してるのか、レム君が中々イってくれません。
353
﹁セシりん、そんなんじゃなくて、オチンポの正しい使い方教えて
あげないのん?﹂
﹁い、いきなり何を言うんですか﹂
リオの言葉に興味を惹かれたのか、可愛く首を斜めにするレム。
するとリオが浮かんだままレムの前まで来て脚を開き︱︱。
﹁レムりんのオチンポはね、女の人のここに入れる物なのよ∼ん﹂
割れ目を覆ってた黒い謎の衣服が消えて、割れ目をクパァと開いて
膣を指差す。
僕は咄嗟に枕を取ってリオにぶん投げた。
﹁うちの子に変なこと教えないでくださいっ!﹂
﹁ンプッ。た、正しい性知識を教えただけなのねん﹂
﹁ファイアーボー⋮﹂
﹁キャ、キャイン、ごめんなの、悪かったなの∼﹂
僕がファイアーボールをリオに撃とうとしたら、リオは影に入り影
のまま移動して部屋から逃げた。
淫魔だけあって、いきなりエロイ事しおってからに。
リオが去って一安心してたら、レムが物凄い真っ赤な顔で僕を見て
きた。
﹁あ、あー、えーと⋮。確かにオチンチンは女の人のアソコに入れ
354
るんだけど⋮。そういう事は好きな人とだけするんだよ?﹂
僕はレムから微妙に目を逸らしながら補足した。
そしたらレムがいきなり立ち上がって、僕に抱きついてきた。
﹁ボ、ボク、セシルお姉ちゃん好き﹂
えーと、それはつまり⋮僕にオチンチンを挿入したいって事?
僕が何も答えないでいると、レムが目に涙を溜めて⋮。
﹁お姉ちゃんは、僕の事嫌い?﹂
涙を流しながら言うのは反則だと思います。
レムの事は大好きだけど、うーん。
リオの話だと、リオの生やしたオチンチンでの妊娠率は100%ら
しい。
だとすると今の僕はアルシアさんに注がれて二日後だから、たぶん
妊娠してるよね。
レムに中出しされても、妊娠中なら妊娠しないだろうし。
オチンチンにもう抵抗ないし。
﹁えっと、僕としてみる?﹂
﹁うんっ﹂
泣きながら笑顔になるレム。
そんなに嬉しそうにされると断れないよね∼。
355
自分とレムを裸にしてベットに上げる。
僕の股の間にレムを座らせ股間を広げる。
リオじゃないけど、保護者としてちゃんと教育してあげないと。
﹁上に小さい穴、その下に大きい穴があるでしょ? 下の大きい穴
にオチンチン入れるんだよ﹂
﹁う、うん﹂
顔を真っ赤にさせながら、僕の股間を凝視するレム。
なんだかとっても可愛い。
﹁おいで﹂
手を広げてレムを招く。
近づいたレムのオチンチンを手で膣に誘導する。
オチンチンの感覚で分かったのか、膣に先端が当たったらレムが腰
を前に出し突き入れてきた。
﹁ん、ふぅ、だ、ダメだよレム。最初はゆっくりしてあげないと、
女の子が可哀想だよ﹂
﹁ご、ごめんなさい﹂
僕の注意でシュンとするレム。
くそーいちいち可愛い。
処女膜が貫かれた痛みも慣れたもので、冷静にリードできそう。
356
﹁最初はゆっくり出し入れさせて、ヌルっとした感触がいっぱいに
なったら、早く動いてみて﹂
﹁う、うん。わかった。セシルお姉ちゃん﹂
レムは言われたとおりに出し入れを始めた︱︱んだけど。
﹁んぁぁ、出ちゃうぅ﹂
2回もピストンしないで熱い精子を僕の中へ吐き出した。
僕の膣にはちょっと小さいレムのオチンチンから、ビュルビュル出
てるのを中で感じる。
ビュルビュルと出し終わってから、レムにすっきりしたか聞こうと
思ったんだけど。
﹁んっ、んっんっんっ﹂
﹁ちょ、ちょっとレム。出してすっきりしたんじゃないの?﹂
﹁セ、セシルお姉ちゃぁん、オチンチン気持ち良くて、止まれない
よぅ﹂
﹁レ、レム、初めてで抜かずの連投とか、んぁぁ﹂
一度出してからの激しいレムの腰使いに、うっかり気持ちよくなる
僕。
そのままレムは抜かないで僕に3発出すまで止まりませんでした。
若い子の性欲ってすごいね。
357
︱︱4日後︱︱
僕は暇なので編み物の練習をしていた。
何故編み物かと言うと、我が子に自分で作った服とか着せたいから
です。
⋮⋮材料無駄になるから、料理の練習はさせてくれないお義母様と
ラミューです。
そんな時、突然アルシアさんが部屋に入ってきた。
その手に変な棒を持って。
﹁セシルッ、愛情が満たされてしまったのでオチンチンで可愛がっ
てあげれませんが、リオから良い物を貰いました!﹂
﹁う、うん? どうしたの?﹂
アルシアさんが50センチくらいの棒を持ちながら語りだした。
﹁痛くしないでも、オチンチンで突くだけでイキまくるセシルの為
に、リオがこれをくれたのです! さぁ、今からこれで夫婦の営み
を!﹂
まるで僕がオチンチン大好きみたいに言わないで欲しい。恥かしい
から。
恥かしくて顔を赤くしながら、アルシアさんの手の物を良く見た。
それはゴムっぽい物で出来ていて、両端に亀の頭のような亀頭があ
358
って⋮。
﹁⋮⋮双頭のディルドー?﹂
﹁あ、そう言う名前らしいですね。では、さっそく﹂
初めて見たエロ道具に驚いてる僕を押し倒すアルシアさん。
最近分かったけど、アルシアさんって僕よりエッチだ。
あれよあれよと言う間に裸に剥かれる。
﹁で、でもアルシアさん、まだお昼だし、ね?﹂
﹁ん∼∼、ぷはぁ﹂
﹁はぁぁ﹂
僕がキスに弱いからって、都合悪い時とかはキスしてくるアルシア
さんです。
﹁ふにゃぁぁ﹂
﹁で、では、行きますよ。一緒に、同時に入れましょう﹂
力が抜けてぱったり横になってる僕の膣と自分の膣に、アルシアさ
んがディルドーを当てる。
そして自分の膣に入れながら僕の膣にも突き入れてくる。
﹁ん、つっ、うぅ、これが破瓜の痛み、ですか﹂
359
こう見えてアルシアさんは処女です。
僕と違い何ちゃって処女ではなく、正真正銘の処女のはず。
エインにもそうだったけど、他人の処女膜を破る勇気がない僕です。
初めての痛みで大丈夫かなぁってアルシアさんを見ていましたが。
﹁剣で斬られる痛みに比べたら平気ですね。セシル、激しく感じあ
いましょう!﹂
﹁んはぁ、んくぅ、ちょ、最初からぁ、はげしぃ﹂
アルシアさんは僕の片足を胸に挟むように持って、もう片方の足の
上に乗りながら腰を打ち付けてくる。
﹁ふふ、激しくてっ、痛いくらいがっ、好きでしょう?﹂
﹁んぁぁぁぁん、ジュプジュプいいのぉ﹂
僕とアルシアさんの膣がディルドーでつながり、互いの汁が混ざり
合いながら音を立てる。
アルシアさんは腰を振りながら僕のクリ摘んで捻る。
﹁んぎぃぃぃ﹂
﹁今日は、いっぱい、しますから、ねっ﹂
この日は久しぶりに、痛くされて気絶するまでヤられました。
360
︱︱1ヶ月後︱︱
﹁セ、セ、セ、セ、セシルッ!﹂
編み物の習得を諦めて、木材でおもちゃ作成中の僕の部屋に駆け込
んでくるアルシアさん。
その体の前には、両足を広げて持たれてるオチンチン丸見えのレム
が居ます。
﹁レムちゃんにオチンチンが生えてしまいました!﹂
僕のお腹はかなり大きくなってきた。
だから代わりにラミューとレムの性処理をしてくれるって言ったん
だけど。
﹁あのアンポンタン淫魔の悪戯でしょうが、処理しても消えない程
の呪い並みにオチンチンを生やしたようで。今すぐ始末してくるの
で、レムちゃんを預かっててください﹂
淫魔サキュバスのリオのせいと決めきってるけど。
﹁あー、アルシアさん、レムは最初から男の子です﹂
﹁⋮へ? ウソでしょう?﹂
アルシアさんはレムの顔とオチンチンを交互に確認してる。
レム君がトマトみたいに顔真っ赤なので、その羞恥プレイはやめて
あげて欲しいです。
361
男の子とバレタので、なぁなぁだった事をきちんと謝っておこう。
﹁いつもレム君のオチンチンをにぎにぎして処理してました。1回
だけオマンコに挿入もしました。アルシアさん、ごめんなさい﹂
床に頭をつけて謝る。
なぁなぁとしてた事だけど、浮気してるつもりはないけど、謝る事
だと思う。
﹁あ、いや、えぇ、レムにラミューも家族みたいなものですし、問
題ないですよ?﹂
いつも物事を言い切るアルシアさんには珍しく、なんだかあやふや
な物言いです。
女の直感なのか、僕の何かにピンときました。
﹁そういえば、さっき処理したのにって言ってたよね? どうやっ
て処理したの?﹂
﹁あ、う⋮。そ、それは、そのぉ﹂
明らかに狼狽するアルシアさん。
僕は床に正座したまま、立ってるアルシアさんを睨む。
⋮一緒に見えるオチンチン丸出しで顔が赤いレムが可愛い。
﹁そ、そのですね。前にディルドーが気持ち良くてですね。さらに
レムが、セシルお姉ちゃんと同じ様にアルシアお姉ちゃんも好きだ
から挿れたいって言うので⋮。膣で出さないように約束して挿れた
りしたのですが⋮﹂
362
つまりそれは⋮。
﹁つ、妻がお腹を大きくしてる時に、生オチンチンで気持ち良くな
ってたって事?﹂
﹁そ、そうとも言います。あ、セシル、なんだか怖いですよ﹂
真剣に日本人の最反省土下座までして謝ったのに⋮。
僕はゆらぁと重くなったお腹を気遣いながら立ち上がる。
﹁この、浮気者ぉぉぉ!﹂
﹁すいません、すいません。許して下さい∼∼﹂
僕は怒りで金髪になった髪︵注:元々金髪︶を逆立てながらアルシ
アさんを追いかけた。
お腹が大きくなってて追いつけないんだけどね∼。
それにしても、1ヶ月でこんなに大きくなったっけ?
︱︱2ヵ月後︱︱
すっかりお腹も大きくなって走ったり出来ません。
オッパイもすごい張ってて痛いくらいです。
なんだかお腹の子の成長が早いなぁと思って、例のアレを見てみま
363
した。
職業が変わってたのと、新しい二つの称号ゲットしてました。
ゲームでは進め方次第で、主人公だけストーリー途中で職業が自動
で代わるのです。
その場合レベルは下がらず、ステータスもそのままで職業だけ変わ
ります。
変わった職業のスキルや魔法は、今のレベルまでに覚えるもの全て
覚えた状態です。
今までの僕の行動の結果で職業が変わったと思うんですが、その職
業がなんと!
魔母。
うん、ゲームの主人公の職業魔王の女性版でしょうか?
とってもいっぱい子供を生みそうな匂いがします。
ゲットした二つ称号はこんなんです。
□性母:聖母 胎児の能力大幅強化 魅力+100
□魔母:魔の母 妊娠期間大幅縮小 魅力+100 性母は、妊娠しても処女膜があるから取れたのかな?
魔母は、職業がそうだからか、或いは魔物扱いのダークエルフのア
ルシアさんの子供を妊娠したからかも。
2ヶ月しかたってないのに、僕のお腹は物凄く大きい。
きっと魔母の効果だと思います。
364
職業も称号もゲームになかったのでよくわかりません。
リオに相談したら、伝説の悪魔族の母リリスが僕と同じ様に胎児の
成長が早かったとか。
﹁はぁ﹂
自分の自分でも予想外な称号とか職業にため息が出ちゃう。
﹁ちゅぅ、ちゅぅ。セシルさん、どうかしましたか?﹂
﹁あ、気にしないで、ちょっと考え事してただけだから﹂
溜息をついた僕を心配するラミューの頭を撫でる。
安心したのか、再びラミューは僕の乳首に吸い付いて母乳を吸う。
オッパイに母乳が溜まりすぎて痛いので、現在ラミューに飲んでも
らってます。
普段は片乳ずつラミューとレムに飲んで貰ってるんですが、レムは
現在アルシアさんの所です。
僕のオッパイ飲んでて我慢できなくなったんだろうね∼。
﹁んくっ、んくっ、んくっ﹂
僕の母乳を一生懸命飲んでくれるラミュー。
は∼、お腹が大きくて腰が痛かったり、胸が張っておっぱい痛かっ
たり、妊婦さんは大変です。
365
︱︱3ヵ月後︱︱
﹁んぎぃ、ふぎぃ、いぎぃぃ﹂
僕はとうとう子供が産まれそうになり、必死に苦しさに耐える。
助産婦として、スライムさんとリオが出産を手伝ってくれてる。
他の皆は部屋の外で待機してると思います。
﹁プルプルプルプル﹂
﹁う、うん、呼吸に合わせて力むんだね﹂
スライムさんの優しく気遣いを感じる助言に従い、必死に力む。
気づいたらスライムさんが何を言ってるか分かるようになってまし
た。
﹁ンヒィ、セシりん、すごいお腹おっきいのん。がんばるのん﹂
﹁ひーひー、んぐぅ、ひぃーふー﹂
混乱してるのか応援してるのか分からないリオ。
僕はお腹や子宮が苦しくて、上手くリズミカルに呼吸が出来ない。
スライムさんが呼吸を助けるように、僕のお腹を覆ってくれる。
同時に膣に手?を入れて、子供が出るのを補助してくれる。
366
﹁んぎぅ∼、くるし∼、んぃ∼∼﹂
﹁がんばるのん! 力むのん! スライムさんも子宮を開くのん!﹂
もはや助産婦ではなく応援係なリオ。
その応援の効果か、子宮口を何かがスルッと通っていく。
﹁んぎゅー、んはー﹂
﹁ワオ、スライムさん、上手なのん﹂
どうやらスライムさんが上手く子供を子宮から出してくれたようで
す。
⋮でも何故でしょう。
子供が産まれたのに僕のお腹はまだ大きい。
それに苦しいのが止まらない。
﹁セシりん、がんばって! 残りの子も産むのん!﹂
その言葉に初めて事実を知る。
妙に大きなお腹だと思ったり、蹴って来るのが一人じゃない気がし
てたけど。
双子だったりしたんだねっ。
﹁んぎぃ∼∼﹂
僕は必死にもう一人の子供を生もうと頑張る。
スライムさんも再び僕の子宮口を広げて子供を取り出そうとしてく
367
れる。
﹁ふぎゅ∼∼∼﹂
強く力んだ拍子に、お腹からもう一人生まれたのを感じた。
﹁ヤッタのん! じゃあ、セシりん! 最後の子も産むのねん!﹂
さすがに今度のリオの言葉には驚いた。
僕ってば、双子どころか三つ子を孕んでたのね。
アルシアさんが、膣からポコポコ溢れるくらい注いだからか。
﹁ひっふぅ∼、はぁ、はぁ﹂
僕は必死に気を抜かず力み続けた。
スライムさんの助けも合って、最後の一人も無事に生まれる。
﹁おめでとうなの! セシりん!﹂
さすがに疲労困憊で動けなかったけど、僕の初めての出産は無事に
終わりました。
368
第22話 頑張れ新妻妊婦セシルさん︵後書き︶
タグに妊娠出産を追加しとこう⋮。
ディルドー⋮頑張って出しました。ちみっとだけ⋮。
産まれた子供達の活躍予定はありません。
作中時間で15年くらいしないと戦えないだろうし?
でも子供で天才戦士とか天才魔法使いなら7年後くらいでも?
ゲーム主人公かエインさんの話を進めないと、世界が動かないので
困った困ったです。
色々頑張った主人公!
気のせいかレム君たらしですよね!
産まれた3人の子供の種族を当てられる人は⋮いっぱいいそうだ!
感想とかお待ちしてます!
369
第23話 酔っ払いにご注意を♪︵前書き︶
予定してた真面目話が進まないので、なんとなく書いたお話です。
ストーリー的には特に意味はないデス。
370
第23話 酔っ払いにご注意を♪
﹁おめでとうございます﹂﹁おめでとう﹂﹁お祝い申し上げます﹂
等々、僕とお義母様は色々な人からお祝いを受けています。
現在ダークエルフの町はお祭です。
﹁町を上げてのお祝いってすごいですね∼﹂
﹁それはそうですよ。何せ男の子が産まれたんですからね﹂
お祝いでお酒を飲んで頬が赤いお義母様が嬉しそうに言ってくる。
僕が生んだ子供は3人。
一人はピンクの髪に頭に角がちょこっと生えた小さい尻尾のある女
の子。
もう一人は耳が長くてとんがってて肌が白い女の子。
最後の一人、お祭をする事になった理由の子が耳長で肌が褐色の男
の子です。
3人はどう見ても種族が違います。
淫魔、エルフ、ダークエルフと僕に中出しした3人の子を別々に孕
んだみたいです。
ダークエルフ以外の子も産んだと分かった時、お義母様とアルシア
さんに怒られると思ったんですが∼。
371
﹃お、男の子! 男の子よ! セシルさんよくやりました!﹄
﹃輝くような男児ですね! セシル、頑張りましたね!﹄
ってな感じで、ダークエルフの男の子が産まれて大興奮でした。
リオとレムの子も産んだっぽいけど、怒られる処か褒められました。
初産で3人も産むなんて偉いわ。と。
ちなみに輝くようなというのは比喩ではなく、3人とも輝くような
オーラが出てます。
そんな訳で、現在男児生誕記念でお祭り中です。
僕としては3人とも可愛いので、男の子だけ祝われてる感じはちょ
っと複雑です。
﹁それじゃあセシルさん、私は挨拶回りをしてきます﹂
﹁はーい、いってらっしゃーい﹂
アルシアさんも挨拶に回って居ないので、用意された家族席に一人
残される。
お酒を飲んだり食べ物食べてる人達を遠めに見渡す。
﹁本当に女性ばかりだね∼。男の子生まれて祝うだけはあると﹂
見渡す限り女性ダークエルフさん︵ほぼ全員巨乳︶です。
女性だらけのせいか、衣服が乱れてぽろりしても気にしてません。
372
そして今回の事で男の子と町中に知れたレムくんは⋮。
﹁あ∼、お姉様方に囲まれて大人気だね∼﹂
近親種だけあって、エルフとは普通に結婚子作りしてもいいらしい
です。
どうにも敵対的なのはエルフの女性側だけらしく、やはり巨乳を嫉
んで敵対してるのではないかと思います。
挨拶に来る人も居なくなったし子供達を見に行こうかなぁ。
今はスライムさんとラミューが子供達の面倒を見てくれています。
いつも僕を助けてくれるスライムさんには、種族を超えて愛が芽生
えそうです。
ぼーと僕が子供達とスライムさんの事を考えていると誰かが近づい
てきた。
﹁ニャハハハ、セッシり∼ん、楽しんでるぅ∼∼ん?﹂
乳首と割れ目しか黒い物で隠してないピンク頭で酔っ払いのリオだ。
﹁セシルッ、胸が大きくていやらしいですねっ! お母さんになる
と言うのにエッチですね!﹂
すっかり酔って出来上がったアルシアさんも一緒だ。
﹁僕の胸が大きいのは、お母さんになって母乳を出す為だよ﹂
僕の胸は元々大きかったけど、今はお義母様すら越えてスイカのよ
373
うです。
もはやここまで来ると巨乳ではなく爆乳?
﹁ニュフフフフ、セシりんはエッチだからねん。胸も大きくなるわ
よねん﹂
﹁全くです。その胸は誘ってるんですか? 誘ってるんですね?﹂
酔っ払い二人には話しが通じない。
無視して子供達を見に行こうとしたら︱︱。
﹁ではセシルッ、誘われたのでベッドに行きましょう! オポンチ
淫魔も一緒に来なさい!﹂
﹁ウヒヒヒヒ。アーシャーちゃんもエロエロなのね∼∼ん﹂
︱︱二人に捕まって連れ去られました。
ベッドに運ばれ裸に剥かれた僕です。
﹁ふふふ、この2ヶ月、ずっと我慢してましたからね。行きますよ。
セシル﹂
﹁ちょ、ちょっと、アルシアさん、僕出産後まだ二日目だよぉ﹂
リオにオチンチンを生やしてもらい準備万端で僕の割れ目にオチン
チンを当ててるアルシアさん。
374
﹁えいっ♪﹂
﹁ふぎゅぅ﹂
前戯をする事無く膣にオチンチンを挿入された。
一気に奥まで突き刺されて、治してた処女膜が破られる。
膜を破ったオチンチンは子宮口へと到達してる。
﹁セシルは痛いのが好きですし、今は出産で緩んでるから大丈夫で
しょう?﹂
﹁ゆ、緩んでるとか言うな∼。バカ亭主∼∼﹂
酔っ払いアルシアさんは、楽しそうに言ってくる。
処女膜は治ってたけど、膣とかお腹は元通りにはなってない。
確かにちょっと緩くなってるかもしれないけど、言葉で言うとか酷
い。
アルシアさんは、そんな僕を気にしないでオチンチンを出し入れし
始める。
﹁ほら、セシル、ちゃんと締めて下さい﹂
﹁うぅ、うちの旦那様はド助平です⋮﹂
言われたとおり膣を締めてオチンチンを締め上げる。
﹁んはぁ、良いですよ。その調子です。今日はなんだか奥に突き入
れると先端が咥えられてるようで気持ちいいですね﹂
375
﹁ヌフフ∼ン。今のセシりんの子宮口って、少し開いててオチンポ
咥えちゃう淫乱子宮なのよん。きっと﹂
リオの言葉に恥かしくなる。
恥かしがって顔を覆おうとしたら、アルシアさんにキスされた。
正上位で抱きしめられるようにキスされて嬉しい。
じゃなくて、胸が潰されてちょっと痛いです。
母乳が漏れてヌルヌルしますし。
﹁ぷはぁ。子宮にオチンチンでキスと、口でキス同時にされてどう
ですか? いえ、オマンコ濡れてきてるのでセシルの気持ちは分か
ります!﹂
﹁ふぁぁ﹂
キスでとろんとしてると、激しく僕の膣にオチンチンを打ち付けて
くる。
それが気持ち良くて、もっと気持ちよくなろうと膣を反射的に強く
締めた。
﹁セシルッ、がっちり子宮口でオチンチンを咥えて、んぁぁ﹂
﹁あぁぁあ、出てるぅ、アルシアさんの精子、子宮に出てるぅ﹂
前のように子宮口に当たるんじゃなくて、その奥の部屋に注がれて
る感じがする。
熱いくらいの精子を注がれぐったりしちゃう。
376
﹁ね∼ん。そろそろ私も混ぜて∼ん﹂
﹁む、セシルは私の嫁ですよ﹂
﹁アンアン。オマンコはアーシャーちゃんでいいからぁん。セシり
んを持ち上げてん﹂
﹁ひあっ﹂
アルシアさんが急に僕を持ち上げたので、抱きつくように首に手を
回した。
アルシアさんも僕のわきの下に手を入れてくれるけど、下は膣のオ
チンチンだけで支えられてます。
この体勢はお互いの胸が当たり、母乳でヌルヌルで気持ち良いかも。
﹁ウヒヒ。それじゃあ行くわよ∼ん﹂
僕の後ろからリオが声をかけてきた。
何をするかと思う間もなく、僕のお尻に何か当たったと思った瞬間
穴の中に棒が突き入れられた。
﹁ひぎぃ、そこは、ちがっ﹂
﹁ンハァァァァン。こっちはキツキツなのねん。あぁんセシりん、
そんなに締めないでん。オチンポちぎれちゃうわん﹂
﹁あ、オマンコも締まって気持ちいいです。セシルはお尻の穴も好
きなんですね﹂
377
僕のお尻にオチンチンを挿入したリオ。
リオが挿入すると手を離して腰を動かすアルシアさん。
僕の体が、オチンチン2本だけで支えられる。
重力の影響で深く深く突き刺さる二本のオチンチン。
﹁んっふ、やっ、マンコとお尻なんてっ、僕、壊れちゃうっ﹂
﹁あぁ、締まりも良くなって、オチンチンが子宮口にさっきより入
って気持ちいいですよ﹂
﹁ンハァン。アナルも腸液でヌルヌルになってるのね∼ん。ンフ∼、
壊れないように一回だしてあげるわん﹂
ビュルルルとお尻の中で大量に出された。
﹁ひぁぁぁ、お尻、初めてなのにぃ﹂
精子を出されて苦しく感じるのに、マンコとオッパイの気持ち良さ
でお尻も気持ちいい気がしてくる。
リオが出した後も、二人は僕の体をゆっさゆっさと上下に動かし出
し入れする。
﹁はぁはぁ、セシルッ、子宮口で、オチンチン、咥えすぎです。も
う、あぁ、でちゃ、うぅ。あむっ﹂
﹁ふぅぅ、むぅぅ﹂
アルシアさんが僕の口を塞ぎながら、子宮内射精をした。
378
新たに注がれた精子で、お腹が温かくなる。
アルシアさんの射精中にリオがお尻からオチンチンを引き抜いた。
﹁ふぐぅぅ﹂
一気に引き抜かれて、お尻がめくれそうになる。
抜かれて開いたままのお尻から、ポタポタ何かが零れ落ちる。
﹁ンイ∼。アーシャーちゃんばっかりそっちずるい∼。私もそっち
入れるのね∼ん﹂
﹁ぷはぁ。リオ、何をする気ですか﹂
﹁ンフ∼? 二人の間にお邪魔しますなの∼ん﹂
お尻から引き抜いたオチンチンを、僕の膣に宛がう。
僕の膣には、もちろんまだアルシアさんのオチンチンが入ってるの
に。
﹁おっじゃましま∼すなの﹂
﹁ひぎゅぅ、裂ける、きつい、んあぁぁぁぁあ﹂
リオのオチンチンがメリメリと僕の膣を広げながら入ってくる。
少しすると完全に僕の膣に2本のオチンチンが納まった。
﹁ンアァ。セシりんのオマンコはやっぱりイイのねん﹂
﹁私用のオマンコですよ。遠慮しなさい﹂
379
﹁ンフ∼ン。セシりんは私のオチンポを喜んでくれてるわん﹂
﹁そんなことありません。セシルは私のオチンチンのほうが好きで
すよね?﹂
二人は僕を置いて競うように腰を動かす。
アルシアさんのほうが長くて、リオのほうが太い。
二本のオチンチンは、僕の膣を歪にゆがめながら擦りあう。
一本では感じられない場所にも擦りつけられ気持ちいい。
﹁んっ、ふぅ、二人ともっ、激しいっ、オマンコ気持ちいい、けど
ぉ、乱暴、なのぉ﹂
二本で突かれ擦られ広げられ、気持ち良くて時には痛いのが最高で
す。
最初は二本なんてって思ってたけど、癖になりそう。
﹁あぁ、セシルのいやらしく緩んだ顔が素敵ですよ。んふ、あぁ、
また出しちゃいそうです﹂
﹁ンヒィ。セシりんのグニグニ動くヒダヒダオマンコ最高なのぅ。
私もでちゃうのん∼∼﹂
﹁ぼ、僕もぉ、二人のチンポいいのぉ。二本いいのぉ、イキそうな
のぉ﹂
二人が激しく腰を動かす。
僕もイク為に上下に体を動かしてオチンチンを貪る。
380
気持ち良くてイキそうで膣を思い切り締めた。
すると二人が僕に抱きつき、僕も前のアルシアさんに抱きつく。
﹁﹁﹁イクぅぅぅ﹂﹂﹂
ビュルルル、ビュルルル。
イッタ直後に僕の膣内に大量の精子が注がれる。
注がれるのも気持ち良くて、膣肉が勝手にオチンチンを根元から波
打つように締め上げる。
そしたらオチンチンから残りの精子が出てそれも気持ちいい。
﹁ふにゃぁぁん﹂
イッて力が抜けてアルシアさんに体を預ける。
二人は僕からオチンチンを抜いて、アルシアさんが僕をベッドに寝
かしてくれた。
終わったと思って目を閉じようとした僕に二人が笑いかける。
﹁私もセシルのお尻を味わいたいですからね。まだまだしますよ﹂
﹁ニハハハハハ。フェラとかパイズリとかまだまだなのねん。淫魔
の性技を全部仕込んであげるのね∼ん﹂
酔っ払った二人の暴走が止まりません。
381
﹁はぁ、ふぅ、セシルはお尻も名器ですね﹂
﹁ニョホ∼。セシりんの子宮バキューム癖になるわぁん﹂
﹁んむっ、あむっ﹂
仰向けの僕の下からアルシアさんがお尻を犯す。
僕とアルシアさんのまたの間からリオがオマンコを犯す。
その二人だけじゃなく、僕はもう一人にオチンチンで口を塞がれて
います。
﹁はぁ、はぁ、はぁ、セシルお姉ちゃん、もっとオチンチン舐めて
ぇ﹂
レムが僕の胸に寄りかかるようにしながら、口にオチンチンを入れ
てます。
ダークエルフのお姉様方から逃げてきたレムが、僕らを見て混ざっ
てきました。
﹁ンフ? レムり∼ん。はぁはぁ辛そうねん?﹂
﹁う、うん。お姉ちゃんの口気持ち良くて、緊張してたら、喉が乾
いちゃって⋮﹂
僕の体の上で会話してるのはわかる。
わかるんだけど、僕は3本のオチンチンが気持ち良くて会話が耳に
入らない。
382
オチンチン舐めるのって、思ってたのと違って興奮する。
硬くて熱くて、口をすぼめて弾力を味わうと美味しい。
出てくるお汁が苦いけど、ヌルッとした食感と苦いだけじゃない複
雑な味も美味しいです。
﹁喉乾いたらな∼ん。目の前の飲み物飲むといいのよ∼ん﹂
﹁はぁ、はぁ、え⋮うん。リオお姉ちゃん、ありがとう﹂
オマンコとお尻と口のオチンチンに集中してたら、急に乳首に吸い
付かれた。
不意打ちの気持ち良さに体が反応して膣とお尻をきつく締めてしま
う。
口も甘噛みくらいだけどオチンチンを噛んじゃった。
﹁うわぁ、でちゃうぅぅ﹂
噛んだらレムが射精した。
﹁んぐ、ふゅ、んぐ、んぐ、んぐ﹂
射精しても抜いてくれないので、呼吸する為に僕はレムの精子を飲
む。
喉に張り付くような感じで苦味もかなりあった。
だけどほんのり甘くて温かいそれは、ちょっと美味しいと感じる。
出された分を飲み干した僕は、レムのオチンチンをチュゥと吸った。
オチンチンに残ってた精子を根こそぎ吸い出す。
383
﹁あぁ、お姉ちゃん、気持ちいいよぅ﹂
吸い出したレムのオチンチンが、口の中でビクビク痙攣してる。
アルシアさんとリオみたいにでっかくないし、反応も可愛い。
﹁レムのオチンチンばかり美味しそうに吸い付いて⋮。次は私が口
に入れます﹂
﹁ンハ∼ン。じゃあレムりんは、私と一緒にオマンコにいれるのね
∼ん﹂
﹁一緒でもいいの? リオお姉ちゃん﹂
﹁ンフ∼。二人一緒で二本だともっと気持ちいいのよ∼ん﹂
されるがままの僕を自由にする三人。
全身に精子を染みこまされ、快感の虜になった僕は抵抗できません。
三人とのエッチが終わったのはいつかわかりませんが︱︱
︱︱1週間後、僕の再度の妊娠が発覚しましたとさ。
384
第23話 酔っ払いにご注意を♪︵後書き︶
真面目話が書き進まないので、八つ当たりにただただエロイ事をさ
せるだけの回でした∼。
でも何故か妊娠した主人公。
予定外デス。
スイカ胸ミルク味を手に入れた主人公!
レム君はきっと、お子様達以上に吸いついてくるかもだよ主人公!
こういう話はどうなんですかね?
感想があればぜひでございます。
385
外伝 魔王様道中記︵前書き︶
真面目話です。スルーと流し読みくらいでどうぞ⋮。
386
外伝 魔王様道中記
3国が支配する大陸の辺境にあるゴブリンの巣穴。
その中の一つを黒目黒髪の少年と、ラミアのティティス、ダークエ
ルフのレミネールが歩いている。
3人の前には王冠をかぶり豪奢なマントをした魔物が、先導するよ
うに歩いている。
そして魔物と3人は戸で区切られた一室に入る。
﹁あっ、あっ、あっ﹂﹁ひぁ、あぁ﹂﹁えはぁ、いひぃ、ふぎぃ﹂
その部屋の中には様々な種族︱︱人間、エルフ、猫人、ドワーフの
裸の女性達が鎖に繋がれて居た。
大きく腹を膨らせた女性も多数居る。
緑の肌の1mほどの矮躯の魔物がその女性達に男性器を突き立てて
いる。
少年はその部屋の入り口から静かに、しかし通る声で告げた。
﹁部屋に居るゴブリン達よ、今すぐ女性達から離れて部屋から出て
行け﹂
一瞬静かになるが、すぐに女性達の喘ぐ声と卑猥な水音、そしてゴ
ブリン達の笑い声が響く。
387
﹁ゲヒャヒャヒャ。お前が我ラの王を倒シたカラと言って、ソレは
聞けないナ﹂
少年は自分の側に立つ王冠をかぶった魔物︱︱ゴブリン王を見た。
﹁あんたがオレに勝ったから、我等は皆従うが⋮。この女達はこい
つらが自力で得た戦利品だ。オレでも理由なく止められんぞ﹂
矮躯のゴブリンと違い、ゴブリン王は流暢に言葉を話す。
ゴブリン王の言葉を聞いた少年は、猫人の女性を犯すゴブリンに近
づく。
そして︱︱
﹁では死ね﹂
︱︱いつの間にか手に持った剣でその首を刎ねる。
﹁キ、キサマ、何ヲ!?﹂
少年は混乱するゴブリン達を無造作に切り捨てていく。
殺されまいと少年に飛び掛るゴブリンも居たが、その手は届くこと
なく一刀で斬り捨てられる。
瞬く間に部屋中のゴブリンを惨殺した少年が、ゴブリン王へとその
目を向ける。
﹁お前達ゴブリンは、自分達の種族だけでは子を産めないのか?﹂
少年の感情がなく冷たい眼差しに、ゴブリン王は密やかに恐怖しな
388
がら慎重に言葉を選び返答した。
﹁我等ゴブリンの雌だけでも、十分種族を維持できる。が、我等を
排し我等から奪う人族の奴らに意趣返しをしたい者も多い。ここに
いた奴らはそういった奴らだ﹂
﹁はっは∼。それってつまり、こいつ等はゴブリンの雌より人族の
雌が好きな変態ってことかい?﹂
﹁ティティス殿﹂
﹁睨まないでおくれよ、レミネール。軽い冗談さね﹂
二人の軽口にも、少年の雰囲気は変わる事無くゴブリン王を射抜い
ていた。
﹁だったら、二度とこういう事をしないように徹底してもらおうか。
あぁ、ボクの言う事を聞かないんだったら、お前らを皆殺しにしよ
うか﹂
﹁わ、わかった。オレに勝ったあんたに従う者が大半だろうからな。
おそらく大丈夫だ﹂
ゴブリン王の言葉に満足したのか、少年は部屋から出ようと戸に向
かう。
部屋の外に出る寸前、中にいる二人の族長に声をかけた。
﹁ティティスさん、レミネールさん、彼女達をお願いします﹂
そう言い残して、少年とゴブリン王は部屋を出て行った。
389
残された二人は、部屋の惨状を改めて目にする。
﹁あ∼、とりあえず体を洗って、うーん、それからどうしたものか
ねぇ﹂
ゴブリン達から犯されるのが止まったと言うのに、部屋の女性達は
声も上げない。
その心が擦り切れてそうな様子に、どうしたものかと考え込むティ
ティス。
﹁主殿は何故、この人族の女性達を助けようとするのですかね?﹂
同じ様にどうしたものかと考えていたレミネールが、思ってた疑問
を口にする。
﹁うん? 坊やの恩人ってのが理由さね﹂
﹁人族への復讐を誓った主殿が女性達を助けると言う事は、その恩
人と言うのは⋮﹂
﹁優しくて強い女性だったらしいねぇ﹂
それを聞いたレミネールの表情が曇る。
少年は剣技でゴブリン王を圧倒し、ゴブリン達を配下に治めた。
最近はレミネールが魔法も教えて、さらに強くなってきている。
しかし恩人が女性だったからと言うだけで、女性を助けようとは甘
すぎるのではないか。
390
﹁大丈夫さね。その分強くなればいいのさぁ﹂
自分の心を見透かされたような言葉に、レミネールは驚いた。
ティティスの言葉はそこで終わる事なく続く。
﹁それに、女性に優しい方が私らには嬉しいじゃないかぃ? あん
ただって坊やと肌を重ねて︱︱﹂
﹁ティ、ティティス殿、今はこの女性達の事を考えましょう!﹂
レミネールの話題をそらす発言に、あいよ∼と軽く返事をするティ
ティス。
二人はゆっくりと女性たちの救出を開始した。
ワァァァ、オオォォォ。
オークの集落の中心で無数のオークに囲まれ2者が睨みあっていた。
一人は幼さの残る黒髪の人間、もう一人は2mを超えた赤い肌の巨
漢。
﹁死ね、小僧!﹂
赤い肌の巨漢︱︱オーク族の王は手に持った斧を少年へ振り下ろす。
オーク王の斧は真っ直ぐ少年の首を刎ねようとするが⋮。
﹁ぐっ、く、なんだこの黒い霧は!﹂
少年の体を覆う黒い靄がオーク王の斧を止めてしまう。
391
オーク王は幾度も斧を振り下ろし、少年を殺さんとする。
しかしその度に黒い霞によって止められ、少年に刃は届かない。
斧による攻撃が効かぬと理解したオーク王は、後ろに下がり距離を
取る。
﹁貴様、何者だ。その黒い物はなんだ!﹂
﹁これはボクの身を守る︻闇の衣︼だよ﹂
返事を期待していたわけではないオーク王は、淡々と答えた少年に
警戒する。
武器を何も持たない小僧は魔術士か。
とすれば攻撃が通らぬとは言え、距離を取ったのはまずい。
オーク王が距離を詰めようとした時、少年が軽く腕を上げた。
シュァァァ。
すると少年の影から3本の黒い刃がオーク王へと向かう。
﹁グアッ﹂
その黒い刃はオーク王の肌を裂き出血させる。
致命傷ではないが確実な傷を受ける。
﹁おのれぇ!﹂
392
怒りをもって少年へ突撃するオーク王。
しかし突如その体の動きが止まる。
﹁なん⋮だ。これ⋮は﹂
﹁お前の影を操って動きを止めただけだよ? ゴブリン王そうだっ
たけど⋮お前って肉弾戦だけなのか? 正直拍子抜けだよ﹂
つまらなそうにそう言うと、少年は腕を上げ黒い刃を生み出す。
刃の一つ一つは致命傷にならずとも、無数の刃によって動けぬオー
ク王は瞬く間に傷だらけになる。
﹁ま、まいった。我の負けだ﹂
一方的にやられ血を流すオーク王は敗北を口にする。
それを聞いた少年は、周りのオーク達へ顔を向けた。
﹁約定どおり、お前らの王にボクは勝利した。今後はボクが王だ。
お前らはボクの為に戦い僕の為に死ね!﹂
オォォォォ。
自分達の王が倒された事に憤怒する訳ではなく、上がったのは歓喜
の声。
ラミア、ダークエルフ、ゴブリン、その王とも言うべき者達を従え
ている少年。
その少年が自分達の王と成った事にオーク達は喜んだ。
その少年の目的が、今大陸を支配する人族達への復讐と知っていた
393
から。
﹁ティティスの姐御、旦那は大丈夫なんですかね?﹂
﹁あぁん? あんた程度が坊やの心配をするんじゃないよぉ﹂
ティティスはぺちぺちと王冠を外しているゴブリン王の頭を叩く。
﹁しかし、我も王の事が心配だ﹂
﹁魔法も使えないノウキン元オーク王が、主殿の何を心配するんで
すか﹂
レミネールにノウキンと言われ黙るオーク王。
4人が居るのは、法国の西にある廃都の入り口。
数百年前に滅びた国の首都で、現在は吸血鬼の女王が支配する死都
だ。
ゴブリン、オークを支配下に置いた少年は、次にこの死都の吸血鬼
を従える為に単身死都の中へと向かった。
最初は4人も共に向かうはずが、少年が一人で行くと言った為に入
り口で待っているのだ。
﹁今じゃ坊やは私らより強いからねぇ。年増吸血鬼と言えど余裕さ
ね﹂
394
﹁私とティティス殿を同時に相手にしても圧倒的でしたからね﹂
少年の新たな配下となったゴブリン王とオーク王と違い、二人の女
性は心から信じていた。
自分達が身を許した少年が、吸血鬼などに負けるはずがないと。
死都の城の中で少年と少女が相対していた。
﹁グールやスケルトン、それにレッサーヴァンパイアが徘徊するこ
の都の中をここまできたのは、そちが初めてじゃ﹂
玉座に座った赤いドレスを纏った少女が、少年に優しく語り掛ける。
﹁妾の前に立つ人間などいつ以来か。しかもそれが見目麗しい少年
とは。何か褒美を取らそう。言うてみるが良いぞ﹂
少女に顎で促されたからか、玉座の間に着てから一言も話さなかっ
た少年が口を開いた。
﹁ティティスに、死都に引き篭もりの年増だと聞いてたが意外と若
いんだな﹂
﹁妾の見た目は300年前から変わらぬからの。ふふ、妾に欲情で
もしたか? お主の様な見目麗しい少年ならば一夜の夢を見させて
も良いぞぇ﹂
銀の髪をした少年よりも年若く見える少女が、妖艶な笑い顔で少年
395
を誘う。
それに対し少年は苦笑しつつ言葉を返した。
﹁お前の力は欲しいけどね。年上趣味のボクだけど、さすがに30
0歳以上の婆さんには興味がないよ﹂
﹁ヴァンパイアロードたる妾に対する暴言、中々面白いものよの。
では少年、妾を少しでも楽しませておくれ!﹂
狂気を孕んだ微笑をして、少年へと襲い掛かる吸血鬼の女王。
﹁さて⋮。最強の魔物と言われたお前に勝てるか腕試しだ﹂
それを静かに迎え撃つ少年。
死の都で、最強の吸血鬼と魔王を目指す少年の戦いが始まった。
396
外伝 魔王様道中記︵後書き︶
セシリアさんがH堪能して孕んで出産して∼る間のゲーム主人公の
お話です。
真面目アレルギーが発症したので、物凄い場面カットカットカーー
ットしました。
軽く登場人物&魔物紹介
・少年︵ゲーム主人公な魔王様︶
現在レベル70。
女性に優しい魔王様。皇帝と並んで作中最強の子。
年上好きの14歳。
ティティスとレミネールとHしまくり。
吸血鬼女王とも戦闘後しまくり。精神的年上だったから?
・ティティス︵ラミアロード︶
レベル45。
薙刀や槍使い。肉弾戦も強い。
水系の魔法も得意な方。
口が上手で各種族との王との決闘をお膳立てしたのはこの方。
ちなみにショタコン。
・レミネール︵魔剣士︶
レベル45。
397
剣も魔法もお任せの真面目お姉さん。
魔王様に剣と魔法を教えたお師匠様。
剣と魔法を教えてる最中に、尊敬して甘えてくる魔王様に抗えず陥
落。
アルシアさんのお姉さんでもあります。
・ゴブリン王︵ゴブリンロード︶
レベル20。
武器による近接のみの方。
王ってより、人族にやられまくりのゴブリンの纏め役。
実は苦労人。
・オーク王︵オークキング︶
レベル20。
棍棒や斧が得意な脳筋様。
実情はゴブリン達と変わらず、オークを纏めるのが大変だった。
ひっそり王役を降りられて安堵してる。
・吸血鬼女王レイニー︵ヴァンパイアロード︶
レベル60。
魅了やら支配の魔眼持ち。
魔法だけじゃなく、爪やら武器による近接もいける。
見た目1桁でも実年齢3桁の幼女様。
吸血鬼に偶然なってから苦労しまくりの苦労人。
398
廃都に魔物を放ちまくって人族を追い払ってた。
引き篭もりの為、法国も放置。
魔王様に負けた後、さらに襲われ抱かれちゃう。
吸血鬼とは言えこの世界ではアンデッドではないので子供も作れま
す。
以上。
この世界の魔物は人族に比べ弱いので、皆弱め。
ゴブとオークの元王達は下手すると盗賊に余裕で負けるっ。
魔王様の元でレベル上げでもしないと、帝国のネーブルさん︵レベ
ル70︶一人に全員負ける。
真面目話は疲れたでありますよ⋮。トホホ。
399
第24話 お母さんは大変です︵前書き︶
ちょっと長くなりました。
400
第24話 お母さんは大変です
﹁はいはい、今換えるからね∼﹂
オギャァと泣く我が子のオムツを換える僕です。
二度目の妊娠から出産を無事に終え、今は育児が大変です。
二度目の出産も妊娠から3ヶ月ほどで産みました。
産まれた子供は、緑髪のエルフの女の子にピンク髪の淫魔の女の子。
そして金髪のダークエルフの女の子です。
ダークエルフって皆銀髪だから、金の髪は僕の影響だよね∼。
今回は男の子は生まれませんでしたが。
﹁中出しされた相手の子供を、100発100中で孕んでるよね。
気をつけよう﹂
6人居る我が子のオムツを順番に剥がしていきます。
そして離れてる場所にある換えの布を、影を伸ばして実体化させて
ひょいと取る。
あ、この世界のオムツは布オムツです。
紙オムツなんてありません。
﹁おぎゃぁぁ、おぎゃぁぁ﹂
﹁はいはい、アスター君、長男なんだからそんなに泣かないの∼﹂
401
テキパキと唯一の男の子のアスターに新しいオムツを履かせる。
﹁ンヤ⋮。オムツ交換っていうほのぼのシーンに合わない影が見え
たのねん⋮﹂
最近僕の部屋に入りびたりのリオが何やら言ってます。
﹁いや∼、影伸ばしてオムツ取るの楽でさ∼。よ∼っと﹂
﹁影を操るのは悪魔族の特技なのよん⋮﹂
二度目の妊娠でお腹が膨らんで動きにくかった時に、遠くの物取れ
ないかなぁと思ったら。
あら不思議、自分の影が伸びて実体化して物を取れました。
これも魔王と同じく影やら闇を操る魔母になったおかげだと思いま
す。
ゲームであった魔王の︻影の剣︼や︻闇の衣︼のスキルもあったし
ね∼。
﹁さーて、テースのを交換したら、次はディードとリットの交換し
なきゃね∼﹂
﹁ムヌーン。モリガンとフェイは私がやるのねん﹂
﹁あ、ありがと∼。オムツ交換も6人だと結構大変でさ∼。助かる
よ∼﹂
まぁモリガンとフェイは淫魔だから、パパなリオが手伝うのは当然
402
の気もしますが。
﹁妊娠期間が短かったり、産んだ子の魔力が異常に高かったり、赤
眼で影を操ったり⋮。セシりん人間じゃない気がするのねん﹂
僕の横でオムツを替えてくれるリオがぶつぶつ呟いてます。
セシリアって人間だと思ってたけど、実は違うのかな?
ステータスに種族って出ないからわからないんだよね。
まぁでも少なくとも。
﹁至って普通のパンピーな人間だよ∼?﹂
中身は日本印の一般人ですとも。
ペチャペチャ。パチュパチュ。
僕がラミューの割れ目を舐める音と、レムが僕の股に腰を打ちつけ
る音が聞こえる。
子供達がお昼寝中、二人の性欲の処理をしてます。
ラミューは僕の顔に座ってオッパイを吸っている。
レムは僕のお尻にオチンチンを突き入れながらオッパイに吸い付い
てる。
いつの間にか母乳で腫れた僕のオッパイを吸うのと、二人の性欲処
理が同時進行するようになりました。
403
﹁んはぁ、セシルさんのオッパイ凄く大きくなってますね﹂
﹁ペロペロ⋮ん。二度目の妊娠でさらに大きくなったみたい。張っ
てて結構痛いんだよね﹂
一言話してまたラミューの割れ目を舐め始める。
6人に授乳してもなお余る母乳のせいで僕の胸はパンパンです。
片手じゃ支えられないくらい大きくて、肩こりが最近酷い。
﹁んぐ、んぐ、んぐ、んっ、んぐっ、んぐっ﹂
僕の乳首を噛みつくようにしながら必死に腰を振るレム。
噛まれてるのと引っ張られてる乳首がすごい気持ちいい。
僕のお尻に突きいれてるおチンチンも遠慮がなく激しい。
締まってる時に遠慮なく引き抜かれると、お尻の肉が裏返ってる気
がします。
最近レムは僕にエッチなことをするのに遠慮がない気がする。
僕の時間が少しでも空くとオチンチンの処理をせがむし。
手じゃ満足できないらしく、口かお尻を要求してくる。
﹁セシル、お姉ちゃん、出ちゃう、出ちゃうよぉ﹂
﹁んふぅ、ん、んんんん﹂
お尻の奥に突き入れられたオチンチンから熱い物が広がるのを感じ
404
た。
腸内が火傷しそうなほどの熱さの余韻を感じていると、すぐにパチ
ュパチュ音がする。
﹁レムったら、セシルさんの母乳を飲んで減らすの忘れてる。仕方
ないなぁ。んむ﹂
ラミューが割れ目を僕にグリグリ押し付けながら左右のオッパイを
抱いてきた。
そして乳首を噛んで位置調整すると。
﹁頑張って同時に飲みますね。あむ、あむ、あむ﹂
二つの乳首を口に入れて甘噛みされる。
﹁ふむぅ、むふぅ﹂
両方の乳首をこりこり噛まれて感じてしまう。
ラミューに割れ目で口をふさがれてるので、声は上げられないけど。
﹁セシルお姉ちゃん、また、出すねっ﹂
レムが再度腸内射精をした。
お尻を通して、ビュビュっと最後の一滴まで中に出してるのがわか
る。
お尻や乳首が気持ちよいけど、僕は快感に集中できない。
その理由は簡単です。
レムってば、膣に入れて中出ししたがってるしね∼。
405
中出しされたら絶対孕む自信があります!
子供は好きだから孕んでもいいんだけど、今は子育てが楽しいので
す。
お腹大きくなっちゃうと子育てしにくいしね。
と言う訳でレムが膣に入れたら止めるために、快感に溺れられませ
ん。
﹁んっ、はぁ、んぅ、んっ。お姉ちゃんのお尻、気持ちいいよぉお﹂
二度も射精したレムが、最初と変わらないくらい出し入れしてる。
﹁ぺちゃぺちゃ、あむ、じゅるる﹂
﹁んはぁ、セシル、さん。急に吸わないでぇ、くださぃ﹂
ラミューの割れ目を舐めて吸う。
育児を手伝ってくれるラミューもしっかり気持ちよくさせなきゃ。
﹁お姉ちゃぁん、またでちゃうぅぅ﹂
レムが三度目の射精を僕の中でした。
その熱い精子を気持ちよく感じつつ思う。
レムって絶倫だよね∼。
6人の我が子と、自分の子のように思うラミュー&レムのお世話が
406
終わり一息つく。
﹁ヤハー。お疲れなの∼ん﹂
﹁プルプルプル﹂
すると部屋の影からリオが現れた。
ずっと部屋に居て、子育てや僕の肩こりその他のケアをしてくれる
スライムさんもねぎらってくれる。
﹁はぁ、レムはまぁ子供だから仕方ないとして、アルシアさんは育
児を全然してくれないなぁ﹂
リオですら結構手伝ってくれるだけに、夫に対してつい愚痴ってし
まう。
出産したらまた精子で溺れるくらいオチンチンで犯されると期待、
コホン、警戒してたのに。
それすらなくて、結構なセックスレスです。
﹁ンフ∼。アーシャーちゃんはなんだか最近忙しいのねん。ダーク
エルフの部隊訓練や実践経験の為、森に入っての魔物討伐してるの
よん﹂
﹁それはわかってるけどさ∼﹂
族長の代理らしいアルシアさんは、ただのエロイ巨乳ダークエルフ
ってわけじゃないのだ。
よく知らないけど、ダークエルフの町の諸々や他の種族との交流な
ど、色々あるらしいですよ。
407
﹁イヒヒヒ。好きな相手に構ってもらえなくて、寂しいのね∼ん?﹂
﹁そ、そんな事はないです。えぇ、ないですとも﹂
そんな事ありまくりですが。
旦那様と認識してる相手が、仕事で忙しいからって構ってくれない
のは嫌ですとも。
﹁プルプルプルプル﹂
﹁ん、ありがと。スライムさん。そうだよね。忙しくなくなったら、
嫌ってほどキスとかしてくれるよね﹂
子供を産んで旦那様大好きな新妻な自分に、ちょっと吃驚です。
いつからこんな乙女チックになったんだろう。
﹁アハ∼ン。6人も産んだのに、まぁだアーシャーちゃんの子供は
産みたいのねん? セシりんエロエロねん﹂
﹁それこそ、そんな事ないですってば﹂
ただちょっと、アルシアさんに抱きしめられてキスされつつ中出し
されたいって思ってるだけですとも。
パタパタと裸同然のエロイ格好で浮かびながら僕を見るリオ。
気のせいかその眼は真剣で、ちょっと怖い気がしました。
それは暖かい陽気の午後の事です。
408
﹁んがーーー、あーーー、むーーーー!﹂
﹁ンヒィ!? せ、セシりんが壊れた!?﹂
子供達を寝かせてスライムさんに任せた後、居間に着た僕は思わず
叫ぶ。
居間に居るのは僕とリオだけです。
お義母様はアルシアさんと同じく最近忙しくて居ません。
ラミューは家事で洗濯やら買い物やらです。
レム君は近所のお家へ遊びに行ってます。
﹁セ、セシりん、どうしたのん? 心の病なのん? 私でよければ
相談にのるわん﹂
上半身は乳首しか黒い物で隠してない淫魔に、慈母のような優しい
目をされました。
﹁くっ。僕は別に心の病とかじゃないよ! そう言うのは日本に置
いてきたよ!﹂
同じチームになって、メモを一切取らない新人の育成を任された元
同僚は元気だろうか。
3ヶ月その新人の面倒を見てメモを取らせるまで成長させた彼は、
胃から出血して会社を辞めていったが。
﹁二本? ンイ∼? オチンチンが2本欲しくなっちゃったのん?﹂
﹁優しい目で見てたと思ったら、淫魔らしくエロくボケた!?﹂
409
最近育児を一番手伝ってくれてるので忘れてたけど、リオってエロ
思考の人だったよね。
確かにアルシアさんがしてくれないので、エロ方面も不満はありま
すが。
﹁ずっと家の中に居て、ストレスが溜まりまくりんぐなのですよ!
って事で、ちょっと森で魔物に八つ当たりしてきます!﹂
﹁ンヘ!? ちょ、ちょっとセシりん﹂
イライラが頂点に達してる僕は、リオにそう言って家を出た。
子育てで夜中寝れない、昼も寝れない、ラミュレムのお世話もある。
スライムさんがケアとして全身マッサージしてくれるけど、ストレ
スで限界なのです。
﹁魔の森の魔物どもめ∼! 魔母となった僕の力を味わうが良いん
だよ!﹂
ヒャッハーと叫びながら、10mの高さの壁で囲われた町から僕は
魔の森へと駆け出した。
門番のお姉さんが、僕の叫びに引いて動けなかったのは気のせいだ
ろう。
﹁んぎぃ、ひっひっふぅ∼、ひっひっふぅ∼∼﹂
410
森に駆け出して1時間もしないうちに家のベッドの上で喘ぐ僕。
そのお腹は少し膨れていて、確実に中に何かがあります。
﹁セシル、またトレントに種子を埋め込まれるとか、そういう趣味
なんですか?﹂
妻のピンチだと言うのに、はっきりと呆れているアルシアさん。
﹁プルプルプルプル﹂
前回と同じくスライムさんが僕の膣から種子を出そうとしてくれて
ます。
﹁んひー、ひっひっふぅー﹂
何故こうなったかと言うとですね。
まず森に入って魔母となって覚えた魔法を撃ちまくりました。
エクスプロージョンやら、コメットやらと最強クラスの魔法をです。
どうやら魔母は前衛よりの魔王と違い、後衛よりの能力のようです。
影を操れるようになったからか、影を通して今回はトレントもはっ
きり認識できました。
魔法を撃った後は前回の事もあって、剣でトレントを気持ちよく切
り刻みました。
そこですっきりした僕は、疲れた体を横たえて︱︱そのまま寝まし
た。
で、気づいたら膣にトレントの触手が入ってて、プスリと刺されて
411
種付けされたわけです。てへ。
その後、魔法やらの爆音に気づいたアルシアさん率いるダークエル
フ部隊に救出されたのです。
﹁プルプルプルプル﹂
回想してたらスライムさんが悲しいお知らせを告げてきました。
﹁⋮スライム殿、それは本当ですか?﹂
アルシアさんが再度確認しています。
﹁プルプル﹂
スライムさんが肯定しました。
﹁既にセシルの体内で受胎してるので取り出せないと⋮?﹂
﹁﹁﹁⋮﹂﹂﹂
押し黙る僕、アルシアさん、スライムさん。
あ、事実を認識して気が遠くなる。
﹁プルプルプル﹂
﹁そ、そうですね。妊娠のスペシャリストのリオなら何とかできる
かもですね! リーーオーー!﹂
412
スライムさんが﹃リオなら何とかできるかも!﹄と言った瞬間飛び
出していくアルシアさん。
すぐにアルシアさんに連れられて来たリオ。
﹁リ、リオ∼∼。このままじゃ僕、裸の綺麗な緑肌の美人になっち
ゃうぅぅ﹂
﹁ンヤ。なんだか意外と余裕があるような気がするのねん⋮。ン∼、
今見てあげるから待っててねん﹂
そう言うとリオは僕のお腹に手を当てる。
するとリオの手を中心に、黒い影が僕のお腹からオマンコまで包む。
﹁ン、ン、ン、? おんやぁ?﹂
﹁ど、どうなのです? リオ! セシルはピチピチ緑肌美人になっ
てしまいそうですか!?﹂
﹁⋮⋮あんたら夫婦、意外と余裕があってげんなりなのねん﹂
なんでかげっそりした顔のリオです。
﹁エット∼。母体に寄生するのがトレントの種子のはずが、そうな
ってないのねん。普通に妊娠してるだけなのよん﹂
﹁えーと、つまり?﹂
﹁ニハハ。トレントの子だと思うけどねん。普通に妊娠して出産で
きると思うのよん。セシりんは大丈夫よん﹂
413
リオの言葉に皆で安堵する。
しかしすぐにアルシアさんがリオに質問した。
﹁トレントの子を妊娠って大丈夫なんですか?﹂
﹁⋮大丈夫だと思うのよん﹂
リオにしては珍しく、低い声で静かに言った。
何かあればすぐにでも手を打つとリオが確約したので、その日は解
散になりました。
で、その3日後。
﹁ひぃー、生まれる、生まれるぅうう﹂
膨れたお腹から子供が産まれそうな僕ですよ。
トレントの子を妊娠した上に、3日で出産とかどうなの!?
﹁プルプルプル﹂
スライムさんがいつも通り助産婦してくれてますが、正直不安です。
だって今回はトレントの子って⋮。
﹁セシりん、怖がらないで、魔物の子は私の子を既に産んでるのね
ん。だから、その、愛を持って産んでほしいのん﹂
リオが真剣に、ちょっと悲しそうに言ってくる。
414
ダークエルフの人達は自分達のことを魔物とは言わない。
リオにしても、本当は自分を魔物とか思ってないんじゃないかなぁ。
淫魔も普通に話したり笑ったり出切る人間と変わらない感じだしね。
僕を安心させる為に言ってくれた言葉に少し元気が出る。
﹁うむ∼。そだよね! 子供に魔物とか関係ないよね! 僕の子と
してしっかり産むよっ﹂
自分でも変な考えな気がするけど、気にしたら負けです。
魔母になった影響な気がしないでもないけど。
﹁ひっひっふ∼。ひっひっふ∼﹂
﹁プルプルプル﹂
﹁う、産まれるのねん!﹂
産むと決めたらするりと生まれた。
スライムさんが産まれたばかりの子供を僕に見せてくれる。
﹁緑の肌だけど普通の赤ちゃんだね﹂
眼を瞑って少し動く緑色の赤ちゃん。
普通に手足があって耳も鼻も口もある可愛い子です。
﹁アルラウネ⋮﹂
リオが呟くように言う。
415
この日僕は、アルラウネの赤ちゃんを産みました。
アルラウネの赤ちゃんを産んだ日の夜、部屋に何かが入ってくる気
配がした。
音もなかったので影に入ったリオだと思う。
子供達がいるのに、妙に静かな部屋の中で僕は体を起した。
気配でリオが居るだろう方を向く。
そこには黒い法衣のような物を纏って跪く誰かが居ました。
﹁我ら悪魔族の母にして淫魔の祖、数多の魔物の子を産み育てたリ
リス様と同じ力を持ちしセシル様。貴女に忠誠を誓う為に、このよ
うな夜分にお邪魔致しました﹂
ピンクの髪に角を生やし、その声もよく知ってる物なんですけど⋮。
﹁リ、リオ?﹂
﹁ハッ!﹂
僕が声かけると、ピシっとした声で返事がきました。
いつもの裸みたいな格好ではなく、法衣で全身を覆って声もおちゃ
らけてないので違和感がすごいです。
﹁あの∼、リオさん? どういう事でしょうか∼?﹂
ちょっとビビリながら伺ってしまう。
416
﹁今は亡きリリス様は、魔物と交配し、その種族の上位とも言える
子を出産したと聞きます。我ら淫魔も、元々は下級悪魔インプと交
配したリリス様が産んで生まれた種族です。トレントと交わりアル
ラウネをお産みになった貴女様は、我らが祖のリリス様の生まれ変
りではないかと思います﹂
この世界に来て誰よりも真面目に話すこの人は、本当にリオなんで
しょうか。
物語の中の忠義の騎士のような雰囲気を出すリオに、ちょっと気圧
されてる僕です。
﹁⋮⋮だから、僕に忠誠を誓うと?﹂
﹁祖たるリリス様と同じ力をお持ちなセシル様に忠義を誓うのは当
然です﹂
う、うん。よく分からないけど魔王に従う魔物って感じかな?
いきなり真面目なリオに吃驚で、忠義やら何やらはどうしていいか
わかりません。
が、そろそろやらなければいけない事が。
﹁じゃあ、僕に忠誠を誓うリオにお願いがあります﹂
﹁ハッ! どのような事でもなんなりと!﹂
真剣な顔で言葉を待つリオ。
僕はゆっくりと命令を告げる。
417
﹁そろそろ子供達が連鎖的に泣いて起きるからさ。授乳とかオムツ
替え手伝ってね﹂
﹁⋮セシりん、それはちょっと台無しなのよん﹂
僕の命令にいつもの調子に戻るリオ。
﹁いやぁ、でも実際結構切実でさぁ。今日アルラウネちゃん産んだ
ばかりで疲れてて、本当に手伝って欲しいんだよね∼﹂
軽く言ってるようだけど6人、あ、今日から7人か。
誰かが泣くと、それに釣られ全員起きるから大変なんですよ。
﹁ンフ∼。了解なのねん﹂
その夜から、忠義のお手伝いさんを手に入れた僕でした。
﹁ホラホラ∼。セシりん、皆オッパイ待ちなのねん。きりきり母乳
を出すのね∼∼ん!﹂
夜なのに凄く元気なお手伝いさんです。
418
第24話 お母さんは大変です︵後書き︶
やっとこリオが仲間になったのです!
そしてレアモンスターアルラウネちゃんが生まれました。この子は
活躍するのであります!
外伝と同じ様に、ちょっと人物&魔物紹介
・セシル 本名セシリア︵魔母︶
レベル61
魔物の母として異種交配&上位種族出産技能あり。
元剣聖だけに、近接と魔法の遠距離がいける。
常時発動スキル
︻剣装備可能︼︻剣装備時攻撃力上昇︼︻物理回避上昇︼︻物理防
御上昇︼︻剣技習得︼︻二刀流︼
︻闇耐性︼︻光耐性︼︻魔力自動回復︼
任意発動スキル
︻武器破壊︼対象の武器破壊
︻防具破壊︼対象の防具破壊
︻影の剣︼自分の影から剣を作り出し投げつける
︻闇の衣︼黒い霧で体を覆い全てのダメージ軽減 発動中魔力消費
︻ヴァルキュリア︼自分の分身を任意で数体作り出す 発動中魔力
消費
︻魅了の魔眼︼リオと同じ赤眼な魔眼。でも主人公は使わなそう
419
エロ系スキル︵主人公は認識してないゲーム外スキル︶
︻異種交配︼どんな種族でもバッチ恋なスキル。
︻上位出産︼たまに交配した種族の上位種が生まれるよ!
︻誘惑の瞳︼異種に興味がないオスも誘惑しちゃうよ!
︻精液吸収︼精液を摂取するとHPとかMP回復。
︻淫靡なる体液︼愛液に媚薬効果。レム君やアルシアさん絶倫の正
体。
︻生命受胎︼中出しされたら100%妊娠できます!
ステータスと称号は今回省略。
たぶん能力は高いんだろうけど、慢心と言うか⋮お気楽すぎて、戦
いでは弱い。
・アルシア︵魔剣士︶
レベル35
剣と魔法をお任せのエロイ巨乳様。
エッチしたり魔の森で魔物を倒したりで成長中。
セシルさんの事が好きで好きで、ラミュ&レムに嫉妬してるのは内
緒。
自分以外の子を産むセシルさんに複雑な思いがあるけど、大好きな
ので我慢。
・ラミュエル&レムリア︵治癒術師&魔道士︶
レベル15&27
二人ともセシルさん大好き。
特にレムは、夜にこっそり一緒に寝たりもしてる。
420
ラミューは家事に忙しいし、真面目なので遠慮気味。
レムは暇があればセシルのオッパイを吸ってる。
洗濯物を畳むセシルオッパイを吸ったり、横になってるセシルオッ
パイ吸ったり。
たまにリオやアルシアさんともしてたり、近所のお姉さん方ともし
てる。
でも一番好きなのはセシルお姉ちゃんなので、セシルとお風呂も一
緒に入ってる。
パパになった自覚はない。
・スライムさん︵ブルースライム︶
レベル1
セシルの裸をいくら触ってもレベルが上がらない。
何故かって言うと、エッチではなくケアだから。
ラミューと並ぶ常識人。
いつもみんなのお世話をしてる。
特にセシルはスライムさんが居なかったら、たぶん肉奴隷か苗床に
なってた。
・エイン︵盗賊︶
レベル15
出番ないけど頑張ってる。
帝都やら沼地やらワーム山やらを回って冒険中。
今のセシルを見たら、たぶん気が抜けて立ち直れない。
421
レズじゃないけど、お姉様大好き娘。
・リオティネック︵サキュバス︶
レベル60
状態異常や闇系魔法、魅了や仲間の能力コピーと実に多彩な能力持
ち。
でも魔母なセシルの能力コピーは出来ないのでコピー能力は微妙か。
淫魔は賞金首なので、淫魔の仲間は凄く少ない。
実は寂しがり屋で、頼ってくれる人が居れば頑張って力を貸す。
リリスと同じ魔母なセシルに仲間を作ってもらいたいと思ってる。
作るって言うか産んで貰いたい。
実は料理上手で、掃除洗濯も完璧。
裁縫や手芸も出来て、子育てにも精通してる。
淫魔さん達は惚れてくれた相手に尽くすタイプなのです。
・子供達
闇エルフ男子 アスター
闇エルフ金髪女子 テース
エルフ女子 ディード
エルフ女子 リット
淫魔 モリガン
淫魔 フェイ
アルラウネちゃん名前未定
セシルさんの称号とかで、全員チート能力。
422
セシルさんは全員大好きだけど、将来好き好きしてくる母にうんざ
りする子供達。
名前はセシルさんが全員考えた。
423
第25話 セシルさんの日常︵前書き︶
今回はエッチも話の展開も特にないです。
これからさきの展開へ向けての最後の日常みたいな∼。
424
第25話 セシルさんの日常
アルラウネのアウラちゃんを産んでから一ヶ月、今回は僕の生活を
紹介します。
朝。
日が出て間もない6時ごろに、のそっとベッドから起き上がります。
うつらうつらとしながら布オムツとオッパイの準備を整えます。
﹁おぎゃぁ、おぎゃぁ﹂
僕が準備したのを待ってたかのようにアスターが泣き出しました。
泣いてるアスターを胸の上に置くように抱っこします。
何故胸の上に置くようにして抱くかですと?
3回目の出産後、僕の胸はバスケットボールのように大きくなり、
そうしないと抱っこできないからです。
抱っこしてあやしつつ、僕のベッドの上に寝かせてオムツを替えて
∼と。
オムツを替えたら胸の横に来るように抱っこしてオッパイをあげま
す。
﹁おぎゃぁ、おぎゃぁ﹂
425
﹁あ∼、モリガンも起きたかぁ。スライムさん、ちょっとあやしと
いてー﹂
﹁ぷるぷるぷる﹂
アスターが授乳中なので、モリガンの面倒はスライムさんに任せま
す。
﹁いつもいつもありがとね∼﹂
﹁ぷるぷるぷるぷる∼﹂
気にしないで∼と優しく返事をしてくれます。
子供のお世話の為に、いつも一緒の部屋に居るスライムさん。
ありがたい事です。
﹁アスター君が終わったからモリガン預かるね∼。⋮あ∼、ディー
ドも起きたかぁ﹂
寝不足の中で順番に6人分のお世話をするのが、朝の日課ですよ。
昼。
子供達がお昼寝してくれてる間に、ご飯食べたり洗濯物を畳みます。
干すのとかはラミューやお義母様に任せてます。
現在の僕の家事は洗濯物を畳む。これだけです!キリッ。
426
﹁ママ、畳んだ﹂
﹁お∼、ありがとね。アウラ。いい子いい子∼﹂
﹁あやや﹂
畳むのを手伝ってくれるアウラの頭を撫でると、はにかんで照れる
のが可愛いです。
﹁ンヤ∼、アルラウネの子が洗濯物を畳む光景を見るなんて、長生
きはするものねん﹂
﹁しかしアウラって育つの早いよね∼。まだ小さいのに喋れてお手
伝いもしてくれて、天才かも!﹂
﹁ヌム∼ン。親馬鹿発見なのねん。淫魔やダークエルフやエルフに
比べ、アルラウネが成長早いだけなのよん﹂
アウラは生まれてから3週間もしたら、人で言う7歳くらいの見た
目になったのです。
人間に近い種族は成長が遅くて、普通の魔物の子は成長が早いらし
い。
と現在パタパタ浮かんで目にクマ作ってる淫魔さんが教えてくれま
した。
﹁ンイ∼。セシりん、アウらん。畳み終わったし、私は眠いから寝
てくるのねん﹂
﹁ゆっくり寝てら∼﹂
427
僕に忠誠を誓った日から、子育てをスライムさんと一緒に手伝って
くれるリオ。
そのせいで夜しっかり寝れず、眠たいんだろうね。
洗濯物を畳み終えてぼ∼としてたらラミューが来ました。
﹁セシルさん、子供達が起きたから来て欲しいってスライムさんが﹂
﹁あ∼い。アウラ、畳んだの仕舞ったら遊んできていいよ∼﹂
﹁ん、私も皆のお世話する﹂
目をキラキラさせながら両手をグーにしてやる気を見せるアウラ。
小さいのに色々手伝ってくれて偉い子です。
﹁ラミュー、洗濯物仕舞うのアウラと一緒にしてあげて。アウラは
終わったらママの部屋に来て皆のお世話を一緒にやろう﹂
﹁﹁はい﹂﹂
素直で可愛いステレオの返事を聞いて自分の部屋に向かう。
昼間もオムツ替えや授乳で大変です。
﹁そう言えばレムは何してるんだろ?﹂
最近僕やリオの疲労を見てか、エッチな事をお願いしてこない。
レムも成長して落ち着いたのかなぁ∼。
428
夜。
﹁セシル∼、やっと帰れましたよ! お帰りのキスをしましょう!﹂
﹁はいはい、疲れてるからキスだけね∼﹂
最近忙しくて朝から夜まで家に居ないアルシアさんが妙にテンショ
ン高い。
正面からだとお互いの胸が当たってキス出来ない︵主に僕の爆乳が
原因︶ので、横からキスをしてくる。
﹁くっ、舌を入れさせないとはやりますね﹂
﹁僕はさっきやっと皆の授乳が終わったばかりで疲れてるんだよ∼﹂
夜の寝る前の授乳は多めに飲ませています。
そうすると夜起きないので少し楽だからです。
まぁ、何人かは起きるんですけど。
﹁仕事から帰った夫を労ってキスやエッチくらいしてもいいでしょ
うに﹂
﹁うっかりエッチして子供がこれ以上出来たら、僕は過労で死ぬ気
がする⋮﹂
スライムさんとリオに、ラミューやお義母様が手伝ってくれてなか
ったらすでに倒れてる。
﹁アルシアママ、発情ダメ﹂
429
﹁ア、アウラ。ち、違うんですよ。これは発情ではなく、愛情でし
て﹂
﹁ンガ∼。アーシャーちゃん、帰って玄関でエロい事言ってるんじ
ゃないのねん。ご飯できてるから皆で食べるのよん﹂
アウラとリオに諭されて、トボトボと武器やら仕舞いに自室へ向か
うアルシアさん。
小さいアウラと淫魔のリオに発情とかエロと言われて凹んだと見た。
僕とアウラは食卓へ向かう。
アルシアさんを待ってる間に家族で雑談をします。
﹁レム、最近僕のところに来ないけど何してるの?﹂
﹁うんとね。近所のお姉ちゃん達と遊んでる﹂
エルフのレムもすっかりダークエルフの町に馴染んでるね。
此処の所レムは僕の多すぎる母乳を吸う以外は家に居ません。
﹁最近セシルお姉ちゃんやアルシアお姉ちゃん、リオお姉ちゃんも
忙しいみたいだから外で遊ぶようにしてるの﹂
レムの気遣いがとても嬉しいです。
しかし僕とリオは子育てで忙しいけど、アルシアさんって何でここ
最近忙しいんだろう。
僕が来たばかりの頃は割と暇そうだったのに。
430
知ってそうな、同じく最近忙しそうな人に聞きますか。
﹁お義母様、アルシアさんって何で忙しいんです?﹂
﹁レミネールから色々知らせが着てね。その準備で忙しいのよ﹂
何の準備でしょうか︱︱と聞こうと思ったらアルシアさんが来まし
た。
﹁お待たせしました。では早速食べましょう!﹂
﹁﹁﹁﹁﹁﹁いただきます﹂﹂﹂﹂﹂﹂
夜はスライムさんを除く全員で一緒に食べます。
スライムさんは僕の部屋で子供達と一緒に居てくれてます。
この時間だけが僕が気が休まる時間です。
スライムさんに感謝しつつ、今日も美味しく晩御飯を食べるのでし
た。
僕が子育てに忙殺される忙しい日々を送っていると、ある日アルシ
アさんがこう言いました。
﹁客人が来るので、家を掃除しといてくださいね﹂
そう言った瞬間、僕とリオが頬を引っ張り涙目にしてやりましたが。
431
今日はその客人が来る日です。
﹁ほえ∼、お客さん遅いね∼﹂
﹁ンム∼。お出迎えに玄関前で待ってると眠くなるのね∼ん﹂
﹁リオママ、寝るならベッドもって来る?﹂
﹁フワァァ、まだ大丈夫なのよ∼ん﹂
リオが大丈夫と言ったら、ちょっとがっかりするアウラ。
もしそうするとか言ったら外にベッド持って来る気だったのかが気
になるお母さんですよ。
歓迎用の料理を作ってるラミューとお義母様に、それのお手伝いの
レム。
子供を見てくれてるスライムさん。
客人を迎えに行ってるアルシアさん。
それらを除く僕、リオ、アウラで待ちぼうけです。
5分ほど良い陽気の中で立ってると︱︱
﹁すぴー、すぴー⋮﹂
﹁ンハ!? セシりん、起きるのねん! 立ちながら寝るとか、ど
うやってるのよん!?﹂
﹁⋮ハッ!? あ、あれ? 僕寝てた?﹂
432
﹁ママ、立って寝てた。すごい﹂
立って寝るのは電車通勤のサラリーマンの必須技能だからねっ。
電車に乗ってたあの頃が懐かしい。
僕が恐怖の満員通勤電車を思い出していると、何人かを引き連れた
アルシアさんが見えた。
眠さの中、ぼーとアルシアさん一行を見てると赤い髪の人がこっち
へ駆けて来た。
近づいて来てからわかったが、それはよく見知った女の子だ。
﹁エ、エイン、なんでここに!?﹂
僕がエインに驚いて大声を上げると、彼女も負けずに大きな声で告
げてきた。
﹁お姉様大変です! このままでは戦争が始まります!﹂
﹁え?﹂
﹁魔王の軍勢と人族の戦争が始まってしまいます!﹂
そんな事を告げてきました。
433
第25話 セシルさんの日常︵後書き︶
さて、現在のセシルさんの称号。解説付き。
□M属性:性奴隷の資質あり 体力+50 賢さ−100 精神−
100
元々Mの気があって、エッチで痛くされて気持ちよくなると貰え
る称号。
□裸族:防具なしの場合、被ダメージ大幅減少 賢さ−50 精神
−50
何かで多少隠れていても裸と言える状態なら発動する。
エッチの時はこの称号のおかげで痛くされても肉体的ダメージが
少ない。
□露出狂:防具なしの場合、攻撃力に大幅ボーナス
こっちは防具と言えるほどの装備をしてなければ発動。
裸になる必要はないんだけど、セシルさんは全裸で発動と思って
る。
□博愛主義:好感度上昇時にボーナス 魅力+5
ゲームでもあった称号。ぶっちゃけ種族関係なくエロいプレイヤ
ーへの称号。
□快楽主義:H行為での快感にボーナス 賢さー10 精神ー10
快感に溺れると貰える。拷問で正気失ってた時にゲット。
痛みより快感が増幅されるので∼Mなセシルさん的には微妙?痛
いほうがいい?
□被虐嗜好:痛みで得られる快感にボーナス 体力+50
痛みを痛みと認識した上で気持ちよくなる、まさにMの為の称号。
H行為をする事で仲間の強化が可能 精神+5
快楽主義と微妙に相殺されてM女なセシルさんは困っちゃう?
□性処女:聖処女
434
0 魅力+20
膣挿入されても処女膜がある場合に貰えます。スライムさんの治
療で偶然ゲット。
この称号のおかげで、レム君が異様にレベル上がってる。毛も生
えてないのにっ。
□痴女:猥褻行為を好む女性
普通に痴女。
□新妻:結婚相手の側に居ると各ボーナス+
アルシアさんが見える範囲に居ると、新妻パワーでスーパー奥様
に!
□性母:聖母 胎児の能力大幅強化 魅力+100
妊娠しても処女膜がある場合に貰えます。
ヒールで処女膜治すセシルさんだから貰えたともいえます。 産んだ子が歴史に名が残る程の英雄レベルの何かを持って生まれ
ます。
□魔母:魔の母 妊娠期間大幅縮小 魅力+100
魔物の子を孕んだらゲット。アルシアさんとリオの子を孕んだ為
に貰えた。
もし妊娠しなければ魔王の称号と職業魔王になったのです。
魔王の女性版って感じで、こっそり隠しプロパティで子供強化も
あり。
□ミルキィウェイ:母乳の量を大幅増加効果
セシルさんがゲットしてるのを認識してない称号。
育児で忙しくてステータス見てないから。
子供への授乳以外での母乳消費量が一定を超えると貰えます。
母乳が大量で張って痛いのを、ラミュ&レムに吸ってもらってた
のが逆効果に。
殆どの称号は、同じ事をしてもセシルさん以外はもらえません。
435
元プレイヤー特権です。セシルさん大喜びですね。
さて次回は、ゲーム的に言うと選択肢ありの分岐点。
オチンチンも受け入れてエッチに妊娠に出産子育てと、女性的生活
満喫してたセシルさん!
次回は魔王様を知ったセシルさんはどうするのか!
協力するのか、あるいは魔王様を倒して自分が魔王に!?
そろそろ終焉に向けて動き出すのですよっ!
436
第26話 死都への道︵前書き︶
今回はちょっと長くなった上に、エロがないです。
437
第26話 死都への道
寂れて荒廃したかつての大都市の入り口。
過去に栄華を極めたと思われる大きな門も壊れ崩壊している。
その先に見える家々も朽ちてない物はないだろう。
だが、その朽ちたはずの町並みからは想像できないほどの瘴気が町
を覆っている。
外部からの侵入を拒み、侵入者を殺さんとする悪意に満ちた廃都。
魔物系ユニットで最強クラスの吸血鬼の女王が支配する死の都。
その入り口に僕ら5人は立っている。
﹁ンフフフフ。魔王を倒して、セシりんを新たな魔王にするのよ∼
ん!﹂
﹁やは∼。成功報酬の為にも、私もがんばるかねぇ。ふっふっふっ﹂
﹁リオとフェシス殿に負けませんよ! セシルの願いの為に、私こ
そ大活躍します!﹂
僕と共に来て横に立つ3人が、雰囲気に合わないほどのやる気を漲
らせている。
リオは僕を新たな魔王にしたいようです。
フェシスさんはリオと交渉して一緒に来てくれたけど、何か報酬を
438
約束されているのか。
アルシアさんは二人に対抗してるんだろうなぁ。
﹁ママ、ここに魔王が居るの?﹂
一緒に来た最後の1人のアウラが、目をキラキラさせて聞いてきま
す。
﹁あ∼、うん、居るらしいよ?﹂
﹁そっか。楽しみ。魔王退治﹂
大人3人ほど声のテンションは高くないけど、ママは見逃してませ
んよ。
しっかり両手をグーにして握り締めてるのを。
﹁ムッフ∼。さぁ∼行くのよん!﹂
リオの号令で僕らはゆっくりと死都へと入った。
自分よりテンションの高い人達に囲まれて、僕は若干やる気が失せ
ていましたが⋮。
このままではまずいと、自分のやる気を出す為に、ここに来た理由
を思い出す。
何故僕らが死都へと来たかと言うと︱︱︱
思わぬ再開を果たした僕とエイン。
439
客人として来たエイン達を自宅で歓迎しつつ、僕の今までの話をし
た。
ネーブルに捕まってから今までの全てを話したんだけど⋮。
﹁えーと、皆大丈夫?﹂
話終わると、テーブルにゴンッと頭をぶつけて下を向いたままのエ
イン。
エインと一緒に来たらしいダグラスさんにトラさん、リューさんも
虚ろな目で天井を向いてる。
﹁あっはっはっはっ。最強に成るとか言って出てったと思ったら、
7人の子持ちになってるとはねぇ﹂
一人だけ大笑いしてるのは、エイン一行を案内してきたラミアのフ
ェシスさんだ。
ちなみにフェシスさんは人間形態で、黒髪長髪の和風美人姿です。
﹁そう言えば僕って、最強になるとか言ってフェシスさんとお別れ
したんだっけ⋮﹂
﹁拳を握りながら﹃僕、最強を目指す事にするよ!﹄って言ってた
ねぇ﹂
何と言う黒歴史。
子持ちの今となっては、最強目指すとか言っちゃう過去の自分が恥
かしすぎる。
440
﹁エインたちは僕を探して来てくれたってのはわかるんですが、フ
ェシスさんはただの案内できたんですか?﹂
僕の羞恥心からでた露骨な話題がえです。
﹁ん? あぁ、私はダークエルフとの打ち合わせに来たんだよぉ﹂
﹁打ち合わせ?﹂
﹁そう! そうなんですよ! お姉様!﹂
テーブルに突っ伏してたエインが急に顔を上げた。
額には真っ赤な跡が残ってる。
﹁お姉様! このままでは魔王の軍勢と人族の戦争と言う、御伽噺
のような事態になってしまいます!﹂
エインの言葉に、膝上のアウラがピクンと反応した。
そして目をキラキラさせて僕に向かって質問してきた。
﹁ママ、魔王って本当に居るの?﹂
アウラにはお話として、よく日本の漫画やゲームの話をしている。
ファンタジーな世界繋がりと言う事で魔王が出る話もよくしてた。
だから魔王に一種の憧れでも在るのかな?
﹁う∼ん、どうだろうね∼? アウラは魔王が居たらどうしたいの
?﹂
441
﹁倒して勇者になる﹂
アルラウネだから魔王よりと思ったら、憧れてたのは勇者のほうで
したか。
﹁そっかぁ∼。アウラは勇者になりたいんだぁ﹂
﹁うん﹂
うちの子は、清く正しい勇者に憧れるなんて。
真っ直ぐ育ってて素晴らしいです。
﹁あの∼、お姉様。母娘団欒はいいんですが、私の話も真面目に聞
いて欲しいです﹂
エインが、アウラと話す僕をジト目で見つめてきた。
再会してすぐに呆れられている気配がします。
﹁あ、え∼と、あれ、うん、なんだっけ?﹂
﹁ハァ∼∼∼∼⋮。フェシスさん、私の代わりにお姉様に説明して
ください⋮﹂
そう言うとエインはテーブルにべったりと顔をつけて突っ伏しまし
た。
対面に座るダグラスさん達男衆も、こっそり溜息をついてる。
フェシスさんが、ククッと楽しそうに笑いながら、エインの代わり
に説明を始めてくれました。
442
﹁私らラミア、それにダークエルフ、ゴブリン、オーク、それと死
都の吸血鬼を配下に治めた魔王様がいるのさぁ。で、その方が人族
相手に戦争をやろうとしてるってことだよぉ﹂
﹁ほほぅ⋮﹂
﹁んでぇ、さっきのあんたの質問を詳細に返答するとぉ。私はダー
クエルフと戦争についての諸々の打ち合わせと、そのついでにこの
譲ちゃん達をあんたのとこまで案内してきたのさぁ﹂
魔王。
この世界でこの時期に魔王となる者というと、カオスブレードの主
人公の事だろう。
しかし解せない。
セシリアが死んでから約1年しかたってない。
ゲームの時は、1年程度では主人公のレベルは20前後のはずだ。
だと言うのに、ラミア、ダークエルフ、ゴブリン、オークはまだし
も、あの吸血鬼を配下に?
確か吸血鬼レイニーってレベル60だったと思う。
1年くらいしか修行してない主人公に勝てると思えないんだけど。
ゲームの時と違い、倒す以外で仲間にでもしたのかなぁ?
﹁打ち合わせに来る前に連絡したら、ダークエルフの町に人間とエ
ルフが住んでるって聞いてねぇ。気になって名前を聞いたらセシル
って言うじゃないかぁ。だもんでぇ、丁度うちのとこに居たエイン
のお譲ちゃん達もつれてきてやったってわけさぁ﹂
魔王について考えてたら、フェシスさんが追加で説明してくれた。
443
﹁あれ? でも魔王って人族と戦争しようとしてるんですよね? エイン達を連れてきて大丈夫なんですか?﹂
﹁大丈夫大丈夫、男連中にはちょ∼っと協力して貰ったからねぇ。
それでラミア族としては問題なしなのよぉ﹂
﹁協力?﹂
ダグラスさん達を見る。
すると視線を彷徨わせ僕と目を合わせないようにしていた。
﹁⋮⋮お姉様を探して、帝都のお城に侵入したり、沼地でラミアに
囲まれたり、ワームの生息する山に探しに行ったり⋮。その後また
沼地に行ってフェシスさんにお姉様の行方を聞いたら、ダークエル
フの所にいると聞いてきたんです﹂
﹁そ、そうなんだ﹂
顔を上げずに、すごい疲れた声でエインが教えてくれた。
僕を探して大冒険をしたようです。
帝都のお城とか、レベル80の皇帝様の居城によく侵入したね⋮。
﹁⋮フェシスさんから、魔王が人族と戦争するつもりだと聞いて、
お姉様はもしかして利用されてるのではと思って焦ってきたんです
が⋮ふっ⋮﹂
チラっと僕の膝上のアウラを見て力なく笑うエイン。
﹁いやその⋮色々ごめんね?﹂
444
必死に僕を探してくれてたんだろうなぁ。
その間僕は、美人の旦那さんやリオやラミュ&レムとエッチしまく
り。
そして可愛い子供達に恵まれて⋮謝るしかないね!
なんとなく気まずい雰囲気でいると、どこかに行ってたアルシアさ
んが部屋に入ってきた。
﹁フェシス殿と他の客人方、セシルと積もる話もあるかもしれませ
んが、部屋の用意が出来ました。疲れているでしょうから少し休ま
れては?﹂
アルシアさんの言葉で、色々疲れてたっぽい皆は一旦休む事になり
ました。
フェシスさんとエイン達を交えて夕飯が終わり、今僕は自分の部屋
に居ます。
部屋にはスライムさんが居て、子供達は既に寝ています。
アウラだけは子供用ベッドではなく、スライムさんの上で寝てます。
子供達が寝たのを確認した僕は、静かに部屋を出ました。
向かう先はアルシアさんの部屋です。
コンコンコンッとノックをしてから、ゆっくりドアを開き入ります。
445
﹁アルシアさん、寝てる∼?﹂
部屋にゆっくり入ると、アルシアさんはベッドで寝ていました。
裸で掛け布団がずれて、巨乳と大事な所が丸見え状態で。
﹁アルシアさんって、銀髪巨乳の美人さんなのに、細かい所が少し
残念だよね﹂
思わずそう呟いてしてしまう。
自分がエッチな気分になると、僕を無理矢理犯すし。
子育ては手伝ってくれないし。
﹁ンフ∼。アーシャーちゃんが残念美人さんなのは仕方ないのねん﹂
﹁うわ!? リ、リオ﹂
僕の呟きに返答があって吃驚した。
気が付いたらリオが僕の横に浮かんでいました。
﹁セシりんが部屋から出て行ったので、ついてきたのよん﹂
﹁そ、そうなんだ﹂
リオは寝るときは影の中に入って寝る。
僕が部屋を出た時に、影の中に入ったまま付いてきたのか。
﹁ン∼ム。セシりん、夜這いなのねん? 夜這いならアーシャーち
ゃんにチンポ生やす?﹂
﹁夜這いじゃないよ。だからアルシアさんにオチンチン生やすのは
446
やめてね﹂
真面目な話をしにきたのに、アルシアさんにオチンチン生やされた
ら⋮。
絶対孕まされる。
﹁ンヤ∼。だったら何しに、真夜中にアーシャーちゃんの部屋にき
たのん?﹂
﹁あ∼、魔王について話したいから、かな?﹂
カオスブレードのゲームをしてた僕は、魔王軍の今後を知っている。
魔王ルートはぶっちゃけベリーハードモードだ。
人族に比べ配下は弱い。
装備も弱い。
各ステージも難易度が高い。
人族全体を敵に回すものだから、法国の聖女、連邦の猫姫、帝国の
皇帝を一度に相手にするステージも在る。
聖女はレベル70、猫姫もレベル70、皇帝はレベル80。
レベルが高い上にそれぞれがユニーク武具を装備している反則共だ。
魔王ルートをやるなら、2週目以降のアイテム持ち越しでやらない
と無理。
もしこのまま主人公の魔王が戦争を仕掛けたら⋮。
負ける未来しか僕は想像できない。
447
だから僕としては、人族相手に戦争を始めない様にどうにかできな
いかアルシアさんに相談に来たのだ。
﹁って事で、アルシアさ∼ん、お∼き∼て∼﹂
ユサユサとゆすっても一向に起きない。
僕がちょっと困っていると、リオがアルシアさんの上に移動した。
そしてアルシアさんの股間に手を伸ばすと︱︱
﹁ムヌー。セシりんが起きてって言ってるんだから、さっさと起き
るのよん!﹂
﹁ヒギィィィ!?﹂
︱︱アルシアさんのクリトリスを思い切り引っ張った。
すごい引っ張ったから痛そう。
だけどあの痛みって僕の場合、頭が真っ白になるくらい気持ち良さ
も感じちゃうんだよね。
ちょっと羨ましく見ていると、アルシアさんが目覚め︱︱ずにその
まま気絶しました。
﹁ンヤ?﹂
﹁あ∼、リオさんや。僕にするみたいにクリ引っ張ると、普通は気
絶するんじゃないかなぁ?﹂
448
﹁アァ! なるほどなのん。んでは、こうなのよ∼ん﹂
今度はアルシアさんの脚を持ち上げて股間を開かせた。
そしてアルシアさんの股間、膣に向かって自分の鉤尻尾を突き入れ
た。
ニュルルルと尻尾が入って出し入れを始める。
﹁ンフフ。これならすぐに起きるのねん﹂
少しするとニュプニュプと水音がして、膣から愛液がでてるのがわ
かる。
暫くニュップニュップとリオとマイ旦那様の痴態を見ている。
﹁⋮リオ、全然起きないんだけど﹂
﹁ンヤ⋮? オマンコ弄られて起きないなんて変ねん⋮﹂
その後も二人で色々しても起きず、なんとなくステータスを確認し
て、クリにヒールをかけたら起きました。
⋮アルシアさんのHPは結構減っていたとだけ言っておきます。
﹁セシルが人族との戦争を止めたいと言うのはわかりました。分か
りましたとも。えぇ、分かりました﹂
目覚めたアルシアさんに、起した理由を説明した。
そして第一声で分かってくれた事を示してくれたんだけど。
449
﹁アルシアさん、なんだか怒ってる?﹂
﹁そりゃあ怒ってますよ﹂
ダークエルフのアルシアさん的には、魔王の元で人族と戦いたいの
かな。
それを反対してる僕に対して怒ってると。
﹁ごめん。でもさ、僕の子供達の為にも人族と戦争とか嫌なんだよ
ね。ディードやリットはエルフだし、出来れば魔物と人族が仲良く
して欲しいなぁ、なんて﹂
このまま魔王軍が戦争して勝利したとしても、僕が知ってるエンデ
ィング通りなら⋮。
1、人族全滅
2、人族奴隷化
3、延々と魔王軍と人族の戦争の続く地獄の未来
4、負けたら魔物全滅
と、いい未来がありません。
アルシアさんに反対されても、僕は子供達の為に違う未来を探した
いのだ。
と思ってたら、アルシアさんが僕が思ってる事と違う事を口に出し
ました。
﹁セシルには怒ってません。戦争反対の気持ちも分かります。ラミ
ューとレムと過したり、ディードとリットの事を思うと、私も単純
450
に戦を仕掛けるのは乗り気じゃないんです﹂
﹁あ、そうなんだ。じゃあ、何で怒ってるの?﹂
﹁人が気持ちよく寝てたら、気絶するほどクリトリスを引っ張って
起そうとか、何を考えてるんですか! オポンチ淫魔!﹂
﹁イダダダダ。ア、アーシャーちゃんがすぐ起きないのが悪いのよ
ん!﹂
﹁リオ、貴女も同じ目にあわせてあげましょう!﹂
僕を放置して、二人が揉みあいを始めました。
真面目な話をしてるのに、二人を見て僕はちょっとだけピキっとき
た。
﹁二人とも、僕が真剣に子供達の未来に悩んでるのに、遊んでると
怒るよ?﹂
﹁わ、わかったので、影で作った剣を向けるのと、影で縛るのをや
めてください⋮﹂
﹁ンヒィ⋮。淫魔を影で縛るとか、セシりんてば、すっかりリリス
様みたいなのねん⋮﹂
二人が大人しくなったので、改めて相談しました。
元々辺境に押し込まれた魔物が、人族3国に挑む無謀さ。
人族のトップ連中の滅茶苦茶な強さ。
それらを丁寧に説明しました。
451
﹁こ、皇帝とはそんなに強いんですか?﹂
﹁うん。10万の一般兵を相手にするより、皇帝一人倒すほうが大
変だよ﹂
僕しか見れないけど、ステータスがある世界なのだ。
ゲームと同じだと考えると皇帝は危険すぎる。
レベル80の皇帝は、有象無象の魔物や人では傷すら付けられない
はず。
レベル61の僕でも、戦えるかな?くらいで絶対に勝てない。
﹁⋮⋮ふぅ∼。では、そういう情報と共に、戦争反対の意思を魔王
殿のところに居る族長に伝えておきます﹂
﹁ありがと。アルシアさん。でも、戦争反対ってアルシアさんが伝
えたくらいで辞めるかな?﹂
﹁ヌム。そこはあれよん。魔母セシル様からのお言葉として伝えれ
ばいいのん。ダークエルフもラミアも、私達淫魔と同じでリリス様
が産んでくださって誕生した種族です。リリス様と同じ魔母のセシ
ル様の言葉を聴くのは当然です﹂
﹁そうですね。セシルからの言葉として伝えましょう﹂
リオが途中から丁寧な忠誠厚い言葉遣いになってます。
アウラを産んでから、リオだけじゃなくアルシアさんやお義母様も
僕の意見をすごく尊重してくれます。
452
﹁魔母って、そんなに特別なのかなぁ﹂
﹁当然です! セシルが私のお嫁さんでなければ、跪きたいくらい
です!﹂
﹁ンム! 全ての知性在る魔物は魔母セシル様に従うべきなのです
!﹂
ボソッと言った僕の一言に熱い言葉で反応する二人。
魔王や魔母は、魔物にとって特別な様です。
アルシアさんに相談した次の日のお昼すぎ。
フェシスさんに子供達を見せてる時にアルシアさんが部屋に来まし
た。
エイン達はお昼ご飯を食べたら、各自の部屋に戻って寝てます。
﹁セシル、返事が来ました!﹂
﹁早っ! 昨日の今日なのに!?﹂
前から気になってたが、どういう連絡手段を使ってるんだろうか。
まさか電話が在るわけじゃないよね。
﹁昨日話を聴いてすぐに、伝書鳩を飛ばしただけですよ?﹂
﹁まさかの伝書鳩!?﹂
453
﹁ンヤー。セシりん、そんなことはどうでもいいと思うのよん﹂
﹁そ、そだね﹂
ファンタジーな連絡手段を期待してた僕としては、結構なショック
でしたが。
﹁返答は﹃力を示せ﹄です!﹂
﹁えーと、つまり?﹂
﹁ンフフフフ。戦争を止めるには魔王を倒してみろって事なのねん
?﹂
﹁詳しく言うと、自分に意見したいなら1対1の決闘で勝って見せ
ろ。と言うのが魔王殿の言葉らしいです﹂
可能性の一つとしては、そうなるかなぁって思ってた。
理想は地球での知識を生かして、戦争の難しさを伝えて止めたかっ
たんだけどなぁ。
でもまぁ、ゲーム進行年数的に魔王君のレベルは予想20前後。
高くても30で、奇跡的に頑張っても40くらいだろう。
余裕で僕の勝利です。
﹁よーし、じゃ∼ちょっと魔王様にでも挨拶にいくかなぁ∼﹂
僕がアスター君を抱っこしながらそう言うと、フェシスさんが声を
かけてきた。
454
﹁あんた、魔王に何を言いに行く気だぃ?﹂
と言うので、戦争を止めたいって言う僕の気持ちをフェシスさんに
話しました。
﹁は∼、あんたの気持ちはわかるけど、私の立場的にそれは困るね
ぇ﹂
﹁ンフ。ちょっとフェシすん、耳を貸すのよん。ごにょごにょごに
ょ﹂
﹁ほぅほぅ︱︱確かにあの子は魔母っぽいけど︱︱あっちも魔王だ
し︱︱︱︱本当だね?﹂
リオがフェシスさんと二人で部屋の隅っこに行き、なにやらごにょ
ごにょしております。
﹁やっは∼! よーし、セシル! あんたの望み通り行こうじゃな
いのさぁ! 魔王退治に出かけるよ!﹂
こうして、なぜか僕以上にやる気になってるフェシスさんを筆頭に、
僕は魔王退治に出発する事になりました。
︱︱︱子供達の為に、僕はこの死都に来たんだった。
旦那様のアルシアさん、部下のリオ、そして何故か僕よりやる気満
々のフェシスさん。
455
あとは﹃魔王が見たい﹄という理由で付いてきたアウラ。
スライムさんにラミュ&レムに子育てを任せてきました。
エインは連れてくるとややこしい事になると言うことで、お留守番
です。
ダグラスさん達男3人は、フェシスさんの命令で帰っていきました。
人族の街ではなく何故か沼地へ。
﹁皆やる気なのはいいけど、一応僕は話し合いも考えてるからね?﹂
魔王と決闘になった場合、僕が戦うと事前に決めてる。
アルシアさんがごねたけど、前に僕に負けてるので我慢してもらい
ました。
まぁ僕としては、決闘前に話し合いをする気なのです。
﹁ンハァ。甘い、甘いのよん。セシりん!﹂
﹁そうですよ。セシル﹂
﹁まったくだねぇ﹂
何故か3人にツッコミを受ける。
﹁ダークエルフもラミアも、ゴブリンもオークも、力在る者に従う
のよん! だから戦争を止めたいなら、魔王を倒すしかないのよん
!﹂
456
﹁リオ、さりげなく淫魔を外しましたね? 淫魔もですよね。淫魔
も﹂
フェシスさんもラミアの姿でうんうん頷いてます。
横を見ると、手を繋いでるアウラまで頷いてます。
僕が、そんな脳筋思考でいいのか魔物達よ。
と考えながら歩いていると、前方に人影が見えた。
その姿は蒼い肌に鱗を纏い、女性の上半身と蛇の下半身を持った魔
物。
それも背丈が3mくらいあり、地面に付いた蛇の部分をあわせたら
どれほどか⋮。
﹁やっと来たかぃ。魔王である坊やの考えを否定してる女ってのは、
どいつだぃ?﹂
レベル30位のはずのその魔物は、巨大な槍を構えて僕らを威嚇す
る。
ゲームの時のデフォルメ姿と違い、その圧力は凄まじい。
﹁ラミアの族長、ティティス﹂
ただの魔物とは違うその威風は、まるでどこかのボスキャラのよう
だ。
﹁坊やに挑む前に、私が力を試してあげようじゃないかぁ。何なら
あんたら全員でかかってきてもいいよぉ﹂
話し合う余地もなく、僕の魔王攻略が始まりました。
457
458
第26話 死都への道︵後書き︶
アルシアさん気絶は仕方ないですね!
場所が場所だけに﹃クリ﹄ティカルヒット!
魔王や魔母には、魔物さん達は本能的に従いたくなります。
フェシスさんがやる気になった理由は本能ではないので、そのうち
明かさねば。
ゲーム的な感じで魔王攻略が始まりました。
第1ステージはラミアのティティスさん。
子供達中心の考えで、すっかりママさんになったセシルさん!
人魔の戦争止めても、3国の戦争に巻き込まれるのはどうする気だ!
レベルの見通しが実態と違いすぎる魔王攻略は成るのか!
セシルさんが真面目に戦うのに期待してる人は居るんでしょうか?
459
第27話 魔王への道 前編︵前書き︶
戦いを期待した方はごめんなさいm︵︳︳︶m
460
第27話 魔王への道 前編
僕らの前で巨槍を構えるティティス。
その姿は闘志に溢れ、眼光鋭く僕らを射抜く。
魔王君と話し合いか決闘をしに来たはずなのに、予想外な障害発生
です。
﹁ほらほらぁ、どうしたんだぃ。かかって来なさいなぁ﹂
ティティスは槍を振り回し、戦う気に満ち溢れてる。
﹁ンフゥ。魔王の部下その1なのねん? 魔王の前にけちょんけち
ょんにしてあげるのよん!﹂
リオが余計な事を言って煽ります。
もはや話し合いは無理な雰囲気です。
仕方なく戦う為に僕が前に出ようとしたら、フェシスさんに止めら
れました。
﹁ふっふ∼ん。ここは私に任せてもらおうかねぇ﹂
ニヤリとした顔でティティスの前に歩いて、いや、ニョロニョロ滑
って行くフェシスさん。
ティティスより二回り以上小さいフェシスさんだけど、その背中は
頼もしい。
461
しかし自分の種族の族長に刃向っても良いのだろうか。
僕がそう心配していると、ティティスは構えていた槍を肩に担いだ。
そしてティティスの目の前に着いたフェシスさんが、手を上げなが
ら軽い口調で話しかけた。
﹁やっほ∼ぃ。母さん﹂
﹁か、母さん!?﹂
﹁あれ? セシルは知らなかったんですか? フェシス殿はラミア
の族長ティティス殿の娘ですよ﹂
知らなかった。
ゲームの時は、ティティスって族長ってだけで子供が居るなんて描
写がなかったし。
つまりフェシスさんって次期ラミア族長なのですね。
﹁沼地を任せてたはずなのに、フェシス、あんた何でここに居るん
だぃ?﹂
﹁いやはや、それがさぁ∼、ちょっと良い話があってねぇ。母さん
も槍をおいて話を聞いておくれよぉ﹂
何やらフェシスさんとティティスが話し合っている。
二人の話し合ってる様子は仲良しさんです。
﹁フェシスさんのおかげで、ティティス⋮さんとは戦わないで済み
そうだね﹂
462
﹁そうですね。魔王と戦う前に無駄な戦闘はしたくありませんし、
よかったです﹂
﹁ンヤンヤ∼。セシりんのおかげなのよん﹂
﹁ママ、戦わないの?﹂
アルシアさんは魔王君を自分が成敗するつもりのようです。
リオの返事はよく分からない。何故に僕のおかげ?
アウラは戦いがなくて残念そうです。
﹁あ∼、セシル譲ちゃん。私は母さんと話がまだあるし、あんたら
は先に行っといでぇ﹂
フェシスさんが僕達に向けてそう言うので、僕らは先に行く事に。
すっかり戦意をなくしたティティスさんの横を通る時に、何故かジ
ロジロ見られる。
﹁はぁ∼、あんたがねぇ﹂
ティティスさんがそう一言呟いたのが聞こえた。
死都の中央の城へ向かう大通りの途中に、一人佇む人影を発見した。
その人は抜き身の剣の切っ先を地面に刺し、柄頭に両手を置いて眼
を瞑っていた。
僕達が近づくと、その褐色の肌に銀髪の巨乳美女はゆっくりと目を
開いた。
463
﹁主殿の考えに反対という女性はどなたですか? 主殿に挑む前に、
私が力を試しましょう﹂
ダークエルフの女性︱︱族長レミネールが、静かに告げてきました。
レミネールは僕とリオを見た後にアウラを確認し、最後にアルシア
さんに視線を止める。
﹁アル、貴女には私の代理を任せていたはずですが、何故ここに居
るのです?﹂
﹁ネル姉様、それは簡単です。人族との戦争反対を訴えたのが、私
のお嫁さんのセシルだからですよ!﹂
﹁は?﹂
真剣でピリッとした雰囲気を纏ってたレミネールが、眉をしかめて
聞き返した。
﹁まずは紹介が先ですね! セシル、これがダークエルフの族長に
して私の姉様のレミネールです。ネル姉様、この金髪の赤眼の美人
で可愛くて黒いドレスを着たのが、私のお嫁さんのセシルです﹂
﹁あ、えっと、アルシアさんの妻をやっております。セシルです﹂
﹁あ、あぁ、これはご丁寧に。ダークエルフ族の族長にして、アル
シアの姉のレミネールです﹂
アルシアさんに紹介されて、僕とレミネールはお互いに頭を下げあ
464
う。
ゲームの時よりも若干見た目が艶っぽく、アルシアさんよりお義母
様似です。
アルシアさんて族長の妹だったんだね。
ゲームの時には、レミネールに妹が居るなんて設定はなかったと思
う。
⋮⋮族長の一族と言う事は、もしや僕は玉の輿なのかしら。
僕が挨拶しながら頭の中で色々考えていると、アルシアさんがさら
に僕の紹介をしました。
﹁ネル姉様、セシルは凄いんですよ! なんとあの伝説の魔母リリ
ス様と同じ魔母らしいです!﹂
﹁アル、先日の手紙で魔母からの意見として書いてたけど、まさか
⋮本当に魔母なわけは⋮﹂
﹁アルラウネの子供を産んだので間違いないですよ! 淫魔のリオ
も保障してますし!﹂
﹁トレントからの寄生種のアルラウネを産んだ⋮?﹂
﹁そうです。あそこにいる子がそうですよ﹂
ビシっとアウラを指差し説明するアルシアさん。
チラッとアウラを見た後に、何故か胡乱な目でアルシアさんを見つ
めるレミネールお義姉様。
465
﹁と言うより、アル、そもそも貴女、いつのまに結婚したんですか
?﹂
﹁一年前くらいですよ。ネル姉様が魔王殿と旅立った後すぐですよ。
そうそう、セシルとの間に男の子も生まれたんですよ!﹂
﹁男の子が生まれた!? ア、アル、どういう事ですか! セシル
さん、男の子を産んだんですか?﹂
﹁え? あ∼、アスター君っていうダークエルフの男の子と、エル
フや淫魔の子も産みました∼﹂
﹁アルの妻なのに何故エルフや淫魔の子も? アルラウネも産んで
るようだし⋮。ちょっと、アル、セシルさん、どういう事ですか?
詳しく話しなさい。他種族の子を産んだのは何故です? 貴方達、
世間体とか大丈夫ですか?﹂
初めて会ったお義姉様に、僕とアルシアさんは色々説明しました。
途中、子作りの計画性の無さや、僕の家事能力の無さを怒られたり。
アルシアさんが子育てを手伝わない事を言ったら説教をされたり。
他種族の子を産んだのは、ちょっと怒られたけど許されました。
今の時代、ダークエルフでは女性同士の結婚や重婚も認められてい
るらしいので。
でも、族長の一族的にはダークエルフの子だけ産んで欲しかった∼
と愚痴られました。
﹁ねぇ、リオママ、戦わないの?﹂
466
﹁⋮⋮大人になるとねん。親族間のご挨拶や世間体とか大変なのよ
ん。あれはあれで戦いなのよん﹂
﹁そうなんだ﹂
リオとアウラが瓦礫で積み木をしてるのに気づいたのは、大分時間
が経ってからでした。
﹁アルが育児放棄して申し訳ありません。セシルさん﹂
僕が妹嫁のせいか、ゲームの時よりずっと優しい感じのお義姉様で
す。
﹁いえ、アルシアさんも戦争の準備とかで忙しかったようですし、
リオとかスライムさんやラミューも手伝ってくれてたので大丈夫で
す﹂
﹁そうですか。リオティネック、女性同士の婚姻問題や出生関連に
協力してくれただけでなく、我が家の個人的な事まで手伝ってもら
い感謝します﹂
お義姉様が感謝をこめてリオに話しかける。
それに釣られリオのほうを見ると︱︱︱アウラと一緒にしゃがんで
遊んでいた。
その辺の石や小さな瓦礫を使い、見事なお城を建ててました。
名前を呼ばれたのに反応してか、リオが此方を向いた。
467
﹁ンヤ? 親族会議終わったのん?﹂
﹁え、あ、う、うん﹂
あまりに見事な瓦礫の城を見て、驚きで返事が上手くできなかった。
リオって色々器用です。
今僕が着てる黒いドレスも下着類もリオお手製なのです。
胸が大きすぎて、巨乳のダークエルフさん達用の旅着や鎧ですら着
れなかった僕。
その僕の為に、リオが作ってくれたのです。
旅なのにドレスなの?と思わなくも無い。
しかしリオ曰く、問題なしとのこと。
アラクネ糸と金糸、銀糸、その他諸々。
それらを使い、淫魔の秘密の製法で作ったと。
効能は、基礎代謝促進、体温調整、美肌効果等、健康にとても良い
ものらしいです。
ブラも程よく胸を押さえてくれるので、動きやすくて助かってます。
﹁ムヌ∼ン。だったら、先に進むのよん。さっさと魔王の所に行く
のん﹂
﹁そ、そうですね! 行きましょう! セシル!﹂
リオの言葉に、正座してたアルシアさんが立ち上がり駆け出そうと
468
した。
だがそのアルシアさんの肩をガシっと掴むレミネールお義姉様。
﹁アルには、まだちょ∼っと話があります。私とここに残って、ゆ
っくり話しましょう﹂
﹁それじゃあ、レミネールお義姉様、僕らは行きますね﹂
﹁主殿⋮魔王は女性には優しいので、大丈夫だと思いますが、一応
気をつけてくださいね﹂
﹁はい、お義姉様。ありがとうございます﹂
僕とリオとアウラの3人は、お義姉様の見送りを受けて先に進んだ。
アルシアさんが﹁た、助けてください﹂とか言ってるのは聞こえな
かった。
﹁ねぇ、ママ。アルシアママ置いてって良いの?﹂
﹁ん∼、ほら、前に話したお話の12宮編とか、十本刀編とかでも、
先に進む為に仲間を置いていくじゃない? それと同じだよ∼﹂
﹁そうなんだ﹂
僕の言葉に納得したアウラは、笑顔で楽しそうな顔をしました。
うちの子は純粋でよい子に育ってて、ママは嬉しいです。
469
第27話 魔王への道 前編︵後書き︶
セシルさんは、もっと好戦的でもいい気がします。
異世界憑依転生で高スペック能力なのに、何故こうなのでせぅ⋮。
魔王様関連のお話は1万ちょい文字数行きそうなので、ここで区切
りました。
今話3000文字ちょっとでも、書くのに数日かかってます︵ ̄ε
 ̄;
作者は冒険活劇が書きたいのに、何故か親族会議をするセシルさん!
魔王に挑むと言うのに、緊張感がまったくないのはどうしてだ!
もっとエッチを!とか、真面目な戦いを!とか、ご意見ご感想があ
りましたら、是非お願いします。
470
第28話 魔王への道 中編
大事な仲間を犠牲にして、僕らは死都を進んでいる。
フェシスさん、アルシアさん⋮二人の思いを胸に、必ず魔王を説得
しなければ。
﹁って感じで気分を盛り上げると楽しいと思うんだ﹂
﹁さすがママ。確かに、そう思うと少し楽しい﹂
僕の中学二年生的妄想設定に、楽しく興奮する我が娘。
台詞は棒読みで感情が乏しいように思えるけど、娘だからかアウラ
の感情が手に取る様にわかります。
﹁ンヌ∼。セシりん、緊張感の欠片もないのねん﹂
それは仕方ないと思う。
だって立ち塞がったティティスさんもレミネールお義姉様も、話だ
けで素通りさせてくれたし。
よく考えたら、魔王軍的に僕らって身内なんだよね。
反対意見をだしたからって、敵対しているわけではないのだ。
そんな風に気軽に歩いていたら、大きな噴水の残骸がある広場に出
ました。
471
そして噴水の縁に座り、楽しそうに笑いながら此方を見る少女が一
人。
銀髪碧眼で紅いドレスを着た少女︱︱︱死都の支配者、吸血鬼レイ
ニー。
レイニーは笑いながら此方を見ているんだけど⋮。
なんだろう。
笑顔なのに凄く怖いです。
﹁アルラウネ、淫魔、それに⋮人間⋮ではないの。夜魔⋮夢魔⋮⋮
妾に正体が分からぬとは﹂
レイニーは僕らを見て楽しそうに呟く。
なんとなく見合ったままで居ると、レイニーが優雅に立ちあがった。
﹁妾は吸血女王⋮⋮⋮。王は我が君であるな。この名乗りはまずい
かや。ふむ⋮なれば⋮。妾は吸血姫レイニー。魔王たる我が君に寵
愛を受け仕えし者﹂
レイニーはドレスの裾を持ち上げて、優雅に礼をする。
思わずその美しい所作に見とれてしまう。
﹁ンム∼。私達は魔母セシりんとその御一行なのよん﹂
僕がレイニーに見とれてボーとしてたら、リオがそう返事をした。
相手の丁寧な自己紹介に対して、物凄い適当です。
472
僕が改めて丁寧に自己紹介を返そうと前に出ると︱︱
﹁汝らが我が君に意見する愚物かえ。疾く死ぬがよい﹂
︱︱レイニーが手を振った瞬間、氷の槍が襲ってきた。
﹁えっ、なっ!?﹂
僕はいきなりの事で驚いて動けない。
氷の槍が僕を貫こうと迫る。
しかし氷の槍が僕を貫くことはなかった。
影から伸びた黒い杭が迫る槍を全て砕いたのです。
﹁ムム∼ン。セシりん大丈夫なのん?﹂
﹁だ、大丈夫﹂
どうやら黒い杭はリオが出した物のようです。
リオが助けてくれなかったら、ぷっすり串刺しになってた気がしま
す。
それにしても、いきなり攻撃してくるとは。
﹁ンン∼。今のはどういうつもりなのかしらん? 吸血姫さんとや
ら∼ん﹂
﹁我が君に逆らうような愚物を始末しようとしただけだえ?﹂
473
﹁アハ∼ン。つまり敵対行動なのねん?﹂
﹁おぉ、それを今悟るとは、男の精を貪るだけの淫魔にしては有能
じゃな﹂
﹁ンフゥ。魔族もどきの吸血鬼のロリババァにしては、お世辞が上
手なのねん﹂
﹁﹁⋮﹂﹂
リオとレイニーが睨み合いながら言い合いをしています。
僕は二人の雰囲気が怖いので、アウラを連れてそ∼と離れて行って
ます。
そ∼と歩いてたら、うっかり石を踏んでカランッと音がしました。
それが合図だったかのように、リオの背中の羽がブワっと拡がる。
そして地面を滑るように滑空し、レイニーに迫ります。
手は肘から先が黒い物に覆われて、指先が黒い鋭利な棘になってい
る。
レイニーは、近づくリオに対して先ほどと同じ氷の槍を放つ。
リオはその槍を上手く回避して近づきます。
レイニーまであと1mという所まで近づくと、手の先の黒い棘を一
気に突き刺そうとする。
﹁食らうなの! ぐっ、がっ⋮﹂
474
﹁愚か者め。氷槍にばかり気を取られ、妾の爪に貫かれるとはの。
あぁ、淫魔ゆえに、貫かれるのは本望かや?﹂
レイニーはリオの棘を翻し、逆にリオの胸に鋭い爪を付きたててい
た。
﹁リ、リオ⋮﹂
僕は動揺してリオの名前を口に出す。
すると、リオは真っ黒に染まりドロリと溶けるように崩れ去る。
﹁なに? グッ、貴様、いつの間に⋮﹂
﹁アハ∼ン。ダミーの影に気を取られて、私に胸を貫かれちゃった
わね∼ん﹂
正面のリオが崩れ去ると、レイニーの胸から黒い棘が生えていた。
レイニーの後の影から現れたリオが、レイニーの胸を影で覆われた
手で貫ぬいたようだ。
影で作った分身を囮に、本体は影の中から後ろに回っていた、と言
うわけか。
﹁ンフフ。セシりんを攻撃した罰なのよん。このまま止めを、ンム
!?﹂
リオが楽しそうに話していると、レイニーがボワッと弾ける様に消
える。
その後少し離れた場所に白い霧が溜まり集まったかと思うと、レイ
ニーが現れた。
475
﹁淫魔ごときが妾に傷をつけるとは⋮。ぶち殺してくれるわっ﹂
レイニーの目が碧眼から赤眼に変わり、尖った八重歯を剥き出しに
して怒り露にする。
その後すぐにぶつぶつ何かを言い始めた。
﹁ンヤ!? あれはまずいのん。セシりん気をつけるのん!﹂
﹁へ? あ、うん、わかった!﹂
怒涛の展開に見入ってた僕は、リオの声ですぐに行動した。
アウラを抱きかかえて距離をとりながら︻闇の衣︼を発動する。
アブソリュート ゼロ
﹁︱︱数多の氷霊の力を束ね、地獄の裁可を下さん。︻絶対零度︼﹂
避難してる最中に、レイニーの声が妙にしっかりと聞こえた。
︻絶対零度︼は氷系最強の魔法だ。
広範囲、高威力、高コストとゲームでは大変お世話になりました。
レイニーが居る方向に背中を向けて、アウラを庇う様に抱きしめる。
噴水の広場からは大分離れてるのに、背中から凄い寒さが襲ってく
る。
距離と闇の衣のおかげでダメージは無いけど、凄く寒い。
冷風が治まってから、ゆっくりと広場に目を向ける。
半径100mくらいの広場は全て氷で覆われていた。
476
その中に、レイニーと氷漬けになっている黒い繭があった。
少しすると氷が砕け、繭がシュルンと開いて中からリオが現れた。
影を繭状にして魔法から身を守った⋮のかな?
﹁ンガーーーー! よくもやってくれたのねん!﹂
﹁ほぅ⋮。妾の魔法を受けても生きているとはの﹂
﹁アッハ∼ン。あの程度の魔法なんて、直撃しなきゃ余裕なのよん
!﹂
﹁おぉおぉ、それは重畳よな。妾が満足するまで嬲られるがよいぞ
え﹂
お互い睨み合うリオとレイニー。
ゲームの時と同様にレイニーのレベルは60だろう。
対してステータス画面で確認できるリオのレベルも60。
この世界で初めて、レベル60同士の強者の戦闘を目にしましたが
⋮。
﹁ママ、すごいね!﹂
﹁そ、そうだね∼﹂
抱っこしているアウラは、目をキラキラさせて戦いに大興奮です。
でもママはビビッてます。怖いです。
477
﹁ンフ∼ン。セシりん、この腐れ吸血鬼は私が相手しとくのね∼ん。
先に行くと良いのよ∼ん﹂
﹁愚かな。我が君に逆らう愚者を、妾が進ませると思うかや?﹂
目を真っ赤にしてニヤリと笑うレイニー。
吸血鬼は昼間はステータスダウンのペナルティがある。
現在は昼間で弱体化してるはず。
なのに溢れる鬼気と強者の気配が凄まじい。
リオも今は善戦してる。
けど、サキュバスは状態異常や仲間の能力コピーのトリッキーキャ
ラだ。
吸血鬼との正面からの戦いはきついはず。
僕にしても元剣聖、現魔母で、近接と魔法が使えますが⋮。
いくら肉体が高スペックなセシリアとは言え、見るからに怖い吸血
鬼と戦えるかは別です。
レイニー退治を諦めた僕は、別の手段を講じる事にした。
殺る気満々のリオの隣に向かい、そこでビシっとレイニーを指差す。
﹁レイニー、君は間違っている!﹂
犯人を見つけた探偵っぽい演技を始める僕。
﹁うむ? あぁ、死す順番でも決めておったか? 下劣な淫魔の前
に貴様が⋮﹂
478
﹁そうじゃなくて、魔王⋮様の客人の僕達に攻撃するとは何事か!﹂
﹁⋮客人じゃと? 我が君に意見する貴様達が?﹂
僕の策略どおりに、レイニーが会話に乗ってきた。
﹁僕は、人族の3国と戦争するのは危ないよ。と意見しただけです
よ﹂
﹁然り。その様な事、妾も知っておる。我が君に対する明らかな反
逆であろ?﹂
﹁それは違います。王をより良い道へ進ませる為、意見を述べるの
は臣下の努め。まさか、王の言う事に頷くだけのイェスマンが良い
臣下等とは、高貴なる吸血鬼レイニー様が言いますまい﹂
﹁それはまぁ⋮一理ある⋮の?﹂
高貴なると持ち上げると、しっかり一考してくれるレイニー。
﹁そして魔王様は僕にこう連絡してきたのです。﹃意見するなら1
対1の決闘で勝って見せろ﹄と﹂
﹁故に、我が君に挑むまでも無く、妾がこうして始末しようと⋮﹂
﹁そこが間違ってる! 魔王様はつまり、決闘しに来いと僕に命令
したわけです! 魔王様の命令で死都に来た僕らは、言ってみれば
魔王様の客人!﹂
479
﹁なんじゃと!?﹂
僕の屁理屈に動揺するレイニー。
ここは相手が冷静になる前に更なる追い討ちを。
﹁魔王様の客人に対して攻撃したレイニー! 君こそ魔王様に逆ら
う反逆者!﹂
﹁バ、馬鹿なっ。妾が反逆者じゃと!?﹂
﹁君がこれ以上僕らと戦うと言うなら、僕らは魔王様の臣下として
反逆者の君を倒さなくてはいけない!﹂
﹁⋮妾が⋮反逆⋮者⋮?﹂
レイニーは赤眼から碧眼に戻り、顔を真っ青にする。
元々真っ白な色白なので、真っ青になった雰囲気なだけですが。
﹁は、反逆者⋮。わ、妾はどうすれば良い? どうすれば我が君へ
の忠誠を示せる?﹂
レイニーは酷く動揺してうろたえる。
演技に興が乗ってきた僕は、気持ちよく続ける。
﹁僕達を通した後、魔王様を信じて僕達を追わずにここで待ってる
事! それしか魔王様への忠義を示す道は無い!﹂
﹁そ、そうか。う、うむ。ならば汝ら、この先に向かい進むが良い
ぞ﹂
480
今やすっかり鬼気もなくなったレイニー。
オロオロしてる様子を見て、僕は少し調子に乗る。
﹁魔王様の客人に対して、その偉そうな態度はいけないと思います
!﹂
﹁お、おぉ⋮。その通りじゃな。これは失礼した。我が君は、この
先の城の王の間に居ますゆえ、お客人方、気をつけてお進み⋮ふむ、
客人であるならば、妾が共をするべきかや?﹂
﹁い、いや、それはちょっと遠慮します! レ、レイニーさんも、
ほら、何かお仕事とか忙しいと思うから、お城へは僕達だけで行き
ます!﹂
﹁そうかや。そう言って貰えると助かるの﹂
調子に乗って、お供される所だった。
いきなり殺しにくるような怖い人がお供とか、勘弁してほしい。
﹁はぁ、我が君が妾の下僕を殲滅したのでの。見回りなどの守衛を
妾がせねばならん﹂
何やら愚痴っぽい事を言っている。
そう言えば死都なのに、グールやスケルトンとか一匹も居ませんね。
﹁それじゃあ、僕らはお城へ行ってきます﹂
﹁我が君に失礼が無いようにするんだぞえ。それと﹂
﹁レイニーさんが魔王様に対してどれだけ忠誠心厚いか、伝えてお
481
きます!﹂
僕がそう言うと手を振って見送ってくれる。
しっしっと、どっか行けって感じの振りなのは気のせいだろうか。
こうして僕らは、無事に吸血鬼レイニーと言う難関を突破したので
した。
﹁ンムゥ∼∼∼﹂
﹁戦い、中途半端﹂
リオとアウラは、納得がいかない風でしたけどね!
482
第28話 魔王への道 中編︵後書き︶
えっちぃ成分が足りない。
魔王様勢が関わると、真面目になりがちです。
コメディ分とエッチ分不足でごめんなさい︵つд`︶
感想での吸血姫という呼称を使わせていただきました。多謝。
483
第29話 魔王への道 後編︵前書き︶
予定では2000文字くらいだったはずが、何故か結構文字数増え
ました。
484
第29話 魔王への道 後編
﹁くちゅん﹂
魔王軍最強と思われる難敵レイニーを降し死都を歩いていたら、妙
に可愛いくしゃみが聞こえた。
﹁くちゅん。くちゅん﹂
隣を見ると、リオがくしゃみをしてました。
﹁リオ、大丈夫?﹂
﹁アハ∼、くちゅん。だ、大丈夫なのよ∼くちゅん﹂
大丈夫と言う割には、いつもより顔色も悪い気がします。
まるで風邪を引いたような⋮風邪?
﹁リオ、まさか風邪を引いたんじゃ?﹂
レイニーの︻絶対零度︼は、名の通りとても寒かった。
そしてリオの格好はと言うと。
乳首と割れ目を黒い物︵たぶん実体化させた影︶で覆ってるだけ。
つまり実質裸!
戦い中、飛び回ってたリオの乳房は、決して巨乳ではないがプルプ
485
ル揺れてた。
綺麗でツルンとしたお尻も、躍動感溢れ、むにっとした太ももと合
わせて素敵でした。
くびれた腰に、下乳と割れ目の間を補完するおへそも目に付いて⋮。
ハッ。
思考が脱線しました。
結局、何が言いたいかと言うとですね。
﹁リオ、︻絶対零度︼が直撃しなかったとは言え、裸同然で受けて
寒くて、風邪を引いたんじゃないの?﹂
﹁ンア∼くちゅん。ンム∼くちゅん。うぅ、そうかもなの。なんだ
か寒いの∼ん。くちゅん﹂
風邪のせいか、リオの顔が少し赤い。
少しポ∼とした表情と赤い顔に裸同然の格好。
淫魔だけあって、具合悪くてもエッチっぽい雰囲気です。
﹁ママ、リオママの顔と胸と脚を見てどうしたの?﹂
﹁え? あ、いや、なんでもない。なんでもないんだよ∼?﹂
ちょっと弱ってる女性の姿に興奮しました。とはアウラには言えま
せん。
﹁ンム∼ン。仕方ないから服を着るのね∼くちゅん﹂
くしゃみと同時に、リオの体が黒い影に覆われる。
首から下が全て覆われると、ポンッと軽く膨らみ、影は黒い法衣に
486
なってました。
﹁おぉ∼、影で服を作るとか凄いね!﹂
﹁アハ∼ン。淫魔の特技なのよん。即エッチ出来る様に瞬間脱衣可
能な影の服よ∼ん﹂
僕も真似ようかと思ったけど、即エッチの為と聞いてやめとこうと
思います。
そこまでエッチじゃないし。
︻全てはずす︼で脱げば普通の服でも一緒だし。あれ?
﹁リオママの特技、便利そう﹂
﹁アウラは真似しちゃダメだからね∼﹂
淫魔の特技らしいので、真似出来ないと思いますけど。
娘のモリガンとフェイには、淫魔であってもちゃんとした服を着る
ように教育しよう思います。
暫く歩くと、お城の城門につきました。
まぁ、門は壊れてるので城門跡地かな。
そこに立つ二つの人影。
﹁ここから先は、俺らが通さねいぜ﹂
487
﹁王の御前へは、我が行かさぬわ﹂
ドドン!と胸を張って仁王立ちした2名を見て、僕は驚愕した。
﹁ゴブリン王にオーク王⋮﹂
﹁俺達を知ってるのか。グフフ、ここは魔王の旦那への最後の守り﹂
﹁我が居る限り、ここは決して通さん﹂
﹁いや、オーク王よ。俺も居るし、そこは我らだろう?﹂
﹁む、そうだな。通りたければ我らを倒して行くが良い﹂
レベル60のレイニーより後に居るのが、ゴブ&オーク王なのは予
想外だ。
ゴブリンにオークは鍛えても弱い。
その彼らが、強力ユニット吸血鬼レイニーを押しのけ、最後の守を
任されているとは。
魔王君は弱キャラを鍛えに鍛えて使うマニアなのか。
﹁くっ、レイニーの後にゴブリン王とオーク王とは、油断できない
ね﹂
﹁ンヤ? セシりん、どういう事ん?﹂
﹁吸血鬼レイニーの後に控えてるって事は、彼女より強いって事だ
よ﹂
488
思わぬ展開に、一筋の汗を流しながら説明する僕。
﹁いやぁ、本当はティティスの姐御やレミネールの姐御に﹃お前達
は弱いんだから、無理せず隠れとくんだよぉ﹄って言われたんだけ
どな﹂
﹁うむ。レイニー殿に至っては﹃お主ら、あまりに弱い故に、妾の
眷属になりて強化してもよいぞえ。その場合、自我が残るか不明で
はあるがの﹄とまで言われたが﹂
ゴブリン王とオーク王がなにやら実情をバラしてくれてます。
どうでもいいけど、オーク王ってばレイニーの声真似が上手です。
﹁ふむ⋮。オーク王さん、もう1回レイニーの物真似をやってくれ
ない?﹂
﹁む、いいだろう。﹃妾の眷属になるのが嫌だじゃと? 妾に逆ら
うような愚物は疾く死ぬが良い﹄﹂
﹁﹁﹁お∼﹂﹂﹂
少し太り気味のごっついオーク王から、レイニーの少女ボイスが聞
こえます。
パチパチパチと、僕とリオとアウラがあまりの上手さに拍手をして
しまう。
﹁あの時、魔王の旦那が止めてくれなきゃ、俺らマジで殺されてた
かもなぁ⋮ハァ﹂
﹁うむ。王には感謝してもしきれぬ⋮フゥ﹂
489
戦う前からすでに2人とも疲れ切ってる様な気がする。
結論すると、二人は見た目どおり弱いって事かな。
そんな二人を見てたら、ちょいちょいと袖を引っ張られた。
﹁ねぇ、ママ。アレが魔王の前の最後の敵?﹂
﹁ん∼、一応僕達も魔物側だし、敵ではないんだけどね∼。アレが
魔王君の前の最後の関門ではあるっぽいよ?﹂
僕の言葉を聴いて、アウラが少し悩んでからはっきりと言いました。
﹁アレはママに任せて、アウラは魔王を退治してくる﹂
﹁待ちなさいっ!﹂
手をシュタっと上げて走り去ろうとした我が娘を止める。
﹁戦う前に話し合いをしなきゃダメでしょ。それに、アウラにはま
だ戦いは早いと思うの、ママ的には﹂
﹁む∼﹂
アウラは唇を尖らして可愛く拗ねる。
そんな風に可愛くしても、ママは許しませんよ。
﹁ンム∼。アウらん、魔王退治はママのお仕事なのよん。もし戦い
たいならアレで我慢なのよん﹂
490
折角諌めたと思ったら、リオがアレを指差して戦いを煽ります。
﹁リオ、確かにアレは弱そうだけど、アウラには戦いとかせずに平
和に⋮﹂
﹁ンガー! セシりん、甘いのよん! いざって時の為にも実戦っ
ぽい練習は必要なのよん!﹂
僕とリオが口論を始めると、アウラが間に入ってきた。
﹁本当は、ママを残して魔王を退治する勇者役したかったけどママ
に譲る。代わりにアレで我慢するから喧嘩辞めて﹂
﹁アウラッ﹂
自分のしたい事を、喧嘩を止める為に我慢するなんて偉いです。
その健気さに、ぎゅーと抱きついてナデナデしてしまいます。
﹁でもアウラ、無理に戦わないでも良いんだよ?﹂
﹁アウラは無理してない。戦いたい﹂
静かに言ってるけど、目の奥に炎が見えるようです。
戦いたいって言うのは魔物の本能なのかもしれない。
アウラは見た目7才児くらいです。
でもこう見えてレベル30あります。
さすがレアモンスターアルラウネ。
レベル20と思われるゴブ&オク王なら大丈夫かな。
491
いざと言う時は、僕が間に入ればいいか。
﹁と言う訳で娘が相手をするので、手加減して下さいねっ!﹂
﹁我は女子供を嬲る趣味はない。安心するが良い﹂
オーク王は僕に安心するように頷きながら言ってきた。
やだ、豚顔なのに男前な雰囲気。
﹁その魔物のちみっ子も、ちょっと戦ってみたい年頃なんだな。練
習がてら、俺らが胸をかしてやるか﹂
ゴブリン王もアウラを優しい目で見て頷いてます。
此方は子供好きな大人の雰囲気です。
⋮間違ってもロリコニアの国の人じゃないよね?
﹁じゃあ、やるの﹂
﹁おう、こい、お嬢ちゃん﹂
アウラが前に出て二人と対峙します。
ゴブ&オク王は腰の武器は手に取らず、素手のままです。
いつの間にか、親戚の子供と遊ぶおじさん達みたいな空気になって
ます。
そのせいか、僕の気分は運動会で子供を見守る親の気分です。
そんなまったりした雰囲気も、アウラの次の行動で一変しました。
﹁変身﹂
492
そう言った瞬間、アウラの足元から真っ赤な薔薇が現れた。
そして急激に大きくなる薔薇の華の中心にアウラの下半身が収まる。
さらに薔薇は大きく成長していく中、アウラの体も大きくなる。
7歳児くらいだった見た目は大人の女性へと変貌する。
肩までの髪は長々と伸び、服は破けて裸の胸にはたゆんとした大き
な乳房。
パッと見、ゲームの時のアルラウネです。
ゲームの時は貧乳だった胸がとても大きい。
その胸の大きさに、確かな血の繋がりを感じます。
﹁﹁﹁は?﹂﹂﹂
その姿を見て声を合わせて驚くゴブ&オク王、そして僕。
だって明らかに普通のアルラウネじゃないんだもの。
華のサイズが直径5m以上、高さ3m以上と巨大です。
根元からは棘の突いた触手⋮ではなく何十本という蔦がウネウネし
てる。
あれで触手プレイされたら痛そうです。
ここまでの見た目は、他のアルラウネを見た事がないけどたぶん普
通だと思うんです。
問題は、目に見えるほどの禍々しく威圧感のある黒いオーラが立ち
昇ってる事です。
﹁うぉぉぉぉ、レイニーの姐御より禍々しいオーラが見えるぜ!?﹂
493
﹁ぐっ、魔王殿のような威圧だ﹂
巨大で黒いオーラを出すアウラは、まるでどこぞのラスボスのよう
です。
﹁私の攻撃は一秒間に100発なの。いくの﹂
娘のあまりの変貌に驚いて固まってる僕を他所に、アウラは二人に
攻撃をしました。
一秒間に100発とは、まさか音速の拳!?と、内心さらに驚いて
いると、アウラは二人に向かい触手⋮じゃなくて蔦を伸ばし攻撃を
開始。
バチィィィン!
﹁﹁ギャァァァ!?﹂﹂
二人は数え切れないほどの攻撃を受けて吹き飛びました。
けど今の攻撃は⋮。
﹁アウラ、それは1秒間に100発じゃなくて、同時に100の蔦
で殴っただけじゃ⋮?﹂
未だにアウラの変身と言う展開に混乱してる頭で、そんなツッコミ
をしました。
﹁⋮⋮⋮ダメ?﹂
494
ラスボスチックなオーラを放ちつつも、僕を窺う様にアウラは首を
傾げた。
その可愛い仕草に少し落ち着けました。
大きくなってもアウラは可愛い娘ですとも。
魔物なんだから変身くらいするよねっ。
﹁ンフ∼。アウらん、よくやったのん。⋮む、まだ生きてるのねん﹂
リオの向いた方に視線を向けると、ゴブ&オク王がゆっくり立ち上
がってます。
﹁ぶっ飛ばされて驚いたが、あまり痛くはなかったな﹂
﹁うむ。我は地面に打った尻がとても痛いが﹂
どうやら吹き飛ばされた二人は無事のようです。
良かった良かった。なのかな?
﹁ヌムー。あいつら意外とタフなのねん﹂
﹁同時に100発当てるのを頑張って、威力が落ちた﹂
﹁アウらん、次はもっと威力を頑張るのよん!﹂
リオに言われ頷いてゴブ&オク王に向かっていくアウラ。
﹁くっ、このままじゃ大人のとしての威厳が保てないぜ﹂
﹁魔王殿の臣下としても面目が立たぬ﹂
495
吹き飛ばされた衝撃から復活して、再度アウラと対峙する二人。
そして︱︱
﹁﹁ギャァァァ﹂﹂
︱︱と再び叫びながら吹き飛んでいった。
﹁キィィィィ。あの二人、まだ立ってくるのよん。アウらん、次は
もっと捻りこむようにするのん!﹂
﹁ん、頑張る﹂
﹁次は吹き飛ばされずに耐えて、大人の威厳ってのを教えてやるぜ﹂
﹁我は次は回避してみせよう﹂
気づけば僕を残して4人で盛り上がっていた。
魔王の事忘れてるんじゃないかと思い、何度か繰り返した後にリオ
に声をかける。
﹁ンア? あ∼! そうなのよん! んー、アウらんは私が一緒に
居てみてるから、セシりんは先に行くのよん﹂
アウラも楽しそうにしてたので、この場はリオに任せて一人で先に
行く事に。
僕が行くのをゴブ&オク王も止めませんでした。
496
一人歩いていると背後から﹃ギャァァァァ﹄と言う声が何度も聞こ
えてきました。
497
第29話 魔王への道 後編︵後書き︶
⋮⋮自分が書いたメモどおりに話を進めたら、こうなりました。
もっとえっちぃ回になるはずだったんだけどなぁ。
次回 嘘予告!
魔﹁セシルよ!我が物となれ!﹂
セ﹁断る!﹂
そして地方の村での農法改革から始まり︱︱
498
第30話 vs魔王様
一人になった僕は城内に入った。
城内は外の廃墟と違い、とても綺麗で瓦礫処か小石一つ落ちてない。
壁にひび割れがある場所もあったけど、基本的には綺麗な感じです。
﹁レイニーが住んでた訳だし、内部はリフォーム済みか。やるなレ
イニー﹂
自分でもよく分からない事を言いつつ進みます。
﹁しかし魔王君はどこに居るんだろうか∼? やはりゲームの時に
レイニーが居た玉座の間かな∼?﹂
来たは良いけど、魔王君の居場所が分からず彷徨う僕。
当ては玉座の間なんですが。
﹁一直線に進んで玉座の間に辿り着けないとは⋮﹂
適当に階段を上がって、今3階辺りを彷徨い中です。
人、それを迷子と言います。
先ほどから一人なのに喋ってるのは、僕の独り言スキルのせいでは
ありません。
﹁夕暮れ時の静かなお城の中で一人って、黙ってると怖いよね⋮﹂
499
僕はホラー映画が苦手です。
今の誰も居ない学校みたいな雰囲気を紛らわす為に、しゃべってる
のであります。
﹁ゲームとかだと、すぐに王様の居る場所に着くというのに⋮まる
で迷路みたいってどういう事! 案内板の設置を求むだよ!﹂
そうやって一人声を出しながら進んでいると、大きな扉の前に来ま
した。
バイオなハザード気分でビビりながら、その扉をゆっくり開けます。
ギィィイ。
静かな中で思った以上に響く開けた扉の音。
開けた隙間から中を見ると、体育館のように広い空間の部屋のよう
です。
そして扉から真っ直ぐ進んだ先に、大きな椅子に座る人が居ます。
﹁誰?﹂
男の子のようであり、女の子ようでもある声で問いかけてきた黒髪
のその子。
まだ幼さの残るその姿は間違いなく、僕が知ってるカオスブレード
の主人公でした。
﹁こんにちは∼⋮時間的にこんばんは∼?﹂
500
挨拶しながら玉座の間に入ります。
入って玉座の手前まで近づく間、魔王君はじーと僕を見つめてます。
その目はハイライトがなく、表情もアウラ並みに無表情です。
僕に興味がなさそうな無表情の光が無い視線がきついです。
くっ、これはまるでお客さんへのレビュー時のプレッシャーのよう
ではないですか。
相手は僕に興味が無く、新人ゆえに敬意も払われない地獄の説明会。
新人時代、1週間の頑張りを5分で否定された事もあったなぁ。
﹁君はボクに何か用なの?﹂
﹁⋮ハッ!?﹂
トラウマに沈んでた僕の意識を魔王君が呼び戻す。
﹁ま、魔王様においては本日もお日柄もよく∼﹂
﹁何それ?﹂
昔の事を思い出したせいで、つい日本式のご機嫌取りを始める所で
した。
﹁あー、人族3国相手に戦争するのを反対∼ってお伝えした者なん
ですが﹂
﹁あぁ、あれね。わかったから下がって良いよ﹂
およ?
501
戦力差等の説明をするまでも無く、すでに理解済みでしたか。
﹁3国相手に戦争しないなら、よかったぁ﹂
﹁それはするけど?﹂
﹁ほえ?﹂
﹁うん?﹂
僕と一緒に首を傾ける魔王君。
美形の子供なので、その仕草が可愛く見えます。
それはさて置き、なにやら話がかみ合わない。
﹁3国を相手にするのが危険だと分かった。んですよね?﹂
﹁そう言えば、そんな事を手紙に色々書いてたらしいね。だけどそ
んな事は関係ないよ﹂
﹁か、関係ない?﹂
﹁そうだよ。ボクの大事な人達を奪った奴らに復讐するんだ。だか
ら関係ないよ﹂
話がかみ合わないではなく、僕の言葉を全く聴いていない。
ゲームの時もこんな風にダグラスさんの言う事聞いてなかったっけ。
﹁そもそも、何でボクが君の言う事を聞かなきゃいけないのさ?﹂
502
﹁⋮え?﹂
えーと⋮。
魔王君は魔物の軍団の一番偉い人。
僕は魔王君の配下であるアルシアさんの奥さん。
つまり会社で考えると、魔王君は社長。
アルシアさんは⋮平じゃないだろうけど、族長はお義姉様だし、代
理のアルシアさんは副部長くらい?
今の状況は、副部長の奥さんが社長に会社の経営について意見して
いる。
確かに僕の言う事を聞く方が変な気がする。
﹁や、でも、決闘で勝ったら意見聞いてくれるみたいな返事でした
けど⋮﹂
﹁それは知らないな。手紙の返事を出したのはボクじゃなくて、レ
イニー達だから﹂
﹁あ、そうなんだ∼⋮﹂
なんだか変な展開になってきた。
しかし何とかして僕の言う事を魔王君に聞いてもらわねば。
僕の言う事に耳を傾けてもらう為の理由を腕を組んで考える。
﹁う∼ん、う∼ん。招かれた軍師とか、召喚された勇者⋮だと敵に
なっちゃうか。僕ってそう言うのじゃないし。せめて攻略対象キャ
503
ラなら? 僕ってばステージ4までのチュートリアルキャラだしな
ぁ。あっ!﹂
考えていたら、丁度良い理由を見つけた。
僕はビシッと魔王君を指差し、その理由を高らかに告げた。
﹁魔王君、君は僕の言う事を聞く理由が在る! 何故ならば、僕が
セシリア・マリンズだからっ!﹂
主人公である魔王君は、セシリアに保護され、戦い方を教えられ、
命を助けられたのだ。
現在セシリアである僕には恩義が在るはず。
しかしドヤ顔の僕と対照的に、魔王君は眉を顰めて不機嫌な表情を
した。
﹁セシリアさんは君みたいにニヘラっとした緩い顔をしてない。そ
れに胸も大きかったけど、牛みたいな君の胸ほどじゃない﹂
﹁顔も失礼だけど、牛みたいな胸とは失礼な! これは子供が出来
たから仕方ないんだよ!?﹂
魔王君は無表情の癖に、僕の言う事をまったく信じてない顔をして
いる。
こうなれば元日本人の底力を見せてくれる。
﹁あ∼、あ∼、んんっ。﹃落ち着け、少年。生き残ったのは君と数
人だけだ﹄。﹃戦い方を知りたいだと? 君はまだ子供だろう?﹄﹂
僕がしゃべると魔王君は目を見開いて驚いた。
504
この台詞は主人公とセシリアの掛け合いの時の台詞だ。
ゲームの好きなキャラの台詞を覚えるとか、日本のゲーム好きには
余裕なのです!
﹁﹃帝国に続いて法国の軍だと! 罠か⋮少年、私の部下と共にす
ぐに逃げろ。私は殿を務める!﹄﹂
﹁セ、セシリア⋮さん?﹂
魔王君の瞳に光が灯るのと同時に、その目から涙が溢れた。
話を聞いて貰おうと思ったけど泣くのは予想外です。
﹁⋮⋮セシリアさん、生きてたんだ﹂
﹁生きてたって言うか、うん、まぁ﹂
﹁良かった。うぅ﹂
無表情だったのが泣き笑いの大感動状態です。
その様子を見て、体はセシリアだけど中身が僕なので罪悪感が湧い
てしまう。
﹁⋮⋮セシリアさんが居なくなってからボクは一人で⋮。仇を討と
うって頑張ってたんだ。でも良かった。生きてて。ねぇ、セシリア
さん、ボク頑張ったんだ。やっと両親とセシリアさんの仇が討てそ
うなんだ。魔物を使って復讐できそうなんだ﹂
感動する魔王君を見ていたら、徐々に様子がおかしくなる。
505
﹁まずはセシリアさんを殺した法国の連中だ。あぁ、でもセシリア
さんは生きてたんだっけ。でも許せない。だから、ねぇ、セシリア
さん。ボクに協力してくれるよね?﹂
感情を表さなかったさっきまでと違い、魔王君から怒りと悲しみが
伝わってくる。
同時に伝わるレイニー以上の威圧感に、僕は数歩後ろに下がってし
まう。
急激な魔王君の変化に動揺して、僕は迂闊に発言してしまった。
﹁僕は3国との戦争を止めようと来たんだけど⋮﹂
言った瞬間、ブワァと風が吹いたように殺気が駆け抜けていく。
﹁なんで! ボクは一人で頑張ってきたのに! セシリアさんの為
にも! 何でボクに反対するの! またボクを一人にするの! ボ
・・・・・
クを一人に⋮またあんなに悲しい思いをさせるなら、セシリアさん
だって許さない!﹂
明らかに敵意を向けてくる魔王君。
僕はゲームの時の事を軽く見てたんだろう。
魔王ルートの主人公は、元仲間すら殺してでも進むほど壊れている
事を。
その彼を諌められるのは、ダグラスさんを初めとした数人のキャラ
だけだった事を。
強さがわかる能力などなくとも、魔王君から放たれる威圧感でレイ
ニーと互角かそれ以上だと分かる。
506
今なら逃げられるかもしれない。
背中の扉をチラッと見て、再度魔王君を見つめる。
その姿は、涙を流して泣いている子供にしか見えない。
アウラや家で待ってる子供達の事が頭に浮かぶ。
逃げたいのを我慢して、ぐぐっと堪える。
よくわからないけど、今ここで如何にかしないといけないという直
感と共に。
﹁他所の子でも、お母さんは泣いてる子供を放っておけないんだよ
っ!﹂
僕と魔王君の戦いが始まった。
泣いてる子供を攻撃するわけにもいかない。
しかし戦闘プランは特にありません。
ヴァルキュリア
﹁とりあえず、出し惜しみせずに︻戦乙女召喚︼!﹂
この︻戦乙女召喚︼は1∼8体の分身を召喚するスキルです。
分身出現中はMPをガンガン消費するけど、自分と同じ性能の分身
を出せるので便利です。
子供達が同時に泣き出したりした時に使うと、とても助かるスキル
なのだ。
子沢山の家の奥さんには是非覚えて欲しいスキルです。
507
﹁出し惜しみせずに、8人の分身をだしましたよっと﹂
﹁へぇ、面白いね。でもね!﹂
魔王君が両手を挙げると、影から3本の真っ黒い剣が出現しました。
︻影の剣︼は物理攻撃扱いの前方3列貫通の攻撃だ。
いくら威力があっても3本程度なら︱︱
﹁って、な、何本の剣をだしてるのかなぁ∼?﹂
魔王君の影から出る剣は3本に留まらず、何十本もの影の剣が宙に
浮かぶ。
﹁穿ち殺せ!﹂
﹁ひぃぁぁ∼∼∼!?﹂
魔王君の合図で一斉に僕と分身に向かう剣の群れ。
逃げ場もないほどの剣の投擲に分身達がやられていく。
僕自身は咄嗟に︻闇の衣︼を出してガードした。
しかしヒュンヒュンと飛んでくる何本もの剣に腕を斬られる。
﹁ぐっ、ヒール﹂
一定の攻撃ダメージをカットする︻闇の衣︼を突き抜けてくるとは。
大量の︻影の剣︼の猛攻は耐えれたけど、分身は全部やられた。
︻戦乙女召喚︼は維持より発動にMPを使うので乱発できない。
508
また出しても愚策⋮だよね。
食らって分かったけど魔王君の︻影の剣︼は僕より威力が高い気が
する。
明らかに相手の方が強いとわかり、次の行動を悩んでいると︱︱体
を動かせなくなった。
﹁これは⋮﹂
﹁影の呪縛だよ。セシリアさんの影を縛って動けなくしたんだ。動
けなければボクに逆らったりしないよね?﹂
﹁んぎぎ、こんなものっ!﹂
﹁⋮へぇ、セシリアさんも影を操れるんだね﹂
油断も隙もない。
何やら影を使って動けなくされてた。
適当に自分の影を動かして破る事ができたけども。
影の剣の数とか、影の呪縛?とか、ゲーム外のスキルが多すぎ。
僕が影でアルシアさんとかを縛る時は、実体化させて物理的に縛っ
てたのに∼。
距離を取ってると不利と悟ったので近づく事にしよう。
自分が動く時は剣を装備してると素早く動けるので、アイテムボッ
クス内の鋼鉄の剣を装備︱︱出来ない。
509
﹁あれ? 剣が出てこないなぁ。えーと﹂
アイテム画面を出して武器のカテゴリーを探す。
するとそこには何もなし。
はて?フェシスさんから貰った鋼鉄の剣があるはずだけど⋮。
﹁あ、アウラを妊娠した時の騒ぎで出したまま仕舞ってないのか。
アッハッハ∼﹂
﹁セシリアさん、何かしてるなら早くしたほうが良いよ。またこれ
を防がないといけないんだから﹂
魔王君のその声に、現実逃避の笑いから前を見る。
そこには無数の黒い剣が空中に浮いていた。
﹁そ、そんな最古の王みたいな攻撃は卑怯じゃないかなぁ?﹂
﹁ふふふ﹂
泣きながら笑っている魔王君。
僕は必死に対策を考える。
同じ様に︻影の剣︼を出す。
僕には3本以上出せないので却下。
どこかの湖の騎士のように飛んできた剣を掴んで他の剣を迎撃する。
相手の武器支配とかできないので、掴んだ瞬間剣を消されたらお仕
舞いなので却下。
510
痛いけど頑張って突っ込んで近づく。
近距離なら︻影の剣︼もあんな風には使えないし、元剣聖な僕は近
づけば有利な気がする。
と言うよりも、近づかないと嬲り殺しだよね。
いざと言う時の鋼鉄の剣の代用は、自分で出した︻影の剣︼で代用
できる気もするし。
方針は決まったけど、普通に突っ込んだら大ダメージか下手したら
やられちゃう。
だけど︻闇の衣︼に僕の奥の手を使えば、少しのダメージで済むと
思う。
﹁うぬぬ∼﹂
﹁そろそろ行くよ。セシリアさん!﹂
奥の手を使うのを躊躇してたら、魔王君から剣の雨が飛ばされてき
ました。
エクスプロージョン
﹁︻極大爆発︼!﹂
それを見て僕は爆発の魔法を剣に向かって唱える。
ボガァァァン!
剣と当たり爆風と白煙が拡がる。
﹁そんな爆発くらいじゃ、ボクの攻撃は止まらないよ!﹂
僕の魔法は低い賢さのステータスに比例して非常に弱い。
511
なので剣の雨が止まらないのを承知の煙幕代わりです。
僕は魔王君へ向かい白煙の中へ入っていく。
そして走りながら︻闇の衣︼を纏い、さらに︻全てはずす︼で裸に
なる。
僕の持ってる称号裸族のおかげで、裸になれば︻闇の衣︼以上にダ
メージを防ぐのだ。
煙の中を胸を押さえながら必死に走る。
何度か剣が当たって肌を斬られるが気にしない。
︻闇の衣︼と裸族の称号のおかげで、肌に浅い傷が出来るだけで済
んでます。
煙から出ると、すぐに魔王君の位置を確認した。
﹁甘いよ! セシリアさ、ん⋮﹂
彼は僕を見るとピタっと動きを止める。
チャンスと思い一気に彼の目の前まで移動した。
﹁え、あ、う﹂
︻闇の衣︼を解いて、僕は動けずに居る魔王君へ手を伸ばす。
そして彼の頭を持って、ぎゅ∼∼と抱きしめた。
﹁ふぁ、はっ、うぅ?﹂
﹁家族を失って辛かったね。ずっと頑張ってたんだね。でも、君は
512
もう一人じゃないでしょ? ティティスさんやレミネールさん、レ
イニーやゴブリン王にオーク王が居るじゃない﹂
抱きしめられて抜け出そうとムズムズ動いてた魔王君は、僕が話し
かけていくと少しずつ動きがおさまっていく。
﹁君を支えてくれてる人も居るんだから、一人だなんて悲しい事言
わないで。ね?﹂
抱きしめながらゆっくりと頭を撫でる。
暫く撫でていると、魔王君は動かなくなって僕に軽く体重を預けて
きた。
どうやら落ち着いたようでホっと安心した。
泣いてる子供を叩いたりもできないし、これで治まって良かった良
かった。
そう僕が撫でながら安堵していると、部屋の影から声がかかった。
﹁まったくだよぉ、坊やぁ。私たちが居るじゃないさぁ。もっと頼
っておくれよぉ﹂
﹁そうですよ。主殿。私達は今主殿と共に居るじゃないですか﹂
﹁我が君の孤独を察してやれぬ我が身が口惜しい。その寂しさを少
しでも埋めるように努めるゆえ、一人だなどと悲しい事を言わない
でおくれ﹂
魔王君を優しい目で見つめながら、影から3人が出てきた。
ティティスさんにレミネールお義姉様にレイニーだ。
513
3人を見て、僕はゆっくり魔王君を離す。
魔王君と3人が見つめあう。
静かに見つめ合い、ゆっくり魔王君が口を開く。
﹁ありがとう﹂
そう言うと3人は魔王君を囲んで抱きしめた。
その光景に感動していると、部屋の影からさらに4人現れた。
﹁あれ? アルシアさんにリオにアウラにフェシスさん?﹂
﹁アハ∼ン。来て見たら戦闘中だったから∼ん。全員で影のヴェー
ルで隠れながら見てたのよ∼ん﹂
﹁なんだか丸く収まったようでよかったですね﹂
僕の横に来てアルシアさんが一緒に魔王君達を見ながら言った。
魔王君達を見てると、改めて家族を大事にしようと思う。
﹁それにしても、戦闘中に裸になるとは、セシルは溜まってるんで
すか? エッチなのも程ほどにしないとダメですよ?﹂
﹁ンフ∼。裸で戦うのはエクスタシーなのねん? セシりん、エロ
エロなのね∼ん﹂
﹁ママ、発情したの?﹂
514
あっちの温かい光景に比べ、うちの家族はどうしてこうなんだろう。
﹁それよりもぉ、あんたさぁ、そのままずっと裸で居るのかぃ?﹂
フェシスさんに言われ、脱いだ下着とドレスを急いで拾う僕でした。
515
第30話 vs魔王様︵後書き︶
戦闘とかシリアスは苦手です。
この話で剣を使って戦うはずが、何故か剣使わず⋮。
感想の返事で剣使うと言ってたのに、ごめんなさい︵つд`︶
次話から、セシルさん平常運転に戻ります。
セシルさんの平常運転とはつまり⋮!
あ、ゴブとオク王は城門で気絶してるのでした。まる。
516
第31話 にゅるにゅる♪
魔王君との戦いの後、夕飯を兼ねた宴が催されました。
レイニーが捕ってきた猪の丸焼き。
アイテムボックスにあったスライムさん特製お弁当。
フェシスさんがどうしてもと言うので持って来てた樽のお酒。
それらを食べて飲んでわいわい騒ぎました。
ティティスさんとフェシスさんが飲み比べしたり。
レミネールお義姉様が酔いながらアルシアさんに説教したり。
酔ったリオとレイニーが、どっちが魅力的か比べる為に裸になった
り。
それをガン見してたゴブリン王とオーク王が氷像にされたり。
変身したアウラが魔王君を襲ったりしましたが、楽しかったです。
そう言えば魔王君の名前は、レオン君と言うそうです。
ゲームの時のデフォルト名の一つですね。
宴は途中でしたが、僕は疲れてたので先に寝る事にしました。
アウラの事はアルシアさんとリオが面倒を見てくれるそうです。
レイニーに屋根がある巨大なベッドの部屋に案内されて、すぐに寝
たのですが︱︱気づいたら裸で、全身に何かがまとわりついていま
した。
517
体を何かが這い回る感覚がして目覚めた。
僕の胸から足にかけて長い何かが巻きついてるようです。
﹁うにゃぁぁ、これは一体⋮⋮﹂
﹁おや、起きたのかぃ?﹂
よく目を開けて自分の脚の方を見ると、見知った顔がありました。
﹁⋮⋮フェシスさん、何してるんですか?﹂
﹁何って、ナニをしようと思ってねぇ﹂
フェシスさんが何を言いたいか分かりません。
自分で状況を考えてみよう。
疲れて寝てたら知り合いのラミアさんに全身ヌルヌル巻きつかれて
た。
⋮⋮意味わからないっ!
﹁相変わらず察しが悪い子だねぇ。今回の事で、あんたに協力する
見返りに魔母のあんたに子供を産んでもらおうってだけさぁ﹂
﹁聞いてませんよ!? そもそもフェシスさんも女性で僕も女で子
供出来ませんよね!?﹂
﹁淫魔のリオって子に﹃協力したらセシりんがラミア族の跡継ぎを
産んでくれるのねん﹄と持ちかけられてねぇ。さらにほらぁ、あの
子の力でしっかり男性器をつけてもらったから安心だよぉ?﹂
518
フェシスさんが急に乗りに気になった裏には、リオとの取引があっ
たと。
そしてしっかり子供を作れるように、見るからに太くて長いオチン
チンを付けてあげたと。
﹁リオ、謀ったな! リオ!﹂
﹁やっは∼。それじゃあしっかり子作りしようかねぇ﹂
青肌美人のフェシスさんが、長い舌を出して優しく微笑んでいまし
た。
僕の体に絡み付いてるフェシスさんの下半身が、ニュルルと動きな
がら締め付けてくる。
﹁ふぁっ、なんだかニュルニュルするぅ﹂
﹁媚薬効果のあるヌメった液体でねぇ。水魔法で作ったのさぁ﹂
俗に言うローションっぽいそれを全身に塗りつけられる。
ヌルンと触れ合う部分がサァァっと熱が引くように気持ち良い。
媚薬効果のせいか、少しひんやりするフェシスさんの肌に触れてい
るだけで膣がジュンと濡れてくる。
﹁あっ、ふっ、んっっ﹂
媚薬のせいで思わず声が出てしま⋮⋮
519
﹁ただねぇ、男を気持ちよくさせる為の物だから、女には肌触りが
よくなるだけの液体なんだけどねぇ﹂
⋮⋮ったのは仕方ないよね。
媚薬効果がなくてもヌルンとして触られると気持ちが良いんです。
﹁そういや聞いたよぉ∼。あんた、痛いのが好きだってぇ﹂
﹁へ? まぁ、なんとなく僕自身そっち方向の性癖っぽいとは思い
ますけど⋮﹂
﹁じゃあ、こういうのはどうだぃ?﹂
ぷっくり膨れた僕の乳輪の根元をしっかり握って乳房を持ち上げら
れた。
﹁ふにゃぁぁぁぁん。んはぁぁ、やぁぁ﹂
﹁先っぽから母乳が溢れてるねぇ。乳を搾られるのがそんなに気持
ち良いのかぃ?﹂
ヌルヌルの感触と勃起した乳輪を絞り持ち上げられる痛みの快感が
気持ち良くて、膣内がヒクヒク動いて喜んでしまう。
痛くされるだけでは感じられない快感。
ローションのヌルヌルがこんなに気持ち良いとは思わなかった。日
本に居た時も合わせての初ローションプレイに、もっと触って欲し
いという感情が沸き起こる。
520
﹁そんなに物欲しそうな顔をしないでもぉ、ちゃぁんと乳搾りして
あげるよぉ∼﹂
﹁いぎぃ、オッパイをぉぉ、両手でぇ、されたらぁあ、取れちゃう
ぅぅ﹂
両手で右胸を根元から絞り上げられる。
胸を締め付け引っ張られる痛みがゾクゾク気持ち良い。
プシュゥゥゥ。
フェシスさんの手が乳首の方に上がっていくと、僕の胸から噴水の
ように母乳が噴出した。
﹁んぁぁぁぁぁ。気持ちよくてぇ、オッパイで射精しちゃったぁ﹂
﹁そんなに気に入ったのなら、両方じっくり搾乳してあげるかねぇ﹂
手を開いて横から両胸を挟むように押さえつけられた。
それから僕の胸を押さえながら上に行く毎に握りを強くして絞られ
る。
プシュ、プシュ、プシュ。
﹁ひゃん、ふぁん、ひぁん﹂
母乳が出る度に声を上げてしまう。
﹁う∼ん、これじゃあいまいち絞れないね。ほいさ∼っと﹂
521
﹁ひゃ﹂
フェシスさんは急に胸から手を離したと思ったら、巻きついてた下
半身を使い僕をうつ伏せの宙吊りにした。宙吊りにされた僕の胸は
重力に引かれ下にプラーンと伸びながら、ポタポタと母乳を滴らせ
ている。
﹁フェ、フェシスさん、僕を宙吊りにしてどうするの?﹂
﹁わかんないのかぃ? こうするんだよぉ﹂
言ったと同時に僕の乳房の先端の方を握りこむと、握り込みながら
下に向かって引っ張った。
﹁んほぉぉぉ。んひぃぃぃ﹂
ブシャァ、ブシャァ。
それはまるで牛の搾乳のように母乳を出させられる。
何度も何度も牛のように胸を搾られ、搾乳される快感を教え込まれ
る。
気づけばベッドの上に僕の母乳の水溜りが出来るほど搾られた。
母乳を搾り取られると言う状況と、胸の先端を痛いほど握られる快
感で僕はイッてしまう。
﹁んはぁぁあ、搾乳されてイクぅぅぅ﹂
522
胸だけじゃなく膣からもプシュと潮吹きをし、手足を痙攣させなが
らイってしまった。
﹁ふにぃ、はぁ、はぁ﹂
﹁よしよし、気持ちよかったみたいだねぇ。じゃあ、今度はしっか
り子作りだよぉ﹂
イった快感でだらりとしてる僕の腰に尻尾を巻きつけて、逆さまの
状態にされフェシスさんに抱きしめられる。
お腹に感じるフェシスさんの胸の感触が気持ち良い。
しかしこの体勢だと僕のオマンコはフェシスさんの顔辺りになって
恥かしい。
そして僕の顔の前には、女性の上半身と蛇の下半身の境目辺りがき
て⋮。
オチンチンが僕の顔にぺちぺち当たるのです。
﹁ほらぁ、あんたの中にそれが入るんだから、しっかり口で濡らし
ておくれよ﹂
﹁んっ、がっ﹂
僕の腕ほどありそうな太いオチンチンを、口に咥えさせられる。
喉の奥までくるオチンチンで苦しくて、口を限界まで開いて必死に
息する。
﹁ふー、ふー、んー、むぅー﹂
523
﹁私はこっちの準備をしないとねぇ。おやぁ、本当に処女膜がある
ねぇ。﹃処女膜破られる快感が好き好きだから、出産後もヒールで
治してるのよん﹄と言ってたけど⋮。あんた、本当に変わった子だ
ねぇ﹂
﹁ふー、むーむー、むーー!﹂
エインとのエッチの癖で、つい治してしまうだけです!
と、思ってても口はオチンチンで塞がってて話せません。
僕がむーむー言ってると、ニュルンと膣に舌が侵入してきました。
フェシスさんの舌は、膣に入ると僕の処女膜をじっくり舐め回しま
す。
破らない程度に押されたり、膜の穴の部分をチロチロ引っ掛けて舐
められたりして、初めての気持ち良さで足がピクピク痙攣してしま
います。
﹁ふぅー、ふー、うぅー﹂
﹁ふぅ∼。あらあら、随分気持ち良さそうだねぇ。あぁ、舌を抜い
て残念そうな顔をしないでおくれよ。もっと奥まで舐めてあげるか
らさぁ﹂
抜いた舌を再び僕の膣に挿入すると、一気に奥まで突きこんで来ま
した。
﹁ふが、ふぐぅぅ﹂
何度目になるか分からない処女膜が破れる痛みが気持ち良くて、頭
524
が真っ白になっちゃった。
僕が気持ち良さで涎を垂らしながらオチンチンを咥えていると、膣
に更なる快感が走ります。
ラミアのフェシスさんの舌は長いらしく、子宮口をチロチロ舐めら
れてます。
子宮口をザラザラする舌で擦られる快感はあまりに気持ち良くてイ
っちゃいました。
﹁ふぅぅぅっぅう、ふぐぅぅうう﹂
絶頂で膣肉がヒクヒクして中の舌を締め付けます。
その感触も気持ち良くて、さらに快感を感じます。
僕が気持ち良くて頭がぐらぐらしていると、子宮口に舌が入ってき
ました。
子宮口をじわりじわりと進む舌の感触と、子宮口を拡げられる快感
が体を走りぬける。
電気が走るような快感が全身を覆って体に力が入りません。
子宮口を舌で犯される快感にビクンビクン膣が痙攣してます。
そしてフェシスさんの舌が子宮口を抜けて子宮内に入り僕の子宮を
舐めた瞬間︱︱あまりの快感に僕は気絶してしまいました。
﹁ふぐぅぅぅぅぅううう⋮⋮あ⋮⋮ア゛∼⋮⋮﹂
﹁ありゃ、やりすぎたかい。⋮⋮まぁ意識が無くても続けるかねぇ﹂
525
ミチミチミチと股間が裂けるような痛みで目が覚める。
﹁んぎぎぃ、裂けるぅ﹂
膣が太くて硬い物で無理矢理拡げられているようです。
﹁一気に入れるのは、ちょっと辛かったかねぇ?﹂
後ろから聞こえる声で、目覚める前の状況を思い出す。
どうやらフェシスさんは、僕が気絶してる間に膣にオチンチンを挿
入したようです。
ミチミチ拡張される膣の痛みの快感を感じながら、くるっと周りを
見渡す。
座ってるフェシスさんのオチンチンに、背中を向けて僕が座るよう
な体勢だ。
﹁それじゃあ、動くよぉ﹂
﹁ひっ、あっ、んぐぅ﹂
フェシスさんが上下に激しく動く。
オチンチンが引き抜かれそうになると、膣のお肉がオチンチンに引
っ張られ裏返りそうになる。
逆に突き入れられる時は、子宮を思い切り押し込まれお腹がオチン
チンの形に膨れる。
526
ピッタリと嵌ったオチンチンは膣肉に擦れるというより、膣ごと僕
の内臓全部を犯してるようです。
﹁んぎゅぅ、くるぅしぃ、んぎぃぃ﹂
両手を持たれ、後から激しく犯される。
下半身の蛇の部分で体を抑えられて、僕は自分では体を動かせない。
エッチと言うよりも、男の人が射精する為の道具のようなピストン
が続く。
﹁んぐ、んあ、んひ、んあぁ、んふぅ、ふぅ、あぁ、はぁ、あふぅ、
あはぁ♪﹂
﹁苦しそうだったのに、徐々に甘い声になってきたねぇ﹂
子宮が膣から出るかと思うほど引っ張られる快感。
子宮が押しつぶされて中がオチンチンの形に変えられる快感。
その二つの快感に僕の頭は支配されていく。
﹁んはぁ、イィのぉ、太くてぇ、長いぃ、オチンポ嵌められてぇ、
気持ち良いのぉ﹂
﹁ふっふぅ∼。そろそろ出すから、孕んでもらうよぉ﹂
ズムッ、ズムッ。
水音ではなく、オチンチンを叩き付けられる音が体から響いてくる。
527
﹁んはぁ、いいのぉ、極太オチンチン、好きぃ﹂
太くてきつかったオチンチンも⋮むしろ太くてきついのが気持ち良
くて、少しでも快感を得ようと膣でオチンチンを締め付ける。
﹁そぉ∼ら、出すからねぇ!﹂
ズッ、ビュルルルルル。
一番奥まで突きいられ、緩くなった僕の子宮口を大量の精子が押し
通る。
﹁ンァァァ、イグゥ、熱くてきついのぉ、あ、あ、あ、アァァアア
♪﹂
僕がイっても、フェシスさんのオチンチンはビュビュっと最後の一
滴まで精子を吐き出す。
子宮口を叩くその射精に、僕の体はビクンビクンと反応する。
やがてふと膣に入ったオチンチンの感触が消える。
﹁おや、役目が終わったら消えるんだねぇ。なんとも便利な﹂
快感で意識が虚ろな僕を、フェシスさんはゆっくり寝かせてくれた。
﹁お腹がぷっくり膨れてるねぇ。まさかもう妊娠した? そんな訳
はないかぁ﹂
﹁ひっ、はっ、ふにゅぅ﹂
528
精子を溜め込んで膨れた僕のお腹を優しく撫でてくれる。
撫でられるのも気持ち良くて体が反応してしまう。
﹁あらまぁ、膣は開いたままだねぇ。まぁ大量に出たから、多少漏
れても大丈夫だろうかねぇ。それじゃ∼ゆっくり寝るんだよぉ﹂
最後に僕の頭を撫でてフェシスさんは部屋を出て行った。
フェシスさんが出て行った後も、僕は気持ち良くて暫く口を開けた
まま快感に酔っていました。
快感が治まってきて来た頃に、ベッドの上に誰かが居ました。
﹁セ、セシリアさん﹂
魔王君ことレオン君が、顔を真っ赤して僕の横に居たのです。
529
第31話 にゅるにゅる♪︵後書き︶
フェシスさんにとって子作り交尾だったので淡白です。
惚れた男性相手なら、フェシスさんはもっとネットリヌルヌルです。
セシルさんはもうオチンチンに完全陥落状態!
ラミア姿のフェシスさんにも一切の抵抗感がないという!
魔王様とはどうしようかな。
次回も特にストーリー的進展はありません!
530
第32話 若さ故の過ち
﹁レオン君、どうしたの?﹂
僕はまだポーとする頭で、横に居るレオン君に聞いた。
﹁そ、その、ティティス達が、好きならしっかり物にして来いって
⋮⋮﹂
さすがゲームでのハーレムメンバーです。
ハーレム要員が増える事より、魔王を応援する姿勢に変わりないん
だね。
⋮⋮でもお義姉様、妹嫁に自分の男を宛がうとかどうなの!?
複雑な顔をしてた僕の気持ちを察したのか、レオン君が補足してく
れました。
﹁レミネールは反対してたんだけど、ティティスに酔い潰されてた﹂
﹁そ、そうなんだ﹂
お義姉様が唯一常識的っぽい事に安心しつつ、それ以上にラミア族
が侮りがたい気がする。
フェシスさんといい、ティティスさんといい⋮⋮油断できぬ。
ふと見ると、レオン君がジーと熱い視線で僕を見てました。
531
少し時間が経って頭が冷えてた僕は、反射的に毛布で体を隠します。
﹁あっ⋮⋮﹂
するとレオン君が見るからに動揺して落ち込みました。
それを見て少し罪悪感が湧き、僕は今の自分の行動を考える。
今僕は何故体を隠したか?
見られると恥かしいから?
何で恥かしい?
開きっぱなしの膣や垂れる精子、精子を溜め込んでぷっくり膨れた
お腹、母乳が出てる胸。
普通に恥かしい状態な気もするけど⋮⋮そうじゃなくて∼。
僕を見るレオン君の熱い視線。
年下の男の子が自分を好いてくれている。
その子に痴態をさらして恥ずかしかった。
何この恋する乙女のような自分の気持ち!?
自覚すると、自分の気持ちのせいで余計に恥かしくなる。
元男なのに乙女チック!⋮⋮今更な気もするけども。
僕が顔を真っ赤にしてると、レオン君が毛布を剥ぎ取り抱きついて
きました。
﹁セシリアさん、好きです!﹂
532
﹁ひゃぁ、レ、レオン君、僕これでも人妻だよぉぉ!?﹂
抱きついてきた彼は、僕の胸を左手で揉みながら、乳首を舌で嘗め
回します。
揉む力は優しく、それで居て刺激を感じる強さ。
舐める舌は、僕の乳首に引っかかり弾かれるように転がされます。
﹁ちゅ、ちゅう、ぺろぺろぺろ﹂
同時に膣に右手の人差し指と中指を入れながら、親指でクリを優し
く愛撫してきました。
膣の上部を指で掻くように、膣内を撫でるように指が動きます。
クリトリスも先っぽをクニクニ撫で回し、ゆっくり全体を痛くない
ように押し潰してきます。
﹁んぁ、はぁん、あぁん♪﹂
触られるのが気持ち良くて、反射的に喘ぎ声が出てしまいます。
僕はレオン君に聞かれるのが恥かしくて、自分で口を塞いで声が出
ないようにしました。
初めて男の人に体を触られるのは、今までの誰よりも気持ち良いで
す。
⋮⋮レム君は、僕の中でカテゴリー女の子なのです。
﹁ふっ、ぐっ、ふうぅ、うぅ﹂
533
僕が口を押さえて耐えている間も、レオン君の愛撫は続きます。
右の胸を揉み、舐め、吸い終われば、今度は左の胸を。
胸を下から救い上げるように撫でるように揉んで、出た母乳を吸い
ながら乳首を甘がみされたり。
膣の上部を弄ってたと思えば、ぐるんと回す様に穴全体を擦り。
硬くなったクリが開放されピョンと起ったと思ったら、割れ目の三
角のヒダを伸びるように指で押され弾かれて。
﹁んぁ、いぃ、やぁん、気持ちいいのぉ♪﹂
女性の体になってから、一番気持ちよく感じちゃってる。
男の人に触られるのが気持ち良いのか。
主人公のレオン君だから気持ち良いのかわかりません。
﹁あぁん、そこぉ、オマンコの上、そこぉ、グニグニ押されると気
持ちいいのぉ﹂
気づけば口は塞いでなくて、脚も開いて触りやすいようにしてまし
た。
ジュプジュプジュプ。
僕の膣を十分に濡らしトロけさせると、レオ君が僕の股の間に移動
しました。
彼の股間には、リオの人口オチンチンと違う本物オチンチンが見え
534
ます。
玉もあって、血管も浮き出て、特別大きくないけど立派なオチンチ
ンです。
レオン君がソレを僕のオマンコに宛がい⋮⋮すぐには挿入しません。
僕の割れ目に沿わせて、何度かニュルニュルと焦らせます。
﹁レ、レオン君、焦らさないで、オチンチン、頂戴?﹂
ついそう言ってレオン君の方を見ると、膨れた僕のお腹が見える。
僕は膨れたお腹が恥かしくて、すぐに顔を逸らしてしまった。
すると僕のお腹を優しく撫でる感触がした。
﹁セシリアさん、綺麗だよ﹂
﹁レオン君、ひゃ、あっ、あっ、あっ﹂
僕が綺麗と言われ嬉しくて彼を向いた瞬間、膣にオチンチンを挿入
された。
ニュルンとオチンチンの根元まで一気に捻じ込んでくる。
﹁ぁっ、はっ、んふぅ、オチン、チン、気持ちぃぃ♪﹂
開いてた僕の膣は、オチンチンを感じようとぎゅっと締まる。
レオン君のオチンチンの形だけじゃなく、硬さも熱さも分かるくら
いに締め付ける。
535
天然の力強い男性器を初めて挿入され、膣肉に擦りあうのが有り得
ない程快感です。
﹁んひぃ、んはぁ、おほぉ、堕ちちゃうぅ、レオン君のオチンポに、
堕おとされちゃぅぅ☆﹂
気持ち良さでヨガっていると、膣内のオチンチンがビクビク痙攣し
はじめた。
そして少しすると、ビュゥゥビュビュと膣中で射精する。
膣に広がる精子の熱さも気持ちいい⋮⋮けど⋮⋮。
射精が終わると、レオン君はオチンチンを抜いた。
正上位で僕を犯してた彼は、背中側へと倒れていく。
僕はレオン君が倒れたのを見て、むくっと起き上がった。
彼の射精してフニャとしたオチンチンを握って告げる。
﹁愛撫とか上手だけど⋮⋮早漏なんだね。でもダメだよ? 僕が満
足するまでしてもらわなきゃ!﹂
﹁セ、セシリアさん?﹂
フェシスさんも満足するまではしてくれなかったし。
愛撫が気持ちよすぎて、イケてない僕はもう我慢出来ないのです。
オチンチンを握られて、レオン君がちょっと怯えてたのは気のせい
だよね。
536
だって、彼は僕の事が好きなはずだもんっ♪
僕は握っていたレオン君のチンチンを口に咥えた。
まず奥まで一気に咥え、ぢゅるるるると卑猥な音を立て吸いながら
抜く。
口の中には、中に残ってた精子が吸い出される。
甘くて苦くて温かいネットリした精子を舌で転がしながら美味しく
飲む。
ゴクンッ。
﹁ふふふ、美味しい﹂
唇についてた精子も舐めて、レオン君ににっこり微笑む。
未だ握っているオチンチンはふにゃっとしてたので、勃起させる為
に再度口に含んだ。
口の中に入ってるオチンチンに舌を螺旋に絡ませる。
舌に感じるヌルッとした食感と少し苦い塩味が美味しい。
窄めた唇と絡めた舌、先端が当たる喉の奥でオチンチンを味わいつ
くす。
﹁ぢゅるるる、んんんん、じゅるるる、んむぅぅぅ﹂
537
﹁んぁぁ、ッセ、セシリア、さ、口で激しい﹂
オチンチンを咥えて、抜いて、咥えて、抜いて。
絡めた舌をカリや筋に沿わせたり引っ掛けたりして楽しんだ。
ある程度口で味わってから、棒の部分を口から抜いて、手で捻るよ
うに握る。
自由になった口で、今度は袋に入った玉を口に含む。
棒の部分はリオの作ったので咥えた事があるけど、玉は初めてです。
口の中で、袋に包まれた玉を潰さないように舌で嘗め回す。
﹁ひっ、セシリアさん、そ、そこは、ひゃ﹂
唇で軽く圧力をかけたり、舌でつつくと、レオン君がいちいち反応
する。
ソレが可愛くて楽しくて、棒を持ち上げるよう握って見やすくなっ
た袋の玉を両方口に咥えた。
口の中の柔らかい二つの玉の感触を楽しむ。
すると、いつの間にやらオチンチンがびんびんに勃起していた。
﹁オチンチン、また硬くなったね﹂
﹁はぁ、はぁ、はぁ。セ、セシリアさん﹂
何故かハァハァしてるレオン君の上に跨ぎ、チンチンを握り締めな
がら言う。
538
﹁僕の事好きで襲いに来たなら、僕が満足するまで付き合ってね♪﹂
言いながらオチンチンを膣に宛がった。
宛がってそのまま腰を落とす。
チュプッと音がして、僕のオマンコは快感をくれるオチンチンを飲
み込んだ。
﹁満足するまで、寝かさないからねっ﹂
その後、僕とレオン君の第2の戦い?はレオン君が干からびるまで
続きました。
﹁セシリアさん、もう起たないよっ。出ないよっ﹂
﹁まだまだだよっ! まだマンコと口しかしてないからねっ。僕を
好きなら後もいっぱいしなきゃね!﹂
﹁た、助けてぇ⋮⋮﹂
539
第33話 魔母
﹁ふみゅ∼、なんだか体の調子が良いな∼﹂
﹁ヌムー。セシりんは朝から元気ねん⋮⋮﹂
﹁セシルは元気が取り得ですよね⋮⋮﹂
魔王ことレオン君と戦った翌日、今後の方針を決めると言う事で会
議をするらしいです。
僕はアルシアさんとアウラとリオに合流して、会議室へ向かってる
所ですよ。
﹁二人とも朝なのに元気ないね∼? 僕なんて、未だ嘗てないほど
元気なのにっ﹂
﹁⋮⋮昨日フェシすんに無理に力使ったから、疲れてるのよん﹂
﹁⋮⋮姉様の説教で疲れたんですよ﹂
そう言えばリオの力って、愛情と性欲を性器にするんだっけ。
フェシスさんは僕に友情とかはありそうだけど、愛情と性欲はなさ
そうだったからなぁ。
無理したのか。勝手な約束をしたので自業自得だと思います。
アルシアさんはお義姉様からの説教でって⋮。
どんだけ説教されたんだか。
540
僕なんてレオン君と日が昇ってもしてたけど元気なのになぁ。
二人共情けない。
﹁ママは元気?﹂
﹁元気だよ∼。今まで感じられなかった自分の魔力が、溢れるほど
感じられるくらい元気だよ∼﹂
手を繋いでるアウラも心なしか昨日より元気そうで、ママは嬉しい
です。
そんなアウラが爆弾発言をします。
﹁ママ、魔王の匂いがする﹂
﹁へ?﹂
﹁ママの体から、魔王の匂いがする﹂
﹁な、何を言ってるのかなぁ∼? アウラはも∼。気のせいでしょ
∼?﹂
なんとなくレオン君とのエッチはバレたくないです。
アウラの言葉で、アルシアさんとリオにジーと見られてます。
その時、丁度良い感じに扉の前に着きました。
﹁あ、連絡くれたレイニーが言ってたのはこの部屋じゃないかな?
それじゃ∼。会議室に入ろう∼﹂
﹁ホム∼ン。ごまかしたのねん﹂
541
追求されない内に、ささっと部屋に入る僕なのですよ。
会議室に入ると、巨大な円卓がありました。
座るのは、僕、アルシアさん、リオ、お義姉様、ティティスさん、
レイニー、ゴブリン王、オーク王です。
ラミア族長のティティスさんが居るからか、フェシスさんは居ない
みたい。
アウラはリオの膝の上です。
僕が抱っこしようとしたら﹃ママのオッパイが肩に重いから嫌﹄っ
て言われました。
愛娘が酷いです。
﹁さて、では我等の今後を話し合う為、会議を始めたいと思います﹂
レミネールお義姉様が司会のようで、開始を告げますが︱︱。
﹁お義姉様、魔王のレオン君がまだ来てませんよ﹂
魔王と言う重役だから遅れて出勤かと思ったのですが、レイニーが
教えてくれました。
﹁我が君は、疲労ゆえに来ぬ﹂
﹁魔王なレオン君って言う、一番偉い人が来なくて良いの?﹂
﹁やはー、昨日あんたが坊やに勝ったじゃないかぃ。今一番偉いの
542
はあんたさぁ﹂
﹁え゛?﹂
予想外のティティスさんの言葉に全員が頷きます。
昨日のあれを勝利と言うのかは微妙だと思うんだけど⋮。
と言うか一番偉い人とか、ごめんなさいしたいんですけど⋮。
﹁それよりも、じゃ﹂
僕に向かいレイニーが若干蒼い顔で睨んできます。
﹁お主、セシルだか、セシリアだか知らぬが⋮。我が君に何をした
? 今朝、妾の所に泣きながらきたのだが⋮﹂
﹁え? な、何もしてないよ?﹂
﹁あの常時落ち着いて、感情少ない我が君が、普通の幼子のように
泣いて来た時は驚いたぞえ。お主を物にするように唆したのは妾と
ティティスでは在るが⋮⋮干からびたように精気少なげな様子は尋
常ではなかったのぅ⋮﹂
﹁﹁﹁﹁ほぅ﹂﹂﹂﹂
﹁あ、あはは、な、ナニもしてないヨ∼?﹂
何故かアルシアさんにリオ、それとお義姉様とティティスさんにジ
ト目で見られる。
この雰囲気、間違ってもナニして吸い尽くしたとは言えないっ。
543
﹁まぁ、セシルさんは魔母らしいですからね。仕方ありませんか。
ハァ﹂
ため息をつきながらも、フォローしてくれるお義姉様。
﹁さて、魔母たる方ならば、我等の指導者として申し分ありません。
主殿に代わり、私達の頂点はセシルさんとして会議を始めましょう﹂
そして手をパンパンっと叩いて、改めて会議の開始を告げましたが。
﹁はい先生、じゃないや。お義姉様﹂
﹁セシルさん、なんですか?﹂
﹁えーと、何で魔母だと指導者として申し分ないのでしょうか?﹂
僕が質問すると、会議室がシーンとしました。
いや、だってね。
僕ってば中身異邦人で、魔母とかゲームでなかったから理由知らな
いし⋮⋮。
だから皆、僕をアホな子を見る目で見るのは辞めて欲しいです。
﹁フゥー、ではセシルさんの為に、歴史のお勉強から始めましょう﹂
盛大にため息をつくお義姉様です。
ため息をついた後、お義姉様の長い説明が始まりました。
﹁何千年も前、私達の住むこの世界に、今のように多種多様な種族
544
が居ない始まりの時代がありました。人族はエルフや人間、ドワー
フしかおらず、魔物と言われる者も種類が少なかったと言います﹂
﹁その始まりの時代に、一人の女性がこの地に降り立ったのです。
それが︱︱魔母リリス様です﹂
﹁リリス様は絶大な魔力で、獣と差がないような生活をしてた人族
や魔物達を従えました。そして争っていた生き物達を纏め、地上を
争いのない楽園としたのです﹂
﹁さらにリリス様は様々な種族と交配し、新たな種族を生み出しま
した。エルフとまぐわい私達ダークエルフを。人間とまぐわいラミ
リザードマン
ア族やゴブリン族、オーク族を。狼やトカゲの魔物とまぐわい猫人
や虎人や蜥蜴人を。ドラゴンとまぐわい竜人を﹂
そこで疑問に思う。
﹁サキュバスは生んでないんですか?﹂
前にリオが、魔母リリス様が我等を産み出したって言ってたけど。
﹁説明途中ですよ。セシルさん。質問は後で受け付けます﹂
﹁はい⋮﹂
小学生の時の﹃説明は最後まで聞きなさい﹄という先生の台詞を思
い出した。
ママになっても自分の根本が変わって無い事にガックリです。
﹁リリス様に付き従ってた魔力の高い者達、魔族と呼ばれる者です
545
ね。その中のインプと交配し、淫魔サキュバスが生まれたと言われ
てます。他にも、ゴブリンとまぐわってサイクロプスを生んだり、
トレントとまぐわいアルラウネやドリアードを生んだと言います。
リリス様は多種多様な魔物や人と交配し、様々な種族を生み出した
のです﹂
﹁なるほど∼。だからご先祖様的魔母リリス様と同じ魔母な僕は、
魔王軍のトップでも問題ないってことですか⋮⋮﹂
しかしドラゴンと交配って⋮。
ドラゴンって大きいよね。
きっとオチンチンも大きいよね。
それを受け入れられるって、どんだけ∼。
僕がリリス様の神秘を妄想していると、レイニーが質問しました。
﹁ふむ、魔母についてはよしとして、なれば我が君の名乗られる魔
王とは何ぞや﹂
﹁魔王ですか。それを説明するには、リリス様の事を話し終ってか
らですね﹂
レミネール先生、僕の時と対応が違うんですけど。
お義姉様は身内に厳しいタイプですか。
﹁ある時、多種多様な種族を生み出すリリス様に、天界の神が怒っ
たそうです。地上の生物を力で抑えて、魔物生み出すリリス様は許
せぬと言う天界の神との戦いになりました。リリス様は生み出した
子らを残し、最初から従ってた魔族を率いて天界へと攻め入ったの
です﹂
546
﹁天界⋮? ヘブンズゲート⋮?﹂
﹁おや、よく知ってますね。ヘブンズゲートと言われる天界への門
を通って攻め入ったそうです。ただゲートは実在してないと言われ
ていますので、真偽はわかりません﹂
ボソっと言った僕の言葉に反応する先生。
天界と言われて、ふと呟いてしまったけど。
それはあれですか、タイトル画面からクリアデータをロードすると
いけるやり込みダンジョン的なモードの、ヘブンズゲート編の事で
しょうか。
タイトル画面からしかいけないから、この世界ではないのかな?
ないといいなぁ、なんとなく。
﹁そして攻め入ったリリス様は神と相討ちになりお亡くなりになら
れました﹂
﹁うっ﹂
自分の事じゃないけど、同じ魔母がなくなった話は良い気分がしま
せん。
﹁リリス様亡き後、残った魔族を従え、地上の生き物を纏めたのが
初代魔王ですね。その魔王は、魔族からの開放を訴えた人族、主に
人間に討たれたらしいです。蛇足ですが、アリストラス法国の教義
の人間優性種説は、この辺りからきてるんでしょう﹂
547
﹁って∼と∼。つまりあれかい。魔王ってのは魔母の後釜ってか、
魔母の配下だったってのかぃ?﹂
﹁その通りですね。ティティス殿﹂
なるほど。
歴史的には、むしろ魔母の僕の方がトップに向いていると。
﹁ふむ、大変ためになる話であったのぅ﹂
﹁まったくだねぇ﹂
﹁そうかぁ、俺らってそうやって生まれたのかぁ﹂
﹁我らの出自がわかり、とてもためになったのである﹂
⋮⋮レオン君配下の皆様は、お義姉様の話を聴いて感心しておりま
す。
僕だけじゃなく、彼らも知らなかったんだね。
﹁魔母って本当に偉かったんですね﹂
﹁ンヤ⋮アーシャーちゃんも知らなかったのねん? 似た者ダメ夫
婦ねん⋮﹂
うちの旦那様も知らなかったらしいです。
あ、お義姉様が変な目で皆を見ています。
あの目は知っている!
548
エインが良く僕を見る目!
つまり呆れている目です!
お義姉様、色々苦労してそうだなぁ。
﹁同じ族長のティティス殿や、300年以上生きるレイニー殿まで
⋮⋮。ハァ﹂
頑張れ、レミネールお義姉様。
﹁さて、皆が認識を一つにしたと思いますので、今後の方針ですが。
セシルさんが戦争反対と言うことですから、議題はどうやって生き
残るか。ですかね﹂
お義姉様の発言に違和感を感じます。
﹁お義姉様、僕、戦争反対はしてませんよ?﹂
﹁セシルさんは、人族との戦いが反対だからここに着たのでは?﹂
・・
﹁そうではなくて∼、人族3国との戦争に反対だから来たんですよ
?﹂
この世界は3国間で戦争が起きる。
それに巻き込まれ魔物はボロボロになるはずなのだ。
何もしなければ子供達がどうなるか分からない。
だから僕は戦争自体には反対じゃないんだ。
3国間で勝手に戦争起すだろうしね。
549
﹁つまりあれかぃ。セシルのお嬢ちゃんは、3国同時に戦わなきゃ
良いってのかい?﹂
﹁えーと、ティティスさん、そうじゃなくてですね﹂
最初は1国だろうと、魔王ルートを進んだら結局3国と戦うのだ。
それでは危険すぎてダメなのです。
﹁ええい、お主は妾達をどう導く気じゃ。分かり易く説明するがよ
い﹂
レイニーが苛立って聞いてくる。
﹁人間族万歳の法国。人間族が微妙な立場の連邦。この2国は、問
題があると思うんです﹂
法国は論外。
連邦も猫人、虎人、竜人が優勢の国。
魔王ルートはゲームでは人族と争うだけでした。
﹁長い物には巻かれよと言う諺がありまして∼﹂
﹁セシル、早く言ってください﹂
﹁そうなのよん。焦らすのはエッチだけでいいのよん﹂
焦らしてるわけじゃないんだけど。
﹁つまり∼﹂
550
﹃つまり?﹄
ゲームではなかった選択肢を選べば良いと思うんです。
ビュゥゥゥゥ。
50m級の木々が生い茂る山間に僕らは来ています。
中でも一番高い木の上にあがり、少し離れた戦地を見下ろしていま
す。
﹁お∼、リオの索敵通り、連邦と帝国が戦ってる所だね﹂
﹁フッフ∼ン。影から影に動く私に、索敵はお任せなのよん﹂
小さな羽根をパタパタして僕の横で浮かぶリオ。
﹁じゃあ、予定通りボクとレイニー、セシリアさんとリオのペアで
行動?﹂
木の枝に乗ったレオン君が問いかけます。
﹁そだね∼。出来るだけ武将、隊長さんを捕獲出来るといいんだけ
ど﹂
551
﹁妾と我が君にかかれば、余裕であろ﹂
蝙蝠の羽を出し、空中に浮かびながら無い胸を張って言うレイニー。
今回の作戦で突入するのは、僕、リオ、レオン君、レイニーの4人
です。
レベル的にアルシアさん達他の皆は、安全な場所で緊急時の対応と
して控えてます。
僕のレベルはいつの間にやら65になってました。
実はレベル75だったレオン君を倒したから、一気に経験値が入っ
たのだと思います。
性的にしか倒してない気がするけど。
レベルが上がって︻肉体操作︼と言うスキルを覚えてました。
内容は、自分及び他者の肉体を変質、変異させることが出来る。
なんか怖そうなスキルですよ。
それよりも今は。
﹁ね∼、リオ。僕はコレをつけなきゃダメなの?﹂
﹁ダメなのよん! 影操作で羽を出して迫力上がったけど、それじ
ゃ足りないのよん! 角は必須なのん!﹂
魔母らしい迫力と威厳を出す為に、真っ黒い角つきヘアバンドを付
けさせられてます。
それとリオに影操作を教わり、影の羽をだして約100m上空まで
飛べるようになったのです。
552
高所恐怖症なので大体100mから上は行ってないので、上限は未
知ですが。
なんだか急に色々パワーアップした僕です。
﹁うにゅ∼、色々不安だけど、子供達の為にも頑張らなきゃ﹂
﹁うんうん、その意気なのよん。私もサキュバスとして頑張るのよ
ん!﹂
﹁ボクもセシリアさんの為に頑張る﹂
﹁妾は我が君の為に頑張るぞえ﹂
3人とも頼りになりそうで安心です。
レオン君とレイニーはキスまでしてます。
後でレオン君は叩いておこうと心のメモに書いておきます。
﹁それじゃ∼、作戦開始っ!﹂
僕の合図で、魔王軍最強の4人が戦場へ向かうのでした。
553
第33話 魔母︵後書き︶
説明回でした。
次話はセシルさん視点じゃないお話になる予定です。
554
第34話 ネーブルの憂鬱 前編
∼∼大陸の南西の山間にて∼∼
全ての部隊が予定通り野営地に辿り着き、天幕の椅子に座り一息つ
く。
私が指揮する帝国第4師団は連邦の軍と戦中だ。
明日戦うであろう相手の軍を指揮するのは、猫族の姫である連邦議
長ミニム姫。
﹁ふぅ﹂
私は現状を省みてため息をついてしまう。
いつ攻めて来るかわからないセシリアの部隊を壊滅させ、憂いを断
ってから連邦を一気に攻めるはずが、我が国が連邦に攻め入ったと
同時に法国が攻めてきた。秘密裏とは言え、相互不干渉の約定の期
間内にだ。
そのせいで帝国が誇る4師団の内、第3師団と私の第4師団で連邦
を攻めるはずが、法国の攻勢が激しく連邦には私の第4師団のみが
当たる羽目に。
海軍主体の私の軍では、陸戦も出来るとは言え中々厳しい。
我が国と連邦共に南が海に面している為、私の軍が連邦を相手にし
ているが⋮⋮。
555
リザードマン
﹁ミニムめ、早々に海に面する蜥蜴人の集落に見切りをつけて、陸
戦のみに切り替えるとはな﹂
力押しが多いと言われる猫人族や虎人族が中心の国だというのに、
本能なのか知略なのが不明だが実に効果的な戦略だった。
海戦が得意な私の師団と海戦による消耗を経る事無く、蜥蜴人の戦
力を一切失う事無く陸戦へと持ち込まれた。
﹁海戦か海に面した地での戦いで、圧倒的な力を見せて士気を削ぐ
筈が!﹂
﹁ネ、ネーブル様、落ち着いてください﹂
横に居たエルフ族の副官ベルガモットに諭される。
思い通りにいかず、苛立ちからか怒鳴ってしまったようだ。
苛立つ気持ちを抑え、有能な副官に指示を飛ばす。
﹁明日、夜が明け次第、山間に立て篭もる連邦の軍に攻め入るぞ!﹂
﹁ハッ!﹂
翌日の戦の最中、私の居る天幕へ戦況の報告に来た兵の言葉に耳を
疑う。
﹁ネーブル様、議長のミニム及び連邦の各部族長達が前線に出てき
556
ました!﹂
﹁またかっ!﹂
奴らと何度か戦っているが、毎回将が前線へと出てくる。
軍における将と言う者は、兵に指示を出し戦の責任を取るべき者の
事だろう。それが何を考えて前線へ出てくる!万が一討ち取られれ
ば、兵が混乱し余計な犠牲を出すだろうし、そこで勝敗が決すると
いう危機感がないのか!
帝国ではありえない戦術に苛立ちが募る。
しかしながら、奴らは一騎当千の猛者。並みの者では討ち取ること
が出来ず、その戦術に苦戦している事実。
ミニムや族長達の行動に、絶えず先陣を切り、最後は味方の為に残
り死んだあの女の事を思い出す。
﹁連邦の高官共は何を考えている!﹂
ダンッと半ば無意識に机を叩く。
﹁し、しかしネーブル様、これはチャンスでもあるのでは?﹂
﹁⋮⋮分かっている﹂
ベルガモットが言うとおり、チャンスでもあるのだろう。
前線に出ているミニムや族長達を討ち取るか捕獲すれば、俄然有利
557
になるのだから。
﹁不本意ではあるが⋮余計な犠牲が出る前に、私がミニムの所へ出
る。ベルガモット、後の指揮を任すぞ﹂
だがそれは本来我が国のやり方ではない。
将とは兵を導きその行いの責任を取る者だ。
自らが前に出て蛮勇を奮う者ではない。
﹁ハッ! 他の族長達をミニムに合流出来ぬように兵を動かしつつ、
いざと言う時は将軍の援護に回れるようにしておきます!﹂
﹁それでいい﹂
有能な副官に後を任せ、私は戦場に向かう。
﹁ハァァァァァアア!﹂
私の振るう鞭がバチィンと地面を叩き大地を割る。
ミニムはそれをかわし、離れた場所から私に向かい拳を突き出す。
その拳に対し腕をクロスさせて防御する。
クロスさせた腕に不可視の重圧がかかり、後方に軽く飛ばされる。
ギガスアーム
神具巨人の腕。
ミニムの装備する銀のガントレットは、装備した者に巨大な力を与
え、目に見えぬ巨大な手を振るう事が出来るという。
558
見えない拳を防ぎ吹き飛ばされたが、私はその場から薙ぐ様に鞭を
振るう。
鞭は離れて届かないはずの距離を埋めるように、伸びてミニムに襲
い掛かる。
陛下から下賜された、私の持つ海鳴りの鞭も貴重な宝具だ。
無限ではないが、振るう者の意思に従い伸縮するのだ。
横に薙ぐ様に振るった鞭をミニムは飛んでかわし、私目掛けて開い
た掌を叩きつける様に動かす。
その動作に危機を覚え、素早く横に移動する。
ウォーターブ
するとバァンと耳をつんざく音と共に、先程まで私が居た場所に巨
大な手形が出来る。
レット
音も手形も無視し、飛び上がり着地する前のミニムに向かい︻水弾
丸︼を放つ。
ミニムが空中で手を振ると、︻水弾丸︼はミニムに届く前にかき消
すように消える。
私と着地したミニムはお互いを見合い静止する。
﹁国のトップだと言うのに、前線に来る愚か者だけあって、大した
蛮勇ぶりだな﹂
﹁国のトップだからこそ自らが前に立つのは当然にゃ﹂
﹁軍略の何たるかも考えぬ獣人の長だけはあるな。自らの重要さを
考えず、鎧の一つも纏わぬとは﹂
559
﹁自分の国に引き篭もって出てこないヒッキーな皇帝よりましにゃ。
それにお前だって趣味の悪い真っ黒な服着てるだけで、鎧着てない
にゃ﹂
その言葉に頭に血が上るのを自覚する。
陛下は成果主義の冷血皇帝と言われる事もあるが、その実は部下や
民を誰よりも大事にするお方だというのに。
それと私の着ている軍服は士官用の特別製で、金糸や銀糸で飾り付
けられおり黒いだけではない。何よりもただの布の服にしか見えな
いミニムの服よりも、対刃や耐魔性能に優れる物だ。
﹁貴様をこの場で捕縛して、陛下の御前に突き出し跪かせてやろう﹂
﹁お前なんかにニャーは負けないにゃ!﹂
再び鞭と見えない巨人の手との攻防が始まる。
私達の戦いに手を出せる兵はなく、長い時間1対1の攻防が続く。
暫くして、私はこの戦の戦況が分からぬ事に焦りを感じ始めた。
ベルガモットは上手くやれているだろうか。
連邦の部族長達が現れた他の戦場はどうなっているのか。
一進一退の攻防で、決定打に欠ける事に焦りがさらに増し、つい力
任せに鞭を振るってしまう。
﹁はんっ! 殺ったにゃ!﹂
560
大振りに振った私の鞭を、ミニムが地面スレスレに体を屈めてかわ
す。
屈んだ状態のまま両手を広げ、見えない手で左右から私を叩き潰そ
うとする。
力任せに大振りに振ったせいで、今からでは完全に回避する事が出
来ない。
致命傷を貰うだろう事を覚悟の上で、手遅れの回避行動に移ろうと
した時︱︱ミニムに向かい上空から黒い剣の様な物が降り注いだ。
ミニムはその黒い剣をかわし、後方に大きく飛びのき上空を見る。
私をもつられて上を見上げる。
そこには裸同然の桃色の髪の淫魔と思われる魔族と、背に天使のよ
うな6枚の羽を生やした金髪の魔族が居た。
天使のような羽なのに天使ではなく魔族とすぐにわかったのは、魔
族の特徴である赤眼だったからではない。
その魔族の羽が御伽噺の天使のように白い羽ではなく、6枚の翼は
漆黒の黒であり、頭からは禍々しい角が生えていたからだ。
突如現れた魔族の二人。
私とミニムはお互いを忘れ、淫魔と邪悪な気配を纏った6枚羽の魔
族に対して武器を構えた。
561
562
第35話 ネーブルの憂鬱 後編
私とミニムは上空に現れた二人の魔族に警戒する。
魔族。
太古の昔、人族や魔物を支配した者達と言われている。
その力は絶大で、単体としての力は人族のそれを大きく上回る。
しかし殆どの魔族は、その強大な力を恐れた人族に駆逐され、今で
は賞金をかけられた淫魔くらいしか居ないとされていた。
こいつらの目的は何だ?
突如現れた魔族の目的を、私は計りかねていた。
淫魔の方はなんとかなりそうだ。
だが、あの黒い6枚羽の魔族は何だ。
威圧感で思わず足が下がりそうになる。
件の魔族は禍々しい黒い霧を纏い、楽しそうに私を見下ろしている。
﹁ほむほむ。中々苦戦してるようだね! 帝国4将軍の一人、海の
ネーブル!﹂
警戒していると私に声をかけてきた。
私の名前を知っているようだ。
ちっ、狙いは私か。
ミニム姫だけでも厄介だと言うのに、魔族まで相手にする事になる
563
とは。
私が魔族達も敵と定め覚悟を決めかけた処で、予想外な事を言って
来た。
﹁ミニムを倒すのに協力するから、後で僕の話を∼お願いを聞いて
欲しいなぁ﹂
予想外な事を言い出した魔族に対し、私が返事を出来ずに居るとミ
ニムが先に動いた。
﹁はんっ、お前達のようなエロい魔族にニャーが負けるわけがない
にゃ!﹂
﹁べ、別に僕はエロくないよっ!?﹂
見えない拳を上空の魔族に振るう。
いくら魔族とは言え、あの攻撃を受ければただで済まないと思うが。
しかしなぜミニムはエロいなどと言ったのだろうか。
淫魔は確かに裸同然だが、6枚羽は黒いドレスを着ていて普通だと
思うのだ。
胸が少し⋮いや、かなり⋮否、とても大きいが。
それはさて置き。
ミニムの見えない手の攻撃を、金髪の6枚羽が淫魔を引っ張り回避
した。
回避と同時に私の近くの地面へと降り立つ。
﹁ンナー。セシりん何するのん? 今何もなかったのに急に引っ張
564
って﹂
﹁あ∼、ミニム専用装備の効果なんだけど、遠距離に見えないパン
チを飛ばせるんだよ﹂
どうやら私の事だけではなく、ミニムの事も知っているようだ。
この魔族、下調べをして現れたと言う事か。
ますます油断出来ない。
﹁さて、協力するから後で話を聞いて欲しいんだけど、おっけ∼?﹂
発する威圧感に比べ、かなり軽い感じで話しかけてくる。
私を頷かせる為の演技なのだろうか?
今の現状を考え、私は返事をする。
﹁いいだろう。ミニム姫を討ち取るか捕縛出来たら話を聞こう﹂
さすがにミニムと魔族二人を相手には出来ない。
何を望んでいるか不明だが、今は目の前の魔族達と事を構えないよ
うにした。
﹁よーし、言質は取ったからね∼。それじゃあいくよ! ミニム姫
様!﹂
うしちち
﹁かかってくるにゃ! 牛乳魔族!﹂
何故、ミニムに様をつけるのだ。
そしてミニムも牛乳などと⋮⋮確かに凄い胸ではあるが⋮⋮。
565
この場の緊張感が少し薄れた気がする。
ヴァルキュリア
﹁行け! ︻戦乙女︼﹂
6枚羽の影が膨れ上がったと思ったら、6枚羽とそっくりな2体の
人型が現れた。
違いと言えば、全身が黒い影のようだと言う事だろうか。
現れた2体の影がミニムに向かい駆ける。
2体に向かいミニムが見えない手を振るうが⋮黒い2体の影は、ま
るで見えるかのように淀みなくかわしミニムに肉薄する。
﹁あれ!? 今の攻撃ギリギリかわして接近した!? ヴァルキュ
リアって実は僕より強い!?﹂
6枚羽の魔族が驚いている。
自分の技だろうに、何故驚くのだ。
接近した2体の影がミニムに殴りかかろうとするが、ミニムはニヤ
リと笑う。
﹁はんっ! 近づいた程度でニャーを如何にか出来ると思うにゃ!﹂
余裕ある言葉と共に左右から来る影の拳をかわし、カウンターでそ
の胸、心臓の位置に拳を打ち込む。
見事に2体の影の胸を貫き、ドロリと溶けるように人型の影が形を
崩しながら沈んでいった。
566
﹁おー、さすがチートキャラミニム姫だね! でも甘いよっ!﹂
﹁な、なんにゃ!?﹂
ドロリと溶けたと思った黒い水のような影が、縄のようになりミニ
ムの体を縛っていた。
﹁ヴァルキュリアがやられても、その後の影を操作した影縛り! 2重のトラップと言うわけです!﹂
細い体の割りに異様に大きな胸を反らしながら言う6枚羽の魔族。
なるほど、最初の影の人型は囮だったと言う訳か。
﹁さて、ミニム姫も捕らえたし、話を聞いてくれるかな?﹂
﹁あ、あぁ。いいだろう﹂
魔族が現れ協力するという想像外の状況に、未だに思考が追いつい
ていなかった私は上手く返事が出来なかった。
私が苦戦したミニムをこうもあっさり捕らえる目の前の魔族。
私は密かに警戒心をあげる。
﹁ちょ、ちょっとセシりん、なんかあの猫人、光ってるわよん?﹂
今まで傍観していた淫魔が、突如焦った声を出す。
その声に私と6枚羽の魔族は揃ってミニムを見た。
確かになにやら光っている。
567
メイルシュトローム
﹁あ、やっばい。トランスか。通称バーサクモード⋮。ちょ、ちょ
っとネーブルさんや、やばい感じなのであれですよ。必殺︻大渦潮︼
で一気に弱らせて!﹂
﹁何故お前が私の切り札を知っている!﹂
陛下と極一部の者しか知らないはずの私の切り札を言われ、思わず
目の前の魔族を詰問しようとした。
﹁にゃぁぁぁぁぁぁぁ!﹂
その直後、拘束を破ったミニムが金色に輝きながら私達に襲い掛か
ってきた。
﹁くっ、貴様一体なんなのだ。後でしっかり答えてもらう﹂
﹁うんうん、是非後で話を聞いてもらいたいですよっ﹂
﹁くるのよん!﹂
後に後悔する事になる、奇妙な魔族との共闘が始まった。
魔族二人を連れて、自陣の天幕へ戻った。
﹁くそー、ネーブルが早く︻大渦潮︼しないから、逃げられちゃっ
568
たじゃないかぁ﹂
﹁なんだと? 貴様がミニムに近づかれパニックになったせいだろ
う!﹂
﹁あっはっはっ。僕って剣を持たないと接近戦ダメなのに、剣を出
すのすら忘れてビビっちゃったからね∼﹂
﹁ンヌー。光る猫人とか、ちょっと面白かったのねん﹂
楽しそうに話す二人の魔族。
ミニムに逃げられたと言うのに、何故楽しそうなのか。
私達が天幕に入ってすぐに、副官のベルガモットが来た。
﹁ネーブル様、ご報告が! なっ、ここにも魔族!?﹂
私の天幕に居る魔族に驚いたようだが⋮ここにも?
﹁この二人は、とりあえず敵ではない。それより何の報告だ?﹂
﹁は、はい。えーと、その。戦場に突如、吸血鬼と人間の子供が現
れ、連邦の将を捕らえて我々に引き渡してきたのですが⋮⋮﹂
それを聞いて、いつの間にか羽がなくなっている金髪魔族を見やる。
﹁あ、それ僕の仲間⋮仲魔? だから丁重に扱ってね?﹂
やはりか。
内心ため息をつきつつ、ベルガモットに命令を下す。
569
﹁その2名は客人として扱い持て成しておけ﹂
言外に、この二人の魔族と合流させないようにという思いを篭める。
﹁は、はい﹂
優秀な副官が居なくなり、改めて魔族に眼を向ける。
﹁さて、お前の話とは何だ?﹂
﹁あれ、ミニム逃がしちゃったのに聞いてくれるんだ?﹂
﹁お前の仲間が敵の将を捕らえたらしいからな。ミニムではないが、
敵将を捕らえたので聞こうと思ったのだが﹂
何が目的か分からずに、目の前の魔族と下手に敵対したくないと言
う思いもある。
私の言葉を聴くと、金髪魔族はホっと息を吐いた。
﹁いやぁ、良かったぁ。やっぱ交渉相手にネーブルを選んで正解か
も?﹂
﹁⋮⋮どういう意味だ?﹂
﹁凄い厳しい感じだけど、実は優しくて仲間思い。で、誰にも言わ
ないけど本当は軍人したいわけじゃなくて、夢は普通のお嫁さんな
んだよね? でも皇帝の種族差別を無くす為の個人の実力を評価す
る実力主義に共感して、世界平和の為に青春を捧げた優しいお姉さ
570
︱︱げふぅ﹂
﹁なななななぜお前が、その事を知っているぅ!﹂
陛下にすら話した事のない、私の夢がお嫁さんという事実を何故知
っている!
﹁ぢょ、ぐ、ぐるじぃ﹂
苦しそうな声にハっとし、金髪魔族から手を離す。
﹁ぐぅ、今のはちょっとカルドでの拷問を思い出した。殆ど覚えて
なくて、忘れてたと言うのに、ネーブルの恐怖再び﹂
拷問⋮⋮?
なんとなくまるで以前に会った事のあるような物言いに、その顔を
ジーと見る。
ジっと見ている内に、私の手は自然と目の前の女魔族の顔に伸びた。
眼を吊り上げ、口元をしっかり締めるように顔に手を添えると⋮そ
こには知った顔が浮かぶ。
﹁き、貴様、セシリアか!﹂
﹁あ、正解なんだけど、なんぜ僕の目を吊り上げますか?﹂
﹁あまり面影がなかったものでな。というかセシリア、貴様魔族だ
ったのか? 赤い目はただの先祖返りかと思ってたが、正真正銘の
魔族だったのか﹂
571
祖先に魔族の血が流れている者は少なからず居て、種族関係なく先
祖返りで赤眼になる者も居る。セシリアもその類だと思っていたが。
﹁その辺、僕もよく分からないんだよね∼あはは﹂
﹁ん? そういえば、拷問とは⋮もしや1年ほど前のセシルと言う
冒険者の娘は﹂
﹁あ、あれ僕。いやぁ、あの時はあまり覚えてないけど酷い目に、
あっ、ぐるじぃ﹂
﹁貴様、あの時からセシリアか! 勘違いで拷問し傷つけ、沼地で
行方不明になってしまい、暫く食事を抜くほど心痛めていたという
のに、騙したのか!﹂
私の手をペチペチ叩くセシリア。
なぜ話もせずに手を叩くのか分からない。
しかしふと首を絞めていることに気づき手を離す。
若干、そのまま手を離さずに居たい思いもあったが。
﹁げふげふ。な、なぜか拷問された僕が悪い気がする不思議。コレ
がツンデレパワーか﹂
訳が分からない事を言うセシリアに怒りが湧く。
禍々しい魔力を放つ魔族で警戒せねば。
そういう思いは、いつの間にやらどこかに行っていた。
﹁貴様、連邦の士官だったが実は魔族だったのか。で、一体何のよ
572
うだ? 意趣返しか? それなら相手になるぞ﹂
﹁ま、待って! なんでそう怒ってるかな。実は部下には自分のよ
うに婚期を逃さないようにお見合いをさせたりしてる優しいお姉さ
んのはずで、うぐぅ﹂
﹁き・さ・ま・は! お前の部隊は実は諜報部隊だったのか! こ
の、余計な事ばかり言うな!﹂
感じる威圧感を超えるほどの軽い物言いに、警戒しろと言うほうが
無理なのだ。
現に淫魔の方はニヤニヤしながら楽しそうに見ている。
見ている先が私だと言う事に腹が立つ。
敵ながらその活躍にライバル視してた相手がこいつだと思うと、無
性に腹が立ってしまう。
﹁余計な事を言わず、さっさと用件を言え!﹂
感情のままに怒鳴るように言う。
しかし私は、この時の自分の言葉を後悔する事になる。
﹁あーあー、うん、よし。ではえ∼と、魔王軍代表として、帝国幹
部、海のネーブル将軍にお願いします。僕ら魔物の軍勢は帝国に協
力するので、帝国の国民として迎えて下さいな!﹂
目の前の女の言った言葉の意味を、すぐには理解できなかった。
﹁えっとね。ダークエルフに淫魔にラミアにゴブリンにオーク、あ、
573
吸血鬼もいるしアルラウネもスライムも。う∼ん、もしかしたら他
の種族も増えるかも。でもあれだよね、帝国の皇帝って種族差別を
無くそうとしてるんだし、ちゃんと法律とか守って協力すれば魔物
でも差別しないよね? もしダメなら全面戦争だろうけど、大丈夫
だよね?﹂
理解してから、聞かなければよかったと思った。
魔物が、魔族が法律を守るから国民になりたいなどと言ってくると
は、誰が想像できるだろうか。
連邦と法国との戦争中に、魔族率いる魔物の軍勢と全面戦争などゾ
っとする。
﹁よろしくね?﹂
私の顔を窺う笑顔の女を殴ったとしても、果たして陛下は許してく
れるだろうか。
574
第35話 ネーブルの憂鬱 後編︵後書き︶
誰も知らない秘密を言って脅す。
2国と争い中で厳しい処に全面戦争しちゃうYO☆と脅す。
ネーブルさん的に選択肢がない脅迫の巻き。
でもセシル思考では
実は優しくて良い人なんだよねと誉めてるだけ。
全面戦争は帝国とではなく、魔王軍と3国とという意味。
ネーブルの優しさに縋る思いもあって、悪意がないセシルは悪女。
一応次話が本編最終話の予定です。
おまけ話もその後書くので、実質の最終話ではないのですけれど︵
;
575
最終話 ゲームの世界にTS転生
本日は気持ち良い快晴。
﹁は∼、良い天気だね﹂
海の都カルドの自宅でパンパンと洗濯物を伸ばして干しています。
晴れた日に洗濯物を干すって気持ち良いね。
﹁閣下、お辞め下さい﹂
僕が気持ちよく干していると、エルフ族であるメイド長のメロディ
アさんが止めてくる。
﹁いやでも、僕も何か家事くらいしないと?﹂
﹁閣下はお子様方のお世話をして下さいませ。子供のお世話は自分
ですると言って、乳母すら嫌がったのですから﹂
一般的な日本人だった僕にとって乳母とか違和感あったからなぁ。
白いレースの透けた下着を干そうとすると、グイグイ屋敷の方に押
される。
﹁分かった、分かりましたぁ﹂
下着をメロディアさんに渡して、大人しく子供部屋に行く事にしま
したよ。
576
現在の自宅である大きな屋敷の中の子供部屋に行くと。
﹁ウヌゥー。メディアのオムツの仕方が分からないのん⋮⋮﹂
リオが何やら悩んでました。
メディアと言うのは少し前に生まれたラミア族の僕の子供です。
もう一人同時にマリアと名付けた人間の女の子を生んでます。
フェシスさんとレオン君に犯されて出来た子達です。
﹁下半身が蛇なラミアの子供のおしめの仕方は、フェシスさんに聞
いておけば良かったねぇ。う∼ん。今度ダグラスさんの所のラミア
の奥さんに聞いてみようかなぁ﹂
﹁アァン。アスターがハイハイダッシュをしてるのん!﹂
唯一男の子のアスター君。
今では立派にハイハイをできるようになりました。
しかし何故か前を見ないで、猛ダッシュでハイハイをします。
﹁はっはっはっ。アスター君、前を見ないと壁とかにぶつかるよぉ
?﹂
﹁ンガーー。テースとディードとリットが人形を取り合ってスプラ
ッタにぃ!﹂
577
金髪ダークエルフのテースとエルフのディードとリット。
女の子エルフ系の子供達は人形が大好きっぽいです。
よく3人で取り合い、牛裂きの刑状態にしてます。
﹁子供って意外と容赦ないよね。色々と﹂
﹁ンヒィ。モリガンとフェイが寝ながら浮いてるのん!﹂
淫魔って赤ん坊でも飛べるんだねぇ。
無垢な顔で寝ながら飛んでる二人はマジ天使です。
可愛いです。
﹁セシりん、ボーとしてないで早く何とかするのん!﹂
﹁はいはい、分かったよー。︻戦乙女︼! 1号はアスター君専任
で! 2号はテース達3人の仲裁よろ! モリガンとフェイの面倒
はリオよろしく。マリアとメディアはそろそろオッパイの時間なの
で僕が見ます!﹂
力っぽい1号と技っぽい2号、そしてリオが頷いて一斉に行動する。
︻戦乙女︼を使い子育てするのも慣れたものです。
現在レベル70の僕は前より︻魔力自動回復︼の効果が上昇してい
る。
おかげで常時ヴァルキュリアを2体出せるようになったのだ!
8人の赤ん坊のお世話を、いつも通り行う僕達なのです。
578
子供達がお昼寝をしたので、庭で一服する事にしました。
広い庭園のような庭で、白いテーブルにパラソルのような物で影を
作り、優雅にお茶を飲みます。
﹁わっ、この紅茶美味しいねぇ﹂
﹁帝都の皇室御用達商人が卸している茶葉を使いました﹂
茶葉が高いのもあるんだろう。
でも単純にメロディアさんの淹れ方が上手なんだろうね。
僕が午後の一時を堪能していると、何やら揺らめくような魔力溢れ
る気配がした。
敷地の入り口の方から、半ば走るように蒼い髪の女性が近づいてく
る。
﹁セシリア! お前は何を優雅に茶を飲んでいる!﹂
﹁やっほー、ネーブル。どうしたの∼?﹂
﹁どうしたのじゃない! 帝国に協力すると言いながら、お前は何
をしている!﹂
ネーブルにお願いをしてから早半年くらい。
僕ら魔王軍は帝国に協力して頑張っている。
レミネールお義姉様の指揮が凄まじく、ダークエルフ、ラミア、ゴ
ブリン、オークの部隊がネーブルの軍と合流した後は、協力と言う
より僕らのほうが主力だったくらい活躍したものです。
579
レオン君が特に頑張って、戦功を挙げると褒美にHを要求されたな
ぁ。
その度に吸い尽くしてレベル70になったんだよね。
受精を任意で出来る︻任意受精︼とか。
1回の妊娠で同じ相手の子供を任意で複数孕む事が可能な︻多産︼
とか。
妊娠した子供を別の種族にするらしい︻胎児異種化︼とか覚えたな
ぁ。
65で覚えた︻肉体操作︼といい、変なスキルばかり増えてくる。
僕のレベルが70に上がるほどレオン君は頑張った。
途中からレオン君に構ってもらえなくなったレイニーが本気で頑張
るようになって、レオン君が戦功挙げられなくなったりもしたっけ。
フェシスさんとティティスさんのラミア親娘は、ネーブルの軍の人
と呑み比べをして仲良くなってたなぁ。味方の人族の軍とスムーズ
に連携とか出来るようになったのは、あの二人のおかげかな。
ゴブ&オーク王が撤退戦が得意なのは意外だったっけ。
レミネールお義姉様すら感心するほどだった。
そのせいで逃げるのが得意と認識されて、囮役を振られる事が多く
なったのは可哀想だった。
今はレミネールお義姉様が指揮する魔王軍が、連邦のミニム姫達を
後一歩まで追い詰めてるとか。
そんな事を紅茶を飲みながらネーブルに話していると。
580
﹁お前は、第5師団の長だろう。それなのに義姉のレミネールに軍
を任せて、何を優雅に茶をしている⋮⋮﹂
現在僕ら魔王軍の正式な扱いは、帝国第5師団です。
協力して1ヶ月くらいで、色々戦果が認められました。
そして魔王軍改め、帝国第5師団の通称魔軍として正式に帝国軍な
ったのです。
そして僕はその軍のトップ。
つまりネーブルと同じ将軍なわけですね!
皇帝から将軍に任命された時、同時に爵位を貰いました。
侯爵の爵位です。
そんな将軍で侯爵の僕が何故カルドにいるかと言うと。
﹁軍規に産休があってよかったよ∼﹂
﹁1ヶ月もしたら急激に腹が大きくなり、3ヶ月後には出産とは⋮。
魔族はどうなっている﹂
﹁妊娠期間が短いのは、魔族って言うより僕の特性だと思うよ?﹂
帝国軍だと、産休って2年も出るんだよね。
剣と魔法の異世界なのに女性に優しいです。
﹁もう出産を終えたのだから、子育ては配下に任せ、お前は前線に
出たらどうなんだ?﹂
581
﹁はっはっはっ、何をおっしゃる公爵様﹂
ゲームの時は知らなかったけど、ネーブルは公爵らしい。
侯爵とか公爵とか、爵位とか貴族とかちっとも分からない僕。
そんな僕にネーブルは色々教えてくれた。
教わってもさっぱり身についてないですけれども。
﹁僕が前線に出たら、足を引っ張る自信があるよっ!﹂
僕の台詞に頭を抱えるネーブル。
﹁大体、ネーブルだってカルドに居るじゃ∼ん?﹂
﹁私が居るのはお前たちのせいだろうが! 魔物の入植を実験的に
行う為に、私が治める領地のカルドが選ばれたのだ! と言うか、
貴様が! 貴様のせいで押し付けられたと言うのが正しいがな! 街の拡張と入植に対応する為に、私はカルドを離れられないのだ!﹂
僕らが帝国国民になる事を認めたとはいえ、いきなり人族と一緒に
街に住んで問題がないか分からない。という事で、実験的にカルド
で一部のダークエルフとラミアを住まわせてみる事になったのです。
今までモンスター扱いだったダークエルフとラミアが住むという事
で、住民への告知とか、実験的にカルドでの法律の一部改正、入居
用の地区の用意や拡張など等、いっぱい忙しいネーブルです。
最初に僕に関わったから、色々押し付けられたっぽい。
何度も愚痴られて知ってますとも。
582
﹁でもまぁ、完全人型のダークエルフはまだしも、意外にもラミア
族が普通に受け入れられてるし、良かったよね?﹂
これはダグラスさんやトラさんリューさんの事が大きい。
彼ら3人、何故かラミア族のお嫁さんを娶ったのだ。
結構有名な冒険者の3人。
その3人が人間形態では和風美人のラミアさんと結婚して、お腹に
は子供もいると。
それが良い評判となり受けが良いらしい。
主に男の人に。
﹁今のところは上手くいっているが、お前はもっと協力しろ。角付
きヘアバンドなどつけてふざけたりせずに﹂
﹁これはリオの趣味だし、外すと怒られるんだよね∼。それに僕が
下手に協力すると余計なトラブルが起こりそうだし? 既に一応協
力はしたし?﹂
僕がネーブルと話していると、屋敷からスライムさんにラミューと
レムが出てきた。
﹁あ、ネーブルさんこんにちは。セシルさん、スライムさんと診察
に回ってきますね﹂
﹁ぷるぷるぷるぷる﹂
﹁セシルお姉ちゃん、行って来るね﹂
583
スライムさんは今カルドでは、助産師として一部の奥様に有名なの
だ。
スライムさんの、僕に色々施してくれた素晴らしい献身と技術を伝
えようと思った僕。
それを伝える為に、カルドの妊婦さんを集め公開出産をしたのだ。
魔法のある世界だけど、出産は色々大変らしい。
ほとんど液状になって子宮内すら調べられるスライムさん。
逆子やへその緒が首にかかったりするのを、事前に避ける事が出来
る。
その上、体内で生成した様々な治療薬を使い色々なケアも出来る。
流体マッサージも気持ち良さ最高。
そう言った説明と、僕の公開出産時のスライムさんの上手さを見た
奥様方に、スライムさんは人気なのだ。
公開出産とかした甲斐があります。
﹁スライムが医者として働くとはな⋮⋮﹂
3人の後姿を見て遠い眼をするネーブル。
いつかネーブルもお世話になれると良いね!
と思っても口にしない。
前に口に出したら鞭で叩かれたし。
ネーブルはしっかりメロディアさんが淹れた紅茶を飲んで寛いでい
る。
584
将軍になった僕に、今の屋敷やメイドさん達を用意してくれたり、
爵位を貰った僕に貴族のありようを教えてくれたりと、やっぱり優
しいお姉さんでした。
﹁そう言えばお前の娘、アルラウネのアウラだったか。どうしたの
だ? 最近きても見ないが﹂
自然と僕の子供の心配をしてくれる。
もうこれはあれか。
実は僕にデレてるのか!
﹁アウラは最近、カルドに慣れたみたいで、あっちこっち見て回っ
てるみたいだよー? なんかお菓子をくれる男の人と知り合ったと
か言って、いつも遊びに行ってる﹂
﹁そ、それは大丈夫なのか? アルラウネだし大丈夫か? むむむ﹂
ネーブルは僕より心配してくれるけどさ。
変身して本気を出したアウラって、実は50レベルもあるから大丈
夫。
下手に手を出したら、その人はきっと後悔する。
﹁お姉様∼とと、げっ、ネーブル。コホン、ネーブル将軍、こんに
ちは﹂
どこからか戻ってきたエインが、ネーブルを見つけて猫を被る。
既にネーブルにばれているが。
エインも家族として一緒の屋敷に住んでいる。
585
僕を捜索してた時の繋がりか、今はダグラスさん達とパーティーを
組んで冒険者を続けているようだ。
﹁ちょっと護衛の依頼を受けたので、3,4日留守にしますね﹂
﹁そっか、頑張ってね。気をつけるんだよ﹂
子育てが落ち着いたら、また一緒に冒険しましょうね。
そう言いながら、エインは元気に外に走り出していく。
僕とネーブルはエインを見送ると、メロディアさんが用意したクッ
キーを食べる。
美味しい。
ネーブルはしょっちゅう僕の家に着て、同じ様に紅茶を飲んでお菓
子を食べる。
実は暇なのだろうか?
でもこう、一緒にお菓子を食べて気軽に話せる人が居るって良いよ
ね。
まるで友達みたいで⋮⋮あれ?
僕ってこの世界に着て友達いたっけ?
リオは部下だし。
エインは妹みたいな感じだし。
ダグラスさん達は知人ではあるけど、友人と言うほど親しくないか
も?
はっ!?
僕ってばボッチじゃないけど、友達が居なかった!?
586
僕はネーブルの手を両手で掴み顔を見つめる。
﹁僕達、友達だよね﹂
げんなりした表情をするネーブル。
ちょくちょく屋敷に愚痴りに来る癖に、酷いや。
﹁セシル、何をやってるんですか?﹂
僕がネーブルの手を握りながら項垂れていると、呆れたような声が
した。
﹁あ、アルシアさんおかえり∼。ん∼﹂
﹁ただいまです。セシル。チュゥ﹂
現在カルドの魔物地区の警備主任をしているアルシアさん。
お仕事から帰ってきたようなので、おかえりのキスをする。
﹁あ、アルシアさん、あむ、メロディアさんやネーブルもいるのに、
んっ﹂
アルシアさんの舌が僕の口の中に入り、舌と舌が絡み合う。
口内を舌で蹂躙されて、僕の頭はポーとしてくる。
﹁き、貴様のように、女同士とは言え充実した夫婦生活をしている
奴は、友人ではないっ!﹂
友達のネーブルが、ちょっと涙目で怒っていた。
587
なのでイチャイチャはやめました。
今度知り合いの男性︱︱レオン君かレムを紹介するから、元気出し
て、ネーブル。
夜、目が覚めると見知った部屋に居た。
カルドの自室ではなく、TVやパソコンといった家電がある部屋だ。
﹁あぁ、夢か﹂
日本に居た頃の自分の部屋だ。
夢と分かり、眠いので寝ようと眼を閉じると声が聞こえた。
﹁私の子供達の喧嘩を仲裁してくれて、ありがとう﹂
眼を開け声のするほうを見る。
そこには半透明の女性が立っていた。
金髪で頭に黒い角を生やし、赤い瞳をした黒いドレスを着た女性だ。
﹁あなたが望むなら、こっちの世界に戻してあげられるけど、必要
なさそうですね﹂
ちなみに胸のサイズはあまり大きくない。
588
﹁あなたの世界のゲームを擬似的な門として利用して召喚し、分か
り易いようにゲームの機能を付属してみたけど、役に立った? 余
波で人間の子供にも影響出ちゃったけど﹂
僕は眠い頭でボーと聞いてる。
何か重要な事を言われてる気がするけど、眠くて頭に入らない。
﹁これからも、子供達と仲良く元気でね﹂
その言葉で、僕の意識は夢の中で夢の世界へと落ちていった。
﹁っていう夢を見たらさ∼。なんかゲーム関連のウィンドウが開け
なくなっちゃったんだよね∼﹂
子供達のお世話をしながら、リオと雑談をする。
﹁ホムン。人の見た夢の話って、聞かされる方は結構つまらないん
だけどねん。んで∼、それが開けなくて何か困るのん?﹂
ん∼、困るかな?
うーむ⋮ぶっちゃけ普通に生活する分には困らないよね。
﹁んまぁ、困らないかも?﹂
﹁ンガー。だったら、チャキチャキ子供のお世話をするのよん!﹂
589
﹁そだねー。ほいほいっと﹂
今日もいつも通り、子供達のお世話をする僕なのでした。
590
最終話 ゲームの世界にTS転生︵後書き︶
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
この話をもって、本編は最終話となります。
とは言っても、めでたしめでたしの後の日常を書く予定ではありま
す。
振り返ってみると⋮エッチ成分が足りないっ。
もっとファンタジーならではのボコォとか、ニュルニュルなエッチ
を書くべきだったかなぁって思います。
だから、後日譚ではそういう話を書く⋮と思います。たぶん。
ここまでお付き合いして下さった方々に感謝です。
これ以降の話を書き始めたら、また連載に戻すかもしれません。
ゲームの世界にTS転生を読んで頂き、ありがとうございました。
591
第37話 冒険者エイン︵前書き︶
本編完結後のなんとなくの日常を主に書いていこうと思います。
過度な期待はしないで、軽く読んでくださいませっ。
592
第37話 冒険者エイン
ガバッ!
私は朝になって目覚めると体を起す。
そして自室を見渡す。
広い部屋には天蓋付きのベッド。
質の良い霊樹で出来た机に椅子にテーブル。
素材の質だけじゃなく、装飾すら凝っている衣装箪笥。
光を通さない上質な布で出来たカーテン。
どれも平民の、その中でも底辺の出の私にはありえない高価な部屋
だ。
この屋敷に引っ越して、自室で目覚めるたびに嬉しくなる。
でも怠惰に寝る日は良いけど、起きても部屋が暗いのは普通なら困
る。
しかし普通の家じゃないので大丈夫。
﹁明かりよ﹂
私の声に反応して部屋が明るくなる。
天井に吊るされた綺麗なガラス細工に設置された﹃魔光石﹄が光っ
たのだ。
貴族の屋敷や城なんかにある、1個数十万Gする光りを放つ魔光石。
593
蝋燭やランプの明かりに慣れ親しんだ私は、その光を見ていつも不
思議に思う。
分不相応な部屋だと思う。
だからこそ、余計に嬉しくなる。
﹁お姉様はやっぱり凄い人だった﹂
服を着替えながら、今日も恩人のお姉様に感謝する。
◇◇◇
﹁おはようございます。エインさん﹂
朝食を食べようと食堂へ行くと、嫌な奴に会った。
この屋敷のメイド長、エルフのメロディア。
笑顔で私に挨拶してくるが胡散臭い。
顔は笑顔だけど目つきが鋭く、目が笑ってない。
元盗賊だったあたし︱︱私には匂うんだよね。
メイドの中の何人かはおかしい。
音もなく歩いてるし動きに無駄がない。
特にメロディアは、その場に居る事すら気づかない事がある。
この屋敷に勤めるメイドは10人。
お姉様は信用してるようだけど⋮⋮。
594
﹁おはようございます。メロディアさん﹂
﹁あら、そんな他人行儀ではなく、メロディアで構いませんよ。そ
の方がセシル様の方針に沿うのでは?﹂
しっかりと私を観察するような眼で見ながらよく言う。
でも他人行儀じゃないようにというのは、確かにお姉様の方針だ。
この屋敷に住む者、働く者は基本的に食堂でご飯を食べる事と決ま
っている。
最初メイド達は、主人であるお姉様やお姉様の身内と食事を共にす
る事になるので反対した。
しかしお姉様が、皆で食べたほうが楽しいでしょ?と押し切った。
帝国の貴族になっても、変わらず誰にでも優しいお姉様は素敵です。
メロディアに適当に手を振ってから、私は調理専属メイドから朝食
を受け取る。
さすが貴族のご飯。
今朝の朝食もとても美味しかった。
◇◇◇
お姉様と子供達に挨拶をしてから街に出る。
お姉様は今日も優しい。
冒険者の仕事をする私を気遣って下さる。
595
子供達も可愛い。
特にアスターは、ハイハイの進路で待ってると凄い勢いで抱きつい
てくる。
そのまま抱っこしてあげると笑顔になって可愛い。
子供達は可愛い。
けど、私はお姉様との子供が欲しいとは思わない。
私の好意はアルシアさんのような愛ではなく、姉に対するような好
きなんだと思う。
姉が居た訳じゃないので正しいかわからないけど。
しかしお姉様、女好きだと思ってたけど女性の旦那様と結婚すると
は。
旦那様のアルシアさんとの子供もいて幸せそうで何よりです。
でもアルシアさん以外との子供も多い。
どうみても女の子のレムとの子供も居る。一応男の子だけど⋮⋮。
﹁お姉様って、ただの女好きで淫乱なだけって事はないよね?﹂
女好きは間違いない。
自分も女性なのに、女の人と話してる時の方が楽しそうだし。
淫乱⋮⋮ではあると思う。
私とも関係をもってるし、アルシアさん、リオさん、ラミュエル、
レムリア、フェシスさん、あ、会った事ないけどレオンって人間の
男の子との間にマリアを作ったっけ。
﹁⋮⋮ん? そうすると男もイケるって事? でもレオンって子が
596
レムみたいに女顔かもしれないし? ん∼﹂
私は途中で考えるのを辞めた。
結論を出すとまずい気がしたから。
お姉様は強くて優しくて凄い人。
それでいいよね。
◇◇◇
護衛で町を空ける前に、元手下達の様子を見る事にする。
﹁シムス、居るかい?﹂
カルドでちょっと名の知れた鍛冶場へ入る。
中には何人もの男達が居て、カナヅチやら何やらを使い作業をして
いた。
﹁おっ、姐さん。どうしやしたかっ?﹂
奥から長身で頭にタオルを巻いた細身の男が駆け寄ってくる。
﹁特に用はないんだ。あんたの様子を見にきたのさ﹂
﹁へへ、親方は厳しいですが、なんとかやってますぜ﹂
煤なのか、顔だけじゃなく体中真っ黒にしながらにこやかに笑う。
苦労してそうだけど、楽しそうな顔だ。
﹁かー、嬢ちゃん、まぁた来やがったのか。シムスてめぇ、心配さ
597
れねぇようにさっさと修行に戻れ﹂
﹁へ、へいっ!﹂
奥へ戻ったシムスに代わり、筋骨隆々のドワーフが私の元へと来た。
﹁元部下にしたってなぁ、月1で様子を見に来るのはどうなんだ?﹂
シムスがお世話になってるこのドワーフの親方には、私達が元盗賊
だと言う事は話している。
﹁足洗って解散して、はいさよならってのも、寂しいじゃないです
か?﹂
私の言葉に親方は顔を顰める。
﹁そらそーだが。そんな甘い事でよく盗賊やってたなぁ。あぁ、そ
れとな、ワシの前で猫かぶらんで良いぞ﹂
﹁シムスがお世話になってる方に対して、そういう訳にもいきませ
んよ﹂
ちょっと頼りない遠慮気味な性格のシムスの事を頼み、鍛冶場を後
にする。
◇◇◇
表通りから外れた建築現場へと入る。
﹁やっ、ダリグ﹂
598
﹁お、お頭、どうしました? また飲みの誘いですか?﹂
休憩中だったのか、座ってた人の輪の中から縦にも横にもでかい男
が出てきた。
﹁今日は様子を見に来ただけさ。で、ここの酒場はいつ頃再開でき
そうだい?﹂
﹁そうですね。半月後にはまぁ﹂
ダリグはカルドの建築会社の一つで働いてる。
ダリグが居る建築会社は、私達が住む通称魔物地区の建築も快くし
ていた。
種族差別などなさそうなので、色々と安心できる。
今ダリグ達が建てていると言うより再建してる建物は、私たちが良
く使ってた酒場だ。
何故それが再建中かと言うと。
﹁しっかし、ダークエルフってのは凄いですなぁ。Bランクの冒険
者パーティーをボコるついでに、酒場破壊までするとは﹂
﹁は、はは⋮⋮。まぁ、あれは﹃ガラハッド﹄の連中も悪いのさ⋮
⋮﹂
﹁ナンパパーティー﹃ガラハッド﹄ですからなぁ﹂
冒険者ランクBの﹃ガラハッド﹄。
男だけのパーティーの彼らはその実力の他に、女性をナンパする事
599
で有名だった。
そんな彼らが、この酒場である時ダークエルフのグループに声をか
けナンパしたのだ。
依頼を達成して祝杯も兼ねてた彼らは、しつこくナンパした。
その結果、酔っていたダークエルフのグループのリーダーが彼らを
お仕置きした。
お仕置きついでに、酔ってたダークエルフは酒場まで破壊したとい
う訳だ。
﹁一人でボコッたっていうから、ダークエルフってのは強いし怖い
のでしょうな﹂
﹁い、いやぁ、あの人も酔ってなかったら大丈夫さ。いつもは朗ら
かで優しい人だよ﹂
﹁あ、お頭の知り合いでしたか。これはすいません﹂
お姉様が﹃酔ったアルシアさんは止まらないし加減を知らないから
気をつけてね﹄って言ってたっけ。
今の話は内緒でとお願いして、その場を去った。
早く酒場が再建されるのを祈ろう。
色々な意味を篭めて。
ちなみに再建費用は、帝国に新たに加わった第5将軍様が出してい
る。
600
◇◇◇
荘厳な白い建物が建つ、リースフィリア教会の敷地へ立ち入る。
教会に入ると誰も居ない。
一度出てみると教会の裏手の方から良い匂いがしたので、そちらに
回ってみた。
裏手の方に行くとシスターさん達や子供達が集まっていた。
焚き火をして、鉄板ではなく金網のような物を火の上に置いていた。
傍には野菜やら肉やらが置いてある。
野外バーベキューのようだ。
引き取ってる孤児の子供達を楽しませる為かな?
教会の大人しいシスターさんらが考えたと思えないから、あいつの
考えか。
﹁おっ、姐さん、来てたんですかい。丁度良かった。これから昼飯
にするんで、良かったら姐さんもどうですかね?﹂
私が離れて見ていると、あいつが私に声をかけてきた。
ヒゲ面で顔中モジャモジャなヒゲ男。
私達の中でも特にお姉様に感謝しているオーディスだ。
﹁いや、残念だけどこの後ダグラスさん達と仕事があってね。ゆっ
くりご飯を食べてる暇はないのさ﹂
﹁そうですかい。おっと、ガキ共が腹空かしてるんで、申し訳あり
やせんが﹂
601
﹁あぁ、あたしの事は気にしないで、しっかりやんな﹂
へいっと、盗賊時代変わらない返事をしてバーベキューの作業に戻
る。
昔、オーディスが滝ツボで裸で居たお姉様を見つけた。
そして私達のアジトまで連れて来たんだけど。
その時に金的をされて、ヒールで癒してもらったとか。
それからお姉様の事を女神様と慕い、今では教会に雑用係として勤
めている。
勤めてる教会の名が、リースフィリア教会。
女神リリスを奉る教会だ。
女神リリス。
遥昔、神代の時代に人族を助け知恵と魔法を授けた女性。
最後は共に居た配下を連れて天界へ戻ったとか。
お姉様から魔母の話を聞いたから分かるけど⋮⋮。
この宗教、リースフィリア教ってお姉様の前の魔母であるリリスさ
んの事を崇めている。
魔物側には魔母リリスとして。
人族側には女神リリスとして。
結局どっちの側にも崇められているわけだ。
まぁ法国の狂信的イメージがあって、帝国だと宗教自体マイナーだ
602
けどね。
連邦にしても精霊信仰だかで、自然に感謝するとかで宗教すらない
し。
偶然とは言え、お姉様と同じ魔母だか女神を崇めてる教会に勤めて
るのは本望だろう。
私達の中でも一番のお人好しなオーディスを見ながら、そんな事を
考える。
あいつ、いつもお姉様の事を心配してるけど、逆にお姉様に心配さ
れてるんだよね。
﹃え? あのヒゲ親父、いや、お髭のおじさん、元気にしてるんだ。
えぇ!? 僕を女神って⋮⋮そんな事言ってて大丈夫なの? ただ
でさえおじさんで独り身なのに、老後とか⋮⋮﹄
あんたが早く結婚でもすりゃあ、お姉様も安心するだろうよ。
と思っても、あのヒゲモジャ顔を見たら無理か⋮。
教会に居る孤児達には懐かれてるね。
ヒゲを引っ張られたりして仲良さそうでまぁ。
美人のシスターさん達もオーディスを温かな眼で見てるけど⋮⋮。
あれは楽しそうな子供達を見てるだけだね。
あいつも良い奴なんだけど、ヒゲモジャのオッサンじゃ駄目かぁ。
追いかけっこまで始めちゃってまぁ。
オーディスと子供達が追いかけっこを始めた。
603
すると一人の子供が熱中したのか、前を見ずに走る。
その進む方向は食べ物を焼く為の火があるほうだ。
それが分かり、大人達がハッとする。
オーディスも真剣に子供を止めようとして︱︱顔が怖いのか子供が
ビビッて本気で逃げる。
私の位置からはどうしようもなかった。
なのですぐに井戸から水を取って来ようとした。
その直後にオーディスが子供を横に突き飛ばし、代わりに自分が燃
える火へと突っ込んでいった。そして火達磨になる。
﹁すぐに水を! 急いで!﹂
私はシスター達と協力して地面を転げ回るオーディスに水をぶっ掛
ける。
桶2,3杯かけると、火も収まり動きを止めた。
﹁おーい、大丈夫かーい?﹂
﹁こ、子供は大丈夫でしたか!﹂
勢い良くガバっと起きて子供の心配をする。
﹁子供は泣いてるだけで大丈夫さ。あんたこそ火達磨になって大丈
夫だった?﹂
﹁ちょっと火傷してますが大丈夫でさぁ。あぁでも、ヒゲがチリチ
リになっちまって、こりゃあ剃るしかねぇなぁ﹂
604
﹁まぁいいじゃないかい。子供助けてヒゲですんで﹂
﹁ハッハッハッ。そうですな﹂
そう言うと歩き出すオーディス。
さっき助けた泣いてる子供の頭を撫でてから、シスターさん達に回
復魔法をかけて貰っている。
それを見て安心して、私は冒険者ギルドへ向かう。
あたしも頑張んなきゃね。
◇◇◇
後日、ダグラスさん達と商人の護衛依頼を終えて戻る時に教会によ
ってみると。
﹁あ、姐さん、お疲れ様っす﹂
推定20代の凄い美形の男が私に話しかけてきた。
新しく教会で雇った人かな?
もしかしてオーディス、クビになった?
オーディスを探してキョロキョロ教会の中を見る。
するとシスターさん達が、私とこの男をチラチラ見てることに気づ
く。
605
どうやらこの美形男、シスターさん達にモテモテのご様子。
しかし私はこいつに用などない。
﹁私はあんたに用はないよ。オーディスに挨拶に着たんだけど﹂
﹁何言ってんですか? 俺がオーディスっすよ?﹂
﹁は?﹂
﹁姐さんもですかい。なんか先日から皆態度が変わったり、俺だっ
てわからなかったり⋮。シスターさん方は、なんだか避けるように
なるし⋮⋮﹂
ん、ん、ん?
﹁いやあんた⋮⋮。オーディス⋮⋮なの?﹂
﹁そうでずぜ?﹂
まるで理想の騎士の様に整った顔の目の前のこれが、オーディス!?
◇◇◇
ありえない奇跡を目の当たりにした。
何故か護衛より疲れた気分で家に帰る。
そこでメイド長メロディアが迎えてくれた。
﹁おかえりなさいませ。エインお嬢様♪﹂
606
鋭い眼つきではない。
朗らかで明るくて温かい声色。
笑顔も夏の向日葵の様に真っ直ぐで嘘がない。
心底私を迎え入れてくれている感じで⋮⋮。
﹁あ、あんた、なんで私にそんなに丁寧なの!?﹂
前は私にと言うか、お姉様以外には丁寧だったけど窺うような感じ
だったはず。
﹁まぁ、それは当然ですわ。セシル様のお身内の方々に接するのは
我が喜び。ならば自然と感謝して丁寧になるのも道理でございまし
ょう? さぁさぁ、エインお嬢様、冒険者のお仕事でお疲れでござ
いましょう? 湯船の準備をすぐに致しますね。それともお食事に
致しますか? すぐに寝たいと言われるなら、私がゆったり寝られ
るようにマッサージを致しますが﹂
﹁ごめんなさい! 家を間違えました!﹂
私は踵を返し、素早く屋敷から逃げた。
私が居ない4日間に、カルドは天変地異でも起きたのだろうか。
﹁野宿⋮は嫌だなぁ。屋敷に戻るとまたメロディアが⋮⋮。よし、
私の元盗賊の技術を生かして2階の窓から入ろう﹂
自分の部屋の前の2階の窓から侵入する。
607
音も立てず入る前から気を配ってた。
なのに、そこでも笑顔のメロディアが出迎えてくれた。
怒る事無く、優しさと労り全開で。
この屋敷のメイドは、やはりどこかおかしかった。
608
第38話 セシル侯爵
朝、2度寝3度寝をした後にもっさりと起きる。
世間的にはかなり遅い寝起きです。
でも日が昇ったらおきるとか言うこの世界の基準は、20年以上日
本人だった僕には無理です。
寝癖でボサボサの髪を治さず顔を動かす。
そして天蓋付きで薄いカーテンまでついてるベッドの横に立つ人と
目が合う。
﹁おはようございます。セシル閣下﹂
﹁おはぉー﹂
エルフ族のメイド長メロディアさんです。
身長が僕より高くて、エルフ族らしく体型はスレンダーだ。
髪型は肩まである緑の髪を左右にふわっと広げたポップショート。
メイド長なのに僕の専属らしく、毎朝起きると必ず立っています。
きっと家事から戦闘までこなすメイド道を極めた人にちがいまい。
﹁セシル閣下、失礼致します﹂
メロディアさんはベットの淵に座った僕を着替えさせる。
609
僕の寝巻きは薄い透けた1枚の布︵ベビードールと言うらしい︶だ
けだ。
ブラもパンツもないので裸同然です。
バンザイをしてベビードールを脱がすと、メロディアさんが一瞬止
まる。
止まってる時、僕の胸に視線が固定されている気がします。
そして動き始めると何事もなかったかのようにバスローブのような
服を持ってくる。
座ってる僕に対して器用に華やかなコートのようなバスローブを着
せてくる。
﹁それでは閣下、朝の湯浴みに参りましょう﹂
このバスローブは浴場へ移動する為だけの着物なのだ。
朝夕の湯浴みは女性の貴族の嗜みらしい。
下に何も着ずに1枚取ると裸な格好で屋敷を歩かせるなんて、大興
奮、げふぉげふぉ、毎朝恥かしいです。
メロディアさんに先導されながら屋敷の中を歩く。
﹁ところでメロディアさん。閣下って言うの、やっぱやめない?﹂
﹁上位貴族の侯爵閣下であり、皇帝陛下から国軍を動かす信任を得
た将軍閣下でもあらせられますれば、閣下と言う呼び方が相応しい
かと﹂
歩きながらの雑談でさり気無く言ってみたが、呼び方改善ならず。
610
少し歩き浴場の脱衣所に入ると、2名の人間のメイドさんが跪いて
いた。
﹁メル、リル、セシル閣下の湯浴みをお願いしますよ﹂
﹁﹁はい﹂﹂
赤と青のオッドアイの双子姉妹、メル&リルです。
ベリーショートの髪型だけでなく、全てがそっくりな人間の双子で
す。
二人は白くて薄い服を着ています。
これが湯に濡れると肌にピッチリくっついて透けて丸見えになるの
だ。
二人が僕を裸にする。
そして手を添えながら、湯船がある浴室へ僕を連れて行く。
まずは全身にお湯をかけられる。
立ったまま頭からゆっくりかけられ、仄かに全身が温まると椅子に
座らされる。
そして腰まである僕の髪と頭を⋮たぶんメルさんが丁寧に洗ってく
れる。
仕上げに艶のでる液体を髪に染みこませたら頭は終わり。
髪が終わると立たされる。
二人が手に白くヌルっとした液体をつけて、僕の体へ触れる。
611
ボディソープのような体を洗うアワアワ液体です。
僕の首から触れて、肩、手と進む。
次に前と後から乳房を下から持つように洗われる。
﹁ん、ふ、んぅん﹂
気持ち良くて、我慢してても声が漏れる。
﹁申し訳ありません。何か不手際がありましたでしょうか?﹂
﹁気にしないで続けて∼﹂
前に居る⋮おそらくリルさんが心配した顔で聞いてきましたが。
不手際処か、丁寧にオッパイ揉まれて気持ちいい。
下乳の影になる部分から、二人が手を合わせて洗ってくれてます。
二人で協力しないと、大きくて洗い難そうです。
リオ曰く、大体120のLかMらしいよ?
二人が僕の胸を洗ってると、時折ピュッピュッと母乳が飛び出る。
それが前に居るリル⋮さんの顔にかかる。
﹁ご、ごめんね﹂
﹁いえ、気にしないでください﹂
そう言ってペロッと顔についた母乳を舐めると、驚いた顔になる。
612
﹁ど、どうしたの?﹂
﹁あ、え、凄く美味しくて驚いてしまいました﹂
そのまま僕の胸をジっと見るメル⋮いやリル⋮わからん。
あ∼、いつも体を洗ってもらったりお世話になってるし⋮。
﹁良かったら飲んでみる?﹂
﹁いいんですか?﹂
﹁うん。いいよ∼﹂
レムを筆頭に、うちの家族は皆飲むしね。
僕が頷くと、乳首に唇をもって行きそっと含んだ。
含むと舌で乳首の先をツンツンして舐めて転がす。
乳首が舐められぷっくり立つと、前歯で甘噛みしながら吸引された。
﹁んはぁん﹂
ピューピューと口の中に母乳が流れていく。
ゴクゴクと彼女の喉が美味しそうに鳴る。
﹁ちょっとリル、セシル様に何してるのよ﹂
後ろに居るメルに注意され、リルが乳首から唇を離す。
離す瞬間、乳首をペロっと舐められ気持ち良くて、ふぁって声を出
してしまう。
613
﹁だ、だって、セシル様のミルクが凄く美味しくて⋮我慢できなく
て⋮﹂
﹁そんなに美味しいの?﹂
﹁私の好みの味。メルもきっと好き﹂
背後からジっと僕を見るメル。
振り向かなくても見られてるのがわかります。
﹁メ、メルもどうぞ?﹂
プレッシャーに負け、メルにも勧める僕。
湯に濡れて、ピンクの乳首と下の毛が透けて見える双子姉妹。
その双子姉妹が僕の前に膝立ちになり並ぶ。
並んだ二人は同時に僕の乳房に手を添えて、乳首に吸い付いた。
図ったように同じ動きで乳首を舐めて母乳を吸い始める。
大人の女性の吸引は強くて、乳首がピンと立った状態からさらに引
っ張られそそり立つ。
オッパイを手で押さえられ、ギュッと絞られる。
乳首は噛まれ、乳腺から母乳が溢れ出す。
﹁ふぁぁぁぁぁ♪﹂
オマンコやクリトリスを弄られるほど激しい刺激じゃなかった。
614
だけど牛のように搾乳されてる行為だと思うと、その行為自体に快
感を感じる。
﹁﹁ご馳走様でした﹂﹂
二人が満足した頃には、僕は頭がポーとして口を開けて何も考えら
れませんでした。
◇◇◇
僕は今、メロディアさんと二人でカルドのお城に来ています。
なんでかと言うと、貴族が集まる夜会があるそうで。
僕は黒いドレスに角バンドをつけた格好で、会場の部屋へと入る。
そこには派手なドレスやタキシードで着飾った人がたくさん居た。
﹁よしっ! メロディアさん帰ろう!﹂
庶民な僕にこんな場所は無理!
ダンスとか貴族の女性のマナーとか求められたら、さらに無理!
﹁セシル閣下、貴族方への顔見世もありますし、ネーブル様主催の
パーティーでございます。せめてネーブル様にご挨拶されるまで我
慢してください。美味しい料理もありますから、ね?﹂
﹁あう∼⋮⋮﹂
色々お世話になってる友達のネーブル主催と言われたら、少し我慢
せねばと思う。
615
仕方なく今すぐ帰るのは諦めて、壁の花になろうと隅っこに行こう
とすると。
﹁これはこれは麗しの姫君。貴女がお噂のセシル様でございますか﹂
見知らぬダンディな男の人が声をかけてきた。
何故僕がセシルだとわかった!?
﹁大抵顔なじみですから、知らない女性の貴族となればセシル様し
かおりません﹂
内心驚愕してた僕に、メロディアさんが小声でフォローを入れてく
れる。
な、なるほど。
などと納得してる場合ではなく、相手はいつの間にか自己紹介を終
えたようで⋮⋮。
しっかりと聞き逃しました!
と、とりあえず僕も名乗らねばいけませんか。
﹁第5師団を預かっております、セシル・M・マリンズと申します
わ。人族の貴族社会にはまだまだ疎いので、失礼な事をしてしまう
かもしれませんが、以後お見知りおきを﹂
名前のMは爵位を表すらしいです。
挨拶ついでに、ドレスのスカートの裾をもってレイニーを真似て頭
616
を下げる。
アニメやらで見た貴族っぽい女性をイメージしてみました!
男性は驚いた顔をした後に、こちらこそと言いながら軽く会釈をし
て去って行った。
うん、何か失敗したっぽい!
ナニをダロウ。
メロディアさんに聞こうと思ったんだけど。
その男性が去ったと思ったら、今度は次々に若い男が寄ってきた。
そして挨拶をしては去っていく。
その後は奥様連れの貴族夫婦が来ては挨拶をしていき︱︱僕は途中
で限界がきて、メロディアさんにギブアップをし、家に戻る事にな
りました。
初めての貴族の夜会とやらは、挨拶だけで終わりました。
僕は帰りの馬車の中で思わず愚痴る。
﹁なんであんなにずっと、挨拶ばかりしてくるかな⋮⋮豪華な食べ
物とか、皆ほとんど食べてなかったし⋮⋮。パーティーって美味し
いご飯食べるのが楽しいのに⋮⋮﹂
人に酔ったというか、慣れない挨拶ばかりで気持ち悪くなったとい
うか。
そんな僕を、メロディアさんはなんとも言えない表情で見つめてい
ました。
617
だらしなくてすいません⋮。
その日の夜は、帰ってすぐに夜間用の母乳をスライムさんに搾って
貰ました。
そしてアルシアさんのベッドに侵入して寝ました。
僕が寝付くまで、キスしてくれたので安心して寝れました。
キスはもちろん、口だけじゃなく全身にでしたよ♪
◇◇◇
エインが護衛の依頼で出かけた次の日の朝。
今日も僕からベビードールを脱がすと、一瞬固まるメロディアさん。
そして僕の母乳を朝の湯飲み中に飲むようになったメルとリル。
そこまではいつも通りだったんだけど。
二人が飲み終わって僕の下半身を洗う時、いつもと違っていた。
いつもオマンコを軽く開いて洗うだけなのに、ゆっくり膣の中まで
指を2本入れられた。
後ろからはお尻の穴をクルクルいっぱい撫でられた後に、ゆっくり
指を2本入れられた。
﹁ふぇ、二人共なにを﹂
﹁いつもミルクを頂いているので、今日はサービスをしようかと﹂
618
﹁お嫌いですか?﹂
返事中にも、膣とお尻の二つの穴を同じタイミングで同じ力で出し
入れされる。
重なる二つの快楽に気持ち良くて、立ってた僕のアソコは緩んでし
まい⋮。
プシャァァァァ。
オシッコを漏らしてしまう。
﹁はにゃぁ、は、はずかし、じゃなくて、ご、ごめんね﹂
僕のオシッコを浴びたリルはにっこり笑顔で。
﹁喜んで頂き幸いです﹂
そう言って指の挿入を早めた。
僕は気持ち良くて立っていられず、リルに向かって倒れる。
リルはしっかり僕を受け止めてくれた。
リルに抱きかかえられた僕に、二人は同時に僕の穴に手首まで挿入
する。
﹁ふぎゃぁ、ひ、ひろがるぅ﹂
僕の叫びを気にせず続ける二人。
619
クッポックッポッと、二人の手首に吸い付いて拡がる僕の膣とお尻
の音がする。
﹁ふにゃぁぁぁぁ、ひろげちゃらめぇ﹂
﹁﹁セシル様が、痛くされるのや、広げられるのが好きだと言う事
は存じております。お任せ下さい﹂﹂
﹁ふにゃぁぁぁん﹂
朝から双子の姉妹に、二つの穴を犯されて、何度もイッてしまいま
した。
◇◇◇
双子にイカされた話を夜にメロディアさんにすると、ぷんぷん怒り
ました。
﹁まったくあの二人は! 任務を何だと﹂
﹁ほえ? 任務?﹂
﹁あ、えぇ、メイドとして主人に仕える任務です﹂
僕に寝巻きという名のベビードールを着せる為に、服を脱がせてい
く。
その途中、僕の胸が露になるとやはり一度ピタっと止まる。
これはあれかな?
メロディアさんエルフだし、やはりエルフ族は悩んでるのだろうか。
620
スキルを使えば、たぶん悩み解消は手伝えると思うけど⋮⋮。
僕はゲーム関連のウィンドウを開けなくなった。
しかし代わりに覚えたスキルを前よりも上手に、本能的に使える様
になったのです。
﹁ねー、メロディアさん、胸を大きくすることが出来たら嬉しい?﹂
ピンクの薄い布を持った状態でピタっ静止するメロディアさん。
そしてギギギと首だけ動かして僕を見る。
﹁な、何のお話でしょうか?﹂
﹁ん、もしかしてメロディアさんって胸がちい⋮慎ましいのを悩ん
でるのかなぁって思ったけど、違ったんな︱︱﹂
﹁私の胸をセシル閣下のように大きく出来るのですか!﹂
僕の肩を掴んで真剣に聞いてくる。
⋮⋮動きが見えなかったし、迫力が怖いです。
﹁う、うん。僕みたいなサイズは自分でもどうかと思うけど、今よ
りは大きくできると︱︱﹂
﹁是非お願いします!﹂
冷静沈着スーパーメイド長のメロディアさんが、僕の言葉に被せて
くる。
やはりエルフ族は貧乳なのが悩みなのか⋮⋮。
621
ダークエルフを敵視してた理由は、やっぱ胸のサイズ説が有力そう
です。
僕は裸のまま、メロディアさんの豊胸の為に二人でベッドに座る。
メロディアさんから感じる期待感と言うプレッシャーで服を着たい
と言えぬ。
﹁メロディアさん、えっと、胸を出して下さい﹂
﹁は、はい! 胸ですね﹂
胸を出す恥かしさではなく、ワクワク感で緊張してる感じだ。
眼にも映らぬ速さで上半身裸になったメロディアさん。
その現れた胸に、僕は必殺︻肉体操作︼のスキルを使おうとして戸
惑う。
胸、ドコデスカ?
年下の同じエルフ族のラミューよりもない平原。
まっさらな大地には、ちょんと2個の突起がついているだけ。
﹁メロディアさん、実はレムのようにおと︱︱なしい性格ですか。
いえなんでもないです﹂
胸を大きくするイメージを持ちながら、メロディアさんの平たい胸
に触れる。
﹁あ、ん﹂
622
ここで初めて、メロディアさんが羞恥で頬を紅く染める。
小さい人は感度が良いって言うけど。
悪戯心で小さい乳首を摘んでみる。
﹁んっ﹂
声を必死に殺して耐える姿が萌える!
っていかん、女性のコンプレックスに付け込んで僕は何をしている。
しかし大人の凛々しい女性で貧乳と言う初のタイプで、僕は心奪わ
れていた。
って僕は何を言っている。
ここはあれだ。
スライムさんを見習い癒しの心でモミモミモミと。
﹁んっ、あっ、はぅん﹂
僕が︻肉体操作︼を使いながら揉むと⋮ガッツリ魔力を失う感じが
する。
僕だけじゃなく、メロディアさんの魔力も消費してる気がする。
揉み揉みするほどない胸が、思ったように大きくならないので一旦
手を離す。
﹁ふぅ、その、やはり私の胸が大きくなるのは無理なのでしょうか
?﹂
623
がっくり肩を落とすメロディアさん。
﹁セシル閣下が羨ましいです﹂
と言いながら僕の胸を軽く揉んでくる。
力は軽かったけど、凄まじい恨みが篭められてた気がする。
僕は焦ってメロディアさんの胸を再度揉む。
するとヌルっとした感触がして、先程より魔力の通りが良く、なん
だか効果を実感する。
ちょっと手を離し確認する。
ヌルっとしたのは、さっき揉まれた時に出た僕の母乳のようだ。
﹁セシル閣下、どうなさいました?﹂
僕は黙って自分の母乳を掌いっぱいにつけた。
そしてそのままメロディアさんのチッパイに手を当て揉みしだく。
﹁んぁぁぁぁ、あ、あつぅいぃ﹂
魔力がメロディアさんの肉体に通り、︻肉体操作︼が成功するのを
確信した!
艶っぽい声を上げ続けるメロディアさんの胸を揉み続ける。
かなりの時間揉み続けてると変化が起こった。
平たかった胸が、ラミューより小さいけどふんわり膨らんでいる!
!!
⋮⋮うん、殆ど大きくなってない。
624
しかしメロディアさんは大感激した。
﹁セセセセシル閣下、胸が、私の胸が!﹂
涙を流しながら喜んでいた。
﹁あ、あれだね∼。どうやら対象者の魔力も必要なようだし、あま
り大きくならなかったけど、日を空けて何度かすれば今よりは大き
くなると︱︱﹂
﹁い、今以上に大きくなるのですか!? あぁぁぁ、セシル様、あ
りがとうございます﹂
この日から、凛としたメイド長は居なくなりました。
代わりに、太陽のように明るい笑顔の女性が屋敷に現れたのでした。
625
第39話 魔剣士アルシア
﹁入植ですか?﹂
﹁えぇ。ネーブル将軍から言われたの。私達の戦果が認められて、
カルドに試験的に私達を住まわせてみると﹂
﹁それは良かったですね。姉様﹂
﹁セシルさんも身重だし、丁度良いです。軍の方は私と主殿の副官
二人で率いる事にします。アルシア、貴女はカルドに住む者達の代
表として取り纏める事を命じます﹂
﹁あれ? 代表はセシルではないのですか?﹂
﹁魔母として、私達のトップはセシルさんです。帝国との交渉ごと
などでは代表はセシルさんですが、入植に関しては貴女もフォロー
しなさい。一応、貴女の奥さんでしょう?﹂
﹁はい! セシルの為なら頑張ります!﹂
﹁良い返事です。魔母としての褒美が子を産む事とは言え、戦場に
いると戦功を上げた主殿がセシルさんにちょっかいかけますからね。
貴女もセシルさんも、カルドでのんびりしなさい﹂
﹁ネル姉様、私とセシルを気遣ってくれるんですね﹂
﹁子育てに関わりにくいのも、自分以外との子を見ると嫉妬するか
626
らと聞かされてはね。アルが嫉妬深いとは知りませんでした。セシ
ルさんの事に関しては、主殿よりも妹の味方をしますよ﹂
﹁ありがとうございます姉様! 姉様がレオン殿に相手にされず、
セシルが軍から離れればレオン殿の寵愛を受けれるからとかじゃな
く、妹思いな姉様に感動です!﹂
﹁⋮⋮入植はダークエルフとラミア、あと数体のスライムと言う事
になっていますので、他種族とはいえ、しっかり纏めるのですよ﹂
﹁姉様を真似て、高圧的に接して服従させるように頑張ります!﹂
﹁ハァ。アルの教育のどこを間違えたのかしら﹂
﹁素直な気持ちを言ってるだけなんですが﹂
﹁ハァ⋮⋮﹂
◇◇◇
﹁以上がダークエルフとラミア族による警邏部隊の編成になります﹂
カルドの責任者であるネーブル将軍へ、纏めた資料を渡しました。
入植する人員から、警邏部隊に入る者達のリストです。
﹁ほう。期日前だと言うのに早いな﹂
﹁セシルの身を守る為の部隊ですからね! 頑張りましたとも!﹂
﹁いや⋮街の治安維持の為なのだが⋮。入植に関しての軋轢で多少
627
ゴタゴタするだろうしな﹂
しっかり渡したリストを確認するネーブル将軍。
﹁しかし良いんですか? ダークエルフとラミアが住む地区以外の
警備にも私達が関わって﹂
﹁うん? あぁ、西区の一部をお前達の住居と定めたわけだが、そ
こだけに押さえつけては成功とは言えないだろう? 陛下の理想は
種族差別を無くす事だ。今すぐは無理だが、将来的には他の人族と
変わらない様に生活してもらいたい﹂
つまりどういう事なのでしょうか。
姉様もだけど、偉い人と言うのは説明が長い気がします。
﹁その為の顔売りでもある。警邏部隊ならば、お前達が絡まれても
取り締まる権力があるのでな。まずは警邏部隊でカルドの住民へ顔
を売るのも目的だ﹂
﹁色々考えているんですね。帝国の将軍は、もっと暴力的かと思っ
てましたよ﹂
﹁暴力だけで解決できれば、色々楽なのだがな﹂
﹁さすが、結婚もせずに20代にして仲人回数100件以上と言う
ネーブル将軍ですね﹂
﹁貴様ら夫婦とは、一度ゆっくり話をする必要が在るようだな﹂
◇◇◇
628
警邏部隊の仕事を終えて、家に帰りぐったりしてしまいます。
﹁ハァ、ペットの猫を捕まえて欲しいとか、警邏の仕事じゃないで
しょうに⋮⋮﹂
屋敷の大広間でソファーに座り休みます。
そこへふわふわ飛んだリオが現れました。
﹁アヤーン。アーシャーちゃん、お疲れなの∼ん?﹂
﹁あぁ、リオも子守お疲れ様です﹂
﹁ンフー。最近はアスターがダッシュを覚えて大変なのよん﹂
﹁そうなんですか。あ∼、私も子育てしないとダメですよね∼?﹂
少しは子育てしなさいと、姉様に怒られましたし。
﹁ンヤ? 日中は私とセシりんがしてるし、夜は私にスライムさん
にラミュ∼んがしてるから大丈夫よん?﹂
﹁いや、そうではなくてですね。自分の子供として⋮⋮﹂
﹁ホム。でも余裕あるのん? 警邏部の地区長になったんでしょん
? 毎日朝から晩まで急がしそうで疲れてそうだけどん。セシりん
みたいに、殆ど暇ならするべきだと思うけどねん﹂
何故かカルドの西区全体の地区長になったんですよね。
ダークエルフとラミアの纏めだけじゃなく、他の警邏隊まで見ない
629
といけない立場に。
﹁ン∼。なら、お仕事が休みの日だけガンバレばん?﹂
﹁そうですね。そうしましょう。では明日も早いので寝ます﹂
﹁アララン。本当に大変そうねん。おやすみ∼ん﹂
◇◇◇
﹁セシル、行ってきます。チュ﹂
﹁ンッ。行ってらっしゃい﹂
私のベッドで一緒に寝たセシルにキスをしてから出勤します。
警邏部隊の詰め所に寄り、共に巡回する2名と合流し、街を回りま
す。
しかし街で喧嘩の仲裁をすると。
﹁けっ、ダークエルフが偉そうにしやがって﹂
喧嘩をしてた両方に言われる始末です。
さらに住民からは好奇の眼で見られます。
﹁アルシア様、これで人族との融和は上手く行くんでしょうか?﹂
﹁隊長がいなかったら、怖くて私は警邏部隊として街歩けないです
630
よ∼﹂
一緒に戦場にも出た事のある、コルアとユフィが不安を露にします。
上手く行くか私にはわかりません。
ですが姉様、任されたからには頑張ります!
セシル、上手く警邏をやって幸せにして見せます!
◇◇◇
﹁アルシアさん、なんだかお疲れですけど、大丈夫ですか?﹂
セシルの妹分らしいエインが、私を心配してくれます。
﹁えぇ、大丈夫ですよ。ちょっとストレスが溜まってるだけで﹂
﹁あはは⋮。大丈夫じゃないんですね。警邏部って大変そうですよ
ね。んー、たまには酒場でパァッとしたらどうですか?﹂
﹁酒場でぱーとですか?﹂
﹁部下の人達のストレス発散にもなりますし、アルシアさん自身も
溜め込みすぎると良くないですよ。お勧めの酒場を紹介するから、
行ってみたらどうです?﹂
﹁そうですね⋮⋮わかりました。今度行ってみます﹂
◇◇◇
631
﹁アルシア様、いいのですか?﹂
コルアが遠慮がちに聞いてきます。
﹁今日は私のおごりです。ここの酒場のオーナーは、ダークエルフ
とか気にしないらしいですので、ぱーと飲んで騒ぎましょう!﹂
﹁おぉ∼、隊長、太っ腹!﹂
ユフィは率先的に。
コルアは遠慮がちに酒盛りが始まります。
二人共ストレスが溜まってたのか、少しするとたくさん食べて、た
くさん飲みました。
私もお酒を飲んで気持ち良くなってきたところで、変な男が声をか
けてきました。
﹁よー、あんたらダークエルフだろう? なぁ、俺らと楽しく飲ま
ないか?﹂
下卑た視線で、私達の胸を見ながら言って来ます。
どう対応してよいか分からず、無視をしていると。
﹁ダーク﹃エルフ﹄とか言う癖に、エルフと違ってムチムチな肉感
だなぁ。どーせその体をもてあましてんだろう? 俺らと楽しく話
そうぜ。ベットの上でさぁ﹂
最初の男の仲間か、別の男が加わる。
632
﹁お、いいね。ダークエルフを抱いてみたいと思ってたんだよ。そ
の胸が本物か確かめてやるよ﹂
﹁是非3人一緒にお願いしたいねぇ。へへへ﹂
最終的には4人の男が絡んでくる。
私達が無視しても、しつこく話かけて来る男達。
コルアにユフィは不安なのか顔を曇らせている。
しつこい男達に対し、代表として私が立ち上がった。
﹁貴様らみたいに品のないのはお断りです。せめてオークくらいの
品を持ってから言い寄ってきなさい!﹂
オーク王は中々の男気があり、気遣いができる品のある方でした。
それに比べこいつらはダメです。
﹁て、てめぇ、オークなんかと比べるんじゃねぇ﹂
﹁確かにオークに失礼でした。申し訳ありません﹂
﹁あぁん、ふざけてるのか!﹂
﹁心底本心ですが?﹂
﹁ふざけんな! このあまぁ!﹂
最初の男が殴りかかってきたので、避けて足を蹴って、倒れたとこ
633
ろ踏みつけます。
﹁てめぇ!﹂
それを見て残りの男達が剣を抜きます。
﹁お前達はあれですね。反省が必要です。悪い事をしたらお仕置き
されるんですよ? 良いですか? 姉様のお仕置きはそれはもう酷
い物で、おやつを勝手に食べて、ダミーで泥饅頭を置いといたら、
お説教1時間とか﹂
﹁アルシア隊長、それは隊長が悪い⋮⋮﹂
ユフィが何か言いましたが聞こえません。
﹁お仕置きとして特別に面白い物を見せてあげましょう﹂
私は右手に炎の魔力を、左手に水の魔力を纏わせます。
﹁げ、あれはアルシア隊長が戦場で使ってたオリジナル魔法⋮⋮﹂
﹁な、なんだそれは!﹂
明らかにビビる男達。
﹁これは二つの属性を使った複合魔法ですよ。うちの奥さんが言う
には、化学反応と言うらしいですが﹂
他にも﹃仕様外の魔法でありえない!?﹄とも言ってましたが。
634
﹁アルシア様、それはやりすぎじゃ⋮?﹂
﹁ゴミは燃すのが一番でしょう?﹂
﹁あれ⋮隊長、実は物凄い酔ってる?﹂
コルアとユフィが何故か私から離れていきます。
何故でしょうか。
気になりますが、まずは男達です。
﹁ふふふふふ、では行きますよ!﹂
﹁ちょ、ちょっとまっ﹂
左右の手の水と炎の魔力を合わせる様に打ち出します。
﹁み、皆ふせて∼∼!﹂
エクスプロージョン
﹁必殺! 擬似︻極大爆発︼!﹂
セシルが使う︻極大爆発︼を真似て生み出した魔法。
中位級の水と炎の魔力が合わさり。
ボガァァァァン!!!
綺麗に大爆発をし⋮⋮酒場の屋根が吹き飛びました。
﹁て、てめぇ、何考えてやがる!﹂
635
アブソリュートゼロ
﹁おや、無事でしたか。では第2弾、レイニー殿の︻絶対零度︼を
参考に考えた魔法なのですが﹂
﹁は? いや、え?﹂
﹁た、隊長って実は酒乱なのかな⋮⋮?﹂
﹁ユフィ、そんな事より、今は巻き込まれないように逃げましょう﹂
﹁水と氷の魔力を合わせたもので、氷点下以下の水弾を打ち出し、
着弾と同時に凍りつかせるという魔法でして。行きますよ。︻絶対
零度︼モドキッ!﹂
﹁なっ、ま、まてぇぇえ!﹂
男達に水弾が当たり、パキパキパキと音を立てて凍りつかせていく。
メイルシュトローム
﹁次はネーブルの︻大渦潮︼を参考にした魔法でして﹂
﹁も、もう勘弁してくれぇーーー﹂
◇◇◇
やってしまった。
二日、家に篭っていました。
ですが事情聴取と言う名の呼び出しがあり、仕方なく城に来ていま
す。
﹁ハァ⋮申し訳ありません﹂
636
上司であるネーブル将軍に頭を下げます。
私のせいでセシルの立場まで悪くなったりするのでしょうか⋮⋮う
ぅ。
﹁ん? あぁ、あまり気にするな。先に剣を抜いたのは相手だと証
言も取っている。それに奴らは素行が悪くてな。先日の件を契機に、
色々と女性から被害届が出ている。冒険者や傭兵からは、よくやっ
たと評判らしい。酒場崩壊以外は問題ない﹂
﹁そ、そうですか﹂
言われた内容にホッとします。
﹁まぁ、酒場の修理代などはお前の給金では足りないので、セシリ
アに出して貰うがな﹂
﹁そ、そうですか﹂
結局セシルに迷惑をかけたことになるのですか。
﹁あー、警邏部隊でも奴らには困ってたらしく、お前達の評判は上
々だ。落ち込まず堂々としていて大丈夫だ﹂
上げて落として最後はしっかり上げる。
﹁部下や同僚のフォローばかりしてて、貧乏くじを引きまくりのネ
ーブル将軍。さすがに元気付けるのが上手ですね﹂
﹁お前達夫婦はあれか、私に喧嘩を売ってるのか?﹂
637
﹁いえ、セシル共々、ネーブル将軍とは良き友人でありたいと思っ
てます!﹂
638
第40話 アウラの冒険 前編
私の名前はアウラ。
アルラウネという魔物の少女だ。
アルラウネは本来、他の生物に寄生したトレントの種子から稀に生
まれる種族らしい。
でも私は寄生ではなく、他の生物と同じ様に母親のお腹から生まれ
た。
だから私にはママが居る。
アウラと言う名前は、ママが光の御子と言う意味でつけてくれた。
私は魔物だけど、ママが居るので人族の町で暮らしてる。
魔物なのに人族と暮らす、そんな私のお話。
◇◇◇
人族の大都市、カルドに来てからもう随分たった。
魔王を倒して勇者になろうとしたあの頃が懐かしい。
都会に来て少し大人になった私は、最近毎日ある人の家に通ってい
る。
﹁お? 今日もアウラちゃんが来てるのか。丁度良い、ミリスのお
土産に買ってきたクッキーがあるんだが、食べるか? ミリス、構
わんよな?﹂
639
﹁はいはい﹂
﹁食べる﹂
来るといつもお菓子をくれる顎鬚のおじさん。
ではなかった。
お兄さんだ。
前におじさんと言ったら、お兄さんで頼むと言われたのだ。
確か名前をダグラスとか言ったと思う。
﹁セシルの所のお嬢ちゃんは可愛いもんだな。うちも生まれるのが
楽しみだ﹂
﹁もぐもぐもぐもぐ﹂
お菓子、美味しい。
このダグラスお兄さんは、ラミアの奥さんがいる変わり者だ。
私の認識ではラミアも魔物で、それを妻にする人族は変わってる。
﹁お、アウラちゃん、そう言やな、先日地下遺跡に潜ってみたんだ
が、かなり大変でな﹂
ラミア好きなダグラスお兄さんは冒険者だ。
私が来るといつも冒険の話をしてくれて楽しい。
ママが話す勇者が出てくる話の次くらいに好きだ。
640
﹁転移の罠ってのがあってなぁ。いきなり見知らぬ部屋に飛ばされ
たと思ったら、酷い匂いと虫と死骸だらけでな。⋮たぶん、転移さ
せた相手をモンスターに襲わせる部屋だったんだろうが、長い年月
でモンスターが死んで腐臭と虫だらけになったんだと思うが︱︱﹂
冒険者。
危険な依頼を受けたり、危険な場所に行って宝を探したりする者達。
話を聞くのは楽しい。
でも危なかった話を聞くとたまに思う。
危険だと分かりきってる事をする冒険者はアホなのではないかと。
﹁とと、いかんいかん。俺ばかり話してたな﹂
﹁楽しいから問題ない﹂
﹁そうか。セシルと同じで素直な良い子だな﹂
ママと同じと言われると嬉しい。
ママは私以外の他種族の血を引く姉妹達にも優しくて好きだから。
抱っこをされると、ママの胸が頭に重いのだけは嫌だけど。
﹁俺の事ばかりじゃなくて、そうだな。アウラちゃんは何かしたい、
してみたい事とかないのか?﹂
﹁勇者になりたい﹂
物語で魔王を倒す勇者。
641
かっこよくて憧れる。
でもママが魔王を倒してしまった。
そしてママが魔物を率いる魔王になってしまった。
勇者になりたいけど、大好きなママは倒せない。
私の夢はもう叶わない。
﹁ゆ、勇者か。うーむ。夢は壮大だな﹂
﹁でもなれない﹂
﹁ん? なんでだ? あぁ、なり方がわからないのか﹂
ダグラスお兄さんは勘違いしたまま話を続ける。
もうなれないのに。
﹁勇者の称号を得るには、皇帝に認められるほどの武勇を誇るとか。
後は物凄い人助けをするとかだな。後者は俺もどうしていいかわか
らんが、前者ならあれだ。連邦にある大墳墓のノーライフキングと
かリッチとか言われてる化け物を倒したり、大陸北東のロドリー山
に居るドラゴンを倒したりしたら勇者になれるんじゃないか?﹂
ダグラスお兄さんの話に私は驚いてしまう。
そう言えばママの話でも魔王を倒す以外に勇者になる話があった気
がする。
私は詳しい場所を聞いてお礼を言う。
﹁とてもありがたい話だった。では私は行ってくる﹂
642
﹁おー。気をつけて帰るんだぞ∼﹂
私は急いで自宅へ戻る。
ママに言ってから行こうと思ったけど居なかった。
だから書置きをして出発した。
教えてくれたダグラスお兄さんをリスペクトして、冒険者風に。
﹃ママへ。ドラゴンを倒すクエストに行ってきます。﹄
◇◇◇
私は︻変身︼した姿で森を、山を、河を突き進む。
目指す場所は北東にあるロドリー山。
ドラゴンは魔物の中でも最上位らしい。
しかし超一流の冒険者等がチームを組んで倒す事はできるとか。
その身を使った武具は性能がよく、冒険者や傭兵に狙われる。
そうダグラスお兄さんが教えてくれた。
私は獲物が他の者に狩られないように急ぐ。
植物の魔物の最上位なアルラウネ。
木々や草葉は私の支配下だ。
アルラウネの力を使い、木々に道を作らせ急ぐ。
全力で半日くらい走り続けると、景色が変わった。
643
木々が無くなり、岩ばかりの山場へと入った。
ギチギチギチギチ。
岩山に入ると、私の周りを変な生き物が取り囲んだ。
ウネウネと長いミミズのような体。
丸い口には鋭い剣のような歯がびっしり生えてる。
ギチギチギチ鳴ってたのは、その歯の音。
ミミズと違い全長は30mくらい。
口の直径は3mくらいありそう。
﹁お前達⋮⋮ドラゴン⋮⋮じゃないよね?﹂
ギチギチギチ。
会話は出来なさそう。
仕方なく横を通ろうしたら、襲い掛かってきた。
口を広げ飛び掛ってきた巨大ミミズを軽く蔦で掴む。
掴んだ蔦で、飛び掛ってきた勢いを利用して横に投げ飛ばす。
投げ飛ばして他の巨大ミミズに当たった。
でもまったくダメージを受けていないのか、ウネウネ動いて私に口
を向ける。
﹁ふーん。ミミズの癖に、私を食べるつもりなんだ。へー﹂
644
ウネウネと感情が在るのか無いのか分からないままに、私を囲むミ
ミズ達。
それを見て私は嬉しくなる。
私に今までなかった感情が沸き起こったのだ。
力を思い切り開放出来る事への喜び。
ママと居ると感じる事が無かった感情。
自分の力を、相手がどうなろうと気にする事なく使える喜び。
魔物の本能とも言うべき感情に、私は支配された。
﹁アァァァァァァァァァァ﹂
私が叫ぶと、ミミズが一斉に襲い掛かってきた。
それを蔦で絞め殺す。叩き殺す。貫き殺す。
私も下半身を覆う華を噛まれ。千切られ。巻き付かれる。
﹁マダマダァ。シィィネェェェ﹂
私は体全体を回転させながら蔦を振り回す。
回転して勢いづいた蔦に殴られ、ミミズ共が吹き飛ぶ。
吹き飛ばされ動かなくなったミミズも多い。
しかしミミズの数は変わっていない様に思う。
倒しても倒しても、新しいミミズが来てるみたいだ。
645
﹁ウフフフフフフフ﹂
自然と笑いが漏れる。
楽しい。
自分の力を思い切り振るう事が。
でもミミズ達は喋らず反応が無いので、少し興ざめだ。
﹁オマエタチハ、モウアキタ﹂
私はママを真似て全身から黒い霧を出す。
その霧を濃密にして蔦へ纏わせる。
﹁サヨウナラ﹂
そして私を中心に全方位へ槍のように黒い蔦を伸ばす。
ドシュドシュドシュ。
黒い蔦が周辺のミミズを貫き︱︱動くものが居なくなった。
◇◇◇
ミミズを全滅させた後、私は一人反省する。
ママがよく言っていた。
弱い物いじめはいけません、と。
リオママもよく言っていた。
646
戦いには演出が必要なのよん、と。
実は初めての戦いに、私は興奮して何も考えていなかった。
格下っぽいミミズ相手に全力で戦った。
さらに演出も何もなく、全滅させた。
優しいママ達の教えを守らず、反省が必要だ。
落ち込んだまま岩山を進む私の耳に、声が聞こえた。
﹁この山にまだドラゴンが居るって本当なんだろうな?﹂
﹁本当だっての。冒険者ギルドだけじゃなくて、盗賊ギルドにも確
認したんだからな﹂
﹁もー、それよりも戦争中だって言うのに、ドラゴン狙うのはどう
なの?﹂
﹁男二人に、次の仕事を何にするか任せた私達がバカなのよ﹂
岩陰からこっそりと覗く。
どうやらドラゴンを狙いに来た冒険者のようだ。
盾と剣を持った人間の男。
革鎧をつけた人間の男。
白いローブを着た人間の女。
とんがった帽子を被って長い杖を持った人間の女。
647
同じ冒険者のエイン姉さんやダグラスお兄さんより弱そうだ。
﹁そもそも私達だけでドラゴンを倒せるの?﹂
﹁あー、ドラゴンなんて、人族に負けて絶滅寸前なんだろ? よゆ
ーよゆー﹂
私の獲物のドラゴンを簡単に倒せるらしい。
見かけよりずっと強いのだろうか。
私はちょっと考える。
あの人達をなんとかしないと、ドラゴンを倒されてしまうかもしれ
ない。
勇者になる為のドラゴンを簡単に倒せる冒険者は弱くない。
じゃあきっと、弱い物イジメにならない。
私は決めた。
冒険者達の進路に先回りして隠れる。
彼らが歩いてくるのが見えたら姿を現す。
今の姿はアルラウネの姿ではなく、小さな人の姿だ。
﹁お兄さん達、ドラゴンを倒すの?﹂
急に現れた私に、冒険者達は驚いたようだ。
﹁あ、あぁ。ドラゴンを倒しに来たんだが﹂
648
念の為、最後の確認も済んだ。
冒険者の言葉を聴いて、私は︻変身︼した。
ガンッ。ズズズズズズズズ。
大地が裂け、そこから華が生まれる。
中央に私を収めながら、巨大な華へと成長していく。
﹁な、なんだ!? で、でかい!﹂
﹁アルラウネ!? にしては大きすぎる!﹂
ママと同じ様に全身から黒い魔力のオーラを出す。
﹁な、なんて禍々しい魔力! 皆さん、気をつけてください!﹂
私は決めた。
私の邪魔をする冒険者をシマツシヨウト。
﹁ココデクチハテル、ソノミヲノロウガイイ!﹂
649
第41話 アウラの冒険 後編
﹁ココデクチハテル、ソノミヲノロウガイイ!﹂
冒険者4人の前で︻変身︼した私は、強く言い放つ。
それに対し剣を抜いたり、杖を構えたりしている。
睨み合う私と冒険者達。
あれ?
思ったような反応がない。
ママの話では、大きな喋る魔物がでたら冒険者は色々話しかけてく
るはずなのだ。
魔物っぽく片言で言った。
だから聞き取れなかったのかもしれない。
﹁ここで朽ち果てる、その身を呪うがいい!﹂
改めて聞きやすく言ってみた。
しかし冒険者達は何も言わない。
﹁ハァァァア!﹂
ファイアーボール
﹁︻火球︼!﹂
それどこか、剣の男が切りかかってきて、とんがり女が魔法を撃っ
650
てきた。
私は動いてそれを避ける。
避けた後また睨み合う私と冒険者達。
﹁くっ、でかい上になんて素早いんだ!﹂
﹁俺が隙を作るから、その間にやってくれ!﹂
﹁強化魔法をかけます。一旦集まってください!﹂
戦闘前の口上イベントがない。
ママもリオママも、戦闘前の名乗りは必須だと言ってた。
なのに冒険者達は名乗る前に攻撃してきた。
何故だろう。
﹁︻狙い撃ち︼!﹂
﹁うるぁぁぁ! ︻気合斬り︼!﹂
飛んで来たナイフを手で掴んで後にポイッと投げる。
真っ直ぐ振り下ろしてくる剣を蔦でペチっと弾く。
変身後の私の台詞が悪かった?
最初に私自身が名乗らなきゃいけなかった?
トルネード
﹁敵を切り裂け! 風の精霊達よ! ︻竜巻︼!﹂
651
ホーリー
﹁魔を払う聖なる光よ!︻聖光︼!﹂
私を囲む風のわっか。
地面から私に向かって打ち上がる白い光。
両方をママの真似をした黒い魔力を纏い無効化する。
う∼ん。
何が悪かったのかわからない。
帰ったらリオママに聞こう。
﹁な、なんだこいつ。剣も魔法も効かない!?﹂
﹁疾風の短剣を投げたのに、掴んでポイ捨てとかありえねー!﹂
﹁ちょ、ちょっと、どうするのよ!﹂
﹁切り札の聖なる光も闇の魔力で防がれました⋮⋮。どうしましょ
う?﹂
物語みたいに色々かっこよく話せなかったのは残念。
私は反省しつつ、冒険者達に向き直る。
﹁じゃあ、私の番﹂
考え終わったので攻撃しようと、たくさんの蔦を持ち上げた。
そして蔦を4人に向けて真っ直ぐ飛ばす。
﹁﹁﹁﹁ギャー!﹂﹂﹂﹂
その蔦に当たって4人が吹き飛び、動かなくなる。
652
﹁⋮⋮あれ?﹂
手加減した様子見の攻撃。
本気を出す前の小手調べというのだったのに。
﹁えーと⋮⋮﹂
倒れた冒険者達を前に途方に暮れる。
最初から最後まで上手く行かなかった。
⋮⋮ママ、戦闘って難しいね。
◇◇◇
倒れて動けなくなった冒険者達。
それを山の麓に置いてから再び登る。
麓で目覚めた冒険者達に凄い感謝された。
ドラゴンを取られないように麓に捨てただけなのに。
でも感謝されてちょっと嬉しい。
たまに絡んでくるミミズを叩きながら進む。
山頂近くまで進むと、強い気配を二つ感じた。
私と同じくらいの強さを感じる何かが2匹居る。
急いで山頂へ向かう。
﹁何者だ?﹂
653
山頂には黒と白の2匹の魔物が居た。
﹁私はアウラ﹂
﹁ここに何の用だ?﹂
﹁ドラゴンを倒して勇者になるために来た﹂
私が真剣に答えると、2匹の魔物は楽しそうに笑った。
﹁クックックックッ。とうとう人族だけではなく、魔物まで我ら竜
族を狙うか﹂
﹁ハッハッハッハッ。人族に討たれ、この身を武具にされるよりは
ましか﹂
竜族。
ドラゴンらしい2匹は笑い終わると私を見据えた。
﹁勇者になりたいなどと言う魔物に討たれるのも一興よな﹂
﹁勇者を目指す魔物よ。見事我等を倒し、勇者となるが良い﹂
黒と白のドラゴンは、私を真っ直ぐ見つめる。
今回は戦い前に会話が出来てよかったと思う。
でも何かが違う。
2匹共私を見ているが、見ているだけなのだ。
654
﹁戦う気がない?﹂
この2匹のドラゴン。
私と戦うつもりがまったくない気がする。
﹁うむ。気づかれたか。我らはもう戦うだけの気力がないのだ﹂
﹁それは困る﹂
だって戦って倒さないと勇者になれない。
戦う気になってもらわなきゃ。
﹁どうしたら戦ってくれる?﹂
﹁そう言われてもな。我らはもう先がない。先がないと分かっては
戦うなど虚しい事なのだ﹂
﹁それでも我らの死骸さえ利用する人族には負ける気はないが、汝
のような魔物なら、我らが死した後、屍を食らうことはあっても道
具にはすまい﹂
﹁私ドラゴン食べない﹂
ママが拾い食いしたらダメって言ってたし。
⋮⋮なんだかお菓子が食べたくなってきた。
﹁先がないって言うのはどういう事?﹂
お菓子欲を我慢して、ドラゴン達に質問する。
655
﹁今や竜族は我ら2竜のみ﹂
﹁そして我らは共にオスなのだ﹂
オス。
男の子。
なるほど。
﹁あなた達は、男同士の夫婦なんだ﹂
﹁同性で夫婦、番になる者などおらんわ!﹂
黒いのになんか怒られた。
うちのママ達は、女同士で夫婦なのに。
﹁我ら竜族はもはや子を産めんのだ。故に種族を残す事が出来ぬ。
我ら二人で滅びる運命なのだ﹂
白いのが項垂れた、
私は腕を組んで考える。
ぽんっ。
﹁つまり、子供が産まれたら戦ってくれる?﹂
﹁﹁何?﹂﹂
オスだけで子供が出来なくて元気がない。
なら子供が出来たら元気になるはず。
656
﹁子供を産んで貰ったら良い﹂
﹁産める者が居ないから困っているのだ﹂
それはきっと大丈夫。
﹁私のママなら大丈夫。だって私を産んだから﹂
アルラウネの私を産んだし、ドラゴンくらい産める筈。
﹁俄かには信じられんが⋮⋮﹂
﹁我らの子を産めるものがいるのか?﹂
﹁うちのママならきっと産める﹂
子供が出来なくて困ってるみたいなドラゴン達。
ママは言ってた。
困ってる人がいたら助けるんだよって。
だから困ってるドラゴンを助ける為なら。
﹁喜んで産んでくれるはず﹂
何故か困った顔をしたドラゴンと一緒に、私はママに会う為帰るこ
とにした。
◇◇◇
657
私とドラゴン達は、ママに会う為カルドに向かってる。
私はシロの頭の上に乗っている。
ドラゴンは空をふわりふわりと飛んで楽しい。
﹁む、アウラよ。禍々しい何かが凄い速さで向かってくるぞ﹂
クロが前を睨みながら伝えてきた。
カルドに向かう前に2匹に名前を聞いたら無いという。
なので名前をつけた。
黒い方をクロ。
白い方をシロ。
2匹とも喜んでいた。
我ながら良い名前をつけたと思う。
クロと同じ様に私とシロも前を見る。
確かに何かが近づいて来てる。
黒い点だったそれは、徐々に大きくなる。
よく見ると金髪で、背中にすご∼く大きな黒い6枚羽を生やした人
型だ。
﹁なんという瘴気。我が囮になる。アウラとシロは逃げてくれ﹂
黒いドレスを着て、少し泣き顔をしていた。
なんだか声も聞こえる。
658
﹁二人共、あれ、うちのママ﹂
﹁あの黒い禍々しい者がか!?﹂
﹁禍々しいけど、大丈夫﹂
私が大丈夫と言うと、大人しくその場に浮遊する2匹。
そして大分ママが近づいてきた。
﹁ア∼∼∼ウ∼∼∼ラ∼∼∼﹂
両手を広げ、私目掛けて真っ直ぐに飛んでくる。
急いだのか、竜の翼よりも大きな6枚羽で飛んで来たママ。
私に抱きつくように飛んできたママを︱︱少し横に動いてかわす。
﹁ラ∼∼∼﹂
遥後方に、ママの姿と声が遠ざかっていく。
﹁アウラ、一体何を?﹂
シロが質問してくる。
でも答えている暇が無い。
後方に飛び去ったママが、再び私目掛けて飛んで来た。
﹁し∼∼ん∼∼ぱ∼∼い∼∼し∼∼た∼∼よ∼∼﹂
659
両手を広げ、巨大な胸を惜しみなく揺らすママ。
そんなママを︱︱屈んで避ける。
﹁よ∼∼ととと!﹂
今度は前方に遠ざかると思ったら、急停止した。
﹁アウラ! なんでママの心配からの再会の抱擁を避けるの!?﹂
﹁⋮⋮ママ、あれは抱擁じゃなくて、超加速の体当たり﹂
クロとシロの存在を完全に見えてないママが私の目の前に来る。
私の言葉も耳に入ってないみたい。
﹁書置きに吃驚して、ママ、凄く心配したのにっ﹂
ちゃんと書置きしたのに何で心配されたんだろう。
理由は分からないけど、優しいママが泣いて怒ってる。
﹁ごめんなさい﹂
だからきっと私が悪いので謝った。
私が謝ると、ママは黙ってギュっと抱きしめてきた。
﹁もう勝手に一人で冒険に行っちゃダメだからね﹂
﹁うん﹂
私もママを抱きしめる。
660
抱きしめられて、本当にママが私を心配してたと分かる。
抱きしめる力がいつもより強かったし、震えてたから。
私とママが抱き合って暫く時間がたった。
﹁その⋮⋮私の頭の上でいつまでも抱き合われても困る﹂
シロが凄く遠慮がちに言ってきた。
﹁あ、それはすいません。⋮⋮ん? ドラゴン!?﹂
ママがやっとクロとシロに気づいた。
◇◇◇
その後、私達は地上に降りてママに事情を話した。
ママのおかげでドラゴンの悩みは解決する事となる。
だけど私はドラゴンと戦っちゃダメと言われた。
私は勇者になる為に、いつかリッチを倒しに行こうと思う。
その時は、ママと一緒だと嬉しいな。
661
第41話 アウラの冒険 後編︵後書き︶
解決の詳細は書きませんでした。
書くとあまりにも台無しなので orz
おまけとして次話に書こうと思いますが。
むしろ詳細はいらないですかね?︵;つ▽`︶
662
第42話 アウラの冒険 内緒のお話︵前書き︶
ボコォとかが苦手な方は、この話は読み飛ばしちゃってください。
エッチなお話デス。
663
第42話 アウラの冒険 内緒のお話
なんでかドラゴン退治に行ったのに、ドラゴンを従えているアウラ。
地上に降りて事情を聴く事にしました。
﹁つまり、オッスオスで子供が出来ずに困ってるから、何とかして
欲しいと﹂
﹁うん﹂
含みなく頷くアウラは可愛いです。
また抱きつきたい衝動を我慢︱︱せずに抱きつこうとすると避けら
れた。
くっ、ママの抱擁の何がご不満なのか。
僕は娘の為と思いドラゴンを見ますが。
﹁アウラ、ママとしてはサイズが合わないと思うの﹂
どこのとは明確に言いません。
確かに魔母な僕は竜の子を妊娠できると思います。
でもその過程がデンジャラス!
全長25mプールくらいありそうなドラゴンのアレをですよ。
身長180cmくらいの僕にドッキングは、ちょっと⋮ね?
664
ドラゴンズも僕の言葉に苦笑いしてますし。
﹁でも、ママ、交尾好き﹂
この子は人様︵竜様?︶の前でなんて事を言うのですか!?
﹁アウラ、確かにママはエッチが大好きだし、子供を産むのも魔母
のせいか好きだけど、でも誰とでもしたいわけじゃないのよ?﹂
エッチをするのは好意を持つ相手とだけです。
エッチをした相手は今のところ全員好きになってますけど⋮⋮あれ?
諭すように言う僕にアウラは下を向きながら。
﹁クロとシロ困ってる。困ってる人助けなさいってママが⋮⋮﹂
前に僕が言った言葉をちゃんと守っているんだね。
アウラ、偉い。可愛い。
再度抱きつこうとして︱︱下を向いたまま回避する愛娘。
見てないのに回避とか、うちの娘は天才!?
僕は気を取り直して、再度竜達を見る。
う∼ん。
確かに困ってそうな姿を見ると、助けたいという気持ちがわいてく
る。
サイズの問題は僕のスキルを使えば何とかなると思う。
でもなぁ。
﹁アウラよ。汝の母に無理をさせることはあるまい﹂
665
﹁我らはとうに諦めている。一時とは言え夢見れた事だけでも感謝
する﹂
﹁ごめん。クロ、シロ﹂
僕を気遣いアウラを慰める竜さん達。
アウラは謝り、娘と竜ズはお通夜な雰囲気をかもし出す。
あれ?
何とか出来そうなのに拒否ってる僕は悪者!?
愛娘の悲しそうな顔と雰囲気に耐えられなかった。
僕は決心して口を開く。
﹁サイズの問題は、ママのスキルでなんとかするから、アウラ、落
ち込まないで。ね?﹂
その瞬間、太陽より輝かしい笑顔が現れる。
﹁ママ、好き﹂
﹁アウラッ﹂
アウラが僕に抱きついてきて、僕もアウラに抱きつく。
可愛い可愛いアウラをギューと抱きしめる。
よ∼し、ママ、頑張るからね!
◇◇◇
666
︻肉体操作︼を使い、自分の体を変異させる。
とにかく巨大なオチンチンを受け入れられるイメージ。
自分の内部を別物へと変えて行く。
日々のメロディアさんの豊胸作業で、スキルの扱いには慣れたので
す。
個人の資質か種族の呪いか、メロディアさんの胸は遅々として大き
くなりませんが。
変異させた肉体は後で戻せるので安心です。
何が安心かって?
何がだろうね!
﹁えーと、僕の準備は終わったよ∼﹂
見た目は何も変わってないまま、アウラ達の元へ戻る。
﹁んっ。じゃあクロ、交尾して﹂
アウラちゃん。
いくら完全子作りHとはいえ、女の子が交尾とか言うのはママは感
心しませんよ。
アウラに交尾、もといHを促された黒竜。
しかしなんだか渋面で渋っています。
﹁アウラよ。そう言われても、協力してくれる母上殿にも申し訳な
いのだが⋮⋮。まったくする気になれん﹂
667
﹁む、それって僕に全く欲情しないってこと?﹂
﹁うむ﹂
ぐわっ!
言い切りおった!
この爬虫類!
女として、ちょっと自信があった僕のプライドが!
﹁わかった。私も協力する﹂
僕が内心傷ついていると、アウラがアルラウネ形態になった。
そしてブワッと強力な魔力を発した。
ポーレン・テンプテーション
﹁︻誘惑の花粉︼﹂
アウラから赤い花粉が回りに飛び散る。
そして少しすると黒竜の目がトロンとして焦点が合わなくなる。
﹁クロ、ママに欲情して﹂
﹁わかった﹂
黒竜が僕に鼻を近づけ、クンクン匂いをかぐ。
﹁クロは一体⋮⋮?﹂
﹁あのー、アウラちゃん、一体何をしたの?﹂
668
﹁ママに欲情出来る様に魅了した﹂
その一言に僕と白竜がちょっと引く。
目的の為に手段を選ばない辺りに、ピンク頭の影がちらついてる気
がします。
﹁次はママの準備を手伝う﹂
﹁ふえ?﹂
アウラが蔦を操って僕の体を持ち上げる。
棘がない蔦なので痛くはない。
アウラは蔦を使い器用に僕の衣服を脱がす。
最初から裸になるつもりだったけど、娘に脱がされるのはちょっと
恥かしい。
﹁アウラ、ありがとう。裸になったし降ろして?﹂
﹁お手伝いはここから﹂
服を脱がしてくれたのがお手伝いじゃないの?
◇◇◇
疑問に思ったのも束の間の事。
アウラは僕の足を左右に開き、オマンコ目掛けて一直線に蔦を突き
入れた。
﹁ひぎぃ!?﹂
669
プチっと慣れた処女膜貫通を感じ、尚も蔦は僕の膣を突き進む。
竜用に成ってる僕の体。
色々な部分が柔軟性があって伸び易くなっている。
その僕の体の子宮口に蔦が当たり、抵抗なく子宮内へと入ってくる。
﹁ひぁ、子宮ら、らめぇ﹂
処女膜を破られ、エッチのスイッチが入った僕は愛娘の蔦に感じて
しまう。
トレントに子宮を犯されたことはある。
でもあの時は麻痺毒などが効いた状態だ。
今は麻痺してなくて、ダイレクトに子宮を犯される快感が脳に伝わ
る。
﹁リオママが、女の子はエッチの前はちゃんと弄って濡らすように
って言ってた。ママのオマンコ弄って濡らす﹂
両手両足を蔦で持ち上げられて、開いた脚の間を蔦がジュプジュプ
動く。
﹁ふぁ、ひぁ、ら、らめぇ、むすめの、つたぁ﹂
膣の入り口から子宮の奥の壁までを、ツルッとした蔦が出入りする。
ジュププププ。チュポ。ジュププププ。チュポ。
670
蔦が抜ける時、膣肉が吸い付いて離さない。
蔦を離す瞬間、チュポっと鳴る音が離すのを惜しそうに聞こえる。
﹁あっ、ひぅ、子宮口、こすっちゃ、らめらよぉ﹂
何度もピストンされて愛液が滴り落ちる僕の蜜壷。
そこに向かい、さらに4本の蔦が追加された。
﹁おぐぅぅぅ﹂
僕の膣は5本の蔦を飲み込む。
入った蔦はそのまま子宮口を通って子宮内を叩き、絡まるように子
宮に溜まる。
﹁ふぐぅ、子宮につた、いっぱいぃ、子宮ひろがってるぅ﹂
より拡がった僕のオマンコ。
子宮から溢れるエッチなお汁が、蔦を伝いポタポタ垂れる。
僕のオマンコの匂いを嗅いでた黒竜が、不意に僕の胸を舐めた。
﹁クロ、どうしたの?﹂
﹁胸から母乳が出ていたので、舐めてみた﹂
蔦の出し入れの振動で出た僕の母乳を舐めたらしい。
﹁ママのお乳、飲みたいなら飲めば?﹂
﹁わかった﹂
671
蔦5本の子宮姦でアヘってた僕のオッパイに、黒竜が吸い付いた。
器用に片方の胸を口で摘む。
痛くない程度に胸の付け根を噛むと︱︱一気に吸い上げた。
﹁ひぎゅぁぁぁぁぁぁ﹂
竜の吸い上げは人の比じゃなかった。
オッパイの中で母乳がどう動いてるか感じるほど、一気に吸い尽く
される。
吸い上げられてオッパイが取れるかと思う痛みと、母乳が駆け上が
る快感で頭がトンでしまう。
﹁うむ。美味。ではもう片方も﹂
﹁ダメ。それはシロの分﹂
﹁わかった﹂
僕の左胸を吸い尽くした黒竜をアウラが止める。
母乳を吸い尽くされた左のオッパイは、右に比べて明らかに小さか
った。
蔦による子宮の拡張。
黒竜による左胸の母乳吸い尽くし。
﹁アヘェ、オッパイィ、オマンコォ、イッチャッタノォ﹂
672
その初めて感じる二つの快感で、絶頂にイッた後にもすぐに何度も
イッテしまった。
オマンコの気持ち良さ。
左胸のヒリヒリする快感。
それしか僕は考えられないし感じられなくなる。
﹁ママの準備できた。クロ、横になってオチンチン出して﹂
﹁わかった﹂
横になった黒竜の尻尾の付け根辺りに、赤黒い屹立した物があった。
その太さは僕の胴と変わらない。
長さに至っては、僕の身長よりも長かった。
﹁クロ、しっかりママと交尾してね﹂
アウラが愛液垂れ流しの僕を、黒竜の方へと持っていった。
◇◇◇
僕はアウラに吊るされ、寝転がる黒竜のペニスの上にくる。
そこで僕の上半身を起こし足を持ち上げると、ペニスの先端に僕を
落とした。
﹁んぎぃ﹂
快感で蕩けた僕は痛みで意識を取り戻す。
673
赤々と勃起して硬い黒竜のペニスが、腰に当たった衝撃が痛かった
のだ。
﹁うん? 濡れてるけどするっと入らない﹂
﹁先端は入っている。押し込めば入るのではないか?﹂
亀頭の先端半分程は、僕の膣に飲み込まれてた。
しかし亀頭の下部分。
キノコの傘の部分はペニスで最も太い。
その部分は僕の胴より太い気もする。
まずい気がしたので、一旦中止しようと思った。
﹁わかった。上から押してみる﹂
﹁みゃ、みゃって、あうりゃ﹂
しかし僕はクラクラする快感の残滓で口が回らない。
﹁えいっ﹂
﹁ぐほっ!?﹂
アウラを止める事が出来ず、ペニスに押し込まれる。
ゴキっと骨盤が無理矢理広げられた。
膣も広げられ、子宮だけじゃなく全ての内臓が押し上げられる。
﹁あがが、うぅ、あぅぅ﹂
674
僕の膣は亀頭を丸々飲み込んでいる。
お腹はオッパイの下から膣まで、黒竜のペニスの形になる。
膣処か体全部をペニスで犯されてる気がする。
﹁入った。ママ自分で動けないから、私が動かしてあげる﹂
﹁ひぎゅ、ぎゅ、ふぁ、ふぁ、ふぁ﹂
アウラが僕の体を上下に動かす。
膣の入り口のお肉は、ペニスが大きすぎてカリの下部分に吸い付い
たまま固定している。
だから上下に動かされても、亀頭の部分は抜ける事はない。
上に動かされると、僕のお腹がへっこみ、膣壁が亀頭にくっ付いた
まま裏返る。
そして下に押し込まれると、膣壁が僕の中に戻り、お腹がボコォと
ペニスの形に膨れ上がる。
﹁ふぁ、ふぁ、ひゃ、いひ、や、いぃ、きょ、巨ちん、いい、のぉ、
あへぇ﹂
変異させてた肉体は痛みを感じない。
むしろ巨大ペニスの亀頭部分がお腹の中で動く度に、体の芯から快
感があふれ出てくる。
上下に動かされても一切抜けないペニス。
ソレにも徐々に慣れて、僕は快感を貪り始める。
675
﹁あっ、あっ、ひぎっ、ぼく、ぜんぶっ、がっ、おまん、こっ、に
っ、なった、みたいぃ♪﹂
﹁ハッ、ハッ、ハッ、ハッ﹂
いつの間にか黒竜も犬のようにハッハッハッと息を荒くしていた。
﹁アウラ、子種を出してしまいそうだ﹂
﹁わかった。しっかりママに出して﹂
両手両足を上に釣られた状態で、上下運動が早くなる。
﹁ふぁ、ふゃ、イクッ、イクの? ドラゴン、イっちゃうのっ?﹂
僕は絶頂状態のまま黒竜がイクのを待つ。
黒竜がイキそうなのも直ぐに忘れ、お腹全部を犯すペニスに集中し
た瞬間、ビュバと体の中で音がした。
﹁おごぉ、いっぱぃすぎぃ﹂
僕の体の中に黒竜の精子が注がれる。
精子は僕の子宮に入り、お腹を膨らませていく。
﹁ひぎっぃぃぃ﹂
子宮がパンパンになっても止まらない射精で、僕はペニスからポン
と飛ばされた。
676
アウラの蔦で吊るされてた僕は、地面に叩き付けられる事無く寝か
される。
地面に横になった僕の上に、精子がかけられる。
﹁うぷ、んぐ、んぐんぐ﹂
顔にかかった大量の精子を飲み込む。
﹁ふぁ﹂
黒竜とのエッチが終わった僕の膣はクパっと開いたままで、ドプっ
と精子が流れてくる。
お腹は精子で既に妊娠してるかのように膨れていた。
﹁あひゃぁ、ぼくぅ、ざーめんたんくにされちゃったぁ♪﹂
快感一色の僕は、精子まみれで余韻に浸る。
体の中も外も精子に染まり温かい。
﹁次、シロの番。ママに欲情出来る様にしてあげる﹂
﹁アウラよ。大丈夫だ。汝の母に我は十分発情した﹂
﹁そう。じゃあ、手伝いは要らない?﹂
﹁本来の竜の生殖のように、後からを所望する。なので母上殿を軽
く抑えてくれているだけでいい。動くのは自分でしよう﹂
快感で浸る僕をアウラが起す。
677
そしてうつ伏せにさせて、お尻だけを高く上げさせる。
﹁ふわぁ? んぎぃぃ﹂
快感に溺れてる僕は分かってなかったが、白竜との子作りエッチが
始まった。
◇◇◇
白竜との行為が終わってから数時間後。
パックリ膣は開いてるのに、精子を出さない僕のお腹は凄い膨れて
いた。
自分から匂う精子の匂いに、エッチをしたくなるのを我慢する。
ふらふらっとエッチをしたくなる意識を我慢し、正気を保って会話
をする。
﹁た、たぶんこれで妊娠すると思う﹂
﹁ふむ。迷惑をかける⋮⋮﹂
黒竜が申し訳なさそうに言ってくる。
﹁そういえば、ドラゴンってお腹で赤ちゃんが出来るの? それと
も卵?﹂
﹁我ら竜族のメスは産卵するな。つまり卵だ﹂
テカテカした白竜が教えてくれる。
678
卵か。
人として産卵するのはどうかと思うけど、仕方ないよね。
それにしても︻肉体操作︼という魔母の力を使ったエッチは凄かっ
た。
対象の種族用に肉体を変異させたら、快感に溺れるかもしれない。
帰ったらアルシアさんと試そう心に誓う。
﹁ママのお腹の子を産んだら、すぐ次の交尾﹂
まだママのお腹の中に子供はいませんよ。
今膨れてるのは100%精子です。
しかし産んですぐ交尾ってどういう事?
﹁確かに竜族安寧の為には、100竜ほど産んで欲しいが大丈夫な
のか?﹂
﹁ママならいける﹂
﹁は?﹂
僕だけ会話の流れについていけず、間抜けは声を上げてしまう。
﹁1竜2竜産んでもらっても、病気や天災などで命を落とすかもし
れない。出来れば100竜ほどお願いできないだろうか﹂
白竜が遠慮なく僕に言ってきます。
679
ソレを聞いて僕はフっと気が遠くなる。
100匹も産むとか、無理です⋮⋮。
﹁ママ!?﹂
﹁この体の小ささで、100竜分も我らとまぐわうのは無理であろ
う⋮⋮﹂
﹁しかしクロよ。そのくらい産んで貰わねば安心できん。それに我
はそれくらいまぐわいたい﹂
エッチしてから黒竜は大人しくなり、白竜が遠慮しなくなった。
白竜、竜の癖に僕のような人っぽいのとするのが好きな変態か。
意識が虚ろな僕は︻胎児異種化︼のスキルを使った。
このスキルを使えばリリスさんのように、新たな種族を生み出せる
のだ。
僕が生み出そうとしてる種族。
それは竜の母となり、僕の代わりに竜の子を産んでくれる存在です。
こういう事をまだ生まれても居ない子供に任せるのはどうかと思う
けど⋮⋮。
100竜も産むの僕は耐えられそうにないのです。
もし子供が嫌がったら、竜の母にはさせません。
その時は⋮⋮。
﹁む、急に寒気が!?﹂
680
白竜が寒さを訴える。
僕のドラゴンミッションが始まらない事を、お腹の子に祈って欲し
いものです。
681
第42話 アウラの冒険 内緒のお話︵後書き︶
ちなみに、いく当てがない竜ズをカルドに連れ帰ったら、ネーブル
に怒られるセシルなのでした。
竜ズはカルドのお城に住む事になります。
セシルのせいで苦労ばかりしているネーブルさんのお話も書かなき
ゃか。
682
第43話 ネーブル公爵
セシリアと共に戦う事になってから1ヶ月が過ぎた。
連邦に対し連戦連勝の戦果に、ついにセシリア達が正式に陛下に認
められた。
セシリア率いる軍勢が第5師団となり、セシリアも私と同じ将軍と
なる。
セシリアが陛下からの叙任の儀を受ける為、共に帝都に来たのだが
︱︱
﹁はうぅ。ネーブル、僕はどうすればいいの!? 何かこう所信表
明とか必要!?﹂
﹁はぁ、落ち着け。将軍職と侯爵の爵位を拝命するだけだと言った
ろう﹂
﹁でもあれでしょ! なんか国のお偉いさんとかがいっぱい来て、
僕を視姦するんでしょ!?﹂
戦場でも落ち着きがなかったが、今はより一層落ち着きがない。
混乱してるのか緊張しているのか分からないが、酷い事を口走って
いる。
﹁ここは控え室だからいいが、お前は式が始まったら間違っても口
を開くなよ﹂
683
﹁口以外にどこを開けば⋮ハッ!? そ、そんな人前でなんて!?﹂
﹁ンイー。セシりん、裏表がないのは美徳であると思うけど∼。淫
魔の私よりエロ思考なのはどうなのん?﹂
セシリアの従者として同行した、淫魔のリオティネックにすら呆れ
られている。
セシリアにドレスを着せ、装飾品をつけるメイド達が無言なのが救
いだろうか。
白いドレスに明るめのイヤリングや首飾りをつけたセシリアは美人
ではある。
色白の肌に絹のような柔らかな金髪。
儚い見た目の中にある赤い瞳が強い意思を感じさせ、思わず見惚れ
てしまう。
しかし︱︱
﹁その胸と膨らんだ腹が台無しだな﹂
何の縁か、共に戦うようになった元宿敵。
それが1ヶ月もしたら妊娠していて腹が膨れて⋮⋮はぁ。
﹁ンフー。お腹ぽっこりで叙任だか受勲だかした人って、帝国では
いるのん?﹂
﹁前代未聞ではある。だが、お前達魔族と手を組むのも、前代未聞
なのだが⋮⋮﹂
684
﹁え!? 僕がマゾって何で知ってるの!?﹂
魔族とマゾくを⋮⋮。
こいつといると、魔族云々とかどうでもいい気がしてくる。
衣装の飾り付けが終わり、メイド達が去る。
そして自由になったセシリアがテーブルの上の剣を取った。
今回の為に私が用意した剣だ。
実用性は低いが、晴れの舞台を彩る為に無数の宝石等がついている。
さらにセシリアが妊娠してる事と胸の大きさを考え、短い物を用意
した。
元宿敵とはいえ、今は共に戦場をかける仲間なのだ。
気を使い、わざわざ特別に用意した物なのだが︱︱
﹁何でここに剣が⋮⋮? ま、まさか、ネーブル! 僕に皇帝暗殺
を!? 確かに妾さんとかもいっぱいいてリア充爆発しろ! と思
うのは独身のネーブルは仕方ないけど、暗殺はよくないよ!?﹂
﹁き、さ、ま、は! それは貴様が拝命時に使う物だ! 陛下に対
し、自分の心臓に刃を向けた状態で柄の部分を陛下に向けて、我が
心臓を捧げ、忠誠を誓うという意味で使うのだ!﹂
﹁ひょぇ。わかった! わかったから、肩を揺らさないでぇ。うっ
ぷ、つわりが⋮⋮﹂
﹁ま、待て! そのドレスも特注で用意したもので、あぁ、我慢し
ろ。待て、少し待ってろ!﹂
685
私はメイド達と共に、必死にセシリアの介護をした。
﹁平和ね∼ん﹂
従者の癖にパタパタと飛んでのんびりしているのはどういう事だ。
セシリアが落ち着いてから、リオティネックにも服を着させた。
本人はとても嫌がったが、あの格好で式典に出席させるわけにもい
かない。
﹁よ、よし。もう大丈夫!﹂
﹁ふぅ。あまり緊張しないでも大丈夫だ。陛下もお前が妊娠してる
事は知ってるからな。気を使ってくださるさ﹂
私とセシリアは、今日の式典の会場へと向かう。
セシリアは緊張しているようだが、戦地で敵として戦った姿を知っ
てる私は安心していた。
しかし結局その後の式典で、セシリアは陛下の前に辿り着く寸前で
盛大に転ぶ。
明らかに腹が大きい妊婦が転んだと言う事で騒ぎになる。
あの陛下すら驚いて自然と手を貸していた。
その事に気づいた者から静かになり、騒ぎは収まった。
あの陛下すら自然と手を貸すのはセシリアの人望か或いは⋮⋮。
686
◇◇◇
式典の後、私は軍服に着替えある一室へと向かう。
キィィ。
扉を開けると蝶番の音が響く。
﹁遅れて申し訳ありません﹂
﹁気にするな。余も先程来た所だ﹂
室内に入ると陛下を筆頭に国の重鎮達が座っていた。
私は直ぐに自分の席へとつく。
私と同じ列には軍事を司る帝国4将︱︱今はセシリアも含み5将か
︱︱が座っている。
対面には政治面の重鎮方が座っている。
﹁さて、全員が揃ったな。本来なら新たに加わったセシル将軍にも
参加してもらいたかったのだが﹂
帝国5将筆頭の竜人族であるヴェルガが司会として会議を始める。
セシリアは表向きには混乱を避ける為に魔族のセシルとなっている。
とは言え、ここ居る者は全員が魔族セシルが元連邦士官のセシリア
だと知っているが。
ちなみにセシリアは体調不良で欠席だ。
687
﹁連邦の方は、第4と第5師団でなんとかなりそうですが、法国が
問題でありまして﹂
﹁実際に戦場に居る者として、何が問題だ? ヴェルガ、フォルム、
ユピテル﹂
第1師団長、竜人族、大地のヴェルガ。
第2師団長、エルフ族、風のフォルム。
第3師団長、猫人族、雷のユピテル
私とセシリアを除いた3人の将軍が陛下に聞かれ、顔を曇らせる。
﹁法国の聖女の操る魔法は脅威ですな。広範囲の魅了で戦場が混乱
し、戦いにすらならぬ事があります﹂
黄金の鱗の竜人ヴェルガが憎々しげに話す。
温厚な彼が悪感情をあらわにするのは珍しい。
﹁それに敵の魔道神官団と神殿騎士団の狂気と言える程の忠誠心が
厄介ですわ。腕や足を失っても向かってくる様は、将兵に恐怖を与
えますの﹂
仮面をつけたエルフ族の女性であるフォルムがサラリと話す。
内容に比べどうでもいいような話し方だ。
仮面で表情が読めないが、心底関心がなさそうな声色だ。
﹁にゃ∼、それよりも怖いのはあいつらの洗脳だにゃ。普通の民を
魔法で洗脳して戦わせてるにゃ。うちらがまともに戦ったら、法国
は生きる者の居ない地になるにゃ﹂
688
人間族に猫の耳と尻尾が生えたような猫人のユピテル。
いつも明るく気軽な様子の彼女が元気なく話す姿は、その苦心がに
じみ出ていた。
﹁法国の人間族を皆殺しにするならば問題はありませんが、そうも
いきませぬので⋮⋮。現状では洗脳した民を盾にしているので攻め
入る事が出来ず、ほとんどが専守防衛となっております﹂
連邦も一筋縄ではいかなかったが、法国も中々厳しいようだ。
3人の報告が終わり、対策を話し合うが妙案は出なかった。
精々、連邦の平定が終わり次第に第4,5師団も法国に当てるとい
う案くらいだ。
それから大小の国内外の問題が話し合われる。
その中のひとつにセシリア達の事があった。
﹁魔物、いや元魔物と言うべきか。彼らの受け入れをまずは試験的
に行いたい。誰か良い考えはないか?﹂
﹁全員をいきなり受け入れると言うのは、さすがに無茶ですな。特
にゴブリンやオークは凶暴な上に、何と言うか﹂
陛下の言葉を聴いて大臣方が話し合い始める。
ゴブリンやオークは凶暴で、好んで人族の女に子供を産ませると言
われてる。
だから槍玉に上がったのだろう。
689
しかし戦場での彼らを思い出す。
レミネールの立案した作戦で囮として使われる。
陣地作成時にダークエルフやラミアから肉体労働を押し付けられ、
こき使われる。
戦勝の宴の時に、我が軍の女性達にすら丁稚として使われていたよ
うな⋮⋮?
人族の女性は好きなのかもしれないが、凶暴とは程遠かったような
⋮⋮。
﹁第5師団の魔軍の長であるセシル殿とは、ネーブル殿が個人的に
も親しいご様子。ならばまずは比較的大人しい女性のみのダークエ
ルフとラミアを、ネーブル殿の治めるカルドで受け入れてみてはい
かがでしょう?﹂
﹁ふむ。ネーブル、戦場ではお前が居ないとまずいか?﹂
﹁いえ、私が居なくとも副官のベルガモットが居れば大丈夫でしょ
う。とは言え第5師団とレミネールが居る前提ですが﹂
﹁レミネール?﹂
﹁セシリ︱︱セシルの副官的な立場で、実質の作戦立案及び魔軍の
指揮を執っているダークエルフです﹂
﹁では第5師団はセシルが居なくても、そのレミネールとやらが居
れば動くのか?﹂
690
﹁問題ないかと﹂
むしろセシリアのやつは、最近は邪魔なので戦場に出ないでくださ
いと言われていたな。
私の言葉を聴いて、陛下が眼を瞑り思案なされる。
﹁ではネーブル。お前はカルドにおいてセシルと協力し、ダークエ
ルフとラミアの実験的受け入れを行え﹂
﹁ハッ! ⋮は?﹂
﹁セシルも妊婦だろう。そのような状態で戦地にはいかせられぬ。
それに戦地を任せられる優秀な部下が居るならば、新たな国民を受
け入れるという我が国の今後にとって最も重要な案件にこそ、余が
信頼するお前に任せたい﹂
﹁お、お任せ下さい﹂
奥様方にはめっぽう優しい陛下。
妊婦と言うだけでセシリアにも慈愛を発揮なされたのだろう。
魔物を国民として受け入れるという、重要案件を私に任せて下さる
のは嬉しいのですが。
他の将軍にお大臣方が私の顔を見ないのが気になる。
カルドより大きな都市を治める方もいると言うのに⋮⋮。
さては前もって私に押し付ける気だったのでは。
﹁にゃ∼。陛下に凄い信頼されてて、ネーブルよかったにゃ﹂
691
ユピテルの満面の笑顔を受けて、私は確信した。
◇◇◇
あれから約1年。
戦地から離れだいぶ経ったものだ。
連邦との戦は、ミニム姫を捕らえほぼ終えたと言える。
ベルガモットとレミネール、二人の副官が優秀で助かったと言う所
か。
カルドでの入植も順調だ。
都市部の拡張を行い、一部だがゴブリンやオークも受け入れ始めた。
問題が在るとすれば︱︱
セシリアが報告してくる入居者や予算の数値が間違っていたり。
夜会や式典に来ないセシリアに貴族連中を紹介しに行かねばならな
かったり。
エルフ族の女性達からダークエルフが男を誘惑すると苦情が来たり。
陛下から監視の為に借りたメロディアがいつの間にか取り込まれて
いたり。
突如カルド上空に竜が2匹襲来した上に、セシリアが竜の子供を妊
娠産卵したり。
その竜を城の敷地内に住まわせねばいけなくなったり。
スライム医院が繁盛しすぎて、医者がストライキを起したり。
︱︱大小さまざまな問題があるが、順調だ。
692
大半が元魔物云々ではなく、セシリアの個人的な事と周辺事情な気
もしなくもないが。
今では冒険者や傭兵の中にダークエルフやラミアが混ざるようにな
った。
こうも早く民衆レベルで溶け込み始めたのは嬉しい誤算だ。
﹁∼∼∼♪﹂
﹁ネーブル様、機嫌がよろしいようですが、何かあったのですか?﹂
﹁うん? 今日は約束があってな﹂
執務室にて、補佐官のシトラスが話しかけてくる。
眼鏡をかけた人間族のシトラス。
その眼鏡が光を反射して光る。
﹁どのような約束でしょう?﹂
﹁う、うむ。実はな﹂
﹁実は?﹂
﹁セシリアの奴が、人を紹介してくれるとな﹂
﹁ほほぅ﹂
再び光るシトラスの眼鏡。
693
﹁先日、竜が来た時にセシリアの屋敷に怒鳴り込んだ時にな﹂
竜襲来で大混乱になるところだったと怒鳴り込んだ。
その時にあいつも反省したのか、何度も何度も謝ってきた。
そして私にいつもお世話になってるからと言って︱︱。
﹁男性を紹介して下さる。と言うわけですか﹂
﹁う、うむ。まぁ、そういう事だな﹂
軍にいると出会いがない。
貴族間の慣習で、独身の男女には身内を紹介したりするものなのだ
がそれもない。
左目に眼帯をしてる女は、貴族としては醜くダメなのだろう。
あのお優しい陛下すら私に紹介の一つもしないと言う事は、私は見
た目が相当酷いのだろう。
貴族の紹介と言うのは、そういう意味で紹介された時点である程度
の約束事になる。
断るにも正式な理由が居るのだ。
貴族間の紹介を無下に断る事は色々と問題になってしまう。
故に私のような見た目が酷い者に紹介出来ないと言うわけか。
だからこそ、セシリアの紹介してくれるという話に思わず喜んでし
まった。
﹁と言う訳でシトラス、私は午後はセシリアの屋敷に行くのでな。
今日の仕事はここまでだ﹂
694
﹁はいはい。残りの仕事はお任せ下さい。しかしネーブル公爵閣下
にセシリア侯爵閣下が紹介とは、大ニュースですね﹂
﹁うん? 何か言ったか?﹂
﹁いえいえ、ネーブル様、楽しんでらしてください﹂
﹁すまんな。∼∼∼♪﹂
思わず飛びそうになりつつ、私室に向かい廊下を歩いた。
∼∼セシリアの屋敷にて∼∼
お気に入りの蒼いドレス、他にも見た目にかなり気を使った。
そしてセシリアの屋敷について、少し狭い個室に通された。
和室と名付けられた、靴を脱ぎ床に直接座る部屋だった。
そこで今、テーブルの対面にセシリアと紹介された相手がいるのだ
が。
﹁セシリア、すまないが私はお前のように同性の趣味はないのだが
⋮⋮﹂
紹介されたのはセシリアの屋敷に住むエルフの少女レムリアだ。
﹁お前は夫が女性のアルシアで、価値観的に女性同士でも問題なく
て、善意で紹介してくれたんだろうが、私は一応、夫には男性が良
695
くてな⋮⋮﹂
セシリアが悪巧みなどが出来ない事は、今日までの付き合いでわか
っている。
ならば善意なのだろうが、女性を紹介されてもな⋮⋮。
﹁ちょ、ちょっと待って! レムは男の子だよ!﹂
﹁何を言ってるんだ。こんなに可愛い子が男の子は︱︱﹂
﹁ストーーープ! えぇぃ、仕方ない! レム君起立!﹂
﹁え、う、うん﹂
先程から下を向いて真っ赤だったレムリアが立ち上がる。
立ち上がったレムリアのズボンをセシリアが引き摺り下ろした。
﹁お、お前はいきなり何をしている!﹂
﹁はいはい、落ち着いて! よく見て!﹂
﹁はうぅ﹂
妙に落ち着いているセシリアに言われ、指差す場所を見る。
その場所、レムリアの大事な場所にはふにゃっとした物が生えてい
る。
自分の目が信じられず、眼を開けて凝視してしまう。
するとムクムクとレムリアのソレは大きくなっていく。
696
﹁あ、ネーブルに見られて興奮して勃起しちゃった?﹂
﹁はぅぅぅぅぅ﹂
﹁わ、わかった! わかったから仕舞え!﹂
セシリアがゆっくりとズボンを上げる。
レムリアは秘部を見られたからか顔が真っ赤だ。
そして私もきっと顔が真っ赤だろう。
は、初めて男性の、オ、チンチンを見てしまった!
﹁と言う事で、レム君を紹介します。レム君はまだ小さいけど、逆
光源氏計画で好みに育てられるという利点が!﹂
ち、小さい!?
確かに小さかったが、ムクムクと大きくなって。
﹁って、おーい、ネーブル∼?﹂
﹁ななななんだ!﹂
﹁ふふふ、レム君のオチンチンがお気に召しましたか﹂
﹁ちちちがう! 他の貴族の紹介もなくこっそり落ち込んでいた所
に、初の紹介で喜んだらレムリアを紹介されて余計に落ち込んだだ
けだっ!﹂
私の本気ではない言葉にレムリアが見るからに落ち込む。
697
いや、その、レムリアに不満はないのだが。
いやいや、レムリアに満足と言うわけではない。
私はエルフの子供好きではない。
嫌いと言うわけではないが、さっきまで女の子だと思ってたし。
私が混乱の只中に居ると、セシリアはぽけーとした顔で私を見てい
た。
﹁他の貴族の紹介がないって、あれじゃないの? 確かネーブルっ
て将軍になるとき、我が身命は国に捧げる云々って言ったんでしょ
? 国に人生を捧げるほどの人に、恋人候補とか紹介したら失礼に
当たるとかじゃないの? 貴族って誇りとかそう言うの気にするん
でしょ?﹂
そう言えば就任の時に﹃我が伴侶は陛下の理想であります!﹄と言
った様な。
⋮⋮若かったな。私。
﹁さて、それじゃあ、あとは若い人に任せて僕は失礼しますね。う
ふふふふ﹂
私とレムリアを残し、部屋を出るセシリア。
部屋にレムリアと二人きりになる。
⋮⋮気まずい
﹁そ、その、災難だったな。私などに紹介されて﹂
698
﹁ううん。ネーブルお姉ちゃんの事好きだからボクは平気﹂
﹁そ、そうか﹂
﹁うん﹂
好きと言うのは年上に対する憧れだろう。
好きと言われ嬉しくはあるが。
﹁ネーブルお姉ちゃんこそ、ボクみたいな子供じゃ嫌だよね﹂
﹁そんな事はない﹂
嫌かどうかと聞かれれば、嫌ではない。
純粋な子供を嫌いな者などいない。
年の差や子供の内からの婚約は珍しくはない。
しかしどうにもレムリアが現状を理解してる気がしない。
﹁レムリア、セシリアの紹介がどういう意味か分かっているのか?﹂
﹁ネーブルお姉ちゃんが良いって言ったら、結婚して良いってセシ
ルお姉ちゃんが言ってた﹂
﹁結婚の意味が分かっているのか?﹂
﹁アルシアお姉ちゃんとセシルお姉ちゃんみたいに夫婦になるんで
しょ? エインお姉ちゃんから、ジョウチョ教育されたから知って
る﹂
699
そうか、知ってるのか。
セシリアではなくエインと言う辺り、信用できる。
だが口に出さずにいられなかった。
﹁あ∼、レムリア、結婚と言うのはな。好きなもの同士がするもの
で、その場合の好きは憧れとかではないんだぞ?﹂
﹁ずっと一緒に居たい。男の子だったら、守りたいって思う女の人
とするんでしょ? ラミュエルお姉ちゃんに感じる好きとは違って、
もっと好きって思う相手とするものだって、エインのお姉ちゃんは
言ってた﹂
﹁まぁ、そうだな﹂
保護者であるセシリアより、エインの方がしっかり教育をしている
ようだ。
﹁いつも家に来て楽しそうにしてるネーブルお姉ちゃんを見てたら、
好きになったの。ボクじゃお姉ちゃんを守れないけど、ダメ?﹂
涙目で聞かれても困る!
こんなに真っ直ぐ好きと言われた事もないので、どうしていいかわ
からない。
とりあえずここは。
﹁セ、セシリアの紹介でもある。無碍にしたら問題だからな。とり
あえず、その、婚約⋮⋮か?﹂
﹁ありがとう。ネーブルお姉ちゃん。大好き!﹂
700
そんな笑顔で言われたら喜んでしまう。
⋮⋮とりあえず問題を先送りにすることにした。
◇◇◇
執務室で書類仕事をこなす。
同室に居るシトラスも仕事をしているが、たまに私を見てはニヤニ
ヤする。
﹁⋮⋮言いたい事があるなら言わないか﹂
﹁ネーブル様、ご婚約おめでとうございます!﹂
﹁くっ!﹂
私とレムリアが婚約した事は、三日と経たず広まった。
レムリアからセシリア。
セシリアからアルシア。
アルシアから城の竜の白い方。
そして白い竜は城の兵士と世間話を大声でした。
私とレムリアの事について!
とりあえずレムリアを泣かさないようにして、後日断るかと思った
のだが。
もはやカルドでは公然の事実として、今更断れないほど広まってい
701
る。
﹁今日はレムリア様がご見学にいらっしゃるんですよね∼。あ、違
いますか。お忙しいネーブル様の都合を考え、職場までデートをし
に着てくださるんですよね﹂
眼鏡で光を反射させながら、ニヤニヤ楽しそうに言ってくる。
﹁でもネーブル様も同性愛者とは知りませんでした。セシル様に影
響されたんですか?﹂
﹁レムリアは立派な男子だ﹂
﹁またまたぁ﹂
何故かレムリアが女性で、私が女性同士の婚姻を結んだとされてい
る。
あんなに立派なオチン⋮⋮生えていると言うのに。
コンコンコンコン。
﹁レムリア様をお連れしました﹂
ネチネチニヤニヤとシトラスに責められていると、衛兵に案内され
てレムリアがやってきた。
﹁ネーブルお姉ちゃん、こんにちは﹂
﹁あぁ、よく来たな﹂
702
﹁ようこそいらっしゃいました。レムリア様﹂
先程のニヤ顔ではなく、淑女然とした顔で挨拶するシトラス。
反射的に殴りたくなる衝動を抑える。
﹁今日はオシャレしてきたの。どうかな?﹂
﹁に、似合っていて可愛い﹂
﹁そっか。ありがとう。ネーブルお姉ちゃん﹂
似合っているのだが、何故スカートなのだ。
スカートは女性の服な気がするが、似合っているからいいのだろう
か。
レムリアを用意してた私の横の椅子に座らせる。
﹁私の仕事を見ていてもつまらないぞ?﹂
﹁ネーブルお姉ちゃんと一緒に居れるだけで嬉しいよ?﹂
にっこりと可愛い顔で言われると、私こそ嬉しくなる。
つい私も笑顔で書類に向き合うと︱︱シトラスがニヤニヤと見てい
た。
誤魔化すように仕事に集中する。
暫くするとレムリアが軽くせきをした。
﹁あ、すまんな。レムリア。飲み物くらい用意するべきだった。す
703
ぐに用意を﹂
﹁では私が持ってまいります。ネーブル様とレムリア様は、お二人
でゆっくりと待ってて下さい。うふふふふふふふ﹂
多分に含みを持たせてシトラスが部屋から出て行く。
いつかのように二人きりになる。
﹁あ∼、座っているだけで暇で退屈ではないか?﹂
﹁ううん。ネーブルお姉ちゃん綺麗だし、一生懸命仕事をしてるの
見てるだけで楽しいよ﹂
さり気無く綺麗と言われ恥かしくなる。
少し顔をそむけて居ると、レムリアが立って私の前まで来た。
目が潤んで居て切なげな表情で。
﹁ねぇ、ネーブルお姉ちゃん﹂
真っ直ぐ私の顔に近づいて来て。
﹁んっ﹂
唇と唇が重なる。
﹁ネーブルお姉ちゃん、もう一回﹂
﹁んぅ﹂
704
再び唇を奪われる。
初めての感触にドキドキする。
﹁レ、レムリア。こういう事はもっと付き合いが長くなってから﹂
﹁嫌だった?﹂
﹁い、嫌ではない﹂
嫌ではないから困る。
自分の事を好き言ってくれる人が、自分を求めてくるのは嬉しい。
﹁お姉ちゃん﹂
﹁んんっ﹂
今度は許可なくしてくる。
そしてそのまま唇を離さずに、レムリアの手が私の胸に伸びる。
軍服の上から触ったかと思うと、手早く前部分を開けて下着の隙間
に手を入れてきた。
椅子に座って前にはレムリアが居るので逃げられない。
レムリアを突き飛ばすわけにもいかず、されるがままになる。
私の左胸を右手で下から撫でるように揉んでくる。
全体を撫でると乳首を摘み優しくこねる。
口を優しく唇で塞がれて何も言う事ができない。
705
ふと、レムリアの手が私の胸から離れた。
それをちょっと寂しく思ったが、すぐにレムリアの手は私の体を触
ってくる。
私の脇から背中、お腹へと回ってきて、そのまま下へ動く。
一瞬、体をビクっとしてしまった。
しかしその後私がじっとしてると、レムリアの手は軍服の下を通り
私の下腹部へと伸びていく。
初めて他人に触られるそこを上下に優しく撫でられる。
撫でながら指1本だけは割れ目の中に入れて、割れ目の中を撫でら
れる。
気づけば唇は離れていて、私の口からはハァハァという吐息が漏れ
ていた。
﹁濡れてるね。ネーブルお姉ちゃん﹂
その言葉に恥かしくて顔が上気する。
恥かしくて顔を背けた私の下半身の服を、レムリアが徐々に脱がし
て行き︱︱
ガチャ。
ドアが開く音がした瞬間、衣服を直し、レムリアを椅子に座らせた。
﹁お待たせしました。レムリア様。ネーブル様と二人きりはどうで
したか?﹂
706
﹁え? あれ?﹂
﹁特に何もない。早くレムリアに飲み物を渡しなさい﹂
﹁はいはい。小うるさい奥様ですね∼。レムリア様﹂
レムリアの前に果実のジュースを置くと、シトラスは自分の座席に
座る。
私はさっきまでの事をなかった事にして仕事を再開する。
仕事を再び始めると、レムリアが私のすぐ横まで移動してくる。
そして机の死角になって見えない私の下半身に手を伸ばす。
男の人に求められて、どうしたらいいか分からない私はそのまま仕
事を続ける。
レムリアは器用に私のベルトを外し前部分を開け、私のショーツを
丸出しにする。
そしてショーツを横にずらすと私の秘所を直接触る。
湿ってる秘所をクパクパ開閉させて遊ぶように弄る。
それが終わると大切な穴に指を入れ、中の上部分を引っかくように
指だけ出し入れする。
﹁んっ、んん﹂
羞恥と少しの気持ち良さから出る声を押し殺す。
シトラスが寄り添うように近い私とレムリアを見てニヤニヤしてい
707
るのだ。
間違っても変な声を出せない。
初めて迎える男性の指。
それが気持ちよいからか、私の股間はビショビショになっていく。
しかしレムリアは飽きたのか、私の穴から指を抜く。
ホッとした私にレムリアが囁く。
﹁お姉ちゃん、少し脚開いて﹂
私は言われた通りに脚を左右に開く。
開いてすぐにレムリアが私の秘所に手を入れ割れ目を左右に開き、
大事な突起を摘んだ。
その衝撃に指を噛んで耐える。
私が書類の内容を考える振りをして指を噛んで耐える間、レムリア
は突起をクニクニと指で摘み遊ぶ。
円を描くように回されたり。
上下に引っ張られ伸ばされたり。
真っ直ぐ伸ばされたり根元まで押さえつけられたり。
私が耐えられず声を出しそうになると、突起から手を離した。
終わったかと思って安心したのも束の間、再度レムリアの手が私に
伸びて︱︱。
その日は私は、レムリアが帰るまでずっと弄られ続けた。
秘所だけではなく、シトラスの眼を盗んで色々な場所を。
708
レムリアに弄られたのは恥かしかった。
しかし何かが満たされた気がする。
また会うと弄ってくるんだろうか。
それを少し楽しみに思いながら、私はベッドの上で眠りについた。
709
第44話 ラミュエルの危機︵前書き︶
第二部も佳境に入ります。
珍しく残酷な表現が在るので、注意です。
710
第44話 ラミュエルの危機
﹁冒険ですか?﹂
﹁おう、冒険だ﹂
スライム産婦人科医院の待合室で知人に話しかけると、唐突に誘わ
れました。
﹁私が冒険にですか?﹂
﹁おう、ラミュエルちゃんが冒険にだ﹂
私を冒険に誘ったのはお髭のおじさんのダグラスさんです。
奥さんのミリスさんの産後の体調と、生まれたお子さんの検診で来
たのです。
奥さんとお子さんが診察を受ける間、待合室で待っているダグラス
さんに声をかけたらいきなり誘われました。
﹁私、冒険者じゃないですよ?﹂
﹁それはもちろん知っているが、あ∼、ぶっちゃけると、治癒術師
ってのは貴重でな。今度、新しく発見されたダンジョンに調査の為
に潜るんだよ。俺達のパーティーには治癒術師は居ないし、下手に
他のパーティーから借りるのも問題でな。いつもならゲオルグだけ
でも大丈夫なんだが、未知のダンジョンの調査となると本職が欲し
くてなぁ﹂
711
要約するとこうです。
連邦との戦争が終わり、連邦との境界線にあった地下迷宮が見つか
った。
その調査をベテラン冒険者のダグラスさんパーティーが請け負った。
いつもは薬品と格闘士だけど回復術が少し使えるゲオルグさんが回
復している。
しかし未知の迷宮の調査となると、ちゃんと治癒術を使える人が居
て欲しい。
そこでカルドに来てから治癒術を学んでいる私に誘いをかけてきた。
と言う訳のようです。
﹁事情は分かりましたけど、私は実戦経験とかないですよ?﹂
﹁それも分かってるが、セシルに聞いたぞ。ラミュエルお嬢ちゃん
は治癒術師としては相当なレベルだって﹂
﹃スライムさんのお手伝いをするなら治癒術を習ったら?﹄
そうセシルさんに言われて、軍のコネを使い治癒術を習い始めまし
た。
普通は何年も修行するらしいのですが、私は何故か2週間習っただ
けで一流の治癒術師扱いされました。
セシルさんはそれを当然とばかりに頷いていましたが、私自身は実
感もなければ自信もありません。
﹁自信がありませんよ﹂
712
﹁な∼に、大丈夫。罠はエインがしっかり調べるし、魔物の類から
は俺達が守る。ラミュエルちゃんは俺達に回復魔法をかけてくれれ
ばありがたい﹂
﹁う∼ん﹂
正直に言えば、冒険にはまったく心惹かれません。
弟のレムなら喜んでついていきそうですが、私は即断できません。
﹁えっと、スライム医院のお仕事もありますし﹂
﹁最近は経営が順調で、ダークエルフやラミアのお手伝いさんがい
っぱい居るって聞いてるが、そんなに忙しいのか? なら仕方ない
か﹂
思った以上に困った顔をされてしまいました。
私のスライムさん︱︱コホン。
マリンズ邸宅以外のスライムさんも最近は増えて、それに伴い私以
外のお手伝いさんも増えたので、実は最近は暇なくらいです。
危険かもしれない。
心惹かれない。
断る理由はその二つだけしかなさそうです。
1個目の理由は、しっかり守ると言われてしまいました。
﹁はぁ、スライムさんのお手伝いは私が任された事なので、セシル
さんの許可を取らないと無理ですよ﹂
713
﹁あ∼、それなんだか、先に話を通しておこうと思って屋敷を訪ね
たんだが、セシルは屋敷に居なかったんだが﹂
﹁あぁ、そう言えば今セシルさん居ませんでしたね﹂
﹃毎日料理美味しいけど、僕は和食が食べたくなったんだよ! ラ
ーメン! ラーメン食べたい! ん? ラーメンって和食? まぁ
いいや! 僕はラーメンを探しに旅に出ます!﹄
そんな事をある日の朝叫んで旅立ってしまいました。
確か昨日の朝でしたっけ。
まだ帰ってないんでしょうか。
しかしセシルさんに話を通すならエインさんに頼めば良いと思いま
す。
それをしないで自分で話しに行くというのは、所謂筋を通すと言う
事なのでしょうか。
ダグラスさんの誠実さを感じます。
﹁分かりました。セシルさんが戻って許可をくれたらいいですよ﹂
﹁おぉ、助かる! 必ずラミュエルの事は守るからな。でだ、出発
は明後日だったりするんだが、セシルはいつ戻るんだ?﹂
﹁う∼ん。私もセシルさんがいつ戻るかはわかりませんよ?﹂
結局セシルさんは出発の日が来ても戻らず、私はアルシアさんとリ
オさんの許可を得て同行する事になったのです。
714
◇◇◇
ダンジョン。
何かの理由で作られた迷宮。
そこに眠る財宝を求め、冒険者は迷宮へ潜ると言います。
﹁ちょっと緊張しますね﹂
人生初の迷宮。
想像した物より格段に綺麗な通路を通りながら、少しワクワクとし
た気持ちが湧きます。
﹁まぁ緊張するな。とは言わないが、気負い過ぎないようにな﹂
慟哭の谷と言われた物凄い高さの崖がある場所。
そこの崩れた崖から入り口が見つかったこの迷宮。
迷宮とは名ばかりで、入り口から入ってすぐの今居る通路はまるで
︱︱。
﹁神殿、だね﹂
﹁ふむ⋮⋮﹂
エインさんの言葉は正に私が思った事です。
ダグラスさんはそれを聞いて顎に手を当てて悩みます。
﹁ダグラス、魔物の気配もしない。柱も天井も床も、ヒビの一つ処
か塵すら積もっていないぞ﹂
715
﹁この柱の材質だが、金属ではなさそうだが石材でもない気がする
な﹂
明らかに人工の建造物に見える迷宮内を調べているゲオルグさんと
グレイヴさん。
二人も難しそうな顔をして話しに加わります。
﹁古代の神殿⋮⋮にしては劣化が一切ないな﹂
﹁あたしが見る分には、罠の一つもなさそうだよ﹂
自宅とは違う喋り方のエインさんが罠がないと言います。
私はもっと怖い魔物が出たり、罠がいっぱい在るのを想像してまし
た。
ですがここはしっかりした建物で、白い内装はむしろ安心感を感じ
ます。
私はひっそり安心していたのですが、4人は何故か不安を顔に出し
ていました。
﹁今回の目的は調査だ。行ける所まで進もう。だが危険だと思った
ら即引き上げるぞ。ラミュエルお嬢ちゃんもいるしな﹂
ダグラスさんの言葉に全員が頷き進みます。
先頭はエインさん。
その後にダグラスさん、グレイヴさん。
グレイヴさんの後に私が続き、最後尾にゲオルグさんです。
716
魔光石のランプを持ちながらエインさんが進みます。
入り口近くと違い、奥は光が届かず暗闇の中を進みます。
最後尾のゲオルグさんは松明を持ち、私は前後から光に挟まれます。
暗闇の中は恐怖を誘いますが、前後の光がそれを打ち消してくれま
す。
一切の凹凸のない白い綺麗な床の上を進みます。
どこまで進んでも左右には白い柱が立ち、通路は曲がる事無く直進
しています。
﹁ここは一体何なんでしょうか?﹂
誰も喋らない事が重圧だったのでしょうか、私は無意識に問いかけ
ていました。
﹁ん∼。神殿、宮殿? 貴族のお偉いさんが作るような建物みたい
だね﹂
﹁法国にあるでかい神殿も確かにこんなんだったな。真っ直ぐ歩い
ていくと、最後は説法だか聞くこれまたどでかい広場にでたもんだ
が﹂
エインさんとダグラスさんが私の言葉に反応してくれます。
その事に内心安堵し、安堵した分、自分が不安だったと自覚してし
まいます。
それから再び無言となり、広い広い通路を進みます。
717
どれくらい進んだでしょうか。
突然エインさんが止まり、それに伴い全員が止まります。
私だけ止まったのに気づかず、竜人のグレイヴさんの背中にぶつか
ってしまいます。
﹁ご、ごめんなさい﹂
﹁シッ﹂
私が謝ると、エインさんが後ろを振り向いて静かにという動作をし
ました。
その顔は真剣で、私が知ってるエインさんではありません。
﹁居るのか?﹂
﹁えぇ。居るわね﹂
何が?とは誰も聞きません。
エインさんは腰の袋から小さな魔光石の欠片を取り出すと、それを
前に投げます。
ランプと松明の光が届かない前方が明るくなって、よく見えるよう
になりました。
暗闇から浮かび上がった床を良く見れば。
﹁ひ、人が⋮⋮﹂
白かったであろう鎧を真っ赤に染めて倒れ伏す人が居ました。
718
私は血だらけであろうその人を癒す為に近づこうとしましたが、グ
レイヴさんに槍で前を塞がれとめられます。
﹁か、回復魔法をかけないと﹂
﹁こんな場所にまともな者が倒れているわけないだろう?﹂
既に警戒して武器を構えてたエインさんとダグラスさん。
そして私を守るように槍を構えて私の前に立つグレイヴさん。
最後尾の虎人のゲオルグさんは後方に松明を向けて警戒しています。
4人の様子にここがどこだか思い出しました。
何が起こるか分からないで立っていると、倒れていた人がピクリと
動きました。
その瞬間、皆さんの気配が変わります。
私は倒れる人よりも、その気配が怖くて体を硬くしてしまいます。
﹁う、うぅ、くっ、私は⋮⋮﹂
倒れていた茶色い髪の人間の女性がゆっくり体を起しました。
そして私達に気がつくと観察するように見てきます。
﹁救援か後詰めの者達ではない⋮⋮か﹂
﹁あんた、法国の神殿騎士だな? 何故ここにいる﹂
ダグラスさんが女性に話しかけます。
719
﹁確かに私は神殿騎士だが、ここに居る理由は言えんな﹂
その返事を聞いた瞬間、危険な気配が皆さんから発されます。
私はそれが怖かったのか、何故か反応して言葉を叫ぶように出して
いました。
﹁ま、待ってください。その人は怪我をしているようですし、その﹂
続きが出てこなかった。
しかし騎士の女性は私を驚いた眼で見ると、ふっと表情を緩めまし
た。
﹁理由は言えんが⋮⋮。先に聞いておく、お前達は帝国か連邦の者
だな?﹂
﹁えぇ、帝国の冒険者で、ここの調査をしてんのよ﹂
﹁そうか、ならばすぐに逃げろ。ランタンや松明の光、それに会話
をしたせいでアレが来るだろうからな﹂
騎士の女性はそう言うと、私達に背中を向けて暗闇の先を見つめま
す。
その不可思議な行動に疑問を感じます。
﹁おい、どういう事だ。法国の神殿騎士がここに居て何をしてた?﹂
﹁悠長に話をしている場合ではないのだがな。私もお前達と同じで、
教祖ミレイア様の命で調査をしていただけだ。そしてここが当たり
だったと言う訳だ﹂
720
﹁当たりだと?﹂
ダグラスさんが声に焦りを含ませつつ会話をしています。
何に焦っているのか分かりません。
ですが私も何かのせいで心臓の音が少しずつ早くなるのを感じます。
﹁部下達と共にここの調査をしていたのだが、今生きているのが私
だけと言うだけの話だ﹂
それはつまり、部下の方々が死んだという事。
暗闇の先を見つめる女性騎士。
言葉とその行動で察してしまいます。
﹁私を助けようとしたエルフの少女の為に足止めをしようと思った
が⋮⋮。手遅れか﹂
カツーン、カツーン。
闇の先から歩いて床を叩く靴音が聞こえます。
﹁おい! どういう事だ!﹂
焦りを隠す事もなくダグラスさんが叫びます。
﹁門番が居た。と言うことだ。勝てぬとは思うが、生きたいならば
お前達も必死に戦うがいい﹂
﹁ダグラスさん、なんか分からないけどやばいよ﹂
721
﹁ちっ。おい、神殿騎士、何か敵が居るってことだな。俺達も協力
するから詳しく話せ。俺はダグラスだ﹂
両手剣を前方の闇に向けて構えるダグラスさん。
エインさんは魔光石のランプの蓋を開け石を取り出し床に置く。
﹁冒険者に先に名乗られるとは。神殿騎士団長、リー・ティアリス
だ﹂
私はその名前を聞いてハっとする。
セシルさんから聞いた事がある名前だったから。
セシルさんが言っていた、3国で最強クラスの一人。
帝国の皇帝や4将軍、連邦の猫姫や部族長達に匹敵する実力者。
﹁あぁ、悪いがラミュエルちゃん、騎士⋮⋮ティアリスの傷を治し
てやってくれ﹂
﹁は、はい﹂
私が傷を治そうと前に居るティアリスさんに駆け寄ろうとすると、
当の本人から手で止められる。
﹁この血は部下の返り血だ。私自身の怪我は自分で治した﹂
﹁何?﹂
ダグラスさんは、たぶん意味が理解できずに聞き返したんだと思い
ます。
私も意味がわからなかったから。
722
﹁奴は死んだ部下を操ったのだ﹂
カツーンカツーンと聞こえていた音が目の前まで迫ってきた。
ネクロマンサー
﹁死霊術師か﹂
死霊術師。
死した生物を操る魔術師。
物語の中だけだと思っていたけど、そんな存在が実際に居るとは。
﹁操った死体が厄介か。術者狙いで行くか﹂
攻撃してくる死体。
それは己の身を省みず、ただ相手を殺そうと狙ってくる。
それは防御を考えない攻撃で、厄介極まりないと思います。
物語では王子様や勇者様が簡単に倒していたけど、いざ戦うと思う
と恐ろしいです。
﹁いや、まずは操られた者をなんとかするべきだ﹂
﹁何でよ。ゾンビやグールを相手にした事在るけど、意外と厄介だ
ったから無視したいんだけど。あいつら、タフだけど動きは遅いし﹂
﹁私達もそう思い、アレを先に狙ったんだがな。狙った部下から殺
され操られた。操られた者を気にしながら隙を突く程度では無理だ
ろう。倒すつもりならアレに対しては全員でかかるべきだ﹂
723
帝国の将軍に匹敵する人が一人では勝てないと言っている。
セシルさんが言うには、ネーブルさんは一人で竜2匹を同時に相手
にして倒せるらしい。
そんな人と同等の人が自信なさげに言う姿に恐怖を感じる。
﹁来るぞ﹂
それまで黙っていたグレイヴさんが静かに言う。
その言葉を待ってたかのように、光の範囲に足音の元が入った。
﹁ひっ﹂
私はその姿を見て悲鳴を漏らしてしまう。
血だらけの鎧。
手がなかったり、胴を切られて鎧が裂けていたり、酷いのは首から
上がなかった。
その数は⋮⋮10以上。
﹁グレイヴ、ラミュエルをつれて逃げろ!﹂
﹁わかった!﹂
槍をすぐに背に背負い、ゲオルグさんから松明を受け取ったグレイ
ヴさんが私の手を引いて来た方へ引っ張る。
しかしすぐに足を止める。
﹁くっ﹂
724
﹁回り込んでいたのか⋮⋮﹂
グレイヴさんの悔しそうな声と、ティアリスさんの諦めを含んだ声
が聞こえた。
私はグレイヴさんの背中から顔を出し来た方の通路を見た。
﹁彼の方よりの命であるこの地の守護の為、汝らはここで我が贄と
なるが良い﹂
そこには真っ赤なローブを着た人型の何かが居た。
人型の何かと言ったのは、ソレが生きているとは思えなかったから。
眼窩には赤い光を宿し、ローブから覗く部分は真っ白い骨だけの物。
大きな鎌を肩に背負うソレは、まるで恐怖が形を取っている様でし
た。
﹁門を侵そうとする者には死を﹂
725
第44話 ラミュエルの危機︵後書き︶
そういえばPVの累計が100万を越えていました。
皆様に感謝ですm︵︳︳︶m
726
第45話 ラミュエルの危機 その2
リビングデッド
魔光石の放つ光に照らされて、ぞくぞくと生きた死体達が向かって
くる。
ダグラスさん達が壁際の柱を背に立つ私を守るように布陣する。
﹁騎士様よ。素手でやるつもりか?﹂
私の正面に建つグレイヴさんがティアリスさんへ問いかける。
グレイヴさんのと言うとおり、ティアリスさんは武器を持っていな
くて素手です。
﹁あぁ、そう言えば剣がないな﹂
ティアリスさんは平然と剣が無い事を言い放つと床へ手を置きます。
ホーリーサークル
﹁︻聖なる円陣︼﹂
ティアリスさんを中心に床から5cmほど浮いた中空に白い魔法陣
が浮かびました。
﹁この魔法陣は、不浄なる者の力を弱める効果がある。迎撃は円陣
内でするといい﹂
﹁へぇ、さすが騎士様だね﹂
白い光を放つ輝く円陣は、恐怖に蝕まれてた私の心を少し軽くして
727
くれました。
心なしか、ダグラスさん達も円陣を見て顔を明るくした気がします。
しかしそんな私達を見て、赤いローブを来た骸骨の化け物は楽しげ
に嗤います。
﹁魔を弱体化させる法陣か。いやはや、大した芸だ。カカカカカ﹂
﹁そんなに余裕にしていて良いのかな? 初見だった先ほど違い、
お前が操る部下達を倒した後での1対1なら私が勝ってしまうぞ﹂
まるで化け物に忠告するように言うティアリスさんに驚いてしまい
ます。
今は生きる死体達も円陣の外側に待機して動かず、骸骨の化け物も
私達を見るだけです。
私達が戦う準備を待っているかのごとく動かない化け物達。
その化け物達に一斉に襲って来いと言っているようでゾッとしまし
た。
﹁クククク、カカカカ。なるほどなるほど。魔力切れで倒れていた
にしては良い強がりだ。目覚めた後に再度絶望をと思っていたが、
予想通り素晴らしい素材だ。その強がりに免じて、汝の元部下を始
末するまで我は手を出さずに居ようとも﹂
﹁ちっ。リッチ風情が﹂
﹁クハハハ。そのリッチ風情に部下共々負けた者が何を言うか。そ
れに我は偉大なる死者の魔法使い︽エルダーリッチ︾。ただのリッ
チ如きと一緒にされてはかなわんな﹂
728
愉しそうに。
本当に愉しそうに嗤いながら骸骨︱︱リッチが私達から遠ざかる。
リッチの動きに呼応するように、生きた死体が私達を取り囲んだ。
﹁とりあえず、あのリッチはこいつらを片付けるまで手を出さない
ってことか﹂
﹁駆け引きというより、完全に遊ばれている感じよね。強いからっ
て図に乗ってる奴ってあたしの嫌いなタイプだ﹂
エインさんは嫌悪を顕にして下がったリッチを睨んだ。
﹁俺が最前線でグレイヴが中衛として援護を。エインは素早く動い
て撹乱しつつ、やれるならやってくれ。ゲオルグはラミュエルの直
近で討ち漏らした奴をやってくれ。で、ラミュエルは回復魔法を頼
む﹂
﹁は、はい!﹂
両手剣を構えたダグラスさんが次々に指示を飛ばす。
自分がやる事は回復だと頭の中で再確認する。
﹁おい、ティアリス。素手じゃ分が悪いだろうし、魔力が尽きてる
なら、あんたもラミュエルの護衛を︱︱﹂
﹁問題ない﹂
ダグラスさんが言い終わる前に、ティアリスさんは敵に向かい走っ
た。
光の円陣に入る前の敵が剣を掲げ斬りつけようとする。
729
しかし掲げた相手の手を、あろうことかティアリスさんは手刀で切
り落とした。
そのまま切り落とした手から剣を奪い取り真っ二つにする。
ついでとばかりに横に居た盾を持ってた敵を一瞬で十字に斬る。
そしてその敵が持ってた盾を手に取り、あっという間にダグラスさ
んの横に戻ってくる。
﹁これで問題ないだろう?﹂
﹁あ、あぁ﹂
ダグラスさんが生返事を返す。
一瞬で敵から剣と盾を奪い取った事に驚いているせいだと思います。
ガチャガチャガチャ。
ティアリスさんが武器を手に入れたのを皮切りに、敵が一斉に襲っ
てくる。
﹁行くぞ!﹂
ダグラスさんが叫んで敵を迎え撃つ。
襲い掛かってきた敵に背を向け、ぐるっと回転しながら両手剣を振
り切る。
スピンスラッシュ
﹁︻回転斬り︼!﹂
回転して勢いのついた剣は前に居た2体を上下に分断した。
730
その瞬間血飛沫が舞い、私は顔を逸らしてしまう。
﹁ラミュエル。君は仲間だけを見て回復魔法をかけることに集中し
なさい﹂
ゲオルグさんが私の頭を優しく撫でてくれる。
﹁はい﹂
その手の温もりに勇気付けられて私は前を向く。
クァッドスラスト
﹁︻四連突き︼!﹂
ダグラスさんを横から襲おうとしてた敵に、グレイヴさんが槍を打
ち込む。
撃ち込まれた敵は後方に吹き飛ばされ、他の敵を巻き込みながら倒
れる。
その間にもダグラスさんやティアリスさんが他の敵を切り伏せる。
エインさんは3人を抜けた敵の注意を引き、そこにゲオルグさんの
手甲でのパンチの援護が入る。
私とは違う4人の動きに感動する。
恐ろしいリッチが現れてから恐怖していた。
今でも生きる死体を見ると怖い。
でも私の心には明るい何かが射し込んで来る。
﹁足元に気をつけろ!﹂
731
﹁ぐあっ!?﹂
私が皆を心強く思った直後に、最初の危機が訪れた。
ティアリスさんの声が聞こえた後にダグラスさんの悲鳴が響きます。
先程ダグラスさんが斬った敵が上半身だけになりながらも、ダグラ
スさんの足に剣を突き刺したみたいです。
﹁くそっ!﹂
刺してきた敵を攻撃して、ダグラスさんが膝をつきます。
﹁ラミュエル! ダグラスに回復魔法を!﹂
﹁え、あ、は、はいっ﹂
上半身だけで動く敵に驚きと恐怖を感じました。
そのせいで回復を忘れてた自分を叱咤し、急いで魔法を唱えます。
ハイヒール
﹁︻上位回復︼﹂
﹁助かる!﹂
私の魔法を受けて、ダグラスさんが直ぐに立ち上がます。
それを見てホっとします。
私でも役に立ててる事が嬉しさと安心感を与えてくれました。
﹁こいつらは腕だけでも襲ってくる。気をつけろ﹂
﹁早くそれを言いやがれ!﹂
732
凄い苦々しい感じでティアリスさんが忠告してくれます。
元部下の人達だから、きっと辛いのでしょう。
﹁ただのゾンビなんかとは違うのか。さっき吹き飛ばした奴まで平
気で向かってくるな。ゾンビなんかはある程度ダメージを与えたら
動かなくなるのだが﹂
グレイヴさんの言うとおり、先程吹き飛ばされた敵が平然と向かっ
てきます。
体に4つの穴を空けたままに。
﹁カカカカ。我が操る人形が、その辺のゾンビと一緒にされては困
る﹂
骸骨なのに笑顔なのが、嘲笑している表情が分かります。
﹁グレイヴ、突くんじゃなく薙ぐように攻撃だ。ゲオルグ、格闘じ
ゃ相性が悪い。武器を拾って剣でやってくれ﹂
﹁くそっ。仕方ないか﹂
状況に合わせダグラスさんが指示を変更します。
格闘家のゲオルグさんも剣を拾い戦います。
﹁ティアリス。あんたが一番堅いようだ。あんたは前面に出て敵の
ターゲットを集めつつ戦ってくれ﹂
﹁分かった﹂
733
魔力切れらしくとも盾を持ち鉄壁なティアリスさん。
そのティアリスさんの横をダグラスさんとグレイヴさんが固める。
前衛3人の補助をエインさんとゲオルグさんが行う。
私は傷を負った人に素早く回復魔法をかける。
暫く、一進一退の攻防が続きます。
◇◇◇
片手剣で一瞬のうちに敵を切り裂くティアリスさん。
盾でも殴りつけて敵を吹き飛ばす。
熟練の冒険者であるダグラスさん達に比べても、さらに飛びぬけた
実力に見えます。
﹁しかしっ、いったい何体いるんだっ﹂
1時間か2時間か、気が遠くなる時間戦い続けています。
いえ、実際は1時間も経ってないと理性が訴えます。
延々と襲ってくる敵に私の精神が疲労して、実際の時間以上に感じ
ているんだと思います。
﹁ハァ、ハァ⋮⋮私の連れて来た部隊は約500人。さて、残りは
どの程度かな﹂
ティアリスさんの言葉にクラっとしました。
敵をしっかり数えたわけではありませんが⋮⋮。
今まで倒した数が100もいってない気がします。
﹁どうしたどうした。我に対して無駄に浄化の魔法を使い、さらに
傷ついた部下にどうせ死ぬのに無駄に回復魔法を使い、意味もなく
734
魔力切れになった体が重いのかな? 先程までの動きのキレがなく
なっておるぞ﹂
カンカンとティアリスさんに発破をかけるようにリッチが手を叩き
ます。
﹁だまっ、れっ!﹂
ヒール
ティアリスさんが初めて怒りで顔を歪ませリッチを見ました。
その瞬間、今までなかった隙が出来てしまいます。
﹁きゃぁ!?﹂
ティアリスさんが顔を剣で切られてしまいます。
私は回復魔法を唱えようとしますが。
ハイヒール
﹁︻上位回復︼! あ⋮⋮発動しない⋮⋮? なら︻回復︼!﹂
私の魔力も尽きはじめ、上位の回復魔法が発動しませんでした。
ティアリスさんの傷も完全には治っていません。
﹁ハァ、ハァ、ふぅ∼∼。ティアリス、さっきの魔法陣は出せない
か﹂
﹁悪いが、ホーリーサークルを使う体力がない﹂
﹁⋮⋮そうか﹂
言われて初めて、足元に光っていた魔法陣が無い事に気づきます。
敵の力を抑えていた魔法陣が消えたという事は、さっきまでより敵
735
が強くなったと同じ事。
さらに悪い事に回復魔法でも体力は戻らないので、全員息が上がっ
てます。
段々と悪くなる状況に私の胸の中を黒い何かが侵食してくるようで
す。
﹁くぅ∼∼! あたしは、こんな所でやられてられないのよっ! 死ぬのはお姉様に恩を返してからって決めてるんだからっ!﹂
エインさんが両手に短剣を持ち、踊るように敵を切り裂いていきま
す。
その動きはまるで舞のようで美しさすらありました。
ですが斬られた敵は、斬られるままに剣を振ります。
﹁くっ﹂
それを短剣で防いだエインさんですが、完全に防げなかったのか肩
に傷を負います。
﹁︻回復︼!﹂
﹁あ、ありがと。ラミュエル﹂
傷が治りお礼を言ってくるエインさん。
ですが傷は治っても動きに精彩が戻りません。
﹁ゲオルグさん、私の魔力がそろそろ尽きそうなので回復を頼めま
せんか﹂
736
慣れない剣で戦ってたゲオルグさんに私は魔力切れが近いことを伝
えます。
﹁すまん、俺も魔力がもうなくてな﹂
私以外にも聞こえるようにゲオルグさんが言います。
私が魔力切れを起しても、ゲオルグさんが居れば大丈夫。
そう思っていたのですが。
私はゲオルグさんが回復魔法を使っていた事に気づきませんでした。
その事実に私の何かが折れた気がします。
﹁もう少し面白い劇になると思ったのだが。所詮魔族でもない人族
などこの程度か﹂
リッチがつまらなそうに言うと、生きた死体達が私達から離れてい
きました。
﹁無様なモノをこれ以上見るには堪えぬ。汝らには勿体無き事だが、
我自ら始末してやろう﹂
リッチがそう言って私達に近づいてきます。
私達は誰も何も言わず、私以外の人は肩で息を荒げながら睨んでい
ました。
私は恐怖するでもなく、ただただ視線をリッチに向けて見ているだ
けです。
それは絶望したのでも達観したのでもなく︱︱。
737
﹁ハァァアア!﹂
突如激しい叫び声を上げて、ティアリスさんがリッチに斬りかかり
ました。
下から切り上げた剣をリッチは鎌の柄で受けます。
剣を受けられても、ティアリスさんの剣戟は止まりません。
﹁ハァ! ヤッ! ハッ!﹂
﹁最後の抵抗か。くだらぬ﹂
ティアリスさんの裂帛の気合が乗った剣を鎌で防ぐリッチ。
でも全部は防げず、リッチの体にも剣が何回か当たります。
パキィン。
しかしティアリスさんの気合に耐えられなかったのか、鎌で防がれ
た剣が折れてしまいました。
﹁おやおや。剣が折れては戦えま、ガッ!?﹂
折れた剣を見て何か言おうとしたリッチ。
その頭蓋にティアリスさんは盾で思い切り殴りつけます。
それが最後の力だったのか、殴りつけた後ティアリスさんは倒れま
した。
﹁ふふふふ、はははは。どうだ、盾で頬を撫でられた感触は﹂
一矢報い、倒れて楽しそうに笑うティアリスさんをリッチは眼を爛
738
々と輝かせて見ます。
﹁貴様⋮⋮﹂
﹁誰一人助けられなかったのは残念だが、顔を思い切り叩いてやっ
てすっきりしたよ﹂
顔に傷を負い、それでも笑顔のティアリスさん。
同じく顔と言うか頬骨にひびが入り、おそらく憤怒の表情のリッチ。
私達はその二人の様子をジッと見守ります。
﹁我を傷つけるとは万死に値する﹂
﹁あははは。それがどうした。脅しのつもりならやめてくれ。疲れ
ているのに笑ってしまう﹂
﹁汝は死が恐ろしくないのか?﹂
﹁くくくく、はははは。死を覚悟した者に何の冗談だ﹂
ティアリスさんの言葉を聴いて、リッチが虚空を見つめる。
虚空を見つめて、視線を私達へと向けてきた。
﹁汝に我を傷つけた事を後悔させるには、こやつらを苦しませるべ
きであろうか﹂
﹁なんだと?﹂
リッチに言葉にティアリスさんの表情が変わる。
739
﹁カカカカ。やはりか。いつの時代も騎士などと言うモノは、他者
を傷つける事を嫌がるものだな。我には全く理解できん﹂
﹁お前はっ!﹂
ダグラスさん達がリッチに向けて武器を構える。
倒れていたティアリスさんはゆっくりと体を起す。
﹁クカカカ。汝らの最後の抵抗は心地良さそうだ。ふぅむ。そうだ
な。汝らをより苦しめる為に、そこのエルフ族の少女をまず殺しつ
くそう﹂
その言葉に私の全身は恐ろしいほどの寒気に襲われました。
﹁ふざけるんじゃないよ。うちのラミュエルに手出しなんてさせな
いよ!﹂
﹁おい、たかがリッチが調子に乗るんじゃねぇ。てめぇなんて俺が
倒して、勇者になってやる﹂
﹁ハッ、ダグラス。この程度のを倒しても勇者にはなれんぞ﹂
﹁骨の塊なんて、俺の拳で砕いてやる﹂
4人が私の前に出てリッチを睨みます。
﹁皆さん﹂
その後ろ姿に私の眼から涙が出てきました。
740
﹁良い、良いぞ。汝らの愚かな感情と愚行こそ我の快楽よ﹂
そんな私達を見てリッチは愉しそうにしました。
﹁さて、ではエルフを嬲る過程も楽しませてもらおうか﹂
もはや限界だろう皆さん。
それでも私を守って戦うつもりのようです。
その姿を見て、私はせめて最後まで諦めないと決意します。
私達とリッチの戦いが始まる前の一瞬の静寂。
﹁骨如きが、妾の知己を嬲るじゃと?﹂
その静寂は闇の中から聞こえた女性の声が破りました。
﹁ラミュエルを妾の知己と知っての事か。愚昧なる骨よ﹂
魔光石の光が届かぬ闇から出てきたのは、銀髪に赤いドレスを着た
少女。
セシルさんの仲間となってからダークエルフの街で知り合った。
少女の見た目から年下と思って話しかけた相手。
見た目相応に接した私を叱るでもなく、友人となった吸血鬼。
﹁愚かなる者には罰を与えねばのぅ﹂
300年を生きる吸血鬼のレイニーさん。
741
﹁レイニーさん!﹂
セシルさん曰く、魔物で最強の人物。
﹁妾の知己に暴言を吐いた罪。許し難いものよの﹂
現れた友人は私ににっこり微笑むと、リッチをぎろりと睨みます。
﹁さぁ、疾く滅ぶが良い﹂
742
第45話 ラミュエルの危機 その2︵後書き︶
シリアス続きでどうなんでしょうか⋮?ダメ⋮?
ラミュエルのお話はあと1話か2話続きます︵>д<;︶
743
第46話 ラミュエルの危機 その3
絶望の中、闇の中から現れたレイニーさん。
その姿は眩しく輝いて⋮⋮おらず、ドレスの端々に小枝や葉っぱが
付いていました。
友人である私の危機を察知して、急いでくれたのでしょうか。
アイスコフィン
﹁︻氷の棺︼﹂
レイニーさんが指をパチンと鳴らすと、リッチが氷の中に閉じ込め
られました。
﹁なっ!?﹂
突然の光景に私以外の皆さんが驚いています。
レイニーさんが得意な魔法は氷系統。
無詠唱で高位魔法を操るのです。
﹁さて、これで骨は片付いたぞえ。ラミュエル、久しいの﹂
﹁えっと、レイニーさん、お久しぶりです﹂
リビングデッド
ダグラスさん達処か生きた死体達も無視して私の前に来るレイニー
さん。
﹁かような場所で友に会えるとは、望外の喜びであるの﹂
744
難しく言っていますが、つまり会えて嬉しいと言ってくれてるので
しょうか。
﹁あ∼、ラミュエル。その、お嬢ちゃんは誰なんだ?﹂
﹁お姉様の部下の吸血鬼よ。レイニー⋮⋮さん、なんで貴女がここ
に?﹂
ダグラスさんの質問にエインさんが答えました。
それを聞いたティアリスさんが小声で﹁吸血鬼⋮⋮﹂と呟いていま
す。
﹁妾があの女の部下じゃと? ふんっ。協力してやってるだけで部
下ではないわっ!﹂
ギロッとエインさんを睨むレイニーさん。
睨まれてダグラスさんの影に隠れるエインさん。
﹁そ、そんなに睨まないでくださいよ⋮⋮﹂
喋り方が自宅の時のようになって苦笑いしてるエインさんを見ると、
さっきまでの雰囲気が嘘のようです。
﹁セシルの関係者でラミュエルの友人と言うのは分かった。だが和
むには早いんじゃないか?﹂
グレイヴさんが私達に向けて言って来ました。
まだ私達の周りには生きた死体が無数に居るというのに。
私は反省してレイニーさんに協力をお願いしようとした時、予想外
745
の声が上がります。
﹁カカカカ、まったくだ。この程度の魔法で我を倒した気になるな
ど﹂
パキィンと涼しげな音を立てて氷が割れ、リッチが平然と立ってま
す。
まるで先程までの事はなかったかのように平然とです。
﹁ほう。妾の魔法を破るとは﹂
﹁吸血鬼か。我ら魔族の力に憧れた人間共が作り出した、魔族モド
キの出来損ないの魔法など効く筈がなかろう?﹂
それは明らかな侮蔑。
プライドの高いレイニーさんが怒るだろうと思って、私は身を竦め
てしまいます。
しかしレイニーさんの反応は予想外でした。
﹁うむうむ。純粋な魔族と違い、妾は人間から吸血鬼にされた者。
魔族モドキとはさも素晴らしき事よな。ふふふふふ﹂
楽しそうに言う様子は真実でしょう。
レイニーさんは感情が高ぶると瞳が青から赤へと変わります。
今は青い瞳のままなのですから。
﹁たかだか吸血鬼一匹。我が手を下すまでもない。死体に嬲られ死
ぬが良い﹂
リッチがつまらなそうに言うと、生きた死体達が私達に向かってき
746
ます。
ダグラスさん達がすぐに武器を構えます。
しかし全員が緊張する中、レイニーさんは一人歩いて前に出ます。
ダンスマカブル
﹁おぉ、おぉ。骨だけの魔族様は人形遊びがお好きかえ。ならば妾
も倣おうではないか。︻死の舞踏︼﹂
アァァァァァァア。
レイニーさんの目が真っ赤に輝くと、生きた死体達が一斉に悲鳴を
上げます。
そして全身から血を流し、流れ出た血が空中に浮かび上がり魔法陣
を描きます。
その魔法陣はティアリスさんの︻聖なる円陣︼と対極で禍々しく鼓
動しているようでした。
パン。
レイニーさんが手を叩くと血の魔法陣は吹き飛び、生きた死体達へ
と降り注ぎます。
不思議な事に私達には一滴もかかりませんでした。
アァァァァァア。
﹁さて、光に照らされぬ闇の中に居るお主の人形も、妾の支配下と
なってしまったぞよ?﹂
レイニーさんの一連の力の行使が終わると、生きた死体達は全員リ
ッチに体を向けていました。
その姿は血の気がなく、怨念を篭めた声を発しながらです。
747
味方であるレイニーさんですが、今見える光景は恐怖を感じます。
ティアリスさんもレイニーさんを鋭い眼つきで睨んでいますし。
ア
味方の筈なんですが、リッチよりも悪逆に操ってるように見えてし
まいます⋮⋮。
ッシュミスト
﹁愚か愚か。死を操る我に死者を向けるなど。所詮モドキよ。︻死
者は灰に︼﹂
今度はリッチがパキンと指を鳴らすと、生きた死体達は次々と灰に
なっていきます。
アァァと苦悶の声を上げながら崩れる姿は、まるで地獄のようです。
﹁おや、全て灰になってしまったのぅ﹂
﹁魔法も効かず、死者を操る事も叶わず、汝が如き吸血鬼は我の敵
になりえん﹂
﹁勘違いされては困るの。死者の人形なんぞ、妾にとってはゴミも
同然よな﹂
悪夢のような中、レイニーさんとリッチだけが普通に会話をします。
ダグラスさん達もあまりにも異様な展開と光景に声を出せないよう
でした。
ですが私は、我慢出来ずレイニーさんに話しかけます。
だって余りにもティアリスさんの顔が悲しそうだったから。
﹁レイニーさん! あ、あの、この操られた人達は、ティアリスさ
んの部下さん達で、あまり酷い事は言わないで下さい﹂
748
真っ赤だったレイニーさんの目が青に戻り、私を驚いた表情で見ま
した。
そして私達全員を確認するかのように視線を彷徨わせます。
﹁あ、あ、ティアリスと言うのは﹂
﹁私達と一緒に戦ってくれているこの方です﹂
﹁ぶ、部下と言うのは、使い捨ての部下ではなく、仲間的な部下だ
ったのか⋮⋮の?﹂
﹁⋮⋮ああ、大切な同志であり、友人も何人も居たな﹂
それを聞くとレイニーさんは後に一歩下がります。
300年、孤独だった吸血鬼。
だからか実は今の魔軍の仲間を大切に思っているレイニーさんです。
﹁す、すまなかった﹂
レイニーさんは事情を知ってすぐに謝りました。
﹁使者を操り、それを謝るとは。喜劇を通り越して不快だ。吸血鬼
に人族共、とっとと死ぬがいい﹂
﹁ぐぐぐぐ、元はといえば、お主があやつの部下を操ったせいであ
るの! 妾の友の仲間の仲間を冒涜した罪、償わせてやろうぞ﹂
リッチと同じ様な力を使っても、ちゃんと人らしい所があるレイニ
ーさん。
749
そこに安心します。
言ってる事は八つ当たりな気がしなくもないですけど。
﹁おう、ちょっとビビッたが、ちゃんと人の心はあるようだな。レ
イニーちゃんよ。んじゃまぁ、いっちょ俺らと骨野郎退治といこう
か﹂
﹁部下達もお前のおかげで解放されたと思えば、良かったのだろう。
せめてもの慰みとして、そこの化け物を倒すとしようか﹂
レイニーさんに並ぶ様にダグラスさんとティアリスさんが前に出ま
す。
エインさん、グレイヴさん、ゲオルグさんも一緒に戦う気のようで
す。
﹁クハハハハ。吸血鬼と人が共に我に向かってくるか。非力な汝ら
は最後まで笑わせてくれる﹂
魔力も尽きて見ているだけしかない私は悔しく思います。
セシルさんが世界でも屈指の強者と言っていたティアリスさん。
そのティアリスさんの剣戟を防いだリッチ
そんなリッチから見れば、レイニーさんが加わっても非力と言える
のかもしれません。
﹁時に骨よ。お主、魔族ならばあの女の配下ではないのか? 魔母
たる者に従うとリオティネックは言っておったが。あの女の娘たる
ラミュエルに手を出すのは背任ではないのか? 今更ではあるがの﹂
いざ戦う、というその時にレイニーさんがリッチに語りかけます。
750
﹁ほう、リリス様の事を覚えている者が居たか。モドキといえども
魔族の端くれと言うわけか。残念だが我はリリス様、いや、力なき
リリスなどとっくに見限ったのでな﹂
リリスと言うのはセシルさんの先代の魔母と言われる人。
たぶんレイニーさんはセシルさんの事を言ってて、リッチはリリス
さんの事を魔母と思っている。
﹁そうかそうか。ならば良い。一応あの女に義理立てもあるでの。
しかし裏切り者となれば、容赦する必要なしじゃな﹂
﹁カカカカカ。ならばどうする。死者を操るのと魔法を使うしか芸
のない吸血鬼風情がっぁぁあ!?﹂
ガンッ。
﹁え?﹂
その時の﹁え?﹂と言う声は誰の声だったのか。
もしかしたら私の声だったかもしれません。
信じられない光景を眼にして、意識せず出た声でしょうから。
リッチがレイニーさんに殴られて壁まで吹き飛んでいった光景を。
﹁我が君に仕えて戦場に出て、妾はより強くなったのよ﹂
ツカツカツカと歩いてリッチに向かうレイニーさん。
リッチは体勢を整えて鎌で斬りかかる。
私はまたしてもわが眼を疑いました。
751
レイニーさんは斬りかかってきた鎌の刃を素手で掴み受け止めたの
です。
﹁バ、バカな。鎌が動かんだと﹂
﹁か弱い妾の腕力にすら劣るのかえ? そぅれ、妾が変わりに動か
してやろうぞ﹂
﹁グハッ!?﹂
レイニーさんは鎌の刃を持ったままリッチを投げ飛ばしたのです。
﹁な、なんだ。汝は吸血鬼ではないのか!?﹂
﹁妾は我が君に仕える吸血姫。数多の戦場で敵を屠り力をつけた者
ぞ﹂
﹁バカな! 吸血鬼風情がここまで強くなるはずがぁぁあぁぁあ﹂
壁にもたれかかる様に立ち上がったリッチをレイニーさんの拳が襲
う。
胴を腕を足を腰を打ち抜き、ヒビだけでは済まず、粉々に砕いてい
く。
最後に残った頭蓋骨を片手で持ち上げると。
﹁昨年あの女より妾も知らなかった、妾が使えるスキルやら魔法を
学んだのも大きいかや。おかげで太陽の光すら克服したのでのぉ﹂
﹁なっ。バカな、リリス様が復活したとでも﹂
752
﹁時代遅れの骨はもう散るが良い﹂
バゴン。
頭蓋だけになったリッチは握りつぶされました。
頭蓋が握りつぶされると、赤いローブも散らばった骨の欠片も塵に
なっていきます。
こうして、私の初めての冒険での初めての戦いは幕を閉じました。
◇◇◇
私達は国に戻るというティアリスさんと別れ、カルドへ戻りました。
ティアリスさんは最後にセシルさんの事を沢山尋ねていき﹁また会
おう﹂と私だけに言って行きました。
結局ダンジョンの調査は奥までは行わず、ギルドへは特級の危険地
域と報告するそうです。
そしてレイニーさんも私達の護衛をすると言う事でカルドまで一緒
に来たのですが。
﹁あ、ラミュー。冒険行ってたんだって? どうだったの? 楽し
かった?﹂
屋敷に戻り大広間に行くと、レオンさんを膝の上に乗せたセシルさ
んが居ました。
753
いつもは見ると安心するセシルさんの笑顔です。
ですが今はちょっと⋮⋮男の人を膝の上に乗せてる、私の保護者で
母親扱いとなっている女性に怒っても良いでしょうか?
﹁ク、ククククク、ハハハハハ。妾から逃げてどこぞで我が君とイ
チャついておるかと思えば、ここにおったか! 死ねい! セシル
!﹂
﹁げっ、レイニー!? 慟哭の谷辺りでまいたはずなのに、何故こ
こに!?﹂
﹁︻絶対零度︼!﹂
﹁初手から最大魔法とか!? 身代わり︻戦乙女︼あーんど︻闇の
衣︼!﹂
﹁ギギギ。妾の魔法を防ぎながらも我が君とくっついて離れないと
はの!﹂
﹁これはレオン君が引っ付いてるだけです∼! レオン君、僕の命
の危機なので離れて!﹂
﹁そんな!? セシリアさんの大きな胸から離れるなんて⋮⋮﹂
﹁死ぃぃねぇぇ!﹂
私の代わりに大層怒ってくれる友人が居たので、私は怒れませんで
した。
友人と義理の母親が暴れた後の片付けを、メイドさん達とどうする
754
か話し合うのに忙しくなりました。
755
第46話 ラミュエルの危機 その3︵後書き︶
セシルが出てきた瞬間ギャグ次元へ⋮。
756
第47話 レイニーデイ 前編
部屋の小さな窓を叩く雨音。
闇夜にパラパラと小雨の音が響いていた。
隣に寝る愛しき君の頬を慈しんで撫でながら、妾の眼は窓へと向く。
吸血鬼となり人に追われ、魔の物とも戦っていた日々。
今日のような小雨降る日はあの時を思い出す。
望まぬのに吸血鬼となったあの日を。
◆◆◆
﹁お父様、今日は姫様に会うんですよね?﹂
﹁そうだよ。レイニー。我が国の至宝と称えられた姫様が、レイニ
ーの魔法の才能に興味を持ったらしくてね﹂
私が生まれた聖ウェルシア王国。
その国の至宝と称えられたヒューリエッタ姫様。
絹のように流れる金の髪にルビーのように美しい赤い瞳。
見た目の美しさもさる事ながら、至宝と称えられたのは実施した政
策故だった。
民の為の街道整備。
757
街道周辺を兵による見回りの強化、及びゴブリン等の弱い魔物の駆
除。
これは初陣での新兵の死亡率を下げる効果もあった。
食料不足による飢餓対策としての半農半兵の実施。
一律規定量の納税から収入による納税量の変更。
僻地の村々への国の事業としての開拓援助。
等々、言い出したら切がない。
姫様が実施した政策は国力を上げ、何よりも内容が民の為を思って
の事だった。
その結果、至宝の姫君と呼ばれている。
そういえば最近街に出没するようになった吸血鬼と呼ばれる魔物が
居る。
その対策として討伐隊をすぐに組織した姫様。
そのおかげか被害は少なく済んでるらしい。
民の為に即断即決をする姫様が居るから、街に魔物が現れても平穏
だった。
この国の下級貴族の娘である私にとって、姫様は憧れだ。
﹁お父様、私、大きくなったら姫様の役に立てるように頑張るね﹂
﹁ははは。レイニーは小さいのに偉いな﹂
姫様に会えるのとお父様に撫でられたのが嬉しくて、私は上機嫌で
王宮へと向かった。
758
一つ残念だったのは、今日は小雨が降っている事だった。
◆◆◆
目が覚めると私は知らない場所に居た。
小さな神殿のような場所で台の上に寝かされていたようだ。
私は寝る前のことを必死に思い出そうとした。
﹁確か、ヒューリエッタ姫様とお茶を飲んでいて⋮⋮。お父様っ!﹂
今日はお父様と一緒に姫様に会いに来て、3人で楽しくお茶を飲ん
でいたはず。
一緒に居たはずのお父様が居ないかと大きな声を出した。
﹁こうも早く目覚めるとはね。レイニシア、貴女の耐魔力の才能は
すごいのね﹂
透き通るような女性の声の方へ体ごと向こうとしたが体が動かなか
った。
どうやら私は縛られているようだった。
私は顔だけを向けて声の主︱︱姫様へ問いかける。
﹁姫様、これは一体どういう事ですか!? お父様はどこに!﹂
﹁あら、レイニシア、貴女幼いのに随分としっかり落ち着いていま
すのね。貴女位の子なら、混乱してすぐに泣き叫ぶのに﹂
759
姫様は私の叫びに対して、感心した様に言うとゆっくり手を広げた。
﹁な、何を⋮⋮﹂
﹁ねぇ、レイニシア。人は何故死んでしまうのかしら?﹂
﹁えっ?﹂
広げた姫様の手から赤い霧の様な物が溢れ出した。
姫様はその状態で虚空を見つめる。
﹁いくら助けようとしても助けられない。準備をしてても上手くい
かない。人は脆いわね。半分は魔族の血を引いてる私ですら、いつ
か死んでしまうんだから、人が脆いのは当然かしら? でも私は諦
めない。人として人を助ける為に、人を人以上の者にすれば、きっ
と今より幸せになるわよね。えぇ、きっとそう。吸血鬼なんていう
不完全な魔物ではなく、私がきっと完全な生物にしてみせるわ﹂
﹁きゅ、吸血鬼! まさか、最近街に現れた吸血鬼と呼ばれる魔物
は⋮⋮﹂
﹁えぇ、あれは失敗作ね。魔族が残したと言われる古文書を解読し
て頑張っているんだけど、どうにも上手く行かないの。でも大丈夫
よ。貴女ほどの才能が有れば、きっと吸血鬼になんてならないわ。
えぇ、えぇ、私がきっと人を超える上位者にしてあげるわ。いっぱ
い実験もしたんだもの。今回は大丈夫よね。大丈夫よ﹂
姫様の眼は虚ろになり、美しい微笑は狂気の表情へと変わっていっ
た。
760
﹁さぁ、さぁ、レイニシア、私の期待通り頑張って﹂
﹁や、やめて、姫様、なんでこんな、キャァァァ﹂
姫様が出す赤い霧が床に充満して光ったと思った瞬間、私の人間と
しての人生は終わりを告げた。
最後の瞬間、ザァァァと言う外の雨の音だけが良く聞こえた。
◆◆◆
吸血鬼となった妾は国に追われ、最後は逆に国を滅ぼした。
直接滅んだ原因は、狂ってしまわれた姫様の暴走であったが。
結局最後まで姫様が何を求めていたのか、妾にはわからなんだ。
﹁んっ⋮⋮﹂
横に寝ている我が君の声が聞こえた。
妾はその頭を優しく撫でる。
あの日、最後に見たお父様が撫でて下さったように。
﹁姫様、妾を吸血鬼にした事は許しませぬが、一つだけ感謝いたし
ましょうぞ﹂
自身よりも大事に思う愛しき人に出会えたのは、姫様が妾を吸血鬼
にしたからでしょうから。
761
762
第47話 レイニーデイ 前編︵後書き︶
レイニーさんのお話ですが、後編はギャグです!ギャグですとも!
だってセシルさんが出演予定ですから︵つд`︶
763
第48話 レイニーデイ 後編
共に裸で寝る幸福。
そこに芽生えた悪戯心で、寝ている我が君にキスをしようとする。
セシルの奴が居れば、旦那さんからしかキスしたらダメだからね。
とか言いそうではある。
あやつ、キスが大好きな淫乱な割にダークエルフだけの掟である﹃
接吻は旦那様から﹄を律儀に守る辺り、義理堅いやつなのかもしれ
ぬ。
ライバル
我が君を巡る宿敵の事を思い浮かべつつ、もう少しで唇が触れよう
とした瞬間、我が君の口からありえぬ言葉が聞こえる。
﹁う∼ん、セシリアさぁん⋮⋮むにゃむにゃ﹂
その瞬間の妾の心情をなんと表せばよいか。
妾はベッドから降りて服を着込み、静やかに部屋を出た。
夜中でも騒がしいある場所を求めて。
そこに居るであろう同格の友を探しに。
◇◇◇
連邦との戦が終わり、次の戦地へと移動中に寄った村の中を歩く。
降り注ぐ小雨を気持ちよく感じながら、目的の建物を見つけた。
764
﹁夜中だと言うのに、やはり騒いでおるかや﹂
妾はその建物︱︱酒場へ入り、探していた相手を見つけた。
長い黒髪をなびかせて、酒場の中心で大きな大きなジョッキで酒を
飲む女。
酒場の中は人間族に見えるその女を中心に、ダークエルフ、ラミア、
ゴブリン、オーク、それに人間にエルフやドワーフ、猫人まで騒い
でいた。
妾はその女に近寄り声をかける。
﹁ティティス、今日も宴を催しておるのかえ﹂
﹁おやー? こりゃレイニーじゃないかぃ。あんたも飲みに来たの
かぃ?﹂
﹁うむ、まぁ、の﹂
こやつ暇があれば宴を開いて酒を飲んでおる。
妾がここへ来た目的。
それは吸血鬼たる妾よりも夜を楽しむ酒豪なラミアの女王に愚痴を
言いに来たのだ。
﹁ほいほいさーっと。皆∼、今日はうちの軍で一番戦功をあげてる
レイにーが来てくれたよぉ! 酒を注ぎなおして、改めていくよぉ。
かんぱぁい!﹂
﹃おぉ∼!﹄
765
妾の席を用意しながら、音頭をとるティティス。
こやつ、まさか妾を肴にする気か。
ちょっと来た事を後悔してると、椅子に座った妾の背中をトントン
と叩いてきた。
﹁んでぇ、どうしたいんだぃ? あんたが飲みに来るなんて珍しい
じゃないのさぁ﹂
﹁あ、うむ、その、なんというかのぅ﹂
﹁坊やと何があったんだぃ?﹂
﹁な、なぜ分かるのじゃ!?﹂
﹁あははは∼。そりゃぁ、あんたが酒場に来て私に声をかけるなん
て、坊やの事で何かあったときくらいでしょうよぉ﹂
ただの酔っ払いと思いきやいきなり核心を突いてきた。
妾のこの悩みを打ち明けられるのは、同じく我が君の寵愛を受ける
ティティスとレミネールしか居ない。
どう切り出せばいいか考えてなかった。
聡いラミアの女王に感謝しよう。
﹁まぁまぁ、とりあえず一杯飲んでさぁ、ほれほれ﹂
﹁うむ、ゴクゴクゴク。プハァ﹂
﹁で、どうしたいんだぃ?﹂
766
吸血鬼である妾は酒を飲んでも酔わない。
だがなんとなく気持ちよくなったので、するりと言葉が出てきた。
﹁妾が色々頑張って尽くしておると言うのにの。我が君は寝言で﹃
セシリアさん﹄等と抜かしおった。妾が隣に居るにも関わらずじゃ
ぞ! ゴクゴクゴク﹂
﹁あ∼⋮⋮。まぁ坊やはマザコンの気があるからねぇ。昔助けても
らったセシルに母性を感じてるんじゃないかねぇ﹂
﹁母性! 母性じゃと! 胸か! あの巨乳、いや魔乳が良いのか
え! ゴクゴクゴク﹂
﹁ほい、追加のお酒っと﹂
﹁うむ。ゴクゴクゴク﹂
ティティスから新しい酒を受け取り呷る。
﹁妾だって、我が君の為に朝夕と閨の用意をして頑張っておると言
うのに、寝言でレイニーとか囁かれた事なぞないのじゃぞ!﹂
﹁う∼ん、私は結構あるんだけどねぇ。寝ながら私の胸をすってき
たりとかぁ﹂
﹁胸、胸か! あの女処かティティスやレミネールよりも小さい妾
の胸が吸うほどないのが悪いのかや! ゴクゴクゴクゴク﹂
﹁あんたってば毎日坊やにべったりくっついてるのにねぇ﹂
767
﹁どうやったら、セシルのように妾も我が君に求められるのじゃろ
うか!﹂
﹁ふ∼む、なら本人に聞いてみたらどうだぃ? ねぇ、セシル様?﹂
﹁へ? いや、それを僕に聞かれても⋮⋮﹂
妾と会話をしていたティティスがウェイトレスと話している。
どこかで聞いたことのある声のそのウェイトレスを見る。
金髪で頭から角が出ていて、胸はレミネールより大きい。
と言うか大きすぎて服から上半分が丸見え状態じゃ。
﹁って、お主、セシルか! 何故ここにおる!﹂
﹁うん? ラーメンを探して町々村々を彷徨ったあげく、迷子にな
ってこの村で行き倒れてたんだよっ! そこをこの酒場のオーナー
が助けてくれたので、そのお礼でウェイトレスをしてるのっ!﹂
銀に光るお盆をくるくる回して踊り、最後はポーズを決めて言うセ
シル。
ラーメンとやらは分からんが⋮⋮つまり。
﹁迷子になって行き倒れて女給をしておると?﹂
﹁概ね正解だねっ!﹂
﹁あっはっはっはっ。うちの魔母様は面白いよねぇ。ひっはっはっ
はっ∼∼﹂
768
ティティスの奴目は酔ってるせいか大笑い。
酒場に居る他の連中もセシルのダンスと一連の会話に大爆笑。
妾は口をあんぐりと開けて呆れてしまう。
﹁くわっ!? 妾ってば、こんなアホに負けておるのかや! と言
うか、こんなアホが妾達の、妾が仕えておる相手だと言うのか!?
吸血鬼たる妾の主がコレとか、絶望を覚えるのっ!?﹂
﹁あ∼∼∼ははははははは﹂
隣のティティスは妾の言葉を聴いてさらに大爆笑。
こやつ、酔ってて事実の重大さに気づいて居ないのか。
﹁ティティス! 分かっておるのかや! 魔族たる妾やリリスに生
み出されしお主達は、魔母たるあのアホに仕える義理と恩義がある
じゃろう! その主がアホという事実に危機を感じんのかえ!﹂
﹁ひ∼ひひひひひ、は∼はははは、はぁはぁ。そ、そうだねぇ。大
変だ大変だぁねぇ﹂
こやつ、全然わかっとらん。
酔ってダメになっておる同志を放って置いて酒を飲む。
飲まねばやってられぬ。
﹁いやまぁ、暴君とかよりは良いんじゃないかねぇ。確かに色々残
念な娘かもしれないけど、皆の幸せを考えてはいるようだしねぇ﹂
﹁むぅ⋮⋮﹂
769
暫く妾がグビグビと一人で飲んで居ると、正気に戻ったティティス
があやつを褒めるような事を言ってきた。
我が君を巡る宿敵ではあるが、妾達魔軍のトップでもある。
一応、不本意であるが仕える者の一人として、セシルの良い所は認
めなくもないがどうにも認めにくい。
﹁しっかし、あんたって意外に優しいんだねぇ﹂
﹁何の事じゃ?﹂
﹁だぁって、私達ラミアと違って、あんたは直接魔母に恩義も義理
もないじゃないのさぁ﹂
﹁なんじゃと?﹂
それはいかなる事か。
魔母リリスに仕えていた魔族達。
妾も吸血鬼と言う魔族の一員なれば、今代の魔母に仕えるは当然。
﹁吸血鬼ってのはあれだろう? 人間族が生み出した魔物なんだろ
う? 魔族に分類されてるけど、リリス様に仕えてた魔族でもなけ
れば、リリス様に生み出された種族でもないし、魔母に仕える義理
とかないじゃないさぁ﹂
﹁は⋮⋮﹂
そう言えば妾ってば、人間から吸血鬼になった魔族じゃ。
妾の祖先が魔族としてリリスに仕えていたわけでもない。
770
妾を吸血鬼にしたのはヒューリエッタ姫様だし⋮⋮。
﹁あ、あれ? 私ってセシルさんに従う義理とかない⋮⋮?﹂
﹁あんた、しゃべり方が⋮⋮﹂
﹁え? あ、わた、じゃない、妾はつまり魔母セシルに遠慮する必
要がない?﹂
驚きの事実に、話し方が子供時代に戻ってしまった。
今も見た目はあの頃のままではあるのだが。
﹁んまぁそうだねぇ。私らと違って、無理に従う必要はないんじゃ
ないかねぇ?﹂
﹁くふふふ、ふふふふ、ははははは。そうじゃったか! 魔族の元
締めだからと、我が君の事も遠慮しておったが、必要がなかったの
かや! ゴクゴクゴクゴクゴク、プハァ﹂
我が君がセシルを大好きでも仕方ないと思っていた。
しかし、それを我慢する必要がないと。
﹁お∼、良い飲みっぷり。もう一杯いっとくかぃ?﹂
﹁ふはははは、いや、妾は用ができたのじゃ! して、女給セシル
はどこぞおる!﹂
﹁ん? さっき坊やが来てお持ち帰りしてたけどぉ?﹂
﹁なんじゃとぉ! お、おのれぇ、妾と我が君の逢瀬を邪魔するか
771
え! ではティティス、妾は行くでの!﹂
﹁はいはいよぉ∼。行ってら∼﹂
ティティスに見送られ妾は宿へと戻った。
愛しき我が君を誘惑する毒婦を註する為に!
◇◇◇
宿の部屋に戻ると我が君とセシルが居た。
裸で。
我が君の股間部分を跨ぐ様にセシルが座りながら。
そして我が君は干乾びたように精気なさげに横たわっていた。
﹁お主、何をしておる?﹂
﹁え? 何って、ナニをしてたんだけど⋮⋮﹂
﹁我が君が干乾びるまでしておったとな?﹂
﹁う、うん? レオン君が戦争頑張った分って求めてくるから、魔
母はエッチしたり子供産むのがご褒美だってリオやお義姉様が言う
から、してただけなんだけど﹂
﹁なるほどのぅ﹂
妾とて子供ではない。
我が君が求めて、仕事としてだけでしてたのならば許そうぞ。
772
﹁我が君が一方的にお主を求めたのなら、仕方ないのぅ﹂
﹁え? あ、いや、僕も気持ちよくって、最初は男の人は嫌だと思
ってたけど、レオン君なら今はしたいなぁってちょっと思ったり?
だから毎回搾り取りすぎて経験値入るほどしちゃうんだよね∼﹂
﹁なるほど、なるほどのぅ﹂
妾と話しながらも、ムズムズ腰を動かすセシル。
我が君のアレを挿れたままなのか、動かしたがっている様子。
まぁ、そんな些細な事はどうでも良いか。
﹁仕事としての情事なら妾も大目に見るつもりじゃッたが⋮⋮。妾
は大人の女故にの﹂
﹁え? どう見ても子、なんでもないです﹂
﹁しかし、お主も我が君の事を満更でもないとなれば話は別じゃ﹂
妾は両手に魔力を集中する。
﹁えーと、レイニー、どうしたの? さっきから怖い顔してるけど﹂
﹁ふ、ふふ、ふふふ。我が君を誘惑する毒婦を成敗じゃ! ︻氷の
矢︼!﹂
﹁ちょ、まーー!?﹂
妾が放った︻氷の矢︼をベッドから飛び降り避ける。
773
セシルは避けながらも我が君を放さない。
﹁くっ、攻撃を受けても我が君を放さぬとは!﹂
﹁えぇ!? これはどう見てもレオン君が僕に抱きついてるでしょ
!?﹂
﹁バカめ! 我が君はお主に吸い取られ気絶したままではあるまい
かや!﹂
﹁いや、まぁ、そうなんだけど。それでもオチンチンを僕に入れた
まま抱きついてるレオン君って、ドスケベだよね。さすがハーレム
王﹂
﹁気絶したまま抱きつけるわけなかろ! さてはお主、魅了を使い
おったか! 許さぬぞよ!﹂
﹁それは、誤解ですぅ∼∼!﹂
妾の殺気に反応してか、セシルは窓から逃げ出した。
小雨降る中、夜とは言え裸で躊躇なく逃げ出すとは、侮れぬ。
﹁待てぃ!﹂
妾は魅了まで使い我が君を誘惑する毒婦を註する為、同じく窓から
飛び出す。
﹁な、なんでレオン君とエッチしたの怒ってるのぉ!? 元々レイ
ニー達がけしかけた事じゃん∼∼!﹂
774
確かに、最初はセシルを物にせよとけしかけたが。
﹁日常会話でお主の話ばかりをされたり、エッチ中にお主の名前を
言われたり、寝言でお主の名前を聞かされたせいじゃ∼∼!﹂
﹁それ僕のせいじゃないよねっ!?﹂
我が君と引っ付いたまま妾の魔法を綺麗に回避してゆく。
よく見れば秘所は結合したままであった。
我が君もセシルもド助平と知っていたが、なんだか感心してしまう。
﹁って、逃げながらも妾に見せ付けるとは! 悪魔か! お主は!﹂
﹁魔族だから、悪魔かも?﹂
﹁ん? なるほど、ありうるの﹂
村を出て森に入ったセシルと妾が一瞬お互いの発言を考え立ち止ま
る。
魔族の中には悪魔族と言うのも居るらしいの。
ありうる。
﹁と、なぜ妾まで、お主のアホ思考に流されねばならん﹂
追いかけてる最中に立ち止まり考えるとか、アホか妾。
﹁うぐぐ、確かに僕はアホかもしれないけど、アホはアホと言われ
ると傷つくんだよっ!﹂
﹁あ、いや、すまぬ﹂
775
ちょっと涙目で言われ反射的に謝ってしまう。
﹁って⋮⋮。くっ、お主のペースに嵌るとまずいかや。ここは一気
にお主を始末しようぞ﹂
﹁よく分からないけど、そうは行かないよっ! ︻戦乙女︼!﹂
セシルの影、と言うより闇夜の闇から影の2体の人型が湧き出る。
その影は妾に接近してくるが。
﹁このような児戯で妾を止められると思うたか? なっ!?﹂
両手で引き裂いた影が、まるで液体のように妾の体をはいよる。
そして力強く拘束してきた。
﹁こ、こんな物で妾を止められると思うてか!﹂
黒い影の縛りを引きちぎろうと力を篭める。
するとセシルはニヤニヤ笑いながら妾を見ていた。
﹁猫姫ミニムにも破られたから、レイニーに効くと思ってないよ﹂
﹁当然じゃな﹂
﹁このままだと。だけどね?﹂
﹁何? ひゃぁん﹂
妾を縛っていた影が触手のようになり、スカートの下の下着へと入
776
ってきた。
そして下着の中の妾の割れ目をヌルヌルとなでてくる。
﹁ななな、何をするのじゃ!?﹂
﹁ただ捕まえただけでは破られるけど、エッチな場所を弄られたら
抵抗できないでしょ?﹂
﹁んなっ!? あひゃぁん﹂
影の触手は器用にも妾の割れ目を開き、隠れていたクリトリスを包
むように摘み上げる。
同時に割れ目の穴にも細くなってゆっくりと入ってくる。
﹁ちょ、やめ、そこはちが、ひぁぁぁぁ﹂
﹁え? あれ? うん? あ、尿道に入っちゃった? 操作が難し
いなぁ﹂
﹁こ、この、ひゃぅ、や、そこもちがっ、んひぃ﹂
膣だけを外して、妾の下半身の穴に黒い触手が入る。
ドレスの下をはいずり乳首にも触手が吸い付き引っ張る。
﹁ひゃぁ、割れ目を左右に引っ張らないでぇ、あ、あ、だめ、出し
入れ、そこはいやぁ、んぁぁ﹂
﹁アウラにされた経験を生かして影縛りを強化したけど、難しいね
∼。えっと、こうかな?﹂
777
﹁んぁぁ、奥にこないでぇ、ひぁぁぁぁ﹂
服を着たまま野外の森で陵辱される妾。
我が君にすら触られたことがない場所を触手に犯される。
﹁あ、レオン君、オチンチンがおっきくぅ、あぁ﹂
﹁ん、レイニーが聞いた事ない色っぽい声を出してて、ボク興奮し
ちゃった﹂
影の触手に縛られ犯されている妾の前で、いつの間にか2人はセッ
クスをしていた。
﹁くぁ! お主何を始めとるか! うぎぎぎ﹂
﹁あっ、あっ、あ? くっ、破られないように触手ピストン開始、
あぁん﹂
﹁ひぁぁぁぁぁ﹂
﹁んぁぁ、レオン君、だめぇ、あぁん﹂
雨も届かぬ夜の森の中、妾とセシルの艶声が朝まで響いた。
◇◇◇
﹁まてぇぇぃ!﹂
﹁うぇぇん、レイニーしつこいんだよっ!﹂
778
お互い朝まで喘いだ後、改めて追いかけっこが始まる。
我が君はセシルの中に精をたらふく出した後、また気絶した。
気絶してもセシルから離れず、二人は裸で抱き合っている。
﹁妾に見せ付けるように抱き合いおって! 氷華の世界へ誘ってく
れるわ!﹂
﹁レオン君がかなり強く抱きついて離れないだけだよぅ!﹂
気絶してても離さないとは、魅了どころではなく呪いでもかけたの
かや。
それにしても何故セシルは裸なのじゃろうか。
あやつは影の服を作れるはずだが。
露出趣味か。ありそうじゃな。
ふと、セシルの変体嗜好を分析し意識が散漫になる。
その隙を突かれてしまう。
ライティング
﹁必殺太陽⋮コホン。︻光よ︼﹂
﹁ぐわっ!?﹂
お互い空中を飛んでる最中に、強烈な光を向けられる。
ただの明かりの魔法を最大限に使ったようだ。
そんな小手先の魔法であったが、視力が戻るまでの間に二人を見失
ってしまう。
﹁ぐぐぐぐ﹂
妾は悔しがりながら周辺を探す。
779
﹁谷になってる場所で隠れるところも少ないか。はて、どこぞへ行
ったかや﹂
フラフラ歩いていると、突如神殿の入り口のような場所があった。
﹁ふむ。怪しげじゃのぅ﹂
何もない自然豊かな場所での人工物。
しかも入り口の様子から見るに白く綺麗で古い物ではなさそうだっ
た。
﹁もしやセシルの隠れ家か何かかの?﹂
特に二人を探す当てもなかった妾は、その神殿へと足を向けた。
﹁と、その前に﹂
キョロキョロと周りを見渡し、誰も居ないことを確認する。
そしてスカートをまくしあげ、ショーツを脱ぐ。
﹁あやつのいやらしい束縛で、ベチョベチョに濡れてしもうたから
の﹂
しっとりと濡れた下着が気持ち悪く、仕方なく脱いで行くことにし
た。
脱いだ下着はその辺にポイと投げておく。
﹁ちとスースーするが仕方あるまいか。下着を駄目にしてくれた分
と、ノーパンでいる羽目になった分、きっちりセシルにお返しせね
780
ばのぉ﹂
妾は二つの穴の陵辱と下着の恨みを晴らすべく、暗闇の中へと進ん
でいった。
781
第49話 淫魔の日常
﹁くぁ∼∼、んみゅんみゅ﹂
朝早く起きた私は欠伸をかみ殺しながら子供部屋へと向かう。
﹁ンハ∼ン。おはようなのん。スライムさん﹂
﹁ぷるぷるぷるぷる﹂
部屋に入って夜間担当のスライムさんに挨拶する。
子供部屋には健やかに寝る子供が10人。
淫魔、ダークエルフ、エルフ、ラミア、人間、竜魔の子供達。
その中の一番小さい二人。
この世界に新たに生まれた種族、竜魔の子供達を見る。
﹁ンヒー。人間に角が生えた感じよねん。小さな尻尾もあって、溢
れる魔力もすごいのねん﹂
竜魔はセシりんが竜とエッチして生み出した種族。
自分の代わりに竜族を支配する為に生み出したっぽいけど。
﹁赤ん坊の時点で体内魔力が竜を超えているのが恐ろしいわねん﹂
セシりんの子供だけあって、二人は魔族として十二分な素質があり
そう。
782
まぁセシりんの子は全員、物凄い魔力を秘めているんだけど。
﹁ぷるぷるぷるぷる﹂
﹁ンイ? あ∼わかったわん。それじゃあ私はご飯を食べてくるか
ら、よろしくね∼ん﹂
﹃しっかりご飯を食べてから子守をして﹄と言うスライムさんの言
うとおりに、私は食堂へ向かう。
◇◇◇
食堂へ入ると、食事担当のメイドであるパティが出迎えてくれた。
﹁あ、リオさん。上の子供達の朝御飯を持っていこうと思ったんで
すが﹂
﹁ンヤー。皆まだ寝てるのよん。私がご飯食べたら戻るついでに持
っていくわん﹂
﹁はい。それじゃあ、リオさんのご飯をすぐ作っちゃいますね﹂
猫人で背が小さいパティ。
厨房に入ると背が小さくて見えなくなる。
正確にはコック帽は見えるので、完全に見えないわけではないけど。
﹁コック帽を体の一部のように認識して良いかが問題よねん? く
ぁ∼﹂
朝の眠い中、欠伸をしながらご飯を待つ。
783
私以外誰も居ない食堂でうつらうつらする。
﹁お待たせしました。って、リオさん起きてます?﹂
﹁ンア? あ∼、起きてるわよん。ただちょっと、昨日夜に忙しく
て夜更かしさんだったのよん﹂
﹁淫魔でも夜更かしすると眠いんですね﹂
テーブルに食事を置いていくと厨房に戻るパティ。
私は置かれたご飯を見る。
ふわふわ卵にソーセージ。
焼けたトーストに透き通った黄金色のスープ。
パティの料理の腕は超一流。
私は一口フォークでふわふわしたスクランブルエッグを口に入れる。
﹁ンマーーイ。仄かな塩味からすぐに甘さが口に広がって、でもそ
れだけじゃなくて深いコクが∼∼ん♪﹂
眠かった頭も、余りのご飯の美味しさに目覚める。
そして私はすぐに食べ終わった。
◇◇◇
﹁おはようございます。リオさん﹂
784
起きた子供達にご飯をハムハムさせていると、ラミュエルがやって
きた。
﹁アハ∼ン。ラミュ∼ん、おっは∼﹂
﹁ぷるぷるぷる﹂
スライムさんがちょっと嬉しそうに挨拶した。
﹁えっと、そろそろ医院に行かないといけないんですが﹂
﹁アン。はいはい、もうすぐセシりんも起きてくるだろうし、子供
達の子守は大丈夫よん。お外で遊ぶアスター君達2歳児はメイド達
も手伝ってくれるしね∼ん﹂
﹁そうですか。戻ったら私も手伝いますね。スライムさん、行きま
しょう﹂
﹁ぷるぷるぷるぷる∼﹂
私に頭を下げてスライムさんと一緒に出勤するラミュん。
その頬が少し赤くなっていたのは見間違いではないわねん。
あの二人は出来てると言うか付き合ってると言うか。
セシりんが最初の妊娠をしてから、性の処理をセシりんに頼まなく
なったラミュん。
そして子育てを一緒にしてたラミュんとスライムさん。
ある時、我慢できなくなったラミュんがスライムさんに懇願して∼。
785
﹁ンマァ。スライムさんの方は恋愛じゃないんだろうけどねん﹂
恋愛感が在るのか疑問だし。
性衝動とかも無さそうだし。
それでもスライムさんも今はラミュんの事を特別に思ってるみたい
だけど。
﹁あー、まぁまぁ﹂
二人が居なくなるとアスターが私にペチペチしてきた。
2歳になって歩けるようになったアスターは、最近私のお腹や太も
もをペチペチするのが好きらしい。
﹁はいはい。ママンはもうすぐ起きてきますからね∼ん。起きてき
たらでっかいオッパイをペチペチすると喜ぶわよ∼ん﹂
﹁あうー?﹂
空中に浮かぶモリガンとフェイにご飯を食べさせながら、顔だけア
スターに向けて笑いかける。
アスターは﹁あうー﹂と言いながら私のお腹をペチペチし続けた。
◇◇◇
﹁リオママ、ちょっと冒険に行って来る﹂
セシりんが来る前に、最近一人部屋を与えられたアウらんがやって
きた。
786
﹁ンイ? 冒険って、どこ行くのん?﹂
アウらんの見た目は人間族の15歳くらいになっている。
普通アルラウネは生まれた瞬間から大人の女性の姿をしている。
しかし魔母セシりんが産んだアウらんは人のように子供から成長し
ていた。
成長速度は比べるべくもないけども。
﹁お城に竜退治。ママが娘はシロにはあげませんっ。って前に言っ
てたから、シロは退治しても大丈夫だと思うの﹂
見た目の成長に伴いアウらんは強くなっている。
下手をすると今では私と五分かもしれない。
﹁竜退治するのね∼ん。まだ寝てるセシりんには言っておくから、
行ってくると良いのよーん﹂
﹁ありがと、リオママ﹂
成長して擬態も覚え、見た目は完全に人間族と変わらない肌色の肌。
今じゃ街を歩いても目立たない。
セシりんと同じ様に金髪の長髪。
瞳は緑色。
でも一つ心配なのは。
ポヨンポヨンと年の割には大きすぎる胸を弾かせて歩くアウらん。
少女の顔をしながら巨大な女性の象徴がある為に、違う意味で目立
っている。
787
あふれ出る色気が、淫魔の私をしても少し心配である。
◇◇◇
お昼頃、セシりんと戦乙女1号2号と一緒に子守をしていると。
﹁愛しのセシル! それに子供達、私は帰ってきましたよ!﹂
セシりんの旦那様なアーシャーちゃんがやってきた。
﹁ほえっ? アルシアさん、まだ勤務時間じゃ、あ、んむっ﹂
セシりんに抱きついてキスで口を塞ぐアーシャーちゃん。
あ、舌も入れた。
口の中を嘗め回してるわん。
舌を絡めて、歯も全部舐めて、セシりんの舌を吸い出したわねん。
淫魔の私が言うのもなんだけど、小さな子供が居る前で少々はした
ないわん。
﹁ぷはぁ。ふにゃぁ﹂
﹁ン∼ム。アーシャーちゃん、警邏の仕事サボりなのん?﹂
キスで蕩けたセシりんの代わりに聞いておく。
キスだけでイっちゃうセシりんってチョロイわねん。
あれは絶対オマンコ濡れてるわん。
788
﹁忙しくて子育てに関われないので、昼休みに来る事にしたのです
! 夜は疲れて寝てしまいますし、元気な時はセシルとエッチして
しまいますし﹂
﹁ア∼。なるほどねん﹂
アーシャーちゃんがエッチとセシりんが大好きだという事がわかっ
た。
今更だけどん。
﹁ンジャ∼。子供達と遊んだら∼ん?﹂
﹁分かりました!﹂
太陽が昇る暖かな昼時。
アーシャーちゃんと一緒に子供達と遊んだ。
1号2号にあやし方を教わるアーシャーちゃんは微笑ましかったわ
ん。
蕩けてアヘってた母親も居たけどねん。
◇◇◇
﹁ただいまぁ﹂
子守を戦乙女とメイドさん達に任せ休憩していると、元気な帰宅声
が聞こえる。
大広間でふわふわ浮かんで休んで居ると、レムりんが入ってきた。
789
﹁ンヤ。おかえりん﹂
﹁ただいま。リオお姉ちゃん﹂
レムりんは挨拶して自分の部屋に戻るのかと思ったら、私をジーと
見て近づいてきた。
﹁あのね、リオお姉ちゃん、今日も上手くいかなかったの﹂
﹁アラン。そうなのん﹂
﹁また練習したいけど、いい?﹂
真っ直ぐな瞳で私を見つめてくる。
一転の曇りも邪心もない瞳は︱︱たらしよねん。
とてもセシりんの義理の息子らしいと思う。
そんな純粋な眼差しと淫魔の使命として練習に付き合おうと思う。
﹁ンイ∼。それじゃあ、レムりんのお部屋いくん?﹂
﹁うん!﹂
私達はすぐにレムりんの部屋へと向かった。
◇◇◇
﹁ンッ、ハァ、ソコォ、いいわよぉん♪﹂
790
﹁うん、こうだね﹂
レムりんの部屋のベッドの上で、私は裸で股を開く。
開いた股の間、オマンコをレムりんが指で弄る。
﹁そう、クリトリスも触りながら、奥の上の方、オシッコがたまる
所の裏辺りを、ンハァ、いいわぁん♪﹂
チュクチュクとレムりんが私のオマンコを弄る音が聞こえる。
レムりんの練習とはエッチの練習。
上手に女性を気持ちよくさせる練習だ。
﹁そう、そこGスポットって言うのよん。凄く気持ち良い場所だか
らねん﹂
﹁うん、わかった。覚えておくね﹂
覚える為か執拗に私のGスポットを弄り始める。
そればかりか片手は乳首を摘んで優しく弄りだす。
﹁ンハァン。上手ねん。複数の場所を、気持ちよくさせると、快感
が増幅されるのよ∼ん。ンハァ♪﹂
過去の練習の成果か、乳首やクリに少しの痛みを与えて、より快感
を感じさせるテクニック。
レムりんは年に似合わず、女の体を弄るのに長けている。
主に私が躾けた成果だ。
791
﹁これならネーブルお姉ちゃんも気持ち良くなってくれるかな?﹂
﹁ンフゥ。ン? あらん、ネーブるんってばレムりんの指テクでも
感じないのん?﹂
﹁うん。前にセシルお姉ちゃんがしてくれたみたいに机の下とか見
えない所で弄ってるんだけど、いつもつらそうな顔をするの。ボク
がセシルお姉ちゃんにされた時、普通に弄られるより気持ちよかっ
たのに﹂
人前での隠れ痴女プレイ。
セシりん、レムりんにナニを仕込んでるのよん。
きっと辛そうなネーブるんって羞恥に耐えてるだけよねん。
普通に部屋で二人きりでしたら、レムりんの思うままにイカせられ
ると思うけど。
﹁きっとまだまだレムりんのテクニックが不足なのよん。もっとも
っと練習するといいわん﹂
﹁うん! ボク、ネーブルお姉ちゃんを気持ちよくする為に頑張る
!﹂
言わない方が楽しそうなので隠れ痴女プレイの事は内緒にする。
しかしレムりんは男の子だから痴男?
でも男の子って言うより男の娘だから、やっぱり痴女かしらん?
﹁ンフゥ♪ そう、お尻の穴の表面も軽く弄ってあげると、気持ち
良いのよん♪ アハァン♪﹂
792
弄る練習はしても、もうオチンチンをオマンコに入れなくなったレ
ムりん。
オチンチンを入れるのはネーブルお姉ちゃんだけとか言ってたかし
らん。
勃起して射精したいのを我慢しながら、必死に私の体で練習する健
気な子。
その健気さの為と淫魔の本能を満たす為、今日もレムりんにイカさ
れる。
﹁イクゥゥゥ♪﹂
◇◇◇
セシりんがラーメンとやらを探しに旅立って、そして帰ってきた。
人間族の男の子を連れて。
どうやらラーメンと言うのは人間族の男の子に関係する事らしい。
精子をザーメンって言うから、それに近い何かなのかもねん。
ラーメン、ザーメン、似てるしねん。
その後すぐに帰ってきたラミュんと一緒にお年寄り幼女がきた。
そしてお年寄り幼女ことロリババァレイニーは只管暴れた後、レオ
たんと屋敷に泊まっている。
暴れた後片付けにメイド達が大変そうだった。
だけど子供達が母親とロリババァが戯れてる様子に大喜びで子守が
楽だった。
またやってくれないかしらん。
793
そんな事を思いながら、皆が寝静まった夜に子守をスライムさんに
任せ、自室で寝ようとしていると。
﹁ハフン。お客さんなのねん﹂
私は屋敷の廊下で影の中に入り移動する。
お客様を持て成す為に。
◇◇◇
月明りのみが照らす敷地内の一画。
そこに壁を飛び越えてきた数人が居た。
﹁調査通り、守衛も見回りも居ないようだな﹂
﹁無駄口を叩かず、司令通り帝国に巣食った邪悪な魔族の首を取る
ぞ﹂
4人居る男達は全員顔を布で覆っている。
その中のリーダー格っぽい男の言葉に頷き走り出そうとした。
﹁ンハァン。残念ねん﹂
その瞬間を狙って、私は影の中から現れる。
背中の羽を大きくして体を包み、繭のような状態で飛び出す。
そして飛び出したらくるっと回転しながら羽を開き、バッと大きく
広げる。
794
﹁くっ、バカな。魔具の警戒装置などもなかったはずだ! 何故気
づいた!﹂
動揺した一番後ろに居る下っ端っぽい男。
きっちり驚いてくれるのが素晴らしい。
その様子に興が乗り、種明かしをしてあげる。
﹁ンフ∼。この屋敷の敷地全部に、私の影の結界を敷いているから
よ∼ん。侵入者があれば、即分かっちゃうわん﹂
私の言葉を聴いて、一番後ろの一人以外は黙して武器を取り出す。
取り出したのは短剣。
僅かに刃先がヌメっていた。
毒でも塗ってるのかしらん。
無駄なのに∼ん。
﹁あなた達、セシりんを狙ってきたと思うんだけどぉ、ってぇん﹂
斬り付けてきた短剣を回避する。
回避しながら、攻撃してきた男の露出している首を撫でる。
﹁何を⋮⋮? うっ、あっ、あ⋮⋮﹂
私に撫でられた男は色々漏らしながら気絶した。
﹁な、何をしやがった!﹂
795
一番後ろに居る男が怒鳴ってきた。
うんうん、とてもノリがいい。
﹁ンフ∼。あなた達みたいな暗殺者って結構良く来るんだけどねん。
み∼んな痛みに強くてぇん。だ・か・ら﹂
私が指を舐めながら話すと、ゴクリと喉を鳴らす後の男。
残った他の2名は構えたまま隙を窺っているのに、一人だけリアク
ションがあって嬉しい。
オーガズムタッチ
﹁ンフ♪ だからねん。気絶するほどの快感を与える︻快感の呪い︼
をしてあげたのよん﹂
﹁ひぃ﹂
後の男が私の言葉に驚くと同時に他2名が私に襲い掛かってきた。
それも軽く回避して、優しく優しく撫でてあげる。
撫でられた2人はちょっとキモイ声を出すと倒れ伏した。
﹁ひっ、くそっ、だから俺はこんな任務嫌だったんだ!﹂
最後に残った男は往生際悪く叫んでいた。
実に楽しい男ねん。
思わず好きになっちゃいそう。
ペットとしてだけどん。
﹁なぁ、誰の依頼か話すから、俺は見逃してくれないか?﹂
796
依頼者か主かを売る発言。
余りのお約束的小物で、体がゾクリとしてしまう。
こういう男に夢を見せながら、最後は命まで吸い取るのは淫魔の本
能として誘惑される。
でも︱︱
﹁残念ねん。貴方達みたいのはネーブるんに渡せば勝手に処理して
くれるのよん。せめて、私に撫でられて快感を感じてん﹂
﹁ひぃ、いやだ、助けて、あぁあぁ、あぁあ、あぁぁ♪﹂
恍惚の表情を浮かべ倒れる小物男。
色々出ててきちゃない。
﹁ンフー。今夜のお客様はコレでお仕舞いよねん。ふぁぁ∼。しか
し人族は面倒ねん。国の権力とか私もセシりんも興味ないのにん﹂
権力闘争で暗殺者を放つ帝国貴族がいるらしい。
たまに来る暗殺者を撃退するのは私の役目。
﹁って言うか、メロディあん以外は知らないけどねん﹂
こんな些事は魔母セシル様が知る必要はない。
そう言って最初の暗殺者を私と撃退したメロディあんに口止めして
いる。
﹁ふぁぁ。寝よ寝よん﹂
797
放置した男達はいつの間にかメロディあんが勝手に回収するはず。
無駄な事をするお客様のもてなしが終わり、私は部屋に戻った。
◇◇◇
レオたんとロリババァが屋敷に居付いてから半月。
なんでか魔軍の連中もカルドに来ていた。
次の戦地である法国に行かなくていいのかしらん。
子守をしつつすっかり屋敷の住人と化したロリババァを見る。
そして早く戦場へ帰れと祈る。
﹁ほほぅ。他人のとは言え、子供は可愛いものよな﹂
﹁きゃきゃ♪﹂
気難しいテース、ディード、リットのエルフ系3人娘を上手にあや
している。
高い高いをしたり、撫でたり、お人形遊びをしたり。
母親であるセシりんよりも上手に見える。
﹁うぐぐ、僕でも結構泣かれる3人をずっと上機嫌にさせるとか。
レイニー、恐ろしい子!﹂
実の母親がロリババァに嫉妬していた。
女性の割りに女らしくなく、家事全般が不得意なセシりん。
798
相当悔しそう。
エッチ教育なら負けないと思うけどねん。
浮いてるモリガンとフェイを角バンドの角で構いながら悔しがるセ
シりん。
対照的にエルフ系3人娘と楽しそうに遊ぶロリババァ。
ラミア族のメディアと人間族のマリア、そして竜魔のメルキアとフ
ィルトの面倒を見る戦乙女ズ。
アスターにお腹や胸をペチペチ叩かれながらそれらを見る私。
そんな子供部屋に突如ネーブるんが入ってきた。
﹁セシリア! 法国との停戦が決まったぞ!﹂
﹁うひょぅ!? ネーブル、いきなり子供部屋に入ってくると驚く
んだよ! 僕がっ!﹂
そこは子供がじゃないのは、正直で美徳なのかしらん?
﹁そんな事を言ってる場合じゃなくてだな。場合によってはそのま
ま帝国に降伏するらしい﹂
﹁ひょ? それって、あれ? 法国が負けましたーってなるって事
?﹂
﹁法国との戦いはこれからじゃろう? なのに何故そのような事に
なっておるのかや?﹂
セシりんとロリババァが疑問を口にする。
799
﹁私の聞いた話なのだが、法国の聖女が停戦してそのまま降伏する
のに条件を出したらしくてな。それで急いできたんだが﹂
﹁条件って?﹂
﹁聖女が出した条件が、セシリア、お前との対談の内容次第だそう
だ﹂
﹁は? ⋮⋮はぃ?﹂
完全に予想外だったのか、女性にあるまじき顔をするセシりん。
あがーって感じで顎を開けて、んまぁ酷い顔。
なんだか大変そうねん。
そう思いながらアスターを抱っこする。
アスターは抱っこすると私の胸をペチペチ叩く。
﹁普通それは皇帝との話し合いでしょ!? なんで僕ぅぅ∼∼∼!
?﹂
子供部屋にセシりんの叫びが響く。
その間もアスターは我関せずと、私の胸をペチペチ叩いていた。
800
第50話 聖女がやって来た
姿見の前にたって着飾った自分を見る。
柔らかなイメージを出す為の淡い黄色のドレス。
胸元には華の意匠があって、各部には少しのフリル。
僕は真面目になると禍々しいらしく、それを少しでも緩和する為の
ドレスです。
何故こんな年齢に比べて少女趣味のドレスを着ているかと言うとで
すね。
今日は法国の聖女ミレイアと会談って事で気合を入れて準備をして
いるのです。
相手はヤンデレ聖女。
PCゲームのカオスブレードでは主人公に無理難題を吹っかけてい
た危険人物。
ちょっと無理っぽいな∼って任務を与えては、成功しても失敗して
も酷い事を言う。
そして人間族万歳主義で、他の人族を亜人と呼び、魔物を毛嫌いし
ていた。
他国に対する言葉なんか正に罵り。
そんな聖女だが諦めず貶されても頑張ればイケる。
選択肢でずっと﹃もっと他人に優しくしたらどうだ!﹄等の良い人
系を選ぶ。
すると最後には落ちる。
801
落ちるんだけど⋮⋮今度は主人公に依存する。
﹃わたくしの使命を忘れさせた貴方は逃げる事まかりませんよ﹄
とか言って直属の近衛にするのだ。
ずっと離れず、果てはトイレの中まで一緒にこさせる為に。
人間族以外を蔑むのが使命だったのか知らないけど、落としてもヤ
ンデルとか怖い。
そんな聖女様が僕と話に来るとか。
﹁くっ、やはり僕は僕の為に逃走するんだよっ!﹂
ヒラヒラのドレスのスカートを抑えながら逃亡を謀る。
しかし人間とエルフの女性に回りこまれた!
﹁陛下からお前の事は任されているのでな。逃がさん﹂
﹁閣下、他国からの主賓と対談なさるのは上位貴族としての嗜みの
一つでございます﹂
ネーブルとメロディアさんの二人に止められる。
この二人、結構レベルが上がってるはず︵ステータス見れないので
詳細不明︶の僕よりも動きが早い。
﹁うぎぎ、ネーブル! お母さんに対して酷い扱いだよっ! メロ
ディアさんもいつも豊胸してあげてるのにっ!﹂
﹁確かにレムリアはお前の義理の息子で、私と婚約しているが⋮⋮
お前を母親とは思ってない﹂
802
﹁毎晩私の胸を揉んでくださるのは、実は閣下も楽しみにしてらっ
しゃいますでしょう?﹂
くっ、僕の必死の説得も二人に効果がない。
確かにネーブルを娘とは思えない。
確かにメロディアさんの胸を揉むのを楽しみにしてますが。
﹁僕のせいで停戦がなくなって戦争とかになったら嫌なんだよっ!﹂
仕方なく二人の反対方向の窓から逃げようとした。
したけどネーブルにガッと首を捕まれて動けない。
﹁陛下も私も、お前が上手に交渉など出来るとは思って居ないし、
期待しても居ない﹂
﹁対談させるくせに期待してないとか酷っ!?﹂
﹁ミレイアの真意が少しでも知れたらいいなぁ。くらいの、期待薄
だから安心出来るだろう?﹂
器用に僕を引きずりながら話すネーブル。
その口調はとっても軽く、2年前のような真剣さとか一切ない。
﹁ネーブル、最近僕の扱いが雑になってない?﹂
﹁気のせいだろう? 何せお前は大切な同僚だ﹂
﹁そうかなぁ?﹂
803
ネーブルに捕まって逃げられないので大人しく引きずられる。
﹁さて、先方は既に城で待っているのでな。早く行くぞ﹂
﹁はふぅ﹂
逃げられない僕は大人しくネーブルの居城に連れて行かれるのでし
た。
◇◇◇
ネーブルの居城の一室に案内された。
メロディアさんを従えて室内に入ると、優雅にお茶を飲む黒髪の女
性が居る。
長髪の黒髪に巫女服を着て、見た目は日本人そのもの。
アリストラス法国の国主である聖女ミレイアだ。
その後には白銀の鎧を着た騎士の女性が立っていた。
茶髪の長髪で日本の女優さんのような女の人。
神殿騎士団長、リー・ティアリス。
その二人を見て僕が起した最初の行動は。
﹁よしっ、メロディアさん、帰ろう﹂
﹁⋮⋮閣下、最初の夜会からまったく成長しておりませんね﹂
くるっと振り返りると、メロディアさんが盛大にため息をついた。
その眼も顔もあきれ果てているご様子。
804
しかし問題ないのです。
そんな反応には慣れきっているのだ。
ネーブルは後から来るらしく今はない。
ならば逃走できる!と思った矢先、背中から声をかけられた。
﹁魔母セシル様、本日はわざわざのご足労、大変ありがたく思いま
す。わたくしの望んだ事とは言え、御身の時間を取らせてしまい、
真に申し訳ございません﹂
﹁へ?﹂
後ろを向くと巫女服美少女が土下座をしていた。
その後には美女騎士様も土下座をしていた。
﹁!?﹂
ここはテーブルがある洋室で、この世界は一応西洋文化だったはず。
法国の人たちは日本人チックで和服とかも多かったけど。
法国は和文化なのかな?
でもなぜいきなりDOGEZA!?
日本人最終奥義の一つ、土下座をする二人。
それに対してどうすればいいかわからず、助けを求めメロディアさ
んを見る。
するとどうでしょう。
メロディアさんまで目を見開いて驚いていた。
805
⋮⋮メロディアさんの助けも当てに出来ないとは。
伏して動かない二人に困って、仕方なく声をかけてみる。
﹁え∼と⋮⋮あのぉ、ミレイア⋮⋮さん?﹂
﹁はい、セシル様﹂
﹁な、なんで土下座してるんでしょうか?﹂
﹁わたくしの願いに応えていただいた御身に対する、精一杯の誠意
の表れなのですが、不足でございましたか。では、話し終わった後
に我が身を捧げますので、それをもってわたくしの誠意と致した︱
︱﹂
﹁いえ、別に、捧げなくて良いですから!﹂
予想してた対応と全く違う聖女様。
会談用の部屋の中には平伏する二人。
現状をどうして良いか分からない二人。
よく分からない静寂の時間が過ぎる。
そこに一人の救世主が降臨した。
﹁お前達⋮⋮何をしている?﹂
﹁ネーブル、助けてっ!﹂
806
僕は救世主ネーブルに速攻助けを求めた。
◇◇◇
やっとのことで対談のテーブルに座り落ち着く。
聖女様を椅子に座らせるのも大変だった。
僕と同じ座位など恐れ多き事とかいって床に座るんだもの。
座位って座る高さかと思ったら、座席の順番らしい。
対談用に上座がないテーブルを用意したのが裏目に出たとかネーブ
ルがこそっと言ってた。
聖女様は姿勢良く座ったまま10分以上喋らない。
ネーブルは眼で﹁お前が話し始めろ﹂的な視線をしてくる。
仕方ないのでメロディアさんが注いでくれた紅茶を飲んでから話を
切り出す。
﹁ほ、本日はお日柄も良く⋮⋮﹂
言った瞬間、ネーブルが﹁それは違うっ!﹂と睨む。
言った僕も何か違うと思うけど、僕に会話の切欠を任せた時点で間
違っているのです。
しかし対面に座る聖女様も騎士様もにっこりと微笑む。
﹁はい、セシル様に会うことが出来て、本日はとても良い日と成り
ました﹂
聖女様はまさに女神のごとき微笑を湛えてらっしゃる。
807
ご、後光がさしている!?
これは見た目はヤンデレ聖女そのものだけど、もはや別人です。
なんだか僕に対して最初から好感度MAX。
巫女服を着た見た目は日本人の少女に微笑まれるとか、普通にご褒
美ですね!
﹁あ∼、ミレイア様。法国の国主である貴方が、セシル卿に会いた
いというのは一体何故なのです?﹂
少女の微笑みに僕が癒されてると、横のネーブルが質問した。
質問した⋮⋮けど聖女様は僕に微笑んだままガチ無視です。
﹁あの、僕に会いたいって、どうしてな、どうしてですか?﹂
試しに僕が言うと。
﹁太古にわたくし達この地に生きる者を助けて下さった魔母リリス
様。その魔母を継いでいらっしゃる今代の魔母のセシル様に御伺い
致したいことがございました﹂
﹁その窺いたい事とは?﹂
ネーブルがすかさず聞くと、再び無視!
罵詈雑言とか吐かないけど、なんだかこの聖女様に嫌な予感がする。
ネーブルが凄い目で僕を睨む。
仕方なく僕が聞いてみた。
﹁詳しく教えて欲しいんですが﹂
808
﹁承りました。その前に一つ。セシル様、今のこの世界をどう思い
ますか?﹂
この世界どう思うか?
その質問に僕は⋮⋮!
﹁⋮⋮⋮﹂
そんな哲学的なこと考えたことありませんっ。
僕の様子に聖女様も笑顔だけど一筋の汗を垂らす。
﹁あれ? わたくしまずった?﹂みたいな雰囲気です。
﹁ミレイア様、セシル卿はあまり迂遠な物言いは好きではなく、簡
潔な物言いを好まれます﹂
出来る将軍ネーブルがフォローをしてくれた。
そんなネーブルに対して初めて聖女様が反応した。
﹁まぁ、セシル様と同職の将軍職に就いていて調子に乗ってそうな
ネーブル様、お教え頂き感謝いたしますわ﹂
笑顔でお礼を言ってる。
笑顔だよ?
ネーブルがそっと紅茶を飲んだ。
でも取っ手にヒビが入ったのを見逃さない。
﹁申し訳ありませんでしたセシル様。今戦争をしているこの世界の
809
事をどう思いますか?﹂
﹁あ∼、そだね。戦争しないで皆仲良くすればいいのにって思うけ
ど。魔物含めて﹂
﹁あらあらまぁまぁ。ティア、聞いた? さすが魔母セシル様です
ね﹂
﹁はい。お聞きした通りの方のようで安心できましたね﹂
僕の返答に喜ぶ聖女様と騎士様。
うむ、騎士様も笑うと可愛いです。
﹁セシル様が、優しいお方で安心致しました。それでは本日の用件
をお話いたしますね﹂
そこから聖女様の話が始まった。
昔々魔母リリス様が世界に現れ、この地の生き物を助けてくれた事。
様々な種族を生み出し、魔法や色々な知識を授けてくれた事。
それに怒った天界の神が地上の生き物を滅しようとした事。
神に対抗してリリス様が天界へ攻め入った事。
神との戦い以降、リリス様が居なくなった事
ここまでは前にレミネールお義姉様が話してくれた事と同じだった。
そしてここからが僕が知らなかったこと。
﹁わたくし達アリストラス法国が、この度停戦を申し入れましたの
は、リリス様の次代の魔母であるセシル様が現れたからです。セシ
ル様の存在は前々から存じておりましたのですが、愚かにも魔母を
810
語るただの魔族かと思っておりました。申し訳ありません﹂
頭を下げる聖女様。
﹁それが先日、セシル様の娘のラミュエル様とこちらのティアリス
が話す機会があり、真の魔母であると分かったのでございます﹂
﹁ふみゅ、でもなんで僕が魔母だと戦争をやめるの?﹂
﹁わたくし達が戦をしていたのは、太古の時代、器の小さい天界の
神が怒った状況を作り出さぬ為なのです。人間族以外の亜人種が繁
栄しすぎるのを防ぐ為。その為に法国の教義も人間族優位性を唱え、
亜人達を繁栄させぬようにしていたのです。けち臭い神に対抗でき
るリリス様が居ない状況では、神を怒らせて破滅を呼び込まぬ為の
処置でございました﹂
聖女様は凄く丁寧に話してる。
けどたまに毒が混じっていますね。
毒は置いといて。
つまりあれか。
ゲームの時にヤンデレ聖女だったのは、世界を守る為だったと。
今は魔母が現れたので病む必要がなくて丁寧な毒少女なだけと。
しかし僕はこの世界の歴史に詳しくありません。
なのでネーブルとメロディアさんにチョイチョイと合図し聞いてみ
た。
﹁ねぇねぇ、聖女様の言ってるの本当?﹂
811
﹁法国の戦争の理由が正しいかは知らないが、リリス云々は歴史的
にはそういう説もある位のはずだ﹂
﹁ネーブル様は存じませんでしょうが、実は陛下から魔母について、
同じ様な話を聞いております。ですので、嘘は言ってないのでは﹂
こそこそと密談する。
目の前でしてるので密談と言えるのかは分かりませんが。
﹁大丈夫ですよ。帝国のスケコマシ皇帝レグルス様にもお話を通し
てあります。でなければ、あの大陸統一とか言う夢物語を夢みる夢
想家皇帝が、セシル様との対談を許可するはずないでしょう?﹂
その言葉を聴いて僕は驚いた。
﹁皇帝の名前ってレグルスって言うの!?﹂
﹁き・さ・ま・は! 自国の皇帝の名前も覚えてないのかっ!﹂
﹁げふっ﹂
だってゲームで皇帝の通称で通ってたし。
とりあえずわかったのは、皇帝が聖女様の意図を知ってて僕に会わ
せたって事ですか。
﹁げほげほ、つ、つまり魔母の僕が居るからもう戦争はしないんだ
?﹂
﹁はい。世界を導くお方がおりますのなら、わたくし達としまして
812
は、セシル様が戦を辞めろというのであればお辞めします﹂
おぉ、なんだかよく分からないけど僕のおかげで世界が平和に!
﹁それでなのですがセシル様。天界への門ヘブンズゲートも先日テ
ィアが見つけました。なので、ウザイ天界の神が何かする前に、こ
ちらから攻め滅ぼしてしまいましょう﹂
世界が平和になったと思ったとたん、何やら物騒な事言う聖女様。
今天界へ攻めるとか言いましたかしら⋮⋮?
きっと僕の気のせいだろうと思う。
気のせいであって欲しい。
﹁い、今なんと?﹂
聞き返すと聖女様はにっこり微笑む。
そして鈴が鳴るような綺麗な声で言いました。
﹁セシル様を筆頭に、天界の神をぶっ殺しにいきましょう♪﹂
813
第51話 ヘブンズゲート
法国の聖女ミレイア様と対談してすぐに、対天界軍が発足された。
そして僕は今、天界の門﹃ヘブンズゲート﹄がある神殿を歩いてい
ます。
﹁クリア後のおまけダンジョンの名前がヘブンズゲートだけど、ゲ
ームの時と同じと限らないし。ってか来る羽目になるならもっと攻
略をしとけば。何故僕はクリア後ダンジョンは達成率100%にし
てからなどと思ってたんだろう⋮⋮。ぶつぶつぶつ﹂
歩きながらつい愚痴が出てしまう。
僕は対天界軍責任者となり、今少数精鋭を率いてます。
少数精鋭なのはティアリスさんの発案です。
前にここを調査した時に部隊を率いた経験らしい。
敵に対して軍よりも少数の強者の方が混乱や足手まといがない分良
いと。
今僕と一緒に来ているメンバーはこんなんです。
魔王であるレオン君。
吸血鬼レイニー。
ダークエルフで旦那様のアルシアさん。
僕の従者の淫魔リオティネック。
ラミア族代表のフェシスさん。
着いて来ると言って聞かないアウラ。
814
ここまでは僕の身内ですね。
本当はレミネールお義姉様とティティスさんが来るはずだったんで
す。
ですが!お二人はなんと妊娠してお腹がぽっこり!
レオン君、やることをしっかりやってたようですね。
と言う事でアルシアさんとフェシスさんが一族を代表して来ていま
す。
強さ的にもリオがOKを出したので大丈夫でしょう。
続いて来ているのが。
帝国将軍、海のネーブル。
法国教祖、聖女ミレイア。
法国神殿騎士団長、聖騎士リー・ティアリス。
これで全員です。
責任者を降りようとしたり、ネーブルに押し付けようとしたけど失
敗しました。
さらに聖女様は僕をリスペクトしてくれるのはいいのですが、持ち
上げまくられ逃げれなかったです。
﹁笑顔と丁寧な言葉遣いで騙されるけど、聖女様って粘着系だよね。
って言うかあれか、この事が妙にスムーズに運ぶ感じ。皇帝め、さ
てはメンドくさい聖女様を僕に押し付けたな﹂
魔光石のランタンで照らされる通路を歩きつつ、小声で愚痴が絶好
調です。
815
﹁ぶつぶつと小声で愚痴るな。私だって貧乏くじを引いたのだから
な﹂
僕と同様、たぶん皇帝に聖女様を押し付けられたネーブル。
僕は隣を歩くネーブルの肩を叩きます。
﹁最近ネーブルも皇帝に色々押し付けられて大変だね!﹂
﹁くっ⋮⋮﹂
ネーブルは1個数十万Gする魔光石のランタンを持ってワナワナ震
えている。
きっと色々皇帝に対して思うことがあるんだろう。
﹁我が君、はよう妾にも子を宿してたもれ﹂
﹁レイニー、くっつき過ぎて歩きにくいよ﹂
﹁んー、リオ、うちのメディアは元気かぃ?﹂
﹁ンムー。メディあんは最近お風呂で泳げるようになったわん﹂
﹁アルシアママ、神様倒せば勇者に成れるよね?﹂
﹁どうですかね? なんとなくそれは勇者と言うより魔王のような
?﹂
﹁ティア、天界問題を片付けたら皇帝を打ち倒して、セシル様を世
界の支配者にしましょうね♪﹂
816
﹁はい。この聖剣セイクリッドセイバーに誓い、皇帝を打ち倒しま
す﹂
僕とネーブルが先頭で話して居ると、後からワイワイと談笑して着
いて来る皆。
緊張感の欠片もない雰囲気です。
﹁僕とネーブルが真面目に先頭を歩いているのに、皆不真面目だよ
ねー﹂
﹁お前に言われるなら相当なのだろうな⋮⋮﹂
若干2名、危険な事を口走りつつも進む僕達。
10分か15分か、それなりに長い時間を歩いていくと空気が変わ
った。
﹁カカカカ。門を侵す愚かな侵入者よ。後悔するが良い﹂
突如赤い服、ローブかな?を着た骸骨が現れた。
そして鎌を高く持って凄む骸骨。
﹁貴様は⋮⋮! 生きていたのか!﹂
骸骨を見て剣を抜きながら前に出るティアリスさん。
﹁カカカカ。我はあの程度ではやられはせぬわ﹂
﹁邪悪なるリッチめ! 本来の私の装備がある今ならば遅れは取ら
ん! 部下達の仇、ここで討ってくれる!﹂
817
なにやら因縁めいた雰囲気。
二人の世界に入られ、僕達はこっそり後ろに下がる。
﹁なんだか小芝居が始まったけど、どうなってるの?﹂
﹁前にティアがここに調査に来た時、リッチに部隊を全滅されたの
です。もしやあの出汁にもならなそうな貧弱なリッチがそのリッチ
なのでしょうか?﹂
﹁ふむ、あの骨めは妾が倒したはずじゃが。全身の骨を砕きバラバ
ラにしての﹂
僕らがワイワイ話して居ると、アウラがいきなりティアリスさんの
ほうに走り出した。
人間に擬態してるアウラの肌が緑色になっていき、本来のアウラに
なる。
華を召喚しないままアルラウネ形態になったアウラは︱︱走った勢
いのままリッチを殴った!
ガンッ!ドンッ!
﹁ゲヒャ!?﹂
﹁⋮⋮は?﹂
アウラに殴られて謎の奇声を上げリッチは壁にぶつかり粉々になる。
眼を点にして剣を構えたまま固まるティアリスさん。
818
ここは母親として、アウラの奇行の理由を聞かねばなるまい。
呆然としてるティアリスさんの為にも。
﹁ア、アウラちゃん、何でいきなりリッチを殴ったのかな∼?﹂
﹁ん、前にお髭のおじさんのダグラスさんが、リッチを倒せば勇者
になれるって言ってた﹂
﹁なるほどぉ﹂
いつ何時もぶれないアウラ。
しかし部下の敵討ち的な演出だったティアリスさんが哀れです。
﹁ティア、わたくし達の同胞の仇はセシル様のご息女、アウラ様が
討って下さいました。お礼を述べましょうね﹂
﹁アウラ様、愚昧なるリッチめを討っていただき感謝いたします﹂
ミレイア様に言われるとすぐに礼を言うティアリスさん。
う∼ん、忠誠心がハンパないですね。
﹁これで勇者になれた?﹂
﹁はい。アリストラス法国の教祖ミレイアの名において、アウラ様
を勇者と認めますわ﹂
﹁やった﹂
娘と聖女様の様子に思わず和む。
アウラが本当に嬉しそうで、ママも嬉しいです。
819
そんな僕とアウラの喜びに水をさす事態が。
﹁カカカカ。我はこの程度ではやられないと何度も、って、待て、
緑の小娘、ギギャ!?﹂
ガンッ!ドンッ!
またも鎌を肩に担いで現れたリッチ。
しかし現れた瞬間、アウラに殴られて壁に突撃し粉砕する。
﹁勇者?﹂
﹁はい。聖女ミレイアの名においてアウラ様を勇者と﹂
﹁くわっ! 緑の小娘! よくもやってくれたな! しかしだな。
不死なる我は、って、ギョエ!?﹂
再び壁に激突して粉砕コース。
﹁勇者﹂
﹁はい。セシル様の愛妾ミレイアの名においてアウラ様を勇者と﹂
﹁ぐわーーー! 舐め腐りおって! 小娘がぁあ!﹂
アウラに何度砕かれても復活するリッチ。
しかし復活する度にぶっ飛ばされてる。
﹁ほえー、なんかあのリッチすごいね。いくらやられても復活する﹂
820
﹁ンム∼。でもあれねん。骨っ子は実力は大してないようねん﹂
﹁アウラが楽しそうでいいですね!﹂
のんびり観戦気分な僕達一家。
﹁いや、お前達、一応あれは敵なのだろう? のんびり見てていい
のか?﹂
一人だけ真面目顔のネーブルがうちの娘を心配してくれる。
ネーブルさん、まじ僕にデレてるね!
ちなみにレイニーはレオン君とイチャイチャしてて見てない。
レオン君は僕を見てる気がするけど無視です。
だって構ったらレイニーがきっと怒るから。
﹁魔力枯渇でもしていなければ、私一人でも倒せる相手です。アウ
ラ様ならお一人で余裕でしょう﹂
剣を仕舞いこっちへきたティアリスさん。
聖女様はアウラの傍で応援してる。
﹁ンヤ? 一人で倒せるのに部下の仇だったの∼ん?﹂
﹁恥ずかしながら、前回はその部下達を守る為に魔力がつきまして
⋮⋮﹂
なるほど。
その経験が在るから、少数の猛者だけで∼って言ったのか。
821
僕らはアウラとリッチの戦いを見守る。
何度となくアウラとリッチが衝突を繰り広げる。
リッチが鎌を振っても、アウラがよけて殴る。
魔法を使っても︻闇の衣︼そっくりの靄で防いでから殴っている。
﹁犬すら咥えそうにない貧弱骨はしつこいですね﹂
応援に飽きたのかミレイア様もコッチへ来た。
それからさらに暫くすると。
﹁ママ、飽きた﹂
アウラが飽きました。
しかし飽きたといわれても、ちょっと困る。
﹁う∼ん。あのリッチ、強くはないみたいだけど、復活するのがな
ぁ。どうしたら良いと思う?﹂
﹁ン∼ム。セシりんの胸で挟んで昇天させるとかぁん?﹂
﹁粉にして畑の肥料にするというのはどうですか?﹂
﹁ふっふ∼ん。鍋で煮込んでみれば良いんじゃないかぃ?﹂
﹁燃えるゴミここに眠るって慰霊碑を建ててみましょうか?﹂
誰一人真面目な意見を出しません。
でも全員本気で言ってる気がする。
普通に悩むネーブルとティアリスさん。
822
そんな時、レイニーが一言呟く。
レオン君の膝に乗りながら。
﹁あやつ、復活する度に鎌を持っておるよの。鎌が本体なのではな
いかや?﹂
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁お∼﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
皆でぽんと掌と叩いて納得する。
鎌が本体ならやられる度に持ってるのも納得です。
まさか復活する度に鎌を拾いに行く訳じゃないだろうしね。
﹁アウラー。鎌を壊してみてー﹂
﹁分かった﹂
﹁なっ!?﹂
驚くリッチ。
驚いたせいで、鎌本体説が正解だと分かる。
アウラは手に黒い魔力を纏わせると一気に振り下ろした。
﹁エクスカリバー!﹂
﹁ギァァァア。バ、バカな⋮⋮。神に仕える我が滅びるなど⋮⋮ア
ァ﹂
アウラにしては感情の篭った声を発し、手刀で鎌を破壊した。
鎌が真っ二つに壊れると、リッチはホロホロホロと灰となる。
823
﹁勇者﹂
﹁はい。世界の支配者セシル様の側近ミレイアの名において、アウ
ラ様を勇者と認めます﹂
﹁やった﹂
◇◇◇
リッチを倒してさらに先に進む。
真っ直ぐの通路を進み続けると、行き止まりに大きな門があった。
﹁セシル様、これがヘブンズゲートです﹂
ティアリスさんが頭を垂れながら教えてくれる。
高さは20m、横は10mくらいの扉でしょうか。
表面には文字なのか模様なのか、複雑な彫りがあります。
﹁セシル様、御身のお力で門をお開けください。さすれば周りの者
達が神を打ち倒してご覧に入れますわ﹂
有無を言わさぬプレッシャーで僕を門に誘導するミレイア様。
仕方ないので僕は門を開こうとする。
僕が手で触ると門の模様が黒く光りだした。
それは光っているのに黒い。
黒光とも言うべき物を発して門は勝手に開き始める。
僕が立ってるのと反対側にギギギとゆっくりとあいて行く。
824
﹁アルシアさん﹂
﹁セシル﹂
僕は少し怖くなってアルシアさんの隣に移動した。
片手でアルシアさんの手を握る。
﹁さぁ、開きますわ。天界の門が!﹂
ミレイア様の叫びと同時に扉が完全に開き、扉の先の景色が写る。
﹁⋮⋮うん?﹂
扉の先には角や羽が生えた屈強な人達、所謂魔族らしき人が大勢居
た。
一人一人から感じる魔力はリオに匹敵し、とても強いことが窺える。
そんな魔族の人達が驚いていた。
鍬とか持って。
畑の真ん中で。
﹁これは一体⋮⋮?﹂
天界への門を開けたら魔族が畑仕事をしていた。
さすがのネーブルやミレイア様も驚いて声も出ないようだ。
扉のあっち側の魔族の人達も驚いている様子が伝わってくる。
﹁うぉぉ、門が開いたぁぁ!﹂とか叫んでいるし。
どう対応してよいか分からない僕達。
825
対応に困って居ると門のあっち側から一人の女性がこちらへと向か
って来た。
黒いドレスを着た角がある金髪の女性。
その女性は丁度門の境目に来るとこう言った。
﹁あっれ∼? セシルちゃん、喧嘩の仲裁だけじゃなくて、こっち
から開けなくなってた門まで開けにきてくれたんだ∼。ありがとね
∼﹂
胸以外は僕と瓜二つの女性。
いつか夢で見た事がある人。
﹁リ、リリスさん?﹂
﹁うんうん。リリスだよ∼。2年ぶりくらいだね∼﹂
屈強な魔族を後に従えた柔和な笑みの女性が、ひらひらと手を振り
ました。
826
第51話 ヘブンズゲート︵後書き︶
次回、第二部の最終話です。
第三部があるわけじゃないので全体の最終話ですね︵
827
最終話 ゲームの世界でTS生活
雲の上の世界と思ってた天界。
白いパルテノン神殿の様な建物があると思っていました。
しかし実際は⋮⋮。
門の近くは畑がいっぱいありの田舎風景。
畑を抜けて町に入ると地味な色の石造りの建物が目に映ります。
﹁なんだか天界って言う割には、地味な⋮⋮﹂
﹁えぇ!? レンガ造りの建物とか味があって良いと思うんだけど
なぁ∼。それにほらほら、あのベランダの彫刻のような手すりの模
様とかすごいでしょ∼? 他にもほらほら、あの3層になってる噴
水も凄いでしょ∼?﹂
僕らを案内してくれるリリス様が味とやらを教えてくれますが。
﹁ヨーロッパの田舎の風景にしか見えないなぁ﹂
﹁うわっ∼田舎って酷い! セシルちゃんとこの建物と比べたりし
ないでよ∼。あんな天まで届きそうな搭とか建てられないよ∼﹂
リリス様に案内されながら歩いていると、建物だけじゃなく人?も
見かけます。
角が生えて羽が生えてるリオのように裸同然の美人さん。
上半身裸の美人女性で、下半身はクモの人。
828
真っ赤なお肌で角がちょこっと生えた薄着の背が高いTバックのお
姉さん。
薄いヴェールのような服を羽織った真っ白い羽を生やした少女。
多種多様な美人さんが一杯です!
﹁セシルちゃん、元が男の子だけあって女の子が好きなんだね∼。
男の子もいるのに、見てないよね∼﹂
そんな事はないです。
蒼い肌の羽生えたマッチョな農夫とか一杯見ましたとも。
﹁私が召喚した時に、わざわざ女の子になりたい∼って願って、そ
の体になったんだもんね∼。女の子が本当に好きなんだね∼﹂
﹁女の子が好きなのと女の子に成りたいは、全く違うと思いますけ
どっ!?﹂
僕は別に女の子になりたかったわけじゃない。
あの時は僕がセシリアになったら帝国にも法国にも負けないのに!
とか思ってただけです。
﹁有翼族の召喚魔法を改造して、私の代わりに皆を仲良くしてくれ
る子を召喚したらさ∼。女の子になりたい男の子が呼び出されちゃ
って不安だったんだ∼﹂
﹁リリス様、僕が女の子になりたかったと言うのは断固否定します
がっ﹂
﹁ほえ∼。そうなの∼? その割に女の子満喫して、子供まで産ん
829
でたよね∼﹂
﹁それは魔母になったせいかなぁと思うのですよ﹂
﹁あ、そうだったね∼。セシルちゃん、今魔母なんだよね∼。私の
代わりになる人を召喚したら、私と同じ魔母になるとは思わなかっ
たなぁ。でもさ∼、魔母だからって子供産みたくなるわけじゃない
からね∼?﹂
﹁うっ。そうなんですか?﹂
﹁そもそも私の魔母としての能力は、魔力による種族創造と肉体変
異とかだから、子供はあんまり産まないし∼﹂
﹁つまり子供を産んだりするのが好きなのは、僕自身の趣味ですと
!?﹂
﹁うんうん、そだよ∼。私なんて年に3,4人しか産まないもん∼。
セシルちゃんみたいに7人とか産まないよ∼﹂
﹁リリス様の倍も産むとか!? 僕に子作りの趣味があったとは!
?﹂
会話をして先頭を歩く僕とリリス様の後には、皆がついて来ていま
す。
皆も色々な種族の美人さんや建物を見ながらワイワイ話しているよ
うです。
会話の内容は聞こえませんけど。
﹁ンヤー。リリス様んとセシりんの会話の詳細は分からないけど∼
830
ん。ボケが二人いるのはわかるわん﹂
﹁セシルの建物とか召喚とかは良く分かりませんね。ですが、リリ
ス様もセシルと同じで子作りが好きと言うのは分かりました﹂
﹁ママの方が一杯産んでる。ママ凄い?﹂
﹁はい。アウラ様のお母様は妊娠出産が大好きなようで、とても凄
いです。わたくしも見習いたいですわ﹂
﹁帰ったらセシル様に頼み、ミレイア様を妊娠させていただきまし
ょう。その時は私も共に!﹂
﹁天界に攻め入り人族を救ったリリスが、セシリアと同じボケた雰
囲気なのだが⋮⋮。もしやあれと交渉とかをしないといけないのか
⋮⋮。陛下、恨みます⋮⋮﹂
﹁やは∼。まぁ、なんだねぇ。あんた大変そうだねぇ﹂
﹁セシリアさんが二人⋮⋮。ボクはどっちを取れば良いんだろう﹂
﹁我が君は最近色ボケが過ぎる気がするのぅ﹂
平和な天界の街並みを皆も満喫しているようでした。
◇◇◇
リリス様に案内されて大きな建物に入りました。
その建物の一室で、リリス様が今までの事を説明してくれるそうで
す。
831
﹁粗茶ですが﹂
﹁あ、ありがとうございます﹂
天使のような羽を生やした可愛い少女がお茶を持って来てくれまし
た。
﹁それでリリス様、地上の支配者であった御身が天界へ攻め入った
後、ご存命でしたのに地上に姿を見せなかったのは何故でございま
しょう?﹂
こう言う時に仕切るはずのネーブルの代理としてミレイア様が質問
した。
ネーブルは何故か暗い顔でどよーんとして元気がないのだ。
心配して声をかけようとしたらフェシスさんに止められた。
﹁そっとしといておやりよぉ﹂だそーだ。
﹁うんとね∼。話すと長いんだけどね∼﹂
リリス様の過去。
つまりこの世界の神話を語ると言う事で、皆少し緊張しているよう
です。
アウラだけはお茶を持って来てくれた女の子に﹁お腹空いた﹂と言
ってますが。
﹁私が門に封印かけたら、こっちから開かなくなっちゃって戻れな
かったんだぁ∼﹂
﹁⋮⋮﹂
832
皆沈黙。
﹁あ、あ、ち、違うんだよぅ。ちゃんと封印をかけた理由が在るん
だよぉ∼!﹂
空気を察したのか必死に理由がある事をアピールする。
﹁リリス様、そんなに無理に言い繕わないでもいいんですよ?﹂
﹁あ、セシルちゃん酷いぃ∼!? 本当に理由が在るんだよぉ∼!﹂
頬をぷーと膨らませて怒る。
自分と同じ顔の人が子供みたいに怒る。
あれ、なんだか僕が恥かしい。
﹁地上に攻めてきた天界の人達が、私達が負けても地上にいけない
ように∼って、こっち側から全力で門に封印をかけたんだもん∼﹂
つまり自分達が負けた場合でも、地上の皆が助かるようにと。
凄い真っ当な理由でした。
﹁でもね∼、いざ天界に攻め込んで神と名乗ってた有翼族の王様と
戦ったら∼、あっさり勝っちゃったんだけどね∼。えへ∼﹂
真っ当な理由だけど自分達が勝利した場合を考えない辺り、リリス
様がどういう人か判った気がします。
﹁リリス様はつまりっ、天然どじっ子なんですねっ!﹂
833
﹁どじっ子じゃないよ∼! セシルちゃんまで、うちの子達みたい
に言わないで∼!﹂
むーと唇を突き出しながら手を振り講義する。
見た目が大人の女性なのに仕草が子供です。
そのギャップが可愛いんですが。
﹁って、見た目が僕と同じリリス様に萌えるとか、僕ってナルシス
トの気も!? どうしよう、アルシアさん! 僕ナルシストかも!
?﹂
﹁私が言うのも何なのですが、セシルとリリス様はもうちょっと真
面目に会話してはどうでしょう?﹂
﹁﹁えぇ!? 真面目に会話してるよっ︵よ∼︶!?﹂﹂
アルシアさんの言葉に僕とリリス様が声を揃えて反論した。
僕らは至極真面目に会話をしていたんだからね。
しかしアルシアさんに同意する声がしました。
﹁まったくです。リリス様はもうちょっとポンコツ具合を治して真
面目になって欲しいものです﹂
いつの間にか部屋の入り口に赤いマントを羽織った女性が立ってい
ました。
その女性がアルシアさんに同意した台詞を言ったようです。
﹁あ、アルカちゃん、ポンコツって酷いよ∼!?﹂
﹁さて、良くぞいらっしゃいました。地上のお客人方。残念なリリ
834
ス様に代わりリリス様の補佐である私、魔人族のアルカがお話いた
しましょう﹂
﹁アルカちゃんはね∼、すごいんだよ∼。炎の魔人族で何でも燃や
しちゃうんだよ∼。アルカちゃんの灼熱の能力はお料理する時とか
便利で∼むぎゅぅぅ﹂
自分の紹介をしようとしたリリス様の顔を片手で掴み黙らせるアル
カさん。
補佐してる対象と思えない扱いです。
﹁まずは私達魔族の話ですね。元々は私達魔族は魔界と呼ばれる地
下世界に住んでいました。しかしその地下世界にある時溶岩が流れ
込んできて、住めなくなってしまったのです﹂
平然と話すアルカさんですが⋮⋮。
片手はリリス様の頬を鷲づかみにして喋れないようにしています。
﹁ひゃ、ひゃなしてぇ﹂とリリス様が訴えておりますが、その訴え
は届きません。
﹁地下世界に住めなくなった私達魔族は地上に出ることにしました。
未開の地であった地上に出ると、そこには貧相な暮らしをした生き
物達が居ました。私達は地上に住まわせて貰う代わりに、様々な知
識や魔法を教えたのです﹂
この時、ミレイア様が黙ってリリス様達にお辞儀をします。
話を中断させず、尚且つ祖先に対しての恩を感謝で表す姿は聖女っ
ぽかったです。
﹁まぁ、うちのポンコツ様は地上に出ても遠慮も何もせず、地上の
835
生物達と性交をして好き勝手しておりましたがね﹂
﹁ぷはぁっ。だ、だって皆が私とエッチしたいって言うから∼むぎ
ゅぅぅ!?﹂
﹁魔界のノリで新種族を多数生み出す必要はありませんでしたよね。
サイズ的に無理がある竜族ともするとか、どこまで変態なんですか﹂
﹁むぎゅ∼、むぎゅ∼﹂
顔を掴まれながら左右に振られるリリス様。
リリス様を横に振るアルカさんの言葉が僕にも突き刺さります。
リオとアルシアさんが僕を見てくるので目を逸らします。
﹁このポンコツ様の行動が原因で私達は有翼族と闘う事になったの
です。地上に多数の新たな種族を生み出したリリス様を危険と見な
し、神とその御使いを自称していた有翼族が私達魔族を討伐しよう
と攻めてきたんですよ﹂
﹁ぷはっ。酷いよね∼。楽しく平和に暮らしてただけなのにぃぃぃ﹂
﹁あ、もしかしてリリス様が生態系を乱して危険だと思ったのかな
?﹂
﹁その通りです。ポンポン新たな生物を生み出すポンコツ様を放置
すると地上が崩壊すると思ったらしいのですよ。私達からしても否
定できない事ですね。有翼族の王は地上が荒れるのを望んでおらず、
見守っていたようですので﹂
確かに新種族を生み出しまくったリリス様を危険と思うのは当然の
836
気がします。
生態系とかどうなるか予想もつかないだろうし。
敵だと思ってた天界の人達は地上を守ろうとした。
味方だと思ってたリリス様こそ、地上を荒らしていた。
何と言う事実。
﹁今は亡き有翼族の王とも戦いの後に和解し、ポンコツ様のせいで
地上に戻れなくなった私達魔族と有翼族は天界で共に暮らしている
のです﹂
﹁な、なるほどぉ﹂
アルカさんの話しに僕は何度も頷く。
リリス様を掴んで話してる最中に、アルカさんは僕を何度も見て居
たから。
その視線が語る内容は﹃貴方もポンコツ様みたいにならないように﹄
だ。
僕は気をつけようと決心する。
新種族の竜魔を産んでるのをばれない様にしようと。
ズルズルズル。
アルカさんの話が終わってホッと一息ついた所で、部屋に音が響い
た。
その音は聴きなれた音で、僕が探していた音でもある。
音がする方を見ると︱︱アウラが箸を持って何かを啜っていた。
837
﹁もぐもぐもぐ﹂
﹁ア、アウラ、それはまさか⋮⋮!?﹂
﹁あ、すいません。お子様がお腹が空いたとおっしゃってたので、
ラーメンをお出ししたのですが﹂
﹁ラーメン!?﹂
純白お茶くみ天使、もとい有翼族の少女が告げた。
﹁あ、2年前に精神体でセシルちゃんに会いに行った時、ついでに
あっちの世界を見学したんだ∼。その時に街で見かけたんだよね∼。
それを再現してもらったんだよ∼ぎゅむぅ!?﹂
﹁有翼族の最後の切り札である勇者召喚の魔法を改造した挙句、召
喚先の世界をアストラル体で見学するとか、余り勝手を為さらない
でくださいませ﹂
勇者召喚って。
天界がやっぱり正義側でリリス様達が悪側な匂いがぷんぷんします。
いや、今はそんな事よりも別の匂いです。
﹁そこの美乳天使の少女様! 僕にもラーメンをくださいっ!﹂
﹁あ、ルネちゃ∼ん。私にもお願い∼﹂
僕とリリス様が有翼族の少女へとラーメンを注文します。
838
﹁ンムー。想像してたよりリリス様がセシりんっぽくて吃驚なのね
ん﹂
﹁セシルの方が胸が大きくて可愛いですよ﹂
﹁はいはい、ご馳走様なのね∼ん﹂
﹁あの、アルカ⋮⋮様、私は地上の帝国の者なのですが、今後につ
いてご相談が。魔族の方々は地上にお戻りになられたりするのでし
ょうか?﹂
﹁おそらく戻ると思います。そして間違いなく地上は混乱するでし
ょう。ポンコツのせいで﹂
﹁くっ⋮⋮。す、すまないが私には水をくれないか。胃薬を飲みた
いのだ﹂
重要な話が終わり、部屋の中は途端にワイワイしだす。
天界への冒険は、こうして騒がしく終わりを迎えました。
◇◇◇
天界の門が開通してから数年後。
僕達は平和に過ごしています。
帝国と法国は平和条約を結び、連邦も結局帝国が統合する事無くミ
ニム姫達が治めています。
地上に降り立ったリリス様が皇帝に﹁喧嘩はダメだよ∼﹂と言い、
839
帝国の将軍︵僕とネーブルを除く︶を同時に相手をして瞬殺して力
を見せたせいです。
戦闘態勢のリリス様は黒い魔力を全身に纏い、凄い威圧感でした。
まさに魔の女王という感じです。
普段はアルカさんに顔を捕まれてばかりですが。
地上に来た一部の魔族と有翼族の人達は、法国の西側、レイニーが
居た死都を復興させて国を作りました。
その国の王はリリス様ではなく、何故かレイニーです。
レイニー曰く﹁元々この場所にあった国の貴族である妾が収めるの
が筋﹂だそうです。
魔族と有翼族の人達もそれでいいらしく、随分と寛容な人達だと思
いました。
レイニーはレミネールお義姉様とティティスさんとの3人での合議
制にしつつ国を治めています。
ちなみにレオン君は軟禁状態で毎日3人に襲われているとか。
あ、ゴブリンとオーク達もこの国で平和に過ごしてるそうです。
そして僕と家族の皆はと言うと。
変わらずカルドの屋敷で過ごしています。
ただ屋敷に2名ほど家族が増えましたが。
﹁う∼ん。セシルちゃん、私が見たカレーはもっと美味しそうだっ
たと思うんだ∼﹂
﹁スパイスの中には漢方もあるって聞いた事があるからって、薬草
を入れたのは失敗だったかも﹂
僕はリリス様と一緒に日本の食の再現に日々勤しんでいます。
840
ラーメンの次はカレーなのですよ。
真剣に勤しむ僕とリリス様に近寄る影二つ。
﹁リリス様、貴方は基本的に無能なんですから、料理とかやめてく
ださい。爆発でもしたらどうするのです﹂
﹁え∼。爆発なんかさせないよ∼。爆発は炎の魔人のアルカちゃん
の得意技でしょ∼。あ、でもアルカちゃん料理上手だよね∼。実は
料理が趣味の最強の魔人とか、ぷぷぷぅぎゅぅぅ﹂
﹁はいはい、調理場は危険ですから別の場所へ行きましょうね﹂
アルカさんに顔を鷲づかみにされながら連れ去られるリリス様。
あの二人が屋敷に住むようになって、日常の光景です。
﹁セシルも料理は得意じゃないでしょう? 無理しなくて良いんで
すよ﹂
僕に優しく言ってくれるアルシアさん。
しかし僕も頑張りたい理由が在るのです。
﹁アルシアさんや家族の皆に手作りご飯を食べさせたかったんだよ﹂
お母さんとして子供達に自分で作ったご飯を食べさせたかったので
す。
でも僕が作ると何故か最後は消し炭になるんだよね。
﹁セシルが家族思いなのは皆知っていますよ。無理しなくて良いん
です﹂
841
﹁アルシアさん、んっ﹂
僕を抱きしめてキスをしてくれるアルシアさん。
優しい口づけに僕は幸せに包まれる。
﹁んっ。これからもセシルはセシルらしく、私と一緒に居てくれれ
ば良いんですよ﹂
﹁うん。ありがと。アルシアさん﹂
愛すべき家族と一緒に、僕はこれからも生きていく。
842
第53話 こんにちは異世界︵前書き︶
番外編なので、テイストが違うと思います。
書くの止めたのをなんとなく書いたので更新しようかなと⋮⋮。
完結したのに続けていいんだろうか︵;´ω`︶ノ
843
第53話 こんにちは異世界
﹁ひもじい∼。ひもじいよ∼。セシルちゃ∼ん。グスン﹂
﹁うぅ。そう言われても、お金がないとご飯を食べれないんですよ
⋮⋮﹂
僕とリリス様は都内の公園のブランコに座り黄昏ている。
キーコ、キーコというブランコの音が空腹を助長している気がする。
﹁勝手に狩りしちゃダメとか、犯罪者捕まえても賞金出ないとか、
圧政を敷いてる国なのぉ∼? グスン﹂
﹁漁とかは組合があって勝手に獲っちゃダメなんですよ。基本的に
賞金首とかいませんし、犯罪者は警察⋮⋮国の組織が取り締まるの
で、一般市民が捕まえたりしないんです﹂
日が暮れかけた夕刻。
僕とリリス様はお腹を空かせていた。
﹁ひもじいよ∼﹂
ハァと内心溜息をつく。
懐かしい故郷なのに気分はどん底。
空腹を訴えるお腹を無視して、何故こうなったか思い出す。
僕達が日本に居る理由を︱︱
◆◇◆
844
平和な日常を満喫する毎日。
僕は今日もリリス様と日本食の再現に勤しんでいました。
﹁出来たっ! 必殺カレー!﹂
僕とリリス様の傑作、黒く輝くカレーが完成です。
見た目に匂いはカレーっぽい。
この世界にもお米があったのでライスつき。
﹁おぉ∼! とうとう出来たね∼! やったね∼セシルちゃん!﹂
﹁半年以上頑張ったかいがありましたね!﹂
早速完成したカレーを皆に食べさせようと言う事に。
そして皆を食堂に呼んでご馳走したのですが⋮⋮。
﹁ンム∼。これがカレーなのねん。いただきま∼す﹂
アスターを抱きながら最初にカレーを口にするリオ。
アスターってば最近ずっとリオから離れません。
﹁りーおー﹂と言いながらいつもピタッとくっ付いています。
アスターを片手で抱いたリオがもぐもぐと咀嚼し︱︱体勢を崩した。
﹁こ、これは、苦味の中に甘ったるさがあって、独特の風味と辛味
がまったくマッチしてなくて口の中が不愉快感で満載なのよん⋮⋮﹂
感想を口にしたのはリオだけですが、食堂にいる全員が微妙な顔を
して眼を逸らします。
845
﹁あの、セシル閣下。これは味見などはしたのでしょうか?﹂
﹁セシルさんはまだしも、リリス様は味見をしてないと確信を持っ
て言えますね﹂
メロディアさんが控えめに聞いてきて、アルカさんがまさに核心を
突いてきます。
僕が黙ってる事で真実を察したメロディアさんがそっと顔を背けま
した。
﹁確かにちょっと苦くて甘くて辛いですが、十分食べれますよ?﹂
そんな中、一人食べ進める人が。
﹁アルシアさん、無理しなくて良いんだよっ!?﹂
笑顔で食べてるアルシアさんに僕は驚いてしまう。
味見はしてないけど、皆の反応で大体の味は想像つく。
きっとこのカレーは美味しくないと。
﹁セシルが折角作ってくれたんですから、美味しく食べますよ。前
に作ってくれた炭化したクッキーより全然普通に食べれます﹂
﹁ンワー。愛ねん。これを平然と食べれるとか、愛の力は偉大なの
ねん﹂
﹁アルシアさん⋮⋮﹂
僕はアルシアさんの愛に感動してしまう。
846
アルカさんに普通の魔族らしく妊娠をするのを控えさせられてるけ
ど、今日の夜は妊娠しちゃうくらい激しくしようかなーと考えてい
ると、横に居るリリス様がワナワナと震えだした。
﹁美味しくない。美味しくないんだよ∼!﹂
グモモモ∼と黒い魔力を噴出しながら両手を掲げるリリス様。
全身で不味さを表すとは、お笑いの才能が有りそうです。
﹁んも∼、こんなに失敗するのはあれなんだよ∼。きっと本物を食
べたことがないからなんだよ∼!﹂
そう言って両手に魔力を集め、その手を床へと向ける。
リリス様が床に手を向けると突如真っ黒い魔法陣が浮かび上がった。
﹁こうなったら本物を食べに行くんだよ∼!﹂
﹃は?﹄
食堂に居た全員が思わず声を揃えた。
たぶん全員こう思ったはず。
﹁何言ってんのこの人?﹂と。
渦巻く魔力が視認できるほど濃くなり、黒い魔法陣が怪しく輝く。
﹁リリス様っ! 一体何をしてるんですか!﹂
﹁ちょっとセシルちゃんが居た世界に行って、カレーを食べて来る
んだよ∼!﹂
847
﹁どうやって! って、とりあえずその魔法陣を止めなさい! ポ
ンコツ女王!﹂
﹁あ、酷い∼。ポンコツじゃないもん。ちゃんと勇者召喚の魔法を
逆にして、送還方陣にしてこっちから向こうの世界にいけるように
したから大丈夫だよ∼﹂
ズモモモモと不吉な気配を吐きながら輝く黒い魔法陣。
見るからに大事な雰囲気を放っています。
﹁くっ、リオティネック、アウラ。あのポンコツを実力で止めます。
協力しなさい﹂
﹁わ、わかったのねん﹂
﹁ん﹂
アルカさんが戦力になりそうな二人に声をかける。
炎の魔人族最強のアルカさんが炎を纏う。
リオはアスターをアルシアさんに預けようとして⋮⋮隣のラミュー
に預けた。
空のカレー皿をテーブルに残し、アルシアさんはテーブルに突っ伏
していた。
アスターはラミューに抱かれながら﹁りーおー﹂とリオに向かって
手足をパタパタする。
﹁このポンコツ、止めなさい!﹂
848
アルカさんが一瞬で近づいてリリス様の顔を鷲づかみにする寸前、
黒い魔法陣が光を放ち砕け散った。
食堂の中が真っ暗になり、平衡感覚がなくなりグラっとした。
何も見えない中で不思議な浮遊感を感じながら僕はあることを考え
ていた。
勇者召喚の逆って、魔王送還なんじゃないかなぁ。
そんなどうでも良いことを。
少しして黒い世界がひび割れて、明るい景色が目に入る。
僕らが居た世界に比べ、青というより少し灰色っぽい空。
巨大な建物が乱立する都会のビル群。
ガーガーと煩い騒音を響かせる車。
﹁ンガ!? な、なんなのん!? 要塞や搭がいっぱい!? げふ、
げふ、な、なんだか空気中に毒でもあるのん!? ンヤ!? この
高い建物はなんなのん!?﹂
僕らが立ってるのは東京タワーの特別展望台の屋根の上。
﹁あ、あはは⋮⋮﹂
突然の事態に笑うしか出来ない僕。
周りを見るとしっかりと日本の東京の景色。
異世界転生しての出戻りという事態に動揺してしまう。
しかしキョロキョロとパニックになってるリオを見て落ち着く。
849
人は自分より混乱してる人を見ると落ち着くという。
﹁あ∼、リオ、ここは僕の故郷だよ?﹂
﹁ホエ!? あ、じゃあここは連邦の街なのん? こんな不気味な
街を作ってるなんて、連邦を侮っていたわん﹂
﹁あ∼、そうじゃなくて、え∼と、まぁいっか﹂
説明がめんどくさくなり放棄する。
まぁ、あれだよね。
とっととリリス様に元の世界に戻してもらえば良いよね。
そう思って多分一緒に飛ばされたリリス様を探す。
するとアルカさんとリリス様を背後に見つけた⋮⋮けど。
﹁世界間の召喚魔法を気軽に、食べ物の為に使った上に、私まで巻
き込むとは何を考えているんですか。このポンコツ様は﹂
﹁ひゃがががが!?﹂
リリス様は、青筋を立てたアルカさんに顔を鷲づかみにされ宙吊り
にされていた。
﹁今日と言う今日は許しませんよ。自分が何様かみっちりそのポン
コツお脳に叩き込んであげましょう﹂
魔族の女王様は配下の魔人に本気の説教を食らっていた。
本気で怒るアルカさんに声をかけられるわけもなく、僕とリオは二
人を黙って見守る。
850
﹁楽天的で後先考えず、無根拠な自信で行動して結果失敗する。そ
れをフォローする周りの、というか私に対する迷惑をそろそろ反省
して欲しいものですね﹂
﹁ひゃぎぎぎぎぎ!?﹂
メキメキと擬音が聞こえそうなほどのアイアンクロー。
見慣れた光景だけど僕にそっくりなリリス様を見ると僕まで痛い気
分になります。
﹁⋮⋮楽天的で後先考えず、無根拠な自信。ンイー。セシりんも似
た感じよねん﹂
﹁⋮⋮気をつけます﹂
一緒に見守るリオにそう返すのが精一杯でした。
将来、リオにアイアンクローされないように気をつけよう⋮⋮。
そんな僕達の横で、暇だったのかアウラは一人お昼寝をしていた。
◆◇◆
﹁帰れない? ふざけてるんですか?﹂
﹁あががががが!?﹂
アルカさんの説教が終わり、元の世界に帰ろうという事になる。
しかしその後にリリス様が言った一言。
その一言で再びアイアンクローです。
851
﹁あのぉ、アルカさん、一応理由を聞きましょう?﹂
いくらリリス様だって、何か理由が在るはずです。
カレーを食べてから帰りたいとか。
アルカさんは渋々といった感じで手を離す。
解放されたリリス様は涙目で説明を始めた。
﹁な、なんだかね∼。この世界は大気中の魔素が全然なくて∼。ゼ
フィーリアに帰る為の魔法を発動させるほど魔力が集まらないんだ
よ∼﹂
﹁ンヤ? ゼフィーリア?﹂
﹁ゼフィーリアと言うのは、私達が居た世界の事です。ここは私た
ち魔族と有翼族がガイアと呼ぶ世界ですよ﹂
﹁ホエ?﹂
未だに状況を把握して居ないリオにアルカさんが丁寧に説明する。
リリス様以外の人に対しては、アルカさんって優しいんだよね。
説明が終わるとリオが僕とリリス様を交互に見た。
﹁ンガ∼!? セシりんが異世界出身って言うのもびっくりだけど
ん、元の世界に戻れないってどうするのん!?﹂
いつも飄々としてるリオが大慌てです。
それを見ると凄く落ち着く。
852
﹁ムキー! セシりん! 落ち着いてる場合じゃないのよん! 帰
れないとアーシャーちゃんや子供達に会えないって事なのよん!﹂
﹁ハッ!?﹂
リオに言われ急に寂しくなる。
寂しくて泣きそうになるが、横に居るアウラを見て我慢する。
ママなんだから、きっと不安がってる娘の前では強くいなければ!
﹁あ、大丈夫だよ∼。1ヶ月くらい体内魔力を溜めれば帰れるから
∼﹂
﹁なんだ、そうなんですか﹂
それを聞いてがっくり力が抜ける。
一瞬、帰れないと思って凄く悲しくなったのに。
いや、帰れる方がいいんですけど。
僕が安心するとアウラがドレスを引っ張って来た。
見た目はもう16歳くらいの美少女なのに、行動が可愛くて抱きつ
きたいです。
﹁ママ、お腹空いた﹂
﹁⋮⋮え?﹂
そんな娘の一言に固まる僕。
帰るまでに1ヶ月。
853
その間どうしよう。
お金⋮⋮ないし。
◆◇◆
その後僕らは二手に分かれた。
アルカさんとリオとアウラはこの世界の情報を仕入れる為に散策。
そして僕とリリス様は1ヶ月間の拠点となる場所を探す事に。
戸籍もない、お金もない外国人っぽい僕ら。
どうしていいか分からず、途方に暮れる。
そのまま適当に歩き時間だけが経ち、公園のブランコで一休みです。
﹁はぁ、元の僕の部屋も行方不明とかで引き払われてるとは⋮⋮。
貯金300万以上あったんだけどなぁ。僕はまだしも、アウラには
何か食べさせたいなぁ。リリス様、魔法でご飯とか出せません?﹂
﹁うぅ∼。そんな事できるなら、とっくに出して食べてるんだよ∼﹂
ごもっともです。
一応、日雇いのアルバイトでもないか探しても、身元不明の外人は
無理と断れた。
うぅ。僕は元日本人なのにっ。
﹁う∼、セシルちゃん、お友達とかいないのぉ∼?﹂
854
﹁はっはっはっ、自慢じゃないですけど、大人になってからのお友
達はネーブルくらいですよっ!﹂
社会人になってから友人なんて作る暇なかったしなぁ。
学生時代は居たんだよっ!
と心の中で言い訳する。
魔族の女王たる魔母二人。
異世界、と言うか日本だと無力です。
元の世界でも役に立ってた気はしないけど⋮⋮そんなはずはないよ
ね。
﹁とりあえず、夜になったら東京タワーで合流予定ですから、行き
ましょうか﹂
﹁そうだね∼。アルカちゃん達なら何かご飯を用意してくれるかも
だしね∼﹂
しっかり者のアルカさん。
要領が良さそうなリオ。
確かにあの二人なら色々何とかしてくれそう。
﹁と言うかあれ? もしや役立たずの僕ら二人を隔離した別行動と
か⋮⋮?﹂
僕が別行動の人員分けの真意を悟った瞬間、周りが少し薄暗くなる。
急に日が落ちた訳ではない。
まるで公園内だけ何かに覆われて暗くなったような。
﹁セ、セシルちゃん、何これ∼?﹂
855
隣でリリス様も動揺していた。
急に薄暗くなった公園内で慌てる僕とリリス様。
そんな僕らに落ち着いた声が届く。
﹁ただの陰陽道による結界ですよ﹂
声のするほうに顔を向けると、黒いスーツを着た高校生くらいの少
年が立っていた。
その少年は布に包まれた長い物からゆっくりと何かを抜く。
﹁突如都内に現れた強大な魔。やっと見つけましたよ﹂
﹁﹁へ?﹂﹂
僕とリリス様が声を揃える。
少年が何者かわからず。
何を言ってるかわからず。
にっこりと笑う少年が手にした物の切っ先を僕らに向けた。
それは波紋が美しい銀の刃、日本刀。
﹁内閣府、国家公安委員会、機密治安維持議会所属、橘勇矢と申し
ます﹂
﹁内閣府∼?﹂
﹁あ、日本の∼この国の組織ですよ。内閣府﹂
856
リリス様の疑問に答えたけど、絶対の自信はなし。
内閣府とか、普通の一般人は関わりませんし。
﹁うん∼? この国の組織の人が、私達に何の用なのかなぁ∼?﹂
﹁簡単な事です。僕の役目はこの国に仇なす魔を斬る事。貴方達、
人ではない者を滅する事です﹂
﹁は?﹂
﹁へぇ∼﹂
日本刀を正眼に構える少年。
黒い魔力を体から立ち昇らせ、戦闘態勢のリリス様。
二人は僕を置いて睨み合う。
そんな真剣な二人の横で、僕は混乱していた。
魔を滅するとかなんですか!?
あれ!?ここ日本だよねッ!?
857
第54話 年下ってイイよね
キィン。ギン。カァン。
夕暮れの公園に響く硬質音。
長髪を後で結んだ黒いスーツの高校生くらいの少年が日本刀で斬り
かかる。
それをリリス様が魔力を集め強化した黒い両手で捌く。
魔族最強どころか、あっちの世界最強の大魔王なリリス様。
少年の鋭い攻撃もスルリと回避している。
﹁ハッ! ヤッ! タァッ!﹂
声変わり前なのか、綺麗な鈴のような少年の声が聞こえる。
少年の攻撃はリリス様には通じてないようだけど⋮⋮。
﹁一歩動いただけで5m以上移動した⋮⋮? ふぇぇ、木を利用し
て三角飛び? 今10m以上飛んだよね⋮⋮﹂
どう見ても日本人な少年の、どう見てもアニメや漫画のような動き
に驚愕してしまう。
僕が知っている日本では、あんな動きをする人がいるはずがないの
です。
﹁つまり! ここは日本に似た異世界! ⋮⋮いや、引き払われて
たとはいえ、僕の借りてた部屋もあったし、僕が住んでいた日本な
858
んだけど⋮⋮﹂
目の前の戦いを見れば見るほど崩れていく。
僕の常識が。
﹁くっ、やりますね。退魔官第二位の僕の攻撃をここまで防がれた
のは初めてです﹂
﹁う∼ん? あっれ∼? 手加減してたんじゃないの∼? 今のは
手を抜いてるセシルちゃんより遅かったけど∼﹂
二人は一旦距離を取って会話をしている。
リリス様の言うとおり、少年の動きは僕よりも遅いし軽そうだった。
僕ってば、腐っても元剣聖ですからね!
リリス様の言葉の詳細は分からなかったと思うが、相手にならない
と言うのは伝わったのだろう。少年の顔が不快に歪んだ。
﹁西洋の魔のようですが、正体が分かりません、が⋮⋮。倒しちゃ
えば同じですよね﹂
そう言って少年は懐からお札を取り出す。
そのお札を真っ直ぐリリス様に向けて投げつけた。
紙のお札が空気抵抗とか無視で真っ直ぐ進む。
そしてリリス様に届く大分手前で︱︱。
﹁雷呪開放!﹂
バチィィィン!
859
少年の声に反応して突然お札が破け、そこから雷が発生した。
雷はリリス様に直撃し、直撃したリリス様は立ったままプスプスと
黒煙をあげている。
﹁さて、次は貴女の番です﹂
プスプス煙を上げてるリリス様から、ブランコに座る僕に顔を向け
る少年。
しかしそれはまだ早いと思うんだよね∼。
﹁うわぁ∼。ビックリしたぁ∼。魔力の高まりとかないのに、急に
雷の魔法が飛んで来るんだもん∼﹂
﹁なっ!? 雷撃符を受けても滅びないなんて!﹂
口や体から黒煙をあげてたリリス様が、ピンピンしてらっしゃる。
帝国の将軍、雷のユピテル。
一人で万の軍勢を超える武力を持つ将軍の一人で雷魔法の達人。
リリス様はそのユピテルの最大魔法を食らっても平気だったしなぁ。
あれに比べたら、今の雷撃はしょぼかった。
﹁かの鵺にも傷を負わせた、僕の最大の術だったんですが﹂
﹁ぬえ∼?﹂
﹁あ∼、キマイラみたいな魔物ですよ﹂
ヌエといえば有名な妖怪です。
860
有名だけど⋮⋮キマイラみたいに色々な動物の複合体としか知らな
い。
﹁侮っていたようですね。良いでしょう。では、鵺さえも切り裂い
た僕の切り札をもって浄化してさしあげます﹂
マンガの主人公のような美形長髪刀少年は、落ちていた布を取り中
から鞘を取り出す。そしてその鞘に刀を納め腰を落とし身を屈め︱
︱居あい抜きの姿勢をとる。
まだまだやる気満々のようです。
しかし目の前の大魔王様には勝てないと思うんだけどなぁ。
リリス様、まだ一度も攻撃してない。
完全に遊んでるよね。
﹁神刀流奥義、閃斬!﹂
少年は居あい抜きの構えから刀を抜き放つ。
横に一閃、その後に縦に一閃。
綺麗で優雅な動きで目を奪われる。
だけどリリス様との距離は10m以上は在るので、まったく刃は届
いてないのですが⋮⋮。
﹁﹁ほえ︵∼︶?﹂﹂
僕とリリス様が同時に首を傾げて疑問をアピール。
その直後、少年が刀を鞘にカチャと納める音が聞こえた瞬間。
ドサァァ。
861
リリス様の背後にあった木が倒れた。
十字に切り裂かれた状態で。
﹁ふっ。見えざる神威の刃で敵を切る。それが閃斬です﹂
﹁リリス様!?﹂
ここで初めて僕に焦りが生まれた。
木と少年の間に居たりリス様も当然、今の攻撃を食らってるわけで。
僕が思わずブランコから立ち上がると。
パサッ。
リリス様の黒いドレスが地面に落ちた。
十字に切り裂かれてるので、おへそから下の下半身部分だけが。
﹁わわわ。すご∼い。今のはいつ斬られたかわからなかったよ∼﹂
﹁⋮⋮﹂
目を見開き驚いている少年。
すごいすごいと喜びぴょんぴょん跳ねるリリス様。
下着も左右に分割されて落ちたので、下半身まっぱです。
上半身は肩の部分にひっかかり落ちてませんが、真ん中が開いてる
ので胸が見えます。
﹁あ、ごめんね∼。待たせちゃった∼? 切れたドレス邪魔だから、
脱ぐまでもうちょっと待ってね∼﹂
862
そう言って上半身に残ったドレスも脱いでしまわれた。
﹁よ∼し。じゃあ、続きをしよっかぁ∼。次はどんなの見れるのか
なぁ﹂
﹁こ、今度は直接斬ってくれます!﹂
再び睨み合うリリス様と少年。
僕はその光景をボーと見つめる。
少年は真面目に向き合っているけど、視線が上下にチョコチョコ動
いている。
あれはきっと胸と股間を見てるよね。
高校生くらいだし、目の前に色白美女の裸があれば見るよね。
うんうん。仕方ないよね。
リリス様も両手を下げて掌だけ上に上げるのが戦闘態勢なので、正
面丸見えです。
あ、リリス様も下の毛は僕と同じで金色だ。
金髪美女が裸で日本刀を持った少年と向き合っている。
うむ、これは酷い!
さっきまであった戦いの雰囲気が台無しです。
僕も裸で戦ったことは何度か在るけど⋮⋮。
周りから見るとこれほど残念な光景だったとは⋮⋮。
自分の過去を反省しつつ、この雰囲気を正す為に行動する。
﹁リリス様、その∼、年頃の少年の眼に毒なので、服着ましょう。
863
服﹂
﹁うん? 少年∼? あの子、女の子じゃないの∼?﹂
美形で髪が長くて声も高いから確かに女の子っぽい。
黒スーツと胸のなさで男の子と思ったけど、あれ?実は女の子?
﹁ぼ、僕は男です!﹂
僕の疑問の視線にはっきり応えてくれる少年。
﹁だそーなので、服着ましょう。あの子、リリス様の胸とかが気に
なって堪らないみたいですし﹂
﹁そ、そんな事ありません! 誰が妖魔の裸など!﹂
声が震えてて動揺が丸分かりです。
あの位のお年頃は興味津々でも恥かしくて誤魔化すよね。
分かる。分かるよ。
﹁ねぇ、セシルちゃ∼ん﹂
﹁なんですか?﹂
影の服を作ろうとしてリリス様に止められる。
リリス様は何かを思いついたのか、楽しそうな顔です。
﹁あの子、男の子なら∼、食べちゃおっかぁ﹂
﹁はい?﹂
864
﹁だってぇ∼、今アルカちゃん居ないんだよぉ∼。折角地上に戻れ
たのに、アルカちゃんにエッチ禁止されてたから∼、今がチャンス
だと思わない∼? 今目の前に男の子が、しかも私の裸に興味があ
るっぽい子が居るんだよ∼﹂
﹁いやでも、今戦ってた相手ですよ?﹂
﹁うんうん。戦いの後ってエッチしたくなるよね∼。セシルちゃん
も、アルシアちゃんとエッチはしてたけど∼、アルカちゃんにオチ
ンチン禁止されてたでしょ∼? 今目の前に、オチンチンが在るん
だよ∼、ムズムズしない∼?﹂
僕はそんなにオチンチン好きじゃありません。
と言おうとしたけど、アソコがキュンとしてしまう。
指とか手とか、貝合わせとかはしてたけど確かにオチンチンはご無
沙汰です。
膣に入れられた時のあの特別な快感を思い出す。
でも、いや、う∼ん。
﹁うふふふふ﹂
﹁じょ、冗談ですよね?﹂
僕が悩んでる間に、リリス様は少年に近寄ろうとしていた。
口を半円に開けてえへぇと笑い、涎を垂らさんばかりの顔で。
﹁大人しく一緒に気持ちよくなるんだよ∼﹂
865
﹁くっ! 淫魔の類の妖魔でしたか!﹂
二人の戦いが今また始まる。
少年の攻撃は先程より必死になっている。
でもリリス様はその攻撃を軽くよけつつ、少年の衣服を剥ぎ取って
いく。
ネクタイ、ベルト、上着と器用にむしっていく。
必死に抵抗する少年の服を剥ぎ取っていく。
そんなシチュエーションに自然と興奮してしまう。
﹁って、僕はそんなエロくないし!?﹂
﹁セシルちゃん、そっちに逃げたよ∼。捕まえて∼﹂
﹁へ? あ、はい﹂
リリス様に殆ど剥かれた少年が僕のほうにきた。
残り下着1枚の少年は涙を浮かべながら向かってくる。
その顔を見て思う。
あ、かなりキュンとくるかも。
自分の中の新しい感覚に浸りながら、刀をよける。
よけたついでに少年をギュっと抱きしめる。
﹁ひぁ、は、離してください﹂
866
﹁あ、んっ、動くと胸に当たる﹂
胸に当たるというとビクっとした後固まる少年。
初々しさが可愛い。
﹁お、お二方を見逃すので、僕も見逃すと言うのは⋮⋮﹂
胸の谷間に挟まれながら言う少年に対する応えは︱︱。
﹁ダ・メ♪﹂
年下少年萌えに目覚めた僕は、よりしっかり抱きしめたのです。
◆◇◆
ズチュ、ズチュ、ズチュ。
﹁ンッ、ハッ、ンッ、ンン♪﹂
僕の秘所に少年のオチンチンが出し入れされる。
たくさんの愛液を垂れ流して喜ぶ僕のオマンコ。
ズチュズチュと美味しそうにしゃぶりつく。
﹁ンハァ、イイ∼♪ ねぇ、もっと上に突き上げてぇ、アンッ♪﹂
僕の言葉に応える様に、少年は腰を突き上げる。
騎乗位で股を開き跨る僕は、自然と少しでも奥にオチンチンを咥え
ようと腰を落とす。
867
バチュバチュバチュ。
お互いの肌が強く当たり、僕の愛液が弾ける様に音を響かせる。
最初は抵抗してた少年も、今は素直に気持ちよさを感じてくれてる。
やっぱりエッチは相手も気持ちよくなきゃね。
﹁ねぇ、君も、気持ちイイ?﹂
﹁は、はいっ。気持ち良くて、また、出ちゃいそうですっ﹂
僕が童貞を貰った少年は必死に腰を動かす。
それは少しでも奥に自分の子種を放ち、僕を孕まそうとするかのよ
うに。
﹁うん。ハァ、イイよっ。僕の子宮に、いっぱい出してぇ﹂
﹁だ、出しますっ﹂
言った瞬間腰を最大まで突き上げてきた。
僕もそれに合わせ腰を落とす。
男の本能なのか少年は僕を孕ませようと、一番奥に届いた所で射精
した。
ビュルゥゥゥゥ。
﹁ンハァァァ。子宮にあたるぅ。熱いぃぃ♪﹂
快感を得る為にオチンチンを子宮口で咥えてた魔母の体。
868
その僕の体の子宮に少年の熱い精子が注がれたまる。
ビュビュと最後まで出したオチンチンを、尚も離さず膣と子宮口の
動きで搾り取る。
﹁あぁ、搾り取られるっ。あっあっ﹂
口で吸う以上に吸い付く僕のオマンコの快感に白目を剥きかける少
年。
その反応を十分に楽しんでから、ゆっくりとオチンチンを抜いた。
﹁クスクス。僕を孕まそうといっぱい出してくれたけどごめんね。
僕を孕ませて良いのはアルシアさんだけなの﹂
︻任意受胎︼を使い妊娠しないようにしているので、孕む事はない。
でも孕ませようとした少年が可愛かったので、口にキス︱︱は出来
ないから、おでこにキスする。
﹁孕んではあげれないけど、その分一杯してあげる﹂
僕が再び繋がろうとオチンチンを見る。
すると既にオチンチンは見えなくなっていた。
﹁ンッ、アッ、セシルちゃんばっかりずるいよぉ∼。次は私の番な
のぉ∼﹂
リリス様が気持ち良さそうに少年のオチンチンをオマンコに咥え味
わっていました。
少年も気持ちイイのか、ハァハァ顔を赤くしています。
さっきまで僕で気持ち良くなってたのに、リリス様で気持ち良くな
869
ってる少年に嫉妬心が湧く。
﹁もう、いくら若いからって節操なさすぎだよっ!﹂
﹁あは∼。セシルちゃん、オチンチン待ってる間ぁ∼、オッパイ吸
って貰ったら∼?﹂
リリス様に勧められるままに僕は胸を少年の顔の前に出す。
すると少年は何も言わず乳首に吸い付いた。
﹁ンハァ。そんなに強く吸われるとぉ、乳首気持ちよくなっちゃう
ぅ♪﹂
慣れてないのか、少年は乳首を噛みながら吸う。
たまに強く噛まれすぎて走る痛みが快感を倍にする。
﹁うふふ∼。二人共気持ち良さそう∼。でもセシルちゃんばっかり
じゃなくてぇ∼、アン、そう、そう∼﹂
日も暮れた公園内で、僕達3人の肉の宴が続く。
◆◇◆
﹁ちょ、ちょっと、リリス様、次は僕の番ですよっ﹂
﹁えぇ∼、セシルちゃんはこの子の初めてを味わったじゃな∼い。
だから私が多くしてもいいでしょ∼?﹂
7,8回出して動かなくなった少年のオチンチンを取り合う僕ら。
動かないけど呼吸はしてるし、オチンチンは立ってるのでまだまだ
870
できるはず。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ。
﹁リリス様は激しくてこの子が可愛そうですよっ﹂
﹁セシルちゃんだって、最後の一滴まで搾り取ろうとしすぎなんだ
よ∼!﹂
ゴゴゴゴゴゴゴゴ。
オチンチンを握って譲らないリリス様。
僕なんて袋をマッサージして元気になるように労ってるのに。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ。
﹁この子は僕のオッパイが大好きみたいで一杯吸われたので、吸わ
れた分返してもらわないとっ﹂
﹁母乳とオチンチンミルクは別物なんだよ∼! って、さっきから
なんだかゴゴゴゴ煩いね∼?﹂
﹁そうですね。飛行機でも近くを飛んでるのかな?﹂
僕ら2人は少年の股間を握りながら音のする方、つまり後方を振り
返る。
﹁﹁!?﹂﹂
振り返った瞬間、体が固まる。
871
凄まじい恐怖で。
﹁たった数時間。数時間です。異世界へ来て、さすがに慎重に行動
するだろうと思ったのですがね﹂
真っ赤に燃える︱︱比ゆではなく︱︱アルカさんにジロリと睨まれ
るリリス様。
睨まれて体中から汗がドバッと出てらっしゃる。
﹁セシルさん﹂
﹁は、はひっ!﹂
名を呼ばれただけで、僕も体中から汗が出てきた。
﹁貴女には多少期待はしていました。ポンコツの召喚魔法に、ポン
コツに近しい考えの者を召喚するという効果をつけたらしくとも、
貴女には少しは期待していたのですよ?﹂
﹁そ、そうですか⋮⋮﹂
﹁ポンコツ様はしっかりミスをし、自分に似た力を持つようにとい
う呪いもついているようでしたが﹂
﹁そ、そうなんですか⋮⋮﹂
僕の魔母の力とか実は呪いでしたか。
﹁しかし、中身は別人であるので、貴女は節操がある将来魔族を背
負って立つ方になるかも。そんな事を思った時期が、私にもあった
872
かもしれません﹂
あったかもしれない。
つまり今は完全にないのですね。
ゴォォォォォオオオ。
いきなり炎となっていたアルカさんが燃え上がる。
﹁それがまさか、たった数時間眼を離した間に、現地の子供を襲い
性交をするとは!﹂
真っ赤な炎の柱となったアルカさんが近づいてくる!
と思った瞬間、僕はリリス様にお姫様抱っこされていました。
﹁あ、あれ? リリス様?﹂
﹁にににに逃げるんだよ∼! あそこに居たらアルカちゃんに殺さ
れちゃうんだよ∼!﹂
黒い影の羽を広げ都内の空を滑空するリリス様。
僕はリリス様の首に手を回しながら後ろを見た。
炎と一体化し、赤ではなく白い火を上げ飛んでくるアルカさん。
﹁リリリリリリリス様! 本気で怒ってるっぽいアルカ様がががが﹂
﹁ひぃぃいいいいいい﹂
現地の少年を性的に食べた上に逃げたからか、アルカさん本気で怒
873
ってそう。
日本に来て一日目。
僕とリリス様は必死にアルカさんから逃げていた。
﹁今日と言う今日は許しません。死になさい! ポンコツ!﹂
﹁レーザー撃ってきた!?﹂
﹁ふぁぁぁぁぁぁん。ごめんなさい∼∼。アルカちゃぁぁん﹂
一晩中、命を懸けて逃げていた。
◆◇◆
﹃昨晩、都内の上空に謎の発光体が︱︱﹄
﹃謎の光を見たという目撃情報も多く、レーザーのような光線を放
っていたという目撃証言も︱︱﹄
﹃昨日コンビニに行く途中にふと空を見たんですよ。そしたら凄い
速さで動く白い光があって、あれって絶対UFOですよね。マジで
︱︱﹄
都内にある首相官邸内の一室。
海外のVIP等が待合に使う部屋に二人の人物が居た。
一人は黒いスーツを着てサングラスをかけた男。
一見すると官僚や秘書にも見えなくはないが、足を組み椅子に座る
姿があまりにも粗野だ。
874
﹁ハッハッハ∼。これって昨日いきなり都内に現れた化け物の事だ
よなぁ。橘の坊ちゃんが討ち取り損ねたんだって? 天才退魔師と
か持ち上げられて調子にのってっからなぁ。だから失敗するんだよ﹂
男はTVのニュースを見ながら楽しそうに笑う。
﹁相手は西洋の魔。今は力を抑えているのか居場所が特定出来ない。
出現時の霊力は下位の魔神や神獣に匹敵するとお館様は言ってた﹂
部屋に居るもう一人の人物が男に抑揚なく話す。
上は白、下は赤色の和服︱︱巫女装束を着た女性。
﹁日本の退魔の総本山、おたくのお館様って長野に居るんだろ? なのに東京で起きた事がわかるのかよ?﹂
﹁葉雲家の御当主なれば。或いは﹂
﹁或いは、長野に居てもわかるほどの化け物ってか。橘の坊ちゃん
も、失敗して勉強になったかもなぁ。大体葉雲家の連中も政府の連
中も、ガキに第二位とか与えて頭おかしいっつーの﹂
自分の上司の悪口を言い始める男を、眼を鋭くして見る女性。
悪口の興が乗ってきた男に一言告げる。
﹁勇矢君、食べられてしまったそうですよ﹂
﹁なっ!? お、おい、殺されたってのか! 畜生! だから子供
に化け物退治なんてさせるんじゃねぇと⋮⋮﹂
875
聞いた瞬間、同僚たる高校生退魔師が死んだと思い明らかに悲しん
でいる。
その姿を堪能した後、真実を語る。
﹁性的に食べられただけで元気なようですよ。ただちょっと、言葉
の受け答えが悪いのと、衰弱しているようですが﹂
﹁は? な、なんだ、生きてるのか。良かったな、おい﹂
悪ぶってる癖に誰よりも良い大人な男を見て、巫女服の女性は思う。
メンドクサイなこいつ。
今も小声で、ガキから精を貪るとか許せねぇ、とか言っている。
機密治安維持議会。
日本国内の妖怪や妖魔、時には神とも戦う政府機関。
2人はそこに所属する退魔師だ。
﹁よっし。坊ちゃんの敵討ちを兼ねて、行くとすっかね。葉雲の﹂
男は部屋に置いていたスーツケースを持って出て行こうとする。
それを見て巫女服の女性、葉雲幽羅は呆れを篭めて言い放つ。
﹁現状の報告、それと今後の方針と対策を総理と話し合ってからで
すよ。桑原さん﹂
﹁げぇ。メンドくせぇ﹂
サングラスの男、桑原泰斗は心底面倒くさいと思う声を出す。
それに対し幽羅はメンドクサイのはお前だと言い掛けて止める。
876
﹁ガキである勇矢君ですらしてた事です。大人な桑原さんは、快く
してくれますね。仕事ですし﹂
仕事の部分に力を入れて言う。
桑原は渋々といった体で部屋を出て、足を総理がいる場所へ向けよ
うとして止まる。
悪ぶって仕事もダルそうにする桑原に幽羅が問いかける。
﹁どうしたんですか?﹂
﹁総理って、どこ居んの?﹂
こいつ本当にめんどくせぇ。
そう思いながら、幽羅は先導する。
﹁他所の国の化け物に、日本の本気を味わわせてやるとしますかね﹂
本気の瞳をサングラスに隠す男が、静かに官邸内を歩いて行った。
877
第54話 年下ってイイよね︵後書き︶
ここ数日熱があり、薬で元気な時間で書いたのですが!
;
書き終わってさらっと読んだら、最後の方別作品のようになってい
た!?
番外編は全然違う感じになってるなー︵
セシルさんはいつもどおりのアホの子ですが。
ご意見ご感想お待ちしております。
878
閑話 セシルvsファンタジー
朝日が眩しい中、トボトボとアルカさんの後を歩く僕とリリス様。
あれから僕達はアルカさんに捕まり夜明けまで説教されました。
唆したのはリリス様と言う事で、僕は東京湾の海水による水攻めの
みで済みました。
リリス様の方は⋮⋮思い出すだけで震えがくるほどの折檻を⋮⋮。
﹁ね∼。アルカちゃ∼ん。ま∼だ∼?﹂
⋮⋮受けたはずなんですが、いつも通りです。
ちょっとリリス様を尊敬します。
﹁もうすぐです。黙って着いてきなさい﹂
リリス様への折檻が終わると﹁行きますよ﹂と言ったアルカさんに
ついて来ているのです。
ですがどこに行くのか不明です。
暫く歩くとアルカさんが大きな建物︱︱高層マンションの敷地に入
っていきます。
そして玄関部分の壁のボタンを操作してドアを開けて進んでいきま
す。
オートロックをアルカさんが自然と操っている!?
思わず眼を見張り驚いてしまいます。
879
僕ですら、オートロックのマンションの入り口の開閉操作なんてし
た事ないのにっ。
﹁セシルさん、行きますよ﹂
驚いて止まった僕にエレベーターを止めながら声をかけてくるアル
カさん。
ファンタジーの住人がエレベーターも自然と使っている!?
﹁は、はい﹂
驚きつつも、お説教の恐怖からか勝手に返事をしてしまう。
しかしエレベーターに乗った時にハッと気づいた。
﹁ア、アルカさん。勝手に建物に入ったり、部屋を使用するのは犯
罪なのですが!﹂
きっとあれですよ。
町の人を観察し、ここが人の住む場所と気づいた。
そして空いてる部屋があったので勝手に使う気なのだ。
優秀なアルカさんの事。
オートロックなども住民の行動を見て覚えたのだろう。
だが!
そんな不法占拠が許されるのはファンタジーの世界だけ!
︵注:ファンタジー世界でも許されてません︶
ここは常識人である元日本人の僕が蛮行を注意せねば!
880
そう意気込んだのですが。
﹁ちゃんと役場へ行き、ここの部屋を紹介されて使用許可を取って
るから大丈夫です。役場の方がUR都市⋮⋮なんとかと言うところ
の人を紹介してくださり、正式に住むことを認められています﹂
﹁なん⋮⋮ですと⋮⋮﹂
役場。
区役所にでも行き、そこでちゃんと紹介されて許可つきって事です
か。
住む場所とかどうしようとか思って途方に暮れてた僕に比べ、なん
という真っ当な手段。
僕が地元なんだから、皆のためにしっかりしなきゃ。
と思ってた気持ちにヒビが入る。
﹁まぁ、外国の人は云々∼と最初断られたので、簡単な催眠の魔法
を使いましたけどね﹂
﹁あ、そうですか﹂
何やらファンタジー的に物騒な手段な気もしなくもないですが。
僕の気持ちに入ってたヒビが少し治ったのでスルーしました。
◆◇◆
アルカさんに案内されて最上階25階の部屋の一室に入る。
そこは新築のように綺麗なフローリングに白い壁。
881
バス、トイレ別で部屋も3つほどあって、キッチンはIH。
冷蔵庫やエアコン、キッチン前にはテーブル等の最低限の家具があ
る。
﹁と、都内、ここはたぶん港区で⋮⋮3LDKで⋮⋮家賃っていく
ら!? っていうかそもそも賃貸!? 分譲マンションとかじゃな
いの!?﹂
余りに予想外な事態と豪華な室内に混乱する僕。
日本に住んでたときはワンルームのユニットバスなお部屋でしたも
の。
こんなブルジョワな人が住みそうなお部屋をみたら混乱しますとも。
﹁ふぁぁ∼。朝から煩いのね∼ん﹂
﹁むにゅ。おはよう。ママ﹂
僕が混乱していると部屋の一室からリオとアウラが出てきた。
﹁お、おはよう。リオ、アウラ﹂
驚いた状態で挨拶だけする。
2人は挨拶した僕を見て、そのまま洗面所に入る。
そして聞こえるジャーという水音。
﹁って、なんで現代日本の住宅に順応して普通に朝、顔を洗ったり
する感じになってるの!?﹂
ファンタジー世界代表とも言えるサキュバスにアルラウネ。
その二人が普通に寝て起きて、蛇口捻って顔洗うとかなんなの!?
882
﹁さっきからセシルちゃん、何をそんなに驚いてるの∼?﹂
テーブルに座り、コップに注いだ飲み物を飲みながら問いかけてく
るリリス様。
既にここに馴染んでいます。
﹁朝御飯はどうしましょうか。特に用意してないのですが﹂
﹁あ、大丈夫∼。昨日可愛い男の子の精子をいっぱい食べたから∼﹂
﹁デモンマザー⋮⋮。魔母の能力とは言え、性欲と食欲を同時に解
消するのはやられた方には迷惑ですよ﹂
﹁ンヤー。魔母ってば淫魔みたいなのねん﹂
﹁それよりも悪辣ですよ。リリス様やセシルさんの場合、精子を取
り込めば体力や魔力を回復するのは淫魔と同じですが、さらに相手
の生物情報を体内に蓄積し、その力さえ取り込むんですよ﹂
﹁リオママ、そろそろ時間﹂
﹁ア∼。そうねん。私とアウらんはお仕事に行ってくるのねん﹂
﹁行ってきます﹂
僕を取り残し、皆は普通に雑談して和んでる。
リオとアウラは身だしなみを整えたのか、お仕事に出かけて︱︱
﹁って、お仕事!?﹂
883
﹁昨日、住居を確保した後、町に仕事を探しに出たのですよ。その
時にリオティネックとアウラは仕事を見つけたようです﹂
それを聞いて、二人が出た後のドアを凝視してしまう。
日本に来て初日で仕事を見つけたですと⋮⋮。
﹁それと、私も役場の方から仕事の紹介状を貰っているので面接に
行ってきます。二人は寝てなくて眠いでしょうから、ここで私が帰
るまでゆっくり寝ていてください﹂
アルカさんまでお仕事の面接ですと!?
僕は昨日、アルバイトとか断れて何も成果がないのに!?
では︱︱と赤い髪をなびかせ颯爽と出かけるアルカさん。
残されたのは無力なリリス様と僕。
﹁ふにゃ∼。それじゃあ眠いから寝るね∼。おやすみぃ∼﹂
リリス様は炎の魔人様が居なくなり安心したのか、ソファに横にな
って寝てしまう。
﹁娘のアウラでさえお仕事を見つけたというのに、僕は眠いからと
寝て良いのだろうか⋮⋮﹂
ファンタジーの住人よりも成果を出せないのは、元日本人としての
沽券に関わる。
僕は元日本人として負けない!と心に誓った。
そして今の思いを全力で声にする。
884
﹁明日から本気出すんだよっ!﹂
眠かった僕は大きなソファの上に、リリス様と一緒に寝ました。
背もたれを倒せるソファベットで良かったです。
885
第55話 それぞれの日常 その1
日本に着てから1週間が経ちました。
晴天の中、僕はベランダで洗濯物を干して︱︱。
﹁⋮⋮僕って、新しい家に来るたびに、洗濯物干し担当のような⋮
⋮﹂
いや、今回は今までとは違う。
﹁くくく。洗濯機と言う文明の利器を手に入れた僕は、洗濯全般を
任されているんだよっ!﹂
正確には家事全般ですけどね。ふふふ。
ベランダに仁王立ちしながら、役立ってる嬉しさで笑みがこぼれる。
洗った衣類を干そうと真っ赤なショーツに手を伸ばす。
鋭角のハイレグで綺麗な華の模様が透けている真っ赤なショーツ。
背面部分の布地も少なく、お尻の大部分は見えそうな大人の下着。
﹁きっとアルカさんのだなぁ∼﹂
アルカさんの大人な下着を丁寧に洗濯バサミに挟んだ後、水玉の下
着を手にとる。
﹁アウラは見た目女子高生くらいだし、もうちょっと可愛い下着に
してあげるかなぁ? いや、でも、ママとしてはいつまでも水玉く
886
らいで居て欲しいかも﹂
愛娘アウラの笑顔を思い出しながら挟む。
基本的に無表情なので、想像上の笑顔ですけど。
次に黒い下着を手にとる。
スベスベの手触りでうっすら透けてる上に、縦の長さが凄く短くて
何とか割れ目を隠す程度で、お尻の割れ目はしっかり見える長さ。
﹁すごいローライズな下着。リオは下着を持ってないし、これはリ
リス様かぁ。エロイなぁ﹂
大魔王様のエロ下着に感心しつつ干していく。
﹁セシルちゃ∼ん、お腹空いたよぉ∼﹂
僕が洗濯物を干し終わると、部屋の中からリリス様の声が聞こえた。
﹁はいはい、今お昼ご飯作りますよ∼﹂
﹁頼むんだよ∼﹂
一瞬だけ僕に笑顔を向けて、すぐにTV観賞に戻るリリス様。
日本に着てからアルカさん、リオ、アウラの3人はお仕事をしてい
ます。
そして僕は家の家事全般を任されています。
掃除機、洗濯機、自動設定のお風呂等々の文明の利器がある為、僕
でも家事ができるのです!
887
そんな中、リリス様だけは特に何もせず、毎日TVを見てゴロゴロ
しています。
元の世界に戻る為の魔力を回復する為らしいです。
﹁んーと、お昼はうどんでいいですか?﹂
﹁うんうん。うどんって何か知らないけど∼。ばっちこいなんだよ
∼。アルカちゃんより美味しく作れないのは我慢なんだよ∼﹂
一瞬、小姑や姑か!と思いました。
嫁の料理にさり気無く嫌味を言うイメージで。
﹁まぁ、大丈夫ですよ。食べれる物が出来るはずです﹂
火加減はスイッチ一つでお任せ。
作り方は袋に書いてある。
一番大事な味付けは付属の調味料とか、別売りのめんつゆ。
ファンタジー世界と違い、日本では丁寧に作り易くなっているので
す!
なので味付けとか出来ない僕でも食べれる物が出来ます。
それでもたまに失敗するんですが、でもでも大丈夫!
﹁いざとなったら、秘密兵器、かっぷ麺を食べましょう﹂
﹁わかってるよ∼。セシルちゃん、3回に1回はお料理失敗するも
んね∼﹂
くっ。この姑は嫁に厳しい。
888
僕は姑リリス様にお昼ご飯を作りながら思いを馳せる。
アウラ達はちゃんとお仕事できてるのかなぁ。
アルシアさんと子供達は、元気にしてるかなぁ。
ボーと麺が茹るのを待って居るとリリス様が大きな声を出した。
﹁あっれ∼? TVにリオちゃんが映ってるよ∼?﹂
◆◇◆
∼∼それぞれの日常 リオティネック編∼∼ ﹁くぁぁ∼﹂
異世界の国、日本に来てから数日。
与えられた一人部屋で眼を覚ます。
眼を半分開けてベッドから這い出し、空中へ浮かぶ。
そして部屋を出て洗面所に向かい顔を洗う。
朝7時になったばかりのリビングに向かうとセシりんが居た。
﹁リオ、おっはぁ∼って!? は、裸でふわふわしちゃいけません
っ!﹂
﹁ホエ∼?﹂
セシりんに言われて自分を見ると、確かに真っ裸だった。
どうやら寝てる最中に影を引っ込めてしまったらしい。
889
影を出して局部を覆おうとすると視線を感じた。
セシりんがジーと私を見ていた。
前から思ってたけど、セシりんって女性が大好きよねん。
オチンポ好きだから男も好きかと思ったら、肌を許したのは女の子
みたいなレムりんと、美形過ぎて女性にすら見えるレオたんだけだ
し。
がっちりした男らしい男には、むしろ一歩引いて怯えてるみたいな
のよねん。
﹁セシりん、朝御飯の用意してくれてるの∼ん?﹂
﹁え? あ、うん。ふふふ、トーストを作ってるんだよっ﹂
でっかい胸をえっへんと張るセシりん。
あんなにすごい武器が在るのに、男性が苦手なんてもったいない。
あぁ、でも竜とはエッチしてたし、単に人型の男が苦手なのかしら
ん?
セシりんが朝御飯を用意してくれる間、のんびりそんな事を考えて
いた。
するとセシりんから悲鳴があがる。
﹁にゅわぁぁ!? 時間設定間違えて真っ黒トーストに!?﹂
どうやら朝御飯はないようだ。
◇
890
﹁それじゃあ行ってくるのね∼ん﹂
﹁いってらっしゃ∼い﹂
エプロン姿のセシりんに見送られ仕事に出る。
住居の通路から飛んで行こうとして思いとどまる。
﹁ンイ。セシりんがこの国では空を飛んだり魔法を使ったりはダメ
って言ってたわねん﹂
良く分からないが、この国は魔法がないらしい。
魔法がないとは一体どういう意味かわからない。
さらに、魔物とか魔族も居ないので普通の無力な人間の振りをして
ね。
そう言われていた。
﹁メンドくさいわん⋮⋮﹂
よくは分からずともセシりんの命令である。
私は仕方なくエレベーターと言うものを使い降りることにした。
ここにきて1週間経つが、歩いて移動は未だに慣れない。
◇
﹁ンイ∼。遅いわねん﹂
朝に迎えに来ると言われているので、待ち合わせ場所で待機中だ。
しかし遅い。遅すぎる。
891
あまりに遅いので、仕事のパートナーから渡されたケータイで時間
を確認する。
このケータイという物は、時計の代わりになる上に離れた相手とも
話すことが出来る魔導具だ。
﹁セシりんは魔法はない国って言ってたけど、魔導具はあるのねん﹂
四角い板状のケータイをクルクル回しながら周りを見渡す。
私が今立ってるのは田町駅と言う建物の近くの道だ。
朝で仕事に向かうのか大量の人間が歩いていた。
同じ様な服を着た凄い数の人間たちが行き来している。
﹁人間の国って言っても、これだけ人間族しかいないと気持ち悪い
わねん﹂
エルフやドワーフ等の親人間族派の種族すら居ない。
徹底した選民主義なのか、まるで昔の法国のようだ。
私が街中観察をしているとキキキィィと音を鳴らした車が目の前に
止まった。
この車と言うのは馬車の代わりの乗り物だそうだ。
生物ではなく、ゴーレムのような魔力を消費する魔導人形でもない。
なのに馬車よりも早く動いて人を運ぶというのだから、この国の魔
導技術は凄い。
﹁やぁおはよう﹂
車の中からはちょっと頼りなさそうな優男が出てきた。
892
そして私に手をヒラヒラしながら挨拶してくる。
私はその優男に向かい文句を言う事にした。
﹁ンガーー! 遅いのよん! 約束は7時30分だったはずなのよ
ん!﹂
﹁あ、いや、そのね。なんて言うか、はは⋮⋮。あ! 今日は特別
な仕事だから急がなくっちゃ! ほらほら、早く乗って!﹂
この優男こそ私の仕事のパートナー。
彼は少し困ったように笑いながら車のドアを開ける。
もっとしっかり文句を言いたかったが、諦めて車に入る。
どうせ彼は私の言う事を聞かない。
出会った時からそうなのだから。
﹁えーとね、昨日も話したけど、今日からお昼の番組のリポーター
だからね。気合を入れて頑張ろう!﹂
﹁ンヤー。はいはい、頑張るわん﹂
車を運転しながら、どこか緊張した様子で話してくる。
﹁デビュー直後に昼の番組のリポーターなんて、やはり僕の眼に狂
いはなかった。町で君を見かけたときスカウトしてよかった﹂
緊張から一転、興奮して話し出す。
出会った時から変わらず、勝手に自分で盛り上がっている。
﹁そう、町で君を見かけた時、アキバのアイドルになれる! そう
893
思った僕の眼に狂いはなかった! ピンクの髪に巻き角、数年前に
映画化されたカオスブレードのリオティネックその物だった! 凄
いクオリティのコスプレだ!﹂
﹁ンムー。何度も言うけど、私は本名がリオティネックなんだけど
ん﹂
﹁うんうん。イイね! 徹底したキャラ作り! 細部まで再現され
た神父服! 映画版のリオそのものだ。でも残念だよねー。何故か
映画を作って大反響だったのに、ゲームもアニメも続編作らず会社
がなくなっちゃったんだよね﹂
彼は私の言葉に相槌をうってるようで、実は全く聞いていない。
今までの彼の話を聞いて分かったのは、なにやら作り物のお話の中
で、私と同名の登場人物がいると言う事だ。
﹁僕さ、ゲームの影響を受けて可愛いアイドルを育てるんだ! っ
て意気込んで芸能事務所に就職したのに、やらされるのは雑用ばか
りでさ。いや実際、可愛い芸能人とかは一杯いるんだけど、あのゲ
ームのように輝く人っていなかったんだよね﹂
﹁ハァ∼。はいはい、わかったわん。その話は5回目だから。プロ
デューサーさんって呼ばれたかったのよねん﹂
﹁そう! そうなんだよ! それで町で君を見たとき一気に引き込
まれてさ。社長にも君を紹介したらオッケーだったし、そしてデビ
ュー数日で昼番組のプロデューサーさんに眼をかけられて抜擢なん
て、僕の目に狂いはなかったね!﹂
会話をしているようで会話になっていない。
894
彼の話も感情優先でハチャメチャだ。
でも一つ気になったことがある。
彼が言う、私に引き込まれたというのは淫魔の魅了の効果だと思わ
れる。
私達淫魔は異性を魅了する魔力を放っている。
その魔力の効果だと思う。
﹁しかし変よねん。魅了は魔眼も含めて最大限抑えてるはずなんだ
けどん﹂
セシりんに、日本に居る間は魅了とか催眠魔法とか禁止!と言われ
ているから。
﹁魅了? うんうん、そうだね! 僕も社長もプロデューサーさん
も、君に魅了されちゃったかもね!﹂
車の外の景色を見て溜息をつく。
意図しないで魅了されているとしたら、淫魔としては微妙な気分だ。
﹁ハァ⋮⋮﹂
この国の人間って、耐魔力が低いのかしらん。
面倒な事にならなければ良いわねん。
たまたま彼にスカウトされて就いたアイドルと言う仕事にも不安を
感じる。
﹁そうそう、とりあえず芸名はあーる、あい、おーでリオでいく事
になったから﹂
895
﹁ンム∼。わかったわん﹂
﹁あ、それとアキバ系的にはそのしゃべり方はご褒美なんだけど、
お昼の番組とかではダメだから﹂
﹁はいはい、わかったわ。マネージャー﹂
﹁よーし! 頑張っていこう!﹂
◆◇◆
∼∼それぞれの日常 アウラ編∼∼
朝起きて食卓へつく。
私の前には透明な布で覆われたご飯があった。
﹁アルカさんが、子供にはちゃんとしたご飯をって言って作って行
ったんだよ﹂
ママが目の前のご飯について説明してくれる。
どうやら私用のご飯で間違いないようだ。
透明の布︱︱ラップを取るとポワッと一瞬熱風が吹きつけた。
﹁うひょ!? ラップを取ったら温め機能!? 熱と炎を操る魔人
様、科学を必要としないとは⋮⋮﹂
ご飯が暖かくなった事に驚くママ。
896
うひょっと言って変なポーズまでしていた。
変な叫びやポーズをよくするママ。
最近色々残念だと分かってきたママを見ながらモグモグする。
﹁もぐもぐもぐ﹂
﹁美味しい?﹂
﹁うん﹂
うんと言うと笑顔になる。
普通に笑うとママの笑顔は凄く綺麗。
私はママがいるキッチンを見る。
焦げた、いや、炭化したパンや卵の残骸があった。
ここ日本に着てから、私の為にご飯作りを頑張っているみたい。
結果は頑張りすぎて上手く行ってないみたい。
でも私の為に頑張ってくれるママが、私は大好きだ。
◇
﹁よしっ。ちゃんとしてる。うんうん、可愛い﹂
お仕事に向かう私の服を、ママが玄関で整えてくれた。
ママの黒いドレスと正反対の白いドレス。
ふにふにしたフリルが一杯ついていてムズムズする。
897
私はこの服があまり好きじゃない。
﹁アウラ、可愛いっ!﹂
本当はアルカさんみたいなピシっとした服を着たい。
でもママが大好きみたいなので、この服を着る。
ママは私をギュゥッと抱きしめる。
日頃私の為に頑張ってくれてるので、避けないで抱きしめられたけ
ど、ちょっと後悔。
﹁ママ、苦しい﹂
柔らかくてプニンプニンのママの大きな胸。
その胸が私の顔を覆い、柔らかさの為に形を自由に変えて私の口を
塞ごうとする。
﹁え、あ、ごめんね? アウラがあまりにも可愛かったから⋮⋮﹂
シュンとして私から離れるママ。
いつもにこっとしてるママの落ち込む顔を見ると罪悪感がわく。
それと同時に私が守らなきゃって思う。
﹁ママ、アルバイト行ってくる﹂
﹁うん、先輩に色々聞いて頑張るんだよ? 無理しなくて良いから
ね。困ったりしたらママに相談してね。嫌な事があったら、帰って
きて良いからね。後始末とかはママがなんとかするから。それと︱
︱﹂
898
心配性なママの言葉をゆっくりと聴く。
私がお仕事してる場所に、ママは見学に来たので場所を知ってる。
もし私に何かあれば真っ直ぐに飛んでくるはずだ。
周りの迷惑も考えず、きっと本当に真っ直ぐ飛んでくる。
だから私はしっかり頑張ろうと思う。
﹁ママ、そろそろ行かないとまずいから行く﹂
﹁あ、うん。気をつけてね﹂
実は人見知りなママの為に、私がしっかりお金を稼ぐんだ。
◇
私の仕事場の建物の中は喧騒に包まれていた。
﹁アウラちゃ∼ん、3番テーブルの注文お願い﹂
﹁分かった﹂
店長に言われ3番テーブルに向かう。
テーブルの前に来て注文用の道具を取り出す。
﹁ご注文は﹂
私が一言発すると、テーブルの男達が一斉に私を凝視した。
鋭い視線を私に向ける4人の男。
その目は真剣そのものだ。
899
私と男達の視線がぶつかり合う。
喧騒の中で奇妙な静寂の空間が出来上がる。
ソコに一人の乱入者が現れた。
﹁くぉら! あんた達! アウラちゃんをボケーと見てないで、と
っとと注文しなさい!﹂
先輩の響さんが男達︱︱お客様を怒鳴り上げた。
﹁ごめんごめん。しかし見つめたくもなると言うもの﹂
﹁リアル金髪万歳﹂
﹁ロリ顔、コホン、童顔なのも素晴らしい﹂
﹁さらに無表情キャラで巨乳とか、属性盛りすぎでしょ。よくやっ
た!﹂
男達が口々に語りだした。
お客様である男達を無視して響さんが私に顔を向けた。
﹁あー、アウラちゃん。この変態共は、すぐに私達にパスして良い
から。うちってメイド喫茶だからさ、こういうの多いんだけどね。
その中でもこいつらは変態だから気をつけて﹂
私を熱い眼で見て忠告してくれる。
響さんは良い人だ。
900
﹁大体、金髪ロリ顔巨乳を腐った男共に見せるのが間違ってるのよ。
折角私がお仕事を探してるアウラちゃんを町で偶然見つけたってい
うのに。いや、偶然ではないわね。運命ね。金髪ロリ巨乳美味しそ
う、うへへ、って思って声かけたら、アルバイト探してたとか、私
と結ばれる運命、ぎゃ﹂
謎の言葉を発していた響さんを突如オボンが襲った。
﹁響、さっさと仕事に戻りなさい。アウラちゃんは8番テーブルの
お客様に、ラブラブオムライスの指定が入ってるから、そっちをや
ってきて﹂
﹁分かった。店長﹂
響さんを襲ったのはこの店で一番偉い店長だった。
私は店長に言われた通り、オムライスにケチャップをかけに行く。
私のお仕事はこのお店のウェイトレスさんだ。
昔ママもラーメン探しの旅の途中でやったことがある仕事らしい。
ママと同じ仕事と思うと、ちょっと嬉しい。
﹁あ、あ∼。私の天使が、天使が行ってしまうぅ﹂
﹁響、あんたちゃんと仕事しなさい﹂
﹁なっ!? 店長! 仕事してましたよ! メイド喫茶にくるよう
な、美少女萌え∼な不埒な男共からラブリー金髪ロリッ子巨乳天使
を守る為に! うへへ、私が男達から守って仲良くなって、あの美
肉を、ギャァ﹂
901
﹁うちの店を全否定した上に、何より不埒なのはあんたでしょ﹂
﹁響ちゃんなぁ。見た目は可愛いのに、中身が可哀想だよなぁ﹂
﹁何を!? あんた達みたいなヲタクが何を言いますか! ええぃ
! 見るな! 私のラブリー天使を見るでない! ついでに私をそ
んな哀れな者を見る眼で見るな! ギャァ﹂
﹁響ちゃん、腐女子より腐ってるもんなぁ﹂
私が一生懸命ケチャップでハートを書いている間、響さんの楽しそ
うな声が聞こえる。
﹁ん、出来た﹂
﹁ありがとう。アウラちゃん﹂
私が書いたハートを見てお客様が笑ってくれた。
それが嬉しくて、同時に恥かしくて下を向いてしまう。
﹁あぁ、可愛い。私の天使が恥かしがって︱︱﹂
声をする方を見ると、響さんが店長に店の奥へ引っ張られていった。
﹁アウラちゃ∼ん。写真の注文が入ったからこっちきてくれる∼?﹂
﹁分かった﹂
別の先輩に呼ばれた。
902
まだまだどうすればいいか分からない。
でも先輩もお客様も優しくて楽しい。
ママの為にも、この仕事を頑張ろうと思う。
◇
﹁ただいま﹂
﹁おかえりぃ∼∼。アウラァ∼∼∼﹂
私がお仕事から帰るとママが玄関へ駆けて来た。
私は笑顔で迎えてくれたママを︱︱スっと身を引いて避ける。
﹁ひょわ!?﹂
玄関の扉とぶつかるママ。
かなりの勢いがあったので痛いかもしれない。
でもきっと大きな大きな胸があるので大丈夫。
﹁な、なんで避けるのぉ﹂
やはり大丈夫だったママが涙目で聞いてきた。
﹁ビックリしたから?﹂
﹁自分でも疑問形!?﹂
特に理由なく、反射的に避けただけ。
その後、私が靴を脱ごうとしたらママが靴をはいていた。
903
﹁ママ、どこか行くの?﹂
﹁夕飯の買い物に行くんだよ。リリス様がTVで見たカツ丼を食べ
たいって言うから、材料を買いに﹂
ママにそっくりのリリス様。
魔力を回復する為にこの場所から動けないらしい。
ママより偉い魔族の人なのに、ママより働いてない。
偉い人は働かないのよんってリオママが言ってた。
でも店長は偉いのに働いてた。
良く分からない。
ボーとしてた私にママが声をかけてきた。
﹁アウラ、一緒に行く?﹂
﹁うん﹂
私はすぐに頷いた。
ママとお出かけは嬉しい。
カルドにいた頃は、ママは買い物なんていかなかった。
だからママと買い物は初めてだ。
私はママと一緒に地上を歩く。
近所にあるスーパーに向かうらしい。
ママと手を繋ぎながら歩く。
道行く人達が私とママを見てくる。
904
仲良しの母娘を見てか微笑んでる人もいた。
ゴスロリ親子と言ってる人もいたけど、ゴスロリってなんだろう。
ママに聞こうと顔を上げた瞬間、音が消えた。
ふと周りを見ると、周りの道に居たはずの人達も一切居なくなって
いる。
動いてた車という物も全部止まっていた。
何が起きたか分からず、ママを見ると前を見つめて固まっていた。
私もママと同じく前を見た。
﹁位相をずらし、任意の存在だけを中に取り込む結界です﹂
私達から10mくらい離れた場所に一人の女性が居た。
﹁この結界内では私達以外は誰も居ません﹂
私を勇者と認めてくれたミレイアさんと似た服を着た女性。
﹁やっと見つけました。まさか地を流れる霊脈を歪ませていたとは﹂
ママは厳しい顔で前にいる女性を見つめる。
﹁この地に仇為す魔よ。覚悟してください﹂
905
第56話 それぞれの日常 その2
∼∼それぞれの日常 桑原編∼∼
﹃まだ進展がないのかっ!﹄
﹁いや、だから一生懸命探してはいるんすけど⋮⋮﹂
﹃いい訳はいい! さっさと化け物の居場所を掴んで退治しろ! 早くしないと冬の査定がどうなるかわかってるな!﹄
﹁げっ、いや、所長、見つからないのは俺だけのせいじゃ﹂
ツーツーツー⋮⋮。
上司の一方的な怒鳴り声に辟易しながら、通話が切れたケータイを
見やる。
﹁外に居る時まで連絡がついて怒鳴られるとか。誰だこんなもん作
ったのは﹂
1週間、自分なりに都内や近隣の県を探し回っている。
都内に現れ、橘の坊ちゃんを負かした妖怪だかアヤカシだかを討つ
為にだ。
しかし基本的に一般人出身な自分が﹃怪しい化け物﹄を見つけられ
るわけがない。
葉雲やら橘やらと違い、陰陽道や神道やらを習得しているわけでも
ないのだ。
906
元々国家公務員試験に合格し、ある省に入省するはずだった。
それが何やら適正があるとかで訳も分からない内に拉致され、化け
物のような女と無理矢理戦わされ、鍛えられ、気づけば退魔官とか
いう謎の役職になっている。
ちなみに戦わされた化け物女は、今の仕事のパートナーである葉雲
幽羅だった。
セーラー服を着た女子中学生と戦えと言われた時は﹁あれ? この
国の役人はアニメを見すぎなのか?﹂と思った。
思った数分後にボコボコにされたのは今も忘れない。
まぁ、自分自身もアニメやゲームが好きだったので燃えていた。
自分に隠された才能が有り、まるでヒーローのごとく化け物退治。
これに燃えない男がいるだろうか。否!居ない!
そんな感じで10年以上化け物退治をしてきた。
20代のうちは積極的に、30代前半は経験を生かしてより効率的
に。
だが現在30後半となった今は⋮⋮、
﹁そろそろ現場じゃなくて、本部で指揮がしてぇなぁ﹂
都内の池袋を歩きながらぼやいてしまう。
1週間もあちこち歩いて自分の眼で直接見て探すという、地道な作
業をして成果がない。
大きなスーツケースを引きずりながらの散策は目立つし、重いし、
歩きにくい。
30も後半になった今、現場でヒーローをするより後方で指揮がし
907
たい。
20代の頃と違い、俺様ヒーローだぜ!のノリはそろそろきつい。
年齢的に。
さらに化け物と直接対決しても悲しいかな、特別ボーナスなどが出
るわけでもない。
公務員扱いなので一定の給料で決まったボーナスだ。
表向き成果主義で評価点とかもあるが、あれはマイナス方向にしか
働いていない気がする。
﹁ハァ∼﹂
闇に潜む妖魔を倒すヒーローの現実的現状を省みて、ついつい足を
止めタバコに火をつける。
﹁ケータイで上司に怒られて、ボーナス査定で脅されるヒーローっ
てなんなんだろうなぁ。ハ∼﹂
タバコの煙で輪を作ったりしていると肩をポンポンと叩かれた。
振り向くと警官2名が立っている。
やべぇ、今俺、何か不審な行動をしてたか?
現代社会は表向きは妖怪等は居ない事になっている。
当然退魔官等の妖怪退治を生業にする者もだ。
不審者としてスーツケースの中身を見られたら色々いい訳が出来な
い。
仕事で使うといっても、表向きには自分が所属する﹃機密治安維持
議会﹄などと言う組織はないのだから。
例え警察に捕まっても国の方から手回しされるだろうが、場合によ
っては切られる可能性がないとは言えない。
908
﹁な、なんですか?﹂
心臓の鼓動が早くなる。
警官は何か紙を取り出して渡してきた。
それを受け取った直後に警官の口が開く。
﹁ここ、喫煙禁止エリアだからね。罰金ですよ﹂
﹁あ、そーすか⋮⋮。すいません﹂
◇
罰金を払い開放され、再び歩く。
しかしなんだかもー、やる気が起きない。
サングラスを通す町並みが若干暗くなった気がする。
自分は真面目に世の為、人の為に仕事をしていると言うのに。
腕時計の時間は丁度12時だった。
ここは昼飯ついでに気分をリフレッシュする事にした。
﹁虎の前にあるつけ麺屋に行くか。今日はパーッと大盛りでいくか
? 食った後、久しぶりに虎さんのところに寄って、あぁ∼、確か
場所移転したんだっけな。どこだったか﹂
自分を元気付ける為にあえて声に出す。
すぐ近くに居た若い女性達の視線を無視して、目的の店に向かう。
目的のつけ麺屋につくと食券を買って席に座った。
909
座って食券を渡し、出来上がるのを待つ。
買った食券は大盛りではなく中盛りだ。
大盛りを食べて勢いをつけて午後の仕事を!
そう思ったが、自分の指が押したのは中盛りだ。
昔のように大盛りを食べるともたれるのを、体が自然と回避した結
果だ。
こんな所でも年を感じながら、ケータイを取り出す。
片耳イヤホンをつけてTV中継を見る。
どこに居てもTVを見たりゲームが出来るケータイは、こんなとき
は便利だ。
上司に何時でも怒鳴られる役に立つのは勘弁してほしいが。
﹃はぁ∼い。こんにちは。今日からお昼の食レポを担当するリオで
∼す﹄
なんとなしに見てる番組に変わったレポーターが出てきた。
ピンク色の髪に小柄な羊のような角をしている。
赤い瞳はカラコンだろうか。
最近アキバ系アイドルとかが出てきているが、この娘もその類だろ
う。
元々がゲームやアニメ好きな自分としては、この変わった娘を応援
したくなる。
普通のアイドルではなく、声優のライブに行っていた自分としては
こういう芸能人は応援せずには居られない。
910
﹁お待たせしました。辛みその中盛りですね﹂
TVの中のピンク娘を応援していると注文した物が来た。
﹁いただきます﹂
早速一口食べて、すぐに再びケータイに眼をやる。
画面の中のピンク娘は今日が初めてだというのに、上手にお店紹介
をしている。
その様子を微笑ましく見てた時に違和感を感じた。
確かに自分はアニメが好きだ。ゲームが好きだ。コスプレした女性
が大好きだ。
だがしかし、初見のコスプレ娘をこんなに応援したくなるものか?
ネタや話題の為だけにコスプレしている場合だってあるはずだ。
それを見極めず応援するはずがない。自分の信じる自分の中のオタ
ク的に。
一度感じた違和感は強く引っかかる。
改めて画面を見て居ると明らかにおかしい点があった。
彼女に話しかけられている飲食店の店員の眼が正気ではない。
発する言葉は普通なのだが、瞳に動きが少なくぶれがない。
良く見ればレポーターの彼女しか見てないのだ。
﹁魅了か﹂
魅了を使う妖怪はかなり多い。
自分自身、魅了には何度かかかったことがある。
人食い人魚や雪女の時にだ。
911
あの時は大変だった。
先輩である現所長や他の同僚に殺されかけた。
しかしそれでも後悔はなく︱︱。
⋮⋮回想をしている場合ではなかった。
レポート中の場所を飯田橋と確認。
残っていたつけ麺をしっかり食べ終え店を出る。
陰陽道などのソレ系を修めてない自分が頼りにする物。
それは直感だ。
自分の直感を信じて行動を起す為に、ある人物へ電話をかける。
﹃今忙しいので後にして下さい。ツーツーツー⋮⋮﹄
繋がった瞬間切られた。
本当に忙しく、電話に出る余裕がなかったのかもしれない。
だが仕事の事なので再度電話をかける。
﹃桑原さん。一回り違う相手に電話をかけまくるのは、立派なスト
ーカーな気がしますよ﹄
﹁いやいや、乳臭いガキに興味はねぇ。仕事の話だ﹂
小さな声で﹃殺す﹄と聞こえたのは無視する。
無視するが、後で何かご機嫌を取ろうと誓う。
﹁ちょっと飯田橋に人員集めてもらっていいかね。キナ臭いのが居
たんでね。勘だがたぶん当たりだ﹂
912
﹃勘⋮⋮ですか。私の方も手がかりっぽい物を掴んだんですが、こ
ちらはまだ確定ではありませんので、わかりました。飯田橋駅周辺
でいいんですか?﹄
﹁おう。駅周辺で頼むぜ。ありがとよ、葉雲の﹂
﹃吉報を期待します。頑張って下さい。ツーツーツー⋮⋮﹄
現場の上司である葉雲幽羅に人員の派遣を了承された。
これで憂いなく現場に向かうことが出来る。
セーラー服を着た中学生のイメージが未だに強い幽羅に裁可を取ら
なければならない自分に、ちょっと哀愁を感じながら飯田橋に向か
う。
◇
電車で飯田橋まで急行し、先に来てたサポート班の人間に案内され
ピンク娘を見つけた。
200mは離れた場所からロケが終わった集団を観察する。
サングラスを外し、肉眼で見た瞬間眼があった。
﹁よーし、あとは俺に任せて、あんたらは離れててくれ﹂
﹁まだ特に確認も取っていませんが﹂
﹁いやいや、大丈夫。ビンゴってやつだ﹂
サポート班の班員を残して一人で歩き出す。
913
駅前から離れて水道橋に続く道を進む。
途中タバコに火をつける。
﹁フゥ∼。随分早く追いついてきたな﹂
﹁アハ∼ン。あんなに情熱的に見つめられたら気になっちゃってね
ん﹂
突然後方に現れた気配に向けて声をかけると、レポート中とは全く
違う口調で返事が返ってきた。
上に高速道路が走っている、この時間は人気のない場所。
人気がない場所を見計らって現れたってか。
後方に向き直って、改めて相手を見る。
﹁ふん。やっぱ人間じゃねぇな﹂
﹁アラン。そんなに熱烈に見られたらいやぁん。そんなに殺気を篭
められたら、激しく可愛がりたくなっちゃうわん﹂
妖怪だか妖魔だか知らんが、化け物の癖に黒い神父服を着ている。
妖艶な瞳と唇は眼を惹きつけてやまない。
化け物じゃなかったら、是非お近づきになりたいとこだが。
﹁お前らみたいな人間じゃないモノを退治するのが仕事でね。悪ぃ
が退治させてもらうぜ﹂
﹁ンフフフ。私を狙ってきた相手なんていつぶりかしらねん。いい
わぁん。相手をしてあげる﹂
914
﹁内閣府、国家公安委員会、機密治安維持議会所属、桑原泰斗だ﹂
俺が名乗ると女は驚いた顔をした。
そして女は楽しそうにニヤっと笑った。
﹁セシル様が腹心、サキュバスのリオティネック。行くわよん!﹂
915
第57話 それぞれの日常 その3
∼∼それぞれの日常 幽羅編∼∼
﹁幽羅様、霊脈の調査許可がおりました﹂
﹁やっとですか。では調査班及びサポート班ですぐに調査を始めて
ください﹂
指揮車から指示を出すと、とたんに車内が騒がしくなる。
都内に現れた強大な魔の気配。
葉雲の本家や政府から討伐の命が出ている。
だと言うのに所在すら掴めなかった。
勇矢君を退けた後、その存在は行方知れず。
七日前に感じたあれほどの巨大な霊力を隠せるとは思えなかった。
ならば勇矢君との戦いか或いは別の事で傷でも負ったのでは?
そして回復中の為に霊力を感知できないのではないか?
人を襲い霊力を奪い回復するならすぐに犠牲者が出て分かるはず。
しかし襲われた犠牲者の情報は出ない。
ならばどのように傷を癒すだろうか。
そこで行き着いたのが地を流れる霊脈。
霊脈から霊力を引き抜いて体を癒しているのでは。
916
そう考えてすぐに地中を感知すると異常があった。
霊脈の霊力の流れが弱くなっていたのだ。
予想通りの結果ではあったが少し困った。
都内全域を一人で調べるのは時間がかかりすぎる。
そこで調査班を使い組織的に調べようと申請した。
だけど都内の霊脈を調査する許可はすぐにはおりなかった。
霊地である皇居も対象であった為に時間がかかったのだ。
それがまさか五日もかかるとは思わなかった。
妖怪や幽霊が溢れてた時代ならいざ知らず、現在のお役人の妖魔に
対する危機感が薄い影響か。
﹁ままならないものですね﹂
﹁何かおっしゃいましたか?﹂
﹁いえ、なんでもありません﹂
オペレーターの女性に適当に返事をして言葉を濁す。
現場に出てる指揮車で指揮するのは疲れる。
調査班もサポート班も、大抵の人が一般人だ。
特殊な仏具やら宝具の使い方を知っているし、簡単な退魔なら出来
るがあくまで一般人。
だから葉雲である私が指揮を取る。
まだ20もそこそこの私が退魔の宗家出身と言う事でだ。
917
最前線で戦うだけだった10代が懐かしい。
年上の人達に指示を飛ばし、敬語で報告を受けるのは色々疲れる。
﹁はぁ、桑原さんが羨ましい﹂
戦闘班の桑原さんは単独行動が許されている。
きっと今も勘とやらを頼りに一人のんびりしているはずだ。
﹁幽羅様、第2班から霊脈が本来の流れから曲げられていると報告
がありました﹂
﹁そうですか。では第2班の地点を中心に第1、第3班も。ダミー
と言うことも考えられますので、残りの班はそのまま継続を﹂
あぁ、面倒くさい。
◇
﹁はい、調査結果で田町の方に曲げられた霊脈の流れがあるようで
す。ですので、あとはサポート班を連れて私が直接調べに行きます﹂
﹃了解した。そちらに桑原も向かわせたほうがいいと思うが﹄
﹁所長、まだ確定ではありません。調査段階ですよ。桑原さんは要
りません﹂
﹃あ∼、そうか。では総理の方への連絡も頼む。此方から連絡して
詳細を聞かれても二度手間になりそうだからな﹄
﹁わかりました﹂
918
霊脈の調査結果で田町駅周辺が怪しい事が分かった。
調査班が流れの終点を調べて、件の相手と鉢合わせてはまずい。
なので戦闘班の一員でもある私が直に調べる事にした。
私はすぐに総理に電話をかける。
出たのは補佐官の男性だった。
現状を説明し、もしもの場合を話しておく。
もしもの場合、都内の山手線を利用した円状結界を展開するとか。
目黒、目白、目赤、目青、目黄の五色不動陣を発動させるなど。
他にも都内には霊的防衛が満載だ。
一応、役職の必要上全て説明した。
補佐官は途中からうんざりした雰囲気だった。
現代日本でオカルトの話を長くされても、そんなものだろう。
話し終わるとすぐに電話を切る。
次は各班への指示だ。
調査班は調べてない場所に向かわせる。
サポート班の戦闘補助要員は私と共に田町へ。
∼∼♪∼∼♪
オペレーターに指示を出そうとすると電話がかかってきた。
﹃桑原﹄とケータイの画面に名前が出ていた。
忙しいので出てすぐに切る。
∼∼♪∼∼♪
919
すると再び﹃桑原﹄と名前が。
中々めげない人だと感心して出る。
しかし折角出てあげたのにふざけた事を言う。
つい乱暴な言葉を口走ってしまった。
電話を切って少し考える。
桑原さんがまた﹃勘﹄で何か見つけたらしい。
内容からして戦闘になる気がする。
私が約1週間地道に調査しているより早く、勘で敵を見つけるとは。
何でもっと早く見つけてくれないかとため息が出る。
﹁サポート班は桑原さんのサポートを。桑原さんが当たりみたいな
ので、そちらを優先します。田町へは私が一人で向かうので、戦闘
補助要員も桑原さんのサポートに。その後の指示は桑原さんから受
けてください。調査班は予定通り、未調査区域の調査を﹂
私は桑原さんの要望どおりに、動かせるサポート班の全員を向かわ
せた。
先祖返りで祖先の鬼の力を使える桑原さん。
戦闘面に関しては、本気になった桑原さんに勝る妖魔などいない。
﹁100%中の100%だぜぇぇ!﹂などといって放つ全力の攻撃
はもはや人の枠に収まらない。
だがもしかしたら、一人では負けはしなくても苦戦するかもしれな
い。
だから念の為、動ける全員を補助に向かわせたのだ。
私が一人で行動する事になるが。
920
﹁指揮車も以後は桑原さんの指揮下で。私は田町へ調査に向かいま
す﹂
私はそう言いながら車を降りる。
降りて暫くしてから、空を見上げる。
あぁ、一人での自由行動って素晴らしい。
◇
途中、色々と寄り道して時間を掛けながら田町駅についた。
駅から出て印を結び霊脈を調べる。
当たりは桑原さんの方だけど念の為と思い、軽い気持ちだったのだ
が⋮⋮。
﹁無理矢理作った霊脈の流れが、あのマンションに吸い上げられて
いる﹂
高層マンションのうちの一つの最上階。
そこに霊脈を流れる霊力が引き上げられていた。
﹁どう考えても敵の本拠っぽいですね﹂
歩いてマンションの近くへ向かう。
制圧に乗り出すのは桑原さんから連絡があってからだ。
あちらが終わって、そのままこちらに来て貰って二人で乗り込む。
921
そう考えて近くの建物の影からマンションを観察していた。
そうしていると、マンションから外国人の親子が出てきた。
親は黒いドレス、子供は白いドレス。
どちらも金髪でドレスが映えて綺麗だ。
手を繋いで微笑ましいと思った。
しかし何か違和感を感じる。
気になり二人を良く見てみる。
霊力を通した目で見るとすぐに分かった。
小さい子供の方が凄まじい霊力を持っている。
人に在らざる禍々しさを秘めた莫大な量の。
どうやら都内に紛れ込んでいる妖魔は1体ではなかったようだ。
しかし何故今この時間に本拠地から出てきた?
それは当然︱︱。
﹁桑原さんが見つけた当たりへの援軍ですか﹂
未だに桑原さんからの連絡は無い。
勝利したのなら本人が連絡できなくてもサポート班の誰かが連絡す
るはず。
つまりは苦戦しているのだろう。
﹁あの二人を行かせるわけにはいきませんね﹂
黒いドレスの方は大した力を感じないが人ではないだろう。
黒いのもまずいがあの白い方はもっとまずい。
強さ云々の問題もあるが、それ以上に容姿的に不味い。
922
桑原さんは女性の妖魔にとても弱い。
さらに子供には滅法甘い。
私は仕方なく結界石を取り出す。
この石には任意の者を取り込む位相結界が封じ込められている。
私は小指ほどの水晶石に霊力を通し、結界を開放した。
◇
上手く二人を結界の中に引き込めた。
この結界内なら被害を気にせず戦える。
最良で討伐、最低でも時間稼ぎをしなければ。
私は覚悟を持って二人の前に立った。
﹁この地に仇為す魔よ。覚悟してください﹂
そして決意を篭めて宣言した。
キョロキョロしてた黒いドレスの方が私に気づき睨んできた。
その眼は鋭く⋮⋮してるように見えるが、なんとなく困ってるよう
にも見えた。
仲間への援軍を邪魔されて不快と言ったところでしょうか。
油断無く見詰め合う私と彼女ら。
白いドレスの方が﹁ママ?﹂と小声で黒い方に呼びかけた。
923
すると黒い方が意を決したのか口を開いた。
﹁⋮⋮あの、申し訳ないのですが⋮⋮﹂
人に在らざる者の神妙な物言いに私は驚いた。
頬を指でかいて、本当に申し訳なさそうに言ってくる。
しかし油断はしない。
人の心の隙を突くのが闇に生きる魔の生業なのだから。
だけど次の一言に私は完全に虚を突かれる。
﹁良く聞こえなかったんでもう一度言って貰って良いですか?﹂
924
第57話 それぞれの日常 その3︵後書き︶
真面目っぽい話ばかり続いたので、次話はセシルさん視点。
主人公だもんねっ!
アホの娘なセシルさん。
果たして巫女には萌えるのか!
でも法国の聖女様が苦手だったから萌えなさそう。
次回、ミッコミッコにしてあげるっ!で会いましょう!
925
第58話 アウラvs幽羅
音の無くなった世界に沈黙が続く。
僕らと巫女服の女性の睨み合い。
睨み合い⋮⋮というより、お互い困って見詰め合っている気がする。
気まずい沈黙です。
原因は分かる。
僕が﹁何言ったか聞こえなかったので、もう一回言って﹂と言った
からです。
なにやら真剣な雰囲気の中、その言葉はダメだったのかもしれない。
だけど僕にもいい訳があるのです。
アウラと買い物にと歩いていたら、突然周りの人が消えました。
そして車などの雑音も消え去った、分かりやすい異常事態。
僕は混乱してアワアワしてた。
そこに急に現れて何かを喋った巫女服女性。
混乱してアワアワしてた僕には、言葉は聞こえたけど頭には入らな
かった。
言葉の内容が分からなかったけど真剣な顔の巫女服女性。
アウラも心配そうに僕を見ていた。
なので僕は大人として、ママとして、聞こえなかった自分の至らな
さを挽回しようとしただけなのです!
﹁﹁⋮⋮﹂﹂
926
見詰め合う僕と巫女女性。
恋が芽生えたらどうしよう。
とか考えてるのがばれたら余計気まずくなりそう。
横目で見たアウラはとっくに飽きたのか、髪の毛を弄っている。
ツインテールで無表情のアウラはとっても可愛い。
跪きなさい、とか言う台詞が似合いそうだ。
再び巫女女性に眼を映すと動きがあった。
ビシっと僕を指差しグワッと眼を開く。
﹁1週間前、貴女方に敗北した勇矢君の仇をとらせて貰います!﹂
おぉ、気まずい雰囲気を取り繕って何やら真剣な空気に!
この空気を壊さないように僕も乗らねば。
勇矢君とやらは誰だかわかりませんが、それっぽくやらねば。
﹁ふっふっふっ、貴様にそれができるかな﹂
僕の言葉に巫女女性がホっとした顔をする。
いまいち状況が分かりませんが、こんな感じでよかったようだ。
女性は人差し指と中指だけを伸ばして片手を僕らのほうへ向けた。
﹁魔を滅ぼす者、葉雲幽羅、参ります!﹂
◆◇◆
927
﹁ナウマクサマンダ︱︱﹂
魔を滅ぼす。
つまり僕みたいな魔族を倒すと言う事だろうか。
そう言えば日本に来た初日の男の子もそんな事言ってたなぁ。
巫女女性をボケーと見ていたら、アウラが急に僕を引っ張った。
﹁︱︱インダラヤソワカ。帝釈天雷神撃!﹂
女性の言葉と共にその指先から凄まじい電撃が迸る。
先程まで僕が居た空間を切り裂くように。
﹁うひょぅ!?﹂
﹁!? 避けた!?﹂
驚いて巫女女性を見ているとアウラが前に出た。
﹁ママの敵は私の敵﹂
言うや否や、足元から華を出現させる。
華が大きくなる途中に僕を蔦で道路の隅っこに置く。
︻擬態︼を解いて完全にアルラウネとなったアウラ。
﹁我が母に手を出した愚行。その身をもって思い知るが良い﹂
﹁巨大で禍々しい邪気。イギリスの吸血鬼を思い出しますね﹂
928
道路一杯の大きさで上から見下ろす、ラスボス風味のアウラ。
懐から複数の札を出し自分の周りに浮遊させ、アウラを睨む巫女女
性。
そしていつの間にか状況に取り残され空気になる僕!
﹁踊りなさい﹂
アウラは何百もの蔦を巫女女性に向ける。
そして突き刺すように巫女女性に向けて蔦を放った。
投擲された槍のように鋭く放たれる蔦。
それを巫女女性は下がりながら華麗に避ける。
コンクリートの地面を軽く抉るアウラの蔦。
当たれば致命の一撃だろうに、平然と回避した。
ズタズタになった道路を見て僕は思わずアウラに言った。
﹁アウラ、よく分からないけど人死にはダメだからね∼﹂
アウラは僕を見て頷いた。
黒いオーラを立ち昇らせる巨大なラスボス状態で見られると、ママ
ちょっと怖い。
﹁オンボダロ︱︱﹂
巫女女性が再び呪文を唱えている。
アウラはそれをさせまいと、今度は多数の蔦を同時に放つ。
929
﹁︱︱ハキシャソワカ。迦楼羅火焔陣!﹂
巫女女性が唱え終わると突如炎が現れ蔦を襲う。
円を描くように蔦を飲み込む炎は、アウラ本体も飲み込もうと蔦を
駆け巡る。
﹁アウラッ!?﹂
舐めるように走った炎がアウラを飲み込みゾッとした。
﹁無駄﹂
だけど僕の心配を他所にアウラは炎を裂くように消し飛ばす。
現れたその身には黒い霞︻闇の衣︼を纏っていた。
﹁迦楼羅焔を喰らって無傷ですか。予想以上の力ですね﹂
﹁死になさい﹂
巫女女性の驚愕も無視して、アウラはまたも蔦を女性に向けた。
今度の蔦は先端が黒くなっている。
あれはリオが良く使う魔力で強化した状態だ。
いわゆる本気の攻撃。
ママ、人死にはダメだって言ったのに!?
先程より早さもある蔦の攻撃は真っ直ぐ女性に向かう。
﹁くっ!﹂
930
女性も危険を感じたのだろう。
舌打ちしながら回避︱︱すると思ったら逆に前に出た。
前に出た女性は手に何か持っていて、それを蔦目掛けて下から切り
上げるように振る。
その瞬間、蔦は跡形もなくはじけ飛んだ。
﹁む!?﹂
アウラも予想外だったのか、警戒して後ろに下がる。
僕はアウラの下がるズンズンズンという地響きに驚き身を硬くした。
﹁叢雲を使う事になるとは⋮⋮﹂
苦々しく言った女性の手には、刀身が青白く輝いてる剣が握られて
いた。
僕は女性の言葉と剣と言う事でピンときた。
﹁それはまさか天叢雲剣?﹂
﹁おや、他国の妖魔でしょうに良くご存知ですね。その通りです。
これは我が国の国宝。神剣、天叢雲剣ですよ﹂
ゲームやアニメでよく出る伝説の剣。
よもやそれが実在するとは。
日本人としてちょっと感激して見てしまう。
﹁さて、叢雲を出したからには貴女方を手早く滅しましょう﹂
931
﹁負けない﹂
アウラが女性に対し果敢に蔦を放つ。
しかし女性が剣を振るたびに広範囲に蔦が吹き飛ぶ。
天叢雲剣はどうやらただの剣ではなく、広範囲に衝撃波のような物
を出してるようだ。
幾ら蔦を放っても吹き飛ばされるので、アウラが何も出来ずに下が
る。
それを好機と見たのか、女性が剣を真上に掲げ一気に振り下ろした。
振り下ろされた剣から、高威力で高速度の斬撃が放たれた。
斬撃の威力は僕の︻疾風斬︼等とは比べ物にならない感じだ。
﹁!?﹂
アウラは斬撃を避けようとしたが間に合わず喰らってしまう。
巨大な華が真っ二つになり、華や蔦が空気に溶けるように消えてい
く。
﹁ア、アウラ⋮⋮﹂
アウラなら大丈夫と思っていた。
そう思ってよく分からない戦いを任せていた。
それがこの結果だ。
僕は親なのに娘に闘いを任せるとは。
なんて無責任なんだろう。
自分の行動を後悔しながら涙が溢れてくる。
932
﹁ママ?﹂
﹁うぅ、アウラの声の幻聴が聞こえる﹂
﹁ママ?﹂
﹁ごめん、アウラ。ママがお馬鹿で﹂
﹁大丈夫、ママは色々残念だけど、私が守る﹂
﹁アウラッ!﹂
そんな優しい事を言ってくれる、横に居たアウラに僕は抱きついた。
ん?
横に居た?
﹁あれ? アウラ、無事だったの?﹂
﹁切られる前に脱出した﹂
華が切られる前に華から脱出して無事だったと言う事だろうか。
細かい事はどうでもいいや。
僕はアウラにギューと抱きついた。
アウラがジタバタ暴れてる気がするけど、気にせず抱きしめる。
﹁茶番の最中に申し訳在りませんが、覚悟は出来ましたか?﹂
﹁む﹂
愛娘との愛の抱擁をしてる最中に巫女女性が話しかけてきた。
933
あちらはどうしても僕らを退治したいらしい。
﹁覚悟なんて出来てないんだよっ! ︻戦乙女︼あーんど︻影の剣︼
﹂
僕はヴァルキュリアを2体呼び出す。
そして呼び出した2体に影の剣を持たせた。
ヴァルキュリアのスペックは僕と同等。
さらに言えば戦いの勘とかがない僕より、自我が在るっぽいヴァル
キュリアの方が実は強い。
戦乙女に影の剣を持たせる合わせ技。
これぞ必殺、自分では戦わないけど本気の攻撃!
戦乙女2体は巫女女性を左右から強襲した。
息の合った左右からの同時攻撃。
これならさすがに!と期待したのですが⋮⋮。
巫女女性は左の戦乙女に向かって回りに浮かんでる札を放ち、動き
を一瞬遅らせた。
その隙に右の戦乙女に剣を振る。
天叢雲剣と影の剣のつばぜり合いかと思ったら、一方的に影の剣が
吹き飛んだ。戦乙女も一緒に。
そして返す刀、剣だけど、で左の戦乙女も吹き飛ばす。
僕の切り札的必殺技が10秒ほどで破られました。
﹁叢雲は魔や闇の力と言った物に対して、非常に強力な効果を発揮
するんですよ﹂
934
﹁あ、そうですか⋮⋮﹂
巫女女性が驚愕してた僕に向かって説明してくれた。
闇を操る僕の天敵武器って事ですね。
さすが日本の神剣!
こんちくしょうです。
こうなればやる事は一つ。
﹁アウラッ、ここはママが抑えておくので逃げなさいっ!﹂
アウラだけでも逃がすのだ。
僕だって30秒くらいは足止めできるはず。
その間にアウラだけでも逃げて欲しいと思うのに。
﹁やだ。ママといる﹂
アウラは一向に逃げようとしない。
ママと居ると言う言葉は非常に嬉しい。
だけど今はそれはダメなのに。
僕とアウラがやり取りしてる間に、目の前の女性が剣を腰に収める
ように構えた。
居合い切りの構えのようにした体勢から、剣を横に振り切る。
飛んでくる剣撃を避けなきゃと思った。
しかし飛んできたのは線の様な剣撃ではなく、壁のような力の波。
あ、僕らを逃がさず仕留める為に壁の様な攻撃なんだぁ。
935
セシリアに成ってから初めて感じる命を失う瞬間の絶望。
咄嗟にアウラを庇うように強く強く抱きしめた。
そのまま来るであろう衝撃に備えて目を閉じた。
事故の瞬間は時間が長く感じると言うけど、それと同じなのかいつ
まで立っても衝撃が来ない。
焦れた僕は恐る恐る眼を開け背後を見てみた。
そこには艶やかな金の髪と黒いドレスの背中が見えた。
立っていた人物はゆっくりこちらに向き直る。
僕とアウラに微笑む笑顔に向かいお礼を言う。
﹁リ、リリス様。助かりました﹂
嫌味な姑なんて思ってごめんなさい。
ピンチに現れ助けてくれたであろうリリス様に感激した。
だがしかし、リリス様の口から予想外の言葉が飛び出る。
﹁セシルちゃ∼ん。変な結界の中で遊んでないで∼。お腹すいたよ
∼、ご飯まだ∼?﹂
助けてくれた魔母様は、なんだかとっても残念だった。
936
第58話 アウラvs幽羅︵後書き︶
この話でシリアスは終わるはずが、私がシリアスに耐えられず後半
は次回へ。
残念な主人公に残念と思われる大魔王様!
どっちがより残念か、世界戦での決着を誓う二人!
次回 WZC︵ワールド残念カップ︶!
そろそろギャグなコメディパートいれたいです。
番外編でこの人を出して!
この人︵人じゃなくてもOK︶の話を書いて!
とかあれば感想まで︵
937
第59話 大魔王リリス
﹁セシルちゃん、お腹すいた∼﹂
ピンチの時に現れ助けるという、物語の主人公のようなリリス様。
一瞬、崇め奉ろうと思うくらい感激したのに口から出るのはお腹す
いたと。
ぷーと頬を膨らませて空腹をアピールしてきます。
巫女女性は新たに現れたリリス様に警戒してるのか、距離を取って
いた。
今のうちにと、僕は見た目の割りに子供っぽいリリス様に状況を説
明する。
﹁リリス様、なにやらあの巫女服の女性が魔族を退治する人らしく
って、僕とアウラが退治される寸前だったんですよ﹂
﹁退治? ⋮⋮あ、遊んでたんじゃないんだ∼?﹂
リリス様は腕を組み、う∼んと悩んでいます。
﹁セシルちゃん、戦い方が成ってないから∼、私が見本を見せてあ
げるね∼﹂
顔を上げたリリス様が、そう言って巫女女性に向かい歩いていきま
す。
そして数歩歩いた所でリリス様の肌が褐色に染まります。
938
耳がピンと伸び、髪の色が金から銀へと変化します。
ドレスも形を変えて肌に密着するようなボディースーツに。
﹁アルシアママみたい﹂
﹁おぉ。言われてみればダークエルフみたいだねっ﹂
アウラの言うとおりダークエルフのアルシアさんみたいです。
ボディースーツが背中の真ん中丸見えなのと、お尻の部分がTバッ
クでムッチリしてる辺りが。
﹁新手ですか﹂
剣を構える巫女女性。
ダークエルフなリリス様は彼女へ掌を向ける。
﹁︻火球︼﹂
一言ファイアーボールと呟くと、リリス様の周りに火の玉が数十個
浮かぶ。
その後、銀髪リリス様が開いた掌を閉じた瞬間、火の玉は一斉に巫
女女性に飛んでいった。
﹁くっ、障壁よ!﹂
浮かぶ札を前方に展開して魔力の壁を作り出し、火の玉を防ぐ女性。
爆煙が消えると少し巫女服が焦げていた。
余りに大量の火の玉を全て防げたわけじゃないらしい。
﹁消えた⋮⋮?﹂
939
巫女女性がキョロキョロしている。
何をしてるのかと思ったら、リリス様が居なかった。
消えたリリス様を探して僕もキョロキョロ周りを探す。
﹁あそこ﹂
アウラが指差す方向に目を向けるとビルの壁に何かが張り付いてい
た。
灰色の肌で蛇のような下半身の女性。
縦に開く瞳。
鋭く尖った爪を携えた長い腕。
﹁なっ!? また姿を変えた!?﹂
驚く巫女女性に襲い掛かるラミアみたいなリリス様?
シュルルルと一瞬で近づいたリリス様の爪を剣で防ぐ女性。
両の爪で女性を切り裂かんとしてるリリス様の髪の毛が突如伸びる。
伸びた髪は先端が蛇になり、女性のいたるところに噛み付いた。
﹁きゃぁ。くぅ、この!﹂
女性は魔力を高め、剣から魔力放射を行った。
それにラミアっぽいリリス様が無人のコンビニに吹き飛ばされた。
﹁リリス様やられちゃった!﹂
940
﹁大丈夫﹂
アウラが大丈夫と言うと、応えるようにコンビニから影の塊が女性
に向かい動いていた。
女性の手前まで来た影から何かが飛び出る。
それに向かい巫女女性は剣で斬りかかったが、飛び出した何かは逆
に避けながら攻撃した。
上半身の服を切り裂かれ、胸から血を出す女性。
ピンクの下着もばっちり切り裂かれて、綺麗なおっぱいが見えてい
た。
﹁ママ﹂
巫女女性の神秘であるおっぱいを見てた僕に、アウラがある場所を
指差し教えてくれた。
蝙蝠の羽を背中に広げ、ピンクの髪をした空に浮かぶ女性。
黒い影のブーツを履き、乳輪と股の割れ目の筋の部分だけを黒い影
で覆って淫魔のリオのようだ。
﹁あれリリス様?﹂
﹁たぶん﹂
体型はリオより細くて胸も小さいが⋮⋮。
逆にエロイ。
胸がリオより小さいぶん、幼児体型に見えて一本筋を隠してる部分
が背徳的です。
941
淫魔リリス様は両手に影を纏うと真っ直ぐ巫女女性に滑空していっ
た。
巫女女性もそれを待ち構えて剣を突き出し︱︱ずっぷりリリス様に
刺さる。
刺さったリリス様がすぐに真っ黒くなる。
そして剣の効果か、黒くなったリリス様が弾けた。
と思ったら巫女女性の影からもう一人淫魔リリス様が現れる。
正面に剣を突き出し隙だらけの巫女女性の背中を、黒い影の魔力で
強化された腕で下から切り裂く。
﹁きゃぁぁあ﹂
背中をざっくりやられた女性は前に転げるように逃げた。
下もピンク色だった!
残念な事に下着までは切り裂けなかったようです。
﹁くっ、惜しい。後ちょっとだったのに!﹂
﹁でも血が出てる﹂
アウラの言うとおり重傷と言うわけではないですが、傷を負ったよ
うです。
そして僕の台詞の惜しいに対する考えが、僕とアウラではちょっと
違う気がします。
変幻自在に姿を変えるリリス様に巫女女性は押されていた。
空に浮かんでる淫魔リリス様は、明らかに余裕なのかクスクス笑っ
942
てらっしゃる。
﹁このように姿を変える妖魔とは。貴女はいったい何者です!﹂
﹁うふふふ。我はあらゆる生物の頂点にして、世界を闇に帰す者。
全ての母にして魔の女王﹂
睨み合う二人が言葉を交わす。
のはいいんですが、リリス様はなんだか口調がおかしい。
﹁愚かなる異界の者よ。我が前に立ちし愚をその身で知るが良い﹂
ブワァァっと黒い靄を放ちリリス様の姿が見えなくなる。
すぐに靄は霧散し、リリス様の姿が見え始めた。
その背には黒い天使の翼と白い天使の翼を左右に3枚ずつ背負って
いた。
﹁その姿は!? ま、まさか堕ちた天使なのですか!?﹂
リリス様を見て驚愕する巫女女性。
そんな巫女女性を宙に浮かびながら冷めた目で見下ろすリリス様。
いつも明るいリリス様にしては、なんだか変な雰囲気です。
﹁我に逆らいし者が居るこの地ごと滅ぼしてくれましょう﹂
言ってる事もなんだかおかしいです。
リリス様が両手をあげると、その上に直径20mはありそうな黒い
943
球が出現した。
なんだかとても危ない気配です。
それが危険と感じたのか、巫女女性がリリス様に向かい剣を振る。
剣から蒼い剣撃が飛ぶ。
リリス様も同時に黒い球を下へ向けて放った。
球と剣撃がぶつかり︱︱剣撃は黒球に飲み込まれる。
黒球はそのまま地面へ向かい、女性も飲み込んだ。
ビリビリビリと何かが裂けるような音を残し黒球は消える。
残ったのはボロボロになったアスファルトと倒れている巫女女性。
﹁アハハハ。愚かなる人の子よ。身の程を知りましたか﹂
堕天使なリリス様が女性に手を向けると地面から触手が現れた。
触手は倒れた女性を持ち上げ全身をヌルヌルと蠢いている。
﹁ふぅぉぉ! 巫女と触手とか! あ、下着の中にも入ってる! ぉお! ンァァとか唸ってる! エロイ! これはダメです! ダ
メですよ!﹂
巫女と触手って組み合わせは眼に毒です。
アウラの眼を閉じなきゃ!
﹁ママ、止めなくて良いの? あの人死んじゃう﹂
﹁ふぉぉ! え? ハッ!?﹂
944
ンアァ♪とかエッチな声に興奮してる場合じゃなかった!
アウラに言われ、まさかと思いリリス様を見る。
リリス様の眼は正気じゃなかった。
円が何個も重なりグルグルグルグル回っている眼。
凄い絶望が待っているスイッチを自ら押す寸前のような眼をしてい
た。
﹁リリス様、どう見ても正気じゃないよね。力に飲まれてそうって
いうか⋮⋮。アウラ、巫女女性を助けようっ!﹂
﹁うん﹂
僕とアウラは巫女女性に向かい走る。
途中で影の剣を2本出し、両手に持って触手を斬った。
触手から自由になった女性をアウラが抱きとめる。
﹁くっぅ。な、なぜ敵である貴女が⋮⋮﹂
ハァハァした息遣いで所々肌を露出した巫女女性が聞いてきた。
﹁何故って、う∼ん? やっぱ無駄な人死には嫌じゃん?﹂
﹁私は貴女方を滅ぼそうとしたんですよ﹂
﹁う∼ん、まぁそうなんだけど﹂
大した理由もなく、なんとなく助けようとしてるだけなんですよね
945
∼。
理由聞かれても困るっ。
﹁次代の魔を継承する者、セシル。我らが敵を庇うのですか?﹂
黙って僕らの行動を見てたリリス様が威厳ある声で聞いてきた。
いつものほにゃ∼としたリリス様はどこに行ったのか。
﹁僕達は悪い事はしてないんだし、話し合えばきっと大丈夫だと思
うんですよ。だからリリス様、この辺で戦いはやめましょう?﹂
グルグルした絶望の眼で僕達を見下ろすリリス様。
僕がじっと見上げてると、リリス様がふぅ∼と息を吐いた。
分かってくれたかと安心した瞬間、眼に見えない圧力を感じて僕は
のけぞった。
﹁我の前に立つ愚かさを、その身をもって味わわせて上げましょう﹂
あれ?
僕も敵認定された!?
巫女女性と戦ってたと思ったら、何故か大魔王様と戦う事になって
いた!?
黒い太陽のような大魔王様との戦いが始まった。
◆◇◆
﹁にゅわーー! なぜ大魔王なリリス様と戦う事に!?﹂
946
僕と互角以上の帝国将軍3人を一瞬でボコるリリス様と戦うとか冗
談じゃないです。
何か手はないか考える。
そうだ!京都へ行こ⋮⋮。
いや、そうじゃなくて⋮⋮。
そうだ!巫女女性の剣だ!
﹁巫女さん! アマノムラクモの剣って魔に特効なんですよね! さぁ、ズバズバ斬っちゃって下さい!﹂
闇の魔力を使う僕とアウラより現実的な手段。
人任せだけど僕の考えた作戦にしては的を得ていると思う。
﹁残念ですが⋮⋮。叢雲を使うほど霊力が残っていません。短時間
しか力を引き出せないのです﹂
あ、そういえばリリス様と戦ってた時、動きが悪かったですね。
ガス欠状態だったから一方的にやられてたのか。
闇色に輝く堕天使リリス様を見上げ焦る僕。
そんな僕の横でアウラがニコニコ笑ってた。
ニコニコっていうかニヤっとだけど。
﹁大魔王退治。燃える﹂
そう言えばこの娘は勇者でした。
やる気出して飛び掛っていかないように手を握っておこう。
947
﹁く! 何か良い手は!﹂
真剣な表情で見上げて居ると︱︱遠くで何か光る物が見えた。
﹁ん?﹂﹁ほえ?﹂﹁む﹂
巫女女性、僕、アウラと同時に気づく。
遠くに光っていた何かが急速に大きくなって行く。
つまりこっちに向かってきている。
あっと思った時には、凄い速さで向かって来たその黒と赤の大きな
玉はリリス様に直撃した。
﹁下がって!﹂
咄嗟に巫女女性が前に出て札の障壁を展開。
薄っすら透ける障壁から見える光景が凄かった。
音もなく周囲に衝撃波が飛び、崩れる高層ビルにひしゃげる木や信
号機。
車がぶっ飛び、さらにはアスファルトを捲りなおも地面を抉ってい
く。
﹁ひぃいぃぁぁあ!? これは何!? 天変地異!? とうとうハ
ルマゲドンが!?﹂
障壁の外の世界は一変。
世紀末の荒廃した世界と化していた。
948
﹁ハァハァ、フゥフゥ、ぐっ⋮⋮﹂
力を使い果たしたのか倒れそうになる巫女女性をアウラが支える。
僕が支える余裕はなかった。
だって僕はまたも驚いていたから。
障壁か消えたと思った瞬間、目の前にアルカさんが居たから!
気絶してるリオとボロボロのスーツを着た男性を両脇に抱えていた。
アルカさんは二人を抱えたまま巫女女性に対して姿勢を正す。
そして90度頭を下げた。
﹁うちのポンコツ様が迷惑をかけて申し訳ありませんでした!﹂
アルカさんの乱入により、僕らの戦いは唐突に終わったのでした。
ちなみにアルカさんの攻撃を受けたリリス様は、瓦礫の山に埋まっ
ていましたとさ。
949
第59話 大魔王リリス︵後書き︶
超高校級のアホの娘リリス様。
自分の力に正気を失う。
だから日頃アルカさんが大人しくしてというわけですね!
戦闘パートは作者のなけなしのシリアス分を消耗しすぎます。
次回からギャグ次元に戻ろう!
頑張れセシルさん!ギャグの世界にれっつらごー!
950
第60話 年下ってイイよね Part2
﹁﹁申し訳ありませんでした﹂﹂
マンションの居間で土下座をする3人。
リリス様、アルカさん、僕の3人は巫女女性、葉雲幽羅さんに頭を
下げた。
若干1名、無理矢理アルカさんに力ずくで下げさせられていますが。
﹁いえ、霊脈を戻していただけたようですし、人に対して敵意がな
い事がわかったので構いませんが﹂
え∼悪い事してないから話せばわかると言った僕ですが⋮⋮。
リリス様がしっかり悪い事してたよ♪てへ♪
魔力回復の為に日本の地下を流れる魔力の流れを操作し、このマン
ションに流れるようにして回復をはかっていたと!
人の家から勝手に電気を盗むようなものですね。
事実を知った僕とアルカさんは頭を下げるばかりです。
﹁ごめんね∼。地下の魔力って管理されてたんだね∼。あははは∼﹂
綺麗な金髪も焼けて肩くらいまでになり、ドレスもボロボロのリリ
ス様が笑顔で謝罪する。
瓦礫から発掘された直後は全身炭化して真っ黒だったのに⋮⋮。
951
アルカさんの超必殺技的な攻撃すらもう忘れてそうな笑顔です。
良くも悪くもリリス様は大物ですね。
そういえば世紀末になった港区ですが∼。
幽羅さんが結界を解くと一切破壊されていませんでした。
大暴れしても現実に被害が出ない結界とか便利ですね。
﹁桑原さんが起き次第、私は一旦戻り、貴女方の事を報告してきま
す。その後またここに尋ねに来ますね﹂
﹁あ、はい。わざわざすいません﹂
僕と幽羅さんはお互い頭を下げる。
リオとスーツの男性の桑原さんは、結界内の東京ドームで戦ってい
たらしい。
そこに異変を感じたコック服を着たアルカさんが駆けつけた。
アルカさんは二人を制止したのですが、戦いに熱が入った二人は言
う事を聞かず⋮⋮。
炎の魔人様に喧嘩両成敗されたのでした。
ちなみにアルカさんがコック服を着ていたのは、仕事先が食品研究
会社らしいです。
カレーが食べたい主の為に、より美味しいカレー作りを覚えようと
食品関係の所の仕事にしたのだとか。
なんたる忠臣。
その忠臣は現在ダメな主に説教中ですが。
952
﹁あ、その、勇矢君のお見舞いに早めに行きたいのですが⋮⋮﹂
﹁わかりました。それも手配しておきます﹂
僕とリリス様が美味しく頂いた少年は現在入院中らしいのだ。
ただエッチをしまくっただけなんだけど、もしかしたらリリス様が
何かをしたのかもしれない。
それを確認し、可能なら治療する為に僕がお見舞いに行くのだ。
本当はリリス様やリオの方が治療とか出来ると思うんだけどね。
アルカさんが二人が行くのはダメと言うので。
﹁色々とご迷惑をおかけしましたが、何卒こう、僕ら平穏に過ごし
ますので﹂
﹁害意がない妖怪は普通に暮らしていますので、心配しなくても大
丈夫ですよ。それにあちらの二人には勝てる気がしませんので﹂
幽羅さんはちょっと達観した眼でリリス様とアルカさんを見た。
あの二人はちょっと別格だよね。
いろんな意味で。
こうしてよくわからない日本での戦いは幕を閉じたのでした。
◆◇◆
僕達が安全認定されて数日後。
勇矢君のお見舞いにやってきました。
場所は国立病院なんですが。
953
﹁な、なんで病院に黒服のガードマンがいるんでしょうか⋮⋮﹂
﹁霊傷を受けた患者は隔離する為、一般人が入らないように守衛を
立ててるだけですよ﹂
幽羅さんは当たり前ですみたいに言いますけどね。
グラサンかけたごっつい黒服さんが居ると超怖いです。
そんな黒服さん達の横をビクビク通り過ぎて、橘とネームされた一
室の前に来ます。
﹁受け答えが散漫で、常時ボーと上の空の状態です。入室しても挨
拶など返してくれませんが、あまり御気になさらず﹂
﹁あ、はい、わかりました﹂
なにやらかなり重症のようだなぁ。
とりあえず状態だけでも確認して帰ろう。
そう思って幽羅さんの後に続き入室しました。
﹁勇矢君、今日は客人をお連れしました。人ではありませんが害意
がないので落ち着いて⋮⋮﹂
﹁こ、こんにちは∼。セシルって言います。えーと、その節はご迷
惑を⋮⋮﹂
僕と幽羅さんは途中で言葉が止まる。
なぜかと言うと。
954
ベッドで寝てた少年が僕達を見た瞬間消えて、気づけば僕の手を取
って立っていたから!
﹁ひょ、え、あぅ?﹂
﹁勇矢君落ち着いて! その方は一応敵では︱︱﹂
﹁好きです! 結婚してください!﹂
﹁﹁は?﹂﹂
少年の言葉に眼が点になる僕と幽羅さん。
﹁最初は無理矢理だったけど、最後はボクも気持ち良くて、言葉に
しづらいけど嬉しくなって忘れられなくて。貴女の事ばかり考えて
いました!﹂
﹁え、えーと、あの∼幽羅さん、これは一体⋮⋮?﹂
僕の両手をしっかり握りながら上目遣いで情熱的な視線を向けてく
る少年勇矢君。
幽羅さんはそんな僕と勇矢君を見た後に天井を見つめてます。
﹁⋮⋮勇矢君、入院してから受け答えが適当だった理由は﹂
﹁あ、はい。すいません。この︱︱﹂
﹁⋮⋮セシルという名の方です﹂
﹁このセシルさんの事ばかり考えてしまっていたので、誰かと話し
955
てても集中できませんでした﹂
﹁⋮⋮そうですか﹂
幽羅さんは僕のほうを向いてにっこり笑った。
そして僕と勇矢君の肩に手を置くと。
﹁では、年寄りはこの辺で下がります。後は若い二人にお任せしま
すね﹂
﹁ちょ、ちょっと待って!? 年寄りって幽羅さん何歳!?﹂
﹁24の年寄りです。セシルさん、後はお任せしますね。守衛はち
ょっと席を外したりさせときますので﹂
﹁え、何!? それどういう事!? って言うか僕たぶん26歳だ
から、幽羅さんの方が若いって言うか!?﹂
﹁それでは失礼致します﹂
﹁あ、幽羅さん、セシルさんを連れてきて頂きありがとうございま
す!﹂
﹁いえいえ﹂
ガチャン。
無慈悲なドアの音を残し、幽羅さんは去っていった。
今ドアが閉まる寸前﹁初体験の相手に恋慕とか、メンドクサイです
ね﹂と言ってた。
956
に、逃げたな!
⋮⋮え∼と⋮⋮勇矢君をどうしたものかな?
未だにキラキラと僕を見つめて手を離さないんだけど。
﹁あ、あのね? 勇矢君﹂
﹁はい、なんですか? 結婚式は洋式が良いですか? 和式がいい
ですか?﹂
おぉ⋮⋮。
少年の思考はかなり飛んでる。
まずゆっくり現実を教えるんだ僕!
﹁え、えっと、僕の事好きなの?﹂
﹁はい!﹂
﹁はぅ。で、でもほら、僕は旦那様がいる人妻なんだよね﹂
﹁人妻でも好きです!﹂
凄い真っ直ぐな思いです。
こんなにストレートに好きと言ってくれたのはアルシアさんくらい
だ。
旦那様であるアルシアさんの為にも、僕は少年の思いに応えられな
い。
なので∼。
957
﹁あ、あはは。でもほら、僕そっくりの人がもう一人いたじゃない
? あの人の方を好きになったほうがいいんじゃないかなぁ?﹂
リリス様に丸投げしよう♪
﹁胸が小さい方の方ですよね。あっちの方は僕から一方的に吸い取
る感じで、正直嫌でした﹂
あっはっはっは⋮⋮。
そうだねー、リリス様は戦いを見ても分かるとおり実はS気質の人
ですしねー。
淫魔の祖でもあるし、相手から吸い取るタイプのエッチをしてたも
んねー⋮⋮。
﹁それに比べセシルさんは優しくリードしてくださり、同時にボク
が頑張ると喜んでくれて、初めての体験の最中に緊張したボクをま
るで包み込むようにしてくれました。それに豊満な胸の感触と吸う
ように言われ吸った母乳の味が忘れられません﹂
やったネ☆
僕のオッパイミルク大好評☆
とかボケてる場合じゃない。
正直好きと言われるのは嬉しいけど、高校生の勇矢君をかどわかし
てるようで罪の意識が。
何故僕はリリス様と共にこの子を襲ってしまったのだろう。
頑張って彼を説得しようと色々考えて居ると。
﹁セシルさん、好きです! またしたいです!﹂
958
﹁ほえ?﹂
彼に引っ張られたかと思ったらベッドの上に寝かされていたのです。
◆◇◆
ベッドに横になる僕に勇矢君は抱きついてきた。
﹁セシルさんっ。ん∼∼﹂
﹁うひゃぁ、胸に顔を埋めないでぇ。ぐりぐりしないでぇ。はう、
ドレスをずらして乳首噛んじゃだめぇ﹂
ドレスを下げ胸を露にして乳首に吸い付いてくる勇矢君。
吸い付くと同時に甘噛みして乳首をクニクニしてきます。
﹁ンァァァァ♪ って、乳首噛んじゃらめぇ﹂
﹁噛んで吸うと母乳が溢れて美味しいです。もしかして噛まれるの
好きですか?﹂
口から白い液体を垂らしながら僕を見てくる。
僕は噛まれたり少し痛いのが好き。
だけどそんな事を年下の少年に言える訳もなく黙って居ると。
﹁んん∼∼﹂
﹁ファァ、ダメェ、そんなに強く噛んじゃ感じちゃうぅぅぅ﹂
959
乳首を思い切り噛まれた。
思い切り噛まれて気持ち良くなり、大きく硬くなった乳首をさらに
噛まれる。
﹁ンヒィィ♪ ダメェェ、乳首に歯型がついちゃうぅぅ♪﹂
﹁ングングング。痛いの好きなんですね。凄い母乳が溢れてます﹂
僕の母乳を飲みながら、左右の乳首を執拗に噛んでくる。
甘噛みなどではなく、歯ですり潰すように強く強く噛まれて、僕は
乳首で軽くイッてしまう。
止めなきゃいけないのに、イッた僕は快感でボーとしてしまう。
ボーとしながらも勇矢君が僕のスカートの中から下着を抜き取るの
を感じていた。
﹁ここも金色の毛で綺麗ですね。触ってないけどなんだか濡れてる
し、前戯とかしないでも大丈夫ですか? 僕もう我慢できなくて、
ンンッ﹂
﹁ファァァ、オチンチンが入ってくるぅ﹂
スカートに隠れて見えない足の間から、勇矢君のオチンチンを挿入
された。
一気に根元まで挿入され、その状態で勇矢君は僕の脚を持ち上げキ
スをしようとしてくる。
﹁ダメェ、キスはダメなのぉ﹂
960
﹁⋮⋮そうですか﹂
僕がキスを嫌がり顔を背けるとシュンとする勇矢君。
彼の落ち込んだ顔をみて、胸がキュンとしてしまう。
はうっ、なんだか僕に年下萌え属性が!?
年下の可愛い男の子の落ち込んだ顔にキュンとくると、体もそれに
反応した。
挿入されてる勇矢君のオチンチンを膣でギュゥっと締め付けてしま
う。
﹁セ、セシルさん、急に締められると痛いです﹂
﹁え、あ、ごめんね﹂
膣の締め付けを緩めると、ゆっくりとピストンを開始される。
﹁セシルさんの中暖かくて、つぷつぷしてて気持ち良いです﹂
﹁アッ、ンッ、ンッ。ダメなのぉ。僕人妻で、オチンチンダメなの
にぃ﹂
しっかりと根元まで出し入れする彼のオチンチンが気持ち良い。
ダメと口には出すけど、僕のオマンコはすっかりオチンチンを受け
入れていた。
パチュパチュとリズミカルに腰を打ち付けられて、徐々に快感の虜
になる。
961
﹁ンハァ♪ イイ、もっと強く上に当てるようにオチンチンいれて
ぇ﹂
﹁はい、こうですか?﹂
﹁アァァァン♪ それぇ、ソレイイィィ♪ もっとオチンチン早く
してぇ♪﹂
10分もたたずに喘ぎ声を響かせてしまう。
完全にオチンチンを受け入れた僕の体は子宮口が下に下がり、魔母
としての体の為に彼の精子を搾り取ろうと子宮口でもオチンチンを
咥え込む。
﹁うわっ、中で先が吸い付かれてるみたいにっ﹂
﹁ふぁぁ、子宮口でぇ、オチンチンしゃぶってるのぉ。気持ちイィ
?﹂
﹁は、はい! 凄く!﹂
快感で蕩けた僕はオチンチンの事しか考えられなくなる。
膣の入り口と膣壁を締め付け、子宮口で亀頭を咥え、オチンチンを
余す所なく味わい尽くす。
﹁アハァ、子宮口のフェラ、どぅ∼?﹂
﹁き、気持ち良過ぎて、出そうです﹂
962
﹁ンァ♪ いいよぉ、だしてぇ。僕のオマンコにオチンチンを突っ
込んでぇ、直接子宮に精子かけてぇ♪﹂
バチバチバチと肌が当たる音が激しくなる。
オチンチンに吸い付く子宮口が引っ張られる。
外に出てしまうんじゃないかと思うほど激しく出し入れされる。
突き入れられると子宮の奥まで届き、子宮内をオチンチンが嘗め回
す。
﹁好きです。好きです! セシルさん﹂
﹁ンァァ、ダメェ、僕人妻だからぁ、ダメなのぉ﹂
﹁ボクのオチンチンにこんなに吸い付いてるのに、嘘つきです! そんな事言うとこれ以上動きませんよ?﹂
そう言うと奥に入れたまま動きを止める勇矢君。
急に動きが止まりパニックになる。
快感で蕩けた僕は訳が分からず、頭で考えずに何かを口走る。
﹁ふにゃぁぁ、いやぁ、動いてぇ、結婚はダメだけどぉ、孕むから
ぁ、勇矢君の子供を孕んであげるからぁ﹂
﹁こ、子供ですか。んっ、あぁ、セシルさん、セシルさん﹂
﹁にゃぁ♪ うごいたぁ、オチンチンうごいたぁ♪﹂
﹁奥に、奥に出しますね。しっかり孕んでください!﹂
963
バチュンと腰を打ち付けられ、オチンチンを最奥まで突き入れらる。
そして子宮の中に入った亀頭からビュルルルと直に精子を注ぎ込ま
れた。
﹁ンァァァ、出てるぅ、熱いぃ、子宮やけちゃうぅ、イクゥゥゥゥ
♪﹂
子宮にビュビュと最後の一滴までしっかりだされた。
僕は子宮に当たる精子の快感と熱でイッテしまった。
イッてヒクヒクと痙攣してる膣からオチンチンを抜く勇矢君。
彼はオチンチンだけだしていたが、今更ながら服を脱いだ。
そして快感の余韻に浸る僕のドレスも脱がし裸にされる。
﹁セシルさんを大好きな気持ちはまだまだ伝え切れません! もっ
といっぱいしたいです!﹂
﹁ンァァ﹂
股を開いてダランとしてた僕の膣に、再び勃起したオチンチンを挿
入してくる。
そう言えば勇矢君は、リリス様と二人がかりでやっても8回くらい
出してたような。
リリス様と僕でかける2だとすると10回以上余裕なのかな。
今度は僕の片足を持ち上げ、持ち上げた脚を肩にかけて反対の足を
跨ぐような状態で出し入れされる。
腰を動かしながら、手で僕の勃起したクリトリスを弄りだした。
964
軽く引っ張られた時に痛みと快感で膣と子宮口が強く締まる。
﹁あ、ここを強く弄ると気持ち良いんですね?﹂
﹁ふぁぁぁ、ゆ、勇矢君、そこらめぇ﹂
クリを弄ばれながら子宮の奥まで犯される。
そのまままた精子を注がれると、僕も同時にイってしまう。
2回の射精で子宮にたぷんと精子の重みを感じる。
イッてもオチンチンを蓋のように抜かないままの勇矢君に質問した。
﹁勇矢君、まだするのぉ?﹂
﹁まだまだしたいです! セシルさんが僕を好きになってくれるま
で! それに、その、孕んでくれるって言ってくれたので、絶対に
妊娠するまで続けますね!﹂
元気良く言った彼は、挿入したまま僕を回転させる。
今度は後から僕を犯すようだ。
﹁ンハァ、この体勢、さっきよりオチンチン深いぃぃ♪﹂
子宮から精子が溢れても、そのまま犯され続けた。
7回目の子宮中出しまでは覚えてたけど、その後は僕は気絶したら
しい。
965
気絶から目覚めると正上位で僕は犯されていた。
アルシアさんやリオとは違う、少し強引な男の子のエッチ。
僕の体を一時も離さないそれは、とても気持ちよかった。
翌朝まで続く勇矢君とのエッチの中で僕は思った。
年下の男の子も好きかもって。
966
第60話 年下ってイイよね Part2︵後書き︶
Mでエッチ好きの人妻はいかがですか?
押しにとことん弱いセシルさん。
たぶん土下座したらエッチさせてくれるねっ!
基本的に女性好きなセシルさんが、とうとう男の子に目覚めました!
⋮⋮魔王なレオン君とも良くエッチしてたし、前からかもしれませ
んが。
自覚したって事で!
でも二十歳過ぎの大人の男性とかゴツイ男は怖い、乙女よりも中身
乙女なセシルさん。
お気に入りが2000件を超えて嬉しいです︵つд`︶
皆アホの娘を見守ってくれてるんですね!
作者もアホの子なので、感想を頂けるととても嬉しいです||・︶
チラ
そういえば今更ですが、タグにアホの娘とかつけたほうがいいのか
な∼?
967
第61話 カレーとお風呂と暗雲と
﹁くぅ∼∼! 旨い! もう一杯!﹂
﹁桑原さん、少しは遠慮して下さい﹂
﹁まぁまぁ、折角のパーティーなので遠慮せずどうぞ∼﹂
﹁おぉ、ありがてぇ! 気を使われたのなんていつ以来か! ゴク
ゴクゴクッ。プッハァ∼﹂
勇矢君のお見舞いに行ってから数日後、誤解があって戦ったままで
は良くないという事で和解パーティーを開いております。
幽羅さん、桑原さん、勇矢君が僕らの住んでるマンションに来てく
れました。
お酒をいくら飲んでも酔わない幽羅さん。
すっかり出来上がって料理も沢山食べてる桑原さん。
そしてジュースを飲みながらチラチラ僕を見てくる勇矢君。
﹁ふふふ、同僚に教わったキーマカレーにカレーグラタン、そして
カレーうどんです!﹂
﹁う∼ま∼い∼よ∼! さすがアルカちゃん! 最強の炎の魔人だ
ね!﹂
﹁もぐもぐもぐ﹂
968
料理上手なアルカさんが張り切って料理を作ってくれてます。
気のせいではなくカレー料理ばかりだけど、美味しいからか誰もつ
っこみません。
リリス様とアウラはその料理をひたすら食べてます。
たぶん既に10人前以上は食べてるはずだけど⋮⋮あの二人の胃袋
は宇宙なのかな。
﹁クピクピクピ。ンイー? セシりん、カレーに飽きちゃったの∼
ん? あっちの鳥の焼いたのを食べたら∼ん?﹂
シャンパン片手にリオが僕に言ってくる。
リオはリーキという葱っぽい物のカレー料理を優雅にフォークとナ
イフで食べている。
﹁飽きたわけじゃないよ∼。ただお客様に気を使ってるのが僕しか
居ないから、お酒注いだりしてただけです﹂
料理担当のアルカさんと子供のアウラはまだしも、リリス様とリオ
は幽羅さん達に気を使ってほしいものです。
﹁くぅぅぅ、わざわざ和解の為にパーティーまで開いてくれて、さ
らに気を使ってくれるなんて! よしっ! お嬢ちゃん、俺と付き
合うかっ!﹂
﹁あ、桑原さん、そんな事言うと勇矢君が﹂
﹁うぉぉぉぉ!? 橘の! 今俺が避けなきゃ頚動脈ばっさりだっ
たぞ!﹂
﹁外れましたか⋮⋮。次は外しません﹂
969
先程まで大人しかった勇矢君が桑原さんに襲い掛かる。
木目模様の小さな刃物の二刀流で確実に急所を狙っていた。
﹁あのぉ∼、幽羅さん、止めなくて良いんですか?﹂
﹁セシルさんを想っての若さゆえの行動です。私が無粋に止めに入
るなんてとてもとても﹂
かなり度の強い焼酎を飲み、カレー風にされた塩辛を食べながら言
われても⋮⋮。
絶対メンドクサイから止めないだけですよね⋮⋮。
﹁いいわよ∼ん。そこぉ、もっと鋭く切り裂くのよん!﹂
酔ってるのか煽るリオ。
勇矢君の攻撃を華麗に回避してた桑原さんが体勢を少し崩した。
リリス様とアウラの方へと。
﹁う∼ま∼、あぁぁぁぁ!? わ、私のタコ墨カレーがぁぁぁ!?
うぅぅぅぅぅ﹂
﹁⋮⋮許せない﹂
﹁あ、悪いな。ちょっと攻撃を避ける時に引っかかっちまったか。
って、ちょっとお二人さん、なんか黒いオーラが⋮⋮﹂
和解パーティーだと言うのに、ハラペコ2名の恨みを買った男性が
一人犠牲になる。
な∼む∼。
970
﹁リリス様、アウラ。次は出汁を取った和風カレーを出しますから
落ち着いてください﹂
アルカさんすら桑原さんの犠牲はスルーしました。
◆◇◆
ちゃぽん。
体を洗い、暖かな湯が張られた湯船に体を沈める。
﹁はぁぁぁぁぁ。ゆっくりお風呂に入るのはいいよねぇ﹂
大き目の浴槽にたっぷりのお湯。
その中に首まで浸かり息を吐く。
﹁あ∼、肩が軽い∼﹂
ダークエルフ族よりも巨乳な僕の胸が重力から解放される。
巨乳好きな僕だけど、自分が成ってみると色々大変でした。
まず悩んでる時に胸の前で腕が組めない。
胸の下でおへその上辺りで腕を組んでも、胸の大きさをアピールし
てるようにしか見えないのだ。
次に肩こり。
大きな胸がなかった昔より肩が凝る気がするのだ。
後はブラを着けるときに胸を仕舞いこむのが大変だとか、下乳に汗
971
をかいたりして大変だとか、生活に密着した苦労がいっぱいです。
﹁はぁ∼∼∼、極楽極楽﹂
だからお風呂で胸の重さが軽減されると凄く気持ちがいい。
﹁セシり∼ん、お邪魔するのね∼ん﹂
僕がぽけーとしてるとリオが入ってきた。
入ってきたリオの裸をぽーと見る。
顔は優しげで親しみやすい。
胸はほどほど。
腰はキュっと締まってる。
お尻は小さめだけどむにっとつるっとしてる。
手足はすらっと長くて綺麗。
﹁リオって美人だよね∼﹂
﹁ンァ∼? 急になによん? 私を口説かなくてもいつでもエッチ
するわよん?﹂
﹁そういう意味で言ったんじゃないよ∼﹂
話しながら体にお湯をかけ、頭を洗い始める。
その一つ一つの仕草がとても女性らしい。
頭を洗う手の動きも丁寧に優しく洗っている。
座ってる時さり気無く足を閉じてるのなんかは見習いたい。
972
僕は足開いたまま頭とか洗ってるしなぁ。
﹁リオって僕らの中で一番女らしいよね∼﹂
﹁ンマァ∼、セシりんよりは女らしいと思うわん﹂
僕は女性暦短いから仕方ない。
リオはアルシアさんやエインと比べても断然女性らしく見える。
リオって家事全般できる上に手芸やダンスも出来る。
夜伽や子守の作法とかも良く知ってるし、実は僕よりも貴族のマナ
ーを知ってる。
戦闘技術もアルカさんが認めるほど高いし、軍略もレミネールお義
姉様が相談するほどだ。
﹁リオって完璧超人だよね∼﹂
﹁ホエ∼? サキュバスは女性らしい事は親から叩き込まれるだけ
よん。男だけじゃなく、時には女すら堕とすのがサキュバスなのよ
∼ん﹂
インキュバスさんの出番がないじゃないですか。
サキュバスは教育ママさんなのかぁ。
﹁私の事ばかりじゃなくて、セシりんはどうなのよん? そう言え
ば未だに処女膜を維持してるの∼ん?﹂
﹁ん? あ∼、ドラゴンのシロクロとエッチしてから膜はないよ∼﹂
︻肉体変異︼でエッチに最適の体にしてからヒールで再生しなくな
973
っちゃったんだよね。
変異を使って再生は出来そうだけど、そこまでして処女膜を維持し
たいわけじゃないので。
﹁ンマー、意外。セシりんって破瓜の痛みが好きだから膜をずっと
再生させてると思ったのにん﹂
﹁僕は痛み⋮⋮は結構好きだけど、破瓜の痛み⋮⋮も好きだったけ
ど⋮⋮。スライムさんが出産の時に良くないとも言ってたしね∼﹂
﹁アァ。なるほどねん。痛いのはアーシャーちゃんのおててで拡げ
られたりで良いって事ねん﹂
確かにアルシアさんに膣に手を入れられて広げられたりしてますけ
ど。
僕が痛くないと感じないみたいに言わないで欲しい。
そこまでMじゃないもん。
乳首引っ張られたり、クリを引っ張られたりの痛さで十分だもん。
﹁ちょっと失礼するわ∼ん﹂
体を洗い終わったリオが湯船に入ってくる。
入ると僕を見つめてきた。
﹁どしたの?﹂
﹁⋮⋮橘って子とエッチしたんだってね∼ん?﹂
﹁どうしてそれを!?﹂
974
あの日の事は誰にも言ってないのに!
まさか幽羅さんがバラしたのか!?
﹁正体がオーガな桑原んが言ってたわん。橘の病室には監視カメラ
があって録画されてて、それを確認した女性オペレーターから聞い
たらしいわよん。あっちの組織の一部でその録画が広まったそうよ
∼ん﹂
﹁なんですとぅ!﹂
まさかあの時のエッチが公開オープン状態!?
僕ってばなんか色々人妻にあるまじき事を言ってた気がするのに!?
﹁⋮⋮んで?﹂
﹁ほえ? んでって何?﹂
﹁孕んだのん?﹂
しかも詳細がリオに伝わっている!?
誤魔化しようが無さそうだ。
﹁うぐぅ∼。たぶん一月後にはお腹が膨らんでると思う﹂
必死に僕を孕ませようとする勇矢君が愛おしくなっちゃったんだよ
ね。
レオン君と違って僕が初めての相手で、しかもリリス様ともしたの
に僕に一途なんだもん。
﹁ほ、ほら、子供を産むのも魔母の役目の内って言うか? ね?﹂
975
﹁⋮⋮ちょっとした昔話をするわよん。昔魔界に居た魔族が地上に
出ましたん。そして地上に出て節操なく地上の生物と性交して子供
を産みまくった女王が居たのよん﹂
﹁へ、へぇ∼⋮⋮﹂
それはあの方の事ですね。
カレーの為に世界を渡るような大魔王様の。
﹁地上と異世界の違いはあるけどねん。やってる事は同じよ∼な気
がするわん﹂
﹁はうっ﹂
﹁⋮⋮こっちの世界の神と闘うことにならなきゃいいわねん﹂
﹁⋮⋮気をつけます﹂
お風呂でリオに苦言を呈される僕なのでした。
◆◇◆
﹁引越しですか?﹂
﹁はい。出来れば都内ではない場所へ引っ越していただけると嬉し
いのです﹂
皆仕事が終わって家に揃った頃に幽羅さんが訪ねてきた。
そしてお引越しのご提案をされる。
976
﹁皆様方のような強力な妖魔が都内に居ると、色々と問題がありま
して﹂
﹁と言うことは、地方に引越しと言う事ですか?﹂
う∼ん。ちょっと困った。
都内だと電車があって便利なんだよねぇ。
地方だと車が必要だろうけど免許持ってないしなぁ。
﹁いえ、地方と言うか東京近辺の県なら構いません。と言うよりも
東京近辺の県に住んで欲しいのです。北海道や沖縄などに行かれる
のも問題がありまして﹂
﹁なるほど∼。アルカさん、どうしましょう?﹂
リリス様ではなくアルカさんに聞きます。
理由は推して知るべしです。
﹁セシルさんに任せますよ。魔族の代表なのですからしっかりとご
自身でお決めなさい﹂
﹁ほえ? いつから僕が魔族代表に? リリス様が魔の女王様では
?﹂
﹁リリス様は女王を退位しました﹂
﹁へ? い、いつ?﹂
﹁この世界に私達を連れて来た瞬間ですが?﹂
977
あ、そうですか。
退位されたリリス様はニコニコ僕を見てらっしゃる。
未だにリリス様が何を考えてるか僕には分からない。
アルカさんが怒ってるのはわかるんだけど。
突然の自身の女王即位に呆れて居ると、アウラが僕の服を引っ張る。
﹁ママ、学校に行きたい﹂
﹁ひょ? 学校?﹂
﹁うん。学校﹂
アウラはそろそろ3歳だ。
ママは学校はまだ早いと思うんだけどどうしよう。
その前に戸籍とかないから行けないのでは?
﹁学校ですか⋮⋮。アウラさんであれば高校でしょうか。手配して
おきますが、行きたい高校はありますか?﹂
﹁ある。先輩の響さんが、弟が居る高校に行くと良いと言っていた﹂
幽羅さんと二人で話し合うアウラ。
響さんってバイト先の先輩の娘だったっけ。
見学に行った時、僕の胸を見まくり誉めまくり揉みまくった娘だ。
それよりもアウラは3歳になるとこなんですが。
まぁ見た目は童顔巨乳高校生に見えなくもないですけど。
本人が高校に行きたいというなら高校でいいか。
978
あの胸で幼稚園や小学校は犯罪チックだ。
中学校でもアウトかもしれない。
﹁埼玉の私立校ですか。分かりました﹂
﹁幽羅さん、アウラ入学できるんですか? 戸籍とかないんですけ
ど⋮⋮﹂
﹁大丈夫ですよ。戸籍などは⋮⋮そうですね、皆様のも作っておき
ましょう﹂
ついでとばかりに僕らの戸籍を作るとな?
日本の根幹に関わりそうな事なのに。
もしや幽羅さんは偉い人なのでしょうか。
リリス様のした事、もう一回謝っとこうかな⋮⋮。
﹁アハ∼ン。車とか運転したいんだけど、免許とかはくれるの∼ん
?﹂
﹁リオさんはTV番組で必要なのでしたか。免許を発行しても良い
のですが、技術を学ぶ為に教習所に行って欲しいのですが﹂
﹁分かったわん﹂
リオの予定もバッチリ知っているとは。
僕らのプライベートってもしや幽羅さんに筒抜けなのか。
﹁っていうかリオ。そんな長い間、日本に滞在できないんじゃない
かなぁ? 後半月くらいで僕ら帰る事になるんでは﹂
979
﹁ふっふっふ∼、大丈夫なんだよ∼!﹂
元の世界への転送装置ことリリス様が胸を張って立ち上がる。
その勇姿は凄く不安を誘う。
﹁リオちゃんやアウラちゃんはこっちの生活も大切にしてるみたい
だし、あっちとこっちの生活を両立出来るように、私に任せるんだ
よ∼!﹂
ふふふと笑うリリス様。
また何か変な事をするんだろうなぁ。
院政へと転じた魔族界に暗雲が立ちこめていました。
980
第61話 カレーとお風呂と暗雲と︵後書き︶
華麗なる食○いいですよね。
今回は特に何もないお話でした!
基本的にこういった何もない話は結構好きな作者です。
アウラの先輩バイトの響さんの苗字は近藤です。
アウラちゃんはどこの学校に入学するんだろうね!
そして次回はリリス様が何かをするつもりっ!
何をするのか簡単にばれてそうなので困りもの。
981
第62話 ただいま異世界
海のない県へと無事に引越しが終わり早一月、季節は7月の夏真っ
盛り。
あれから特に何もなく、僕とリリス様は一緒にお昼のワイドショー
を見ております。
幽羅さんが用意してくれた家は、武家屋敷の様な塀がある大豪邸で
した。
カルドの屋敷よりは狭いけど庭も日本にしては広い感じ。
建物自体は大きめの普通の二世帯住宅っぽいのですが∼。
家の周りには林があって、林を抜けても畑ばかりです。
隔離されてる気がするけど気にしません。
人付き合いの厳しい都会より、こういった田舎の方が落ち着くしね!
﹁セシルちゃん、アウラちゃんのお勉強見てあげなくていいの∼?﹂
一緒にTVを見てるリリス様がポテチを食べながら聞いてきた。
アウラは現在、高校途中入学の為のお勉強をしています。
そんなアウラの為に僕は色々お勉強を教えていたのです。
引っ越してすぐ、算数国語から理科社会と小学校低学年のお勉強を
教えていました。
アウラに勉強を教えている間は、僕が今までにないほど家族の為に
982
役立っていた気がします。
で・す・が!
勉強を教えて1週間もするとですね。
﹁ア、アウラの勉強はですね、えーと、今は繰り返し問題を解く段
階でして⋮⋮﹂
﹁あ、そっかぁ。セシルちゃん、アウラちゃんのお勉強についてい
けなくなったんだね∼﹂
﹁うぐっ!?﹂
アウラは教えた事を一度で覚えてしまうのだ。
最初は﹁うちの子は天才だっ!﹂って喜んでたんだけど⋮⋮。
1週間もすると僕が教えられる事がなくなりました。
むしろ濃度計算とかで僕の間違いを指摘されました⋮⋮。
﹁し、仕方ないじゃないですか。僕が高校に通ってたのは10年位
前なんですから﹂
﹁﹃ふふふ、高校を出てIT技術者をやっていた僕がアウラにお勉
強を教えるんだよっ!﹄とか言って、自信満々だったのにね∼。ぷ
ぷっ﹂
こ、この姑は。
﹁そう言うリリス様だって、1ヶ月もすれば元の世界に帰れるとか
言ってたのに僕ら帰れてないじゃないですか。引越しする前に﹃私
に任せるんだよ∼﹄とか言ってたくせに﹂
983
﹁それは仕方ないんだよ∼。魔力を自己回復だけに頼ってるから、
必要な魔力が堪らないんだから∼﹂
僕の指摘にも当然でしょと言う感じの余裕を持って返事をされます。
おかしい。
何故に僕のように狼狽しないのだろうか。
見た目は僕とそっくりなのに、中身が僕より大物だというのか。
⋮⋮家事を一切手伝ってくれない姑なのにっ!
﹁セシルちゃんは良いよね∼。勇矢ちゃんと子供まで作って∼、今
朝もエッチしてたみたいだしぃ∼﹂
﹁そ、それは勇矢君が求めてくるからでして⋮⋮﹂
僕らの監視の為という名目で、勇矢君も一緒に住んでいます。
その勇矢君が朝と夜に僕を求めてくるのです。
若さ溢れる一途な彼の情熱を受け止めてるだけで、僕からは誘った
りしてません。
アウラのフォローの為に、先に通う予定の高校に編入して通学して
くれているし、断りにくいから仕方ないよね。
﹁セシルちゃんだけずるいよね∼。ぶ∼ぶ∼﹂
﹁リリス様も桑原さんとでもすればいいじゃないですか? 誘えば
喜んでしてくれるんじゃないですか? アルカさんにばれたらどう
なるか知りませんけど﹂
﹁あ、この番組面白いね∼。リオちゃんもすっかりTV慣れしたね
984
∼﹂
アルカさんの名前を出したとたんの話題変更。
僕よりも大物であるリリス様ですが、アルカさんは苦手なようです
ね。
今後困ったらアルカさんの名前を出そう!
まぁ僕のお腹が膨らんで妊娠がバレてから、僕に対するアルカさん
の視線も痛いので諸刃の剣かもしれないので多用はしませんが。
そんなこんなでリリス様とTVを見て居ると、2階からアウラが降
りてきました。
﹁あ、アウラ、勉強順調∼?﹂
﹁順調﹂
さすが僕の娘のアウラ。
順調で何よりです。
昨日見た時はリーマン予想とかいうのを解いてた。
入試の小論文対策にサラリーマンの事でも調べてたのかな?
﹁ね∼ね∼、聞いてよ∼、アウラちゃ∼ん。セシルちゃんがね∼、
私が何もしてないみたいに言うんだよ∼。自分だって一緒にTV見
てるくせに∼﹂
くわっ!?
この姑はうちの娘に何を言うのか。
確かに僕はアルカさんやリオみたいにお仕事もせず、ワイドショー
をリリス様と見ていますが!
985
このままでは僕がアウラにダメなママと思われてしまう!
何か言わねばと僕がオロオロしていると。
﹁ママは家事を毎日やってる。自分が知ってる限りの勉強の事を私
に教えてくれたりもした。ママは頑張ってる﹂
﹁ア、アウラッ!﹂
アウラが僕を誉めてくれた。
裏表がない娘なので、きっと心からの本音だ。
嬉しくて思わずうるっときてしまう。
﹁リリス様は家事してない。いつもおやつを食べてTV見てる。マ
マとは違うと思う﹂
﹁はうっ∼∼!?﹂
そう言って冷蔵庫から500mlのペットボトルをもって2階に戻
るアウラ。
颯爽と去る娘の背中から隣に座るリリス様に顔を向ける。
﹁ふっ﹂
﹁!?﹂
思わず、思わずですよ?
勝ち誇った顔でリリス様を見てしまう。
娘に誉められて嬉しいので仕方ないのです。
986
僕がニヤニヤ見ていると、突然リリス様が立ち上がった。
﹁あ、明日なんだよ∼! 明日、大魔法を行使するんだよぉ∼∼!﹂
お口の周りにポテチの欠片をつけた元魔の女王様。
彼女は力強く握った拳を天に向かい掲げて宣言したのでした。
◆◇◆
リリス様の宣言の翌日、僕らは庭に集められました。
リリス様が僕達の問題解決をするという事で、アルカさんとリオも
お仕事を休んでいます。
さらに監視の為なのか幽羅さんに桑原さんもいます。
一緒に住んでる勇矢君ももちろんいますし、アウラもいます。
﹁ポ、リリス様、一体何をなされるのですか?﹂
アルカさんが代表して質問します。
一応、主が正式に事前通達して行動するという事で敬意を払ってい
るみたいです。
ポンコツ様といい掛けた気はしますが。
﹁ふふふ∼。私は考えたんだよ∼。次元を移動する召喚術じゃあ、
行ったり来たりするだけで毎回大量の魔力を消費して大変すぎるん
だよ∼﹂
そもそも次元を越える魔法を使えるのがリリス様だけなのです。
アルカさんにすら使えない究極魔法の一つらしいですよ。
987
﹁だから天界門のようにゲートを作れば、ゼフィーリアとガイアを
誰でも行き来できて、どっちの生活も両立できるんだよ∼!﹂
リリス様が大声で何をするか伝えてくれました。
言われた事を頭の中で考える。
つまり天界と地上を繋げていたヘブンズゲートのような物を作って、
あっちとこっちの世界を繋げようとしていると。
おぉ、確かにそうなればどっちの生活も両立できそう。
そう僕が納得していると、2名ほど物申しました。
﹁じ、次元間ゲートを作り世界をつなげたら、どのような問題が起
きるかわかりませんよ! リリス様!﹂
﹁ちょ、ちょっと!? 日本国内に突然異世界への門を作られても
困ります!﹂
常識人なアルカさんと幽羅さんが抗議します。
ですがそれ以外の人達は⋮⋮。
﹁まぁまぁ良いじゃねぇか、葉雲の。こんな美人がいっぱいの世界
に行けるようになるんだぜ。むしろ大歓迎だろ﹂
﹁何をバカな事を言ってるんですか、桑原さん!﹂
﹁セシルさんの旦那さんに会って話さなきゃいけない事があります
し、ボクとしても大歓迎です﹂
﹁こ、この夢見る中年と色ボケ少年は!﹂
988
桑原さんと勇矢君はリリス様の行動に賛成のようです。
しかし勇矢君はアルシアさんに何を言う気なのかな。
﹁ンア∼、確かにゲートが出来たら便利そうねん﹂
﹁カルドの家の庭と繋げて欲しい﹂
﹁あ、それはいいね。リリス様、うちの屋敷の庭にゲートつなげら
れたりします?﹂
﹁3人とも何を言ってるんですか! リリス様を止めますよ!﹂
﹁ンヤ∼、でもゲートが出来たほうがいいわよねん?﹂
﹁うんうん。アルカさん、今回はリリス様も考えて行動してるよう
ですし、大丈夫なんじゃないですか? 突発的にやろうとしてるわ
けじゃないですし﹂
﹁そ、それはそうですが、しかし異なる世界間をつなぐ事が問題で
⋮⋮﹂
いつもの瞬間の思いつきではなく、今回は1ヶ月以上魔力貯蓄とい
う期間があった。
その為かアルカさんも止めるのを躊躇しているようです。
﹁それじゃあリクエストに応えて∼、セシルちゃんのお家の庭と繋
ぐんだよ∼﹂
常識人2名が戸惑っている間にリリス様が魔法行使の体勢に入った。
989
いつもの禍々しい魔力ではなく、全身から黄金の光があふれ出す。
﹁︱︱︱。︱︱︱! ︱︱︱!!﹂
僕には理解できない言葉を紡ぐリリス様。
その姿は金色の魔力に彩られ、とても神聖な存在に見える。
リリス様が正面に手ををかざすと金色の光が集まる。
そして集まった光が重厚感を増し、徐々に巨大な建造物へと姿を変
える。
光が収まり現れたそれは、ヘブンズゲートと寸分違わぬ物だった。
﹁︱︱︱︱︱︱!!!﹂
最後にリリス様が門に向かい何か言うと、ゴゴゴゴという轟音と共
に門が開かれていく。
荘厳な門がゆっくりと開いていく中、僕はふと疑問に思った事を口
にする。
﹁そう言えばリリス様、魔力がまだ足りなかったんじゃないんです
か?﹂
﹁うん? 狙った世界と確実に繋げる為の魔力が足りなかっただけ
だよ∼。この魔法の行使自体は問題ないんだよ∼﹂
⋮⋮やはり僕らの頂点のお方は恐ろしい御仁でした。
下手すると、とんでもない世界と繋がるんですね?
その一言を聞いたアルカさんの目がスゥと細められたのを僕は見た。
きっとリリス様は、後でお仕置きされるんだろう。
990
急遽、緊張を伴って全員が開く門を見つめる。
ゆっくりと動く門が完全に開き、彼方の世界の光景が目に入る。
開いた門の先に誰かが立っていた。
﹁セ、セシル⋮⋮!﹂
銀髪の髪に褐色の肌の美しい女性。
僕が会いたかった愛しい人です。
﹁アルシアさん⋮⋮﹂
◆◇◆
アスターを抱いたアルシアさんと見つめ合う。
長い間会えなかった恋人同士の再会。
そのシチュエーションに見つめ合いながらうっとりしてしまう。
実際は会えなかった期間は約2ヶ月なんですが、僕の心では何年も
会えなかった気分になる。
優しく抱きしめられるのかな。
それとも強く二度と離さないとか言いながら抱きしめてくるのかな。
どっちの場合も、その後キスをしてきてくれるはず。
真剣な顔をしながら、うへへとアルシアさんを待っていると。
﹁ママ∼、わぁぁん!!!﹂
991
アルシアさんが抱いていたアスターが泣き出した。
泣いたアスターは体をぐにぐに動かして、アルシアさんから地面に
降りようとする。
アスターが降りたいのを察したアルシアさんが地面へと下ろす。
﹁わぁぁん!﹂
泣きながら僕に向かってくるアスター。
ごめんね。
ママってば自分がアルシアさんに優しくされるシチュエーションば
かり考えて。
そんなに大泣きするほどママに会いたかったなんて!
愛しい子供との再開に僕も思わず涙ぐむ。
向かってくるアスターに合わせて、大きくなったお腹を気遣いなが
らしゃがむ。
しゃがんだ僕の胸にアスターが飛び込んで︱︱こないで横を駆けて
いく。
﹁リーオーーー!!!﹂
﹁オー、よしよしなのん。寂しかったのねん﹂
立ち上がり後を確認すると、アスターはリオに抱っこされていた。
つまり僕ではなく後にいたリオに向かい一直線に駆けて行ったので
すね。
﹁ア、アスタァ⋮⋮﹂
992
くっ!
まだだ!
まだ終わらないのです!
僕にはアルシアさんと言う愛しの旦那様が!
﹁アルカ様、これはなんなんですか? 空いた時間に家に戻ってア
スターと遊んでいたら、突然庭に大きな門が現れて驚きましたよ﹂
﹁異界に飛ばされた私達が戻る為に、リリス様が次元間ゲートを作
ったのですよ。はぁ﹂
あれ?
状況確認を素早く行っている?
アルシアさんはいつでも僕にまっしぐらだったはずなのに。
警邏の仕事をするうちに成長したのかな⋮⋮。
﹁こ、これは一体⋮⋮﹂
﹁お嬢さん、そのお耳はエルフですか? エルフですね。どうです
か、俺と付き合ってみませんか?﹂
﹁え? はぁ、確かに私はエルフ族ですが⋮⋮﹂
﹁ちょ、ちょっと桑原さん、見知らぬ方をいきなりナンパしないで
ください!﹂
﹁は、離せっ! エルフが! エルフがいるんだ! 俺の全てを賭
けてでも口説き落とさねばならん!﹂
あちら側から来たエルフ族のメイド長メロディアさんを桑原さんが
993
ナンパしていた。
それを必死に止める幽羅さん。
その間に僕を見つけたメロディアさんが、僕の傍に避難してくる。
﹁うわっ、何これ。庭に突然門が現れたと思ったら違う場所に通じ
てる? あ、セシルお姉様!﹂
﹁セシルさんの関係者の方ですか? ちょっとお聞きしたい事があ
るのですが﹂
﹁へ? あんた誰?﹂
﹁僕は橘勇矢と申します。セシルさんに人生の生きがいを与えられ
た者です﹂
﹁生きがい? へぇ、あんたもお姉様に助けてもらったんだ﹂
僕を見つけたエインが勇矢君に捕まり二人の会談が始まった。
﹁あのー? 一体どうなってるんですかぁ?﹂
﹁ぷるぷるぷるぷる﹂
﹁あ、ママだー﹂
﹁ママー﹂
子供達を連れたラミューとスライムさんも門を潜ってきた。
そして僕を見つけた子供達が僕に向かって走ってきて︱︱体当たり
をする。
994
﹁はうあっ!? こ、こら、皆、ママはお腹に子供がいるから体当
たりしないでっ﹂
﹃はーい﹄
揃って返事をしたダークエルフ、淫魔、エルフ、ラミア、人間の7
人の子供達。
上は3歳で下は2歳半だろうに頭が良いし仲良しさんだなぁ。
子供達はアウラを見つけると、一緒にこちら側の庭を適当に走って
追いかけっ子を始めた。
﹁えっと、セシルさん、おかえりなさい?﹂
﹁ただいま、ラミュー﹂
﹁ぷるぷるぷる﹂
まだ幼い竜魔の子を抱えたラミューとスライムさんが僕を迎えてく
れた。
おかえりなさいと言われ、やっとカルドの皆の所に帰ってきたと実
感する。
今も居るのは日本の家の庭だけど。
本来僕を迎えて抱きしめてキスをしてくれるはずのアルシアさんは
∼。
状況を確認したら門のあっち側のメイドさん達に指示をしています。
突然の状況でも的確に動いてるアルシアさんはカッコいいけど、構
ってくれなくて寂しいっ。
995
﹁閣下、ご帰還を心より祝福いたします﹂
﹁ん、ありがとう、メロディアさん﹂
隣に来てたメロディアさんも祝って迎えてくれる、
笑顔の彼女を見て僕はより帰郷の気分を感じていたのですが。
﹁ご不在だった間の公務が溜まっております。まず第5師団の再編
成と、それに伴う常駐の拠点作成案、及び第5師団による南の外海
にある島の開発事業。さらにカルドの人族ではない方々の入植拡充
に伴う決議等、それと外交として法国および連邦と、レイニー様方
が治める聖国からの面会が多数ございます。他にも︱︱﹂
﹁ちょ、ちょちょ∼∼!? メ、メロディアさん、僕ってば戻って
きたばかりですよ?﹂
﹁あぁ、そういえば﹂
いきなりありえないほどの仕事をさせようとしてくるとは。
僕の仕事はハンコを押す事くらいしかしてなかったのに、なんか仕
事が増えているし。
まぁカルドに戻れるようになったばかりで、すぐやるのは無理と理
解してくれたようだからいいけど。
そのまま有耶無耶にして、難しそうなのはネーブルに押し付けよう。
﹁ネーブル様のご結婚関連のお仕事もございますので﹂
﹁あれ!? 僕にそんなたくさんの仕事とか無理だとわかってくれ
996
たんじゃ!?﹂
﹁閣下もそろそろ観念して貴族のお仕事を覚えてくださいませ﹂
そういえばって言ったのは納得したのではなく、思い出しただけな
のですね。
﹁私も手伝いますから、一緒に頑張りましょう。セシル﹂
﹁アルシアさん⋮⋮﹂
貴族のお仕事に打ちのめされてる僕の肩をそっと寄せる。
抱きしめられるわけじゃなく、体を寄せ合ってるだけだけど安心す
る。
アルシアさんを傍で感じ、自分が帰る場所を実感した僕なのでした。
997
第62話 ただいま異世界︵後書き︶
レム君はネーブルとにゃんにゃんしてたので、現れませんでした。
998
小話 リリス様お仕置き会
バキバキバキ⋮⋮。
巨大な木々が生い茂る森の中に、巨木が折れる音が木霊する。
﹁セシルさん、目標がそちらに逃げようとしています! 前方に魔
法を撃って足止めをして下さい!﹂
エクスプロージョン
﹁ふぇぇ、了解ですっ。︻爆裂魔法︼!﹂
遠くから聞こえてきたアルカさんの声に従い魔法を撃つ。
溜めなしで撃てる中での僕の最強魔法。
しかし対象は僕程度の最強魔法ではダメージはなかったようで。
﹁ぷはぁ!? ひ、酷いよ∼! セシルちゃんまで私に魔法を撃つ
なんてぇ∼!﹂
爆風で足は止めたものの、とても元気に抗議をしてらっしゃる。
﹁リリス様、逃げないでアルカさんに土下座して謝りましょうよ。
アルカさんも鬼じゃないんですから、必死に頭を下げて反省して謝
れば許してくれますよ。たぶん﹂
﹁アルカちゃんに謝る事なんてないんだよぉ∼∼! 私、悪い事し
てないんだもん∼∼!!!﹂
今僕らが追っている目標ことリリス様は、両手をブンブン振りなが
999
ら怒鳴っております。
﹁結果よければ全てよし。とは行かないんですよ。リリス様﹂
﹁ちゃんとこっちの世界に戻れたのに、何で怒られるのぉ∼!﹂
何故に元魔族の女王様、現魔族の院政の支配者様を追っているのか。
それにはもちろん事情があります。
リリス様が使った日本とゼフィーリアを繋いだ門を作る魔法。
それは有翼族の最秘奥の魔法の一つ。
異なる次元間を繋ぐ究極魔法。
最終的には今は亡き有翼族の王様と恋人になったリリス様。
そんな恋人だった王様から、その魔法を教えてもらったらしい。
ここまでの話なら、元恋人から教わった魔法を使い故郷に帰る。
そんな温かい話で終わったのです。
しかし物事には裏が在るわけでして。
次元門魔法はとても不安定な物で、狙った世界に繋ぐのはとても難
しいらしい。
さらには上手に繋がないと、繋がった二つの世界が次元的に重なり
消滅するとか。
有翼族的には禁忌の魔法となっていて、使用してはいけないんだと
か。
元々はゼフィーリアとは異なる世界の住人だった有翼族の丸秘秘話
です。
1000
とまぁ、そんな話を有翼族のルネちゃん︵昔ラーメンを作ってくれ
た娘︶から聞かされた僕とアルカさん。
話を聞いた後、真偽をリリス様に問い詰めると。
﹃次元門の魔法なんて使う機会がないんだよ∼。だから折角の機会
だから、使ってみたんだよ∼﹄
そんな事を笑顔でおっしゃった。
それを聞いて、さすがのアルカさんも激怒。
現在お仕置きの為か逃げるリリス様を捕縛しようとしてるわけです。
﹁む∼。セシルちゃんも、アルカちゃんに私は悪くないって言って
よ∼﹂
﹁や∼、さすがに僕も、世界消滅の危機だったと聞かされてはフォ
ローできませんよ⋮⋮﹂
安全に使えるなら、狭い天界に閉じ込められてた有翼族の王様が使
ってるよね。
むしろ天界に閉じ込められてた時に、よくリリス様が使わなかった
よ。
有翼族の人にでも止められてたのかな。ありそうな。
﹁じゃあいいもん。だったらこのまま逃げ切って﹂
﹁残念でしたね。リリス様、追いかけっこは終わりです﹂
﹁ひっ!? ア、アルカちゃんにリエルちゃんにシルファちゃん⋮
⋮﹂
1001
僕と会話していたリリス様の頭上に3人の魔人様が現れる。
炎と氷と風にその身をかえた、魔族最強の3魔人様。
ガラスのような体の氷属性のリエルさんと、緑色の見える疾風と化
してるシルファさん。
この二人の事は良く知りませんが、アルカさんと同格と言う時点で
お察しです。
﹁今回の事はさすがに眼に余ります。私が甘やかしていたばかりに、
世界消滅の可能性がある魔法を使わせてしまう事になるとは﹂
アルカさんって甘やかしてたっけ?
事あるごとにきっちりお仕置きしてたような。
﹁アルカちゃん、怖いんだよ∼⋮⋮﹂
﹁二度と禁忌の魔法を使えないように、封印して徐々に魔力を搾り
取って差し上げます! リエル、やってください!﹂
コキュートス
﹁︻氷獄封印︼!﹂
﹁えぇぇ!? それは氷の魔人族の禁忌の魔法だよぉ∼!? リエ
ルちゃん、ひど︱︱﹂
氷魔人のリエルさんに声をあげたリリス様が、一瞬で透明な氷に包
まれる。
リリス様は巨大なピラミッドのような氷塊に閉じ込められた。
﹁さて、反省の為にリリス様は暫く放置しましょう。解放前には魔
力を搾り取り、害がなくなったら開封しましょう﹂
1002
頷きあってる3魔人様。
その3人に僕はそーと意見する。
﹁あの∼⋮⋮禁忌の魔法を使わせない為に、今禁忌の魔法で封印し
ませんでしたか?﹂
﹁セシルさん、何かおっしゃいましたか?﹂
﹁何でもありません。気のせいですよね。うん﹂
炎化を解いたアルカさんに笑顔で見つめられ、質問を取り下げる。
笑顔って人によっては物凄い凶器ですよね⋮⋮。
﹁リリス様も無事封印しましたし、改めて紹介しなければいけませ
んね﹂
﹁ほえ? お二人の事なら捕縛作戦前に紹介されましたけど?﹂
いくら僕でも、つい数時間前に紹介された二人を忘れません。
﹁違いますよ。貴女をです。セシルさん﹂
﹁へ?﹂
僕を二人に紹介とな?
リエルさんとシルファさんは既に僕を知ってるようなのに何故に?
疑問いっぱいの僕に手を向けて、アルカさんがお二人に話しかけま
した。
1003
﹁様々な理由で女王を退位なされたリリス様に代わり、リリス様よ
り力を授けられたこのセシルさんを、今後正式に女王としようと思
います。リエル、シルファ、我らの新たな女王陛下にご挨拶を﹂
﹁セシル様、魔族の女王就任おめでとうございます﹂
﹁セシル様に従う魔族を代表して、忠誠をお誓いします﹂
アルカさんに促され膝を折り、跪くお二人方。
あれ、アルカさんまで跪いた!?
魔族最強3人衆に跪かれ、どうしていいかわからない。
﹁え⋮⋮えっと、僕は明らかにお三方より弱いんですけど⋮⋮﹂
﹁魔の女王とは力の大小ではございません。あらゆる魔をその身に
宿す魔母なればこその女王なのです﹂
リエルさんが顔を下げたまま言ってくる。
つまりリリス様と同じ魔母だから⋮⋮と。
僕はリリス様みたいに魔母の力をちゃんと扱えないんですけど⋮⋮。
﹁⋮⋮拒否権は?﹂
返事なし。
拒否権なしですか。
うん、僕に拒否権とかないのはいつも通りですね!
異世界に戻り、僕は正式に魔の女王となったのでした。
1004
世界を滅ぼせそうな魔人達の女王とか無理なんですけどっ!?
1005
小話 リリス様お仕置き会︵後書き︶
リリス様が本気になれば封印は破れます。
でもリリス様も、一度使ってみたいって理由で使ったのはまずかっ
たかなぁと反省しているので、大人しく封印されました。
アルカさんは本気で怒ってますが∼リリス様の事を好きだし、その
うち許すはず。
そして自力では全く成り上がらない主人公のセシルさん!
エロとギャグ担当だから仕方ないのか!
本当は違う話を書くはずが、TV見てたらこの話が出来上がってた
ので更新っ。
こういう話はどうなのかな?
そろそろエッチィのを?
1006
人物紹介︵ネタバレ含み︶
簡単な人物紹介と裏話です。
特に読む必要はありませんので、無理に読まないでくださいっ!
設定とかも大体こんなんですよ∼程度なので!
∼∼セシルの家族&身内∼∼
◆セシル︵本名セシリア・マリンズ︶
魔族。26歳。
120cmのLだかMらしい胸の持ち主。
主人公にあるまじき迂闊さ、お気楽さ、まぬけさと色々足りてな
い。
リリス様の召喚魔法によりゲームそっくりのファンタジー世界へ。
元は男だったが召喚と同時に女性キャラのセシリアと同化してし
まい女性化した。
出産した辺りからほぼ精神も女性化している気がする。
性癖はドMの受け思考。
旦那様のアルシアに触られたりキスをされるとうっとりする。
大人の男性が怖い、見た目を誉められると喜ぶ乙女さん。
押しに弱く、襲われたらほぼ無抵抗で股を開く。が本人は貞操は
固いつもりでいる。
戦闘能力は作中でも上位なのだが、本人の性格の為に戦闘では役
立たずな事が多い。
◇裏話
1007
強キャラ設定を生かして普通に成りあがるはずが、何故か強さの
欠片もない感じになってしまった主人公。初期の彼女は魔王となっ
て女性を囲い込むはずだった。それがむしろ女性向けのヒロインの
ように周りの人達からモテて自分が囲われる。なんでこんなにアホ
の娘になったんでしょう?
◆アルシア
ダークエルフ。28歳。
褐色銀髪の巨乳エルフ。
ダークエルフ族の族長の妹。
セシルよりは小さいがバストは90くらいあるはず。
セシルの事が大好きで行動理由がセシル及び子供達のためになっ
ている。
嫉妬してるつもりはないが、無意識に男にはセシルを渡さないと
思ってる。
レムリアとはセックス済みで、初体験の相手がレムリアだったり
する。
魔法が得意で合成魔法という独自の魔法を使う。
◇裏話
初期予定では忠義の騎士のようにセシルを守る人になるはずだっ
た。
でも気づけば純真無垢なセシル大好き一直線の人になっていた。
元々はセシルと結婚する予定はなかったけど、気づけば結婚して
いた。
◆リオティネック
魔族。年齢不詳。
ピンクの髪に黒い羽、鉤尻尾。
基本的に乳輪と割れ目の筋を黒い影で覆うだけの姿をしている。
1008
魔母のセシルに忠誠を誓う。
擬似的に男性器を作る能力を生かし、女性ばかりのダークエルフ
族に女性同士で子供を作れる手助けをしている。その能力により、
セシルに自分とアルシアとフェシスの子供を孕ませた。
エロ実技に知識はもちろん、家事全般から歌にダンス、手芸、果
ては軍略など、何でも出来る完璧超人。その能力を生かして、セシ
ルの腹心として表では子守や政務、影では護衛などで活躍している。
セシルの子供のアスターに異様に好かれている。
戦闘では影を操り中身のない分身を作ったり、影で身を守ったり
する。
◇裏話
元々はエロ担当のアホの娘の予定でした。
でもなぜか割りと良識もってる忠義者に。
特に巨乳じゃないけど、一番バランスの良いスタイルと実は良い
性格なので、お嫁さんにするならリオがお勧めだと思います。
◆エイン︵赤髪のエイン︶
人間。18歳。
胸は控えめで、下の毛は産毛しか生えてない。
帝国の田舎の村の集合住居で孤児や訳ありの子供と一緒に過ごし
ていた。だがある日、村がぷち飢饉に襲われ食い扶持を減らす為に
村を出る。その後、近隣の村々であぶれていた人達をまとめ盗賊団
を結成する。不当な儲けを出している貴族や商人を狙う義賊を目指
していたが、偶然出会ったセシルに負けてあえなく盗賊家業を廃業
する。
物凄く強いのに優しいセシルに惚れて共に行動する。
真性のレズではないが、ややレズよりの少女。
ちなみにアジトの砦にあった金品は縄張りを奪う為に退治した盗
賊達から回収した物。
1009
◇裏話
集まった盗賊団員達は、当時13歳だったエインを心配してた人
が多数。
参加してからも地元の村や家族と連絡をとってる人もいた。
人を惹きつけるカリスマもあったが、それ以上に心配されていた
だけである。
◆スライムさん︵ブルースライム︶
スライム。年齢不明。
作中最大の良心。
困ってたり傷ついてる人がいれば誰でも助ける。
セシルの治療を献身的に行った偉い魔物。
弱いスライム族はラミアやダークエルフ等の他の魔物のお世話を
することで保護してもらっている。それ以上にお世話してるので、
各種族からの信頼が厚い。
最近はラミュエルに告白され、彼女と恋仲に。
でもスライムさん的には見守る気分なんだろうなぁ。
◇裏話
セシルの治療には献身の気持ちしかなかったのですが∼。たぶん、
セシルに女の喜びを最初に教えた人。優しい気持ちで体を包んでく
れたスライムさんの事は、セシルはアルシアと同じくらい好きで信
頼してる。
◆ラミュエル
エルフ。16歳。
双子エルフ姉弟のお姉さん。胸は平原。
12歳の時にセシルと出会い助けられ、体を開発されちゃった娘。
セシルの側にいたせいで通常の恋愛感がなく、普通のエッチも求
1010
めていない。
性欲が我慢できないでスライムさんにしてもらった事が切欠で、
スライムさんに愛情を持つ。
密かに、そのうちセシルに頼んでスライムさんの子供を産める体
にして貰おうと思っている。
◇裏話
子宮内スライム姦とか腸内姦などを担当するはずだった彼女。書
くタイミングがなくてお流れになっています。
◆レムリア
エルフ。16歳。
双子エルフ姉弟の弟。胸は⋮⋮実は姉よりある。
見た目が姉と同じで、ちょっとオドオドしてる様子から女の子に
しか見えない。
セシルに精通させられ、セシルに子供を孕ませた最初の男性。
こっそり処女のアルシアとしたり、リオともしたり、近所のダー
クエルフのお姉様達ともしていた。
ダークエルフのお姉様20人以上は孕ませている。
ネーブルと婚約してからはネーブル一筋⋮⋮と思いきやリオとエ
ッチの練習をしていたり、セシルの母乳を飲むときに手でして貰っ
たり、影で性豪っぷりを発揮したままである。
◇裏話
完全女性顔と雰囲気に小さなオチンチンをもつ男の娘。
まだオチンチンに抵抗のあったセシルさんすらレムの精液を舐め
る気になるほどの可愛さ。
純粋な瞳で女性におねだりやお願いをし、無知故に中出ししまく
りの鬼畜。
男の娘なのに男性との絡みがない幸せ者。
1011
この紹介を読んだ男性読者の嫉みを買う事間違いないと思います。
◆アウラ
アルラウネ。3歳。
セシルの娘。
擬態や変身やらで姿は色々変えられる。
普段は金髪緑目、150cm、B85の童顔ロリ勇者少女。
セシルさんの能力により、チート性能の能力を持つ。
闇の衣を使い硬化して攻撃や、魔法遮断などをする。アルラウネ
という一介の魔物ではなくラスボス級かと思われる。
魔法も使えるはずが、本人が物理攻撃が大好きなので基本拳か蔦
で殴るしかしない。
現在は高校入学を目指し勉強中。知能レベルは親のセシルを既に
超えていると思われる。
◇裏話
無表情の魔物娘のはずが、かなり行動的になってしまった。なん
で勇者を目指していたのか作者にもわからない。突発的な行動は親
のセシルさん譲りなのか、竜退治に向かったりは予定外の話になっ
たりしました。勇者目指したり高校入学しようとしたり、アウラが
登場すると予定外の事が起きます。
◆セシルの子供達
・一次出産︵アスター、ディード、モリガン︶
左からダークエルフ、エルフ、サキュバス。
アルシア、レムリア、リオティネックとの子供。
唯一の男の子なアスターはセシルよりもリオが大好きで、リオの
生乳、生腹、生足をいつもペチペチしてる。
・二次出産︵テース、リット、フェイ︶
左からダークエルフ、エルフ、サキュバス。
1012
アルシア、レムリア、リオティネックとの子供。
・三次出産︵アウラ︶
アウラの項参照。
・四次出産︵メディア、マリア︶
左からラミア、人間。
フェシス、レオンとの子供。
・五次出産︵メルキア、フィルト︶
二人共にセシルが生み出した新種族の竜魔。
竜の因子をもった魔族で、絶滅寸前の竜の子を産めるように生み
出した。
が、セシル的に竜のお嫁にする気はなく、本人達の自由意志に任
せる予定。
見た目は角と尻尾が生えた人間。 ・六次出産︵彩夢︶
人間で日本人。
勇矢との子供。
戸籍上は橘彩夢。
◇裏話
アスターを除くと全員が女の子。
各自それぞれ魔力や身体能力がチート性能な子供達。
名前の由来はエルフ系はロー○ス島からです。他はそれっぽいの
を。
思った以上にセシルさんが子供を生むので、全員を把握するのが
地味に大変。
セシルさん、ヒロインの癖に子供産みすぎなんですよ!
◆お義母様
ダークエルフ。年齢は秘密。
アルシアさんの実母でダークエルフの長老様の一人。
1013
セシルさんの義母で、家事が出来ないセシルさんを責めたりしな
いで来た人。
熟女で色気あるむっちり巨乳美人。
◆メロディア
エルフ。年齢不詳。
セシルに仕えるメイド衆のまとめ役のメイド長。
セシルの補佐や雑用、護衛、教育を行っている。
魔力や身体能力に関しては将軍のネーブルにも劣らず、セシルは
メロディアから逃走する事が出来ない。
エルフ族だからか本人の資質か、胸はやはりまったいら。
そんな彼女の胸をセシルが能力で豊胸し始めてから、絶対の忠誠
を誓う。
現在ちみっと胸が大きくなった事に大層喜んでおられます。
◇裏話
もちろんただのメイドなわけもなく、帝国の皇帝がいざと言う時
にセシルを暗殺する為に送った人。
と言ってもただの暗殺者を送っても敵わないので、色々あるメロ
ディアが選ばれた。
でもダークエルフのような巨乳への道が見えた今、忠誠はセシル
に全て捧げられてたりするんですけどね。
◆メル&リル
人間?。年齢不詳。
10代に見えるそっくりなセシル専属双子メイド。
左目が青、右目が赤のオッドアイ。
毎朝のセシルの湯浴みを担当しており、その最中に毎回セシルの
母乳を飲んでいる。
1014
その時にセシルの膣とお尻を双子ならではの連携で、手を挿入し
快感を味わわせている。
セシルの母乳を飲んだ影響か、肌艶が良くなり、身体の能力も上
がった。他にも魔眼を発現したり、性的欲求が高くなったりもして
いる。
◇裏話
皇帝から送られたセシル専任の監視役。
だったのですが、セシルの母乳を大量に飲みすぎて既に眷族化。
理屈ではなく本能レベルでセシルに忠誠を誓っている。セシルも無
意識に二人を自分の眷属と認識して信頼している。
◆パティ︵本名パティ・ノール︶
猫人。年齢不詳。
セシルの屋敷の調理担当。
小柄な猫族で落ち着いた性格。
料理の腕は一流。
ご飯は皆で一緒の方が楽しいし美味しいと公言するセシルを好ま
しく思っている。
メロディアやメルリルのように裏はなく、普通にセシルに仕えて
いる。
∼∼帝国の人々∼∼
◆帝国皇帝レグルス︵本名長いから割愛︶
人間。年齢20代。
世界制覇を目論む野心家。
成果、実力主義で冷酷な現実主義者だと思われている。
しかし実態は種族差別があるのが気に食わず、世界平和を誰より
1015
も望んでいる。
失敗した部下を処断したりせず、左遷させて遠回しにチャンスを
与えたりと甘い所がある。
◇裏話
当初はセシルを捕まえ拷問調教して孕ませるラスボス的役所だっ
たのですが∼。
セシルの帝国に寄生しちゃえ♪的考えのせいで、諸々の野望が灰
塵に帰し、結局世界が平和な方向へ行ったのにいまいち納得できて
居ない可哀想な子。
女性に甘い上に子供にも甘いので、沢山の子供の母親であるセシ
ルをどうこうできず、国主としてそのサポートをする存在と化した。
野望を他人にもっていかれた皇帝とか、悲哀しか感じないですよ
ね⋮⋮。
◆ネーブル
人間。29歳。
青髪長髪でスレンダーな眼帯巨乳美人さん。
帝国の公爵で皇族の血を引いてる偉い人。
そしてセシル被害者の会の会長。
昔セシリアに左目を潰され、その後帝国に来たセシルの仕事と起
す問題全部を処理させられてるまごう事なき被害者。
男縁がなく、レムリアと婚約してセシルの義娘となるなど悲運は
続く。
同僚としてだけではなく、義娘としてもセシルと縁が出来てしま
い、プライベートな問題の解決にもこき使われるさだめを持ってい
る。
◇裏話
セシルのライバルになるはずが、気づけば貧乏くじを担当してい
1016
た。
婚約者のレムリアもセシルが変な事仕込んでたせいで、普通のエ
ッチをしてもらえてない。
痴女調教というか露出調教というか⋮⋮レム君に変態調教をされ
て順調に開発されている。
◆ベルガモット
第2師団所属のネーブルの副官。
エルフ族だけどそれなりに胸がある。
◆シトラス
ネーブルつきの政務補佐官。
人間。眼鏡をかけた噂好きな女性。
ある時レムリアのネーブル調教︵レム本人は愛情を示してるつも
りなだけ︶を知ってから、レムリアが調教しやすいように場を整え
ている。
女顔の男の娘なレムにネーブルが調教されるのを妄想して楽しむ
問題がある人。
◆ヴェルガ
竜人。
第1師団の師団長にして筆頭将軍。
土系の魔法が得意。
実直真面目な性格で、皇帝に対する忠誠心も厚い。
◆フォルム
エルフ。
第2師団の師団長。
風魔法が得意。
いつも仮面をつけて素顔を隠している。
1017
やる気と興味を感じさせない喋り方をする。
◆ユピテル︵本名ユピテル・トゥローノ︶
猫人。
第3師団の師団長。
雷の魔法と高い身体能力を生かした接近戦が得意。
明るい性格で、いつも楽しそうにしている。
◆アレイスター︵本名アレイスター・ファブニル︶
人間。17歳。
カルドに住む貧乏な一般家庭出身。
真面目で家族思いの努力家。
魔法の才能が有り、12歳の時にカルド士官学校の入学試験を受
け合格する。
自分が高い地位に登り、家族を豊かに過ごさせたいと思い出世を
目指す。
才能はあるが魔法も戦闘技術も得意なわけではなく、日々真面目
に訓練をして100人程いる同学年の中で10位の成績をとる。
貴族社会である士官学校において、気安く声をかけてくれるレイ
ゲンとミリアには厚い友情を感じている。反面、貴族である二人に
一歩距離をおいている。
◆レイゲン︵本名レイゲン・M・バルトシュタイン︶
人間。17歳。
セシルと同じ侯爵家の跡取り。
文武共に才能が有り、才能が在るため努力をせずトップにはなっ
ていない。
領地経営の才能が自分は高くないと考え、軍の士官学校に入学し、
軍部で誇れる実績を作る事を目指している。
1018
チャラチャラした軽い性格だと周囲には思われているが、下手に
目をつけられない為の処世術でやっている。︵軽い態度を普段しと
けば、裏を読みあう貴族社会で警戒が薄れるだろうと考えて︶
貴族主催の夜会や茶会に飽き飽きしており、貴族を一切感じさせ
ない一般庶民であるアレイスターの事を気に入っている。
◆ミリア︵本名ミリア・トゥローノ︶
猫人。17歳。
紫の短髪の猫美人。
第3師団の師団長ユピテルの妹。
公爵家のお姫様。
姉と家への義理だけで士官学校に入学。適当に学校生活を過ごそ
うと思っていた。
ある時、真面目で真っ直ぐで家族思いのアレイスターに出会い恋
をする。
アレイスターと共に歩きたくて頑張っていたら、持ち前の才能か
ら成績1位の筆頭生徒に。その結果を悪いと思ったが、気にせず誉
めてくれたアレイスターの為に﹃妻﹄として生涯尽くしたいと考え
る。
しかし直接告白する勇気はなく、遠回しな好意のアピールは成功
して居ない。
好きな人の鈍さにヤキモキする生活を送っている恋する猫乙女さ
ん。
∼∼魔族&魔物の方々∼∼
◆フェシス
ラミア。21歳。
姐御肌のラミアさん。
1019
帝国に捕われてたセシルを偶然救出する。
その後、セシルを探しに来たエイン一行を捕らえ、開放する代わ
りにダグラス達にラミアの誰かへの子種を要求するなどをしていた。
合流後はリオの力でセシルに子供を孕ませた。
さっぱりとした性格で、セシルと共に過ごしたりはせず、セシル
配下の魔軍の将の一人として軍務を行っている。
セシルにとって家族というより恩人。
◆レオン
人間。18歳。
黒髪黒目の美形。
リリスによるセシル召喚の影響を受けた子。
人格にも影響を受け魔王を目指していたが、その考えはリリスの
願いと逆の戦争による人族根絶。
恩人セシリアであるセシルと再会後は元の純真な性格を取り戻し、
セシルの考えを実行に移す助力をする。
レイニーとティティスに唆されセシルに子供を孕ませる。
セシル配下として戦うようになってからは、戦果を理由にセシル
とセックス三昧の日々を過ごす。
セシル好きを嫉妬したレイニーに、新たに建国された魔族と魔物
の国である聖国にて軟禁状態で閉じ込められる。軟禁中、恋人であ
るティティスとレミネールを孕ませる。
◆ティティス
ラミア。年齢不詳。
ラミア族の族長。
巨大な鉈や槍を使うのが得意。
レオンの恋人兼保護者として彼を手助けし、ダークエルフの族長
レミネール、ゴブリン王、オーク王、吸血鬼レイニーを配下に加え
るのに成功する。
1020
助けた理由が当時14歳の美形童顔レオン君とエッチをしたから
というあたり、ショタコンの気があると思われる。
◆レミネール
ダークエルフ。年齢秘密。 ダークエルフを率いる頼れる族長様。
レオンの恋人兼配下ではあるが、セシルの義姉としてセシル配下
の魔族魔物の軍を纏める。
セシルに対しては魔母というより義妹として接しており、良識を
持って助力している。
天界から開放された上位魔族、その代表格のアルカからも信頼厚
く、軍としての魔族の取り纏めを任されている。
◇裏話
モデルは騎○王さんだったり。
スライムさんと同等の常識と良識を持ち、色々な能力が高い人。
この人が縁の下で支えてる事が世界が平和な理由のひとつに違い
ないと思います。
◆レイニー︵本名レイニシア・エル・ラングリオン︶
吸血鬼。300歳以上。
約300年前に滅びた聖ウェルシア王国の貴族令嬢。
昔は素直で聡明な可愛い女の子。
でも今は高飛車で偉そうな銀髪赤眼のロリば⋮⋮ロリ少女。
吸血鬼化した○歳当時の幼い見た目のまま。
この少女を美味しく頂いたレオン君はロリコンとしか思えない。
ティティスでマザコン、レミネールとセシルでシスコンをコンプ
リートしてるレオン君に惚れてる可哀想な吸血鬼の女王。
聖ウェルシア王国を魔族と魔物の国として復興させた後はのんび
りと暮らしている。
1021
セシルに対する忠誠は一応在るようで、命令されたら従う気では
あるようだ。
吸血ロリ少女に罵って欲しい人の為に、骨を倒す時はこっそりノ
ーパンだったり、セシルの影の触手プレイを愉しんだりと見た目○
歳なのにエロも出来る超越者。
◇裏話
他と比べ熱の入った人物紹介なのは気のせいです。
◆ゴブリン王
ゴブリン。
レオン配下のゴブリン族の王。
セシルの配下となってからは、囮、殿、雑用と頑張っている。
子煩悩なのかアウラとの戦いでは親戚のおじさんのようだった。
︵セシルより︶ ◆オーク王
オーク。
レオン配下のオーク族の王。
実直な性格で豚顔でも男らしくカッコいいらしい。︵セシルの感
想︶
◆リリス︵本名○○○︶
魔族。年齢不明︵本人が覚えてない︶
太古の昔から魔族を支配する女王様。
全ての魔族の遺伝情報をエッチを通して体に保存しており、各魔
族に変身する事もできる。
現在生きる魔族は全てリリスの血を引いており、彼女に逆らう事
が出来ない。
1022
魔族だけではなく、魔物や人族も愛しており、分け隔てなくセッ
クスをし子を産み、同時に遺伝子を回収し支配を拡げた。
神と天使を名乗っていた有翼族とのいざこざのさい、天界に閉じ
込められてしまう。
その為、戦争状態のゼフィーリアにセシルを召喚し、自身の代わ
りに自分の子供達同士の争いを止めてもらおうとした。
戦闘能力は全ての魔族と多数の魔物や人族の能力を内包している
ので無敵に近い。魔力が異常に高く、種族全員で使うはずの禁術だ
ろうがなんだろうが、個人で履行してしまう。
セシルと直接出会ってからは彼女と一緒に行動する。
何があっても明るく笑っていて、いつもセシルに明るい笑顔を向
けている。
◇裏話
能力だけを見れば最強無敵の女王様なのに、性格がセシルと同じ
で残念。
楽天的で突発的、リオがセシルと似てるというほどの残念さ。
もっと偉大な女王様にするはずが⋮⋮。
◆アルカ
炎の魔人。年齢不明。
イメージは火の精霊。
リリスに仕える側近と言う名のお世話係。
熱を操る能力を駆使した料理が趣味で、リリスが食べたい物を作
るのが好き。
皆が幸せなのがいいと考えるリリスを慕っており、なんだかんだ
言いながらも忠誠心は高い。
1023
◇裏話
リリス様が封印されてからは、セシルの元を離れ行方不明中です。
きっと開放された喜びで、慰安旅行でもしてるんですね!
◆リエル
氷の魔人。年齢不明。
イメージは氷の精霊。
青白い肌とサファイアのような目を持つクールビューティー。
魔人化すると水晶のような透明な体に変化する。
居なくなったアルカの代理として、セシルに仕えている。
◆シルファ
風の魔人。年齢不詳。
イメージは風の精霊。
リリス様を追い詰めるのに手を貸した魔人。
季節が夏じゃなければ、セシルの家の護衛はシルファがしてたか
もしれない。
夏で暑いからリエルが選ばれて、出番が⋮⋮。
◆ルネ
有翼族。年齢不明。
アウラやセシルにラーメンを作ってくれた透けてる服を着た微乳
少女。
有翼族の代表のような存在でリリスに仕えているが、リリス本人
はラーメン少女としか認識して居ない気がする。
◆シロ&クロ
ドラゴン。年齢はドラゴン的に若造。
うっかりアウラに倒され絶滅する所だった。
1024
セシルのおかげでクロの子孫は一杯残りそうである。
シロは今もアウラに狙われているので、子作りをしにカルドにこ
れない。
自己中セックスに腹を立てたセシルが﹁シロには娘をあげないも
ん﹂と言ったばかりに⋮⋮。
∼∼冒険者∼∼
◆ダグラス
人間。30歳前後。
セシルと知己で、エインのセシル救出隊にも参加した冒険者。
リーゼントと顎鬚が魅力のナイスガイ。
ラミア族のミリスさんが奥さん。
◆ゲオルグ
虎人。30歳前後。
格闘と治癒魔法を使うタイガーな人。
セシル的に見た目がツボだったらしく、冒険者時代のセシルに絡
まれて知り合いに。
◆グレイヴ
竜人。30歳前後。
槍使い。
竜で槍を使ってた為、ジャンプが得意なんですよね!とセシルに
絡まれ知り合いに。
∼∼連邦∼∼
1025
◆ミニム
猫人。20代。
連邦の国主である姫様。
最強装備の一つ、﹃巨人の腕﹄の使用者。
国主なのに最前線で戦う武闘派。
∼∼法国の人々∼∼
◆ミレイア
人間。26歳。
法国を治める聖女様。
目的の為には手段は選ばず、悪辣な手でも使う。
その行動理念は全人族を絶滅させない為。
その義務から解放してくれたセシルに対し、無為の絶対的忠誠を
セシルに誓っている。
しかしあまりにもセシルを崇め奉るので、そのセシル本人からち
ょっと嫌がられている。
◆ティアリス
人間。28歳。
ミレイアに仕える聖騎士リー・ティアリス。
実力的には人族最強クラス。
仲間思いで真っ直ぐな行動を好む。
ミレイア共々、セシルに絶対的忠誠を誓っている。
セシルに妊娠させて貰うのが夢らしい。
∼∼日本の人々∼∼
1026
◆橘勇矢
日本人。16歳。
日本に来たセシルとリリスに性的に食べられちゃった男の子。
長髪のストレートヘアなので女の子に見えなくもない。
男っぽくないのでセシルのお気に入りで、しっかりセシルを孕ま
せた。
日本のセシル家で一緒に住んでおり、たまにセシルとエッチをし
ている。
最近はアルシアが嫉妬するのでフェラのみなのが不満らしい。
◆桑原泰斗
日本人。37歳。
政府御用達の退魔機関に所属する素人退魔師。
先祖に鬼がいたらしく、先祖返りで強靭な肉体へと変貌できる。
アニメマンガゲームヲタクで女好き。
綺麗な女性の妖怪などに誑かされた経験多数。
セシル達の事をも狙っていたが勇矢に殺されかけて諦めた。
今はセシル家のメイド長メロディアを狙っている。
◆葉雲幽羅
日本人。24歳。
中学生の時から日本の邪悪な妖怪と戦うオカルト少女。
アマノムラクモ、ヤタノカガミ、ヤサカニノマガタマの三種の神
器を使う許可を得ている。
子供の頃から大人社会で働いてきた為、すでに若さが薄い。
セシル達の居る世界へ逃げようか、本気で考えている。
◆近藤響
日本人。20歳。
普通の大学生。
1027
アニメなどのヲタク文化を愛し、何より美少女と美女を愛してい
る。
街に居たアウラに声をかけアルバイトを紹介。
知り合ったセシルの胸を初見で揉むなど、セシルすら若干引く行
動力とレズ力。
男に全く興味がなく、女性同士で夫婦のセシルを尊敬し、アウラ
を狙っている。
ここまで書いて、まったく普通の大学生じゃない事に気づいた!
高校生の弟がいて、弟の友人の小柄な男子を女装させたりして遊
ぶのも好きらしい。
可愛い男の娘ならおっけ∼。だそうである。
∼∼その他∼∼
◆エイン盗賊団の人々
・シムス
・ダリグ
・オーディス
カルドの街に居る元エイン盗賊団の方々。
オーディスはセシルを発見した髭親父で、髭がなくなると超絶イ
ケメンとなる。
◆コルア&ユフィ
ダークエルフ。
警邏隊に所属する アルシアの部下。
戦争にも参加していて、アルシアの子供時代からの友人。
◆ヒューリエッタ
人間とサキュバスのハーフ。
1028
レイニーの祖国、聖ウェルシア王国のお姫様。
母親が魔族サキュバス。
国民全てを助けようとして身を削るほど尽力したが、人間の脆さ
に絶望した。
それでも命だけでも助けようと吸血鬼化の研究を行う。
レイニーを吸血鬼化させた張本人。
最後は全ての人の意識を共有し、郡体としようと企むもレイニー
に阻止される。
◆骨
魔族。
骨。
ヘブンズゲートを何者かの命令で守っていたネクロマンサー。
ノーパンレイニーにぼこぼこにされ、アウラにボコボコにされ、
名を名乗る事すらなく灰と化す。
1029
人物紹介︵ネタバレ含み︶︵後書き︶
簡単にするはずが⋮⋮本編2話分の時間かかったよぅ︵−︳−;
疲れたのに、上手くかけた気がしない!?︵>ε<︶
これが役立つ人が一人でもいますように︵*−人−︶
レム君とレオン君と勇矢君が嫉妬されるかな||▽−︶
1030
第63話 魔の女王︵前書き︶
実はセシルさんってスペックだけなら最強物小説といって良いので
は!
なんて思い書いた今話でございます。
主役はセシルさんじゃないので注意?
1031
第63話 魔の女王
﹁ふぁぁぁ⋮⋮むにゅむにゅ⋮⋮﹂
朝の陽気と共に自然と目が覚める。
眼を開けるとベッドの天井︱︱天蓋という名の屋根︱︱が見える。
﹁うにゅぅ。帰ってきたんだっけか﹂
大きさが4畳以上はあるような大きなベッド。
今寝てるここは確かにカルドの僕のベッドの上です。
﹁おはようございます。セシル﹂
寝ぼけまなこで声のした隣を見る。
僕の横に銀髪褐色の美人女性が裸で寝ていた。
﹁おはよう。アルシアさん。んっ﹂
挨拶をして眼をつぶり気持ち唇を前に出す。
そうすると僕の意図を察したアルシアさんがすぐに唇にキスをして
くれた。
アルシアさんの唇を軽く舐めると、それに応えてか僕の唇も舐めら
れる。
お互い舌を出して絡め合い、唇全てを余す所なく舐めあう。
キスをしながら、同じく裸だった僕の上にアルシアさんが乗ってき
1032
た。
アルシアさんはキスを止めると、自分の胸を僕の胸に当てるように
前後に動かし始める。
﹁ふふ、セシルの胸は大きくて柔らかいですね。こんなに大きな胸
からミルクまで出してヌルヌルです。エッチな事が大好きなんです
ね﹂
﹁そ、それはぁ、子供を産んだからでぇ﹂
﹁あぁ、そういえば﹃また﹄私の知らない所で人間の男と子作りし
たんですっけ﹂
胸を擦り合わせてたアルシアさんが一旦動きを止める。
そして両手で僕の両胸を痛いほど中央に挟みつけた。
﹁んぎ、そんなに強くオッパイを押し潰されたら痛いよぅ﹂
﹁それは良かったですね。セシルは痛いのが大好きですしね。証拠
に喜んでミルクがプシュゥゥと出てますよ﹂
痛いと言うとさらに胸を押し潰してきた。
勇矢君の子供を無事に出産したんだけど⋮⋮。
アルシアさんはちょっと怒ってるみたい。
リオやラミュー&レム、フェシスさんやシロクロとエッチ子作りし
た事は気にしてないのに。
お義姉様が言ってたけどレオン君の時も今みたいに少しモヤモヤし
てたらしい。
1033
僕が人型のオスとエッチするのはアルシアさん的には嫌っぽいです。
⋮⋮レムも男の子なんだけど例外らしい。
﹁乳首だけじゃなく乳輪まで硬くぷっくりしていますよ。セシルは
やっぱり痛いのが大好きですねっ!﹂
﹁ふにゃぁぁぁぁ、オッパイ握って引っ張っちゃらめぇぇ﹂
オッパイを挟み潰しての乳首擦り合わせから、急に左右の手で乳輪
辺りから握られて上に引っ張られた。
オッパイの先端部分を痛いほど強く握られる。
そのまま胸が取れそうなくらい持ち上げられ捻られた。
﹁ひぎゅぅ、イクゥゥゥン、アァァァ♪﹂
乱暴にされた痛みが気持ち良くて絶頂に達してしまう。
イクとオッパイを離されるが、強く握られた先端はヒリヒリして余
韻が気持ち良い。
﹁エッチなお漏らしで潮を吹いて、セシルは朝から元気ですね﹂
﹁にゃぁ∼、だってぇ、アルシアさんがぁ♪﹂
次はオマンコを拡げられて手を入れられ、左右に痛いほど開かれる
のかな∼。
って期待したのに。
﹁私もですが、セシルは出産が終わり色々仕事があるでしょう? 今日はちゃんとお仕事しないと、ネーブルが怒りますよ﹂
1034
﹁あ∼﹂
僕ら夫婦の友人であり、義娘予定のネーブル公爵。
カルドと日本を行き来するようになってからも、妊娠を理由に彼女
に仕事を押し付けてた。
あやめ
なのですが、先日無事に可愛い女の子を出産しました。
名前は彩夢ちゃんです。
と言う事でネーブルに押し付ける理由がなくなってしまいました。
子供達のお世話も日本産粉ミルクやら紙オムツやらで楽になりまし
て。
出産前からメイドさんに任せる事を約束させられたし。
﹁はぁ∼、侯爵やら将軍やら女王やらのお仕事とか、僕さっぱりわ
からないんだけどなぁ⋮⋮﹂
元庶民で元男ですもん。
貴族やら女帝的なお仕事とかさっぱりです。
﹁リオや周りの方もフォローしてくれますよ。セシルは自分が出来
る事を頑張ってみればいいんです﹂
﹁にゃ∼⋮⋮﹂
﹁もし無理だったら、私のところに逃げてくればいいですよ﹂
にっこりと笑いながら頬にキスしてくれた。
1035
愛しいアルシアさんに笑顔で応援されました。
仕方ない。頑張ろう!
う∼、しかしお偉いさんのお仕事とか不安しかないです。
もうちょっと不安を吹き飛ばす応援が欲しいよね。
﹁アルシアさん、僕頑張ってみる! だから、そのぉ、あと1回く
らいイキたいなぁって﹂
﹁はぁ、セシルは出会った頃から変わらずエッチですよね。いやら
しいオマンコが丸見えになるように足を開いてください﹂
﹁わ∼い♪ アルシアさん大好き♪﹂
朝の湯浴みの前に、気絶するまでイカして貰って満足でした♪
◆第63話 魔の女王
﹁諸君らは難関である我がカルド士官学校に入学し今年卒業を迎え
る。将来の軍幹部になるであろう諸君らは、この夏より希望部署へ
の入団試験がある。厳しい訓練をこなしてきた諸君らに対し心配事
は一切ない! どの師団、どの部署の試験だろうと軽々と通過する
事を信じるのみである! カルド生の優秀さを存分に発揮し、我が
国、ひいてはこの世界の為に尽力する事を期待する! 以上!﹂
1036
大勢の学生が集まる校庭に、学校長であるネーブル卿の演説が響く。
一言一言力強く発せられる言葉に身が引き締まる。
さすが大貴族にして師団長だけあるぜ。
やる気になるって言うか着いていきたくなるって言うか、あれがカ
リスマって奴か。
演説に触発され心の中でやる気に燃える。
しかしそれを邪魔するように、解散の指示の直後に一人の生徒が話
しかけてきた。
﹁な∼にそんなにマジな顔しちゃってんのよ。アレイスター君﹂
﹁レイゲン。お前はさっきの学校長の演説を聞いて何も感じなかっ
たのか?﹂
﹁はっ? あんなん士気高揚の為の良い事しか言わないおためごか
しのご高説だろ? あんなんでやる気になるなんて庶民出身者は安
いねぇ﹂
人のやる気に水を差すこの男。
名をレイゲン・M・バルトシュタイン。
へらへらとした軽そうな茶髪の人間族だが、バルトシュタイン侯爵
家の跡取りだ。
﹁そんな事よりさっさと飯食おうぜぇ。腹へっちまっててさぁ﹂
﹁お前は貴族の癖に不真面目すぎはしないか?﹂
﹁バッカだな。良いかぃ? 庶民のアレイスター君。腹が減っては
1037
戦が出来ぬというのは軍の常識だぜぇ?
やる気だして昼を抜いて
訓練しようとか思ってるであろうお前は非常識だ﹂
﹁はぁ、全くお前は﹂
人として色々欠けてそうなこの友人レイゲン。
こんな男だが友人としてありがたい事がある。
侯爵という高い家柄だというのに、庶民である俺に対し気軽に話か
けてくれる。
庶民庶民というのも、貴族だらけの士官学校で逆に気を使っての事
だろう。
﹁アホの言う事に賛成はしたくはないけどニャ∼。ご飯を食べなが
らどこの試験を受けるとか話すのは悪くないニャ∼﹂
﹁ミリア、お前もか﹂
俺とレイゲンの肩に圧し掛かって来た猫族の女。
ミリア・トゥローノと言って、なんと帝国師団長の一人ユピテル・
トゥローノの妹だ。
トゥローノ公爵家の一人ではあるが猫族の伝統なのか、名前に爵位
を司る部分はない。
﹁多数決で決定だな。よーし、今日は新メニューの天ぷらを食べる
ぜぇ﹂
﹁甘い、甘いにゃアホレイゲン。新メニューならスシに決まってる
ニャ﹂
﹁あ∼、スシって食ってみたんだけど、あのスメシ?っての合わな
1038
くてなぁ﹂
﹁スメシの良さが分からないとか。だからお前はアホなのニャ﹂
真面目だった校庭の雰囲気すらぶち壊しながら進む友人二人。
例外的に士官学校に通えている庶民である俺の数少ない友。
そんな二人の背中を見て思わず苦笑してしまう。
貴族という割には庶民的な話題で盛り上がる二人に追いつき、共に
食堂へ向かうことにした。
◆◆◆
ざわつく食堂の一角に陣取り、早速今後の進路を肴とした。
﹁それで、ミリアお前はやっぱり第3師団の入団試験を受けるのか
?﹂
﹁んニャ∼、お姉ちゃんとこに入ってもニャ∼。気軽にこき使われ
そうだしニャ∼﹂
黄色いタマゴのスシを食べながら答えるミリア。
紫の短髪のフワっとした髪が綺麗で愛嬌のある顔で美人なのだが⋮
⋮。
食べ物を上に投げて口を空けてパクっと食べるのはダメだろう。
美味しそうにすると猫耳をくたぁと垂らすのは可愛らしいのだがな。
﹁別に大丈夫じゃねぇの? 戦争も終わったし、軍隊なんてやる事
そんなに無いから暇だろうよ﹂
1039
油であげた魚類や野菜をシャクシャク食べるレイゲン。
薄黄色い衣に塩をつけて美味そうに食べている。
﹁そう言うアホは侯爵家を継ぐし、軍に入る気なさそうだからいい
ニャ∼﹂
﹁いやいや待て待て。継ぐからこそ実績がほしくてだな。正直な話、
領地経営とかで誇れる結果を出せるほど俺は頭が良くねぇ﹂
﹁少しは頭が良いみたいに言う辺り、頭が悪そうニャ﹂
﹁こ、この猫野郎⋮⋮。んまぁそんな訳で軍に入って何か実績つく
らねぇとまずいんだよ。うちの国って実力主義だろ? いくら爵位
が高くても実績無しの無能だと皇帝様に潰されんだよ﹂
﹁それは大変だな﹂
庶民の俺には分からないが、貴族は貴族で大変そうだ。
﹁で、だ。そういうアレイスターの坊ちゃんはどこの試験を受ける
んだ?﹂
﹁努力家で実力があるアレイスターの事ニャ。難関の親衛隊とかだ
ったりしてニャ∼﹂
ミリアに実力があるといわれるとこそばゆい。
才能なのか努力なのか、彼女こそ本当に実力があるのだから。
俺はたまたま入学試験に受かり、落ちこぼれない様に必死に武術や
魔法の訓練をしてただけだ。
1040
その必死の努力の結果で学年10位とは言え、ミリアは1位なのだ
からな。
⋮⋮さりげにレイゲンの奴が5位なのは納得がいかんが。
﹁さすがに親衛隊は庶民の俺には無理だよ。だから第5師団を受け
ようと思う﹂
﹁﹁はぁ!?﹂﹂
二人が同時に驚いた。
そんなに驚く事だろうか。
﹁な、なんで魔軍なんて言われてる第5師団なんだよ?﹂
﹁それは簡単だ。まず第一に第1∼第4師団は戦争が終わり国内の
守備や災害救助、危険な魔物の討伐など、まぁ必要ではあるが待ち
の軍隊になるだろう? 正直出世の機会があまりない﹂
﹁んまぁ、ニャ∼﹂
﹁同じ理由で各都市の守備隊もなしだな﹂
庶民の俺なんかが1∼4師団や守備隊では成り上がるには無理があ
る。
いざ出動といっても指揮権などは貴族出身者が優先されるだろうし、
少ない機会を取られる訳だ。
﹁その点第5師団の魔軍はあれだ、確か南の大陸の開拓任務がある
っていうじゃないか。戦争中には余裕が無かったのを、終戦した今
開拓に出向くんだろう? きっと未開の土地だし、魔物の討伐や他
1041
にも色々と出世のチャンスが在ると思うんだ﹂
出世のチャンスがある軍に入りたい。
貧乏なうちの家族を少しでも良い暮らしをさせる為に。
ダメもとで受けた士官学校に入れたんだ。
こうなればとことん出世を目指すさ。
食べるのもやめて黙って俺を見てた二人に疑問を感じつつ問いかけ
る。
﹁第5師団って再編成で入隊のチャンスも大きいと思うんだ。だか
ら二人に聞きたいんだが﹂
﹁なんだ?﹂
﹁なんニャ?﹂
俺の話題になってから二人が随分大人しい。
その事が気になりつつも話を続けた。
﹁第5師団の事を教えて欲しいんだ。貴族でもない俺だと深くは知
れなくてな。3国間の戦争を終わらせた英雄。人族の敵だった魔族
や一部の魔物と人族を和解させて、新たな大国の聖国建国にも貢献
した立役者。うちの国の皇帝陛下の下についているが、実質客将扱
いなんだろう? 第5師団を率いるセシル様って言う方は﹂
俺が知ってる事を話すと二人は黙り込む。
お気楽レイゲンや明るいミリアが黙る光景に驚きを隠せない。
何かまずいことを言っただろうか?
1042
パスタを食べながら自分の言葉を思い出しチェックしているとレイ
ゲンが重そうに口を開いた。
﹁ん∼、正直なぁ、あんま知らねぇんだわ。侯爵の爵位を与えられ
てるらしいけど、夜会なんかにも全然でない人でなぁ。ネーブル卿
と懇意にしてるだとか、皇帝陛下すら命令なんて出来ずにいる存在
だとか﹂
﹁それだけじゃないニャ。全ての魔族と魔物の女王にして、神話に
出てきた天使達も従えているって噂ニャ。さらに連邦の猫姫も借り
があって頭が上がらないらしいし、法国の聖女は明らかにセシル様
に膝をつき臣下として従ってるってお姉ちゃんに聞いたニャ﹂
﹁あ、そうそう。魔物の国の聖国の女王もセシルって人の部下らし
いぜ。まぁあれだな。うちの国の軍とか名乗ってっけど、実質この
大陸の支配者じゃねぇの?﹂
藪を突いたら蛇どころではない。
とんでもない話が出てきた。
客将なんてとんでもなく、4国の影の支配者だとでも言うのか⋮⋮。
﹁あ、そう言えば先代の魔の女王から正式に女王を継いだって連絡
が、貴族には回ってきたニャ﹂
﹁あん? ってぇともしかして⋮⋮。南の大陸開拓って魔の女王就
任してさらに権力を持ったから、新しい大陸支配に乗り出したって
事かよ⋮⋮﹂
俺達の住む大陸を支配し、先代から女王を受け継いだ。
1043
このタイミングだと確かにレイゲンの言う事が正しいように思う。
学校の教官から聞いた時は、魔族や魔物との共存で人口が増える事
が予想された為、事前に居住地を開拓すると言う事だったか。
﹁なるほど。世界全土の支配を狙うような野心家な女王かもしれん
と言う事か。ふ、ふふ、ふふふ。ならば第5師団に入れば出世の機
会は多そうだな﹂
例え自己欲の為の南の大陸支配、果ては世界支配だとしてもだ。
今のこの大陸は戦争が終結し、多くの魔物と人が共存を始め平和に
なった。
食料も新たなメニューなどが出てきて、暮らしも豊かになってきて
いる気がする。
結果的に人々が幸せに暮らせるならば、世界を支配する一端を担う
のは悪くない。
﹁よし、俺は決めた。いや、決めていたが改めて決心した。意地で
も第5師団に入り、出世してやる!﹂
拳を握り友人達に決意を宣言した。
﹁ふふふふ。この俺が女王を世界の支配者にするのだ。そして出世
した給金で家族を幸せにする﹂
﹁レ、レイゲン、どうするニャ!﹂
﹁どうするって、何がだよ?﹂
1044
﹁アレイスターが第5師団に入る気になっちゃってるニャ!﹂
﹁それをどうするって言われてもなぁ。こいつ真面目で真っ直ぐな
奴だからなぁ。決めちゃったら意見を変えるとか無理だろ﹂
﹁これだからアホレイゲンは! 引退した先代の魔の女王ですら、
お姉ちゃんを瞬殺したらしいニャ! その女王から奪ったのか譲ら
れたのかしらないけど、現役の新たな女王になったセシル様はきっ
とそれ以上に強いはずニャ!﹂
﹁ま∼、そりゃそ∼だわなぁ∼﹂
﹁そんな人の機嫌をアレイスターが損ねたら⋮⋮。任務で失敗した
ら処分されるかもしれんニャ!﹂
﹁まぁ噂や実績を考えるに、超有能な人っぽいからなぁ。任務失敗
とか許さないタイプかもなぁ﹂
﹁うぐぐ、こ、こうなったらニャー達も第5師団に入るニャ!﹂
﹁うへぇ。やだよ。大陸開拓ならまだしも、まじで世界支配とかだ
ったら戦争じゃねぇか﹂
﹁お前は友人が心配じゃないのかニャ! それにそっちのほうが実
績稼げるはずニャ! ある意味お前の望む道でもあるニャ!﹂
﹁そ、そうなんだけどよぉ。ちぃ、仕方ねぇか。アレイスター、俺
らも第5師団の入団試験受けっわ﹂
急に慌てだしたミリアとレイゲンの話が終わったらしい。
1045
俺を心配する内容だったが、そんなに心配しなくてもよいと思うん
だがな。
﹁お前達が同じ軍で同期なら心強い。一緒に試験に受かるように頑
張ろう﹂
﹁手柄は半々って事で頼むぜぇ﹂
﹁ニャーが、ニャーがアレイスターを守るニャ!﹂
俺達3人はこの日の午後に、第5師団入隊希望の書類を提出した。
◆◆◆
書類を提出して3日もすると面接が決まった。
入団試験の第一次試験は面接試験だと言う。
普通は身体能力や知識を先に測るものだと思うんだが。
﹁最初が面接とは思わなかったな﹂
﹁お∼、正直だりぃよなぁ。運動とかの方が楽だぜ﹂
﹁それにしても⋮⋮。控え室に俺達しか居ない気がするのだが﹂
﹁魔族と元魔物中心の師団に入りたい士官候補生なんて普通いない
ニャ﹂
﹁ふむ?﹂
1046
何故だ。
出世のチャンスが一番あるだろう師団なのに。
それにカルドにいる元魔物と言われてた方々は付き合いやすいのだ
がな。
﹁ラミア族の人は明るく付き合いやすいのだが? 警邏隊のダーク
エルフの人達などには、妹達がよく迷子から家まで送ってもらった
りしたのだが?﹂
﹁お、なんだよ親友。今度ダークエルフのお姉様を紹介してくんね
ぇ?﹂
﹁ボケ二人ではニャーにはカバーしきれないニャ⋮⋮。お姉ちゃん、
助けてニャ⋮⋮﹂
カルドの区画整理で実家がよりよい家に住めたりと、入植に関して
も家族で好意的だったしな。
ミリアの心配はよくわからん。
﹁それよりも時間だ。面接を行う教室まで行くぞ﹂
﹁お前もあれだ。もっと気軽に生きろ? な?﹂
﹁貴族の癖に気軽なアホレイゲンが羨ましいニャ⋮⋮﹂
三人揃って面接会場へと向かう。
学校の校舎内なので迷いなく進む。
友人二人と同時に面接なのは、正直心強く助かる。
移動はすぐに終わり、面接会場の教室前へと辿り着く。
1047
コンコンコンコン。
﹁5年生、生徒番号1番、ミリア・トゥローノ、並びに生徒番号1
0番、レイゲン・バルトシュタイン、生徒番号44番、アレイスタ
ー・ファブニル。面接試験を受けに参りましたニャ!﹂
序列から扉を叩き入室許可をミリアが取る。
少し間をおき中から﹃入室を許可する。入れ﹄という声が聞こえる。
扉を開き中に入るミリアとレイゲンに続き部屋に入った。
入るまではやってやる!と燃えていたのだが⋮⋮。
部屋に入るとゾっとする禍々しい魔力を感じた。
人を害するような悪意と寒さを感じさせる強い魔力。
そして虫でも見る様に俺達に興味を示さない、冷酷な赤い視線に迎
えられた。
1048
第63話 魔の女王︵後書き︶
3人が話してたセシル様って誰の事でしょうね?
私はそんな英雄様で有能そうな女王様を知りません。
簡単な紹介
・アレイスター・ファブニル
17歳。
人間族。
努力家で真っ直ぐな性格。たぶん天然。頭は悪くないはず。
貧乏な一般庶民の家庭出身。
両親と妹二人の五人家族。
・レイゲン・M・バルトシュタイン
17歳。
人間族。
茶髪のお気楽貴族君。
剣も魔法もそれなりに出来ちゃうので、努力はあまりしない。
アレイスターが変人で面白いと思い気に入っている。
庶民あっての貴族と思っているので、アレイスターを見下したりし
ない。
・ミリア・トゥローノ
17歳。
紫髪の猫族。
異性にも気安い性格とピクピク動く猫耳と尻尾が魅力。
雷魔法が得意で将来は姉のユピテルさん並に強くなるはず。
1049
性格に騙されるけど、歩く機動兵器。
暫くはそんな3人が中心になるのかな∼。
この先どうなるかはお約束ですが⋮⋮私も知りません︵;ノノ︶
1050
第64話 魔の試練
馬車でネーブルの居城、風雲カルド城へとやってきた。
風雲とか付けたのは、僕にとって様々な関門があるからです。
﹁セシル様、お手を﹂
馬車から降りる時に、同行してきたメイドのメルが手を添えてくれ
た。
手を添えられるとか物語のお姫様のようで少し気恥ずかしい。
色は黒と地味ながら、細かい装飾が見るからに高そうな馬車が移動
していく。
御者をしてたリルが馬車置き場へ向かったんだろう。
馬車の素材は高価なミスリルやらで物理と魔法防御が高い。
さらに金銀白銀とかで装飾がいっぱい。
あの馬車って無駄に豪華すぎる気がします。
﹁さ∼て、入団試験の打合せをネーブルとしますかね∼っと﹂
﹁自分の軍の入団試験の打合せを、何故ネーブル様となさるのでし
ょうか?﹂
赤と青のオッドアイ少女、メルが首を傾げて聞いてきた。
傾げるホッペがとってもつやつやです。
1051
毎朝湯浴みの時に僕のオッパイミルクを飲んでいるメルリル姉妹。
オッパイミルクを飲むようになってから、肌艶がよくなり、朝の目
覚めが早くなったり、体の調子や身体能力と魔力が上昇したり、魔
眼に目覚めたり、かなりエロくなったりしたそうです。
僕に忠誠心厚いメルに簡潔に説明してあげます。
﹁どうやって試験とかしていいかサッパリ分からないからさっ!﹂
試験内容から実施する方法などなど。
何一つわかりません。
僕の人生、基本的に試験を受けるほうでしたから。
しかし大丈夫。
魔族と魔物の編成はリオに任せてるので安心だし。
新たに入隊する人族の編成はメロディアさんに頼んでるしね∼。
僕の仕事?
それは打ち合わせに参加する事ですわよ。
﹁なるほど。俗事は配下の者に任せるのでございますね﹂
﹁うん、まぁ、そんな感じ?﹂
ネーブルは配下じゃないんだけどね。
僕はメルを引きつれ、城内で可能な限り衛兵が居ない道を悠々と歩
く。
武器持った男の人とか怖いからね∼。
1052
﹁あ、そうだ。折角だしクロに挨拶していこう﹂
お城の一画に住んでるクロに会いに向かう。
城って言っても建物があるだけじゃなく、まるで基地のように広い
のでドラゴンも住めちゃうのだ。
﹁やほ∼い、クロ∼、元気∼?﹂
﹁これはセシル殿、何用で?﹂
衛兵が少ないコースを通っていたので、すぐにクロの住み家へと着
いた。
ドラゴンがいる付近に衛兵必要ないしね∼。
﹁うんとね。挨拶と∼、えへへ、溜まってたら抜いてあげようかな
ぁって﹂
たまにはオスとエッチがしたいんです。
オチンチンを膣に入れられた時の吸い付いて味わう食感?や膣を拡
げられる感触は好きだから。
クロとする分にはアルシアさんは怒らないしね。
﹁ざ、残念ながら我は溜まってはおりませぬ。シロならば或いは⋮
⋮﹂
申し訳なさそうに言うクロ。
うーん、シロかぁ。
シロはなんか肉欲だけで僕としたがるから好きじゃないんだよね。
それに﹃カルドに居ると危険だっ﹄と言ってある日飛び立ち、今は
1053
レイニーの所でお世話になってるらしいし。ちょっとエッチするに
は遠すぎます。
それに比べクロは僕を気遣ってくれるし謙虚だし。
﹁ふふ、今度精液飲ませてね∼﹂
﹁はぁ、ご命令ならば⋮⋮﹂
畏まるクロが可哀想になったので早々に立ち去る。
﹁リリス様が封印されてから、セシル様は随分とエッチに積極的に
なったように見受けますが、何か心境の変化でもあったのですか?﹂
﹁ほえ? そうかな? 別に特に何も無いけど﹂
メルの言葉を少し考える。
確かに前より少しエッチになったかもしれない。
溺れるような量のクロの精液を全部飲みたいと思うくらいには。
﹁確かに少しだけエッチになったかもね∼﹂
そう言って軽い足取りでネーブルの居る執務室へと向かった。
﹁はっ? 応募が三人しか居ないから、一次試験で面接ですと? んで僕に試験官として面接をしろですと!?﹂
1054
﹁応募してきた三人は能力的には問題がないからな。あとはお前の
眼で見て合否を決めるといい﹂
﹁面接はメロディアさんに任せて、僕は合格のハンコを押す係りと
か﹂
﹁セシル閣下、あまりお仕事をなさいませんと、閣下の給金を無し
にしなければなりませんわ﹂
﹁そ、そんな!? そんな事になったら、僕の家族とメイドさん達
が路頭に迷っちゃうのでは!?﹂
﹁セシリア、不安で禍々しい魔力を垂れ流すな。⋮⋮ハァ∼、仕方
ない。私も面接試験に一緒に出てやるから元気を出せ﹂
﹁ありがとう。ネーブル! 持つべきは将軍職な義理の娘だね!﹂
﹁義母と言うより、手のかかる妹か娘のような気分なんだがな⋮⋮﹂
家族の皆。
面接をちゃんと出来るか不安だけど、ママは頑張るからね!
あ、受験生の子達が不安にならないようにジロジロ見るのはやめと
こう。
僕の就活の時、ジーと見られるのきつかったしなぁ。
可能な限り興味なさげに、緊張しないようにしてあげなきゃね。
﹁⋮⋮あまり気負わずにな﹂
﹁う、うん。ママは頑張るよっ!﹂
1055
◆第64話 魔の試練
俺達三人は面接会場に入り椅子に座っている。
椅子に座りながら、緊張で握る拳の中は汗をかいていた。
面接試験を舐めていたわけではない。
しかし侮っていた事は認めなければならない。
試験官であろう黒いドレスを纏った、魔族と思しき角が生えた金髪
の女性。
その女性から発せられる魔力の禍々しさは尋常ではなかった。
赤い瞳の視線が俺達三人を見ても、関心を寄せる光が一切無い。
隣の二人も緊張して⋮⋮いや、怯えているのが分かる。
押し潰されそうな魔力と羽虫を見るような冷たい視線。
さすがにレイゲンとミリアですら臆しているのか。
﹁さて⋮⋮面接を始める訳だが。そんなに緊張するな﹂
魔族の女性の隣にいた女性の声にハっとする。
よく見れば学校長であるネーブル卿ではないか。
あまりの緊張に試験官が三人居る事に気づいていなかったようだ。
魔族の女性の左右にネーブル卿とエルフの女性が座っていた。
1056
何故第5師団の試験の面接に第4師団の師団長であるネーブル卿が
いる?
確かセシル様と懇意にしていると聞いたが、懇意程度では他の師団
の試験官などするはずがない。
⋮⋮ネーブル卿はセシル様に従う立場にあるということか?
俺と同じ思考に達したのか、二人が息を呑む音が聞こえた。
俺もきっと驚きでそうしているんだろうな。
座っているだけで体力を削られるとは。
自分の見通しの甘さと未熟さに歯噛みをしながら耐える。
﹁⋮⋮気負っても良い結果は生まれないし、試験の結果でお前の家
族がどうこうなったりはしない。改めて言うが、緊張するな﹂
ネーブル卿が俺達に再び気遣いの声をかけて下さる。
試験の結果で俺の家族の生活は全く違う物になるはずだ。
だがそれに捕われ気負いすぎていてはまずいのは事実だろう。
ネーブル卿が、俺が家族の為にも頑張ろうとしてたのを知ってたの
は驚きだが︱︱おかげで体が軽くなった気がする。
さすが10代のうちから師団長をしていたネーブル卿。
魔族の女性の禍々しい魔力の圧力も幾分か減少したように感じる。
﹁そうだな。定番ではあるのだが、第5師団への志望理由と自己ア
ピールをしてもらおうか。まずはミリア、お前からだ﹂
1057
﹁ハッ!﹂
右手を左胸に当てる敬礼をしながらミリアが立ち上がる。
﹁志望理由は、第5師団は南大陸の開拓をすると聞き、帝国と帝国
民の為、その新たな事業に伴う軍務に就きたいと思ったからですニ
ャ! 自己アピールとしましては、私は雷系の魔法が得意ですので
渡航中の海上での戦闘で有効な魔法が多数ありますニャ! 陸上に
おいても、歩兵では討ち難い上空への敵に対して有効であると自負
しておりますニャ! 以上ですニャ!﹂
志望理由は少しありきたりかもしれない。
だがさすがミリアだ。
自分の得意な魔法とそれの有効な使い道を言うのはいいと思う。
﹁何か質問はあるか? セシリ︱︱セシルにメロディア﹂
﹁⋮⋮ふむ。君ってユピテルに似てるけど何か関係があるの?﹂
エルフの女性は首を振ったが魔族の女性は質問をしてきた。
興味がない様子だった魔族の女性がミリアを試すように見ている。
その様子は楽しげで、何を言うか明らかに試しているな。
ミリアを応援すると同時に心の中である考えが浮かんだ。
ユピテル卿を呼び捨てとは⋮⋮さらなる上位者と言う事か。
ならば彼女がセシル様ご本人か?
ネーブル卿がそう名を呼んだからと言って本人とは限らない。
ただの一次試験だ。別人を立てている可能性だって低くは無い。
1058
偽者だとしたら、それを見抜く事を期待されているかもしれない。
だが本人の可能性もある。
この場に関してはセシル様ご本人と思うべきか?
正解が分からない。
ミリア、返答には注意しろよ。
﹁ユ、ユピテルは私のおね、あ、姉上ですニャ﹂
﹁へぇ、なのに第3師団じゃなくて第5師団を希望するのは何で?﹂
ユピテル卿との関係から志望理由を問いただしてくるとは。
正直、ミリアの言った志望理由は模範的ではあるがそれだけだった
ろう。
確実にミリアの急所を攻めて来るとはな。
ミリアを心配したがそれは杞憂だったとすぐに分かる。
﹁姉上の師団に入っては身内ゆえに正当な評価をされない可能性が
ありますニャ。さらに私自身が甘える事もあるかもしれませんし、
姉上にしても余計な気遣いをさせてしまうかもしれませんニャ。師
団内に余計な摩擦を生む可能性もありますニャ。それに比べ第5師
団は南の大陸に行けば本国から離れ、現地での実績を正当に評価さ
れると考えておりますニャ。第5師団で内地の勤務になったとして
も、一番帝国内のしがらみがなく、自分が実績をつめると考えてお
りますニャ!﹂
ミリアの発言を聞いて感動してしまう。
俺に付き合って第5師団を受けたと思っていた。
1059
だが真実はなんてことは無い。
俺に付き合う気持ちもあったのかもしれない。
しかしそれ以上に彼女自身、しっかりと自分の考えをもって入団を
希望していたと言う事だ。
しっかり先を見据える彼女は素晴らしいと思う。
﹁へぇ、色々考えてるんだねぇ∼。あ、僕からの質問は終わり。座
っていいよ﹂
ミリアの返答を聞くと笑顔で彼女に着席を勧めた。
羽虫から人へと認められたと言う事か。
よかった。ミリアはどうやら合格しそうだ。
﹁次はレイゲン、お前の番だ﹂
﹁ハッ!﹂
レイゲンとは思えないほど真面目に返事をして起立した。
﹁志望理由は面白そうだからです!﹂
﹁面白そう?﹂
さすがに聞き咎めたのか、ネーブル卿が即疑問の声を上げた。
この場で面白そうと言える胆力はすごいが、さすがに不味いだろう。
このバカ、と心で注意していると平然とレイゲンは疑問に答えた。
﹁今までなかった魔族や元魔物、あ∼亜人ですっけ。それとの混合
師団なんですよね? そんなの御伽噺で聞いたくらいです。それに
1060
自分が参加できたら、そりゃあ面白いでしょう?﹂
挑発的に言うレイゲンに感心する。
言われてみれば御伽噺に出てくる軍隊に入れるような状況なのだ。
これは確かに面白いかもしれない。
これには魔族の女性も驚いたようでキョトンとしていた。
最初は冷酷で冷たい印象だったが、虚を喰らった今の顔は怖さがな
く美人だな。
レイゲンのおかげかそんな事を考える余裕が出来た。
沈黙を納得としたのか、レイゲンが続きを発言する。
﹁自己アピールとしましては∼、あ∼、武器術に無手の格闘がそれ
なりに出来ます。魔法は回復以外は大体中級程度までならまぁ。軍
略に関しては正直まだまだ微妙です。なので小隊指揮とかは出来る
と思いますが中隊以上の指揮は今すぐには出来ません﹂
戦闘技術に魔法関連を軽く流したが⋮⋮。
よく聴けば大抵できる天才と言う事だろう。
軽く流さなければ嫌味に聞こえるほどに。
後半も指揮はできないと言ってるようで⋮⋮。
実は小隊指揮、そして将来は中隊は任せて欲しいと言っている。
飄々としても実力があるレイゲンだ。
魔族の女性も言い方に騙されず、彼の実力を正しく見抜くことだろ
う。
⋮⋮最初から分かり易く言わない捻くれている性格を嫌われねば良
1061
いが。
杞憂だったのか、質問もなくレイゲンの番は終わった。
﹁では最後にアレイスター﹂
﹁ハッ!﹂
二人が終わり、俺の番だ。
緊張でゴクリとのどが鳴る。
﹁志望理由は、第5師団が一番出世の機会があると思ったからです
!﹂
言い切ったが特に反応がない。
なので自己アピールへと続く。
ティンダー
ピュリファイ
﹁自分は盾と剣を持った前衛が得意であります! 魔法は火系統の
他に︻着火︼、︻清浄︼等の生活魔法が得意です!﹂
火を簡単につけれる上にレアなチキンを焼く事ができる︻着火︼。
体を清潔にしたり、水を浄化して飲めるようにする︻清浄︼。
魔法の才能がある庶民には重要な魔法だ。
これが意外にも貴族連中は覚えてなかったりする。
メイド達が居たりして自分で使う必要がないからだろう。
自分が誇れる物を堂々とアピールした。
別段ふざけたわけではなく、未開の地を行軍する場合には重要にな
ると思ったからだ。
1062
仕官候補である自分が生活魔法を使えるのは悪くないと思う。
全体的には平均以上だが、戦闘魔法知識とトータルで10位の俺は
特化してアピールする物がない事からの苦肉の策ではある。
自分に出来る全力のアピールではあったが⋮⋮。
特に質問もなく、面接試験は終了した。
◆◆◆
﹁ないわぁ∼。あれはないわぁ∼。アレイスター君﹂
試験が終わり自分達の教室に戻ると、レイゲンが早速話しかけてき
た。
﹁仕方ないだろう。俺が一番自信がある事だったんだから﹂
﹁いや、志望理由の方ももうちょっとなぁ﹂
﹁嘘をつくわけにもいくまい? アレが偽り無い本心だ﹂
﹁ならせめてだなぁ。アピールは自己鍛錬を誰よりもしてるとか、
教科書を誰よりも読み勤勉だとかをだなぁ﹂
﹁努力をしても結果が出てなければアピールしてもな。お前やミリ
アの後では殊更ダメだろう?﹂
﹁そんな事ないニャ! 努力をするアレイスターは素晴らしいと思
うニャ! 結果も大事かもしれないけど、その過程こそ誇っていい
1063
と思うニャ!﹂
凡才の俺を気遣ってるんだろう。
成績1位だと言うのに驕らないミリアこそ素晴らしい。
﹁雰囲気的に俺だけ落ちただろう。残念だ。二人共頑張ってくれ﹂
﹁あぁ? 何言ってんだ。お前が落ちたなら第5師団には入らない
ぜ﹂
﹁そ、そうニャ! アレイスターが居ないならニャーも受かってて
も断るニャ!﹂
﹁何を言ってるんだ二人共。それぞれにしっかり志望理由があった
じゃないか。特にミリアには感動したぞ﹂
﹁あんなのとってつけた理由ニャ! そんな事よりアレイスターと
一緒に居る事が大事ニャ!﹂
﹁気遣ってそう言ってくれるのは嬉しいがな﹂
ミリアの気遣いで気持ちが多少上向きになる。
他の軍に入ったって出世の機会がないわけじゃない。
一番機会が多そうだっただけさ。
俺は気持ちを次に向けようと内面で静かに思考に没頭する。
﹁くぅぅ。直接は言ってないけど、これだけ言っても気づいてもら
えないのは何故ニャ!﹂
1064
﹁お前は頑張ってると思うよ。マジで。でもあいつ真面目だから直
接言わねぇと通じないと思うぜぇ?﹂
﹁そ、それは恥かしいニャ。出来ればニャーは告白されたいしニャ﹂
﹁んじゃまぁ、頑張ってギリギリのアピールをするしかねぇわな。
友情にガッチリ固定される前にだけどよ。手遅れだと思うがなぁ﹂
﹁う、ニャーーーーーー!﹂
◆◆◆
後日、ネーブル卿に三人揃って校長室に呼び出された。
呼び出された理由は合格したからだ。
俺が合格していたのは意外だが、それよりも驚いた事がある。
合格が面接試験ではなく入団試験そのものだった事。
さらに俺達三人に数名が加わる、実働部隊の小隊に任命された事。
魔獣退治という任務のおまけつきで。
1065
第64話 魔の試練︵後書き︶
ミリアは青春している気がします!
爽やかな匂いがしそうです!
それに比べセシルさんは︵つд`︶
1066
第65話 魔の刺客
﹁や∼、この家は涼しくて快適ですね∼﹂
小柄な女性がハァ∼と紅茶を飲みながら呟いた。
大学が夏休み中、アウラの家庭教師にきてくれている響さんです。
響さんはアウラのアルバイト先の先輩で、高校入学に関しても色々
と尽力してくれている恩人です。
﹁氷の魔人であるリエルさんが居るからね∼﹂
日本の家の守護として在宅している、最強魔人の一角である氷獄の
リエルさん。
リエルさんが居る為か敷地内は程よく涼しいのだ。
青白い水晶のような肌にサファイアのような眼が特徴のクールビュ
ーティー。
静かな佇まいも実際の体温も、周りも空気も本当にクールです。
﹁うふふふふふ、まさかアウラちゃんのお母様である巨乳人妻セシ
ルさんが、異世界の魔王様だったなんて。巨乳金髪母娘と縁が出来
ただけでも素敵だったのに、ファンタジー美人達に出会えるとか!
うへへへぇ﹂
頭だけ異世界にトリップする響さん。
こっちとあっちの家を行き来するメイドさん達を見て感激で気絶し
てたしなぁ。
1067
猫族のパティを見た時なんか∼。
﹁前から好きでした! 結婚してください!﹂
と妄想と現実が混じってたし。
彼女の狂乱にもちょっと慣れてきました。
﹁お店に来てた時は角が無かったのに、自宅だと角つけるんですね
∼。やっぱり魔王様としては角バンドはお約束ですね!﹂
﹁ん? あ∼、これ本物の角だよ∼。触ってみる∼?﹂
﹁良いんですか!﹂
喜んで立ち上がって角を触ってきた。
前まで角バンドだったんだけど本物の角が生えたんだよね。
気づけばいつの間にやら。
﹁ハァ∼、本物ですね。角が生えてる今は魔王様って感じですね∼。
お店にいらっしゃった時より迫力がありますもんね∼﹂
﹁迫力とか別に今も変わらないと思うんだけど。リリス様みたいな
覇気とか僕には無いし。っていうか、あの、何で胸を、んあっん♪﹂
角を触ってた手が僕の胸を揉んでいた。
ドレスの隙間から手を入れ胸をムニュゥゥと握り締める。
﹁アウラちゃんが頼めば揉ませてくれると言っていたのでつい!﹂
﹁ま、まぁ揉んでもいいんだけど、あんっ♪﹂
1068
僕の胸に遠慮なくムギュゥゥと指を食い込ませてくる。
それを何度も何度も繰り返すと次は乳首を指でクニクニしてきた。
﹁うわぁ、柔らかい、柔らかいですね! 何これ最高なんですけど
! 魔王様の駄肉は究極のエロ兵器だというのかっ! あぁぁ、乳
首からミルクまで出てるぅ。もったいない! オバケがでちゃいま
す! 飲んでいいですか!﹂
﹁い、いいですけど﹂
﹁ヤッタ! あ、魔王様っ! どうせなので紅茶に淹れてミルクテ
ィーにしていいでしょうか!﹂
大興奮する彼女に気おされ反射的に頷く。
頷いた次の瞬間、僕の胸はドレスから出されていた。
目の前には響さんが飲んでた紅茶カップがあるし。
⋮⋮今どうやってカップを移動させたの?
左胸の乳輪を丁寧にクニクニ揉まれ刺激される。
同時にオッパイの根元から優しく前に押し出すように撫でられた。
﹁うひゃ∼! 出た! 人妻ミルク! 乳輪を弄るとピューーーっ
て出てきますね! えへへ、勢いすごい。カップいっぱいになりそ
う。ぬふふふ﹂
カップから溢れるほど搾乳されて体が火照ってしまう。
椅子にくたぁと体重を預けた僕の横で響さんがミルクティーとなっ
1069
た紅茶を飲みだす。
﹁ゴクゴクゴクゴク。ぷっはぁ∼∼! なんですかこれ、超美味し
いんですけど! 人の母乳って薄いって聞いてましたがセシルさん
は特濃ですね! 人妻魔王様ミルク最高っ♪﹂
二杯目のミルクオンリーを飲む為か再び僕のオッパイを絞る響さん。
黙っていたアウラがそこで口を開いた。
﹁飲みすぎて暴走しないように﹂
それはどういう事かな?
響さんは現在進行形で暴走してるとママは思うんですけど。
﹁美味い! 美味過ぎる! 人妻ミルク饅頭!﹂
効くわぁとか呟きつつ、三杯目を絞り始めた。
僕のオッパイは饅頭じゃないんですけどぉ。
オッパイを絞りながら響さんが突然真顔に戻った。
﹁あ、そういえばですね∼。出来たらでいいんですけど、あっち側
の世界を冒険とか出来ないですか? ファンタジー世界が在るって
分かったら、魔物を倒す冒険とかしてみたくてですね。あ、でも出
来ればでいいんです。チート装備とセットで冒険とかしたいなぁ∼
とか思ったり﹂
擦れてない年の近い仲間と出会えたら、さらに最高なんですけどね
∼。
なんて冗談めかして言った。
1070
4杯目を絞られながら考える。
日本の若い子ならファンタジー世界で冒険とかしたがるよね。
響さんはアウラがお世話になってるしなぁ。
﹁響さん、休憩時間終わり﹂
﹁あ、もうか。じゃあアウラちゃん2階でお姉さんと二人っきりで
お勉強しましょうか。うへへへぇ、美人巨乳ロリ少女と二人きりの
個人レッスン﹂
5杯目を注いだカップを片手にアウラと2階へ去っていく。
僕はオッパイをテーブルに置きながら黙って立ってたリエルさんに
問いかけた。
﹁それなりに手応えあって安全簡単に倒せる魔獣とか用意できませ
んかね∼? それと人間用の最強装備とかも﹂
﹁ご命令とあらば﹂
無駄な事は一切言わないリエルさんが頭を下げ了承してくれる。
後は仲間かぁ。
彼らでいっか。若いし。
正式に入団する前の新人研修にもなるだろうしね。
社会人として入社前研修はやった方がいいです。うん。
﹁念のために護衛もつけるかな∼?﹂
1071
僕はカルドの方に戻り恩人と部下になる子達の為に少しだけ尽力し
ました。
しかしある事実に気づかなかった。
﹃安全簡単に倒せる魔獣﹄を用意させた相手がアルカさん級の世界
最強の一人だった事。
その人の基準が﹃自分が﹄安全簡単に倒せるだった事。
さらには﹃それなりの手応え﹄を重視していた事。
重大な問題に気づかぬままに状況は進んでいく⋮⋮⋮⋮。
◆第65話 魔の刺客
小隊着任と魔獣討伐の指令書を何度も何度も読み返す。
詳細は書かれていないが⋮⋮。
﹁ふふふふ、くくくっ﹂
ダメだ。
笑いが堪えきれない。
1072
﹁アレイスター、いきなり笑ってどうしたニャ? 合格してたのが
そんなに嬉しいニャ?﹂
﹁そうじゃねぇよ。こいつが笑うほど喜んでんのはなぁ﹂
﹁合格してたのも嬉しいがな。だがそれ以上に討伐任務だぞ、討伐
任務。まさかこうもいきなり出世の機会があるとはな。魔獣討伐用
の小隊に任命されるとはなんて運がいいんだ﹂
レイゲンの言葉を遮って理由を話した。
魔獣討伐部隊は花形部署と言える。
しっかりとした実力が無ければ被害が増えるだけだからな。
その小隊に加えられたと言う事は実力が認められていると言う事だ。
⋮⋮認められたのはミリアとレイゲンの二人で俺はおまけだろうが。
﹁ニャ∼。でも士官候補生とはいえ、ニャー達はまだ訓練生ニャ。
本命の討伐人は他の方だと思うニャよ?﹂
﹁それはそうだろう。俺達は雑用なんかをさせられるんだろうがな。
しかし上手くいけば⋮⋮﹂
上手く魔獣討伐に貢献すれば⋮⋮。
囮でもなんでもいい。
貢献が認められれば次に繋がるのは確実だ。
﹁アレイスター君よぉ。がんばる気持ちは分かるんだが、ちょ∼っ
と甘いんじゃねぇか?﹂
1073
﹁む、どういう事だ? レイゲン﹂
﹁俺達は仕官候補。言ってみりゃエリートさんなわけだ。成績だっ
てミリアは1位だし、お前は10位で上位だ﹂
確かに俺達3人は成績上位だ。
レイゲンも努力をあまりせず5位だしな。
何が言いたいかわからず、無言を通して先を促す。
﹁周りから見たら偉そうで調子に乗ってるようにも見えるわけです
よ。成績優秀な将来幹部のクソガキ共ってな﹂
﹁バカな﹂
必死に努力してやっとこの俺が調子に乗るなどあるわけがない。
むしろ自分の力の無さを歎くばかりなのだが。
﹁そ∼んな士官候補生君達の鼻っ柱を折ろうってのが目的なんじゃ
ねぇの? よく考えてみろ。魔獣討伐に訓練生を参加させるなんて
前代未聞だろ? ありえねぇぜ﹂
冷静になると一理在ると思った。
まだ卒業前の訓練生を魔獣討伐に参加させるなどありえない。
﹁軍が動く魔獣って特殊なのが多いしニャ∼。訓練生のニャー達が
参加って確かに変だニャ∼﹂
ミリアまでも今回の任務に裏があると言うのか。
ならやはり俺達の鼻っ柱とやらを折るのが目的なのだろうか。
1074
しかし︱︱。
﹁だとしても頑張るしかないだろう? 訓練はしても実践はまだな
俺達が未熟なのは事実だ。任務を命じられたからには、精一杯尽力
するだけだ﹂
過酷な軍の現実を教え凹ませようというのが目的なら望む所だ。
それで俺の心が折れるならそれまで。
だが俺は折れる気は無い。
家族の為にも出世したいからな。
今までと変わらず、出来ることを頑張るだけだ。
﹁んまぁな。ビビッてちゃ実績もつめねぇしな﹂
﹁アレイスターのそういう真っ直ぐな所、ニャーはす、好きニャ!﹂
﹁ありがとう。ミリア﹂
人の欠点より長所を見てくれるミリアに礼を言う。
誉めてくれる友人がいるだけでやる気になれる。
任務の日を楽しみに思いながら、教室の窓から晴れた空を見上げた。
﹁⋮⋮自然とありがとうと返事をされたニャ﹂
﹁⋮⋮お前はそろそろ夢を捨て、自分から告白をだな﹂
﹁まだニャ。まだ終わらないニャ!﹂
1075
﹁⋮⋮やり方を修正した方がいいと思うが⋮⋮。ま、頑張れや﹂
ふっ、どうやらミリアも俺に負けずやる気のようだ。
◆◆◆
魔獣討伐任務に出発の日が来た。
俺達三人は魔力付与された青い士官学生服に身を包み、小隊の合流
場所へ移動していた。
﹁保存食に水は魔法で出すとして、あ∼くそっ、槍が邪魔くせぇ﹂
﹁自分の武器を邪魔とか言うなよ﹂
﹁ニャーとアレイスターみたいに剣にすればよかったのにニャ∼﹂
﹁アホか。全員剣でどうすんだよ。俺は後ろから槍でチクチク突く
んだよ﹂
北門に近い軍の詰め所に入り、入り口の兵士に命令書を見せる。
待ち合わせ場所の部屋を丁寧に教えてくれた。
教えてもらった部屋に向かい、レイゲンが迷いなく部屋へと入る。
ノックか声かけをしろと注意する間も無かった。
気づかなかったがレイゲンも初任務で浮かれていたのだろう。
一歩目から失敗したかもしれんとの後悔︱︱を忘れて部屋に居る人
物に目を奪われた。
1076
﹁ハロハロ∼。や、君達が私の冒険仲間なわけね∼﹂
背が小さい黒髪黒目の人間族の少女。
場違いなほど軽い声が気になったわけではない。
目を奪われたのは彼女の装備だ。
吸い込まれる様な魔力を発する黒い軍服。
一瞬、第4師団の黒い幹部服かと思ったが違う。
何かわからないが金糸のような物で所々見た事がない紋様が描かれ
ている。
表面は夜空の星ぼしのような物が動いていた。
腰に差している魔法使い用のワンド。
全体が透明なクリスタルで出来ている。
先端は拳大の青い宝石がついていた。
漏れる魔力は淀みない清浄な印象だ。
よく見れば他にも腕輪や指輪やネックレスなど、どれもが価値の高
い魔道具に見える。
こんな見た事もない高性能な魔道具に身を包む少女は何者だ?
大貴族の娘か皇帝の縁者か、はたまた他国の姫君だろうか?
謎の少女は気になるが、一旦おいておく。
他に誰か居ないか部屋内をざっと見渡す。
面接の時の二の舞はご免だからな。
すると蝶の様な仮面をつけた、おそらくエルフ女性。
そして左右の目が青と赤の色違いのそっくりな人間の二人の女性︱
1077
︱双子だろうか︱︱が立っていた。
﹁今回の魔獣討伐のメンバーはこれで全員ですわ﹂
﹁あ、そうなんですか。じゃあ自己紹介を始めましょうか∼﹂
一番年長だと思われた仮面のエルフの女性が小柄な少女に報告した。
それに伴い少女が自己紹介を促した。
見るからに地位の高そうな少女。
そして緑の軍服を着こなす3人の女性。
ここは俺達から名乗るべきだな。
序列からミリアが最初に名乗るだろうと待っていたのだが⋮⋮。
優秀な彼女にしては珍しく、場を読まないで黙ったままだった。
さすがに疑問に思いミリアを見てみる。
﹁⋮⋮﹂
彼女は蝶のような仮面のエルフ女性をジっと見ていた。
確かにあの蝶は気になるが⋮⋮上官だろう方に失礼だと思うのだが。
とても気になるが。
﹁も∼、皆シャイね! んじゃ∼、私から名乗りましょうか! 私
の名前は近藤響! あ、ヒビキ・コンドーと言うべきだったわね。
ヒビキで良いわ。よろしくね! 特にそっちの猫ちゃんは色々とよ
ろしくねっ!﹂
小柄な少女が明るく名乗る。
1078
身分や能力を一切言わない。
つまり言えないほどのやんごとなき方なのだろう。
ミリアにだけ個別に挨拶をするあたり、実力を見る慧眼の持ち主か。
﹁では続きまして私達が。私はメル﹂
﹁私はリルと申します﹂
まったく同じ動作と声で挨拶をされて混乱してしまう。
正直どちらがメルさんでリルさんか分からなかった。
それとなく任務中に確認せねば。
﹁では次に失礼して。自分はカルド士官学校第5年生、レイゲン・
M・バルトシュタインであります﹂
ミリアが動かず、上官達が先に挨拶していくのがまずいと思ったの
だろう。
レイゲンが素早く挨拶した。
だが今の流れだと逆にエルフ女性が名乗るのが先だろうに。
先任の方々の邪魔をした形になった気がする。
やはりレイゲンの奴、密かに舞い上がってるな。
後の祭りなので俺も挨拶をする事にした。
﹁同じく、アレイスター・ファブニルです!﹂
挨拶した後軽くミリアを肘でつく。
それが功を奏したのかミリアもしっかり続いてくれた。
1079
﹁ミリア・トゥローノですニャ。⋮⋮質問なのですが、お三方の軍
服は第2師団の幹部服かと思われますが、今回の任務は第5師団の
管轄なのではないのですかニャ?﹂
名乗るだけではなく質問を投げかける。
なるほど、第2師団の軍服なのか。
それで気になって見ていたと。
カルドを拠点とする第4師団以外はあまり縁のない俺には分からな
かったな。
﹁今回の小隊を指揮する私とメル、リルの二人は元々第2師団の者
ですが、現在所属は第5師団扱いですわ。軍服はまだ第5師団用の
物が作られていないので、前のものを使ってよいとセシル様︱︱師
団長閣下よりご命令があった為ですのよ﹂
﹁不躾な質問、失礼しましたニャ!﹂
ミリアの質問にスラスラ答えるエルフの女性。
しかし気のせいか関心がなさそうな話し方だったな。
疑問が解決してスッキリしたかと思いミリアを見たのだが。
まだエルフ女性をジーと見ていた。
﹁最後になりましたが、私が今回の隊長のフォ︱︱メロ︱︱あ∼⋮
⋮﹂
先程と違い言いよどむ。
名前を言うだけで何故だ。
1080
﹁︵仮面をすると性格があっちになってしまいますわね。セシル様
も面接の時に顔ばれてるから、正体を隠して行ってねとは⋮⋮実は
知ってらっしゃるのかしら? 恥かしい蝶の仮面は罰なのかしら︶﹂
黙っているエルフ女性に対するミリアの視線がより鋭くなる。
﹁私はディアと申しますわ。ついでに任務について説明いたします
と、ラミア族が住んでいた沼地に危険な魔獣が現れたので、これを
討伐に向かいますわよ﹂
カルドの北東にある沼地地帯。
現在ラミア族は住んで居ない。
ディア隊長の言葉を自分なりに分析する。
ラミア族がいなくなって駆逐されなくなった魔獣が現れたと言う所
か。
﹁なぜ冒険者や傭兵ではなく軍が動くことになったんですかね?﹂
レイゲンが軽い調子で質問した。
ディア隊長の言葉がサラリとして興味なさげだったから、引き摺ら
れてレイゲンまでいつもの調子になったか。
﹁沼地が特殊な地形であるのと、未確認情報だからですわよ﹂
つまり魔獣の確認任務もかねているのか。
未確認な魔獣がいるかどうかを見つける。
で、倒せたら倒してしまえと。
レイゲンの軽い調子の質問だけではまずいと思い俺も質問をする。
1081
﹁自分達三人の能力は知ってらっしゃると思います。ですが自分達
はディア隊長にメルさん、リルさん、ヒビキさんの得意な魔法や技
術を知りません。出すぎた事かもしれませんが、隊の連携の為に教
えてくださると幸いです﹂
やる気のアピールにはなっただろうか?
訓練生としてはちょっと踏み込んだ内容ではあったかもしれないが。
﹁メルとリルはレンジャー技術や特殊な魔法に精通しています。内
容は話せませんわね。響さんに関しては⋮⋮貴方方は知る必要があ
りません﹂
返答の内容を聞いて焦る。
質問がまずかったかもしれん。
だがディア隊長は特に気にせず続きを話してくれた。
﹁私は風の魔法が得意ですわよ﹂
﹁ニャ!﹂
最後の隊長の言葉にミリアが反応した。
見れば小声でぶつぶつ言い始めた。
﹁⋮⋮第2師団⋮⋮仮面⋮⋮風⋮⋮。フォルム様?﹂
ミリアの言葉に今度はディア隊長がビクンと反応した。
どういう事だ?
ミリアとディア隊長が互いを見たまま動かない。
1082
俺とレイゲンは目を合わせて言葉を交わす。
﹁︵どういう事だ? この間はなんだ?︶﹂
﹁︵さっぱりわかんねぇ∼よ︶﹂
そんな中、一人の少女が行動を起した。
﹁さ∼て、自己紹介も終わったし、出発しましょうか! 細かい事
は道々話したりしましょう! 猫ちゃんも見つめるなら私を見ると
良いわよぉ∼﹂
隊長はディアさんだと言うのに仕切るのは小柄な少女のヒビキだっ
た。
彼女に促され出発する事となる。
正体が知れないヒビキと言う名の少女。
彼女の扱いには気をつけようと心に誓う。
少しの疑問を残したまま、俺達は沼地へと向かった。
1083
第65話 魔の刺客︵後書き︶
ディアさんとはいったい何者か!
まさか自己紹介だけで終わるとは!
オッパイティーが書きたくてその分長くなったせいなのですよね⋮
⋮。
人物紹介まとめを作ろうと思うんですが、意外と大変ですわん︵。。
;︶
1084
第66話 魔の恐獣
﹁ふぅぅぅぅう﹂
右手に意識を集中する。
僕のイメージに従いビキビキと右腕が変化していく。
少しして完全に変化した右手を、グーパーグーパーと開閉して動き
を確かめる。
自分の変化した手を見て笑みが浮かぶ。
﹁アラ∼ン? セシりん、ニヤニヤしてどうしたの∼ん?﹂
アスターを抱っこしたリオが声をかけてきた。
﹁ふふふ、僕はとうとうやったんだよっ!﹂
﹁ンア、また何か問題を起したのん? 出来れば行動する前に言っ
てくれるとフォローしやすいのよん﹂
﹁ひどっ!? まるで僕が考えなしみたいに!?﹂
﹁考えていても、思慮が足りない事を自覚したほうが幸せな人が増
えるわよん。ネーブるんとか﹂
リオも考えが足りないんじゃないかな。
ネーブルにはレムを紹介して幸せをお届けしたはず。
1085
レムをデートに送り込むたびに真っ赤な顔をして怒鳴り込んでくる
けど。
﹁僕もちゃんと色々考えてるよ? 冒険したいって言う響さんと、
正式入団前の士官学校生さん達を一緒に魔獣退治に行かせたりね!
退治する魔獣は仕込んでるのでぶっちゃけ自作自演っ! メロデ
ィアさんとメルとリルを護衛につける安心計画! 冒険と実践経験
を安全に体験できるナイスアイディア! 僕素敵っ!﹂
﹁ン∼、まぁメロディあんが一緒なら安全そうねん﹂
﹁うんうん、メロディアさんには蝶の仮面をつけて正体を隠しても
らって、護衛は秘密にしてるけどねっ!﹂
﹁⋮⋮仮面舞踏会用の蝶の仮面をつけさせたのん?﹂
﹁うん! 正体を隠すなら蝶の仮面ってお約束でしょ?﹂
護衛を買ってでてくれたメロディアさん。
面接の時に顔見られてるから、わざわざ仮面を提案したんだよね。
面接官の偉い人が一緒だと学生さん達が緊張しちゃうだろうから。
﹁っていうか、それよりこれ見て見て∼﹂
僕は変化した右手をリオに見せる。
﹁アヤ? ⋮⋮ラミアの手かしらん?﹂
﹁ふふふ、そうなのですっ! とうとう僕もリリス様の様に変身で
きるようになったのですっ!﹂
1086
幽羅さんとの戦いの時に自由に色々な姿に変身していたリリス様。
同じ魔母の僕なら出来るだろうと思い試したのだ。
その結果、今日やっと出来るようになったのですよ!
偉大な成果を誉めてくれるかと思ったのに。
﹁身体の変身、変異は魔族なら大抵できる技能ねん。アウらんも出
来るし⋮⋮セシりんってば今まで出来なかったのねん﹂
﹁⋮⋮﹂
あれ、おかしいなぁ。
目から汗が出てくる。
でもママはこの程度では負けないんだよっ。
﹁リオ、この変身を会得した真の目的を見るがいいんだよっ! と
うっ!﹂
僕は覚えた力を最大に使い変身した。
髪の色はピンク色。
背中には小さな蝙蝠の羽根。
お尻には黒い鉤尻尾。
そして乳輪とスジだけを影で覆ったほぼ真っ裸姿。
﹁ふはははは! 今までアスターが僕よりリオに懐いていたけど、
同じ淫魔に変身すれば僕に寄ってくる事間違いないんだよっ!﹂
リオに抱かれてるアスターに見せ付けるように胸を張る。
1087
さぁかもん!
ママのお胸に飛び込んでおいで!
﹁アラ、よちよち、大丈夫大丈夫よん。怖くない怖くない。あれは
貴方のママですからね∼ん﹂
﹁ん∼、リオー﹂
よりしっかりとリオに抱きつくアスター君。
リオの胸に顔を埋めて視界を閉ざす。
﹁な、なぜっ!?﹂
﹁⋮⋮実の母親が突然裸露出したら驚くと思うのよん。髪がピンク
になっただけで、実質裸になっただけだしねん⋮⋮﹂
ママはアスター君に好かれたかっただけなのに⋮⋮。
露出は好きだけど露出目的じゃなかったのに⋮⋮。
リオの胸にしっかり抱きつくアスターをみてがっくり凹む。
はぁ、僕も響さんと一緒に楽しそうな冒険にいけばよかったなぁ。
◆第66話 魔の恐獣
野営用の薪代わりの枝を拾う。
1088
同じ様に使えそうな乾燥した落ち木を拾うレイゲンに問いかける。
﹁どう思う?﹂
﹁あ∼ん? ちょっと腹減ってるから多めに拾っていこうと思って
っけど﹂
﹁夕食の事ではなくてだな⋮⋮﹂
手際よく落ち木を拾うのは良いのだが、そんなに一杯食べる気なの
だろうか?
道中に倒したウルフとボーンベアの肉があるので食料は潤沢だから
いいのだが。
﹁今回の小隊の事と、ヒビキの事についてだ﹂
森の中で二人だけだったので、遠回しに言うのをやめた。
﹁お前はどう思うんだよ?﹂
レイゲンに聞き返されここまでの事を考える。
カルドを出発した小隊は特に何事もなく、野営予定だった中間の小
屋に辿り着いた。
小屋と言っても旅人や商人の為に作られた簡易な物だが。
小屋に来るまでの出来事と言えば、ウルフの群れとボーンベアに襲
われたくらいだ。
それの対処も俺達三人、ミリア、レイゲン、俺の三人だけで対処し
たくらいだ。
1089
特別な出来事はなかったが、思った事はいくつかある。
﹁ウルフやボーンベアとの戦闘の時、ヒビキは叫んでいたな。﹃う
わっ、マジ獣!? こわっ!﹄と﹂
﹁あ∼、叫んでたな。楽しそうに﹂
﹁その時にメルさんとリルさんがヒビキを守っているようだった﹂
﹁そうだなぁ。しっかり彼女の前後をキープしてたしなぁ﹂
﹁ディア隊長は一切戦闘に手を出す気配なく俺達を見ていたな﹂
﹁おぉ、まるで実技試験の時の教官のようだったぜぇ﹂
﹁ついでに言うと、ヒビキも見てるだけだったな﹂
﹁色々叫んではいたけどなぁ∼。手も出そうとしてたが、どうして
いいかわからない感じだったなぁ∼﹂
ここまでの道中での事をレイゲンと話て確認する。
ちなみにヒビキを呼び捨てにしているのは彼女に頼まれたからだ。
実は20歳で年上だった彼女がさんづけとか要らないからと言うの
で。
認識の共有の為に推測した事を言ってみる。
﹁これは俺達への試験なのだろうか?﹂
1090
﹁かもな。ついでにどっかの姫様だかが同行したいとか我侭言った
んじゃないかね。んで着いてきてると﹂
﹁やはりヒビキはどこかの貴族か王族だと思うか?﹂
﹁帝国も従属国とか、同盟の小国とかまとめて帝国扱いだからなぁ。
俺らの知らない王族の姫さんとか、そりゃあいるだろうよ? 下手
すると連邦や法国、聖国のお偉いさんかもしんねぇな﹂
下位仕官の自分達に妙に親しげに話す。
敬称を不要と言う。
獣に襲われて驚きながら叫ぶ。
高価であろう装備品の数々。
世間知らずの箱入りのお姫様と言われても納得してしまう。
メルさんリルさんは彼女の護衛というとこだろう。
ディア隊長に関しては俺達の監督と監視かな。
﹁入団合格と思い少々浮かれていたが、まだ合格ではなく実技試験
と言うわけか﹂
﹁まぁ面接だけでハイ合格とはいかんだろうよ∼。いいじゃねぇか、
魔獣を倒して正式に合格すりゃあよ﹂
﹁妙に気軽で楽しげだな?﹂
﹁そりゃそうだ。実技試験だってんなら俺らに対処できるレベルの
魔獣だろ? 言いたくはねぇけど、最初は本気の実戦と思って緊張
してたからなぁ。気が楽になったぜ﹂
1091
﹁緊張しているのは分かってたがな。いつも通りに戻ったなら何よ
りだ﹂
健やかな顔で話す友人に多少呆れてしまう。
実態は実技試験だとしても表立っては魔獣討伐小隊なのだがな。
﹁間違ってもヒビキに手を出すなよ﹂
﹁お? おぉ、高貴なる身分の方とかには手は出しませんぜ。つー
か、あっちが男としての俺にまったく興味なさそうだからなぁ﹂
﹁それは今日一番のとてもよい情報だな﹂
大量の枯れ枝をもったレイゲンと小屋へと戻った。
夕食を食べる時にもヒビキは騒いでいた。
﹃焚き火の直火で肉を焼くとか凄いわね∼﹄等と言っていた。
庶民には当たり前なことなのだが。
◆◆◆
ザシュ、ガッ、バギッ。
硬質な物が甲殻が出す独特の音が聞こえる。
沼地について、早速大量の魔物と出くわした。
今はその魔物を駆除している。
1092
﹁うわぁ、なにこれカニ? カニ? ちょっとでっかいんですけど
! 1m、2m、胴体だけで2mとか大きすぎない?﹂
﹁沼地に住むマッドクラブですわ﹂
﹁へぇ、マッドクラブ。やっぱりカニなのね。マッドは沼だから?
それとも狂ってるから? にしてもでかいわねぇ。1匹で何人分
なのかしら? 築地に持ってったら売れないかしらね∼﹂
沼地内の街道に溢れるマッドクラブを駆除する俺達三人。
その俺達の背後から楽しそうな声が聞こえる。
﹁これだけの数を目にしても動じないとか、大物ニャね⋮⋮。ニャ
ーはちょっと気持ち悪いニャ﹂
﹁うおっ!? 硬てぇ!? 動きは鈍いのに硬くてだるいぞ、こり
ゃあ﹂
﹁ぐちぐち言ってる暇はないぞ。二人共。沼の中からどんどん沸い
てくる﹂
1匹1匹は強くないのだが数が多い。
沼地の奥まった場所にいるはずのマッドクラブだが、今は街道に溢
れている。
これは街道を通る商人や旅人には危険な数だ。
同時に俺達も油断は出来ない。
﹁にしても何でこんなにカニがいるのかしら?﹂
1093
﹁ここには元々ラミア族が住んでいて、マッドクラブは彼女達の食
料だったのでしょう。現在ラミア族は帝国の都市や聖国に移住して
いますので、天敵がいなくなり大繁殖したのだと思いますわ﹂
﹁大繁殖。養殖場もビックリね﹂
背後に聞こえるディア隊長の説明で納得だ。
世の中平和になっても問題は出るものだな。
﹁理由は分かったが、どうにも数が多い。剣だけでは限界がある。
隊長、魔法の使用許可を﹂
﹁好きになさいな﹂
﹁よしっ、隊長の許可が降りた。ミリア、頼む﹂
﹁ニャ。許可って言うか投げやりな返答だったけどニャ⋮⋮﹂
ミリアはまだ余裕があるようだが⋮⋮。
正直俺は既にきつい。
10匹ほど剣で叩ききったが、甲羅が硬く反動で腕が痺れる。
見るだけでも30匹は残ってそうなので危機感を覚える。
﹁まぁアレイスターの頼みなら何でもするけどニャ。世界に在りし
雷精よ。我が声に︱︱﹂
﹁レイゲン、ミリアの魔法が行くぞ。下がれ!﹂
﹁うぉ!? マジか! 俺が下がるまで撃つんじゃねぇぞ!﹂
1094
リーチがある槍なのに突出して先頭にいたレイゲンを下がらせる。
レイゲンが下がってミリアの後ろに走りこむと同時に彼女の魔法が
発動した。
サンダーストーム
﹁︻雷の嵐︼!﹂
バチバチバチィンと雷鳴が轟く。
音と共に紫に光る光がマッドクラブの群れに降り注ぐ。
音と光が収まると、眼前には煙を上げ動かなくなったマッドクラブ
の群れが居た。
﹁ぉぉぉぉぉおおお!! 何今の!? 必殺の魔法!? 猫ちゃん
雷使いだったのね! 凄いわね! 誉めてあげるわ!﹂
﹁あ、ありがとニャ。うニャ!? ちょ、ちょっと、ヒビキ、そこ
はぁニャめぇ﹂
ミリアの魔法を見て感動したヒビキがミリアに抱きついていた。
30ほどのマッドクラブを殲滅する威力は確かに驚嘆に値する。
﹁うぉ∼、こぇ∼。一撃で殲滅とか、魔獣なんかよりミリアが怖す
ぎるぜぇ﹂
﹁味方で頼もしいじゃないか﹂
敵を殲滅して喜ぶ俺達に静かな声が届く。
﹁この様子では沼地の全土で大繁殖をしていそうですわね。何箇所
か巣を潰し、数を間引きましょうか。これから沼地の深部へ向かい
1095
ますわよ﹂
﹃ハッ!﹄
ディア隊長へ敬礼し返事をした。
地面がぬるんでいる沼地の奥へと歩みを進める。
深い場所に脚を踏み入れないように注意しながら歩く。
ヒビキは大丈夫かと意識を向けると濡れた地面も問題なく歩いてい
た。
ヒビキを見た一瞬、ディア隊長の小声の声が聞こえた。
﹁確かに手間がかかるが安全。的確な敵を用意なさるとは、閣下に
しては真っ当ですわね﹂
この大繁殖は自然発生なのではないのか?
疑問に思ったが聞くことも出来ず、そのまま歩を進める。
◆◆◆
沼地についてからの初日は問題なく駆除を行っていた。
マッドクラブの処理にも慣れてきて、俺達は自信と余裕を持ち始め
た。
そんな中、ソレが現れたのは行軍三日目、沼地に着いてから二日目
の事だ。
﹁う∼ん、なんか順調すぎね∼。折角チート装備を借りてきたのに
出番がないわ∼﹂
1096
﹁ヒビキは大人しくしてるのが一番だと思うニャ﹂
﹁そんな冷たい事言わないで∼。あんなに愛し合った仲じゃない♪﹂
﹁ニャ∼∼!? 愛し合ってないニャ∼∼!﹂
﹁ふっ、二人はすっかり仲良くなったようだな﹂
﹁お前にはアレがそう見えるのか。そうか⋮⋮報われんなぁ﹂
和みながら歩いていると前方の深そうな沼から気泡が溢れ出す。
﹁皆さん、敵が現れそうですわよ。しっかり気を引き締めなさいな。
ヒビキさんも下がってくださいな。メルとリルは後方の警戒⋮⋮を
⋮⋮﹂
ディア隊長の指示が途中で止まる。
従おうとしてた俺達全員の動きも止まる。
ザバァァと深い沼から現れたのが思っていたのとは別物だったから
だ。
いや、別物と言うかまったくの予想外だった。
グルォォォォォォオオオ!!!
体が竦む雄叫びを上げた魔獣。
竜のような首を九つもった見上げるほどの巨体。
獰猛な爪を携えた四肢を持ち、太く長い尾を振り回す。
1097
﹁⋮⋮は?﹂
現れたのはマッドクラブなどではなく⋮⋮。
﹁なんじゃありゃ∼!?﹂
﹁し、知らないニャ!﹂
﹁ヒュ、ヒュドラだ!﹂
慌てる二人に叫ぶように伝える。
あれは多分ヒュドラだと思う。
だがヒュドラは︱︱。
﹁そ、そんな、ありえませんわ。ヒュドラは太古に絶滅したはず。
古文書などで存在は書かれていましたが、今はもう⋮⋮古代の魔獣
⋮⋮?﹂
﹁大昔に滅んだ魔獣だ! 魔族と天使が争っていた時代にいた存在
で、上位魔族すらてこずったと言われている﹂
言葉途中で考え始めたディア隊長の説明を引き継ぐ。
無駄に古代資料さえ読んでいたが、役立つ日が来るとはな。
﹁アレはさすがにまずいですね﹂
﹁全員引きましょう。フォル︱︱メロディア様、ご指示を﹂
ヒビキの護衛に徹していたメルさんとリルさんの二人が動く。
ヒビキだけではなく、俺達全員を守るように。
1098
﹁そ、そうですわね。全員撤収しますわよ。殿はこのわたくしが︱
︱﹂
﹁ふふふふふふふ、やぁぁぁとでたわね!﹂
ディア隊長が指示を言い終える寸前に割り込む声がした。
﹁ただの獣やカニじゃない本当の魔獣が! 今こそ私の出番ってわ
けね! 私の力! ざ・魔王様のチート装備の威力を見せて上げる
わよ! やぁぁってやるわっ!﹂
腰のワンドを引き抜いて最前面に出るヒビキ。
あまりにも自信満々でか誰も止めない。
﹁ヒビキ様、セシル様より御身の危険は廃除する様に言われている
のですが﹂
﹁んん? 大丈夫よ。セシルさんが用意してくれた魔獣ってあれで
しょ? なら倒せるはずよ。見てなさい。この私のチートパワーを
!﹂
言うがいなや、ワンドを前にかざす。
強大な魔力がワンドに集まる。
﹁近藤響の名において命ずる。氷霊のワンドよ。力を示せ!﹂
﹁うっ﹂
隣に居たリルさん⋮⋮かメルさんが呻き声をあげた。
1099
ヒビキの持つワンドの先から凄まじい吹雪がヒュドラに向かう。
その威力は見るからに強力で、ヒュドラの体を徐々に凍りつかせる。
﹁ふっ、所詮魔獣ね。魔王様の力を頂いた私にはかなわなかったと。
ふふふ、あははは、あ∼はははは﹂
完全に凍りついたヒュドラを前に高笑いするヒビキ。
ヒュドラにも驚いたが彼女の力にも驚いた。
まさかアレほどの魔法を使うとは。
﹁どうやら倒したようだな。ヒュドラが出て驚いたが﹂
﹁あ∼、あれってやっぱやべぇ奴なのか?﹂
﹁ヒュドラを倒せる人族なんて、将軍クラスの方くらいだろう﹂
﹁ニャー。そうするとヒビキってお姉ちゃん並なのかニャ﹂
﹁ふふふ、私の︵武器の︶力の前には無力だったようねっ!﹂
凍りついたヒュドラに油断した俺達に叱責が飛ぶ。
﹁まだですわよっ!﹂
﹁グルァァァァ!!!﹂
パリンと全身の氷を砕いたヒュドラ。
その九つの頭から水の塊を吐き出す。
吐き出された水塊は俺達とは違う明後日の方向へと飛んでいった。
1100
﹁へっ、なんだよ。迫力だけか、全然別方向にブレスしてやがる﹂
﹁いや、これは⋮⋮﹂
俺達を囲むように黒い霧が立ち昇る。
ヒュドラが吐いた九つの水塊が落ちた場所は特に黒かった。
﹁毒の霧で囲って逃がさないようにしたというわけですわね﹂
﹁げっ、マジですか!?﹂
﹁私の攻撃ですっかりこっちを敵認定してる感じね∼﹂
明確な敵意を持って巨体なヒュドラが俺達に向け足を進める。
﹁氷の魔法は効き難いようです。体表をブレスと同じ毒液で覆って
いると思われます﹂
﹁火の魔法で蒸発させ焼くのがいいと思われます﹂
メルさんとリルさんがヒュドラを分析する。
この中で火の魔法が得意なのは俺なのだが⋮⋮。
﹁すいません。あれにダメージを通せるほどの火魔法は俺では使え
ません﹂
﹁うぉぉ、ってことは打つ手なし!? 一方的にブレス喰らうか踏
み潰されるかでやられるだけか!?﹂
﹁︻雷の嵐︼!﹂
1101
おろおろ動揺するレイゲンを無視してミリアが魔法を打ち込む。
ヒュドラは水属性のようなので、もしかしたら雷が通じるかもしれ
ないと期待したが⋮⋮。
﹁ニャわっ!? 表面のヌルヌルで雷を弾いたニャ!?﹂
﹁ぬぉおお!? ミリアの上位魔法が効かないだとぅ!? 近づい
ても毒液纏ってたら毒でやられるし、本当に終わった!?﹂
﹁ニャァァァァ、告白される前に死ぬなら告白すればよかったニャ
ーーーー!?﹂
レイゲンとミリアが面白いほど動揺している間に毒の水塊ブレスが
来た。
終わった。すまん、妹たちよ︱︱とカルドの家族に謝罪したのだが。
ブレスは俺達に届く事無く吹き飛ばされた。
﹁届かなければ毒なんて無意味でしょう﹂
ディア隊長の放った風の魔法がヒュドラのブレスを吹き飛ばしたら
しい。
それを見たミリアがビクンと尻尾を伸ばし隊長を見る。
﹁そうニャ! 将軍なら倒せるニャよね? フォルム様が居るから
大丈夫ニャ!﹂
﹁はぁ∼﹂
ミリアの言葉にディア隊長が溜息をつく。
1102
フォルム様とは⋮⋮第2師団の師団長のフォルム様の事か?
﹁確かに私の全力の魔法なら倒せそうですが⋮⋮。私が魔法を詠唱
中にブレスを誰が防ぐのですか?﹂
﹁へ? 隊長がフォルム様なんすか?﹂
﹁それなら俺に考えがあります﹂
ブレスを見て俺なりに考えた事がある。
それを提案しようとディア隊長に声をかけた。
﹁貴方が? 火の魔法でブレスを蒸発させるのですか? 例え蒸発
させたにしても毒自体は残りますわよ。わたくしとしては撤退を﹂
﹁ストーーップ﹂
俺の意見を聞かずに却下しようとしたディア隊長を止めるヒビキ。
彼女は全員を見て最後に俺を見ると楽しそうに言った。
﹁逃げるなんて性に合わないから出来れば倒していきたいのよね∼。
で、アレイスター君、自信があるのよね?﹂
﹁はい﹂
﹁ならメロディアさん、全力の魔法でやっちゃっいなよ、ゆー!﹂
﹁しかし響様﹂
﹁ほらほら、近寄られたらブレスじゃすまないし、急いで急いで﹂
1103
﹁⋮⋮わかりましたわ。メル、リル、いざと言う時はわかってます
わね﹂
ヒビキに促されディア隊長は魔法に集中し始める。
魔力を高め始めた隊長を警戒したのか、ヒュドラが再びブレスを放
つ。
﹁うニャ!? 来たニャ!﹂
﹁うぉおお、アレイスター、どうすんだ!﹂
﹁任せろ! ︻浄化︼!﹂
飛んでくる複数のブレスに向かい纏めて︻浄化︼をかける。
︻浄化︼をかけたブレスの水塊は特に変化なく進み俺達へとぶつか
る。
だが、誰も毒で苦しんだりはせずにいた。
﹁ふっ、予想通りだな。水を清浄にする便利な生活魔法︻浄化︼の
効果で毒が消えるようだ﹂
﹁よかったんだがよぉ⋮⋮びしょ濡れにはなるわけね﹂
﹁生活魔法って魔獣の毒すら無効にするのニャ?﹂
﹁どうかな? 普通の︻浄化︼では出来ない気がするな。俺は小さ
い頃アルバイトで︻浄化︼を人の数倍は使っていたから人よりも熟
練して得意なんだ。昔にちょっとした毒も無効化したことがあるか
1104
らな﹂
普通は︻解毒︼で毒には対処すると思うが。
昔︻浄化︼で毒キノコスープが飲めるようになるか試した経験が生
きた。
料理に使うと味気すらなくなるのでダメだったが。
﹁わーお。生活の知恵ってすごいわね∼﹂
﹁非常識な﹂
﹁変態的な︻浄化︼ですね﹂
ヒビキにメルさん、リルさんに感心だか呆れだかを言われた。
よく見ると三人とディア隊長は濡れていないな。
ボレアス
﹁︻暴風の神風︼!!!﹂
何度かブレスを防いで居ると、ディア隊長が魔法を放った。
膨大な暴風の嵐。
視認できる程の風の渦がヒュドラを包み込む。
ゴォォォォと耳をつんざく轟音を放ちながらヒュドラの周りの地形
すら抉っていく。
隊長の魔法の行使が終わると全ての首がなくなったヒュドラの死骸
が残るのみだった。
倒したかと思ったがまだだったようで。
﹁まだ生きてるとはしぶといですわね。さすがは伝説の魔獣ですわ。
1105
リル、メル﹂
﹁﹁はっ﹂﹂
返事をした二人の赤い右目が光る。
すると首のないヒュドラの体が燃え上がった。
魔力の高まりも詠唱もなかったと思うが、明らかに二人が燃え上が
らせたのだろう。
﹁討伐完了ね! ビクトリィ∼﹂
ヒビキが明るく勝利宣言する。
こうして俺達の初の実戦、魔獣討伐は終った。
﹁︻浄化︼で毒を消すなんて、神官や治癒術師が泣きますわよ﹂
何故か俺の評価は微妙だったわけだが。
1106
第66話 魔の恐獣︵後書き︶
こっそり人物紹介を追加しました!︵
1107
第67話 魔の饗宴
﹁あぁむぅ﹂
目の前で反り起つ二つの肉棒を口に含む。
硬さと独特の弾力をもった先端を舌で転がす。
先端から苦い汁を出す二つの亀頭を飴玉のように口内で転がしてし
ゃぶる。
﹁セ、セシルおねえちゃぁん﹂
﹁セシルさんっ﹂
義理の息子と長髪の少年の甘い声を耳で愉しむ。
大きさの違う二つの男性器のカリの直下を歯で甘噛みする。
唇と頬肉で縛り、歯で弾力を愉しみ、舌で苦い蜜を味わう。
クニクニとした少し違う二つの歯ごたえが心地よい。
蜜の味だけではなく、肉感と肉の味を味わう為に舌を這わせる。
グルリとカリに沿って舌を密着させる。
舌に感じる熱い脈動と生々しい肉の食感にうっとりしてしまう。
1108
美味しい肉棒を少しでも口に咥え味わおうと二人の性器を根元から
握り引っ張る。
袋ごと握って引っ張ったからか、二人の腰が僕の頬に当たる。
腰に手を回し二人を抱くように密着させた。
触れ合うほど引っ付いた二人の股間と僕の顔。
縮んだ距離のおかげで、口に根元近くまで二本の男性器をほお張れ
た。
喉を犯してくる亀頭と口内の竿を舌と頬肉と喉で圧迫する。
舌の先端から根元までの味を感じる味蕾で男の苦味と甘味を味わい
つくす。
たっぷり堪能したら、歯で強めに噛み潰した。
﹁あ、でちゃうぅぅ﹂
﹁うあぁぁ﹂
喉に熱くネットリした物が広がる。
喉奥まで入れてた男性器を亀頭だけ咥えて、亀頭と精子を混ぜて遊
ぶ。
最初は味の違う二つの精子が、混ざり合いより甘美な精子になる。
1109
精子味にした亀頭を舐めしゃぶる。
亀頭と精子の美味しさを堪能して満足したら、咥えたまま口内の精
子を飲み込んでいく。
ゴクンゴクンと飲む度に精子が喉に纏わりつき食道も精子まみれと
なる。
食道と胃を精子の匂いで満たし口内に精子がなくなる。
もう一味と思い男性器に残った精子も亀頭に吸い付いて取り出す。
﹁んぅぅん、チュポッ。ふふふ、美味しい﹂
搾り取った二つの肉棒から口を離し、唇についていたカスもぺろっ
と舌で舐めとる。
あぁ、精子と男の肉棒って凄い美味しい。
僕に肉棒と精子をご馳走してくれたレムと勇矢君。
チンチンから口を離すと倒れそうになる。
でも二人が倒れる事はなかった。
その二人と脇から支える女性が二人居たから。
﹁セシル様、ご満足なされましたか?﹂
1110
﹁ん∼、口でオチンチンしゃぶるのは満足かなぁ。二人のザーメン
も美味しかったし∼﹂
﹁それは良かったですね﹂
二人を支える裸のメルとリル。
顔だけじゃなく体つきも同じで区別するのが難しい。
﹁しかしよかったのですか? レムリア様はセシル様の息子なので
は﹂
﹁息子だから、ママとコミュニケーション取らなきゃ∼。ね? レ
ムも僕とエッチしたかったでしょ?﹂
射精して半起ち状態のレムのチンチンを撫でる。
レムはそれには反応なくハァハァ息をするだけだった。
﹁レムリア様も勇矢様も5回も出したのでお疲れのようですね﹂
精子が飲みたくて口に射精してもらってたけど、5回も出してもら
ったっけ?
夢中でしゃぶってたから回数は覚えてないや。
﹁口では満足したけど、こっちの口でもしゃぶって飲んで味わいた
いからさぁ。メル、リル、二人を回復させてあげて∼﹂
﹁﹁はい﹂﹂
オマンコを指で開きながら二人に空腹をアピールした。
精子を飲みたくて、オチンチンを食べたくてパクパクしてた僕の膣
1111
を見て二人は頷く。
レムと勇矢君のお尻に指を入れる二人。
﹁ひぎぃ﹂
勇矢君がうっとりすような声を上げた。
レムのほうは﹁あっ、あっ﹂と小さく言うだけみたい。
メルとリルは二人のお尻に指を入れながら魔力で精気を回復させて
いく。
待ってる間は自分の胸を揉んで乳首に吸い付いて母乳で喉を潤す。
﹁お待たせしました﹂
回復が終わるとメルとリルが二人の勃起したオチンチンを見せてく
る。
﹁美味しそう。ふふふ、一人ずつなんてじれったいから、二人同時
に食べれるようにしてくれるかな∼?﹂
﹁はい﹂
重なる声ではなく、完全に一緒になった声で二人が返事をしてくる。
二人はレムと勇矢君の股を引っ付くように寝かせ、二つのオチンチ
ンを一つの塊とした。
﹁それじゃぁ、いただきまぁす♪﹂
メルが押さえてるオチンチンに向かい腰を下ろす。
1112
楽しみで涎を垂らしていた僕のオマンコはチュクゥと美味しそうに
飲み込んだ。
﹁二人のオチンチン美味しいぃ∼♪﹂
硬い二本を根元まで咥えて、膣肉をウネウネ動かししゃぶる。
精子が楽しみで降りてきた子宮口を開き、二つの亀頭をカリまで嵌
めこむ。
﹁んっ♪ んっ♪ 子宮口でチュパチュパしゃぶる亀頭とか美味し
すぎるぅ∼♪﹂
オマンコでオチンチンを愉しむ僕にメルとリルが近づく。
﹁セシル様、失礼します﹂
﹁んはぁぁ♪ オチンチンしゃぶりながら乳首引っ張られちゃって
るぅ♪﹂
僕の乳首を歯で噛み取れそうなほど引っ張り、乳房を手でギュウと
締め付ける。
気持ち良くてプシャァァと母乳を大量に出してしまう。
僕のミルクを口から滴らせる二人。
口は乳首に噛み付いたまま、手は僕の股間へと伸びる。
﹁んぎぃぃい♪ いやぁぁぁ、裂けちゃうぅ♪ 取れちゃうぅ♪ 伸びちゃうぅぅぅ♪﹂
手でオマンコのヒダを左右に強く引っ張られる。
1113
クリトリスは全部剥かれ先端を持たれ千切れそうなほど持ち上げら
れた。
僕が快感で膣肉と子宮口を締めると、中のオチンチンが精子を吐き
出す。
痛みと快感で蕩けるオマンコの子宮に精子がたぷたぷと溜まる。
二本分の射精1回では満腹にならない僕の子宮。
二人のオチンチンを咥えたまま、食事は続く。
◆第67話 魔の饗宴
﹁壮観だな﹂
﹁あぁ、すげぇな﹂
目の前の光景に胸が高鳴る。
あのレイゲンすら余計な事を言わず同意する。
﹁おーい、その荷物はあっちの船だ∼﹂
﹁食料の積み込みを急げ∼﹂
カルドの軍港に響く忙しない声を聞くと自然と体が熱くなる。
1114
多数の軍艦に出航の準備をする兵士に工夫達。
人間族にエルフやドワーフに猫人、竜人、虎人、帝国では珍しい蜥
蜴人もいた。
しかしそれだけではない。
ラミアにダークエルフ、ゴブリンにオークも見える。
見たこともない魔族だろう方達もいた。
多種多様な種族が忙しそうに走り回る姿は感動ものだろう。
今まさに未開の地へと出航する為に軍港は活気に満ちていた。
﹁まさか本当に南大陸の開拓任務に就けるとは思わなかった﹂
魔獣退治の実技試験では自分なりに役に立った。
はずだったのだが、隊長の評価は明らかに微妙だったからな。
﹁お∼、あとでわざわざ用意された魔獣だって聞かされた時は肩の
力が抜けたけどなぁ。だがまぁ、特別ボーナスの現金支給があった
からいいけどよぉ﹂
﹁そうだな。それに第13独立部隊と言う、特別部隊の指揮権まで
もらえるとは思わなかった﹂
大陸開拓時の自由行動を許可された独立部隊。
セシル将軍肝いりの部隊らしい。
人員の詳細は不明だが、出航の今日ここで合流する事になっている。
﹁しかしなんだったんだろーなー? 特別ボーナスの他にセシル師
団長から個別にボーナスもついてたがよぉ﹂
1115
﹁それだけ俺達を買って下さっていると言うことだろう? 喜ばし
い事だ﹂
添付されてたメッセージが﹁ごめんなさい﹂だったのは疑問だが。
何か深い意味があるのだろうか。
﹁アレイスター、アホゲンー、こっち来るニャ∼﹂
男二人軍艦を見て居るとミリアの呼びかけが聞こえた。
俺達二人は顔を見合わせるとすぐにミリアの元へ駆けて行く。
今回の第13独立部隊の隊長はミリアであり、彼女の背後に見知ら
ぬ方々が居たからだ。
ミリアの元へ辿り着くと、姿勢を正し直立する。
﹁え∼、これで揃ったニャ。まずアレイスター、挨拶するニャ﹂
﹁ハッ! カルド士官学校第5年生、10番、アレイスター・ファ
ブニルです!﹂
﹁続いてアホゲン﹂
﹁ハッ! 同じく第5年生5番、レイゲン・バルトシュタインであ
ります! ついでに隊長に上申したい事が!﹂
﹁却下ニャ﹂
﹁⋮⋮畜生、俺とアレイスターへの扱いの差でアピールすんのやめ
1116
て欲しいんだがなぁ⋮⋮﹂
魔獣退治以降、ますます仲の良くなったミリアとレイゲンがふざけ
たやり取りをする。
仲がいいのはいいのだが、場を弁えて欲しいものだ。
混ざれない自分に少し寂しさを感じるしな。
﹁この二人が残りの部隊員ですニャ﹂
ミリアが背後にいた面々に俺達を紹介する。
すると一人の赤いドレスを着た、どうみても軍人に見えない⋮⋮。
いや、大人にすら見えない少女が口を開く。
﹁なるほどのぅ。お主に加え、その二人の子守が今回の妾の仕事か
や﹂
﹁えぇっと、ハハッ、よ、よろしくですニャ﹂
少女に向かい苦笑いをするミリア。
それを見て少しムっとしてしまう。
どこの貴族の子女だか知らないが、子供が軍港に来てミリアにぞん
ざいな口を聞く。
興味本位で連れて来てもらったのだろう。
これは注意をするべきだ。
﹁どこのお嬢様だか存じないが、子供がそんな態度では良くないぞ。
むしろ君が子守をされているんじゃないか?﹂
﹁ほほぅ﹂
1117
﹁ニギャ!? ア、アレイスター!?﹂
瞬間、少女からブワッと寒気がする魔力が上がる。
冷たい氷のような魔力に当てられ動けなくなる。
くっ、呼吸処か心臓まで止まりそうだ。
そんな俺の窮地を救ったのは、ゴブリンとオークと思われる二人だ
った。
﹁ちょ、ちょいとレイニーの姐御! 子供に対して大人げありませ
んぜっ!?﹂
﹁うむ! レイニー殿の御心ならばさらりと流す事もできましょう﹂
﹁⋮⋮ふんっ。妾が大人気なかったかや﹂
二人に宥められた少女から魔力の発散が止まる。
呼吸ができるようになったが寒気が止まらない。
そんな俺に触れる手があった。
﹁魔族の方は直情的なので気をつけてくださいね?﹂
白い衣服を着た天使の羽をはやす少女。
彼女に触れられた肩から体が温かくなる。
徐々に暖かさは広がり全身を包み込まれた。
﹁はっ。有翼族は気取りすぎじゃと思うがのぅ。なぁ? ルネよ﹂
1118
﹁セシル様の命で来ていると言うのに、それを忘れ子供をいじめる
子供に言われたくはありませんよ?﹂
睨み合う赤と白の少女。
何者かわからないが、二人共凄まじい魔力をぶつけ合う。
﹁いい加減にしないかぃ! 大人気ないのはあんたらふたりともだ
よぉ!﹂
﹁ぐわっ﹂
﹁いたっ﹂
先日のディア隊長よりも大きな魔力のぶつかり合いは唐突に終わる。
二人の頭を殴ったラミアの女性によって。
﹁ほらほらぁ。隊長のお嬢ちゃんも困ってるじゃないのさぁ。うち
らも自己紹介するよぉ﹂
﹁うくっ、ティティスよ。お主、妾よりもルネに分があると、うぐ﹂
﹁はいはいはいはい。セシル様の名代で全軍を指揮するレミネール
の方が大変なんだからさぁ。これくらいはサクサクこなすんだよぉ﹂
わしゃわしゃと赤いドレスの少女の頭を撫でている。
ラミアの女性は大物のようだ。
身体的にも3m以上ありそうで大物だ。
﹁うっし、じゃあまず俺はゴブリンの︱︱﹂
1119
﹁あぁ、あんたらは雑用だから、今回の部隊に参加しないから別に
良いよぉ?﹂
﹁あんたらと言うと我もですか!?﹂
ラミアの女性の言葉にがっくり項垂れるゴブリンとオークの男性。
先程までは貫禄ある漢!的な雰囲気だったのだが⋮⋮。
哀愁が漂っていた。
﹁では私から。有翼族のルネと申します。此度はセシル様の命によ
り、第13独立部隊、ミリア小隊に参加する事になりました。よろ
しくお願いしますね﹂
白い天使の少女、ルネさんは丁寧に頭を下げる。
年下に見えるがヒビキの例もある。
敬称をしっかりつけようと思う。
﹁私はラミア族のティティスってもんさぁ。よろしくねぇ﹂
ラミアのティティスさんは短い挨拶をした。
どうにもサッパリした性格のようだ。
﹁妾は︱︱﹂
﹁ちょ、ちょっと、わたくしを置いていくとか正気ですか! この
だぼはぜ達!﹂
ドレスの少女が何か言おうとしたが、それを遮るように声がした。
法国の神官が着る法衣を着た少女が走ってきたのだ。
1120
﹁ちっ、折角まいたのに、よくも見つけたものじゃな﹂
﹁わたくしの術を侮られては困ります。セシル様に誰よりも忠義深
いわたくしが、他の有象無象に出し抜かれるなどありませんわ﹂
新たに加わった少女。
法国の人間っぽいが、どうやら彼女も部隊員のようだ。
﹁自己紹介をしてらしたようですわね。では名乗りましょう。セシ
ル様の第一の側近にして愛妾であるミレイアと申します。役立たず
以外は以後お見知りおきを﹂
﹁お主は参加せずともよいぞ。どーせ此度の事はセシルのアホがや
ったことへの贖罪の意味らしいしの﹂
﹁ならばこそです。セシル様のフォローをするのはこのわたくし!
ミレイアをおいて他におりません!﹂
﹁そもそも第一の側近はリオ様だと思うのですが。聞いてませんね﹂
法衣の少女とドレスの少女にルネさんが混ざって話している。
さきほど法衣の少女はミレイアと名乗ったが⋮⋮。
法国の聖女と同名だが偶然だろう。
まさか他国の国主が、第5師団の任務に参加するだけでなく、同じ
部隊になるわけもない。
﹁あ、えと、自己紹介も終わったし、ニャー達もそろそろ船に乗り
込み︱︱﹂
1121
﹁妾がまだじゃ! このうつけ猫めが!﹂
﹁ひニャ!? す、すいませんニャ!?﹂
隊長であるはずのミリアが怒鳴られ怒られている。
先程の魔力の発露を見ては、怖がるのも仕方ない。
その証拠にレイゲンだって黙って⋮⋮ん?
既に体勢を崩して軍艦を見てるな⋮⋮。
﹁妾はレイニー、我が君に仕えし吸血姫レイニーじゃ。疾く覚え傅
くがよい、にんげ︱︱ぐわっ!?﹂
名乗りながら魔力が溢れ始めたレイニー⋮⋮さんを拳骨が襲う。
﹁ティ∼ティ∼スゥ∼∼! 妾の頭をポコポコ殴るでないわっ!﹂
﹁躾がなってないからですよ?﹂
﹁吸血鬼はセシル様の配下に相応しくないですわね﹂
わいわいと騒ぎ始める三人の少女。
あ∼、この少女達と行動を共にする⋮⋮のか?
困惑する俺と同じく困惑しているミリア。
レイゲンはのほほーんとしている。大物だ。
どうしてよいか分からないミリアと俺に声がかけられる。
1122
﹁まぁ、あんたらも大変だろうと思うけどぉ。よろしくねぇ﹂
﹁はぁ、えぇ、こちらこそ﹂
﹁あ、はい。よろしくですニャ﹂
まとめ役っぽいラミアのティティスさんに生返事をする俺達だった。
あの三少女、実力は高そうだし大丈夫だろう。
見た目は少女なのだが。
きっと大丈夫だ。
◆◆◆
出航した船の上で不安な光景が目に入る。
﹁うっぷ。ゆ、揺れる船の上とはかように不快なものかや⋮⋮﹂
﹁んぐ。海のない天界にはない感覚⋮⋮﹂
﹁あうっ。ティア∼薬をぉ。あぁティアは居ないんでしたわぁ⋮⋮﹂
船のデッキで船酔いする三人の少女達。
実は凄い実力者だと思ったのだが⋮⋮。
不安を解消する為に隣に立つレイゲンに意見を求めた。
﹁なぁレイゲン。あの三人は実力者だと思うんだが、あれを見てど
う思う?﹂
1123
﹁あん? 決まってんだろ﹂
自信満々に言い切るレイゲン。
俺とは違う彼女達の真の実力を看破していたか。
頼もしさを感じ続きを聞く。
﹁可愛いは正義だぜぇ!﹂
⋮⋮こいつも実は船で酔っているのかもしない。
頭が船酔いのレイゲンを置いて、船内の自室へと戻ることにした。
1124
第67話 魔の饗宴︵後書き︶
ラーメン天使のルネちゃん登場!
有翼族の代表として参加です。
ミレイアさんは、セシルの家に遊びに来ていたときに話を聞いてポ
イント稼ぎにきました!ヤンデレの行動力は国を越える!怖い!
それにしても⋮⋮。
前半のセシルさんの適当さやエロさに比べ、後半のアレイスター君
の真面目さ⋮⋮。
どっちが主人公でしたっけ?︵?ω?;︶
1125
第68話 魔の都
﹁お母様、お話があります﹂
優雅に紅茶を飲んでセレブ気分で居ると、ラミューとスライムさん
がやってきた。
久しぶりに飲むメロディアさんが淹れてくれる紅茶は美味しいです。
魔獣退治の時に使った魔法の影響で昨日まで寝込んでたんだよね。
危なげなく終わるはずの魔獣退治だったんだけど∼。
メロディアさんが一月寝込むほどの魔法を使う事になるとは思いま
せんでした。
リエルさんに用意させた魔獣はそれでも生きてた訳ですが⋮⋮。
﹁核さえあれば何度でも蘇るペットでございます﹂だそうだ。
メロディアさんに﹁私達を殺す気ですか!﹂って怒られたっけ。
⋮⋮後でもう一回メロディアさんに謝っておこう。
っと、今は目の前の義理だけど大切な愛娘の事でした。
﹁ラミュー、どしたの∼?﹂
﹁私をスライムさんの子供が産めるようにしてください﹂
﹁ぶっ﹂
想像外の事を言われ紅茶を噴出す。
1126
ラミューの顔は真剣で冗談を言ってるようには見えない。
スライムさんを連れて部屋の隅に移動する。
﹁ちょ、ちょっとスライムさん、どゆこと?﹂
﹁ぷるぷるぷるぷる﹂
﹁ふむふむ。ラミューと一緒に僕の子供の子守や家事、ついでにラ
ミューの性処理をしてたら恋人になった? ⋮⋮性処理!? スラ
イムさんともあろう紳士がラミューをヤったの!?﹂
﹁ぷるぷるぷる﹂
﹁あ、ラミューが我慢できなくなって仕方なく手伝ってただけと﹂
なるほど。
スライムさんは真面目で優しくて気遣いが出来る素敵なスライムだ。
魔母に目覚める前の僕とのエッチ、じゃなくて治療は気持ちよかっ
た。
子宮姦っぽいのをして貰った時は自分から腰を振っちゃったっけ。
スライムさん的にはエロい気持ちはないんだろうけど∼。
ラミューもきっと痛みが一切ないスライムさんのテクニックの虜に
なったんだね∼。
﹁で、スライムさんは本気なの?﹂
﹁ぷるぷるぷるぷる!﹂
1127
﹁意図はしてなかったけど、ラミューを惚れさせた責任はとる!と。
何と言う男前な﹂
当人同士が合意ならば僕が言う事はない。
大切な愛娘のラミューだってスライムさんになら任せられる!
﹁わかったよ、ラミュー! スライムさんの子供を産めるようにし
てあげるっ!﹂
﹁ありがとうございます! セシルお母様!﹂
親娘として抱き合う僕とラミュー。
それを見ていたメイド長メロディアさんが口を開く。
二人に対するお祝いかと思ったら⋮⋮。
﹁エルフにスライムの子を妊娠可能にさせるほどの肉体改造が行え
るのに、私の胸が未だに少ししか大きくならないのは何故なのでし
ょう?﹂
聞こえたけど聞こえない振りをする。
肉体変異をかなり使えるようになった僕ですが。
メロディアさんの胸は何故か殆ど大きくできないのでした。
◆第68話 魔の都
1128
俺達が住む大陸の南にある別の大陸。
暫定的にサウスアースと呼ばれている。
名づけは開拓責任者のセシル様らしい。
南の大地と安直な気もするが、分かり易い方が良いと考えたのだろ
う。
そんなサウスアースの大自然の中を俺達は進んでいた。
﹁折角の独立小隊だってのに索敵任務とかど∼なのよ﹂
﹁本体は海岸沿いに拠点を作っているから仕方ないだろう。まずは
軍港となる港町を作り、そこを拠点にサウスアースを調査開拓して
いくんだからな。簡易都市建設か索敵か、どっちかといったら最前
線の索敵任務の方がいいだろう?﹂
﹁そうなんだがよぉ。俺ら以外にも索敵部隊なんていっぱいいるじ
ゃねぇか﹂
﹁1小隊でカバーできる範囲には限界があるんだから仕方ない。だ
がそう愚痴らなくてもいいだろう。俺達ミリア小隊は特別権限があ
るんだからな﹂
リュックを背負い槍をもったレイゲンは愚痴を吐くが、索敵任務と
は言え捨てた物ではない。
ミリア小隊は他の部隊とは違う権限がある。
まず交渉可能な現地民が居た場合、小隊独自での交渉権がある。
また危険な魔獣を発見した場合、独自で討伐可能ならしてもよい。
さらに遺跡やダンジョンがあれば現地調査をそのまま続行してよい
1129
と言われているのだ。
つまり他の小隊と違い、第5師団の代表として現場で振舞える。
先住民と交渉しよい条件を結んだりすれば⋮⋮。
﹁これはチャンスだ!﹂
﹁うニャ! アレイスターやる気ニャね!﹂
﹁ああ! ミリア、一緒に頑張ろうな!﹂
﹁う、うん! 一生一緒に頑張るニャ!﹂
俺と一緒に頑張ろうとしてくれるミリア。
それに比べレイゲンを始めとした他の面々と言えば。
﹁緑豊か過ぎて獣が多すぎるのぅ。妾を襲う獣とは久しくおらなん
だが、少々飽きたぞえ﹂
﹁苛めては可哀想ですよ? 二度と襲ってこないように穏便に教育
するのがよいと思います﹂
﹁穏便にと言いつつ、容赦なく獣の心を折る貴方は中々見込みがあ
りますわね﹂
襲い来る魔獣を片っ端から返り討ちにする三人の少女達。
ワイルドバイソンやキングタイガー、恐鳥ズーといったランクAク
ラスの魔獣達。
1130
それらを事も無げに返り討ちにしている様は圧巻の一言だ。
だが、行動とは裏腹に口から出る言葉はやる気の欠片も見えない。
ただのピクニックに来ているような軽さだ。
正直ミリア、レイゲン、俺の三人では苦戦必死の魔獣達をあっさり
撃退してる為、真面目にしろと注意が出来ない。
﹁さすが未開の大陸。魔獣が跋扈しててすげぇが、それ以上にお三
人が凄いっすねぇ。可愛い見た目でその強さ、いやぁ、是非お近づ
きになりたいもんです﹂
レイゲンに至ってはレイニーさん、ルネさん、ミレイアさんをナン
パし始める。
もうちょっと真面目にやる気を⋮⋮。
せめて自分とミリアだけでもビシっとして︱︱と思っていた俺にテ
ィティスさんが声をかけてきた。
﹁肩肘張って気張っても上手くいくもんじゃないよぉ? 抜けると
きは抜きなさいなぁ﹂
﹁はぁ、いや、しかし任務中ですし﹂
﹁今はあっちの坊やみたいに雑談でもしてりゃいいのさぁ。真面目
にならなきゃ行けない時は皆真面目になるだろうからねぇ﹂
﹁そういうものでしょうか﹂
年長者であるティティスさんに言われては考えざるを得ない。
魔獣が襲ってきても三人が撃退してくれるのだ。
1131
油断はせずとも少しは気を抜くべきかもしれない。
﹁ティティスさんの言う通りかもしれませんね。ミリア、俺達も少
し肩の力を抜こう。抜ける時に抜くのも悪い事じゃないかもしれな
い﹂
﹁わ、わかったニャ! アレイスターが抜く時、ニャーも手伝うか
ら言ってニャ!﹂
レイゲンのようにコミュニケーションをとるのも悪い事じゃないだ
ろうしな。
隊員同士、仲を深めれば連携もしやすいだろう。
ミリアも俺に合わせて手伝ってくれるらしい。
顔を真っ赤にしてやる気に満ち溢れながら答えてくれる。
となれば予想以上の実力があった三人娘に積極的に話しかけてみる
か。
﹁レイニーさん達はどういった経緯でこの部隊に配属されたんです
か?﹂
実力差からついつい敬語になってしまう。
見た目は幼い少女のレイニーさんにルネさん。
ミレイアさんは二人より少し年が上だろうが、やはり少女にしか見
えない。
﹁妾はセシルめに頼まれたからじゃな。それに聖国としても人材を
派遣する必要があったでの。なれば妾がと思ったまでじゃ。間違っ
ても我が君を派遣したら何人孕ませる事かや﹂
1132
途中から独白のようになったが重要な事が聞けた。
レイニーさんは聖国の人なのか。
聖国の事情は殆ど知らないが色々大変なのだろう。
﹁私もセシル様より頼まれまして。有翼族としてもリリス様の後継
たる魔母セシル様に恩を売る必要がありますしね﹂
なるほど。
有翼族とは魔族の一氏族だろうか。
ルネさんは一族を代表して参加してるわけか。
﹁おほほほ。主に頼まれて行動を起すとは察しが悪い方達ですわね。
わたくしは違います。セシル様が望む事を察知し、自ら参加しまし
た﹂
ほう。
ミレイアさんは個人的にセシル様の部下なのか。
他の二人とは違いどこかの代表で参加と言う訳じゃないらしい。
﹁私は魔母たるセシル様の命だから来たってわけさぁ。ラミア族の
後継者も産んで貰ったしねぇ。ここらで一発、忠誠心の示し時さね﹂
巨大な槍を持ってグっと力強く握るティティスさん。
忠誠心と前向きな気持ちを感じるのだが⋮⋮。
セシル様に後継者を産んで貰ったとは一体⋮⋮。
四人の話を聞いて思ったことがある。
そう言えば俺はセシル様の事、殆ど何も知らないな。
四人はセシル様を直接知ってるようだし丁度良い。
1133
聞いてみるか。
﹁皆さんそれぞれの理由を聞かせていただき感謝します。あの、よ
ければセシル様についてもお聞きしたいのですが。自分は第5師団
を希望したと言うのにセシル様の事は噂程度しか存じ上げない物で
して﹂
言い終わった後の反応はそれぞれ違った。
中でも明らかにげんなりした表情のレイニーさんが口火を切る。
﹁お主らが知るセシルとはどのような者じゃ?﹂
﹁そうですね。戦争を終結させ、天界を開放し、魔族と魔物と天使
の頂点に建つ英雄、神の如き方と聞いています﹂
﹁ニャー的には個人戦闘力が超絶凄い人かニャ∼﹂
﹁貴族社会では美貌の麗人。何人かの子持ちらしいけど、それが気
にならないほどの絶世の美女って聞いてますぜ!﹂
俺、ミリア、レイゲンの順に答えた。
一人一人が答えるたびにレイニーさんの顔が酷くなる。
へんな事は言ってないはずだが、気を悪くされたのだろうか?
神の如きとは言い過ぎたか。
意識的に過度な尊称を使ったのが見透かされたかもしれない。
﹁あやつが美人と言うのはまぁ、真実じゃがな⋮⋮。それに関して
も身持ちが緩すぎて台無しな気もするが⋮⋮﹂
﹁うぉ!? まじすかっ!﹂
1134
眼を輝かせて反応するレイゲン。
身持ちが緩いというのは冗談か何かだろうに。
⋮⋮まさかセシル様と、とか考えているんじゃないだろうな。
﹁それと戦闘能力か⋮⋮。能力は高いじゃろう。妾とて逃げるあや
つを捕らえるは至難。じゃが能力に反して性格が戦闘に向いておら
ぬ。本人より影で作った分身の方が強いくらいじゃからな⋮⋮﹂
平和主義と言う事だろうか。
戦闘能力が高いが、相手を気遣い全力を出せないとか?
今の平和を築いた方ならありうる。
﹁英雄に神か⋮⋮。神じゃったら愛欲の神か肉欲の神か、或いは子
宝の神かや⋮⋮。なんにしてもあやつの手柄はあやつの周りの者の
成果じゃろう。魔母でなければただの娼婦じゃろうのぅ⋮⋮﹂
⋮⋮思ってたのとあまりに違う答えに思考が進まない。
想像してたセシル様像とレイニーさんの話のセシル様が重ならない。
どういう事だ?
俺は何か質問を間違えたか?
ミリアと俺は黙っていたがレイゲンは一人でなにやら呟いていた。
﹁美人で人妻で子持ち、惹かれるぜ。でもちょっと偉い人過ぎるが
⋮⋮いや、それも燃える要因だぜ! こう出会って一気に誘ってか
ら考えても⋮⋮﹂
レイゲンには後で釘を刺しておこう。
動けなくなるほどたっぷりと。
1135
﹁レイニーさんはわかってませんね。セシル様の重要性が﹂
レイニーさんの発言に反発したのはルネさんだ。
﹁デモンマザー。全ての魔、正しくはこの星の生物の頂点に立つ超
越者。デモンマザーは唯一単一の存在でこの世界そのものからバッ
クアップを受けられる、まさに神の如きお方なのですよ﹂
ルネさんの発言もよく分からなかった。
全ての生物の頂点?
世界からのバックアップ?
﹁ふむ。しかし唯一と言うがリリスが居ろう? 魔母はリリスとセ
シル、現在世界に二人居るじゃろう?﹂
﹁そ、そうですが。リリス様がおっしゃるにはデモンマザーは世界
に一人だけしかいないと⋮⋮﹂
﹁リリスもセシルと同じくらい抜けておるからのぅ。勘違いではな
いのかえ?﹂
﹁⋮⋮そんな事はありえない。なんてことは言えないので否定でき
ません⋮⋮﹂
﹁そう言えばカルドでセシルに会った時にリリスがおらなんだ。い
つもセシルと共におったはずじゃが﹂
﹁セシル様が正式にリリス様のあとを継いだと連絡があってから、
アルカ様も行方不明なんですよね﹂
1136
﹁周りを振り回す度合いがセシルとどちらが上かのぉ﹂
﹁突発的で予想外な行動ならリリス様は凄いですよ﹂
﹁セシルの奴も常人に考え付かん事を平気で言いよるからのぉ﹂
なにやら二人で話し込み始めた。
ずっと気が合わないと思ってたレイニーさんとルネさんだが、妙に
和気藹々と話していた。
口を挟めず見守って居ると肩を叩かれる。
ミレイアさんが俺とミリアの肩に手を乗せていた。
﹁セシル様は全ての愚民の幸せを願う慈愛のお方ですわよ。貴方達
はセシル様の為に行動できて幸せなのですわ﹂
﹁まぁ欠点の一つや二つあるけどねぇ。でも、いつも笑顔で皆が幸
せなのが好きらしい子だからさぁ。掲げる神輿としては悪くはない
ねぇ﹂
ミレイアさんとティティスさんが笑顔で言ってくる。
総括してみると、結論はよく分からないだった。
しかし二人を見ると悪い人ではないらしい。
いつか出世して直接会うのが楽しみだ。
﹁年上だし、甘える感じで行けば意外と⋮⋮! 身分を超えた秘密
の関係! も、燃えるぜ!﹂
1137
レイゲンに説教をしながら、未知の大陸の調査は続く。
◆◆◆
ミリア小隊は南に向けて進んだ。
三人の強さと交渉可能な種族が居なかったので、特に何事もなく南
に進む。
二日目の中ごろに唐突にそれは目の前に現れた。
﹁これは人工物だよな?﹂
﹁ニャ。ドーム状で1キロ以上ありそうニャ。大きくてよくわから
ニャいけど﹂
﹁あそこに入り口っぽいもんがあるし、はいりゃ分かるだろ﹂
レイゲンの言う事は尤もだったのでドーム状の建物の入り口へ向か
う。
真っ白な建物は表面の汚れなどで時間の経過を感じさせるが、傷な
どは見られなかった。
﹁はて、妾はこれと同じ感じの建物をどこぞで見た事があるような﹂
﹁奇遇ですね。私もこの白い感じはどこかで⋮⋮﹂
﹁わたくしもどこかで⋮⋮﹂
門を素手で押し開き中へ入る。
1138
中に入ると町が広がっていた。
だが外の外壁っぽい白いドームとは違い、中の建物はどれもこれも
崩れている。
﹁廃墟⋮⋮か? 都市が丸々ひとつ入っているとはな。既に誰も住
んで居ないようだが﹂
﹁どこもボロボロニャね∼﹂
﹁古代遺跡か何かか? ちょっと浪漫だな﹂
軽口を叩きながら廃墟となった都市を進む。
﹁妙じゃな﹂
レイニーさんの言葉でふと気づいた。
道中ずっとわいわい雑談をしてたレイニーさん達が黙っている。
今しゃべっているのはミリアにレイゲンに俺だけだ。
先頭を歩く俺達の前に建物の影から謎の物体が飛び出してきた。
﹁なんだぁ? 金属? 丸い金属の塊が飛んでるぜ﹂
﹁新種の魔物ニャ?﹂
﹁ふむ。攻撃はしてこないようだが﹂
と近づいた瞬間、球状の玉が真ん中から上下に割れ金属の目玉が俺
を直視した。
それに直感的な危機を感じ、剣を横に振りぬく。
1139
ガジィンと金きり音を立てて上下に割れた。
落ちた球状の魔物の死骸はジジジジと不思議な音を立てていた。
﹁見たこともない魔物だな。体は金属か。アイアンゴーレムのよう
な魔道人形だろうか?﹂
﹁そいつ雷属性かニャ? 死体がビリビリ鳴ってるニャ﹂
﹁お∼、アレイスター、見事に上下に斬ったなぁ﹂
﹁⋮⋮監視用スフィア? 何故天界にあるはずの古代の遺物が? それも稼動状態で﹂
ルネさんが魔物の死骸を見てぼそぼそと言っていた。
ふと気づけば球状の魔物を調べる俺達を囲むようにティティスさん
達が立っていた。
﹁ふんっ。生気を感じんと言うことは不死者か人形かの﹂
﹁瘴気を感じませんからゴーレムの類でございましょう﹂
﹁やれやれ、お仕事といくかねぇ﹂
身構える三人。
まるで敵襲に備えるようだが⋮⋮。
﹁あっ、考えてる場合じゃありませんでした。今のが監視スフィア
だとしたら敵がきます!﹂
1140
ルネさんの叫び声を合図にしたように四方から音がした。
獣の叫びではなく、感情が篭められていない不気味な咆哮。
ガィィィィィン。プシュゥゥゥ。
不可思議な叫びと体から蒸気を出して威嚇をする鉄の巨人が4体。
﹁あ、あれは鉄巨人!? 資料でしか見たことのない兵器がどうし
てここに!?﹂
﹁知っているのですか?﹂
明らかに鉄の巨人を見て動揺するルネさん。
その正体を知っていそうなので聞いてみたが。
﹁あれは失われた有翼族の故郷にあった兵器です。敵を抹殺する為
だけの殺戮マシン。私達を敵と認識したのなら躊躇なく襲ってくる
はずです。気をつけてください!﹂
出てきた情報はあまり嬉しくなかった。
つまりあれは俺達を殺す為に在るということか。
﹁来るぞっ!﹂
謎の廃墟で鋼鉄の巨人との戦いが始まった。
1141
第68話 魔の都︵後書き︶
いつの間にかSFの世界に!?Σ︵ ̄◇ ̄;
そろそろセシルさんを前面に出さないと、世界がシリアスに包まれ
る。
シリアルなコーンとかが私は好きなんだけどなぁ|電柱|ー︶
1142
第69話 魔の策謀
パキリ。
炎の幻惑結界で守られた森の中に足音がした。
姿を現した侵入者に目を向ける。
﹁私ですよ。アルカ﹂
﹁あぁ、リエルですか﹂
木々の陰から出てきたのは、私と同じリリス様に仕える魔人の一柱
であるリエルだった。
﹁セシルさんの警護はどうしたんですか?﹂
﹁予定通りセシル様が南に向かわれたので報告にきたのですよ﹂
﹁予定通りではないでしょう。予想通りと言うほうが正しい。それ
にしたって貴方が直接こなくてもよかったのでは?﹂
﹁南の大陸に関しては私達、リリス様に従う魔族は手出し無用と言
う事で暇でしたので﹂
リエルの報告を聞いて、氷の中に閉じ込められているリリス様を見
る。
1143
生命活動を止める氷獄の封印。
その中で動かないリリス様はなんとなく笑顔を浮かべているようだ
った。
﹁これで本当に良かったんですか? リリス様﹂
氷の中の主は何も答えない。
例え答えたとしても﹁た、たぶん大丈夫だよ∼?﹂という返事なの
でしょうけど。
﹁セシルさん、頑張って下さいね﹂
南に向かったもう一人の魔母。
私達魔族の女王となるべき方の無事を心で祈る。
◆第69話 魔の策謀
﹁ゼフィーリアよ! 僕は帰ってきた!﹂
雲がいっぱいの青空へ叫ぶ。
﹁ンヤ∼? セシりんどうしたの∼ん? とうとうお脳がイっちゃ
ったの∼ん?﹂
叫んだ僕に失礼な事を言うリオ。
1144
マイサンであるアスターを抱いて羨ましいです。
﹁ん∼、なんとなく世界の中心から最近外れてた気がして、こう、
世界にアピールをね?﹂
﹁ンイ∼。お船の上で訳のわからない理由で叫ぶのがセシりんだか
ら誰も心配しないけど、あまり叫ぶのはよくないわよ∼ん﹂
リオの言うとおり、周りが働いてるのに無駄に叫ぶのはよくないか
∼。
現在僕らは第二陣としてサウスアースへ向かう船の上なのです。
船の各所では元魔物の亜人さん達がせっせと働いております。
人族の人がいないのは⋮⋮僕が率いる集団が﹃魔軍﹄と言われ大好
評だからです。
﹁アレイスター君達しか入団希望者が居ないとか、ぐすん。うぅ、
いいもん。その分彼らを大事にするもんっ﹂
﹁セシル、珍しく仕事にやる気をだしていますね﹂
僕の親衛隊であるダークエルフ部隊を率いるアルシアさんが僕の横
に立つ。
﹁ふっふっふ∼。アウラも無事に高校に入学したし、子供達はメロ
ディアさん達メイド衆が面倒を見てくれる! それにこの第二陣の
責任者は僕だけど、現地に着けばお義姉様に任せれば良いし!﹂
﹁なるほどねん。レミネーるんに押し付ける気満々だから大人しく
1145
引き受けたのねん﹂
﹁しかしネーブルから言われてるでしょう? 航行中の魔獣などに
気をつけろと﹂
﹁それも大丈夫! フェシスさん率いるラミア海兵隊にかかればシ
ーサーペントですら夕ご飯だよっ!﹂
子供達は任せてるので後顧の憂いはなし。
アスターだけはリオから離れないので連れて来てるけど。
航海中はフェシスさんが安全を保障してくれている。
現地に着けばお義姉様が完璧にやってくれるでしょう。
﹁実質僕のお仕事は君臨するだけ! と、なれば! これは新婚旅
行のようなもの! アルシアさんとの新婚旅行! やる気もでるっ
てもんですよっ!﹂
胸元を大きく開いてる服を着たアルシアさんに抱きつく。
ふにゃんと僕の胸とアルシアさんの胸が当たって気持ちいい。
﹁セシルは甘えん坊ですね。ん﹂
﹁ん∼﹂
アルシアさんからキスをされた。
最初は触れるだけのキス。
それが終わると唇を舐められ、口の中に舌を入れてくれる。
僕の舌の先端を舐めて、それから舌全体を舐めてくれる。
1146
﹁ふぁ、んぅ、はぁ、アルシアさん、好きぃ、もっとぉ﹂
﹁んっ、はっ、ちゅ、セシル、あむ、ちゅる﹂
段々激しくなるディープキス。
僕の頭はアルシアさんの事しか考えられなくなる。
﹁アハ∼ン。二人共仲が良いのはいいんだけどね∼ん。両親があま
り仲良すぎてイチャイチャしてると、子供はグレるわよ∼ん﹂
リオの声が遠くに聞こえた。
その声を気にせずにアルシアさんはドレスから僕の胸を取り出す。
﹁セシルの胸は大きくていやらしいですよ。こんなにグニグニ柔ら
かく形を変えて﹂
﹁んぁ、アルシアさぁん、オッパイもっと揉んでぇ﹂
南の大陸に進む船の上で、僕とアルシアさんの愛の営みは続く。
◆◆◆
﹁ほえ? 行方不明?﹂
サウスアースの簡易軍港についてお義姉様に会ったのですが∼。
﹁えぇ。セシルさんが目をかけていたミリアさん達3人に、レイニ
ー達を加えた小隊が7日経っても戻ってこないのです﹂
目をかけてたって言うか、僕が迷惑かけてたって言うか⋮⋮。
1147
色々と借りがあるあの3人が行方不明ですと?
﹁ネル姉様、それは大問題なのでは? 捜索隊は出されたんですか
?﹂
﹁アルにしてはまともな対応を聞きますね⋮⋮。そうですね。何か
問題があったとして、レイニーやルネさんが苦戦するような問題を
解決できそうな戦力が居なかったので、捜索隊は出せなかったので
すよ﹂
﹁うちの母さんが居るから、何かあっても上手く潜り抜けると思う
んだけどねぇ﹂
﹁フェシスの言うとおりティティス殿が居るのであまり心配はして
居ないのもあります﹂
﹁ンイー。それもどうかと思うわよん? 未知の大陸なんだし、テ
ィティすんやロリババァの天敵が居るかもしれないわん?﹂
﹁その可能性もあるのですが、そうすると尚更下手な人材では捜索
に出せず︱︱﹂
早々に僕を置いて会議が進む。
レミネールお義姉様にアルシアさんにフェシスさん、リオも加わり
話し合ってる。
僕も何か意見を言おうと思うのですが⋮⋮。
皆がスラスラ発言して会話が早く口を挟めない。
⋮⋮こうなれば!
1148
リオが抱いてるアスターと遊ぶしかっ!
ソロリソロリとアスターに近づき手を伸ばす。
僕の手が可愛いホッペに触れた瞬間。
ペチッ。
僕の手の甲を叩くアスター。
反対の手ではしっかりリオのオッパイを掴んでいる。
ママのオッパイよりリオのオッパイが良いというのか。
いけずな息子のホッペを指でツンツンつつく。
ペチペチ叩いてきて可愛い。
こんなに可愛い息子が居る僕は幸せだなぁ。
にこにこ笑いながらアスターと遊ぶ。
手を適当に動かすとアスターがそれを追う。
そしてペチっと可愛く叩いてくる。
叩いた後に頭を撫でると﹁むー﹂と言いながら撫でさせてくれる。
そろそろ抱っこしたいなぁと思い両手を伸ばす。
アスターの両脇に手を入れたらギロリとリオに睨まれた。
﹁にゅお!? リ、リオ。こ、これは、ちょっとアスターを抱っこ
したいなぁって⋮⋮﹂
﹁ンイ? 何を言ってるのよん。それより早く準備するわよん﹂
﹁へ? 準備?﹂
1149
あ、ら?
よく見れば全員が僕を見ていた。
アスターを抱っこしようと両手を伸ばした僕を。
﹁セシル、私達でミリア小隊の捜索に出ますよ﹂
ひょいとリオからアスターを抱き取ったアルシアさんが言ってきた。
﹁セシルさんを隊長に、アル、リオ、フェシスの4人で捜索をお願
いします。セシルさんを行かせるのは、レイニーが我侭を言ってい
た場合、対抗できるのがセシルさんだけですので﹂
﹁えぇ、僕が捜索隊の隊長!? アルシアさんと新婚旅行に来ただ
けなのに!?﹂
驚く僕をスルーして会議をしていた部屋を出て行く面々。
アスターはアルシアさんからリオに飛び移り、リオのほっぺにチュ
ーしていた。
そんな羨ましい光景を目にした僕にフェシスさんが。
﹁あんたもさぁ、子供いっぱいのお母さんになったんだからぁ、も
うちょっとしっかりしないもんかねぇ。拾った時から全然かわらな
いねぇ﹂
実は年下なフェシスさんに呆れられる。
僕、一応頑張ってるんですけど⋮⋮ね?
◆◆◆
1150
未開の地と言われるだけある自然豊かな森。
その中を歩く︱︱のは面倒くさいので空を飛んで移動してます。
﹁ふふふ、クロ、南に向けて安全に乗り心地よく前進っ!﹂
カルドに居た黒竜のクロを魔法で召喚し、その背に乗って移動して
います。
最初は地上を徒歩でとか言う話だったんですが∼。
未知の森を徒歩で移動とか怖いですし?
リオから離れないアスターは﹁付いて行くー﹂と我侭言いますし。
﹁クロの背中の上ならモンスターにも襲われないし安全だよね∼。
さぁ、アスター、君の事を考えまくってるママのお胸においでっ!﹂
﹁ン? アスターは寝てるわよん﹂
﹁ア、アスタァ⋮⋮﹂
リオに抱かれすやすや眠る我が子を見つめる。
無垢な寝顔がとっても可愛い。
あの柔らかそうなほっぺたにチュ∼ってしたくなる。
クロの背中の上で寛ぐ僕ら。
大きな魔力の感知や目視での地上の監視をクロがしてくれるのでや
る事がないのです。
﹁しかし驚きましたよ。セシルはいつの間に召喚魔法を使えるよう
1151
になったんですか?﹂
﹁ん∼? 気づいたらいつの間にか? 僕に服従した魔物はなんと
なく呼べる感じだったからやってみたら出来ただけだよ∼?﹂
﹁へぇ。あんたがこの竜を服従させたとはねぇ﹂
フェシスさんが感心してくれる。
服従と言ってもですね∼。
精子がほしくてほしくて堪らなくなった時にクロに会いに行って∼。
大きなオチンチンに裸で抱きついたり舐めたりして∼。
8回溺れるくらいの量の精子を射精させただけなんですけどね∼。
8回出したクロが﹁何でも言う事聞くので許して下さい﹂って言っ
たっけ。
アレが召喚契約になったっぽいなぁ。
懐かしい思い出を思い出し、クロの背中を撫でた、
撫でたらクロが首を曲げ僕を見て驚いた顔になった気がする。
﹁しかしどこまで見渡しても森、森、森ですね﹂
アルシアさんの言葉を聴いて全員で地上を見る。
確かに地上は緑一色で森が広大に広がっていた。
﹁おんやぁ? なんだか白い卵みたいなのがあるねぇ。ありゃなん
だぃ?﹂
人間形態のフェシスさんが前方を指差す。
1152
見れば白い丸い何かが、森の緑の中に浮いていた。
﹁あそこから強大な魔力を感じますな。セシル様、向かいますか?﹂
他人行儀なクロが聞いてくる。
子供を産んだ仲だと言うのにクロは真面目だな∼。
﹁ん∼、あれを見つけて調べてるのかもね∼。レイニー達が居るか
もしれないから向かおっか∼﹂
﹁承知﹂
白い巨大なドームにクロの巨体が進んでいく。
﹁フミュ∼ン。日本のドームにも似てるわねん。こっちのがドでっ
かいけどん﹂
﹁あ、ドームといえば! リオってば今度ドームでライブするんだ
って∼?﹂
﹁そうなのよん。私の歌が2000万ダウンロード? したらしく
ってねん。記念らしいわよ∼ん﹂
﹁サキュバスの歌って確かぁ、魅了効果があるんじゃないのかぃ?﹂
正直僕達はピクニック気分でした。
アスターをつれてくるくらいだしね∼。
レイニーが居て苦戦する相手もいないだろうし。
きっとどこかの探検に熱中してるんだろうなぁと言うのが共通認識
1153
です。
それがあの白いドームの建物だろうと思ったのです。
それは間違いではなかったのですが⋮⋮。
◆◆◆
﹁お∼、こりゃあ見事な廃墟だねぇ﹂
入り口にクロを待たせ、白いドームの中に入ったのですが∼。
フェシスさんの言うとおり中は廃墟の町が広がっていました。
しかしそれよりも僕の目を惹いたのは。
﹁どう見ても機械の残骸が散乱してるんですけど。アレは一体なん
だろぅ﹂
2∼3mもありそうな残骸がちょいちょいあります。
どう見ても金属で出来ていて、メカ的な雰囲気なんですけど⋮⋮。
あれ?
ここファンタジー世界のはずだよねっ?
︱︱︱︱︱。
入り口で立ってると遠くから音が聞こえた。
﹁これは戦闘音でしょうか? どうやら誰かが戦っているようです
ね。行きますよ。セシル﹂
1154
アルシアさんが僕の手を握って走り出す。
リオにフェシスさんも続いて駆ける。
﹁ンイ∼。セシりん、私はアスターを守らなきゃいけないから∼ん。
自分の身は自分で守ってね∼ん﹂
﹁ん! 大丈夫なんだよっ! 僕も魔の女王様だし、自分の身は自
分で守れる! ⋮⋮はずっ!﹂
﹁⋮⋮こんなに不安な大丈夫って言葉も珍しいわねん﹂
リオのお胸でぐっすり眠るアスター。
影を巻いてリオのオッパイにぴったり密着して落ちないようにされ
ている。
リオに任せてれば安心なんだけど∼。
﹁うぬぬぅ。ママのオッパイよりリオのオッパイで安眠する息子に
一抹の不安がっ! 将来淫魔ハーレムとか作ったりしそうっ!﹂
走りながら愛息の将来を考える。
あんなに可愛くて、将来イケメンになるであろうアスター。
きっと女性にモテまくるはず。
﹁マ、ママは知らない女の人に息子をあげないんだ︱︱﹂
﹁セシルッ!﹂
︱︱よっと言おうとした僕をアルシアさんが引っ張る。
引っ張られた僕の目の前を巨大な何かが通過していく。
1155
ドガン、ガラガラガラ。
通過した何かは廃墟の建物に当たったようです。
立ち止まると楽しげな声が聞こえてきた。
﹁アハハハハハ。妾の前ではデク人形なぞいくらきても無駄よのぅ。
ほれ、お主等も妾に続かぬかや﹂
﹁ほいよ∼っと﹂
サンダークロウ
﹁︻雷獣の爪︼ニャ!﹂
建物の影から顔だけを出し覗いて見ると。
﹁レイニー楽しそうだね∼。ティティスさんも槍を振り回して笑っ
てるね∼。ミリアちゃんも負けないくらい戦ってるなぁ﹂
覗いた先では変なロボと戦う3人が見えます。
3人はあっという間にロボを駆逐していきました。
それはもう楽しそうに。
面接の時に緊張してたっぽいミリアちゃんも楽しそうにしてます。
﹁なんか生き生きと暴れてるね∼﹂
﹁戦闘が終わったようなので行きますよ﹂
アルシアさんに手を引かれて、レイニー達が居る広場へと進む。
レイニー達はすぐに僕らに気づいた。
1156
楽しそうにしてたのはいいんだけど、戻らなかった事を注意しなき
ゃいけないよね。
ここは女王様らしくビシっと言わねば!
﹁レイニー、楽しいからって戻るの忘れちゃダメなんだからねっ!
報告に戻らないからお義姉様が心配してたんだよっ!﹂
﹁ふんっ。お主ではないんじゃから、戻るのを忘れるなどありえん
よの。お主こそダンスのレッスンはちゃんと進んでるのかや?﹂
﹁ダ、ダンスはほどほどに頑張ってるよ?﹂
注意したはずが逆に弱点を突かれた!
夜会の時とかの為にダンスを習ってるんですが⋮⋮。
いつもネーブルとメロディアさんに怒られまくるので逃げているの
だ。
胸が大きすぎてダンスとか苦手なのがわかってもらえないんだよね。
﹁おやまぁ、フェシスじゃないかぃ﹂
﹁やほ∼い、母さん﹂
﹁レイニー、セシルはダンスよりも政務を覚えたほうがいいと思う
んですが﹂
﹁わかっておらんのぅ。アルシアよ。貴族たる者、まずは優雅に踊
る事ができねばならぬ﹂
1157
﹁アハ∼ン。ロリババァは背が小さいから優雅じゃなくて、無理し
てるお子様の小躍りなのにね∼ん﹂
皆が口々に挨拶を始める。
とりあえずダンスの話は逸れたからいいんですけどね∼。
リオはレイニーと口げんか始めるのやめて欲しいなぁ。
止めるのはきっと僕になるんだろうし∼。
すっかり和んでたら、慌てた声で名前を呼ばれる。
﹁セ、セシル様! ミリア小隊の隊長ミリアですニャ!﹂
﹁あ、ミリアちゃん。大丈夫だった∼? レイニーの我侭に迷惑と
かかけられなかった∼?﹂
﹁迷惑なんて! レイニーさんには戦闘指導をしてもらい助かって
ますニャ!﹂
それを聞いたレイニーが﹁ふっ﹂と勝ち誇ったように笑った。
レイニーもリオと喧嘩しないでね?
それにしてもレイニーが指導とは。
護衛を頼んだだけなのに。
さすが300歳以上だなぁと感心します。
﹁って、それどころじゃありませんニャ! セシル様、重要なお話
がありますニャ!﹂
﹁うん?﹂
1158
若いのに一生懸命隊長をやってるミリアちゃん。
頑張ってる姿を見ると応援したくなるよね。
出来る限り笑顔で対応してたんだけど、次の一言に笑顔が崩れる。
﹁ここの廃墟にあった次元門が暴走をしているらしいですニャ! 現在ルネさんが何とかしようとしていますが、このままでは世界の
破滅とか言ってましたニャ!﹂
ビシっと敬礼して報告してくれるミリアちゃん。
報告を聞いて僕の頭に封印されたリリス様の姿が浮かぶ。
次元門って、確か危険すぎてやばい代物じゃないっけ?
アルカさんが激怒するレベルの⋮⋮。
扱いを失敗すると世界崩壊的な?
﹁ふむ、そうじゃったな。あそこの神殿の奥にヘブンズゲートのよ
うな物があったえ。そこにルネがおるの。妾達は敵がそこに行かぬ
ように迎撃してるゆえ、主らはルネの元へいくがよいぞえ﹂
ミリアちゃんと違いとっても気軽に言うレイニー。
少し離れた場所には真っ白い崩れてない神殿が建っている。
神殿はわかったけど敵とはいったい?
﹁ほえ? 敵ってもう倒したんじゃ?﹂
レイニーが遠くを指差す。
指差す先を見ると何かがこっちに向けて移動してきていた。
あれはさっきレイニー達が倒していたロボ?
1159
﹁倒しても倒しても沸いてきおる。次元門とやらも放置する訳にい
かず、ここでルネが問題解決するまで迎撃に徹しておるのよ﹂
あぁ、だから報告に戻れなかったんだね∼。
﹁ってなことならぁ、私もここで頑張るかねぇ﹂
フェシスさんがラミア形態になり槍を持つ。
﹁セシル、行きますよ﹂
新たなロボが来る前に僕達は神殿へ入る。
アルシアさんにひっぱられ走ってると、神殿の入り口にミレイアさ
んとアレイスター君にレイゲン君が居た。
﹁あら、セシル様。セシル様がいらっしゃったなら問題解決でござ
いますね。ほら、あなた達、しっかりしなさい。セシル様の役に立
つ為、入り口を死守しますわよ﹂
﹁くっ、が、頑張らねば!﹂
﹁も∼俺、限界っす⋮⋮﹂
倒れてたアレイスター君は立ち上がり頭を下げてくれた。
レイゲン君は疲労困憊なのか倒れたまま動かなかった。
走ってそのまま駆け抜けましたが∼。
﹁女性陣だけを見たらどうって事無い感じだけど、男の子達を見た
ら大変な気がするね∼﹂
1160
﹁セシルは男を見てはいけませんよ﹂
﹁ンヤ∼。次元門ってリリスさまんが使った魔法よね∼ん﹂
タッタッタッと白い神殿を進む。
言っていいのかわからないけど、言わずに居られないので言ってし
まおう。
﹁ルネさんのところに僕たちが行ってもさ∼。役に立つのかな∼?﹂
﹁﹁⋮⋮﹂﹂
いや、ね?
流れでなんとなく走ってますけど、次元門の暴走とか言われても?
沈黙のまま奥へと進む。
アスターの﹁ふぁぁ﹂って言う欠伸がとっても可愛く響いた。
◆◆◆
バチバチバチ。
ギヂギヂギヂ。
神殿の奥へ行くと巨大な黒い門があった。
機械音と不快な謎の音をたてる巨大な門。
1161
その側には教卓のような物の前に立つルネさんが居た。
﹁え∼と、ルネさん、調子はどう∼?﹂
声をかけた僕をリオが残念な目で見る。
他にいい台詞が浮かばなかったんだから仕方ないんだよ∼。
﹁セ、セシル様!﹂
﹁や、レイニー達から次元門が暴走とか聞いてきたんだけど⋮⋮﹂
なんだか目の前の門は少し開きかけているような?
黒く光ってるし、表面はスパークも見えます。
絶賛暴走中って感じ。
﹁どうにかしようと頑張ってはいるのですが⋮⋮﹂
﹁ンヤ、どうにもならない感じなのん?﹂
﹁そもそも何故ここにヘブンズゲートが?﹂
リオとアルシアさんが質問する。
﹁たぶんここは、私達有翼族が住んでいた別の世界にあった都市な
のです。魔導科学を根元とした魔導都市。次元崩壊を引き起こした
とされる多次元開通型次元門が、この黒い門なのです﹂
﹁多次元開通型∼ん?﹂
﹁あ、それはたぶんね∼。1個の門で色々な世界と繋がるようにし
1162
たやつってことじゃないかな∼?﹂
﹁その通りです﹂
﹁よくセシルが知ってましたね﹂
日本人にとってはそういうのは常識ですっ。
﹁ンマァ、そんなモンモンだとしても∼ん。有翼族のルネんがいる
なら問題解決ねん﹂
﹁それがそうも行かなくて⋮⋮﹂
背中の天使の羽ごとしょぼーんとするルネさん。
﹁この操作とか古代の物でして⋮⋮。この世界に偶然飛ばされ生き
残った私達の祖先は魔導科学を禁忌として捨て去りまして。次元門
は魔法で再現する事が出来るんですが、それも単一次元門がせいぜ
いで、1万人規模の人が術式に参加して初めて行えるものでして﹂
スラスラ話すルネさん。
その姿は必死に何かを隠すような。
なんとなく答えはわかるのだけど聞いてみます。
﹁つまり?﹂
﹁⋮⋮6000年前の古代の機械操作なんてわかりませんっ! 祖
先が偶然この世界に飛ばされ助かったと思ったら、原因の門もこの
世界に飛ばされてるとは誰も思ってなかったのでしょうね! 解決
方法とかまったく有翼族に伝わってません!﹂
1163
﹁天界へ繋がるヘブンズゲートがあるんですし、一応伝わっている
のでは?﹂
﹁あれは祖先がこの世界の先住民に遠慮して月に都市を作って、そ
こと繋げる為に一度だけ作った物です。それ以降は秘術として王族
にしか伝わってなかったはずです。それも今は亡き最後の王族の宿
天王様が崩御なされて遺失しました﹂
﹁ってことわ∼ん?﹂
﹁打つ手なしですっ!﹂
僕、アルシアさん、リオの言葉に淀みなく答えるルネさん。
返事が早いのは良いんですけど、結論が打つ手なしって⋮⋮。
﹁有翼族や魔族だって500年生きればいい方なんです。6000
年以上前の技術はさすがにわかりません。今は王族の方もいません
し⋮⋮。あっ!﹂
突如ルネさんが声を上げた。
それは希望に満ちた声色。
﹁そうです! リリス様! 宿天王様の恋人だったリリス様は秘術
も教えてもらっています! もしかしたらリリス様なら!﹂
なるほど!
と希望を見出したのですが。
﹁この門は既に少し開きかけていますが時間が在るのですか? リ
1164
リス様はここから北の大陸に居るので呼びに行くだけでも数日はか
かると思いますが﹂
﹁⋮⋮一刻も早くなんとかしないとまずいと思います。私達が来た
ばかりの時は稼動音くらいだったのですが⋮⋮数日でここまでにな
ったので⋮⋮。もしかしたら私達が都市に侵入したことが原因で稼
動したのかもしれません﹂
アルシアさんの突っ込みに思い切り項垂れるルネさん。
封印されてるリリス様を呼ぶ時間はないと。
いつも笑顔でハチャメチャなリリス様だけど、何かあっても何とか
してくれる気がしてた。
側に居ない今になってありがたみを感じるとは。
﹁このままではこの世界が崩壊し、すべてが滅びてしまいます⋮⋮﹂
悔しそうにルネさんが言う。
﹁世界が崩壊とは⋮⋮死ぬって事ですか?﹂
﹁⋮⋮はい﹂
アルシアさんが繋がる僕の手を強く握る。
﹁ヌ∼。私も次元門の魔法とかわからないからねん。どうしたもの
かしら∼ん﹂
パタパタ羽で浮かんでるリオが真剣に悩む。
1165
皆お通夜かって雰囲気ですが、何でそんなに悩んでるのか。
眠るアスターを撫でる。
リオは耳栓代わりに耳も影で覆っていた。
アスターが戦闘音でもおきなかったのはリオの気遣いのおかげかぁ。
アスターを撫でて満足した。
僕はアルシアさんから手を離し、黒い門に向かう。
歩く僕にアルシアさんとリオが声をかける。
﹁セシル、何をする気ですか? セシルも次元門の魔法とか知らな
いのでは?﹂
﹁ンイ。セシりん、リリスさまんと同じ魔母だからって次元魔法を
知らないと魔法的操作とか無理よん﹂
﹁んみゅ! そんな事はさすがに僕でもわかってるんだよっ!﹂
最近妙に魔力が増えたり、能力が使える様になったりした僕ですが
∼。
さすがに知らない魔法は使えません。
だけど問題ないのです!
﹁ふっふっふ∼。簡単な解決法があるじゃないですか﹂
﹁セシル様! 何かあるんですか!﹂
ルネさんが期待を篭めた目で見てくる。
1166
その眼にしっかり応えよう!
﹁門を壊しちゃえばいいと思うんだよね∼。僕の全力で破壊するか
ら、リオ、皆を守って﹂
﹁あ∼、壊す⋮⋮ですか。なるほど。それは思いつきませんでした﹂
﹁オ∼。なるほどねん。壊せば確かに解決しそうよん﹂
﹁は、破壊ですか? しかし次元門の素材はオリハルコンよりも硬
く抗魔力も高い金属で出来てるはずです﹂
﹁ん∼、それは何とかしてみると言うか、全力でやってみるしかな
いよねっ﹂
自分の中の別の存在の力を表に出す。
ラミア族や竜族の肉体の強靭さ。
ダークエルフやエルフの魔法適正。
スライムさんの流体操作による魔力循環の最適化。
サキュバスの魔力の具現化能力。
そして膨大な魔力を吹き上がらせるのは、間接的に摂取したリリス
様の力で。
勇矢君との最初のエッチの時の間接だったからか、リリス様ほどは
魔力量はありませんけどね。
それらの力を人間である僕が纏める。
﹁セ、セシル様、破壊するにしても中心近くは巻き込まれてしまい
1167
ますよ!﹂
﹁ん∼、リオの影のヴェールだけじゃ不安かな。出来るだけ被害拡
大しないように僕も抑えるから、皆は大丈夫だよ∼﹂
﹁そうではなく、御身が﹂
アルシアさん達が離れたのと確認して破壊行動に移る。
僕の最強魔法は爆裂魔法だけど、それじゃ壊れないよね∼。
だったら∼。
トレントの蔦操作の感覚で影の自分を無数に増やす。
20体ほどの分身と共に無数の爆発の魔砲弾を空中に浮かべる。
1体1体が30以上の爆裂球を掲げている。
﹁魔力をたっぷり篭めた爆発を味わうが良いんだよっ!﹂
その全てを同時に門へぶつけた。
アルティメットエクスプロージョン
﹁︻究極爆裂魔法︼!!!﹂
同時に着弾した魔法は音もなく爆発した。
爆発の中で黒い門がひび割れ壊れるのを確かに見た。
門が崩れ喜ぼうと思った僕を爆発の光が襲う。
爆風を広げちゃまずいんだったと思い出し、門を中心に︻闇の衣︼
の結界を張る。
1168
結界内で自分も闇を纏おうとして光に包まれ︱︱
﹁︻闇の衣︼の結界で余波を防いだのねん。セシりんにしてはきっ
ちりしてるわね∼ん﹂
﹁闇が晴れてきましたね⋮⋮。あ、門がありません! さすがデモ
ンマザーセシル様!﹂
﹁うんうん。セシルはやれば出来る子だと私は信じていました﹂
﹁ンフ。今回はセシりんが上手くやったみたいねん﹂
﹁セシル、頑張りましたね! ⋮⋮セシル?﹂
﹁⋮⋮セシル様?﹂
﹁⋮⋮セシりん?﹂
﹁⋮⋮誰も居ない? ⋮⋮門の破片もない? セシルはどこへ⋮⋮﹂
1169
最終話 遙かなる時の果てで
暗闇に沈んでいた意識が徐々に覚醒していく。
冷たい土の中にでもいたような感覚から、暖かい太陽の下へと出た
ような気分。
春の気持ちよい陽気の様な暖かさ。
とっても暖かい、太陽⋮⋮。
あったか⋮⋮あつ⋮⋮。
﹁あっつぅ∼∼∼いっ! 熱いよ∼! アルカちゃ∼ん!﹂
暖かさから一気に肌が焼け付くような熱さになる。
熱線を私に浴びせていたアルカちゃんを指差し文句を言った。
﹁せっかくポカポカ気持ちよくお目覚めだったのに∼∼むぎゅぅぁ
!﹂
﹁リリス様∼? 封印を解いてあげたと言うのに、あまりアホな事
を言ってると掴みますよ∼?﹂
﹁ひゅでにひゅかんでりゅ⋮⋮﹂
笑顔で私の顔を掴むアルカちゃんが怖い。
1170
﹁まぁまぁアルカ。リリス様にそんな事をしても無駄です。セシル
さんを見たでしょう? まったく成長されていないのですから、無
駄なことはお辞めなさい﹂
リエルちゃんの説得で顔から手を離してくれた。
﹁リエルちゃん、ありがと∼。アルカちゃんったら、めっ。ママの
顔を掴むなんて悪い子なんだからぁ∼あがががが!?﹂
﹁母親ならもうかなり真面目にしてください﹂
再び顔を掴まれる。
ま、真面目にしてるのにぃ。
娘にアイアンクローされる私を助けてくれたのも娘だった。
﹁先ほどリエルも言いましたが、無駄なことはやめましょう。お母
様はそれが精一杯頑張ってる姿なのですから﹂
シルファちゃんの説得でアルカちゃんが手を離してくれた。
﹁うぐぐ、復活直後なのに娘三人が微妙に私に厳しい気がするんだ
よ∼﹂
﹁そんな事よりも、予想通り南の大陸で問題が起きてセシルさんが
行方不明になりました。アルシア達はカルドの屋敷に居ますよ。行
くのでしょう? リリス様﹂
ママの顔を掴むのをそんな事と言うのはどうかと思うんだけどなぁ。
でも確かに今はアルシアちゃんの事だよね∼。
1171
﹁それじゃ∼、帰ろっか∼﹂
フワリと空中へ浮かび上がり、カルドへと向かう。
皆に会うの楽しみだなぁ∼。
◆最終話 遙かなる時の果てで
﹁たっだいまぁ∼﹂
カルドのお屋敷に帰って大広間に来たんだけど∼。
﹁たっだいま∼! 私は帰ってきたんだよ∼!﹂
両手を上げてにっこり挨拶してるのに誰一人返事をしてくれない。
うぐぐ、挨拶は対人関係の基本なのにぃ。
後ろについてきているアルカちゃん達も特に何も言ってくれない。
困ってどうしようかなぁと悩んで居ると、レイニーちゃんが話して
くれた。
﹁妾達は葬儀の打ち合わせで忙しいのです。少々静かにしてくれま
せんか﹂
1172
﹁そ、葬儀!? 誰の!?﹂
なんてこと!?
誰か死んじゃったの!?
レイニーちゃんが普通に丁寧に喋って可愛い9歳くらいの女の子に
しか見えないくらい落ち込んでる!?
驚いてる私にルネちゃんとミレイアちゃんが悲痛な顔を向けてきた。
﹁リリス様の後継であるセシル様を犠牲にしてしまいました﹂
﹁御身を犠牲にして世界を救ったセシル様。巨大な墳墓を作り共と
なる者を多数お送りいたしますわ。わたくしも人柱と成りましょう﹂
ミレイアちゃんは相変わらず狂信的だなぁ。
近寄らないでおこうっと。
﹁色々仕事が残っていると言うのに⋮⋮。セシリアのバカ者め⋮⋮﹂
﹁ンア∼。本当なのよん。セシりん、バカだバカだと思ってたけど、
ここまでバカだと思ってなかったのよん⋮⋮﹂
ず∼んって感じで下を向いてネーブルちゃんとリオちゃんが⋮⋮。
バ、バカバカって酷いっ!
バカにバカって言うと傷つくんだよっ!
﹁セ∼シ∼ル∼⋮⋮﹂
広間のソファーで横になって動かないアルシアちゃんが力なく声を
1173
出してる。
褐色の肌が真っ白になりそうなくらい元気がない。
﹁アルシアちゃん、元気出して∼。すぐにセシルちゃんに会わせて
あげるからぁ∼﹂
大広間の全員の視線が集まる。
さっきまで落ち込んでた全員が驚いた顔して見てくると、ちょっと
怖い。
怖いからもったいぶることをせずに言った。
﹁実は∼、私がセシルちゃんなのでしたぁ∼!﹂
ふっふ∼んと胸を張る。
驚愕の事実に皆は驚き大騒ぎ。
そして歓喜に沸いて︱︱となるはずなのに静かな大広間。
あれ∼?
﹁はぁ∼∼。リリス様、慰めてくれるのは嬉しいのですが、今はそ
っとしといてくれませんか?﹂
アルシアちゃんに諭すように言われる。
予想外の反応で困っちゃう。
どうしようどうしようとオロオロしてると肩を叩かれた。
﹁リリス様、私が代わりに説明しますので、そこのソファーでお菓
子でも食べて休んでて下さい﹂
1174
﹁ア、アルカちゃん、ありがと∼。やっぱり持つべきは出来る娘だ
ねっ!﹂
横に長くジトーとした眼で私を見るのは見なかったことにしよっと。
言われた通りにソファーに座って、テーブルに置いてあったお菓子
を食べる。
これおせんべえだ∼。美味しい∼。
﹁皆さん、セシルさんのことについて説明するので聞いてください﹂
真剣なアルカちゃんの声を聴いて、大広間の皆が耳を傾ける。
語られるのは太古から生きるある魔族の物語。
アルカちゃんはゆっくりと語りだす︱︱︱︱︱︱。
あ、うめえ棒もある∼。美味しい∼。
◆◆◆
何時かもわからぬほど遥か昔。
魔界と呼ばれた地下大空洞に生きる魔族達は死にかけていた。
魔界の環境は植物にも動物にも、もちろん魔族にも厳しかった。
食料を求め飢える生き物たち。
植物すら生きる為に動物のように動き他者を襲い喰らう。
1175
厳しい環境から数を減らし、絶滅するかもしれない魔族。
魔族が存亡の危機に襲われていた時、魔界にどこからか一人の女性
が現れた。
謎の女性は絶大な魔力を用いて魔界の魔獣達を従えて行く。
それを見た魔族達は願った。
﹃自分たちの女王となって助けて欲しい﹄と。
女性は魔族の願いに応えた。
誰も理解できない魔法を使い、大地と契約して膨大な魔力を得、魔
界の環境を改善した。
子が少なかった魔族の子を多数産んだ。
そればかりか知恵ある魔獣に頼まれ、魔獣の子も多数産んだ。
最終的には魔族だけでなく魔界そのものを救った。
名実共に魔界の女王となった女性に魔族達は恩を返そうと思い言っ
た。
﹃私達の願いは叶いました。貴方様の願いはないのですか?﹄と。
その質問に女性はこう答えたという。
﹃ある人にもう一度会いたい﹄と。
1176
女性のその願いを叶える為に絶対の忠誠を魔族達は誓う。
それから長い長い年月が経ち、誰もが女性の願いを忘れてしまう。
魔族を救った女性本人さえも︱︱︱︱。
アルカちゃんの話が終わった。
思ったよりも短かった。
もっと色々あったと思うんだけどなぁ。
魔力が足りなくて大変だったんだからぁ。
星を一つの生命と考えて、交配の儀式を行ったりは大変だったんだ
よ∼?
おかげでこの星の上でなら、無限とも言える魔力を使えるようにな
ったんだよね∼。
懐かしい思い出だなぁ。
﹁私の今の話は、魔族に伝わる昔話と日本で見せていただいたリリ
ス様の記憶を基にしています﹂
﹁ンイ? リリスさまんの記憶⋮⋮?﹂
リオちゃんが恐る恐る質問する。
﹁私は炎の魔人族の長の代々の技術を継承しています。それは同時
1177
に記憶も多少継承していると言うことなのですが、当時の魔界の事
はさすがに知りませんので﹂
﹁それと昔の魔界の話とセシルが何の関係があるんですか?﹂
疑問を浮かべてアルシアちゃんが質問した。
﹁アルシア、魔界に現れた女性はどこから来たと思いますか?﹂
﹁わかりません﹂
きっぱり答えるアルシアちゃん。
考えてない感じが溢れ出てるけど潔すぎてカッコいい。
﹁⋮⋮ンヤ、なんとなく分かったけど、本当なのん?﹂
﹁アルシアよ。主は少し姉を見習わぬかや。しかし、まさか⋮⋮﹂
リオちゃんとレイニーちゃんが私を見てくる。
見てきた二人にヒラヒラ手を振る。
手を振ったら二人の顔が引き攣った。
なんとなく失礼なんだよ∼。
ルネちゃんやミレイアちゃんにネーブルちゃんは分かってないみた
い。
アルシアちゃんと一緒にリオちゃんとレイニーちゃんを見ている。
﹁リオ、分かったのなら教えてください。どうして魔界に現れた女
性、たぶんリリス様とセシルが関係在るんですか?﹂
1178
﹁⋮⋮あっ!﹂
アルシアちゃんの言葉を聴いたルネちゃんが声を上げた。
その後に驚いた顔をして私を見てくる。
さっきの二人と同じ様に手を振って応えると顔を引き攣らせた。
ルネちゃんまで失礼だよ∼。
キィィ。
大広間に誰かが入ってきた。
入ってきたのは白い制服を着たアウラちゃんだ。
高校の授業が終わってカルドの屋敷の方に帰ってきたのかな。
﹁おかえり∼、アウラちゃ∼ん﹂
アウラちゃんに手を振る。
よく見ればアウラちゃんはアスター君を連れていた。
一緒に遊んでたのかな∼?
にこにこ見てる私にアウラちゃんはちゃんと挨拶してくれた。
﹁ただいま、ママ﹂
そう言って私の隣に座りお菓子を取ろうとして動きが止まる。
﹁うめえ棒がない⋮⋮﹂
﹁あ、ごめ∼ん。さっき私が食べちゃったぁ﹂
﹁ママ、めっ﹂
1179
ペチっとアスター君が私の手を叩く。
あまりに可愛いので抱っこしちゃう。
﹁アウラ、それはリリス様であってセシルじゃありませんよ?﹂
﹁? セシルママとして帰って来たんじゃないの?﹂
﹁リリス様ですよ。アスターを抱っこしてるじゃないですか。セシ
ルはアスターを抱っこできませんでしたよ﹂
﹁それは胸が大きくて抱っこされると息が出来なくて苦しいから。
私達子供達の常識。ママの巨乳は窒息兵器。危ない。でも今のママ
は胸が小さいからアスターも抱っこされてる﹂
アウラちゃんの説明で部屋に沈黙が満ちる。
⋮⋮そんな理由で抱っこさせてくれなかったんだね。
私にとっての驚愕の事実だよ∼。
﹁リリス様ですよね? え?﹂
﹁セシル様とは話し方が違いますが、そのあたりはどういう事でご
ざいます?﹂
混乱するアルシアちゃん。
ミレイアちゃんは確認するようにアルカちゃんに聞いている。
﹁喋り方はですね。古代の魔族達に女王と崇められて、女王らしく
しようとしてリリス様の真似をしてたらしいです。それの影響と、
1180
長い年月が経ってより緩くなられたようでして﹂
﹁なるほど。確かにそれ以外は基本的に同じでございますね。ご自
分の真似をご自身でなされていたとは、常人には計りかねる所業。
さすがセシル様ですわ﹂
﹁ン∼。お胸が小さくなったのはなんでなの∼ん?﹂
﹁﹃農業とかするのに胸が大きいと邪魔すぎるんだよっ!﹄とおっ
しゃている姿を記憶の中で拝見しました﹂
﹁当人であれば事前に問題解決を色々と出来たのではないかや? にしては天界に閉じ込められるなぞ滑稽な﹂
﹁え∼、あまりに長く生き過ぎてアルシアの事を忘れないように、
魔法で記憶を保存して切り離していたらしいのです。ですがそのせ
いで、魔界へ飛ばされるまでの事がそもそも思い出せなくなってい
たらしく、さらに言えば記憶の保存をしようと思った時点でだいぶ
色々と忘れていたっぽいのですよ。思い出したのも日本で私の攻撃
を喰らった時の偶然で、ごく最近ですしね﹂
﹁ま、まさかその攻撃とやらを喰らわねば、もしや自分がセシルで
あることすら忘却の彼方であったのかえ?﹂
﹁その通りです﹂
重かった部屋の雰囲気が段々と軽くなる。
軽くなるって言うか皆が呆れた視線を私に向けてる気がする。
気のせいだよね∼?
1181
﹁セシルさんが過去の魔界に飛ばされる出来事もしっかりと覚えて
なかったんですよ。﹃アルカちゃんが激怒してリリス様︱︱私を封
印してから南に行って何かあったような∼?﹄といった具合でして﹂
アルカちゃんは皆の質問に丁寧に答えていた。
アスター君を抱っこしながらアウラちゃんとお菓子を食べる。
お菓子を口に咥えてアスター君に向けるとモグモグ反対側を食べる。
一緒に食べ進めて最後はアスター君とチュっとキスする。
小さい子供はとっても可愛いよね∼。
愛する我が子と一緒に食べるお菓子は最高∼。
アウラちゃんとアスター君と戯れてる私の横にアルシアちゃんが座
った。
アルシアちゃんが来るとアウラちゃんがアスター君を抱っこして離
れていった。
﹁セシル⋮⋮なんですか?﹂
﹁うん、そうだね∼。私がセシルちゃんだったみたい∼。ちょっと
待ってね。記憶の封印をまだちゃんと解いてなくて∼﹂
アルシアちゃんの前で封印を解いて劇的な再開をしようと思ったん
だよね。
︱︱︱︱目を瞑りゆっくり記憶の封印を解いていく。
︱︱︱︱他人のようだった記憶が、しっかり自分と重なる。
1182
︱︱︱︱魔界に飛ばされる前の自分が染み込んで来る。
﹁ただいま、アルシアさん﹂
目を開きアルシアさんに挨拶をした。
するとアルシアさんが抱きついてきた。
﹁セシルッ、心配したんですよ! 次元門が消えたらどこにも居な
くてっ!﹂
﹁ごめんね。もっと早く教えられたらよかったんだけど∼。アルシ
アさんに絶対会うんだ∼! って思って生きるのだけでも必死だっ
たんだぁ。星との契約で寿命はなくなったんだけどぉ∼、記憶が磨
耗しちゃってさぁ﹂
﹁許しませんっ! んん﹂
﹁んっ﹂
言い訳する僕にキスをしてきた。
思い出した新鮮な記憶の中に在るキスと同じキス。
悠久の時を生きてきて、自分が会いたかった人が目の前に居るのを
強く感じる。
僕は我慢が出来なくなり、自分からもキスをする。
お互いを感じあう為のキスをしてると、周りから色々な声が聞こえ
た。
代々﹃私﹄を支えてくれた初期の魔族の子孫。
天界で生まれた最強の三人の娘。
1183
﹁リリス様が殊勝な顔で涙を流してキスをするとは⋮⋮よかったで
すね﹂
﹁お母様の悲願のようでしたから﹂
﹁幸せそうですね﹂
アルカちゃんにリエルちゃんにシルファちゃん。
3人が暖かく祝福してくれる。
﹁ンム∼。しかしアウらん、なんでリリスさまんがセシりんって分
かったのん?﹂
﹁日本で勉強してわかった。日本語は地球での一言語でしかない。
ゼフィーリアでも種族や国が違うなら言語が別になるはずなのに言
葉も文字も共通で日本語だった。だとしたらゼフィーリアに言葉と
文字を広めた誰かは日本語に精通し、さらに種族関係なく影響を持
った昔から存在する人物。それは一人しか思いつかなかった﹂
﹁フムフムン﹂
﹁その人が何故日本語を広めたか。それは日本出身だったから。マ
マは日本出身。ママとリリス様はそっくり。リリス様が封印されて
からママは魔母としての力が異常に上がった。封印されてたリリス
様がママが居なくなったら戻ってきた。以上の事からリリス様がマ
マだと思った﹂
﹁ホヘ∼。アウらん、頭いいのねん﹂
1184
﹁アルカ様の話をドアの向こうでこっそり聞いてさらに思った。も
しかしたら魔界に飛ばされるママの力を上げる為にリリス様、今居
るママはわざと封印されたのかもって﹂
﹁なるほどっ! 世界に一人だけ、世界から力をもらえるデモンマ
ザー! リリス様は封印される事により自分が受けてた力を、過去
に飛ばされるセシル様に流す為に封印されたのですね!﹂
﹁アウラ、ルネ、感心してるところ申し訳ないのですが、それはま
ったくの偶然でして⋮⋮。確かにリリス様が封印されてからセシル
さんが過去へ飛ばされると分かってましたが、あれは予定調和では
なく、何よりも反省を促す為でして⋮⋮私は本気で怒ってたので⋮
⋮﹂
僕を感心していたアウラとルネちゃんに無用な真実を説明するアル
カちゃん。
アルカちゃ∼ん、ママの株を下げなくてもいいのよ∼?
﹁知れば知るほど残念な気持ちになるのは何ゆえかのぅ⋮⋮。妾、
セシルの最後をとても感じ入り、ヒューリエッタ姫様を思い出して
おったんじゃが⋮⋮﹂
﹁私は少し気が楽になったな。リリス様がセシリアだとするなら説
教を出来る。セシリア、精々アルシアとの再会を喜ぶがいい。後で
たっぷり説教をしてやろう。ふふふふふふふふふ﹂
とても残念なため息をつくレイニー。
それに比べネーブルは凄い楽しそうだね∼。
⋮⋮ネーブルに捕まらないように気をつけよう。
1185
楽しそうに騒ぐ皆。
明るい雰囲気になって僕もなんだか幸せな気分。
﹁んっ、セシル、おかえりなさい﹂
﹁ただいまっ、アルシアさん﹂
キスをやめて、アルシアさんと僕は挨拶した。
これからも何度もする挨拶を。
◇◇◇
僕がセシルとして帰還して1ヶ月が経った。
﹁ん∼、自然がいっぱいの場所の風は気持ちいいね∼﹂
サウスアースで開拓中の街の外れに来ていた。
綺麗な草原になってるこの場所は気持ちいい。
見つかりにくくて気持ち良くて、気晴らしにくるにはぴったりの場
所です。
﹁セシル、またここに逃げてたんですか? ネーブルが怒ってまし
たよ﹂
1186
背中からアルシアさんの声が聞こえる。
﹁ん∼、いいんだよ∼。ちゃんと自分の分担はやったんだから∼。
ネーブルは僕にお説教したいだけなんだよ∼﹂
﹁そうかもしれませんね﹂
僕の横に立って一緒に風を浴びる。
暫く黙って二人で気持ちよい風を感じた。
﹁さ∼て、そろそろ戻ろうか∼。ママの仕事ぶりを皆に見せないと
ね∼﹂
﹁そう言えばアルカ様もセシルの直接の子供なんでしたね。色々聞
きましたよ﹂
楽しく会話をしながら歩く。
アルカちゃんが失敗話をしてなきゃいいなぁと思いつつ。
﹁セシルは日本出身だって事も聞きました。それで聞きたいことが
あるのですが﹂
﹁うん?﹂
アルシアさんが一呼吸置いた。
﹁セシルの本来の名前、日本名を教えて欲しいです﹂
1187
﹁ほえ? 僕はセシルだけど、それじゃダメなの∼?﹂
女性となって以来、昔の名前は誰にも言った事がない。
﹁愛するセシルの全てを知りたいんです﹂
慈愛を感じる笑顔で言われてしまう。
今の僕はリリスでありセシル。
だから誰にも言うつもりはなかったんだけど∼。
﹁アルシアさんだから教えるんだからね∼。みんなには内緒だよ∼
?﹂
アルシアさんと手を繋ぐ。
﹁僕の本当の名前はね∼﹂
1188
エピローグ
ワーワー、キャーキャー。
ファンの声援を背に車へ乗り込む。
乗り込んですぐに運転席のマネージャーが声をかけてきた。
﹁ロス公演お疲れ﹂
﹁ン、公演より空港からここにくるまでが疲れたわん﹂
﹁それは仕方ないよ。RIOって言えば、今や世界的な歌手で女優
だからね。有名税さ﹂
10年来の付き合いのマネージャーが嬉しそうに言う。
あれから10年。
ゼフィーリアと地球の両方の生活にも慣れた。
日本での歌の大ヒットを皮切りに、私は世界的な歌手になった。
ドラマや映画に出ると演技が認められ女優としても有名になった。
﹁それで、公演も終わったし、いつも通りに2ヶ月休むのかな?﹂
﹁ンイ。いつも通りお願いねん﹂
地球の方ばかりに居るわけもいかず、私は定期的に2ヶ月は芸能活
動を休止する。
1189
マスコミは我侭姫とかアーティストは型に嵌らない自由さが大事だ!
なんて私の事をはやし立てているが⋮⋮。
﹁こっちのほうは副業なのよねん﹂
﹁ん? 何か言った?﹂
﹁なんでもないわよ∼ん﹂
独り言を聞いたマネージャーを適当に誤魔化した。
すっかり見慣れた日本の風景を見ながら時間を潰す。
サングラスを弄っていて、ふとお土産があるのを思い出した。
﹁ア∼、プロデューサーさん、今日はいつもと違う場所に送って欲
しいのよん﹂
東京にある私の別宅よりも遠い場所に送ってもらう為、プロデュー
サーさんと呼んであげた。
そう呼ばれるのが夢だと10年前に言ってたから。
さてさて、あの子は元気にしてるかしらん。
◇エピローグ 10年後の君へ
神奈川の一等地にある住宅街。
1190
うろ覚えの記憶を頼りに一軒家の並ぶ地区を歩く。
見たことのある綺麗な新築の家を見つけ表札を確認する。
目的の家だったので呼び鈴を押した。
﹁は∼い。あれ? リオママ﹂
﹁ンフ。アウらん、お久しぶりねん﹂
出てきたのはすっかり大人に成長したアウラ。
﹁お土産を持ってきたのよ∼ん﹂
私はアウらんの家へとお邪魔した。
オギャーオギャー。
お家の中にはベビーベッドがあって、元気な赤ちゃんの泣き声が聞
こえた。
﹁泣かないの。ママはここに居ますよ﹂
アウらんは慣れた手つきで赤ん坊を抱いてあやしている。
にっこりと子供に笑顔を向けてる様子はセシりんを思い出す。
﹁まるでセシりんみたいねん﹂
﹁そう?﹂
1191
金髪の綺麗な長い髪。
妊娠してからさらなる巨乳と化したオッパイ。
そして背が高くなり子供をあやす様子は、今は見れない昔のセシり
んのようだ。
見た目の違いは角がないのと瞳の色が緑色な所くらいか。
﹁アウらんが子供の頃のセシりんそっくりよん。オッパイがでっか
くても子供を抱けるのが違うけどねん﹂
﹁ママは正面から抱こうとしてたから。胸の上で抱いてあげれば大
丈夫﹂
愛おしそうにオッパイの上の赤ん坊を見ている。
10年前は子供だったアウらんもすっかりママさんだ。
アウらんは高校時代の先輩の男の子と結婚し、一児の母となってい
る。
アルラウネである事を明かした上で結婚して子供を産んでいるのよ
ね。
旦那さんは相当いい人なのだろう。
しかし見た目は大人になったとは言え、実年齢13歳のアウらん。
その子に子供を産ませた旦那さんはロリコンかもしれない。
日本の戸籍上の嘘の年齢しかしらないのかもしれないが。
アウらんの年齢はあえて考えないようにしよう。
半年前の出産の時は忙しくて会えなかったから少し心配してたけど、
大丈夫そうだ。
でも可愛いアウらんの事なので念のため。
1192
﹁そ∼いえば∼ん、旦那さんとは仲がいいの∼ん?﹂
﹁もちろん仲良し。今は二人目を頑張ってる﹂
﹁ヘー⋮⋮ご馳走様ねん﹂
満面の笑顔でノロケられた。
見た目通り、やっぱりセシりんの娘だ。
きっと今夜にでも旦那さんにあの巨乳を揉まれるのだろう。
﹁パパとは仲良くて嬉しいけど、響お義姉さんが焼いてくるので困
る﹂
﹁ア∼、ヒビきんね﹂
困ると言いながらも楽しそう。
セシりんとアウらんの巨乳を狙ってた日本人の響。
彼女と親類になってしまった為にアウらんは大変なのかもしれない。
元気なアウらんにその子供が見れて満足だ。
◇◇◇
ヒューーと風を切り空を飛んでいる。
アウらんの家から次元門がある日本のマリンズ邸に移動中だ。
電車で移動は正直だるい。
RIOだとばれたら騒がれるし。
1193
有名になってからは隠蔽の魔法を使っての空中移動をよくしている。
空中からマリンズ邸の庭に降り立つと、チャンバラしてる親娘がい
た。
﹁彩夢、強くなりましたね⋮⋮﹂
﹁そうかなぁ? 父上が弱いだけな気もするんだけど?﹂
﹁こ、これでもお父さんは天才と言われた退魔師なんですけどね⋮
⋮﹂
﹁父上より姉上達の方が全然強いよ?﹂
﹁くっ⋮⋮﹂
黒髪赤眼の少女に肉体的にも精神的にもボコボコにされているのは、
橘勇矢。
そして父親である彼をボコボコにしてるのは、娘の彩夢だ。
﹁ハ∼イ。二人共夜なのに訓練してるのね∼ん﹂
﹁あ、リオおば様。おかえりなさい。ロスから帰ってきたんですね﹂
丁寧に頭を下げてる彩夢ちん。
挨拶も丁寧、態度も丁寧、言葉使いも丁寧。
母親のセシりんから受け継いだのは凄まじい戦闘力と赤い瞳だけら
しい。
1194
﹁リオさん⋮⋮その格好はなんとかなりませんか? 娘の教育にち
ょっと⋮⋮﹂
﹁ンイ? これがサキュバスの正装なのよん! 人目が在る公共の
場とかでは普通に服を着てるんだからいいわよねん?﹂
﹁リオおば様は綺麗だから、裸みたいな格好だと父上が欲情しちゃ
うんですよ。私もちょっとムズムズしちゃいますし﹂
訂正。
彩夢ちんも立派なセシりんの娘だった。
日本刀を地面に刺して両手で股間を触ってムズムズしている。
見た目は父親譲りで真面目そうに見えるのに⋮⋮。
セシりんの淫乱さはしっかり遺伝しているようだ。
﹁リオさんも帰って来たし、ボクは夕飯を作りますね﹂
哀愁を漂わせて家に入っていくゆーやん。
娘に色々とボコられて、ちょっと可哀想。
﹁あ、リオおば様。桑原おじ様が、エルフかダークエルフかキャッ
トピープルかロリドワーフか巨乳の魔族か貧乳天使を紹介してくれ
って伝えて欲しいって言ってました﹂
﹁⋮⋮ンア﹂
10歳の子供に何を伝言させているんだろうか。
あの夢見るエロ男は⋮⋮。
1195
メロディあんに振られた桑原ん。
それがバレてから外交問題になると言うことで次元門を通る事を禁
止されている。
中身がかっこつけの子供ならば、見た目も20代後半くらいの桑原
ん。
出世したがってたけど女性に弱すぎるのが治らない限り出世できな
い事だろう。
﹁まぁ桑原おじ様の事はどうでもいいんです﹂
彩夢ちんにすら軽く見られていた。
﹁幽羅さんは元気にしてますか?﹂
﹁ア∼、ゆーらんね∼。前あった時は元気にしてたわよん?﹂
日本での妖怪退治に疲れてた幽羅。
リリス様がセシりんとして戻ってすぐにゼフィーリアに移住したの
だ。
セシりんに体を10歳くらいに戻してもらい、さらに種族も魔族に。
﹁青春をやり直します﹂と言って若い姿で冒険者になって行方不明。
行方不明と言うのは日本の葉雲家向けの話だけどね∼ん。
実際は冒険者として今も自由を謳歌している。
私とは今もたまに会ったりするのだけど⋮⋮。
彩夢ちんが7歳くらいまでは色々教えていた。
ただ最近は﹁昔の私を見ているようで﹂と避けているようだ。
8歳で妖怪退治をしはじめた彩夢ちんと自分を重ねているようだ。
1196
﹁ンマァ、また気が向いたら彩夢ちんに会いに来るんじゃないのん
? 彩夢ちんが楽しく過ごしてると分かれば、すぐにでも会いそう
だけどねん﹂
﹁そうですか。分かりました。ではさっそく彼氏でも作って人生を
謳歌したいと思います。理想は5人ほどの彼氏なんですが、何人が
ベストでしょう?﹂
彩夢ちんはダメな方向で母親そっくりだった。
◇◇◇
﹁ンイ∼∼∼﹂
日本とは違う太陽の日差しを浴びて伸びをする。
マリンズ邸の次元門を通りゼフィーリアへとやってきたのだ。
と言ってもカルドではない。
5年度前に建国されたサウスアースにある国家。
魔帝国サタニア。
天界から完全に移住した魔族に有翼族、ダークエルフを初めとした
元魔物扱いの亜人種、さらに新天地の冒険を求めた人族の冒険者や
その家族が暮らす国だ。
サタニア建国と共に、カルドからサタニアの首都ヘルヘイムのマリ
ンズ邸宅へと移動された次元門を通ってきたわけだけど∼⋮⋮。
﹁ンムゥ。私が居るとばれたら大変だから、ささっと仕事場に移動
1197
しなきゃね∼ん﹂
﹁そのように急がずともよろしいではないですか﹂
今まさに飛んで移動しようと思った瞬間、背後から声をかけられた。
気配を感じなかった事に驚き後ろを振り返る。
﹁メロディあん、気配を消して背後に立つのは趣味がわるいわねん﹂
﹁申し訳ありません。昔の仕事柄つい﹂
メロディあんの正体は帝国の将軍フォルム。
普段は仮面をして顔を隠し、正体を明かさない皇帝直属の暗殺者。
⋮⋮だったのも今は昔。
﹁リオ様、お子様達が会いたがっていましたよ。こちらに来られた
のなら挨拶をしてはいかがでしょうか? 今丁度朝食の最中でござ
いますし、ご一緒なさっては?﹂
にこにこ笑う様は他意も何もない。
すっかりセシりんの子供達の面倒を見るメイドが板についている。
皇帝への忠誠と帝国の将軍職を蹴って正式にメイドとなったフォル
ムことメロディあん。
その目立つ原因をつい見てしまう。
﹁⋮⋮エルフなのにダークエルフより大きいわねん﹂
﹁まぁ、そんな、私の胸なんて全盛期のセシル様に比べたら微々た
るものですわ﹂
1198
顔を赤らめ恥らいつつも満面の笑顔。
羞恥か歓喜か知らないけれど、それで体を揺らすとムィンムィン揺
れる巨大な乳房。
110cmのKはあるわねん⋮⋮。
セシりんに巨乳にしてもらい完全なる忠誠を誓ったメロディあん。
今はもう子供のお世話を出来なくなったセシりんに代わり、子供達
の面倒を見ている。
﹁ン、朝御飯は日本で食べてきたわん。だから仕事場に行って来る
わねん。子供達やパティ、メルリルにもよろしくねん﹂
﹁わかりました。パティやメルとリルに伝えておきますわ。お子様
方には特に念入りに、リオ様がヘルヘイムにいらっしゃる事を伝え
ておきます﹂
友人である猫人の調理人パティ。
彼女のご飯を食べれる子供達は幸せな事だろう。
メロディあんの部下だったメル&リルもヘルヘイムに移住した。
あの人間の双子は、人間のはずなのに見た目は一切年を取っていな
い。
魔族じゃないはずだけど不思議な双子だ。
出来れば子供達には私がヘルヘイムに来たことを内緒にして欲しい
んだけど⋮⋮。
これ以上言うとやぶ蛇になりそうなので、空を飛んで仕事場へと向
かった。
1199
魔帝国の支配者層が働く宮殿、パンデモニウムへと。
◇◇◇
パンデモニウム︱︱万魔殿と呼ばれる場所で働くのは魔族が多い。
そんな宮殿内に人間と猫人が歩いていれば、当然目立つ。
目立って仲良く歩く二人に声をかけた。
﹁ミリあんにアレイスタ∼ん、イチャイチャ歩いたら周りに迷惑よ
∼ん﹂
﹁リオティネック様、おはようございます。これは決してイチャイ
チャしている訳ではなく、内密の打ち合わせもあったので近寄り話
していただけです﹂
﹁おはようですニャ! 結婚してもにぶちんニャね⋮⋮﹂
生真面目に返事をする魔帝国軍参謀部所属のアレイスター。
それに比べ笑顔で明るく返事をしたのが魔帝国軍の将軍ミリア。
ロリババァの推薦で、現場での判断力があるとして参謀に推薦され
たアレイスターん。
若いながらも100歳以上生きる魔族達に囲まれてやっているのは
中々の傑物だ。
そしてこちらもロリババァの推薦で将軍職に就いたミリあん。
帝国を真似て将軍ごとに師団を作っている魔帝国の1軍を預かって
いる。
1200
サタニアの上層部では数少ない人間と猫人。
生真面目天然ボケな夫と苦労人な奥さんとして有名だ。
﹁ンフ、夫婦で仲良く出勤とは羨ましいわね∼ん﹂
﹁羨ましいって言われたニャ! 嬉しいニャね!﹂
﹁うん? なんでだ?﹂
﹁む、アレイスターは嬉しくないニャね⋮⋮﹂
﹁俺とミリアが仲が良いのは当たり前だからな。それを指摘されて
喜ぶのが分からないんだが﹂
﹁ニャニャ!? そうニャね! じゃあもっと仲良くする為に腕を
組んでもいいニャ?﹂
﹁まぁ分かれ道までは構わないが。あぁ、しかしレイゲンが宮殿内
は離れて歩けと言っていたが﹂
﹁アホゲンの事は気にしたらだめニャ! アレイスターはニャーの
旦那様なんだから、ニャー第一にするニャ!﹂
﹁安心しろ。いつもミリアを第一にしている﹂
腕を組んで仲良く歩いていく二人。
真面目にイチャイチャしてる二人は色々と眼に毒だ。
好意を振りまくりな妻と、それを生真面目に受ける夫。
1201
あの新婚バカップルは自重して欲しい。
裸に近い私を見ても一切動じない二人が自重とかは無理かもしれな
いけど。
ちなみに二人の友人のレイゲンたんは実家を弟に任せたらしい。
現在サタニアの警邏部隊に所属している。
警邏隊の隊長と副隊長のダークエルフ族のコルアとユフィにプロポ
ーズしてるとか。
平然と二股する辺り、さすが元貴族と言うべきか。
自重しないバカップルを見送り、何かに当てられた影響かフラフラ
と移動した。
◇◇◇
ちょっと気を落ち着かせる為にも医療部へ向かう。
本気で具合が悪くなった訳じゃない。
知り合いに挨拶をして気晴らしにと思ったんだけど︱︱。
ガチャリ。
﹁オッハ∼。ラミュん、スライムさん元気してた︱︱︱︱﹂
医療関係の責任者がいる医療長官室に入り固まる。
凄い光景を目にしたから。
﹁ん、はぁ、もっとぉ、そこぉ、子宮に、子宮にもっと入ってくだ
さい。あぁ、そう、いいです。子宮口をもっと擦ってぇ、あっ、あ
っ、あっ﹂
1202
﹁ぷるぷるぷる﹂
スライムに犯される超美人の裸のエルフ。
机の上で裸体を晒し、オマンコとアナルを犯されていた。
スライムの触手状の体がズリュゥと入るとエルフの女性のお腹がボ
コォと膨れる。
﹁あぁ、また卵子に種付けをぉ、いっぱい産みたいですぅ。あっん
っ、子宮いっぱいにあなたを感じてイキまくりですぅ﹂
子宮をボコボコ犯され喜んでいるのはラミュエル。
犯しているのは顔なじみのスライムさん。
この二人も有名な異種族間夫婦なのだけど⋮⋮。
まさか朝っぱらから子作り子宮姦アナルつきをしてるとは。
大人になったラミュんが喘ぐ姿はとても淫靡だ。
﹁あぁぁ、子宮が膨れるぅ。もっとぉ、お尻にも入ってぇ、んぁぁ﹂
サタニアは新興国でお医者が足りない。
だからといって北の大陸のスライム族をつれて来る訳にも行かない。
そこで医療長官ラミュエルが提案した。
﹃私がスライムさんの子供を生むので、その子達に頑張ってもらい
ましょう﹄と。
国の為に子を生む聖母として有名なラミュん。
1203
⋮⋮しかし、その実態は違う。
﹁あぁ、あなたぁ、もっと私の子宮をぉ、そう、激しく、んん、も
っとクリトリスも引っ張って伸ばして吸い付いてぇ、あぁぁぁぁ、
イクゥ♪﹂
国の為にという建前でスライムさんとエッチしまくりなのだ。
スライムさんの子供を孕んで妊娠中でも犯してもらう淫乱さ。
子宮だけではなく、乳首にクリにアナルに⋮⋮。
アナルから口内への貫通姦も趣味だったりするのは恐れ入る。
﹁うふふふ、まだまだ私達の子供が必要なのですから、もっとして
ください。あん、そう、卵巣もしっかり満たしてぇ﹂
国が出来た5年前から、確か⋮⋮。
確か50以上のスライムを産んでいるはず。
セシりんがデモンマザーなら、ラミュんはスライムクイーンと言う
ところか。
﹁あぁ、イイ、孕む、孕んじゃいますぅ。またあなたの子供を孕め
るぅ。ンハァン♪﹂
エッチを通り越した何かに夢中な夫婦は私に気づかない。
気づかれないままそっと扉を閉じて退室した。
物凄い美人に育ったラミュんは、血は繋がっていなくともセシりん
の娘だった。
◇◇◇
1204
二組のバカップル夫婦にうんざりする。
しかも片方は朝からディーププレイ。
淫魔だってもうちょっと節操がある。
気晴らしが失敗し、今度は仕事上の挨拶として軍部に向かう。
軍の統括をしてる総司令官の執務室に入る。
﹁ンハーイ。ネーブるん、おっはぁ⋮⋮あ?﹂
﹁リ、リオ!?﹂
入った部屋には青い髪の少女と超美人のエルフがいた。
二人は大きな椅子に腰掛けている。
エルフの上に少女が座る形で、だ。
﹁こ、これはだな。その、なんというか﹂
﹁おはよう。リオお姉ちゃん﹂
﹁ンイ、おはよ、レムりん﹂
青い髪の少女はネーブルだ。
レムリアとの年の差を気にしてたネーブるん。
セシりんが若返らせ、眼も治し、今は普通に可愛い美少女だ。
帝国での爵位やら何やらを全て捨ててサタニアの軍のトップとして
活躍している。
と言えば聞こえはいいのだけれど⋮⋮。
1205
﹁ネーブルお姉ちゃんがどうしても膝の上に座りたいって言うから、
乗せてあげてるの﹂
﹁そ、それは、くっ、その、その通りだ﹂
しれっと嘘を言うレムりん。
ラミュんと瓜二つの美女にしか見えないが、中身は立派な男の子。
見た目が13歳くらいになったネーブるんにすら容赦がない。
きっと見えないネーブるんの股間にはレムりんのオチンポが突き刺
さってるはず。
﹁ンム∼ン。レムりんはネーブるんが好きねぇ﹂
﹁うん。ボク、ネーブルお姉ちゃん大好き﹂
﹁ンァ。⋮⋮ご、ご主人様、嬉しい﹂
小声で言ったけどばっちり聞こえるネーブるんの声。
ネーブるんはレムりんに調教されている。
隠れて人前で弄られ続けた帝国将軍時代。
イキそうでイケないように弄られ続け⋮⋮。
今ではすっかりレムりんの性奴隷だ。
一応夫婦だが、ネーブるんはレムりんに逆らうことが出来ない。
軍務中だろうがお風呂中だろうが、前後にバイブ挿入を強制されて
る。
1206
婚約指輪が左乳首につけてあり、結婚指輪をクリトリスにつけてい
る。
﹁リオお姉ちゃん、今日はどうしたの?﹂
﹁ンヤ? あぁ、こっちに戻ったんで挨拶にきたのよん﹂
﹁あ、そうなんだ。じゃあ頼んでた物買ってきてくれた?﹂
﹁ン、日本側の家にあるわよん⋮⋮﹂
﹁わぁ、ありがとう﹂
邪気もなく笑うレムりん。
それがちょっと恐ろしい。
レムりんにエッチを仕込んだのは私だけれども、ここまでになると
は。
日本のエッチ道具を興味本位で教えたらネーブるんに使いまくるこ
とに。
エッチの先生である私は知っているけど、ネーブるんがサタニアに
来たのはご主人様から離れられないからだ。
﹁ん、あ∼、あちらから戻ってきたのなら、しっかり仕事を頼むぞ﹂
﹁アイアイ。ネーブるんもしっかり頑張ってね﹂
﹁うん? もちろん仕事は頑張るが﹂
1207
本当に頑張ってね?
レムりんに頼まれてた物をネーブるんに使うんだと思うと応援した
くなる。
ご主人様と性奴隷将軍の美女カップルに挨拶を終え部屋を出る。
﹁ンムゥ。ネーブるん完全性奴隷ねん。他にも2名ほどレムりんの
性奴隷がいるって知ったらどうするのかしらん﹂
ネーブるんの副官と補佐官だったベルガモットとシトラス。
エルフと人間の二人もレムりんの毒牙にかかっている。
というかその二人もレムりんの第2夫人第3夫人であるわけだけど
⋮⋮ネーブるんは知らない。
レムりんと3人は相思相愛だから放っておいてる。
他の女性には手出しをする気がないみたいだしねん。
肉体年齢13歳のネーブるん。
初潮が始まって妊娠調教される日も近いんだろう。
セシりんの義理の息子は、女性を堕とすのが上手すぎる美少女男子
に育っていた。
◇◇◇
パンデモニウムにはバカップル夫婦しかいないのだろうか。
そんな事を考えながら最奥の部屋の前にきた。
さすがにここの部屋はしっかりノックをしてから入出する。
1208
コンコンコン。
﹁淫魔リオティネック、職務に復帰いたしますわん﹂
入ってすぐに温かな眼差しに迎えられた。
﹁リオ、おかえりなさい。私の補佐を頼みますよ﹂
柔らかな物腰で話しかけてくるのは、この国の今のトップ。
女帝位の代理をしているアルシアだ。
﹁ンインイ。アーシャーちゃん頑張ってるから、やること少ないけ
どねん﹂
﹁そんな事はありません。リオの手伝いはとても助かります﹂
﹁イアイア。アーシャーちゃんなら補佐がいなくても十分よん﹂
﹁この書類の山を崩せるのはリオしかいないと思いますよ。日本で
羽を伸ばしたんでしょうから、多めに仕事をやってくれても構いま
せんよ﹂
笑顔で言葉を交わす。
セシりんに代わり国を治めているアーシャーちゃん。
昔に比べ姉のレミネールに似て落ち着いた感じがする。
だから書類仕事くらい簡単なはずよねん。
﹁お互いに仕事を押し付けあってるようにしか思えぬのぅ。時にリ
オティネックよ。妾を無視しているのは気のせいかや?﹂
1209
﹁チッ。別に無視してないわん。声をかけなかっただけよん﹂
﹁それを無視と言うんじゃがなぁ。淫魔とはかくも作法に疎いかや﹂
アーシャーちゃんからロリババァに視線を移す。
見た目が子供の癖に態度がババァすぎる。
昔からどうしても好きになれない。
﹁なんでロリババァが居るのよん﹂
﹁聖国の方はレミネールとティティスに任せておるでの。妾は魔国
サタニアの手伝いに来たと言うわけよ﹂
﹁フ∼ン。具体的に何をしてるのよん?﹂
﹁ふむ。エインの孤児院の手伝いやらじゃな﹂
﹁ホッホ∼﹂
思わず感心した。
セシりんの妹分のエインは現在孤児院を経営している。
様々な理由で孤児となった子を引き取っているのだ。
セシルお姉様がしてくれたみたいに自分のような孤児に愛をあげた
い。
それが彼女の望みらしい。
﹁ふふふ、妾は子供に好かれるでの。エインも部下たちだけでは手
1210
が不足しておったようでのぅ。アルシアには滞在の挨拶に来たと言
うわけじゃ﹂
﹁ホヘ∼。ロリババァにしては真っ当ねん。私はてっきり、レミネ
ーるんとティティすんだけ子供産んで、自分だけまだだからいじけ
て来たのかと思ったわん﹂
﹁ぐっ⋮⋮! 確かにそれも多少はあるの! 2人で子供の話ばか
りしおって、妾だけ疎外感があるのだえ⋮⋮ぐすっ﹂
あ∼、反りが合わないロリババァだけど⋮⋮。
泣いちゃってちょっと可哀想。
しかしレオたんとエッチはしてるはず。
なのに子供が出来ないってのは⋮⋮。
﹁ンア∼、ロリバ、レイニーん、一つ質問なんだけどん。吸血鬼っ
て成長するのん?﹂
﹁グスン、ん? 吸血鬼は肉体的成長はないのぅ。じゃが妊娠はで
きるはずなのだが⋮⋮﹂
レイニーんの返事を聞いて私はアーシャーちゃんと顔を見合わせた。
アーシャーちゃんも妊娠した事はないけど大人の女。
なんとなくピンときたようだ。
﹁あの、レイニー、質問なのですが﹂
﹁何じゃアルシア?﹂
﹁月経って知ってますか?﹂
1211
﹁月の満ち欠けの具合の事とかや?﹂
﹁それは月齢ねん⋮⋮﹂
今の会話で確信する。
つまりこのロリババァは間違いなくロリであると。
﹁ア∼、レイニーん、貴女はまだ子供を産める体じゃないって事よ
ん﹂
﹁何故じゃ? 妾はレムリアと違い正真正銘女子じゃぞ?﹂
﹁えっと、つまりですね。月経がないのでこう、まだというか﹂
﹁ふむ?﹂
月の物の説明を受ける聖国の女王。
説明するのは魔国の代理女帝。
国のトップの会話として、これ以上間抜けな話題はあるだろうか。
書類仕事はアーシャーちゃんを信じて任せ、私はこっそり部屋をで
る。
◇◇◇
淫魔の気質に書類仕事は向いてない。
なのでパンデモニウムの最奥のさらに奥、秘宮の間へ向かう。
1212
やっぱりしっかり挨拶しないとねん。
陽光輝く明るい宮殿へと踏み入る。
ここの宮の主の趣味で、とても明るく作られている。
中庭にあたる場所を通過中に3人の魔族の女性を見つけた。
﹁オヤ∼ン。アルカ様達。こんにちわん﹂
﹁おや、リオティネックですか﹂
秘宮の間の守護者である3魔族。
炎のアルカ。
氷のリエル。
風のシルファ。
サタニアの国政には一切関わらない最強の魔族3人だ。
﹁リオティネックはよくここに来てくれますね﹂
﹁ンヤ。まぁ挨拶よん。どうせ寝てるんだろうけどねん﹂
﹁お母様も喜びます﹂
リエル様とシルファ様が歓迎してくれた。
守護者の3人に挨拶をして奥へと進む。
この宮の主は眠れる姫君。
愛する人と人生を共にし死する為、星との契約を切り不老不死を捨
てた魔族。
1213
長き時を不老で過ごせた契約をきった代償は低くなかった。
本来のサタニアの女帝である魔母セシル。
彼の人がこの宮の主だ。
歩き続けると、風通しの良い部屋へと辿り着いた。
部屋の中央には天蓋のついた大きなベッドがある。
ベッドにはセシル様が寝ていた。
﹁ンヤ、只今戻りました。セシル様﹂
目覚めぬ主に向かい膝をつく。
今回も挨拶をしても返事はなかった。
立ち上がり主たるセシル様を見る。
綺麗な金髪は真っ白な白髪に。
開かぬ眼も赤眼から白くなっているはず。
肌も病的に白く日本の陶器のようだ。
全てが白くなったセシル様の寝姿は、触れたら壊れそうな幻想を抱
いてしまう。
星との契約を切る前に、アーシャーちゃんとのエッチの為に大きさ
を戻した胸だけが違和感を感じる。
﹁ン、眠り姫は今日も起きないのね﹂
不老不死であったリリス様。
セシル様がリリス様となってもあまり成長してなかったのには理由
1214
がある。
星と契約し、不老になった時点で成長が止まったのだ。
記憶は出来ても精神的な成長が出来ない。
どうりで何千何万年たっても迂闊だったわけだ。
今は契約をきった反動で力を失い、眠り姫と化した。
眠れる主に挨拶が終わり部屋を後にしようとした。
その時、小さな声が聞こえた。
﹁おはよう。リオ﹂
それはセシル様の声。
昔と違い落ち着いた声色。
私は目覚めたセシル様に向き直り、そして︱︱。
﹁セシりん! 寝すぎなのよん! いくら成長できるようになった
からって、寝てても精神は育たないのよん! オッパイは育ちそう
だけど!﹂
﹁えぇ∼、仕方ないんだよ∼。僕の魔力許容量の割合に対して、自
己回復する魔力が少なすぎてさ∼。一度寝たら二日は寝ないと持た
ないんだよ∼﹂
星からの魔力供給がなくなった。
しかし魔力消費が減ったわけではないセシりん。
ちょっと移動するだけで魔力を使う。
エッチをしても気持ちよくなる為に魔力を使う。
1215
困ったら魔法を使い逃走するので魔力を使う。
リリスの間に染み付いた魔力消費量に対し、回復力が追いついてな
いのだ。
精神的成長は出来なかったくせに、ダメな習慣は染み付いている。
おかげで国務も子育ても碌にできずに人任せ。
本人は日当たり良好な場所で眠り姫。
﹁ンッフッフッフ∼。今回は目覚めた時に会えてよかったわん。色
々言いたい事があるのよん!﹂
﹁う、うん? また僕ってば失敗したっけ∼?﹂
セシりんは綺麗な白い睫毛に白い瞳をぱちくりさせる。
無垢な顔の白いお姫様。
前はひきつけられるような美女だったけど、今は守りたくなる美女
だ。
しかし甘やかせない。
改めて臣下として前回は出来なかった報告、それと嘆願をしようと
思う。
﹁魔導科学長官であるルネが、セシル様ご希望の鉄巨人の作成に成
功しました。併せて、冒険者向けレジャー施設、モンスターダンジ
ョンの作成も9割ほど完成したようです﹂
﹁おぉ∼、でもあれ、冒険者向けの施設じゃないよ∼? 日本のヲ
タク向けの施設なんだけど﹂
1216
﹁外交上の問題でそれは却下されたはずですが⋮⋮﹂
﹁そこはほら、勇者召喚ヲタク向けを使ってこっそり呼び出して体
験してもらおうかと∼﹂
そんな事を考えていたとは。
やはりセシル様は侮れない。
ダメな意味で。
﹁それとセシル様のお子を身篭りたいと、聖国のミレイアを中心に
魔母の子身篭り隊が嘆願書を⋮⋮﹂
﹁あ、あ∼⋮⋮ミレイアちゃんね∼。僕、自分にはオチンチンつけ
れないんだけど⋮⋮。子供を孕ます事が出来ないって説明してほし
いな∼﹂
﹁説明済みです。何故他人にオチンチンを生やせるのに自分に生や
せないのか? と、質問状も届いておりますが﹂
﹁なんでだろうね∼⋮⋮。自己意識が完全に女性になっちゃったか
らかなぁ∼﹂
腕を組んで悩んでらっしゃる。
単純にオチンポに犯されるのが大好きなだけな気がする。
犯すより犯されたいマゾの女王。
本人にはマゾじゃないと否定されるけど。
﹁ミレイアちゃんには、子供を産んであげるから許してって言っと
いて∼﹂
1217
﹁はい。了解しました。あと将軍のフェシスがラミア族の男を産ん
で欲しいと言ってましたが﹂
﹁うぅ∼ん、男の子かぁ。実は意識して男の子産めたことないんだ
よね∼。って言うかラミア男って言う新種族だよね、それ∼。アレ
フからのお願いで、新しい種族を生むのは控えてるんだけど∼﹂
う∼んと悩んでおられます。
ちなみにアレフとは亡き有翼族の王の名前だ。
地上に戻ったリリス様が子供を産まなかったのは、アレフ王との約
束があったかららしい。
リリス様に籠絡されたアレフ王ナイス。
じゃなきゃ地上は今頃セシル様の子供で溢れて大混乱していた事だ
ろう。
割と本気で。
﹁セシル様の忠臣としての報告は以上です﹂
﹁ん、いつもありがとね∼﹂
﹁ンデ∼、本題なのよん!﹂
義務を果たしたので個人の要求へと移る。
﹁アスターの事を何とかして欲しいのよん!﹂
﹁ほえ? アスター君ならもうすぐそこまで来てるけど?﹂
1218
﹁ンイ!?﹂
セシりんに言われ後を振り向く。
振り向くと真っ直ぐ私に向かい走ってくる銀髪の少年が居た。
﹁リ∼オ∼∼﹂
﹁ンア∼∼、アスタァ﹂
私に向かってかけてきて、そのまま抱きついてくる。
ギュウと抱きつかれ身動きが取れない。
アスターは抱きついたまま私を見上げて口を開く。
﹁リオ、結婚してっ!﹂
﹁ンガっ﹂
アスターは5歳くらいからずっと同じことを言っていた。
最初は子供が年上の女性に憧れてるだけと思っていた。
しかし13歳になった今でも変わらず言ってくる。
﹁リ、リオ。うちの可愛いイケメン息子のアスターが嫌だって言う
の∼∼∼∼!?﹂
﹁結婚してくれるまで離さないっ!﹂
イエスと返事をしない私に驚くセシりん。
アスターは私のお腹により引っ付いて抱きつく。
この子は確かに見た目がいい。
1219
見た目はいいんだけど⋮⋮。
﹁おしめを替えたこともあるような子供と結婚は、さすがに嫌なの
よん。セシりんだって年が離れすぎてる私と息子を結婚させたくな
いわよねん!﹂
﹁なんで? リオだったらアスターを任せられるよ∼? アスター
だって小さい頃からリオ一筋だし、浮気とかしなそうだよ∼? 僕
の息子なのにね∼﹂
セシりんが浮気してる自覚があったことに驚く。
アーシャーちゃん第一主義のセシりんだけど、浮気癖があるのだ。
クロやレオたんにゆ∼やん、目覚めれば誰かのチンポを吸ってるし。
義理の息子のレムりんとセックスしてるし。
最近はアーシャーちゃんがそれに混ざってるけど⋮⋮それだと浮気
じゃなくただの3Pかしらん?
って今は目の前のアスターをなんとかしないと。
﹁ンヌー。アスターはモテるんだから、私よりも同い年くらいの子
がいいんじゃないのん?﹂
淫魔はこれと決めた男には一途に尽くす。
だから男選びは慎重なのだ。
さすがに赤ん坊から知ってる子供は子供としか見れず、男としては
選べない。
だと言うのに。
1220
﹁誰よりもリオが好き! 生まれた時からリオが好き!﹂
キラキラした眼で見られる。
いつも真っ直ぐに好きと言われる。
その姿は親であるアーシャーちゃんそっくりだ。
もしアスターと結婚すれば、私もセシりんみたいに大事にされるの
だろうか。
﹁ンググ、でもでもだめなのん! アスターは子供過ぎるの∼ん﹂
﹁ぬぬ、ならばアスター! リオを押し倒してものにしちゃうとい
いんだよ∼! 僕もアルシアさんにキスされてものにされたし∼!﹂
﹁ママの許可がでたので押し倒します! リオ、大好きっ!﹂
セシりんのベッドに押し倒される。
13歳の子が私をものにする為に、母親の前で押し倒すとは。
正直驚いていた。
﹁ア、アスターは恥かしくないのん? セシりんの前でエッチする
ことになるのよん!﹂
﹁リオと結婚できるなら何でもします! 好きですっ! ちゅぅ﹂
﹁あむっ﹂
無理矢理唇を奪われた。
まさか主に会いに来て、その息子に押し倒されるなんて。
1221
好き好き言われキスされて、ちょっと嬉しい。
淫魔の私に対して純粋な好意を向けてくれるのはとても嬉しい。
﹁愛息子と忠臣の初エッチ! あ、ママもムズムズしてきちゃった
∼!﹂
﹁ダメよん! これは私のよんっ! あ⋮⋮﹂
手を出そうとしてきたセシりんに対し、アスターを守るように抱き
しめた。
ついうっかりした行動。
そんな事をしたら⋮⋮。
﹁リオ、愛してますっ﹂
﹁ンヒィ﹂
﹁あっ、わっ、うわっ、すごっ﹂
セシりんの目の前でアスターに犯される。
必死に私の体を弄って、愛してると言ってくれるアスター。
思ったよりずっと気持ち良くて幸せだった。
﹁あ、あぅ。もう我慢できないっ。僕もアルシアさんとしてくるも
∼ん﹂
私とアスターを残して部屋を出て行くセシりん。
1222
10年経ってもエッチでアーシャーちゃん好きな彼女。
彼女とその家族に振り回される日々はこれからも続きそう。
﹁ン、キスはこうやって優しくねん﹂
﹁う、うん、リオ、愛してるっ﹂
私もどうやら彼女の娘になりそうだ。
1223
エピローグ︵後書き︶
おしまいです♪
1224
第71話 眠り姫の日常
﹁アルシアさ∼ん、エッチしよ∼♪﹂
起きてから真っ直ぐ愛する人のもとへやってきました!
そして素早く愛のアピール! 豪奢な椅子に座って書類仕事中の
アルシアさんの肩に、オッパイを当てて主張します。当ててる内に
乳首がツンとなってきたので、クニクニ押し付けたりもしちゃいま
す。
それに対してアルシアさんはキスを返して︱︱︱︱くれずに書類
仕事を淡々と続けております。
むむむ、僕のぷにぷにオッパイとクニクニ乳首に反応せずに文字
を書き続けるとか器用だねっ! アルシアさんも巨乳だから慣れて
るのかな∼。
なんて僕が相手をしてくれないアルシアさんに対して、めげずに
エッチしよ∼と頑張っていると、当のアルシアさんから反応があり
ました。
﹁セシル、今は仕事中なので無理です。分かっているでしょう?﹂
﹁む∼、分かってるけどぉ∼。でもさ∼、僕が起きてられる時間っ
て短いから、少しでもアルシアさんとイチャイチャしたいんだよ∼﹂
アルシアさんと寿命を共にする為に、星との契約を切って魔力や
生命力のバックアップがなくなったせいで、今の僕はほとんどの時
間を寝て過ごす事になっちゃったのだ。力で言うなら、大魔王から
1225
地上の魔王くらいにランクダウンだろうか? 瞬間戦闘力はあまり
落ちてないけど。
見た目は大分変わったかな。金髪が白髪になって、赤い瞳も真っ
白、肌の色も白色。オッパイは大きいと肩こりするから、アルシア
さんより少し小さいくらいの大きさがデフォになってます。それで
も巨乳さんだけど。はぁ、昔は肩凝りしなかったんだけどなぁ。
肩凝りと言う不条理に嘆き、おっきなスイカからおっきなメロン
になった胸を自分で下からゆさゆさして柔らかさを堪能していると、
アルシアさんがジーと僕を見つめていた。
﹁セシル、暇だったら皆に顔を見せてくればどうですか?﹂
呆れた目をしたアルシアさんの提案を考える。
アルカちゃん達は会えばアイアンクローされそうだし∼。
ラミュ∼とスライムさんはディーププレイしてそうだし∼。
レムとネーブルは調教で忙しいだろうし∼。
エインの所に行くと、孤児院の子供の教育に悪いですからって怒
られるし∼。
レイニーは会うと攻撃してくる気がするし∼。
﹁うぬぬ、何処に行っても邪魔者扱いか怒られる気がするんだよっ﹂
﹁否定はしませんが、せめて偶には孫の顔くらい見に行ったほうが
いいと思うんですが﹂
﹁孫って言うと、アウラとアスター君のとこの∼?﹂
﹁えぇ、あまり会ってないでしょう?﹂
日本の男の子の所にお嫁に行ったアウラは、現在立派なお母さん
1226
らしい。3人の子持ちだったかな? アウラがバイトしていた先の
先輩である響さんの弟さんと結婚したんだけど、とても優しくてい
い男の子だった。
アスター君も念願かなってリオを口説き落としめでたく結婚。現
在は一人娘も生まれ、サタニア帝国の帝都ヘルヘイムの隅っこに住
んでいる。娘が生まれても二人はラブラブ過ぎて困ると、アレイス
ター君とラブラブしまくりなミリアちゃんが言っていた。
﹁アウラやアスター君とリオの子供達に会いたいけどさ∼。地球の
方へ行こうとすると、アルカちゃんに止められるんだよね∼。﹃い
い歳して若い男を漁りに行くんではありません﹄って﹂
﹁日頃の行いですね﹂
﹁アスター君の家は、僕出入り禁止だから行けないし∼。結婚式の
時に大好きなアスター君とリオが結婚するのが嬉しくって、ついア
スター君の男の子がちゃんと成長してるか確かめようとしたら、リ
オに﹃アスターに手を出したら殺すわよん?﹄って言われて∼﹂
﹁リオなら、謝ればその程度は許してくれるのでは?﹂
﹁娘が生まれた時に家に行ったんだけど∼、その時に嬉しくてつい
∼﹂
﹁あぁ、またアスターに手を出しましたか。それで出入り禁止と。
自業自得ですね﹂
﹁うぅ⋮⋮﹂
サッサッと山のような書類の処理をしながら冷静にツッコミをく
れるアルシアさん。愛する奥さんである僕に冷たい態度だけど、忙
しい中で話してくれるだけでも嬉しい。冷たい言葉もなんだかかっ
こいい。
お喋りだけでしか構ってくれないアルシアさんの仕事をする姿に
1227
キュンと胸が高鳴る。
僕の代理の魔母と言うか、この場合は魔王? 帝国だから皇帝?
とにかく、実質サタニア帝国のトップについてからのアルシアさ
んは凛々しい美人さんです。どことなく義姉のレミネールお姉様に
似てきました。
キュンキュンきた僕は、念の為に改めて執務室に補佐官さんとか
が居ないのを確認してから、ドレスのスカートを軽くたくし上げ、
下着の中に左手を入れた。股間もキュンときてたらしく、にゅるっ
とした水気が割れ目から溢れ出てる。
﹁はぁ、んっ、アルシアさん、好きぃ﹂
オマンコの穴の入り口に中指を当てて、わざとクチュクチュ音が
鳴る様に動かす。音が聞こえやすいように立ちながら脚を左右に広
げ、美女にあるまじき卑猥さを晒す。
﹁指ぃ、気持ちいぃ。でもぉ∼アルシアさんの指がいいのぉ﹂
僕ってこんなにエッチだったかなぁ?って思ったけど、アルシア
さんとエッチがしたくて堪らないので仕方ないよね。好きな人とエ
ッチしたいのは当たり前の事だからいいよね。
ニュチュニュチュと水気が増した股間の音が部屋に広がる。中指
一本で我慢してるからか、もっと奥を弄って欲しいからか、オマン
コからエッチなお汁が垂れてくる。
一人で弄り続け、手触りが良い真っ白い下着もびっちょり湿り、
下着からたら∼と一滴お汁が垂れて絨毯に染みができる頃に、漸く
1228
アルシアさんが体ごと僕へ向き直りため息をついた。
﹁セシル、夜にエッチしますから、今は我慢して大人しくしてて下
さい﹂
﹁え∼、でも僕、夜だと寝ちゃってるかもしれないし∼﹂
﹁国の長が仕事をサボる訳にはいかないんですよ。私だって本当は
セシルと今すぐにでも愛し合いたいのを我慢してるんですから﹂
﹁そ、そうなんだぁ﹂
真剣な眼差しで我慢してるって言われて、思わず頬がポッと赤く
なる。
昔からアルシアさんは嘘が吐けず、心情を素直に言って周りを呆
れさせる人だったけど⋮⋮なんだか今日は言われた僕が凄く嬉し恥
ずかしい。
﹁セシルが誘ってきたせいで、例え夜にセシルが寝ていたとしても
我慢出来そうにないですよ。寝てるセシルを裸にして、ゆっくり胸
を揉んで感触を味わい、先端を口に含み甘さを堪能します。それか
ら股を広げて大切な場所をじっくり見てから、舐めたり吸ったり噛
んだまま軽く引っ張ったりしてから、膣に舌を入れて︱︱︱︱﹂
﹁は、はぅぅ﹂
言われた事を想像して体中が恥ずかしさで熱くなる。エッチな事
は大好きだけど、真面目で真っ直ぐな人から自分がどう弄られどう
愛されるかを聞くのは、とてつもなく恥ずかしいと今知りました。
情熱的な視線で語られると尚更に。
﹁にゃ、にゃ∼∼! アルシアさん、ベッドで夜まで待ってるから
ねぇ∼∼!﹂
1229
純粋な愛情を正面からぶつけられて、恥ずか死ししそうになった
僕は執務室から逃げ出した。胸の内では嬉しくて大喜びで、イって
ないのに天にも昇るような気持ちで。
◇◇◇
すっかり日が暮れ、世界は闇に包まれた。待ちに待った夜。大人
の時間。エロエロタイム。
好きな人とエッチしたいと言う気合で起き続けた僕は、寝室の大
きな姿見で自分の格好を見ていた。
﹁お風呂も入ったし、香水も振ったし、自然な感じのお化粧もばっ
ちり。下着も色っぽいよね。大丈夫だよね﹂
リリスの時のような喋り方ではなく、緊張でハキハキと語尾を締
めて確認作業を行う。
長髪はツヤツヤでスルリと指が通り抜ける。
肌も染み一つなく、女性らしく柔らかもっちり。
自分の白さに合わせたピンクの透けたベビードールは似合ってる
と思う。
ブラはなしで透ける乳首で艶やかさアップ。
ピンクのショーツはローライズで隠すのは最小限。
匂いも香水で上品に微かに甘くしてる。
クルッと回って全身を確認する。うんうん。下品じゃない程度に
1230
いやらしい。真っ白な僕は薄幸の美女って感じだけど、ベビードー
ルとショーツの淡いピンクが暖かさを加えてとても美味しそうです。
性的に。
準備万端に整えたので、いそいそと天蓋付きのベッドへと乗り込
み、掛け布団の中へと入って顔だけを出して待ちます。アルシアさ
んがお布団をめくった時に、僕の姿を見て驚いてもらう為です。
エッチな格好に興奮してくれても嬉しいし、可愛いって褒めてく
れても嬉しい。綺麗ですよって言われても嬉しい。何か反応してく
れるだけで、きっと僕は喜んじゃう。
ドキドキしながらふかふかベッドの上で、今か今かとアルシアさ
んを待ち続けます。夕方辺りから既に眠かったけど、今日はアルシ
アさんとエッチするんだから頑張って起きてなきゃ。
何で僕はこんなにアルシアさんが好きなのかなぁ。アルシアさん
が、僕を真っ直ぐ見てくれるからかな? 僕ってうっかりで抜けて
たりするけど、それでもアルシアさんは頑張ったら失敗しても褒め
てくれるよね∼。そういう所が好きなのかなぁ。
今でも女の子は好きだし、男の子とエッチするのも大好きだけど、
アルシアさんとエッチするのは気持ち良いだけじゃなくて、ドキド
キするんだよね∼。体よりも心が満たされるって言うのかな? ま
るで恋してるみたいだよね。
素の自分を出せる安心感と、可愛くしたりカッコよくしたら褒め
られたい気持ち。アルシアさんの特別なのは僕だけで居たい気持ち。
魔母として沢山の子供達を生んだけど、子供達に対する愛情とは別
の気持ち。
1231
﹁きっとトレントから助けてくれた時には、好きだったんだろうな
ぁ。僕ってチョロイね∼。ふぁ∼﹂
魔の森でアルシアさんに助けられて、出会った時から気になって
たんだろうなぁ。決闘した時のアルシアさんは、今思えば手加減し
てくれてたんだよね∼。騎士然としてて格好良かったなぁ。
﹁騎士に助けられるお姫様って王道だよね∼。むにゅむにゅ﹂
女同士で夫婦だけど、やっぱり僕が奥さんだよね∼。アルシアさ
んが居れば何とかなる気がするし、絶対に守ってくれる安心感があ
るよね。
﹁ふぁぁ∼。アルシアさん、好きぃ⋮⋮﹂
﹁セシル、遅くなってすいません。って、寝てしまいましたか。私
もエッチな事したかったんですが、残念です。また今度しましょう
ね。ちゅ﹂
1232
第71話 眠り姫の日常︵後書き︶
完結してたけど、気晴らしに書いたので更新。
︵*´ω`︶
1233
第72話 偽りの天使?
荘厳な神殿で、天使と少年が見つめ合っていた。
白く美しい羽をもつ天使の少女は、手を合わせ願いを口に出す。
高校生くらいの少年は天使の願いを聴き、確かな頷きで返答した。
凶悪な魔物が住む広大な地下迷宮を封ずる街に、新たな勇者が召
喚された日の出来事である。
◇◆◇
﹁うんうん、これで3人目の勇者だね∼﹂
こっそり撮影していた記録映像を見て大変満足の僕です。召喚し
た男の子は、しっかりと地下迷宮に挑んでくれそうだからね。
にこにこが止まらない僕に対し、同じく映像を見ていたルネちゃ
んが少々困った顔をしていた。
﹁あの、リリス様、毎回私が勇者様に状況を説明しお願いする聖女
役をしなきゃダメなんですか?﹂
清楚ながらも見えそうで見えないシースルーの服を着たルネちゃ
んが、困り顔で聞いてくる。
﹁僕がしたらさ∼、絶対うっかり余計な事を口走ったり、フェロモ
ン出して無意識に誘惑したり、召喚直後に大人の階段登らせちゃい
1234
そうだし∼﹂
﹁リリス様なら普通にしそうですね。無垢な青少年達を美味しそう
♪ と言って性的に貪りつくすとか。はぁ、一応地球側の政府と相
談した上での、青少年育成プログラムですからね。仕方ありません
か﹂
ふっふっふ。ルネちゃんが言うとおり、今やってるのはただの勇
者召喚ではないのです!
日本で少し上手くいってない若い子達。その中でも異世界召喚と
か大冒険に深層心理で憧れている子達を選別し、こちらの世界ゼフ
ィーリアに勇者として呼び出し、邪悪な魔王が居る地下ダンジョン
を攻略しながら自信を持ってもらおう! と言う素敵な企画なのだ
っ! 決して僕が魔王役をしてみたいだけじゃないのだっ!
﹁僕のこいういう遊びに付き合ってくれるのって、ルネちゃんくら
いだからさ∼。ルネちゃんが協力してくれるからこそ、皆も許可し
てくれたんだしぃ∼。ね∼?﹂
﹁遊びってはっきり言いましたね。わかりました。わかりましたか
ら、クネクネしながらお願いしないでください﹂
100層はある地下ダンジョンを作った街の聖女様役のルネちゃ
んが、聖女の如き笑顔で頷いてくれました。
﹁ところでリリス様、50層と80層の中ボス役はご息女様方にし
て頂いていますが、お二方が誰も来ないと嘆いて苦情を送ってきて
ます﹂
﹁ふえ、メルキアとフィルトがぁ∼?﹂
メルキアとフィルとは、僕と黒竜と白竜の間に出来た娘達。ドラ
1235
ゴンの膨大な魔力と強靭な肉体を持った人型の魔族で、本気を出す
と変身まで出来る竜魔という種族の二人。
この二人、親のクロ達に似ずとても好戦的でボス役とか適役と思
ったんだけどぉ。
﹁まさかまたぁ∼⋮⋮?﹂
﹁はい。ダンジョン内の人造モンスターを暇だからと倒し続けてい
ます﹂
﹁は、はう。ル、ルネちゃぁん﹂
﹁倒された分は補充します﹂
﹁ありがと∼、ルネちゃん﹂
﹁経費はリリス様のお小遣いから引いておきますね﹂
﹁ル、ルネちゃぁ∼∼∼∼ん﹂
現在は魔導科学の第一人者で錬金術も修めて、人造モンスターの
開発およびダンジョンクリエイター兼ダンジョンのある街の領主で
聖女様で、僕のお小遣いの管理人のルネちゃん。
彼女が居るからこそ、勇者召喚企画は成り立っています。
﹁うぅ、まぁお小遣いが減るのはいいけどさ∼。若い子達がしっか
り自信を持って立ち直ってくれるならさ∼。でもそういう建前とは
言え∼、僕の考えたダンジョンで魔王をやりたいを∼、皆が良く許
可してくれたよねぇ∼﹂
我ながら結構むちゃくちゃだなぁと思う。最初はアルカちゃんに
﹃天界に居た時に作ったアルガードの塔の二の舞をする気ですか﹄
ってお説教をたっぷりされたのに。
1236
﹁リリス様が楽しそうに話すので、これでも少し頑張ったんですよ﹂
ルネちゃんがため息をついて言う。
でも顔は笑顔だった。
きっとルネちゃんが傍にいるから、許可されたんだね∼。
﹁ありがとう∼。ルネちゃ∼ん﹂
そう言えばラーメン作ったりとか﹃私﹄の適当な思い付きに、い
つもルネちゃんは付き合ってくれたっけ。天界に居た頃から、ルネ
ちゃんは僕に優しいなぁ。
しかしふと疑問が湧いた。
有翼族の代表として僕の側近扱いのルネちゃん。けれど彼女は魔
力が強かったり、肉体が頑強だったりと言った戦闘的な強者ではな
い。
そこが少しおかしい。
僕の側近になるには条件がある。
僕が暴走した時に止められるか、最低でも生き延びられる程度の
強者である事。普段おちゃらけて居る反動なのか、僕は戦闘になる
と暴走して破壊を振りまいてしまう。だから側近と言える人達は皆
強いのだ。
そんな僕の側近にいつの間にか自然と成っているルネちゃん。有
翼族の禁忌だった魔導科学は、ルネちゃんが必要性を説いて復活さ
せ、地球側との様々な交渉役もやっていて、誰しもが一目置いてい
1237
る。
戦闘力はあまりないと周りに思われているはずなのに、誰しもが
認める実力者。
天使の羽を生やし、可愛らしい笑顔を浮かべているルネちゃんを
ジーと見た。うん、魔力量とかはそれなりだけど、それなりなだけ
で多くない。肉体も普通の人間並みの筋力とかだね。魔法がなけれ
ば、召喚した高校生の男の子にも押し倒されそうな位に見える。
そこになんだか凄い違和感を感じたんだけど。
﹁どうしました? リリス様?﹂
﹁へ? ううん、なんでもないよ∼﹂
﹁ふふ、おかしなリリス様﹂
純真無垢な素敵な笑顔のルネちゃんだけど⋮⋮。
何故か一瞬、寒気が。
﹁私は勇者様のご両親に、無事に此方に辿り着いた事を説明しに日
本に行きますが、リリス様はどうしますか?﹂
﹁え、えっとぉ、僕は日本に行ったら怒られそうだしぃ﹂
﹁行きたいのでしたら、行ける様に手配しますよ﹂
﹁本当∼!?﹂
﹁はい。あ、折角ですし、アルシア様とご一緒に行けるようにしま
しょう﹂
﹁わぁ∼。アルシアさんと日本でデートができる∼!? ありがと
∼、ルネちゃ∼ん﹂
凄い素敵な提案をしてくれたルネちゃんに、思わず抱きついてし
1238
まった。それを嫌がらずに受け止めてくれるルネちゃんは優しいで
す。
﹁リリス様が喜んでくれて嬉しいです﹂
﹁うん∼! それじゃ∼、僕は準備してくるね∼﹂
早速準備しようとルネちゃんから離れ、地下ダンジョンの魔王の
間から自宅に向うべく駆け出した。そんな喜び勇んでスキップして
進んでた僕の背中に、小さな呟きが聞こえてくる。
﹁うふふふ、いっぱい喜んで幸せになってくださいね。リリス様﹂
いつものルネちゃんの声だった。特に気にする事は無かった。
その筈なのに、僕は立ち止まり後ろを振り向いた。
振り向いた視線の先には、天使のような笑顔を貼り付けたまま僕
を見るルネちゃんが立っていた。
1239
第72話 偽りの天使?︵後書き︶
おだてられたら木に登るのは、セシルさんか私かどちらだろうか。
︵*´ω`︶
1240
第73話 虚ろな女王と裸の姫
足元にはふわりとした絨毯が敷かれ足音一つしない静かな通路を、
先導する人物の背を追い一歩一歩進んで行く。男性は振り返ること
なく進み、僕も回りを見ずにただついて行った。
僕の後ろにはアルシアさんとルネちゃんが続き、更にその後ろに
は護衛のレイニーが居るはずだ。見知らぬ場所を歩くのは内心ちょ
っと心細く、一人でないと言うのは実に心強い。
唐突に先導役の男性が立ち止まると、重そうな扉をゆっくりと開
けていった。どうやら目的の場所に着いたようだ。
開けられた扉を潜りながら部屋の中に居る人達を軽く流し見する。
椅子に座った男性達は、高そうなスーツに身を包み誰も彼もが一癖
ありそうな雰囲気をしていた。年齢を重ねた老獪さだけでも大変そ
うだけど、軽い敵意と固い決意が見て取れる。彼等が今日ここへ持
ってきた物は、自国を背負っていると言う責任だろうか。
僕達が用意された席に案内されると、それとは反対側、その中で
も真ん中に座っていた人物が立ち上がった。
﹁ようこそおいで下さいました。異世界の女王陛下。我々は出来る
限り、貴女方を歓迎致します﹂
本音かリップサービスかわからぬ挨拶をしてくる男性。表情は笑
顔を作っていたが、僕達を見る目は決して笑っていなかった。とす
るなら、やはりリップサービスなのだろう。
1241
﹁正式な交渉の場を作って頂き、此方こそ感謝いたします。総理大
臣様⋮⋮でよろしかったでしょうか?﹂
僕の代わりに隣に立つルネちゃんが応えた。彼女が言葉を発した
ら、僕らのテーブルとは別の離れた場所に居た若い青年が持ってい
たペンを落した。上手な日本語を異世界人が話したことに驚いたの
か、それともルネちゃんの見た目や声に惹かれたのか、どちらにし
ても反応が若く未熟だと思えた。この場に居るには青すぎる青年は、
ただの記録係か何かなのだろう。
僕達の正面に相対する男性達は動揺の一欠けらも見せず、全員立
ち上がって礼をしてくる。そして総理の自己紹介の後に、一人一人
が役職を含めた自己紹介をしてくれた。
続いて僕らの方も挨拶を始めなければいけないのだけど︱︱︱︱
僕がルネちゃんに視線を送ると、僕の代わりにルネちゃんが僕の紹
介を始めた。その最中にむっとした表情をした人が相手方に居た。
それとレイニーが護衛として名乗った時は、眉間に皺を寄せる人が
居た。
紹介だけで相手方は何人かは不快感を露にしたのだけど、それに
気づいた総理が目で制し、此方に軽く頭を下げてきた。あぁ、なん
となくこの人は侮れないなと思った。
﹁さて、それではそろそろ話し合いを始めましょうか。我が国日本
と貴国の国交について﹂
全員を席に着くのを確認した総理大臣が、そう口火をきった。
1242
﹁交易品に関して、魔道具関連は含めない、ですか﹂
﹁えぇ、明確に此方の魔法と言う概念を理解されないと危険だと思
いますので﹂
﹁我々に魔法を解析されたくないと言う訳ですかな?﹂
﹁いえ、そうではなく﹂
僕らの住む世界ゼフィーリアと地球の日本。二つの国︱︱僕らの
方は帝国とか聖国とか法国とか∼あっちの世界全体だけど︱︱との
交渉を現在行っています。
ルネちゃんが﹃僕とアルシアさんを日本にいけるようにします﹄
と言っていたが、僕をゼフィーリアの代表としてこの場につれてく
るのが目的だったようです。ふふふ、見事に騙された。
うぅ、僕は純粋に日本に夫婦で旅行にいける∼とか思っていたの
に! ⋮⋮ゼフィーリア代表で交渉の場に出ろとか言われたら、僕
が逃げると思ったんだろうなぁ。だからただの日本への旅行みたい
に思わせておいたんだろう。
実際に前もって知ってたら逃げたろうから、ルネちゃんの行動も
仕方ないと思う。でも交渉の場に着て思うんだけど∼。
﹁此方も日本側の兵器等は頂こうとは思っておりません。平和的な
関係を第一に築きたいのです。ですので、まずは生活用品と言った
物から﹂
﹁でしたらそちらで生活用品としてる魔法の道具を何点か欲しいも
1243
のですな﹂
﹁一般生活に使われる魔道具も、魔素の薄い此方ではどうなるかわ
かりません。ですので、その検証をしないと﹂
﹁では検証用に﹂
交渉はほぼ90%ルネちゃんが行っております。アルシアさんも
書類に目を通しがら口を出していますが、主にルネちゃんが中心で
す。レイニーは護衛なので交渉に口を出さないのはいいとして、こ
の場に僕って必要ないよね。
﹁そこまで隠されると裏があるとしか﹂
﹁たんに検証には魔法に造詣の深い私達を中心にしたほうが安全だ
と﹂
なにやら一人魔道具について絡んでくるおじさんがいます。見る
からに手を焼いているルネちゃん。いやぁ大変そうだなぁ。頑張っ
てルネちゃ∼ん。寝てしまいそうな意識を保ちながら、ぼけ∼と交
渉を頑張るルネちゃんを心の中で応援する。
﹁出来れば生活用品の交易だけではなく、そちらでの鉱山等の採掘
をさせて頂きたいのですか﹂
﹁金属類の交易でしたら、此方で採掘してインゴットにした物をお
渡ししますが﹂
﹁それはありがたい。ですが、そこまでお手間は取らせず、採掘す
る許可を頂ければ必要な機材や人員を含め、採掘自体を此方でしよ
うかと﹂
﹁それは土地をよこせという事でしょうか?﹂
﹁いえいえ、違います。採掘をそちらの方々にお任せした場合、そ
ちらでは無価値でも、此方では価値のある物が出た場合にわからな
いかと思いまして﹂
1244
﹁なるほど。では何人かの識者を送っていただくのは?﹂
﹁ふむ﹂
キリっとした顔のまま寝かけていたら、いつの間にか別のお話に
なっています。採掘とか何とか言ってるけど、随分と難航している
様子。なんでだろうなぁ∼と考えて。
﹁僕達が使っていない原油やレアメタルをこっそり欲しいと﹂
僕らの方だと地下資源の石油とか使ってないしね∼。貴金属に関
しても魔法や魔道具が発展してるから、地球側ほど色々使っていな
いはず。なんて適当に考えていた僕の一言で、会議の場がピシッと
凍りついた。
﹁私達に秘密裏に資源の回収をするのが目的でしたか﹂
﹁そのような事は決して﹂
ルネちゃんと話していた人が焦って否定を口にした。焦った口調
だったせいか気まずい雰囲気が広がる。なんだか相手の人が此方を
騙そうとした∼みたいな感じになってる。
そんな中、暇そうに髪をいじっていたレイニーがつまらなそうに
口を開く。
﹁そういったことも織り込み済みの交渉じゃろう? お互いに自分
側を有利にしようとするのは当然のことよな。なればバレた件は疾
く終わらせ次に進みや﹂
レイニーの言葉で場の雰囲気が落ち着いていく。確かに国と国︵
こっちはちょっと違うけど︶の交渉は、自国が有利になるように交
1245
渉するよね∼。吸血鬼なのにレイニーってば凄い現実的でびっくり。
レイニーはさすが元人間の貴族の少女、現聖国の女王様だけあっ
て交渉とかでのやり取りも得意っぽいなぁ∼。
すっかりお義姉様のような居るだけでも威厳があるアルシアさん。
色々と取りまとめるのが得意なルネちゃん。それに人の感情の機微
に聡いレイニーがいれば、やっぱり僕必要ないよね∼。用意された
ホテルに戻って寝ていいですか?
僕はこの場に居る意義を完全に見失い、半眼で意識を失っている
うちに、日本との交渉は無事に終わっていました。
﹁セシルよ、こちらに来てからずっとボケーとしおって、我らの代
表としての自覚があるのかや?﹂
用意されたホテルのスイートルームでソファーに座って休んでい
ると、シャワーを浴び終わった裸のレイニーがビール片手に小言を
言ってきた。
所用で出かけたアルシアさんとルネちゃんに留守番を任された僕
とレイニー。そんな居残り同志にきっぱりと素直な気持ちを言い放
つ。
﹁ん∼、ないけどぉ∼?﹂
﹁ぶっ、ごほごほ、うくっ﹂
1246
返事をしたらレイニーが咽た。予想外の返答だったから咽たのか
な? 裸の銀髪吸血鬼少女がビール缶を片手に日本のスイートルー
ムで咽る。色々と酷い光景です。でもちょっと色っぽいのが悔しい。
子供を生んでもちっぱいなオッパイにビールの雫がたら∼と垂れ
るのは、アルコールをまだ飲んじゃダメそうな見た目と合わさって
エロスです。さらに下のおへそを通り過ぎ、産毛だけの裂け目に吸
い込まれていくのなんて∼。
﹁妾の裸を見て楽しいかや?﹂
﹁へ? あ⋮⋮﹂
咽るのから復帰したレイニーが呆れた目で見ていました。ジロジ
ロみてたの怒られるかなぁと思ったのですが。
﹁まぁ見たいなら見ると良いがの。子を生めるようにしてもらった
恩もあるでな﹂
溜息をついたレイニーが正面の空いてる席に腰掛けました。裸で
足を軽く開いて座ってるので、割れ目がしっかり見えています。こ
こ数年眠り姫でエッチが殆どできなくて性欲が溜まってる僕には、
実にけしからん光景です。
レイニーが言う通り、幼少時に吸血鬼にされて体の成長的に子供
を生めなかった彼女を、僕の技能の肉体改造でレオン君の子供を生
めるようにしてあげたんだけど、かなり恩義を感じているようです。
子供を身篭ってから僕に対して大分丸くなったからね∼。今でもた
まに攻撃してくることもあるけど∼。
1247
﹁見て良いと言ったすぐに凝視するとは⋮⋮。アルシアとの夜の生
活は上手くいっておらんのかえ?﹂
﹁ん∼、僕が寝ちゃうからね∼。エッチしたくても中々できないん
だよね∼﹂
﹁ふむ、昼間の会議中寝ていたのも、ただのズボラではなく弱って
おるせいかや?﹂
﹁そだね∼、日本は空気中の魔力濃度が薄いから∼、あっちに居る
よりさらに眠くなるんだよ∼﹂
言い訳ではなく、事実地球に居ると眠さ倍増なのだ。決して僕が
寝たいだけとかではなく、こちら側では起きているだけの魔力にも
不足気味なのです。
そう言ってる側から眠くて意識が薄れていきます。
﹁はぁ、なれば眠るのも仕方なしか。しかし眠る前に一つ質問に答
えよ﹂
﹁ふにゃ∼? なぁにぃ?﹂
﹁どうにも日本政府の役人に舐められておる気がしてのぅ。交渉の
場に居た者達がアルシアやルネを侮っておった。我等には負けぬと
明確な意志を感じたの。日本側の戦力をヌシはどう考えておる﹂
クラクラする頭で質問の答えを考える。美人な吸血姫と角が生え
た悪魔な僕が、日本のホテルで雑談するって変な気分∼じゃなくて
∼。
﹁ん∼、日本って男性社会だから∼、交渉相手が女ばっかりで侮っ
たんだと思うよ∼﹂
﹁ほぅ﹂
1248
目を鋭くしたレイニーさん。その目のまま罵られて踏まれたら、
一部の人にはご褒美ですね。わかります。
﹁実際の武力としてはどうなのじゃ?﹂
﹁あ∼、銃とかやっかいかなぁ∼。小さな金属の塊、弾丸を凄い速
度で飛ばしてくる武器なんだけどね∼﹂
﹁なるほどのぅ。我等とて脅威となる武器がある故の強気じゃった
か﹂
レイニーがなんだか納得して警戒しているようだけど、なぜだろ
う。
﹁厄介だけど∼、レイニーくらいになるとどうとでもなるよ∼。銀
の弾丸でも使われたら面倒だと思うけど∼﹂
﹁脅威ではないのかえ?﹂
﹁レイニーやネーブルみたいな、将軍クラスの人だと、脅威じゃな
いんじゃないかなぁ?﹂
魔法障壁や霧化、回復魔法に吸血、契約魔獣や従僕の召喚。単独
であっちの軍と戦えるような人や魔族は、たぶん弾丸を防ぐのも容
易だと思うんだよね。レイニーに至っては毒なんかも効かないし、
霧になれば物理無効だし、倒した相手を操るし、ファンタジーなめ
んなって感じになるんじゃなかろうか。
﹁とすると、武力では我等が有利なのかや?﹂
﹁有利所か∼、レイニークラスで都市を落せるだろうし∼、アルカ
ちゃんくらいになると一人で国を落すんじゃないかなぁ∼﹂
アルカちゃんなら国じゃなくて世界を滅ぼせそうだけど、そこま
でしたら地球側の神様みたいな存在が出てきそう。炎の魔人vs神
1249
霊。巻き込まれるだけで人間なんてひとたまりもなさそ∼。
僕の答えにレイニーは腕を組んで考え込んでいる。昔から思って
たけど、レイニーって真面目っ娘さんだ。それは置いといて、そろ
そろ限界です。
﹁えっとぉ、もう寝ていい∼?﹂
﹁ん、うむ。ヌシとの会話にしては珍しく実があったでの。護衛と
して来ておるし、寝てる間は妾がしかと守ろう。安心して寝るがよ
い﹂
﹁ふぁ∼い。にゅ∼、レイニー一緒に寝よぉ﹂
﹁いや、それはさすがにのぅ⋮⋮﹂
弱体化してから人恋しい気持ちが強くなった。だからエッチしよ
うとかじゃなく、誰かと触れ合っていたいと思う気持ちからのお願
い。断られた後もジーとレイニーを見続けると。
﹁はぁ、仕方ないの。膝枕くらいで許してたもれ﹂
﹁ん、ありがとぉ∼﹂
レイニーが僕の横へと来て座って、自分の膝をポンポンと叩いた。
そこへ向かい僕はゆっくりと頭が乗るように横になる。
﹁ぷにぷにで柔らかい。温かくて安心するぅ﹂
﹁やれやれ。昔は無鉄砲でバカ娘じゃったお主が、こうも甘えん坊
になるとはの﹂
﹁ふぁ∼、裸のレイニーいい匂いがするぅ﹂
﹁これ、余計なことを言うでない﹂
ぺちんと頬っぺたを叩いた後、ゆっくり頬や頭を撫でてくれる。
1250
それが気持ちよくて、僕はすぐに眠りに入った。
﹁明日は交渉も休みじゃ、愛しいアルシアとゆるりと過ごすと良い﹂
眠る寸前、とても優しげなレイニーの声が聞こえました。
1251
第73話 虚ろな女王と裸の姫︵後書き︶
おまけは蛇足もいいところなのですが、読んでる人は居るんだろうか
︵*´д`︶エッチくない話ばかり。
1252
第74話 観光始めました
﹁観光しちゃだめ!?﹂
日本政府との交渉がお休みの日に、さぁ観光に行かんとしたら僕
らを接待する担当のお役人さんに止められた。あまりの不条理にお
役人こと桑原さんに詰め寄る。
﹁ど、どうして!? 僕ってば観光するのを楽しみにしてたのにぃ﹂
﹁リリス様と同じと言うのは不本意ですが、私も楽しみにしてたん
です﹂
昔リオと戦ったらしい桑原さんに、ルネちゃんと一緒にずずずっ
と詰め寄る。この人の弱点は女性と子供だと知ってるので、僕とル
ネちゃんの威圧は効果抜群なはずだ。ルネちゃん見た目子供だしね
∼。ところでルネちゃん、僕と一緒だと何故に不本意ですか?
﹁い、いや、そのアルシアさんとレイニーさんは構わないんですが、
お二人は色々と問題がですね﹂
たじたじと顔を引き攣らせて説明しているが、僕の胸元を見てい
るのはばれている。このまま押し切ればいける! と確信した僕は
ネクタイをギュっと握り無理矢理桑原さんの顔を近づけさせ彼の耳
元で囁いた。
﹁あとでサービスしてあげるからぁ﹂
甘い猫なで声で囁く。色香には自信があり大抵の男はこれで堕ち
1253
ると知っている。リリスとして種族関係なく誘惑して堕としてきた
実績は伊達じゃない。まぁアルシアさんが側にいるので今回は誘惑
するだけでエッチする気は微塵もないただの罠なのですが。
しかし許可をとる為だけのトラップだと見破ったのか、桑原さん
は首を縦に振らなかった。ネクタイを千切りさっと後ろに飛んで距
離をとって両手を軽く上げながら必死に説明してきた。
﹁お誘いはすげぇ嬉しいけど、あんたとしたとバレたら首が飛ぶ。
まじで、物理的に、冗談じゃなくな。とりあえず理由をちゃんと説
明するが、自由な観光がダメってのも異世界のVIPだからって訳
じゃないんだ﹂
観光ダメ∼って言われた僕とルネちゃんは真面目に聞き入る。ち
なみにおっけーだったアルシアさんとレイニーは、のんびりとソフ
ァーに座りながらTVを見ていた。すっかり日本のホテルに慣れた
二人である。
﹁あ∼、二人の見た目がな。やばいって言うか、良すぎと言うか。
セシルさんの方は本物の角が生えてるだろ? んで、ルネさんの方
がもっとまずいんだ。金髪に白い肌で背に羽が生えてるのがな。こ
っちの世界だとシャレにならんのよ﹂
桑原さんの説明を聞いてルネちゃんが納得いかない表情をしたが、
僕はなんとなくわかってしまった。
僕は角が生えていて悪魔のように見えなくもない。全身角から足
先まで白いけど、角が生えて魔法を使うなんて悪魔そのものだろう。
悪魔が現れたなんて知れたら怖い人が退治しにきそうだ。
1254
背中に大きな白い羽があるルネちゃんは天使にしか見えない。実
際に空を飛び、魔法と言う奇跡を使う見目麗しい天使。そんな存在
が街中に現れたら世界はパニックだ。
そういえばリオはこっちで芸能人やってるはずだけど、どうやっ
て見た目の問題を解決したんだろうか。世界的な有名人になったら
しいけど。ん∼、要領のいいリオならなんとでもしそうではあるけ
ど。
問題点はわかった。悪魔や天使が堂々と観光とか許可できないよ
ね。ダークエルフと吸血鬼がおっけーなのにとは思うけど、日本政
府が気にしてる部分はわかりました。
﹁でもさ∼、日本ならコスプレで済みそうだと思うけどぉ∼?﹂
﹁いやまぁ、個人的には俺もそう思うんだが。ってかなんでセシル
さん、そういうの知ってるんだ? ってそうじゃなくてだな。今は
個人でネットとかに写真を⋮⋮。実物みたいな絵を世界単位で知ら
せることができるんで、あんたらのそういうのを﹃わかる奴﹄が見
たら一発アウトなんだよ﹂
﹁何がどうアウトなんですか?﹂
﹁あ∼、えーとですね﹂
詳しく説明を求めたルネちゃんに桑原さんが言うには、やれイギ
リスから最強の吸血鬼︵こっちの世界にもいるんだね∼︶が事実確
認に日本に来てしまうかもだとか、ヨーロッパの悪魔退治のプロが
僕を退治しに来るかもだとか、他にも色々と具体的な危険を一杯教
えていた。
僕はと言えば聞き流しつつ対策を考えていた。昨日アルシアさん
とレイニーから分けてもらった魔力を消費するけど仕方ない。魔力
1255
譲渡の為にアルシアさんとした濃厚なキスは良かったなぁ。あ、レ
イニーとは手と手で触れ合っただけですよ。そんなことよりも∼っ
と。
﹁ふっふ∼ん。つまり∼、この姿が問題なんだね∼?﹂
私が満面の笑みで言うと、ルネちゃんが思い切り顔を引き攣らせ
た。何か嫌なことがあったのかなぁ。私が今すぐ観光にいけるよう
にするから元気出してね∼
﹁リリス様が完全にリリス様口調に。うぅ、嫌な予感しかしません
が、何か良案があるんですか?﹂
﹁なんかすげぇ緩そうな雰囲気になったんだが⋮⋮﹂
﹁二人ともなんとなく失礼なんだよ∼﹂
折角解決策を考えてあげたっていうのに∼。ルネちゃんってば、
不安そうな顔をして失礼なんだよ∼。桑原さんも∼、不審な目で見
て失礼過ぎ∼。そんなんだからエルフの女の子達に振られて、あげ
く幽羅ちゃんに逃げられるんだよ∼。
﹁じゃあやるよ∼﹂
﹁まっ、リリス様、何をするか説明をっ!﹂
﹁あ、なんか俺もすげぇ嫌な予感がすんだけど⋮⋮﹂
二人に対してぷんぷんと怒った態度を十分とってから、改めて胸
を張って魔法を発動させた。東京の高級ホテルのスイートルームに
眩い魔法の光が溢れる。やっぱり魔法を使う時は勢いが大事だよね
∼。
﹁リリス様状態のセシルは無鉄砲に磨きがかかりますよね﹂
1256
﹁巻き込まれぬ位置に居るとは言え、伴侶としてその態度はどうか
と思うがの﹂
アルシアちゃんとレイニーちゃんの落ちついた会話をバックに、
私の魔法はばっちり成功したのでした∼。
﹁ふんふんふ∼ん♪﹂
僕ら、アルシアさん、ルネちゃん、レイニー、と監視役の桑原さ
んの五人は日本風の服を着込み都内を歩いていた。さすがに髪の色
や瞳の色が黒じゃないので目立っては居るが、一般的な外国人以上
の注目は集めていない。
﹁ねぇねぇ、アルシアさん、メイド喫茶行こう。メイド喫茶。日本
の名物の一つだよ∼﹂
﹁そうなんですか?﹂
﹁うん? うん、まぁそうですね﹂
﹁なら行きますか﹂
アルシアさんが後ろに居る桑原さんに確認し、行くことが決定し
ました。実はアウラがアルバイトしてた時に見に行ったことがある
だけで、お客として行ったことはないんだよね∼。本職ではない素
人の娘のメイドサービス。ドキドキするよねっ。
そんな風に考えてワクワクしながら秋葉原の街を歩いていると背
後から溜息が。腕を組んで仲良く歩くアルシアさんと僕と違い、後
1257
ろをついて来るルネちゃんと桑原さんはちょこちょこ溜息をついて
いた。
﹁問題解決の手段に見た目を変える。までは納得できるんですけど
ね⋮⋮﹂
﹁だなぁ。そこまでならいいけどよ。なんでこうなるんだ?﹂
﹁ただそこに居たから、ですよ。リリス様のやることは自然現象み
たいなものです﹂
﹁あぁ、理不尽に巻き込まれても諦めるしかねぇと﹂
﹁ええ、その通りです﹂
後ろをついてくる﹃羽が生えてない﹄金髪の美少年と、くたびれ
たスーツを着た﹃美熟女﹄の二人が暗い雰囲気で話し込んでいた。
どうして二人はそんなに暗くしてるか気になり、信号待ちの時に聞
いてみた。
﹁ルネちゃ∼ん、桑原さ∼ん、観光できるのになんでそんなに暗く
してるの∼?﹂
﹁見た目所か性別まで変えられたからじゃろう。哀れな被害者に一
々聞くでない﹂
返事は最後尾に居たレイニーがしてくれた。ルネちゃんと桑原さ
んはずーんと暗い影を纏ったまま僕を見るだけでした。落ち込んで
る理由はわかったけど、そんなにショックかなぁ? 頭の角をぱっ
きり折った僕の方が痛くて辛かったと思うんだけどな∼。
﹁観光していい許可取る為には仕方なかったんだよ∼?﹂
﹁そうかもしれんがの。ルネはまだしも、桑原にしてみれば無意味
に変えられたんじゃぞ。見た目を性別ごとの。後で戻すにしても落
ち込みもしよう﹂
1258
﹁へ? 戻す?﹂
﹁﹁え?﹂﹂
﹁え?﹂
え、と言いながらお互いを見る僕とルネちゃんと桑原さん。レイ
ニーに言われて気づいたけど、見た目を戻す必要性とかさ∼ぱり考
えてなかった。見た目を変えればいいよねとしか考えてなかった。
僕の態度にルネちゃんと桑原さんはさらに顔を暗くして絶望の表
情を浮かべた。美少年と美熟女にしたんだから、そんなに絶望しな
くてもいいと思うんだけどなぁ。特に桑原さんは男の時よりもモテ
るだろうし、男にも女にも。
そうは思ったけど二人の絶望具合にさすがに悪い気になり希望を
示すことにした。信号が変わって一歩目を踏み出すタイミングで。
﹁だ、大丈夫だよ∼。ちゃんと元に戻すよ∼。だから観光中は今の
姿を楽しんで∼?﹂
﹁ほ、本当ですか? リリス様、信じますよ?﹂
﹁ほ、本当だよぉ。戻すぅ、戻すってばぁ﹂
﹁信じましたからね。絶対ですからね。リリス様﹂
僕の白いコートを引っ張りガクガク揺するルネちゃんに、何度も
何度も戻すと伝える。そんなに羽が無くなっておちんちんが生えた
のが嫌なんだろうか。
﹁うっし、戻るとわかれば楽しむか!﹂
桑原さんの方はすぐに前向きにかわった。黒髪長髪の巨乳美熟女
なので、彼の場合は元に戻らない方が幸せだと思うけど。失ったお
1259
ちんちんが戻っても使われないだろうに。
﹁はぁ、憂いが消えたなら観光とやらをとっととするがよかろ。メ
イド喫茶とやらに行くのであろ?﹂
﹁そ、そうですね。えぇ、戻れるのなら私も安心ですし﹂
﹁ふ、俺が知ってる最高のメイド喫茶に案内するぜ﹂
疲れた感じのレイニーに促され立ち直るルネちゃん。率先して先
頭を歩き案内を始める桑原さん。二人が元気になって良かった良か
った。
僕も黒いスーツを着たアルシアさんの腕により摺りつき、楽しい
気持ちで後に続いた。男装の麗人風のアルシアさんは格好良くて素
敵です。道行人がちらちら見るくらいに素敵です。でも残念。僕の
アルシアさんなのです。
﹁能天気にニコニコしおって。護衛ではなく子守に来た気分じゃ﹂
﹁いつもなんだかんだとセシルの面倒を見てくれてありがとうござ
います。レイニー﹂
﹁ヌシに礼を言われてもの。礼を言うくらいならば、ソレが暴走し
ないように捕まえてておくれ﹂
﹁ふふ、わかりました﹂
紫のコート姿のレイニーはいつもの如く愚痴っているようだった
けど、どこか楽しげです。やっぱり日本の観光をレイニーも少しは
楽しみにしてたのかな。
僕達は楽しくわいわいと話しながら、日本観光を開始しました。
1260
第75話 ほらぁげぇむ
物音一つしない静寂の空間。
聞こえる音は自分の胸の鼓動のみ。
暗闇の中をケータイの光だけを頼りに進む。
学校だったと思われる廃墟の中には何も居ない。
居ないはず⋮⋮が。
ヒュンと目の前を透明の何かが横切った!
﹁﹁ひぃぃぃ!?﹂﹂
重なる僕とレイニーの悲鳴。
お互いに無意識で抱きつきガクガクと震える。
﹁なななんじゃ今のは!﹂
﹁生首、生首じゃないよぉ。絶対違うよぉ﹂
﹁否定してるようで決定的な事を言うでなひあっ!?﹂
﹁にげにげにげ、逃げてレイニィィ!﹂
透明生首さんが消えたと思ったら、今度はざんばら髪の白装束の
女性が!
﹁何故追ってくるのかやぁぁぁ﹂
﹁ひーーー、逃げてぇぇぇぇ﹂
恐怖の中、必死にレイニーを応援しながら振り返る。
どうして深夜に化け物に追いかけられて、レイニーと二人で絶叫
1261
を上げる羽目になったのかを。
東京観光を済ませた僕等はホテルに戻り、シャワーを浴びてから
のんびりモードでぐでぐでゲームをしていた。
﹁むぅ、セシルめ、アホな癖に上手いな﹂
﹁ふっふ∼ん。ゲームは得意なのさっ﹂
レーシングゲームで僕に負けて悔しそうなレイニー。
日頃アホだのエロだの言われている僕は、ここぞとばかりに勝ち
誇る。
すると懲りないレイニーが再びスタートボタンを押したんだけど
∼。
﹁明日も交渉があるので、私はそろそろ寝ますよ﹂
﹁私も今日は疲れたのでこの辺で﹂
褐色肌に白いネグリジェのアルシアさんが眠そうに立ち上がる。
おっぱいとか下の毛が透けて見えるのに綺麗でいやらしさが無い。
芸術作品のような美しさはダークエルフゆえだろうか。
対してぽわぽわのお子様用パジャマを着たルネちゃん。
ネコのプリントが一杯付いていて可愛い。
けど天使と思ってる日本政府の人が見たら逆にがっくりしそう。
元に戻した羽を大事そうに触りながらうとうとしていた。
1262
﹁むぅ、仕方あるまいか﹂
レイニーが諦めると、二人は揃ってベッドルームへと歩いて行っ
た。
それに続き僕も寝に行こうと思ったら、隣に座っていたレイニー
に腕を掴まれる。
﹁お主は明日は交渉をアルシア達に任せ、アウラの所に遊びに行く
だけであろ?﹂
﹁うん? そうだけど?﹂
﹁ならば妾に付き合え﹂
﹁え∼﹂
不満を口にすると睨まれた。
レイニーが吸血鬼で不眠が可能だからって、何も徹夜でゲームを
しなくてもいいと思うんだけどなぁ。あっちの世界じゃTVゲーム
なんてないし嵌ってしまったんだろうか。僕もゲームが好きだし付
き合ってあげたいけどさ。
﹁魔力切れで僕もそろそろ眠いんだけどぉ﹂
﹁寝たら寝たで構わぬ。限界まで付き合わぬか﹂
﹁む∼、もうレースゲームとかはしたくないくらいに眠いよ∼﹂
﹁では妾がやっているのを見ておれ﹂
ふみゅ。もしやレイニーってば一人で遊ぶのが寂しいのかな。
いつもいつも僕に厳しいくせにツンデレさんだなぁ。
デレたレイニーに負け、大きな心で一緒に居てあげよう。
﹁もぉレイニーちゃんってば仕方ないんだからぁ。でもぉ私は眠い
からぁ、レイニーちゃんの膝枕が交換条件なんだよぉ﹂
1263
﹁それくらいは構わぬが、お主リリス口調になっておるぞ。寝ぼけ
始めているのか、それともそれが素なのか、どっちじゃ﹂
﹁ん∼、こっちが素かなぁ。元気な時やアルシアちゃんが居る時は
セシルに戻るんだけどね∼。ふぁぁ﹂
何故か溜息をついてからレイニーが自分の膝をぽんぽんと叩いた。
頭を乗せておっけーの合図だろうと思い、迷い無くポスンと頭を
乗せる。
ちょっと大人になったレイニーの膝枕はぷにぷにで気持ちいい。
アルシアさんの膝枕と違い、上を向いて顔が見えるのがいいよね。
﹁今、お主失礼な事を考えなかったかえ?﹂
﹁気のせいだよぉ﹂
勘が鋭い。
こわこわと視線を避けるように膝に顔をぐりぐりした。
レイニーはTシャツ紐パンなので直接肌の感触を感じる。
太ももの谷間から香る甘い匂い。
あまりに良い匂いだったので∼。
顔をレイニーのお腹の方に向けて、ぺろりと味見をしてみた。
﹁ひゃあ! こら、舐めるでない!﹂
﹁ん、美味しい。もうちょっと下まで舐めたらぁ、甘い蜜が出るの
かなぁ∼っていひゃい、いひゃいぉ﹂
紐パンの隙間から奥を舐めようとしたらほっぺを抓りあげられた。
結構本気で引っ張られて痛い。
﹁リリスの時は見境が無いの。それ、一人で遊ぶにはどのゲームが
良いのじゃ。教えてたも﹂
1264
痛さから開放されたくて急いで適当なゲームを指差した。
そしたらレイニーはほっぺを開放して指差したゲームを手に取っ
た。
﹁ほう、これかえ﹂
﹁もぉ、ちょっとレイニ∼ちゃんのエッチなお汁舐めようとしただ
けなのにぃ。酷いよぉ﹂
﹁そんな汁出とらんわっ!﹂
﹁うんうん、大丈夫。舐めてたらその内でるからぁ﹂
﹁はぁ、我らが世界の頂点がお主だと思うと、ちょっと頭痛がする
のぅ﹂
﹁む∼、失礼なんだよぉ﹂
私の抗議を無視して手を伸ばしゲームディスクをセットしている。
完全に私がただのエロエロな人だと思ってそうだ。
私が誰かとエッチしたりするのは、ちゃんと理由があるのに。
デモンマザー、全ての生物の母としての習性。
生き物の遺伝子情報を集めゼフィーリアの全ての生命の管理をす
る。
それが魔母たる私の本能なのだ。
まぁ星との契約を切っちゃってぇもう魔母じゃないからぁ、ただ
エッチな事したいだけなんだけどね∼。
眠気でセシルとリリスの中間の思考でぽやぽやしつつ、レイニー
の良い匂いに包まれて徐々に眠りに入っていく。子供を産んでから
レイニーは女性らしくなった。前はちんまい小娘だったのにね∼。
今も見た目は精々十五歳前後だけどぉ。
1265
心地良い膝枕と甘い匂い、ついでに好き勝手な思考をしてむふふ
と夢見心地だった私だったんだけどぉ、突然上からレイニーの悲鳴
が聞こえる。
﹁ひぃ、な、何じゃ今のは﹂
﹁ふぁ? レイニーちゃんうるさいよぉ﹂
﹁う、うむ。すま⋮⋮ぬぅぅ!?﹂
謝ってるような叫び声。
レイニーってばゲームで大興奮だねぇ。
と、他人事と思っていたら体を激しく揺すられた。
﹁セセセシルや、起きれや。起きて、起きなさい!﹂
レイニーはいつもの変な言葉使いを忘れて起きろと言ってくる。
でもねむねむな私はその程度では起きれない。
﹁ふにゃぁ、魔力切れで起きれないよぉ﹂
﹁そ、そう、では魔力をあげるので起きなさい!﹂
﹁じゃあ、はい﹂
何故か必死に私に起きて欲しいみたい。
だからここぞばかりに上を向いて唇を少し突き出した。
これは魔力口移しのキスをしたいだけじゃない。
吸血鬼って私が地上に居ない間に生まれた魔族で遺伝子情報を持
っていない。つまり吸血鬼の能力を私は把握していない。これは魔
族を統べる魔母としてはまずいよね。もう魔母じゃないけど。本当
はキスしたいだけだけど。
1266
レイニーとキスできる大義名分を得て待っていると∼。
ぐわしっと顔を掴まれた。
﹁むぐぅぉ。へいひーひゃん、ぎゅるじい﹂
﹁早く起きなさい!﹂
口を塞ぐように顔をギュっと掴まれてしまう。
手から私の口を通して魔力をがぶ飲み状態。
ぐんぐん体に力が漲り、意識がはっきりしてくる。
それはいいんだけどキスを期待してただけに微妙な気分だ。
顔を掴まれるのはアルカちゃんで慣れてるからいいけどさ∼。
たっぷりの魔力譲渡が終わり眼が覚めて体を起こす。
キスしてくれなかったのでジト眼でレイニーを見たが。
﹁よ、よし、起きたかえ。では続きをするかの﹂
僕の視線の抗議をレイニーは無視しました。
寝ぼけてキスを期待してたとは言え、してくれなかった事がちょ
っと不満だ。
でも僕を起こしてまで一緒にゲームをしたいなんてデレまくりな
ので許そう。
そう思い、レイニーの横で居住まいを正しTV画面を見たら︱︱
︱どアップで映る爛れた女性の顔!
﹁﹁ギャーーーー!!!﹂﹂
重なる僕らの悲鳴。
1267
﹁な、何今の!﹂
﹁わ、わからぬ。死霊なのかなんなのか⋮⋮。訳もわからず逃げて
おるのじゃが﹂
一気に眼が覚めたので急いで現在プレイ中であろうゲームのパッ
ケージを見た。ゲーム機の前に置いてあるパッケージには、予想通
りの雰囲気の絵柄が描かれていた。
﹁ホ、ホラーゲーム⋮⋮﹂
突然の恐怖演出で予想はしてたがホラーゲームだった。
ホラーゲーム⋮⋮。
人間だった頃にゾンビ討伐物すら僕は出来なかった。怖くて。
﹁で、でもレイニーは吸血鬼だし、死霊とか余裕だよねっ!﹂
﹁妾は余裕じゃが、こやつ無力で逃げるしか出来ぬ。カ、カメラと
やらで写して倒すようじゃが、効かぬ奴もおってのぉ﹂
レイニーはビクビクしながら主人公を操り暗い道を進んでいく。
死霊を操る吸血鬼の癖に怖がっているのが丸わかりだ。
﹁お、お主こそ配下にアンデッドがおるし、平気よな?﹂
﹁え、彼等って基本生きてないからさぁ。生きてる存在と相性悪い
んだよね∼﹂
﹁ほ、ほう? つまり?﹂
﹁元々苦手だったしぃ∼、僕が天界に閉じ込められてる間に離反さ
れちゃった♪﹂
場を明るくする為にわざとおちゃらけて言ったが⋮⋮。
1268
た♪ と同時くらいにドンと音がして。
﹁︱︱︱︱︱﹂
﹁あぁぁぁセシル、声も無く死ぬな!! 変な死体が迫ってきおる
ぅ﹂
﹁うぅぅぅ、逃げてって実は生きてるかも。うん、あの子、生きて
る生きてるかもぉ﹂
﹁アホか! あの顔で関節逆にして走ってくる人間が生きてるはず
がないじゃろぉ!﹂
襲い来る青白い子から必死に逃げる主人公。
カメラアタックも効かないらしく逃げるしかないようだ。
﹁気持ち悪い動きでジャリジャリ追ってくるぅ﹂
﹁ひぃ、ああぁもぉ、何故こやつはその辺の木材を拾って殴らんの
じゃぁぁあ﹂
ジャリジャリ砂を蹴る効果音の暫定ジャリさんが追ってくる。
レイニーの言う通り木材のようなもので打倒して欲しい。
写真で敵を撃退するゲームは結構あるが、何故彼等は武器︵物理︶
を頑なに持たないのだろう。
﹁って言うかなんでホラーゲームをやってるのぉ﹂
﹁お主が勧めたからじゃろうが!﹂
うぐぐ、適当に指差したのがこれだったか。
自業自得と言う文字が頭に浮かぶ。
﹁あ、いい考えが。今すぐゲームをやめたらどうかな!﹂
﹁中途半端に放置するのも怖いのじゃ! しっかり黒幕を倒さねば
1269
怖かろう!﹂
レイニーの言う事に納得してしまう。
途中で放置したら夢に出てきそう。
すっきりクリアしてストーリー上の原因を排除しておきたい。
じゃなきゃ自分がこのゲームの主人公のようになるかも。
なんて思ってしまう。
元魔母と現最強の吸血鬼の僕達。
それがたかがホラーゲームで怖がるはずがない。
そう思い込めればいいんだけどさ。
安全が保障されているオバケ屋敷で人は恐怖を感じる。
もしも、と言う想像こそが恐怖の源だ。
想像して自分で恐怖を生み出すから、僕達だって同様に怖い。
ゲームの無力な主人公に自己投影しちゃうと尚更怖い。
突如出る恐怖シーン。
タイミングが上手い効果音にBGM。
こういうのって逆に現実ではありえない。
意図的な恐怖の演出は魔母だろうが吸血鬼だろうが怖いものは怖
い。
﹁はぁ、とりあえず逃げられたかや﹂
﹁お、おぉレイニー凄い﹂
﹁ふ、ふふん。妾にかかればこの程度、ひぁ⋮⋮﹂
逃げ切ったと安心してドアを開けた瞬間、ガラスが砕けるような
音が。
びっくりしたレイニーが昇天した。
1270
言うまでもなく僕も驚いて固まった。
暫くしてからぎこちなくレイニーが起動する。
﹁止めるのも怖い。進むのも怖い。うぅぅ﹂
﹁が、頑張れレイニー﹂
﹁あ、セシルや、一旦交代してくれんかえ﹂
﹁え、うぅ仕方ない。クリア目指して二人で頑張ろう﹂
コントローラーを受け取りプレイを代わる。
ホテルのスイートルームは静かでゲーム音だけが聞こえる。
柔らかな室内灯がありがたいって⋮⋮。
﹁あ、あれ、なんで部屋の明かりがチカチカ点滅するのかな⋮⋮﹂
﹁セセセセシル前前前、大きな顔があ、あ、あ、あ﹂
﹁へ? ひぁぁぁぁあ﹂
視線を天井から画面に戻すと巨大な顔が迫ってきていた。
眼がグリングリン動いて口も不規則に開閉してこわあぁ。
なんとか回避して息を整える。
﹁レ、レイニ∼、そろそろ交代を﹂
﹁い、いやじゃ!﹂
﹁ぼ、僕だって嫌だよぉ﹂
﹁うぅならばせめてもう少し頑張ってくれぬかえ。もうちょっとだ
け﹂
﹁や、約束だよ﹂
ぴったりレイニーに体をくっつけてゲームを進める。
どうして部屋の明かりがこのタイミングで切れかけるのか。
1271
まさかゲームの中の呪いか何かが現実に⋮⋮って。
﹁﹁ひぁぁぁぁぁぁ﹂﹂
引けず止めれず恐怖に背中を押された僕達の悲鳴はクリアできる
まで続いた。
1272
第75話 ほらぁげぇむ︵後書き︶
ホラーゲームは一人じゃ絶対にできません。
1273
PDF小説ネット発足にあたって
http://novel18.syosetu.com/n8599bn/
ゲームの世界にTS転生
2016年8月31日14時05分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
1274
Fly UP